特表2021-511821(P2021-511821A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-511821タバコ煙の温度を低減する低吸入抵抗ポリ乳酸長繊維束フィルタロッドの調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-511821(P2021-511821A)
(43)【公表日】2021年5月13日
(54)【発明の名称】タバコ煙の温度を低減する低吸入抵抗ポリ乳酸長繊維束フィルタロッドの調製方法
(51)【国際特許分類】
   A24D 3/02 20060101AFI20210416BHJP
   A24D 3/08 20060101ALI20210416BHJP
【FI】
   A24D3/02
   A24D3/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-558528(P2020-558528)
(86)(22)【出願日】2019年4月18日
(85)【翻訳文提出日】2020年12月14日
(86)【国際出願番号】CN2019083184
(87)【国際公開番号】WO2019201290
(87)【国際公開日】20191024
(31)【優先権主張番号】201810352351.7
(32)【優先日】2018年4月19日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520401631
【氏名又は名称】ユンナン タバコ バイオロジカル テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】YUNNAN TOBACCO BIOLOGICAL TECHNOLOGY CO., LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤン タオ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ジガン
(72)【発明者】
【氏名】ファン シンレイ
(72)【発明者】
【氏名】レイ リャンロン
【テーマコード(参考)】
4B045
【Fターム(参考)】
4B045BA02
4B045BA05
4B045BB01
4B045BB03
4B045BD32
4B045BD34
4B045BD52
(57)【要約】
本発明は、相変化材料混合物の調製、香味物質を含有する相変化材料の調製、および香味徐放性フィルタロッドの調製等の工程を含む、タバコ煙の温度を低減する低吸入抵抗PLA長繊維束フィルタロッドおよびその調製方法に関する。本発明は、相変化材料の添加量を増やし、低吸入抵抗のPLA長繊維束フィルタロッドと組み合わせること、および三重の温度低減の仕組みを有することにより、紙巻タバコおよび非燃焼・加熱式タバコの全体的な吸入感を改善するとともに、タバコ煙の温度も低減させることによって、消費者の吸い心地を向上させており、加工の工程が簡便であって、商業生産に適する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タバコ煙の温度を低減する低吸入抵抗ポリ乳酸長繊維束フィルタロッドの調製方法において、
ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール1000、ポリエチレングリコール1500、水、およびステアリン酸を、10〜30:15〜40:10〜50:10〜20:5〜10の質量比で混合して、相変化材料混合物を得る、前記相変化材料混合物を調製する工程Aと、
香味物質と、工程Aで得られた前記相変化材料混合物とを、10〜70:35〜85の質量比で混合した後、密閉した水浴中で温度60℃〜80℃の条件下で撹拌して加熱溶解し、さらに温度90℃で保温して、香味物質を含有する相変化材料溶液を得る、前記香味物質を含有する相変化材料を調製する工程Bと、
工程Bで得られた前記香味物質を含有する相変化材料溶液を、香味物質を含有する相変化材料溶液とフィルタのポリ乳酸繊維の質量比が1〜15:8〜10となるように、成形ノズル付きスプレー装置を用いてフィルタのポリ乳酸繊維上にスプレーし、フィルタロッド機により硬化成形して、前記タバコ煙の温度を低減する低吸入抵抗ポリ乳酸繊維フィルタロッドを得る、香味徐放性フィルタロッドを調製する工程Cと、
を含むことを特徴とする、タバコ煙の温度を低減する低吸入抵抗ポリ乳酸繊維フィルタロッドの調製方法。
【請求項2】
前記工程Bにおいて、前記香味物質は、アルコール抽出物、食品用香味料および保湿剤の中から選ばれた一種または多種の香味物質であることを特徴とする、
請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
前記アルコール抽出物は、梅エキス、ツリーモスエキスおよび甘草エキスの中から選ばれた一種または多種のアルコール抽出物であり、前記食品用香味料は、リキュール香、フラワー香、フルーツ香およびミント香の香味料の中から選ばれた一種または多種の香味料であり、前記保湿剤は、グリセリン、プロピレングリコールおよびソルビトールの中から選ばれた一種または多種の保湿剤であることを特徴とする、
請求項2に記載の調製方法。
【請求項4】
工程Cにおいて、前記ノズルは、一本または複数本の相変化材料線から構成される形状であることを特徴とする、
請求項1に記載の調製方法。
【請求項5】
前記形状は、線、円形、多角形または不定形であることを特徴とする、
請求項4に記載の調製方法。
【請求項6】
工程Bにおいて、前記相変化材料の香味物質はフィルタロッドの中心に位置することを特徴とする、
請求項1に記載の調製方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の調製方法で調製される、
タバコ煙の温度を低減する低吸入抵抗ポリ乳酸長繊維束フィルタロッド。
【請求項8】
前記ポリ乳酸長繊維束フィルタロッドの吸入抵抗は300〜1200Paであることを特徴とする、
請求項1に記載の調製方法。
【請求項9】
前記ポリ乳酸長繊維束フィルタロッドの円周は16.0〜25.0mmであることを特徴とする、
請求項1に記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2018年4月19日出願の中国特許出願CN201810352351.7号、発明名称「タバコ煙の温度を低減する低吸入抵抗ポリ乳酸長繊維束フィルタロッドに用いる調製方法」に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は、タバコ製品の生産技術分野に属する。より具体的には、本発明は、タバコ煙の温度を低減する低吸入抵抗ポリ乳酸長繊維束フィルタロッドの調製方法に関する。
【背景技術】
【0003】
タバコ煙は、タバコ葉の燃焼と蒸留、熱分解の過程で放出される。タバコ煙は、消費者の口腔内に吸入される前にフィルタでろ過されることにより温度がわずかに下がる。しかしながら、口腔に到達する主流煙の温度は、なお35〜90℃に達しうる。タバコ煙の温度が高いと、タバコ煙による刺激や口腔の灼熱感が生じ、消費者の吸い心地が悪化するが、この状況は紙巻タバコの吸い口において特に顕著に発生する。開発者らは、紙巻タバコ煙の温度を抑えるためにフィルタの長さを長くしたり、通気技術を応用したりしているが、このような技術にはタバコ煙の濃度を低下させ、吸入しにくくさせるなどの課題があるため、ある程度限定的な利用にとどまっている。
【0004】
非燃焼・加熱式タバコ製品は、炭素熱源による加熱または電気加熱によって200〜400℃に加熱する条件下で、タバコ葉物質を燃焼させることなく低温で熱分解して煙を発生させる製品であり、従来の紙巻タバコに比べ、消費者にタバコ葉の風味を味わわせつつ、一般的な紙巻タバコの燃焼過程で熱分解や蒸留によって生じる有害な煙成分を減少させることができる。ろ過された後のタバコ煙の温度は45〜90℃であるが、市販の非燃焼・加熱式タバコ製品のタバコスティック構造はいずれも温度低減構造を備えており、それによってタバコ煙の温度を下げ、吸い心地の向上を図っている。しかしながら、理想的な効果が得られないため、非燃焼・加熱式タバコ製品においては、タバコ煙の温度低減が非常に重要な技術となっている。
【0005】
フィルタロッドにおいては相変化材料の応用が日々拡大しており、主として香味物質の担体として用いられている。CN105595417A号公報には、線状の複合ゲル香味徐放性フィルタロッドおよびその調製方法並びにその用途が開示されており、線状の香味フィルタロッドの香味添加量、香味添加の均一性、可制御性および安定性を効果的に高めることができるとされている。しかしながら、相変化材料が温度低減機能を有するという報告はほとんどなされていない。相変化材料自体が一種の吸熱反応であり、固体から液体に変化する過程においては大量の熱を吸収する必要があるが、これも物理的な温度低減の過程の一つである。
【0006】
そこで、本発明者らは従来技術を基礎として、大量の実験、研究および総括を行い、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、タバコ煙の温度を低減する低吸入抵抗ポリ乳酸長繊維束フィルタロッドに用いる調製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記の技術的解決手段により実現される。
【0009】
本発明は、タバコ煙の温度を低減する低吸入抵抗ポリ乳酸(PLA)長繊維束フィルタロッド用いる調製方法に関する。
【0010】
当該調製方法の工程は以下の通りである。
【0011】
A.相変化材料混合物の調製
【0012】
ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール1000、ポリエチレングリコール1500、水、およびステアリン酸を、10〜30:15〜40:10〜50:10〜20:5〜10の質量比で混合して、相変化材料混合物を得る。
【0013】
B.香味物質を含有する相変化材料の調製
【0014】
香味物質と、工程Aで得られた相変化材料混合物とを、10〜70:35〜85の質量比で混合した後、密閉した水浴中で温度60℃〜80℃で撹拌する条件下で加熱溶解し、さらに温度90℃で保温して、香味物質を含有する相変化材料溶液を得る。
【0015】
C.香味徐放性フィルタロッドの調製
【0016】
工程Bで得られた香味物質を含有する相変化材料溶液を、香味物質を含有する相変化材料溶液とフィルタのポリ乳酸長繊維束の質量比が1〜15:8〜10となるように、成形ノズル付きスプレー装置を用いてフィルタロッドのポリ乳酸長繊維束上にスプレーし、フィルタロッド機により硬化成形して、タバコ煙の温度を低減する低吸入抵抗ポリ乳酸長繊維束フィルタロッドを得る。
【0017】
本発明の好ましい実施形態によれば、香味物質は、アルコール抽出物、食品用香味料および保湿剤の中から選ばれた一種または多種の香味物質である。
【0018】
本発明の他の好ましい実施形態によれば、アルコール抽出物は、梅エキス、ツリーモスエキスおよび甘草エキスの中から選ばれた一種または多種のアルコール抽出物であり、食品用香味料は、リキュール香、フラワー香、フルーツ香およびミント香の香味料の中から選ばれた一種または多種の香味料であり、保湿剤は、グリセリン、プロピレングリコールおよびソルビトールの中から選ばれた一種または多種の保湿剤である。
【0019】
本発明の他の好ましい実施形態によれば、ノズルは、一本または複数本の相変化材料線から構成される形状である。
【0020】
本発明の他の好ましい実施形態によれば、形状は、線、円形、多角形または不定形である。
【0021】
本発明の他の好ましい実施形態によれば、相変化材料の香味物質はフィルタロッドの中心に位置する。
【0022】
本発明はさらに、上述の調製方法で調製されたタバコ煙の温度を低減する低吸入抵抗ポリ乳酸長繊維束フィルタロッドに関する。
【0023】
タバコ煙の温度を低減する低吸入抵抗ポリ乳酸長繊維束フィルタロッドの構造について、図1を参照する。
【0024】
本発明の好ましい実施形態によれば、ポリ乳酸長繊維束フィルタロッドの吸入抵抗は300〜1200Paである。
【0025】
本発明の他の好ましい実施形態によれば、ポリ乳酸長繊維束フィルタロッドの円周は16.0〜25.0mmである。
【0026】
本発明は、相変化材料の添加量を増やし、低吸入抵抗のPLA長繊維束フィルタロッドと組み合わせ、かつ三重の温度低減の仕組みにより紙巻タバコおよび非燃焼・加熱式タバコの全体的な吸入感を改善するとともに、タバコ煙の温度も低減させることで、消費者の吸い心地を向上させており、加工の工程が簡便であって、商業生産に適する。
【発明の効果】
【0027】
本発明の有益な効果は以下の通りである。
【0028】
本発明は、タバコのフィルタロッドまたは非燃焼・加熱式タバコ製品に適する。本発明に用いられるPLA長繊維束は、生分解性を有し、かつ熱伝達率が低い。また、タバコ煙が相変化材料を通過して固体から液体へと変化することも吸熱の過程であって、タバコ煙の温度が大幅に低減すると同時に、香味の担体である相変化材料が、通過するタバコ煙の溶出により、自身の中に包み込まれた香味物質および水を放出するため、タバコ煙の香味物質の多様性が増す。また、水は比熱容量が大きいため、温度低減にも一定の作用をもたらす。本発明は、相変化材料の添加量を増やし、低吸入抵抗のPLA長繊維束フィルタロッドと組み合わせ、かつ三重の温度低減の仕組みにより紙巻タバコおよび非燃焼・加熱式タバコの全体的な吸入感を改善するとともに、タバコ煙の温度も低減させることで消費者の吸い心地を向上させており、加工の工程が簡便であって、商業生産に適する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明のタバコ煙の温度を低減する低吸入抵抗ポリ乳酸長繊維束フィルタロッドの構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
下記の実施例によって、本発明への理解をより一層深めることができる。
【0031】
実施例1:タバコ煙の温度を低減する低吸入抵抗PLA長繊維束フィルタロッドの調製
【0032】
本実施例の実施工程は以下の通りである。
【0033】
A.相変化材料混合物の調製
【0034】
質量比15:22:46:11:6で、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール1000、ポリエチレングリコール1500、水、およびステアリン酸を混合し、相変化材料混合物を得る。
【0035】
B.香味物質を含有する相変化材料の調製
【0036】
ツリーモス抽出物と、工程Aで得られた相変化材料混合物とを46:54の質量比で混合した後、密閉した水浴中、温度67℃の条件下で撹拌して加熱溶解し、さらに温度90℃で保温して、香味物質を含有する相変化材料溶液を得る。
【0037】
C.香味徐放性フィルタロッドの調製
【0038】
工程Bで得られた香味物質を含有する相変化材料溶液を、香味物質を含有する相変化材料溶液とフィルタのPLA長繊維束との質量比が2:7となるように、成形ノズル付きスプレー装置を用いてフィルタのPLA長繊維束上にスプレーし、フィルタロッド機により硬化成形して、タバコ煙の温度を低減する低吸入抵抗PLA長繊維束フィルタロッドを得る。一般的な吸入抵抗測定方法を用いて測定したところ、当該フィルタロッドの吸入抵抗は547Pa、円周は24.2mmであった。
【0039】
一般的なタバコ巻き上げ設備を用いて、本実施例で調製されるPLA長繊維束フィルタロッドを一般的な紙巻タバコの後端に巻き付け、タバコサンプルAを得る。また、改造されたタバコ巻き上げ設備を用いて、PLA長繊維束フィルタロッドを非燃焼・加熱式タバコスティックの後端に巻き付け、タバコサンプルA−1を得る。
【0040】
実施例2:タバコ煙の温度を低減する低吸入抵抗PLA長繊維束フィルタロッドの調製
【0041】
本方法の実施工程は以下の通りである。
【0042】
A.相変化材料混合物の調製
【0043】
ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール1000、ポリエチレングリコール1500、水、およびステアリン酸を、21:24:39:9:7の質量比で混合して、相変化材料混合物を得る。
【0044】
B.香味物質を含有する相変化材料の調製
【0045】
シトラスミントのフレーバーエッセンスと、工程Aで得られた相変化材料混合物とを53:47の質量比で混合した後、密閉した水浴中、温度72℃の条件下で撹拌して加熱溶解し、さらに温度90℃で保温して、香味物質を含有する相変化材料溶液を得る。
【0046】
C.香味徐放性フィルタロッドの調製
【0047】
工程Bで得られた香味物質を含有する相変化材料溶液を、香味物質を含有する相変化材料溶液とフィルタのPLA長繊維束との質量比が5:10となるように、成形ノズル付きスプレー装置を用いてフィルタのPLA繊維上にスプレーし、フィルタロッド機により硬化成形して、タバコ煙の温度を低減する低吸入抵抗PLA長繊維束フィルタロッドを得る。一般的な吸入抵抗測定方法を用いて測定したところ、当該フィルタロッドの吸入抵抗は834Pa、円周は24.2mmであった。
【0048】
一般的なタバコ巻き上げ設備を用いて、本実施例で調製されるPLA長繊維束フィルタロッドを一般的な紙巻タバコの後端に巻き付け、タバコサンプルBを得る。また、改造されたタバコ巻き上げ設備を用いて、PLA長繊維束フィルタロッドを非燃焼・加熱式タバコスティックの後端に巻き付け、タバコサンプルB−1を得る。
【0049】
実施例3:タバコ煙の温度を低減する低吸入抵抗PLA長繊維束フィルタロッドの調製
【0050】
本方法の実施工程は以下の通りである。
【0051】
A、相変化材料混合物の調製
【0052】
ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール1000、ポリエチレングリコール1500、水、およびステアリン酸を、23:14:46:12:5の質量比で混合して、相変化材料混合物を得る。
【0053】
B.香味物質を含有する相変化材料の調製
【0054】
プロピレングリコールとソルビトールとを1:2の質量比で混合して香味物質を得る。そして、当該香味物質と工程Aで得られた相変化材料混合物とを39:61の質量比で混合した後、密閉した水浴中、温度65℃の条件下で撹拌して加熱溶解し、さらに温度90℃で保温して、香味物質を含有する相変化材料溶液を得る。
【0055】
C.香味徐放性フィルタロッドの調製
【0056】
工程Bで得られた香味物質を含有する相変化材料溶液を、香味物質を含有する相変化材料溶液とフィルタのPLA長繊維束との質量比が10:10となるように、成形ノズル付きスプレー装置を用いてフィルタのPLA長繊維束上にスプレーし、フィルタロッド機により硬化成形して、タバコ煙の温度を低減する低吸入抵抗PLA長繊維束フィルタロッドを得る。一般的な吸入抵抗測定方法を用いて測定したところ、当該フィルタロッドの吸入抵抗は1124Pa、円周は24.2mmであった。
【0057】
一般的なタバコ巻き上げ設備を用いて、本実施例で調製されるPLA長繊維束フィルタロッドを一般的な紙巻タバコの後端に巻き付け、タバコサンプルCを得る。また、改造されたタバコ巻き上げ設備を用いて、PLA長繊維束フィルタロッドを非燃焼・加熱式タバコスティックの後端に巻き付け、タバコサンプルC−1を得る。
【0058】
実施例1〜3で調製されたタバコサンプルについて、中国国家基準YC/T29−1996に規定されるタバコ吸入モデルに基づき喫煙シミュレーションを行い、K型熱電対を用いて、タバコ煙吸入時のタバコフィルタロッド中間の中心位置の温度を測定した。その測定結果を表1および表2に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
表1および表2の測定データから分かるように、対照サンプルに比べ、本発明の低吸入抵抗PLAフィルタロッドを用いたタバコ製品は、主流煙の温度が低く、一定の比率で相変化材料を添加すると、口腔内の灼熱感が生じず、吸い心地が良好であるとともに、フレーバー物質が均一に放出されており、相変化材料の添加量が増加するにつれて、タバコ煙の温度低減が顕著になる。その原因はつまるところ、PLAの熱伝達率が低いこと、相変化材料の物理的な吸熱および相変化材料物中の水の比熱容量が大きいことにあり、三重の温度低減の仕組みにより、主流煙が通過する際に主流煙の温度が大幅に低減され、相変化材料の添加量が多くなるほど、温度低減効果が顕著になる。本発明の相変化材料においては、温度低減機能が、香味物質の担体としての機能に勝る。
【符号の説明】
【0062】
1 成形用ペーパー
2 PLA長繊維束
3 相変化材料
図1
【手続補正書】
【提出日】2021年1月26日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タバコ煙の温度を低減する低吸入抵抗ポリ乳酸長繊維束フィルタロッドの調製方法において、
ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール1000、ポリエチレングリコール1500、水、およびステアリン酸を、10〜30:15〜40:10〜50:10〜20:5〜10の質量比で混合して、相変化材料混合物を得る、前記相変化材料混合物を調製する工程Aと、
食品用香味料または保湿剤の中から選ばれた一種または多種の香味物質と、工程Aで得られた前記相変化材料混合物とを、10〜70:35〜85の質量比で混合した後、密閉した水浴中で温度60℃〜80℃の条件下で撹拌して加熱溶解し、さらに温度90℃で保温して、前記香味物質を含有する相変化材料溶液を得る、前記香味物質を含有する相変化材料を調製する工程Bと、
工程Bで得られた前記香味物質を含有する相変化材料溶液を、前記香味物質を含有する相変化材料溶液とフィルタのポリ乳酸繊維の質量比が1〜15:8〜10となるように、成形ノズル付きのスプレー装置を用いてフィルタのポリ乳酸繊維上にスプレーし、フィルタロッド機により硬化成形して、前記タバコ煙の温度を低減する低吸入抵抗ポリ乳酸繊維フィルタロッドを得る、香味徐放性フィルタロッドを調製する工程Cと、
を含むことを特徴とする、タバコ煙の温度を低減する低吸入抵抗ポリ乳酸繊維フィルタロッドの調製方法。
【請求項2】
前記食品用香味料は、リキュール香、フラワー香、フルーツ香およびミント香の香味料の中から選ばれた一種または多種の香味料であり、前記保湿剤は、グリセリン、プロピレングリコールおよびソルビトールの中から選ばれた一種または多種の保湿剤であることを特徴とする、
請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
工程Cにおいて、前記成形ノズルは、一本または複数本の相変化材料線から構成される形状であることを特徴とする、
請求項1に記載の調製方法。
【請求項4】
前記形状は、線、円形、多角形または不定形であることを特徴とする、
請求項3に記載の調製方法。
【請求項5】
工程Bにおいて、前記相変化材料中の前記香味物質はフィルタロッドの中心に位置することを特徴とする、
請求項1に記載の調製方法。
【請求項6】
前記低吸入抵抗ポリ乳酸長繊維束フィルタロッドの吸入抵抗は300〜1200Paであることを特徴とする、
請求項1に記載の調製方法。
【請求項7】
前記低吸入抵抗ポリ乳酸長繊維束フィルタロッドの円周は16.0〜25.0mmであることを特徴とする、
請求項1に記載の調製方法。
【国際調査報告】