特表2021-511177(P2021-511177A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-511177眼底画像生成用のフルフィールドOCT方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-511177(P2021-511177A)
(43)【公表日】2021年5月6日
(54)【発明の名称】眼底画像生成用のフルフィールドOCT方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20210409BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20210409BHJP
   A61B 3/12 20060101ALI20210409BHJP
【FI】
   A61B3/10 100
   G01N21/17 625
   A61B3/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-560574(P2020-560574)
(86)(22)【出願日】2019年1月23日
(85)【翻訳文提出日】2020年9月18日
(86)【国際出願番号】EP2019051601
(87)【国際公開番号】WO2019145348
(87)【国際公開日】20190801
(31)【優先権主張番号】18153564.2
(32)【優先日】2018年1月26日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520272879
【氏名又は名称】ヴィゾテック・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Visotec GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100163902
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 奈月
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・コッホ
(72)【発明者】
【氏名】ゲレオン・ヒュットマン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルゲ・ズートカンプ
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリク・シュパー
(72)【発明者】
【氏名】ディールク・ヒルマン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ミュンスト
【テーマコード(参考)】
2G059
4C316
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB12
2G059EE02
2G059EE09
2G059FF02
2G059GG02
2G059JJ05
2G059JJ12
2G059JJ22
2G059KK04
2G059LL01
2G059MM01
2G059NN06
4C316AA09
4C316AB03
4C316AB11
4C316FB29
4C316FY01
4C316FY05
4C316FY06
4C316FY10
(57)【要約】
本発明は、眼底(31)の画像を生成するためのフルフィールドOCT方法に関し、短コヒーレント光(22)を発光し、物体ビーム路(25)及び参照ビーム路(24)に分離する。 物体ビーム路(25)は眼底(31)に向けられる。参照ビーム路(24)と物体ビーム路(25)の干渉が画像センサ(32)上で生じるように、参照ビーム路(24)及び眼底(31)によって反射された物体ビーム路(25)の一部は、画像センサ(32)に向けられ、参照ビーム路(24)は、物体ビーム路(25)から逸脱した角度で画像センサ(32)に衝突する。画像センサ(32)に衝突する前に、参照ビーム路(24)は、参照ビーム路(24)内の色収差を低減するために、光学補正要素(27)に衝突する。強度情報及び位相情報は、画像センサの取り込みから決定される。眼底の焦点補正された画像が計算される。本発明は、また、前記方法を実行するのに適したシステムに関する。眼の水晶体の屈折力にビーム路を事前に適合させることなく、眼底の画像を取り込むことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼底(31)の画像表現を生成するフルフィールドOCT方法であって、
a.短コヒーレント光(22)を発光し、
b.前記短コヒーレント光(22)を、物体ビーム路(25)及び参照ビーム路(24)に分離し、当該物体ビーム路(25)は、前記眼底(31)に導かれ、
c.前記眼底(31)から画像センサ(32)に反射させ、前記参照ビーム路(24)及び前記物体ビーム路(25)の干渉が画像センサ(32)に生じるように、前記参照ビーム路(24)及び前記物体ビーム路(25)の一部を導き、当該参照ビーム路(24)は、物体ビーム路(25)から生じた向きで画像センサ(32)に当たり、前記参照ビーム路(24)は、前記参照ビーム路(24)内での色分散の減少のために光学補正素子(27)に当たり、
d.前記画像センサ(32)の記録から強度情報及び移送情報を確認し、
e.焦点補正された前記眼底(31)の画像を計算する。
【請求項2】
前記参照ビーム路(24)の向きは、反射素子(26)を用いて外れる
ことを特徴とする請求項1に記載のフルフィールドOCT方法。
【請求項3】
前記反射素子(26)の上流の前記参照ビーム路(24)は、前記参照素子(26)の下流の前記参照ビーム路(24)から分かれる
ことを特徴とする請求項2に記載のフルフィールドOCT方法。
【請求項4】
前記参照ビーム路(24)の光路の長さは、可変である
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載のフルフィールドOCT方法。
【請求項5】
前記光学補正素子(27)は、ビームスプリッタ(23)及び前記反射素子(26)の間に配置される
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のフルフィールドOCT方法。
【請求項6】
前記光学補正素子(27)は、透過回路格子として又は反射回路格子として統合された
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載のフルフィールドOCT方法。
【請求項7】
前記光学補正素子(27)は、前記光学補正素子(27)から出る前記参照ビーム路(24)のパルスフロントの法線が、前記物体ビーム路(25)の伝搬方向との角度を含むように設定され、
前記参照ビーム路(24)の伝搬方向及び前記物体ビーム路(25)の伝搬方向との間の角度よりも小さい
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1に記載のフルフィールドOCT方法。
【請求項8】
患者の既知の屈折障害により生じる前記焦点補正された画像を計算するときに、位相係数が利用される
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1に記載のフルフィールドOCT方法。
【請求項9】
前記画像センサ(32)は、800μ秒以下、好ましくは500μ秒以下、より好ましくは300μ秒以下で正面像を記録するように形成される
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1に記載のフルフィールドOCT方法。
【請求項10】
前記物体ビーム路に配置された光学素子(23,28)は固定である
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1に記載のフルフィールドOCT方法。
【請求項11】
記録の際、固定光(39)を前記患者が見る
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1に記載のフルフィールドOCT方法。
【請求項12】
前記固定光(39)は、フォーカスインディペンデントな光である
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1に記載のフルフィールドOCT方法。
【請求項13】
記録装置(15)及びコンピュータ装置(19)を備えるフルフィールドOCTシステムであり、
前記記録装置(15)は、短コヒーレント光(22)を発光する光源(20)と、前記短コヒーレント光(22)を物体ビーム路(25)及び参照ビーム路(24)に分けるビームスプリッタ(23)とを有し、
前記物体ビーム路(25)は、記録装置(15)の出口開口に導かれ、
画像センサ(32)を有し、
物体に反射した前記参照ビーム路(24)及び前記物体ビーム路(25)は、干渉し、
前記参照ビーム路(24)は、前記物体ビーム路(25)から外れた角度で、前記画像センサ(32)に当たり、
前記参照ビーム路(24)は、前記参照ビーム路内での色分散減少のために光学補正素子前記画像センサ(32)の発生の前に前記光学補正素子(27)に当たり、
前記コンピュータ装置(19)は、画像センサ(32)で記録された画像データから焦点補正画像を計算するように構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼底の画像表現を生成するフルフィールドOCT方法及びフルフィールドOCTシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
人間の眼の眼底は、光干渉断層計(OCT:optical coherence tomography)を用いて検査される。これにより、表面の下の組織構造の画像情報を得ることができる。OCT計測では、短コヒーレント光が、物体ビーム路及び参照ビーム路に分かれる。物体ビーム路は、眼底に導かれる。眼底で反射された物体ビーム路の一部は、参照ビーム路に干渉する。眼底の組織構造にある散乱中心の深さ位置の情報は、参照パターンから得ることができる。
【0003】
従来のOCT結像では、平面像(正面像)を得るために、物体はOCTビームを利用してスキャンされる。フルフィールドOCTは、従来のOCT方法と比較し、一の記録で正面像を記録する画像センサを用いる点で異なる。
【0004】
DE10/2015/113465A1は、物体ビーム路及び参照ビーム路が、画像センサに干渉を与える、眼底検査のためのフルフィールドOCT方法を開示する。参照ビーム路は、強度情報及び位相情報が画像センサの計測値から得られるように、異なる角度で画像センサに入る。画像センサの一の記録は、物体の一部の正面像を生成する。参照ビーム路の光路の長さを変換することで、異なる深さ位置からスライス画像を得ることができる。複数のスライス画像を合わせることにより、三次元画像を形成することができる。
【0005】
DE10/2015/113465A1では、物体ビーム路の光学素子は、眼底が画像センサで焦点を合わせて結像されるように調整される。異なる眼の各計測に先立ち、画像センサで鮮明な画像表現を取得するため、物体ビーム路は、再調整される。これは、物体ビーム路が眼の屈折素子(レンズ、角膜)を通過するためである。屈折素子の撮像特性が全ての眼で同一でないため、焦点がずれており、またそのため、画像センサの調整を行わない場合に焦点外画像が発生する。
【0006】
さらなるフルフィールドOCT方法は、www.nature.com/scientificreportsで公開されたHillmannらによる“Aberration−free volumetric highspeed imaging of in vivo retina”(Scientific Reports − 6:35209 − DOI: 10.1038/srep35209,1−11頁,2016年10月)に開示される。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、眼底の画像の記録を容易に実現する、フルフィールドOCT方法及びシステムを提供する目的に基づく。上述した従来技術から進展し、目的は、独立請求項の構成により達成される。有利な実施形態は、従属請求項により特定される。
【0008】
本発明の方法によると、短コヒーレント光が発光する。この短コヒーレント光は、物体ビーム路及び参照ビーム路に分かれ、物体ビーム路は、眼底に導かれる。参照ビーム路及び眼底を反射した物体ビーム路の一部は、参照ビーム路及び物体ビーム路との干渉が画像センサで生じるように画像センサに導かれる。参照ビーム路は、物体ビーム路から外れる角度で画像センサに当たる。画像センサへの入射の前に、参照ビーム路は、参照ビーム路での色分散のために光学補正素子に当たる。画像センサの記録から強度情報及び位相情報が確定され、焦点補正された眼底の画像が計算される。
【0009】
したがって、本発明は、物体ビーム路の光学素子を用いた補正でなく、補正計算を用いたフルフィールドOCT計測の画像収差の補正を提案する。本発明は、物体ビーム路の光学素子の調整を不要とすることができる。この簡易化は、物体ビーム路の知識がない者による眼底の画像表現の記録を可能とする。
【0010】
強度情報及び位相情報の利用により、原則として、各光波の焦点誤差を計算によって排除できることは、教科書(J.W. Goodmann: Introduction to Fourier Optics; Schnars U, Jueptner W (2010). Digital Holography (Berlin, Heidelberg: Springer))の知識である。後述の理由により、直接このような計算の補正方法をフルフィールドOCT方法することはできない。
【0011】
DE 10 2015 113 465 A1のフルフィールドOCT計測では、完成画像は、一の記録で記録される。したがって、各光波に寄らず、空間的に解決された情報を補正の計算に含めることができる。空間的に解決された情報を考慮することは、物体ビーム路及び参照ビーム路が画像センサに入射する偏向角度が、しばしば色分散に付随するため、より困難になる。これは、特に、物体ビーム路が画像センサの平面に焦点が合っていない場合にも当てはまる。干渉項は、参照ビーム路と物体ビーム路の角度の結果として、搬送波周波数によりエンコードされる。しかしながら、搬送波周波数は、波長に左右されるため、周波数空間で色の不鮮明を引き起こす。これは、効果的な補正を妨げる。
【0012】
本発明では、参照ビーム路の光学補正素子により、色の不鮮明を元に戻すことができる。本発明に係る方法を適用すると、焦点誤差の計算による除去は、もはや、色の不鮮明により、複雑ではない。
【0013】
フルフィールドOCTとは反対に、走査OCTにおいて、現状の計測において十分な精度の位相情報が提供されないため、走査OCTでは、焦点誤差の計算による除去は、不可能である。
【0014】
本発明の方法によれば、物体ビーム路が、画像センサへ直角に入射するように実行することができる。これにより、参照ビーム路とアレイの平面の間の角度は、直角とはならない。物体ビーム路が画像センサに直角に当たらない実施形態も可能である。
【0015】
短コヒーレント光が通るビームスプリッタを用いて、短コヒーレント光を物体ビーム路と参照ビーム路に分けることができる。ビームスプリッタは、物体ビーム路及び/又は参照ビーム路が、異なる伝搬の方向で、二度ビームスプリッタを通過するように、配置することができる。物体ビーム路は、眼底によりビームスプリッタの方向に返されることができる。
【0016】
反射素子は、参照ビーム路を偏向させるために用いられ、特に、前述の参照ビーム路をビームスプリッタの方向に返すために用いられ、参照ビーム路内に配置されることができる。反射素子の上流の参照ビーム路は、反射素子に到達するビーム路と反射素子から発するビーム路とが交差しないように、反射素子の下流の参照ビーム路と分離することができる。これは、参照ビーム路の一部が、反射素子に近接することに関係する。反射素子からより遠くで、参照ビーム路の対向部分が再び重なり得る。光学素子は、プリズム、特に、ルーフプリズムとなり得る。プリズムのルーフエッジを通って延長する平面は、参照ビーム路の到着点及び流出点の間に配置され得る。
【0017】
参照ビーム路の光路の長さは、変更することができる。特に、参照ビーム路の光路の長さは、物体ビーム路の光路の長さを同時に変更することなく、変更することができる。例として、反射素子とビームスプリッタの間の距離が変更されるように、反射素子を動かすことができる。反射素子及びビームスプリッタの間の距離が長くなると、参照ビーム路は、ビームスプリッタから反射素子への途中で、延長した経路を2回通過し、再度戻る。参照ビーム路上の光路の長さを変更することで、眼底の組織で散乱中心を発見できる散乱中心である深度位置を設定することができる。この方法は、複数の深度位置で正面部を記録されるように実行することができる。複数の正面部を合成し、眼底を表す三次元画像を形成することができる。
【0018】
光学補正素子は、ビームスプリッタ及び反射素子の間に配置され得る。光学補正素子は、参照ビーム路が光学補正素子を一度のみ通過するように配置され得る。特に、光学補正素子を通過する経路は、参照ビーム路において、反射素子及びビームスプリッタの間に実装され得る。
【0019】
光学補正素子は、透過回折格子であり得る。透過回折格子である場合、参照ビーム路は、光学補正素子を通過することができる。また、光学補正素子を、反射回折格子として設計することも可能である。この場合、参照ビーム路は、光学補正素子で反射することができる。透過回折格子及び反射回折格子は、物体ビーム路及び参照ビーム路が、ビームスプリッタ及び眼の間をまたがる平面と反射素子とに対して、それぞれ垂直に配置される格子の列を含む。
【0020】
透過回折格子は、参照ビーム路の偏光が1°〜5°、好ましくは、2°〜4°の間となるように設計され得る。透過回折格子又は反射回折格子は、ミリメートル当たり、25〜100の回折格子の列、好ましくは、ミリメートル当たり、500〜80の回折格子の列を有することができる。
【0021】
特に、色偏差の低減は、光学補正素子から発生し、参照ビーム路の伝搬方向から外れた参照ビーム路のパルスフロントから明らかにすることができる。特に、光学補正素子は、光学補正素子から出る参照ビーム路のパルスフロントの法線が、参照ビーム路の伝搬方向及び物体ビーム路の伝搬方向の間の角度よりも小さい角度に物体ビーム路の伝搬方向の角度を含むように設定することができる。特に、光学補正素子から現れる参照ビーム経路のパルスフロントの法線は、物体ビーム路の伝搬方向に平行であってよい。
【0022】
フルフィールドOCTシステムのこのような光学構造の結果、画像センサで、個々のピクセル(スペックル)内に干渉パターンが生じ、これにより、対応する深度での後方散乱の振幅及び関連する位相角の両方を確定することができる(DE 10 2015 113 465 A1参照)。人の眼の水晶体及びフィルフィールドOCT構造の光学素子を通る物体ビーム路の理想的な画像形成の場合、眼底の物体点から放出された球面波は、画像センサの画像点を形成する収束球面波に変換される。
【0023】
一例として、フルフィールドOCTシステムの物体ビーム路は、眼底の物体点が眼(水晶体及び角膜)の屈折要素によって無限遠に撮像されるとき、画像センサでの理想的な結像が設定されるように構成し得る。以下では、眼の屈折要素を合わせて、眼の水晶体とする。患者における屈折障害の場合、眼の水晶体は、無限遠にまたは無限遠からではなく、眼の前または後ろの平面に結像される。フルフィールドOCTシステムの物体ビーム路の場合、このような収差は、画像平面が画像センサの前または後ろに位置することを意味する。
【0024】
フーリエ光学により、収差は、位相誤差として表されることが知られている。画像収差は、ビーム路の光の位相面のゆがみを引き起こす。焦点誤差、すなわち、誤った画像面への結像は、二次のゼルニケ多項式として表すことが可能であり、また、焦点誤差は、二次位相係数を引き起こす。球面収差又は非点収差等の高次収差は、それに応じたより複雑な関数で表すことができる。発明に係る方法は、誤った画像面への結像に限らず、高次収差も補正されるように実行することができる。特に、非点収差を補正することができる。
【0025】
近軸近似では、物体点から発する球面波面は、放射線波面で近似される。したがって、放射線波面は、二次位相係数によって、平面波面または任意の半径の収束波面に変換することができる。二次位相係数が小さすぎる又は大きすぎる場合、物体は、画像面に正しく結像されない。したがって、物体点の複数の線は、画像面の前又は後ろで交わる。したがって、物体点は、画像面では、色あせて表れる。
【0026】
フルフィールドOCTの範囲で計測されるのは、強度ばかりでなく、位相でもあるため、焦点誤差から生じた位相誤差の数値的に消去することが可能である。この目的で、画像データは、フーリエ変換され、フーリエ空間で位相係数が加算される。このように修正されたスペクトラムが、実空間に変換され、再フォーカスされた(鮮明な)目的の画像が得られる。これらのステップを利用し、眼底の焦点が補正された画像の計算を実現することができる。
【0027】
最も単純な場合では、患者の屈折誤差が既知である。次に、補正に必要な位相係数は、ジオプターの屈折誤差から直接決定することができる。このデフォーカスに関し、これは二次位相係数ΦDefokusであり、半径rAperturに対して計算することができる。
【0028】
【数1】
【0029】
ここで、Dは、ジオプターの屈折障害であり、λは、計測システムの中心波長である。したがって、本発明に係る眼底の焦点補正の画像計算は、補正中に使用される位相係数を導くために患者の既知の屈折障害を利用することで、簡略化することができる。
【0030】
したがって、一度、画像センサで画像データが記録されると、画像データから眼底の焦点補正画像の計算のために利用された計算を実行することができる。計算は、記録装置から独立するコンピュータ装置で実行される。画像データは、データ接続を介して、コンピュータ装置に送信することができる。
【0031】
焦点誤差の計算的除去は、補正のため、位相角は画像を記録中に維持すると仮定する。生きたサンプルは、サンプルの動作により、位相関係は短期間で失われる。一例として、眼底は、位相角が通常、数百μsしか維持しない。本発明の方法では、物体平面の完成画像は、800μs未満、好ましくは500μs未満、より好ましくは300μs未満の期間で記録することができる。特に、完成画像は、画像センサの一の露光時間内に取得することができる。
【0032】
画像センサは、例えば、長方形配列に形成される複数のピクセルを含む。複数のピクセルは、例えば、500〜5000、好ましくは、100〜3000の矩形が形成されるように配置される。各ピクセルの幅は、例えば、1μm〜8μm、好ましくは2μ〜5μmのレンジであってよい。短コヒーレント光である光源は、例えば、スーパールミネッセントダイオードである。
【0033】
方法は、採用される装置の物体ビーム路に配置される光学素子によって達成され得る。異なる表現では、装置の通常の操作の範囲内では、物体ビーム路にある装置の光学素子の調整により、画像面を移動させることは可能ではない。これは、例えば、装置の製造またはメンテナンスの間等、通常の操作外での調整を除外するものではない。調整のオプションを除くことで、熟練していないスタッフに計測の実行を容易にすることができる。
【0034】
固定光は、患者に記録中に見る方向を示すため、患者の眼に当てることができる。患者は、固定光の方向を見ることができ、それによって記録に適した見る方向を選択する。
【0035】
本発明に係る方法で、物体ビーム路を画像平面にフォーカスすることが省略される場合、これは、固定光の広がる範囲が患者にはっきりと見えないように、固定光に影響を与える可能性がある。したがって、フォーカスインディペンデントである固定光の使用は、本発明に係る方法に有利である可能性がある。固定光の画像面を患者の網膜に関連付けることなく固定光の鋭い知覚が可能である場合、固定光は、“フォーカスインディペンデント”といわれる。フォーカスインディペンデントである固定光の一例は、直径が小さく眼に合わせたレーザー光である。このようなレーザー光は、光源及び眼の距離とは無関係に、常に、眼に鮮明な点として受け取られる。例えば、コニカルレンズ(アキシコン)又は中空シリンダを通って導かれる光源の光により、フォーカスインディペンデントである固定光の生成の他の例がある。
【0036】
参照ビーム路内の色偏差を削減するために、仮に、参照ビーム路を画像センサへの入射前に光学補正素子へ通過させるとしても、フォーカスインディペンデントである固定光を使用する方法は、独立した発明内容がある。一方、従来の眼の計測方法では、計測自体と固定光の鋭い知覚の両方が要求され、患者は視線の向き及び焦点を正しく設定することが要求され、患者はこの方法の範囲内でのみ視線の方向に集中することができる。本発明は、これにより、観察の方向及び焦点に同時に集中するように要求される患者から生じる測定誤差の回避が可能になることが認められた。正しく焦点を合わせることが難しいと感じる患者も、視線の方向を変更する傾向があることが発見された。焦点を設定することで起こりうる問題が適用されなくなるため、これらの患者はより容易になる。
【0037】
本発明は、さらに、記録装置及びコンピュータ装置を有するフルフィールドOCTシステムに関する。記録装置は、短コヒーレント光を発光する光源、及び、短コヒーレント光を物体ビーム路及び参照ビーム路に分けるビームスプリッタを含む。物体ビーム路は、記録装置の出口開口部に導かれる。参照ビーム路及び物体によって反射された物体ビーム路の一部は、画像センサ上で干渉され、参照ビーム路は、物体ビーム路から偏向する角度で画像センサに当たり、参照ビーム路内の色偏差を低減するため、参照ビーム路は、画像センサへの入射前の光学補正素子に当たる。コンピュータ装置は、画像センサで記録された画像データから物体の焦点が補正された画像を計算するように構成される。
【0038】
発明に係るシステムの記録装置は、特に、人間の眼の後部の画像表現の生成に利用することができる。記録装置は、患者の眼の画像表現が記録される患者自身が持つことができように設計される手持ち装置として構成されることができる。手持ち装置は、手持ち装置の通常操作時に、物体ビーム路の光学素子が調整できないように構成することができる。コンピュータ装置は、手持ち装置とは離れて配置することができる。画像データが手持ち装置からコンピュータ装置に送信されることで、データラインが作られる。
【0039】
システムは、本発明に係る方法の文脈に説明される追加的な特徴を用いて、進展することができる。方法は、本発明に係るシステムの文脈に説明される追加的な特徴を用いて、進展することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明に係るフルフィールドOCTシステムの概略図を示す。
図2図1の手持ち装置のビーム路の図を示す。
図3】焦点補正画像の演算の概略図を示す。
図4図2の手持ち装置の他の形態を示す。
図5】フォーカスインディペンデントである固定光の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下において、本発明は、添付の図面を参照して、有益な実施形態に基づいて例示的に説明される。
【0042】
図1に示す本発明に係るフルフィールドOCTシステムでは、眼底が結像の対象である患者14は、手に手持ち装置15を保持する。手持ち装置15は、患者14が手持ち装置15内の固定光が見えるように患者14の眼16の前に配置される。一度、固定光に基づいて、患者14が視線の方向を設定すると、眼底の画像表現の記録のトリガに利用するスイッチ17を作動する。
【0043】
一度、記録が完了すると、データネットワーク18を介して画像データが、患者14と離れて配置される中央コンピュータ19に送信される。例として、中央コンピュータ19は、フルフィールドOCTシステムを運営するサービスプロバイダの本部に配置される。システムは、中央コンピュータ19が、異なる場所又は異なる設定で動作される多数の手持ち装置15から画像データを受信するように構成することができる。特に、焦点補正に要求されるコンピュータステップは、中央コンピュータ19で実行することができるように構成される。発明の代替え的な実施形態は、手持ち装置15自身が焦点補正のコンピュータステップを実行することができるように構成される。
【0044】
図2に示すように、手持ち装置15は、例えば、コヒーレント長が10μmの短コヒーレント光を発光するスーパールミネッセントダイオード20を含む。第1レンズ21は、ビームスプリッタ23に入射する短コヒーレント光の平行ビーム路22の生成に利用される。ビームスプリッタ23は、ショートコヒーレント光22を参照ビーム路24及び物体ビーム路25に分けるために利用される。
【0045】
参照ビーム路24は、ルーフプリズム26に入射し、ルーフ面を通ってプリズム26内に入り、プリズム26の斜面で反射し、他方のルーフ面を通るが平行なオフセットを伴って、ルーフプリズム26から反対の方向に再び出る。参照ビーム路24は、透過回折格子27に入射し、透過回折格子27により、ビームスプリッタ23の方向に戻される。
【0046】
スーパールミネッセントダイオード20からの進行で、物体ビーム路25は、ビームスプリッタ23を通り、第2レンズ28及び終点29を通り、患者の眼16に導かれる。物体ビーム路25は、眼の水晶体30を通って、眼16の内部に入り、周辺の眼底31を照らす。
【0047】
眼底31によって跳ね返された短コヒーレント光22の成分は、眼の水晶体30及び第2レンズ28を通って、ビームスプリッタ23に戻り、物体ビーム路は、前記ビームスプリッタで画像センサ32の方向に偏向される。物体ビーム路25の光学素子は、眼底31が画像センサ32上で結像されるように配置される。これは、画像センサ32上の画像点34と対応する物体点33の例を用いて、図2に示される。
【0048】
参照ビーム路24は、ビームスプリッタ23及び画像センサ32の間の物体ビーム路25に重なる。物体ビーム路25及び参照ビーム路24の間の画像センサ32の平面には、干渉が存在する。干渉パターンは、画像センサ32を用いて記録される。
【0049】
画像センサ32に入射するとき、物体ビーム路25及び参照ビーム路24の間に角度がある。物体ビーム路25は、直角で画像センサ32に当たる。画像センサ32に当たるとき、参照ビーム路24は、画像センサ32に対して90°よりもわずかに小さい角度、例えば、87°の角度を含む。
【0050】
参照ビーム路24の方向は、透過回折格子27により設定される。透過回折格子27を通過する前、参照ビーム路24は、画像センサ32に対し直角方向の方向へ伝搬する。参照ビーム路24は、透過回折格子27を通過する際、伝搬方向を変更する。ここで、透過回折格子は、色偏差を避けるように設計される。他の表現では、透過回折格子27は、透過回折格子27から出る参照ビーム路24のパルスフロントが、画像センサ32に平行となるように設計される。したがって、パルスフロントは、参照ビーム路の伝搬方向に対して直角ではなく、参照ビーム路24方向とは異なる角度を含む。透過回折格子27は、本発明の目的に含まれる範囲内で、光学補正素子を形成し、それにより、参照ビーム路24内の色偏差が減少される。
【0051】
これは、物体点33から生じるマルチスペクトル波動場のフーリエ空間内での不鮮明を防止する。これはまた、図2に示すのとは異なり、物体ビーム路25が画像センサ32にフォーカスされないが、焦点誤差が生じた場合に当てはまる。したがって、色の不鮮明によって結果が損なわれることなく、焦点補正画像を計算することができる。
【0052】
図2は、物体点33が目の水晶体30によって、無限遠に結像される物体ビーム路25を示す。したがって、眼16は、屈折障害を持たない。手持ち装置15は、このように、眼16が屈折障害を持たない場合に、画像センサ32上のフォーカスされた画像が得られるように調整される。
【0053】
焦点誤差は、画像平面が、画像センサ32に対応せず、画像センサ32の前又は後ろの平面に位置する範囲の中で、眼16の屈折障害の場合に生じる。画像センサ32に記録された画像は、不鮮明に見える。
【0054】
焦点誤差の補正ステップは、図3を基準に説明される。眼底33の各物体点31は、発散する球面波36の始点と考えることができる。発散する球面波36は、図3において、合わせてレンズ部35として図示される眼の水晶体30及び第2レンズ28により、収束球面波37に変更される。屈折障害がない眼の水晶体30の場合、収束球面波37は、画像センサ32上の画像点34に開口する。
【0055】
仮に、眼16が屈折障害を有する場合、収束球面波は、レンズ部35に続いて正しい屈折角度にならず、画像点は、画像センサ32の前又は画像センサ32の後ろのいずれかにある。図3は、強く湾曲し、画像点が画像センサ32の前に位置する収束球面波38に基づいて図示される。
【0056】
このような焦点誤差の場合、眼底33の焦点補正画像の生成のため、画像センサ22によって記録された色があせた画像データは、初め、中央コンピュータ19に送信される。中央コンピュータ19は、画像データをフーリエ変換し、これによりフーリエ空間に適切な位相係数が加えられる。このように変換されたスペクトラムは、実空間に変換され、物体の再フォーカスされた(鮮明な)画像が得られる。参照ビーム路24は、透過回折格子27によって彩色的に補正されるため、補正の計算は、短コヒーレント光22の全ての波長を含んで実行することができる。
【0057】
図4は、手持ち装置15の固定光39を図示する。眼の水晶体30は、眼底31から、無限遠に物体点33を結像するため、眼は屈折障害を持たない。固定光39は、屈折障害なく、眼16に焦点が認識されるように配置される。
【0058】
図5は、異なる軸位置で認識される固定光39の実施形態を示す。光源40から発光される光は、各光線が中空シリンダ41内で、一度、正確に反射するような寸法の中空シリンダ41に導かれる。光が鋭くに区切られたスポットとして認識される長さ42の軸方向断面は、中空シリンダ41の反対側に生じる。これは、焦点から独立した固定光39の一例であり、手持ち装置15の光学素子の調整を必要とせずに、屈折障害を有する患者により、フォーカスされると理解することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】