特表2021-510189(P2021-510189A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特表2021510189-ターボ機械内側ハウジング 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-510189(P2021-510189A)
(43)【公表日】2021年4月15日
(54)【発明の名称】ターボ機械内側ハウジング
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/44 20060101AFI20210319BHJP
   F04D 29/42 20060101ALI20210319BHJP
   F04D 29/62 20060101ALI20210319BHJP
【FI】
   F04D29/44 L
   F04D29/44 N
   F04D29/42 J
   F04D29/62 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-538043(P2020-538043)
(86)(22)【出願日】2018年12月21日
(85)【翻訳文提出日】2020年8月3日
(86)【国際出願番号】EP2018086644
(87)【国際公開番号】WO2019137804
(87)【国際公開日】20190718
(31)【優先権主張番号】102018200287.8
(32)【優先日】2018年1月10日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】517298149
【氏名又は名称】シーメンス アクティエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ディーター・ナス
(72)【発明者】
【氏名】シャルズ・ネジャティ−ラッド
(72)【発明者】
【氏名】カイ・シックマン
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA12
3H130AB27
3H130AB46
3H130AB62
3H130AB65
3H130AB69
3H130AC01
3H130BA53A
3H130BA53F
3H130BA95A
3H130BA98A
3H130CA12
3H130CA26
3H130CA27
3H130DA02Z
3H130DC01Z
3H130EA01A
3H130EA07A
3H130EB01A
3H130EB05A
3H130EC12A
3H130EC17A
3H130EC18A
3H130ED01A
(57)【要約】
本発明は、ラジアルターボ機械(RTM)のためのターボ機械内側ハウジング(TMI)であって、ターボ機械内側ハウジング(TMI)が、長手方向軸線(X)、特にロータ長手方向軸線(RX)に沿った分割線(TF)を有しており、これにより、ターボ機械内側ハウジング(TMI)が、下側部分(LPC)と上側部分(UPC)とに分割されており、ターボ機械内側ハウジング(TMI)が、少なくとも2つの段(STG)を備えているラジアルターボ機械(RTM)のために構成されており、ターボ機械内側ハウジング(TMI)が、2つの段(STG)の間それぞれに戻り段(BFC)を有しており、下側部分(LPC)及び/又は上側部分(UPC)が、一体に形成されており、少なくとも幾つかのセクションにおいて少なくとも2つの段(STG)を覆っている、ターボ機械内側ハウジング(TMI)を提供する。このようなターボ機械内側ハウジングを改良するために、上側部分及び/又は下側部分が、少なくともセクションにおいて少なくとも2つの段を覆うように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジアルターボ機械(RTM)のためのターボ機械内側ハウジング(TMI)であって、
前記ターボ機械内側ハウジング(TMI)が、長手方向軸線(X)、特にロータ長手方向軸線(RX)に沿った分割線(TF)を有しており、これにより、前記ターボ機械内側ハウジング(TMI)が、下側部分(LPC)と上側部分(UPC)とに分割されており、
前記ターボ機械内側ハウジング(TMI)が、少なくとも2つの段(STG)を備えている前記ラジアルターボ機械(RTM)のために構成されており、
前記ターボ機械内側ハウジング(TMI)が、2つの前記段(STG)の間それぞれに戻り段(BFC)を有しており、
前記下側部分(LPC)及び/又は前記上側部分(UPC)が、一体に形成されており、少なくとも幾つかのセクションにおいて少なくとも2つの前記段(STG)を覆っていることを特徴とするターボ機械内側ハウジング(TMI)。
【請求項2】
前記ターボ機械内側ハウジング(TMI)が、最大50重量%の金属材料から作られていることを特徴とする請求項1に記載のターボ機械内側ハウジング(TMI)。
【請求項3】
前記ターボ機械内側ハウジング(TMI)が、少なくとも50重量%のプラスチック材料から作られていることを特徴とする請求項2に記載のターボ機械内側ハウジング(TMI)。
【請求項4】
動作の際にプロセス流体に露呈される表面には、少なくとも部分的にコーティング(SCC)が施されていることを特徴とするターボ機械内側ハウジング(TMI)。
【請求項5】
前記コーティング(SSC)が、少なくとも部分的に金属材料から作られていることを特徴とする請求項4に記載のターボ機械内側ハウジング(TMI)。
【請求項6】
前記ターボ機械内側ハウジング(TMI)が、少なくとも2つの戻り段(BFC)を有しており、
前記ターボ機械内側ハウジング(TMI)が、前記ターボ機械内側ハウジング(TMI)の内側を形成している内面(ISC)と外面(OSC)とを有しており、
前記外面(OSC)が、2つの前記段(BFC)の間においてラジアル方向内方且つアキシアル方向に延在している少なくとも1つの凹所(RRZ)を有していることを特徴とする請求項1〜5の少なくとも一項に記載のターボ機械内側ハウジング(TMI)。
【請求項7】
1つ以上の前記凹所(RRZ)が、前記ターボ機械内側ハウジング(TMI)の断面積の少なくとも35%に亘って延在していることを特徴とする請求項6に記載のターボ機械内側ハウジング(TMI)。
【請求項8】
請求項1〜7のうち少なくとも一項に記載のターボ機械内側ハウジング(TMI)と、前記ターボ機械内側ハウジング(TMI)を囲んでいるターボ機械外側ハウジング(TMO)と、を備えている装置(ARG)であって、
前記装置(ARG)が、アキシアル方向低圧側(LPS)とアキシアル方向高圧側(HPS)とを有しており、
前記装置(ARG)が、シール(STS)を有しており、前記シール(STS)が、周方向に延在しており、且つ、前記アキシアル方向高圧側(HPS)と前記アキシアル方向低圧側(LPS)との間に配設された空間(RBT)に配置されており、前記空間(RBT)が、高圧部分(HPC)と低圧部分(LPC)とに分割されていることを特徴とする装置(ARG)。
【請求項9】
凹所(RRZ)が、アキシアル方向高圧側(HPS)に配置されていることを特徴とする請求項5及び8のうち少なくとも一項に記載の装置(ARG)。
【請求項10】
ターボ機械外側ハウジング(TMO)が、分割線(OCS)が長手方向軸線(X)に対して横方向に設けられるように、バレル状の構造に形成されていることを特徴とする請求項7又は9に記載の装置(ARG)。
【請求項11】
前記分割線(OCS)が、カバー(COV)を前記ターボ機械外側ハウジング(TMO)のバレル(BRL)から分離していることを特徴とする請求項10に記載の装置(ARG)。
【請求項12】
一体に形成されている少なくとも1つのセクションが、少なくとも2つの段(STG)を覆っており、積層造形法によって製造されることを特徴とする請求項1〜6のうち少なくとも一項に記載のターボ機械内側ハウジング(TMI)又は請求項8〜11のうち少なくとも一項に記載の装置(ARG)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジアルターボ機械のためのターボ機械内側ハウジングであって、ターボ機械内側ハウジングが、ターボ機械内側ハウジングが下側部分と上側部分とに分割されるように、長手方向軸線、特にロータ長手方向軸線に沿った分割線を有しており、ターボ機械内側ハウジングが、少なくとも2つの段を備えているラジアルターボ機械のために構成されており、ターボ機械内側ハウジングが、段同士の間に戻り段を有しており、下側部分及び/又は上側部分が、少なくとも2つの段を少なくとも部分的に覆っている一部品として形成されている、ターボ機械内側ハウジングに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なターボ機械内側ハウジングを具備する冒頭で述べたタイプのラジアルターボ機械は、特許文献1、特許文献2、特許文献3、及び特許文献4から既知とされる。
【0003】
ターボ機械内側ハウジング、すなわちターボ機械、特にラジアルターボ機械の内側ハウジングは、常時、外側ハウジングによって囲まれている。当該外側ハウジングは、大量のプロセス流体が外側ハウジングから漏出することができないように、実質的に密封されている。シャフト開口部が外側ハウジングに設けられている場合には、当該シャフト開口部はシャフトシールによって密封されている。技術的な理由により、漏出は、望ましいことではないが、当該シャフト開口部で発生する場合がある。基本的に、例えば圧縮機又はポンプのための駆動装置は、シャフト開口部を必要としないように、外側ハウジングの内部に設けられている場合がある。この場合には、外側ハウジングの対応するシールが実質的に密閉性を有している。
【0004】
本発明という意味の対応するターボ機械は、回転軸線に沿って延在しているロータを介して、技術的エネルギをプロセス流体から抽出し、又は技術的エネルギをプロセス流体に伝達させるように機能する。プロセス流体の圧力は、ターボ機械の内側ハウジングのアキシアル方向の範囲で増大又は減少するので、ターボ機械の内部における圧力差又はターボ機械に加わる圧力差が、実質的にターボ機械内側ハウジングのアキシアル方向端部同士の間に発生する。最も単純な場合には、プロセス流体は、入口から出口に向かって、ターボ機械を通じて流れる。基本的に、部分流が供給又は転向される場合がある。ラジアルターボ機械の場合には、羽根車それぞれにおいて、流れが、アキシアル方向からラジアル方向に、又はラジアル方向からアキシアル方向に偏向される。
【0005】
本明細書で解釈されるべき多段構造は、ラジアル方向外方に向かう流れ方向からラジアル方向内方に向かう流れ方向への転向を必然的に発生させる複数の羽根車を具備する構造を示している(本明細書の解釈においては、一の羽根車が一の段に相当する)。圧縮機の場合には、プロセス流体は、羽根車から離隔するようにラジアル方向外方に流れ、必然的に流れ方向の観点においてラジアル方向内方に180°反転し、略アキシアル方向において後続の羽根車に供給される。このために、ラジアルターボ機械は戻り段を有している。このような戻り段は、通常、羽根付環状チャネルとされる。羽根付環状チャネルは、ラジアル方向外方に向かう流れ方向を有するディフューザを有しており、対応して構成された環状チャネルを介して流れ方向を180°反転させる。従って、プロセス流体はラジアル方向内方に案内される。ディフューザ及び/又は戻り経路は、一般に、ラジアル方向内方において、比較的複雑な態様で既に形成されている環状チャネルを周方向における流れチャネルに分割する案内羽根を有している。最適な空力特性を得るために、対応する案内羽根を三次元的に構成することが一層望ましい。このことは、これら構成部品すなわち戻り段の外形的構成が極めて複雑であることを意味する。仮に極めて複雑であったとしても、従来技術に基づく機械加工手法によって戻り羽根の三次元形状を技術的に実現することは、現状のところ辛うじて可能である。組み立てを目的として、このような非常に複雑な形状を従来技術に基づいて製造することは、戻り段それぞれを少なくとも2つのアキシアル方向部分に分割することを要求する。従って、アキシアル方向部分が組み合わされた場合に、上述の環状チャネルが形成される。従って、従来技術に基づくターボ機械内側ハウジングは、戻り段構成部品の2つのアキシアル方向スタックから構成されている。戻り段構成部品は、上側部分と下側部分とを共に形成しており、完全なターボ機械内側ハウジングを形成している。このようなモジュール構造は、多くの部品、多くの固定手段、及びシール手段が必要とされるので、非常に複雑である。さらに、様々な部品を互いに密着させる必要があるのみならず、互いに対して位置合わせする必要がある。環状の戻り段の流路の製造が複雑であることに加えて、シール面の製造と多くの必要な芯出し手段及び固定手段とが、非常に複雑で高価である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2016/026825号
【特許文献2】国際公開第2010/034602号
【特許文献3】国際公開第2007/137959号
【特許文献4】欧州特許出願公開第1860326号
【特許文献5】国際公開第2016/198210号
【特許文献6】国際公開第2017/060036号
【特許文献7】国際公開第2017/102286号
【特許文献8】国際公開第2017/121539号
【特許文献9】国際公開第2017/137376号
【特許文献10】国際公開第2017/37262号
【特許文献11】国際公開第2017/167615号
【特許文献12】国際公開第2017/182220号
【特許文献13】国際公開第2017/182221号
【特許文献14】国際公開第2017/194274号
【特許文献15】国際公開第2017/194451号
【特許文献16】国際公開第2015/144401号
【特許文献17】国際公開第2017/045823号
【特許文献18】国際公開第2017/063861号
【特許文献19】国際公開第2017/093461号
【特許文献20】国際公開第2017/133812号
【特許文献21】国際公開第2017/174234号
【特許文献22】国際公開第2017/174233号
【特許文献23】国際公開第2017/194387号
【特許文献24】国際公開第2016/078800号
【特許文献25】国際公開第2016/113107号
【特許文献26】国際公開第2016/188696号
【特許文献27】国際公開第2017/157620号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の欠点を起点として、本発明の目的は、これら問題を少なくとも部分的に解消することである。本発明の目的を達成するために、独立請求項の特徴部分に記載の付加的な特徴と共に、冒頭で定義したタイプのターボ機械ハウジングを提案する。また、このようなターボ機械内側ハウジングを具備する装置を提案する。
【0008】
特に明記しない限り、例えばアキシアル方向、ラジアル方向、及び周方向のような用語は、対応するラジアルターボ機械のロータ長手方向軸線に対して少なくとも平行なターボ機械内側ハウジングの長手方向軸線に関連して使用される。
【0009】
特に記載がない限り、本明細書の記載は、本発明における圧縮機として構成されているターボ機械に関する。代替的には、本発明におけるターボ機械は、明示的に言及せずとも、膨張機として構成されている場合がある。当業者であれば、その専門的な知識に基づいて、変更すべき個所を変更した上で、本発明に関する説明を膨張機に適用することができる。
【0010】
「一体」という用語を用いる場合には、本発明は、破壊することなく分解不可能に形成されている構成部品に言及している。このことは、当該構成部品が、一様な材料片から形成されているか、又は破壊しなければ再び分離させることができないように嵌合若しくは少なくとも係合されたユニットとして形成されていることを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ターボ機械内側ハウジングの一体構造が、2つの段を覆っている少なくとも1つのセクションに亘って上側部分及び/又は下側部分から成る結果として、このような構造の剛性が良好になる。特に、ターボ機械内側ハウジングの戻り段の環状チャンバ又は流路の案内羽根が、非常に良好な結合をもたらすからである。従って、特に好ましくは、戻り段は、羽根付き構造を有する戻り段、すなわち案内羽根を有する戻り段とされる。
【0012】
一体に形成されている戻り段はそれぞれ、特に好ましくは、少なくともラジアル方向内方(流れ方向)に導くセクション及び/又はラジアル方向外方(流れ方向)に導くセクションに案内羽根を有している。従って、特に空気力学的に優位で効率的な構成のみならず、当該一体部の特に良好な剛性を実現することができる。
【0013】
発明の他の実施態様では、便宜上、ターボ機械ハウジングは、最大50重量%の金属から作られている。特に好ましくは、ターボ機械内側ハウジングは、最大30重量%の金属から作られている。本発明の特に好ましいさらなる発展形態では、ターボ機械内側ハウジングは、少なくとも50重量%のプラスチック材料から、好ましくは30重量%のプラスチック材料から作られている(特に記載が無ければ、本明細書におけるすべての割合のデータは重量に関する)。ターボ機械の内側ハウジングの従来の構造と比較して、本発明における構造は、当該構成部品の大部分をプラスチック材料から製造することを可能とする。金属材料から構築することによってのみ確保される機械的剛性が、一体構造によって確保されるからである。
【0014】
ターボ機械内側ハウジングも十分な耐摩耗性を有しているので、動作の際にプロセス流体に露呈される表面が、コーティングが施された基材より高い耐摩耗性を有している当該コーティングを具備する少なくとも幾つかの領域に設けられていることが望ましい。このようなコーティングは、特に優位には、金属から少なくとも部分的に作られているか、又は対応する金属片から製造されているか、若しくは金属インレーを利用して製造されている。
【0015】
本発明の特に便宜的なさらなる発展形態では、ターボ機械内側ハウジングが、少なくとも2つの戻り段を有しており、ターボ機械内側ハウジングが、ターボ機械内側ハウジングの内側を規定する内面と外面とを有しており、外面が、2つの戻り段の間にラジアル方向内方且つアキシアル方向に延在している少なくとも1つの凹所を有している。ラジアルターボ機械の場合には、アキシアル方向においてプロセス流体を取り込み且つ当該プロセス流体をラジアル方向に転向させるように延在している羽根車の一部分が、U字状の断面を形成している戻り段の環状流路同士の間において、略アキシアル方向に配置されている。特に当該領域では、ラジアル方向においてさらに外方に配置されているアキシアル方向領域が、実質的に空気力学的な機能を発揮させることができない。戻り段の環状流路は、羽根車からの流出部から次の羽根車へのアキシアル方向流入部に至るまでアキシアル方向に延在しているからである(このような流れ方向に関するデータが圧縮機に適用される。さらには、膨張機の場合には、流れ方向が逆転する。これ以上説明しないが、このような流れ方向に関するデータのために、圧縮機の例示が以下において常に利用される。)。従って、ラジアル方向内方に延在している凹所又は開口部を具備するアキシアル方向領域を2つの戻り段の間に設けることが優位である。このような凹所は、ターボ機械内側ハウジングの大きさに依存して、ターボ機械内側ハウジングの自重を著しく低減させ、例えば羽根車の外径に至るまでラジアル方向内方に連続している。好ましくは、対応する凹所のラジアル方向内側基部は、隣り合う段の羽根車の外径の領域に、当該羽根車の外径の+/−20%で配置されている。特に好ましくは、このような凹所、又はこのタイプの複数の凹所は、ターボ機械内側ハウジングの断面領域の少なくとも35%に亘って延在している。この場合には、100%は、ターボ機械内側ハウジングのアキシアル方向において隣り合う羽根車の領域に実際に存在する2つの断面領域の間の中間点を形成する仮定断面領域を表わす(断面積は長手方向軸線に対して垂直に配置されている)。円筒状のターボ機械内側ハウジングの場合には、100%の断面積は一定の断面積を示している。このような凹所の重要な利点は、外部に作用する圧力が少なくとも当該凹所の領域においてアキシアル方向長さを変える効果を有していないことである。実際には、このような凹所が設けられていなければ、ターボ機械内側ハウジングの剛性に従って、及び内側ハウジングと外側ハウジングの間の圧力に従って、ターボ機械内側ハウジングの上側部分及び下側部分には大きい変形が発生し得る。従って、このような凹所は、ターボ機械内側ハウジングの剛性に関する必要条件を緩和する。
【0016】
本発明における利点は、本発明における実施例の又は対応する発展形態のターボ機械内側ハウジングとターボ機械外側ハウジングとを備えている装置であって、当該装置が、アキシアル方向低圧側とアキシアル方向高圧側とを有しており、当該配置が、周方向に延在しているシールを有しており、当該シールが、高圧側と低圧側との間の空間に配置されており、これにより当該空間が、高圧部分と低圧部分とに分離される、当該装置において特に明確である。当該配置は、便宜上、動作の際に高圧部品がターボ機械の終圧下にあるように、且つ、動作の際に低圧部分が吸気圧力下にあるように構成されている。この場合には、特に優位には、2つの隣り合う戻りの段間に配設された凹所が高圧部分の領域に配置されている。これにより、一方では高圧が少なくとも部分的にアキシアル方向において補償され、他方ではターボ機械内側ハウジングの外面における最終的な力分布が、動作の際にターボ機械内側ハウジングの上側部分に対する下側部分の接触圧力を特に一様に確保する。対応して、2つの部分の間の固定及び密閉のために必要とされる手段が少なくなる。
【0017】
特に便宜的には、当該装置のターボ機械外側ハウジングは、分割線が長手方向軸線に対して横方向に設けられるように、バレル状の構造で形成されている。本発明では、分割線がターボ機械外側ハウジングのバレルからカバーを分離するならば有用である。この場合には、当業者であれば理解可能なように、バレルのアキシアル方向終端部となるべきカバーは、ケーシング機能を有していない。
【0018】
少なくとも一体に形成されているターボ機械内側ハウジングの、少なくとも2段を覆っているセクションは、特に便宜上、積層造形法(生産的な生成法又は負荷製造法)によって製造される。対応する積層造形方法は、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17、特許文献18、特許文献19、特許文献20、特許文献21、特許文献22、特許文献23、特許文献24、特許文献25、特許文献26、及び特許文献27から既知である。基本的に、例えば選択的レーザー溶融法(SLM)、選択的レーザー焼結法(SLS)、選択的熱焼成法(SHS)、バインダ噴射法(バインダ付き強化粉末材料)、電子ビーム溶融法(EBM)、溶融堆積モデリング法(FDM又は溶融フィラメント加工(FFF)))、肉盛溶接又はクラッディング、ワックスディップ成形(WDM)、輪郭造形(contour crafting)、金属粉末利用技術(MPA)、低温ガス注入及び電子ビーム溶接(EBW)、ステレオリソグラフィ(SLA)+マイクロSLA、光露光及び液体複合成形(LCM)用デジタル光処理(DLP)を使用する方法、薄膜積層法(LOM)、金属の3Dスクリーン印刷法、並びに光制御電気泳動分離法のような、すべての積層造形方法は、本発明における構成に適用可能とされる。
【0019】
本発明の優位なさらなる発展形態では、ターボ機械内側ハウジングが、低圧側の吸引インサートを除いて、好ましくは一体構造下側部分と好ましくは一体構造上側部分とに分割される。当該吸引インサートは、好ましくは周方向において分割されておらず、ターボ機械内側ハウジングTMIを形成するために、分割線SPLで略アキシアル方向において分割された状態で下側部分LPC及び上側部分UPCと結合している。好ましくは、ターボ機械内側ハウジングとターボ機械外側ハウジングとの間のシールは、吸引インサートに配置されており、高圧側を低圧側から分離している。優位には、吸引インサートは、圧力差に起因する機械的負荷を吸収可能なように、金属材料から作られている。
【0020】
本発明では、選択的レーザー溶融法や電子ビーム溶融法が特に望ましい。本発明では、特に有用である。少なくとも上述のセクションのみならず、上側部分全体、下側部分全体、又は上側部分と下側部分との両方が、包括的に一体に形成されている。従って、上述のタイプの積層造形法の適用が、ターボ機械内側ハウジング全体に便宜上適用可能とされる。
【0021】
本発明について、図面を参照しつつ、特定の例示的な実施例を用いて、以下に詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明におけるターボ機械内側ハウジングを具備する装置すなわちラジアルターボ機械の概略的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明におけるターボ機械内側ハウジングTMIを具備する装置ARGすなわちラジアルターボ機械RTMを表わす。ターボ機械の内側ハウジングTMIは、ターボ機械外側ハウジングTMOによって囲まれており、プロセス流体PFLは、ターボ機械外側ハウジングTMOを通じて、流入口IMFから流出口EXTに流れる。ラジアルターボ圧縮機を表わす具体的且つ例示的な実施例では、プロセス流体PFLは、羽根車IMPによってターボ機械内側ハウジングTMIを通じて流れる場合に比較的高い圧力を受ける。羽根車IMPは、長手方向軸線Xすなわち回転軸線RXの周りに回転するロータROTの構成部品とされる。当該実施例では、ターボ機械内側ハウジングTMIは、静的な構成部品、特に空気力学的に作用する構成部品とされ、羽根車IMPを具備するロータROTは、技術的エネルギを外部駆動装置(詳細には図示しない)からプロセス流体PFLに導入する。駆動装置を接続することを目的として、ロータの左側シャフト端部が、右側シャフト端部と同様に、貫通孔においてターボ機械外側ハウジングTMOから離脱するように、アキシアル方向に案内される。対応するシャフト開口部は、シャフトシール(詳細には説明しない)によって、外側ハウジングTMOの内部におけるプロセス流体と外部環境との間の圧力差に対して密閉されている。
【0024】
ターボ機械内側ハウジングTMIは、ターボ機械外側ハウジングTMOの内部の空間RBTでプロセス流体PFLを受容する。空間RBTは、ターボ機械内側ハウジングTMIとターボ機械外側ハウジングTMOとの間に配設されたシールSTSによって、高圧側HPSと低圧側LPSとに分割されている。シールSTSは、(長手方向軸線Xすなわちロータ軸線RXに関する)周方向に延在しており、空間RBTのアキシアル方向高圧部HPCをアキシアル方向低圧部LPCから分離している。ターボ機械外側ハウジングTMOの流入口IMFは、低圧部分LPCに導かれており、流出口EXTは、高圧部分HPCと流通している。シールSTSは、動作の際に高圧部品HPCの比較的高い圧力がターボ機械内側ハウジングTMIを低圧部品LPCに向かって押圧するように、アキシアル方向において接触するように構成されている。これにより、完全な周方向における接触が実現されるので、シールSTSの気密性(leak-tightness)が確保される。
【0025】
図示のラジアルターボ機械RTMは、6つの羽根車を、すなわち本発明における解釈では6つの段STGひいては圧縮機段を有している。ターボ機械内側ハウジングTMIの内部に配設されたいわゆる戻り段BFCは、2つの段の間それぞれに形成されている。戻り段は、上流に配置されている羽根車IMPからラジアル方向外方に流れるプロセス流体PFLを受容する。最初にディフューザとして機能する戻り段BFCのセクションにおいて、プロセス流体が減速され、当該セクションに設けられている案内羽根を介して、望ましくない渦巻成分を実質的に解消する。下流に配置されている戻り段BFCの環状流路のセクションでは、プロセス流体は、180°反転してラジアル方向内方に転向された後に、案内羽根が配設されたセクションを通じてラジアル方向内方に流れ続ける。下流において、プロセス流体は、上流に配置されている次の羽根車IMPに向かって、アキシアル方向において90°転向される。具体的且つ例示的な実施例では、ターボ機械内側ハウジングTMIは、長手方向軸線Xに沿った分割線を有している一体構造下側部分LPCと一体構造上側部分UPCとの組み合わせから構成されている。同様に、ターボ機械内側ハウジングの一体構造上側部分UPC及び一体構造下側部分LPCも一体構造で形成されており、幾つかのセクションにおいてのみ少なくとも2つの段を覆っている。このことは、一体構造下側部分LPCのみの場合、又は一体構造上側部分UPCのみの場合にも当て嵌まる。このことについては、さらなる説明を要しない。
【0026】
具体的且つ例示的な実施例では、ターボ機械内側ハウジングTMIは、吸引インサートSESを除いて、一体構造下側部分LPCと一体構造上側部分UPCとに分割される。当該吸引インサートは、周方向において分割されておらず、ターボ機械内側ハウジングTMIを形成するために、分割線SPLで略アキシアル方向において分割された状態で下側部分LPC及び上側部分UPCと結合している。シールSTSは、高圧側HPSを低圧側LPSから分離しており、吸引インサートSESに対抗して配置されている。優位には、当該実施例では、吸引インサートSESは、金属材料から作られているので、圧力差に起因する機械的負荷を吸収することができる。
【0027】
例示的な実施例では、ターボ機械内側ハウジングTMIは、最大50重量%の金属材料から、好ましくは最大30重量%の金属材料から作られている。特に好ましくは、ターボ機械内側ハウジングは、50重量%のプラスチック材料から、又は50重量%より高い重量%のプラスチック材料から形成されている。幾つかの領域では、ターボ機械内側ハウジングの、動作の際にプロセス流体PFLに露呈される表面に、コーティングSCCが施されている。当該コーティングは、少なくとも部分的に金属から作られている。
【0028】
ターボ機械内側ハウジングは、内面ISCと外面OSCとを形成している。外面OSCは、2つの戻り段BFCの間それぞれにおいてラジアル方向内方且つアキシアル方向に延在している凹所RRZを備えている。このような凹所RRZは、ターボ機械内側ハウジングTMIの断面積の少なくとも35%を占めている。従って、動作の際に、高圧側HPSの終圧が、これら凹所RRZの領域にも作用するので、ターボ機械内側ハウジングTMIに作用する比較的低いアキシアル方向圧縮力と、上側部分UPCと下側部分LPCとの間のシール面の極僅かな変形及び一様な接触とが保証される。一体構造上側部分UPC及び一体構造下側部分LPCが、アキシアル方向及びラジアル方向において平面状に実質的に延在している凹所RRZのリブによって、アキシアル方向において補剛されている。
【0029】
動作の際には、一般に、外面OSCの領域における凹所それぞれの圧力は、高圧側HPSの終圧より低い。外面OSCの領域における輪郭が複雑であるので、動作圧は、一体構造上側部分UPCと一体構造下側部分LPCとの間の分割線TFが圧縮されるように作用し、これにより内部漏出が防止される。従来技術に基づく金属製ハウジングでは、結合領域は、製造に関連する隙間を残した状態で厚肉になるので、その結果として内部漏出が発生する。
【0030】
ターボ機械外側ハウジングTMOは、分割線OCSが長手方向軸線Xに対して横方向において両側に設けられるように、バレル状の構成で形成されている。カバーCOVは、ターボ機械外側ハウジングTMOのバレルBRLのアキシアル方向終端部を両側に形成している。カバーは、ケーシング機能を有しておらず、単にアキシアル方向終端部を形成しているにすぎない。
【0031】
ターボ機械内側ハウジングTMIは、積層造形法によって、少なくとも2つ以上の段が一体構造で包括的に形成されている領域に製造されている。
【符号の説明】
【0032】
RTM ラジアルターボ機械
TMI ターボ機械内側ハウジング
TMO ターボ機械外側ハウジング
EXT 流出口
IMF 流入口
IMP 羽根車
PFL プロセス流体
RBT 空間
HPS 高圧側
LPS 低圧側
HPC アキシアル方向高圧部
LPC アキシアル方向低圧部
ROT ロータ
BFC 戻り段
STS シール
UPC 一体構造上側部分
LPC 一体構造下側部分
SES 吸引インサート
SPL 分割線
ISC 内面
OSC 外面
RRZ 凹所
X 長手方向軸線
RX 回転軸線(ロータ軸線)
図1
【手続補正書】
【提出日】2020年9月4日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジアルターボ機械(RTM)のためのターボ機械内側ハウジング(TMI)であって、
前記ターボ機械内側ハウジング(TMI)が、長手方向軸線(X)に沿った分割線(TF)を有しており、これにより、前記ターボ機械内側ハウジング(TMI)が、下側部分(LPC)と上側部分(UPC)とに分割されており、
前記ターボ機械内側ハウジング(TMI)が、少なくとも2つの段(STG)を備えている前記ラジアルターボ機械(RTM)のために構成されており、
前記ターボ機械内側ハウジング(TMI)が、2つの前記段(STG)の間それぞれに戻り段(BFC)を有しており、
前記下側部分(LPC)及び前記上側部分(UPC)のうち少なくとも1つが、一体に形成されており、少なくとも幾つかのセクションにおいて少なくとも2つの前記段(STG)を覆っていることを特徴とするターボ機械内側ハウジング(TMI)。
【請求項2】
前記ターボ機械内側ハウジング(TMI)が、最大50重量%の金属材料から作られていることを特徴とする請求項1に記載のターボ機械内側ハウジング(TMI)。
【請求項3】
前記ターボ機械内側ハウジング(TMI)が、少なくとも50重量%のプラスチック材料から作られていることを特徴とする請求項に記載のターボ機械内側ハウジング(TMI)。
【請求項4】
動作の際にプロセス流体に露呈される表面には、少なくとも部分的にコーティング(SCC)が施されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のターボ機械内側ハウジング(TMI)。
【請求項5】
前記コーティング(SSC)が、少なくとも部分的に金属材料から作られていることを特徴とする請求項4に記載のターボ機械内側ハウジング(TMI)。
【請求項6】
前記ターボ機械内側ハウジング(TMI)が、少なくとも2つの戻り段(BFC)を有しており、
前記ターボ機械内側ハウジング(TMI)が、前記ターボ機械内側ハウジング(TMI)の内側を形成している内面(ISC)と外面(OSC)とを有しており、
前記外面(OSC)が、2つの前記段(BFC)の間においてラジアル方向内方且つアキシアル方向に延在している少なくとも1つの凹所(RRZ)を有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のターボ機械内側ハウジング(TMI)。
【請求項7】
1つ以上の前記凹所(RRZ)が、前記ターボ機械内側ハウジング(TMI)の断面積の少なくとも35%に亘って延在していることを特徴とする請求項6に記載のターボ機械内側ハウジング(TMI)。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のターボ機械内側ハウジング(TMI)と、前記ターボ機械内側ハウジング(TMI)を囲んでいるターボ機械外側ハウジング(TMO)と、を備えている装置(ARG)であって、
前記装置(ARG)が、アキシアル方向低圧側(LPS)とアキシアル方向高圧側(HPS)とを有しており、
前記装置(ARG)が、シール(STS)を有しており、前記シール(STS)が、周方向に延在しており、且つ、前記アキシアル方向高圧側(HPS)と前記アキシアル方向低圧側(LPS)との間に配設された空間(RBT)に配置されており、前記空間(RBT)が、高圧部分(HPC)と低圧部分(LPC)とに分割されていることを特徴とする装置(ARG)。
【請求項9】
凹所(RRZ)が、アキシアル方向高圧側(HPS)に配置されていることを特徴とする請求項に記載の装置(ARG)。
【請求項10】
ターボ機械内側ハウジング(TMI)が、分割線(OCS)が長手方向軸線(X)に対して横方向に設けられるように、バレル状の構造に形成されていることを特徴とする請求項に記載の装置(ARG)。
【請求項11】
前記分割線(OCS)が、カバー(COV)を前記ターボ機械内側ハウジング(TMI)のバレル(BRL)から分離していることを特徴とする請求項10に記載の装置(ARG)。
【請求項12】
一体に形成されている少なくとも1つのセクションが、少なくとも2つの段(STG)を覆っており、積層造形法によって製造されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のターボ機械内側ハウジング(TMI)又は請求項8〜11のいずれか一項に記載の装置(ARG)。
【国際調査報告】