(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
サンプル中の微生物(例えば、Cronobacter spp.)の迅速検出のための方法およびシステムが本明細書で開示される。後期遺伝子領域にインジケーター遺伝子を含む遺伝的に改変されたバクテリオファージも、開示される。Cronobacter特異的バクテリオファージなどのバクテリオファージの特異性は、Cronobacter spp.などの特異的微生物の検出を可能にし、アッセイ感度を最適化するためにインジケーターシグナルを増幅することができる。
バクテリオファージゲノムの後期遺伝子領域に挿入されたインジケーター遺伝子を含む組換えバクテリオファージであって、ここで前記組換えバクテリオファージは、Cronobacter sppに特異的に感染する、組換えバクテリオファージ。
前記インジケーター遺伝子がコドン最適化され、内因性シグナルを生成する可溶性タンパク質生成物または基質との反応の際にシグナルを生成する可溶性酵素をコードする、請求項1に記載の組換えバクテリオファージ。
前記コドン最適化インジケーター遺伝子の上流に非翻訳領域をさらに含み、該非翻訳領域が、バクテリオファージ後期遺伝子プロモーターおよびリボソーム進入部位を含む、請求項1に記載の組換えバクテリオファージ。
少なくとも2種の異なるタイプの組換えバクテリオファージを含むカクテル組成物であって、ここで前記組換えバクテリオファージのうちの少なくとも1種は、請求項1に記載のインジケーター遺伝子を含む、カクテル組成物。
配列を設計することが、ファージ後期遺伝子プロモーターおよびリボソーム進入部位を含む非翻訳領域を、前記コドン最適化インジケーター遺伝子の上流に挿入することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
前記相同組換えプラスミドが、バクテリオファージ後期遺伝子プロモーターおよびリボソーム進入部位を含む非翻訳領域を前記コドン最適化インジケーター遺伝子の上流に含む、請求項8に記載の方法。
前記野生型バクテリオファージは、Cronobacter特異的バクテリオファージであり、前記標的病原性細菌は、Cronobacter spp.である、請求項8に記載の方法。
組換えバクテリオファージの特定のクローンを単離する工程が、前記インジケーター遺伝子の発現を示すクローンを単離するための限界希釈アッセイを含む、請求項8に記載の方法。
食品安全産業のための標準サイズのサンプル中の10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個または1個程度の少なさの細菌を検出する、請求項12に記載の方法。
前記サンプルは、少なくとも2種の異なるタイプの組換えバクテリオファージを含むカクテル組成物とともにインキュベートされ、前記組換えバクテリオファージのうちの少なくとも1種は、請求項12に記載のインジケーター遺伝子を含む、請求項12に記載の方法。
前記サンプルは、24時間未満、23時間未満、22時間未満、21時間未満、20時間未満、19時間未満、18時間未満、17時間未満、16時間未満、15時間未満、14時間未満、13時間未満、12時間未満、11時間未満、10時間未満、9時間未満、8時間未満、7時間未満、6時間未満、5時間未満、4時間未満、3時間未満、または2時間未満の富化期間の間、成長を有利にする条件において最初にインキュベートされる、請求項16に記載の方法。
結果までの合計時間は、26時間未満、25時間未満、24時間未満、23時間未満、22時間未満、21時間未満、20時間未満、19時間未満、18時間未満、17時間未満、16時間未満、15時間未満、14時間未満、13時間未満、12時間未満、11時間未満、10時間未満、9時間未満、8時間未満、7時間未満、6時間未満、5時間未満、4時間未満、3時間未満、または2時間未満である、請求項16に記載の方法。
前記インジケーターを検出する工程によって生成されるシグナル対バックグラウンドの比が、少なくとも2.0または少なくとも2.5である、請求項12に記載の方法。
前記組換えバクテリオファージによって発現される可溶性タンパク質生成物を検出するための、インジケーターと反応させるための基質をさらに含む、請求項20に記載のキット。
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の詳細な説明
試験サンプル(例えば、生物学的サンプル、食品サンプル、水サンプル、および環境サンプル)中の目的の微生物(例えば、Cronobacter spp.)の検出に関して驚くべき感度を示す、組成物、方法およびシステムが本明細書で開示される。検出は、富化のための培養もなしに、もしくはいくつかの実施形態では最小限のインキュベーション時間(その間に、微生物が潜在的に増殖し得る)を伴って行われるアッセイにおいて、遺伝的に改変された感染性因子を使用して、以前に可能と考えられた時間枠より短い時間枠で達成され得る。また、試験サンプルとともにインキュベートするために、潜在的に高い感染多重度(MOI)、もしくは高濃度のプラーク形成単位(PFU)を使用することの成功は驚くべきである。このような高いファージ濃度(PFU/mL)は、細菌検出アッセイにおいて有害であると以前に主張された。なぜならそれらは、「非感染溶菌(lysis from without)」を引き起こすと主張されたからである。しかし、高濃度のファージは、少数の標的細胞の発見、結合および感染を容易にし得る。
【0028】
本発明の組成物、方法、システムおよびキットは、Cronobacter spp.などの微生物の検出において使用するための感染性因子を含み得る。ある種の実施形態において、本発明は、組換えバクテリオファージの後期遺伝子領域に挿入されたインジケーター遺伝子を有する該バクテリオファージを含む組成物を包含し得る。ある種の実施形態において、宿主細菌の感染後のバクテリオファージ複製の間の上記インジケーター遺伝子の発現は、可溶性インジケータータンパク質生成物の産生を生じる。ある種の実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、上記バクテリオファージの後期遺伝子(すなわち、クラスIII)領域に挿入され得る。上記バクテリオファージは、ポドウイルス(例えば、T7、T7様)、マイオウイルス(例えば、T4、T4様、ViI、ViI様(またはGenBank/NCBIによれば、Vi1ウイルス)、Cronobacter spp,特異的バクテリオファージ、または別の野生型もしくは操作されたバクテリオファージに由来し得る。いくつかの実施形態において、上記選択された野生型バクテリオファージは、Saka2またはSaka4である。Cronobacter spp.ファージSaka2およびSaka4は、新たに単離されかつ配列決定されたファージ、おそらくマイオウイルスである。他の実施形態において、上記選択された野生型バクテリオファージは、ポドウイルス(例えば、T7様ウイルス)、またはSp6様ウイルスである。他の実施形態において、上記選択された野生型バクテリオファージは、Saka10である。Saka10は、新たに単離されかつ配列決定されたファージ、おそらくT7ファージに関連するポドウイルスである。
【0029】
いくつかの局面において、本発明は、目的の微生物を検出するための方法を含む。上記方法は、上記目的の微生物(例えば、Cronobacter spp.)の検出のために感染性因子を使用し得る。例えば、ある種の実施形態において、上記目的の微生物は、Cronobacter spp.であり、上記感染性因子は、Cronobacter spp.に特異的に感染するバクテリオファージである。従って、ある種の実施形態において、上記方法は、サンプルを、目的の細菌に感染する組換えバクテリオファージとともにインキュベートすることによる、サンプル中の目的の細菌の検出を包含し得る。ある種の実施形態において、上記組換えバクテリオファージは、インジケーター遺伝子を含む。上記インジケーター遺伝子は、ある種の実施形態において、上記バクテリオファージの後期遺伝子領域に挿入され得、その結果、宿主細菌の感染後のバクテリオファージ複製の間の上記インジケーター遺伝子の発現は、インジケータータンパク質生成物の産生を生じる。上記方法は、上記インジケータータンパク質生成物を検出する工程を包含し得、ここで上記インジケータータンパク質生成物の陽性検出は、上記目的の細菌が上記サンプルに存在することを示す。いくつかの実施形態では、上記インジケータータンパク質は、可溶性である。
【0030】
ある種の実施形態において、本発明は、システムを包含し得る。上記システムは、本発明の組成物のうちの少なくともいくつかを含み得る。また、上記システムは、上記方法を行うために上記構成要素のうちの少なくともいくつかを含み得る。ある種の実施形態において、上記システムは、キットとして編成される(formulated)。従って、ある種の実施形態において、本発明は、サンプル中のCronobacter spp.などの目的の微生物の迅速検出のためのシステムを包含し得、上記システムは、上記サンプルを、上記目的の微生物に特異的な感染性因子とともにインキュベートするための構成要素であって、ここで上記感染性因子はインジケーター部分を含む構成要素;および上記インジケーター部分を検出するための構成要素を含む。さらに他の実施形態において、本発明は、上記方法もしくはシステムとともに使用するためのソフトウェアを含む。
【0031】
従って、本発明のいくつかの実施形態は、細菌の存在を示す検出可能なシグナルを増幅するためのバクテリオファージベースの方法を使用することによって、要求を解決する。ある種の実施形態において、1個程度のわずかな細菌が検出される。本明細書で適用される原理は、種々の微生物の検出に適用され得る。微生物の表面上に感染性因子のための多くの結合部位、感染の間に100もしくはそれより多くの子孫因子を生成する能力、およびコードされたインジケーター部分の高レベル発現の潜在能力があるので、上記感染性因子もしくはインジケーター部分は、上記微生物自体より容易に検出可能であり得る。このようにして、本発明の実施形態は、実に単一感染細胞からの非常に大きなシグナル増幅を達成し得る。
【0032】
本発明の局面は、サンプル中の特異的微生物を検出および/定量する手段として、感染性因子の結合構成要素などの、特定の微生物に結合し得る結合因子の高い特異性を利用する。いくつかの実施形態において、本発明は、感染性因子(例えば、バクテリオファージ)の高い特異性を利用する。
【0033】
いくつかの実施形態において、検出は、上記目的の微生物に特異的な結合因子と関連付けられたインジケーター部分を通じて達成される。例えば、感染性因子は、インジケーター部分(例えば、可溶性インジケーターをコードする遺伝子)を含み得る。いくつかの実施形態において、上記インジケーターは、上記感染性因子(例えば、バクテリオファージ)によってコードされ得、上記バクテリオファージは、インジケーターファージと示される。
【0034】
本明細書で開示および記載される本発明のいくつかの実施形態は、単一微生物が特異的認識因子(例えば、ファージ)を結合し得るという発見を利用する。上記ファージの感染および複製の後に、子孫ファージは、ファージ複製の間に発現されるインジケーター部分を介して検出され得る。この原理は、微生物表面レセプターの特異的認識に基づいて、1もしくは数個の細胞からのインジケーターシグナルの増幅を可能にする。例えば、細菌の実に単一細胞を複数のファージに曝露し、その後、上記ファージの増幅、および複製の間に、コードされたインジケーター遺伝子生成物の高レベル発現を可能にすることによって、上記インジケーターシグナルは、上記単一細菌が検出可能であるように増幅される。
【0035】
本発明の方法およびシステムの実施形態は、食品サンプル、水サンプルおよび商業サンプルからの病原体の検出があげられるが、これらに限定されない種々の環境における種々の微生物(例えば、細菌)の検出および定量に適用され得る。本発明の方法は、迅速に、高い検出感度および特異性を提供する。いくつかの実施形態において、検出は、上記バクテリオファージの単一の複製サイクル内で可能であり、このことは、予想外である。
【0036】
定義
本明細書において別段の定義がない限り、本発明に関連して使用される科学用語および専門用語は、当業者が一般に理解する意味を有するべきである。さらに、他に状況によって必要とされない限り、単数の用語は、複数を含むべきであり、複数の用語は、単数を含むべきである。一般に、本明細書に記載されている細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学およびタンパク質および核酸化学およびハイブリダイゼーションとの関連で使用される命名法、ならびにこれらの技術は、当技術分野で周知であり、一般に使用されるものである。公知の方法および技術は、他に示さない限り、当技術分野で周知の通常の方法によって、および本明細書を通して考察される様々な一般のおよびより特定の参考文献において記載されているように一般に行われる。酵素反応および精製技術は、当技術分野で一般に達成されるように、または本明細書に記載のように、製造元の仕様によって行われる。本明細書に記載されている実験室の手順および技術に関連して使用される命名法は当技術分野で周知のものであり、一般に使用される。
【0037】
下記の用語は、他に示さない限り、下記の意味を有すると理解すべきである:
【0038】
本明細書において使用する場合、「a」、「an」、および「the」という用語は、他に特に留意しない限り、1つまたは複数を指すことができる。
【0039】
「または」という用語の使用は、代替物のみを言及することが明確に示されない限り、または代替物が相互排他的でない限り、「および/または」を意味するために使用されるが、本開示は、代替物のみおよび「および/または」を指す定義を支持する。本明細書において使用する場合、「別の」は、少なくとも第2またはそれ超を意味することができる。
【0040】
本出願を通して、「約」という用語は、その値が、値を決定するために用いられているデバイス、方法についての固有の誤差の変動、または試料の間に存在する変動を含むことを示すために使用される。
【0041】
「固体支持体」または「支持体」という用語は、その上に生体分子が結合し得る基材および/または表面を提供する構造物を意味する。例えば、固体支持体は、アッセイウェル(すなわち、例えば、マイクロタイタープレートまたはマルチウェルプレート)であり得、または固体支持体は、フィルター、アレイ、または移動性の支持体(例えば、ビーズ)または膜(例えば、フィルタープレート、ラテックス粒子、常磁性粒子またはラテラルフローストリップ)上の位置であり得る。
【0042】
「結合因子」という用語は、第2の(すなわち、異なる)対象分子に特異的および選択的に結合することができる分子を指す。相互作用は、例えば、水素結合、ファンデルワールス相互作用、または静電相互作用もしくは疎水的相互作用の結果として非共有結合性であり得、あるいは相互作用は共有結合性であり得る。「可溶性結合因子」という用語は、固体支持体に会合(すなわち、共有結合または非共有結合)していない結合因子を指す。
【0043】
本明細書で使用される場合、「分析物」とは、測定されている分子、化合物もしくは細胞をいう。目的の分析物は、ある種の実施形態において、結合因子と相互作用し得る。本明細書で記載される場合、用語「分析物」とは、目的のタンパク質もしくはペプチドをいい得る。分析物は、アゴニスト、アンタゴニスト、もしくはモジュレーターであり得る。あるいは、分析物は、生物学的効果を有しなくてもよい。分析物としては、低分子、糖、オリゴサッカリド、脂質、ペプチド、ペプチド模倣物、および有機化合物などが挙げられ得る。
【0044】
用語「検出可能な部分」もしくは「検出可能な生体分子」もしくは「レポーター」もしくは「インジケーター」もしくは「インジケーター部分」とは、定量的アッセイにおいて測定され得る分子をいう。例えば、インジケーター部分は、基質を、測定され得る生成物に変換するために使用され得る酵素を含み得る。インジケーター部分は、生物発光の放射を生じる反応を触媒する酵素(例えば、ルシフェラーゼ)であり得る。あるいは、インジケーター部分は、定量され得る放射性同位体であり得る。あるいは、インジケーター部分は、発蛍光団であり得る。あるいは、他の検出可能な分子が使用され得る。
【0045】
本明細書で使用される場合、「バクテリオファージ」もしくは「ファージ」とは、複数の細菌のウイルスのうちの1種またはそれより多くを含む。本開示において、用語「バクテリオファージ」および「ファージ」は、生きている細菌、真菌、マイコプラズマ、原生動物、酵母、および他の顕微鏡レベルの生存している生物に侵入し得るウイルスであって、そして上記生物を使用して、該ウイルス自体を複製するウイルスを指す、マイコバクテリオファージ(例えば、TBおよびパラTBに関する)、マイコファージ(mycophage)(例えば、真菌に関する)、マイコプラズマファージ、および任意の他の用語などのウイルスを含む。ここで、「顕微鏡レベルの」とは、最大寸法が1ミリメートルまたはそれ未満であることを意味する。バクテリオファージは、それらを複製する手段として、天然において細菌を使用するように進化したウイルスである。ファージは、このことを、ファージ自体を細菌に付着させ、そのDNA(もしくはRNA)をその細菌の中に注入し、上記ファージを数百倍もしくはさらには数千倍も複製するようにその細菌を誘導することによって行う。これは、ファージ増幅ともいわれる。
【0046】
本明細書で使用される場合、「後期遺伝子領域」とは、ウイルス生活環において後期に転写されるウイルスゲノムの領域をいう。上記後期遺伝子領域は、代表的には、最も豊富に発現される遺伝子(例えば、上記バクテリオファージ粒子へとアセンブルされる構造タンパク質)を含む。後期遺伝子は、クラスIII遺伝子と同義であり、構造およびアセンブリ機能を有する遺伝子を含む。例えば、上記後期遺伝子(クラスIIIと同義)は、ファージT7では、例えば、感染後8分から溶解するまでに、クラスI(例えば、RNAポリメラーゼ)は、早期に4〜8分に、およびクラスIIは、6〜15分に転写されるので、IIおよびIIIのタイミングは重なり合っている。後期プロモーターは、天然に位置し、このような後期遺伝子領域において活性であるプロモーターである。
【0047】
本明細書で使用される場合、「富化のための培養」とは、旧来からの培養(例えば、微生物繁殖に都合のよい培地中でのインキュベーション)をいい、語句「富化」の他の考えられる使用(例えば、サンプルの液体構成要素を取り出して、その中に含まれる上記微生物を濃縮することによる富化)、または微生物繁殖の旧来の促進を含まない富化の他の形態と混同されるべきではない。ある期間にわたる富化のための培養は、本明細書で記載される方法のいくつかの実施形態において使用され得る。
【0048】
本明細書で使用される場合、「組換え(recombinant)」とは他の方法では見いだされない遺伝的物質を一緒にするために、通常は実験室で行われる場合、遺伝的な(すなわち、核酸)改変をいう。この用語は、本明細書において用語「改変された」と交換可能に使用される。
【0049】
本明細書において使用する場合、「RLU」は、ルミノメーター(例えば、GLOMAX(登録商標)96)または光を検出する類似の機器によって測定される、相対発光量を指す。例えば、ルシフェラーゼと適当な基質(例えば、NANOLUC(登録商標)とNANO−GLO(登録商標))の間の反応物の検出が、検出されるRLUでしばしば報告される。
【0050】
本明細書で使用される場合、「結果までの時間(time to results)」とは、サンプルインキュベーションの開始から結果が生成されるまでの時間総量をいう。結果までの時間は、いかなる確認試験時間も含まない。データ収集は、結果が生成された後の任意の時間で行われ得る。
【0051】
サンプル
本発明の方法およびシステムの実施形態の各々は、サンプル中の微生物の迅速検出および定量を可能にし得る。例えば、本発明に従う方法は、優れた結果を有する、短縮した期間で行われ得る。
【0052】
本発明によって検出可能な細菌細胞は、食品または水に由来する病原体である細菌細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
サンプルは、液体、固体、または半固体であり得る。サンプルは、固体表面のスワブであり得る。サンプルとしては、環境物質(例えば、水サンプル)、またはサイクロンコレクターからの空気サンプルまたはエアロゾルサンプルに由来するフィルターが挙げられ得る。サンプルは、野菜、食肉、魚肉、家禽、ピーナッツバター、加工食品、乳児用調製粉乳、粉乳、茶、デンプン、卵、ミルク、チーズ、または他の酪農製品のサンプルであり得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、サンプルは、調製も、濃縮も、希釈もなしに、本発明の検出法において直接使用され得る。例えば、液体サンプル(ミルクおよびジュースが挙げられるが、これらに限定されない)は、直接アッセイされ得る。サンプルは、緩衝化溶液もしくは細菌培養培地が挙げられ得るが、これらに限定されない溶液中で希釈もしくは懸濁され得る。固体もしくは半固体であるサンプルは、液体中の固体を細かく刻むか、混合するかもしくは浸軟することによって、液体中に懸濁され得る。サンプルは、上記宿主細菌細胞へのバクテリオファージ付着を促進するpH範囲内に維持されるべきである。サンプルはまた、2価カチオンおよび1価カチオン(Na
+、Mg
2+、およびCa
2+が挙げられるが、これらに限定されない)の適切な濃度を含むべきである。好ましくは、サンプルは、上記サンプル内に含まれる任意の病原体細胞の生存性を維持する温度で維持される。
【0055】
検出アッセイのいくつかの実施形態では、上記サンプルは、上記サンプルに存在する任意の病原体細胞の生存性を維持する温度で維持される。例えば、バクテリオファージが細菌細胞に付着している工程の間に、上記サンプルを、バクテリオファージ付着を促進する温度で維持することは、好ましい。バクテリオファージが感染細菌細胞内で複製されているかもしくはこのような感染細胞を溶解する工程の間に、上記サンプルを、バクテリオファージ複製および上記宿主の溶解を促進する温度で維持することは好ましい。このような温度は、少なくとも約25摂氏度(C)、より好ましくは、約45℃以下、最も好ましくは約37℃である。
【0056】
アッセイは、種々の適切なコントロールサンプルを含み得る。例えば、バクテリオファージを含まないコントロールサンプルまたは細菌なしのバクテリオファージを含むコントロールサンプルは、バックグラウンドシグナルレベルに関するコントロールとしてアッセイされ得る。
【0057】
インジケーターバクテリオファージ
本明細書でより詳細に記載されるように、本発明の組成物、方法、システムおよびキットは、病原性微生物の検出において使用するための感染性因子を含み得る。ある種の実施形態において、本発明は、組換えインジケーターバクテリオファージを含み、ここで、バクテリオファージゲノムはインジケーターまたはレポーター遺伝子を含むように遺伝的に改変される。いくつかの実施形態において、本発明は、バクテリオファージのゲノムに組み込まれるインジケーター遺伝子を有する組換えバクテリオファージを含む組成物を含み得る。
【0058】
組換えインジケーターバクテリオファージは、レポーターまたはインジケーター遺伝子を含み得る。上記感染性因子のある種の実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、融合タンパク質をコードしない。例えば、ある種の実施形態において、宿主細菌の感染後のバクテリオファージ複製の間の上記インジケーター遺伝子の発現は、可溶性インジケータータンパク質生成物を生じる。ある種の実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、上記バクテリオファージの後期遺伝子領域に挿入され得る。後期遺伝子は構造タンパク質をコードするので、他のファージ遺伝子より高レベルで一般的に発現される。後期遺伝子領域はクラスIII遺伝子領域であってよく、主要カプシドタンパク質のための遺伝子を含み得る。
【0059】
いくつかの実施形態は、上記主要カプシドタンパク質遺伝子の下流に相同組換えのための配列を設計する(および、任意選択で調製する)ことを含む。他の実施形態は、主要カプシドタンパク質遺伝子の上流に相同組換えのための配列を設計する工程(および必要に応じて調製する工程)を含む。いくつかの実施形態において、上記配列は、非翻訳領域の後にコドン最適化レポーター遺伝子を含む。非翻訳領域は、ファージ後期遺伝子プロモーターおよびリボソーム進入部位を含み得る。
【0060】
いくつかの実施形態において、インジケーターバクテリオファージは、T7、T4または別の類似のファージに由来する。インジケーターバクテリオファージはまた、T4様、T7様、ViI、ViI様、Cronobacter spp.特異的バクテリオファージ、またはT7、T7様、T4、T4様、Cronobacter spp.特異的バクテリオファージ、ViI、もしくはViI様(またはGenBank/NCBIによればVi1ウイルス様)バクテリオファージと少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99% 相同性を有するゲノムを有する別のバクテリオファージに由来し得る。いくつかの実施形態において、上記選択された野生型バクテリオファージは、Saka2またはSaka4である。Cronobacter spp.ファージSaka2およびSaka4は、新たに単離されかつ配列決定されたファージ、おそらくマイオウイルスである。他の実施形態において、上記選択された野生型バクテリオファージは、ポドウイルス(例えば、T7様ウイルス)、またはSp6様ウイルスである。他の実施形態において、上記選択された野生型バクテリオファージは、Saka10である。Saka10は、新たに単離されかつ配列決定されたファージ、おそらくT7ファージに関連するポドウイルスである。いくつかの実施形態において、インジケーターファージは、特定の病原性微生物に高度に特異的なバクテリオファージに由来する。遺伝的改変は野生型遺伝子の欠失を回避することができ、したがって、改変されたファージは多くの市販のファージよりも野生型感染性因子に類似のままでいることができる。環境に由来するバクテリオファージは、環境中で見いだされる細菌に対し、より特異的であり得、このように、市販のファージとは遺伝子的に異なり得る。
【0061】
さらに、非必須であると考えられるファージ遺伝子は、認識されていない機能を有し得る。例えば、見かけは非必須の遺伝子は、アセンブリにおける巧妙な切断、適合、もしくはトリミング機能など、バーストサイズを上昇させることにおいて重要な機能を有し得る。それゆえ、遺伝子を欠失させてインジケーターを挿入することは、有害であり得る。大部分のファージは、それらの天然のゲノムより数パーセント大きいDNAをパッケージし得る。この考察では、より小さなインジケーター遺伝子は、バクテリオファージ(特に、より小さなゲノムを有するバクテリオファージ)を改変するためのより適切な選択であり得る。OpLucおよびNANOLUC(登録商標)タンパク質は、わずか約20kDa(コードするのに約500〜600bp)である一方で、FLucは、約62kDa(コードするのに約1,700bp)である。比較のために、T7のゲノムは約40kbpである一方で、T4ゲノムは、約170kbpであり、Cronobacter特異的バクテリオファージのゲノムは約157kbpである。さらに、レポーター遺伝子は細菌によって内因的に発現されるべきでなく(すなわち、細菌ゲノムの一部でない)、高いシグナル対バックグラウンド比を生成するべきであり、タイムリーに容易に検出可能であるべきである。PromegaのNANOLUC(登録商標)は、改変されたOplophorus gracilirostris(深海エビ)ルシフェラーゼである。いくつかの実施形態において、PromegaのNANO−GLO(登録商標)、イミダゾピラジノン基質(フリマジン)と組み合わせたNANOLUC(登録商標)は、低いバックグラウンドで頑健なシグナルを提供し得る。
【0062】
いくつかのインジケーターファージ実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、野生型ファージ遺伝子を無傷のままにして、機能的遺伝子の破壊を回避するために非翻訳領域へと挿入され得、これは、非実験室株の細菌に感染させる場合に、より大きな適合をもたらし得る。さらに、3つ全てのリーディングフレームに終止コドンを含めることは、リードスルー(発現漏れ(leaky expression)としても公知)を低減することによって、発現を増加させる一助になり得る。このストラテジーはまた、上記ファージから分離できないバックグラウンドシグナル(例えば、ルシフェラーゼ)として現れる融合タンパク質が低レベルで作られるという可能性を排除し得る。
【0063】
インジケーター遺伝子は、種々の生体分子を発現し得る。上記インジケーター遺伝子は、検出可能な生成物を発現する遺伝子もしくは検出可能な生成物を生成する酵素である。例えば、一実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、ルシフェラーゼ酵素をコードする。種々のタイプのルシフェラーゼが使用され得る。代替の実施形態において、および本明細書でより詳細に記載されるように、ルシフェラーゼは、Oplophorusルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、Luciaルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼまたは工学技術で作製された(engineered)ルシフェラーゼのうちの1種である。いくつかの実施形態において、ルシフェラーゼ遺伝子はOplophorusに由来する。いくつかの実施形態において、インジケーター遺伝子は、NANOLUC(登録商標)などの遺伝的に改変されたルシフェラーゼ遺伝子である。
【0064】
従って、いくつかの実施形態において、本発明は、上記後期(クラスIII)遺伝子領域において非バクテリオファージインジケーター遺伝子を含む遺伝的に改変されたバクテリオファージを含む。いくつかの実施形態において、上記非天然のインジケーター遺伝子は、後期プロモーターの制御下にある。ウイルス後期遺伝子プロモーターを使用することは、上記レポーター遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ)がウイルスカプシドタンパク質のように、高レベルで発現されるのみならず、内因性細菌遺伝子もしくはさらには初期ウイルス遺伝子のように停止もされないことを確実にする。
【0065】
いくつかの実施形態において、上記後期プロモーターは、T4様、T7様、もしくはViI様プロモーター、または上記選択された野生型ファージ(すなわち、遺伝的改変なし)において見出されたものに類似の別のファージプロモーターである。上記後期遺伝子領域は、クラスIII遺伝子領域であり得、上記バクテリオファージは、T7、T4、T4様、ViI、ViI様、Cronobacter spp.特異的バクテリオファージ、またはT7、T4、T4様、ViI、ViI様、もしくはCronobacter特異的バクテリオファージと少なくとも70%、75%、80%、85%、90%もしくは95% 相同性を有するゲノムを有する別の野生型バクテリオファージに由来し得る。
【0066】
感染性因子に対する遺伝的改変は、核酸の小さなフラグメント、遺伝子の実質的部分、もしくは遺伝子全体の挿入、欠失、もしくは置換を含み得る。いくつかの実施形態において、挿入もしくは置換された核酸は、非天然の配列を含む。非天然のインジケーター遺伝子は、バクテリオファージプロモーターの制御下にあるように、バクテリオファージゲノムへと挿入され得る。従って、いくつかの実施形態において、上記非天然のインジケーター遺伝子は、融合タンパク質の一部ではない。すなわち、いくつかの実施形態において、遺伝的改変は、上記インジケータータンパク質生成物が上記野生型のバクテリオファージのポリペプチドを含まないように構成され得る。いくつかの実施形態において、上記インジケータータンパク質生成物は、可溶性である。いくつかの実施形態において、本発明は、目的の細菌を検出するための方法を包含し、上記方法は、試験サンプルをこのような組換えバクテリオファージとともにインキュベートする工程を包含する。
【0067】
いくつかの実施形態において、宿主細菌の感染後の子孫バクテリオファージにおけるインジケーター遺伝子の発現は、遊離の可溶性タンパク質生成物をもたらす。いくつかの実施形態において、上記非天然のインジケーター遺伝子は、ファージ構造タンパク質をコードする遺伝子と連結していないので、融合タンパク質を生じない。カプシドタンパク質への検出部分の融合物(すなわち、融合タンパク質)を使用するシステムとは異なり、本発明のいくつかの実施形態は、可溶性インジケーターまたはレポーター(例えば、可溶性ルシフェラーゼ)を発現する。いくつかの実施形態において、上記インジケーターまたはレポーターは、理想的には、上記バクテリオファージ構造を含まない。すなわち、上記インジケーターまたはレポーターは、上記ファージ構造に結合されない。よって、上記インジケーターまたはレポーターの遺伝子は、上記組換えファージゲノムにおける他の遺伝子と融合されない。これは、上記アッセイの感度を大いに増大させ得(単一の細菌まで)、上記アッセイを単純化し得、上記アッセイが、検出可能な融合タンパク質を生成する構築物で必要とされるさらなる精製工程に起因する数時間とは対照的に、いくつかの実施形態に関しては、2時間もしくはこれより短い時間で完了することを可能にする。さらに、融合タンパク質は、例えば、酵素活性部位のコンホメーションもしくは基質へのアクセスを変化させ得るタンパク質折り畳みの制約に起因して、可溶性タンパク質より活性が低い場合がある。上記濃度が、10 細菌細胞/mLサンプルである場合、例えば、2時間未満が、上記アッセイに十分であり得る。
【0068】
さらに、定義による融合タンパク質は、上記バクテリオファージにおけるタンパク質のサブユニットに付着される部分の数を制限する。例えば、融合タンパク質のためのプラットフォームとして働くように設計された市販のシステムを使用すると、各T7バクテリオファージ粒子において遺伝子10Bカプシドタンパク質の約415コピーに相当する、融合部分の約415コピーが生じる。この制約がなければ、感染した細菌は、上記バクテリオファージに適合し得るより多くの上記検出部分(例えば、ルシフェラーゼ)のコピーを発現すると予測され得る。さらに、大きな融合タンパク質(例えば、カプシド−ルシフェラーゼ融合物)は、上記バクテリオファージ粒子のアセンブリを阻害し得、そのようにして、より少ないバクテリオファージ子孫を生じる。従って、可溶性の非融合インジケーター遺伝子生成物が好ましいものであり得る。
【0069】
いくつかの実施形態において、上記インジケーターファージは、検出可能な酵素などのレポーターをコードする。上記インジケーター遺伝子産物は、光を生じ得、そして/または色の変化によって検出可能であり得る。種々の適切な酵素は、市販されている(例えば、アルカリホスファターゼ(AP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、もしくはルシフェラーゼ(Luc))。いくつかの実施形態において、これらの酵素は、上記インジケーター部分として働き得る。いくつかの実施形態において、ホタルルシフェラーゼは、上記インジケーター部分である。いくつかの実施形態において、Oplophorusルシフェラーゼは、上記インジケーター部分である。いくつかの実施形態において、NANOLUC(登録商標)は、上記インジケーター部分である。他の工学技術で作製されたルシフェラーゼもしくは検出可能なシグナルを生成する他の酵素もまた、適切なインジケーター部分であり得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、可溶性検出部分の使用は、汚染している親ファージを、上記感染したサンプル細胞の溶解物から除去する必要性を排除する。融合タンパク質システムを用いると、サンプル細胞に感染させるために使用される任意のバクテリオファージは、付着される検出部分を有し、上記検出部分も含む娘バクテリオファージから区別できない。サンプル細菌の検出は、新たに作り出された(デノボ合成された)検出部分の検出に依拠するので、融合構築物の使用は、古い(親)部分を新たに作り出された(娘バクテリオファージ)部分から分離するためにさらなる工程を要する。これは、上記バクテリオファージの生活環の完了の前に、上記感染した細胞を複数回洗浄する工程、物理的もしくは化学的手段によって感染後に過剰な親ファージを不活性化する工程、および/または上記親バクテリオファージを結合部分(例えば、ビオチン)で化学的に改変する工程(これは、次いで、結合および分離され得る(例えば、ストレプトアビジン被覆セファロースビーズによって))によって達成され得る。しかし、除去時にすべてのこれら試みを使用したとしても、親ファージは、少ない数のサンプル細胞の感染を保証するために高濃度の親ファージが使用される場合に残存することができ、感染した細胞の子孫ファージからのシグナルの検出を不明確にし得るバックグラウンドシグナルを作り出す。
【0071】
対照的に、本発明のいくつかの実施形態において発現される可溶性検出部分を用いると、最終溶解物からの上記親ファージの精製は不要である。なぜなら上記親ファージは、付着されるいかなる検出部分をも有しないからである。従って、感染後に存在する任意の検出部分は、感染した1個もしくは複数の細菌の存在を示して、新たに作り出されていなければならない。この利益を利用するために、親ファージの生成および調製は、細菌培養物中での親バクテリオファージの生成の間に生成された任意の遊離検出部分からの上記ファージの精製を含み得る。標準的なバクテリオファージ精製技術は、本発明に従うファージのいくつかの実施形態を精製するために使用され得る(例えば、スクロース密度勾配遠心分離、塩化セシウム等密度(isopycnic)密度勾配遠心分離、HPLC、サイズ排除クロマトグラフィー、および透析または派生技術(例えば、Amiconブランドの濃縮器 − Millipore, Inc.)。塩化セシウム等密度超遠心分離は、親ファージ粒子を、上記細菌宿主中のファージの増殖の際に生成される汚染するルシフェラーゼタンパク質から分離するために、本発明の組換えファージの調製の一部として用いられ得る。このようにして、本発明の親組換えバクテリオファージは、上記細菌における生成の間に生成される任意のルシフェラーゼが実質的ない。上記ファージストックに存在する残りのルシフェラーゼの除去は、上記組換えバクテリオファージが試験サンプルとともにインキュベートされる場合に観察されるバックグラウンドシグナルを実質的に低減し得る。
【0072】
改変されたバクテリオファージのいくつかの実施形態において、上記後期プロモーター(クラスIIIプロモーター、例えば、T7、T4、ViI、もしくはSakaに由来するもの)は、バクテリオファージ粒子へとアセンブリされる構造タンパク質の遺伝子を転写する同じバクテリオファージのRNAポリメラーゼに対して高親和性を有する。これらのタンパク質は、上記ファージによって作製される最も豊富なタンパク質である。なぜなら各バクテリオファージ粒子は、これら分子の数十または数百ものコピーを含むからである。ウイルス後期プロモーターの使用は、最適には、ルシフェラーゼ検出部分の高レベルの発現を確実にし得る。上記インジケーターファージが由来する元の野生型バクテリオファージに由来するか、これに特異的であるかまたはこの下で活性である後期ウイルスプロモーター、(例えば、T4ベースの、T7ベースの、ViIベースの、またはSakaベースのシステムを有するT4、T7、ViI、またはSaka後期プロモーター)を使用すると、上記検出部分の最適な発現をさらに確実にし得る。標準的な細菌(非ウイルス/非バクテリオファージ)プロモーターの使用は、いくつかの場合では、発現に有害であり得る。なぜならこれらのプロモーターは、バクテリオファージ感染の間に(上記バクテリオファージがファージタンパク質生成のための細菌資源を優先するために)しばしばダウンレギュレートされるからである。従って、いくつかの実施形態において、上記ファージは、好ましくは、発現をファージ構造構成要素のサブユニットの数に制限しないゲノム内での配置を用いて、可溶性(遊離)インジケーター部分をコードし、高レベルで発現するように操作されている。
【0073】
本発明の組成物は、1種または複数種の野生型または遺伝的に改変された感染性因子(例えば、バクテリオファージ)および1種または複数種のインジケーター遺伝子を含み得る。いくつかの実施形態において、組成物は、同じまたは異なるインジケータータンパク質をコードおよび発現し得る、異なるインジケーターファージのカクテルを含み得る。いくつかの実施形態において、バクテリオファージのカクテルは、少なくとも2種の異なるタイプの組換えバクテリオファージを含む。
【0074】
インジケーターバクテリオファージを調製する方法
インジケーターバクテリオファージを作製する方法の実施形態は、遺伝的改変のための野生型バクテリオファージの選択から始める。いくつかのバクテリオファージは、標的細菌に高度に特異的である。このことは、高度に特異的な検出の機会を提供する。
【0075】
従って、本発明の方法は、シグナルを増幅し、それによってサンプルに存在する低レベルの微生物(例えば、単一微生物)を検出する手段として、目的の特定の微生物を認識しかつこれに結合する、感染性因子と関連した、結合因子の高い特異度を利用する。例えば、感染性因子(例えば、バクテリオファージ)は、特定の微生物の表面レセプターを特異的に認識し、従って、それらの微生物に特異的に感染する。よって、これらの感染性因子は、目的の微生物を標的とするために適した結合因子であり得る。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態は、感染させて、目的の細菌の検出を容易にするための迅速かつ高感度の標的化のために、組換えバクテリオファージの結合の特異性および高レベルの遺伝子発現能を利用する。いくつかの実施形態において、Cronobacter特異的バクテリオファージは、レポーター遺伝子を含むように遺伝的に改変される。いくつかの実施形態において、バクテリオファージの後期遺伝子領域が、レポーター遺伝子を含むように遺伝的に改変される。いくつかの実施形態において、レポーター遺伝子は、主要カプシド遺伝子の下流に配置される。他の実施形態において、レポーター遺伝子は、主要カプシド遺伝子の上流に配置される。いくつかの実施形態において、上記挿入された遺伝子構築物は、上記インジケーター遺伝子の発現を駆動するために、それ自体が外因性の、専用のプロモーターをさらに含む。上記外因性プロモーターは、上記ファージゲノムにおける任意の内因性プロモーターに加えて存在する。
バクテリオファージはポリシストロン性mRNA転写物を生成するので、単一のプロモーターのみが、転写物中の第1の遺伝子/シストロンの上流に必要とされる。従来の組換え構築物は、挿入された遺伝子を駆動するために内因性バクテリオファージプロモーターを使用するに過ぎない。対照的に、上記レポーター遺伝子およびリボソーム結合部位の上流にさらなるプロモーターを付加することは、転写のための第2の開始部位として作用することによって遺伝子発現を増大させ得る。ウイルスの複雑かつ小型のゲノムはしばしば、異なるフレームで、ときには2つの異なる方向で、重複する遺伝子を有する。
【0077】
組換えインジケーターバクテリオファージを調製する方法のいくつかの実施形態は、Cronobacter spp.などの標的病原性細菌に特異的に感染する野生型バクテリオファージを選択する工程、インジケーター遺伝子を含む相同組換えプラスミド/ベクターを調製する工程、相同組換えプラスミド/ベクターを標的病原性細菌に形質転換する工程、形質転換された標的病原性細菌に、選択された野生型バクテリオファージを感染させ、それによって、プラスミド/ベクターとバクテリオファージゲノムとの間で相同組換えを起こさせる工程、および組換えバクテリオファージの特定のクローンを単離する工程を含む。
【0078】
相同組換えプラスミドを設計し、調製する種々の方法が公知である。熱ショック、F線毛媒介細菌接合、エレクトロポレーションおよび他の方法を含めて、プラスミドで細菌を形質転換するための種々の方法が公知である。相同組換えの後、特定のクローンを単離するための種々の方法も公知である。本明細書に記載されるいくつかの方法の実施形態は、特定の戦略を利用する。
【0079】
従って、インジケーターバクテリオファージを調製する方法のいくつかの実施形態は、標的病原性細菌に特異的に感染する野生型バクテリオファージを選択する工程、選択されたバクテリオファージのゲノムの後期領域中の天然の配列を決定する工程、ゲノムを注釈し、選択されたバクテリオファージの主要カプシドタンパク質遺伝子を同定する工程、主要カプシドタンパク質遺伝子に隣接した相同組換えのための配列を設計する工程であって、配列がコドン最適化レポーター遺伝子を含む工程、相同組換えのために設計された配列をプラスミド/ベクターに組み込む工程、プラスミド/ベクターを標的病原性細菌に形質転換する工程、形質転換された細菌について選択する工程、形質転換された細菌に、選択された野生型バクテリオファージを感染させ、それによって、プラスミドとバクテリオファージゲノムとの間で相同組換えを起こさせる工程、結果として生じる組換えバクテリオファージ溶解物の力価を決定する工程、および組換えバクテリオファージを富化し、単離するために限界希釈アッセイを行う工程を含む。いくつかの実施形態は、第1の限界希釈アッセイの後に、組換えバクテリオファージが混合物の検出可能な割合を表すまで、必要に応じて限界希釈および力価工程を繰り返すことをさらに含む。例えば、いくつかの実施形態において、組換えバクテリオファージの特定のクローンを単離する前に、混合物中のバクテリオファージの少なくとも1/30が組換え型になるまで、限界希釈および力価工程が繰り返され得る。1:30 組換え:野生型の比は、いくつかの実施形態において、96個のプラークあたり(例えば、96ウェルプレートにおいて)、平均3.2形質導入単位(TU)を生じると予想される。組換えファージ : 野生型ファージの初期比は、米国特許出願第15/409,258号に以前に記載されるように、TCID50(組織培養感染量50%)に基づく限界希釈アッセイを行うことによって決定され得る。ポワソン分布によって、1:30比は、96ウェルのどこかで少なくとも1 TUを観察するという96%の可能性を生じる。
【0080】
図1は、本発明の組換えインジケーターバクテリオファージのゲノム構造の模式的代表図を示す。
図1に示される実施形態に関して、上記検出部分は、ウイルス生活環において後期に発現される、後期(クラスIII)遺伝子110内に挿入されたルシフェラーゼ遺伝子100によってコードされる。後期遺伝子は、他のファージ遺伝子より概して高レベルで発現される。なぜならそれらは、構造タンパク質をコードするからである。従って、
図1に示される組換えファージの実施形態において、上記インジケーター遺伝子(すなわち、ルシフェラーゼ)は、後期遺伝子領域へと、主要カプシドタンパク質(MCP)の遺伝子120の直後に挿入され、ルシフェラーゼ遺伝子100を含む構築物である。いくつかの実施形態において、
図1に示される構築物は、ルシフェラーゼが、融合タンパク質の作製を介してMCP遺伝子生成物へと組み込まれないことを確実にするために、全3つのリーディングフレームにおいて終止コドンを含み得る。
図1にも示されるように、上記構築物は、ルシフェラーゼ遺伝子の転写および発現を駆動するために、さらなる専用の後期プロモーター130を含み得る。上記構築物はまた、リボソーム結合部位(RBS)140を含む。この構築物は、可溶性ルシフェラーゼが生成され、その結果、発現が、ファージディスプレイシステムにおいて固有のカプシドタンパク質の数に制限されることを確実にする。
【0081】
本明細書で注記されるように、ある種の実施形態において、本発明の感染性因子の生成のための環境から単離されている感染性因子を利用することは、好ましいことであり得る。このようにして、天然に由来する微生物に特異的な感染性因子が、生成され得る。
【0082】
例えば、
図2は、バクテリオファージSAKA2(Cronobacter spp.に特異的に感染する野生型バクテリオファージ)のゲノムを示す。実施例で考察されるように、上記主要カプシドタンパク質および種々の他の構造遺伝子は、ビリオンタンパク質をコードする構造遺伝子からなる後期遺伝子領域内にある。PG7テールシースタンパク質遺伝子(ヌクレオチド74424〜77221)に相同な仮定遺伝子は、ビリオンタンパク質をコードする構造遺伝子からなる後期遺伝子領域の周辺にある。他の示される後期遺伝子は、公知の頭頂部タンパク質のホモログ(ヌクレオチド77115〜77653)、ORF58.1(ヌクレオチド77693〜78610)、おそらく主要カプシドタンパク質、および公知の外側頭部タンパク質のホモログ(ヌクレオチド80248〜81840)である。これらビリオンタンパク質が非常に高レベルで発現されるので、この領域へと挿入された任意の遺伝子が、後期遺伝子プロモーターおよび/または他の類似の制御エレメントが使用される限りにおいて、類似の発現レベルを有すると予想され得る。
【0083】
プラスミドを調製するために、多数の公知の方法および商品がある。例えば、プラスミドを調製するために、PCR、部位特異的変異誘発、制限消化、ライゲーション、クローニングおよび他の技法が組み合わせて使用され得る。合成プラスミドを商業的に注文することもできる(例えば、GeneWiz)。バクテリオファージゲノムを選択的に編集するために、コスミドを用いることもでき、または、CRISPR/CAS9システムも使用され得る。組換えインジケーターバクテリオファージを調製する方法のいくつかの実施形態は、組換えゲノムを生成するために野生型バクテリオファージゲノムで容易に組み換え得るプラスミドを設計することを含む。プラスミドの設計において、いくつかの実施形態は、ルシフェラーゼ遺伝子などのコドン最適化レポーター遺伝子の付加を含む。いくつかの実施形態は、上流の非翻訳領域へのエレメントへの付加をさらに含む。例えば、Cronobacter特異的バクテリオファージゲノムで組み換えるためのプラスミドの設計では、gp23/主要カプシドタンパク質のC末端をコードする配列とNANOLUC(登録商標)レポーター遺伝子の開始コドンとの間に上流非翻訳領域を付加し得る。非翻訳領域は、プロモーター、例えばT4、T4様、T7、T7様、Cronobacter特異的バクテリオファージ、ViIまたはViI様プロモーターを含み得る。非翻訳領域は、細菌システムで「シャインダルガルノ配列」としても公知である、リボソーム進入/結合部位(RBS)を含むこともできる。これらのエレメントのいずれかまたは両方、または他の非翻訳エレメントは、ファージゲノムの残りとほぼ同じGC含量を含むランダム配列でできている短い上流非翻訳領域の中に埋め込まれ得る。ランダム領域はATG配列を含むべきでないが、その理由は、それが開始コドンとして作用するからである。
【0084】
本発明の組成物は、種々の感染性因子および/またはインジケーター遺伝子を含み得る。例えば、
図3は、Cronobacter spp.に特異的なインジケーターファージを作製するにあたって使用される2種の相同組換えプラスミド構築物を示す。構築物を作製し、Cronobacter spp.ファージSaka2、Cronobacter spp.ファージSaka4、またはCronobacter spp.ファージSaka10との組換えにおいて使用して、本発明の組換えバクテリオファージを生成した。
図3における第1の構築物は、Cronobacter spp.ファージSaka2およびSaka4の両方へのNANOLUC(登録商標)ルシフェラーゼの相同組換え挿入のために使用される組換えプラスミドの一般的模式図を、各々、それぞれのファージ:相同組換えプラスミド pUC57.HR.Saka2.NANOLUC(登録商標)およびpUC57.HR.Saka4.NANOLUC(登録商標)に相当する上流および下流の相同な配列の500bpとともに示す。
【0085】
図3における下の構築物は、Saka2またはSaka4のいずれによっても十分に感染しないCronobacter株を標的とするために、Saka10(ポドウイルス)へのNANOLUC(登録商標)ルシフェラーゼの相同組換え挿入のために使用される組換えプラスミドを示す:相同組換えプラスミドpUC57.HR.Saka10.NANOLUC(登録商標)。
【0086】
ある種の実施形態において、プラスミドは、pUC57.HR.Saka2.NanoLucと称される。上記検出/インジケーター部分は、NANOLUC(登録商標)レポーター遺伝子300によってコードされる。上記挿入物(一連の四角形によって表される)は、pUC57の標準的AmpRバージョン310の中にある。上流の相同組換え領域は、主要カプシドタンパク質C末端フラグメントの500bp 320、5’非翻訳領域内のT4様ファージ後期プロモーターコンセンサス配列およびShine−Dalgarnoリボソーム進入/結合部位330からなる。コドン最適化NANOLUC(登録商標)レポーター遺伝子300は、直後に続く。下流の相同組換え340からなる非翻訳領域(UTR)および仮定タンパク質N末端フラグメントは、相同組換え領域の最後にある。
【0087】
ある種の実施形態において、プラスミドは、pUC57.HR.Saka10.NanoLucと称される。上記検出/インジケーター部分は、NanoLuc(登録商標)レポーター遺伝子380によってコードされる。上記挿入物(一連の四角形によって表される)は、pUC57の標準的なAmpRバージョン360の中にある。上流の相同組換え領域は、主要カプシドタンパク質C末端フラグメントの500bp 360、5’非翻訳領域内のT7ファージ後期プロモーターコンセンサス配列およびShine−Dalgarnoリボソーム進入/結合部位370からなる。コドン最適化NANOLUC(登録商標)レポーター遺伝子350は、直後に続く。下流の相同組換え380からなる非翻訳領域(UTR)および仮定タンパク質N末端フラグメントは、相同組換え領域の最後にある。上記主要カプシドタンパク質フラグメントは、ビリオンタンパク質をコードする構造遺伝子の一部である。これらのビリオンタンパク質が非常に高レベルで発現されるので、この領域に挿入される任意の遺伝子は、後期遺伝子プロモーターおよび/もしくは他の類似の制御エレメントが使用される限りにおいて、類似の発現レベルを有すると予測され得る。
【0088】
いくつかの実施形態において、本発明に従うインジケーターファージは、レポーター遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ遺伝子)を含むように遺伝的に操作されたCronobacter特異的バクテリオファージを含む。例えば、インジケーターファージは、ゲノムが上記NANOLUC(登録商標)遺伝子の配列を含むCronobacter spp.特異的バクテリオファージであり得る。組換えCronobacter特異的NanoLucバクテリオファージゲノムは、T4、T7、Cronobacter特異的、ViI、Sakaバクテリオファージのコンセンサスプロモーターまたは別の後期プロモーターをさらに含み得る。さらなる実施形態において、上記プロモーターは、外因性プロモーターである。インジケーター遺伝子の発現を駆動するための外因性プロモーターの挿入は、発現が他のファージタンパク質(例えば、主要カプシドタンパク質)の発現によって制限されるという点で有利である。
【0089】
従って、組換えの結果として生成される組換えファージの実施形態において、上記インジケーター遺伝子(すなわち、NANOLUC(登録商標))は、主要カプシドタンパク質をコードする遺伝子のすぐ下流の後期遺伝子領域に挿入され、従って、NANOLUC(登録商標)遺伝子を含む組換えバクテリオファージゲノムを作り出す。上記構築物は、上記ルシフェラーゼ遺伝子の転写および発現を駆動するために、T4、T7、Cronobacter特異的バクテリオファージ、ViIのコンセンサスプロモーター、または別の後期プロモーターまたは別の適切なプロモーターをさらに含む。上記構築物はまた、いくつかのUTRから合成される複合非翻訳領域を含み得る。この構築物は、可溶性ルシフェラーゼが生成され、その結果、発現がファージディスプレイシステムにおいて固有のカプシドタンパク質の数に制限されないことを確実にする。
【0090】
図4は、相同組換えから得られる野生型および組換えバクテリオファージの混合物からの組換えファージの単離を示す。第1の工程402において、相同組換えプラスミドで形質転換されたCronobacter spp.細菌は、Cronobacter spp.バクテリオファージSaka2で感染され、野生型 対 組換えファージの非常に低い比率で親ファージと組換えファージとの混合物を有する子孫ファージを生じる434。その生じた組換えファージ混合物を、96ウェルプレート406へと希釈して404、平均5 組換え形質導入単位(TU)/プレート(9.3 PFU/ウェル)を与える。上記96ウェルプレートを、ルシフェラーゼ活性についてアッセイして、組換えファージを含むウェル436を、野生型バクテリオファージを含むウェル440と比較して識別する。細菌438を添加する408; 例えば、各ウェルは、約50μLの混濁したCronobacter培養物を含み得る。これは、上記ファージが、複製しかつルシフェラーゼ酵素442を生成することを可能にする。410に示される37℃での5時間のインキュベーションの後に、ウェルを、ルシフェラーゼ442の存在に関してスクリーニングし得る。任意の陽性ウェルは、おそらく、単一の組換えファージを接種されており、この段階では、上記混合物は、およそ10 野生型ファージ: 1 組換えの比(元の比を超える富化)を含み得る。必要な場合(すなわち、組換え:全体の比が1:30より低い場合)、この富化された培養物412からの子孫を、さらなる限界希釈アッセイ414に供して、上記比を増大させ得、組換えファージ形質導入単位の実際の濃度を決定し得る。例えば、上記比が1:384 組換え:PFUであった場合、約5 組換え体TUとともに1920の合計汚染ファージ(5×384=1920)/96ウェルプレート416が、以前の陽性ウェルからアリコートに分けられてもよく414、第2の希釈アッセイプレートの20の大部分が野生型ファージ/ウェル(1920 PFU/96ウェル=20 PFU/ウェル)というおよその接種をもたらす420。任意の陽性ルシフェラーゼウェルは、おそらく、19 野生型ファージとともに単一の組換え体で接種されることになる。これらのウェルを、ルシフェラーゼ442の存在に関して分析し得る。
【0091】
細菌の添加およびインキュベーション(例えば、37℃で5時間)418の後に、可溶性ルシフェラーゼおよびファージは、およそ20 合計:1 組換え体において存在する420。この比は、組換え体のTU50力価測定、細胞殺滅の代わりにルシフェラーゼ活性をスコア付けする組織培養物感染用量50(TCID50)アッセイに基づく限界希釈アッセイ、および合計PFUに対するプラークアッセイによって検証され得る。最終的には、プラークアッセイを行って422、ルシフェラーゼを発現する組換え体をスクリーニングし得る446。少数の個々の(例えば、n=48)プラークを、個々に拾い上げ、ルシフェラーゼ活性436に対して第3のマルチウェルプレート426においてスクリーニングしてもよい。一実施形態において、このアプローチは、十分なプラークがスクリーニングされるので、約3 組換え体が、組換え体 対 合計ファージの既知の比に基づいてスクリーニングされるプラークの混合物中にあることを保証するべきである。1個のプラークを、上記プレートから96ウェルプレート424の各ウェルへと取り出し得、ルシフェラーゼアッセイを、どのウェルがルシフェラーゼ活性442を示すファージを含んだかを決定するために行い得る426。ルシフェラーゼ活性を示すウェル428は、純粋な組換えファージ434を表す一方で、ルシフェラーゼ活性なしのウェル430は、純粋な野生型ファージ432を表す。
【0092】
次いで、個々のプラークは、緩衝液(例えば、100μL TMS)もしくは培地中に懸濁され得、アリコート(例えば、約5μL)が濁ったCronobacter培養物を含むウェルに添加され得、インキュベーション(例えば、37℃で約45分〜1時間)後にアッセイされ得る。陽性ウェルは、組換えファージの純粋培養物を含むと予測される。ある種の実施形態は、プラーク精製のさらなるラウンドを含み得る。
【0093】
従って、
図4によって図示されるように、野生型ファージゲノムでの組換えのために設計されたプラスミドの相同組換えによって生成される組換えファージは、全ファージゲノムのうちの非常に小さな百分率(例えば、0.005%)を含む混合物から単離され得る。単離後に、大規模生産を、Cronobacter spp.検出アッセイにおいて使用するために適した高力価組換えインジケーターファージストックを得るために行い得る。さらに、塩化セシウム等密度密度勾配遠心分離は、ファージ粒子を、汚染するルシフェラーゼタンパク質から分離して、バックグラウンドを低減するために使用され得る。
【0094】
Cronobacter spp.を検出するために感染性因子を使用する方法
本明細書で注記されるように、ある種の実施形態において、本発明は、微生物を検出するための感染性粒子を使用するための方法を包含し得る。本発明の方法は、種々の方法で具現化され得る。
【0095】
一実施形態において、本発明は、サンプル中の目的の細菌を検出するための方法であって、サンプルを目的の細菌に感染するバクテリオファージとともにインキュベートする工程であって、ここで、バクテリオファージは、インジケーター遺伝子を含み、その結果、目的の細菌の感染後のバクテリオファージ複製の間のインジケーター遺伝子の発現は可溶性インジケータータンパク質生成物を生じる工程、およびインジケータータンパク質生成物を検出する工程であって、ここでインジケータータンパク質生成物の陽性検出は目的の細菌がサンプル中に存在することを示す工程を含む、方法を含み得る。
【0096】
ある種の実施形態において、異なるサンプルタイプまたはサイズおよびアッセイフォーマットに適合するように改変し得る一般的な概念を利用して、アッセイが行われ得る。本発明の組換えバクテリオファージ(すなわち、インジケーターバクテリオファージ)を使用する実施形態は、サンプルタイプ、サンプルサイズ、およびアッセイ形式に応じて、1.5時間、2.0時間、2.5時間、3.0時間、3.5時間、4.0時間、4.5時間、5.0時間、5.5時間、6.0時間、6.5時間、7.0時間、7.5時間、8.0時間、8.5時間、9.0時間、9.5時間、10.0時間、10.5時間、11.0時間、11.5時間、12時間、12.5時間、13.0時間、13.5時間、14.0時間、14.5時間、15.0時間、15.5時間、16.0時間、16.5時間、17.0時間、17.5時間、18.0時間、18.5時間、19.0時間、19.5時間、20.0時間、21.0時間、21.5時間、22.0時間、22.5時間、23.0時間、23.5時間、24.0時間、24.5時間、25.0時間、25.5時間または26.0時間未満の合計アッセイ時間で、Cronobacter spp.などの特定の細菌株の迅速検出を可能にし得る。例えば、必要とされる時間量は、バクテリオファージの株およびこのアッセイで検出される細菌の株、試験されるサンプルのタイプおよびサイズ、標的の生存性のために必要とされる条件、物理的/化学的環境の複雑性、ならびに「内因性」の非標的混在細菌の濃度に応じて、若干より短いかまたは長くてもよい。
【0097】
図5は、本発明の実施形態に従って可溶性ルシフェラーゼを生成するインジケーターファージを使用するストラテジーを示す。この方法では、ファージ(例えば、T7、T4、Saka2、Saka4、Saka9またはSaka10ファージ)が、上記ファージの複製の間に、可溶性ルシフェラーゼを発現するように操作され得る。ルシフェラーゼの発現は、ウイルスカプシドプロモーター(例えば、バクテリオファージT7またはT4の後期プロモーター)によって駆動され、高発現を生じる。親ファージは、ルシフェラーゼを含まないので、上記アッセイにおいて検出されるルシフェラーゼは、上記細菌細胞の感染の間に子孫ファージの複製から生じなければならない。従って、概して、上記親ファージを上記子孫ファージから分離する必要はない。
【0098】
これらの実験において、定量されるべき細菌502を含むサンプル500のうちの少なくとも一部は、スピンカラムフィルタに配置され、LBブロスを除去するために遠心分離され、可溶性ルシフェラーゼ503を発現するために遺伝的に操作された適切な多重度のファージ504が添加される。上記感染細胞は、子孫ファージの複製および細胞溶解が起こるために十分な時間(例えば、37℃で30〜120分)にわたってインキュベートされ得る。次いで、溶解物中の上記親ファージ504および子孫ファージ516+遊離ルシフェラーゼ503は、例えば、遠心分離によって集められ得、濾液中のルシフェラーゼのレベルは、ルミノメーター518を使用して定量され得る。あるいは、ハイスループット法(ここで細菌サンプルが96ウェルフィルタープレートに適用される)が使用され得、上記で列挙した全ての操作が行われた後に、最終の遠心分離工程なしに、元の96ウェルフィルタープレートにおいてルシフェラーゼに関して直接アッセイされ得る。
【0099】
図6は、本発明の一実施形態に従う改変されたバクテリオファージを使用して、目的の細菌を検出するためのフィルタープレートアッセイを示す。簡潔には、目的の細菌618を含むサンプル616を、マルチウェルフィルタープレート604のウェル602に添加し、遠心して606、上記サンプルから液体を除去することによって、上記サンプルを濃縮する。遺伝的に改変されたファージ620をウェルに添加し、さらなる培地とともに、吸着のために十分な時間にわたってインキュベートし608、続いて、標的細菌の感染および上記ファージ生活環を進める610(例えば、約45分)。最後に、ルシフェラーゼ基質を添加し、任意の存在するルシフェラーゼ624と反応させる。得られた発光を、ルシフェラーゼ活性626を検出するルミノメーターで測定する614。
【0100】
ある種の実施形態において、上記アッセイは、捕捉表面上でまたはその付近で細菌を濃縮することなく行われ得る。
図7は、本発明の一実施形態に従う改変されたバクテリオファージを使用して、目的の細菌を検出するための「濃縮なしアッセイ(No Concentration Assay)」を図示する。インジケーターファージ714のアリコートを、マルチウェルプレート704の個々のウェル702に分配し、次いで、細菌712を含む試験サンプルアリコートを添加し、ファージが複製し、可溶性インジケーター716(例えば、ルシフェラーゼ)を生成するために十分な期間にわたってインキュベートする706(例えば、37℃で45分)。次いで、可溶性インジケーターおよびファージを含む上記プレートウェル708をアッセイして710、プレート上の上記インジケーター活性718を測定し得る(例えば、ルシフェラーゼアッセイ)。この実施形態において、上記試験サンプルは、濃縮されない(例えば、遠心分離によって)が、単純に、インジケーターファージとともに一定の期間にわたって直接インキュベートされ得、その後、ルシフェラーゼ活性に関してアッセイされ得る。
【0101】
いくつかの実施形態において、上記サンプルは、成長を助長する条件でのインキュベーションによる試験の前に富化することができる。このような実施形態では、富化期間は、サンプルのタイプおよびサイズに応じて、1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間もしくは16時間またはそれより長くてもよい。
【0102】
いくつかの実施形態において、インジケーターバクテリオファージは検出可能なインジケーター部分を含み、単一の病原細胞(例えば、細菌)の感染は、インジケーター部分を介して生成される増幅されたシグナルによって検出され得る。従って、本方法は、ファージ複製の間に生成されるインジケーター部分を検出することを含み得、ここで、インジケーターの検出は、目的の細菌がサンプル中に存在することを示す。
【0103】
一実施形態において、本発明は、サンプル中の目的の細菌を検出するための方法であって、上記サンプルを、目的の細菌に感染する組換えバクテリオファージとともにインキュベートする工程であって、ここで、上記組換えバクテリオファージは上記バクテリオファージの後期遺伝子領域に挿入されたインジケーター遺伝子を含み、その結果、宿主細菌の感染後のバクテリオファージ複製の間の上記インジケーター遺伝子の発現は可溶性インジケータータンパク質生成物を生じる工程、および上記インジケータータンパク質生成物を検出する工程であって、ここで上記インジケータータンパク質生成物の陽性検出は上記目的の細菌が上記サンプル中に存在することを示す工程を含む、方法を含み得る。いくつかの実施形態において、検出されるインジケーター部分の量は、上記サンプル中に存在する目的の細菌の量に相当する。
【0104】
本明細書により詳細に記載されるように、本発明の方法およびシステムは、サンプルに存在する細菌に感染させるために、一連の濃度の親のインジケーターバクテリオファージを利用することができる。いくつかの実施形態において、上記インジケーターバクテリオファージは、単一細胞などの上記サンプル中に非常に少ない数で存在する標的細菌を迅速に見いだし、標的細菌に結合し、感染するのに十分な濃度で上記サンプルに加えられる。いくつかの実施形態において、ファージ濃度は、1時間未満で標的細菌を見いだし、標的細菌に結合し、感染するのに十分であり得る。他の実施形態において、これらの事象は、上記サンプルへのインジケーターファージの添加の後、2時間未満、または3時間未満に起こることができる。例えば、ある種の実施形態において、上記インキュベートする工程のためのバクテリオファージ濃度は、1×10
5PFU/mLより高いか、1×10
6PFU/mLより高いか、または1×10
7PFU/mLより高い。
【0105】
ある種の実施形態において、上記組換え感染性因子は、上記感染性因子ストックの生産の際に生成され得るいかなる残留インジケータータンパク質も含まないように、精製され得る。従って、ある種の実施形態において、上記組換えバクテリオファージは、上記サンプルとともにインキュベートする前に、塩化セシウム等密度密度勾配遠心分離を使用して精製され得る。上記感染性因子がバクテリオファージである場合、この精製は、DNAを有しないバクテリオファージ(すなわち、空のファージまたは「ゴースト」)を除去するという、追加の利点を有し得る。
【0106】
本発明の方法のいくつかの実施形態において、上記微生物はサンプルからの上記微生物のいかなる単離または精製もなしに、検出され得る。例えば、ある種の実施形態において、1または数個の目的の微生物を含むサンプルは、アッセイ容器(例えば、スピンカラム、マイクロタイターウェル、またはフィルター)に直接適用され得、上記アッセイはそのアッセイ容器の中で行われる。このようなアッセイの種々の実施形態は、本明細書に開示される。
【0107】
試験サンプルアリコートは、マルチウェルプレートのウェルへと直接分配され得、インジケーターファージが添加され得、そして感染のための十分な期間の後、溶解緩衝液は、インジケーター部分のための基質(例えば、ルシフェラーゼインジケーターのためのルシフェラーゼ基質)と同様に添加され得、インジケーターシグナルの検出のためにアッセイされ得る。本方法のいくつかの実施形態は、フィルタープレートの上で行うことができる。本方法のいくつかの実施形態は、インジケーターファージによる感染の前のサンプルの濃縮の有りまたはなしで行われ得る。
【0108】
例えば、多くの実施形態において、マルチウェルプレートは、上記アッセイを行うために使用される。プレート(もしくは検出する工程が行われ得る任意の他の容器)の選択は、上記検出する工程に影響を及ぼし得る。例えば、いくつかのプレートは、光の放射の検出に影響を及ぼし得る、着色したもしくは白色のバックグラウンドを含み得る。概して、白色のプレートは、より高い感度を有するが、より高いバックグラウンドシグナルをも生じる。プレートの他の色は、より低いバックグラウンドシグナルを生成し得るが、わずかにより低い感度を有し得る。さらに、バックグラウンドシグナルに関する1つの理由は、1つのウェルから別の隣接するウェルへの光の漏れである。白色のウェルを有するいくつかのプレートがあるが、上記プレートの残りは黒色である。これは、上記ウェルの内部での高いシグナルを可能にするが、ウェルからウェルへの光の漏れを防止し、従って、バックグラウンドを低減し得る。従って、プレートもしくは他のアッセイ容器の選択は、上記アッセイのための感度およびバックグラウンドシグナルに影響を与え得る。
【0109】
本発明の方法は、感度を増加させるための種々の他の工程を包含し得る。例えば、本明細書でより詳細に考察されるように、上記方法は、過剰な親バクテリオファージおよび/または上記バクテリオファージ調製物を汚染するルシフェラーゼもしくは他のレポータータンパク質を除去するために、上記バクテリオファージを添加した後であるが、インキュベートする前に、上記捕捉されかつ感染した細菌を洗浄する工程を包含し得る。
【0110】
いくつかの実施形態において、上記目的の微生物の検出は、上記微生物の集団を増加させる方法としての、上記サンプルを培養する必要性なしに、完了し得る。例えば、ある種の実施形態において、検出に必要とされる合計時間は、26.0、25.0、24.0、23.0、22.0、21.0、20.0、19.0、18.0、17.0、16.0時間、15.0時間、14.0時間、13.0時間、12.0時間未満、11.0時間、10.0時間、9.0時間、8.0時間、7.0時間、6.0時間、5.0時間、4.0時間、3.0時間、2.5時間、2.0時間、1.5時間、1.0時間、45分または30分未満である。結果までの時間を最小にすることは、病原体に対する食品および環境の試験において重大である。
【0111】
当該分野で公知のアッセイと対照的に、本発明の方法は、個々の微生物を検出し得る。従って、ある種の実施形態において、上記方法は、サンプルに存在する上記微生物の≦10個の細胞(すなわち、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個の微生物)を検出し得る。例えば、ある種の実施形態において、組換えバクテリオファージは、Cronobacter spp.に高度に特異的である。一実施形態において、組換えバクテリオファージは、他のタイプの細菌の存在下で、Cronobacter spp.を区別し得る。ある種の実施形態において、組換えバクテリオファージは、サンプル中の特異的タイプの単一細菌を検出するために使用することができる。ある種の実施形態において、組換えバクテリオファージは、サンプル中の2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個または100個程度の少なさの特異的細菌を検出する。
【0112】
従って、本発明の局面は、インジケーター部分を介して試験サンプル中の微生物の検出のための方法を提供する。いくつかの実施形態において、上記目的の微生物が細菌である場合、上記インジケーター部分は、感染性因子(例えば、インジケーターバクテリオファージ)と関連づけられ得る。上記インジケーター部分は、基質と反応して、検出可能なシグナルを放射してもよいし、内因性のシグナル(例えば、蛍光タンパク質)を放射してもよい。いくつかの実施形態において、上記検出感度は、試験サンプル中の上記目的の微生物の50個、20個、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、もしくは2個程度の少なさの細胞の存在を明らかにし得る。いくつかの実施形態において、上記目的の微生物の実に1個の細胞が、検出可能なシグナルを生じ得る。いくつかの実施形態において、バクテリオファージは、T4様またはViI様バクテリオファージである。いくつかの実施形態において、組換えバクテリオファージは、Cronobacter特異的バクテリオファージに由来する。ある種の実施形態において、組換えCronobacter特異的バクテリオファージは、Cronobacter spp.に高度に特異的である。
【0113】
いくつかの実施形態において、上記感染性因子によってコードされる上記インジケーター部分は、上記感染性因子の複製の間もしくは後に検出可能であり得る。インジケーター部分としての使用に適した検出可能な生体分子の多くの異なるタイプが、当該分野で公知であり、多くは市販されている。いくつかの実施形態において、上記インジケーターファージは、酵素を含み、これは上記インジケーター部分として働く。いくつかの実施形態において、上記インジケーターファージのゲノムは、可溶性タンパク質をコードするように改変される。いくつかの実施形態において、上記インジケーターファージは、検出可能な酵素をコードする。上記インジケーターは、光を放射し得る、および/または転化された基質における色の変化によって検出可能であり得る。種々の適切な酵素は、市販されている(例えば、アルカリホスファターゼ(AP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、もしくはルシフェラーゼ(Luc))。いくつかの実施形態において、これらの酵素は、上記インジケーター部分として働き得る。いくつかの実施形態において、ホタルルシフェラーゼは、上記インジケーター部分である。いくつかの実施形態において、Oplophorusルシフェラーゼは、上記インジケーター部分である。いくつかの実施形態において、NANOLUC(登録商標)は、上記インジケーター部分である。他の工学技術で作製されたルシフェラーゼもしくは検出可能なシグナルを生成する他の酵素はまた、適切なインジケーター部分であり得る。
【0114】
従って、いくつかの実施形態において、本方法、システムまたはキットの組換えバクテリオファージは、野生型Cronobacter特異的バクテリオファージから調製される。いくつかの実施形態において、インジケーター遺伝子は、内因性シグナルを放射するタンパク質、例えば、蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質など)をコードする。上記インジケーターは光を放射し得る、および/または色の変化によって検出可能であり得る。いくつかの実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、基質と相互作用してシグナルを発生する酵素(例えば、ルシフェラーゼ)をコードする。いくつかの実施形態において、上記インジケーター遺伝子は、ルシフェラーゼ遺伝子である。いくつかの実施形態において、上記ルシフェラーゼ遺伝子は、Oplophorusルシフェラーゼ、ホタルルシフェラーゼ、Renillaルシフェラーゼ、External Gaussiaルシフェラーゼ、Luciaルシフェラーゼまたは工学技術で作製されたルシフェラーゼ、例えばNANOLUC(登録商標)、Rluc8.6−535またはオレンジナノ−ランタンのうちの1つである。
【0115】
上記インジケーターを検出する工程は、光の放射を検出する工程を包含し得る。いくつかの実施形態において、ルミノメーターは、基質とのインジケーター(例えば、ルシフェラーゼ)の反応を検出するために使用され得る。RLUの検出はルミノメーターで達成することができ、または、他の機械もしくはデバイスもまた、使用され得る。例えば、分光光度計、CCDカメラ、またはCMOSカメラが、色の変化および他の光の放射を検出し得る。検出にとって絶対RLUが重要であるが、単一細胞または少数の細胞が確実に検出されるためにはシグナル対バックグラウンド比も高い(例えば、>2.0、>2.5または>3.0)ことが必要である。
【0116】
いくつかの実施形態において、上記インジケーターファージは、上記ファージが特異的に認識しかつ感染する細菌の感染の際にのみ生成される酵素(例えば、ルシフェラーゼ)の遺伝子を含むように遺伝子操作される。いくつかの実施形態において、上記インジケーター部分は、ウイルス生活環において後期に発現される。いくつかの実施形態において、本明細書で記載される場合、上記インジケーターは、可溶性タンパク質(例えば、可溶性ルシフェラーゼ)であり、そのコピー数を制限するファージ構造タンパク質と融合されない。
【0117】
従って、インジケーターファージを利用するいくつかの実施形態において、本発明は、目的の微生物を検出するための方法を包含し、上記方法は、少なくとも1個のサンプル細菌を捕捉する工程;該少なくとも1個の細菌を、複数のインジケーターファージとともにインキュベートする工程;子孫ファージを生成し、可溶性インジケーター部分を発現するための、感染および複製の時間を与える工程;ならびに上記子孫ファージ、好ましくは上記インジケーターを検出する工程であって、ここで上記インジケーターの検出は、上記細菌が上記サンプルに存在することを示す工程を包含する。
【0118】
例えば、いくつかの実施形態において、試験サンプル細菌は、プレートの表面に結合することによって、または上記サンプルを細菌学的フィルター(例えば、0.45μm孔サイズのスピンフィルターまたはプレートフィルター)を介してろ過することによって、捕捉され得る。一実施形態において、上記感染性因子(例えば、インジケーターファージ)は、最小限の体積で、上記フィルター上に直接捕捉されたサンプルに添加される。一実施形態において、上記フィルターまたはプレート表面上に捕捉された微生物は、その後、過剰な結合されていない感染性因子を除去するために、1回または複数回洗浄される。一実施形態において、培地(例えば、Luria−Bertaniブロス(本明細書でLBとも称される)、緩衝化ペプトン水(本明細書でBPWとも称される)、またはTryptic SoyブロスもしくはTryptone Soyブロス(本明細書でTSBとも称される))を、さらなるインキュベーション時間のために添加して、細菌細胞およびファージの複製、ならびに上記インジケーター部分をコードする遺伝子の高レベル発現を可能にし得る。しかし、試験アッセイのいくつかの実施形態の驚くべき局面は、インジケーターファージによる上記インキュベーション工程が単一のファージ生活環にとって十分長いことのみが必要であるということである。バクテリオファージを使用することの増幅力は、上記ファージが数サイクルにわたって複製するように、より時間を要すると以前は考えられていた。インジケーターファージの単一の複製サイクルが、本発明のいくつかの実施形態に従って高感度かつ迅速検出を容易にするために十分であり得る。
【0119】
いくつかの実施形態において、細菌を含む試験サンプルのアリコートをスピンカラムに適用し得、組換えバクテリオファージでの感染および任意の過剰なバクテリオファージを除去するための任意選択の洗浄後に、検出される可溶性インジケーターの量は、感染した細菌によって生成されるバクテリオファージの量に比例する。
【0120】
上記細菌の溶解の際に周囲の液体へと放出された可溶性インジケーター(例えば、ルシフェラーゼ)は、次いで、測定および定量され得る。一実施形態において、上記溶液は、フィルターを通して遠心され、その濾液はアッセイ(例えば、ルミノメーターでの)のために新しい容器に収集され、その後、上記インジケーター酵素のための基質(例えば、ルシフェラーゼ基質)が添加される。あるいは、インジケーターシグナルは、フィルター上で直接測定され得る。
【0121】
種々の実施形態において、上記精製された親インジケーターファージは、上記検出可能なインジケーター自体を含まない。なぜなら上記親ファージは、これが試験サンプルとともにインキュベーションするために使用される前に精製され得るからである。後期(クラスIII)遺伝子の発現は、ウイルス生活環において後期に起こる。本発明のいくつかの実施形態において、親ファージは、いかなる存在するインジケータータンパク質(例えば、ルシフェラーゼ)をも排除するために精製され得る。いくつかの実施形態において、宿主細菌の感染後のバクテリオファージ複製の間の上記インジケーター遺伝子の発現は、可溶性インジケータータンパク質生成物を生じる。従って、多くの実施形態において、上記検出工程の前に親ファージを子孫ファージから分離することは必須ではない。一実施形態において、上記微生物は、細菌であり、上記インジケーターファージは、バクテリオファージである。一実施形態において、上記インジケーター部分は、可溶性ルシフェラーゼであり、これは、上記宿主微生物の溶解の際に放出される。
【0122】
従って、代替の一実施形態において、上記インジケーター基質(例えば、ルシフェラーゼ基質)は、フィルター上にあるままであるかまたはプレート表面に結合したままである上記サンプルの一部とともにインキュベートされ得る。よって、いくつかの実施形態において、上記固体支持体は、96ウェルフィルタープレート(もしくは通常の96ウェルプレート)であり、上記基質反応は、上記プレートを上記ルミノメーターの中に直接置くことによって検出され得る。
【0123】
例えば、一実施形態において、本発明は、Cronobacter spp.を検出するための方法を包含し得、上記方法は、96ウェルフィルタープレート上に捕捉された細胞に、感染の際にルシフェラーゼを発現し得る複数の親インジケーターファージを感染させる工程;過剰なファージを洗い流す工程;LBブロスを添加し、ファージが複製しかつ上記特定のCronobacter spp.標的を溶解する時間を与える工程(例えば、30〜120分);およびルシフェラーゼ基質を添加し、上記96ウェルプレートにおいて直接、ルシフェラーゼ活性を測定することによって上記インジケータールシフェラーゼを検出する工程であって、ここでルシフェラーゼ活性の検出は、上記Cronobacter spp.が上記サンプルに存在することを示す工程を包含する。
【0124】
別の実施形態において、本発明は、Cronobacter spp.を検出するための方法を包含し得、上記方法は、96ウェルプレート中の液体溶液もしくは懸濁物中の細胞に、感染の際にルシフェラーゼを発現し得る複数の親インジケーターファージを感染させる工程;ファージが複製しかつ上記特定のCronobacter spp.標的を溶解する時間(例えば、30〜120分)を与える工程;およびルシフェラーゼ基質を添加し、上記96ウェルプレートにおいて直接、ルシフェラーゼ活性を測定することによって、上記インジケータールシフェラーゼを検出する工程であって、ここでルシフェラーゼ活性の検出は、上記Cronobacter spp.が上記サンプルに存在することを示す工程を包含する。このような実施形態において、捕捉する工程は、必須ではない。いくつかの実施形態において、上記液体溶液もしくは懸濁物は、消費可能な試験サンプル(例えば、野菜洗浄液)であり得る。いくつかの実施形態において、上記液体溶液または懸濁物は、濃縮されたLBブロス、Tryptic/Tryptone Soyブロス、ペプトン水または栄養ブロスで強化した野菜洗浄物であり得る。いくつかの実施形態において、上記液体溶液または懸濁物は、LBブロス中で希釈した細菌であり得る。
【0125】
いくつかの実施形態において、上記細菌の溶解は、上記検出工程の前、その間、もしくはその後に起こり得る。実験は、感染した溶解されていない細胞が、いくつかの実施形態において、ルシフェラーゼ基質の添加の際に検出可能であり得ることを示唆する。おそらくは、ルシフェラーゼは、完全な細胞溶解なしに、細胞から出ていき得る、および/またはルシフェラーゼ基質が細胞に入り得る。従って、スピンフィルターシステムを利用する実施形態のために、上記溶解物へと放出されルシフェラーゼのみ(かつルシフェラーゼはさらに無傷の細菌の中にない)が、上記ルミノメーターにおいて分析される場合、溶解は、検出のために必要とされる。しかし、溶液もしくは懸濁物のサンプルとともにフィルタープレートもしくは96ウェルプレートを利用する実施形態のために、無傷の細胞および溶解した細胞で満ちている元のプレートが上記ルミノメーターにおいて直接アッセイされる場合、溶解は、検出に必須ではない。
【0126】
いくつかの実施形態において、インジケーター部分(例えば、ルシフェラーゼ)と基質との反応は、30分またはそれより長くにわたって続き得、種々の時点での検出は、感度を最適化するために望ましいことであり得る。例えば、上記固体支持体として96ウェルフィルタープレートを、および上記インジケーターとしてルシフェラーゼを使用する実施形態において、ルミノメーター読み取りは、最初に、および10分もしくは15分の間隔
で、上記反応が完了するまで行われ得る。
【0127】
驚くべきことに、試験サンプルに感染させるために利用される高濃度のファージは、非常に短い時間枠で、標的微生物の非常に少数の検出を成功裏に達成した。ファージを試験サンプルとともにインキュベートすることは、いくつかの実施形態において、単一のファージ生活環にとって十分長いことのみを必要とする。いくつかの実施形態において、このインキュベートする工程のためのバクテリオファージの濃度は、7×10
6、8×10
6、9×10
6、1.0×10
7、1.1×10
7、1.2×10
7、1.3×10
7、1.4×10
7、1.5×10
7、1.6×10
7、1.7×10
7、1.8×10
7、1.9×10
7、2.0×10
7、3.0×10
7、4.0×10
7、5.0×10
7、6.0×10
7、7.0×10
7、8.0×10
7、9.0×10
7、もしくは1.0×10
8 PFU/mLより高い。
【0128】
ファージのこのような高濃度での成功は驚くべきことである。なぜならファージの多数が、「非感染溶菌」と以前に関連しており、これは、標的細胞を死滅させ、それによって、より早期のファージアッセイからの有用なシグナルの生成を妨げたからである。本明細書で記載される調製されたファージストックの浄化(clean−up)は、この問題を軽減する助けとなると考えられる(例えば、塩化セシウム等密度密度勾配超遠心分離による浄化)。なぜなら上記ファージと関連付けられたいかなる汚染するルシフェラーゼをも除去する工程に加えて、この浄化はまた、ゴースト粒子(ghost particle)(DNAを失った粒子)を除去し得るからである。上記ゴースト粒子は、「非感染溶菌」を介して細菌細胞を溶解し得、上記細胞を早期に死滅させ、それによってインジケーターシグナルの生成を防止することができる。電子顕微鏡法は、粗製のファージ溶解物(すなわち、塩化セシウム浄化前)が50%より多いゴーストを有し得ることを明らかに示す。これらのゴースト粒子は、細胞膜に穴をあける多くのファージ粒子の作用を通じて、上記微生物の早期の死滅に寄与し得る。従って、ゴースト粒子は、高いPFU濃度が有害であると報告された以前の問題の一因であった可能性がある。さらに、非常にきれいなファージ調製物は、上記アッセイが洗浄工程なしで行われることを可能にし、このことは、初期濃縮工程なしで上記アッセイが行われることを可能にする。いくつかの実施形態は初期濃縮工程を含み、いくつかの実施形態において、この濃縮工程はより短い富化インキュベーション時間を可能にする。
【0129】
試験方法のいくつかの実施形態は、確認アッセイをさらに含み得る。初期の結果を通常後の時点で確認するために、様々なアッセイが当該分野で公知である。例えば、サンプルが培養され得(例えば、実施例に記載されるCHROMAGAR(登録商標)、DYNABEADS(登録商標)アッセイ)、微生物DNAの存在を確認するためにPCRが利用され得、または、初期の結果を確認するために他の確認アッセイが使用され得る。
【0130】
ある種の実施形態において、本発明の方法は、感染性因子での検出に加えて、上記サンプルから目的の微生物(例えば、Cronobacter spp.)を精製および/または濃縮するために、結合剤(例えば、抗体)の使用を組み合わせ得る。例えば、ある種の実施形態において、本発明は、サンプル中の目的の微生物を検出するための方法を包含し、上記方法は、上記微生物を上記サンプルから、上記目的の微生物(例えば、Cronobacter spp.)に特異的な捕捉抗体を使用して、先の支持体上に捕捉する工程;上記サンプルを、Cronobacter spp.に感染する組換えバクテリオファージとともにインキュベートする工程であって、ここで上記組換えバクテリオファージは、上記バクテリオファージの後期遺伝子領域に挿入されたインジケーター遺伝子を含み、その結果、宿主細菌の感染後のバクテリオファージ複製に間の上記インジケーター遺伝子の発現は、可溶性インジケータータンパク質生成物を生じる工程;および上記インジケータータンパク質生成物を検出する工程であって、ここで上記インジケータータンパク質生成物の陽性検出は、Cronobacter spp.が上記サンプル中に存在することを示す工程を含む。
【0131】
例えば、
図8は、本発明の一実施形態に従う改変されたバクテリオファージを使用して目的の細菌を検出するためのハイブリッドイムノファージ(HIP)アッセイを示す。上記サンプルを、第1に、細菌特異的抗体802で被覆されたマイクロタイタープレートウェルに適用する。次いで、上記プレートを遠心分離して、上記捕捉抗体804への上記細菌の結合を促進する。完全な細菌捕捉を可能にするために十分な時間の後に、細菌特異的NANOLUC(登録商標)ファージを含む溶液を、各サンプル806に添加する。上記ファージとのインキュベーションは、上記捕捉された細菌808への単一のまたは複数のファージの結合および付着を生じる。最後に、上記サンプルを、ファージ複製およびルシフェラーゼ発現を促進するためにインキュベートする。これは、細胞溶解および可溶性ルシフェラーゼ810の放出をもたらす。
【0132】
いくつかの実施形態において、合成ファージは、病原体検出アッセイにおける使用のための望ましい形質を最適化するために設計される。いくつかの実施形態において、遺伝的改変のバイオインフォマティクスおよび以前の分析は、望ましい形質を最適化するために使用される。例えば、いくつかの実施形態において、ファージテールタンパク質をコードする遺伝子は、特定の種の細菌を認識しかつこれに結合するために最適化され得る。他の実施形態において、ファージテールタンパク質をコードする遺伝子は、細菌の属全体、または属内の特定の種のグループを認識しかつこれらに結合するために最適化され得る。このようにして、上記ファージは、病原体のより広いまたはより狭いグループを検出するために最適化され得る。いくつかの実施形態において、上記合成ファージは、上記レポーター遺伝子の発現を改善するために設計され得る。さらにおよび/または代わりに、場合によっては、上記合成ファージは、検出を改善するために上記ファージのバーストサイズを増大させるために設計され得る。
【0133】
いくつかの実施形態において、上記ファージの安定性は、貯蔵期間を改善するために最適化され得る。例えば、酵素生命的溶解度(enzybiotic solubility)は、その後のファージ安定性を増大させるために、増大され得る。さらにおよび/または代わりに、ファージ熱安定性が最適化され得る。熱安定性ファージは、貯蔵の間の機能的活性をより良好に保存し、それによって、貯蔵寿命を増大させる。従って、いくつかの実施形態において、上記熱安定性および/またはpH寛容性は、最適化され得る。
【0134】
いくつかの実施形態において、上記遺伝的に改変されたファージまたは上記合成して導出されたファージは、検出可能なインジケーターを含む。いくつかの実施形態において、上記インジケーターは、ルシフェラーゼである。いくつかの実施形態において、上記ファージゲノムは、インジケーター遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ遺伝子または検出可能なインジケーターをコードする別の遺伝子)を含む。
【0135】
本発明のシステムおよびキット
いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書で開示される方法を行うための構成要素を含むシステム(例えば、自動化システムもしくはキット)を含む。いくつかの実施形態において、本発明によるシステムまたはキットにはインジケーターファージが含まれる。本明細書に記載される方法は、このようなインジケーターファージシステムまたはキットも利用し得る。本明細書で記載されるいくつかの実施形態は、上記方法を行うために必要とされる試薬および材料の最小限の量を考慮すると、自動化もしくはキットに特に適している。ある種の実施形態において、上記キットの構成要素の各々は、第1の部位から第2の部位へと送達可能である自己充足式ユニットを含み得る。
【0136】
いくつかの実施形態において、本発明は、サンプル中の目的の微生物の迅速検出のためのシステムもしくはキットを含む。上記システムもしくはキットは、ある種の実施形態において、上記サンプルを上記目的の微生物に特異的な感染性因子とともにインキュベートするための構成要素であって、ここで上記感染性因子はインジケーター部分を含む構成要素、および上記インジケーター部分を検出するための構成要素を含み得る。本発明のシステムおよびキットの両方のいくつかの実施形態において、上記感染性因子は、上記目的の細菌に感染する組換えバクテリオファージであり、上記組換えバクテリオファージは、上記インジケーター部分として上記バクテリオファージの後期遺伝子領域に挿入されたインジケーター遺伝子を含み、その結果、宿主細菌の感染後のバクテリオファージ複製の間の上記インジケーター遺伝子の発現は可溶性インジケータータンパク質生成物を生じる。いくつかのシステムは、上記目的の微生物を固体支持体上に捕捉するための構成要素をさらに含む。
【0137】
他の実施形態において、本発明は、目的の微生物に特異的な感染性因子構成要素を含む、サンプル中の目的の微生物の迅速検出のための方法、システムまたはキットを含み、ここで、上記感染性因子は、インジケーター部分および上記インジケーター部分を検出するための構成要素を含む。いくつかの実施形態において、上記バクテリオファージは、T4様、ViI、ViI様、またはCronobacter spp.特異的バクテリオファージである。一実施形態において、上記組換えバクテリオファージは、Cronobacter spp.特異的バクテリオファージに由来する。ある種の実施形態において、上記組換えバクテリオファージは、特定の細菌に対して高度に特異的である。例えば、ある種の実施形態において、上記組換えバクテリオファージは、Cronobacter spp.に対して高度に特異的である。実施形態において、上記組換えバクテリオファージは、他のタイプの細菌の存在下でCronobacter spp.を区別し得る。ある種の実施形態において、システムまたはキットは、上記サンプル中の2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個または100個程度の少なさの特異的細菌を検出する。
【0138】
ある種の実施形態において、上記システムおよび/もしくはキットは、上記捕捉された微生物サンプルを洗浄するための構成要素をさらに含み得る。さらにもしくは代わりに、上記システムおよび/もしくはキットは、上記インジケーター部分の量を決定するための構成要素をさらに含み得、ここで検出されるインジケーター部分の量は、上記サンプル中の微生物の量に相当する。例えば、ある種の実施形態において、上記システムもしくはキットは、ルシフェラーゼ酵素活性を測定するための、ルミノメーターもしくは他のデバイスを含み得る。
【0139】
いくつかのシステムおよび/またはキットにおいて、同じ構成要素は、複数工程(multiple steps)のために使用され得る。いくつかのシステムおよび/またはキットにおいて、上記工程は、ユーザーによってコンピューター入力を介して自動化もしくは制御され、そして/または液体取り扱いロボットが少なくとも1つの工程を行う。
【0140】
従って、ある種の実施形態において、本発明は、サンプル中の目的の微生物の迅速検出のためのシステムまたはキットを包含し得、上記システムまたはキットは、上記サンプルを上記目的の微生物に特異的な感染性因子とともにインキュベートするための構成要素であって、ここで上記感染性因子はインジケーター部分を含む構成要素;上記微生物を上記サンプルから固体支持体上に捕捉するための構成要素;上記捕捉された微生物サンプルを洗浄して、結合されていない感染性因子を除去するための構成要素;および上記インジケーター部分を検出するための構成要素を含む。いくつかの実施形態において、同じ構成要素は、捕捉する工程および/またはインキュベートする工程および/または洗浄する工程のために使用され得る(例えば、フィルター構成要素)。いくつかの実施形態は、上記サンプル中の上記目的の微生物の量を決定するための構成要素であって、ここで検出されるインジケーター部分の量は、上記サンプル中の微生物の量に相当する構成要素をさらに含む。このようなシステムは、微生物の迅速検出のための方法に関して上記に記載されるものに類似の種々の実施形態および下位実施形態を含み得る。一実施形態において、上記微生物は、細菌であり、上記感染性因子は、バクテリオファージである。コンピューター化システムにおいて、上記システムは、完全に自動化されていても、半自動化されていても、もしくはコンピューターを介してユーザーによって指示されてもよい(もしくはこれらのいくつかの組み合わせ)。
【0141】
いくつかの実施形態において、上記システムは、上記サンプル中の他の構成要素から上記目的の微生物を単離するための構成要素を含み得る。
【0142】
一実施形態において、本発明は、目的の微生物を検出するための構成要素を含むシステムまたはキットを包含し、上記システムは、少なくとも1種の微生物を、上記サンプル中の他の構成要素から単離するための構成要素;上記少なくとも1種の微生物に複数の親感染性因子を感染させるための構成要素;上記少なくとも1種の感染した微生物を溶解して、上記微生物に存在する子孫感染性因子を放出するための構成要素;および上記子孫感染性因子を検出するための構成要素、またはより高い感度で、上記感染性因子によってコードされて発現される可溶性タンパク質を検出するための構成要素であって、ここで該感染性因子または該感染性因子の可溶性タンパク質産物は、上記微生物が上記サンプルに存在することを示す構成要素を含む。上記感染性因子は、NANOLUC(登録商標)インジケーター遺伝子を有するCronobacter特異的NANOLUC(登録商標)バクテリオファージを含み得る。
【0143】
上記システムまたはキットは、子孫感染性因子の検出のために種々の構成要素を含み得る。例えば、一実施形態において、上記子孫感染性因子(例えば、バクテリオファージ)は、インジケーター部分を含み得る。一実施形態において、上記子孫感染性因子(例えば、バクテリオファージ)における上記インジケーター部分は、複製の間に発現される検出可能な部分(例えば、可溶性ルシフェラーゼタンパク質)であり得る。
【0144】
他の実施形態において、本発明は、サンプル中の目的の微生物の迅速検出のためのキットを包含し得、上記システムは、上記サンプルを上記目的の微生物に特異的な感染性因子とともにインキュベートするための構成要素であって、ここで上記感染性因子はインジケーター部分を含む構成要素;上記微生物を上記サンプルから固体支持体上に捕捉するための構成要素;上記捕捉された微生物サンプルを洗浄して、結合されていない感染性因子を除去するための構成要素;および上記インジケーター部分を検出するための構成要素を含む。いくつかの実施形態において、同じ構成要素は、捕捉する工程および/もしくはインキュベートする工程および/もしくは洗浄する工程のために使用され得る。いくつかの実施形態は、上記サンプル中の上記目的の微生物の量を決定するための構成要素をさらに含み、ここで検出されるインジケーター部分の量は、上記サンプル中の微生物の量に相当する。このようなキットは、微生物の迅速検出の方法に関して上記で記載されるものに類似の種々の実施形態および下位実施形態を含み得る。一実施形態において、上記微生物は細菌であり、上記感染性因子はバクテリオファージである。
【0145】
いくつかの実施形態において、キットは、上記サンプル中の他の構成要素から上記目的の微生物を単離するための構成要素を含み得る。
【0146】
本発明のこれらのシステムおよびキットは、種々の構成要素を含む。本明細書で使用される場合、用語「構成要素」とは、広く定義され、記載される方法を実施するための任意の適した装置もしくは適した装置の集まりを含む。上記構成要素は、いかなる特定の方法においても互いに関して一体的に接続される必要も据え付けられる必要もない。本発明は、互いに関して上記構成要素の任意の適切な配置を含む。例えば、上記構成要素は、同じ空間の中に存在する必要はない。しかしいくつかの実施形態において、上記構成要素は、一体ユニットにおいて互いに接続される。いくつかの実施形態において、同じ構成要素は、複数機能を実行し得る。
【0147】
コンピューターシステムおよびコンピューター可読媒体
上記システムは、現在の技術もしくはその構成要素のうちのいずれかにおいて記載されるように、コンピューターシステムの形態で具現化され得る。コンピューターシステムの代表例としては、汎用コンピューター、プログラムされたマイクロプロセッサ、マイクロコントローラー、周辺集積回路素子、および本技術の方法を構成する工程を実装し得る他のデバイスもしくはデバイスの配置が挙げられる。
【0148】
コンピューターシステムは、コンピューター、入力デバイス、ディスプレイユニット、および/もしくはインターネットを含み得る。上記コンピューターは、マイクロプロセッサをさらに含み得る。上記マイクロプロセッサは、通信バスへと接続され得る。上記コンピューターはまた、メモリを含み得る。上記メモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)およびリードオンリーメモリ(ROM)を含み得る。上記コンピューターシステムは、記憶デバイスをさらに含み得る。上記記憶デバイスは、ハードディスクドライブもしくはリムーバル記憶デバイス(例えば、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、光学ディスクドライブなど)であり得る。上記記憶デバイスはまた、コンピュータープログラムもしくは他の指示を上記コンピューターシステムへとロードするための他の類似の手段であり得る。上記コンピューターシステムはまた、通信ユニットを含み得る。上記通信ユニットは、I/Oインターフェイスを通じて、上記コンピューターが他のデータベースおよびインターネットに接続することを可能にする。上記通信ユニットは、他のデータベースへの転送、ならびに他のデータベースからのデータの受領を可能にする。上記通信ユニットは、モデム、Ethernet(登録商標)カード、もしくは上記コンピューターシステムをデータベースおよびネットワーク(例えば、LAN、MAN、WANおよびインターネット)に接続することを可能にする任意の類似のデバイスを含み得る。上記コンピューターシステムは、従って、I/Oインターフェイスを介して上記システムへとアクセス可能な入力デバイスを通じてユーザーからの入力を容易にし得る。
【0149】
コンピューティングデバイスは、代表的には、そのコンピューティングデバイスの一般管理およびオペレーションのための実行可能なプログラム指示を提供するオペレーティングシステムを含み、代表的には、サーバーのプロセッサによって実行される場合に、上記コンピューティングデバイスにその意図された機能を行わせる指示を記憶するコンピューター可読記憶媒体(例えば、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ、リードオンリーメモリなど)を含む。上記オペレーティングシステムに適した実装および上記コンピューティングデバイスの一般的な機能性は、公知であるかもしくは市販されており、当業者によって、特に本明細書の開示に鑑みて、容易に実装される。
【0150】
上記コンピューターシステムは、入力データを処理するために、1以上の記憶素子の中に記憶される一群の指示を実行する。上記記憶素子はまた、記載されるとおりのデータもしくは他の情報を保持し得る。上記記憶素子は、処理機械に存在する情報ソースもしくは物理的メモリ素子の形態にあり得る。
【0151】
環境は、上記で考察されるとおりの種々のデータストアならびに他のメモリおよび記憶媒体を含み得る。これらは、種々の位置に存在し得る(例えば、上記コンピューターのうちの1以上にローカルな(および/もしくは中に存在する)、またはネットワーク全体にわたって記コンピューターのうちのいずれかもしくはすべてから遠隔にある記憶媒体において)。実施形態の特定の一群において、情報は、当業者が精通しているストレージエリアネットワーク(「SAN」)に存在し得る。同様に、上記コンピューター、サーバー、もしくは他のネットワークデバイスに帰した機能を行うための任意の必須のファイルは、適切な場合、ローカルにおよび/もしくは遠隔に保存され得る。システムが、コンピューティングデバイスを含む場合、各々のこのようなデバイスは、バスを介して電気的に連結され得るハードウェア要素を含み得、上記要素は、例えば、少なくとも1つの中央処理装置(CPU)、少なくとも1つの入力デバイス(例えば、マウス、キーボード、コントローラー、タッチスクリーン、もしくはキーパッド)、および少なくとも1つの出力デバイス(例えば、ディスプレイデバイス、プリンター、もしくはスピーカー)を含む。このようなシステムはまた、1つ以上の記憶デバイス(例えば、ディスクドライブ、光学記憶デバイス、およびソリッドステート記憶デバイス(例えば、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)もしくはリードオンリーメモリ(「ROM」)、ならびにリムーバブルメディアデバイス、メモリカード、フラッシュカードなどを含み得る。
【0152】
このようなデバイスはまた、コンピューター可読記憶媒体リーダー、通信デバイス(例えば、モデム、ネットワークカード(無線もしくは有線)、赤外線通信デバイスなど)、および上記のとおりのワーキングメモリを含み得る。上記コンピューター可読記憶媒体リーダーは、遠隔、ローカル、固定、および/もしくはリムーバブル記憶デバイスを代表するコンピューター可読記憶媒体、ならびにコンピューター可読情報を一時的におよび/もしくはより恒久的に含む、記憶する、伝達する、および検索するための記憶媒体と接続され得るかまたはこれらを受容するように構成され得る。上記システムおよび種々のデバイスはまた、代表的には、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラム(例えば、クライアントアプリケーションもしくはウェブブラウザ)を含む、少なくとも1つのワーキングメモリデバイス内に位置した多くのソフトウェアアプリケーション、モジュール、サービス、もしくは他の要素を含む。代替の実施形態が、上記のものからの多くのバリエーションを有し得ることは認識されるべきである。例えば、カスタマイズされたハードウェアがまた使用され得る、および/または特定の要素が、ハードウェア、ソフトウェア(ポータブルソフトウェア(例えば、アプレット)を含む)、または両方において実装され得る。さらに、他のコンピューティングデバイス(例えば、ネットワーク入力/出力デバイス)への接続が使用され得る。
【0153】
コード、もしくはコードの一部を含むための非一時的な記憶媒体およびコンピューター可読媒体としては、当該分野で公知であるかもしくは使用される任意の適切な媒体(記憶媒体および通信媒体(例えば、コンピューター可読の指示、データ構造、プログラムモジュール、もしくは他のデータなどの情報の記憶および/または伝達のための任意の方法または技術において実装される、揮発性および不揮発性、リムーバブルおよび非リムーバブルの媒体が挙げられるが、これらに限定されない)を含む)が挙げられ得、これらとしては、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリもしくは他のメモリ技術、CD−ROM、デジタル多目的ディスク(DVD)もしくは他の光学記憶、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶もしくは他の磁気記憶デバイス、または所望の情報を記憶するために使用され得、上記システムデバイスによってアクセスされ得る任意の他の媒体が挙げられる。上記開示および本明細書に提供される教示に基づいて、当業者は、上記種々の実施形態を実装するための他のやり方および/または方法を認識する。
【0154】
コンピューター可読媒体は、プロセッサにコンピューター可読指示を提供することができる電子式、光学式、磁気、もしくは他の記憶デバイスを含み得るが、これらに限定されない。他の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:フロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROM、DVD、磁気ディスク、メモリチップ、ROM、RAM、SRAM、DRAM、連想メモリ(「CAM」)、DDR、フラッシュメモリ(例えば、NANDフラッシュもしくはNORフラッシュ、ASIC、構成されたプロセッサ、光学記憶媒体、磁気テープもしくは他の磁気記憶媒体、またはコンピュータープロセッサが指示を読み得る任意の他の媒体。一実施形態において、上記コンピューティングデバイスは、コンピューター可読媒体(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM))の単一タイプを含み得る。他の実施形態において、上記コンピューティングデバイスは、コンピューター可読媒体(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ディスクドライブ、およびキャッシュ)のうちの2またはそれより多くのタイプを含み得る。上記コンピューティングデバイスは、1またはそれより多くの外付けのコンピューター可読媒体(例えば、外付けハードディスクドライブ、または外付けDVDもしくはブルーレイドライブ)と通信状態にあり得る。
【0155】
上記で考察されるように、上記実施形態は、コンピューター実行可能なプログラム指示を実行および/またはメモリに記憶された情報にアクセスするように構成されているプロセッサを含む。上記指示は、任意の適切なコンピュータープログラミング言語(例えば、C、C++、C#、Visual Basic、Java(登録商標)、Python、Perl、JavaScript(登録商標)、およびActionScript(Adobe Systems, Mountain View, Calif.)が挙げられる)で書かれたコードから、コンパイラおよび/もしくはインタープリターによって生成されたプロセッサ特異的指示を含み得る。一実施形態において、上記コンピューティングデバイスは、単一のプロセッサを含む。他の実施形態において、上記デバイスは、2またはそれより多くのプロセッサを含む。このようなプロセッサは、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、および状態機械を含み得る。このようなプロセッサは、プログラマブル電子デバイス(例えば、PLC)、プログラマブル割り込みコントローラー(PIC)、プログラマブルロジックデバイス(PLD)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電子的にプログラム可能なリードオンリーメモリ(electronically programmable read-only memory)(EPROMもしくはEEPROM)、または他の類似のデバイスをさらに含み得る。
【0156】
上記コンピューティングデバイスは、ネットワークインターフェイスを含む。いくつかの実施形態において、上記ネットワークインターフェイスは、有線もしくは無線の通信リンクを介して通信するように構成されている。例えば、上記ネットワークインターフェイスは、Ethernet(登録商標)、IEEE 802.11(Wi−Fi)、802.16(Wi−Max)、Bluetooth(登録商標)、赤外線などを介して、ネットワーク上での通信を可能にし得る。別の例として、ネットワークインターフェイスは、ネットワーク(例えば、CDMA、GSM(登録商標)、UMTS、もしくは他の携帯通信ネットワーク(cellular communication network))上での通信を可能にし得る。いくつかの実施形態において、上記ネットワークインターフェイスは、別のデバイスでの、例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB)、1394 FireWire、シリアル接続もしくはパラレル接続、または類似のインターフェイスを介したポイントツーポイント接続を可能にし得る。適切なコンピューティングデバイスのいくつかの実施形態は、1以上のネットワーク上での通信のための2以上のネットワークインターフェイスを含み得る。いくつかの実施形態において、上記コンピューティングデバイスは、ネットワークインターフェイスに加えてもしくはその代わりに、データストアを含み得る。
【0157】
適切なコンピューティングデバイスのいくつかの実施形態は、多くの外付けもしくは内部デバイス(例えば、マウス、CD−ROM、DVD、キーボード、ディスプレイ、オーディースピーカー、1以上のマイクロフォン、または任意の他の入力もしくは出力デバイス)を含み得るかまたはこれらと通信状態にあり得る。例えば、上記コンピューティングデバイスは、種々のユーザーインターフェイスデバイスおよびディスプレイと通信状態にあり得る。上記ディスプレイは、任意の適切な技術(LCD、LED、CRTなどが挙げられるが、これらに限定されない)を使用し得る。
【0158】
上記コンピューターシステムによる実行のための指示セットは、特定のタスク(例えば、本技術の方法を構成する工程)を行うための処理機械を指示する種々のコマンドを含み得る。上記指示セットは、ソフトウェアプログラムの形態にあり得る。さらには、上記ソフトウェアは、本技術におけるように、別個のプログラムの集まり、より大きなプログラムを有するプログラムモジュールもしくはプログラムモジュールの一部の形態にあり得る。上記ソフトウェアはまた、オブジェクト指向プログラミングの形態でのモジュラープログラミングを含み得る。処理機械による入力データの処理は、ユーザーコマンド、以前の処理の結果、もしくは別の処理機械によって作成されたリクエストに応じ得る。
【0159】
本発明は、ある種の実施形態を参照して開示されてきた一方で、記載される実施形態に対する多くの改変、変化および変更は、添付の特許請求の範囲で定義されるように、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく可能である。よって、本発明は、上記記載される実施形態に限定されないことは意図されるが、以下の特許請求の範囲の文言およびその均等物によって定義される全範囲を有する。
【実施例】
【0160】
以下の実施例に示される結果は、結果までの時間が短縮された、少数の細胞、さらに単一細菌の検出を実証する。
【0161】
実施例1. Cronobacter特異的バクテリオファージからのインジケーターファージの作製および単離
インジケーターファージCronobacter特異的Saka2.NANOLUC、Saka4.NANOLUC、およびSaka10.NANOLUCバクテリオファージを、先に記載されたとおりの手順を使用して、相同組換えを通じて作製した。CronobacterファージSaka2、Saka4、およびSaka10を、下水サンプルから単離した。
【0162】
これらファージのゲノム配列を、デノボ配列アセンブリを用いて、Illumina MiSeqシステムを使用して全ゲノム配列決定を通じて得た。関連するファージの以前に公知のおよび註釈付きのゲノムに基づいて、後期遺伝子領域および主要カプシドタンパク質遺伝子を、上記新たなファージゲノム上でのその位置を突き止めた。プラスミドを設計し、合成して、相同組換えを促進するために、マッチするファージ配列のおよそ500bpが隣接する、適切な後期遺伝子プロモーターおよびリボソーム結合部位とともにNANOLUC(登録商標)を挿入した。
【0163】
標的細菌を、上記相同組換えプラスミドで適切な抗生物質選択下で形質転換し、それらそれぞれの野生型ファージに感染させて、上記プラスミドとの相同組換えを可能にした。上記組換えバクテリオファージゲノムを生成する相同組換えの後に、一連の力価測定工程および富化工程を使用して、以前に記載されるようにNANOLUC(登録商標)を発現する特異的組換えバクテリオファージを単離した。
【0164】
最後に、大規模生成を行って、Cronobacter spp.検出アッセイにおける使用に適切な高力価ストックを得た。塩化セシウム等密度密度勾配遠心分離を使用して、ファージ粒子を汚染するルシフェラーゼタンパク質から分離し、バックグラウンドを低下させた。
【0165】
実施例2. 乳児用調製粉乳プロトコール − Cronobacter
Cronobacter細菌懸濁物を、培地中で一晩培養した。一晩の培養後、上記培養物を滅菌水中に所望の濃度まで希釈した。希釈した細胞を、非選択的プレート上で培養して、CFUを定量した。乳児用調製粉乳(PIF)に、Cronobacter希釈物を添加した。その接種したPIFを、真空ポンプを使用して高熱設定で乾燥させた。次いで、乾燥し、添加したPIFサンプルを使用して、PIFの10g、100g、または300g サンプルを種々のCFUレベルで接種した。上記接種したPIFサンプルを、室温で2〜4週間にわたって貯蔵し、その後評価した。
【0166】
PIFの10g、100g、および300g サンプルを調製した。10gのPIFサンプルを、90mLの予め加温した(37℃)緩衝化ペプトン水(BPW)培地と1:9 サンプル:容積比で混合した;100gのPIFを、300mLの予め加温したBPW培地と1:3 サンプル:容積比で混合した;そして300gのPIFを、900mLの予め加温したBPW培地と1:3 サンプル:容積比で混合した。STOMACHER(登録商標)または等価な装置(蠕動ブレンダー)を使用して、上記サンプルを最高設定で120秒間ホモジナイズした。上記ホモジナイズしたサンプルを、振盪せずに、16〜18時間にわたって37℃でインキュベートした。インキュベーション後、上記サンプルを徹底的に混合し、1mLのサンプルを取り出し、遠心分離チューブに移した。上記サンプルを、BPW中で1:10希釈した(100μl サンプル: 900μl BPW)。上記希釈サンプルのうちの150μlを、96ウェルプレートに移した。Cronobacter特異的バクテリオファージ溶液のバクテリオファージカクテル10μlを、各ウェルに添加し、2時間、37℃でインキュベートした。10μlの溶解緩衝液を各ウェルに添加し、続いて、50μlの調製したルシフェラーゼ基質を添加し、ルミノメーターで読み取った。Cronobacterに関して陽性のサンプルは、500またはこれより大きい相対的光単位(RLU)の読み取り値を有し、陰性サンプルは、500 RLU未満の読み取りを有する。
【0167】
Cronobacterの陽性検出を確認した。サンプルを、37℃で24時間、富化した。各富化したサンプルのうちの50μlを、Brillianceプレート(Oxoid
TM Brilliance
TM Cronobacter sakazakii Agar cat# OXCM0129R)上で画線培養し、37℃で24時間インキュベートした。青緑色のコロニー増殖によって陽性検出を確認した。
【表1】
【0168】
異なるレベルでおよび異なるCronobacter株を用いて接種した100g PIFサンプル(表1)を、Cronobacterに関して乳児用調製粉乳アッセイを使用して試験した。100g サンプルに関して、PIF 対 BPW(緩衝化ペプトン水)の1:3希釈物を使用した。500 RLU/sまたは5:1 シグナル/バックグラウンドより大きい読み取りを有するサンプルを、陽性とみなした。24時間富化サンプルを、確認のためにBrillianceプレートにプレーティングした。
【0169】
試験したマトリクスは、以下を含む: 乳児用調製粉乳(ミルクベース)、乳児用調製粉乳(大豆ベース)、プレバイオティクスおよびプロバイオティクスを補充した乳児用調製粉乳、コメデンプンを添加した乳児用調製粉乳、または脱脂粉乳。
【0170】
実施例3. 包含性および排除性研究
包含性株(Cronobacter)を、学術研究機関の、政府機関の、および商業的に入手可能な供給源から得た(表2)。各株を、一晩TSB培地中で、37±1℃において定常相になるまで増殖させた。細胞を、100 CFUへと0.1mLのTSB中で希釈し、組換えファージと、2時間、37±1℃において混合した。感染後、サンプルを溶解緩衝液およびルシフェラーゼ基質と混合し、次いで、ルミノメーターで読み取った。150より大きいRLU値を有するサンプルを、陽性とみなした。排除性株をまた、商業的に入手可能な供給源から得、定常相になるまで一晩増殖させた。排除性株でのアッセイを、一晩の培養物を直接アッセイすることを除いて、包含性株で行ったように行った(表3)。
【0171】
上記Cronobacterアッセイは、試験した75種のCronobacter株で100% 包含性を示す(表2)。上記Cronobacterアッセイはまた、41種の試験した非Cronobacter株のうちの38種で排除性を示す(表3)。上記Cronobacterアッセイによって検出される上記3種の非Cronobacter株は、密接に関連したEnterobacter属に由来した。上記ファージアッセイからの任意の推定陽性を、合計24±2時間、37±1℃で富化させ得、次いで、OXOID
TM BRILLIANCE
TM Cronobacter Sakazakii Agar上で画線培養し得、さらに24±2時間、37±1℃で確認のためにインキュベートし得る。十分に増殖し(1mm〜3mm)かつ青緑色に見えるコロニーの存在は、陽性サンプルを示す。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表3-1】
【表3-2】
【0172】
実施例4. 強度研究
3つのパラメーターを変動させて、アッセイ強度を示した:富化時間(14時間および24時間)、組換えファージ濃度(±20%)およびルシフェラーゼ基質量(±10%)。簡潔には、10g ミルクベースの乳児用調製粉乳サンプルを、添加しないままにしたか、または乳児用調製粉乳中で乾燥させた0.2〜2 CFU/10g C.muytjensii FSL−F6−031を添加し、室温で2〜4週間貯蔵した(20〜25℃)。表4に示されるように富化時間、組換えファージ濃度および基質量におけるバリエーションを用いて、上記Cronobacterアッセイプロトコールに倣った。500より大きいRLU値を有するサンプルを、陽性とみなした。サンプルを合計24±2時間富化させ、次いで、OXOID
TM BRILLIANCE
TM Cronobacter Sakazakii Agar上にプレーティングすることによって、サンプルを確認した。プレートを、37±1℃でさらに24±2時間インキュベートした。十分に増殖した青緑色のコロニーの存在は、陽性サンプルを示した。上記試験のまとめを、表4に示す。
【0173】
Cronobacterアッセイの強度試験は、富化時間、組換えファージ濃度およびルシフェラーゼ基質量におけるバリエーションが、標準的プロトコールと比較して、上記結果を変化させないことを示した。14時間および24時間の富化時間、8μLおよび12μLの組換えファージ容積、ならびに45μLおよび55μLのルシフェラーゼ基質容積は、非接種および低接種物試験サンプルの両方において、16時間 富化、10μLの組換えファージおよび50μLのルシフェラーゼ基質の標準的プロトコールと同一の結果を生じた(表4)。これらの結果は、Cronobacterアッセイプロトコールからのこれらの偏差が、最終結果を変化させなかったことを示す。
【表4】
【0174】
実施例5. マトリクス研究
マトリクス研究は、Cronobacter(10g 試験部分)をISO 22964:2006(10g 試験部分)と、およびCronobacter(100gおよび300g 試験部分)をFDA BAM Ch. 29 Cronobacter:2012(100g 試験部分)と比較した。上記Cronobacter 10g部分を、ペア形式の研究デザインを使用して、ISO 22964:2006と比較した。上記Cronobacter 100gおよび300g 部分を、ペア形式でない研究デザインを使用して、FDA BAM Ch. 29 100g 部分と比較した。各マトリクスおよび各比較に関して、上記研究は、非接種マトリクス(0 CFU/試験部分)の5つの複製試験部分、段階的に(fractionally)陽性結果(0.2〜2 CFU/試験部分)を得るための低レベルでの20の複製試験部分、および一貫して陽性結果(2〜10 CFU/試験部分)を得るために高レベルでの5つの複製試験部分を含んだ。
【0175】
ミルクベースおよびダイズベース両方のPIFを、地域の小売店から購入し、ISO 22964:2006法を使用して、平常の汚染を予めスクリーニングした。接種物を調製するために、Cronobacterを、tryptic soyaブロス中で、18〜24時間、37±1℃で増殖させた。上記培養物をBPW中に希釈し、PIFの中で再構成し、サンプルが完全に乾燥するまで、4〜8時間の高速真空の中に置いた。乾燥後、乾燥させた接種物を、各研究において使用されるPIFマトリクスの中に希釈して、段階的な陽性結果を得ると予想される低レベルおよび全て陽性結果を得ると予想される高レベルを得、2〜4週間、室温(20〜25℃)に静置させて、上記マトリクスにおいて平衡状態を可能にした。上記マトリクスのバルクロットを、試験前に希釈した接種物とともに接種した。
【0176】
分析当日に、全好気性菌数をFDA BAM Ch. 3に従って決定し、低レベルおよび高レベルの接種物におけるCronobacterのレベルを、最確数(MPN)分析によって決定した。ペア形式のサンプルに関しては、MPN分析を、ISO 22694:2006法を使用して決定した。低レベル接種物に関しては、上記マトリクス研究からの、25gの5つの試験部分、4gの5つの試験部分、および10gの20の試験部分を分析した。高レベル接種物に関しては、上記マトリクス研究からの10gの5つの試験部分、4gの5つの試験部分、および1.5gの5つの試験部分を分析した。
【0177】
非ペア形式のサンプルに関しては、MPN分析を、FDA BAM Ch. 29法を使用して決定した。低レベル接種物に関しては、上記マトリクス研究からの200gの5つの試験部分、50gの5つの試験部分、および100gの20の試験部分を分析した。高レベル接種物に関しては、上記マトリクス研究からの100gの5つの試験部分、50gの5つの試験部分、および25gの5つの試験部分を分析した。AOAC RIによって提供されるLCF MPN計算機を使用してMPNを計算するために、陽性の数を使用した。
【0178】
Cronobacter試験部分を、使用説明書に従って処理した。簡潔には、予め加温したBPW(37±1℃)の、90mL(10g 試験部分)、300mL(100g 試験部分)または900mL(300g 試験部分)を、PIF試験部分に添加した。サンプルをホモジナイズし、37±1℃で16〜18時間富化した。富化したサンプルを徹底的に混合し、その後、分析のためにアリコートを採取した。サンプルを、予め加温したBPW(37±1℃)中で1:10(100μl サンプル: 900μl BPW)希釈し、上記希釈したサンプルのうちの150μlを96ウェルプレートに移した。次いで、サンプルを、組換えファージに、2時間、37±1℃で感染させた。溶解緩衝液およびルシフェラーゼ基質を、上記サンプルに添加した。次いで、サンプルをルミノメーターで読み取った。読み取り値 ≧500 RLUを陽性とみなした。Cronobacterアッセイごとに確認するために、サンプルを、合計24±2時間、37±1℃で富化した。富化したサンプルを徹底的に混合し、その後、分析のためにアリコートを採取した。50μLを、OXOID
TM BRILLIANCE
TM Cronobacter Sakazakii Agarの上に染みこませ、24±2時間、37±1℃でインキュベートした。十分に(1mm〜3mm)増殖しかつ青緑色に見えるコロニーの存在は、陽性サンプルを示す。
【0179】
FDA BAM Ch. 29についての確認のために、第E節および第F節を行った。簡潔には、24時間 富化から、2×40mLのアリコートを、3,000×gで10分間遠心分離した。上清を廃棄し、得られたペレットを、200μlの滅菌リン酸緩衝化生理食塩水中に再懸濁した。上記再懸濁したペレットのうちの100μl アリコートを、2枚のDFI 色素生成アガープレートおよび2枚のR&F Cronobacter色素生成アガープレートにプレーティングした。さらに、各富化物の1白金耳を、2枚のDFI色素生成アガープレートおよび2枚のR&F Cronobacter色素生成アガープレートに染みこませた。全てのプレートを、36±1℃で18〜24時間インキュベートした。推定陽性コロニーを、BAM Ch. 29の第F節に概説されるように、PCRによって確認した。
【0180】
ISO 22964:2006(試験時点での最新バージョン)を、マトリクス評価のために方法開発者の研究室で使用した。簡潔には、90mLのBPWを、10gのPIFに添加した。上記サンプルを、37±1℃で18±2時間、インキュベートした。次いで、0.1mLを、BPW培養物から10mLのmLST/バンコマイシン培地へと移し、44±1℃で24±2時間、インキュベートした。mLST/バンコマイシン培養物の1白金耳を、Enterobacter sakazakii Isolation Agarに染みこませ、44±1℃で24±2時間、インキュベートした。次いで、1〜5個の推定陽性コロニーを、tryptic soyaアガー(TSA)プレートに染みこませ、25℃で48±4時間、インキュベートした。黄色に着色したコロニーを、さらなる生化学的確認試験のために選択した。
【0181】
FDA BAM Ch. 29 Cronobacter法に関して、900mLの滅菌BPWを、滅菌した2L エルレンマイヤーフラスコ中で100g PIFに添加し、PIFが均一に懸濁されるまで手で穏やかに撹拌した。試験サンプルを、36±1℃で24±2時間インキュベートした。富化後、上記サンプルを徹底的に混合し、各サンプルからの4×40mLを、50mL 遠心分離チューブに移した。上記アリコートを、3,000×gで10分間遠心分離し、上清を廃棄した。得られたペレットを、200μlのリン酸緩衝化生理食塩水中で再懸濁した。2つのアリコートを、推定陽性を決定するためのPCRに使用し、2つのアリコートを、必要であれば、培養確認のために使用した。PCRスクリーンのために、2つのアリコートを1.5mL 微小遠心分離チューブに移し、3,000×gで5分間遠心分離した。上清を廃棄し、ペレットを、400μLのPREPMAN ULTRA(登録商標)サンプル調製試薬中に再懸濁し、ペレットが完全に再懸濁されるまでボルテックスによって最大速度で混合した。上記サンプルを、ドライバスインキュベーター中、100℃で10分間加熱し、次いで、室温へと冷却した。上記サンプルが一旦室温に達したら、上記サンプルを2分間、15,000×gで遠心分離し、その上清のうちの50μL アリコートを、PCR分析のために新しい微小遠心分離チューブに移した。各サンプルに関して、PCR分析を内部コントロール(InC)ありまたはなしで行った。上記PCR反応構成要素および上記PCRプロトコールを、FDA BAM Chapter 29参照方法に概説されるとおりに倣った。推定陽性を、FDA BAM Ch. 29、第E節および第F節を使用して確認した。簡潔には、再懸濁したペレットのうちの100μL アリコートを、2枚のDFI色素生成アガープレートおよび2枚のR&F Cronobacter色素生成アガープレートにプレーティングした。さらに、各富化物のうちの1白金耳を、2枚のDFI色素生成アガープレートおよび2枚のR&F Cronobacter色素生成アガープレート上で画線培養した。全てのプレートを、36±1℃で18〜24時間インキュベートした。コロニーを、BAM Ch. 29の第F節に概説されるように、PCRによって確認した。
【0182】
全試験結果を、95% 信頼区間(CI)に対してPOD統計分析を使用して分析した。POD分析は、付表Jの中のAOAC INTERNATIONALガイドラインに記載される。上記分析からのデータを、表5〜8に示す。
【0183】
上記方法開発者研究は、試験した全てのマトリクスに関して、上記アッセイとISO 22964:2006とFDA BAM Ch. 29 Cronobacter参考方法との間に差異はないことを示した(表5〜8)。Cronobacterアッセイによって推定陽性であった全試験部分を、それらそれぞれの参照方法によってCronobacterを含むことを確認した。偽陰性結果はなかった。上記POD分析は、ペア形式の研究においてCronobacterアッセイとISO 22964:2006参照方法との間に有意差がないことを示した(表5)。Cronobacterアッセイ推定とBAM Ch. 29確認結果の数の間に統計的な差異はなかった(表6)。Cronobacterアッセイ結果およびBAM Ch. 29確認、ならびに推定結果および確認結果の比較はまた、統計的に有意でなかった(表6および7)。CronobacterアッセイとFDA BAM Ch. 29非ペア形式研究との比較は、上記2つの方法の成績において統計的差異がないことを示した(表8)。1つの例外は、100g ミルクベースのアッセイ 対 BAM Ch. 29方法比較であった(表8)。上記段階的陽性の間の差異は、統計的に有意であり、この場合、dPODは0.35であり、CIは(0.04, 0.58)であった。上記研究において使用されるPIFの好気性細菌プレート計数は、0 CFU/gであり、これは、上記PIFに、富化プロセスの開始時に存在するバックグラウンド細菌叢がなかったか、または非常に低レベルであったことを示す。
【0184】
独立した実験評価は、ミルクベースのPIFに関して、CronobacterアッセイをISO 22964:2017およびFDA BAM Chapter 29参照方法と比較するマトリクス研究を含んだ。ISO 22964:2017に対する方法の比較に関しては、30ペアの10g 試験部分を評価した。FDA BAM Chapter 29に対する方法の比較に関しては、Cronobacterアッセイの100gおよび300gの試験部分を、参照方法の100g 試験部分と比較した。各サンプルセット内では、5つの非接種サンプル(0 CFU/試験部分)、20の低レベル接種サンプル(0.2〜2 CFU/試験部分)、および5つの高レベル接種サンプル(2〜10 CFU/試験部分)が存在した。上記低接種レベルを、段階的陽性結果(上記候補方法または参照方法は、5〜15の陽性結果を生じるもの(25〜75%))を生成するように設計した。
【0185】
上記PIFを地域の流通業者から購入し、ISO 22964:2017に従って分析物の平常の汚染を予めスクリーニングし、FDA BAM Chapter 3によって全好気性細菌数に関して分析した。スクリーニング後、上記マトリクスに、Cronobacter種の株を接種した。検証のために、凍結乾燥した培養物を、上記PIFに接種するために使用した。上記凍結乾燥した培養物を、5% ヒツジ血液を含むtryptic soyアガーからブレインハートインフュージョン(BHI)ブロスへと単一のCronobacter sakazakiiコロニーを移し、上記培養物を35±2℃で18〜24時間インキュベートすることによって調製した。インキュベート後、上記培養物を滅菌凍結保護物質(再構成した無脂肪粉乳)(NFDM)中に希釈し、凍結乾燥システム上に48〜72時間置いた。上記培養物を凍結乾燥システムから取り出した後、上記凍結乾燥培養物を、NFDM中で、段階的陽性結果を生じると予想される低レベルおよび全陽性結果を生じると予想される高レベルへと希釈した。上記マトリクスのバルクロットを接種した。接種後、上記マトリクスを、2週間、室温(24±2℃)で保持して、上記マトリクスにおける生物の平衡化を可能にした。
【0186】
全好気性細菌数を、FDA BAM Ch. 3に従って決定した。低レベル接種物および高レベル接種物におけるCronobacterのレベルを、分析当日にMPNによって決定した。ペア形式のサンプル分析に関しては、上記低レベルMPNを、5×25g 試験部分、上記試験からの20×10g 試験部分、および5×4g 試験部分を評価することによって決定した。高レベル接種物中のCronobacterのレベルを、上記試験からの5×10g 試験部分、5×4g 試験部分、および5×1.5g 試験部分を評価することによって決定した。
【0187】
非ペア形式分析に関しては、上記低レベルMPNを、5×200g 試験部分、上記研究からの20×100g 参照方法試験部分、および5×50g 試験部分を評価することによって決定した。上記高レベル接種物のCronobacterのレベルを、上記研究からの5×100g 参照方法試験部分、5×50g 試験部分、および5×25g 試験部分を評価することによって決定した。各試験部分をBPWで富化し、参照方法手順によって分析した。LCF MPN計算機(バージョン1.6)を使用してMPNを計算するために、上記3種の試験レベルからの陽性の数を使用した。
【0188】
ISO 22964:2017に関しては、10gのPIF試験部分を、90mLのBPW(ISO製剤)で富化し、37±1℃で18±2時間、インキュベートした。インキュベーション後、0.1mLの初代富化物を、10mLのCronobacter選択ブロス(CSB)に移し、41.5±1℃で24±2時間インキュベートした。インキュベーション後、上記CSBのうちの1白金耳を、Chromogenic Cronobacter Isolation (CCI)アガーに染みこませ、41.5±1℃で24±2時間インキュベートした。上記CCIプレートのインキュベーション後、1〜5個の代表的Cronobacter種のコロニー(中程度のサイズの、1mm〜3mmの青緑色から青色のコロニー)を、tryptone soyaアガー(TSA)に移し、35±1℃で18〜24時間インキュベートした。インキュベーション後、代表的コロニー(黄色に着色した1mm〜3mmのもの)に対してオキシダーゼ試験を行い、最終の生化学的確認を、AOAC Official Method 2011.17に従ってVITEK(登録商標) 2 GN Biochemical Identificationカードを使用することによって行った。
【0189】
BAM Ch. 29に関しては、100g PIF試験部分を、2Lのエルレンマイヤーフラスコに添加し、900mLの予め加温した(37℃) BPWで富化し、37±1℃で24±2時間インキュベートした。インキュベーション後、4×40mL アリコートを、4×50 mL コニカルバイアルに移した。上記アリコートを、3,000×gで10分間遠心分離した。各コニカルチューブに関して、上清を吸引し、脂質沈殿物を、滅菌綿棒を使用して除去した。残りのペレットを、200μLのリン酸緩衝化生理食塩水を添加し、懸濁物を最大速度で20秒間ボルテックスにかけて混合することによって再懸濁した。各サンプルに関して、上記アリコートのうちの2つを、CronobacterのPCRスクリーニングのために使用し、上記アリコートのうちの2つを、培養確認のために使用した。
【0190】
PCRスクリーニングに関して、2つのアリコートを、別個の1.5mL 微小遠心分離チューブに移し、3,000×gで5分間遠心分離した。上清および脂質層を除去し、ペレットを、400μLのPREPMAN ULTRA(登録商標)サンプル調製試薬を添加し、懸濁が達成されるまで最大速度でボルテックスにかけて混合することによって、再懸濁した。上記サンプルを、ドライバスインキュベーター中、100℃で10分間熱処理し、次いで、室温へと冷却した。Once 上記サンプルが一旦室温に達したら、上記サンプルを、2分間、15,000×gで遠心分離し、その上清のうちの50μL アリコートを、PCR分析のために新しい微小遠心分離チューブに移した。各サンプルに関して、PCR分析を、内部コントロール(InC)ありおよびなしで行った。上記PCR反応構成要素およびPCRプロトコールは、FDA BAM Ch. 29参照方法に概説されるとおりに倣った。
【0191】
推定PCR結果とは関係なく、各サンプルからの100μLの懸濁した細胞を、2枚のDFI色素生成アガープレートおよび2枚のR&Fアガープレートに染みこませた。DFI色素生成アガープレートおよびR&Fアガープレートを、36±1℃で18〜24時間インキュベートした。インキュベーション後、DFI色素生成アガープレートからの代表的なCronobacterコロニー(薄い緑色から濃い緑色の褐色がかったコロニー、または中心が緑色で縁部が白色から黄色のコロニー)およびR&Fアガープレートからの代表的なCronobacterコロニー(バックグラウンドが赤い、青色から黒色のまたは青色から灰色のコロニー)を、VITEK(登録商標) 2 GN Biochemical Identificationカード(AOAC Official Method 2011.17)およびPCR分析によって生化学的に確認した。
【0192】
全3種のレベルに関して、Cronobacterアッセイと参照方法との間のPOD分析は、上記方法によって得られた陽性結果数の間に、5% レベル統計的有意差がないことを示した(表5〜8)。全3種のレベルに関して、Cronobacterアッセイの推定結果と確認された結果との間でのPOD分析は、分析した全試験部分に関して5% レベルで統計的有意差がないことを示した(表5〜8)。上記研究において使用したPIFの好気性細菌プレート計数は、40 CFU/gであり、これは、上記PIFが、およそ400 CFU(10g)、4,000 CFU(100g)、または12,000 CFU(300g)の、プロセス全体の開始時に存在するバックグラウンド細菌叢を有することを示した。
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】