【課題を解決するための手段】
【0007】
このように、本発明は、外傷、出血、又は敗血症性ショック等の急性疾患を治療するための方法を提供する。方法は、電気信号を印加して、脾臓に分布し、神経血管束(例えば、脾動脈神経)と連携する(関連する)神経の神経活性を刺激することを備え、前記電気信号は急性疾患の治療を示す生理学的パラメータを改善する。前記生理学的パラメータの前記改善は、セ氏36度(°C)乃至38°C間まで体温が回復すること、60乃至100bpmまで心拍数が回復すること、90/60mmHg乃至150/90mmHg間まで全身動脈圧が回復すること、右心房で約5mmHg及び左心房で約8mmHgまで全身静脈圧が回復すること、約3乃至8mmHgの範囲まで中心静脈圧が回復すること、約15mmHgまで肺血圧が回復すること、毎分8乃至14呼吸まで呼吸数が回復すること、94%以上まで酸素飽和度が増加すること、12乃至15kPaまで動脈血酸素分圧が増加すること、4.4乃至6.1kPaまで動脈血二酸化炭素分圧が回復すること、痛覚の緩和、0.5ml/kg/時間以上まで尿量が回復すること、意識レベルが上昇すること、乳酸塩レベルの減少、血糖レベルの変化、血液中の塩基欠乏レベルの変化、及び動脈pHレベルの変化からなる群のいずれかである。
【0008】
本発明はまた、外傷、出血、又は敗血症性ショック等の急性疾患を治療するための方法も提供する。方法は、電気信号を印加して、脾臓に分布し、神経血管束(例えば、脾動脈神経)と連携する神経の神経活性を刺激することを備え、前記電気信号は、急性疾患の治療を示す生理学的パラメータを改善する。前記生理学的パラメータの前記改善は、90/60mmHg乃至150/90mmHg間の全身性動脈血圧の生理学的数値を回復すること及び3乃至8mmHgの範囲の全身静脈圧を回復すること、約15mmHgまで肺血圧を回復すること、全身血管抵抗及び肺毛細血管楔入圧が増加する一方、肺血管抵抗のより低いレベルを回復すること、リパーゼの高いレベルが抑制されること、アミラーゼの高いレベルが抑制されることからなる群のいずれかである。
【0009】
本発明はまた、急性疾患を治療するために、脾臓に分布し、神経血管束(例えば、脾動脈神経)と連携する神経の神経活性を刺激するためのシステムも提供する。前記システムは、前記神経と信号伝達的に接触している少なくとも1つの電極と、前記少なくとも1つの電極に電気的に接続されている少なくとも1つの制御部とを備える。前記少なくとも1つの制御部は前記神経に電気信号を印加するために前記少なくとも1つの電極の動作を制御するように構成されている。前記電気信号は、前記急性疾患の治療を示す生理学的パラメータを改善するように構成されている。前記生理学的パラメータの前記改善は、36°C乃至38°C間まで体温が回復すること、60乃至100bpmまで心拍数が回復すること、90/60mmHg乃至150/90mmHg間まで全身動脈圧が回復すること、右心房で約5mmHg及び左心房で約8mmHgまで全身静脈圧が回復すること、約3乃至8mmHgの範囲まで中心静脈圧が回復すること、約15mmHgまで肺血圧が回復すること、毎分8乃至14呼吸まで呼吸数が回復すること、94%以上まで酸素飽和度が増加すること、12乃至15kPaまで動脈血酸素分圧が増加すること、4.4乃至6.1kPaまで動脈血二酸化炭素分圧が回復すること、痛覚の緩和、0.5ml/kg/時間以上まで尿量が回復すること、意識レベルが上昇すること、乳酸塩レベルの減少、血糖レベルの変化、血液中の塩基欠乏レベルの変化及び動脈pHレベルの変化からなる群のいずれかである。
【0010】
本発明はまた、対象者における急性疾患を治療するためのコンピュータ実装される方法も提供する。方法は、本発明の前記システムの少なくとも1つの電極の操作を制御して、信号を脾臓に分布する神経に印加して、前記神経の神経活性が可逆的に刺激されるように前記神経活性を刺激することを備える。前記神経は神経血管束(例えば、脾動脈神経)と連携している。
【0011】
本発明はまた、プロセッサと、非一時的にコンピュータ読み取り可能な記憶媒体とを備えるコンピュータも提供する。前記非一時的にコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は実行可能なコンピュータプログラムを有する。前記実行可能なコンピュータプログラムはコード部分を備える。前記コード部分は、前記プロセッサでロードされて実行されると、前記プロセッサに電気信号を印加するようにして、前記電気信号が急性疾患の治療を示す生理学的パラメータを改善するように脾臓に分布する神経の神経活性を刺激する。前記神経は神経血管束(例えば、脾動脈神経)と連携している。
【0012】
本発明はまた、急性疾患を治療するための方法において使用される神経刺激性電気信号も提供する。前記電気信号は、本明細書中に説明されている任意の電気信号である。
【0013】
本発明はまた、急性疾患を治療するための方法において使用される電気波形も提供する。前記電気波形は、脾臓に分布する神経の神経細胞膜の可逆の脱分極を引き起こし、活動電位が前記神経内でデノボ(de novo)に生成される。前記神経は神経血管束(例えば、脾動脈神経)と連携している。
【0014】
本発明はまた、急性疾患を治療するための方法において使用される荷電粒子も提供する。前記荷電粒子は、脾臓に分布する神経の神経細胞膜の可逆の脱分極を引き起こし、活動電位が前記改変された神経内でデノボ(de novo)に生成される。前記神経は神経血管束(例えば、脾動脈神経)と連携している。
【0015】
本発明はまた、本発明の前記システムの前記神経インターフェースが信号伝達的に接触している改変された神経も提供する。前記神経は前記脾臓に分布し、及び神経血管束(例えば、脾動脈神経)と連携している。前記少なくとも1つの電極が前記神経と信号伝達的に接触することで、前記神経はその自然な状態の前記神経から区別される。前記神経は急性疾患を持つ対象者に存在する。
【0016】
本発明はまた、脾臓に分布する神経の神経活性を刺激することにより取得可能な改変された神経も提供する。本発明の方法において、前記神経は神経血管束、好適には脾動脈神経と連携している。
【0017】
本発明はまた、脾臓に分布する神経と信号伝達的に接触している本発明のシステムを制御する方法も提供する。前記方法は、前記システムに制御指示を送信することを備え、それに応じて前記システムが前記神経に信号を印加する。前記神経は神経血管束(例えば、脾動脈神経)と連携している。
【0018】
発明の詳細な説明
脾臓に分布する神経
脾臓の神経支配は、主に交感神経性又はノルアドレナリン作動性であり、ペプチドニューロンが残りのニューロンの大部分を示し得る。ヒトの脾臓は、脾動脈を囲う脾神経叢によって主に神経支配されている。脾動脈は、腹腔神経叢に由来し、脾神経叢として脾動脈から脾臓へと続く神経組織によって覆われている。脾神経叢は脾動脈が終末枝で分岐する門にて脾臓へと入り、脾神経叢はこれらの分岐へと続いて、脾臓の実質へと入る。
【0019】
脾神経叢は、腹腔動脈から脾臓まで主要な脾動脈を避ける、いくつかの神経束を含み、各神経束は神経線維の小束から構成されている。脾臓神経を避ける神経束(又は動脈周囲の神経束として公知)は本明細書中では脾動脈神経と呼ぶ。
【0020】
脾動脈のコースは変わりやすい。概して、膵臓の表面に沿って延びる傾向にあり、多くの場合、膵臓に直接接触している。起点部位と門における入り口点との間で、脾動脈が膵臓と直接接触しないように、脾動脈は特定の位置で膵臓の表面から離れることができる。
【0021】
本発明には、電気信号を印加することにより、脾臓に分布する神経の神経活性を調節することが含まれる。ここで神経は神経血管束と連携している。好適には、神経は脾動脈神経である。
【0022】
実施形態によっては、神経は交感神経である。
【0023】
実施形態によっては、本発明は、1つの脾動脈神経に電気信号を印加することを含んでもよい。他の実施形態では、本発明は、複数(すなわち束)の脾動脈神経を含んでもよい。
【0024】
他の実施形態では、本発明は、少なくとも1つの脾動脈神経及び脾動脈に電気信号を印加することを含んでもよい。他の実施形態では、本発明は、全ての脾動脈神経及び脾動脈に電気信号を印加することを含んでもよい。
【0025】
他の実施形態では、本発明は、膵臓の表面から離れた脾動脈の一部と連携する、例えば、脾神経叢等の少なくとも1つの脾動脈神経に電気信号を印加することを含んでもよい。例えば、電気信号は、脾動脈ループに隣接する部位の少なくとも1つの神経に印加されてもよい。脾動脈ループは、例えば、0.5cm以上の距離で膵臓の表面から離れており、そこで介在する空間は、脂肪組織及び/又は結合組織によって満たされていることを特徴とする。この部位に電気信号を印加することは、脾動脈と連携している神経叢の分離をより直接的に可能にするという利点がある。この印加部位は、膵臓への外科的損傷を減少させる観点から、手術をより安全にすることも期待される。
【0026】
実施形態によっては、脾動脈ループは、1cm以上の距離で膵臓の表面から離れており、例えばこのループ頂部の内側曲面と膵臓の表面との距離が、約1乃至2cm、好適には約1.5cmである。この距離は、本明細書中で説明されているように、ループの高さと呼ばれてもよい。
【0027】
脾動脈ループは、約0.5cm以上のネック部を有していてもよく、この文脈では「ネック部」はループの第1脚部(脾動脈が脾臓の表面から離れる位置)の内側曲面とループの第2脚部(脾動脈が脾臓と直接接触に戻る位置)の内側曲面との間の直接的な距離のことを言う。実施形態によっては、ネック部は≧0.55cm、≧0.6cm、≧0.65cm、≧0.7cm、≧0.75cm、≧0.8cm、≧0.85cm、≧0.9cm、≧0.95cm、≧1cm、≧1.1cm、≧1.2cm、≧1.3cm、≧1.4cm、≧1.5cm、≧1.6cm、≧1.7cm、≧1.8cm、≧1.9cm、又は≧2.0cmである。実施形態によっては、脾動脈ループは、約1.1cm乃至約3.0cmの範囲内のネック部を有してもよい。
【0028】
脾動脈ループの数は、ヒト対象者間で異なることができるが、概して、脾動脈ループの数と対象者の年齢との間に正相関があるようである。典型的に、脾動脈ループは年齢が45歳を超えたヒト対象者でより多く観察される。
【0029】
実施形態によっては、信号印加部位は、1つの脾動脈ループに隣接する1以上の神経にあってもよい。
【0030】
実施形態によっては、信号印加部位は、複数の脾動脈ループに隣接する1以上の神経にあってもよい。実施形態によっては、複数の独立部位のそれぞれが、本発明の独立したシステム又は方法で刺激されてもよい。実施形態によっては、複数の上述の部位のそれぞれが、本発明の方法の単一のシステムや装置によって刺激されてもよい。
【0031】
実施形態によっては、信号は、複数の脾動脈ループのそれぞれの1以上の神経に同時に、順次に、又は別々に印加されてよい。
【0032】
同時にとは、実質的に同じ時に、複数の部位のそれぞれに信号を印加すること、すなわち、可能性のある遅れの誤差内で、ちょうど同じ時に複数の部位のそれぞれに信号を印加することを意図することを意味してもよい。別々にとは、互いに独立して複数の部位のそれぞれに信号を印加すること、すなわち、一致した順序で信号が印加されないことを意味してもよい。各信号は各部位に独立して伝達される。分離した信号の印加は、複数の部位のそれぞれ又はいくつかが、偶然に実質的に同じ時に信号を受信する結果になる可能性もあると理解される。順次にとは、定義された「順序」で、複数の部位のそれぞれに信号を印加することを意味してもよい。これには、実質的に同じ時に複数の独立部位のいくつかに信号を印加することが含まれてもよい。
【0033】
脾臓に分布する神経の刺激
本発明は脾臓に分布する神経に電気信号を印加し、神経内の神経活性を刺激することを含む。神経は神経血管束(例えば、脾動脈神経)と連携している。刺激とは、神経の少なくとも一部における信号伝達活性が、神経のその部分におけるベースラインの神経活性と比較して増加している状態を意味し、ベースラインの神経活性とは、何か介入が起こる前の対象者の神経の信号伝達活性のことである。言い換えると、刺激は結果的に神経のその部分において総合的な神経活性を増加させる神経活性を作り出す。
【0034】
神経の「神経活性」とは、神経の信号伝達活性を意味し、例えば、神経内における活動電位の振幅、周波数、及び/又はパターンである。本明細書中で神経内における活動電位の文脈で使用される「パターン」という用語は、1以上の局所フィールド電位、複合活動電位、集合活動電位、及び神経又はその中のニューロンのサブグループ(例えば、線維束)における活動電位の大きさ、周波数、曲線下面積、及び他のパターンを含むことを意図している。
【0035】
刺激は、典型的に、神経活性を増加させること、例えば、神経の少なくとも一部において刺激点を超える活動電位を生成することを含む。軸索に沿う任意の点において、機能している神経は、神経細胞膜にわたってカリウム及びナトリウムイオンの分布を有する。軸索に沿う一点における分布は、軸索のその点の電気膜電位を決定し、それは次に隣接点におけるカリウム及びナトリウムイオンの分布に影響を与え、次にその点における軸索の電気膜電位を決定する等である。これはその正常な状態での神経の働きであり、ここで活動電位は軸索に沿って点から隣接する点へと伝播し、これは従来の実験により観察できる。
【0036】
神経活性の刺激を特徴付ける1つの方法は、軸索における1以上の点でのカリウム及びナトリウムイオンの分布であり、これは、伝播する活動電位の結果としての神経の1点又は複数の点に隣接した場所の電気膜電位によるものではなく、一時的な外部電界の印加により作り出される。一時的な外部電界は、神経の点の中のカリウム及びナトリウムイオンの分布を人工的に修飾し、このようしなければ発生することのない神経細胞膜の脱分極をもたらす。一時的な外部電界によって引き起こされた神経細胞膜の脱分極は、その点にわたってデノボ(de novo)の活動電位を生成する。これは破壊された状態での神経の働きであり、これは、隣接点の電気膜電位により影響を受けていない又は決定されていない電気膜電位を有する軸索の点(刺激を受けている点)におけるカリウム及びナトリウムイオンの分布により観察することができる。
【0037】
このようにして、神経活性の刺激は信号印加の点を通り越して続くことから、神経活性を増加させるものであると理解される。このように、デノボ(de novo)の活動電位が生成されて改変された神経に伝播していくように神経細胞膜が電界によって可逆的に脱分極されることから、信号印加の点における神経は修飾される。従って、デノボ(de novo)の活動電位が生成されることから、信号印加の点における神経は修飾される。
【0038】
信号が電気信号である場合、刺激は、神経細胞膜にわたるイオン分布への電流(例えば、神経と信号伝達的に接触している電極における1以上の電子又は神経外若しくは神経内の1以上のイオンであってもよい荷電粒子等)の影響に基づく。
【0039】
神経活性の刺激は、神経における神経活性の完全な刺激、すなわち、総合的な神経活性が神経全体において増加する実施形態を包含する。
【0040】
神経活性の刺激は部分的な刺激であってもよい。部分的な刺激は、神経の線維のそのサブセットのベースラインの神経活性と比較して、神経全体の総合的な信号伝達活性が部分的に増加する、又は神経の神経線維のサブセットの総合的な信号伝達活性が完全に増加する(すなわち、神経の線維のそのサブセットに神経活性がない)、又は神経の神経線維のサブセットの総合的な信号伝達が部分的に増加するようであってもよい。例えば、神経活性の増加が、≦5%、≦10%、≦15%、≦20%、≦25%、≦30%、≦35%、≦40%、≦45%、≦50%、≦60%、≦70%、≦80%、≦90%、若しくは≦95%である、又は神経の神経線維のサブセットでの神経活性が増加する。神経活性は当技術分野で周知の方法、例えば、軸索を通って伝搬する活動電位の数及び/又は活動電位の合計された活動を反映した局所フィールド電位の振幅により測定されてもよい。
【0041】
本発明の1つの利点は神経活性の刺激が可逆であることである。従って、神経活性の調節は恒久的ではない。例えば、信号の印加が中断すると、神経での神経活性は実質的に、1乃至60秒以内、又は1乃至60分以内、又は1乃至24時間以内(例えば、1乃至12時間、1乃至6時間、1乃至4時間、1乃至2時間以内)、又は1乃至7日間(例えば、1乃至4日間、1乃至2日間)以内にベースラインの神経活性へと戻る。可逆の刺激の例によっては、神経活性はベースラインの神経活性に実質的に完全に戻る。すなわち、信号の印加の中断に続く神経活性は、信号が印加される前の神経活性と実質的に同じである。従って、神経又は神経部位は、その正常な生理的能力を取り戻し、活動電位を伝播する。
【0042】
他の実施形態では、神経活性の刺激は実質的に持続的であってもよい。本明細書中で使用される「持続的」とは、神経活性が長期作用を持つという意味で使用される。例えば、信号の印加が中断しても、神経での神経活性は信号が印加されていた時と実質的に同じまま、すなわち、信号の印加中及び信号の印加後の神経活性が実質的に同じである。可逆の調節が好ましい。
【0043】
治療における用途
本発明は、急性疾患の治療に役立ち、特に本発明は、最終手段としての介入策として使用できる。本発明は、ショックに伴う生理学的変化を有する生命を脅かす状態及び心血管性の機能障害の治療に特に有用である。
【0044】
これらの症状の例として、外傷、出血、及びショックが挙げられる。
【0045】
外傷としては、鈍的外傷(自動車衝突、転倒、頭部損傷、裂傷を含む)、穿通性外傷(切断、刺創、杙創等)、爆傷、熱傷(熱、冷、電気、化学物質、摩擦、又は放射線に起因するもの)、及びそれらの組み合わせ等の、例えば、外因による肉体的な損傷が挙げられる。
【0046】
出血は、循環系からの血液の損失である。出血としては、例えば、吐血(新鮮血の嘔吐)、喀血(肺からの血液の喀出)、血尿、脳出血、肺出血、分娩後出血、及び胃腸出血が挙げられる。出血は、例えば、外傷性損傷又は基礎疾患に起因してもよい。出血には、術中出血及び術後出血も含まれる。
【0047】
ショックとしては、例えば、敗血症性ショック、アナフィラキシーショック、毒素性ショック症候群、心原性ショック、循環血液量減少性ショック、及び神経原性ショックが挙げられる。本発明は、敗血症性ショックの治療に特に役立つ。
【0048】
本発明は、外傷、敗血症性ショック、大量出血、深刻な血友病、ループスの深刻な発症、深刻なクローンの発症、同種移植片/グラフの拒絶、アナフィラキシー、及び内毒素性ショックに関して特に興味深いものである。
【0049】
症状の治療は、様々な方法で評価できるが、典型的には対象者の1以上の生理学的パラメータの改善を判断することを含む。本明細書中で使用される「所定の生理学的パラメータの改善」とは、あらゆる任意の生理学的パラメータに関して、改善は対象者のそのパラメータの数値の変化が正常値又はその数値の正常範囲に向かっている、すなわち、健康な対象者において期待される数値に向かっているという意味で使用される。
【0050】
本明細書中で使用される「所定の生理学的パラメータの悪化」とは、あらゆる任意の生理学的パラメータに関して、悪化は対象者のそのパラメータの数値の変化が正常値又はその数値の正常範囲から離れている、すなわち、健康な対象者において期待される数値から離れているという意味で使用される。
【0051】
例えば、急性疾患は血圧の低下、めまい又は浮遊感、発疹、吐き気、筋肉痛、息切れ、乏尿、筋肉痛、及び皮膚が冷たく湿っていて青ざめる又は斑状になることを伴い得る。
【0052】
身体のバイタルサインは、身体の生体(生命維持)機能の状況を示すサインであるため、急性疾患を評価するためには特に役立つ。バイタルサインは、全身動脈圧、体温、心拍数、呼吸数、酸素飽和度、及び痛覚から成る1以上の群であってもよい。
【0053】
他の役立つ生理学的パラメータは、全身静脈圧、肺動脈圧(pulmonary artery pressure)(本明細書では肺血圧(pulmonary pressure)とも称する)、1時間毎の尿量、意識レベル、動脈血酸素分圧、及び動脈血二酸化炭素分圧であってもよい。
【0054】
生理学的パラメータの任意の1つ又は組み合わせは本発明に役立ち得る。
【0055】
急性疾患を有する対象者において、急性疾患の治療を示す生理学的パラメータの改善は、(対象者がどの外れ値を示しているかによって)36°C乃至38°C間まで体温が回復すること、60乃至100bpmまで心拍数が回復すること、90/60mmHg乃至150/90mmHg間まで全身動脈圧が回復すること、右心房で約5mmHg及び左心房で約8mmHgまで全身静脈圧が回復すること、約3乃至8mmHgの範囲まで中心静脈圧が回復すること、約15mmHgまで肺血圧が回復すること、毎分8乃至14呼吸まで呼吸数が回復すること、94%以上まで酸素飽和度が増加すること、12乃至15kPaまで動脈血酸素分圧が増加すること、4.4乃至6.1kPaまで動脈血二酸化炭素分圧が回復すること、痛覚の緩和、0.5ml/kg/時間以上まで尿量が回復すること、意識レベルが上昇すること、乳酸塩レベルの減少、血糖レベルの変化、血液中の塩基欠乏レベルの変化、及び動脈pHレベルの変化からなる群のいずれか1以上でもよい。本発明は、必ずしもこれらの生理学的パラメータの全てにおいて変化をもたらすものではない。
【0056】
本発明は、血圧(例えば、全身動脈圧、全身静脈圧、中心静脈圧、及び肺血圧)を正常範囲に回復させることを目的としている。当業者には公知の通り、本技術分野内で血圧と言うと、特別な定めのない限り、一般的に体循環における動脈圧(すなわち、全身動脈圧)を意味する。正常な全身動脈圧は、90/60mmHg乃至120/80mmHg間であると考えられる。この範囲を下回る全身動脈圧値は、その人がショックにり患していることを示唆し得る。本発明は、全身動脈圧を正常範囲まで回復させることを目的としている。従って、対象者がショックにり患している場合、本発明は全身動脈圧を上昇させることを目的としている。
【0057】
全身静脈圧、中心静脈圧、及び肺血圧を判断することも本発明に役立ち得る。これらの圧力を判断するには通常、カテーテル等の侵襲ツールが必要である。しかしながら肺血圧は、例えば、下大静脈径の超音波測定と見かけの心臓充満圧とによって判断され得る。健康な成体における全身静脈圧の正常範囲は、通常、右心房で5mmHg及び左心房で8mmHgである。健康な成体における中心静脈圧の正常範囲は、約3乃至8mmHgの範囲内であると考えられる。健康な成体における肺血圧の正常範囲は、安静時で、通常、約15mmHgである。
【0058】
本発明は、体温を正常範囲、すなわち36°C乃至38°C間にまで回復させることも目的としている。
【0059】
心拍数は通常、60乃至100bpmであると考えられているが、急性疾患では、典型的に心拍数が上昇する。本発明は、心拍数を正常範囲にまで回復させることも目的としている、すなわち心拍数を減少させることを目的としている。
【0060】
正常な呼吸数は、毎分8乃至14呼吸であるが、本発明は呼吸数を正常範囲まで回復させることを目的としている。
【0061】
健康な人は海面位で通常、96%乃至99%間の酸素飽和(SO
2)値を示し、通常は94%を上回る。レベルが90%を下回ると、低いと考えられ、低酸素血症となる。血中酸素濃度が80パーセントを下回ると、脳や心臓などの臓器機能が損なわれ得る。低酸素濃度が続くと、呼吸又は心停止を引き起こし得る。酸素飽和度は一般的に、パルスオキシメトリを使用して測定される。
【0062】
健康な人における動脈血酸素分圧の正常範囲は通常、12乃至15kPaである。動脈血二酸化炭素分圧の正常範囲は通常、4.4乃至6.1kPaである。本発明は、動脈血酸素分圧及び動脈血酸素分圧を正常範囲まで回復させることを目的としている。
【0063】
成体の正常な尿量は0.5乃至1ml/kg/時間である。これは平均的な体格の成体で1時間に30乃至60mlにほぼ一致する。本発明は、尿量を正常範囲まで回復させることを目的としている。
【0064】
本発明で役立つさらなる生理学的パラメータとして、乳酸塩、血糖、血液中の塩基欠乏、及び動脈pHのレベルが含まれてもよい。これらのパラメータは、生化学分析により判定できる。
【0065】
当業者であれば、任意のパラメータの数値を判定する適切な方法はいずれも理解しているであろう。
【0066】
当業者であれば、対象者のいずれの生理学的パラメータのベースラインも固定的又は特定の数値である必要はなく、むしろ正常範囲内で変動できる又は関連する誤差及び信頼区間の平均値であってもよいことを理解するであろう。例えば、人のバイタルサインの正常範囲は、年齢、体重、性別、及び全体的な健康状態によって変わる。ベースライン値を判定する適切な方法は、当業者には周知である。
【0067】
本明細書中で使用されるように、生理学的パラメータは、検出時に対象者によって示されるそのパラメータの数値が決定される際に対象者において決定される。検出器(例えば、生理学的センササブシステム、生理学的データ処理モジュール、及び生理学的センサ)は、このような判定ができる任意の要素である。本発明によると、生理学的パラメータのいずれかを検出することは、交感神経での神経活性の調節前、調節中、及び/又は調節後に行われてもよい。検出は、人間(例えば、臨床医又は介護人)によって本発明のシステムの一部ではない機器等の装置を使用して若しくは使用せずに又は本発明のシステムの一部である検出器を使用して若しくは使用せずに、手動で行うことができる。装置又は検出器が使用される場合、検出は自立的に行うことが可能である。
【0068】
このように、特定の実施形態では、本発明はさらに、対象者の1以上の生理学的パラメータを判定することを備え、信号は判定された生理学的パラメータが所定の閾値を満たす又は超える場合のみ印加される。対象者の1つよりも多い生理学的パラメータが判定される場合のこのような実施形態では、信号は、判定された生理学的パラメータの任意の1つがその閾値を満たす又は超える場合に印加されてもよく、あるいは、判定された生理学的パラメータの全てがそれらの閾値を満たす又は超える場合のみに印加されてもよい。本発明のシステムにより信号が印加される特定の実施形態では、システムは対象者の1以上の生理学的パラメータを判定するように構成された少なくとも1つの検出器をさらに備える。
【0069】
本発明の特定の実施形態では、1以上の検出された生理学的パラメータは、血圧(例えば、全身動脈圧、全身静脈圧、及び肺血圧)、体温、心拍数、呼吸数、酸素飽和度、痛覚、1時間当たりの尿量、意識レベル、又は乳酸塩、血糖、血液中の塩基欠乏、及び/若しくは動脈pHのレベルで構成される1以上の群である。任意の2つの生理学的パラメータが、並行的な実施形態で判定されてもよいことが理解され、対象者の活動電位許容範囲のパターンを検出するために制御部が接続される。
【0070】
例えば、ショックの深刻度及びショックに対する医療介入へのレスポンスを対処する際、重要な要因の1つは、ショックの発症中に増加した可能性がある組織内かん流である。組織内かん流は、血圧の低下、及び乳酸塩、比較的少ないが塩基欠乏や動脈pHのレベルをはじめとする生理学的パラメータのその他の変化の数に関連し得る。発明の実施形態によっては、前述したようにこれらの正常のレベルまで回復を目指す。
【0071】
生理学的パラメータの所定の閾値は、特定の治療介入が印加される前に対象者によって示されなくてはならないそのパラメータの最小(又は最大)の数値である。任意のパラメータに対しても、閾値が病理的状態又は病状を示す数値として定められてもよい。閾値は、病理的状態又は病状の発現を示す数値として定められてもよい。このように、所定の閾値によっては、本発明は治療として使用できる。あるいは、閾値は、対象者の生理学的状態(対象者が、例えば、就寝中、食後、又は運動中)を示す数値として定められてもよい。任意の生理学的パラメータの適正値は、当業者により造作なく決定されるはずである(例えば、医療実務基準を参照)。
【0072】
対象者によって示される数値が閾値を超えた場合、つまり、示された数値が所定の閾値よりもその生理学的パラメータの正常又は健康な数値から大きく逸脱する場合、任意の生理学的パラメータに対するこのような閾値を超える。
【0073】
本発明の対象者は、本発明による脾臓神経の神経調節を受けることに加えて、症状に対する治療及び/又は薬物治療を受けてもよい。例えば、対象者は、静脈への液体の投与、静脈への抗生物質(例えば、ペニシリン、セファロスポリン、テトラサイクリン、マクロライド、又はフルオロキノロン)の投与、組織及び器官への血圧及び/又は血流を増加させる薬、感染症の原因(膿瘍等)及び感染症により激しく損傷した組織の除去手術、又は呼吸が著しく困難な場合、フェイスマスク、鼻カニューレ、若しくは咽喉を通されて気管へと入る人工呼吸器(酸素吸入器)に接続されたチューブを通した酸素の供給を受けてもよい。
【0074】
対象者は、抗炎症薬(多くの場合、本発明のシステムが加えられる前にも発生していた投薬治療を継続する)を受けてもよい。このような薬としては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、ステロイド、5ASAs、アザチオプリン、メトトレキサート、及びシクロスポリン等の疾患修飾性抗炎症薬(DMARDs)、インフリキシマブ及びアダリムマブのような生物学的製剤、及びJAK阻害薬のような新たな経口DMARDsが挙げられる。
【0075】
このように、本発明は、本発明のシステムと併用してこれらの治療及び/又は薬の使用を提供する。
【0076】
電気信号の適切な形態
本発明は、脾臓に分布する神経に信号伝達的に接触して配置される少なくとも1つの電極を介して印加される電気信号を使用し、神経は神経血管束(例えば、脾動脈神経)と連携している。本明細書中で使用される「信号伝達的に接触」は、少なくとも1つの電極を介して印加される電気信号の少なくとも一部が神経で受信される場合である。
【0077】
電気信号は、例えば、急性の臨床現場においての単独の治療を提供することが好ましい。しかし、電気信号の印加が一度のみというわけではない。単独の治療中、電気信号は神経に連続的又は周期的に印加されてもよい。好適には、電気信号は、対象者の生理学的パラメータに改善があるまで神経に印加される。
【0078】
本発明により印加される電気信号は理想的には非破壊的である。本明細書中で使用される「非破壊的な信号」とは、印加された際に、神経の基本的な神経系信号伝導能力を不可逆的に損傷しない信号である。つまり、非破壊的な信号の印加は、その神経若しくは線維又は信号が印加される他の神経組織の能力を維持して、その伝導が実際は非破壊的な信号の印加の結果として人工的に刺激された場合でも、信号の印加が停止すると活動電位を伝導させる。
【0079】
本発明により印加される電気信号は、電圧又は電流波形であってもよい。
【0080】
電気信号は1以上の電気信号パラメータにより特徴付けられてもよい。電気信号パラメータは、波形、周波数、及び振幅を含む。
【0081】
代替的に又は追加的に、電気信号は、電気信号の神経への印加のパターンによって特徴付けられてもよい。印加のパターンとは、電気信号の神経への印加のタイミングである。印加のパターンは、連続的な印加又は周期的な印加であってもよい。印加のパターンは、信号の印加に対し設定された期間を含んでもよい。
【0082】
連続的な印加とは、電気信号が神経に連続的な方法で印加される場合を言う。電気信号が一連のパルスである実施形態では、これらのパルス間(すなわち、パルス幅と相持続期間との間)のギャップは、信号が連続的に印加されないことを意味するわけではない。
【0083】
周期的な印加とは、電気信号が繰り返しのパターン(例えば、オンオフパターン)で神経に印加される場合のことを言う。
【0084】
波形
脾臓に分布する神経(ここで神経は神経血管束(例えば脾動脈神経)と連携している)の調整(例えば、刺激)は、神経の正常な神経活性を再現するよう働く電気信号を使用して実現できる。このように、電気信号の波形は、正方形、鋸歯状、正弦波、三角形、台形、疑似台形、又は複雑なパルスを持つ1以上のパルス列を備えてもよい。他の実施形態では、波形は、正方形、正弦波、三角形、台形、疑似台形、又は複雑な波形であってもよい。他の実施形態では、波形は一定の振幅の波形であってもよい。
【0085】
信号は二相性であってもよい。「二相性」という用語は、正及び負の電荷の両方を経時的に神経に印加する信号を言う。
【0086】
信号は対称又は非対称であってもよい。対称な信号とは、正の電荷を神経に印加した際の波形が、負の電荷を神経に印加した際の波形と対称である信号である。非対称信号とは、正の電荷を神経に印加した際の波形が、負の電荷を神経に印加した際の波形と対称でない信号である。
【0087】
信号は、荷電平衡であってもよい。荷電平衡信号は、信号期間にわたって、正及び負の電荷の同等量(又はおよそ)を神経に印加する信号を言う。
【0088】
振幅
本発明の目的のため、本明細書中では、相毎の電荷密度の観点から振幅が言及される。電気信号により神経に印加される相毎の電荷は、1相にわたる(例えば、電荷平衡された二相性パルスの場合、二相性パルスの1相にわたる)電流の積分として定義される。このように、電気信号により神経に印加される相毎の電荷密度は、少なくとも1つの電極と神経との間の接触域の単位当たりの相毎の電荷であり、信号波形の1相にわたる電流密度の積分でもある。言い換えると、電気信号により神経に印加される相毎の電荷密度は、電気信号により神経に印加される相毎の電荷を少なくとも1つの電極(一般的にカソード)と神経との間の接触域で分割したものである。
【0089】
本発明により必要な相毎の電荷密度は、脾臓に分布する神経(神経は神経血管束(例えば、脾動脈神経)と連携している)内での神経活性を刺激するために必要なエネルギー量を表して、生理学的パラメータを改善する。
【0090】
本発明者らは、ブタの脾動脈神経内で神経活性を刺激するために必要な相毎の電荷密度が、相毎にcm
2当たり5μC乃至150μCの間、又は場合によっては、血管外のカフを使用して(電極のデザインが数値にわずかな影響を与えることもある)、相毎にcm
2当たり5μC乃至180μCであることを見出した。例えば、電気信号により印加される相毎の電荷密度は、相毎にcm
2当たり≦10μC、相毎にcm
2当たり≦15μC、相毎にcm
2当たり≦20μC、相毎にcm
2当たり≦25μC、相毎にcm
2当たり≦30μC、相毎にcm
2当たり≦40μC、相毎にcm
2当たり≦50μC、相毎にcm
2当たり≦75μC、相毎にcm
2当たり≦100μC、相毎にcm
2当たり≦125μC、相毎にcm
2当たり≦150μC、又は相毎にcm
2当たり≦180μCであってもよい。追加的に又は代替的に、電気信号により印加される相毎の電荷密度は、相毎にcm
2当たり≧5μC、相毎にcm
2当たり≧10μC、相毎にcm
2当たり≧15μC、相毎にcm
2当たり≧20μC、相毎にcm
2当たり≧25μC、相毎にcm
2当たり≧30μC、相毎にcm
2当たり≧40μC、相毎にcm
2当たり≧50μC、相毎にcm
2当たり≧75μC、相毎にcm
2当たり≧100μC、相毎にcm
2当たり≧125μC、又は相毎にcm
2当たり≧150μCであってもよい。上記の上限及び下限のいかなる組み合わせも可能である。
【0091】
本発明者らはさらに、ヒトの脾動脈神経内での神経活性を刺激するために必要な相毎の電荷密度の示された推定が約70乃至1300μC/cm
2の間であることを見出した。例えば、電気信号により印加される相毎の電荷密度は、相毎にcm
2当たり≦80μC、相毎にcm
2当たり≦140μC、相毎にcm
2当たり≦170μC、相毎にcm
2当たり≦230μC、相毎にcm
2当たり≦250μC、相毎にcm
2当たり≦300μC、相毎にcm
2当たり≦350μC、相毎にcm
2当たり≦400μC、相毎にcm
2当たり≦450μC、相毎にcm
2当たり≦500μC、相毎にcm
2当たり≦1100μC、又は相毎にcm
2当たり≦1300μCであってもよい。追加的に又は代替的に、電気信号により印加される相毎の電荷密度は、相毎にcm
2当たり≧70μC、相毎にcm
2当たり≧140μC、相毎にcm
2当たり≧170μC、相毎にcm
2当たり≧230μC、相毎にcm
2当たり≧250μC、相毎にcm
2当たり≧300μC、相毎にcm
2当たり≧350μC、相毎にcm
2当たり≧400μC、相毎にcm
2当たり≧450μC、相毎にcm
2当たり≧500μC、相毎にcm
2当たり≧1100μC、又は相毎にcm
2当たり≧1300μCであってもよい。上記の上限及び下限のいかなる組み合わせも可能である。
【0092】
任意の期間における電気信号により神経に印加される合計の電荷は、信号の周波数、信号の印加のパターン、及び少なくとも1つの電極と神経との間で接触する領域に加えて、信号の相毎の電荷密度の結果である。信号の周波数、信号の印加のパターン、及び少なくとも1つの電極と神経との間で接触する領域は本明細書中でさらに説明されている。
【0093】
神経活性の意図する刺激を実現するために必要な印加電気信号の振幅は、電極の位置と関連する電気生理学的特性(例えば、インピーダンス)とによることは当業者であれば理解するであろう。任意の対象者での神経活性の意図する調節を実現するための適切な電流振幅を判定することは当業者が可能な範囲内にある。
【0094】
神経に印加される電気信号は、臨床的安全性の限度内である(例えば、神経信号機能の維持に適している、神経の整合性の維持に適し、及び対象者の安全の維持に適している)ことは、当然、当技術分野で理解される。臨床的安全性の限度内の電気的パラメータは、典型的に前臨床試験によって判定されるであろう。
【0095】
周期的印加
周期的印加は、電気信号が繰り返しパターンで神経に印加されることを言う。好適な繰り返しパターンは、オンオフパターンであり、ここで信号は、本明細書中では「オン」期間とされる第1期間の間印加され、本明細書中では「オフ」期間とされる第2期間の間停止し、その後、再度、第1期間の間印加され、続いて、第2期間の間停止する等である。
【0096】
周期的オンオフパターンは、0.1乃至10秒の間のオン期間及び0.5乃至30秒の間のオフ期間を有してもよい。例えば、オン期間(特定の周波数のパルス及び振幅が神経に送達される時間を言う)は、≦0.2秒、≦0.5秒、≦1秒、≦2秒、≦5秒、又は10秒であってもよい。代替的に又は追加的に、オン期間は、≧0.1秒、≧0.2秒、≧0.5秒、≧1秒、≧2秒、又は≧5秒であってもよい。オン期間の上記の上限及び下限のいかなる組み合わせも可能である。例えば、オフ期間(パルスが神経に送達されないオン周期間の時間を言う)は、≦1秒、≦3秒、≦5秒、≦10秒、≦15秒、≦20秒、≦25≦、又は≦30秒であってもよい。代替的に又は追加的に、オフ期間は、≧0.5秒、≧1秒、≧2秒、≧5秒、≧10秒、≧15秒、≧20秒、又は≧25秒であってもよい。オフ期間の上記の上限及び下限のいかなる組み合わせも可能である。
【0097】
周期的印加は、デューティサイクル印加とも呼ばれてもよい。デューティサイクルは、周期パターンのサイクルに対して神経に信号が印加される時間の割合を表す。例えば、20%のデューティサイクルが、2秒のオン期間と10秒のオフ期間とを有する周期パターンを表してもよい。代替的に、20%のデューティサイクルが、1秒のオン期間と5秒のオフ期間とを有する周期パターンを表してもよい。換言すると、周期的印加はオンオフパターン刺激又はバースト刺激と呼ばれてもよい。
【0098】
本発明に適切なデューティサイクルは0.1%乃至100%の間である。
【0099】
期間
信号は、信号が周期的又は連続的に印加できる特定の期間印加される。臨床医が期間を決定してもよい又は期間はあらかじめ設定されていてもよい。
【0100】
臨床医は、対象者の生理学的パラメータに応じて、期間中に印加されている信号を止めさせてもよい。好適には、電気信号は、対象者の生理学的パラメータに改善があるまで神経に印加される。
【0101】
例によっては、期間は、≦1分間、≦5分間、≦10分間、≦30分間、又は≦1時間であってもよい。追加的に又は代替的に、期間は、≧1分間、≧5分間、≧10分間、又は≧30分間であってもよい。
【0102】
周波数
周波数は、電気波形の相持続期間の逆数(すなわち1/相)と定義される。
【0103】
本発明者らは、脾臓に分布する神経(神経は神経血管束(例えば、脾動脈神経)と連携している)を刺激するための好適な周波数を見出した。特に、本発明者らは、電気信号が周期的に印加される実施形態及び電気信号が連続的に印加される実施形態に対する好適な周波数を見出した。
【0104】
先に述べたが、電気信号が周期的に印加される実施形態及び電気信号が連続的に印加される実施形態は、異なる刺激パラメータを使用して異なる機能を提供する。連続的な刺激は、検出されて、電極配置及び/又は振幅判定の成功の指標としてオンテーブル又は手術前後として使用できる脾臓の脈管構造内の血流の変化を引き起こすために使用してもよく、周期的刺激は、好適な治療パラダイムとして使用されてもよく、これにより、治療としての有効性を維持する間、このような血流の変化及び/又は他の潜在的な全身的作用が回避される。
【0105】
電気信号が周期的に印加される実施形態では、電気信号の周波数は≦300Hz、好適には≦50Hz、より好適には≦10Hzである。例えば、電気信号の周波数は≦50Hz、≦100Hz、≦150Hz、≦200Hz、≦250Hz又は≦300Hzであってもよい。他の例では、電気信号の周波数は≦10Hz、≦15Hz、≦20Hz、≦25Hz、≦30Hz、≦35Hz、≦40Hz、≦45Hz、又は≦50Hzであってもよい。さらなる例では、周波数は≦1Hz、≦2Hz、≦5Hz、又は≦10Hzであってもよい。追加的に又は代替的に、電気信号の周波数は≧10Hz、≧15Hz、≧20Hz、≧25Hz、≧30Hz、≧35Hz、≧40Hz、≧45Hz、又は≧50Hzであってもよい。他の例では、電機信号の周波数は≧0.1Hz、≧0.2Hz、≧0.5Hz、≧1Hz、≧2Hz又は≧5Hzであってもよい。上記の上限及び下限のいかなる組み合わせも可能である。
【0106】
電気信号が連続的に印加される実施形態では、電気信号の周波数は≦50Hz、好適には≦10Hz、より好適には≦2Hz、さらにいっそう好適には≦1Hzである。例えば、周波数は≦1Hz、≦2Hz、≦5Hz、又は≦10Hzであってもよい。他の例では、周波数は≦0.1Hz、≦0.2Hz、≦0.3Hz、≦0.4Hz、≦0.5Hz、≦0.6Hz、≦0.7Hz、≦0.8Hz、又は≦0.9Hzであってもよい。追加的に又は代替的に、電気信号の周波数は≧0.1Hz、≧0.2Hz、≧0.5Hz、≧1Hz、≧2Hz又は≧5Hzであってもよい。上記の上限及び下限のいかなる組み合わせも可能である。
【0107】
信号波形がパルス列から成る場合、パルスは上記の周波数に従って間隔を置いて神経に印加される。例えば、50Hzの周波数は、1秒間に50パルスを神経に印加することとなる。
【0108】
電極及び神経インターフェースの設計
神経と信号伝達的に接触している少なくとも1つの電極を介して、脾臓に分布する神経(神経は神経血管束(例えば、脾動脈神経)と連携している)に電気信号が印加される。少なくとも1つの電極は神経インターフェースに位置付けられてもよい。
【0109】
実施形態によっては、電極及び/又は神経インターフェースは、少なくとも1つの脾動脈神経の周囲及び/又は脾動脈の周囲に配置されるために構成される。このような実施形態では、神経インターフェースはカフ型インターフェースであってもよいし、部分的に又は完全に神経を避けた他のインターフェースが使用されてもよい。
【0110】
他の実施形態では、神経インターフェース10は、少なくとも1つの脾動脈神経及び/又は脾動脈上に配置されるために構成される。このような実施形態では、神経インターフェース10はパッチ又はクリップタイプのインターフェースであってもよい。
【0111】
他の実施形態では、神経インターフェース10は、脾動脈に配置されるために構成される。このような実施形態では、神経インターフェースはカテーテル又はプローブタイプのインターフェースであってもよい。
【0112】
他の実施形態では、神経インターフェース10は少なくとも1つの脾動脈神経に配置されるために構成される。このような実施形態では、神経インターフェースはピンタイプのインターフェースであってもよい。
【0113】
神経インターフェースは、少なくとも1つの電極を備える。電極は、白金黒、酸化イリジウム、窒化チタン、タンタル、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)及びそれらの適切な組合せ等の高電荷容量材料から製造されてもよく、あるいは高電荷容量材料で部分的に又は全体的にコーティングされていてもよい。
【0114】
実施形態によっては、神経インターフェースは、脾動脈が膵臓と直接接触しない部位の脾動脈神経への電気信号の印加に適している。脾動脈が膵臓と直接接触しない部位の脾動脈神経に電気信号を印加することは、脾動脈周囲で利用可能な追加スペースによる利点がある。これは神経インターフェース10の設計、特に少なくとも1つの電極の設計にさらなる自由度を与える。
【0115】
少なくとも1つの電極は、特に、神経インターフェースが少なくとも1つの脾動脈神経及び/又は脾動脈の上又は周囲に配置するために構成される実施形態では、神経インターフェース10が神経上に固定されている場合に神経及び/又は脾動脈を回避するように柔軟である平らなインターフェース電極であってもよい。しかしながら、他の電極タイプも本発明での使用に適切である。
【0116】
本発明に適切な他の電極タイプとしては、カフ電極(例えば、スパイラルカフ、ヘリカルカフ、又は平らなインターフェース)、ヘミカフ電極(hemi−cuff electrodes)、メッシュ、直線のロッド形リード、パドルリード又はディスク接点電極(マルチディスク接点電極を含む)、フック電極、スリング電極(sling electrodes)、束内電極、ガラス吸引電極、パドル電極、及び経皮的な円筒状電極が挙げられる。
【0117】
少なくとも1つの電極は、第1電極11及び第2電極12を備えてもよく、本明細書中ではバイポーラ電極構成と呼ばれる。
図1は、バイポーラ電極構成例の模式図を示し、電極は、少なくとも1つの脾動脈神経及び/又は脾動脈と信号伝達的に接触して配置される。本明細書の他の場所に説明されているように、適切な信号伝達的に接触は、神経及び/若しくは動脈の周囲(すなわち、部分的又は完全に避ける)、神経上及び/若しくは動脈上、又は脾臓神経内、又は動脈内に電極を配置することで実現されてもよい。
【0118】
図1に示されるように、第1電極11及び第2電極12は神経の縦軸に沿って位置付けられている。電気信号は第1電極11がアノードで、第2電極12がカソードとなるように電極に印加されてもよい。あるいは、第1電極11がカソードで、第2電極12がアノードであってもよい。
【0119】
他の実施形態では、少なくとも1つの電極は第1電極、第2電極、及び第3電極を備えてもよく、本明細書中では三極電極構成と呼ばれる。
【0120】
二極構成のように、第1、第2、及び第3電極は、神経の長軸に沿って位置付けられてもよく、一例では、第2電極は第1電極と第3電極との間に位置付けられてもよい。
【0121】
電極は、非導電性の生体適合性材料によって少なくとも部分的に互いから絶縁されていてもよい。この目標を達成するために神経インターフェースは、装置の使用時に、神経に沿って横方向に間隔をあけている非導電生体適合性材料を備えてもよい。
【0122】
本発明者らは、少なくとも1つの脾動脈神経に電気信号を印加するための好適な電極サイズを見出した。電極の総表面積は0.1乃至0.3mm
2であってもよい。好適には、電極の総表面積は0.2cm
2未満である。
【0123】
好適な電極構成では、第1電極11及び第2電極12のそれぞれの幅は1乃至4mmの間であってもよい。例えば、幅は1mm乃至3mmの間、又は2mm乃至4mmの間、又は2mm乃至3mmの間であってもよい。
【0124】
制御部
図7を参照し、神経インターフェースを備え得る本発明のシステム50は、神経インターフェース10の少なくとも1つの電極に電気的に接続され、少なくとも1つの電極の動作を制御するように構成された、例えば、マイクロプロセッサ60である少なくとも1つの制御部も備えてもよい。少なくとも1つの制御部は、少なくとも1つの電極により神経に送達される信号の開始及び/又は終わりを引き起こすことを担ってもよい。任意で、少なくとも1つの制御部は、信号パラメータの生成及び/又は制御を担ってもよい。
【0125】
少なくとも1つの制御部は、開ループの方法で動作するように構成され、(前述したように)所定の信号は外部のトリガーによって神経に送達される。
【0126】
少なくとも1つの制御部は、システム50におけるいかなる入力からも独立した事前に設定された及び/又は操作者が選択可能な信号を使用時に生成するように構成されていることが好ましい。事前に設定された及び/又は操作者が選択可能な信号は、先に説明された電気信号のいずれか1つであってもよい。他の実施形態では、少なくとも1つの制御部は外部の信号、より好適には対象者の1以上の生理学的パラメータに関連する情報(例えば、データ)に反応するが、まだ先に説明された信号の範囲内にある。
【0127】
少なくとも1つの制御部は、対象者への挿入に適したシステム50におけるマイクロプロセッサ60であってもよい。
【0128】
代替的に又は追加的に、少なくとも1つの制御部は対象者の外部の制御部であってもよい。
【0129】
少なくとも1つの制御部は、医師又は装置106が挿入されている対象者等の操作者により生成された信号の受信に応じて始動してもよい。そのために、システム50は、制御部101を備える外部システム80を追加的に備えてもよい。このようなシステムの一例は
図8を参照して以下に説明されている。
【0130】
より広範なシステム100の外部システム80は、システム50の外部及び対象者の外部にあり、制御部101を備える。制御部101は、システム50を制御及び/又は外部から電力を供給するために使用されてもよい。この目標を達成するために、制御部101は電力装置102及び/又はプログラミングユニット103を備えてもよい。外部システム80は、さらに後述するように、電力伝達アンテナ104及びデータ伝達アンテナ105をさらに備えてもよい。
【0131】
マイクロプロセッサ60及び制御部101をはじめとする少なくとも1つの制御部は、プロセッサでロードされて実行されると、プロセッサに少なくとも1つの電極の操作を少なくとも制御させるコード部分を備える実行可能なコンピュータプログラムを有するメモリ(すなわち、非一時的にコンピュータ読み取り可能な記憶媒体)に接続されたプロセッサであってもよい。操作を制御するとは、少なくとも1つの制御部が、先に説明された何れかの信号パラメータ及び印加パターンを使用して、少なくとも1つの電極に電気信号を神経に印加させるようにすることを意味する。
【0132】
神経性刺激システム
神経インターフェース10及び少なくとも1つの制御部に加えて、システム50は、少なくとも1つの制御部からの制御操作に応じて、少なくとも1つの電極に上述の電気信号を送達するように構成された信号生成部113を備えてもよい。信号生成部は、少なくとも1つの電流又は電圧源を備えてもよい。
【0133】
信号生成部113は、少なくとも1つの制御部及び少なくとも1つの電極に電気的に接続されていてもよい。実施形態によっては、少なくとも1つの電極は、電気リード107を介して信号生成部113に接続されてもよい。実施形態によっては、電気リードは、先に説明されたインターコネクタに接続されてもよい。あるいは、信号生成部113は、リードなしで少なくとも1つの電極と直接的に一体化してもよい。いずれにせよ、システム50は、対象者に挿入されてもよく、任意でキャパシタ及び/又はインダクタに基づく、直流電流遮断出力回路(又は交流電流遮断出力回路)を全ての出力チャネル(例えば、少なくとも1つの電極又は生理学的センサ111への出力)に備えてもよい装置106を備えてもよい。
【0134】
神経インターフェース10、少なくとも1つの電極、少なくとも1つの制御部、及び信号生成部113に加えて、システム50は1以上の次のコンポーネントを備えてもよい。挿入可能トランシーバ110、電源112、メモリ114(又は非一時的にコンピュータ読み取り可能な記憶装置とも呼ばれる)、生理学的センサ111、及び生理学的データ処理モジュール115。生理学的センサ111及び生理学的データ処理モジュール115は、本明細書中では検出部と呼ばれる。
【0135】
システム50の様々なコンポーネントは、
図8に示されるように、共通のハウジングを共有している又は電気リードにより接続された相互接続されたコンポーネントの物理的に分離した集合体であるかのいずれかである単一の物理的デバイスの部分であることが好ましい。しかしながら、代替的に、本発明は、コンポーネントが物理的に分離し無線で通信するシステムを使用してもよい。このように、例えば、少なくとも1つの電極及び挿入可能装置(例えば、挿入可能装置106)は、単一装置の部分であることができ、又は共にシステム(例えばシステム50)を形成してもよい。両方の場合で、さらなるコンポーネントが存在して、より広範なシステム(例えば、システム100)を形成してもよい。
【0136】
例えば、実施形態によっては、1以上の次のコンポーネントが挿入可能装置106に含まれていてもよい。電源112、メモリ114、及び生理学的データ処理モジュール115。
【0137】
電源112は、信号生成部113のための電力を供給するための電流源及び/又は電圧源を備えてもよい。電源112は、マイクロプロセッサ60、メモリ114、及び挿入可能トランシーバ110等の挿入可能装置106及び/又はシステム50のその他のコンポーネントのための電力を供給してもよい。電源112は、バッテリを備えてもよく、バッテリは再充電可能であってもよい。
【0138】
挿入可能装置では電力の可用性が限られており、本発明はこの制約を考慮して考え出されたものであると理解されるであろう。挿入可能装置106及び/又はシステム50は、誘導電力供給又は再充電可能電源によって電力供給されてもよい。
【0139】
メモリ114は、電力データ及び1以上の生理学的パラメータに関連するデータを記憶してもよい。例えば、メモリ114は、検出部により検出された1以上の生理学的パラメータ(例えば、生理学的センサ111を介して及び/又は生理学的データ処理モジュール115を介して判定された1以上の対応する生理学的パラメータ)を示す1以上の信号に関するデータを記憶してもよい。これに加えて又は代替的に、メモリ114は、挿入可能トランシーバ110を介して外部システム80から電力データ及び1以上の生理学的パラメータに関連するデータを記憶してもよい。この目標を達成するため、挿入可能トランシーバ110は、以下にさらに説明されているように、より広範なシステム100の通信サブシステムの部分を形成してもよい。
【0140】
生理学的データ処理モジュール115は、1以上の対応する生理学的パラメータを判定するため、生理学的センサ111により検出された1以上の生理学的パラメータを示す1以上の信号を処理するように構成されている。生理学的データ処理モジュール115は、メモリ114内に記憶するため及び/又は挿入可能トランシーバ110を介して外部システムまで伝送するため、1以上の生理学的パラメータに関連するデータのサイズを減少させるように構成されていてもよい。挿入可能トランシーバ110は、1以上のアンテナを備えてもよい。挿入可能トランシーバ100は、身体、例えば、システム50が一部であるより広範なシステム100の外に信号を伝送するために、RF、無線、赤外線等の任意の適切な信号処理を使用してもよい。
【0141】
代替的に又は追加的に、生理学的データ処理モジュール115は、対象者における病気の進行を判定するために、1以上の生理学的パラメータを示す信号を処理し、及び/又は決定された1以上の生理学的パラメータを処理するように構成されていてもよい。
【0142】
生理学的データ処理モジュール115及び少なくとも1つの生理学的センサ111は、本明細書中では検出部としても既知の生理学的センササブシステムを、システム50の一部として、挿入可能装置106の一部として、又はシステムの外部としてのいずれかとして、形成してもよい。
【0143】
治療に関連する1以上の生理学的パラメータを検出するように構成されている少なくとも1つの検出部があってもよい。例えば、検出部は、電気的、RF又は光学的な(可視、赤外線)生化学的センサを使用して生体分子濃度を検出するために構成されてもよい。
【0144】
メモリ114は、1以上の生理学的パラメータの正常レベルに関連する生理学的データを記憶してもよい。データは、システム50が挿入された対象者に対して特有で、当技術分野で周知の様々な検査から収集されてもよい。生理学的センサ111から受信した生理学的パラメータを示す信号を受信すると、あるいは周期的に、又は生理学的センサ111からの要請に応じて、生理学的データ処理部115は、生理学的センサ111から受信された信号から判定された生理学的パラメータをメモリ114内に記憶された生理学的パラメータの正常レベルに関連するデータと比較して、受信信号が特定の生理学的パラメータの不足又は過剰を示しているか、それに従って対象者における病気の進化が示されているかどうかを判定してもよい。
【0145】
マイクロプロセッサ60は、操作者(例えば、医師又はシステム50が挿入されている対象者)により生成された信号の受信に応じて始動してもよい。そのために、システム50は、さらに後述するように、外部システム80及び制御部101を備えるより広範なシステム100の部分であってもよい。
【0146】
神経性刺激システムを超えて
神経性刺激システム50は、
図8に示すように、多数のサブシステム、例えば、外部システム80を含むより広範なシステム100の部分であってもよい。外部システム80は、人間の皮膚及び下層組織を通して、神経性刺激システム50に電力供給及びプログラミングするために使用されてもよい。
【0147】
外部サブシステム80は、制御部101に加えて、挿入可能装置106に電力を供給するために使用される電源112のバッテリを無線で再充電するための1以上の電力装置102及び挿入可能トランシーバ110と通信を行うように構成されている1以上のプログラミングユニット103を備えてもよい。プログラミングユニット103及び挿入可能トランシーバ110は通信サブシステムを形成してもよい。実施形態によっては、電力装置102がプログラミングユニット103と共に収容されている。他の実施形態では、それらは分離した装置内に収容可能である。
【0148】
外部サブシステム80はまた、電力伝達アンテナ104及びデータ伝達アンテナ105のうち1以上を備えてもよい。電力伝達アンテナ104は、低周波(例えば、30kHz乃至10MHz)で電磁界を伝送するために構成されていてもよい。データ伝達アンテナ105は、挿入可能装置106をプログラミング又は再プログラミングするためにデータを伝達するように構成されてもよく、高周波(例えば、1MHz乃至10GHz)で電磁界を伝送するために電力伝達アンテナ104に加えて使用されてもよい。挿入可能トランシーバ110の少なくとも1つのアンテナは、電源112の再充電可能バッテリを充電するために使用されてもよい、電力伝達アンテナ104によって生成された外部電磁界から電力を受信するように構成されていてもよい。
【0149】
電力伝達アンテナ104、データ伝達アンテナ105、及び挿入可能トランシーバ110の少なくとも1つのアンテナは、共鳴周波数及びQ値(Q)のような特定の特性を有する。アンテナの一実装は、所定のインダクタンスを有するインダクタを形成するフェライトコアを有する又は有しないワイヤのコイルである。このインダクタは、共振キャパシタ及び抵抗損失に接続されて、共振回路を形成してもよい。周波数は、電力伝達アンテナ105により生成された電磁界の周波数と一致するように設定される。挿入可能トランシーバ110の少なくとも1つのアンテナの第2アンテナは、外部システム80からのデータ受信及び外部システム80へのデータ送信のためにシステム50内で使用できる。複数のアンテナがシステム50で使用される場合、電力伝達アンテナ104とのわずかなずれの間において、より良好な電力伝達効率の度合いを実現するために、これらのアンテナを相互に30度回転させる。
【0150】
外部システム80は、1以上の外部装着式生理学的センサ121(不図示)を備えて、1以上の生理学的パラメータを示す信号を検出してもよい。信号は、挿入可能トランシーバ110の少なくとも1つのアンテナを介してシステム50に伝送されてもよい。代替的に又は追加的に、信号は外部システム50に伝送されて、その後、挿入可能トランシーバ110の少なくとも1つのアンテナを介してシステム50まで伝送されてもよい。
【0151】
例えば、特定の実施形態では、挿入可能装置の外部の検出部は、超音波流量計等の非侵襲的血流モニタ、及び/又は非侵襲的血圧モニタを含んでもよく、生理学的パラメータ、特に上記の生理学的パラメータの変化を判定する。
【0152】
システム100は、次の事象例においては神経の電気刺激を中断させる安全保護特性を有していてもよい;システム50の異常動作(例えば、過電圧)、挿入された生理学的センサ111からの異常な読み出し(例えば、セ氏2度を超える温度増加又は電極‐組織インターフェースにおける過度に高い若しくは低い電気インピーダンス)、外部装着式生理学的センサ121(不図示)からの異常な読み出し、又は操作者(例えば、医師又は対象者)による刺激に対する異常な応答の検出。安全対策特性は、制御部101を介して実装されて、システム50へと通信又はシステム50内で内部的に通信されてもよい。
【0153】
外部システム80は、操作者(例えば、医師又は対象者)によって押されると制御部101及び各通信サブシステムを介して信号を送達し、システム50のマイクロプロセッサ60を始動させて、少なくとも1つの電極によって神経に信号を送達する、アクチュエータ120(不図示)を備えてもよい。
【0154】
外部システム80は、マイクロコントローラ60又は制御部101のためのディスプレイ109を備えて、システム又は対象者の様子について操作者(例えば、医師又は対象者)に警告を発してもよい。ディスプレイ109は、LEDモニタ等のモニタであってもよいし、LED等の視覚的なインジケータであってもよい。
【0155】
本発明のシステム100は外部システム80を含んでいるが、特にシステム50は生体安定性及び生体適合性のある材料で作られ、又はコーティングされていることが好ましい。これは、システムが身体組織に対して暴露されることによる損傷から保護されること及びホストによる好ましくない反応(最終的に拒絶を引き起こす恐れがある)をシステムが引き起こす危険性を最小限に抑えることを意味する。システムを作成又はコーティングするために使用される材料は、バイオフィルムの形成に対し理想的には耐性があるべきである。適切な材料としては、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン):p‐トルエンスルホン酸塩(PEDOT:PTS又はPEDT)、ポリ(p‐キシリレン)ポリマー(パリレンとして既知)、及びポリテトラフルオロエチレンが挙げられるが、これらに限らない。
【0156】
本発明の挿入可能装置50は一般的に50g未満の重量である。
【0157】
全般
本明細書中に説明されている方法は、コンピュータ上でプログラムが実行される際に、本明細書中に記載されるいずれかの方法の全てのことを実施するように適合したコンピュータプログラムコード手段を含むコンピュータプログラムの形態等の有形の記憶媒体上で機械読み取り可能な形態のソフトウェアによって実施されてもよく、ここで、コンピュータプログラムはコンピュータ読取可能な記録媒体上で具現化されてもよい。有形の(又は非一時的な)記憶媒体の例としては、ディスク、サムドライブ、メモリカード等が挙げられるが、伝播信号は含まれない。ソフトウェアは、方法が任意の適切な順序で又は同時に行われてもよいように、平行プロセッサ又は直列プロセッサでの実行に適することができる。これはファームウェア及びソフトウェアが貴重で別々に取引可能な物品であることができることを認めている。「ダム(dumb)」又は標準ハードウェア上で動作する又は「ダム」又は標準ハードウェアを制御するソフトウェアを含んで、所望の機能を行うことが意図されている。HDL(ハードウェア記述言語)ソフトウェア等のハードウェアの構成を「記述」又は定義するソフトウェアを含むことも意図しており、このソフトウェアは、所望の機能を実行するために、シリコンチップを設計するため又はユニバーサルプログラマブルチップを構成するために使用される。
【0158】
当業者は、プログラム命令を記憶するために利用される記憶装置が、ネットワークに分散可能であることを認識するであろう。例えば、リモートコンピュータは、ソフトウェアとして記述されたプロセスの例を記憶してもよい。ローカル又はターミナルコンピュータは、リモートコンピュータにアクセスし、プログラムを実行するソフトウェアの一部又は全てをダウンロードしてもよい。代替的には、ローカルコンピュータは、必要に応じてソフトウェアの一部をダウンロードしてもよい、又はいくつかのソフトウェア命令をローカルターミナルで、一部をリモートコンピュータ(又は、コンピュータネットワーク)で実行してもよい。当業者は、当業者に既知の従来の技術を利用することにより、ソフトウェア命令の全て又は一部が、DSP、プログラマブル論理アレイ等の専用回路によって実行されてもよいことも認識するであろう。
【0159】
特段、示されていない場合、本明細書中で説明されている各実施形態は、本明細書中で説明されている他の実施形態と組み合わされてもよい。「備える」と言う用語は、「含む」も「構成される」も含み、例えば、組成物はXを「備える」は、排他的にXから構成されてもよいし、例えば、X+Yのように追加的な何かを含んでもよい。
【0160】
上記の利益及び利点は、一実施形態に関連又はいくつかの実施形態に関連してもよいことが理解されるであろう。実施形態は、いくつかの若しくは全ての上述の問題を解決するもの又はいくつかの若しくは全ての上述の利益及び利点を有するものに限らない。
【0161】
上記の好適な実施形態はほんの一例として挙げられたもので、当業者により様々な変形例が可能なことが理解されるであろう。様々な実施形態が、一定の程度の特殊性を持って又は1以上の個別の実施形態を参照して上記で説明されたが、当業者であれば本発明の範囲から逸脱すること無く開示の実施形態に多数の変更を加えることができるであろう。