特表2021-509655(P2021-509655A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-509655錯体形成色素を含むジョイントコンパウンドおよびプラスターならびに方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-509655(P2021-509655A)
(43)【公表日】2021年4月1日
(54)【発明の名称】錯体形成色素を含むジョイントコンパウンドおよびプラスターならびに方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/14 20060101AFI20210305BHJP
   G01N 31/22 20060101ALI20210305BHJP
   G01N 33/38 20060101ALI20210305BHJP
   G01N 31/00 20060101ALI20210305BHJP
   C04B 24/06 20060101ALI20210305BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20210305BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20210305BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20210305BHJP
【FI】
   C04B28/14
   G01N31/22 124
   G01N33/38
   G01N31/00 B
   C04B24/06 Z
   C09B67/20 K
   C09D201/00
   C09D7/63
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-533294(P2020-533294)
(86)(22)【出願日】2019年1月3日
(85)【翻訳文提出日】2020年6月17日
(86)【国際出願番号】US2019012139
(87)【国際公開番号】WO2019136119
(87)【国際公開日】20190711
(31)【優先権主張番号】15/860,819
(32)【優先日】2018年1月3日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】596172325
【氏名又は名称】ユナイテッド・ステイツ・ジプサム・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・ドノヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・スカルド
【テーマコード(参考)】
2G042
4G112
4J038
【Fターム(参考)】
2G042AA01
2G042BA04
2G042BA07
2G042BB01
2G042BC02
2G042CA04
2G042DA06
2G042DA08
2G042FA06
2G042FA14
2G042FB05
2G042FB10
4G112PB17
4J038EA011
4J038GA06
4J038JB16
(57)【要約】
カルシウム化合物と、カルシウムイオンの可逆的キレート剤を含む指示薬とを含む建築構造製品であって、建築構造製品が水を含むと、建築構造製品が第1の色を呈し、第1の色は建築構造製品の溶液中のカルシウムイオンの存在に依存し、建築構造製品が凝固すると、建築構造製品が第2の色を呈する、建築構造製品。さらなる態様として、硬化型ジョイントコンパウンド、乾燥型ジョイントコンパウンド、およびプラスターを含む建築構造製品の硬化反応および乾燥反応をモニターする方法を含み、建築構造製品はカルシウム化合物と、カルシウムイオンの可逆的キレート剤を含む指示薬とを含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウム化合物および指示薬を含む建築構造製品であって、前記指示薬はカルシウムイオンの可逆的キレート剤を含み、前記建築構造製品が水を含むと、前記建築構造製品は第1の色を呈し、前記第1の色は前記建築構造製品の溶液中のカルシウムイオンの存在に依存し、前記建築構造製品が凝固すると、前記建築構造製品は第2の色を呈する、建築構造製品。
【請求項2】
前記建築構造製品が石膏スラリー、プラスター、乾燥型ポイントコンパウンド、硬化型ジョイントコンパウンド、レディーミクスト硬化型ジョイントコンパウンド、コーティング、下塗りコーティング、または塗料である、請求項1に記載の建築構造製品。
【請求項3】
前記指示薬がカルコンカルボン酸、その誘導体、および/またはその塩を含む、請求項1に記載の建築構造製品。
【請求項4】
前記指示薬が担体上にコーティングされたカルコンカルボン酸を含む、請求項1に記載の建築構造製品。
【請求項5】
前記指示薬が水を含む前記建築構造製品の0.001重量%〜0.5重量%の量で存在する、請求項1に記載の建築構造製品。
【請求項6】
カルシウム化合物および水を含む建築構造製品を基材に塗布する方法であって、前記方法が、
前記建築構造製品を、カルシウムイオンの可逆的キレート剤を含む指示薬と混合し、それによって前記指示薬を含む前記建築構造製品の混合物を得ることであって、前記混合物が第1の色を発色し、前記第1の色の前記発色がカルシウムイオンの存在に依存している、混合物を得ることと、
前記混合物を基材に塗布することと、を含み、前記第1の色から第2の色への変化が前記混合物の乾燥度を示す、方法。
【請求項7】
前記建築構造製品が硬化型ジョイントコンパウンド、乾燥型ジョイントコンパウンド、プラスター、コーティング、下塗りコーティング、石膏スラリーまたは塗料である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記指示薬がカルコンカルボン酸、その誘導体および/または塩を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記建築構造製品が凝結遅延剤を含むレディーミクスト硬化型ジョイントコンパウンドであり、前記方法が、前記基材への塗布時に、前記レディーミクスト硬化型ジョイントコンパウンドを少なくとも1種の活性剤と混合するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1種の凝結遅延剤を含むレディーミクスト硬化型ジョイントコンパウンドをモニターするための方法であって、前記方法が、カルシウムイオンの可逆的キレート剤を含む少なくとも1種の指示薬と前記レディーミクスト硬化型ジョイントコンパウンドを配合することと、前記レディーミクスト硬化型ジョイントコンパウンドを色の変化についてモニターすることと、を含み、前記色の変化が硬化反応の早期活性化を示す、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、指示薬を含む、ジョイントコンパウンド、コーティング、塗料、石膏スラリーおよびプラスターを含む建築構造製品、ならびにこれらの製品を製造、保管および適用するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジョイントコンパウンドは、壁の仕切り、天井、その他のアセンブリの構築など、様々な建設プロジェクトで一般的に使用されている。ジョイントコンパウンドの適用の1つは、壁を構築する2つの石膏パネル間の継ぎ目を埋めることである。他の多種多様な適用には、壁の欠陥や亀裂の修正が含まれる。
【0003】
2種類のジョイントコンパウンドが知られている:硬化型ジョイントコンパウンドと乾燥型ジョイントコンパウンドである。多くの場合、硬化型ジョイントコンパウンドは、硫酸カルシウム半水和物(パリのプラスターまたは焼石膏としても知られている)を含む。硬化型ジョイントコンパウンドは、硫酸カルシウム半水和物が水和して硫酸カルシウム二水和物(石膏)になる硬化反応により硬化する。これにより、硬化型ジョイントコンパウンドが固化する。硬化型ジョイントコンパウンドには、米国特許第4,661,161号、同第5,746,822号、同第6,805,741号および同第9,174,881号に記載されているものが挙げられ、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0004】
硬化型ジョイントコンパウンドは、その塗布前に水と混合される乾燥粉末として配合できる。乾燥粉末に水を加えると、焼石膏の石膏への変換が始まり、これがジョイントコンパウンドの硬化および固化を引き起こす。
【0005】
硬化型ジョイントコンパウンドは、レディーミクスト状態の湿式硬化型ジョイントコンパウンドとして配合することもできる。このような化合物の例は、米国特許第9,174,881号に提供されている。このような化合物は、すでに水と事前に混合されているが、硬化や固化することなく一定期間棚に保管できる。保管および輸送時の硬化反応を阻止するために、湿式レディーミクスト硬化型ジョイントコンパウンドは、カルシウムイオンと結合し、焼石膏の再水和反応を防ぐキレート剤である凝結遅延剤を含んでいる。次いで、カルシウムを放出させ、硬化反応を開始させるために、活性剤がレディーミクスト硬化型ジョイントコンパウンドに添加される。
【0006】
参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,746,822号に提供されるように、硫酸亜鉛、硫酸鉄および硫酸アルミニウムを含む様々な活性剤が知られている。
【0007】
硬化型ジョイントコンパウンドとは異なり、乾燥型ジョイントコンパウンドには、焼石膏が配合されてない。乾燥型ジョイントコンパウンドは、水が蒸発し、コンパウンドが水性状態から固体コンパウンドに移行すると凝固する。多くの乾燥型ジョイントコンパウンドは、炭酸カルシウムを含んでいる。乾燥型ジョイントコンパウンドには、米国特許第6,476,099号、同第6,545,066号および同第9,328,023号に提供されているものが挙げられ、それらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0008】
焼石膏および水で配合することができるプラスターは、プラスターペーストが硬化し、固化すると、滑らかな硬い表面を形成するために、壁、天井、または他の構造物の保護コーティングおよび/または装飾コーティングとして使用できる建築材料である。プラスター配合物には、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第2,082,887号により提供されているものが挙げられる。
【0009】
石膏および/または炭酸カルシウムを配合した下塗りコーティングを含む様々なコーティングも市販されている。コーティングの例には、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,663,979号に提供されているものが挙げられる。水性石膏スラリーは、ウォールボードならびにその他の種類の石膏パネルおよびタイルの製造のために使用されている。石膏パネルの例には、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,323,785号に提供されているものが挙げられる。
【0010】
硬化型ジョイントコンパウンドを塗布した後、作業者は、塗布した製品が完全に硬化したかどうかを正確に判断できるという利益を指示薬および/またはテストから得られる。これにより、先に塗布した製品が完全に硬化する前に、それに続く塗布のミスを防ぐことができる。硬化指示薬は、プラスター、コーティング、石膏スラリーでも有用になり得る。乾燥型ジョイントコンパウンドなどの製品では、作業者は乾燥型ジョイントコンパウンドが完全に乾燥したかどうかを正確に判断する指示薬/テストを必要とする。
【0011】
米国特許第6,531,528号は、フェノールフタレイン(赤色)およびチモールフタレイン(青色)などの変色指示薬を含む、すぐに使用できる修正および修理製品を提供する。これらの化合物は、pHの変化に依存して色が変化するpH指示薬である。
【0012】
さらに、pHの変化に基づいてすべての製品を正確にモニターできないので、硬化型または乾燥型製品のpHに必ずしも依存しない正確な指示薬が依然として必要とされる。
【発明の概要】
【0013】
これらおよびいくつかの他の必要性は、指示薬を含む建築構造製品を提供する本開示によって少なくとも部分的には対処される。建築構造製品は、製品が水を含むと、第1の色を呈し、第1の色は、製品の溶液中の金属イオンの存在に依存する。製品が凝固すると、製品は第2の色を呈する。建築構造製品は、少なくとも1種のカルシウム化合物を含むことができる。これらの製品において、指示薬は、カルシウムイオンの少なくとも1種の可逆的キレート剤を含んでよい。建築構造製品は、石膏スラリー、プラスター、乾燥型ポイントコンパウンド、硬化型ジョイントコンパウンド、レディーミクスト硬化型ジョイントコンパウンド、コーティング、下塗りコーティング、または塗料であってよい。指示薬は、カルコンカルボン酸、その塩および/またはその誘導体を含んでもよい。指示薬は、担体上にコーティングされたカルコンカルボン酸を含んでもよい。
【0014】
建築構造製品は、凝結遅延剤を含むレディーミクスト硬化型ジョイントコンパウンドであってもよく、指示薬はカルコンカルボン酸を含んでもよい。建築構造製品は、乾燥型ジョイントコンパウンドであってもよい。建築構造製品は、カルシウム化合物と、カルコンカルボン酸を含む指示薬と、を含む乾燥型ジョイントコンパウンドであってもよい。建築構造製品は、カルシウム化合物を含むレディーミクスト乾燥型ジョイントコンパウンドであってもよく、指示薬はカルコンカルボン酸を含んでもよい。建築構造製品は、炭酸カルシウムと、カルコンカルボン酸を含む指示薬と、を含む乾燥型ジョイントコンパウンドであってもよい。建築構造製品は、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、第一鉄イオン、第二鉄イオン、第一銅イオン、第二銅イオン、ビスマスイオン、および/または亜鉛イオンを含むがこれらに限定されない金属イオンを含むことができる。建築構造製品中の指示薬は、水を含む建築構造製品の0.001重量%〜0.5重量%の量で存在してもよい。
【0015】
本開示のさらなる態様は、カルシウム化合物および水を含む建築構造製品を基材に塗布する方法を提供する。本方法は、建築構造製品を、カルシウムイオンの可逆的キレート剤を含む指示薬と混合し、それによって指示薬を含む建築構造製品の混合物を得ることであって、混合物が第1の色を発色し、第1の色の発色がカルシウムイオンであり得る金属イオンの存在に依存している、混合物を得ることと、混合物を基材に塗布することと、を含み、第1の色から第2の色への変化が混合物の乾燥度を示す。
【0016】
本方法は、硬化型ジョイントコンパウンド、乾燥型ジョイントコンパウンド、プラスター、コーティング、下塗りコーティング、石膏スラリーまたは塗料を用いて行うことができる。本方法のいくつかの適用では、建築構造製品は、硬化型ジョイントコンパウンド、プラスターまたは石膏スラリーであり、指示薬は、カルシウムイオンの可逆的キレート剤を含む。建築構造製品は、硬化型ジョイントコンパウンド、プラスターまたは石膏スラリーであってもよく、指示薬は、カルコンカルボン酸を含んでもよい。本方法は、凝結遅延剤を含むレディーミクスト硬化型ジョイントコンパウンドを用いて行うことができ、指示薬は、(a)塗布前、および(b)塗布時の少なくとも1つの時期にレディーミクスト硬化型ジョイントコンパウンドと混合することができる。本方法は、塗布時に、レディーミクスト硬化型ジョイントコンパウンドを少なくとも1種の活性剤と混合することをさらに含んでもよい。本方法は、カルシウム化合物を含む乾燥型ジョイントコンパウンドと、カルシウムイオンの可逆的キレート剤を含む指示薬とを用いて行うことができる。本方法は、カルシウム化合物を含むレディーミクスト乾燥型ジョイントコンパウンドと、カルコンカルボン酸、その誘導体および/またはその塩を含む指示薬とを用いて行うことができる。
【0017】
本開示のさらなる態様は、レディーミクスト硬化型ジョイントコンパウンドをモニターするための方法を含み、本方法は、カルシウムイオンの可逆的キレート剤を含む少なくとも1種の指示薬とレディーミクスト硬化型ジョイントコンパウンドを配合することと、コンパウンドをモニターすることと、を含み、色の変化が硬化反応の早期活性化を示す。
【0018】
本開示は、カルシウムイオンの可逆的キレート剤を含み、任意に溶媒をさらに含む指示薬を含む付属製品も提供し、付属製品は、容器またはポーチであり得るパッケージで提供され、指示薬の量は、パッケージごとに添加される。好ましい実施形態では、付属製品は、担体上にコーティングされたカルコンカルボン酸を含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】指示薬の量と活性剤の量を変化させることにより、レディーミクスト状態の硬化型ジョイントコンパウンドの時間の関数としてのL値のグラフである。
図2】指示薬の量と活性剤の量を変化させることにより、レディーミクスト状態の硬化型ジョイントコンパウンドの時間の関数としてのA値のグラフである。
図3】指示薬の量と活性剤の量を変化させることにより、レディーミクスト状態の硬化型ジョイントコンパウンドの時間の関数としてのB値のグラフである。
図4】指示薬の量と活性剤の量を変化させることにより、レディーミクスト状態の硬化型ジョイントコンパウンドの時間の関数として、活性剤を添加した後に算出されたΔEである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示は、指示薬を含んでいるジョイントコンパウンド、コーティング、塗料、石膏スラリーおよびプラスターを含む建築構造製品を提供する。製品は水の存在下で第1の色を呈する。固化すると、製品の色が変化する。したがって、指示薬により、焼石膏の再水和によって硬化する製品の硬化反応がモニターされる。指示薬より、金属イオンを含む乾燥製品の乾燥反応もモニターされる。
【0021】
指示薬は、硬化製品または乾燥製品中のカルシウムイオンなどの遊離金属イオンの存在または非存在に基づいてその色を変化させる、錯体形成(complexometric)(すなわち、イオノクロミック)色素である。
【0022】
「指示薬」という用語は、本開示において広義に使用されており、溶液中の金属イオンの量に応じてその色を変化させる錯体形成(すなわち、イオノクロミック)色素を含む。
【0023】
イオノクロミック色素は、関心のサンプル中のイオン金属濃度を決定するために錯滴定で用いられる分析化学試薬である。イオノクロミック色素は、色の変化によって急激なクロミック移行を示すイオン感受性分子である。指示薬は、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、鉄(第一鉄および/または第二鉄)イオン、銅(第一銅および/または第二銅)イオン、ビスマスイオン、または亜鉛イオンのうちの少なくとも1種の存在および濃度に依存してその色が変化するイオノクロミック色素であり得る。好ましい指示薬は、カルシウムイオンの存在および濃度に依存してその色を変化させるイオノクロミック色素である。
【0024】
特に好ましい指示薬は、カルコンカルボン酸および/またはその塩および/またはその誘導体を含む試薬である。カルコンカルボン酸の適切な塩には、カルコンカルボン酸のナトリウム塩が含まれる。
【0025】
カルコンカルボン酸は、パットンリーダー指示薬(CAS ID番号3737−95−6)とも呼ばれる。カルコンカルボン酸は、以下の構造式(I)を有する。
【0026】
【化1】
【0027】
カルコンカルボン酸は、水にやや溶けにくく、濃い紫色からほぼ黒色の粉末である。カルコンカルボン酸は、硫酸ナトリウムと混合することができ、アルカリ条件下でのカルシウム滴定実験でEDTAとともに使用される。カルコンカルボン酸は、カルシウム水溶液中では赤色に見え、ほかの状態では青色に見える。カルコンカルボン酸は、カルシウムイオンの弱い、可逆的キレート剤である。カルコンカルボン酸を使用して、水溶液サンプルおよび固体サンプルのカルシウムイオン濃度を測定することができる。いくつかの実施形態では、キレート剤で色の変化を生じさせるために、固体サンプルを最初にアルカリ溶液中で可溶化させなければならない。
【0028】
他の適切な指示薬には、検出可能な色の変化を生じる比色反応において少なくとも1種の金属イオンと錯体を形成する錯体形成化合物が含まれる。本開示の製品において、カルシウムイオンおよび/または他の金属イオンの存在は指示薬で検出される。
【0029】
カルコンカルボン酸、その塩およびその誘導体と一緒にまたはそれらの代わりに使用される適切な指示薬には、表1に記載されている試薬、それらの塩およびそれらの誘導体が挙げられる。表1のいずれの指示薬も、式(I)を有する化合物に加えて、またはその代わりに、他の任意の指示薬と組み合わせて使用することができる。
【0030】
【表1】
【0031】
指示薬の少なくとも1種は、乾燥型ジョイントコンパウンド、または湿潤時に金属イオンを含み、乾燥により固化する任意の他の建築構造製品の配合物に含まれてもよい。乾燥型ジョイントコンパウンドは、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、硫酸カルシウム、および/または石膏および/または石灰石などの鉱石であり得るカルシウム化合物を含むことができる。
【0032】
あるいは、少なくとも1種の指示薬は、塗布時およびジョイントコンパウンドが水と事前に混合されると、付属製品(塗布前に添加される)として乾燥型ジョイントコンパウンドに添加されてもよい。これらの乾燥型ジョイントコンパウンドのための特に好ましい配合物は、指示薬としてカルコンカルボン酸および少なくとも1種のカルシウム化合物を含む。これらの乾燥型ジョイントコンパウンドのための特に好ましい付属製品も、指示薬としてカルコンカルボン酸を含む。
【0033】
カルシウム化合物を含む塗布されたジョイントコンパウンドが乾燥し、遊離カルシウムイオンの濃度が低下すると、ジョイントコンパウンドはその色が変化する。指示薬により、塗布されたジョイントコンパウンドが十分に乾燥しており、さらなる仕上げステップを進めることが賢明であることをエンドユーザーは視覚的に知らされる。記載の配合物は、請負業者およびアマチュアのエンドユーザーの両方にとって、ジョイントコンパウンドの乾燥度の明白な視覚的指示薬として機能し、商業構築および住宅構築における屋内空間の適切な仕上げおよび塗装を容易にする。
【0034】
本開示の一態様は、炭酸カルシウムであってもよいカルシウム化合物と、カルシウムイオンを検出するイオノクロミック色素である乾燥指示薬と、を含む乾燥型ジョイントコンパウンドを提供する。乾燥型ジョイントコンパウンドは、カルシウム化合物に加えて、またはその代わりに、水酸化マグネシウムおよび/またはマグネシウム塩であってもよいマグネシウム化合物と、マグネシウムを検出するイオノクロミック色素である乾燥指示薬と、を含んでもよい。マグネシウム化合物を含むこれらの実施形態では、水性マグネシウムに感受性があるイオノクロミック色素が使用される。
【0035】
カルシウムイオンおよび/またはマグネシウムイオンを検出する少なくとも1種のイオノクロミック色素指示薬を含む乾燥型ジョイントコンパウンドは、水と混合されて湿潤状態になると、第1の色を呈する。乾燥型ジョイントコンパウンドは、乾燥すると第2の色に変化する。第2の色は、単に第1の色の色彩強度の減少または増加であり得る。例えば、第1の色は紫色または赤色であり得、一方、第2の色は、いくつかの実施形態では青色であり得、または別の実施形態では薄紫色であり得る。第1の色とその色彩強度および第2の色とその色彩強度は、指示薬の量と指示薬の化学構造、ならびに検出される金属イオンの濃度に依存する。
【0036】
カルシウムイオンと錯体を形成するイオノクロミック色素のいずれも、これらの乾燥型ジョイントコンパウンドまたは任意の他の乾燥建築構造製品の乾燥指示薬として使用できる。これには、表1に記載され、カルシウムイオンと錯体を形成する指示薬が含まれる。いくつかの実施形態では、カルコンカルボン酸、アリザリン、アルセナゾIII、フタレインパープルなど、およびそれらの任意の組み合わせの指示薬またはそれらの塩および/またはそれらの誘導体のうちの少なくとも1つを使用することができる。特に好ましい乾燥指示薬は、カルコンカルボン酸および/またはその誘導体および/またはその塩を含む試薬である。指示薬は、溶液中のカルシウムイオンの存在を検出し、ジョイントコンパウンドが乾燥すると目に見える色の変化を生成するのに十分な任意の量で使用できる。通常、指示薬は、水を含むジョイントコンパウンドの約0.001重量%〜約0.5重量%の量で使用される。いくつかの実施形態では、指示薬は、水を含むジョイントコンパウンドの1ppm〜0.5重量%の範囲で使用される。
【0037】
乾燥型ジョイントコンパウンドは、乾燥粉末混合物として配合される。粉末を保管および輸送のために包装する前に、乾燥指示薬を粉末に加えてもよい。これらの乾燥混合物において、乾燥指示薬は、化合物が保管および輸送中に乾燥状態を保つ指示薬としても機能する。ジョイントコンパウンドを使用することになると、水と混合され、これによりジョイントコンパウンドペーストの目に見える色の変化が生じる。ジョイントコンパウンドが乾燥すると、色が消えていく、および/または第2の色に変化する。これにより、塗布されたジョイントコンパウンドが乾燥したことがユーザーに視覚的に示される。
【0038】
乾燥型ジョイントコンパウンドは、水とのレディーミクストペースト配合物として配合されることも可能である。乾燥指示薬は、レディーミクストペーストにおいて容認できる第1の色を達成するのに十分な量でレディーミクスト配合物に添加されてもよい。乾燥型コンパウンドが塗布されて乾燥すると、第1の色は消えていく、かつ/または第2の色に変化するかのいずれかである。この適用では、乾燥指示薬は、保管および/または輸送中に、レディーミクストジョイントコンパウンドが早まって部分的に乾燥していないことの指示薬としても機能する。
【0039】
さらなる態様では、乾燥指示薬は、塗布時に乾燥型ジョイントコンパウンドに添加される付属製品として配合されてもよい。色の変化は、乾燥型ジョイントコンパウンドが乾燥したことをエンドユーザーに知らせる。これは、塗布された乾燥型ジョイントコンパウンドが完全に乾燥したかどうかを判断するのに有益である。これは、乾燥型ジョイントコンパウンドが塗布される前に、バケツ内で部分的に乾燥した場合も、エンドユーザーに知らせる。
【0040】
乾燥指示薬を含む特に好ましい乾燥型ジョイントコンパウンドは、カルコンカルボン酸および/またはその誘導体および/またはその塩を含む乾燥型ジョイントコンパウンドである。この配合物に硫酸ナトリウムを添加してもよい。
【0041】
乾燥型ジョイントコンパウンドに特に好ましい付属乾燥指示薬製品(塗布前に添加される)は、カルコンカルボン酸および/またはその誘導体および/またはその塩を含む試薬である。試薬には、硫酸ナトリウムも含まれてもよい。
【0042】
乾燥指示薬は、乾燥型ジョイントコンパウンド、乾燥粉末、またはレディーミクストのいずれとも使用できる。
【0043】
適切な乾燥型ジョイントコンパウンドは、炭酸カルシウム、および/または酸化カルシウム、水酸化カルシウム、重炭酸カルシウム、次亜塩素酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、硝酸カルシウム、および塩化カルシウムを含むがこれらに限定されない任意の他のカルシウム化合物を含んでもよい。炭酸カルシウムは、ジョイントコンパウンド中のいずれの成分よりも最も高い重量分率を有し得る。炭酸カルシウムは、石灰岩の形状で、および/または任意の他の鉱物として存在し得る。
【0044】
炭酸カルシウムは低水溶性であるが、水と混合されたジョイントコンパウンドには依然として多少のカルシウムイオンが含まれており、一方、乾燥ジョイントコンパウンドには含まれていない。乾燥型ジョイントコンパウンド中の他の成分には、レオロジー調整剤、通常はセルロース誘導体、天然ラテックスもしくは合成ラテックスなどの接着剤、アタパルジャイト、カオリン、タルク、またはマイカなどの水膨潤性粘土鉱物、および凝集性のためのデンプン誘導体および/または高分子結合剤などの結合剤が含まれてもよい。適切な乾燥型ジョイントコンパウンド配合物は、米国特許第6,476,099号、同第6,545,066号および同第9,328,023号に提供されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0045】
カルコンカルボン酸を含む乾燥指示薬を含む、湿式ジョイントコンパウンドペーストは、指示薬の濃度とグレード、および水性カルシウムの存在下でのカルシウムイオン濃度に応じて、紫色または赤色に見える。ジョイントコンパウンドが乾燥すると、その色は青色に変化する。エンドユーザーにとって容認できる色の変化を達成するのに十分なカルコンカルボン酸の濃度は、水を含めて、ジョイントコンパウンド総量の1ppm〜0.1重量%の範囲であってよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、カルコンカルボン酸を含むジョイントコンパウンドの色は、ジョイントコンパウンドが乾燥するにつれて、ラベンダー色から淡いスカイブルー色に移行する。他の実施形態では、ジョイントコンパウンドが乾燥するにつれて、ジョイントコンパウンドの色は紫色から青色に移行する。さらに他の実施形態では、ジョイントコンパウンドが乾燥するにつれて、ジョイントコンパウンドの色は青色から淡いスカイブルー色に移行する。
【0047】
硬化型ジョイントコンパウンドは、急速な硬化、パッチの深い充填と修理、および低温での塗布を必要とする特定の適用において、乾燥型ジョイントコンパウンドよりも多種多様な利点を有する。
【0048】
硬化型ジョイントコンパウンドおよびプラスターには、硫酸カルシウム半水和物(CaSOX0.5HO)が含まれており、水の存在下で急速に再水和して石膏になる。この水和反応は、石膏スラリーを含む、硫酸カルシウム半水和物と水で配合された硬化型ジョイントコンパウンド、プラスター、および他の製品において硬化作用の推進要因である。通常の硬化型ジョイントコンパウンドはまた、充填剤、レオロジー調整剤、結合剤、安定剤および殺生物剤のいずれかを含んでもよい。適切な硬化型ジョイントコンパウンド配合物は、米国特許第4,661,161号、同第5,746,822号、同第6,805,741号および同第9,174,881号に提供されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0049】
本開示は、水の存在下で硫酸カルシウム半水和物を石膏に再水和することにより硬化する硬化製品を提供する。硬化製品は、カルシウムイオンの可逆的キレート剤であるイオノクロミック色素を含む硬化指示薬を含む。硬化指示薬は、配合中に硬化製品と事前に混合することができ、または硬化指示薬は、硬化製品が塗布のために水および/または活性剤と混合されるときに硬化製品に添加される付属製品として使用することができる。硬化製品は、硫酸カルシウム半水和物を含む硬化型ジョイントコンパウンドであってよい。粉末硬化型ジョイントコンパウンドおよびレディーミクスト硬化型ジョイントコンパウンドを含む、あらゆる種類の硬化型ジョイントコンパウンドが考えられる。
【0050】
硬化製品は、ウォールボード、石膏パネルおよび/またはタイルなどの石膏製品を製造するために、硫酸カルシウム半水和物、水および他の化合物を混合することにより調製された石膏スラリーを含む石膏スラリーであってよい。硬化製品は、プラスター、下塗りコーティング、またはコーティングであってよい。
【0051】
硬化指示薬は、カルコンカルボン酸、その誘導体またはその塩を含むことができる。硬化指示薬は、カルシウムと錯体を形成するイオノクロミック色素のいずれかであってよく、表1に記載されている。硬化指示薬は、カルコンカルボン酸、アリザリン、アルセナゾIII、ERIOCHROM(登録商標)ブルーブラックR、キシレノールオレンジ、カルセイン、カルセイングリーン、カルセインブルー、ジンコン、フタレインパープルなど、およびこれらの任意の組み合わせのイオノクロミック色素またはそれらの塩および/または誘導体の1つであってよい。硬化指示薬は、カルシウムイオンの存在下で硬化製品に第1の色をもたらすのに十分な任意の濃度で使用することができる。硬化製品が硬化すると、第1の色は消えていく、または第2の色に変化する。
【0052】
通常、硬化指示薬は、水を含む総量の約0.001重量%〜約0.5重量%の量で使用される。例えば、水を含む製品の総重量が100gの場合、0.001g〜0.5gの硬化指示薬を使用できる。いくつかの実施形態では、指示薬は、水を含む総量の1ppm〜0.5重量%の範囲で使用される。
【0053】
好ましい硬化指示薬は、カルコンカルボン酸、その塩および誘導体を含み、本質的にそれらからなり、それらからなる。特に好ましい硬化指示薬は、カルコンカルボン酸である。
【0054】
考えられる硬化型ジョイントコンパウンドには、レディーミクスト硬化型ジョイントコンパウンドが挙げられる。これらの化合物は、水と事前に混合されており、塗布中に硬化活性剤が添加されるまでカルシウムを可逆的に結合することにより硬化反応を阻止する少なくとも1種の凝結遅延剤を含んでいる。凝結遅延剤は、タンパク質性凝結遅延剤、低分子量ポリアクリレートおよび/または非カルシウム含有リン酸塩であってよい。通常、凝結遅延剤は、特に、ピロリン酸四カリウム(TKPP)、ピロリン酸四ナトリウム(TSPP)、クエン酸ナトリウムなどの強力なキレート剤である。このグループ内の他の適切な凝結遅延剤には、ヘキサメタリン酸亜鉛、トリポリリン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、リン酸一アンモニウム、リン酸二水素カリウムおよびそれらの任意の混合物が挙げられる。
【0055】
硫酸カルシウム半水和物の硬化反応を誘発するために、同じ意味で促進剤とも呼ばれる硬化活性剤が、使用時にレディーミクスト硬化型ジョイントコンパウンドに添加される。これにより、硫酸カルシウム半水和物が再水和し、化合物が固化する。
【0056】
適切な活性剤には、亜鉛化合物、特に硫酸亜鉛および/またはいずれかの硫酸亜鉛水和物、アルミニウム化合物、例えば、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、硫酸アルミニウムカリウムなどのアルミニウム塩、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。硬化時間は、添加する促進剤の量を変えることにより調節可能である。適切な活性剤および阻害剤は、米国特許第5,746,822号に提供されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0057】
硬化指示薬は、硬化型ジョイントコンパウンドまたはプラスター配合物に組み込まれており、色の移行により、硬化作用の開始が示される。十分な量の凝結遅延剤の存在下で、カルシウムカチオンがキレート化され、イオノクロミック色素は第1の色を示す。十分な量の活性剤を添加すると、第1の色が急に第2の色に変化する。硬化型コンパウンド、石膏スラリーまたはプラスターが再水和して固化すると、第2の色彩強度は徐々に減少する。
【0058】
硬化指示薬を含む硬化型ジョイントコンパウンド、プラスターまたはいずれの他の石膏硬化製品における色の変化は、エンドユーザー、例えば請負業者または住宅所有者にとって硬化作用の開始の視覚的な手がかりとして機能する。さらに、十分な量の凝結遅延剤または活性剤が製品に組み込まれていることを示している。その上、活性剤を添加した後の色彩強度は、製品が硬化し、もはや塗布され得ないまでの時間であるオープンタイムとしても知られている硬化時間または作用可能時間の推定値として機能することができる。
【0059】
硬化指示薬は、凝結遅延剤の存在下で硬化型ジョイントコンパウンドまたはプラスター配合物に組み込まれてもよい。硬化指示薬の重量分率は、乾燥ベースの化合物総量で0.001重量%〜1重量%の範囲である。
【0060】
任意の促進剤を添加する前に、カルコンカルボン酸を含む試薬を硬化指示薬として使用する場合、レディーミクスト硬化型コンパウンドまたはプラスターは、第1の色、例えば、青色になる。硬化作用を誘発するのに十分な量の活性剤が添加される場合、ジョイントコンパウンドまたはプラスターの第1の色は、指示薬としてのカルコンカルボン酸により、急に第2の色、例えば、赤色または紫色に変化する。硬化型コンパウンドまたはプラスターが硬化する、または完全に乾燥すると、第2の色は徐々に薄くなる、またはカルコンカルボン酸により第3の色、例えば、薄いピンク色に変化する。したがって、硬化指示薬を使用して、硬化中のオープンタイム、硬化反応(setting reaction)および硬化(cure)の完了をモニターすることができ、ならびに保管および輸送中、レディーミクストジョイントコンパウンドの硬化の早期開始をモニターすることができる。
【0061】
活性剤が、硬化反応を十分に誘発するのに最適な量で添加されない場合、第1の色は第2の色に完全に移行しない。これは、ジョイントコンパウンドの塗布中に硬化反応を最適化するための迅速で正確な方法として使用できる。
【0062】
色彩強度は、より多くの促進剤を用いてより堅牢になり、硬化時間を限定する方法として機能する、すなわち、10分以内に硬化する硬化型ジョイントコンパウンドにおいて、カルコンカルボン酸を指示薬として用いる場合、第2の色は、20分以内に硬化する硬化型ジョイントコンパウンドよりも濃く、すなわち、より濃い赤色に見える。
【0063】
いくつかのレディーミクスト硬化型ジョイントコンパウンドは、製造時に硬化指示薬とともに配合されるが、他の適用には、硬化反応が活性剤により誘発されると同時に硬化指示薬が添加される、レディーミクスト硬化型ジョイントコンパウンドが含まれる。
【0064】
硬化型コンパウンド、プラスター、または石膏スラリーは、焼石膏および水を一緒に混合して調製される。これらの配合物のいずれも、以下の成分から1つ以上を含んでもよい:ディスペンサー、界面活性剤、消泡剤、結合剤、充填剤、殺生物剤、凝結遅延剤、活性剤、安定剤。これらの成分のいくつかは、最初に水と混合され、次いで、焼石膏を含む乾燥成分と混合されてもよい。いくつかの実施形態では、硬化指示薬は、分散剤および消泡剤と一緒に水に組み込まれる。他の実施形態では、硬化指示薬は、水、結合剤、凝結遅延剤および殺生物剤の直後に、しかし残りの乾燥成分を添加する前に組み込まれる。さらなる実施形態では、他のすべての成分が混合された後に、硬化指示薬が添加されてもよい。硬化指示薬は、消泡剤、分散剤の有無にかかわらず、または活性剤の有無にかかわらず、配合物に使用することができる。
【0065】
乾燥反応または硬化反応のいずれかの指示薬は、乾燥型ジョイントコンパウンド、硬化型ジョイントコンパウンド、プラスター、コーティング、下塗りコーティング、または石膏スラリーなどの製品に、塗布時に添加される付属製品として配合されてもよい。
【0066】
指示薬を含む付属製品は、別のパッケージで提供されてもよい。指示薬の量は、追加の測定が必要とされないようにジョイントコンパウンドとの混合中に添加されてもよい。パッケージは任意の形状であってよい。パッケージは、容器、プレフィルドシリンジおよび/またはボトルであってよい。軟質バッグまたはポーチが特に好ましい。パッケージが所定の添加量で指示薬を提供し得る場合、パッケージは、いくつかの区画を含んでもよく、各区画は、所定の添加量の指示薬を含んでよい。所定の添加量は、指示薬が使用されることになる硬化反応または乾燥反応をモニターするために、特定量のジョイントコンパウンド(すなわち、水を含む1ガロン)または任意のその他の製品において色の変化を生成するのに必要な添加量として算出することができる。
【0067】
指示薬を含む付属製品の塗布中、ユーザーは、モニターされる製品の量に応じて、指示薬の1回または数回の添加量を容易に使用することができる。
【0068】
パッケージ内の指示薬は、粉末として、または水もしくは有機溶媒であり得る溶媒と事前に混合されたペーストとして配合されてもよい。付属製品中の他の成分には、安定剤および/または担体を含んでもよい。
【0069】
カルコンカルボン酸のような指示薬は、溶液中で担体と事前に混合されてもよい。次いで、混合物を蒸発させて、指示薬でコーティングされた担体を生成する。適切な担体には、任意のカルシウム化合物、タルク、ナトリウム塩、例えば塩化ナトリウムまたは硫酸ナトリウム、および/またはマグネシウム塩が挙げられる。炭酸カルシウムおよび石膏が特に好ましい化合物である。担体は、石膏製品で一般的に使用される充填剤(すなわち、タルクまたはマイカ)であってよい。指示薬と担体の混合物を含むこれらの指示薬配合物は、指示薬と、指示薬でモニターされることになる硬化反応または乾燥反応のためのジョイントコンパウンドまたは任意のその他の製品との混合を改善するために、付属製品として使用することもでき、またはその他の適用で使用することもできる。
【0070】
製品の色の変化を検出するために、様々な方法を使用することができる。カルコンカルボン酸、その誘導体またはその塩に基づくようないくつかの指示薬は、人間の目で容易に検出される色の変化を生成する。他の配合物は、UVランプまたは他のいくつかの機器で検出されることになる蛍光色素である指示薬を含み得る。
【0071】
本開示の配合物における色差は、L方式によってより正確に測定することもできる。本方式では、たとえばHunterLabのColorQUEST(登録商標)などの比色計を用いる。L方式は、2色間のわずかな差でも検出可能である。L方式では、色差はサンプルの色と標準色との数値比較として定義する。以下の3つの異なる座標を使用する:
は明度(黒/白)を示し、L=100は純色白、L=0は純色黒である。
は赤/緑の座標であり、a=−100は完全な緑色、a=100は完全な赤色であり、および
は黄/青の座標であり、b=100は完全な黄色、b=−100は完全な青色である。
【0072】
すべての測定は、各座標について比色計で提供される標準値に対して行われる。
【0073】
2つのサンプルのそれぞれは、L、a、およびbについて測定される。次いで、ΔEを以下のように算出する。
【0074】
【数1】
【0075】
ΔEは、第1のサンプルと第2のサンプルとの間の色差を表す。ほとんどの人間は、これらの2色間のΔEが3以上であれば、2色間の色の変化を簡単に検出できる。経験豊富なユーザーは、色の変化を0.5〜1の低さまで検出できる。
【実施例1】
【0076】
炭酸カルシウムを含む軽量のレディーミクスト乾燥型ジョイントコンパウンドは、水を含むジョイントコンパウンドの0.01重量%の量のカルコンカルボン酸と配合した。この化合物の色は青色/ラベンダー色であった。化合物が乾燥すると、色はスカイブルー色に変化した。
【0077】
湿潤時および乾燥時の化合物の色も、L方式で調べた。塗布時の湿潤状態の色を測定した。塗布後24時間以上たってから乾燥状態の色を測定した。結果を以下の表2に報告する。
【0078】
【表2】
【実施例2】
【0079】
様々な量の指示薬(カルコンカルボン酸)および活性剤を含むレディーミクスト硬化型ジョイントコンパウンドで硬化反応を調べた。この化合物は、阻害剤を含む焼石膏を含んでいた。指示薬を、水を含む組成物総量の0.005重量%〜0.010重量%の範囲の量で化合物に添加した。化合物の色は青色であった。次いで、活性剤(硫酸亜鉛とミョウバンの混合物)を、水を含む組成物総量の1.0重量%〜1.5重量%の範囲の量で添加した。活性剤を添加すると、化合物の色が赤色/ピンク色に変化した。化合物が完全に硬化すると、色は薄ピンク色に退色した。
【0080】
湿潤時および硬化時の化合物の色も、L方式で調べた。結果を図1図4に報告する。
【0081】
図1は、活性剤を添加した後のL値対時間(分)の散布図である。
【0082】
図2は、活性剤を添加した後のa値対時間(分)の散布図である。
【0083】
図3は、活性剤を添加した後のb値対時間(分)の散布図である。
【0084】
図4は、指示薬の量および活性剤の量を変化させることにより、硬化型ジョイントコンパウンドの時間の関数として、活性剤を添加した後に算出したΔE値を報告する。
【実施例3】
【0085】
担体上にコーティングされた指示薬を生成するために、1gのカルコンカルボン酸を99gのタルクまたは塩化ナトリウム、および水と混合した。この混合物を沸騰させ、水を蒸発させた。得られた固体生成物は、担体上にコーティングされたカルコンカルボン酸であった。乳鉢または乳棒を使用して、得られた固体生成物を微粉末に粉砕した。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】