特表2021-511625(P2021-511625A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-511625電気化学構造におけるデンドライトおよび凹凸抑制のための装置、システムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-511625(P2021-511625A)
(43)【公表日】2021年5月6日
(54)【発明の名称】電気化学構造におけるデンドライトおよび凹凸抑制のための装置、システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/44 20060101AFI20210409BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20210409BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20210409BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20210409BHJP
   H01M 10/28 20060101ALI20210409BHJP
   H01M 10/30 20060101ALI20210409BHJP
   H01M 10/12 20060101ALI20210409BHJP
   H01M 10/42 20060101ALN20210409BHJP
【FI】
   H01M10/44 A
   H01M10/052
   H01M10/0585
   H01M4/587
   H01M10/28
   H01M10/30 Z
   H01M10/12 Z
   H01M10/42 P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2020-538848(P2020-538848)
(86)(22)【出願日】2019年1月14日
(85)【翻訳文提出日】2020年9月11日
(86)【国際出願番号】US2019013533
(87)【国際公開番号】WO2019140401
(87)【国際公開日】20190718
(31)【優先権主張番号】62/617,103
(32)【優先日】2018年1月12日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】519014213
【氏名又は名称】イオントラ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】コノプカ ダニエル エイ
(72)【発明者】
【氏名】サルカール ルーベン
【テーマコード(参考)】
5H028
5H029
5H030
5H050
【Fターム(参考)】
5H028AA10
5H028BB10
5H028BB17
5H028HH10
5H029AJ05
5H029AK03
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM02
5H029BJ03
5H029CJ16
5H029HJ16
5H030BB01
5H030BB06
5H030BB09
5H030DD11
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA07
5H050CB08
5H050GA18
5H050HA16
(57)【要約】
電池の陽極等の電気化学セルの電極全体に電界および/または磁場を誘導することを伴う、方法、ならびに関連する電池および電池充電器である。電極にわたる電場および電流は、この電流が典型的に電池を充電する際に印加されるイオン充電電流を横断するため、本明細書において横断電流と呼ばれ得る。電場および電流は電極全体で、または電極の別個の点もしくは複数の点においてACエネルギー、例えばAC電流を接続することから誘導され得る。誘導された電場および電流は他の利点の中でも、ACエネルギーを用いない従来の電池において経験するデンドライトの成長を抑制し得る。
【選択図】図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充電方法であって、
第一の電極と第二の電極とを含む電池において、前記第一の電極および前記第二の電極のうち一方に直流(DC)充電電流を印加することと、
前記DC充電電流を印加することとともに、前記第一の電極および前記第二の電極のうち少なくとも一方に交流(AC)エネルギーを印加することと、
を含む、充電方法。
【請求項2】
前記第一の電極および前記第二の電極のうち少なくとも一方への前記ACエネルギーの印加は表面の不規則性を抑制する、請求項1に記載の充電方法。
【請求項3】
前記第一の電極に前記ACエネルギーを印加することをさらに含み、前記第一の電極は陽極である、請求項1に記載の充電方法。
【請求項4】
前記陽極に前記DC充電電流を印加することをさらに含む、請求項3に記載の充電方法。
【請求項5】
前記DC充電電流は一定またはパルスの少なくとも一方である、請求項4に記載の充電方法。
【請求項6】
前記陽極全体に前記ACエネルギーを印加することをさらに含み、前記ACエネルギーはAC電流を含む、請求項3に記載の充電方法。
【請求項7】
前記AC電流の周波数は100Hzから300GHzの間である、請求項6に記載の充電方法。
【請求項8】
前記陽極の一点において前記ACエネルギーを印加することをさらに含む、請求項3に記載の充電方法。
【請求項9】
陽極の共振に基づいて前記ACエネルギーを印加することをさらに含む、請求項1に記載の充電方法。
【請求項10】
ある周波数で前記陽極に前記ACエネルギーを印加することと、
前記周波数を調整することと、
をさらに含む、請求項3に記載の充電方法。
【請求項11】
方法であって、
複数の層を備える電池セルの電極に交流(AC)波形を印加することであって、前記AC波形は前記電池セルの前記複数の層の少なくとも一つの層に電気力学的効果を導入する、印加すること、
を含む、方法。
【請求項12】
前記電気力学的効果は動電効果を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記AC波形の存在下で、前記電池セルの前記電極に充電電流を印加することであって、前記充電電流は前記AC波形とは異なる、印加すること、をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記電池セルの前記電極は陽極である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記電池セルの前記複数の層のうち前記少なくとも一つの層は陽極と電解質層との間に固体電解質相間(SEI)層を備える、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記SEI層への前記電気力学的効果は前記SEI層内の一または二以上のデンドライトの成長を低減させることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記電気力学的効果は前記電池セルの電解質層内の金属の堆積を分解することを含み、前記金属の堆積は前記電池セルの前記電極と導電性電気通信をしない、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記誘導された電気力学的効果は前記電極の表面上の複数の高電流密度区域および複数の低電流密度区域をシフトすることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記AC波形は前記電極との単一の接触点を通じて前記電池セルの前記電極に印加される、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記AC波形は前記AC波形の放射を通じて前記電池セルの前記電極に印加される、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
前記電極はグラファイトを含み、前記電気力学的効果はグラファイト電極の湿潤を誘導することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
前記AC波形は連続波、パルス波、または連続的に変化する波のうち一つを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項23】
前記電気力学的効果は前記電池セルの前記電極の局所的な電流密度および電位勾配を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項24】
前記電池セルはリチウムイオン電池、リチウム金属電池、リチウムシリコン電池、亜鉛電池、ニッケル電池、または鉛蓄電池のうち一つを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項25】
前記電池セルの前記複数の層は少なくとも前記電極に隣接する誘電体層および電極界面で電位を変更し、電荷分布を変化させるように構成された修正された導電層を備える、請求項11に記載の方法。
【請求項26】
前記電気力学的効果は前記電極の表面に付着した一または二以上のデンドライトを抑制および分解することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項27】
電池充電器であって、
第一の導体と第二の導体とを含む電源であって、前記電源は前記電池充電器に動作可能に結合された電池の第一の電極および第二の電極のうち一方に前記第一の導体を通じて直流(DC)充電電流を印加するように構成される、電源、を含み、
前記電源は前記動作可能に結合された電池の前記第一の電極および前記第二の電極のうち少なくとも一方に前記第二の導体を通じて交流(AC)エネルギーを印加するようにさらに構成される、
電池充電器。
【請求項28】
前記第一の導体および前記第二の導体は前記DC充電電流および前記ACエネルギーがそれを通じて前記第一の電極および前記第二の電極のうち一方に印加される共通の接続点に動作可能に結合される、請求項27に記載の電池充電器。
【請求項29】
前記ACエネルギーはAC電流である、請求項27に記載の電池充電器。
【請求項30】
前記AC電流の周波数は100Hzから300GHzの間である、請求項29に記載の電池充電器。
【請求項31】
前記電源は前記第一の電極に前記第二の導体を通じて前記ACエネルギーを印加するようにさらに構成され、前記電池は前記第一の電極に動作可能に結合されたパターニング層をさらに備え、前記パターニング層は前記ACエネルギーの存在下で前記第一の電極の共振に影響を及ぼす、請求項27に記載の電池充電器。
【請求項32】
前記DC充電電流は一定またはパルスのうち少なくとも一方である、請求項27に記載の電池充電器。
【請求項33】
電池であって、
第一の電極と、
第一の側面と第二の側面とを含むイオン輸送層であって、前記第一の側面は前記第一の電極に動作可能に結合される、イオン輸送層と、
前記イオン輸送層の前記第二の側面に動作可能に結合された第二の電極と、
前記第一の電極に動作可能に結合されたパターニング層であって、充電または放電エネルギーから明確にACエネルギーを受け取るように構成される、パターニング層と、
を備える、電池。
【請求項34】
前記第一の電極と前記パターニング層との間に誘電体層をさらに備える、請求項33に記載の電池。
【請求項35】
前記第一の電極は陽極である、請求項34に記載の電池。
【請求項36】
前記陽極と前記イオン輸送層との間に固体電解質相間(SEI)をさらに備える、請求項35に記載の電池。
【請求項37】
前記パターニング層は前記第一の電極の共振に影響を及ぼす、請求項33に記載の電池。
【請求項38】
前記イオン輸送層は電解質である、請求項33に記載の電池。
【請求項39】
前記ACエネルギーはAC電流である、請求項33に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
この特許協力条約(PCT)出願は、2018年1月12日に出願された「APPARATUS, SYSTEM AND METHOD FOR DENDRITE AND ROUGHNESS SUPPRESSION」と題する米国特許出願第62/617,103号に関連し、またこれに基づく優先権を主張するものであり、その内容の全体が全ての目的のために参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
この出願はまた2017年7月13日に出願された「ELECTROCHEMICAL METHODS, DEVICES AND COMPOSITIONS」と題する米国非仮特許出願第15/649,633号の一部継続出願であり、また2016年7月13日に出願された「ELECTROCHEMICAL METHODS, DEVICES AND COMPOSITIONS」と題する米国仮特許出願第62/361,650号に対する米国特許法第119条に基づく優先権を主張するものであり、これらの出願はいずれも全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0003】
[技術分野]
本開示の態様は電気化学、特には電池等の電気化学構造、およびそのデンドライト(dendrite)等の成長を抑制するための方法およびデバイスを包含する。
【背景技術】
【0004】
電池は一般的に一または二以上のカウンター電荷の発生源である電気化学セルおよびイオン導電性障壁、大抵は電解質で飽和した液体またはポリマー膜により分離された第一の電極層を備える。これらの層は薄く作られているため複数のユニットは電池の体積を占めることができ、積み重ねられた各ユニットにより電池の利用可能な電力が増加する。これらのコンポーネントが薄くなるとそれらはさらに脆弱になる。さらに、電極が薄くなると表面全体に大きなオーミックドロップが発生し、充電/放電サイクルの間に均一でない電荷密度が生じる。その上、電池の電極は、電池の充電サイクル中に成長(またはデンドライト)を得る場合があり、電池がさらに損傷するか、または電池性能が低下する可能性がある。
【0005】
例えば、リチウムイオン電池は典型的に金属酸化物電極(Mは典型的に鉄、コバルト、マンガンである)および金属電流コレクタ上にコーティングされた炭素電極を有する。金属酸化物は電池の放電中にリチウムを引き付けて安定させる役割を果たし、通常はセルの動作電位を決定する。金属酸化物電極は当初は酸化状態にあり、炭素はリチウムイオンが注入されたグラファイトである。放電(すなわち、デバイスに電力を提供するための電池の通常の使用)中、Li+イオンはグラフェン層間でグラファイトのエッジサイトに拡散し、次に固体電解質相間(SEI)を通過する。SEIはリチウムが有機電解質の成分と最初に反応する時に形成される層であり、無機および有機副産物から成る。電子およびイオンの両方の導電性がグラファイトおよび電解質と比較してそれぞれ低いため、SEIの特性および品質によりセルの全体的な性能が決定される傾向がある。リチウムイオンはSEIからイオン輸送層を通って金属酸化物に向かって拡散し続け、金属酸化物はLiMxyに還元される。充電中、Li+イオンは反対の経路をたどり、代わりに最終的にSEIを通って拡散して戻り、炭素にインターカレーションして戻る。理想的な充電条件下では、リチウムイオンはめっきを引き起こす可能性のある過剰な分極の無い状態でエッジサイトにおいてグラファイトに入ることができる(レート制限ステップ)。セルの電圧が高くなりすぎたり、電極が分極しすぎたり、またはSEIが多孔質、不均一であるかもしくは厚すぎるかもしくは薄すぎる場合にめっきの問題が生じる。極端な場合では、デンドライトの形成におけるLi0の凝集により電池内部の爆発の危険が引き起こされる可能性がある。具体的には、Li0が反対側の電極に到達した場合電池は短絡する可能性があり、Li0の堆積中に形成されたデンドライトは電池の二つの部分に分割する膜を損傷する可能性がある。
【0006】
リチウム金属電極の場合、またはグラファイト電極上にめっきをする場合では、堆積物はその後の充電/放電サイクルによりますます粗くなる。リチウム金属電池(Li箔陽極)およびリチウムイオン電池(Liイオンがグラファイト/箔陽極にインターカレーションされ、電流コレクタは銅であることが多い)はいずれも電池の充電サイクル中にリチウムデンドライトが成長するという問題がある。リチウムイオン陽極は数百サイクルにわたって安定している場合があるが、デンドライトはLi金属によりすぐに発達する。ひとたび形成されると電池のクーロン効率が低下し、イオン膜が損傷し、またデンドライトが陽極に接触すると電池が短絡する可能性がある。通常は、デンドライトが形成され、電解質膜に穴を空けたり不可逆的に損傷したりする。デンドライトの成長が反対側の電極に到達した場合、電池は永久に短絡し、回復できなくなる。
【0007】
特にこれらの問題を念頭に置いて本開示の態様が考えられた。
【発明の概要】
【0008】
以下の実施形態およびその態様は範囲を限定するものではなく、例示的および説明的であることを意図したシステム、ツールおよび方法を用いて説明および例示される。様々な実施形態では、上記の問題の一または二以上が低減または除去されており、他の実施形態は他の改善を目的としている。
【0009】
本明細書では充電、放電、または休止状態にかかわらず電池等の電気化学セル内の電極を最適に維持するための方法が提供される。これらの方法はデンドライトの成長を抑制および逆転させ、SEIの品質および回復を制御するが、これらはいずれもほとんどの電池の性能の低下および最終的な故障の一般的な原因である。
【0010】
特に、本明細書で提供されるのは電池の陽極等の電気化学セルの電極全体に電場および磁場(場誘導電流)を誘導することを含む方法である。電極にわたる電場および電流は、この電流が典型的に電池を充電する時に印加され得るイオン充電電流を横断するため、本明細書において横断電流と呼ぶことがある。電場および電流は電極全体で、または電極の別個の点もしくは複数の点においてACエネルギー、例えばAC電流を接続することから誘導され得る。
【0011】
電解質と電極表面との間の化学ポテンシャルの存在下で、電位は電極表面全体に誘導される。誘導された電位は電極表面全体を伝搬し、充電する。この電極は本明細書に記載の任意の方法またはデバイスにおける第一の電極であり得る。
【0012】
別の実施形態は第一の電極および第二の電極を含む電池において直流(DC)充電電流を第一の電極および第二の電極の一方に印加することを含む充電方法を含む。DC充電電流を印加することに関連して、第一の電極および第二の電極のうち少なくとも一つに交流(AC)エネルギーを印加する。ACエネルギーの存在は本明細書で議論される他の利点の中でもデンドライトの成長を抑制し得る。
【0013】
本開示の態様は第一の導体および第二の導体を含む電源を備える電池充電器をさらに含んでもよく、電源は電池充電器に動作可能に結合された電池の第一の電極および第二の電極の一方に第一の導体を通じて直流(DC)充電電流を印加するように構成される。電源はさらに電池に動作可能に結合された第一の電極および第二の電極のうち少なくとも一つに第二の導体を通じて交流(AC)エネルギーを印加するように構成され得る。
【0014】
さらに別の実施形態は共振に影響を及ぼすパターニング層が組み込まれた様々な可能な電池設計を含んでもよく、より具体的には、陽極の共振および陽極に対するAC信号の効果ならびに利点の中でも特にデンドライトの成長の抑制の全体的な効果に影響を及ぼし得る。一例では、電池は第一の電極(例えば、陽極)および第一の側面および第二の側面を含むイオン輸送層を備えてもよく、第一の側面は第一の電極と動作可能に結合される。電池はさらにイオン輸送層の第二の側面に動作可能に結合された第二の電極を含んでもよく、パターニング層は第一の電極に動作可能に結合され、パターニング層が充電または放電エネルギーから明確にACエネルギーを受け取るように構成される。
【0015】
さらなる実施形態および特徴は、一部は以下の説明に記載され、一部は本明細書を検討することにより当業者には明らかになり、または本明細書で議論される実施形態を実行することにより知ることができる。本開示の一部を形成する明細書および図面の残りの部分を参照することにより所定の実施形態のさらなる理解が実現され得る。
【0016】
例示的な実施形態が図面の参照される図に示されている。開示される実施形態および図は限定ではなく例示的なものであることを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】典型的な電池セルの層の断面図を描写する。
図2A】リチウム金属電池について例示される共通の問題を有する典型的な電池セルの層の断面図を描写する。
図2B】充電中の電池セルのデンドライトの成長を描写する。
図2C】電池の放電中の電池の固体電解質相間層への損傷を描写する。
図3A】電池セルの第一の電極の表面にわたる電気波形の誘導を描写する。
図3B】電池セルの第一の電極の表面にわたる電気波形の誘導を描写する。
図4】説明される方法のフローチャートである。
図5図4の方法の適用を通したデンドライト成長の抑制を示す、横断電流のある場合とない場合との銅電極上のめっきの比較を描写する。
図6】銅電極への図4の方法の適用を通じたデンドライト成長の対照サンプルと実験サンプルとの比較を描写する。
図7】銅電極に図4の方法を適用した後の横断電流の異なる周波数を有する対照サンプルのデンドライトのピーク高さと様々な実験サンプルのピーク高さとの比較を描写する。
図8】電池の電極に図4の方法を適用した後の横断電流の異なる周波数を有する対照サンプルのデンドライトの平均高さと実験サンプルの平均高さとの比較を描写する。
図9】電極表面におけるデンドライト成長に起因する電池陽極のデッドリチウムおよびSEIの損傷を描写する。
図10A】一般的な電池セル構造を描写する。
図10B】一般的な電池セル構造を描写する。
図10C】一般的な電池セル構造を描写する。
図11】コイン電池の電極上の電磁(EM)パルスの伝搬を描写する。
図12】修正されたコイン電池セルのコンポーネント層を描写する。
図13】電池の電極に沿って電気波形を印加するシミュレーション結果を描写する。
【0018】
本開示は上記の図面を用いた以下の詳細な説明を参照することにより理解され得る。明確に例示するために、様々な図面中の所定の要素は正しい縮尺で描かれず、概略的または概念的に表現されず、あるいは実施形態の所定の物理的な構成に正確に対応しない場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書で提供されるのは、表面、具体的には電池の電極に電気化学的に接合されるか、または金属を再配置する方法、デバイスおよび組成物である。一般的に、方法およびデバイスは電池セルの電極の表面全体にAC電流を誘導する等、電極において交流(AC)電流を供給することにより動作し、電流は電池の陽極と陰極との間でのイオン拡散により運ばれるDC充電電流等の電気化学電流をほぼ横断する。一般的に、電解質は電極の表面に隣接して電極−電解質界面を形成し、電気化学プロセス中に電流を生成するために電場質からの金属は電極の表面と接触し、界面にわたって電荷を通過させる。電気化学電流を横断する電極の表面全体にAC電流を誘導すること(あるいはACエネルギーを電極に供給すること)により、表面の電子はそれらの電場の前方圧縮および後方膨張を経験する。この圧縮および膨張は光速で電子の中心から外側へ伝搬する相対論的電荷を生成する。相対論的電荷は次に電気化学電流(例えば、DC充電電流)の電気力線を曲げ、電極の表面に沿ってより均一に拡散および形成するために電解質内のイオンからの金属または表面上の部分的に吸着した原子および粒子を方向付ける。より具体的には、金属イオンまたは表面粒子は電極上の亀裂および裂け目、窪みおよび隙間、ならびに高アスペクト表面特徴に方向付けられる。以下でより詳細に議論されるように、電池の充電−放電サイクル中の電極上のこのレベリング効果により電池電極に沿ったデンドライトの成長電位および/または成長サイズおよび/またはレートを低減し、あるいはそれ以外の場合には従来の電池電極に形成される表面の不規則性および凹凸を抑制することができ、電池の寿命を効果的に延ばし、性能を改善し、過熱、火災、爆発の背景にある発熱事象を回避する。
【0020】
本明細書に記載の方法およびデバイスは電池電極の表面全体に電位を誘導するように動作し得る。誘導された電位は表面に近接する電気力線を曲げ、そのため電解質からの金属は表面上に金属を堆積させるために曲げられた電気力線の経路を辿る。一つの固有の例では、誘導された電位は電気力線に影響を及ぼす。これらの曲げられた電気力線は最終的に表面の不規則性を含む表面と交差する表面の部分に対して90度で交差する。別の見方をすると、第一の電流の曲げられた電気力線は金属が表面に堆積して結合する際に電解質からの金属の軌道を変更し、そのため金属はそのアプローチ上の電極のマイクロ表面に対して90度で表面全体に到達する可能性は低くなるが、むしろ表面のマイクロレベルの輪郭および不規則性に一致し、表面にレベリング挙動を示す。したがって、電解質からの金属はデンドライト成長またはデンドライトが成長する傾向のある他の不規則性から離れて方向付けられる。金属をこの「レベリング(leveling)」効果に方向付けることにより、電池の電極はデンドライト成長に抵抗する可能性があり、それにより電池の損傷または動作不能が防止される。
【0021】
電極の表面またはそれに沿って印加される電流の誘導される電位、より具体的にはエネルギーは、その電圧またはアンペア数および周波数を含むAC波形を調節することにより制御することができる。複数の波形はワークピースの表面を備える異なる特徴または物質に調節するために組み合わせることができる。いくつかの例では、デンドライト成長または他の電極表面の不規則性の程度をリアルタイムに観察することができるため、電極に電気化学プロセスを方向付けるために横断電流を変調することができる。本明細書に記載のプロセスは電極の表面に沿って水平または均一なSEI層を生成することにより、本明細書において固体電解質相間(SEI)と呼ばれる電解質と電極との間の相間の形を改善し得る。
【0022】
図1は、本明細書において電池セルとも呼ばれる典型的な電池の層の代表的な断面図を描写している。一般に、電池は化学エネルギーを電気エネルギーに変換する。図1に示されるように、電池100は第一の電流コレクタ層102(陰極電流コレクタと呼ばれることもある)、単体で、または隣接する電流コレクタ層と共に陰極と呼ばれ得る陰極層104、電解質であり得るイオン輸送媒体層106、陽極層108、および単体で、または隣接する電流コレクタ層と共に陽極と呼ばれ得る、陽極層に隣接する第二の電流コレクタ110(陽極電流コレクタと呼ばれることもある)を含み得る。動作中、陽極108は陰極104において集められたイオンを電解質106に開放する。第一の電流コレクタ102および第二の電流コレクタ110は典型的に隣接する陽極または陰極への、およびそこからの電荷を通過させる導電性金属である。(電池の陽極108側および電池の陰極104側のための異なる電解質材料を備える電池を含む)多くの異なるタイプの電池構造が存在するが、本明細書に記載の一般的な動作が適用される。
【0023】
電池はしばしば電池100の陽極またはイオン輸送層106を構成する材料により分類される。例えば、リチウム電池はリチウム金属電池(Li+含有電解質またはリチウム箔陽極を備える類似のもの)およびリチウムイオン電池(Li+含有電解質またはLi+含有グラファイト陽極を備える類似のもの)等の、リチウムベースの陽極108およびイオン輸送層106を有する。亜鉛電池および鉛蓄電池を含む他のタイプの電池が関連し、当該技術分野の当業者には既知である。この議論はリチウムイオン電池(グラファイトにインターカレーションされたリチウム)を例示するが、本明細書で開示される方法もまたリチウム金属、リチウムシリコン、亜鉛および鉛蓄電池を含む他の電池タイプに適用される。
【0024】
有機電解質が使用される場合、リチウムが電解質と化学的に反応するため、(Liシリコンを含む他のタイプの電池の中でも)両方のタイプのリチウム電池は陽極108と電解質106との界面で固体電解質相間を形成する。相間は界面に集まる不溶性無機物と可溶性有機物との反応生成物を備える層である。この層は、上記で議論されたように本明細書でSEI層と呼ばれ得る。一般に、Liイオンは陽極108から相間またはSEIを通過する。相間が一般的に高インピーダンスを有するため、陽極108にわたる固体電解質相間の均一性により陽極全体に一様でない電流分布が引き起こされる可能性がある。この非一様性によりLi濃度の高い相間を通じてチャネルが形成される。これらのチャネルがデンドライトの形成につながる。他の例では、陽極108の表面に沿った不規則もまたデンドライトの成長を促進し得る。
【0025】
より具体的には、デンドライトは典型的に陽極表面108上にリチウムがめっき/堆積するにつれて電池の充電サイクル中に成長する。電着は分極した表面と電解質内で分解されたかまたは停止した反対の電荷をもつイオンとの間の電荷交換メカニズムを介して二つの相の界面全体に進行する。メカニズムは通常複数のステップから成り、イオンは部分的または完全な電荷交換を受けてもよく、沈殿の前に部分的に吸着される表面全体に拡散してもよい。成長メカニズムは2D(層毎のタイプ)または3D(核生成−合体)として区別することができる。いずれかのメカニズムの普及は、電気化学的に活性した表面の初期の状態、各々の熱力学的エネルギー障壁に対する駆動電圧の過電圧、および電解質の特性に依存する。
【0026】
一致する材料特性および電着中の成長挙動を示す二つの金属はないものの、ほとんどの電着は粗い構造および増加する厚さを有する形態に向かう傾向がある。電解質の化学的性質の影響は別にして、低表面エネルギー結晶面は時間の経過とともにより速く成長する傾向がある。一つの結晶面が支配し始めると、堆積された層のグレイン構造は、本来は小さくランダム化されたものから円柱状に変化し得る。これは銅およびリチウムの両方について真実であるが、二つは電池セル内のそれらの相対的な形態に影響する著しく異なる弾性特性および反応特性を有する。
【0027】
図2Aおよび図2Bは電池200の電極の表面に発生し得る一般的な問題を例示している。図2Aの電池は、第一の電流コレクタ層102、陰極層104、イオン輸送媒体層106または電解質、陽極層108、および第二の電流コレクタ110等の、図1に関連して上記で説明された電池と同じ層を含む。図は固体電解質相間112も示している。図200に示されるように、デンドライト214は電池の複数の充電サイクルを通じて電池200の陽極108から成長している。図2Bはデンドライト214の成長から電池200の有効性に引き起こされる問題を例示している。具体的には、デンドライトの成長は電池の充電中に陽極108上で発生する。これらのデンドライトはリチウムイオンが電極の表面上の他の区域に到達することを阻止し始め、それによりそれらが反応に加わるのを防ぐ。これらのイオンはまた他のデンドライトを形成することがあり、さらに電池の非効率性を増加させる。電池200の電極上のデンドライトの成長を制限することは、すなわち電池の動作および寿命を改善し得る。
【0028】
充電サイクルを通じた電池の別の問題はSEI112内の不規則性の生成であり、電解質106と陽極層108との間のSEI層112内の弱点218を引き起こし、この問題は図2C内にも例示される。電池の放電中に、電極108上に形成されたデンドライトは部分的に分解されて電解質層106内に戻ることができる。しかしながら、デンドライトは均一に分解せず、陽極ベース108との接続は弱くなる可能性がある。部分的に分解されたリチウムの残りは表面との電気的な接続、および反応へ加わることをも失う可能性がある。これによりSEI層112および/または陽極表面に弱く、薄い区域が残る可能性がある。SEI112は損傷した区域内で即ちに再形成することができ、表面内の不規則性218を引き起こす。
【0029】
再び図2Aを参照すると、電池200の充電−放電サイクルを通じて生じる別の共通の問題は、電解質106内の非導電性金属堆積216(デッドリチウム216または他の金属の不活性堆積物として知られることもある)である。いくつかの例では、苔状およびフラクタル状のリチウム等の粗い特徴は脆弱な電極108の表面に沿って形成し得る。これらの成長は最終的に表面108から壊れ、電気的な接触を失う可能性がある。その結果、この金属の塊のエネルギーポテンシャルは電力ストレージにも利用可能であり、電池容量は永久に失われる。これらの問題の各々は電極108における、またはそれに沿ったACエネルギー信号の印加を通じて対処され得る。
【0030】
粗い堆積を防ぐための従来技術にはブライトナーおよびレベラーとして知られる化学添加物が含まれており、これらはしばしば電着および電気めっきのための表面処理産業において使用される。パルスめっきおよび変調信号技術は電着の改善および制御を提供し、電着はより理論的に予測され、一つの金属化学物質から次の金属化学物質へより容易に輸送可能である。しかしながら、反応レートおよび拡散層の厚さがSEI層に大きく依存するリチウムシステムに対するこれらのアプローチの利益は明瞭に定義されない。例えば、著しく成長する前に形成され得る粗いエッジを定期的に再分解するようにパルスは電極の極性を一時的に反転させる(リバースパルスめっき)。しかしながら、電池に印加される際、パルスは電池の出力電力を妨害し得る。
【0031】
これらの問題は他の場合よりも所定のタイプの電池においてより一般的であり得る。例えば、純リチウム金属電池はリチウムイオンと比較して非常に高い(〜5−10倍)エネルギー容量を有するが、デンドライトの成長を制御する方法の技術分野においてほとんど知られていない。リチウム金属電池の商業的採用を防ぐ主な障害は破壊的および危険なデンドライトの成長なしに陽極上へリチウムを定期的に電着させられないことであり、電解質の消費、低クーロン効率、および最終的なセル故障にもつながる。電池の容量または動作電圧を妥協することなく、様々な産業および製品で現在必要とされる形成ファクタの範囲全体に対して適用可能な潜在的な解決策を識別することは特に困難である。現在、これらの電池は典型的に10回の充電−放電サイクルを通じてのみ続いている。故障は一般的なリチウムイオン電池と比較した時に瞬間的および重大であることが多い。
【0032】
加えて、電力容量を増加させながら電池が小さくなるほど、これらの問題は増幅されており、著しい設計上の制約が課される。リチウムまたは任意の他の化学物質に基づく電池の寿命および性能は本開示の技術および装置を使用する電極表面の平滑度および均一度を増加させることにより著しく長期化することができる。これにより従来の電池と同様に電池の寿命を妥協することなく再充電のレートを増加させることも可能になる。
【0033】
本明細書で説明されるのは電極上のデンドライトの成長を制御し、電池内の電解質内への成長を再吸収するための方法およびデバイスであり、電池の性能および寿命を改善する。いくつかの実施形態では、方法およびデバイスは電池の電極上のデンドライトの形成を妨害または減少させるために電池のDC充電中に動作され得る。本方法は電池の相間層をレベリングすることまたは成長を電解質層に分解すること等の、電池の寿命および性能にさらなる利益を提供するために電池の他の動作状態中に実行され得る。電池内のデンドライトの成長を制御することまたは減少させることはまた相対的により耐久性のある電池をもたらし得る。一般に、電池の電極またはそれ全体にAC信号を印加することにより電極(例えば、陽極)にこのような交流エネルギー形態を有しない従来技術と比較して表面全体にわたる均一な時間平均電流分布を維持することができ、陽極/電解質界面を均一な電気的挙動に維持するために固体電解質相間全体でリチウムイオンまたは他の電荷移動種の濃度をより均一に分布させる。
【0034】
[方法]
前述の序論、ならびに従来のプロセスに関する問題および制限を考慮して、本明細書で提供されるのは電気的緩和または表面特徴(例えば、デンドライト)その他の導電効果を通じて電池の電極上の堆積プロセスを制御するための電気化学的装置および方法である。図3Aおよび図3Bは本明細書において議論される方法を実行するためのデバイスの例を例示しており、図4は本開示による方法の例を例示している。具体的には、図4の方法400は電池の電極の表面上のデンドライトの成長を抑制または低減するために電池の充電サイクル中に実行され得る。再び図3A図3B、そして図4を参照すると、システム300はいつ電池が充電動作状態(410)にあるかを決定し得る。電池充電器が接続されると、充電してもしなくてもよく、また充電の状態または他の要因に依存して充電のレベルは多くても少なくてもよい。例えば、充電の後半のフェーズで、充電の100%の状態に近づくと充電電流は減少する可能性がある。同様に、電池から引き出される電流は電池上の負荷に多かれ少なかれ依存し得る。電池の充電サイクル中、電流は陽極全体に誘導されてもよく(420)、これは電極の表面にわたる交流または非DC電流であってもよい。より少ない充電レベルまたはより少ない放電レベル中、相対的に大きなACエネルギーは印加され、それ故に誘導されたACエネルギーは充電(または放電状態)に依存し得る。充電レベルが低いかまたは放電レベルが低い場合、相対的に大きなACエネルギーは印加される可能性があるため、誘導されたACエネルギーは充電(または放電状態)に依存し得る。本明細書で議論されるように、ACエネルギーレベルはさらに特定の電池システムの物理的および材料的特性の関数であり得る。充電サイクルプロセスが未完了である場合(430)、陽極に印加されるACエネルギーを調整するために電極に沿った横断電流が変調され得る(440)。そのため、例えば、ACエネルギーの印加は充電の状態、温度、インピーダンス測定、および他のフィードバックメカニズムに基づいて調整され得る。充電サイクルプロセスが完了した場合、プロセスは終了する(450)。いくつかの実施形態では、ACエネルギーはオーファンリチウムの再吸収として継続することがあり、または他の材料は場合によっては陽極(または陰極)に再吸収されることがある。
【0035】
図3Aおよび図3Bをより詳細に参照すると、電池環境300が例示されている。具体的には、環境300は陰極320電極、陽極310電極、ならびに陰極および陽極に隣接する電解質340を含む。電池の充電中、電解質340に含まれるイオン324は陽極310に集められる。さらに、記載された方法を通じて、電源360は陽極310上の少なくとも単一の接触点(図3A)または電極の二以上の点(図3B)と電気的に通信363することができる。電源360はしたがって接触点または陽極上の点を通じて陽極310の表面311において、および/またはそれ全体に、ACエネルギー信号または波350を提供し得る。単一の接触点は、特に電流が電解質に吸収されているような経路を有する場合、表面全体に波を生成することができる。AC電流350であり得るこの印加されたACは、第一の電極310全体に誘導され、それにより陰極と陽極との間で第一の(充電)電流330を横切る。第二の電流350は第一の電極310の表面311内および/またはそれ全体に相対論的電荷312を誘導する。いくつかの実施形態では、デバイスはカウンター電荷の供給源120を備える電気通信161内、かつ第一の電極110を備える電気通信162、163内の電源161を含む。実施形態に応じて二以上のデバイスを含み得る電源は第一の電流130および第二の電流150を提供および制御し得る。
【0036】
より具体的には、横断電流350は電解質340の設計パラメータを変更することなく表面電子に影響を及ぼし、堆積内の有益な特性を誘導するために第一の電極310の表面311において、それを通じて、および/またはそれ全体に印加されることができる。電極におけるACエネルギーの存在下で、表面311における電子はそれらの電場の前方圧縮および後方膨張を経験する。この圧縮および膨張は光速で電子の中心から外側に伝搬する相対論的な電荷312を生成する。相対論的な電荷は次に従来は充電中に曲がらなかった電気/化学反応電気力線を曲げ、表面の凹凸が抑制された方法で電極上に形成するために電解質から金属を方向付ける。別の見方をすると、誘導された電位は表面に近接する電気力線を曲げるため、電解質からの金属は金属を表面上に堆積させるために曲げられた電気力線の経路をたどる。曲げられた電気力線は最終的に表面の不規則性を含む交差している表面の部分の近傍で、90度で表面と交差する。誘導された電位下の堆積点と誘導された電位の無い堆積点との間の差は通常は充填されていない表面の隙間および粗い区域に向かう電気力線のシフトである。陽極へのACエネルギーは二次元成長(平滑性および均一性)、結晶性および形態等のグレイン特性、エネルギー的に困難な表面上の誘導された核生成、金属内の低減された多孔性、基板上への接着、および制御された線形結晶成長を含むがこれらに限定されない、充電/放電サイクル中に電池で発生する電着プロセスの多くの側面を増大させる可能性がある。
【0037】
電子分布のこの変化により表面にアプローチする金属原子の挙動が変更される。従来、電荷密度はワークピースの不規則性の周囲で大きくなり、次に不規則性をさらに増加させるために金属の層を促進する。代わりに、開示される方法では、横断電流がないと大きな電荷密度を有し得る区域は典型的な電荷密度よりも低く、横断電流がないと小さな電荷密度を有し得る区域は典型的な電荷密度よりも大きいため、原子は平滑な表面を生成するために経路をたどるように促進される。横断電流の波形の周波数はいくつかの値を掃引することができるため、多くのサイズの不規則性は変調され得る。一つの特定の実施形態では、横断電流波形の周波数は100Hzから300GHzの範囲であり得る。
【0038】
[デバイス]
本開示はまた本明細書に記載の方法を実行するためのデバイスを提供する。具体的には、デバイスは電池セルの陽極にAC信号を提供するために利用され得る。信号は電極310との単一の接触点を通じて、または二つの接触点を通じて、印加され得る。デバイスは本明細書に含まれる例示的な方法で説明されるように電極表面に沿って電流350を誘導するために電源360等の電流発生源を含み得る。いくつかの実施形態では、電流源を制御するためにメイン制御ユニット(MCU)363が含まれ得る。
【0039】
電源はMCUを含むかあるいはそれに関連付けることができ、MCUは本明細書で議論される様々な方法を実行するための実行可能な命令または制御シーケンスを形成するソフトウェアを含むメモリまたは他の有形ストレージ媒体と通信するプロセッサまたは他のコンピュータコンポーネントを含み得る。メイン制御ユニットにおいて、プロセッサはコンピュータ可読媒体に格納された命令を実行するように構成される。電力変調器および電源はMCUにより制御され得る。MCUは任意の信号を電池電極に提供するための一または二以上のさらなる電気部品を含み得る。いくつかの実施形態では、充電電流および電極へのACエネルギー接続点が共有され得る。
【0040】
さらに他の実施形態では、システムはACエネルギー信号を電池の電極に提供するために電気的な通信で既存の充電回路を利用し得る。例えば、(携帯電話、ラップトップ、または電池で稼働し得る他のコンピューティングデバイス等の)パーソナルコンピューティングデバイスの電源(充電電源)はACエネルギー信号をデバイスに含まれる電池の陽極に提供するために修正され得る。別の例では、本明細書に記載の方法を達成するために、車両の電池管理システム(BMS)は電流を電池の電極またはより大きなパックのディスクリート電池に伝送するように修正され得る。本明細書で議論される実施形態では、陽極に印加されるAC信号を追加して従来のDC充電を提供するために、従来の充電デバイスは適切な制御スキームで修正され得る。例えば、従来の充電電子機器、プラグ、導体等に加えて、導体は陽極と充電器の電源部分との間の経路を提供し、電源はMCUの制御下でAC信号を陽極に提供するように構成され得る。
【0041】
[デンドライトの緩和]
本明細書に記載の方法は、リチウム金属電池、リチウムイオン電池、リチウムシリコン、亜鉛電池、鉛蓄電池等を含むが、これらに限定されない電池等の多くのタイプの電気化学構造における電極(複数含む)上のデンドライト成長およびデンドライト前駆体成長を含む非一様、粗い、および/または非最適な表面効果の様々な可能な形成を制御する。本方法は電池の電極上でのデンドライトの成長の抑制を含む複数の電気力学的効果を提供するために電池の電極上で実行され得る。
【0042】
特定の実施形態では、本方法は調整された波形を生成することおよびこれらの波形を電極に印加することを含み、これらは電極の固有の共振または誘導された電流密度の所望のパターンに関連する周波数で表面を励起するために、充電電流と組み合わせられ得る。そのアプリケーション環境によらず、実際の導電性表面は形状および固有の特性に基づいて特定の電荷分布が生じやすい。抵抗性損失は表面全体の電力を減衰させる。電流密度は曲線または鋭い点においてより大きく、電場の電位線は最終的に表面に直交してアプローチする。これらの理由により、電解質によらず、分極した電極は本明細書に記載の技術がないと非一様な電荷分布を経験する。
【0043】
電池を充電する間に発生する従来の電着中に、例えば、電子はそれらの電場の相互反発に起因して電極表面に対して接線方向に均一に分散される。しかし、接線の点は平行でなく、湾曲した特徴が電子を集束させるように見える。そのような区域はより多くの金属イオンを引き付け、デンドライトを進化させることができる。高エネルギー区域から隣接する区域へ統計的に優位な期間これらの電荷をシフトするためにACエネルギーを使用することにより、電極の本来の電荷分布は全体的な堆積パターンと共に変更させることができる。
【0044】
ACの波長(λAC)のサイズが減少し、電極の長さスケールにアプローチすると、エネルギーは本来、容量性から誘導性に変化する。すなわち、電極の長さスケール≪λACを用いると、一端から他端まで表面の端から端まで電位勾配が生じる。その勾配の大きさは各電極の端部が波形の最大値と最小値(〜λAC)に空間的に一致する場合に最大になる。電極の長さスケール≫λACである場合、極大および極小の多くの点が存在し、表面における誘導エネルギーの発生率が高くなる。この現象は周波数がこれらのプロセスの特徴的な時間よりもはるかに速い場合であっても吸着、表面およびバルク拡散、ならびに核生成プロセスに影響を与え得る。
【0045】
低周波数における従来のパルスまたは変調技術とは対照的に、高周波ACは表面に沿って異なる点において建設的または破壊的に相互作用するシステム全体で入射または反射エネルギーの連続的な重ね合わせの影響を受ける。この理由のために、考慮しなければならないのは必ずしも印加された過渡波形ではなく、むしろ結果として生じる定在波のパターンである。イオン雲なしで移動するイオンからの寄与は無視できるほどであるにもかかわらず(ウィーン効果として知られている)、200MHzを上回る周波数は飽和し、ほとんどの電解質の緩和時間を超過する。電解質を通る高周波イオン導電性の欠如により陽極および陰極が考慮され、独立して潜在的に修正される。
【0046】
電解質は予測可能な方法で界面における電極の本来の挙動を修正する。電解質はその導電性に起因してACエネルギーの一部を吸収し、距離に応じて信号を減衰させる。これは入射および反射エネルギーが電極上の信号の印加点からある距離を建設的に組み合わせる波形および周波数を選択することにより克服され得る。例えば、入射エネルギーは高エネルギー信号が存在する電極の表面に沿った区域を提供するために反射エネルギーと建設的に結合し得る。さらに、電解質の誘電率は波形の誘電収縮の程度を決定する。
【0047】
波形の振幅は電極上のACエネルギーの効果の可能な制御パラメータを示す。例えば、ACエネルギー周波数または振幅の制御は電極に印加されたACエネルギー波形を調節するために利用され得る。結果として生じる定常波は電極の粗い区域に熱力学的ポテンシャル境界を下回って留まらせるか、または平滑な区域にそれを超過させるために使用され得る。同様に、電流密度はその領域におけるさらなるデンドライトの成長を防ぐために特に粗い区域から離れて集中させることができる。電極表面の状態の分析を通じて、印加されたACエネルギー波の山と谷は電極表面のどの部分がより高いかまたはより低い電流密度を有するかを選択するために決定され得る。周波数および振幅が十分に大きい条件下では、電極の表面の隣接する区域間の電位差はカウンター電極の有無によらず局所的なガルバニック反応を誘導し得る。デンドライトを分解しリチウムベースの電池内のSEI層を均質化するこの現象の意味は明らかである。
【0048】
低周波AC電力は電極に対してDCのような挙動を示す。ACの周波数が増加するにつれて、電力は表皮効果に従って表面の近くに集中する。理想的な導体では、予測される表皮の深さは1kHzで2mm、1GHzで2μm、等である。すなわち、AC電力のほとんどは高周波では陽極の表面のはるかに薄いサブセクションに集中する。凹凸の厚さおよび表皮の深さが類似である場合等界面がより複雑である場合、AC電力のほとんどは次に界面に存在すると言うことができる。その結果、AC電力の効率は印加される周波数に関係し、より高い周波数では必要な電力が少なくなる可能性がある。
【0049】
電池の電極上のリチウム金属の類似物として銅電着を利用していくつかの実験が完了した。これらのテストは苔状のデンドライトを生成するように設計された積極的なテスト環境においてデンドライトの形成を劇的に抑制する初期の実現可能性を実証した。デンドライトを生成するための制御テストは、脱イオン水中の硫酸銅の完全飽和電解質溶液を使用して導電極500で実行された。デンドライトまたは凹凸を低減するための添加物または他の方法は意図的に除外した。制御のための充電電流密度は〜65mA/cm2であった。より詳細には、図5は電極全体に印加されたAC信号を用いて実行された同一のテスト条件と比較して苔状のデンドライトの60%を超える表面被覆率を有する対照サンプル500のスナップショットを例示している。示されるように、記載された充電電流密度で、積極的な電解質(低純度、試薬グレード、飽和硫酸銅)、酸素含有銅カウンター電極、過剰な電流密度(65mA/cm2)、非対称セル(カウンター電極の表面積>作用電極)、および長い堆積時間(8時間)の条件でACエネルギー無し(サンプル504の端面図およびサンプル506の側面図)、およびACエネルギー有り(端面図508および側面図510)サンプルを稼働させた。図508および510に示されるように、このアプローチはACエネルギーを用いないアプローチ(図504および506)と比較して苔状のデンドライトの表面被覆が大量に除去された。
【0050】
具体的には、図5および図6(ならびに図7および図8)は電極500への75kHzの周波数および23dBmの電力のAC信号の印加からの結果を示している。
【0051】
図5および図6に関連する実験を実行するために、DC電源およびAC発電機を用いた。AC発電機からの信号およびDCの負に分極された電力はいずれもT字型接合部に独立に接続されている。ワイヤはこの接合部からテストセルに伸びている。DCの正の分極はテストセルのカウンター電極に直接接続されている。AC発電機ラインはDC電流が信号発生器に流れ込むのを阻止するため、Tのインラインおよび上流に含まれている。同様に、DC電源はACエネルギーが電源に流れ込むこと、およびDC電流および電圧測定を妨害させることを阻止するため、Tのインラインおよび上流にACフィルタを含んでいる。一般的に言うと、このような構成は電池充電器において用いられ得る。結果は、制御結果に対する堆積した塊上の所望の性能を達成しながらも苔状のデンドライトの表面被覆の劇的な低減を示している。苔状のデンドライトの表面被覆の実質的な除去に加え、図7および図8にそれぞれ示すように、堆積の区域のピークおよび平均表面高さは50%以上減少した。図7および図8において、(各制御に対する)各ブロックは、各ブロックにより表される各データセット内の変動性を例示しており、各図は各図の各制御に対する各データセットのデンドライトの高さの減少の各傾向を例示している。
【0052】
図13は電池の電極に沿って電気的な波形を印加するシミュレーション結果を描写している。具体的には、図13のシミュレーション結果セクション(a)−(i)は水性条件(ρ=1.68E−8Ωm、σsoln=5S/m、ε=80)またはリチウム電池/有機電解質条件(ρLi=9.28E−8Ωm、σsoln=1S/m、ε=45)材料での導電性電極のシミュレーションを通じて生成された。ACエネルギー信号は本明細書に記載の方法と同様の方法で電極の表面に沿って印加された。導電性電極は幅6mm、厚さ35μm、三角形の凹凸1mmの箔導体である。導体の断面図は箔導体の表面の三角形の凹凸を例示するセクション(d)に最もよく示されている。
【0053】
セクション(a)−(c)はシミュレーション中に導体に印加される様々なACエネルギー信号を示している。具体的には、セクション(a)は9.9GHzのACエネルギー信号を示し、セクション(b)は10GHzのACエネルギー信号を示し、セクション(c)は100GHzのACエネルギー信号を示している。さらに、電場(矢印)、磁場(等高線)、および電流密度もまた水性条件での表皮の深さ(δ)を示す各信号について示されている。
【0054】
セクション(d)は(電極上の充電電流に近接する)DC信号および表面の凹凸に起因する電流密度プロファイル(グレースケール)を示している。したがって、セクション(d)は電極の表面に沿ってAC信号が印加されない場合を示している。むしろ、DC充電電流のみが電極に印加される。見られるように、この場合における電流密度は電極の三角形の凹凸部分の点の周囲に集まる。デンドライトの成長が継続する可能性が高いのはこの点である。別の言い方をすると、各三角形の凹凸の先端に高電流密度の三つの区域があり、それらの区域でより多くの電流が流れ、その結果それらの区域においてより速く成長する。
【0055】
対照的に、セクション(e)は平滑な導体の表面に沿ったAC信号の印加からの電流密度プロファイル(グレースケール)を示している。見られるように、電場および電流密度はACエネルギー信号を電極に印加することにより人工的に操作することができる。そのため、例えば、本明細書に記載のシステムおよび方法を使用して、従来のシステムの高密度の点(例えば、(d))はデンドライトの成長を低減または除去するピークから離れて分散され得る。AC信号の特性のパラメータをさらなる操作は電流密度を必要に応じて調節することができる。セクション(e)(AC電力)では三角形の凹凸は無く、表面が平坦である。その事実にもかかわらず、システムおよび方法はACエネルギーを使用して磁場の挙動を示す平面からのU字線により示される高電流密度の三つの異なる区域を誘導する。ACエネルギーの周波数および電力を操作することにより、システムは電極にわたるこれらの線および高電流密度(および堆積レート)を変化させることができる。
【0056】
セクション(f)−(h)は100GHzの印加されたAC信号を用いた時間平均された挙動を示している。高周波は電荷移動および対流プロセスの特徴的な時間(〜0.1ms−10s)よりもはるかに速いにもかかわらず、著しい過渡的な電場および磁場の影響を誘導する可能性がある。水性条件の導電性および誘電率の高さにより固定周波数を使用する電流分布の均一化が困難になる。(f)−(h)において、AC信号が存在する場合、矢印は電場のベクトルを表し、等高線は磁場の強度を表す。リチウム電池(Li金属またはLiイオン)についてのより現実的な条件では、より均一なエネルギー分布が可能になり、したがって必要とされるAC電力を低減することができる。これらの条件は高RFであってもACエネルギーが電極および界面の電解質に大きく制限される有望な指標であり、界面の膨張または収縮からの応力に応答してSEI全体に均質化効果を与え、主要なイオンチャネルを破壊し、より急速かつ均一に進化させるのに役立つ。直接接触していない導電性物体への表面の導電性および誘導性結合に影響を与える高周波は、電池の動作状態に関係なくデッドリチウムを分解および再生する手段を提供する。
【0057】
ACエネルギーが無い場合、(f)はまさしく(d)のように見え、電気力線を曲げる粗い三角形の付近を除いて、凹凸の先端における高電流密度および主に点が電極に向かって真っすぐ落ちる電場の矢印を示す。(f)において、ACエネルギーは電場矢印を劇的に曲げるだけでなく凹凸を上回る電解質内の電流密度のランダム化する。この場合では、最も粗い区域は電極の平坦な区域よりも速く成長しなくなる。ACエネルギーのある(g)および(h)では、(g)では電極および電解質は水ベースの化学物質の誘電特性を有するのに対し、(h)は有機電解質を有するリチウムイオン電池の誘電特性を有することを除き、全て同じである。(g)では、表面全体のパターンおよびカラー化は(h)の場合よりも均一性がはるかに低く、これは、ACエネルギーは水ベースの銅の実験よりもリチウム電池電極全体により均一に分布され得ることを示している。
【0058】
セクション(i)は現在の表皮の深さの拡大ならびに固定周波数における横断電流分布
を示している。異なるグレースケールの区域は電流密度が周波数の関数として空間的にどのように分布しているかを示している。このセクションで見られるように、明るいグレーおよび暗いグレーのバリエーションにより表される電極の表面に沿った電流密度はACエネルギー信号の印加を通じて変更される。
【0059】
[リチウムイオンインターカレーション]
デンドライトの制御および緩和に加え、電極の表面における横断ACエネルギー/電流の印加は電池の動作およびメンテナンスにさらに利益を提供し得る。例えば、リチウムイオン電池の充電中、グラファイト内のリチウムのインターカレーション/拡散はレート決定ステップになる。セルの電圧制限における急速な充電は潜在的に過剰な濃度分極につながる。このような条件下での継続した動作はSEI層を厚くし、増加したシステム抵抗につながる可能性がある。またグラファイトをリチウムがめっきし始める可能性もある。これはリチウムデンドライトの形成から始まるリチウム金属電池内で遭遇する同じ問題に急速につながる。
【0060】
(伝送を介すかまたは導電的に陽極に直接印加された)ACエネルギーおよび横断電流は電解質全体のセルのDC電圧の増加を必要とせずにリチウムイオンを励起し、インターカレーションのレートを増加させるために使用され得る。グラフェン平面に沿った導電率(σ〜2.5E5S/m)は平面間の導電率よりも3桁大きくなる。これにより、エネルギーが、リチウムイオンが出入りする点として機能するグラファイトエッジ間で、主にLiイオン拡散面に沿って伝搬することが促進される。より遅い周波数(およそ1000Hz未満)ではACエネルギーはイオンの拡散を直接増大させ得るが、より高い周波数ではACエネルギーはセル全体により少ない電位で表面拡散およびインターカレーションのエネルギー障壁を超えるインターカレーションされているイオンをさらに励起させるために機能し得る。前処理ステップ(後述)中のように、電極へのACエネルギーの印加はSEIの厚化および陰極の破壊を含む濃度分極の悪影響を回避する。インターカレーションレートの上昇はまたリチウムめっきが開始するリスクを低くしながらセルがより集中的に稼働することを可能にする。
【0061】
上記で説明されたように、SEIはリチウムが有機電極の成分と反応する際に形成される副産物から成る層である。これは有機膜または電解質の代わりに無機膜を使用するものを除き、全てのLiイオン、Li−Si、およびLi金属電池に存在する。層は典型的にバルク電解質よりも低いイオン伝導率および高い粘度を有し、その結果セル内の拡散および電荷移動プロセスを支配する。より低い導電率およびしばしばより高い誘電率のためにAC/RF信号が電極表面全体により均一に伝搬することが可能になり、AC/RF信号のために使用される電力が少なくなる。
【0062】
理想的には、SEIは電極全体にわたって均一である。電極表面が膨張および収縮したり、または電池サイクルに伴って粗い特徴が発達したりすると、SEIは十分に迅速に適応することができず、一部の区域が他の区域より薄くなる可能性がある。Li−Si電池では、充電−放電サイクル間に電極が以上に大きな歪みが生じることに起因して問題になる可能性がある。SEIは電極に移動する電解質内の分解されたLiの抵抗障壁であるため、より多くのLiがSEIのより薄い区域を通って拡散し、非一様に堆積する可能性がある。支配的なイオン輸送チャネルはまたSEIを通じて形成し、デンドライトの基礎となる可能性がある。
【0063】
電池の電極上のSEIの薄化に対処するための一つの方法はACエネルギーを電極に印加することである。このエネルギーは、充電サイクル中、または電池が休止状態の時に弱くなった部分を再生するため、またはSEI層をレベリングするために印加され得る。一般に、印加されたACエネルギーは電極表面を横切る際にSEIにより部分的に吸収される。これにより電荷移動反応が誘導され、変化する電極表面形状へのSEIの適応が加速され得る。ACは主要なイオン輸送チャネルの開始を阻止する電荷移動活動にある程度の混合を追加することができる。それにより局所的な電流密度が増加して堆積物を高密度にして脆弱性が低下する可能性もあり、電極表面から壊れる可能性のある苔状またはフラクタル状デンドライトが減少し、「デッドリチウム(dead lithium)」になるために電気的な接触を失う。
【0064】
一部のリチウム電池は導電性ガラスまたはポリマーイオン輸送層(膜であることが多いが、常にではない)を好んで有機液体電解質を放棄し得る。リチウムと反応する電解質が無い場合、SEIが無い可能性がある。表面がその形成の影響を受けにくくなるか、または固体イオン輸送層が陰極へのそれらの継続的な成長を物理的に阻止するため、デンドライトはこの状況では問題が少なくなる。しかしながら、電極表面は老化および劣化し続ける。これらの例では、ガラスまたはポリマー層は依然として導電性の低い誘電体媒体を提供し、したがって、電荷再分布のためのACエネルギーの効率的な伝搬および表面の不均一性の一般的な防止が促進される。
【0065】
印加されたACエネルギーの効果は、SEI層の多くの不規則性に対処するための条件および波形パラメータに応じて、SEIを薄く、または厚くすることであり得る。セルが充電も放電もしておらず、休止状態にある時にACエネルギーが印加されると、一方に対する制御が最も可能になり得る。
【0066】
[初期SEI形成のための新しい電極の前処理]
陽極上の最適に進化したSEI層はリチウムイオン電池の性能にとってしばしば重要である。製造業者は分布の前にパッケージングされていない電極材料を、また分布の後にパッケージングされた電極を、通常数週間にわたる様々な時間およびエネルギーを集中させた前処理ステップにかける。しばしば、前処理ステップは循環および熱を含み、エネルギーおよび時間が大量に消費される。
【0067】
一般に、電極のグラファイトは多孔性であり、電池の前容量にアクセスするために初期化フェーズ中に電解質により完全に湿潤させなければならない。しかしながら、多くのアプリケーションでは、電解質の表面張力により200nm以下の小さな多孔度ではこれは困難で遅くなる。この多孔性はグラファイトの全表面積のかなりの部分を占める。湿潤は典型的に真空下で数日から数週間にわたって加熱されて達成され、前処理プロセスの最も遅い部分になる。しかし、後の最適なSEI層の形成のために重要である。
【0068】
その後、パッケージングされた電極は、高密度で、薄く、電気的に絶縁しており、非反応性で不溶性の無機リチウム種から成る初期SEI層を適切に進化させるために、温度制御プログラムの下で一連の遅い充電−放電サイクルを経る。これは形成サイクルとして知られている。これらのサイクルはゆっくりと完了し、大抵は通常のサイクルの1/10−1/20(0.05−0.1C)である。これは数週間続くプロセスに寄与し、エネルギーの大きな使用を伴う。これらのステップはセル内の両方の電極を含み、陽極においてSEIを最適化するために必要な条件は陰極にとっては理想的でない。形成サイクルはそのリチウム含有量の一部の陰極を消耗し、セルが最終用途に到達する前に総電池寿命が短くなる。
【0069】
上記の方法で説明された陽極を励起するためのACエネルギーの使用は、伝達性または導電性アプリケーションのいずれかにより電池製造プロセスにおける電極の湿潤ステップおよびSEI形成ステップの両方を改善する方法を提供する。特により高い周波数におけるACエネルギーは強い局所的な電場勾配ならびにはるかに高い局所的な電流密度を誘導するという顕著な挙動を有する。このタイプの局所的なエネルギー密度はグラファイトの電解質の完全な湿潤に反対する毛管力を克服するために使用することができ、エネルギーがグラファイトに直接印加されるため、真空および熱の下で時間を短縮するかまたは無くすことが要求される。局所的な電気および磁気エネルギーの増大はまた一方の電極のみにおいて電荷移動プロセスを刺激する可能性があり、分極、消耗、あるいは関与無しに最適な固体電解質相間を進化させる。
【0070】
グラファイトの導電性がグラフェン平面に対してはるかに平行であるため、端部におけるエネルギー密度は関心のあるほとんどの周波数において相対的に高い。ほとんどの化学反応が発生している場所であり、Liイオンをインターカレーションするための入り口および存在点であるため、SEIの品質がプロセスに最も影響を与えるのはエッジに沿ったところである。したがってエネルギー効率および伝搬の観点からACエネルギーの印加がほとんどの利益を提供するために固有の区域をターゲットとすることができることは有用である。具体的には、ACエネルギーは端部において初期SEIを急速に発達させるために単一の電極プロセスとして印加することができ、他の場所での発達の心配が少なくなる。
【0071】
[デッドリチウムとのエネルギー結合]
上述のように、粗い特徴は苔状およびフラクタル状のリチウム等のより脆弱な電極表面上に形成され得る。それらは最終的に表面から壊れ、電気的な接触を失う。図9は陽極108上の脆弱なデンドライト成長に起因する電池の電解質層108内のそのようなデッドリチウムを示している。このリチウムの塊の格納されたエネルギー電位は電力ストレージに利用することができず、そのような塊が形成されると電池容量は永久に失われる。
【0072】
陽極108にACエネルギーを提供するための方法はこれらのデッドリチウムの塊を電解質1906に分解し、電池100のエネルギー電位を回復させることを助け得る。具体的には、ACエネルギーは電解質106への分解を開始するデッドリチウムに電荷を非導電的に誘導することができる。周波数に応じて容量性結合または誘導性結合が表面近くで発生する可能性がある。表面に最も近いところでは、電気または磁気エネルギーが支配的であり、エネルギーのほとんどが反応する。デッドマテリアルが表面から遠い場合、エネルギー伝達のメカニズムはよりコヒーレントに放射されるエネルギーにより支配される。これらの二つのメカニズムは放射体の近距離領域および遠距離領域にそれぞれほぼ対応する。放射エネルギーの場合であっても、デッドマターは反応エネルギーをもたらす特有の表面付近の結合現象を有する。デッドマターに電流を誘導することにより、局所的な電流密度は電荷移動プロセスおよび溶解のために十分に増加させることができる。分解した状態では、マターはエネルギーストレージのために再びアクセス可能である。
【0073】
再吸収は様々な方法で監視され得る。例えば、様々な充電および放電サイクルにわたって、充電中および/または明確に印加されるACエネルギーを用いて、ストレージ容量は連続する各サイクルで監視され得る。いくつかの例では、容量は電池が稼働する際に最初に設定または測定された格納容量値と比較されてもよく、または経時的な測定値の傾向(例えば、再吸収処理後の容量の増加と比較して、容量の減少または経時的な容量の明確な減少)と比較されてもよい。再吸収はまた以前に測定された値の時点で存在するデッドマテリアルの再吸収を示す以前に測定された値に対する抵抗の減少を伴うセル抵抗に基づいて決定され得る。
【0074】
[単一の接触点]
電池は伝統的に電極と一点の電気的接触のみを有する。例えば、図10A図10Cは三つの一般的なセルまたは電池構成および外部からアクセス可能な電気接触点を示している。特に、図10Aは固有の寸法に切断された電極シートおよびイオン輸送層を含むポーチセル1002の上面図を示している。電極のカットアウトは電気的接触を提供するためにアクセスすることのできるタブ1004を含む。いくつかの場合では、必要に応じて複数の接触点を有効にするために異なるポイントにさらなるタブが追加され得る。しかしながら、典型的には、電極ごとに単一の電気接触点1004のみが存在する。例示されている例では、第一のタブ1004(A)はカウンター電極のためのものであり、第二のタブ1004(B)は作用電極(例えば、陽極)のためのものである。ACエネルギーはタブ1004(B)において結合され得るか、またはタブ1004(C)は作用電極に接続点を提供し得る。あるいは、AC(+)接続が一方のタブ上でなされ、AC(C)接続が他方のタブ上でなされるように、ACエネルギーが同一の電極上のタブ全体で、またはそのタブ間で印加され得る。
【0075】
図10Bは「缶(can)」内に標準層を含むコインまたはボタン電池1006の代表的な断面図を示している。缶の上部および下部はガスケット1008により互いに電気的に絶縁されている。区域内の任意の場所で間の下部に接触することにより単一の電気接触点1010が作られる。缶は電流コレクタ層(通常、陰極ではアルミニウム、陽極では銅)と直接電気的に接触している。図10Cはポーチセル1002に最も類似するロールされた多層に基づく「ゼリーロール(jelly roll)」電池1012を例示している。ただし、典型的にパッケージングはコインセルと同様に電極ごとの電気接点の単一の点1014(A)および1014(B)に制限される。
【0076】
電池は陽極への単一の接触点を提供するが、本明細書で議論されるACエネルギーは電池の性能結果を達成するために依然として印加され得る。例えば、図11はコインまたはボタン電池セル1008の陽極1106にACエネルギーを提供する単一の接触点を示している。3Dの図は異なる時間に、異なる単一の接触点(A−中央に配置された1102、B−オフセット1104)から陽極表面全体を伝搬するEMパルス(1108および1110)を示している。一般に、波長≫陽極直径の場合、接触点の位置はそれほど重要ではない。波長≪陽極直径の場合、電極の境界に沿った反射は表面にわたるより複雑なパターンおよび定常波に寄与する。したがって、電池は単一の接触点に制限されることが多いため、陽極上の単一の接触点の位置に基づいて生成される定常AC波への影響が考慮される。
【0077】
[伝送されるRF信号]
直接の電気的接触において供給源を介して伝導される代わりに、AC/RFは本明細書に記載されるものと同様の利益を誘導するためにある距離にわたって電極に伝送され得る。この場合において、伝送機の指向性および放射フィールド内の電極の向きが主な考慮事項である。大型の電池パック等のいくつかの実施形態では、陽極へのアクセスが制限されているか、または困難である。このような状況では、電池パック内のセルの電極にAC信号を放射するために、戦略的に配置された伝送器は電池パックの全体に配置され得る。状況によっては、シールドアンテナまたは指向性アンテナは陽極のみがターゲットである状況において陰極をシールドするため、あるいは陽極にエネルギーを方向付けることのみのために配置され得る。
【0078】
[陽極および陰極の独立した変調]
いくつかの例では、AC信号は電池の陽極および陰極の両方において必ずしも比例的または反比例的に印加されなくてもよい。むしろ、陰極における信号入力は(周波数に応じて)コンダクタンス、結合、または伝送を介して陽極に影響を及ぼす可能性があり、その逆もまた同様である。このような場合では、電池がアクティブであっても休止状態であっても、電池の回復(電極/電解質界面の均質化)を引き起こすためにACエネルギーを使用することができる。AC信号が局所的な拡散および電荷移動プロセスを誘導するのに十分である場合、電池が充電、放電、または休止しているかどうかに関係なく電極に置いて均質化が発生する可能性がある。
【0079】
ACエネルギーの周波数および電力は可能な最もエネルギー効率の高い方法で所望の効果(デンドライトの防止、SEIの薄化または厚化、イオンインターカレーション等)を達成するように選択されるべきである。全体的なプロセス効率は電池の充電にとって重要であり、ほとんどのアプリケーションでは効率のわずかな低下がアプリケーションに著しい影響を及ぼす。全体的な効率の計算ではストレージ容量、寿命(合計サイクル)、または同様の電池のメトリックに対する比率として両方の電極間に入力されるエネルギー(DC、標準)とACエネルギーに使用されるエネルギーとを組み合わせることが要求される。一例では、ACはイオンのインターカレーションを増加させ、必要とされるガルバニック電位を低下させ得る。別の例では、ACエネルギーは電極の構造の変化に追従するSEIの回復レートを改善し、電池の寿命を増加させる。AC信号への追加エネルギーの利益は場合によりこれらの結果と比較検討しなければならない。
【0080】
特にEV電池パックまたは固定アプリケーション等の大規模システムの場合、高速充電を伴う状況ではDC入力のエネルギー要件は既に高い(システムへの相対的な追加の負荷は低い可能性がある)ため、AC入力のための追加のエネルギーにより耐性がある可能性がある。充電時、AC入力はデンドライトの形成および(イオンチャネルを含む)SEIの非一様な多孔性の発達を阻止すること、ならびにセルの電位を上昇させずにリチウムの拡散を増加させることを目的とし得る。SEIの成長を調整し、層が厚くなりすぎるのを防ぐこともできる。セルが放電しているため、グラファイトからの刺激的なイオン拡散は有益なままである。
【0081】
放電中またはセルが休止している時に印加されるACエネルギーはまたSEIが回復する(電極変形の区域において再形成する、またはSEIを多孔質にさせた条件の後に再び高密度化する)ためのより穏やかな環境を提供し、積極的な充電サイクルまたは動作条件の後に均一性を取り戻し得る。さらに、デッドリチウムおよび既存のデンドライトはこれらのステージのいずれかにおいて分解され得る。
【0082】
[動電フローおよび拡散効果]
ACエネルギーが電極全体を伝搬する際の電気力学的挙動は電極|電解質、電極|SEI、SEIおよびSEI|電解質界面において動電効果を生じさせる可能性がある。これらの効果の性質は界面における他の層に対する一つの層の材料特性に依存する。例えば、100GHz等の従来の考慮事項を大幅に超える高周波は、電極に印加された時に電極が表面付近の電解質の定常拡散パターンを変更する可能性がある。正確なパターンは周波数に依存する。
【0083】
以前に議論されたように、局所的な電荷密度の大きさ、電子経路、および局所的な電場勾配は全て周波数に依存し、一般的に比例して増加する。例外は共振(エネルギーが本質的に容量性または誘導性になる)または周辺環境によるエネルギー吸収の所定の条件下で生じ得る。印加される周波数が層の電荷緩和時間よりも遅い場合、導電メカニズムは界面への、およびそこからの電荷の通過を支配する。導電が一方の層を支配的であるものの他方の層では支配的でない場合、界面は分極する。印加される周波数が層の電荷緩和時間よりも速い場合、界面分極は二つの層の誘電率の差に比例する。
【0084】
ACエネルギーに応答する任意の界面の基本的な挙動は上記の一般的なガイドラインおよび全ての層の相対的な特性に基づいて推定することができる。これは以下の特定の効果を達成するために適切な波形を決定し始めるためのもっとも単純な基礎とすることができる。
・電極(リチウム):高導電率、低誘電率
・SEI:低導電率、中程度の誘電率
・有機電解質:中程度の導電率、中−高誘電率
考慮されるインタフェースに関係なく、インタフェースの寸法または特徴全体で共振に近付くかまたはそれを超える周波数において、影響は混合されて空間的に依存する−すなわち局所化される。正確な周波数および電力は表面またはその付近で拡散のパターンの生成する誘電泳動力を誘導し得る。換言すると、所与のACエネルギー印加の周波数および電力は電池内部の材料の電気的特性および誘電特性の違いに基づく可能性がある。
【0085】
[設計された電池セル]
これまでに議論された場合において、印加されるエネルギーの性質ならびに拡散および電荷移動プロセスへのその影響のメカニズムは電極の寸法と比較した印加される波長の関係に依存し得る。具体的には、どのように共振するかは印加された周波数における電極、または電極上の特徴である。これはセルの形状または設計を変更することなくプロセスにより電気化学的な挙動が修正される必要のある電池システムに適切な焦点である。
【0086】
電池を再設計することが可能な場合、電極の表面に印加されるエネルギーをガイドまたは形成するために調整された(パターニングされた)共振層を電極に近接して追加することができる。例えば、図12はコインセル電池構成1200のコンポーネント層を示している。この製造されたセルでは、陽極1202は一次導電層との電気的な結合のために誘電層1204および導電性/パターニング層1206により修正される。例示的パターン層A−C1218−1212はコインセル1200に含まれ得る様々なパターニング層を示している。示されるように、パターニング層1208の形状は例Aの一次層と一致している。例Bでは、パターニング層1210は磁気エネルギーとより強く結合するためのリングを含む。例Cでは、パターニング層1212は共振周波数を制御し、主な電極で電流密度の固有のパターンを誘導するための複雑な形状を含む。一般に、パターニング層1206はセルの陽極に印加されるAC波を形成または生成するために任意の形状およびサイズをとり得る。
【0087】
修正された電池セルの場合では、ACがパターニング層1206に印加されている間、DCエネルギーが電極と接触している一次導電層1202に印加され得る。パターニング層1206は一次導電層と類似していてもしていなくてもよい所望の共振挙動を備えた特有の導電経路で設計される。所与の電池層、特に電池の電極は層の寸法および材料特性に基づいて共振する。パターニング層は共振するように調整し、AC信号の存在下で全体的な共振に影響を及ぼすためにターゲットの電池層と相互作用させることができる。一例では、コンピュータシミュレーションは任意の所与のアプリケーションのための固有のパターンを開発し、デンドライトの抑制等の全体的な意図された影響のパターンを調節あるいは調整するために使用され得る。慎重にパターニングされた導電層に印加されるACエネルギーは、必ずしもパターンと一致しない特有の方向に流れるようにすることができる。パターニング層が薄い誘電層により電極から分離されている場合、パターニング層のACエネルギーから生じる電場および磁場が誘電層を通過してディスク電極の電場および磁場に影響を与える。
【0088】
別の場合では、一次導電層1202は誘電層を通るかまたはその周囲の一または二以上の導電性チャネルを介してパターニング導電層1206に接続することができるため、DCおよびACは単一の点に印加され、両方の層に到達することができる。この場合では、一次導電層1202の共振挙動はパターニング層1206と結合することにより修正され、恐らくは支配される。パターニング層1206はまた一次導電層のみがDCおよび/またはAC導電性入力を受け取る際に一次導電層1202に依然として電気化学プロセスに影響を及ぼし得る。
【0089】
上述のように、パターニング層は多くの形態をとることができる。例A1208の共振挙動は電池の動作中に一次層が変化しても調整される。結合は導電層中の誘電層全体に発生する。これにより導電性電解質に起因して減衰することなくAC信号をより均一に伝搬させることが可能になる。別の例では、パターニング層は例B1210の場合のように印加されたAC周波数において磁気エネルギーとより強く結合する閉ループであり得る。
【0090】
別の例では、パターニング層は最も強い容量性−誘導性遷移をシフトする(例えば、共振点を低い周波数にシフトする)複雑な形状を伴い得る。形状はまた一次導電層(例C1212)上に電磁挙動の特有のパターニングされた領域を誘導し得る。非常に特殊な場合の一つでは、パターンは現在の変位の方向パターンを誘導する偽装表面プラズモンポラリトンに影響を与える可能性がある。パターニング層は直接的な導電性入力を受けず、代わりに結合を通じて完全に一次導電層での電気化学プロセスに影響を与える可能性がある。
【0091】
[他の電池タイプ]
亜鉛電池はリチウムイオン(特に亜鉛空気電池)と類似またはそれ以上のエネルギー容量を有する。亜鉛およびリチウムはどちらも負の金属であり、電池内で利用される時、デンドライトと同様の問題に直面する。主な違いは、亜鉛は水性(通常はアルカリ性)で使用できることである。デンドライトはまた充電式亜鉛電池のZn電子を循環させる能力の大きな障害である。それらは容易に形成され、陽極および陰極を損傷または短絡させる可能性がある。デンドライトの抑制は電解質に有機添加物を使用することにより達成することができ、有機添加物は最終的に電極に共堆積し、消耗する。様々な金属または金属酸化物の少量の濃度は可逆的な副産物の分解度および移動度に影響を与えるために追加することができ、サイクル中により均一な表面が維持される。これらのタイプの添加物の必要性を防ぐために、本明細書に記載のプロセスおよび方法はデンドライトの形成を抑制し、充電式亜鉛電池の亜鉛電極の表面を均質化するために使用され得る。
【0092】
鉛蓄電池に関して、本明細書に記載の方法は電気化学セルおよびその電気化学物質の構成を成すために修正され得る。リチウムベースの電池とは異なり、陽極および陰極両方のめっきは充電および放電中に腐食する。既存のセルには二つのポートしかないため、横断電流はセルの遠い壁で反射するように計算された一つのポートで送信され、入り口のポートに戻る。したがって横断電流の波形は鉛蓄電池の陽極および陰極表面全体に相対的にバランスのとれた時間平均電流分布を達成するためにいくつかの周波数を通じて掃引される。
【0093】
いくつかの実施形態を説明してきたが、当業者においては様々な修正、代替構造および等価物が本開示の精神から逸脱することなく使用され得ることを認識されるであろう。そしていくつかの周知のプロセスおよび要素は開示された実施形態を不必要に不明瞭にすることを回避するために説明されていない。そのため、上記の説明は翻文書を限定するのもとして解釈されるべきではない。
【0094】
当業者においては開示された実施形態が限定ではなく例として教示することを理解されたい。したがって、上記の説明または図面に示された事項は限定的な意味でなく例示的なものとして解釈されるべきである。これらの主張は記載される全ての一般的および固有の機能、および現在の方法およびシステムの全ての記載を網羅する必要があり、これは言語の問題としてその間にあると言える。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13
【国際調査報告】