特表2021-507804(P2021-507804A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-507804(P2021-507804A)
(43)【公表日】2021年2月25日
(54)【発明の名称】排気ガス浄化触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/63 20060101AFI20210129BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20210129BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20210129BHJP
【FI】
   B01J23/63 A
   B01D53/94 245
   B01D53/94 280
   B01D53/94 222
   F01N3/10 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2020-516755(P2020-516755)
(86)(22)【出願日】2018年9月25日
(85)【翻訳文提出日】2020年3月19日
(86)【国際出願番号】JP2018035529
(87)【国際公開番号】WO2019065659
(87)【国際公開日】20190404
(31)【優先権主張番号】特願2017-184290(P2017-184290)
(32)【優先日】2017年9月26日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】長岡 修平
(72)【発明者】
【氏名】角屋 聡
(72)【発明者】
【氏名】廣田 智隆
(72)【発明者】
【氏名】倉島 康憲
(72)【発明者】
【氏名】大塚 由紀恵
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 孝行
(72)【発明者】
【氏名】山田 岳
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AB03
3G091BA07
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3G091BA15
3G091BA19
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4G169FB14
4G169FB30
4G169FB31
4G169FB57
4G169FC08
(57)【要約】
三元触媒物品、及び内燃機関のための排気システムにおけるその使用が開示される。排気ガスを処理するための触媒物品は、基材と、基材上における触媒領域と、を含み、触媒領域が、白金族金属(PGM)成分、酸化物、及び希土類金属成分を含み、酸化物が、無機酸化物、酸素吸蔵成分(OSC)材料、又はこれらの混合物であり、酸化物の単位比表面積当たりの酸化物の表面上における元素による希土類金属成分濃度は、1μmol/m〜20μmol/mである。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスを処理するための触媒物品であって、
基材と、
前記基材上における触媒領域と、を含み、
前記触媒領域が、白金族金属(PGM)成分、酸化物、及び希土類金属成分を含み、
前記酸化物が、無機酸化物、酸素吸蔵成分(OSC)材料、又はこれらの混合物であり、
前記酸化物の単位比表面積当たりの前記酸化物の表面上における元素による前記希土類金属成分濃度は、1μmol/m〜20μmol/mである、触媒物品。
【請求項2】
前記酸化物の単位比表面積当たりの前記酸化物の表面上における元素による前記希土類金属成分濃度が、2μmol/m〜15μmol/mである、請求項1に記載の触媒物品。
【請求項3】
前記希土類金属成分がLa、Pr、Nd、又はこれらの混合物である、請求項1又は2に記載の触媒物品。
【請求項4】
前記PGM成分が、白金、パラジウム、ロジウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項5】
前記PGM成分がロジウムである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項6】
前記PGM担持量が、前記触媒領域の総重量に基づいて、0.1〜10重量%の範囲である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項7】
前記酸化物が前記OSC材料である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項8】
前記OSC材料が、セリウム酸化物、セリア−ジルコニア混合酸化物、セリア−ジルコニア複合酸化物、Ce、Zr、及び希土類元素を含む複合酸化物、並びにアルミナ−セリア−ジルコニア混合酸化物からなる群から選択される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項9】
前記複合酸化物中の前記希土類元素がLa及び/又はYである、請求項8に記載の触媒物品。
【請求項10】
前記触媒領域の総重量に基づいて、前記PGM担持量が少なくとも1%であるとき、前記PGM分散が、レドックス条件下で、1000℃で20時間劣化した後、少なくとも2%である、請求項7〜9のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項11】
前記触媒領域の総重量に基づいて、前記PGM担持量が1%未満であるとき、前記PGM分散が、レドックス条件下で、1000℃で20時間劣化した後、少なくとも6%である、請求項7〜9のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項12】
前記酸化物が前記無機酸化物である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項13】
前記無機酸化物が、アルミナ、ランタニド安定化アルミナ、アルカリ土類安定化アルミナ、シリカ、アルミノケイ酸塩、マグネシア/アルミナ複合酸化物、チタニア、ニオビア、タンタル酸化物、ネオジム酸化物、イットリウム酸化物、ランタニド、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される、請求項12に記載の触媒物品。
【請求項14】
前記無機酸化物が、アルミナ、ランタニド安定化アルミナ、又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である、請求項13に記載の触媒物品。
【請求項15】
前記触媒領域の総重量に基づいて、前記PGM担持量が少なくとも1%であるとき、前記PGM分散が、レドックス条件下で、1000℃で20時間劣化した後、少なくとも3%である、請求項12〜14のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項16】
前記触媒領域が、アルカリ又はアルカリ土類材料を更に含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項17】
前記アルカリ金属又はアルカリ土類金属が、バリウム又はストロンチウムである、請求項16に記載の触媒物品。
【請求項18】
前記PGM成分が、前記酸化物の表面層上に担持されている、請求項1〜17のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項19】
第2の触媒領域を更に含む、請求項1〜18のいずれか一項に記載の触媒物品。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか一項に記載の触媒物品を含む、燃焼排気ガスの流れを処理するための排出処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガソリンエンジンからの排気ガス排出を処理するのに有用な触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関では、炭化水素(HCs)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(「NO」)などの様々な汚染物質を含有する排気ガスが生成される。排気ガス触媒を含む排出制御システムは、大気に排出されるこれらの汚染物質の量を低減するために広く利用されている。ガソリンエンジン用途に通常使用される触媒は、三元触媒(TWC)である。TWCは、3つの主要機能:(1)一酸化炭素(CO)の酸化;(2)未燃炭化水素の酸化;及び(3)NOのNへの還元を行う。
【0003】
TWC触媒には、エンジンが化学量論的条件(空気/燃料比λ=1)で又はそれに近い状態でエンジンが確実に動作するように、慎重なエンジン管理技術が必要である。しかしながら、技術的理由から、エンジンは、動作サイクル中の様々な段階においてλ=1のいずれかの側で動作する必要がある。エンジンがリッチに作動しているとき、例えば、加速中に、全体的な排気ガス組成物は本質的に還元性であり、触媒表面上で酸化反応を行うことがより困難である。このため、TWCは、運転サイクルのリーン期間中に酸素を吸蔵し、運転サイクルのリッチ期間中に酸素を放出することにより、有効な動作期間を拡大させる成分を組み込むように開発されている。そのような目的のために、セリア系(例えば、セリア−ジルコニア混合酸化物)材料は、現在の市販のTWCの大部分において、酸素吸蔵成分(OSC)として使用されている。
【0004】
貴金属粒子の凝集は、ガソリンエンジン排気ガスの浄化に使用されるTWC触媒の劣化を引き起こす1つの要因として知られている。特に、ロジウムは、高温/酸化雰囲気中の酸化ロジウムに変換することによって凝集率が高まることが知られており、凝集によって触媒活性化点の表面積が小さくなり、触媒性能が低下する。
【0005】
TWC技術の進展にもかかわらず、確かなエンジンプラットフォームのための改善された触媒コンバータがなお必要とされており、これにより熱安定性が改善された高い変換率を実現する。本発明は、とりわけこれらの必要性を解決するものである。
【発明の概要】
【0006】
発明の概要本開示の一態様は、排気ガスを処理するための触媒物品であって、基材と、基材上における触媒領域と、を含み、触媒領域が、白金族金属(PGM)成分、酸化物、及び希土類金属成分を含み、酸化物が、無機酸化物、酸素吸蔵成分(OSC)材料、又はこれらの混合物であり、酸化物の単位比表面積当たりの酸化物の表面上における元素による希土類金属成分濃度は、1μmol/m〜20μmol/mである、触媒物品に関する。
発明の概要本発明はまた、本発明の三元触媒成分を含む内燃機関の排気システムも包含する。
発明の概要本発明はまた、内燃機関からの排気ガスの処理、特にガソリンエンジンからの排気ガスの処理も包含する。本方法は、排気ガスを本発明の三元触媒成分と接触させること、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例1〜4及び比較例1の排気ガス浄化触媒の耐久試験後における、Rh分散レベルを示すグラフである。
図2】実施例5の排気ガス浄化触媒の耐久試験後における、Rh分散レベルと、セリア−ジルコニア複合酸化物上における表面層濃縮Ndの濃度レベルとの関係を示す。
図3】実施例6の排気ガス浄化触媒の耐久試験後における、Rh分散と、ランタン安定化アルミナ酸化物上における表面層濃縮Ndの濃度レベルとの関係を示す。
図4】実施例1〜4及び比較例1の排気ガス浄化触媒の触媒評価試験における、排気ガス成分と、浄化率との関係を示す。
図5】実施例5の排気ガス浄化触媒の触媒評価試験における、セリア−ジルコニア複合酸化物表面層上におけるNd濃度レベルと、排気ガス成分の浄化率との関係を示す。
図6】実施例6の排気ガス浄化触媒の触媒評価試験における、ランタン安定化アルミナ酸化物表面層上におけるNd濃度レベルと、排気ガス成分の浄化率との関係を示す。
図7】酸化物表面層上におけるNd濃度レベルが10μmol/mである実施例6の排気ガス浄化触媒の水熱レドックス耐久試験後におけるRhの形態を示す電子顕微鏡写真である。
図8】酸化物表面層上におけるNd濃度レベルが10μmol/mである実施例6の排気ガス浄化触媒の水熱レドックス耐久試験後におけるNdの形態を示す電子顕微鏡写真である。
図9】酸化物表面層上におけるNd濃度レベルが20μmol/mである実施例6の排気ガス浄化触媒の水熱レドックス耐久試験後におけるRhの形態を示す電子顕微鏡写真である。
図10】酸化物表面層上におけるNd濃度レベルが20μmol/mである実施例6の排気ガス浄化触媒の水熱レドックス耐久試験後におけるNdの形態を示す電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、ガソリン及び他のエンジンによって生成されるものなどの燃焼排気ガスの触媒処理、並びに関連する触媒物品及びシステムに関する。より具体的には、本発明は、車両排気システムにおけるNO、CO、及びHCの同時処理に関する。驚くべきことに、本発明者らは、希土類金属成分を触媒中の酸化物担体の表面上に配置することにより、本発明の触媒が、高いレベルのTWC性能を維持しながら高い熱耐久性を示すことを見出した。
【0009】
本開示の一態様は、排気ガスを処理するための触媒物品であって、基材と、基材上における触媒領域と、を含み、触媒領域が、白金族金属(PGM)成分、酸化物、及び希土類金属成分を含み、酸化物が、無機酸化物、酸素吸蔵成分(OSC)材料、又はこれらの混合物であり、酸化物の単位比表面積当たりの酸化物の表面上における元素による希土類金属成分濃度は、1μmol/m〜20μmol/mである、触媒物品に関する。
好ましくは、酸化物の単位比表面積当たりの酸化物表面上における元素による希土類金属成分濃度は、1.5μmol/m〜19μmol/mであり、より好ましくは、酸化物の単位比表面積当たりの酸化物表面上における元素による希土類金属成分濃度は、1.8μmol/m〜18μmol/mであり、最も好ましくは、酸化物の単位比表面積当たりの酸化物表面上における元素による希土類金属成分濃度は2μmol/m〜15μmol/mである。
【0010】
上述の濃度で酸化物の表面層上に希土類金属元素を存在させることにより、耐久試験後であっても、PGM(例えばRh)粒子の凝集を抑制し、PGM(例えばRh)粒子の分散レベルを向上させることができる。
【0011】
酸化物の表面層上における希土類金属元素の濃度レベルが20μmol/mを超えると、耐久試験中に希土類金属成分(例えば、Nd)粒子が移動する可能性があり、希土類金属成分(例えば、Nd)粒子間の衝突及び会合の頻度が増加し、PGM(例えば、Rh)凝集に対する効果が減少する可能性がある。
【0012】
酸化物の表面層上における希土類金属元素を濃縮させることにより、高温/酸化雰囲気中で生成されたPGM酸化物が不安定化/分解され、耐久試験後であってもPGM粒子に戻されることにより、PGM分散レベルが向上し、排気ガス浄化触媒の活性が向上する。
【0013】
希土類金属成分は、特に限定されるものではなく、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sc、Y、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。好ましくは、希土類金属成分は、La、Pr、Nd、及びこれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくはNdである。
【0014】
LA−Nd、Pr−Nd、及びLa−Prの組み合わせなどの2つの希土類元素の組み合わせを使用しても、La−Pr−Ndの組み合わせなどの3つの希土類元素の組み合わせを使用しても、同じ効果を得ることができる。特に、La−Ndの組み合わせでは、LA及びNdは複合粒子を形成し、これによってLa及びNdが単独で使用される場合よりも安定し、複合粒子の凝集が抑制され、LA及びNdは、酸化物の表面層上でより均一に濃縮することができ、更に、LA及びNdが単独で使用される場合とは異なるロジウム粒子との相互作用により、酸化ロジウム粒子の分解を促進することができる。
【0015】
PGMは、好ましくは、パラジウム、白金、ロジウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される。特に好ましくは、PGMはロジウムである。
【0016】
触媒領域は、触媒領域の総重量に基づいて、好ましくは0.1〜10重量パーセントのPGM、より好ましくは0.2〜7重量パーセントのPGM、最も好ましくは0.3〜4重量パーセントのPGMを含む。
【0017】
PGMがロジウムである実施形態では、触媒領域は、触媒領域の総重量に基づいて、好ましくは0.1〜10重量パーセントのロジウム、より好ましくは0.2〜7重量パーセントのロジウム、最も好ましくは0.3〜4重量パーセントのロジウムを含む。
【0018】
PGM成分は、酸化物の表面層上に担持することができる。PGM成分がOSC材料の表面層上に担持される実施形態では、触媒領域は、無機酸化物を更に含んでもよく、無機酸化物はPGM成分の担体の一部でなくてもよい。PGM成分が無機酸化物の表面層上に担持される実施形態では、触媒領域は、OSC材料を更に含んでもよく、OSC材料はPGM成分の担体の一部でなくてもよい。
【0019】
酸化物がOSC材料である実施形態では、OSC材料は、好ましくは、セリウム酸化物、セリア−ジルコニア混合酸化物、セリア−ジルコニア複合酸化物、Ce、Zr、及び希土類元素を含む複合酸化物、並びにアルミナ−セリア−ジルコニア混合酸化物からなる群から選択される。セリア−ジルコニア混合酸化物又は複合酸化物は、ジルコニアのセリアに対するモル比が9:1〜1:9、好ましくは8:2〜2:8、より好ましくは7:3〜3:7であり得る。いくつかの実施形態では、Ce及びZrを含む複合酸化物中の希土類元素は、La及び/又はYであり得る。OSC材料は、触媒領域の総重量に基づいて20〜80%の範囲であり得る。
【0020】
酸化物がOSC材料であり、PGM(例えば、Rh)担持量(loading)が、触媒領域の総重量に基づいて少なくとも1%、2%、又は3%である場合、PGM分散は、レドックス条件下で、1000℃で20時間劣化した後、少なくとも2%、好ましくは少なくとも2.5%であり得る。特定の実施形態では、平均PGM(例えば、Rh)粒径は、70nm未満、好ましくは50nm未満、より好ましくは40nm未満であり得る。
【0021】
酸化物がOSC材料であり、PGM担持量が、触媒領域の総重量に基づいて、1%、0.9%、0.8%、0.7%又は0.6%未満である場合、PGM分散は、レドックス条件下で、1000℃で20時間劣化した後、少なくとも6%、好ましくは少なくとも7%又は8%であり得る。特定の実施形態では、平均PGM(例えば、Rh)粒径は、20nm未満、好ましくは18nm未満、より好ましくは16nm未満であり得る。
【0022】
酸化物が無機酸化物である実施形態では、無機酸化物は、第2、3、4、5、13及び14族元素の酸化物であり得る。好ましくは、無機酸化物は、アルミナ、ランタニド安定化アルミナ、アルカリ土類安定化アルミナ、シリカ、アルミノケイ酸塩、マグネシア/アルミナ複合酸化物、チタニア、ニオビア、タンタル酸化物、ネオジム酸化物、イットリウム酸化物、ランタニド、及びこれらの混合酸化物又は複合酸化物からなる群から選択される。より好ましくは、無機酸化物は、アルミナ、ランタニド安定化アルミナ、又はマグネシア/アルミナ複合酸化物である。
【0023】
酸化物が無機酸化物であり、PGM担持量が、触媒領域の総重量に基づいて、少なくとも1%、2%、又は3%である場合、PGM分散は、レドックス条件下で、1000℃で20時間劣化した後、少なくとも3%、好ましくは少なくとも4%、5%、又は6%であり得る。特定の実施形態では、平均PGM(例えば、Rh)粒径は、40nm未満、好ましくは30nm未満、より好ましくは25nm未満であり得る。
【0024】
触媒領域は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を更に含んでもよい。いくつかの実施形態では、アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、OSC材料上に堆積されてもよい。あるいは、又は加えて、アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、無機酸化物上に堆積されてもよい。すなわち、いくつかの実施形態では、アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、OSC材料及び無機酸化物の両方の上に堆積されてもよく、すなわち、その上に存在してもよい。
【0025】
アルカリ金属又はアルカリ土類金属は、バリウム又はストロンチウムであることが好ましい。より好ましくは、存在する場合、バリウムは、触媒領域の総重量に基づいて、30%未満、最も好ましくは20%未満である。
【0026】
触媒領域の総ウォッシュコート担持量は、0.1〜5g/in、好ましくは0.5〜4g/in、より好ましくは1〜3g/in、最も好ましくは1.5〜2.5g/inであり得る。
【0027】
触媒領域は、第2のPGM成分を更に含み得る。
【0028】
第2のPGMは、好ましくは、パラジウム、白金、ロジウム、及びこれらの混合物からなる群から選択される。特に好ましくは、PGM成分がRhである場合、第2のPGM成分はPd又はPtである。
【0029】
特定の実施形態では、触媒領域は、Rh成分以外のPGM金属を本質的に含まない。
【0030】
本発明の触媒領域は、当業者に既知の更なる成分を含んでもよい。例えば、本発明の組成物は、少なくとも1つの結合剤及び/又は少なくとも1つの界面活性剤を更に含んでもよい。結合剤が存在する場合、分散性アルミナ結合剤が好ましい。
【0031】
基材は、金属又はセラミック基材であり得る。好ましくは、基材は、フロースルーモノリス又はフィルタモノリスである。
【0032】
モノリス基材は、触媒材料を保持するための担体として作用する。モノリス基材を形成するのに好適な材料としては、コーディエライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ジルコニア、ムライト、スポジュメン、アルミナ−シリカマグネシア若しくはケイ酸ジルコニウム、又は多孔質の耐火金属などのセラミック様材料が挙げられる。多孔質モノリス基材の製造におけるそのような材料及びそれらの使用は、当該技術分野において周知である。
【0033】
モノリスがフィルタリングモノリスである場合、フィルタリングモノリスはウォールフローフィルタであることが好ましい。ウォールフローフィルタでは、各入口チャネルは、多孔質構造のウォールによって出口チャネルから交互に分かれており、逆もまた同様である。入口チャネル及び出口チャネルは、ハニカム配列で配置されることが好ましい。ハニカム配列が存在する場合、入口チャネルに垂直及び横方向に隣接するチャネルは上流端部で塞がれ、逆もまた同様である(すなわち、出口チャネルに垂直及び横方向に隣接するチャネルは、下流端部で塞がれる)。いずれかの端部から見たとき、チャネルの交互に塞がれ、開いている端部は、チェス盤の外観をとる。
【0034】
基材は、電気的に加熱可能な基材(すなわち、使用中に電気を加えることによって加熱することができる基材)であってもよい。基材が電気的に加熱可能な基材である場合、本発明の触媒物品は、電力接続部、好ましくは少なくとも2つの電力接続部、より好ましくは2つの電力接続部のみを含む。各電力接続部は、電気的に加熱可能な基材及び電源に電気的に接続されてもよい。触媒物品は、ジュール加熱によって加熱することができ、抵抗器を通る電流は、電気エネルギーを熱エネルギーに変換する。
【0035】
概ね、電気的に加熱可能な基材は、金属を含む。金属は、電力接続部又は複数の電力接続部に電気的に接続されてもよい。
【0036】
典型的には、電気的に加熱可能な基材は、電気的に加熱可能なハニカム基材である。電気的に加熱可能な基材は、使用中に、電気加熱ハニカム基材であってもよい。
【0037】
電気的に加熱可能な基材は、電気的に加熱可能な基材モノリス(例えば、金属モノリス)を含み得る。モノリスは、波形金属シート又は箔を含んでもよい。波形金属シート又は箔は、ロール処理、巻き取り、又は積層されてもよい。波形金属シートがロール処理又は巻き取りされる場合、コイル、螺旋形状、又は同心パターンにロール処理又は巻き取りされてもよい。
【0038】
電気的に加熱可能な基材の金属、金属モノリス及び/又は波形金属シート又は箔は、Fecralloy(商標)などのアルミニウムフェライト鋼を含んでもよい。
【0039】
本発明の触媒は、任意の好適な手段によって調製することができる。例えば、触媒は、第1のPGM、所望による第1のアルカリ金属又はアルカリ土類金属又は第2のPGM、無機酸化物、OSC材料、及び希土類金属酸化物を任意の順序で混合することによって調製され得る。添加の方法及び順序は、特に重要であるとは見なされない。例えば、触媒の各成分は、任意の他の成分又は複数成分に同時に添加されてもよく、又は任意の順序で順次添加されてもよい。触媒の各成分は、含浸、吸着、イオン交換、初期湿潤、沈殿などによって、又は当該技術分野において共通して知られている任意の他の手段によって、触媒の任意の他の成分に添加されてもよい。
【0040】
好ましくは、上述の触媒は、ウォッシュコーティング手順を用いて触媒を基材上に堆積させることによって調製される。ウォッシュコート手順を用いて触媒を調製するための代表的なプロセスを以下に記載する。以下のプロセスは、本発明の異なる実施形態に従って変更され得ることが理解されるであろう。
【0041】
ウォッシュコーティングは、好ましくは、適切な溶媒、好ましくは水に、先に定義された触媒の成分の微細化粒子を最初にスラリー化してスラリーを形成することによって実施される。スラリーは、好ましくは5〜70重量パーセント、より好ましくは10〜50重量パーセントの固形分を含有する。好ましくは、粒子は、スラリーを形成する前に、実質的に全ての固体粒子が平均直径で20ミクロン未満の粒径を有することを確実にするために、ミル粉砕されるか、又は別の粉砕プロセスに供される。安定剤、結合剤、界面活性剤、又は促進剤などの追加の成分も、水溶性又は水分散性化合物又は複合体の混合物としてスラリーに組み込まれてもよい。
【0042】
次いで、基材をスラリーで1回以上コーティングして、触媒の所望の担持量を基材上に堆積させるようにすることができる。
【0043】
本実施形態による排気ガス浄化触媒の製造方法は、酸化物の存在下で、希土類元素イオンを含む酸性溶液を用いて酸化物の表面層上における希土類元素を濃縮することを含む。酸化物の表面層上における希土類元素を濃縮することは、酸化物の存在下で、希土類元素イオンを含む酸性溶液を使用して行うことができる。酸化物の表面層上における希土類元素を濃縮することは、例えば、沈殿法、含浸法、共沈法などの公知の技術を用いて行うことができる。例えば、酸化物の表面層上における希土類元素の濃縮は、スラリーを形成するための水と混合された酸化物のスラリーに、希土類元素イオンを含む酸性溶液を添加し、次いでアルカリ溶液を添加して、希土類塩を酸化物上に沈殿させることによって、又は希土類元素イオンを含む酸性溶液中に酸化物を含浸させることによって、実施できる。アルカリ溶液を添加することにより、希土類塩を沈殿させる場合、7〜8のpHが好ましい。酸性溶液中の希土類元素イオンの濃度は、酸化物の表面層上における希土類元素の所望の濃度に従って適宜調整することができる。希土類元素イオンを含む酸性溶液は、特に限定されるものではなく、希土類元素イオンを含む硝酸水溶液、塩酸水溶液などを使用してもよい。
【0044】
希土類元素の表面層が濃縮された酸化物は、適宜、洗浄工程、乾燥工程、及び焼成工程を行うことによって粉末状に加工され、更に、粉末状の酸化物上にロジウムは、沈殿法含浸法、共沈法などの公知の技術を用いて担持され、ロジウム担持希土類元素表面層濃縮酸化物粉末は、必要に応じて乾燥工程及び焼成工程を行うことにより得られる。次いで、ロジウム担持希土類元素表面層濃縮酸化物は、排気ガス浄化触媒の基材である市販のハニカム担体などに適用される。ロジウム担持希土類元素表面層濃縮酸化物粉末は、スラリーに形成され、例えば、従来公知のウォッシュコート法を用いてハニカム担体上にコーティングし、必要に応じて乾燥及び焼成工程を行うことにより、排気ガス浄化成分が得られる。
【0045】
本開示の別の態様は、本明細書に記載の触媒物品を使用して、NO、CO、及びHCを含有する車両排気ガスを処理するための方法に関する。この方法に従って作製されたTWCを備えた触媒コンバータは、従来のTWCと比較して、改善された触媒性能を示す。
【0046】
本開示の別の態様は、システムを通じて排気ガスを移送するための導管と共に本明細書に記載される触媒物品を含む車両排気ガスを処理するためのシステムに関する。
【0047】
システムは、第2の触媒物品を含むことができる。好ましくは、第2の触媒物品は、ガソリン微粒子フィルタ(GPF)又はTWCを含み得る。より好ましくは、第2の触媒物品は、第1の触媒物品の下流に配置される。
【0048】
TWC触媒は、任意の従来のTWC触媒であり得る。
【0049】
定義
本明細書で使用するとき、用語「領域」は、典型的にはウォッシュコートを乾燥及び/又は焼成することによって得られる基材上における領域を指す。「領域」は、例えば、「層」又は「ゾーン」として基材上に配置又は担持され得る。基材上における領域又は配置は、概ね、基材にウォッシュコートを適用するプロセス中に制御される。「領域」は、典型的には、別個の境界又は縁部を有する(すなわち、従来の分析技術を使用して、一方の領域を別の領域から区別することが可能である)。
【0050】
典型的には、「領域」は、実質的に均一な長さを有する。これに関連する「実質的に均一な長さ」への言及は、10%を超えて逸脱しない長さ(例えば、最大長と最小長との差)を指し、好ましくは5%を超えて逸脱しない、より好ましくはその平均値から1%を超えて逸脱しない。
【0051】
各「領域」は、実質的に均一な組成を有する(すなわち、領域の一部とその領域の別の部分とを比較するとき、ウォッシュコートの組成に実質的な差がない)ことが好ましい。これに関連する実質的に均一な組成とは、領域の一部を領域の別の部分と比較するときの組成の差が5%以下、通常は2.5%以下、最も全般的には1%以下である材料(例えば、領域)を指す。
【0052】
「PGM分散(%)」は、PGM材料(例えば、粒子)の表面に位置する原子の数の、酸化物担体材料上に担持されたPGM材料の原子の総数に対する比を意味する。表面に位置する原子の数は、従来公知のガス吸着法(例えば、COパルス吸着)によって測定することができる。本明細書において、PGM分散は、表面の1個のPGM原子が1個のCO分子を吸着できると仮定してCOパルス吸着により測定された表面原子の数を、酸化物材料に担持されたPGM原子の総数で除算することにより計算された。
【0053】
「平均粒径」は、PGM粒子の球体形状が酸化物材料上に担持されているという仮定の下での粒子の平均直径を意味する。平均粒径は、表面原子の総原子に対する比、及び対応するPGMバルク材料の体積質量密度を表すPGM分散のデータを用いて計算することができる。
【0054】
酸化物材料の「比表面積(m/g)」は、本明細書のBrunauer−Emmett−Teller(BET)理論に基づく従来公知のガス吸着法を用いて測定することができ、比表面積の値は、BET理論による窒素ガスの吸着により得られた。材料の比表面積は、以下に記載される耐久試験の前後に場合により変化してもよく、本明細書において、「比表面積」とは、後述する耐久試験後の酸化物材料の比表面積を意味する。
【0055】
酸化物の表面層上に濃縮された希土類元素の濃度レベル(μmol/m)とは、酸化物材料の単位比表面積(1/m)上における希土類元素の物質の量(mol)の被覆率を意味する。(原料として導入される希土類元素の量)。触媒の使用前後に関係なく、酸化物表面層上に濃縮された希土類元素の濃度レベルは、例えば、XPSなどの公知の分析方法を用いて、酸化物表面層中の元素濃度比の定量分析によって確認することができる。
【0056】
耐久試験とは、触媒が製品として発送される前に、実際の使用時に排気ガス浄化触媒の劣化状態を再現するための試験を指し、概ね、少なくとも1000℃の温度で酸化雰囲気と還元雰囲気を交互に繰り返す環境で20時間、触媒を暴露することにより行われる試験である。
【0057】
本明細書で使用される頭字語「PGM」は「白金族金属」を指す。用語「白金族金属」は、概ね、Ru、Rh、Pd、Os、Ir及びPtからなる群から選択される金属、好ましくはRu、Rh、Pd、Ir及びPtからなる群から選択される金属を指す。概ね、用語「PGM」は、好ましくは、Rh、Pt、及びPdからなる群から選択される金属を指す。
【0058】
本明細書で使用するとき、用語「混合酸化物」は、概ね、当該技術分野において従来知られているように、単相にての酸化物の混合物を指す。本明細書で使用するとき、用語「複合酸化物」は、概ね、当該技術分野において従来知られているように、2つ以上の相を有する酸化物の組成物を指す。
【0059】
「PGM成分が酸化物の表面層に担持されている」とは、PGM(例えば、ロジウム)粒子のほぼ全体が酸化物の表面層上に露出して担持されている状況だけでなく、PGM(例えば、ロジウム)粒子の一部のみが酸化物の表面層上に露出して担持されている状況も意味する。
【0060】
本明細書で使用される「本質的になる」という表現は、特定の材料、及び例えば微量不純物など、その特徴の基本特性に実質的に影響を及ぼさない任意の他の材料又は工程を含む特徴の範囲を制限する。「から本質的になる」という表現は、「からなる」という表現を包含する。
【0061】
材料に関して本明細書で使用される「実質的に含まない」という表現は、典型的には、領域、層、又はゾーンの内容との関連において、≦5重量%、好ましくは≦2重量%、より好ましくは≦1重量%などの少量の材料を意味する。「実質的に含まない」という表現は、「含まない」という表現を包含する。
【0062】
材料に関して本明細書で使用される「本質的に含まない」という表現は、典型的には、領域、層、又はゾーンの内容との関連において、≦1重量%、好ましくは≦0.5重量%、より好ましくは≦0.1%などの微量の材料を意味する。「本質的に含まない」という表現は、「含まない」という表現を包含する。
【0063】
本明細書で使用される重量%として表されるドーパントの量、特に総量に対する任意の言及は、担持材料又はその耐火金属酸化物の重量を指す。
【0064】
本明細書で使用するとき、用語「担持量」は、金属重量基準でのg/ft単位の測定値を指す。
【0065】
本明細書で使用するとき、用語「レドックス」は、還元雰囲気と酸化雰囲気との間で交互に変化するガス混合物を指す。
【0066】
以下の実施例は、単に本発明を例示するものである。当業者は、本発明の趣旨及び特許請求の範囲内にある多くの変形例を認識することになる。
【実施例】
【0067】
実施例1:ロジウム担持ランタン表面層濃縮複合酸化物触媒
Ce、Zr、La、及びYを含む複合酸化物(ここで、組成物は、重量比で、CeO:ZrO:La:Y=20:65:5:10)を水と混合し、約25重量%の固形分含有量を有するスラリーにした。スラリーに、耐久試験後の複合酸化物の比表面積に対して5μmol/mのランタンを担持するように調製した硝酸ランタン水溶液を添加した後、アンモニア水溶液を滴下し、ランタン塩を沈殿させ、ランタンを複合酸化物の表面層上に濃縮した。このスラリーを150℃の空気中で5時間風乾させた後、600℃で2時間焼成することにより、ランタン表面層濃縮複合酸化物粉末を得た。
【0068】
Rhの添加量が3重量%となるように調製した硝酸ロジウム水溶液をランタン表面層濃縮複合酸化物粉末に含浸させ、150℃で2時間風乾させた後、600℃で2時間焼成することにより、ロジウム担持ランタン表面層濃縮複合酸化物を得た。ロジウム担持ランタン表面層濃縮複合酸化物を結合剤及び水と混合してスラリーを形成し、ハニカム担体上にコーティングした。その後、600℃で2時間、空気中で焼成することにより、実施例1によるロジウム担持ランタン表面層濃縮複合酸化物触媒を得た。ハニカム担体の場合、1平方インチ当たり400個のセルを有し、4.0milのセル壁厚を有するコーディエライト担体を使用した。触媒中に担持されたロジウムの量は、担体1L当たり90gであった。以下に記載される水熱レドックス耐久試験後のTRISTAR II(Micromeritics Instrument Corp.製)を用いて、複合酸化物の比表面積をBET法により測定した結果は、約40m/gであった。
【0069】
実施例2:ロジウム担持ネオジム表面層濃縮複合酸化物触媒
実施例2によるロジウム担持ネオジム表面層濃縮複合酸化物触媒を、実施例1と同様の方法で作製し、例外点として、硝酸ランタン水溶液の代わりに硝酸ネオジム水溶液を用いた。
【0070】
実施例3:ロジウム担持プラセオジム表面層濃縮複合酸化物触媒
実施例3によるロジウム担持プラセオジム表面層濃縮複合酸化物触媒を、実施例1と同様の方法で作製し、例外点として、硝酸ランタン水溶液の代わりに硝酸プラセオジム水溶液を用いた。
【0071】
実施例4:ロジウム担持ランタン−ネオジム表面層濃縮複合酸化物触媒
実施例4によるロジウム担持ランタン−ネオジム表面層濃縮複合酸化物触媒を、実施例1と同様の方法で作製し、例外点として、スラリーには、硝酸ランタン水溶液の代わりに、硝酸ランタン水溶液と硝酸ネオジム水溶液とを混合した水溶液を用い、この水溶液は耐久試験後の複合酸化物の比表面積に対して、それぞれランタンとネオジムが2.5μmol/m担持されるように調製されたものである。
【0072】
実施例5:ロジウム担持ネオジム表面層濃縮複合酸化物触媒
実施例5によるロジウム担持ネオジム表面層濃縮複合酸化物触媒を、実施例1と同様の方法で作製し、例外点として、硝酸ランタン水溶液の代わりに硝酸ネオジム水溶液を用いたほかには、複合酸化物表面層上におけるネオジム濃度が、耐久試験後の複合酸化物の比表面積に対して、0μmol/m、2μmol/m、5μmol/m、10μmol/m、15μmol/m、及び20μmol/mである6つの触媒を作製した。
【0073】
実施例6:ロジウム担持ネオジム表面層濃縮ランタン安定化酸化アルミニウム触媒
実施例6によるロジウム担持ネオジム表面層濃縮ランタン安定化酸化アルミニウム触媒を、実施例1と同様の方法で作製し、例外点として、Ce、Zr、La、及びYを含む複合酸化物の代わりに、ランタン安定化酸化アルミニウムを用いたほかには、ランタン安定化酸化アルミニウム表面層上におけるネオジム濃度が0μmol/m、2μmol/m、5μmol/m、10μmol/m、15μmol/m、及び20μmol/mである6つの触媒を作製した。
【0074】
実施例7:ネオジム表面層濃縮複合酸化物上にRhが担持された完全配合Pd−Rh三元触媒
実施例7を本発明に従って調製した。底層は、第1のCeZr混合酸化物、La安定化アルミナ、Baプロモーターのウォッシュコート上に担持されたPdからなる。底層のウォッシュコート担持量は約1.6g/inで、Pd担持量は90g/ftであった。上層は、Nd表面濃縮が2μmol/mの第2のCeZr混合酸化物、La安定化アルミナのウォッシュコート上に担持されたRhからなる。上層のウォッシュコート担持量は約2.0g/inで、Rh担持量は10g/ftであった。実施例7の総ウォッシュコート担持量は、約3.6g/inであった。
【0075】
比較例1:ロジウム担持複合酸化物触媒
比較例1によるロジウム担持複合酸化物触媒を、実施例1と同様の方法によって作製し、例外点として、複合酸化物の表面層上に希土類元素が濃縮されていない。
【0076】
比較例2:ロジウム担持ランタン安定化酸化アルミニウム触媒
比較例2による触媒を、比較例1と同様の方法で作製し、例外点として、Ce、Zr、La、及びYを含む複合酸化物の代わりに、ランタン安定化酸化アルミニウムを用いた。
【0077】
比較例3:複合酸化物上にRhが担持された完全配合Pd−Rh三元触媒
比較例3は、二重層構造を有する三元(Pd−Rh)触媒である。底層は、第1のCeZr混合酸化物、La安定化アルミナ、Baプロモーターのウォッシュコート上に担持されたPdからなる。底層のウォッシュコート担持量は約1.6g/inで、Pd担持量は90g/ftであった。上層は、第2のCeZr混合酸化物、La安定化アルミナのウォッシュコート上に担持されたRhからなる。上層のウォッシュコート担持量は約2.0g/inで、Rh担持量は10g/ftであった。比較例3の総ウォッシュコート担持量は、約3.6g/inであった。
【0078】
実験結果
水熱レドックス耐久試験:
実施例1〜6並びに比較例1及び2の触媒ついて、1000℃で20時間の水熱レドックス耐久試験を実施した。水熱レドックス耐久試験は、表1に示す組成を有する酸化雰囲気及び還元雰囲気ガスを使用して、酸化雰囲気と還元雰囲気との間で交互に3分間隔で触媒を曝露し、耐久試験後のロジウム粒子の分散レベルを評価することによる。本実施例の水熱レドックス耐久試験は、実際の使用における排気ガス浄化触媒の劣化状態を再現している。
【0079】
【表1】
【0080】
ロジウム粒子の分散レベル(以下、「Rh分散」と称する)は、ロジウム粒子を構成する原子の中で、粒子の表面上に存在するロジウム原子の、酸化物担体上に担持された全ロジウム材料に対する比を意味する。表面上におけるロジウム原子の量は、ロジウム粒子が吸着するガスの量を測定することによって求められ、COガスを利用するパルス吸着法を用いて評価される。パルス吸着法は、金属種及び金属の含有量に基づいて分散レベルを算出する方法であり、試験片に、パルスを繰り返して一定量のガスを導入し、吸着量として、導入されるガスの量と排出量との合計差を設定し、分散レベル値が高いほど、粒子の表面層に存在する金属の比率が高くなる。
【0081】
図1に示すように、比較例1の触媒と比較して、実施例1〜4の触媒の全ては、水熱レドックス耐久試験後の改善されたロジウム粒子分散レベルを有した。すなわち、希土類元素の種類にかかわらず、複合酸化物の表面層上における希土類元素を濃縮することにより、ロジウム凝集が抑制され、耐久試験後のロジウム粒子分散レベルが向上することが理解される。特に、複合酸化物の表面層にネオジムを濃縮し(実施例2)、ランタン及びネオジムを複合酸化物の表面層に濃縮した場合(実施例4)、Rh分散を改善する効果が高かった。
【0082】
耐久試験後の改善されたロジウム粒子分散レベルにより、触媒の活性及び高温耐久性が改善されたと言える。
【0083】
図2及び図3に示すように、実施例5及び6の両方の触媒において、複合酸化物又はランタン安定化酸化アルミニウムの表面層に濃縮されたネオジムの濃度レベルが1μmol/m〜20μmol/mであり、特に2μmol/m〜15μmol/mの場合、耐久試験後のロジウム粒子分散レベルが改善された。すなわち、酸化物の種類にかかわらず、酸化物の表面層に濃縮されたネオジムの濃度レベルが1μmol/m〜20μmol/mであり、特に2μmol/m〜15μmol/mの場合、耐久試験後のロジウム粒子分散レベルが改善することが理解される。
【0084】
触媒の活性及び高温耐久性は、耐久試験後の改善されたロジウム粒子分散レベルにより、改善されたと言える。
【0085】
触媒性能試験:
実施例1〜6及び比較例1及び2の触媒について、表2に示す組成を有する模擬排気ガスを使用して、以下の条件下で、上記の水熱レドックス耐久試験後に触媒性能試験を実施した。
【0086】
触媒性能試験において、HC、CO、NOx成分のそれぞれの50%が浄化される温度を評価した。50%が浄化された温度が低いほど、排気ガス浄化触媒としての性能が良好であると言える。
【0087】
触媒性能試験では、ガス流量を100,000/hrの空間速度で設定し、温度を100℃から400℃まで25℃/分の速度で上昇させ、触媒を通過した後のガス組成をAO−2020(ABB製)を用いて分析し、浄化率を測定した。
【0088】
【表2】
【0089】
図4に示すように、比較例1の触媒と比較して、HC、CO及びNO成分の全ての各成分の50%が浄化される温度は、実施例1〜4の触媒の全てにおいて低かった。
【0090】
すなわち、希土類元素の種類にかかわらず、複合酸化物の表面層上における希土類元素を濃縮することにより、耐久試験後の触媒性能が向上したことが理解される。これは、複合酸化物の表面層上における希土類元素を濃縮することによって、ロジウム凝集が抑制され、耐久試験後のロジウム分散レベルが改善されるためであると考えられる。特に、複合酸化物の表面層上にネオジムを濃縮した場合(実施例2)、ランタン及びネオジムを複合酸化物の表面層上に濃縮した場合(実施例4)、触媒性能の改善効果が高かった。
【0091】
図5及び図6に示すように、実施例5及び6の触媒において、複合酸化物又はランタン安定化酸化アルミニウムの表面層上に濃縮されたネオジムの濃度レベルが2μmol/m、5μmol/m、10μmol/m、15μmol/m、20μmol/m、特に顕著には2μmol/m〜15μmol/mの場合、HC、CO及びNO成分のうちの全ての各成分の50%が浄化される温度は、ネオジムが0μmol/mで濃縮された場合と比較して低かった。
【0092】
すなわち、酸化物の種類にかかわらず、酸化物の表面層に濃縮されたネオジムの濃度レベルが2μmol/m〜20μmol/mであり、特に2μmol/m〜15μmol/mであると、触媒の性能が向上することが理解される。
【0093】
希土類元素及び酸化物の表面層上における担持ロジウムの水熱レドックス耐久試験後の形態を観察するために、実施例5の排気ガス浄化触媒において、酸化物表面層のNd濃度レベルは10μmol/m及び20μmol/mであることが、走査型透過型電子顕微鏡(Titan G2−cubed;FEI Company製)を用いて観察された。
【0094】
図7に示すように、酸化物表面層上におけるNd濃度レベルが10μmol/mである実施例5の排気ガス浄化触媒において、水熱レドックス耐久試験後であっても、粒子径50nm以下のロジウム粒子が高分散レベルで存在することが理解される。更に、図8に示すように、ネオジムはまた、ランタン安定化酸化アルミニウム上に高い分散レベルで存在することが理解される。
【0095】
一方、図9に示すように、酸化物表面層上におけるNd濃度レベルが20μmol/mである実施例5の排気ガス浄化触媒において、粒子径50nm以上のロジウム粒子が多数存在する。50nm以上の粒子径を有するロジウム粒子は、耐久試験中のロジウム粒子の凝集により、粒子径がより大きくなることによって引き起こされると考えられる。図10に示されるように、ロジウム粒子と同じように、ネオジムも凝集したことが理解される。耐久試験中に、ネオジム粒子が移動し、互いに衝突/会合することにより粒子径が増大し、20μmol/m以上の濃度で衝突/会合の頻度が顕著になると考えられる。
【0096】
車両試験:
比較例3及び実施例7を、1.5リットルのエンジンを有する商用車両で評価し、HC、NMHC、CO、及びNOxの全ガス排出量を、ポスト触媒の位置で測定した。触媒は、燃料カットの劣化サイクル及び950℃のピーク温度で75時間のエンジンベンチ劣化を行った。エンジンベンチ劣化のハーシュネスは、上述のように、1000℃で20時間の水熱レドックス劣化のものと同様である。
【0097】
表3に示すように、実施例7は、比較例3と比較して、HC、NMHC、及びCO排出量低減に対して匹敵する性能を維持しながら、特にNOの排出量低減で改善された性能を示した。
【0098】
【表3】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】