(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-508354(P2021-508354A)
(43)【公表日】2021年3月4日
(54)【発明の名称】末端封止材を用いたポリアマイドの製造方法及びそれにより製造されたポリアマイド
(51)【国際特許分類】
C08G 69/18 20060101AFI20210205BHJP
【FI】
C08G69/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2020-549523(P2020-549523)
(86)(22)【出願日】2018年10月29日
(85)【翻訳文提出日】2020年6月5日
(86)【国際出願番号】KR2018012908
(87)【国際公開番号】WO2019107755
(87)【国際公開日】20190606
(31)【優先権主張番号】10-2017-0160737
(32)【優先日】2017年11月28日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】520161344
【氏名又は名称】ハンファ ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】イム、ギョン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ト、スン ホェ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジン ソ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヘ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、デ ハク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ドゥ ギョン
(72)【発明者】
【氏名】クォン、ギョン ホ
【テーマコード(参考)】
4J001
【Fターム(参考)】
4J001DA01
4J001DB01
4J001DD13
4J001EA06
4J001EE08D
4J001EE09D
4J001EE44C
4J001FA03
4J001FB01
4J001FC01
4J001GA02
4J001GB02
(57)【要約】
触媒として溶媒を使用しない環境に優しい工程方法で副反応を抑制する末端封止材を用いて、従来の重合方法に比べて低温かつ短い重合反応時間内に高い転化率を有し均一な分子量の高分子重合が可能な末端封止材を用いたポリアマイド製造方法及びそれにより製造されたポリアマイドを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
末端封止材を用いて陰イオン重合反応によるポリアマイド製造方法であって、
ラクタム、前記ラクタム全体100重量部に対して、開始剤としてアルカリ金属0.01乃至20重量部、活性化剤0.002乃至1.0重量部及び、
アミン系、ウレア系又はアルコール系末端封止材を0.1乃至100重量部で含む
ことを特徴とする末端封止材を用いたポリアマイドの製造方法。
【請求項2】
前記末端封止材は下記化学式1乃至化学式2:
【化1】
(R
1、R
2、R
3はそれぞれ独立的に1次、2次、3次又は4次アミン、アルコール、アマイド、エーテル、アルキル又はアリルで、x、y又はzは1乃至20の整数である)
【化2】
(R
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立的に1次、2次、3次又は4次アミン、アルコール、アマイド、エーテル、アルキル又はアリルで、x、y又はzは1乃至20の整数である)
で示される化合物からなる群より選択された少なくとも1種以上を含む
請求項1に記載の末端封止材を用いたポリアマイドの製造方法。
【請求項3】
前記重合は140乃至250℃温度範囲で行われる
請求項1に記載の末端封止材を用いたポリアマイドの製造方法。
【請求項4】
前記活性化剤は二酸化炭素(CO2)、ベンゾイルクロリド(benzoyl chloride)、N−アセチルカプロラクタム(N−acetyl caprolactam)、N−アセチルラウロラクタム(N−acetyl laurolactam)、オクタデシルイソシアネート(octadecyl isocyanate(SIC))、トルエンジイソシアネート(toluene diisocyanate(TDI))、ヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethylene diisocyanate(HDI))及びそれらの混合物からなる群より選択された1種以上を含む
請求項1に記載の末端封止材を用いたポリアマイドの製造方法。
【請求項5】
前記末端封止材は脂肪族アミン、芳香族アミン、脂肪族ウレア、芳香族ウレア、脂肪族アルコール及び芳香族アルコール系化合物からなる群より選択された少なくとも1種以上を含む
請求項1に記載の末端封止材を用いたポリアマイドの製造方法。
【請求項6】
前記末端封止材は前記ラクタム1モルに対して0.001乃至1.0モル%で含む
請求項5に記載の末端封止材を用いたポリアマイドの製造方法。
【請求項7】
アミン系、ウレア系又は末端封止材のN/Cratioは0.05乃至1.0の範囲以内である
請求項1に記載の末端封止材を用いたポリアマイドの製造方法。
【請求項8】
前記アルコール系末端封止材のO/Cratioは0.05乃至1.0の範囲以内である
請求項1に記載の末端封止材を用いたポリアマイドの製造方法。
【請求項9】
前記アルカリ金属は金属水素化物(metal hydride)、金属水酸化物(metal hydroxide)及び金属アルコキシド(metal alkoxide)からなる群より選択された少なくとも1種以上を含む
請求項1に記載の末端封止材を用いたポリアマイドの製造方法。
【請求項10】
分子量調節剤であるエチレン−ビス−ステアアミド(EBS:ethylene−bis−stearamide)、アミン(amine)化合物、ウレア(urea)化合物及びジウレア(di−urea)化合物からなる群より選択された少なくとも1種以上をさらに含む
請求項1に記載の末端封止材を用いたポリアマイドの製造方法。
【請求項11】
前記重合反応は0.5乃至120分の範囲内で行われる
請求項1に記載の末端封止材を用いたポリアマイドの製造方法。
【請求項12】
前記重合反応で前記ラクタムは95%以上の転化率を持つ
請求項1に記載の末端封止材を用いたポリアマイドの製造方法。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれかに記載のポリアマイド製造方法で製造された
ことを特徴とするポリアマイド。
【請求項14】
前記ポリアマイドは3.0以下の分子量分布範囲を持つ
請求項13に記載のポリアマイド。
【請求項15】
前記ポリアマイドの重量平均分子量(Mw)は20,000乃至80,000以内の範囲を持つ
請求項13に記載のポリアマイド。
【請求項16】
請求項13によるポリアマイドを含む車両用素材、電子機器用素材、産業用パイプ素材、建築土木用素材、3Dプリンタ用素材、繊維用素材、被服素材、工作機械用素材、医療用素材、航空用素材、太陽光素材、電池用素材、スポーツ用素材、家電用素材、家庭用素材及び化粧品用素材からなる群より選択される
ことを特徴とする部品素材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、末端封止材を用いたポリアマイドの製造方法及びそれにより製造されたポリアマイドに関し、さらに詳しくは、触媒として溶媒を使用しない環境に優しい工程方法で副反応を抑制する末端封止材を用いて、従来の重合方法に比べて低温かつ短い重合反応時間内に高い転化率を有し均一な分子量の高分子重合が可能な末端封止材を用いたポリアマイド製造方法及びそれにより製造されたポリアマイドに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂はアミド(−NHCO−)結合によって結合された直線型高分子であって、強靭で耐摩擦、耐摩耗、耐油、耐溶劑性などの物性に優れ溶融成形が容易で、衣服素材用、産業資材用繊維、エンジニアリングプラスチックなどとして広く用いられている。ポリアミドは分子構造によって脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、脂肪族環ポリアミドに分類されることができ、そのうち脂肪族ポリアミドの場合はナイロン(Nylon)、芳香族ポリアミドの場合はアラミド(Aramid)と通称することもある。
【0003】
このようなポリアミドは、様々な重合方法で製造され、ナイロン6のようにラクタムの開環重合によるもの、ナイロン6,6、ナイロン6,10及びナイロン4,6のようにジアミンと二塩基酸の重縮合によるもの、ナイロン11及びナイロン12のようにアミノカルボン酸の重縮合によるものに大きく分けられる。その他、カプロラクタムと6,10−ナイロン塩(ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸塩)との混成縮合物などの所謂共重合ナイロンが工業的に生産されており、また、分子中に側鎖、水酸基などの作用基、芳香環とヘテロ環を含む各種のポリアミドが研究されている。
【0004】
ラクタム、例えばカプロラクタムは陰イオン重合され得る。この方法は、一般に触媒、及び/又は開始剤(活性剤とも呼ばれる)を使用する(活性化された陰イオン重合)。これまで主に使用される開始剤又は活性剤はジイソシアネート又はそれらの誘導体を含む。
【0005】
特許文献1には、ビウレット基(biuret group)を含み非芳香族ジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネートを活性剤として使用してポリアマイドを製造するラクタムの活性化された陰イオン重合が記述されている。
【0006】
特許文献2には、平均3.5個を超過するNCO作用基を有するポリイソシアヌレートを成分Aとして含む組成物、及び/又は、前述の組成物を用いて表面コーティング組成物を製造する方法が開示されている。
【0007】
特許文献3はキャッピングされていないポリイソシアネートを使用し(よって、反応性を顕著に減少させる)、その実施例における活性剤濃度は非常に低い(1/200〜1/50モル)。重合は、この米国特許で用いられた濃度では3分超を要する。
【0008】
特許文献4は多重作用性活性剤の前駆体としてゴム(すなわち、弾性重合体)を使用し、したがって、その結果として生成されたPAは最大1.12GPaで硬質ではない。前記活性剤は高いMwを有し、ここでは、多量の活性剤が必要である(20%以上)。二官能性活性剤と多官能性活性剤の混合物が使用され、よって、生成されたポリアマイドは架橋された物質ではない。
【0009】
また、特許文献5では、押出機によるラクタム陰イオン重合技術として一定の吐出量(output)及び均一な粘度と物性を得るために押出機本体(body)と押出機ダイ(die)の間に定量ポンプ(metering pump)を設置した方法で、粘度の不均一性を機械的に解決しようとしたが根本的な解決策ではない。
【0010】
特許文献6では、熱分解によって粘度が不安定な問題と構造的に不規則な分岐構造(disorderly branching structure)の形成を指摘しているが、合成した重合体の分解(decomposition)を防ぐために、より酸性を持つ添加剤で問題の解決を試みているのみで、不均一な分岐構造の解決に対する言及は皆無である。ちなみにポリアマイド陰イオン重合時に発生する分岐副反応に関しては、非特許文献1〜2で詳細に言及している。
【0011】
特に、特許文献7では、より均一な製品を得るために触媒と開始剤(反応促進剤)を同時に含有する溶液液体システム(solution liquid system)を導入している。ここでは、溶液システムを導入して一定の品質を有する均一な製品を得て、再現性の高い結果を得たと述べているが、反応押出方法に適用するには溶媒除去の問題などにより効率的ではない問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】US4754000号(Bayer AG)
【特許文献2】EP1091991号(BASF AG)
【特許文献3】US3423372号
【特許文献4】EP0156129号
【特許文献5】米国特許第4067861号(1978年)
【特許文献6】米国特許第3878173号(1975年)
【特許文献7】米国特許第5747634号(1998年)
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】M. P. Stevens、‘Polymer Chemistry’、2nd Ed.、Oxford University Press、p429(1990)
【非特許文献2】G. Odian、‘Principles of Polymerization’、2nd Ed.、John Wiley&Sons、p541(1981)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本願発明は、上記の従来技術の問題点と過去から求められてきた技術的課題を解決することを目的とする。
【0015】
本願発明の目的は、溶媒を使用しない環境に優しい工程方法で副反応を抑制する末端封止材(End−Capping Agent)を用いて、従来の重合方法に比べて低温かつ短い重合反応時間内に高い転化率を有し狭く均一な分子量の高分子重合が可能な末端封止材を用いたポリアマイド製造方法及びそれにより製造されたポリアマイドを提供することにある。
【0016】
また、本発明のさらに他の目的は、陰イオン反応で発生する副反応抑制のためのアミン基又はアルコール基が含まれる末端封止材を含むことによって、耐熱安全性が向上し加工性に優れた末端封止材を用いたポリアマイド製造方法及びそれにより製造されたポリアマイドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
このような目的を達成するための本願発明による末端封止材を用いたポリアマイド製造方法は、
【0018】
末端封止材を用いて陰イオン重合反応によるポリアマイド製造方法であって、
ラクタム、前記ラクタム全体100重量部に対して、開始剤としてアルカリ金属0.01乃至20重量部、活性化剤0.002乃至1.0重量部及びアミン系又はウレア系又はアルコール系及びそれらの化合物からなる群より選択された1種以上を含む末端封止材を0.1乃至100重量部で含むことができる。
【0019】
したがって、ラクタム陰イオン重合時に発生する副反応を有効に抑制して均一な分子量の高分子重合が可能である。
【0020】
本発明の好ましい一例で、前記末端封止材は下記化学式1乃至化学式2で示される化合物からなる群より選択された少なくとも1種以上を含むことができる。
【0021】
【化1】
【0022】
R
1、R
2、R
3はそれぞれ独立的に1次、2次、3次又は4次アミン、アルコール、アマイド、エーテル、アルキル又はアリルで、x、y又はzは1乃至20の整数である。
【0023】
【化2】
【0024】
R
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立的に1次、2次、3次又は4次アミン、アルコール、アマイド、エーテル、アルキル又はアリルで、x、y又はzは1乃至20の整数である。
【0025】
本発明の好ましい一例で、前記重合は140乃至250℃温度範囲で行われ得る。
【0026】
本発明の好ましい一例で、前記活性化剤は二酸化炭素(CO
2)であり得るが、これに限定されず、例えばベンゾイルクロリド(benzoyl chloride)、N−アセチルカプロラクタム(N−acetyl caprolactam)、N−アセチルラウロラクタム(N−acetyl laurolactam)、オクタデシルイソシアネート(octadecyl isocyanate(SIC))、トルエンジイソシアネート(toluene diisocyanate(TDI))、ヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethylene diisocyanate(HDI))及びそれらの混合物からなる群より選択された1種以上を含むことができる。
【0027】
本発明の好ましい一例で、前記末端封止材は脂肪族アミン、芳香族アミン、脂肪族ウレア、芳香族ウレア、脂肪族アルコール及び芳香族アルコール系化合物からなる群より選択された少なくとも1種以上を含むことができる。
【0028】
ここで、本発明の好ましい一例で、前記末端封止材が脂肪族アミンである場合は前記ラクタムに対して0.001乃至1.0モル%で含むことができる。
【0029】
本発明の好ましい一例で、前記末端封止材が芳香族アミンである場合は前記ラクタムに対して0.001乃至0.5モル%で含むことができる。
【0030】
本発明の好ましい一例で、前記アミン系末端封止材のN/Cratioが0.05乃至1.0の範囲以内であり得る。
【0031】
本発明の好ましい一例で、前記ウレア系末端封止材のN/Cratioが0.05乃至1.0の範囲以内であり得る。
【0032】
本発明の好ましい一例で、前記アルコール系末端封止材のO/Cratioが0.05乃至1.0の範囲以内であり得る。
【0033】
本発明の好ましい一例で、前記アルカリ金属は金属水素化物(metal hydride)、金属水酸化物(metal hydroxide)及び金属アルコキシド(metal alkoxide)からなる群より選択された少なくとも1種以上を含むことができる。
【0034】
本発明の好ましい一例で、分子量調節剤であるエチレン−ビス−ステアアミド(EBS:ethylene−bis−stearamide)、アミン(amine)化合物、ウレア(urea)化合物及びジウレア(di−urea)化合物からなる群より選択された少なくとも1種以上をさらに含むことができる。
【0035】
本発明の好ましい一例で、前記重合反応は実験用反応器を基準として0.5乃至120分の範囲内で行われ得る。ここで、前記重合反応時間は特に制限されず、投入される化合物の重量又は反応器のサイズ及び種類によって適切に調節され得ることは無論である。
【0036】
本発明の好ましい一例で、前記重合反応で前記ラクタムは95%以上の転化率を持つことができる。
【0037】
一方、本発明は上記の製造方法で製造されたポリアマイドを提供し、前記ポリアマイドは3.0以下の分子量分布範囲(PDI:polydispersity index)を持つことができる。
【0038】
本発明の好ましい一例で、前記ポリアマイドの重量平均分子量(Mw)は20,000乃至80,000以内の範囲であり得る。
【0039】
なお、本発明は、前記ポリアマイドを含んで製造される車両用素材、電子機器用素材、産業用パイプ素材、建築土木用素材、3Dプリンタ用素材、繊維用素材、被服素材、工作機械用素材、医療用素材、航空用素材、太陽光素材、電池用素材、スポーツ用素材、家電用素材、家庭用素材及び化粧品用素材からなる群より選択される部品素材を提供する。
【0040】
具体的な例で、前記部品素材を含む製品は車両用エアダクト、プラスチック/ゴム化合物、接着剤、ライト、高分子光学繊維、燃料フィルタキャップ、ラインシステム、電子機器のケーブル、反射体、ケーブルのシース、光学繊維、電線保護管、コントロールユニット、ライト、パイプ用管、ライナー、パイプコーティング剤、油田探査ホース、3Dプリンタ、マルチフィラメント、スプレーホース、バルブ、ダクト、パルプ、ギア、医療用カテーテル、航空機用難燃材、太陽電池保護板、化粧料、高硬度フィルム、スキーブーツ、ヘッドセット、メガネフレーム、歯ブラシ、水差し又はアウトソールであり得るが、これに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0041】
以上、説明した通り、本発明は、触媒として溶媒を使用しない環境に優しい工程方法で副反応を抑制する末端封止材(End−Capping Agent)を用いて、従来の重合方法に比べて低温かつ短い重合反応時間内に高い転化率を有し狭い分子量分布の均一な分子量の高分子重合が可能な効果がある。
【0042】
また、本発明は陰イオン反応で発生する副反応抑制のためのアミン基又はアルコール基が含まれる末端封止材を含むことによって、製造されるポリアマイドの耐熱安全性が向上して加工性が向上する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明による末端封止材と高分子の不安定な構造が安定な構造に転換される過程を示す反応式である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
後述する本発明に対する説明は、本発明が実施され得る特定の実施例を例示として参照する。これらの実施例は当業者が本発明を十分に実施できるように詳細に説明される。本発明の様々な実施例は、互いに異なるが相互排他的である必要はないことが理解されるべきである。例えば、ここに記載される特定の形状、構造及び特性は一実施例に関連して本発明の精神及び範囲から逸脱することなく他の実施例として具現され得る。
【0045】
したがって、後述する詳細な説明は限定的な意味として取ろうとするものでなく、本発明の範囲は、適切に説明された場合、その請求項らが主張するものと均等な全ての範囲とともに添付された請求項によってのみ限定される。
【0046】
また、本明細書で特に言及がない限り、“置換”乃至“置換された”は、本発明の作用基のうち1つ以上の水素原子がハロゲン原子(−F、−Cl、−Br又は−I)、ハイドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、カルボキシル基、エステル基、ケトン基、置換又は非置換されたアルキル基、置換又は非置換された脂環族有機基、置換又は非置換されたアリール基、置換又は非置換されたアルケニル基、置換又は非置換されたアルキニル基、置換又は非置換されたヘテロアリール基、及び置換又は非置換されたヘテロ環基からなる群より選択される1種以上の置換基に置換されたことを意味し、前記置換基らは互いに連結されて環を形成することもできる。
【0047】
本発明で、前記“置換”は特に言及がない限り、水素原子がハロゲン原子、炭素数1乃至20の炭化水素基、炭素数1乃至20のアルコキシ基、炭素数6乃至20のアリールオキシ基などの置換基に置換されたことを意味する。
【0048】
また、前記“炭化水素基”は特に言及がない限り、線形、分枝型又は環状の飽和又は不飽和炭化水素基を意味し、前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基などは線形、分枝型又は環状であり得る。
【0049】
また、本明細書で特に言及がない限り、“アルキル基”とは、C1乃至C30アルキル基を意味し、“アリール基”とは、C6乃至C30アリール基を意味する。本明細書で、“ヘテロ環基”とは、O、S、N、P、Si及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるヘテロ原子を1つの環内に1つ乃至3つ含有する基を意味し、例えば、ピリジン、チオフェン、ピラジンなどを意味するが、これに制限されない。
【0050】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を容易に実施できるようにするために、本発明の好ましい実施例に関して詳細に説明する。
【0051】
上述のように、従来のポリアマイドの重合方法のうち、加水分解重合(Hydrolytic Polymerization)、触媒開環重合(Catalytic Ring Opening Polymerization)及び陰イオン開環重合(Anionic Ring Opening Polymerization)で発生する問題点による工程過程の非効率性及び高温重合での副反応による粘度の増加を制限するには限界があった。
【0052】
よって、本発明では、アミン系又はアルコール系末端封止材を用いてポリアマイド陰イオン製造時に発生する副反応を制御し触媒として溶媒を使用せず二酸化炭素(CO
2)を使用することによって、環境に優しい工程で従来の重合方法に比べて低温かつ短い重合反応時間内に高い転化率を有し均一な分子量の高分子重合を可能にすることで前述した問題点に対する解決案を模索した。
【0053】
本発明によれば、末端封止材を用いて陰イオン重合反応によるポリアマイド製造方法であって、ラクタム、前記ラクタム全体100重量部に対して、開始剤としてアルカリ金属0.01乃至20重量部、活性化剤として二酸化炭素0.002乃至10重量部及びアミン系又はウレア系又はアルコール系末端封止材を0.1乃至50重量部で含む末端封止材を用いたポリアマイドの製造方法を提供する。
【0054】
具体的には、以下、本発明による末端封止材を用いたポリアマイド製造に含まれる組成物を説明する。
【0055】
まず、本発明による前記ラクタムはポリアマイドを製造するためのモノマーとして好ましく用いられることができる。ただし、これに限定されず、例えば、カプロラクタム、ピペリドン、ピロリドン、エナントールラクタム及びカプリルラクタムを含むことができ、場合によっては、プロピオラクタム(propiolactam)、2−ピロリドン(2−pyrrolidone)、バレロラクタム(valerolactam)、カプロラクタム(caprolactam)、ヘプタラクタム(heptanolactam)、オクタノラクタム(octanolactam)、ノナノラクタム(nonanolactam)、デカノラクタム(decanolactam)、ウンデカンラクタム(undecanolactam)及びドデカノラクタム(dodecanolactam)を含むことができる。
【0056】
本発明による前記アルカリ金属触媒は、ポリアマイドを製造するための開始剤であって前記ラクタム陰イオン形成を許容する化合物として、金属水素化物(metal hydride)、金属水酸化物(metal hydroxide)及び金属アルコキシド(metal alkoxide)からなる群より選択された少なくとも1種以上を含むことができる。
【0057】
具体的な例で、前記金属水素化物は水素化ナトリウム(sodium hydride)及び水素化カリウム(potassium hydride)を含むことができ、前記金属水酸化物は水酸化ナトリウム(sodium hydroxide)及び水酸化カリウム(potassium hydroxide)を含むことができ、前記金属アルコキシドはカリウムtert−ブトキシド(potassium tert−butoxide)及びアルミニウムイソプロポキシド(aluminum isopropoxide)を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0058】
例えば、 前記金属アルコキシドはナトリウムカプロラクタメート又はカリウムカプロラクタメート、アルカリ土類金属カプロラクタメート、例えば、マグネシウムブロマイドカプロラクタメート、マグネシウムクロライドカプロラクタメート、又はマグネシウムビスカプロラクタメート、アルカリ金属、例えば、ナトリウム又はカリウム、アルカリ金属塩基、例えば、ナトリウム塩基、例えば、水素化ナトリウム、ナトリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウムメタノラート、ナトリウムエタノラート、ナトリウムプロパンオラート、又はナトリウムブタノラート、又は、例えば、カリウム塩基、例えば、水素化カリウム、カリウム、水酸化カリウム、カリウムメタノラート、カリウムエタノラート、カリウムプロパンオラート、カリウムブタノラート、又はそれらの混合物からなる群、好ましくはナトリウムカプロラクタメート、カリウムカプロラクタメート、マグネシウムブロマイドカプロラクタメート、マグネシウムクロライドカプロラクタメート、マグネシウムビスカプロラクタメート、水素化ナトリウム、ナトリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウムエタノラート、ナトリウムメタノラート、ナトリウムプロパンオラート、ナトリウムブタノラート、水素化カリウム、カリウム、水酸化カリウム、カリウムメタノラート、カリウムエタノラート、カリウムプロパンオラート、カリウムブタノラート、又はそれらの混合物からなる群より選択された1種以上を含むことができる。また、水素化ナトリウム、ナトリウム、及びナトリウムカプロラクタメート、及びそれらの混合物からなる群より選択された1種以上を含むことができる。
【0059】
このような金属触媒は固体の形態又は溶液として用いられることができ、触媒を固体の形態で用いることが好ましい。触媒は好ましくは触媒が溶解され得るラウロラクタム溶融物に添加される。これらの触媒は特に迅速な反応をもたらし、これにより、本発明によるポリアマイドのための製造工程の効率を増加させることができる。
【0060】
ここで、本発明によれば、前記アルカリ金属触媒は前記ラクタム全体100重量部に対して、0.01乃至20重量部で含むことができる。好ましくは0.03乃至10重量部で含むことができ、さらに好ましくは0.05乃至2重量部で含むことができる。
【0061】
この時、前記アルカリ金属触媒が0.01重量部未満で添加される場合は未重合又は反応速度の低下問題が生じる場合があり、前記アルカリ金属触媒が20重量部を超過する場合は低分子量の高分子の生成問題が生じる場合があるので上記の範囲が良い。
【0062】
また、本発明によれば、前記末端封止材は陰イオン重合で生成される副反応を抑制し、ゲル化される現象を防止するために添加されるもので、下記化学式1乃至化学式2で示される化合物からなる群より選択された少なくとも1種以上を含む。
【0064】
R
1、R
2、R
3はそれぞれ独立的に1次、2次、3次又は4次アミン、アルコール、アマイド、エーテル、アルキル又はアリルで、x、y又はzは1乃至20の整数である。
【0066】
R
1、R
2、R
3、R
4は、それぞれ独立的に1次、2次、3次又は4次アミン、アルコール、アマイド、エーテル、アルキル又はアリルで、x、y又はzは1乃至20の整数である。
【0067】
ここで、本発明によれば、前記末端封止材は前記ラクタム全体1モルに対して0.001乃至0.5モル比で含むことができる。好ましくは0.001乃至0.3モル比で含むことができ、さらに好ましくは0.001乃至0.25モル比に含むことができる。
【0068】
この時、前記触媒が0.001モル比未満で添加される場合は副反応によるゲル化の問題が生じる場合があり、前記触媒が0.5モル比を超過する場合は重合が進まない、又は重合されても転化率が極めて低い問題が生じる場合があるので上記の範囲が良い。
【0069】
また、本発明によれば、前記末端封止材がアミン系の場合はN/Cratioが0.05乃至1.0の範囲であり得る。好ましくはN/Cratioが0.1乃至0.75の範囲であることができ、さらに好ましくはN/Cratioが0.15乃至0.7範囲であり得る。
【0070】
前記末端封止材がウレア系の場合はN/Cratioが0.05乃至1.0の範囲であり得る。好ましくはN/Cratioが0.1乃至0.8の範囲であることができ、さらに好ましくはN/Cratioが0.15乃至0.75の範囲であり得る。
【0071】
前記末端封止材がアルコール系の場合はO/Cratioが0.05乃至1.0の範囲であり得る。好ましくはO/Cratioが0.1乃至0.8の範囲であることができ、さらに好ましくはN/Cratioが0.15乃至0.75の範囲であり得る。
【0072】
一方、場合によっては、本発明によれば分子量調節剤を含むことができ、好ましくはエチレン−ビス−ステアロアマイド(EBS:ethylene−bis−stearamide)であり得るが、これに限定されず、アミン(amine)化合物、ウレア(urea)化合物及びジウレア(di−urea)化合物からなる群より選択された少なくとも1種以上を含むことができる。
【0073】
ここで、本発明によれば、前記分子量調節剤は前記ラウロラクタム全体100重量部に対して、0.3乃至10重量部で含むことができる。好ましくは0.4乃至7.0重量部で含むことができ、さらに好ましくは0.5乃至3.0重量部で含むことができる。
【0074】
この時、前記分子量調節剤が0.3重量部未満で添加される場合は高分子量高分子又はゲル化の問題が生じる場合があり、前記分子量調節剤が10重量部を超過する場合は低分子量の高分子の生成又は未重合の問題が生じる場合があるので上記の範囲が良い。
【0075】
最後に、本発明によれば、前記活性化剤として好ましくは二酸化炭素(CO
2)であり得るが、これに限定されず、例えば、ベンゾイルクロリド(benzoyl chloride)、N−アセチルカプロラクタム(N−acetyl caprolactam)、N−アセチルラウロラクタム(N−acetyl laurolactam)、オクタデシルイソシアネート(octadecyl isocyanate(SIC))、トルエンジイソシアネート(toluene diisocyanate(TDI))、ヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethylene diisocyanate(HDI))及びそれらの混合物からなる群より選択された1種以上を含むことができる。
【0076】
この場合、活性化剤として前記二酸化炭素を使用する場合は非常に高い反応性によって過重合又は副反応現象が現れる場合がある。したがって、
図1に示すように、本発明による末端封止材を投入する場合は反応が起きないようにすることでラクタム陰イオン重合で発生する副反応などを防止して均一な製品製造が可能である。
【0077】
ここで、本発明によれば、前記二酸化炭素は前記ラウロラクタム全体100重量部に対して、0.002乃至1.0重量部で含むことができる。好ましくは0.005乃至5重量部で含むことができ、さらに好ましくは0.01乃至0.1重量部で含むことができる。
【0078】
この時、前記二酸化炭素が0.002重量部未満で添加される場合は未重合又は反応速度の低下問題が生じる場合があり、前記二酸化炭素が1.0重量部を超過する場合はゲル化の問題が生じる場合があるので上記の範囲が良い。
【0079】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例(example)を提示する。ただし、下記の実施例は本発明の理解を助けるためのものに過ぎず、本発明が下記の実験例によって限定されることはない。
【実施例】
【0080】
[実施例]
<実施例1>
末端封止材(ECA)としてHexamethylenediamineを用いた重合試料の製造
ラクタム20gに対して通常の開始剤NaHを1mol%混合してRBフラスコに入れ、窒素雰囲気で165℃まで昇温させた後、30分の間十分に混練した。その後、シリンジを用いて予め溶融させておいた0.25molのHexamethylenediamineを注入した後、反応温度まで混練しながら昇温させた。反応温度に到達した時、窒素を切って活性化剤である二酸化炭素(CO
2)を注入して反応を進め、反応が終了するとformic acidと蒸溜水が1:1(v)で混ぜられた溶液を注入して活性された陰イオンを除去し、下記表1による含有量を持つ試料を回収した。このように製造された試料に蒸溜水を用いて洗浄し、24時間100℃真空オーブンで乾燥した後、ポリアミドの重さを測定した後、溶媒であるエタノールに8時間の間入れ、その後、再乾燥して重さを測定して転化率を求めた後、その結果を下記表2に表した。
【0081】
【表1】
【0082】
<実施例2>
末端封止材としてDodecylamineを用いたことを除けば実施例1と同じ方法でポリアミドを製造した。
【0083】
<実施例3>
末端封止材としてDodecanolを用いたことを除けば実施例1と同じ方法でポリアミドを製造した。
【0084】
<実施例4>
活性化剤としてN−acetyl caprolactamを1mol%用いたことを除けば実施例1と同じ方法でポリアミドを製造した。
【0085】
[比較例]
<比較例1>
末端封止材(ECA)を使用しないことを除けば、前記実施例1と同じ方法でポリアマイド試料を製造して転化率を求めた後、その結果を下記表2に表した。
【0086】
【表2】
【0087】
上記表2に示したように、前記ラクタムに対して、前記末端封止材を含み、活性化剤をNACを使用した実施例4は実施例1乃至実施例2、実施例3に比べて多少高い分子量と広い分子量分布度を表した。
【0088】
また、前記ラクタムに対して、前記末端封止材を含まない比較例1は実施例1に比べて、非常に高い分子量と分子量分布を測定できない程度のゲル化現象を示した 。
【0089】
以上、本発明の実施例による図面を参照して説明したが、本発明の属する分野における通常の知識を持つ者であれば上記内容に基づいて本発明の範疇内で多様な応用及び変形を行うことが可能である。
【国際調査報告】