特表2021-509481(P2021-509481A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ナノメイド・ラブの特許一覧

特表2021-509481特に温度に関する環境補償を備えたセンサおよびタッチスクリーン
<>
  • 特表2021509481-特に温度に関する環境補償を備えたセンサおよびタッチスクリーン 図000003
  • 特表2021509481-特に温度に関する環境補償を備えたセンサおよびタッチスクリーン 図000004
  • 特表2021509481-特に温度に関する環境補償を備えたセンサおよびタッチスクリーン 図000005
  • 特表2021509481-特に温度に関する環境補償を備えたセンサおよびタッチスクリーン 図000006
  • 特表2021509481-特に温度に関する環境補償を備えたセンサおよびタッチスクリーン 図000007
  • 特表2021509481-特に温度に関する環境補償を備えたセンサおよびタッチスクリーン 図000008
  • 特表2021509481-特に温度に関する環境補償を備えたセンサおよびタッチスクリーン 図000009
  • 特表2021509481-特に温度に関する環境補償を備えたセンサおよびタッチスクリーン 図000010
  • 特表2021509481-特に温度に関する環境補償を備えたセンサおよびタッチスクリーン 図000011
  • 特表2021509481-特に温度に関する環境補償を備えたセンサおよびタッチスクリーン 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-509481(P2021-509481A)
(43)【公表日】2021年3月25日
(54)【発明の名称】特に温度に関する環境補償を備えたセンサおよびタッチスクリーン
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/20 20060101AFI20210226BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20210226BHJP
【FI】
   G01L1/20 Z
   G06F3/041 600
   G06F3/041 520
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-558680(P2020-558680)
(86)(22)【出願日】2018年1月14日
(85)【翻訳文提出日】2020年8月17日
(86)【国際出願番号】EP2018050798
(87)【国際公開番号】WO2018130672
(87)【国際公開日】20180719
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520428502
【氏名又は名称】ナノメイド・ラブ
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】セヴラック,ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】デュフォー,ニコラ
(57)【要約】
本発明は、特に温度に関して補償された圧力センサまたは力センサに関し、このセンサは、a.基板(401)と、b.基板の一方の側における、2つの電極間の第1の多層ナノ粒子集合体(200)と、c.基板の同じ側において、第1の集合体に近接した、2つの電極間の第2の単層ナノ粒子集合体(100)と、d.第1のナノ粒子集合体および第2のナノ粒子集合体の電気特性における変化を測定可能、かつ、これらの測定値を組み合わせることが可能な、電子回路と、を備えることを特徴とする。本発明は、さらに、かかるセンサを実装するタッチスクリーンに関する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に温度に関する環境感度補償を実施することが可能な圧力センサまたは力センサ(400)であって、
a.基板(401)と、
b.前記基板の一方の側における、2つの電極(221,222)間の第1の多層ナノ粒子集合体(200)と、
c.前記基板(401)の同じ側において、第1の集合体に近接した、2つの電極(121,122)間の第2の単層ナノ粒子集合体(100)と、
d.前記第1のナノ粒子集合体および前記第2のナノ粒子集合体の電気特性における変化を測定可能、かつ、これらの測定値を組み合わせて補償を実施可能な、電子回路と、を備えることを特徴とする、センサ。
【請求項2】
前記電子回路は、前記2つの集合体の抵抗における変化を測定するものであって、固定値の2つの制御抵抗(411,412)を有し、
前記2つのナノ粒子集合体および前記制御抵抗は、いわゆるホイートストン・ハーフブリッジ回路によって接続される、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記センサは、
e.前記2つのナノ粒子集合体に近接した、2つの電極間の追加の多層ナノ粒子集合体(200’)と、
f.前記3つのナノ粒子集合体に近接した、追加の単層ナノ粒子集合体(100’)と、を備え、
前記4つのナノ粒子集合体は、ホイートストン・フルブリッジ回路によって接続される、請求項1に記載のセンサ。
【請求項4】
前記4つのナノ粒子集合体(100,200,100’,200’)は、前記基板(401)の同じ側に結合されている、請求項3に記載のセンサ。
【請求項5】
前記追加のナノ粒子集合体(100’,200’)は、前記第1のナノ粒子集合体および前記第2のナノ粒子集合体(100,200)に対して、前記基板の反対側に結合されている、請求項3に記載のセンサ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のセンサ(100,200,100’,200’)を複数備えたタッチスクリーン(700,800)であって、
前記第1の多層ナノ粒子集合体(200)は、前記第2の単層ナノ粒子集合体(100)と並置される、タッチスクリーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に温度に関する環境感度補償を備えた力センサおよびタッチスクリーンに関するものである。本発明は、限定するものではないが、より具体的には、スマートフォン、タブレットPC、マイクロコンピュータ、またはタッチスクリーンウォッチのような、タッチインタフェースを備えたスクリーンを有する通信体を対象とするものである。ユーザとそのような通信体との間のインタラクションは、タッチスクリーンを介して行われ、それは、ユーザの指とスクリーンとの間で直接行われるか、またはスタイラスを用いることもある。この目的のため、先行技術によれば、透明センサをスクリーンに接続して、これらのセンサによって、スクリーン面上での接触およびこの接触の位置を検出可能とし、より高機能な形態では、さらに、付与された接触圧力または接触力の強さの測定も可能とする。これらのセンサは、例えば、圧電特性またはピエゾ抵抗特性を有する透明フィルムである。効果的には、これらのフィルムは、より高い感度を示すナノ粒子を用いたセンサで置き換えられる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ナノ粒子を用いたセンサの例示的な実施形態およびその製造プロセスについて記載している。
【0003】
特許文献2は、そのようなセンサを用いた透明なタッチ感知面の例示的な実施形態について記載している。
【0004】
これらの例示的な実施形態によるセンサでは、各々の基本センサを構成するナノ粒子集合体が、そのナノ粒子集合体に付与される微小変形の影響を受けて、その電気特性に変化を生じ、その微小変形は、センサまたはそれを支持する基板に付与される力もしくは圧力に起因するものであって、集合体を構成するナノ粒子間の距離を変化させる効果がある。非限定的な例として、ナノ粒子間の距離に応じて測定される電気特性は、その集合体の電気抵抗率または静電容量である。
【0005】
しかしながら、これらの電気特性は、特に温度による影響である環境要因による影響も受けるので、基本センサに付与される圧力の測定を、そのようなタッチスクリーンを実装する装置の使用条件に依存することなく行うためには、特に温度の影響であるこれらの環境要因を補償しなければならない。
【0006】
特許文献3は、そのような温度補償を実装した透明タッチセンサの例示的な実施形態について記載している。
【0007】
この文献の教示によれば、基本センサは、透明基板の各側に配置された2つの力感知測定層を備える。従って、基板に対して略垂直に圧力がセンサに付与されると、上側感知層は圧縮を受けて、その結果、電気特性に変化が生じ、一方、基板の他面側の下側感知層は、張力を受けて、測定される電気特性に逆の変化が生じる。これに対して、このようなセンサが暴露される温度における変動によって、それらの層のそれぞれにおいて測定される電気特性には、同じ変化が生じる。従って、二重秤量の原理によれば、2つの層からの測定値を組み合わせることにより、温度の影響を排除しつつ、付与された力に起因する電気特性における変化を測定することが可能である。しかしながら、この例示的な実施形態は、基板の両側に感知層を印刷する必要があるため、実現するのが複雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第2601491号明細書
【特許文献2】欧州特許第2877911号明細書
【特許文献3】国際公開第2015/106183号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、先行技術の欠点を解消することであり、この目的のため、本発明は、特に温度に関する環境感度補償を実施することが可能な圧力センサまたは力センサに関し、このセンサは、
a.基板と、
b.基板の一方の側における、2つの電極間の第1の多層ナノ粒子集合体と、
c.基板の同じ側において、第1の集合体に近接した、2つの電極間の第2の単層ナノ粒子集合体と、
d.第1のナノ粒子集合体および第2のナノ粒子集合体の電気特性における変化を測定可能、かつ、これらの測定値を組み合わせて補償を実施可能な、電子回路と、を備える。
【0010】
従って、本発明のセンサは、基板の同じ側に両方の集合体のコプレーナ構成を維持しつつ、多層集合体と単層集合体との間の応答の差異を用いて、特に温度である環境要因の影響を補償する。
【0011】
本発明は、個別に、または技術的に有効な任意の組み合わせで考察される、以下で開示する実施形態および変形例に従って効果的に実施される。
【0012】
例示的な一実施形態によれば、電子回路は、2つの集合体の抵抗における変化を測定するものであって、固定値の2つの制御抵抗を有し、2つのナノ粒子集合体および制御抵抗は、ホイートストン・ハーフブリッジ回路に従って接続される。この実施形態は、効果的にはナノ粒子集合体から距離をおいて、制御抵抗が測定回路内に配置されるので、最もコンパクトである。ホイートストンブリッジによる回路によって、単一の基本的な力センサを用いた先行技術のソリューションと比較して、さらに、センサの線形性および感度を向上させることも可能となる。
【0013】
他の実施形態によれば、本発明のセンサは、
e.2つのナノ粒子集合体に近接した、2つの電極間の追加の多層ナノ粒子集合体と、
f.3つのナノ粒子集合体に近接した、追加の単層ナノ粒子集合体と、を備え、
4つのナノ粒子集合体は、ホイートストン・フルブリッジ回路に従って接続される。
【0014】
温度補償に加えて、この実施形態により、例えば基板のねじり変形など、基本センサの他の変形効果の測定または補償が可能となる。
【0015】
この後者の実施形態の変形例によれば、
− 4つのナノ粒子集合体は、基板の同じ側に結合されている、または、
− 追加のナノ粒子集合体は、第1および第2のナノ粒子集合体に対して、基板の反対側に結合されている。
【0016】
本発明は、さらに、本発明によるセンサを複数備えたタッチスクリーンに関し、この場合、第1のナノ粒子集合体は、第2のナノ粒子集合体と並置される。このようなタッチスクリーンにより、各基本センサによって送出される出力に影響を及ぼす環境要因に関する補償を伴って、スクリーン面上の接触位置ならびにこの接触点で付与された力を測定することが可能となる。
【0017】
本発明について、図1〜8を参照して、決して限定するものではない好ましい実施形態に従って、以下で開示する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、ナノ粒子集合体を実装する単層変形センサの例示的な一実施形態の概略断面図であり、図1Aは負荷のない状態、図1Bは機械的負荷を受けた状態である。図1Bでは、読み取りやすくするため、センサのパッシベーション層を示していない。
図2図2は、ナノ粒子集合体を実装する多層変形センサの例示的な一実施形態の概略断面図であり、図2Aは負荷のない状態、図2Bは機械的負荷を受けた状態である。図2Bでは、読み取りやすくするため、センサのパッシベーション層を示していない。
図3図3は、温度変化を受けたときの単層基本センサおよび多層基本センサの公称抵抗における変化の一例を示している。
図4図4は、ホイートストン・ハーフブリッジ回路に従って接続された多層基本センサおよび単層基本センサを実装する、本発明による温度補償センサの例示的な一実施形態の断面図である。
図5図5は、温度変化を受けたときの本発明によるセンサの公称抵抗における変化の一例である。
図6図6は、基板の両側に装着されるとともにホイートストン・フルブリッジ回路に従って接続された2つの単層基本センサおよび2つの多層基本センサを実装する、本発明によるセンサの、断面図による例示的な一実施形態である。
図7図7は、本発明によるハーフブリッジ補償センサのネットワークを実装するタッチスクリーンの例示的な一実施形態の概略正面図を示している。
図8図8は、それぞれホイートストン・フルブリッジとして編成された一連の基本センサを実装するタッチスクリーンの例示的な一実施形態の概略正面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
例示的な一実施形態による図1Aでは、単層変形基本センサ(100)は、電気絶縁リガンドによる導電性または半導電性のコロイド懸濁液中のナノ粒子の集合体(110)が結合された基板(101)を備える。非限定的な一例として、透明または半透明のセンサを実現するには、ナノ粒子(110)は、錫ドープ酸化インジウム粒子(ln23−SnO2)またはITOであり、リガンドは、(アミノメチル)ホスホン酸である。集合体は、電極(121,122)間に配置されて、これらの電極に電気的に接続されており、電極は、例えばITOで構成される。従って、この実施形態によれば、電極およびナノ粒子集合体は透明である。電極(121,122)とナノ粒子集合体で構成されるセットは、基板(101)に結合されており、基板は、それ自体が透明であって、例えば、ソフト・タッチ感知面を構成するためには、ポリエチレンテレフタレートまたはPETで形成され、あるいはリジッド・タッチ感知面を構成するためには、二酸化シリコン(SiO2)で形成される。他の例示的な実施形態によれば、フレキシブル基板は、剛性支持体に貼付される。例示的な一実施形態によれば、ナノ粒子集合体上にパッシベーション層(130)を堆積させる。有機性またはセラミック性のこの透明層によって、ナノ粒子集合体およびこのナノ粒子集合体を実装する装置を外部損傷から保護する。パッシベーション層(130)は、これを構成する材料に応じて寸法設定されることにより、機械的負荷をナノ粒子集合体に伝達することを可能とする。非限定的な例として、パッシベーション層は、ポリイミド、二酸化シリコン(SiO2)、または窒化シリコン(Si34)で構成される。欧州特許第2877911号明細書に記載されているように、先行技術で周知の任意の方法を用いて、特にキャピラリ対流堆積法または液滴蒸発法を用いて、ナノ粒子(110)を基板上に堆積させる。ナノ粒子層(110)は、例えば化学カップリング剤を用いて、基板(101)に固定結合される。一例として、化学カップリング剤は、予めUVオゾン処理によって活性化された基板の表面上でOH基と相互作用することができるシラン(SiH4)であり、これは、カップリング剤の他端に、予めナノ粒子の表面にグラフトされたアミン基(NH2)にグラフトすることができるカルボキシル基(COOH)を有する。ナノ粒子集合体は、ひずみゲージを構成し、その抵抗は、集合体のナノ粒子間の相対距離に応じて変化する。導電率におけるこの変化は、ナノ粒子間のトンネルコンダクタンスに起因し、この効果により、非常に高いゲージ率を提供し、このゲージ率は、ピエゾ抵抗膜で得られるものよりもはるかに高く、これにより、非常に小さい変形を測定可能となる。一例として、ホスホン酸系リガンドによるITOナノ粒子集合体で構成された、このような基本センサの抵抗における比例変化は、基本センサ(100)が受ける変形に応じて、その応答として指数関数的変化を示し、このとき、変形がないときの抵抗が2000.103オームのオーダである場合に、ゲージ率は、圧縮時の−1%から引張時の+1%までの変形範囲にわたって、85の値に達する。
【0020】
例示的な一実施形態による図1Bでは、基板に機械的負荷(190)が付与されると、ナノ粒子層は張力を受けて、集合体のナノ粒子間の相対距離(150)が増加し、これにより、集合体の抵抗率および単層基本センサ(100)の抵抗が増加する。
【0021】
例示的な一実施形態による図2Aでは、多層変形センサ(200)は、リガンドによるコロイド懸濁液中のナノ粒子のいくつかの層を構成する集合体が結合された基板(201)と、電極(221,222)と、を備える。センサは、効果的には、パッシベーション層(230)を備える。ナノ粒子、リガンド、基板、電極、およびパッシベーション層の性質は、製造技術と共に、単層センサの場合と同じであり、センサの単層または多層の態様は、欧州特許第2877911号明細書に記載されているような製造方法によれば、製造中に、例えばキャピラリ対流堆積の実施時に、または蒸発液滴に含まれるナノ粒子の量によって、得られる。第1のナノ粒子層は、例えば化学カップリング剤を用いて、基板(201)に固定結合される一方、それに続く層は、コロイド懸濁液中のリガンドによって相互に結合される。このようなセンサのゲージ率は、単層センサのゲージ率と同じオーダである。
【0022】
図2Bでは、多層センサ(200)に機械的負荷(190)が付与されると、ナノ粒子集合体は張力を受けて、これにより、基板(201)に対して略接線方向におけるナノ粒子間の相対距離(251)が増加する一方、ネッキング効果によって、基板に対して略垂直方向における層間の距離(252)が減少する。実際には、ネッキング効果が優勢であり、集合体の抵抗率およびセンサの抵抗は、付与される力(190)の強さに伴って減少する。
【0023】
図3では、上記で提示した基本センサのいずれかが温度変化を受けると、考察対象のセンサの公称抵抗は変化する。このように、センサに負荷をかけることなく、基本センサのそれぞれがオーブン内で温度(303)サイクル(305)を受けることによる、単層センサ(311)と多層センサ(312)の公称抵抗(302)における経時的な比例変化は、類似している。
【0024】
要するに、2つのセンサが同じ機械的負荷を受けたときの、抵抗の変化による応答は、多層センサの場合、単層センサの場合と逆であるが、一方、温度または他の環境影響要因の変化を受けたときの、2つのセンサの公称抵抗の変化は類似している。
【0025】
図4では、これらの特性を効果的に用いて、特に温度に関して環境の影響が補償されるセンサ(400)を実現し、このセンサは、同じ基板(401)の同じ側に、単層センサ(100)と多層センサ(200)を隣接して備える。この例示的な実施形態によれば、2つのセンサ(100,200)は、ホイートストン・ハーフブリッジ構成による電子回路によって接続されており、この電子回路は、固定値の2つの制御抵抗(411,412)と、例えば+5ボルトのDC電源(450)と、ハーフブリッジの2辺の間の電位差を測定するための電圧計式の測定装置(490)と、を含む。ホイートストンブリッジを用いて変形を測定する技術は、先行技術で周知であり、さらなる説明はしない。この例示的なハーフブリッジ回路によれば、制御抵抗(411,412)は、センサ(100,200)から距離をおいて、電子回路に組み込まれる。
【0026】
図5では、図4に示すようなハーフブリッジで実装された温度補償センサと接続を用いて、センサが温度(503)サイクル(505)を受けたときの、公称抵抗(502)における経時的な(501)比例変化(510)は、10℃〜50℃の範囲にわたって、0.2%未満に維持されており、これは、このようにして得られる温度補償の有効性を示している。この場合、センサは、機械的に負荷がかかっていない状態で、ヒートガンによる温度変化を受ける。
【0027】
図6では、上記で提示したハーフブリッジ回路に使用したセンサ(100,200)と同じ基板(601)に、それらのセンサに近接して結合されたそれぞれ単層および多層の基本センサ(100’,200’)で、図4に示す構成の制御抵抗を置き換えることにより、ホイートストン・フルブリッジ構成が得られる。この図面に示す例示的な実施形態によれば、2つの他の基本センサ(100’,200’)は、第1のハーフブリッジのセンサ(100,200)とは基板(601)の反対の面に装着される。
【0028】
第1の例示的な実施形態による図7では、付与される力の強さを感知するタッチスクリーン(700)は、例えばマトリクス組織に従って、2つずつを組み合わせて、単層基本センサ(100)と多層基本センサ(200)の一連のペアにすることにより得られる。
【0029】
他の例示的な実施形態による図8では、タッチスクリーン(800)は、2つの単層基本センサ(100,100’)と2つの多層基本センサ(200,200’)で構成される一連の補償センサを実装しており、これらはすべて、基板の同じ面に装着されて、フルブリッジとして接続されている。フルブリッジを用いることで、ハーフブリッジでの実装と比較して、特に、応答の線形性をさらに向上させることが可能になるとともに、センサの感度を向上させることが可能となる。
【0030】
上記の説明および例示的な実施形態は、本発明により所望の目的が達成されることを示しており、より具体的には、機能化表面の片面に機能化を限定する一方で、特に温度である制御できない環境要因の影響の補償を伴って、スクリーン上の接触の強さおよび位置を測定可能なタッチスクリーンを得ることが可能になることを示している。リガンドによるコロイド懸濁液中のナノ粒子の集合体を用いた基本センサを使用することで、先行技術から知られている適用で使用されるピエゾ抵抗膜と比較して、さらに、高いゲージ率および高い測定感度を得ることが可能となる。同じ原理によって、光、紫外線への暴露、湿度、またはセンサに対して同様の影響を及ぼす他の要因のような、基本センサの公称抵抗に対する他の環境要因の影響を補償することが可能となる。本発明の適用は、タッチスクリーンおよび透明センサに限定されない。一例として、例えば、電話機またはタブレットPCの背面上もしくは側面上で、タッチスクリーンウォッチのストラップ上で、ベッドのアンダシーツ上で、さらにはフロアカバリング上で、不透明なタッチ感知面を実現するために、同じ原理を用いることができる。本発明によるセンサの高い感度によって、特に、心拍数または呼吸数の測定が可能となり、またはフロアカバリング上で使用される場合には、移動または転倒を検出することが可能となる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】