(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
本明細書に開示されるのは、核酸調節エレメント、発現カセット、発現ベクター、および錐体細胞障害を治療するために核酸調節エレメント、発現カセット、発現ベクターを使用する方法である。
前記コード領域は、OPN1LW(例えば、OPN1LWのエクソン1〜6)、OPN1MW(例えば、OPN1MWのエクソン1〜6)、配列14(修飾アフリベルセプト)またはその機能的断片、誘導体もしくは変異体;RS1(レチノスキシン前駆体)、VEGFAに対する抗体(モノクローナル抗体等)、抗血管内皮増殖因子(VEGF)抗体、またはその抗体断片(ラニビズマブおよび/またはベバシズマブ等)、色素上皮由来因子(PEDF)、可溶性fms様チロシンキナーゼ−1(FLT1)、CD59、錐体オプシン、錐体イオンチャネルからなる群から選択されるポリペプチド、あるいは以下からなる群から選択されるポリペプチドをコードする核酸配列を含む、請求項9、10、13または14に記載の核酸発現カセット:
(a)配列番号36 Homo sapiensオプシン1(錐体色素)、短波長感受性(OPN1SW)、
(b)配列番号37 Homo sapiensオプシン1(錐体色素)、中波長感受性(OPN1MW)、
(c)配列番号38 Homo sapiensオプシン1(錐体色素)、長波長感受性(OPN1LW)、
(d)配列番号39 ATP結合カセット網膜遺伝子(ABCR)(NM_000350)、
(e)配列番号40 網膜色素上皮特異的65kDタンパク質遺伝子(RPE65)(NM_000329)、
(f)配列番号41 網膜結合性タンパク質1遺伝子(RLBP1)(NM_000326)、
(g)配列番号42 (ペリフェリン/網膜変性症遅延遺伝子、(NM_000322)、
(h)配列番号43 アレスチン(SAG)(NM_000541)、
(i)配列番号44 トランスデューシンα(GNAT1)(NM_000172)、
(j)配列番号45 グアニル酸シクラーゼ活性化因子1A(GUCA1A)(NP_000400.2)、
(k)配列番号46 網膜特異的グアニル酸シクラーゼ(GUCY2D)、(NP_000171.1)、
(l)配列番号47および48 錐体環状ヌクレオチド感受性カチオンチャネル(CNGA3)のαサブユニット(NP_001073347.1またはNP_001289.1)、
(m)配列番号49 ヒト錐体トランスデューシンαサブユニット(不完全色覚異常)、
(n)配列番号50 錐体cGMP特異的3’,5’−環状ホスホジエステラーゼサブユニットα’、タンパク質(錐体ジストロフィー4型)、
(o)配列番号51 網膜錐体ロドプシン感受性cGMP 3’,5’−環状ホスホジエステラーゼサブユニットγ、タンパク質(網膜錐体ジストロフィー3A型)、
(p)配列番号52 錐体杆体ホメオボックス、タンパク質(錐体杆体ジストロフィー)、
(q)配列番号53 錐体視細胞環状ヌクレオチド感受性チャネルβサブユニット、タンパク質(1色覚)、
(r)配列番号54 錐体視細胞cGMP感受性カチオンチャネルβサブユニット、タンパク質(例えば、ピンゲラップ島民間の全色覚異常)、
(s)配列番号55網膜色素変性症1(常染色体優性)(RP1)、
(t)配列番号57 網膜色素変性症GTPアーゼ調節因子相互作用タンパク質1(RPGRIP1)、
(u)配列番号59 PRP8、
(v)配列番号61 中心体タンパク質290kDa(CEP290)、
(w)配列番号63 IMP IMP(イノシン5’−一リン酸)デヒドロゲナーゼ1(IMPDH1)、転写変異体1、
(x)配列番号65 アリール炭化水素受容体相互作用タンパク質様1(AIPL1)、転写変異体1、
(y)配列番号66 レチノールデヒドロゲナーゼ12(オールトランス/9−シス/11−シス)(RDH12)、
(z)配列番号67 レーバー先天性黒内障5(LCA5)、転写変異体1、および
(aa)例示的なOPN1LW/OPN1MW2多型(OPN1LW(Lオプシン)ポリペプチド配列と比較)(数字の左側のアミノ酸はLオプシン配列に存在する残基であり、数字はLオプシンにおける残基番号であり、数字の右側の残基はLオプシンからの変異である):
(i)Thr65Ile、
(ii)Ile111Val、
(iii)Ser116Tyr、
(iv)Leu153Met、
(v)Ile171Val、
(vi)Ala174Val、
(vii)Ile178Val、
(viii)Ser180Ala、
(ix)Ile230Thr、
(x)Ala233Ser、
(xi)Val236Met、
(xii)Ile274Val、
(xiii)Phe275Leu、
(xiv)Tyr277Phe、
(xv)Val279Phe、
(xvi)Thr285Ala、
(xvii)Pro298Ala、および
(xviii)Tyr309Phe。
前記コード領域は、そのN末端にシグナル配列を有するポリペプチドをコードする核酸配列を含む、請求項9〜10および13〜16のいずれか一項に記載の核酸発現カセット。
前記コード領域は、そのC末端に外細胞膜標的化配列を含むポリペプチドをコードする核酸配列を含む、請求項9〜10および13〜17のいずれか一項に記載の核酸発現カセット。
前記コード領域は(i)治療遺伝子コード領域、および(ii)蛍光タンパク質コード領域を含む、請求項9〜10および13〜19のいずれか一項に記載の核酸発現カセット。
前記治療遺伝子コード領域は、OPN1LW/MWタンパク質をコードする核酸配列を含み、前記蛍光タンパク質コード領域は、緑色蛍光タンパク質をコードする核酸配列を含む、請求項20〜21のいずれか一項に記載の核酸発現カセット。
(a)(i)OPN1LW/MWコード領域の最後の27ヌクレオチド((TCATCTGTGTCCTCGGTATCGCCTGCA(配列番号71))が、Sオプシンの最後の12アミノ酸をコードするTCAACTGTGTCCTCGACCCAGGTAGGGCCTAAC(配列番号72)と置き換えられ、(ii)OPN1LW/MW C末端の最後の10アミノ酸を特定する配列TCATCTGTGTCCTCGGTATCGCCTGCATAG(配列番号73)が、GFPの最後のアミノ酸をコードするコドンの後に挿入されるか、または
(b)Sオプシンの最後の12アミノ酸のコード領域(TCAACTGTGTCAACTGTGTCCTCGACCCAGGTAGGGCCTAAC(配列番号72))が、GFPの最後のアミノ酸をコードするコドンの直後かつGFP終止コドンの前に挿入される、請求項22に記載の核酸発現カセット。
前記治療遺伝子コード領域は、アフリベルセプトまたはその機能的断片、誘導体もしくは変異体をコードする核酸配列を含み、前記蛍光タンパク質コード領域は、シトリンをコードする核酸配列を含む、請求項20〜21のいずれか一項に記載の核酸発現カセット。
前記コード領域は、前記治療遺伝子コード領域と前記蛍光タンパク質コード領域との間のリンカーをコードする核酸配列を含む、請求項20〜24のいずれか一項に記載の核酸発現カセット。
(f)配列番号15の配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる調節エレメントであって、クローニング部位またはコード領域の3’に位置する、調節エレメントと、
(g)配列番号16を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる非翻訳領域の核酸であって、調節エレメントの3’に位置する、非翻訳領域核酸と、をさらに含む、請求項8〜26のいずれか一項に記載の核酸発現カセット。
プロモーターに作動可能に連結されたオプシンポリペプチドをコードする核酸を含む核酸発現カセットであって、前記オプシンポリペプチドをコードする前記核酸は、配列番号10および/もしくは配列番号12の核酸配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる1つ以上のイントロンを含む、核酸発現カセット。
OPN1LW/MWをコードする核酸は、OPN1LW/MWエクソン3の上流の配列番号10の配列を含む第1のイントロン、およびOPN1LW/MWエクソン3の下流の配列番号12の配列を含む第2のイントロンをコードする、請求項28に記載の核酸発現カセット。
前記オプシンポリペプチドまたはその機能的断片、誘導体、もしくは変異体をコードする核酸は、蛍光タンパク質との融合物をコードする、請求項28〜34のいずれか一項に記載の核酸発現カセット。
前記オプシンポリペプチドをコードする核酸は、OPN1LW/MWタンパク質をコードし、前記蛍光タンパク質コード領域は、緑色蛍光タンパク質をコードする核酸配列を含む、請求項28〜36のいずれか一項に記載の核酸発現カセット。
配列番号15の配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる調節エレメントであって、オプシンポリペプチドをコードする核酸の3’に位置する、調節エレメントと、
配列番号16を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる非翻訳領域核酸であって、調節エレメントの3’に位置する、非翻訳領域核酸と、をさらに含む、請求項28〜37のいずれか一項に記載の核酸発現カセット。
前記5’ITRは、(配列番号79)の核酸配列を含むかまたはそれからなり、前記3’ITRは、(配列番号80)の核酸配列を含むかまたはそれからなる、請求項37〜38のいずれか一項に記載の核酸発現カセット。
錐体細胞中のタンパク質等の遺伝子産物を発現させるための方法であって、1つ以上の錐体細胞を、有効量の請求項5〜43のいずれか一項に記載の核酸発現カセット、請求項44に記載の核酸発現ベクター、請求項45に記載の組換え宿主細胞、請求項46に記載のrAAV粒子、請求項47に記載の医薬組成物、または請求項48に記載の製剤と接触させることを含み、コード領域によってコードされるタンパク質等の遺伝子産物が、1つ以上の錐体細胞において検出可能なレベルで発現される、方法。
錐体細胞障害の治療または予防を必要とする哺乳動物における錐体細胞障害の治療または予防のための方法であって、前記哺乳動物の眼に、有効量の請求項5〜43のいずれか一項に記載の核酸発現カセット、請求項44に記載の核酸発現ベクター、請求項45に記載の組換え宿主細胞、請求項46に記載のrAAV粒子、請求項47に記載の医薬組成物、または請求項48に記載の製剤を投与することを含み、コード領域は、治療遺伝子産物をコードする核酸配列を含む、方法。
錐体細胞障害は、1色覚、青錐体1色覚、赤緑色覚異常、1型色覚、2型色覚、3型色覚、黄斑ジストロフィー、例えば、シュタルガルト黄斑ジストロフィー、錐体ジストロフィー、錐体杆体ジストロフィー、X連鎖性錐体ジストロフィー、脊髄小脳失調症7型、およびバルデ・ビードル症候群−1、加齢黄斑変性症、黄斑部毛細血管拡張症、網膜色素変性症、糖尿病性網膜症、網膜静脈閉塞症、緑内障、ソースビー眼底ジストロフィー、成人卵黄様黄斑ジストロフィー、ベスト病、杆体錐体ジストロフィー、レーバー先天性黒内障、ならびにX連鎖性網膜分離症、ボーンホルム眼病、および近視を伴うX連鎖性錐体機能不全症候群である、請求項50または51に記載の方法。
錐体細胞障害は、赤緑色覚異常、青錐体1色覚、ボーンホルム眼病、近視を伴うX連鎖性錐体機能不全症候群、ならびにX連鎖性錐体ジストロフィー、X連鎖性網膜分離症、常染色体劣性網膜色素変性症、加齢黄斑変性症(AMD;湿性または乾性)である、請求項50または51に記載の方法。
前記方法は、請求項5〜43のいずれか一項に記載の核酸発現カセット、請求項44に記載の核酸発現ベクター、請求項45に記載の組換え宿主細胞、請求項46に記載のrAAV粒子、請求項47の医薬組成物、または請求項48に記載の製剤の、対象への硝子体内注射を含む、請求項49〜53のいずれか一項に記載の方法。
一般式A−Bの核酸配列を含む単離された核酸であって、Aは、配列番号21のアミノ酸配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなるポリペプチドをコードし、Bは、錐体細胞障害を治療するための遺伝子産物をコードする、単離された核酸。
前記コード領域は、VEGFAに対する抗体(モノクローナル抗体等)、抗血管内皮増殖因子(VEGF)タンパク質、またはその抗体断片をコードする核酸配列を含む、請求項15に記載の核酸発現カセット。
【発明を実施するための形態】
【0016】
引用される全ての参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本出願では、別途記載されない限り、用いられる技術は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Sambrook,et al.,1989,Cold Spring Harbor Laboratory Press)、Gene Expression Technology(Methods in Enzymology,Vol.185,edited by D.Goeddel,1991 Academic Press,San Diego,CA)、“Guide to Protein Purification”in Methods in Enzymology(M.P.Deutshcer,ed.,(1990)Academic Press,Inc.)、PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Innis,et al.1990.Academic Press,San Diego,CA)、Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique,2
ndEd.(R.I.Freshney.1987.Liss,Inc.New York,NY)、Gene Transfer and Expression Protocols,pp.109−128,ed.E.J.Murray,The Humana Press Inc.,Clifton,N.J.)、およびAmbion 1998 Catalog(Ambion,Austin,TX)等のいくつかの周知の参考文献のいずれかに見出すことができる。
【0017】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかにそうではないと指示しない限り、複数の指示対象を含む。本明細書で使用される「および」は、明示的にそうではないと記載されない限り、「または」と互換的に使用される。
【0018】
本明細書で使用される場合、アミノ酸残基は以下のように省略される:アラニン(Ala;A)、アスパラギン(Asn;N)、アスパラギン酸(Asp;D)、アルギニン(Arg;R)、システイン(Cys;C)、グルタミン酸酸(Glu;E)、グルタミン(Gln;Q)、グリシン(Gly;G)、ヒスチジン(His;H)、イソロイシン(Ile;I)、ロイシン(Leu;L)、リジン(Lys;K)、メチオニン(Met;M)、フェニルアラニン(Phe;F)、プロリン(Pro;P)、セリン(Ser;S)、スレオニン(Thr;T)、トリプトファン(Trp;W)、チロシン(Tyr;Y)、およびバリン(Val;V)。
【0019】
本開示の任意の態様の全ての実施形態は、文脈が明らかにそうではないと指示しない限り、組み合わせて使用することができる。
【0020】
第1の態様において、本開示は、以下の配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる単離された核酸であって、
【数1】
Xは存在しないか、または
【数2】
(配列番号104、括弧内の残基は任意選択的である)およびGCCGCCACCからなる群から選択される、単離された核酸を提供する。Xが配列番号104である場合、完全長配列は配列番号3であり、XがGCCGCCACCである場合、完全長配列は配列番号5である。
【0021】
本開示のこの態様の単離された核酸は、目的の遺伝子産物を発現し、該遺伝子産物を錐体細胞に送達するのに特に有用であると本発明者らが本明細書に示した修飾されたオプシンプロモーター配列である。例えば、強調表示されたT>Cの変更(拡大されたフォントサイズ)は、転写を著しく改善することが示されている。「X」は、修飾コザック配列であり、本開示の単離された核酸を含む発現カセットからの遺伝子産物の翻訳を改善する際にさらなる利点を提供し得る。
【0022】
一実施形態において、核酸は、配列4(配列番号4)の配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなり、単離された核酸と発現されるコード領域との間にイントロンが存在し得る発現カセットに使用される場合に特に有用であり得る。
【数3】
【0023】
別の実施形態において、核酸は、配列5(配列番号5)の配列を含むかまたはそれからなり、単離された核酸が発現される遺伝子の翻訳開始シグナルのすぐ上流に存在する発現カセットに使用される場合に特に有用であり得る。
【数4】
【0024】
配列4(V1.0)では、コザック配列の一部であるATG翻訳開始シグナルのすぐ上流にGGTACCを挿入することにより、ネイティブなコザックが中断される。これは、ネイティブなコザックでの転写開始を防ぐために行われ、これにより、このプロモーターがイントロンで使用されると、ベクター中の次エレメント以降の発現レベルが低下する。このプロモーターを使用するベクターは、タンパク質コード領域のすぐ上流にコザック配列を含み得る。
【0025】
配列5(V2.0)(配列番号5)では、ATG開始コドンが欠落していることを除いて、ネイティブなコザックがコンセンサスコザック配列に置き換えられている。タンパク質コード領域がこのプロモーターの隣にクローン化されると、タンパク質コード領域のATG開始コドンとプロモーターのGCCGCCACCが完全なコザック配列を生成する。
【0026】
別の実施形態において、核酸は、Lオプシンプロモーターの一部を形成する配列番号70を含まない。したがって、この実施形態では、単離された核酸は、切断型Lオプシン変異プロモーターを含む:
【数5】
【0027】
第2の態様において、本開示は、
(a)配列2(配列番号2)の配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる遺伝子座制御領域(LCR)と、
(b)本開示の第1の態様の任意の実施形態の単離された核酸配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなるプロモーターであって、LCRの3’に位置する、プロモーターと、を含む核酸発現カセットを提供する。
【数6】
【0028】
本発明者らは、本開示のこの態様の核酸発現カセットが、錐体細胞中のコードされた遺伝子の著しく改善された発現を駆動できることを示した。
【0029】
配列2(配列番号2)のLCRは、L/M最小オプシンエンハンサーの切断バージョンであり、LCRの最初の325bpおよび3’G残基が欠失している。本発明者らは、当該技術分野で報告されていることに反して、配列2(配列番号2)のLCRが霊長類のS錐体における遺伝子の発現を促進しないことを本明細書で示した。したがって、配列2(配列番号2)のLCRは、例えば、S錐体における発現が望ましくない赤緑色覚異常の治療を目的としたベクターにおいて有用である。
【0030】
本明細書中で使用される場合、「発現カセット」は、互いに作動可能に連結された2つ以上のポリヌクレオチド配列、例えば、プロモーター、LCR等を含むポリヌクレオチドである。同様に、「錐体細胞における遺伝子産物の発現のための発現カセット」は、錐体細胞における遺伝子産物の発現を促進する2つ以上のポリヌクレオチド配列、例えばプロモーター、LCR等の組み合わせである。
【0031】
「錐体細胞」は、「錐体視細胞」または「錐体」と称されてもよく、比較的明るい光の中で最もよく機能する眼の網膜内の視細胞の亜型である。錐体は、特定の波長の光に対して感受性であり、したがって色の知覚を支持する。さらに、錐体は、杆体視細胞体よりも刺激に対して迅速に応答し、杆体よりも像内のより細かい詳細およびより急速な変化を知覚し、したがって読書および運転等の視覚的細部が最も重要となる活動のための高い視力を支持する。錐体は、その外側セグメントの円錐状の形状によって、網膜の断面において容易に識別可能である。それらはまた、網膜内の位置によっても容易に識別可能であり、最も高密度の錐体は、「網膜中心窩」または「中心窩」と称される、網膜の黄斑の中心に位置する1.5mmの窪みに存在する。
【0032】
発現カセットの一実施形態において、プロモーターは、配列4(配列番号4)または5(配列番号5)の配列を含むかまたはそれからなる。別の実施形態において、プロモーターは、配列4(配列番号4)の配列を含むかまたはそれからなり、カセットは、配列6(配列番号6)の配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなるイントロンをさらに含み、イントロンはプロモーターの3’に位置する。
【数7】
【0033】
配列4(配列番号4)をプロモーターとして使用する場合、発現カセットにおいて使用されるタンパク質コード領域は、5’末端に完全なコザック配列を含むように修飾することができる。配列5(配列番号5)をプロモーターとして使用する場合タンパク質コード領域(開始コドンおよびイントロンを含む)をプロモーターの3’にクローン化することによって完全なコザックを作製することができる。
【0034】
本明細書の教示に照らしてユーザーが適切であるとみなすプロモーターのいずれかを使用することができる。一実施形態において、配列4(配列番号4)3]と配列5(配列番号5)をいつ使用するかの区別は、発現カセット中のエレメントの順序に基づいている。配列4(配列番号4)は、プロモーターの3’にクローン化された次のエレメントがイントロンになるように設計されている。配列5(配列番号5)は、プロモーターの3’にクローン化された次のエレメントがタンパク質コード領域になるように設計されている。後者の場合、タンパク質コード領域は、1つ以上のイントロンを含み得る。一実施形態では、イントロンが正しくスプライシングされることを確認するために、イントロンの配列は経験的に識別される。
【0035】
別の実施形態において、発現カセットは、コザック配列の3’に位置するクローニング部位をさらに含み得る。この実施形態では、イントロンは、プロモーターとクローニング部位との間に位置してもよい。これらの実施形態のいずれかにおいて、発現カセットは、錐体細胞障害を治療するために使用され得るポリペプチドをコードするコード領域またはその機能的断片、誘導体もしくはその変異体等の目的のコード領域を挿入することができるクローニングベクターとして使用することができる。そのようなポリペプチドの例示的な実施形態については後に論じる。
【0036】
さらなる実施形態において、発現カセットは、コザック配列の3’に位置し、プロモーターおよびLCR(例えば、短縮型LCR)に作動可能に連結されたコード領域をさらに含み得る。本明細書で使用される場合、「作動可能に連結された」という用語は、2つ以上の遺伝的エレメントの並置を指し、エレメントは、それらが予想される様式で作動することを可能にする関係にある。例えば、プロモーターがコード領域の転写の開始を助ける場合、プロモーターはコード領域に機能的に連結されている。この機能的関係が維持されている限り、プロモーターとコード領域との間に残基が介在していてもよい。一実施形態において、コード領域は、錐体細胞障害を治療するために使用され得るタンパク質をコードすることができる。そのようなタンパク質の例示的な実施形態については後に論じる。別の実施形態において、コード領域はいずれのイントロンも含まない。この実施形態において、カセットは、イントロンとコード領域との間に位置するプロモーターを含む。
【0037】
本明細書で使用される場合、「遺伝子」または「コード領域」という用語は、遺伝子産物をコードするi n vitroまたはin vivoのヌクレオチド配列を指す。ある場合には、遺伝子は、コード領域、すなわち遺伝子産物をコードする配列からなるか、またはそれから本質的になる。他の場合には、遺伝子は追加の非コード配列を含む。例えば、遺伝子は、コード領域の前の領域および後の領域、例えば、5’非翻訳(5’UTR)または「リーダー」配列および3’UTRまたは「トレーラー」配列、ならびに個々のコードセグメント(エクソン)の間の介在配列(イントロン)を含んでもまたは含まなくてもよい。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語「遺伝子産物」は、ポリペプチド、ペプチド、タンパク質、または低分子干渉RNA(siRNA)、miRNA、もしくは低分子ヘアピンRNA(shRNA)を含む干渉RNAを含むがこれらに限定されないポリヌクレオチド配列の所望の発現産物を指す。
【0039】
本開示の核酸発現カセットの別の実施形態において、プロモーターは、配列5(配列番号5)の配列を含むか、またはそれからなる。そのような一実施形態において、発現カセットは、プロモーターの3’に位置するクローニング部位をさらに含み得る。この実施形態において、発現カセットは、錐体細胞障害を治療するために使用され得るタンパク質をコードする領域等の目的のコード領域を挿入することができるクローニングベクターとして使用することができる。そのようなタンパク質の例示的な実施形態については後に論じる。別の実施形態において、カセットは、プロモーターの3’に位置するコード領域をさらに含む。この実施形態において、コード領域は、1つ以上のイントロンを含み得る。1つ以上のイントロンの位置は、本明細書の教示および目的のコード領域を考慮して、当業者によって決定され得る。
【0040】
本開示の全ての実施形態について、コード領域は、任意のポリヌクレオチド配列、例えば、遺伝子産物、例えば、ポリペプチドをコードする遺伝子もしくはcDNA、またはRNAに基づく治療薬(siRNA、アンチセンス、リボザイム、shRNA等)であり得る。遺伝子産物は、錐体細胞において内因的に作用してもよいか、または外因的に作用してもよく、例えば分泌される場合もある。例えば、遺伝子産物が治療遺伝子である場合、コード領域は、錐体細胞障害を治療するための治療薬として、または限定されないが4色型色覚の促進を含む、別様に視覚を増強するための手段として使用することができる、所望の遺伝子産物またはその機能的断片もしくは変異体をコードする任意の遺伝子であり得る
【0041】
一実施形態において、コード領域は、配列13(配列番号13)または配列14(配列番号14)を含むか、またはそれからなる。
配列13(配列番号13は完全長構築物である):エクソンを含むOPN1LW mRNA配列に留意されたく、また翻訳開始コドン(ATG)を太字および下線付きで示す。エクソン3には、下線付きのやや大きいフォントで示される8つの多型位置が存在する。OPN1MW遺伝子を生じさせるエクソン2、4、および5の他の多型も強調表示されている。
【数8】
【数9】
【数10】
括弧内の「TGA」は、TGAもしくは任意の適切な終止コドンであり得るか、または蛍光タンパク質もしくは他のタンパク質のコード領域の5’に融合された場合は存在しなくてもよい。
配列14(配列番号14):アフリベルセプトの最初の78ヌクレオチドが太字で下線付きのテキストで強調表示されたヌクレオチドによって置き換えられた修飾アフリベルセプト。強調表示された配列は、RS1遺伝子に由来し、視細胞によるレチノスキシンの分泌に関与するシグナルペプチドをコードする。
【数11】
【0042】
他の実施形態において、コード領域は、以下に列挙されるポリペプチドからなる群から選択されるポリペプチドをコードする核酸配列を含む:
・OPN1LW(例えば、OPN1LWのエクソン1〜6)、OPN1MW(例えば、OPN1MWのエクソン1〜6)。
・4つの部分(sfltシグナル配列、sfltドメイン2、VEGFR2ドメイン3、IgG1fc)からなるVegfトラップであるアフリベルセプト(配列番号115は完全長構築物である)、またはその機能的断片、誘導体もしくは変異体:
Sfltシグナル配列:
ATGGTCAGCTACTGGGACACCGGGGTCCTGCTGTGCGCGCTGCTCAGCTGTCTGCTTCTCACAGGATCTAGTTCCGGA(配列番号78)
【数12】
【数13】
【数14】
【数15】
【数16】
・VEGFAに対する抗体(モノクローナル抗体等)、抗血管内皮増殖因子(VEGF)タンパク質、もしくはその抗体断片、例えばラニビズマブおよび/またはベバシズマブ
【数17】
【数18】
【数19】
【数20】
【数21】
【数22】
【数23】
【数24】
【数25】
【0043】
他の実施形態において、コード領域は、以下に列挙されるポリペプチドからなる群から選択されるポリペプチドをコードする核酸配列を含む:
(a)配列番号36 Homo sapiensオプシン1(錐体色素)、短波長感受性(OPN1SW)
(b)配列番号37 Homo sapiensオプシン1(錐体色素)、中波長感受性(OPN1MW)
(c)配列番号38 Homo sapiensオプシン1(錐体色素)、長波長感受性(OPN1LW)
(d)配列番号39 ATP結合カセット網膜遺伝子(ABCR)(NM_000350)
(e)配列番号40 網膜色素上皮特異的65kDタンパク質遺伝子(RPE65)(NM_000329)
(f)配列番号41 網膜結合性タンパク質1遺伝子(RLBP1)(NM_000326)
(g)配列番号42 (ペリフェリン/網膜変性症遅延遺伝子、(NM_000322)
(h)配列番号43 アレスチン(SAG)(NM_000541)
(i)配列番号44 トランスデューシンα(GNAT1)(NM_000172)
(j)配列番号45 グアニル酸シクラーゼ活性化因子1A(GUCA1A)(NP_000400.2)
(k)配列番号46 網膜特異的グアニル酸シクラーゼ(GUCY2D)、(NP_000171.1)
(l)配列番号47および48 錐体環状ヌクレオチド感受性カチオンチャネル(CNGA3)のαサブユニット(NP_001073347.1またはNP_001289.1)
(m)配列番号49 ヒト錐体トランスデューシンαサブユニット(不完全色覚異常)
(n)配列番号50 錐体cGMP特異的3’,5’−環状ホスホジエステラーゼサブユニットα’、タンパク質(錐体ジストロフィー4型)
(o)配列番号51 網膜錐体ロドプシン感受性cGMP3’,5’−環状ホスホジエステラーゼサブユニットγ、タンパク質(網膜錐体ジストロフィー3A型)
(p)配列番号52 錐体杆体ホメオボックス、タンパク質(錐体杆体ジストロフィー)
(q)配列番号53 錐体視細胞環状ヌクレオチド感受性チャネルβサブユニット、タンパク質(1色覚)
(r)配列番号54 錐体視細胞cGMP感受性カチオンチャネルβサブユニット、タンパク質(例えば、ピンゲラップ島民間の全色覚異常)
(s)配列番号55(配列番号56)網膜色素変性症1(常染色体優性)(RP1)
(t)配列番号57(配列番号58)網膜色素変性症GTPアーゼ調節因子相互作用タンパク質1(RPGRIP1)
(u)配列番号59(配列番号60)PRP8
(v)配列番号61(配列番号62)中心体タンパク質290kDa(CEP290)
(w)配列番号63(配列番号64)IMP(イノシン5’−一リン酸)デヒドロゲナーゼ1(IMPDH1)、転写変異体1
(x)配列番号65 アリール炭化水素受容体相互作用タンパク質様1(AIPL1)、転写変異体1
(y)配列番号66 レチノールデヒドロゲナーゼ12(オールトランス/9−シス/11−シス)(RDH12)
(z)配列番号67 レーバー先天性黒内障5(LCA5)、転写変異体1、および
(aa)例示的なOPN1LW/OPN1MW2多型(OPN1LW(Lオプシン)ポリペプチド配列と比較)(数字の左側のアミノ酸はLオプシン配列に存在する残基であり、数字はLオプシンにおける残基番号であり、数字の右側の残基はLオプシンからの変異である)。これらの実施形態による多型は、以下の表1のアミノ酸置換のうちの1つ以上を含み得る:
表1
(i)Thr65Ile
(ii)Ile111Val
(iii)Ser116Tyr
(iv)Leu153Met
(v)Ile171Val
(vi)Ala174Val
(vii)Ile178Val
(viii)Ser180Ala
(ix)Ile230Thr
(x)Ala233Ser
(xi)Val236Met
(xii)Ile274Val
(xiii)Phe275Leu
(xiv)Tyr277Phe
(xv)Val279Phe
(xvi)Thr285Ala
(xvii)Pro298Ala
(xviii)Tyr309Phe。
【0044】
(a)〜(c)および(aa)に記載されるタンパク質は全て、色覚に関与している。例示的な多形には、それらを発現する錐体細胞における色素のスペクトルに影響を及ぼす、65位、116位、180位、230位、233位、277位、285位、および309位のものが含まれる。274位、275位、277位、279位、285位、298位および309位は一緒になって、LオプシンとMオプシンを区別する。
【0045】
(d)〜(z)に記載されるタンパク質は、網膜色素変性症(ポリペプチド「e」−「l」、「s」−「y」)、不完全1色覚(ポリペプチド「m」)、シュタルガルト(ポリペプチド「d」);レーバー先天性黒内障(ポリペプチド「z」);錐体ジストロフィー4型等の錐体ジストロフィー(ポリペプチド「n」);網膜錐体ジストロフィー;例えば、網膜錐体ジストロフィー3A型(ポリペプチド「o」);錐体杆体ジストロフィー(ポリペプチド「p」);1色覚(ポリペプチド「q」);および例えば、ピンゲラップ島民間の全色覚異常(ポリペプチド「r」)におけるもの等の、例示的な眼疾患関連遺伝子である。
【0046】
様々な実施形態において、コード領域は、VEGFAに対する抗体、抗血管内皮増殖因子(VEGF)タンパク質、またはその抗体断片をコードする核酸配列を含む。そのような一実施形態において、抗体は、モノクローナル抗体またはその断片を含む。別の実施形態において、抗体は、ベバシズマブまたはその断片を含む。さらなる実施形態において、抗体は、ラニビズマブまたはその断片を含む。
【0047】
特定の一実施形態では、コード領域は、OPN1LW(エクソン1〜6:配列番号38)、OPN1MW(エクソン1〜6:配列番号387)、またはOPN1LW/MW(配列番号68)(後述)、またはその多型(上記のコード化オプシンcDNAと比較して示されるエクソン2、3、および4のもの等)をコードする核酸を含み、
(a)コード領域は内因性OPN1LW/MWイントロンを含まず、
(b)1つ以上のイントロンは、
(i)OPN1LW/MWエクソン3の上流の配列7(配列番号7)の配列を含む第1のイントロン、およびOPN1LW/MWエクソン3の下流の配列8(配列番号8)の配列を含む第2のイントロン(発明者らは、これらのイントロンが非常に強いスプライシングシグナルを有することを示した)、または
(ii)OPN1LW/MWエクソン3の上流の配列10(配列番号10)の配列を含む第1のイントロン、およびOPN1LW/MWエクソン3の下流の配列12(配列番号12)の配列を含む第2のイントロンを含む。
【数26】
【数27】
【数28】
【0048】
本発明者らは、オプシン遺伝子にこれらのイントロンを含めることにより、OPN1LW/MW遺伝子産物の転写および翻訳が著しく増強されることを示した。
【0049】
本明細書の全ての実施形態の一実施形態において、コード領域は、コードされたポリペプチドの分泌を可能にするために、そのN末端に錐体細胞シグナル配列を有するポリペプチドをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態において、この錐体細胞シグナル配列は、そうでなければポリペプチドに存在するシグナル配列を置き換え得る。錐体細胞から分泌されるポリペプチドを天然に生じるシグナル配列、または限定されないがRS1シグナル配列(MSRKIEGFLLLLLFGYEATLGLSS(配列番号21)を含む異種シグナル配列を含む、任意の適切な錐体細胞シグナル配列を使用することができる。別の実施形態において、コード領域は、そのC末端に外細胞膜標的化配列を含むポリペプチドをコードする核酸配列を含む。コードされたポリペプチド(OPN1LWおよびOPN1MW等)において天然に生じる外細胞膜標的配列、またはXが任意のアミノ酸残基であるVXPXモチーフを含むがこれに限定されない異種シグナル配列を含む、任意の適切な外細胞膜標的配列を使用することができる。
【0050】
別の実施形態において、コード領域は、(i)治療遺伝子コード領域、および(ii)蛍光タンパク質コード領域を含む。この実施形態は、遺伝子産物の発現/局在を追跡することが望ましい場合に特に有用である。蛍光タンパク質コード領域は、緑色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質、シトリン等を含むがこれらに限定されない任意の適切な蛍光タンパク質をコードすることができる。
【0051】
一実施形態において、蛍光タンパク質コード領域は、治療遺伝子コード領域の3’にある。この実施形態(すなわち、蛍光タンパク質コード領域が治療遺伝子コード領域の3’にある)では、外側セグメント膜標的化配列(存在する場合)は、コードされた融合ポリペプチドのC末端にある。
【0052】
特定の一実施形態において、治療遺伝子コード領域は、OPN1LW/MWタンパク質をコードする核酸配列を含み、蛍光タンパク質コード領域は、緑色蛍光タンパク質をコードする核酸配列を含む。2つの例示的なそのような実施形態において、
(a)(i)OPN1LW/MWコード領域の最後の27ヌクレオチド
(TCATCTGTGTCCTCGGTATCGCCTGCA(配列番号71)が、Sオプシンの最後の12アミノ酸をコードする
TCAACTGTGTCCTCGACCCAGGTAGGGCCTAAC(配列番号72)と置き換えられ、(ii)OPN1LW/MW C末端の最後の10アミノ酸を特定する配列
TCATCTGTGTCCTCGGTATCGCCTGCATAG(配列番号73−−)が、GFPの最後のアミノ酸をコードするコドンの後に挿入されるか、または
(b)Sオプシンの最後の12アミノ酸のコード領域
(TCAACTGTGTCCTCGACCCAGGTAGGGCCTAAC(配列番号72)が、GFPの最後のアミノ酸をコードするコドンの直後かつGFP終止コドンの前に挿入される。
【0053】
別の特定の実施形態において、治療遺伝子コード領域は、アフリベルセプト(配列番号115)または修飾アフリベルセプト(配列番号14)、またはそれらの機能的断片、誘導体もしくは変異体をコードする核酸配列を含む。さらなる実施形態において、治療遺伝子は、アフリベルセプトまたは修飾アフリベルセプトとシトリンの融合ポリペプチド(配列番号75)、またはその機能的断片、誘導体もしくは変異体をコードする。
【数29】
【数30】
【0054】
上記の実施形態のいずれにおいても、コード領域は、治療遺伝子コード領域と蛍光タンパク質コード領域との間のアミノ酸リンカーをコードし得る。本開示に照らして当業者によって理解されるように、任意の適切なリンカーがコードされ得る。非限定的な一実施形態において、リンカーは、核酸配列によってコードされる。
GGAGGTGGAGGTTCTGGTGGAGGAGGTTCC(配列番号76)
【0055】
当業者によって理解されるように、核酸発現カセットは、所与の目的に適切であると考えられる他の適切な調節エレメントを含み得る。本明細書の任意の他の実施形態と組み合わせることができる一実施形態において、核酸発現カセットはさらに以下を含み得る:
(f)配列15(配列番号15)の配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる調節エレメントであって、クローニング部位またはコード領域の3’に位置する、調節エレメント、および
(g)配列16(配列番号16)を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる非翻訳領域の核酸であって、調節エレメントの3’に位置する、非翻訳領域核酸。
【数31】
【数32】
【0056】
調節エレメントおよび非翻訳領域核酸は、治療遺伝子/タンパク質の効率的な転写および/または翻訳をさらに促進するのに役立つ。
【0057】
第3の態様において、本開示は、プロモーターに作動可能に連結されたオプシンポリペプチド(OPN1LW/MWタンパク質等)をコードする核酸を含む核酸発現カセットであって、オプシンポリペプチドをコードする核酸は、配列10(配列番号10)および/もしくは配列12(配列番号12)の核酸配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる1つ以上のイントロンを含む、核酸発現カセットを提供する。これらのイントロンについては上で論じている。一実施形態において、オプシンポリペプチドをコードする核酸はOPN1LW/MWをコードし、OPN1LW/MWをコードする核酸は、OPN1LW/MWエクソン3の上流の配列10(配列番号10)の配列を含む第1のイントロン、およびOPN1LW/MWエクソン3の下流の配列12(配列番号12)の配列を含む第2のイントロンを含む。上記のように、本発明者らは、配列10(配列番号10)および/または12(配列番号12)の変異イントロンを使用して、OPN1LW/MWの発現を著しく改善できることを発見した。一実施形態において、プロモーターは、以下の配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる核酸を含むかまたはそれからなり、
【数33】
からなる群から選択され、
核酸発現カセットは、配列2(配列番号2)の配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる遺伝子座制御領域(LCR)をさらに含み、プロモーターはLCRの3’に位置し、かつプロモーターはオプシンポリペプチドをコードする核酸の5’に位置する。この実施形態のプロモーターおよびLCRについては上で論じている。そのような一実施形態において、プロモーターは、配列4(配列番号4)または5(配列番号5)の配列を含むかまたはそれからなる。別の実施形態において、オプシンポリペプチドをコードする核酸は、そのN末端で、RS1シグナル配列(MSRKIEGFLLLLLFGYEATLGLSS(配列番号21))等の錐体細胞シグナル配列をコードする。別の実施形態において、オプシンポリペプチドをコードする核酸は、そのC末端で、Xが任意のアミノ酸であるVXPXドメイン等の外側セグメント膜標的化配列をコードする。別の実施形態において、オプシンポリペプチドをコードする核酸は、蛍光タンパク質との融合物、例えば、蛍光タンパク質コード領域が治療遺伝子コード領域の3’に存在する構築物をコードする。そのような一実施形態において、オプシンポリペプチドをコードする核酸は、OPN1LW/MWタンパク質をコードし、蛍光タンパク質コード領域は、緑色蛍光タンパク質をコードする核酸配列を含む。別の実施形態において、核酸発現カセットはさらに以下を含み得る:
【0058】
配列15(配列番号15)の配列を含むか、それから本質的になるか、もしくはそれからなる調節エレメントであって、オプシンポリペプチドをコードする核酸の3’に位置する、調節エレメント、および/または
【0059】
配列16(配列番号16)を含むか、それから本質的になるか、もしくはそれからなる非翻訳領域の核酸であって、調節エレメントの3’に位置する、非翻訳領域核酸。配列15の調節エレメントおよび配列16の非翻訳領域については上で論じた通りである。
【0060】
本開示の任意の態様の発現カセットの実施形態において、核酸発現カセットは、エンハンサー配列、終結シグナル配列等を含むがこれらに限定されない、さらなる調節エレメントを含み得る。
【0061】
本開示の任意の態様の発現カセットの実施形において、カセットの5’および3’末端は、例えば、ウイルス送達媒体におけるレスキュー、複製、およびパッケージングを可能にするのに有用な逆方向末端反復を含み得る。そのような一実施形態において、逆方向末端反復は、機能的アデノ随伴ウイルス(AAV)逆方向末端反復である。「機能的AAV ITR配列」は、ITR配列がAAVビリオンのレスキュー、複製、およびパッケージングのために企図されたとおりに機能することを意味する。したがって、本開示のベクターに使用するためのAAV ITRは、野生型ヌクレオチド配列を有する必要はなく、ヌクレオチドの挿入、欠失もしくは置換によって変更されてもよいか、またはAAV ITRは、いくつかのAAV血清型のいずれかに由来し得る。一実施形態において、5’ITRは、以下を含むかまたは以下からなり、
【数34】
3’ITRは、以下を含むかまたは以下からなる
【数35】
【0062】
核酸発現カセットは、特定の目的に適切であると考えられる任意の適切な長さであり得る。本開示の任意の態様の発現カセットの非限定的な一実施形態において、核酸発現カセットは約5kb以下の長さである。
【0063】
特定の実施形態において、本開示の核酸発現カセットは、配列91〜95からなる群から選択される配列を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなってもよい。
配列番号91発現カセットLオプシンGFP融合物の構成要素(ITRを含む全長=4387(完全長配列は配列番号91であり、構成要素は以下に個別に記載される)。
【数36】
5’スペーサー
TAGCCATGCTCTAGGAAGATCT(配列番号81)
【数37】
【数38】
強調表示の説明:
【数39】
ATGを置換し、デコイコザックを破壊するために挿入されたKpnI部位である。
【数40】
【数41】
【数42】
Sテール:TCAACTGTGTCCTCGACCCAGGTAGGGCCTAAC(配列番号72)(C末端の12Sオプシンアミノ酸をコードする)
【数43】
ネイティブLオプシンテール(最後の10アミノ酸をコードする)
TCATCTGTGTCCTCGGTATCGCCTGCATAG(配列番号73)
【数44】
【数45】
3’スペーサー:
AAGCTTATCGATAAGGATCTTCCTAGAGCATGGCTA(配列番号87)
【数46】
配列番号92。発現カセットLオプシンの構成要素(ITRを含む全長=3633(完全長配列は配列番号92であり、構成要素は以下に個別に示される)。
【数47】
5’スペーサー
TAGCCATGCTCTAGGAAGATCT(配列番号81)
【数48】
【数49】
強調表示の説明:
【数50】
ATGを置換し、デコイコザックを破壊するために挿入されたKpnI部位である。
C=単一ヌクレオチド置換により発現が増加する(通常、これはT残基である)
【数51】
【数52】
【数53】
【数54】
3’スペーサー:
AAGCTTATCGATAAGGATCTTCCTAGAGCATGGCTA(配列番号87)
【数55】
配列番号93シトリンタグ付きのVEGFトラップを発現したL/M錐体(完全長配列は配列番号93であり、構成要素は以下に個別に示される)。
【数56】
スペーサー:TAGCCATGCTCTAGGAAGATCT(配列番号81)
【数57】
【数58】
【数59】
最適化されたコザック(部分的)
GCCACC
4つの部分からなるVegfトラップ(sfltシグナル配列、sfltドメイン2、VEGFR2ドメイン3、IgG1fc):
Sfltシグナル配列:
ATGGTCAGCTACTGGGACACCGGGGTCCTGCTGTGCGCGCTGCTCAGCTGTCTGCTTCTCACAGGATCTAGTTCCGGA(配列番号78)
【数60】
【数61】
【数62】
VEGFトラップとシトリンとの間のリンカー
Ggaggtggaggttctggtggaggaggttcc(配列番号76)
【数63】
【数64】
【数65】
スペーサー:aagcttatcgataaggatcttcctagagcatggcta(配列番号87)
【数66】
配列番号94 VEGFトラップ(シトリンなし)を発現したL/M錐体(完全長配列は配列番号94であり、構成要素は以下に個別に示される)。
【数67】
スペーサー:TAGCCATGCTCTAGGAAGATCT(配列番号81)
【数68】
【数69】
【数70】
最適化されたコザック(部分的)
GCCACC
4つの部分からなるVegfトラップ(sfltシグナル配列、sfltドメイン2、VEGFR2ドメイン3、IgG1fc):
Sfltシグナル配列:
ATGGTCAGCTACTGGGACACCGGGGTCCTGCTGTGCGCGCTGCTCAGCTGTCTGCTTCTCACAGGATCTAGTTCCGGA(配列番号78)
【数71】
【数72】
【数73】
【数74】
【数75】
スペーサー:aagcttatcgataaggatcttcctagagcatggcta(配列番号87)
【数76】
配列番号95修飾ヒトβグロビンイントロンを有するL/M錐体発現カセットのバージョン(完全長配列は配列番号95であり、構成要素は以下に個別に示される)。
【数77】
5’スペーサー:TAGCCATGCTCTAGGAAGATCT(配列番号81)
【数78】
【数79】
【数80】
【数81】
【数82】
【数83】
【数84】
【数85】
【数86】
3’スペーサー
AAGCTTATCGATAAGGATCTTCCTAGAGCATGGCTA(配列番号87)
【数87】
【0064】
本明細書の実施形態または実施形態の組み合わせのいずれかの実施形態において、核酸発現カセットは、核酸発現ベクターを含む。本明細書で使用される「発現ベクター」は、ベクター、例えば、目的の遺伝子産物をコードする核酸発現カセットを含み、目的の標的細胞における遺伝子産物の発現をもたらすために使用される、上で論じたまたは当該技術分野で既知のプラスミド、ミニサークル、ウイルスベクター、リポソーム等を包含する。
【0065】
別の態様において、本開示の任意の実施形態または実施形態の組み合わせの核酸発現カセットを含む組換え宿主細胞が提供される。細胞は、本明細書に開示される発現ベクターでトランスフェクトまたは形質導入され得る任意の種類のものであり得る。「宿主細胞」という用語は、形質導入、感染、トランスフェクトまたは形質転換された元の細胞およびその子孫を指すことを理解されたい。発現ベクターがrAAVベクターである一実施形態において、細胞は、本開示の複製能力のないrAAV発現ベクターで形質導入されたプロデューサー細胞を含み、そのウイルス粒子は、上記のAAVヘルパー構築物の導入により得ることができ、また同様に当該技術分野で既知である。
【0066】
別の態様において、以下を含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)粒子が提供される:
(a)AAVキャプシドタンパク質、および
(b)本開示の任意の実施形態または実施形態の組み合わせの核酸発現カセットまたは発現ベクター。
【0067】
「AAV」という用語は、アデノ随伴ウイルスの略語であり、ウイルス自体またはその誘導体を指すために使用され得る。この用語は、別段の必要がある場合を除いて、全ての亜型、ならびに天然に存在する形態および組換え形態の両方を包含する。「AAV」という用語は、AAV1型(AAV−1)、AAV2型(AAV−2)、AAV3型(AAV−3)、AAV4型(AAV−4)、AAV5型(AAV−5)、AAV6型(AAV−6)、AAV7型(AAV−7)、AAV8型(AAV−8)、トリAAV、ウシAAV、イヌAAV、ウマAAV、霊長類AAV、非霊長類AAV、およびヒツジAAVを含む。「霊長類AAV」は、霊長類に感染するAAVを指し、「非霊長類AAV」は、非霊長類哺乳動物に感染するAAVを指し、「ウシAAV」は、ウシ科哺乳動物に感染するAAVを指す等である。
【0068】
「AAVウイルス」または「AAVウイルス粒子」または「rAAVベクター粒子」は、少なくとも1つのAAVキャプシドタンパク質(典型的には野生型AAVのキャプシドタンパク質の全て)およびキャプシド化ポリヌクレオチドrAAV発現カセットまたはベクターから構成されるウイルス粒子を指す。粒子が異種ポリヌクレオチド(すなわち、哺乳動物細胞に送達される治療遺伝子等の野生型AAVゲノム以外のポリヌクレオチド)を含む場合、典型的には「rAAVベクター粒子」または単に「rAAVベクター」と称される。したがって、rAAVベクターがrAAV粒子内に含まれるため、rAAV粒子の産生はrAAVベクターの産生を必然的に含む。
【0069】
本開示のAAVウイルスベクターに関して本明細書で使用される「複製欠損」という用語は、AAVベクターがそのゲノムを独立して複製およびパッケージングすることができないことを意味する。例えば、対象の細胞がrAAVビリオンに感染すると、感染細胞において異種遺伝子が発現するが、感染細胞はAAV rep遺伝子およびcap遺伝子ならびに補助機能遺伝子を欠くため、rAAVはさらに複製することができない。
【0070】
略語「rAAV」は、組換えAAVベクター(または「rAAVベクター」)とも称される組換えアデノ随伴ウイルスを指す。本明細書で使用される「rAAVベクター」は、AAV起源ではないポリヌクレオチド配列(すなわち、AAVに対して異種のポリヌクレオチド)、典型的には細胞の遺伝的形質転換のための目的の配列を含むAAVベクターを指す。一般に、異種ポリヌクレオチドには、少なくとも1つ、一般的には2つのAAV逆方向末端反復配列(ITR)が隣接している。rAAVベクターという用語は、rAAVベクター粒子およびrAAVベクタープラスミドの両方を包含する。
【0071】
別の態様において、以下を含む医薬組成物が提供される:
(a)本開示の任意の実施形態または実施形態の組み合わせの核酸発現カセット、発現ベクター、組換え宿主細胞、またはrAAV粒子、および
(b)薬学的に許容される担体。
【0072】
別の態様において、本開示の任意の実施形態または実施形態の組み合わせの核酸発現カセットまたは発現ベクターを含むパッケージ化ウイルス粒子(rAAV粒子等)を含む製剤が提供される。一実施形態において、ウイルス粒子は、1mL当たり少なくとも10
10個のベクターゲノム含有粒子の濃度で存在し、他の様々な実施形態において、ウイルス粒子は、1mL当たり少なくとも7.5x10
10、10
11、5x10
11、10
12、5x10
12、10
13、1.5x10
13、3x10
13、5x10
13、7.5x9x10
13、または9x10
13個のベクターゲノム含有粒子の濃度で存在する。製剤は、薬学的に許容される担体、希釈剤および試薬をさらに含み得る。製剤は、液体溶液、ペースト、ヒドロゲルの形態であってもよいか、または、限定されないが、フォームマトリックスを含むかまたはリザーバーに支持された基材内に埋め込まれてもよい。
【0073】
錐体細胞をin vivoで接触させる場合、核酸発現カセット、発現ベクター、組換え宿主細胞、またはrAAV粒子は眼への送達に応じて適切に処理することができる。ウイルスストックは、一般的に安全、無毒性、かつ望ましく、霊長類への使用が許容される賦形剤を含む製剤を調製するのに有用な薬学的に許容される担体、希釈剤および試薬と組み合わせることができる。そのような賦形剤は、固体、液体、半固体、またはエアロゾル組成物の場合は気体であり得る。そのような担体または希釈剤の例として、水、食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、および5%ヒト血清アルブミンが挙げられるが、これらに限定されない。補足的な活性化合物も製剤に組み入れることができる。製剤に使用される溶液または懸濁液は、注射用水、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒等の無菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベン等の抗菌化合物;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム等の抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のキレート化合物;酢酸塩、クエン酸塩、またはリン酸塩等の緩衝液;凝集を防ぐためのTween 20等の洗剤;塩化ナトリウムまたはデキストロース等の張度を調整するための化合物を含み得る。pHは、塩酸または水酸化ナトリウム等の酸または塩基を用いて調整することができる。
【0074】
本開示における内服に適した医薬組成物は、滅菌された水溶液もしくは分散剤、または滅菌された注射用溶液もしくは分散剤を即時調製するための滅菌粉末をさらに含む。全ての場合において、組成物は滅菌され、容易な注射可能性が存在する程度に流動性であるべきである。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)、およびそれらの適切な混合物を含む溶媒または分散媒であってもよい。適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティングの使用によって、分散剤の場合は必要とされる粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持することができる。微生物作用の防止は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサール等によって達成することができる。多くの場合、等張剤、例えば糖、マンニトール、ソルビトール等の多価アルコール、塩化ナトリウムを組成物に含めることが好ましい。内部組成物の吸収の延長は、吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中に含めることによってもたらすことができる。
【0075】
一実施形態において、活性化合物は、インプラントおよびマイクロカプセル化送達系を含む、体からの急速な排出から化合物を保護する担体、例えば、徐放製剤とともに調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸等の生分解性の生体適合性ポリマーを使用することができる。そのような製剤の調製方法は、当業者には明らかであろう。また、材料は商業的に入手することもできる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を用いて感染細胞を標的とするリポソームを含む)もまた、薬学的に許容される担体として使用することができる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されているように、当業者に既知の方法に従って調製することができる。
【0076】
投与を容易にするため、および投薬量を均一にするために、組成物を投薬単位形態に製剤化することが特に有利である。本明細書で使用される投薬単位形態は、治療される対象の単位投与量として適した物理的に個別の単位を指し、各単位は、必要とされる薬学的担体と関連して所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性化合物を含む。本開示の投薬単位形態の仕様は、活性化合物の独特の特徴および達成されるべき特定の治療効果、ならびに固体の治療のためにそのような活性化合物を配合する技術分野における固有の限界によって決定され、またそれらに直接依存する。
【0077】
医薬組成物は、容器、パック、またはディスペンサー、例えば注射器、例えば充填済み注射器に、投与説明書とともに含まれてもよい。本開示の医薬組成物は、任意の薬学的に許容される塩、エステル、もしくはそのようなエステルの塩、または、ヒトを含む動物に投与されると、生物学的に活性な代謝産物もしくはその残渣を(直接的または間接的に)提供することが可能な任意の他の化合物を包含する。したがって、例えば、本開示はまた、本開示の化合物のプロドラッグおよび薬学的に許容される塩、そのようなプロドラッグの薬学的に許容される塩、ならびに他の生物学的等価物にも関する。「プロドラッグ」という用語は、内在性酵素もしくは他の化学物質の作用および/または条件によって、体内またはその細胞内で活性形態(すなわち薬物)に変換される不活性形態で調製される治療薬を示す。「薬学的に許容される塩」という用語は、本開示の化合物の生理学的および薬学的に許容される塩、すなわち、親化合物の所望の生物活性を保持し、それに対して望ましくない毒性効果を及ぼさない塩を指す。
【0078】
薬学的に許容される塩基付加塩は、アルカリおよびアルカリ土類金属または有機アミン等の金属またはアミンで形成される。カチオンとして使用される金属は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等を含む。アミンは、N−N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン、およびプロカインを含む(例えば、Berge et al.,“Pharmaceutical Salts,”J.Pharma Sci.,1977,66,119を参照)。前記酸性化合物の塩基付加塩は、従来の方法で、遊離酸形態を十分な量の所望の塩基と接触させて塩を生成することにより調製される。遊離酸形態は、従来の方法で、塩形態を酸と接触させ、遊離酸を単離することによって再生することができる。遊離酸形態は、極性溶媒中の溶解度等の特定の物理的特性において、それらのそれぞれの塩形態とは若干異なるが、他の点において、塩は、本開示の目的のために、それらのそれぞれの遊離酸と同等である。
【0079】
別の態様においては、本開示は、1つ以上の錐体細胞と、有効量の核酸発現カセット、組換え宿主細胞、rAAV、医薬組成物、または本開示の任意の実施形態もしくは実施形態の組み合わせの製剤とを接触させることを含む、錐体細胞においてタンパク質等の遺伝子産物を発現させるための方法であって、コード領域によってコードされるタンパク質等の遺伝子産物が、1つ以上の錐体細胞において検出可能なレベルで発現する、方法を提供する。
【0080】
別の態様において、本開示は、哺乳動物の眼に有効量の核酸発現カセット、組換え細胞、rAAV、医薬組成物、または本開示の任意の実施形態もしくは実施形態の組み合わせの製剤を投与することを含む、錐体細胞障害の治療または予防を必要とする哺乳動物における錐体細胞障害の治療または予防のための方法であって、コード領域は、治療遺伝子産物をコードする核酸配列を含む、方法を提供する。
【0081】
「治療」、「治療すること」等の用語は、本明細書では、所望の薬理的および/または生理的効果を得ることを一般的に意味するために本明細書で使用される。効果は、疾患もしくはその症状を完全もしくは部分的に予防する、例えば、対象において疾患もしくはその症状が発生する可能性を低減するという観点から予防的であってもよく、かつ/または疾患および/もしくはその疾患に起因する有害作用の部分的もしくは完全な治癒という観点から治療的であってもよい。本明細書で使用される「治療」は、哺乳動物における疾患のいかなる治療も網羅し、(a)疾患に罹患する素因があり得るが、まだそれを有すると診断されていない対象において、その疾患の発生を予防すること、(b)疾患を阻害すること、すなわち、その発症を阻止すること、または(c)疾患を軽減すること、すなわち、疾患の退行を引き起こすことを含む。治療薬は、疾患または損傷の発症前、発症中または発症後に投与することができる。治療が患者の望ましくない臨床症状を安定化または軽減させる、進行中の疾患の治療は、特に興味深い。そのような治療は、患部組織の機能が完全に失われる前に行うことが望ましい。主題の治療は、望ましくは、疾患の症候性段階中に、また場合によっては、疾患の症候性段階後に投与される。
【0082】
「個体」、「宿主」、「対象」、および「患者」という用語は、本明細書において互換的に使用され、哺乳動物、例えばげっ歯類(例えば、マウス、ラット、スナネズミ)、ウサギ、ネコ、イヌ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ウマ、ウシ、または霊長類を指す。特定の実施形態において、対象は、狭鼻小目の霊長類である。当該技術分野で既知であるように、狭鼻小目は高等霊長類の2つの亜門の1つであり(もう1つは新世界ザル)、旧世界ザルおよび類人猿が含まれ、さらに小型類人猿またはテナガザル、ならびにオランウータン、ゴリラ、チンパンジー、ボノボ、およびヒトからなる大型類人猿に分割される。さらに好ましい実施形態において、霊長類はヒトである。
【0083】
様々な実施形態において、錐体細胞障害は、黄斑ジストロフィー、色覚障害、または中心黄斑の視覚障害からなる群から選択される。様々な実施形態において、錐体細胞障害は、1色覚、青錐体1色覚、赤緑色覚異常、1型色覚、2型色覚、3型色覚、黄斑ジストロフィー、例えば、シュタルガルト黄斑ジストロフィー、錐体ジストロフィー、錐体杆体ジストロフィー、X連鎖性錐体ジストロフィー、脊髄小脳失調症7型、およびバルデ・ビードル症候群−1、加齢黄斑変性症、黄斑部毛細血管拡張症、網膜色素変性症、糖尿病性網膜症、網膜静脈閉塞症、緑内障、ソースビー眼底ジストロフィー、成人卵黄様黄斑ジストロフィー、ベスト病、杆体錐体ジストロフィー、レーバー先天性黒内障、ならびにX連鎖性網膜分離症、ボーンホルム眼病、および近視を伴うX連鎖性錐体機能不全症候群からなる群から選択される。さらなる実施形態において、錐体細胞障害は、赤緑色覚異常、青錐体1色覚、ボーンホルム眼病、近視を伴うX連鎖性錐体機能不全症候群、ならびにX連鎖性錐体ジストロフィー、X連鎖性網膜分離症、常染色体劣性網膜色素変性症、加齢黄斑変性症(AMD;湿性または乾性)からなる群から選択される。
【0084】
遺伝子産物の発現を促進するために、本明細書の教示に照らしてユーザーが適切であるとみなす組成物が投与され得る。組成物は、対象に1回以上、例えば1回、2回、3回、または4回以上提供されてもよい。典型的には、細胞における遺伝子産物の発現をもたらすために有効量の組成物が提供される。有効量は、例えば、遺伝子産物の存在またはレベルを検出することによって、錐体細胞の生存能または機能に対する効果を検出すること等によって、経験的に容易に決定することができる。典型的には、有効量の組成物は、同じ量の当該技術分野で既知のポリヌクレオチドカセット、例えば、pR2.1(配列番号50のヌクレオチド1〜2274)、pR1.7、pR1.5、pR1.1、またはIRBP/GNAT2カセットよりも高い、錐体細胞における遺伝子産物の発現を促進する。典型的には、発現は、当該技術分野で既知の参照または対照ポリヌクレオチドカセットからの発現と比較して2倍以上、例えば、3倍以上、4倍以上、または5倍以上、ある場合には、10倍以上、20倍以上、または50倍以上、例えば、100倍増強される。
【0085】
組成物は、任意の適切な方法によって対象の網膜に投与され得る。例えば、組成物は、硝子体内注射または網膜下注射によって眼内に投与され得る。硝子体内注射または網膜下注射によってベクターを送達するための一般的な方法は、以下の簡単な概要によって説明され得る。これらの例は、単に方法の特定の機能を説明することを意図するものであり、決して限定することを意図するものではない。
【0086】
網膜下投与の場合、組成物は、手術用顕微鏡を使用した直接観察下で網膜下に注射される懸濁液の形態で送達することができる。この手順は、硝子体切除術と、それに続いて、細いカニューレを使用して1つ以上の小さな網膜切開部を通して組成物懸濁物を網膜下腔に注射することとを伴い得る。簡単に述べると、手術全体を通して、(例えば、食塩水の)注入によって正常な眼球体積を維持するように、注入カニューレを定位置に縫合することができる。硝子体切除術は、適切なボアサイズ(例えば、20〜27ゲージ)のカニューレを使用して行われ、取り出した硝子体ゲルの容積が、注入カニューレからの食塩水または他の等張液の注入によって置き換えられる。硝子体切除術は、(1)その皮質(後部硝子体膜)の除去によってカニューレによる網膜への侵入が容易になり、(2)その除去および流体(例えば、食塩水)との置き換えにより、ベクターの眼内注射に対応するための空間が形成され、かつ(3)その制御された除去により、網膜裂孔および予定外の網膜剥離の可能性が低減するため、有利に実施される。
【0087】
硝子体内投与の場合、組成物は懸濁液の形態で送達することができる。最初に、眼の表面に局所麻酔薬を適用し、その後、局所消毒液を適用する。器具を使用して、または使用せずに、眼を開いた状態に保持し、直接観察下で、短く細い、例えば30ゲージの針を用いて、強膜を通して対象の目の硝子体腔に組成物を注入する。硝子体内投与は、一般的に忍容性が良好である。手順の最後に、注射部位に軽度の発赤が生じることがある。時々圧痛があるが、ほとんどの患者はいずれの疼痛も報告していない。この手順の後は、眼帯または眼球保護帯は必要ではなく、また、活動が制限されることはない。感染防止の助けとなるように、抗生物質の点眼薬が数日間処方されることもある。
【0088】
本開示の方法および組成物は、少なくとも部分的に、錐体視細胞の遺伝子治療によって対応することができる任意の状態の治療に利用される。したがって、本開示の組成物および方法は、錐体細胞療法を必要とする個体の治療に利用される。錐体細胞療法を必要とする人とは、錐体細胞障害を有するか、またはそれを発症するリスクがある個体を意味する。「錐体細胞障害」とは、網膜錐体細胞に影響を及ぼすあらゆる障害を意味し、限定されないが、錐体細胞内の欠陥に関連する眼の視覚障害、すなわち、錐体固有の欠陥、例えば、シュタルガルト黄斑ジストロフィー、錐体ジストロフィー、錐体杆体ジストロフィー、脊髄小脳失調症7型、およびバルデ・ビードル症候群−1等の黄斑ジストロフィー;ならびに1色覚、不完全1色覚、青錐体1色覚、ならびに1型色覚、2型色覚、および3型色覚を含む色覚障害;ならびに錐体細胞を標的とすることによって治療され得る中心黄斑の視覚障害(霊長類)、例えば、加齢黄斑変性症、黄斑部毛細血管拡張症、網膜色素変性症、糖尿病性網膜症、網膜静脈閉塞症、緑内障、ソースビー眼底ジストロフィー、成人卵黄様黄斑ジストロフィー、ベスト病、杆体錐体ジストロフィー、レーバー先天性黒内障、およびX連鎖性網膜分離症を含む。
【0089】
シュタルガルト黄斑ジストロフィーシュタルガルト黄斑ジストロフィーは、シュタルガルト病および黄色斑眼底としても知られており、通常、法的盲に至るまで進行性の視力喪失を引き起こす、若年性黄斑変性症の遺伝性形態である。症状の発現は、通常、6歳〜30歳の年齢である(平均約16歳〜18歳)。ABCA4、CNGB3、ELOVL4、PROM1を含むいくつかの遺伝子の突然変異が、この障害と関連付けられている。症状は、典型的には20歳までに発生し、歪視、盲点、霧視、色覚障害、および薄暗い照明への適応困難を含む。シュタルガルト病の主な症状は、20/50〜20/200の範囲の視力の喪失である。さらに、シュタルガルト病を有する人々は、グレアに対して敏感であり、曇りの日にはいくらか緩和される。黄斑が損傷している場合に視覚が最も顕著に損なわれ、これは、眼底検査によって観察され得る。
【0090】
錐体ジストロフィー錐体ジストロフィー(COD)は、錐体細胞の喪失を特徴とする遺伝性眼疾患である。錐体ジストロフィーの最も一般的な症状は、視力喪失(発症年齢は10代後半から60代までに及ぶ)、明るい光に対する過敏症、色覚不良である。視力は、通常、徐々に悪化するが、20/200まで急速に悪化する可能性があり、その後、より重症の症例では、「指数弁」視力にまで低下する。色覚異常検査表(HRRシリーズ)を使用した色覚検査では、赤色−緑色表および青色−黄色表の両方で多くの誤りが明らかになる。検眼鏡的変化が見られる前に錐体機能の主観的および客観的異常が発見されるため、このジストロフィーは原発性であると考えられている。しかしながら、網膜色素上皮(RPE)が急速に関与するようになり、主に黄斑に影響を及ぼす網膜ジストロフィーがもたらされる。検眼鏡による眼底検査は、錐体ジストロフィーの早期には本質的に正常であり、明確な黄斑変化は、通常、視力喪失のかなり後になって起こる。検眼鏡検査中に見られる最も一般的な種類の黄斑病変は、標的の中心状の外観を有し、中心のより暗い領域を囲む萎縮性色素上皮のドーナツ様区域からなる。別の、より頻度の低い形態の錐体ジストロフィーでは、やや拡散した後極部の萎縮が認められ、黄斑領域に斑状色素が凝集している。稀に、早期段階の患者において、脈絡毛細管の萎縮およびより大きな脈絡膜血管が見られる。蛍光眼底造影法(FA)は、細かすぎて検眼鏡では見ることができない網膜内の早期変化を検出し得るため、錐体ジストロフィーを有することが疑われる人の精密検査を補助するのに有用である。眼底変化が広範であり、また早期段階で診断を行うのが困難であるため、網膜電図検査法(ERG)は、依然として診断を行うための最良の検査である。ERGにおける異常な錐体機能は、明るい部屋で検査を行った場合のシングルフラッシュおよびフリッカー応答の低下によって示される(明順応ERG)。GUCA1A、PDE6C、PDE6H、およびRPGRを含むいくつかの遺伝子の突然変異が、この障害と関連付けられている。
【0091】
錐体杆体ジストロフィー錐体杆体ジストロフィー(CRD、またはCORD)は、色素性網膜症の群に属する遺伝性網膜ジストロフィーである。CRDは、眼底検査で確認できる主に黄斑部に局在化する網膜色素沈着と、錐体細胞および杆体細胞の両方の喪失とを特徴とする。杆体視細胞の一次的喪失から生じ、その後、錐体視細胞の二次的喪失が続く杆体錐体ジストロフィー(RCD)とは対照的に、CRDは、反対の順序の事象を反映する:錐体が一次的に関与するか、または時には錐体および杆体の両方の同時喪失。症状は、視力低下、色覚異常、光嫌悪、および中央視野の感受性低下を含み、その後、周辺視野の進行性の喪失および鳥目が続く。ADAM9、PCDH21、CRX、GUCY2D、PITPNM3、PROM1、PRPH2、RAX2、RIMS1、RPGR、およびRPGRIP1を含むいくつかの遺伝子の突然変異が、この障害と関連付けられている。
【0092】
脊髄小脳失調症7型脊髄小脳失調症は、緩徐進行性の歩行の協調不全を特徴とする進行性の変性遺伝性疾患であり、しばしば、手、発話、および眼球運動の協調不全と関連している。複数の種類のSCAが存在するが、協調性不良に加えて視力の問題が発生し得るという点において、脊髄小脳失調症7型(SCA−7)は、他のほとんどのSCAと異なる。SCA−7は、ATXN7/SCA7遺伝子の常染色体優性変異と関連付けられている。疾患が40歳より前に顕在化する場合、典型的には、協調不全よりもむしろ視覚的な問題が疾患の最も早い徴候である。初期症状は、色の区別が困難であることおよび中心視力の低下を含む。さらに、運動失調の症状(協調不能、緩徐な眼球運動、感覚機能または反射における軽度の変化)が検出可能であり得る。疾患が進行するにつれて、運動制御の喪失、不明瞭な発話、および嚥下困難が顕著になる。
【0093】
バルデ・ビードル症候群−1。バルデ・ビードル症候群−1(BBS−1)は、家族内および家族間で観察される、様々な発現度および広範な臨床的変動性を有する多面的障害である。主な臨床的特徴は杆体錐体ジストロフィーであり、鳥目が先行する小児期発症の視力喪失;軸後多指症;乳児期に顕在化し、成人期を通して問題であり続ける体幹肥満;全てではないが一部の個体における特定の学習困難;男性性器形成不全および女性の複雑泌尿生殖器奇形;ならびに罹患率および死亡率の主因である腎機能障害を伴う。視力喪失は、バルデ・ビードル症候群の主要な特徴の1つである。夜間視力の問題は、小児期中期までに明らかになり、その後、周辺視野に盲点が発生する。時間の経過とともに、これらの盲点が拡大し、合わさってトンネル視野を生じる。また、バルデ・ビードル症候群を有するほとんどの人々には、中心視のぼやけ(視力不良)が発生し、青年期または成人早期に法定盲となる。バルデ・ビードル症候群は、繊毛機能において重要な役割を果たすことが分かっているかまたは疑われる少なくとも14の異なる遺伝子(しばしばBBS遺伝子と称される)の突然変異から生じる可能性があり、BBS1およびBBS10における突然変異が最も一般的である。
【0094】
1色覚1色覚、または杆体1色覚は、対象が色知覚の完全な欠如を経験するため、対象には、黒、白、および灰色の濃淡しか見えない障害である。他の症状は、視力低下、羞明、眼振、小さな中心暗点、および偏心固視を含む。この障害は、羞明動作および眼振によって、生後6ヶ月前後の小児において最初に認められることが多い。視力および眼球運動の安定性は、一般に生後6〜7年間で向上する(ただし、20/200付近のままである)。CNGB3、CNGA3、GNAT2、PDE6C、およびPDE6HIの突然変異が、この障害と関連付けられている。
【0095】
不完全1色覚不完全1色覚は、1色覚と類似するが、浸透度が低い。不完全1色覚において、その症状は、減弱した形態であることを除いて完全な1色覚の症状と同様である。不完全1色覚を有する個体は、眼振または羞明を伴ってまたは伴わずに視力が低下する。さらに、これらの個体は、錐体細胞機能の部分的な機能障害のみを示すが、再び杆体細胞機能が保持される。
【0096】
青錐体1色覚青錐体(S錐体)一色覚(BCM)は、約10万人に1人の個体に発症する、稀なX連鎖性先天性定常錐体機能不全症候群である。BCMに罹患する男性は、LおよびMプシン遺伝子の遺伝子座における突然変異に起因して、網膜に機能的な長波長感受性(L)錐体または中波長感受性(M)錐体を有しない。色の識別は出生時から重度に損なわれ、視力は、残っている保存されたS錐体および杆体視細胞から得られる。BCMは、典型的には、視力の低下(6/24から6/60へ)、振子様眼振、羞明を呈し、患者はしばしば近視を有する。杆体特異的かつ最大の網膜電図(ERG)は、通常、明確な異常を示さず、30Hzの錐体ERGは検出することができない。シングルフラッシュ明順応ERGは、たとえ小さくて遅くとも、記録可能であることが多く、S錐体ERGは十分に保存される。
【0097】
色覚異常色覚異常(CVD)、または色覚障害は、通常の照明条件下で色を認識することまたは色差を知覚することができないこと、またはその能力の低下である。色覚異常に罹患している個体は、例えば、カラーERG(cERG)、仮性同色表(石原式検査表、Hardy−Rand−Ritter多色表)、ファンズワース・マンセル100ヒューテスト、ファンズワースのパネルD−15、City University検査、Kollnerの法則等の多くの色覚検査のいずれかを用いてそのように同定され得る。色覚異常の例として、1型色覚、2型色覚、および3型色覚が挙げられる。1型色覚は、1型2色覚(赤色光に対する非感受性)および1型3色覚(赤色光に対する感受性の低下)を含み、L−オプシン遺伝子(OPN1LW)の突然変異と関連付けられている。2型色覚は、2型2色覚(緑色光に対する非感受性)および2型3色覚(緑色光に対する感受性の低下)を含み、M−オプシン遺伝子(OPN1MW)の突然変異と関連付けられている。3型色覚は、3型2色覚(青色光に対する非感受性)および3型3色覚(青色光に対する感受性の低下)を含み、S−オプシン遺伝子(OPN1SW)の突然変異と関連付けられている。
【0098】
加齢黄斑変性症加齢黄斑変性症(AMD)は、50歳を超える人々の視力喪失の主な原因の1つである。AMDは、読書、運転、および顔の認識等の詳細な作業に必要な中心視に主に影響を及ぼす。この状態における視力喪失は、黄斑における視細胞の段階的な劣化に起因する。側方(周辺)視力および夜間視力は、通常影響を受けない。
研究者は、乾性または「非滲出」型、および湿性または「滲出」型もしくは「新生血管」型として知られる加齢黄斑変性症の2つの主要な型について記載しており、これらはどちらも、主題のポリヌクレオチドカセットに関連して遺伝子産物を送達することによって治療することができる。
【0099】
乾性AMDは、網膜色素上皮とその下にある黄斑の脈絡膜との間にドルーゼンと称される黄色の沈着物が蓄積することを特徴とし、それは眼底撮影法によって観察することができる。これは緩徐進行性の視力喪失をもたらす。この状態は、典型的には両眼の視力に影響を及ぼすが、視力喪失は、一方の眼において他方の眼よりも先に起こることが多い。他の変化は、色素変化およびRPE萎縮を含み得る。例えば、ある場合には、中心地図状萎縮、または「GA」と称される網膜色素上皮の萎縮と、それに続く眼の中心部における視細胞の喪失とが観察される。乾性AMDは、CD59および補体カスケード内の遺伝子の突然変異と関連付けられている。
【0100】
湿性AMDは、乾性AMDの進行した状態であり、乾性AMD患者の約10%に起こる。病理学的変化は、網膜色素上皮細胞(RPE)機能障害、RPE下の体液の蓄積、および黄斑領域における脈絡膜血管新生(CNV)を含む。重症の場合、体液漏出、RPEまたは神経網膜脱離および破裂した血管からの出血が起こり得る。湿性AMDの症状は、視覚的な歪み、例えば、直線が波状または湾曲して見えること、出入り口もしくは道路標識が傾いて見えること、または目的物が実際よりも小さくもしくは遠くに見えること;中心視の減退;色の強度もしくは輝度の低下;および視野内の明確に定義された霧視点もしくは盲点を含み得る。発症は突然であり得、急速に悪化し得る。診断は、対象の中心視障害を検査するためのアムスラーグリッド(黄斑変性症は、グリッド内の直線が消えて見える、途切れて見える、または歪んで見える原因となり得る)、血管または網膜の異常を観察するためのフルオレセイン血管造影、および網膜腫脹または漏出血管を検出するための光干渉断層撮影法の使用を含み得る。多数の細胞因子がCNVの発生に関係があるとされており、中でも、血管内皮増殖因子(VEGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、色素上皮由来因子(PEDF)、低酸素症誘導性因子(HIF)、アンジオポエチン(Ang)、ならびに他のサイトカイン、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)および他が挙げられる。1]
【0101】
黄斑部毛細血管拡張症黄斑部毛細血管拡張症(MacTel)は、黄斑の傍中心窩領域にある病理学的に拡張した血管(毛細血管拡張症)の一形態である。液体で満たされた嚢胞の発達に起因して、組織が劣化し、網膜構造が瘢痕化し、視細胞の栄養が損なわれ、視力が永久的に破壊される。MacTelには、1型および2型の2つの型が存在する。黄斑部毛細血管拡張症2型は両側性疾患であり、最近、40歳以上の人においてその有病率が0.1%と高いことが示された。生体顕微鏡検査により、網膜透明度の低下、結晶沈着、軽度拡張性の毛細血管、平滑化細動脈、網膜色素プラーク、中心窩萎縮、および新生血管複合体が示され得る。フルオレセイン血管造影は、初期相では小窩に対して主に側頭側に末梢血管拡張性毛細血管を示し、後期相では拡散した過蛍光を示す。高解像度光干渉断層撮影法(OCT)は、視細胞の内側セグメントと外側セグメントとの境界の破壊、内側網膜または外側網膜のレベルでの低反射腔、およびより後期の段階では網膜の萎縮を呈し得る。1型黄斑部毛細血管拡張症では、ほとんどの場合、疾患が一方の眼に発生するため、2型と区別される。MacTelは通常、全盲を引き起こすことはないが、一般的に、10〜20年の期間にわたって、読書および運転視力に必要な中心視の喪失を引き起こす。
【0102】
網膜色素変性症網膜色素変性症(RP)は、中心視の喪失に至る可能性がある、進行性の周辺視覚の喪失および夜間視力障害(夜盲症)を特徴とする、一群の遺伝性障害である。RPの徴候および症状は様々であるが、典型的なものとして、夜盲症(鳥目、最も一般的にはRPにおける最も早期の症状);視力喪失(通常、周辺的であるが、進行した症例では中心視力の喪失);および光視症(光の点滅が見える)が挙げられる。RPは多くの遺伝性疾患の集合であるため、身体所見には著しい変動性が存在する。検眼は、視力および瞳孔反応の評価、ならびに前眼部、網膜、および眼底検査の評価を伴う。ある場合には、RPは、症候群、例えば、聴力喪失にも関連する症候群(アッシャー症候群、ワールデンブルグ症候群、アルポート症候群、レフサム病);カーンズ・セイヤー症候群(外眼筋麻痺、眼瞼下垂、心ブロック、および色素性網膜症);無βリポタンパク質血症(脂肪吸収不全症、脂溶性ビタミン欠乏症、脊髄小脳変性症、および色素性網膜変性);ムコ多糖症(例えば、ハーラー症候群、シャイエ症候群、サンフィリポ症候群);バルデ・ビードル症候群(多指症、体幹肥満、腎機能障害、低身長、および色素性網膜症);ならびに神経セロイドリポフスチン沈着症(認知症、発作、および色素性網膜症;幼児期型はヤンスキー・ビールショウスキー病として知られ、若年期型はフォークト・スピールマイヤー・バッテン病であり、成人期形態はクフス症候群である)の一態様である。網膜色素変性症は、RHO、RP2、RPGR、RPGRIP1、PDE6A、PDE6B、MERTK、PRPH2、CNGB1、USH2A、ABCA4、BBS遺伝子の突然変異と最も一般的に関連付けられる。
【0103】
糖尿病性網膜症糖尿病性網膜症(DR)は、糖尿病の合併症によって引き起こされる網膜に対する損傷であり、最終的には失明をもたらし得る。理論に束縛されることを望むものではないが、高血糖によって誘導される壁内周皮細胞死および基底膜の肥厚が、血管壁の機能不全を引き起こすと考えられる。これらの損傷は、血液−網膜関門の形成を変化させ、また網膜血管をより透過性にする。
【0104】
糖尿病性網膜症には、非増殖性糖尿病性網膜症(NPDR)、および増殖性糖尿病性網膜症(PDR)の2つの段階がある。非増殖性糖尿病性網膜症は、糖尿病性網膜症の第1段階であり、眼底検査によって診断され、糖尿病と併存する。視力低下の場合、眼の後部の血管および存在し得るあらゆる網膜虚血を可視化するために、蛍光眼底造影が行われ得る。糖尿病を有する全ての人々はNPDRを発症するリスクがあるため、主題のベクターを用いた予防的治療の候補となる。増殖性糖尿病性網膜症は、糖尿病性網膜症の第2段階であり、網膜の血管新生、硝子体出血、および霧視を特徴とする。ある場合には、血管結合組織増殖が牽引性網膜剥離を引き起こす。ある場合には、血管が前房隅角にまで成長し、血管新生緑内障を引き起こす可能性がある。NPDRを有する個体は、PDRを発生するリスクが高いため、主題のベクターを用いた予防的治療の候補となる。
【0105】
糖尿病性黄斑浮腫糖尿病性黄斑浮腫(DME)は、少なくとも20年間糖尿病を有している患者のほぼ30%に発症する、糖尿病性網膜症の進行した視力障害を伴う合併症であり、DRによるほとんどの視力喪失の原因である。DMEは、血液−網膜関門を損なう網膜微小血管の変化から生じ、周囲の網膜への血漿成分の漏出を引き起こし、続いて網膜浮腫を引き起こす。理論に束縛されることを望むものではないが、高血糖症、細胞シグナル伝達経路の持続的な変化、および白血球媒介損傷を伴う慢性的な微小血管炎症が、慢性的な網膜微小血管損傷をもたらし、それがVEGFの眼内レベルの上昇を誘発し、今度はそれが脈管構造の透過性を増加させると考えられる。
【0106】
DMEを発症するリスクのある患者は、長期間糖尿病を有している患者、および重度の高血圧症(高血圧)、体液貯留、低アルブミン血症、または高脂血症のうちの1つ以上を経験している患者を含む。DMEの一般的な症状は、霧視、飛蚊症、複視であり、また、この状態を未治療のまま進行させた場合、最終的には失明である。DMEは、眼底検査によって、黄斑の中心の2つの円の直径以内の網膜肥厚として判断される。用いることができる他の方法として、網膜膨張、嚢胞様浮腫、および漿液性網膜剥離を検出するための光干渉断層撮影法(OCT);浮腫を治療するためにレーザー光凝固が使用される場合、局所な漏出領域と拡散した漏出領域とを区別して局在化し、それによってレーザー光凝固の配置を誘導する蛍光眼底造影;ならびに網膜における長期的な変化を評価するために使用することができる立体カラー眼底写真が挙げられる。特に、黄斑浮腫の進行を追跡し、主題の医薬組成物の投与後のその治療を観察するために、視力を測定することができる。
【0107】
網膜静脈閉塞症網膜静脈閉塞症(RVO)は、網膜から血液を排出する循環の一部の遮断である。この遮断は、毛細管にせき止められた圧力を引き起こす可能性があり、それにより出血を引き起こし、また流体および他の血液成分の漏出も引き起こし得る。
【0108】
緑内障緑内障は、視神経損傷を引き起こす一群の眼球(眼)障害を表す用語であり、しばしば眼の流体圧(眼圧)(IOP)の上昇と関連付けられる。この障害は、おおまかに、「開放隅角」および「閉塞隅角」(または「隅角閉塞」)緑内障の2つの主要なカテゴリーに分けることができる。開放隅角緑内障は、米国における緑内障の症例の90%を占めている。無痛であり、急性発作はない。唯一の徴候は、徐々に進行する視野喪失、および視神経変化(眼底検査における陥凹乳頭径比の増加)である。閉塞隅角緑内障は、米国では緑内障の症例の10%未満を占めるが、他の国(特にアジア諸国)においては、緑内障の症例の半分ほどを占める。閉塞隅角を有する患者の約10%は、突発的な眼球疼痛、光の周りにハローが見えること、赤目、非常に高い眼内圧(>30mmHg)、悪心および嘔吐、突然の視力低下、ならびに固定した、中等度に散大した瞳孔を特徴とする急性閉塞隅角発作を呈する。また、場合によっては楕円瞳孔と関連付けられる。DLK、NMDA、INOS、CASP−3、Bcl−2、またはBcl−xlによってコードされるタンパク質の活性を調節することで、この状態を治療することができる。
【0109】
ソースビー眼底ジストロフィーソースビー眼底ジストロフィーは、TIMP3遺伝子の突然変異と関連付けられる常染色体優性の網膜疾患である。臨床的には、初期、中周辺部、ドルーゼン、および色覚異常が見られる。鳥目を訴える患者もいる。最も一般的には、主症状は、治療不能な黄斑下血管新生に起因する、30〜40代に顕在化する突発性の視力喪失である。組織学的には、ブルッフ膜のレベルで厚さ30μmの材料を含む集密脂質の蓄積が存在する。
【0110】
卵黄様黄斑ジストロフィー卵黄様黄斑ジストロフィーは、進行性の視力喪失を引き起こす可能性のある遺伝性眼疾患である。卵黄様黄斑ジストロフィーは、黄斑の下にある細胞内の脂肪性黄色色素(リポフスチン)の蓄積と関連している。経時的に、この物質の異常な蓄積が、明瞭な中心視にとって非常に重要な細胞を損傷する可能性がある。その結果、この障害を有する人々は、しばしば中心視を喪失し、視界がぼやけたりまたは歪んだりし得る。卵黄様黄斑ジストロフィーは、典型的には、側方(周辺)視力または夜間に物を見る能力には影響を及ぼさない。研究者らは、類似した特徴を有する2つの型の卵黄様黄斑ジストロフィーについて記載している。早期発症型(ベスト病として知られる)は、通常、小児期に現れる:症状の発現および視力喪失の重症度は大きく異なる。これは、VMD2/BEST1遺伝子の突然変異と関連付けられている。成人発症型(成人卵黄様黄斑ジストロフィー)は、より遅くに、通常は成人期中期に始まり、経時的に緩徐に悪化する視力喪失を引き起こす傾向がある。これは、PRPH2遺伝子の突然変異と関連付けられている。2つの型の卵黄様黄斑ジストロフィーは、それぞれ、眼検査の間に検出することができる黄斑の特徴的な変化を有する。
【0111】
杆体錐体ジストロフィー杆体錐体ジストロフィーは、鳥目および周辺視野の広がりの喪失をもたらす杆体機能不全が、支配的問題であるか、または少なくとも錐体機能不全と同程度に重度に発生しているかのいずれかである、進行性疾患のファミリーである。波状の境界を有するまだらな萎縮が網膜の中周辺部に見られる場合がある。臨床検査によって、黄斑には軽度の病変のみが認められるが、網膜中心部の薄化は全ての症例に見られる。色覚異常は、早期には軽度であり、通常、より重度となる。視野は中等度〜重度に狭窄されるが、より若年の個体には、典型的な輪状暗点が存在する。周辺網膜は「白色点」を含み、多くの場合、白点状網膜炎に見られる網膜の変化に類似している。網膜色素変性症は、この定義に含まれる疾患の主な群であり、全体として、3,500人に約1人が罹患すると推定される。使用される分類基準に応じて、網膜色素変性症患者の約60〜80%が、網膜疾患の明確な杆体錐体ジストロフィーのパターンを有し、他の症候性形態を考慮に入れると、全ての網膜色素変性症の約50〜60%が、杆体錐体ジストロフィーの非症候性カテゴリーに属する。
【0112】
レーバー先天性黒内障レーバー先天性黒内障(LCA)は、典型的には生後1年以内に明らかになる、網膜の重度のジストロフィーである。視覚機能は通常不良であり、多くの場合、眼振、緩慢であるかまたはほぼない瞳孔反応、羞明、強度遠視、および円錐角膜を伴う。視力が20/400より良好であることは滅多にない。特徴的な所見は、眼を突く、圧迫する、および擦ることを含むフランスシェッティ眼指兆候である。眼底の外観は非常に多様である。網膜は、最初は正常に見える場合があるが、小児期後期には、網膜色素変性症を連想させる色素性網膜症が頻繁に観察される。網膜電図(ERG)は、特徴的に「検出不能」または著しく亜正常である。17個の遺伝子の突然変異がLCAを引き起こすことが分かっている:GUCY2D(遺伝子座名:LCA1)、RPE65(LCA2)、SPATA7(LCA3)、AIPL1(LCA4)、LCA5(LCA5)、RPGRIP1(LCA6)、CRX(LCA7)、CRB1(LCA8)、NMNAT1(LCA9)、CEP290(LCA10)、IMPDH1(LCA11)、RD3(LCA12)、RDH12(LCA13)、LRAT(LCA14)、TULP1(LCA15)、KCNJ13(LCA16)、およびIQCB1。総合すると、これらの遺伝子の突然変異が、全LCA診断の半数超を占めることが推定される。LCAの少なくとも1つの他の疾患遺伝子座が報告されているが、その遺伝子は未知である。
【0113】
X連鎖性網膜分離症X連鎖性網膜分離症(XLRS)は、対称性両側性黄斑の関与を特徴とし、10歳までに、場合によっては月齢3ヶ月という早い時期に発症する。眼底検査は、時にスポークホイールパターンのように見える、黄斑におけるスキーシス(網膜の神経線維層の分裂)の領域を示す。主に下側頭への周辺網膜のスキーシスが、個体の約50%に起こる。罹患した男性は、典型的には、20/60〜20/120の視力を有する。視力は多くの場合、10代および20代の間に悪化するが、その後、50代または60代まで比較的安定した状態を保つ。X連鎖性若年性網膜分離症の診断は、眼底所見、電気生理学的検査、および分子遺伝学的検査の結果に基づく。RS1は、X連鎖性若年性網膜分離症に関連することが分かっている唯一の遺伝子である。
【0114】
錐体細胞障害に罹患しているか、または錐体細胞障害を発症するリスクのある個体は、眼底撮影法;光干渉断層撮影法(OCT);補償光学(AO)検眼鏡検査/眼底検査;網膜電図検査、例えば、ERG、カラーERG(cERG);仮性同色表(石原式検査表、Hardy−Rand−Ritter多色表)、ファンズワース・マンセル100ヒューテスト、ファンズワースのパネルD−15、City University検査、Kollnerの法則等の色覚検査;ならびにETDRS文字検査、スネレン視力検査等の視力検査を含むがこれらに限定されない、当該技術分野で既知の、障害の症状を検出するための技術を用いて容易に同定することができる。追加的にまたは代替的に、錐体細胞障害に罹患しているか、または錐体細胞障害を発症するリスクがある個体は、PCR、DNA配列分析、制限消化、サザンブロットハイブリダイゼーション、質量分析法等を含むがこれらに限定されない、当該技術分野で既知の、錐体細胞障害に関連付けられる遺伝子変異を検出するための技術を用いて容易に同定することができる。いくつかの実施形態において、本方法は、錐体細胞治療を必要とする個体を同定するステップを含む。そのような場合、例えば、本明細書に記載の、もしくは当該技術分野で既知の症状を検出することによる、本明細書の通りであるか、もしくは当該技術分野で既知の遺伝子における突然変異を検出することによる、個体が錐体細胞障害の症状(複数可)を有するか、または錐体細胞障害を発症するリスクがあるかを決定するための任意の好都合な方法を用いて、錐体細胞治療を必要とする個体を同定することができる。
【0115】
主題の方法を実施する際、組成物は、典型的には、錐体細胞における遺伝子産物の発現をもたらすのに有効な量で対象の網膜に送達される。いくつかの実施形態において、方法は、錐体細胞における遺伝子産物の発現を検出するステップを含む。特定の実施形態において、方法は、錐体細胞における遺伝子産物の発現を検出するステップを含む。遺伝子産物の発現を検出するための多くの方法が存在し、それらのいずれも主題の実施形態で使用することができる。例えば、発現は、直接的に、すなわち、例えば、RNAレベルで、例えば、RT−PCR、ノーザンブロット、RNAse保護によって、またはタンパク質レベルで、例えば、ウエスタンブロット、ELISA、免疫組織化学検査等によって、遺伝子産物の量を測定することによって検出することができる。別の例として、発現は、間接的に、すなわち、対象における錐体視細胞の生存能または機能に対する遺伝子産物の影響を検出することによって検出することができる。例えば、遺伝子産物によってコードされる遺伝子産物が錐体細胞の生存能を改善する場合、遺伝子産物の発現は、例えば、眼底撮影法、光干渉断層撮影法(OCT)、補償光学(AO)検眼鏡検査/眼底検査等によって錐体細胞の生存能における改善を検出することによって検出することができる。遺伝子産物によってコードされる遺伝子産物が錐体細胞の活性を変化させる場合、遺伝子産物の発現は、送達されたポリヌクレオチドの存在を検出する方法として、例えば、網膜電図(ERG)およびカラーERG(cERG);仮性同色表(石原式検査表、Hardy−Rand−Ritter多色表)、ファンズワース・マンセル100ヒューテスト、ファンズワースのパネルD−15、City University検査、Kollnerの法則等の色覚検査;ならびにETDRS文字検査、スネレン視力検査等の視力検査によって、錐体細胞の活性の変化を検出することによって検出することができる。ある場合には、生存能の改善および錐体細胞機能の変化の両方が検出され得る。
【0116】
いくつかの実施形態において、方法は、治療効果、例えば、障害の発症防止、障害の進行停止、障害の進行逆転等をもたらす。いくつかの実施形態において、主題の方法は、治療効果が達成されたことを検出するステップを含む。当業者は、そのような治療有効性の尺度が改変される特定の疾患に適用可能であることを理解し、治療有効性の測定に使用するための適切な検出方法を認識するであろう。例えば、黄斑変性症を治療する際の治療有効性は、例えば、眼底撮影法、OCT、またはAOによって、主題の組成物の投与後の検査結果を主題の組成物の投与前の検査結果と比較することによって観察され得る効果である、黄斑変性症の速度の低減または黄斑変性症の進行の休止として観察され得る。別の例として、進行性錐体機能不全を治療する際の治療有効性は、例えば、ERGおよび/もしくはcERG;色覚検査;ならびに/または視力検査によって、例えば、主題の組成物の投与後の検査結果を主題の組成物の投与前の検査結果と比較し、錐体の生存能および/または機能の変化を検出することによって観察され得る効果である、錐体機能不全の進行速度の低減として、錐体機能不全の進行の休止として、または錐体機能の改善として、観察することができる。第3の例として、色覚異常を治療する際の治療有効性は、例えば、cERGおよび色覚検査によって、例えば、主題の組成物の投与後の検査結果を主題の組成物の投与前の検査結果と比較し、錐体の生存能および/または機能の変化を検出することによって観察され得る効果である、個体の色知覚(例えば、赤色波長の知覚、緑色波長の知覚、青色波長の知覚)における変化として観察され得る。
【0117】
ある場合には、発現の変化は、主題の組成物の投与後2週間以上後に、例えば3、4、5、または6週間以上後、例えば2ヶ月以上後、例えば4、6、8、または10ヶ月以上後、ある場合には1年以上後、例えば2、3、4、または5年後、ある特定の場合には5年超後に観察される。ある場合には、治療効果は、主題のrAAVの投与後2週間以上後に、例えば3、4、5、または6週間以上後、例えば2ヶ月以上後、例えば4、6、8、または10ヶ月以上後、ある場合には1年以上後、例えば2、3、4、または5年後、ある特定の場合には5年超後に観察される。
【0118】
典型的には、主題の組成物が本開示の主題のポリヌクレオチドカセットを含むrAAVである場合、変化を達成するための有効量は、約1x10
4個以上の主題のrAAVのベクターゲノム、例えば、1x10
5個以上のベクターゲノム、例えば、1x10
6個、1x10
7個、1x10
8個以上のベクターゲノム、場合によっては、1x10
9個、1x10
10個、1x10
11個、1x10
12個、または1x10
13個のベクターゲノム、ある特定の場合には1x10
14以下のベクターゲノムであるだろう。場合によっては、送達されるベクターゲノムの量は、最大でも1×10
15個のベクターゲノム、例えば1×10
14個以下のベクターゲノム、例えば1x10
13個、1x10
12個、1x10
11個、1x10
10個、または1x10
9個以下のベクターゲノム、ある特定の場合には、1x10
8個、1x10
7個、1x10
6個、または1x10
5個以下のベクターゲノム、また典型的には1x10
4個以上のベクターゲノムである。場合によっては、送達されるベクターゲノムの量は1x10
10〜1x10
11個のベクターゲノムである。場合によっては、送達されるベクターゲノムの量は1x10
10〜3x10
12個のベクターゲノムである。場合によっては、送達されるベクターゲノムの量は、1x10
9〜3x10
13個のベクターゲノムである。場合によっては、送達されるベクターゲノムの量は、1x10
8〜3x10
14個のベクターゲノムである。場合によっては、送達されるベクターゲノムの量は、1x10
6〜1x10
15個のベクターゲノムである。
【0119】
場合によっては、投与される医薬組成物の量は、感染多重度(MOI)を使用して測定することができる。場合によっては、MOIは、核酸が送達され得る細胞に対するベクターまたはウイルスゲノムの比または倍率を指し得る。場合によっては、MOIは1x10
6であり得る。場合によっては、MOIは1x10
5〜1x10
7であり得る。場合によっては、MOIは1x10
4〜1x10
8であり得る。場合によっては、本開示の組換えウイルスは、少なくとも約1x10
1、1x10
2、1x10
3、1x10
4、1x10
5、1x10
6、1x10
7、1x10
8、1x10
9、1x10
10、1x10
11、1x10
12、1x10
13、1x10
14、1x10
15、1x10
16、1x10
17、および1x10
18MOIであり得る。場合によっては、本開示の組換えウイルスは、1x10
8〜3x10
14MOIである。場合によっては、本開示の組換えウイルスは、最大でも約1x10
1、1x10
2、1x10
3、1x10
4、1x10
5、1x10
6、1x10
7、1x10
8、1x10
9、1x10
10、1x10
11、1x10
12、1x10
13、1x10
14、1x10
15、1x10
16、1x10
17、および1x10
18MOIであり得る。
【0120】
いくつかの態様において、医薬組成物の量は、約1x10
6〜約1x10
15個の組み換えウイルス粒子、約1x10
7〜約1x10
14個の組み換えウイルス粒子、約1x10
8〜約1x10
13個の組み換えウイルス粒子、約1x10
9〜約3x10
12個の組み換えウイルス粒子、または約1x10
10〜約3x10
12個の組み換えウイルス粒子を含む。
【0121】
個々の用量は、典型的には、対象に測定可能な効果をもたらすのに必要な量以上であり、主題の組成物またはその副産物の吸収、分布、代謝、および排出(「ADME」)の薬物動態学および薬理学に基づいて、したがって、対象における組成物の廃棄に基づいて、決定することができる。これには投与経路および投薬量の考察の考察が含まれるが、それらは網膜下への適用(主に局所的効果のために作用が所望される場所に直接適用される)、硝子体内への適用(汎網膜効果のために硝子体内に適用される)、または非経口的適用(全身経路、例えば、静脈内、筋肉内等によって適用される)のために調整することができる。有効量の用量および/または投薬レジメンは、前臨床アッセイから、安全性試験および漸増試験および用量範囲試験から、個々の臨床医と患者の関係から、経験的に容易に決定することができる。
【0122】
別の態様において、本開示は、以下からなる群から選択される配列を含む単離された核酸を提供する:
(i)配列10(配列番号10)、および
(ii)配列12(配列番号12)。
これらの配列は、前述の変異オプシンイントロンであり、オプシン遺伝子等の目的の遺伝子の発現を改善するために様々な構築物において使用することができる。
【数88】
【数89】
【0123】
別の態様において、本開示は、一般式A−Bの核酸配列を含む単離された核酸を提供し、Aは、アミノ酸配列MSRKIEGFLLLLLFGYEATLGLSS(配列番号21)を含む、それから本質的になる、またはそれからなるポリペプチドをコードし、Bは、錐体細胞障害を治療するためのポリペプチドをコードする。これらの核酸は、錐体細胞障害の治療的処置に特に有用な遺伝子産物をコードする。
【0124】
一実施形態において、Aドメインは、核酸配列
ATGTCACGCAAGATAGAAGGCTTTTTGTTATTACTTCTCTTTGGCTATGAAGCCACATTGGGATTATCGTCT(配列番号100)よってコードされる。
【0125】
錐体細胞障害を治療するためのポリペプチドは、本明細書に開示されるもののいずれか、例えばOPN1LW/MW、アフリベルセプト、もしくは修飾アフリベルセプト、またはその機能的断片、誘導体、もしくは変異体であり得る。一実施形態において、Bは、以下の配列を含むか、またはそれからなり:
【数90】
括弧内の残基は、異なる終止コドンに修飾されるか、または存在しない場合がある(ポリペプチドが融合タンパク質として発現される場合等)。
【0126】
別の実施形態において、核酸は、以下のアミノ酸配列、またはその機能的断片、誘導体、もしくは変異体を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる修飾アフリベルセプトポリペプチドをコードする:
【数91】
【0127】
別の態様において、以下のアミノ酸配列、またはその機能的断片、誘導体、もしくは変異体を含むか、それから本質的になるか、またはそれからなる修飾アフリベルセプトポリペプチドが提供される:
【数92】
【実施例】
【0128】
治療用膜結合タンパク質および分泌タンパク質の大幅に増強された機能的発現を相乗的にもたらす組み合わせを体系的に発見するために、発現ベクターの様々なエレメントを特異的に修飾した。このプロセスで操作されたエレメントは、改善されたエンハンサーと、例えば、長波長(L)および中波長(M)の錐体視細胞特異的発現を駆動するために使用することができる改善された近位プロモーターとを含み、転写開始シグナルおよび翻訳シグナル(コザック配列)、ネイティブオプシンポリアデニル化シグナル、2つの異なる改善されたイントロン、転写開始断片、およびウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)を含む3’および5’非翻訳領域の改善を含む。
【0129】
ここで2つの具体的な例を示す:1つは膜結合タンパク質に関し、その例はヒトL錐体オプシン中のタンパク質である。2つ目の例は分泌タンパク質であり、その例は血管内皮増殖因子トラップ(VEGFトラップ)である。これらの試薬を用いて様々な試験を行う際、機能性タンパク質に発現または機能に大幅に干渉しない蛍光タグが付いているバージョンを有すると有用である。したがって、治療用バージョンに加えて、オプシンの場合はGFPで、VEGFトラップの場合はシトリンで治療用タンパク質がタグ付けされた試薬を含めた。最後に、効率的なmRNAスプライシングは効率的な遺伝子発現の鍵であり、発現カセットに含まれるイントロンは大きな利益を提供する。また、カセットに含まれるウイルス配列が遺伝子サイレンシングの標的となり、導入遺伝子の長期発現に有害であり得るという懸念も存在する。したがって、我々は、1つはウイルスのイントロンを有し、2つ目の選択肢は真核生物のイントロンを用いるという、2つの異なるバージョンの試薬を含める。
【0130】
眼の硝子体への注射から霊長類の黄斑の錐体視細胞における治療用タンパク質のロバストな発現を初めて可能にする試薬が本明細書に開示される。これらの試薬は、赤緑色覚異常の治療において、また、X染色体遺伝子OPN1LWおよびOPN1MWの突然変異によって引き起こされる重度の視覚障害を救済するための用途を有する。分泌タンパク質の発現を媒介することにより、これらは遺伝子治療によるヒト黄斑の疾患の治療における用途を有し、それによって網膜下注射の必要性を排除することが保証され、関連するリスクを回避することができる。
錐体視細胞で治療遺伝子を発現する発現カセットを作製するための例示的なプロセス
【0131】
本明細書に記載の発現カセットの作製に使用される一般的なパーツリストは以下を含む:
A.L/M錐体視細胞において選択的かつロバストに発現を達成するために必要な調節エレメント
a.遺伝子座制御領域(LCR)を切断して、発現カセットで使用するための短いLCR(配列2;(配列番号2))を作製した。
b.OPN1LW遺伝子のプロモーターを修飾して、2つの最適化されたLプロモーターを作製した。
i.イントロンがプロモーターの直後に続く場合に使用される修飾されたLプロモーターv1.0(配列4)(配列番号4)
ii.治療遺伝子コード領域がプロモーターの直後に続く場合に使用される修飾されたLプロモーターv2.0(配列5)(配列番号5)
B.1つまたは2つのイントロン。イントロンは高レベルの転写を達成するのに有用であるが、その位置および配列が転写に悪影響を与える可能性もある。修飾されたイントロンを新しい発現カセットに使用した。
a.SV40ミニイントロン(配列6;(配列番号6))
b.pFLAREイントロン1および2(ヒトβグロビン遺伝子に由来)(配列7(配列番号7)および8(配列番号8))
c.修飾されたOPN1LW/OPN1MWミニイントロン2およびミニイントロン3(配列10(配列番号10)および12(配列番号12))。
C.効率的な転写および翻訳に有用な調節エレメント(一般)
a.翻訳開始のためのコザックコンセンサス配列
b.ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)、特に、効果的かつ転写を促進することが示されている完全な3成分WPREのサブコンポーネント(配列15;(配列番号15))。
c.ネイティブオプシン遺伝子ポリアデニル化シグナル、およびポリAテールがmRNAに付加される部位を含むOPN1LW遺伝子の拡張3’非翻訳領域(配列16;(配列番号16))
【0132】
2つの治療遺伝子カテゴリー(L/Mオプシン、またはVEGFトラップ)に特有のパーツリストは以下を含む:
a.OPN1LW/MW遺伝子およびcDNA(3’非翻訳領域および3’UTRの3’側の追加の隣接するDNAを含む)(配列13は、OPN1LWが5’非翻訳領域(UTR)なしで使用される例である)
b.視細胞からの網膜分離症(RS1)の分泌に関与するシグナルペプチドの遺伝暗号(配列14に強調表示)
c.VEGFR1ドメイン2、VEGFR2ドメイン3、およびIgG1 FCを含むアフリベルセプトの部分的配列(配列14)
【0133】
錐体視細胞で治療遺伝子を発現させるための発現カセットの例示的な手順:
A.SV40ミニイントロンを使用する発現カセット
a.上流および下流の調節モジュールは次のように構築した:
上流の調節モジュール:短いLCR、最適化されたLプロモーターv1.0およびSV40ミニイントロン、ならびに部分的なコザック配列(GCCGCCACC)を5’から3’の順序で結合した。
下流の調節モジュール:短いWPREおよびオプシンの拡張3’UTRを、5’から3’の順序で結合した。
b.上流の調節モジュールを5’側の治療遺伝子に結合し、下流の調節モジュールを3’側の治療遺伝子に結合することにより、完全な発現カセットを結合した。最終構築物のエレメントの順序は、5’から3’に向かって、LCR、プロモーター、イントロン、コザック、治療遺伝子、WPRE、および拡張3’UTRであった。治療遺伝子は、例えば、OPN1LW(エクソン1〜6)、OPN1MW(エクソン1〜6)、または修飾アフリベルセプト、またはそれらの機能的断片、誘導体または変異体であり得る。
B.オプシン遺伝子に挿入されたイントロンを使用する治療用オプシン遺伝子の発現カセット
a.上流の調節モジュールは、指定された順序で配列を結合することにより作製した:短いLCRおよび最適化されたLプロモーターv2.0
b.下流の調節モジュールは、SV40ミニイントロンを使用する発現カセットと同様に構築した。
c.イントロンを治療用オプシン遺伝子に挿入した:
i.pFlareイントロンの場合、イントロン1をエクソン3の上流に挿入し、イントロン2をエクソン3の下流に挿入した。
ii.OPN1LW/MWミニイントロンの場合、ミニイントロン2をエクソン3の上流に挿入し、ミニイントロン3をエクソン3の下流に挿入した。
d.上流の調節モジュールを、5’側のイントロンを含む治療用オプシン遺伝子に結合し、下流の調節モジュールを、イントロンを含む治療用遺伝子の3’末端に結合することにより、完全な発現カセットを構築した。
i.pFLAREイントロンを使用した最終的な発現カセットは、5’から3’に向かって次の順序のエレメントを有する:LCR、プロモーター(プロモーターとオプシン遺伝子を結合することにより作製されたコザックを含む)、オプシンのエクソン1および2、pFLAREイントロン1、オプシンのエクソン3、pFLAREイントロン2、オプシンのエクソン4、5、および6、WPRE、拡張オプシン3’UTR。
ii。OPN1LW/MWイントロンを使用した最終的な発現カセットは、5’から3’に向かって次の順序のエレメントを有する:LCR、プロモーター(プロモーターとオプシン遺伝子を結合することにより作製されたコザックを含む)、オプシンのエクソン1および2、OPN1LW/MWミニイントロン2、オプシンのエクソン3、OPN1LW/MWミニイントロン3、オプシンのエクソン4、5および6、WPRE、拡張オプシン3’UTR。
C.実験目的での蛍光タンパク質の遺伝子の挿入:
a.オプシン/GFP融合物GFPコード領域を、オプシン遺伝子翻訳終止コドンのすぐ上流に挿入した。注:オプシンミニイントロンはGFPの潜在的なスプライシング部位を活性化するため、オプシン/GFP融合物はオプシンミニイントロンには好ましくない。1つの選択肢において、OPN1LW/MWコード領域の最後の27ヌクレオチド(TCATCTGTGTCCTCGGTATCGCCTGCA(配列番号71))が、Sオプシンの最後の12アミノ酸をコードするTCAACTGTGTCCTCGACCCAGGTAGGGCCTAAC(配列番号72)に置き換えられた場合、視細胞膜中の融合タンパク質の発現を増強することができる。OPN1LW/MW C末端の最後の10アミノ酸を特定する配列TCATCTGTGTCCTCGGTATCGCCTGCATAG(配列番号73)が、GFPの最後のアミノ酸をコードするコドンの間に挿入されてもよい。挿入は翻訳終止コドンを含む。
i.最終カセットのエレメントの順序は以下の通りである:上流の調節モジュール、SオプシンC末端テールを有する修飾OPN1LW/MW遺伝子、L/MオプシンC末端テールを有する修飾GFP、翻訳終止コドン、下流の調節モジュール。
ii。修飾オプシンC末端の他の組み合わせを使用することが可能である。例えば、オプシンはそのネイティブのC末端を維持してもよく、SオプシンC末端の12アミノ酸をGFPに付加してもよい。重要な要件は、GFPのC末端の膜にオプシンを局在化させるためのシグナルを含めることである。
b.修飾アフリベルセプト/蛍光遺伝子(シトリン)は、融合タンパク質の両方の部分の機能を維持するために、IgG1 FCとシトリンコード領域との間にリンカーを必要とする。使用されたリンカーは、5’ggaggtggaggttctggtggaggaggttcc(配列番号76)である。
構築物の成分は上に詳述されており、配列番号91〜95は、錐体細胞における遺伝子発現を促進するための例示的な完全長発現ベクターである。結果
【0134】
硝子体内注射後に、錐体視細胞特異的プロモーターの制御下での遺伝子治療ベクターからの機能性タンパク質の発現は、以前には実証されていなかった。ここに提示された結果は、本明細書に開示される新しい発現カセットが、げっ歯類および霊長類の眼に硝子体内注射された後、機能性治療用タンパク質のロバストかつ永続的な発現をもたらすことを示している。この実験はまた、修飾アフリベルセプト遺伝子と結合した構築物が、治療分子のロバストで効率的な発現および分泌をもたらし、本明細書に開示されるpFLAREイントロンが、LおよびMオプシンのエクソン3変異によって引き起こされるスプライシング欠陥を克服する非常に強力なスプライシングシグナルを担持することも示しており、したがって、それらはオプシン遺伝子治療に使用するのに理想的なイントロンである。
【0135】
最初の試験では、配列番号91の構築物をHEK293細胞においてAAV2_7m8カプシドにパッケージングし、イオジキサノール密度勾配遠心分離により精製した。約5X10
11のウイルスゲノムを含む3マイクロリットルのウイルス溶液を硝子体に注射した。硝子体内注射は、顕微鏡下で注射を視覚化しながら、ナノリットルのシリンジポンプを使用して行った。注射の1か月後にペントバルビタールナトリウムの過剰投与によりマウスを屠殺し、組織学的検査のために眼を採取し、フラットマウントマウス網膜の共焦点顕微鏡による蛍光画像を得た。
図1は、Lオプシンに対するGFPタグからの蛍光を示している。マウスMオプシンの発現は、上網膜に発現が集中し、下網膜にはほとんどまたは全く発現しない、特徴的な空間的発現パターンを呈していた。(
図1A)配列番号91を担持するAAV2_7m8からの空間的発現パターンのオプシン−GFPが、マウスMオプシンのネイティブな発現パターンに続くことから、配列番号91は、マウス下網膜において優勢なマウスS錐体での発現を駆動しないことが示唆される。(
図1B)
図Aの白い四角で囲まれた領域の拡大図を示しており、配列番号91からのオプシン遺伝子が、外側セグメントと称される細胞の特殊な区画に正しく局在化していたことを示している。
【0136】
2番目の試験では、HEK293細胞において配列番号92をAAV2_7m8キャプシドにパッケージングし、イオジキサノール密度勾配超遠心分離により精製した。シリンジポンプを使用し、顕微鏡で注射を視覚化して、約5X10
11のウイルスゲノムを含む3マイクロリットルのウイルス溶液を硝子体に注射した。マウスをケタミン/キシラジンで麻酔し、網膜電図(ERG)の結果を得た。ERGの場合、634nm(赤)および535nm(緑)が交互になった一連の発光ダイオード(LED)光パルスに応答して、眼の角膜に配置した電極からERG電位を記録した。データを
図2に示す。プロットのY軸は、記録された応答の振幅を赤色LEDに一致させるために必要な緑色LEDの光強度を示す。野生型マウスには長波長感受性(L)の光色素がなく、内因性のM錐体は634nmの光に対する全ての感受性を媒介する。したがって、未処理マウスのベースライン値は、平均して5という比較的低い強度値である。ここに示されるように、処理された動物は、赤色光によって誘発された応答に一致するには、平均して約6倍の緑色光(30に近い値)を必要とした。ここに示される赤色光に対する感受性の劇的な増加は、配列番号92を担持するAAV2−7m8の硝子体内注射による処置の1ヶ月後のヒトL−オプシンの高レベルの機能的発現を示唆している。発現カセットpR2.1およびpMNTCを使用した以前の硝子体内処置では、このERGベースのアッセイを用いていずれの有意な機能的L−オプシン発現も得られなかった。
【0137】
次に、配列番号91を担持するAAV2_7m8の硝子体内注射の1年後にin vivoで撮影された、霊長類の網膜の黄斑のRetCamによる画像を取得した。0.33mlのツベルクリン注射器および25ゲージの針を使用して、ケタミン/キシラジンで麻酔した霊長類の硝子体に、3〜10
12個のウイルスゲノムを含む30マイクロリットルのウイルス溶液を注入した。HEK293細胞において配列番号91をAAV2_7m8キャプシドにパッケージングし、イオジキサノール密度勾配超遠心分離により精製した。結果を
図3に示す。(
図3A)に示すように、処理した眼の眼底の白色光下の画像は、黄斑部の解剖学的特徴を示している。左上に視神経および網膜血管の小さな三日月が見える。中央から右下にかけての暗い領域は黄斑であり、ちょうど中心に中心窩がある。
図3Bは、GFP蛍光を検出できるように青色光下で撮影された、Aに示すのと同じ眼底の領域を示す。中心窩の中心にある明るい白い点(画像の中央から右下)は、霊長類の眼の硝子体に注射されたAAV2_7m8の配列番号91が、永続的でロバストな発現を生じ、その後、中心窩に集中する錐体視細胞中のネイティブLオプシンの空間的発現を生じることを示している。
【0138】
図4は、霊長類の網膜疾患モデルの錐体におけるL−オプシン発現のレスキューを示す。配列番号91を担持するAAV2_7m8の硝子体内注射から1年後の、
図3の霊長類の眼からのGFP発現の共焦点顕微鏡画像。眼の中心窩を通るこの断面は、単一の硝子体内注射によって、中央黄斑部のL/M錐体のほぼ100%にGFPのロバストな発現がもたらされるが、S錐体または杆体視細胞は形質導入されず、該処置によって網膜の神経節細胞等のいずれの他の細胞型も形質導入されないことを示している。画像は、中心窩の右から左に中央揃えされている。白色の標識は、錐体視細胞で特異的に発現するLオプシン−GFP融合導入遺伝子からのネイティブGFP蛍光である。灰色の標識は、網膜の全細胞型の核の視覚化を可能にするDAPIである。結果は、自然発生の霊長類網膜疾患モデルの遺伝子治療の成功を示している。疾患モデルは、大きなコロニーの遺伝学的スクリーニングから同定されたリスザルの赤緑色覚異常である。ヒト赤緑色覚異常の1つの形態と全く同じように、これらの動物は、正常な3色型色覚に必要とされるL錐体(赤錐体)に通常発現するLオプシンを欠いている。処理によってこの霊長類の疾患モデルの欠陥を救済する錐体視細胞におけるヒトL−オプシン導入遺伝子の発現がもたらされた。ここで試験した赤/緑色覚異常「疾患モデル」は、ヒト青錐体1色覚の重要な特徴を示す。青錐体1色覚の症状は、20/50〜20/200の視力不良、羞明、および全色覚異常を含む。赤緑色覚異常と青錐体1色覚に共通する特徴として、両方ともOPN1MW/LW遺伝子の突然変異によって引き起こされる出生時からの定常的障害であること、および両方の障害において錐体が生存可能であることが挙げられ、それらを本明細書に示される遺伝子補充療法の優れた標的にする
【0139】
次に、シトリンに融合したVEGFトラップの合成遺伝子を担持するプラスミドでHEK293T細胞をトランスフェクトして、VEGトラップ−シトリン融合タンパク質を分泌させた。HEK293T細胞を、X軸に示された3つのプラスミドのうちの1つでトランスフェクトした。1つのプラスミドは、ヒトシナプシン1プロモーターの制御下にあるシトリン遺伝子(AAV2シトリン)を含み、別のプラスミドは、
図7Bに示す構築物(VEGFトラップ)を含み、3つ目のプラスミドは、RS1−VEGFトラップを作製するために「sfltシグナル配列」がRS1シグナル配列に置き換えられたことを除いて、
図7Bに示す構築物を含んでいた。VEGFトラップ構築物は配列番号94であり、VEGFトラップシトリン融合物は配列番号93である。トランスフェクションの2日後、培養培地を収集し、細胞破片を遠心分離により除去した。データを
図5に示す。「VEGFトラップ」とラベル付けされたデータは配列番号93の構築物を使用し、「RS1−VEGFトラップ」とラベル付けされたデータは配列番号93の構築物を使用したが、sfltシグナル配列トラベル付けされた領域は、別の分泌分子(RS1)からのシグナル配列によって置き換えられた。培地の蛍光強度は、BioRad Glomax(商標)ルミノメーターを使用して測定した。6つの複製培養物に各プラスミドをトランスフェクトした。バックグラウンドの蛍光レベルを得るために、6つの複製「トランスフェクションなし」対照を測定した。AAV2−シトリンは分泌されるべきではなく、したがって培地は高レベルの発現を示すべきではない。
図5で観察されるように、溶解した細胞からいくらかの蛍光が予想される。トランスフェクトされた細胞がVEGF−シトリン融合タンパク質を培地に分泌した場合に予想されるように、蛍光強度は、VEGFトラップまたはRS1−VEGFトラップのいずれかでトランスフェクトされたHEK293T細胞で最も高かった。VEGFトラップが眼疾患に対して治療効果を発揮するためには、それを発現する細胞から分泌される必要があり、この実験は、VEGFトラップ構築物(配列番号93)が細胞から分泌されることを実証するものである。
【0140】
pFLAREイントロンと称される修飾されたβグロビンイントロンは、OPN1LW cDNAの特定の場所に挿入されると強力なスプライシングシグナルを提供し、オプシン遺伝子を担持するAAVの硝子体内注射によって送達されたオプシン遺伝子の発現を増加させることができる。LIAVAおよびLVAVAと称されるOPN1LWエクソン3の2つの変異体は、エクソン3が最終メッセンジャーRNA(mRNA)に含まれていない完全またはほぼ完全なスプライシング欠陥を示す。
図8に示されるように、エクソン3のどちらかの側にpFLAREイントロンを挿入し、OPN1LW x1/x2から短いWPREを通ってHEK293細胞に伸びる
図8の構築物のセグメントを担持するプラスミドをトランスフェクトすることにより、スプライシングアッセイを実施した。トランスフェクションの24〜48時間後、mRNAを細胞から単離し、ゲル電気泳動およびゲル上で観察されたバンドの直接配列決定により調べた。データを
図6に示す。ゲル上の各対のレーンは、複製トランスフェクションからの結果を示す。レーン1aおよび1bは、スプライシング欠損を示さないバージョンのエクソン3を担持する対象構築物からのmRNAを示す。観察された唯一のバンドがエクソン3を含む完全長mRNAに対応するため、pFLAREイントロンはこの構築物におけるスプライシングに影響を及ぼさない。レーン2aおよび2bは、pFLAREイントロンが、通常は、エクソン3を欠くmRNAのみを生じさせる完全なスプライシング欠損を示す、OPN1LWエクソン3のLIAVAバージョンのスプライシング欠陥を抑制することを示している。同様に、レーン3aおよび3bは、pFLAREイントロンが、エクソン3のLVAVAバージョンに通常観察されるスプライシング欠損を完全に抑制することを示す。レーン4は、スプライシングされていない構築物を示す対照であり、mwは分子量マーカーである。*は完全長mRNAに対応するバンドを示し、**は完全長mRNAより169bp短いエクソン3を欠くmRNAのバンドを示す。これらの観察は、ネイティブイントロンが存在する場合に、LIAVAおよびLVAVA OPN1LWエクソン変異体のスプライシングで観察されるものとは逆である。これらのデータは、pFLAREイントロンが非常に強力なスプライシングシグナルを担持し、したがって、オプシン遺伝子治療に使用するための理想的なイントロンであることを示している。
【0141】
VEGFトラップ−シトリンは、AAV2_7m8キャプシドにパッケージングされた配列番号93の硝子体内注射(
図7B)を受けたマウスの錐体視細胞から分泌される。ウイルスはHEK293細胞を使用して生成し、イオジキサノール勾配超遠心分離によって精製した。麻酔下のマウスに、3マイクロリットルの体積中約8x10
11のウイルスゲノムを硝子体内注射した。約7週間後、ペントバルビタールの過剰投与によりマウスを屠殺し、組織学的検査のために眼を処理した。データを
図9に示す。ホールマウント網膜(
図9A)は、配列番号93からのシトリン蛍光の上から下へ向かうパターンを示し、その後、M−オプシン発現の通常の勾配を示した。シトリン蛍光は、錐体の内側のセグメント(b)を通る光学的断面に見ることができる(
図9B)。11週間後、マウスを屠殺し、組織学的検査のために眼を処理した。注射後11週間で、網膜を通る凍結切片(c、d)はVEGFトラップシトリン発現を示した。最も高い濃度は上網膜で見られた。錐体鞘はピーナッツアグルチニン(d)で染色され、核はDAPI(a、b、d)で染色される。