特表2021-508244(P2021-508244A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-508244MRNAの増幅のための方法及び組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-508244(P2021-508244A)
(43)【公表日】2021年3月4日
(54)【発明の名称】MRNAの増幅のための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/12 20060101AFI20210205BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20210205BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20210205BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20210205BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20210205BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20210205BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALN20210205BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20210205BHJP
   C12N 9/12 20060101ALN20210205BHJP
【FI】
   C12N15/12
   C12Q1/6876 ZZNA
   A61K35/15 Z
   A61K39/00 H
   A61P37/04
   A61P35/00
   C12Q1/686 Z
   C12N5/10
   C12N9/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2020-532802(P2020-532802)
(86)(22)【出願日】2018年12月17日
(85)【翻訳文提出日】2020年7月14日
(86)【国際出願番号】US2018066051
(87)【国際公開番号】WO2019118978
(87)【国際公開日】20190620
(31)【優先権主張番号】62/599,472
(32)【優先日】2017年12月15日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】391058060
【氏名又は名称】ベイラー カレッジ オブ メディスン
【氏名又は名称原語表記】BAYLOR COLLEGE OF MEDICINE
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】デッカー, ウィリアム ケー.
(72)【発明者】
【氏名】コンドリ, バナジャ
【テーマコード(参考)】
4B050
4B063
4B065
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B050CC08
4B050KK02
4B050KK07
4B050KK18
4B050LL05
4B063QA13
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QQ53
4B063QR08
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS25
4B063QX01
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065CA23
4B065CA24
4B065CA44
4C085AA02
4C085BB01
4C085CC03
4C085DD23
4C085EE01
4C085GG01
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB64
4C087BB65
4C087CA04
4C087NA14
4C087ZB09
4C087ZB26
(57)【要約】
全長cDNAまたはcDNA断片の合成、増幅、及びin vitro転写のための組成物及び方法を提供する。RNAの逆転写及びin vitro転写のために増幅するための方法が提供される。さらに、樹状細胞にRNA及び相同ライセートを免疫刺激のためにロードするための方法が提供される。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1の配列を含むオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
前記オリゴヌクレオチドが、プライマーとしてさらに定義される、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
前記オリゴヌクレオチドが、40未満のヌクレオチドを含む、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項4】
前記オリゴヌクレオチドが、配列番号1からなる、請求項1に記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項5】
第1のプライマー及び第2のプライマーを含む組成物であって、前記第1のプライマーが、配列番号1の核酸配列を含み、前記第2のプライマーが、配列番号2の核酸配列を含む、前記組成物。
【請求項6】
前記組成物が、核酸増幅反応混合物としてさらに定義される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
第3のプライマーをさらに含み、前記第3のプライマーが、配列番号3の核酸配列を含む、請求項5または6に記載の組成物。
【請求項8】
核酸をさらに含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記核酸がRNAである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
第1のcDNA鎖を鋳型mRNAから合成する方法であって、
a)第1のプライマーを前記鋳型mRNAにハイブリダイズするステップであって、前記第1のプライマーが、配列番号2の核酸配列を含む、前記ステップと、
b)ターミナルトランスフェラーゼ及び鋳型スイッチング活性を有する逆転写酵素を使用して前記第1のプライマーを伸長し、オリゴ(C)オーバーハングを有する部分的な第1のcDNA鎖を生成するステップと、
c)第2のプライマーを前記部分的な第1のcDNA鎖の前記オリゴ(C)オーバーハングにハイブリダイズするステップであって、前記第2のプライマーが、配列番号1の核酸配列を含む、前記ステップと、
d)前記第2のプライマーを前記鋳型として使用して、前記オリゴ(C)オーバーハングから前記部分的な第1のcDNA鎖を伸長するステップであって、これによって前記第1のcDNA鎖を生成する、前記ステップと、を含む、前記方法。
【請求項11】
e)前記鋳型mRNAと第1のcDNA鎖を分離することと、
f)前記第1のcDNA鎖に第3のプライマーをハイブリダイズすることと、
g)前記第3のプライマーを伸長して第2のcDNA鎖を生成し、それによって二本鎖cDNAを生成することと、をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2のプライマーが、配列番号1の核酸配列を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第3のプライマーが、配列番号3の核酸配列を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記鋳型mRNAが、サンプルから得られる、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記細胞サンプルが、腫瘍サンプルである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記腫瘍サンプルが、対象からの除去後、RNA安定化溶液中に保存される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記RNA安定化溶液が、RNALATER(登録商標)である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記二本鎖cDNAからRNAを合成することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記二本鎖cDNAからRNAを前記合成することは、in vitro転写を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
In vitro転写が、第4のプライマー、第5のプライマー、及びRNAポリメラーゼを添加すること、ならびに前記RNAポリメラーゼを用いて、前記二本鎖cDNAからRNAを合成すること、を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第4のプライマーが、配列番号1の核酸配列を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第4のプライマーが、配列番号3の核酸配列を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記RNAをキャッピングすることをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記二本鎖cDNAを増幅させることをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項25】
前記第2のプライマーが、配列番号1の核酸配列を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第3のプライマーが、配列番号3の核酸配列を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記二本鎖cDNAを増幅させることは、DNA依存性DNAポリメラーゼ、第4のプライマー、及び第5のプライマーを添加すること、及びポリメラーゼ連鎖反応により前記cDNAを増幅させること、を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記第4のプライマーが、配列番号1の核酸配列を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記第5のプライマーが、配列番号3の核酸配列を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記増幅させたcDNAをin vitro転写して、センス鎖を増幅させたmRNAを生成することをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
前記第2のプライマーが、配列番号1の核酸配列を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第3のプライマーが、配列番号3の核酸配列を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記増幅させたcDNAの前記in vitro転写が、配列番号1及び配列番号3の配列を有するプライマーを前記増幅させたcDNAに添加すること、及び前記プライマーを前記増幅させたcDNAにハイブリダイズすることを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記増幅させたcDNAの前記in vitro転写が、RNAポリメラーゼを前記増幅させたcDNAに添加すること、及び前記ハイブリダイズされたプライマーを伸長してRNAを生成することを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記増幅させたRNAをキャッピングすることをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
樹状細胞集団を形質導入するための方法であって、前記方法が、前記樹状細胞集団を、1つ以上の抗原をコードする核酸と接触させることを含み、前記核酸が、請求項18〜35のいずれか1項に記載の方法によって生成されたRNAを含む、前記方法。
【請求項37】
前記樹状細胞集団を腫瘍細胞ライセートと接触させることをさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記腫瘍細胞ライセートが、1つ以上の抗原をコードする前記核酸の配列と最小5つのアミノ酸が重複している配列を有するエピトープを有する腫瘍抗原を含む、請求項37記載の方法。
【請求項39】
罹患した細胞集団を有する対象に免疫応答を提供するための方法であって、
a)請求項36または37に記載の方法により作製された、抗原刺激樹状細胞集団を得ることと、
b)有効量の前記抗原刺激樹状細胞集団を前記対象に投与することと、を含む、前記方法。
【請求項40】
前記抗原刺激樹状細胞が、がん、自己免疫疾患または感染症に関連する抗原により刺激されている、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記抗原刺激樹状細胞が、少なくとも1つの腫瘍抗原で刺激されている、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
免疫チェックポイント阻害剤を投与することをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、CTLA−4アンタゴニストである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記免疫チェックポイント阻害剤が、イピリムマブ、ペンブロリズマブまたはニボルマブである、請求項42記載の方法。
【請求項45】
請求項1に記載のオリゴヌクレオチドプライマー、配列番号2のオリゴヌクレオチドプライマー及び/または配列番号3のオリゴヌクレオチドプライマーを含むキット。
【請求項46】
がん細胞から単離された核酸をさらに含む、請求項45に記載のキット。
【請求項47】
DNAポリメラーゼをさらに含む、請求項45に記載のキット。
【請求項48】
RNA安定化溶液をさらに含む、請求項45に記載のキット。
【請求項49】
前記RNA安定化溶液が、RNALATER(登録商標)である、請求項48に記載のキット。
【請求項50】
前記キットが、cDNA合成キットとしてさらに定義される、請求項45に記載のキット。
【請求項51】
dNTP、MgCl、逆転写酵素、及び/またはRNase阻害剤をさらに含む、請求項50に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年12月15日に出願された米国仮特許出願第62/599,472号の優先権を主張し、その全体は参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
配列表の組み込み
1KB(MicrosoftWindows(登録商標)で測定)であり、ファイル名「BACMP0006WO__ST25.txt」中に含まれ、2018年12月11日に作成された配列表は、本明細書と共に電子出願され、参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0003】
本発明は、概して分子生物学の分野に関する。より具体的には、本発明は、mRNAの逆転写及びそれらの産物の増幅に関する。
【背景技術】
【0004】
分子生物学における重要なツールは、DNA及びRNAを複製する能力である。DNAは、プライマーが、反対側の末端及び標的核酸の反対側の鎖にハイブリダイズするポリメラーゼ連鎖反応によりin vitroで複製し、増幅することができ、また、プライマーは、DNA依存性DNAポリメラーゼによって伸長される。RNAは、一般にin vivoにおいて一時的に存在するが、RNAに比べてはるかに安定したDNAコピーを生成するために、RNA依存性DNAポリメラーゼ(逆転写酵素)によって逆転写され得る。相補的DNAまたはcDNAと呼ばれる逆転写から生成されたDNAは、増幅、配列決定、RNAへの転写、クローニングのためのベクターへの組み込み、またはこれらの組み合わせを実施することができる。
RNAをDNAに逆転写する様々な方法及び酵素が現在存在する。多くの場合、mRNA鋳型からcDNA合成用のプライマーを設計するとき、研究者らは、mRNAの3’末端に存在するポリ(A)テールを利用する。これにより、研究者らは、プライマーの3’末端にポリ(T)配列を有するプライマーを使用でき、mRNAからの3’配列情報の取得が非常に簡素になる。標的配列の5’末端に対応する第2のプライマーは、標準的なPCRと同様に、ランダム配列または標的配列のいずれかを含む。5’プライマーの3番目の選択肢は、いくつかの逆転写酵素の固有の鋳型スイッチング活性を利用して、第2のプライマーを逆転写酵素によって生成されたポリヌクレオチドオーバーハングにハイブリダイズし、その後、第2のプライマーに相補的な鎖を合成する(例えば、米国特許第5,962,271号を参照されたい)。次に、標準的なPCR反応を使用して相補的なDNA鎖をコピーし、配列を増幅させることができる。cDNAの合成及び増幅で使用されるプライマーとしては、プロモーターを挙げることができ、これにより、cDNAは、in vitroでの転写プロセスを使用して転写し、大量の標的mRNAを生成できるようになる。In vitro転写によって生成されたRNAは、樹状細胞に抗原提示を誘導するために使用され得る。しかし、逆転写及びin vitro転写の方法は、逆転写プロセス中の高いバイアス、及び非効率的なin vitro転写に悩まされており、これらのプロセスを向上させるための改善された方法及び組成物の必要性が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,962,271号明細書
【発明の概要】
【0006】
第1の実施形態では、配列番号1の配列を含むオリゴヌクレオチドが提供される。いくつかの態様では、オリゴヌクレオチドはプライマーとしてさらに定義される。特定の態様では、オリゴヌクレオチドは、40未満のヌクレオチドを含む。特定の態様では、オリゴヌクレオチドは、配列番号1からなる。
【0007】
さらなる実施形態では、第1のプライマー及び第2のプライマーを含む組成物が提供され、第1のプライマーは、配列番号1の核酸配列を含み、第2のプライマーは配列番号2の核酸配列を含む。いくつかの態様では、組成物は、核酸増幅反応混合物としてさらに定義される。他の態様では、組成物は、第3のプライマーをさらに含み、第3のプライマーは、配列番号3の核酸配列を含む。
【0008】
なおさらなる実施形態では、以下のステップ:a)第1のプライマーを鋳型mRNAにハイブリダイズすることであって、第1のプライマーが配列番号2の核酸配列を含む、ハイブリダイズすることと、b)ターミナルトランスフェラーゼ及び鋳型スイッチング活性を有する逆転写酵素を使用して第1のプライマーを伸長し、オリゴ(C)オーバーハングを有する部分的な第1のcDNA鎖を生成することと、c)第2のプライマーを部分的第1のcDNA鎖のオリゴ(C)オーバーハングにハイブリダイズすることであって、第2のプライマーが配列番号1の核酸配列を含む、ハイブリダイズすることと、d)第2のプライマーを鋳型として使用して、オリゴ(C)オーバーハングから部分的第1のcDNA鎖を伸長し、これによって第1のcDNA鎖を生成することと、を含む、鋳型mRNAから第1のcDNA鎖を合成する方法を提供する。いくつかの態様では、方法は、ステップ、e)鋳型mRNAと第1のcDNA鎖とを分離することと;f)第1のcDNA鎖に第3のプライマーをハイブリダイズすることと;g)第3のプライマーを伸長して第2のcDNA鎖を生成し、それにより二本鎖cDNAを生成することと、をさらに含む。特定の態様では、第2のプライマーは、配列番号1の核酸配列を含む。いくつかの態様では、第3のプライマーは、配列番号3の核酸配列を含む。さらなる態様では、鋳型mRNAは、サンプルから得られる。いくつかの特定の態様では、サンプルは、腫瘍サンプルである。ある特定の態様では、腫瘍サンプルは、対象からの除去後、RNA安定化溶液中に保存される。なおさらなる態様では、RNA安定化溶液はRNALATER(登録商標)である。
【0009】
追加の態様では、本方法は、二本鎖cDNAからRNAを合成することをさらに含む。いくつかの態様では、二本鎖cDNAからの合成RNAは、in vitro転写を含む。より具体的な態様では、in vitro転写は、第4のプライマー、第5のプライマー、及びRNAポリメラーゼを加えること、ならびにRNAポリメラーゼを用いて二本鎖cDNAからRNAを合成することを含む。特定の態様では、第4のプライマーは、配列番号1の核酸配列を含む。さらなる態様では、第4のプライマーは、配列番号3の核酸配列を含む。別の態様では、方法は、RNAをキャッピングすることをさらに含む。
【0010】
特定の態様では、方法は、二本鎖cDNAを増幅させることをさらに含む。いくつかの態様では、第2のプライマーは、配列番号1の核酸配列を含む。他の態様では、第3のプライマーは、配列番号3の核酸配列を含む。特定の態様では、二本鎖cDNAを増幅させることは、DNA依存性DNAポリメラーゼ、第4のプライマー、及び第5のプライマーを添加すること、及びポリメラーゼ連鎖反応によりcDNAを増幅させることを含む。いくつかの特定の態様では、第4のプライマーは、配列番号1の核酸配列を含む。別の態様では、第5のプライマーは、配列番号3の核酸配列を含む。
【0011】
さらなる態様では、方法は、増幅させたcDNAをin vitro転写して、センス鎖を増幅させたmRNAを生成することをさらに含む。いくつかの態様では、第2のプライマーは、配列番号1の核酸配列を含む。特定の態様では、第3のプライマーは、配列番号3の核酸配列を含む。いくつかのさらなる態様では、増幅させたcDNAのin vitro転写は、配列番号1及び配列番号3の配列を有するプライマーを増幅させたcDNAに添加すること、及び増幅させたcDNAにプライマーをハイブリダイズさせることを含む。特定の態様では、増幅させたcDNAの in vitro転写は、増幅させたcDNAにRNAポリメラーゼを添加すること、及びハイブリダイズしたプライマーを伸長してRNAを生成することを含む。別の態様では、方法は、増幅させたRNAをキャッピングすることをさらに含む。
【0012】
本発明のさらなる実施形態は、樹状細胞集団を形質導入する方法を提供し、本方法は、樹状細胞集団を1つ以上の抗原をコードする核酸と接触させることを含み、核酸は、上記の方法及び態様のいずれかによって生成されたRNAを含む。いくつかの態様では、方法は、樹状細胞集団を腫瘍細胞ライセートと接触させることをさらに含む。別の態様では、腫瘍細胞ライセートは、1つ以上の抗原をコードする核酸の配列と最小5つのアミノ酸が重複している配列を有するエピトープを有する腫瘍抗原を含む。
【0013】
さらに別の実施形態では、罹患細胞集団を有する対象に免疫応答を提供するための方法が提供され、本方法は、a)請求項36または37に記載の方法によって生成された、抗原刺激樹状細胞集団を得ることと、b)有効量の抗原刺激樹状細胞集団を対象に投与するステップとを含む。特定の態様では、抗原刺激樹状細胞は、がん、自己免疫疾患または感染症に関連する抗原により刺激されている。いくつかの態様では、抗原刺激樹状細胞は、少なくとも1つの腫瘍抗原で刺激されている。追加の態様では、方法は、免疫チェックポイント阻害剤を投与することをさらに含む。別の態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA−4アンタゴニストである。特定の態様では、免疫チェックポイント阻害剤は、イピリムマブ、ペンブロリズマブまたはニボルマブである。
【0014】
本発明のなおさらなる実施形態は、請求項1に記載のオリゴヌクレオチドプライマー、配列番号2のオリゴヌクレオチドプライマー及び/または配列番号3のオリゴヌクレオチドプライマーを含むキットを提供する。いくつかの態様では、キットは、がん細胞から単離させた核酸、DNAポリメラーゼ、及び/またはRNA安定化溶液をさらに含み得る。特定の態様では、RNA安定化溶液はRNALATER(登録商標)である。別の態様では、キットは、cDNA合成キットとしてさらに定義される。追加の態様では、キットは、dNTP、MgCl、逆転写酵素、及び/またはRNase阻害剤をさらに含む。
【0015】
本明細書で使用する場合、特定の成分に関して「本質的に含まない」とは、特定の成分がいずれも意図的に組成物に配合されておらず、かつ/または汚染物質としてまたは微量でのみ存在することを意味するために本明細書で使用される。組成物のあらゆる意図しない汚染から生じる特定の成分の総量は、好ましくは0.01%未満である。最も好ましいのは、特定の成分の量がいずれも標準分析方法で検出され得ない組成物である。
【0016】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「a」または「an」は、1つ以上を意味し得る。用語「含む」と共に使用されるとき、明細書及び特許請求の範囲で使用される単語「a」または「an」は、1つ以上を意味し得る。明細書及び特許請求の範囲で使用されるとき、「別の」または「さらなる」は、少なくとも第2またはそれ以上を意味し得る。
【0017】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、「約」という用語は、値が、デバイスのエラーの固有の変動を含み、その方法では、その値を決定するために使用されるか、または研究対象間に存在する変動を含むことを示すために使用される。
【0018】
本発明の他の目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、この詳細な説明及び具体的実施例では、本発明の趣旨及び範囲内の様々な変更及び修正が、この詳細な説明から当業者に明らかになるため、本発明の特定の実施形態を示しながら、例示としてのみ与えられている。
【0019】
以下の図面は、本明細書の一部をなし、かつ本発明の特定の態様をさらに示すために含まれる。本発明は、これらの図面のうちの1つ以上を本明細書に提示される特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせて参照することによって、より良く理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】新たに採取した腫瘍サンプルでは、凍結保存サンプルよりも高品質のRNAを生成する。凍結腫瘍組織または新鮮な腫瘍組織のいずれかから単離させたRNAを非変性1%アガロースゲルで泳動させた写真を示す図である。左から右へ:L:ラダー。1:凍結腫瘍サンプルRNA;2凍結腫瘍サンプルRNA;3:凍結腫瘍サンプルRNA;4:新鮮な腫瘍サンプルRNA。
図2】2つの異なるRNA単離方法の比較を示す図である。写真のRNAサンプルは、非変性1%アガロースゲルで泳動させた。レーン1:カラム精製により30mgの腫瘍組織から単離されたRNAである。レーン2:グアニジニウムチオシアネート/フェノール/クロロホルム精製により30mgの腫瘍組織から単離されたRNAである。
図3】本発明で使用される逆転写のプロセスを示す概略図であり、使用されるプライマーを示している。VKWDプライマーは、配列番号1のヌクレオチド配列を有する。CDS64T+オリゴプライマーは、配列番号2のヌクレオチド配列を有する。T7パワースイッチプライマーは、配列番号3のヌクレオチド配列を有する。
図4】逆転写及びその後のin vitro転写の方法を比較したものを示す図である。写真では、4つの異なるプロトコルを使用して、同一の出発物質からin vitro転写させたRNAを生成した。レーン1、Slagter−Jager法(Slagter−Jager et al.,2013)によって生成されたキャップ構造を有さない転写産物である。レーン2、Slagter−Jager法(Slagter−Jager et al.,2013)によって生成されたキャップ構造を有する転写産物である。レーン3、本明細書に記載の方法により生成されたキャップ構造を有さないRNAである。レーン4、本明細書に記載の方法により生成されたキャップ構造を有するRNAである。
図5】2つの異なる方法で生成し、キャッピングしたmRNAの比較を示す図である。5ugのin vitro転写mRNAを1%アガロース非変性ゲルで泳動させた。レーン1、以前の方法(Slagter−Jager et al.,2013)によって生成され、転写後キャップ構造を有するmRNAを示す。レーン2、現在の方法で生成され、共転写的にキャッピングされたmRNAを示す。
図6】IFNγ産生は、キャップ構造を有するmRNA及びライセートがロードされた樹状細胞と共培養させたT細胞によって著しく増強されることを示す図である。写真には、以前の方法(Argos(Slagter−Jager))または現在の方法(VKWD)で生成されたキャップ構造を有さないまたはキャップ構造を有するmRNA及びライセート、または不一致のmRNA及びライセートをロードした細胞についてELISAにより測定したIFN−γ分泌の相対量を示す。
図7】抗原特異的CD8CD25T細胞の産生は、キャップ構造を有するmRNA及びライセートを相同的にロードした樹状細胞と共培養したときに増大することを示す図である。写真では、データの下に示されている、mRNAがロードされた樹状細胞による再刺激後、抗原特異的活性化マーカーについてのT細胞のフローサイトメトリー分析を示す。
図8】樹状細胞ライセートのウエスタンブロット分析を示す図である。レーン1:非ロード樹状細胞。レーン2:Slagter−Jager法を使用して生成されたキャップ構造を有さないmRNAをロードさせた樹状細胞。レーン3:Slagter−Jager法を使用して生成されたキャップ構造を有するmRNAをロードさせた樹状細胞。レーン4:本明細書に記載の方法を使用して生成された、キャップ構造を有さないmRNAをロードさせた樹状細胞。レーン5:本明細書に記載の方法を使用して生成された、キャップ構造を有するmRNAをロードさせた樹状細胞。レーン6:不一致のmRNA及びライセートをロードさせた樹状細胞。レーン7:本明細書に記載の方法を使用して生成され、共転写的にキャップ構造を有するmRNAをロードさせた樹状細胞。
図9】In vitro転写及び増幅させたmRNAをロードした相同抗原により、CTLA4の保持が増大することを示す図である。写真は、ロードされていないかまたは指し示されたmRNA、ライセート、2x(mRNA及びライセート)、ならびにMM(不一致のmRNA及びライセート)がロードされた樹状細胞のフローサイトメトリー分析である。
図10】相同的にロードされた樹状細胞のCTLA4の保持の増大及びその樹状細胞からのCTLA4放出の減少を示す図である。写真は、樹状細胞培養物の上清またはライセート中のCTLA4を検出するウエスタンブロットである。樹状細胞は、ロードされていない(UL)か、またはmRNA、ライセート、その両方、もしくは不一致のmRNA及びライセートがロードされている。mRNAはカラムベースの方法またはグアニジニウムチオシアネート/フェノール/クロロホルム法のいずれかにより単離させた。
図11】ライセート及びin vitro転写されたmRNAが相同的にロードされた樹状細胞において、IL−12転写産物レベルが上昇していることを示す図である。指し示されたRNA及び/またはライセートをロードした樹状細胞について、ELISAによって検出されたIL−12a及びIL−12bレベルを示す。左軸には、ロードされていない対照DCに正規化され、1.0に設定した任意の転写単位を示す。
図12】樹状細胞ワクチンの調製を説明するフローチャートを示す図である。
図13A】増幅mRNAは、相同ライセートと共にDCにロードさせたとき、ネイティブポリA mRNAと同じ効率で、in vitroにおいてTH1免疫応答が生じることを示す図である。単球由来のヒトDCに、a)ネイティブポリA腫瘍mRNA及び相同/異種ライセート、または2)キャップ構造を有するIVT増幅mRNA及び相同/異種ライセートをロードした。次に、DCをT細胞と共培養し、活性化されたCD8+CD25+Ifng+細胞の割合をフローで分析した。ロードされていないDCまたはキャップ構造を有さないmRNAがロードされたDCと共培養したT細胞は、対照として機能させた。
図13B】増幅mRNAは、相同ライセートと共にDCにロードさせたとき、ネイティブポリA mRNAと同じ効率で、in vitroにおいてTH1免疫応答が生じることを示す図である。ポリAmRNAまたはIVT増幅mRNA及び相同または異種細胞ライセートの様々な組み合わせをロードしたDCを48時間成熟させ、細胞内CTLA4レベルをフローサイトメトリーで分析した。単独でロードされたDC及びロードされていないDCが対照として機能する。細胞内CTLA−4の上方制御は、保持の増大及びそれによる分泌の減少を示す。UL−非ロードDC、キャップ構造を有さないmRNA−キャップ構造を有さないIVT mRNAをロードしたDC、mRNA−ポリA mRNAをロードしたDC、ライセート−ライセートをロードしたDC、2xw/キャップ構造を有さない−キャップ構造を有さないIVT mRNA及び相同ライセートをロードしたDC、2xキャップ構造を有する−キャップ構造を有するIVT mRNA及び相同ライセートがロードされたDC、キャップ構造を有さないMM−キャップ構造を有さないIVT mRNA及び異種ライセートがロードされたDC、キャップ構造を有するMM−キャップ構造を有するIVT mRNA及び異種ライセートがロードされたDC。
【発明を実施するための形態】
【0021】
逆転写は、RNA依存性DNAポリメラーゼがRNAを鋳型として使用してDNAを合成するプロセスであり、遺伝子発現を理解し、かつ細胞RNAの配列決定を行うための分子生物学のツールとしてますます重要になっている。逆転写後のin vitro転写及び増幅のプロセスを使用することで、鋳型RNAから大量のRNAを生成できる。しかし、バイアスを減少させ、逆転写プロセスの効率を高める方法が必要とされている。
【0022】
したがって、特定の実施形態では、本開示は、逆転写プロセスのバイアスを減少させるための方法を提供し、逆転写された分子の増幅効率を高める方法を提供する。特に、本研究では、効率的なin vitro転写のために、プライマーのヌクレオチド組成及び配列が、逆転写プロセス及びプライマーでのプロモーター配列の組み込みにとって重要であることを見出した。
【0023】
具体的には、いくつかの実施形態では、全長cDNAまたはcDNA断片の合成、増幅、及びin vitro転写のための組成物及び方法を提供する。この方法は、RNAを、mRNAのポリ(A)テールにアニーリングできるプライマー、逆転写酵素活性を有する好適な酵素、及びmRNA鋳型に相補的なcDNAであるプライマーの鋳型依存性伸長を可能にするのに十分な条件下で鋳型スイッチングオリゴヌクレオチドと接触させることを含み得る。鋳型スイッチングオリゴヌクレオチドは、新しく生成されたcDNAの3’末端で逆転写酵素により生成されたオーバーハングにハイブリダイズし、逆転写酵素がcDNAの3’末端にある鋳型スイッチングオリゴヌクレオチドの補体を合成し続けることができるようになる。その後の増幅により、in vitro転写のためにプロモーター配列を導入することができる。次に、in vitro転写されたRNAを、免疫刺激のために相同ライセートと共に樹状細胞にロードすることができる。したがって、さらなる実施形態では、樹状細胞をロードするための方法、及びがんなどの疾患の治療のために樹状細胞ワクチンを使用すること提供する。
【0024】
定義
本明細書で使用される「増幅」は、ヌクレオチド配列(複数可)のコピー数を増加させるためのin vitroプロセスを指す。核酸増幅の結果、ヌクレオチドがDNAまたはRNAに取り込まれる。本明細書で使用されるように、1つの増幅反応は、多くのラウンドのDNA複製から構成され得る。例えば、1つのPCR反応は、30〜100サイクルの変性及び複製で構成され得る。
【0025】
「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」は、DNAの相補鎖の同時プライマー伸長により特定のDNA配列をin vitro増幅させるための反応を意味する。換言すると、PCRは、プライマー結合部位が隣接している標的核酸の複数のコピーまたは複製を作製するための反応であり、そのような反応は、以下のステップの1つ以上の繰り返しを含む:(i)標的核酸を変性すること、(ii)プライマーをプライマー結合部位へアニーリングすること、及び(iii)ヌクレオシド三リン酸の存在下で核酸ポリメラーゼによりプライマーを伸長させること。通常、反応はサーマルサイクラー装置での各ステップに最適化された異なる温度により循環する。特定の温度、各ステップにおける期間、及びステップ間の変化速度は、当業者に周知である多くの要因に依存し、例えば、参考文献:McPherson et al.,editors,PCR:A Practical Approach and PCR2:A Practical Approach(IRL Press,Oxford,1991及び1995)によって例示されている。
【0026】
「プライマー」は、ポリヌクレオチド鋳型と二本鎖を形成するときに、核酸合成の開始点として作用し、かつその鋳型に沿ってその3’末端から伸張することができ、それにより伸長二本鎖が形成されるように、天然または合成のいずれかであるオリゴヌクレオチドを意味する。伸長プロセス中に付加されるヌクレオチドの配列は、鋳型ポリヌクレオチドの配列によって決定する。通常、プライマーはDNAポリメラーゼによって伸長される。プライマーは、一般に、プライマー伸長産物の合成におけるその使用に適合する長さであり、通常、長さが8〜100ヌクレオチドの範囲、例えば、10〜75、15〜60、15〜40、18〜30、20〜40、21〜50、22〜45、25〜40などであり、より典型的には18〜40、20〜35、21〜30ヌクレオチド長の範囲、及び記載された範囲の間の任意長さである。典型的なプライマーは、10〜50ヌクレオチド長の範囲、例えば15〜45、18〜40、20〜30、21〜25など、及び指定された範囲の間の任意の長さであり得る。いくつかの実施形態では、プライマーは通常、長さが約10、12、15、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60、65、または70ヌクレオチド以下である。
【0027】
本明細書で使用される「組み込む」とは、核酸ポリマーの一部になることを意味する。
【0028】
本明細書で使用される「外因性操作がない場合」という用語は、核酸分子が修飾されている溶液を変更することなく、核酸分子の修飾が存在することを指す。特定の実施形態では、修飾は、ヒトの手の不在下で、または緩衝液条件とも呼ばれ得る溶液条件を変化させる機械の不在下で起こる。しかし、修飾中に温度変化が生じ得る。
【0029】
「ヌクレオシド」は、塩基−糖の組み合わせ、すなわち、リン酸を有さないヌクレオチドである。当技術分野では、ヌクレオシド及びヌクレオチドという用語の使用には一定の相互交換性があることが認識されている。例えば、ヌクレオチドのデオキシウリジン三リン酸、dUTPは、デオキシリボヌクレオシド三リン酸である。DNAに組み込まれた後、dUTPは、DNAモノマーとして機能し、正式にはデオキシウリジル酸、すなわちdUMPまたはデオキシウリジン一リン酸になる。結果として得られるDNA内にdUTP部分がない場合であっても、dUTPをDNAに組み込むと言うことができる。同様に、たとえそれが基質分子の一部のみである場合も、デオキシウリジンをDNAに組み込むと言うことができる。
【0030】
本明細書で使用される「ヌクレオチド」は、塩基−糖−リン酸の組み合わせを指す技術用語である。ヌクレオチドは、核酸ポリマー、すなわち、DNA及びRNAのモノマー単位である。この用語としては、rATP、rCTP、rGTP、またはrUTPなどのリボヌクレオチド三リン酸、及びdATP、dCTP、dUTP、dGTP、またはdTTPなどのデオキシリボヌクレオチド三リン酸が挙げられる。
【0031】
「核酸」または「ポリヌクレオチド」という用語は一般に、例えば、DNA(例えば、アデニン「A」、グアニン「G」、チミン「T」及びシトシン「C」)またはRNA(例えば、「A」、「G」、ウラシル「U」及びC)に見られる天然に存在するプリンまたはピリミジン塩基など、少なくとも1つの核酸塩基を含む、DNA、RNA、DNA−RNAキメラまたはその誘導体もしくは類似体の少なくとも1つの分子または鎖を指す。用語「核酸」は、用語「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」を包含する。本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」は、「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」という2つの技術用語を集合的かつ互換的に指す。オリゴヌクレオチドとポリヌクレオチドとは異なる技術用語であるが、それらの間に正確な境界線はなく、それらは本明細書では同義的に使用されることに留意されたい。「アダプター」という用語は、「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」という用語と同義的に使用され得る。さらに、用語「アダプター」は、直鎖状アダプター(一本鎖もしくは二本鎖のいずれか)またはステムループアダプターを示し得る。これらの定義は一般に少なくとも1つの一本鎖分子を指すが、特定の実施形態では、少なくとも1つの一本鎖分子に部分的、実質的、または完全に相補的である少なくとも1つの追加の鎖も包含する。したがって、核酸は、分子の鎖を含む特定の配列の1つ以上の相補鎖(複数可)または「補体(複数可)」を含む少なくとも1つの二本鎖分子または少なくとも1つの三本鎖分子を含み得る。本明細書で使用する場合、一本鎖核酸は接頭辞「ss」によって示し、二本鎖核酸は接頭辞「ds」によって示す。
【0032】
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」は、「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」という2つの技術用語を集合的かつ互換的に指す。オリゴヌクレオチドとポリヌクレオチドとは異なる技術用語であるが、それらの間に正確な境界線はなく、それらは本明細書では同義的に使用されることに留意されたい。「アダプター」という用語は、「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」という用語と同義的に使用され得る。
【0033】
「核酸分子」または「核酸標的分子」は、標準的な基準塩基、高次修飾塩基、非天然塩基、またはそれらの塩基の任意の組み合わせなど、任意の一本鎖または二本鎖核酸分子を指す。例えば、これらに限定するものではないが、核酸分子は、4つの基準DNA塩基−アデニン、シトシン、グアニン、及びチミン、ならびに/または4つの基準RNA塩基−アデニン、シトシン、グアニン、及びウラシルを含む。ヌクレオシドが2’−デオキシリボース基を含む場合、ウラシルがチミンの代わりに使用され得る。核酸分子は、RNAからDNAへ、及びDNAからRNAへと変換され得る。例えば、これらに限定するものではないが、mRNAは、逆転写酵素を使用して相補的DNA(cDNA)に作製でき、DNAは、RNAポリメラーゼを使用してRNAに作製できる。核酸分子は、生物学的起源または合成起源であり得る。核酸分子の例としては、ゲノムDNA、cDNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド、増幅させたDNA、既存の核酸ライブラリーなどが挙げられる。核酸は、血液、血清、血漿、脳脊髄液、頬の擦過、生検、精液、尿、糞便、唾液、汗などのヒトのサンプルから取得できる。核酸分子は、修復処理及び断片化処理など、様々な処理に供してもよい。断片化処理としては、機械的、音波及び流体力学的剪断が挙げられる。修復処理としては、伸長及び/またはライゲーションによるニックの修復、平滑末端を作製するための研磨のほか、脱アミノ化、誘導体化、脱塩基、または架橋ヌクレオチドなどの損傷した塩基の除去などが挙げられる。目的の核酸分子はまた、化学修飾(例えば、亜硫酸水素塩変換、メチル化/脱メチル化)、伸長、増幅(例えば、PCR、等温など)などに供されてもよい。
【0034】
プリン及びピリミジンの「類似」形態は当技術分野で周知であり、これらに限定されないが、アジリジニルシトシン、4−アセチルシトシン、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、イノシン、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルアデニン、1−メチルシュードウラシル、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N−メチルアデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルケオシン、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、シュードウラシル、クオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸、及び2,6−ジアミノプリンが挙げられる。核酸分子はまた、1つ以上の超修飾塩基、例えば、これらに限定されないが、5−ヒドロキシメチルウラシル、5−ヒドロキシウラシル、a−プトレシニルチミン、5−ヒドロキシメチルシトシン、5−ヒドロキシシトシン、5−メチルシトシン、N−メチルシトシン、2−アミノアデニン、a−カルバモイルメチルアデニン、N−メチルアデニン、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2,6−ジアミンプリン(2,6−diaminpurine)、及びN−メチルグアニンを挙げることができる。核酸分子はまた、例えばこれらに限定されないが、7−デアザ−7−ヒドロキシメチルアデニン、7−デアザ−7−ヒドロキシメチルグアニン、イソシトシン(isoC)、5−メチルイソシトシン、及びイソグアニン(isoG)など、1つ以上の非天然塩基を含み得る。基準、超修飾、非天然塩基、またはそれらの塩基の任意の組み合わせのみを含む核酸分子は、例えば、これらに限定されないが、ヌクレオチド残基間の各連結が、標準的なホスホジエステル連結からなることができ、さらに、非架橋酸素原子の窒素原子への置換(すなわち、ホスホルアミデート連結、硫黄原子(すなわち、ホスホロチオエート連結)、またはアルキルもしくはアリール基(すなわち、アルキルもしくはアリールホスホネート)、架橋酸素原子の硫黄原子への置換(すなわち、ホスホロチオレート)、ホスホジエステル結合のペプチド結合への置換(すなわち、ペプチド核酸またはPNA)、または1つ以上の追加の共有結合の形成(すなわち、ロックされた核酸もしくはLNA)を含んでもよく、これは、リボース糖の2’−酸素と4’−炭素の間に追加の結合を有する。
【0035】
「相補的」または「補体(複数可)」である核酸は、標準的なワトソン−クリック、フーグスティーンまたは逆フーグスティーン結合相補性規則に従って塩基対形成できるものである。本明細書で使用される場合、用語「相補的」または「補体(複数可)」は、上記の同じヌクレオチド比較によって評価され得るように、実質的に相補的である核酸を指し得る。「実質的に相補的」という用語は、連続する核酸塩基の少なくとも1つの配列を含むか、または1つ以上の核酸塩基部分が分子内に存在しない場合、半連続的な核酸塩基は、すべての核酸塩基が対応する核酸塩基と塩基対を形成していない場合であっても、少なくとも1つの核酸鎖または二重鎖にハイブリダイズできる核酸を指す。特定の実施形態では、「実質的に相補的な」核酸は、核酸塩基配列の約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%〜約100%、及びその中の任意の範囲が、ハイブリダイゼーション中に少なくとも1つの一本鎖または二本鎖の核酸分子と塩基対を形成することができる少なくとも1つの配列を含む。特定の実施形態では、用語「実質的に相補的」は、ストリンジェントな条件で少なくとも1つの核酸鎖または二重鎖にハイブリダイズし得る少なくとも1つの核酸を指す。特定の実施形態では、「部分的に相補的な」核酸は、低ストリンジェント条件で少なくとも1つの一本鎖または二本鎖核酸にハイブリダイズし得る少なくとも1つの配列を含むか、または核酸塩基配列の約70%未満がハイブリダイゼーション中に少なくとも1つの一本鎖または二本鎖の核酸分子と塩基対を形成することができる少なくとも1つの配列を含む。
【0036】
「非相補的」という用語は、特定の水素結合を介して少なくとも1つのワトソンクリック塩基対を形成する能力を有さない核酸配列を指す。
【0037】
本明細書で使用される「平滑末端」という用語は、5’末端及び3’末端を有するdsDNA分子の末端を指し、5’末端及び3’末端は同じヌクレオチド位置で終結する。したがって、平滑末端は5’または3’オーバーハングを含まない。
【0038】
本明細書で使用される「オーバーハング」という用語は、5’末端及び3’末端を有するdsDNA分子の末端を指し、5’末端及び3’末端が異なるヌクレオチド位置で終結し、これにより5’末端及び3’末端のいずれかの末端にそれらと水素結合するヌクレオチドを有さない少なくとも1つのヌクレオチドが残存している。
【0039】
本明細書で使用される「キャップ」という用語は、その5’−炭素を介して三リン酸基に結合し、次いで、一次mRNA転写産物のほとんどの5’−ヌクレオチドの5’−炭素に結合するグアニンヌクレオシドであり、ほとんどの真核生物では、キャップヌクレオチド内のグアニンの7位にある窒素がメチル化される。ほとんどの真核生物の細胞のmRNA転写産物及びほとんどの真核生物のウイルスのmRNA転写産物は、5’末端でブロックされているかまたは「キャップ構造を有する」。mRNAに加えて、これらに限定されないが、核内低分子RNA(「snRNA」)及びプレマイクロRNA(すなわち、「プレmiRNA」、プロセシングを受けてmiRNAになる一次転写産物)などの真核生物RNAの他の形態もキャップ構造を有する。真核生物の細胞性及びウイルス性mRNA(及びRNAの他のいくつかの形態)の5’キャップは、RNAの安定性及びプロセシングにおいて重要な役割を果たす。例えば、キャップは、核内のRNA転写産物のプロセシング及び成熟、核から細胞質へのmRNAの輸送、mRNA安定性、及びタンパク質へのmRNAの効率的な翻訳のために、それらの程度を変更するために必要とされる。
【0040】
「サンプル」とは、目的の核酸を含む、新鮮なまたは保存された生物学的サンプルまたは合成によって作製された供給源から取得されたまたは単離された物質を意味する。特定の実施形態では、サンプルは、データまたは情報が求められる可変免疫領域(複数可)を含む生物学的物質である。サンプルには、少なくとも1つの細胞、胎児細胞、細胞培養、組織標本、血液、血清、血漿、唾液、尿、涙液、膣分泌物、汗、リンパ液、脳脊髄液、粘膜分泌物、腹腔液、腹水液、便物質、体液、臍帯血、絨毛膜絨毛、羊水、胚組織、多細胞胚、ライセート、抽出物、溶液、または目的の免疫核酸を含んでいる疑いがある反応混合物を挙げることができる。サンプルとしてはまた、非ヒト霊長類、げっ歯類及び他の哺乳動物、他の動物、植物、真菌、細菌、及びウイルスなどの非ヒト供給源を挙げることができる。
【0041】
ヌクレオチド配列に関して本明細書で使用される場合、「実質的に公知である」は、その増幅など、核酸分子の調製を可能にするために十分な配列情報を有することを指す。これは典型的には約100%であるが、いくつかの実施形態では、アダプター配列の一部はランダムであるか、または縮退している。したがって、特定の実施形態では、実質的に公知であるとは、約50%〜約100%、約60%〜約100%、約70%〜約100%、約80%〜約100%、約90%〜約100%、約95%〜約100%、約97%〜約100%、約98%〜約100%、または約99%〜約100%を指す。
【0042】
実施形態の核酸
本開示の核酸は、増幅、逆転写、及び/またはin vitro転写プライマー及びオリゴヌクレオチド、腫瘍由来の核酸、及び/または腫瘍もしくは腫瘍細胞に対して有効である免疫応答を誘導し得るものなどの1つ以上のタンパク質またはペプチドをコードする組換え核酸を含み得る。いくつかの実施形態では、免疫応答を誘導し得る核酸の生成は、cDNAを生成するための標的mRNAの逆転写を含む。逆転写の方法は当技術分野でよく知られている(米国特許第5,962,271号及び6,518,019号、参照により本明細書に組み入れられる)。逆転写は、逆転写酵素としても公知であるRNA依存性DNAポリメラーゼによって行われる。逆転写酵素は、標的mRNAの3’末端にハイブリダイズしたプライマーに結合し、mRNAに相補的なDNAを合成する。逆転写酵素では、新たに合成されたcDNAの3’末端に、短いポリ(C)テールなどのいくつかの非鋳型ヌクレオチドを追加し得る。第2のプライマーは、新生cDNAの3’末端にハイブリダイズされ得、逆転写酵素は、第2のプライマーをその鋳型として使用するための鋳型スイッチ活性を使用して、プライマーに相補的なDNAの合成を継続し得る。
【0043】
逆転写または増幅で使用されるプライマーまたはオリゴヌクレオチドでは、相補鎖合成中に、標的配列の5’末端及び3’末端への外因性DNAまたはRNA配列の付加が可能になり得る。逆転写または増幅反応を抗原刺激するために使用されるプライマーまたはオリゴヌクレオチドは、これらに限定されないが、転写プロモーター、リボソーム結合部位、または制限エンドヌクレアーゼ切断部位など、様々な特徴を組み込んでもよい。いくつかの実施形態では、プライマーは、転写プロモーター配列を含み得る。
【0044】
逆転写により調製されたcDNAは、RNAに増幅または転写することができる。cDNAの濃度を上昇させるために、cDNAは、PCRによって増幅され得る。逆転写用のプライマーは、PCR用のプライマーとして使用してもよく、または別のプライマーを追加してもよい。PCR反応では、cDNAを増幅させるために逆転写酵素を利用してもよく、またはDNA増幅の効率を高めるために、DNA依存性DNAポリメラーゼを追加してもよい。逆転写またはDNA増幅のためのプライマーとしては、T7プロモーター配列などの転写プロモーター配列を挙げることができる。cDNAまたは増幅させたcDNAは、in vitro転写プロセスで転写されて、AMPLISCRIBE(商標)T7−FLASH(登録商標)(LUCIGEN(登録商標)カタログ番号ASF3257)などの任意の市販のRNAポリメラーゼまたはin vitro転写キットを使用して大量の初期標的RNAを生成し得る。
【0045】
特定の実施形態では、核酸組成物は、腫瘍由来の核酸集団及び組換え核酸成分の両方を含む。この組み合わせ核酸組成物により、既知の腫瘍抗原が増加する、または本明細書に記載される方法及び組成物の有効性を高めるタンパク質またはペプチドをコードする特定のまたは他の核酸が増加する。
【0046】
「腫瘍由来の」核酸は、その起源が腫瘍細胞内にあり、かつ腫瘍抗原(複数可)に対応しているRNAを含む核酸を指す。腫瘍抗原または以前に同定された腫瘍抗原の全てまたは一部分をコードするRNAが含まれる。このような核酸は、「in vitro転写」できる。例えば、逆転写され得、PCRにより増幅され得、その後、in vitroで、cDNAをクローニングするかまたはクローニングせずに転写され得るcDNAを生成する。また、腫瘍細胞の分画調製物として提供されるRNAも含まれる。未分画RNA調製物(例えば、総RNAまたは総ポリARNA)であっても使用可能であるため、腫瘍抗原を同定する必要はない。一実施形態では、細胞の非RNA成分(複数可)に関して、調製物を分画させる。これは、タンパク質、脂質及び/またはDNAなどの非RNA成分の濃度を低下させて、RNAの調製物を富化するためである。所望であれば、RNAに関して調製物を(例えば、サブトラクティブハイブリダイゼーションによって)さらに分画して、「腫瘍特異的」または「病原体特異的」RNAが生成されるようにする。
【0047】
「腫瘍特異的」RNAとは、未分画の腫瘍由来のRNAに対して、非腫瘍細胞と比較して腫瘍細胞内に優先的に存在している高含有量のRNAを有するRNAサンプルを意味する。例えば、腫瘍特異的RNAとしては、腫瘍細胞内には存在するが非腫瘍細胞内には存在しないRNAが挙げられる。また、この定義には、腫瘍細胞内及び非腫瘍細胞内の両方に存在するが、非腫瘍細胞内よりも腫瘍細胞内において高レベルで存在するRNAを含むRNAサンプルが包含される。また、この定義には、以前に同定された腫瘍抗原をコードし、例えばプラスミドから、またはPCRによってinvitroで生成されるRNAも含まれる。あるいは、腫瘍サンプルを分画することにより、腫瘍抗原に対応するRNAの割合が、未分画腫瘍由来のRNAと比較して増加するように、腫瘍特異的RNAを調製することができる。例えば、腫瘍特異的RNAは、非腫瘍細胞からのRNAに対する従来のサブトラクティブハイブリダイゼーション技術を使用して腫瘍由来RNAを分画することにより調製することができる。
【0048】
腫瘍由来の核酸またはRNAの生成に好適である方法が本明細書に提供されている。これらの核酸は、樹状細胞の抗原刺激及び成熟樹状細胞の調製に使用できる。核酸が精製された形態でDCに提供される必要はない。好ましくは、RNAサンプル(すなわち、分画された腫瘍調製物)は、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%(wt/vol)のRNAである。
【0049】
当技術分野で既知のトランスフェクション法は、腫瘍由来の核酸を樹状細胞に導入するのに好適である。例えば、500μlのOpti−MEM中の5〜50μgのRNAを、10〜100μgの濃度でカチオン性脂質と混合し、室温で20〜30分間インキュベートすることができる。他の好適な脂質としては、LIPOFECTIN(商標)(1:1(w/w)DOTMA:DOPE)、LIPOFECTAMINE(商標)((3:1(w/w)DOSPA:DOPE)、DODAC:DOPE(1:1)、CHOL:DOPE(1:1)、DMEDA、CHOL、DDAB、DMEDA、DODAC、DOPE、DORI、DORIE、DOSPA、DOTAP、及びDOTMAが挙げられる。次に、得られたRNA−脂質複合体を、1〜3x106細胞、好ましくは2x106の抗原提示細胞に加え、総量約2ml(例えばOpti−MEM中)で、37℃で2〜4時間インキュベートする。あるいは、1〜5x106細胞及び5〜50μgのRNAを用いたエレクトロポレーションまたはリン酸カルシウムトランスフェクションなどの従来の技術を使用することにより、RNAは、抗原提示細胞に導入され得る。典型的には、5〜20μgのポリA RNAまたは25〜50μgのトータルRNAが典型的には使用される。
【0050】
RNAが腫瘍調製物として提供される場合、典型的には、調製物は分画されるか、さもなければ処理されて、調製物中のタンパク質、脂質、及び/またはDNAの濃度を低下させ、RNAの調製物を富化させる。例えば、当該技術分野で既知のRNA精製法を使用して、腫瘍細胞または病原体からRNAを少なくとも部分的に精製することができる。RNA調製物をプロテアーゼまたはRNaseフリーDNaseで処理することもできる。
【0051】
実施形態の樹状細胞集団
樹状細胞を単離、培養及び抗原刺激するための方法は、当技術分野のおいて周知である。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,728,806号は、実施形態の組成物及び方法で使用され得る抗原刺激樹状細胞を提供するための詳細な方法を提供している。特定の態様では、実施形態に従って使用するための樹状細胞は、実施形態の方法によって治療される対象から単離される。他の態様では、樹状細胞は、HLA適合ドナーなどの異なる対象に由来し得る。特定の態様では、樹状細胞は、定義されたHLAタイピングを有する樹状細胞のバンクに由来する。好ましい態様では、実施形態に従って使用するための抗原刺激樹状細胞は、本明細書及び米国特許第8,728,806号に詳述されるように、抗原を相同的にロードされる。
【0052】
樹状細胞前駆体及び未成熟樹状細胞を富化させた細胞集団を、血液及び骨髄など、様々な供給源から単離するための方法は、当技術分野で知られている。例えば、樹状細胞前駆体及び未成熟樹状細胞は、ヘパリン添加血液を採取することにより、アフェレーシスまたは白血球除去法により、バフィーコートの調製、ロゼット様構造の形成、遠心分離、密度勾配遠心分離(例えば、FICOLL(FICOLL−PAQUE(登録商標)など)を使用)、PERCOLL(登録商標)(非透析性ポリビニルピロリドン(PVP)、スクロースなどでコーティングされたコロイダルシリカ粒子(直径15〜30mm))、細胞の示差溶解、濾過などにより単離され得る。特定の実施形態では、白血球集団は、例えば、対象から血液を収集し、細かく砕いて血小板を除去し、赤血球を溶解することなどによって調製することができる。樹状細胞前駆体及び未成熟樹状細胞は、任意により、例えばPERCOLL(登録商標)勾配による遠心分離により、単球性樹状細胞前駆体に対して富化され得る。他の態様では、樹状細胞前駆体は、G−CSF動員末梢血のCD14選択を使用して選択することができる。
【0053】
樹状細胞前駆体及び未成熟樹状細胞は、任意により、閉鎖された無菌システムで調製され得る。本明細書で使用する場合、「閉鎖無菌系」または「閉鎖系」という用語は、滅菌されていない周囲もしくは循環空気または他の滅菌されていない状態への曝露が最小限に抑えられるかまたは排除されるシステムを指す。樹状細胞前駆体及び未成熟樹状細胞を単離するための閉鎖系は、一般に、オープントップチューブでの密度勾配遠心分離、細胞のオープンエアー移送移動、組織培養プレートまたは非密閉フラスコでの細胞培養などを除外する。典型的な実施形態では、閉鎖系では、非無菌空気に暴露することなく、樹状細胞前駆体及び未成熟樹状細胞の初期収集容器から密閉型組織培養容器への無菌移送が可能になる。
【0054】
特定の実施形態では、単球性樹状細胞前駆体は、単球結合基質へ付着することによって単離される。例えば、白血球の集団(例えば、白血球アフェレーシスにより単離されたもの)は、単球樹状細胞前駆体が付着している基質と接触させることができる。白血球の集団が基質と接触するときに、白血球の集団中の単球性樹状細胞前駆体が優先的に基質に付着する。他の白血球(他の潜在的な樹状細胞前駆体など)は、基質に対する結合親和性の低下を呈し、それにより、単球性樹状細胞前駆体をその基質の表面上で優先的に富化することができる。
【0055】
好適な基質としては、例えば、表面積対体積比が大きいものが挙げられる。こうした基質は、例えば、粒子状または繊維状基質であり得る。好適な粒子状基質としては、例えば、ガラス粒子、プラスチック粒子、ガラス被覆プラスチック粒子、ガラス被覆ポリスチレン粒子、及びタンパク質の吸収に好適である他のビーズが挙げられる。好適な繊維性基質としては、微小毛細管及び微絨毛膜が挙げられる。粒子状または繊維状基質は、通常、付着した細胞の生存能を実質的に低下させることなく、付着した単球性樹状細胞前駆体を溶出させることができる。粒子状または繊維性基質は、基質からの単球樹状細胞前駆体または樹状細胞の溶出を容易にするために実質的に非多孔性であり得る。「実質的に非多孔性の」基質は、基質中での細胞の取り込みを少なくとも最小限に抑えるために、基質中に存在する少なくとも大部分の孔が細胞よりも小さい基質である。
【0056】
単球樹状細胞前駆体の基質への付着は、結合培地を添加することにより任意に増大させることができる。好適な結合培地としては、サイトカイン(例えば、顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターロイキン4(IL−4)、またはインターロイキン13(IL−13))、血漿、血清(例えば、ヒト血清、例えば自家または同種血清など)、精製されたタンパク質、例えば、血清アルブミンなど、二価陽イオン(例えば、カルシウム及び/またはマグネシウムイオン)ならびに単球樹状細胞前駆体の基質への特定の付着を助けるか、または非単球樹状細胞前駆体の基質への付着を防ぐ他の分子を個別に、または任意の組み合わせで補充した、単球性樹状細胞前駆体培地(例えば、AIM−V(登録商標)、RPMI1640、DMEM、X−VIVO15(登録商標)など)を挙げることができる。特定の実施形態では、血漿または血清は加熱不活性化され得る。加熱不活性化させた血漿は、白血球に対して自家または異種であり得る。
【0057】
単球性樹状細胞前駆体が基質へ付着した後、非付着性白血球は、単球性樹状細胞前駆体/基質複合体から分離される。非付着性細胞を複合体から分離するために、任意の好適な手段が使用され得る。例えば、非付着性白血球と複合体との混合物を沈降させ、非付着性白血球及び培地をデカントまたは排出することができる。あるいは、混合物は、遠心分離して、付着していない白血球を含む上清を、ペレット化した複合体からデカントまたは排出することができる。
【0058】
単離された樹状細胞前駆体は、分化、成熟及び/または拡大のために、ex vivoで培養させてもよい。(本明細書で使用される場合、単離された未成熟樹状細胞、樹状細胞前駆体、T細胞、及び他の細胞は、ヒトの手によって、その本来の環境から離れて存在し、したがって自然の産物ではない細胞を指す。単離細胞は、精製形態、半精製形態、または非ネイティブ環境で存在し得る。)簡潔に述べると、ex vivo分化は、典型的には、樹状細胞前駆体、または樹状細胞前駆体を有する細胞の集団を、1つ以上複数の分化剤の存在下で培養することを含む。好適な分化剤は、例えば、細胞増殖因子(例えば、(GM−CSF)、インターロイキン4(IL−4)、インターロイキン13(IL−13)、及び/またはそれらの組み合わせなどのサイトカイン)であり得る。特定の実施形態では、単球樹状細胞前駆体は分化して、単球由来の未成熟樹状細胞を形成する。
【0059】
樹状細胞前駆体は、好適な培養条件で培養させ、分化させることができる。好適な組織培養培地としては、AIM−V(登録商標)、RPMI1640、DMEM、X−VIVO15(登録商標)などが挙げられる。組織培養培地は、細胞の分化を促進するために、血清、アミノ酸、ビタミンのほか、GM−CSF及び/またはIL−4などのサイトカイン、二価カチオンなどを補充することができる。特定の実施形態では、樹状細胞前駆体は、無血清培地で培養することができる。そのような培養条件では、任意により動物由来のいかなる生成物も除外され得る。典型的な樹状細胞培養培地における典型的なサイトカインの組み合わせは、GM−CSF(50ng/ml)及びIL−4(10ng/ml)がそれぞれ約500単位/mlである。樹状細胞前駆体は、分化して未成熟樹状細胞を形成する場合、皮膚のランゲルハンス細胞と表現型がほぼ同じである。未熟樹状細胞は典型的には、CD14−及びCD11c+であり、低レベルのCD86及びCD83を発現し、特殊なエンドサイトーシスを介して可溶性抗原を捕捉することができる。未熟DCは、非常に高いレベルのCD86を発現した。また、集団はCD14及びCD11Cに関して混合した。大部分がCD11c+であったが、異なるサブ集団があり、それはCD11c−及びCD14+であった。
【0060】
未成熟樹状細胞は、成熟して成熟樹状細胞を形成する。成熟DCでは、抗原を取り込み、共刺激性細胞表面分子及び様々なサイトカインの上方制御された発現を表示する能力を失う。具体的には、成熟DCは、未成熟樹状細胞よりも高いレベルのMHCクラスI及びII抗原を発現し、成熟樹状細胞は、一般にCD80+、CD83+、CD86+、及びCD14−であると識別されている。MHCの発現が増加することにより、DC表面での抗原密度が増大するが、共刺激分子CD80及びCD86の上方制御により、T細胞上のCD28などの共刺激分子の対応物を介してT細胞活性化シグナルが強化される。
【0061】
本発明の成熟樹状細胞は、未成熟樹状細胞を有効量または濃度の核酸組成物及び腫瘍抗原組成物と接触させることにより調製する(すなわち、成熟させる)ことができる。核酸組成物の有効量は、典型的には、培養皿または細胞あたり、最大、少なくとも、または約0.01、0.1、1、5、10から10、15、20、50、100ngまたはmg、その間のすべての値及び範囲などの核酸の範囲である。腫瘍抗原組成物の有効量は、典型的には、培養皿または細胞あたり、最大で、少なくとも、または約0.01、0.1、1、5、10から10、15、20、50、100ngまたはmgのタンパク質の範囲である。特定の態様では、0.001ngの腫瘍抗原/細胞から1μgの腫瘍抗原/百万細胞を使用することができる。腫瘍抗原組成物は、樹状細胞と接触する前に、任意により熱で不活性化または処理する(例えば、プロテアーゼに曝露させる)ことができる。未成熟樹状細胞を核酸組成物及び腫瘍抗原組成物により成熟させることにより、1型(Th−1)応答に対して成熟樹状細胞の抗原刺激を行うことができる。
【0062】
未成熟DCは、典型的には、最大で、少なくとも、または約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12〜10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、または24分、時間、または日の間、有効量の核酸組成物及び腫瘍抗原組成物と接触する。未成熟樹状細胞は、好適な成熟培養条件で培養し、成熟させることができる。好適な組織培養培地としては、AIM−V(登録商標)、RPMI1640、DMEM、X−VIVO15(登録商標)などが挙げられる。組織培養培地は、細胞の成熟を促進するために、アミノ酸、ビタミンのほか、GM−CSF及び/またはIL−4などのサイトカイン、二価カチオンなどを補充することができる。
【0063】
樹状細胞の成熟は、当技術分野で公知である方法によって監視することができる。細胞表面マーカーは、フローサイトメトリー、免疫組織化学などの当技術分野でよく知られているアッセイで検出することができる。細胞はまた、サイトカインの産生について監視され得る(例えば、ELISA、FACS、または他の免疫アッセイによる)。樹状細胞前駆体、未成熟樹状細胞、及び抗原による刺激を受けているか、または刺激を受けていない成熟した樹状細胞は、後日使用するために凍結保存できる。凍結保存するための方法は、当技術分野でよく知られている。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,788,963号。
【0064】
核酸または核酸による刺激を受けた樹状細胞は、RNA、例えば腫瘍または腫瘍細胞に由来するRNAと共にインキュベートされたかまたはトランスフェクトされた樹状細胞である。そのようなRNAは、脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、及びリン酸カルシウムトランスフェクションなどの従来の核酸トランスフェクション法を使用してトランスフェクトすることができる。例えば、37℃で1〜24時間(例えば、2時間)、DCをRNA(または抽出物)とインキュベートすることにより、RNAをDCに導入することができる。
【0065】
本開示の核酸がロードされた抗原提示細胞は、in vivoまたはex vivoにおいてCTL増殖を刺激するために使用され得る。核酸ロード樹状細胞がCTL応答を刺激する能力は、エフェクター細胞が標的細胞を溶解する能力を分析することによって測定することができる。例えば、一般的に使用されているユウロピウム放出アッセイが使用され得る。典型的には、5〜10x106個の標的細胞は、4℃で20分間、ユウロピウムジエチレントリアミンペンタアセテートにより標識する。数回洗浄後、エフェクター:標的比50:1〜6.25:1の範囲で、104ユウロピウムで標識された標的細胞及びエフェクター細胞の段階希釈液を、96ウェルプレート内の10%加熱不活化ウシ胎児血清を含む200μlRPMI1640でインキュベートする。プレートを500xgで3分間遠心分離し、37℃、5%CO2で4時間インキュベートする。上清の50μlアリコットを収集し、ユウロピウムの放出を時間分解蛍光(Volgmann et al.,J.Immunol.Methods 119:45−51,1989)によって測定する。
【0066】
A.遺伝子改変樹状細胞
実施形態の特定の態様は、遺伝子改変された樹状細胞に関する。いくつかの態様では、遺伝子改変は、阻害性核酸などの外因性導入遺伝子を細胞へ導入することを含む。さらなる態様では、導入遺伝子は、誘導性プロモーターの制御下で、チミジンキナーゼをコードする遺伝子などの自殺遺伝子であり得る。従って、いくつかの態様では、免疫応答を刺激した後、投与された樹状細胞は、自殺遺伝子の発現を制御するプロモーターの誘導によって死滅され得る。
【0067】
さらなる態様では、遺伝子改変は、細胞集団におけるゲノムの欠失または挿入を含む。例えば、1つ以上のHLA遺伝子を破壊して、樹状細胞を、治療される対象にとって有効なHLA適合にすることができる。
【0068】
実施形態のさらなる態様は、CTLA−4の発現を低下させるなどのため、遺伝子改変された樹状細胞に関する。いくつかの態様では、遺伝子改変は、CTLA−4に特異的な外因性阻害性核酸を導入することを含む。特定の態様では、阻害性核酸は、樹状細胞においてDNAベクターから発現されるRNAなどのRNAである。さらなる態様では、阻害性核酸は、樹状細胞に導入されるsiRNA、dsRNA、miRNAまたはshRNAであってもよい。こうしたRNAの詳細な開示は、上記に提供されている。
【0069】
さらなる態様では、遺伝子改変は、CTLA−4を減少させる細胞集団におけるゲノムの欠失または挿入を含む。他の態様では、樹状細胞は、CTLA−4遺伝子内のヘミ接合体欠失またはホモ接合体欠失を含む。例えば、いくつかの態様では、樹状細胞のCTLA−4遺伝子の一方または両方のコピーを完全にまたは部分的に欠失させることができ、これにより、CTLA−4ポリペプチドの発現が阻害されるようになる。いくつかの態様では、細胞が1つ以上のCTLA−4遺伝子を発現しないように細胞を改変することは、CTLA−4遺伝子座を特異的に標的とする人工ヌクレアーゼを細胞に導入することを含み得る。様々な態様では、人工ヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALEN、またはCRISPR/Cas9であり得る。様々な態様では、人工ヌクレアーゼを細胞に導入することは、人工ヌクレアーゼをコードするmRNAを細胞に導入することを含み得る。
【0070】
併用療法
本実施形態によって生成された核酸により形質転換された樹状細胞を含む樹状細胞療法の有効性を高めるために、これらの組成物を目的の疾患の治療に有効な他の剤と組み合わせることが望ましい場合がある。
【0071】
非限定的な例として、がんの治療は、他の抗がん剤と共に、本発明の実施形態の抗原刺激樹状細胞組成物を用いて実施されてもよい。「抗がん」剤は、例えば、がん細胞を死滅させること、がん細胞においてアポトーシスを誘導すること、がん細胞の成長速度を低下させること、転移の発生率または数を減少させること、腫瘍サイズを減少させること、腫瘍成長を阻害すること、腫瘍細胞またはがん細胞への血液供給を減少させること、がん細胞または腫瘍に対する免疫応答を促進すること、がんの進行を防止もしくは阻害すること、またはがんを有する対象の寿命を延長することにより、対象においてがんに悪影響を及ぼすことができる。より一般的には、これらの他の組成物は、細胞を死滅させることまたは細胞の増殖を阻害することに有効な組み合わせ量で提供される。このプロセスは、細胞を抗がんペプチドまたはナノ粒子複合体及び剤(複数可)または複数の因子(複数可)と同時に接触させることを伴い得る。これは、細胞を両方の剤を含む単一の組成物もしくは薬理学的配合物と接触させることにより、または同時に細胞を2つの異なる組成物もしくは配合物と接触させることにより達成され得、一方の組成物は樹状細胞組成物を含み、他方の組成物は、第2の剤(複数可)を含む。
【0072】
樹状細胞組成物による治療は、数分から数週間の範囲の間隔で他の剤による治療の前または後に行うことができる。他の剤及び樹状細胞組成物が対象に別々に適用される実施形態では、一般に、確実に、各々の送達の間に有意な期間が終了しないようにする。これにより、剤及び樹状細胞組成物が依然として細胞に対して有利な組み合わせ効果を発揮できるようになる。こうした例では、互いに約12〜24時間以内に、より好ましくは互いに約6〜12時間以内に両方の療法が細胞に接触できるよう企図される。いくつかの状況では、それぞれの投与の間に、数日間(例えば、2日、3日、4日、5日、6日、または7日間)から数週間(例えば、1週、2週、3週、4週、5週、6週、7週、または8週間)が経過する状態で、治療のための期間を有意に延長させることが望ましい場合がある。
【0073】
樹状細胞療法が「A」であり、放射線療法、化学療法または抗炎症剤などの二次的剤が「B」である場合、様々な組み合わせを使用してもよい:
A/B/A B/A/B B/B/A A/A/B A/B/B B/A/A A/B/B/B B/A/B/B
B/B/B/A B/B/A/B A/A/B/B A/B/A/B A/B/B/A B/B/A/A
B/A/B/A B/A/A/B A/A/A/B B/A/A/A A/B/A/A A/A/B/A
特定の実施形態では、患者への本実施形態の樹状細胞療法剤の投与は、(存在する場合には)ベクターの毒性を考慮して、化学療法剤を投与するための一般的なプロトコルに従う。治療サイクルは必要に応じて繰り返されることが予想される。また、様々な標準的な治療法、ならびに外科的介入が、記載された過剰増殖性細胞治療と組み合わせて適用され得ることが企図される。
【0074】
A.化学療法
がん治療には、様々な併用療法も含まれる。いくつかの態様では、実施形態の樹状細胞組成物は、化学療法剤と組み合わせて投与(または配合)される。例えば、いくつかの態様では、化学療法剤は、EGFR、VEGFR、AKT、Erb1、Erb2、ErbB、Syk、Bcr−Abl、JAK、Src、GSK−3、PI3K、Ras、Raf、MAPK、MAPKK、mTOR、c−Kit、eph受容体またはBRAF阻害剤などのタンパク質キナーゼ阻害剤である。タンパク質キナーゼ阻害剤の非限定的な例としては、アファチニブ、アキシチニブ、ベバシズマブ、ボスチニブ、セツキシマブ、クリゾチニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、フォスタマチニブ、ゲフィチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、レンバチニブ、ムブリチニブ、ニロチニブ、パニツムマブ、パゾパニブ、ペガプタニブ、ラニビズマブ、ルキソリチニブ、サラカチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、トラスツズマブ、バンデタニブ、AP23451、ベムラフェニブ、MK−2206、GSK690693、A−443654、VQD−002、ミルテホシン、ペリホシン、CAL101、PX−866、LY294002、ラパマイシン、テムシロリムス、エベロリムス、リダホロリムス、アルボシジブ、ゲニステイン、セルメチニブ、AZD−6244、バタラニブ、P1446A−05、AG−024322、ZD1839、P276−00、GW572016、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0075】
さらに他の併用化学療法としては、例えば、チオテパ及びシクロホスファミドなどのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファンなどのスルホン酸アルキル;ベンゾドパ、カルボコン、メツレドパ(meturedopa)、及びウレドパなどのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド及びトリメチルオロメラミンなどのエチレンイミン及びメチルアメラミン(methylamelamine);アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンなど);ブリオスタチン;カリスタチン;CC−1065(アドゼレシン、カルゼレシン、ビゼレシン合成類似体など);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成類似体、KW−2189及びCB1−TM1など);エレウテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンギスタチン;ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、シクロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミン、メルファラン、ノブエンビキン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア、例えば、カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチン;エンジイン抗生物質などの抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンガンマI及びカリケアマイシンオメガI1;ダイネミシン(ダイネミシンAなど);ビスホスホネート、例えば、クロドロネート;エスペラマイシン;ネオカルチノスタチン発色団及び関連する色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシニス(chromomycinis)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシン)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルチセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン(nogalarnycin)、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサート及び5−フルオロウラシル(5−FU)などの代謝拮抗剤;葉酸類似体、例えば、デノプテリン、プテロプテリン、トリメトレキセート;プリン類似体、例えば、フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなど;ピリミジン類似体、例えば、アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン;アンドロゲン、例えば、カルステロン、ドロスタノロンプロピオン酸エステル(dromostanolone propionate)、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎、例えばミトタン、トリロスタン;葉酸補充剤、例えば、フロリン酸;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキサート;デフォファミン(defofamine);デメコルシン;ジアジコン;エルフォルミチン(elformithine);エリプチニウム酢酸塩;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);メイタンシノイド、例えば、メイタンシン及びアンサミトシン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK多糖複合体;ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2’’−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT−2毒素、ベラクリンA、ロリジンA及びアンギジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;タキソイド、例えば、パクリタキセル及びドセタキセルゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;白金配位錯体、例えば、シスプラチン、オキサリプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP−16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン(例えば、CPT−11);トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;カペシタビン;カルボプラチン、プロカルバジン、プリコマイシン、ゲムシタビン、ナベルビン、ファルネシルタンパク質タンスフェラーゼ阻害剤、トランスプラチナ、ならびに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸または誘導体が挙げられる。特定の実施形態では、本明細書で提供される組成物は、ゲフィチニブと組み合わせて使用されてもよい。他の実施形態では、本実施形態は、Gleevacと組み合わせて実施され得る(例えば、約400〜約800mg/日のGleevacを患者に投与することができる)。特定の実施形態では、1つ以上の化学療法剤を、本明細書で提供される組成物と組み合わせて使用されてもよい。
【0076】
B.放射線療法
DNA損傷を引き起こし、かつ広範囲に使用されている他の因子は、γ線、X線、及び/または腫瘍細胞への放射性同位体の直接送達として一般的に知られているものが挙げられる。マイクロ波及びUV照射など、他の形態のDNA損傷因子も考えられる。これらの因子のすべてが、DNA、DNAの前駆体、DNAの複製及び修復、ならびに染色体の組み立て及び維持に広範囲の損傷を与える可能性が最も高い。X線の線量範囲は、長期間(3〜4週間)の1日線量50〜200レントゲンから、単回線量2000〜6000レントゲンのまで範囲である。放射性同位体の線量範囲は大きく異なり、アイソトープの半減期、放出される放射線の強度及び種類、ならびに新生物細胞による取り込みに依存する。
【0077】
用語「接触させる」及び「曝露させる」は、細胞に適用されるときに、治療用組成物及び化学療法剤または放射線療法剤が標的細胞に送達されるか、もしくは標的細胞と直接並置して配置されるプロセスを説明するために本明細書で使用される。細胞の死滅またはうっ血を達成するために、例えば、両方の剤が、細胞を死滅させるか、または細胞の分裂を防止するために有効な組み合わせ量で、細胞に送達される。
【0078】
C.遺伝子治療
さらに別の実施形態では、二次治療は、治療用ポリヌクレオチドが治療用組成物の前、後、または同時に投与される遺伝子治療である。遺伝子産物の発現のためのウイルスベクターは、当技術分野において周知であり、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、レンチウイルス、ワクシニアウイルスなどのポックスウイルス、及びSV40などのパピローマウイルスなどの真核生物発現系が挙げられる。あるいは、発現構築物の投与は、リポソームまたはDOTAP:コレステロール小胞などの脂質ベースのベクターを用いて達成することができる。これらの方法はすべて、当技術分野でよく知られている(例えば、Sambrook et al.,1989;Ausubel et al.,1998;Ausubel,1996を参照のこと)。
【0079】
D.手術
がん患者の約60%は、ある種の手術(予防的、診断的、病期分類、治癒的及び緩和的手術など)を受ける。治癒的手術は、本明細書で提供される治療、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、遺伝子療法、免疫療法及び/または代替療法など、他の療法と組み合わせて使用され得るがん治療である。
【0080】
治癒的手術としては、癌性組織の全てまたは一部が物理的に除去、切除、及び/または破壊される切除が挙げられる。腫瘍切除とは、腫瘍の少なくとも一部を物理的に切除することを指す。腫瘍の切除のほかに、手術による治療としては、レーザー手術、凍結手術、電気手術、及び顕微鏡制御された手術(モース手術)が挙げられる。本実施形態は、表在性がん、前がん、または偶発的な量の正常組織の除去と組み合わせて使用され得ることがさらに企図される。いくつかの態様では、腫瘍切除後、実施形態の樹状細胞組成物は、以前の腫瘍部位から排出されたリンパ系組織に投与される。
【0081】
キット
本明細書の技術は、サンプル中のmRNAからcDNAを生成するため、及びcDNAのin vitro転写のためのキットを含む。「キット」とは、物理的要素の組み合わせを指す。例えば、キットとしては、例えば、これらに限定されないが、特定のプライマー、酵素、反応緩衝液、指示書、及び本明細書に記載の技術を実施するのに有用な他の要素などの1つ以上の構成要素を挙げることができる。これらの物理的要素は、本発明を実施するために好適である任意の方法で配置することができる。
【0082】
キットは、例えば、Φ29ポリメラーゼ、Bstポリメラーゼ、Taqポリメラーゼ、Ventポリメラーゼ、DNAポリメラーゼI、DNAポリメラーゼIのクレノウ断片、9Nmポリメラーゼ、T4ポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、Pfu DNAポリメラーゼ、Q5(登録商標)ポリメラーゼ(New England Biolabs)、またはRNAポリメラーゼなどのDNAポリメラーゼ、及び逆転写酵素をさらに含んでもよい。3’−5’エキソヌクレアーゼ活性を有さないT7ファージDNAポリメラーゼの変異型、またはそれらの混合物。
【0083】
キットは、例えば、E.coliRNAポリメラーゼ、SP6 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼ、T7 RNAポリメラーゼ、またはそれらの変異体など、in vitro転写用のRNAポリメラーゼをさらに含み得る。
【0084】
キットの成分は、水性媒体または凍結乾燥形態のいずれかで包装され得る。キットの容器手段としては、一般に、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジまたは他の容器手段が挙げられ、その中に成分が入れられ、好ましくは、好適に分注される(例えば、マイクロタイタープレートのウェルに分注される)。キット内に複数の成分が存在する場合、キットには通常、追加の成分を個別に配置できる第2、第3、または他の追加の容器も含まれる。しかし、成分の様々な組み合わせが単一のバイアル内に含まれ得る。本発明のキットとしてはまた、典型的には、核酸を収容するための手段、及び商業的販売のために厳重に閉じ込めた任意の他の試薬容器が挙げられる。こうした容器は、内部で所望のバイアルが保持される射出またはブロー成形プラスチック容器を含み得る。
【0085】
キットはまた、キット成分を用いるための指示書、ならびにキットに含まれていない任意の他の試薬の使用を含むこともある。指示書には、実装可能な変形が含まれ得る。こうした試薬は、本発明のキットの実施形態であると考えられる。しかし、こうしたキットは、上記で特定された特定の項目に限定されるものではなく、遺伝子のメチル化の操作または特徴付けのために使用される任意の試薬を含み得る。
【0086】
キットの容器手段としては、一般に、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、または他の容器手段が挙げられ、その内部に成分が配置され、好ましくは、好適に分注される。キット内に複数の成分が存在する場合、キットには通常、内部で追加の成分を個別に配置できる追加の容器も含まれる。しかし、成分の様々な組み合わせが容器内に含まれ得る。本発明のキットはまた、典型的には、成分容器を商業的販売のために厳重に閉じ込めて包装するための手段を含む。こうした包装としては、所望の成分容器が保持される射出またはブロー成形プラスチック容器を挙げることができる。
【実施例】
【0087】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すために含む。以下の実施例において開示された技術は、本発明の実行において良好に機能するように本発明者によって発見された技術を表し、したがって、その実施にあたって好ましい様態を構成すると考えられ得ることを、当業者に理解されるべきである。しかし、当業者は、本開示に照らして、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、多くの変更が開示される特定の実施形態においてなされるが、それでも同様なまたは類似する結果を得ることができることを理解するべきである。
【0088】
実施例1−材料及び方法
新鮮な組織のプロセシング−腫瘍の外科的除去後、腫瘍組織の重量を量り、スライスして小片(約20mg/片以下)にした。すべての片を1mLのRNA安定化溶液(RNALATER(商標)、Invitrogen)を含む1.5mLクライオバイアルに入れた。RNALATER(商標)及び切開した腫瘍を含むクリオバイアルを4℃で一晩放置し、RNase活性を防ぐ。4℃で一晩インキュベーションした後、組織を含むRNALATER(商標)溶液の入ったクリオバイアルを、10,000RPM、4℃で1分間遠心分離した。遠心分離後、上清をピペッティングにより除去し、組織の切片を秤量した。組織の10%は、その後のトータルRNAの調製に使用し、残りの90%は、その後の抗原ライセートの調製に使用した。
【0089】
抗原ライセートの調製−切開した腫瘍組織を15mLコニカルチューブに加え、滅菌PBSで100mg/mLに希釈した。次に、手持ち式組織ホモジナイザーを使用して、組織を含むPBSの均質懸濁液を作製した。次に、均質懸濁液の入ったチューブを液体窒素またはドライアイス/エタノール浴に浸して、懸濁液を凍結させた。凍結後、細胞懸濁液を55℃の水浴で完全に解凍するまでインキュベートした。この凍結融解サイクルをさらに2回繰り返した。最終解凍後、無菌性及び完全な細胞死を確保するために、セシウム照射器を介して、細胞懸濁液に2500Gy超の放射線をガンマ線照射した。次にライセートをさらに使用するまで−20℃で保存した。
【0090】
抗原のmRNAの調製−トータルRNAを、スピンカラムを利用するRNEASY(登録商標)ミニキット(Qiagenカタログ番号74104)、またはグアニジニウムチオシアネート及びフェノール混合物を利用するTRIPURE(登録商標)(Roche)法を、それぞれ製造業者の指示に従って用いて、RNALATER(商標)試薬で安定化させた組織から単離した。
【0091】
RNeasyトータルRNAの調製−600μLの緩衝液RLTを30mgの組織に添加し、得られた混合物を手持ち式組織ホモジナイザーを使用してホモジナイズした。ライセートに600μLの70%エタノールを添加し、ピペッティングにより混合した。700μLのサンプルをRNeasyスピンカラムに移し、2mLのコレクションチューブに入れた。サンプルを8,000xgで1分間遠心分離した。遠心分離後、通過画分は廃棄した。残りのライセートをスピンカラムに加え、再度遠心分離した。遠心分離後、通過画分は廃棄した。350μLの緩衝液RW1をカラムに加え、遠心分離した。DNase I溶液は、10μLのDNase Iストック溶液を70μLの緩衝液RDDに加え、その後穏やかに混合して調製した。次に、80μLのDNase I溶液をカラムに加え、室温で15分間インキュベートした。DNase Iのインキュベーション後、350μLの緩衝液RW1をカラムに加え、カラムを8000xgで1分間遠心分離した。遠心分離後、通過画分は廃棄した。次に、さらに700μLの緩衝液RW1を追加して膜を洗浄し、さらに8000xgで1分間遠心分離した後、500μlで、緩衝液RPEで2回洗浄し、8000xgで2回遠心分離した。次に、膜を2分間の遠心分離により乾燥させた。予め加温したヌクレアーゼフリーの水50μlをカラム内の膜に直接加え、1分間インキュベートし、8000xgで1分間遠心分離することにより、RNAを新しいカラムに溶出した。RNAを濃縮するために、溶離液を使用して2回目の溶離を行った。次にトータルRNAを定量化した。トータルRNAは、長期保存のために−80℃で保存した。
【0092】
グアニジニウムチオシアネート/フェノール/クロロホルムRNAの単離−腫瘍組織50mgごとに、1mLのグアニジニウムチオシアネート及びフェノール試薬(TRIpure(商標)試薬(Roche)、カタログ番号11 667 157 001)を加え、得られた混合物を、手持ち式組織ホモジナイザーを使用してホモジナイズした。次に、ホモジナイズさせた混合物を13,000RPMで5分間4℃で遠心分離して、ホモジネートを取り除いた。ホモジネートの上清を新しいRNaseフリーのチューブに移した。上清を取り除くために、400uLのクロロホルムを加え、混合物を逆さにして完全に混合した。次に、上清/クロロホルム混合物を室温で5〜10分間インキュベートした。次に、混合物を4500RPMで45分間または12,000xgで15分間4℃で遠心分離して、上清を取り除いた。遠心分離後、得られた混合物は3つの相(有機相、界面、水相)で存在する。水相をピペッティングで収集し、事前に冷却したチューブに直接移す。出発物質のグアニジニウムチオシアネート及びフェノール試薬1mLごとに、イソプロパノール0.5mLを加えた。イソプロパノール/上清混合物を穏やかに混合し、室温で10分間インキュベートした。インキュベーション後、4500RPMで45分間、または12000xG、15分間、4℃で遠心分離することにより、RNAをペレット化した。ペレット化RNAを1mLの70%エタノールで洗浄し、再度遠心分離した。上清をピペッティングにより除去し、ペレットを氷上で5〜10分間風乾させた。次に、ペレットを100uLのRNaseフリー水に溶解し、55℃で5分間インキュベートした。次にトータルRNAの濃度を測定した。トータルRNAは、長期保存のために−80℃で保存した。第1の鎖合成の前に、グアニジニウムチオシアネート法を使用して単離させたトータルRNAは、4ugのトータルRNAを含む1Xに希釈された10X緩衝液に1uLの増幅グレードDNase(Invitrogenカタログ番号18068−015)を加えることによりDNase処理した。DNase反応を15分間進行させ、1uLのEDTAを加えることによって停止させた。
【0093】
cDNA合成−各サンプル及び対照に、次のRNA/プライマーアニーリングミックスを無菌0.2mLPCRチューブで調製した:総反応体積19uLに対して、4uLの10uM配列番号1の溶液(VKWDオリゴ)、配列番号2の10uM溶液4uL(CDS64T+オリゴ)、サンプルRNA4ug、及び水。溶液を混合し、マイクロフュージで短時間回転させて、溶液をチューブの底に凝縮させた。次に、この溶液を予熱したサーモサイクラーで72℃で2分間インキュベートし、4℃まで冷却した。次に、第1の鎖合成マスターミックスを調製する間、サンプルを氷上で保存した。
【0094】
各反応プラス1つの非鋳型対照を考慮して、第1の鎖合成マスターミックスを調製し、Superscript(登録商標)First Strand Synthesis Kit(Invitrogenカタログ番号11904−018)内の試薬から調製した。マスターミックスには、サンプルごとに、サンプルあたり21μLの総体積に対して4uLの10X First−Strand緩衝液、4uLのDTT(100mM)、1uLのRNase阻害剤(RNase Out(商標))、4uLのMgCl(25mM)、4uLのdNTPミックス(dATP、dGTP、dCTP、及びdTTPのそれぞれ10mM)、及び4ULのSuperscript II逆転写酵素(登録商標)を含めた。
【0095】
21uLの第1の鎖合成マスターミックスを、19ulのRNA/プライマーアニーリングミックスの入った各チューブに加えた。NTCなど、各反応物を42℃で1時間インキュベートし、cDNAの第1の鎖を合成した。次に、第1の鎖合成反応物を微量遠心機での短時間の遠心分離によって収集し、第2の鎖cDNAを合成する前に氷上で冷却した。
【0096】
第2の鎖合成マスターミックスは、MgCl2を含む100uL FastStart(商標)高忠実度反応緩衝液、40uLの10μmol/L CDS64T+オリゴ(配列番号2)、20uLの20μmol/L Powerswitch T7プライマー(配列番号3)、20uL dNTPミックス(dATP、dGTP、dCTP、dTTP各10mM)、20uLのFastStart高忠実度酵素、及び780uLの水(合計980uL/サンプル)を添加して調製した。20uLの第1の鎖合成反応物を第2の鎖合成マスターミックスに加えた。次に、得られた混合物を、0.2mL PCRチューブ内で、各々100uLの10等量に分割した。これらの各反応物は、次のプログラムを使用して熱サイクルに供した:
1x 95℃、5分間
11x 95℃、30秒間
65℃、30秒間
67℃、6分間
9x 95℃、35秒間
65℃、35秒間
67℃、6分5秒
追加のサイクルごとに、67℃での延長がさらに5秒増加する。例えば、サイクル1=6:05、サイクル2=6:10、サイクル3=6:15など。
1x 67℃、7分間
4℃を保持する。
【0097】
次に、二本鎖cDNAを塩エタノール沈殿法を使用して精製した。酢酸ナトリウム(3M)を1:10の体積比(vol:vol)、その後2:1の体積比(vol:vol)の冷却100%エタノールでサンプルに加えた。サンプルを穏やかに混合し、−20℃で1時間インキュベートした。次に、混合物を13,000RPMで20分間遠心分離して、DNAをペレット化した。上清をペレット化DNAから注意深くピペットで取り除いた。次に、得られたペレットを、100uLの冷却70%エタノールを加えることにより洗浄し、再懸濁した。次に溶液を13,000RPMで10分間遠心分離し、上清をピペットで取り除いた。次に、ペレットを10分間風乾した後、ヌクレアーゼフリー水20uLに溶解した。cDNAの濃度はナノドロップで測定した。
【0098】
In vitro転写−in vitro転写は、AMPLISCRIBE(商標)T7−FLASH(登録商標)in vitro増幅キット(LUCIGEN(商標)カタログ番号ASF3257)を使用して行った。次の順序で追加して、20uLの反応体積を調製した:XuLのRNaseフリー水(Xは20uLの反応体積を達成するために必要な水の量);1ugのcDNA鋳型;2uLのAMPLISCRIBE(商標)T7−FLASH(登録商標)10X反応緩衝液;100mM ATP、CTP、GTP、及びUTPが各々1.8uL;2uL DTT;0.5uLのRIBOGUARD(商標)RNase阻害剤;及び2uL AMPLISCRIBE(商標)T7−FLASH(登録商標)酵素溶液。次に、反応物をサーモサイクラーで42℃で1時間インキュベートした。インキュベーション後、1uLのRNaseフリーDNase Iを加え、反応液を37℃で15分間インキュベートした。DNase処理されたin vitro転写反応物は、29uLのRNaseフリーの水を添加して50uLとした。次に、in vitro転写反応物を、塩及びエタノール沈殿及び精製により精製した。50μLの5M酢酸アンモニウム及び100uLの氷冷100%エタノールをin vitro転写反応に加え、混合した。次に、得られた混合物を−20℃で1時間インキュベートした。インキュベーション後、混合物を4℃で15分間10,000xgで遠心分離した。上清をピペッティングによりペレットから除去した。次に、ペレットを100uLの冷却70%エタノールで洗浄し、10,000xgで15分間4℃で再度遠心分離した。上清をピペッティングにより除去し、ペレットを風燥させた後、50uLのRNaseフリー水に再懸濁した。
【0099】
キャップ構造を有さないin vitro転写生成RNAのキャッピング−in vitro転写によって生成されたRNAのキャッピングは、製造業者の指示に従って、SCRIPTCAP(商標)m7Gキャッピングシステム及びSCRIPTCAP(商標)2’−O−メチルトランスフェラーゼキット(CELLSCRIPT(商標)カタログ番号C−SCCE0625及びC−SCMT0625)を用いて行った。簡潔に言えば、50〜60ugのin vitro転写されたキャップ構造を有さないRNAをRNaseフリーの水に加えて、総体積を67uLにした。次に、希釈したRNAを65℃で10分間インキュベートして、変性させ、その後氷上で保存した。キャッピングマスターミックスは、サンプルあたり10uLの10X SCRIPTCAP(商標)キャッピング緩衝液、10uLの10mM GTP、2.5uLの20mM S−アデノシルメチオニン、2.5uL SCRIPTGUARD(商標)RNase阻害剤、及び4uL SCRIPTCAP(商標)2’−Oメチルトランスフェラーゼを添加して調製した。キャッピング反応物は、4uLのSCRIPTCAP(商標)キャッピング酵素を29uLのキャッピングマスターミックスに加え、そのミックスを熱変性RNAに添加することで組み立てた。キャッピング反応を37℃で30分間進行させた。キャップ構造を有するRNAを上記のように塩及びエタノール沈殿及び精製により精製し、RNaseフリーの水50μLに再懸濁した。キャップ構造を有するmRNAの品質を評価するために、1ugのキャップ構造を有するmRNAを50mL、1%アガロース非変性ゲルで泳動させた。キャップ構造を有するmRNAは−80℃で保存した。
【0100】
抗原性ライセートの調製−MHCクラスII決定基を生成するために、組織100mgあたり1mLのPBSを、単離させた組織画分に加え、POLYTRON(商標)PT1200E組織ホモジナイザー(Kinematica,Inc.,Bohemia,New York)を使用して破壊した。次に、ホモジナイズさせた組織画分を、3回繰り返して凍結融解サイクルに供し、ホモジナイズさせた混合物を液体窒素及び55℃の水浴の間で循環させ、−20℃で保存した。
【0101】
ヒト(Decker et al.,2006;Decker et al.,2009)及び野生型マウス(Konduri et al.,2013)の樹状細胞を、記載したとおりに調製し、ロードし、成熟させた。前述のとおりin vitro共培養を行った(Decker et al.,2006;Decker et al.,2009;Konduri et al.,2013)。
【0102】
キャップ構造を有するmRNAがロードされた樹状細胞と共培養したT細胞によるIFNγの産生。共培養中の総PBMCを10μg/mlブレフェルジンA(eBioscience)で5時間処理した。細胞を表面マーカーについて抗CD3、抗CD8、及び抗CD25抗体で染色し、製造業者の指示に従ってCytofix/Cytopermキット(BD Biosciences)を使用して、IFN−γの細胞内染色のために固定/透過処理した。
【0103】
相同抗原をロードすることにより、AIMp1の産生が増加し、CTLA−4が保持される。AIMp1の産生の増加は、ウエスタンブロットによって実証された。CTLA−4の保持の増大は、細胞培養上清のCTLA−4ウエスタンブロット(放出を決定するため)及び保持されたCTLA−4含有量を決定する細胞内フローサイトメトリーによって実証された。細胞内CTLA−4のヒストグラム分析は、CD11c+CD80+CD83+CD86+細胞集団に基づく。
【0104】
ウエスタンブロット分析。全細胞ライセートの調製:プロテアーゼ阻害剤カクテル、ホスファターゼ阻害剤カクテル2及びホスファターゼ阻害剤カクテル3(すべてSigma−Aldrichから購入)を含む1%NP−40溶解緩衝液で細胞を氷上で溶解し、10〜15分ごとにボルテックスした。細胞ライセートを14,000xgで15分間遠心分離し、透明なライセートを5%β−メルカプトエタノール(Bio−Rad)を含むレムリ緩衝液(Bio−Rad)で10分間変性させた。さらなる分析のために、変性全細胞ライセートサンプルを−20℃で保存した。電気泳動及びブロッティング:タンパク質サンプルをSDSゲル電気泳動(Invitrogen)で分離し、その後抗体プローブ用に0.45μmニトロセルロースメンブレン(Bio−Rad)に移した。すべてのブロッキング及び抗体染色ステップは、5%BSA(RPI、Grainger)/1xTBST緩衝液(0.05%Tween−20)で行った。Image Labソフトウェアバージョン2.0.1(Bio−Rad)でサポートされているCHEMIDOC(登録商標)XRSデジタル画像システムを使用して、SUPERSIGNAL(登録商標)WestFemto Maximum Sensitivity Substrate(ThermoFisher Scientific)によりウエスタンブロット化学発光シグナルを検出した。デンシトメトリーは、Image Labソフトウェアを用いて行った。
【0105】
実施例2−結果
新鮮な組織からのRNA単離により高品質のRNAが得られる−新鮮な組織または凍結組織が下流プロセシングでより高品質のRNAを生成したかを確認するために、30mgの3つの異なる凍結腫瘍組織または単一の新鮮な腫瘍からトータルRNAを単離した。図1で確認されるように、3つの凍結組織から単離されたRNAは、レーン内に大きいスメアとして目で確認される有意な分解を呈する。レーン4は、2つの明確に定義されたバンドを有し、RNAの完全性が高いことを示している。
【0106】
商業RNA単離方法の比較−トータルRNAを、RNEASY(登録商標)ミニキット(Qiagen)またはグアニジニウムチオシアネート/フェノール/クロロホルムに基づく方法であるTRIPURE(登録商標)RNA単離試薬(Roche)のいずれかを使用して、腫瘍組織30mgから単離した。これらの方法は両方とも、図2に見られるように高品質のRNAをもたらした。しかし、TRIPURE(登録商標)法では、同じ投入量でRNEASY(登録商標)キットよりも4.4倍多いRNAが得られた。
【0107】
腫瘍細胞から単離されたmRNAからのin Vitro転写RNA−図3は、腫瘍細胞から単離されたmRNAの逆転写、及びその後の本発明の方法によるcDNAのin vitro転写に使用される方法(実施例1を参照)のためのプライマーなどの図を示す。2つの異なる逆転写及びin vitro転写法を比較した(図4)。レーン1及び2は、Slagter−Jager法(Slagter−Jager et al.,2013)によって調製された、キャップ構造を有さないRNAまたはキャップ構造を有するRNAのいずれかを示している。レーン3及び4は、本明細書に記載の方法により調製されたキャップ構造を有さないRNAまたはRNAのいずれかを示す。以前の方法では、非常に小さい転写産物の富化を示したが、本明細書に記載された方法では、より大きい分子量においてRNAのスメアをもたらした。
【0108】
共転写キャッピングによる小さい転写産物の富化。すべての転写産物を確実に正確に表現するために、in vitro転写されたmRNAのキャッピングについて2つの方法を試験した。図5には、各方法により生成されたキャップ構造を有するRNAのアガロースゲルを示す。レーン1は、転写後にキャップ構造を有するRNAを示し、レーン2は共転写後にキャップ構造を有するRNAを示す。明らかに、レーン2において、転写スメアがはるかに明白であり、RNAが現在の方法で生成され、共転写によりキャップ構造を有する。表1及び表2には、Slagter−Jager法(Slagter−Jager et al.,2013)によって生成された生成物の濃度、体積、及び収量を示す。Konduri/Deckerハイブリッドの調製は、本方法に準拠する。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
IFNγの産生は、ロードされたDCとの共培養によって増加する−樹状細胞には、本明細書に記載の方法で調製された抗原ライセート及びmRNAが相同的にロードされ、または前立腺mRNA及び膵臓腫瘍ライセートが異種にロードされた(不一致)。図6は、指し示された樹状細胞と共培養したT細胞によって産生された相対的IFNγレベルを示す。キャップ構造を有するRNA及び抗原ライセートがロードされた樹状細胞は、明らかにIFNγ産生を刺激し、キャップ構造を有さないRNAがロードされた樹状細胞、または未成熟またはロードされていない樹状細胞よりも優れている。
【0112】
相同的にロードされた樹状細胞との共培養では、抗原特異的なCD8CD25T細胞が増加する―図7には、本明細書に記載の方法により生成されたキャップ構造を有さないmRNAまたはキャップ構造を有するmRNAのいずれか及びライセートを相同的にロードしたか、または前立腺mRNA及び膵臓腫瘍ライセート(不一致)をロードした樹状細胞と共培養した後、IFNγレベルでソートしたCD8CD25細胞のフローサイトメトリー分析の結果を示す。本明細書に記載の方法により生成された相同的にロードされたライセート及びmRNAでは、抗原特異的CD8CD25T細胞のレベルが有意に増大する。
【0113】
相同的抗原をロードすることにより、AIMp1の生成及びCTLA4の保持が増大する−相同的抗原のロードまたは異種抗原のロード(不一致)後の樹状細胞のAIMp1生成及びCTLA4の保持を評価した。図8は、対照として提供されたβ−アクチンを含むライセートにおけるAIMp1及びCTLA−4のウエスタンブロットを示す。本明細書で提供される方法によって作製されたキャップ構造を有するmRNAを用いた相同抗原のロードは、レーン5で見られるように、AIMplの量及び細胞内CTLA−4の量が増加している。このことを確認するために、ロードされていない、mRNAのみがロードされている、ライセートのみ、両方、または不一致抗原のいずれかで、樹状細胞に対してフローサイトメトリーを行った。図9には、CTLA4の保持が、mRNA及び相同抗原ライセートの両方がロードされたCD11c+CD80+CD83+CD86+細胞において有意に増大していることを示す。本明細書に提供されている方法により生成された抗原ライセート及びmRNAが相同的にロードされた細胞では、CTLA4の保持が増大していることがさらに確認され、CLTA4について、樹状細胞ライセート及び上清をウエスタンブロットによりプローブした(図10)。抗原ライセート及びいずれかの方法で調製したmRNAをロードすることにより、上清に存在するCTLA4の量が減少し、保持が増大したことを示している。
【0114】
相同抗原ロードでは、樹状細胞内でのIL−12転写が増加する―樹状細胞は、RT−qPCRによってIL−12a及びIL−12bの産生について評価した。図11に見られるように、本明細書で提供される方法(TRIpure−IVT)によって生成されたライセート及びmRNAの両方を伴う抗原ロードでは、ライセート、mRNA、または異種ロードのみのロードよりも両方のIL−12転写産物が増加し、また、以前の方法で調製したmRNAをロードした場合よりもIL−12転写産物の産生が増加する(カラム−IVT)。
【0115】
実施例3−増幅させたmRNAを用いた追加の研究
追加の研究が行われ、増幅させたmRNAが、相同ライセートと共にDCにロードされたときに、ネイティブポリA mRNAと同じ効率で、in vitroでTH1免疫応答が生じることが示された。例えば、図13Aに示す結果では、a)ネイティブポリA腫瘍mRNA及び相同/異種ライセート、または2)キャップ構造を有するIVT増幅mRNA及び相同/異種ライセートがロードされた単球由来のヒトDCを示す。次に、DCをT細胞と共培養し、活性化されたCD8+CD25+Ifng+細胞の割合をフローで分析した。ロードされていないDCまたはキャップ構造を有さないmRNAがロードされたDCと共培養したT細胞は、対照として機能させた。図13Bには、ポリAmRNAまたはIVT増幅mRNA及び相同または異種細胞ライセートの様々な組み合わせをロードしたDCを48時間成熟させ、細胞内CTLA4レベルをフローサイトメトリーで分析した結果を示す。単独でロードされたDC及びロードされていないDCが対照として機能する。細胞内CTLA−4の上方制御は、保持の増大及びそれによる分泌の減少を示す。UL−非ロードDC、キャップ構造を有さないmRNA−キャップ構造を有さないIVT mRNAをロードしたDC、mRNA−ポリA mRNAをロードしたDC、ライセート−ライセートをロードしたDC、2xw/キャップ構造を有さない−キャップ構造を有さないIVT mRNA及び相同ライセートをロードしたDC、2xキャップ構造を有する−キャップ構造を有するIVT mRNA及び相同ライセートがロードされたDC、キャップ構造を有さないMM−キャップ構造を有さないIVT mRNA及び異種ライセートがロードされたDC、キャップ構造を有するMM−キャップ構造を有するIVT mRNA及び異種ライセートがロードされたDC。
【0116】
実施形態の方法では、非常に少量の出発組織から、免疫応答を刺激する際に使用するために十分な量のmRNAを増幅させることができた。以下の表3に示す結果には、様々な出発サンプルから生成され得るRNAの量を示す。
【0117】
【表3】
【0118】
本明細書に開示され主張される方法のすべては、本開示に照らして、過度の実験なく実行かつ達成され得る。本発明の組成物及び方法が、好ましい実施形態に関して記述されているが、変形が、本発明の概念、趣旨、または範囲から逸脱することなく、本明細書に記載される方法及びステップまたは本方法のステップの順序において適用され得ることが、当業者には明らかであろう。より具体的には、同一または類似の結果が達成される限り、化学的及び生理学的の両方に関連する特定の剤が、本明細書に記載される剤に置き換えられ得ることが明らかであろう。当業者にとって明らかであるすべてのこうした類似の置換及び修正は、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の趣旨、範囲、及び概念の範囲内にあるとみなされる。
参考文献
以下の参考文献は、これらが例示的な手法または他の細部の補足を本明細書に記載されるものに提供する限りにおいて、特に参考により本明細書に組み込まれる。
Slagter−Jager et al.「Evaluation of RNA Amplification Methods to Improve DC Immunotherapy Antigen Presentation and Immune Response」Mol Ther Nucleic Acids,2(5):e91,2013
図1
図2
図3
図4
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図6
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図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
【配列表】
2021508244000001.app
【国際調査報告】