特表2021-511891(P2021-511891A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-511891血管平滑筋細胞増殖を減少させるための方法およびデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-511891(P2021-511891A)
(43)【公表日】2021年5月13日
(54)【発明の名称】血管平滑筋細胞増殖を減少させるための方法およびデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61L 31/10 20060101AFI20210416BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20210416BHJP
   A61L 31/06 20060101ALI20210416BHJP
   A61L 31/12 20060101ALI20210416BHJP
   A61L 31/16 20060101ALI20210416BHJP
   A61K 31/353 20060101ALI20210416BHJP
   A61K 31/222 20060101ALI20210416BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20210416BHJP
   C08L 33/06 20060101ALI20210416BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20210416BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20210416BHJP
   C08K 5/107 20060101ALI20210416BHJP
【FI】
   A61L31/10
   A61M25/10
   A61L31/06
   A61L31/12
   A61L31/16
   A61K31/353
   A61K31/222
   A61P9/10 101
   C08L33/06
   C08L67/04
   C08K5/13
   C08K5/107
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】44
(21)【出願番号】特願2020-541901(P2020-541901)
(86)(22)【出願日】2019年2月1日
(85)【翻訳文提出日】2020年9月28日
(86)【国際出願番号】US2019016302
(87)【国際公開番号】WO2019152811
(87)【国際公開日】20190808
(31)【優先権主張番号】62/625,026
(32)【優先日】2018年2月1日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】515127706
【氏名又は名称】ボード オブ スーパーバイザーズ オブ ルイジアナ ステイト ユニバーシティ アンド アグリカルチュラル アンド メカニカル カレッジ
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF SUPERVISORS OF LOUISIANA STATE UNIVERSITY AND AGRICULTURAL AND MECHANICAL COLLEGE
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】タミー・レネー・デュガス
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーナ・サブリオフ
(72)【発明者】
【氏名】カルロス・アステテ
【テーマコード(参考)】
4C081
4C086
4C206
4C267
4J002
【Fターム(参考)】
4C081AC10
4C081CA082
4C081CA172
4C081CC01
4C081CE02
4C081DA11
4C081DC01
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA34
4C086MA65
4C086NA10
4C086ZA45
4C206AA01
4C206AA02
4C206DB04
4C206DB58
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA11
4C206MA13
4C206MA54
4C206MA85
4C206NA10
4C206ZA45
4C267AA06
4C267BB06
4C267BB13
4C267BB26
4C267CC09
4C267EE08
4C267GG16
4C267HH08
4J002BG02W
4J002CF19X
4J002EH066
4J002EJ016
4J002FD206
4J002GB01
4J002GH00
(57)【要約】
ある態様において、本発明は、ポリマーナノ粒子組成物(pNP)に係る組成物、方法およびデバイス、治療剤を含むpNP組成物、本発明の治療剤を含むpNPを含む薬物被覆バルーンを含むデバイスおよび本発明の組成物およびデバイスを使用する末梢動脈疾患を処置する方法に関する。さらなる態様において、pNPは、バルーンマトリクスへの強固な結合、続く血管壁の負荷電二層への接着のために正電荷を有する乳酸グリコール酸共重合体を含む。なおさらなる態様において、治療剤はレスベラトロールまたはその誘導体、ケルセチンまたはその誘導体またはそれらの組み合わせを含む。この要約は、特定の分野の検索を目的とする走査ツールとして意図され、本開示を限定する意図はない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一ポリマー、第二ポリマー、第一治療剤および所望により第二治療剤を含むナノ粒子組成物であって;
ここで、第一ポリマーはポリマー鎖あたり1以上の正荷電部分を含むアクリレートポリマーであり;
ここで、第二ポリマーはポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)、ポリ(グリコリド−コ−カプロラクトン)およびポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド−コ−ε−カプロラクトン)からなる群から選択され;
ここで、第一治療剤はレスベラトロール、その薬学的に許容される塩および薬学的に許容される誘導体からなる群から選択され;そして
ここで、第二治療剤はケルセチン、その薬学的に許容される塩および薬学的に許容される誘導体からなる群から選択される、
ナノ粒子組成物。
【請求項2】
第一ポリマーがアクリレートを含むコポリマーである、請求項1に記載のポリマーナノ粒子組成物。
【請求項3】
アクリレートを含むコポリマーが約60重量%メチルメタクリレート、30重量%エチルアクリレートおよび10重量%2−トリメチルアンモニウムエチルメタクリレートクロライドを含む、請求項2に記載のポリマーナノ粒子組成物。
【請求項4】
第二ポリマーがポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)、ポリ(グリコリド−コ−カプロラクトン)およびポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド−コ−ε−カプロラクトン)からなる群から選択される、請求項1に記載のポリマーナノ粒子組成物。
【請求項5】
第二ポリマーがポリ(ラクチド−コ−グリコリド)である、請求項4に記載のポリマーナノ粒子組成物。
【請求項6】
第一治療剤がトリアセチルレスベラトロールである、請求項1に記載のポリマーナノ粒子組成物。
【請求項7】
第二治療剤がケルセチンである、請求項1に記載のポリマーナノ粒子組成物。
【請求項8】
第一治療剤および第二治療剤が約1:1〜約1:5の比で存在する、請求項1に記載のポリマーナノ粒子組成物。
【請求項9】
直径約100nm〜約300nmを有するナノ粒子を含む、請求項1に記載のポリマーナノ粒子組成物。
【請求項10】
約0.35mV〜約0.60mVのpH非依存的ゼータ電位を有するナノ粒子を含む、請求項1に記載のポリマーナノ粒子組成物。
【請求項11】
外側表面を有する膨張可能バルーン;および本発明のpNP組成物を含む膨張可能バルーンの外側表面をコーティングする請求項1のナノ粒子を含み、ここで、膨張可能バルーンの外側表面の少なくとも一部の第一活性剤の濃度は約1〜約5μg/mmの範囲であり、そしてバルーンの表面積に基づく第二活性剤の濃度は約1〜約5μg/mmの範囲であるである、薬物被覆バルーンカテーテル。
【請求項12】
バルーン外側表面がポリアミドブロックコポリマーを含む、請求項11に記載の薬物被覆バルーンカテーテル。
【請求項13】
対象を請求項11に記載の薬物被覆バルーンカテーテル薬物被覆バルーンカテーテルで処置することを含む、血管疾患を処置する方法。
【請求項14】
請求項11に記載の薬物被覆バルーンカテーテルおよび血管疾患の処置に該薬物被覆バルーンカテーテルを使用するための指示を含む、キット。
【請求項15】
請求項11に記載のポリマーナノ粒子組成物、膨張可能バルーン上に該ポリマーナノ粒子組成物をコーティングするための指示および:
(a)膨張可能バルーンを含むバルーンカテーテル;または
(b)バルーンカテーテルに使用するのに適する膨張可能バルーン
を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、引用により本明細書に全体として包含させる、2018年2月1日出願の米国仮出願62/625,026の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
背景
アテローム性動脈硬化症などの心血管疾患(CVD)は、血管壁内のコレステロールに富んだプラークの形成により、動脈の狭小化をもたらす。これらの病変は、最終的に組織への血流を遮断する。このようなCVDの一つは、末梢動脈疾患(PAD)であり、これは、四肢、特に脚への血液を供給する動脈の狭小化により特徴づけられる。世界的に、約2億人がPADに罹患している(Fowkes, F.G., et al., Lancet. 2013; 382(9901):1329-40)。PADは、疼痛、創傷治癒の低下、介入しなければ、四肢欠損、そして時には死に至る、四肢の動脈閉塞を特徴とする。PADはしばしば命を脅かす状態および事象と関連する。例えば、最近の研究は、安定しているが、症状のあるPADの患者の11〜12%は、36か月のフォローアップ中、死亡するか、心筋梗塞または卒中を発症することを示した(Bonaca, M.P., et al., Circulation. 2013; 127(14):1522-9)。
【0003】
臨床医は、通常、血管形成術として知られる、患部内でバルーンを膨脹させる方法により、動脈閉塞を矯正する。血管形成術は、しばしば血流を長期に維持することを意図する金属管状器具であるステントの留置を伴う。しかしながら、冠動脈疾患とは異なり、PADでは、末梢動脈の直径が一般に小さく、ステントの有用性が限定されるため、バルーン血管形成術がステント留置を超える第一選択治療となっている(Thukkani A.K. and Kinlay S. Circ Res. 2015; 116(9):1599-613)。さらに、ステントは炎症、後期血栓症およびステントの破損を伴う(ibid.)。全ての形態の血管形成術の合併症は、バルーン膨張中の血管の過伸長であり、しばしば血管壁に歪みをもたらす。この障害は、結果的に新規病変形成、そして最終的に、再狭小化または管腔「再狭窄」となる、一連の細胞事象を誘発する。これらの事象は、機能的内皮喪失、内皮を欠く領域の血小板と炎症性細胞の接着、最後に、血管平滑筋細胞(VSMC)増殖を含む。後者の事象は、結果的に、血流を妨げる高度に肥厚した血管壁をもたす。
【0004】
パクリタキセルまたはシロリムス誘導体などの有糸分裂阻害剤を放出する薬物溶出ステントが冠血管介入後の再狭窄を抑制するために開発されたが、その有用性は、小血管では限定的である(ibid.)。チップ(遠位)からコネクター(近位)に伸びるシャフトおよび拡張可能であり、標的病変に直接薬物を溶出するために、薬物で被覆または浸漬されたバルーンを含む薬物被覆バルーン(DCB)カテーテルもある。パクリタキセルを放出するDCBカテーテルは現在使用が承認されているが、特に、現在の製品が相当量のパクリタキセル負荷量を、病変部位到達前に放出することを考慮すれば、パクリタキセルの早過ぎる放出が全身毒性をもたらす懸念がある(De Labriolle A, et al. Catheter Cardiovasc Interv. 2009; 73(5):643-52; Byrne, R.A., et al., Nat Rev Cardiol. 2014; 11(1):13-23)。これは、これらの製品が、組織吸収を促進するために、イオプロミドなどの親水性添加物と共に、薬物のバルーン表面への直接適用を使用しているためであるが(De Labriolle, A., op. cit.)、薬物喪失の予防はほとんどなされていない。さらに、パクリタキセルはVSMC増殖を減少させるが、再内皮化も阻害し、二重抗血小板療法を、凝固阻止のために同時に講じなければならない(Nakazawa, G., et al., Am J Cardiol. 2007; 100(8B):36M-44M)。残念ながら、これらの治療は出血のリスクおよび患者のケアに関連する費用を増大させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
薬物溶出バルーンに関する方法およびデバイスの改善に向けた研究の進歩にも関わらず、パクリタキセルおよび他の有糸分裂阻害剤と関連する負の副作用を伴わない薬物溶出バルーンへの要請は満たされないままである。これらの要請および他の要請が本発明により満たされる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
ここに具体化し、広く記載する本発明の目的により、本発明は、ある態様において、ポリマーナノ粒子組成物(pNP)に関連する組成物、方法およびデバイス、1以上の治療剤を含むpNP組成物、1以上の治療剤を含む本発明pNPを含む薬物被覆バルーンを含むデバイスならびに本発明の組成物およびデバイスを使用する末梢動脈疾患を処置する方法に関する。さらなる態様において、pNPは正電荷を有する乳酸グリコール酸共重合体である。また、さらなる態様において、1以上の治療剤は、レスベラトロールまたはその誘導体、ケルセチンまたはその誘導体またはそれらの組み合わせを含む。
【0007】
開示されるのは、第一ポリマー、第二ポリマー、第一治療剤および所望により第二治療剤を含むナノ粒子組成物であり、ここで、第一ポリマーはポリマー鎖あたり1以上の正荷電部分を含むアクリレートポリマーであり、第二ポリマーはポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)、ポリ(グリコリド−コ−カプロラクトン)およびポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド−コ−ε−カプロラクトン)からなる群から選択され、第一治療剤はレスベラトロール、その薬学的に許容される塩および薬学的に許容される誘導体からなる群から選択され、そして、第二治療剤はケルセチン、その薬学的に許容される塩および薬学的に許容される誘導体である。
【0008】
また開示されるのは、外側表面を有する膨張可能バルーンおよび本発明のナノ粒子組成物を含むバルーンカテーテルの外側表面をコーティングするナノ粒子を含む薬物被覆バルーンカテーテルであって、ここで、バルーンの表面積に基づく第一活性剤の濃度は約1〜約5μg/mmの範囲であり、そしてバルーンの表面積に基づく第二活性剤の濃度は約1〜約5μg/mmの範囲である。
【0009】
また開示されるのは、対象を本発明の薬物被覆バルーンカテーテルで処置することを含む、血管疾患を処置する方法である。
【0010】
また開示されるのは、本発明の薬物被覆バルーンカテーテルおよび血管疾患の処置に該薬物被覆バルーンカテーテルを使用するための指示を含む、キットである。
【0011】
また開示されるのは、本発明のポリマーナノ粒子組成物、膨張可能バルーン上に該ポリマーナノ粒子組成物をコーティングするための指示および(a)膨張可能バルーンを含むバルーンカテーテルまたは(b)バルーンカテーテルに使用するのに適する膨張可能バルーンを含む、キットである。
【0012】
本発明の態様を、特定の法令による分類、例えば当該システムの法令による分類で記載し、請求しているとしても、これは単に便宜上の目的によるものであり、当業者は、本発明のそれぞれの態様を如何なる法令による分類のよっても記載し、請求し得ることを理解する。特に断らない限り、ここに記載するあらゆる方法または態様を、その工程が特定の順番で実施されることを必要とするものとして解釈されることは全く意図しない。従って、方法の請求項がその請求項でまたは明細書で、その工程が特定の順番に限定されることを明示していない限り、いかなる点においても、順番を暗示することを意図しない。これは、工程の配置や操作の流れに関する論理上の問題、文法上の構成や句読点から導き出された明白な意味または本明細書に記載されている態様の数やタイプを含む、解釈の可能なあらゆる非明示的な事項に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本明細書に包含され、本明細書の一部を構成する添付する図面は、いくつかの態様を説明し、明細書と共に、本発明の原理を説明するために提供する。
【0014】
図1】ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)およびカチオン性ポリメタクリル酸エステルを含む本発明の代表的ナノ粒子の代表的画像を示す。本画像は、下記方法を使用して、透過型電子顕微鏡を使用して得た。
【0015】
図2】代表的な本発明のポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)/カチオン性ポリメタクリル酸エステルナノ粒子組成物(図ではナノ粒子は「pNP」として示される)からのトリアセチルレスベラトロールおよびケルセチン(図ではそれぞれ「TAR」および「QUER」と表示)の放出の代表的薬物放出データを示す。透析膜外側に拡散するトリアセチルレスベラトロール(TAR)、レスベラトロール(図では「RESV」と表示)およびケルセチン(QUER)のレベルを、下記方法を使用して、高速液体クロマトグラフィーを使用して評価した。データはn=6の平均±SEMである。
【0016】
図3】代表的な本発明のポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)/カチオン性ポリメタクリル酸エステルナノ粒子組成物(図ではナノ粒子は「pNP」として示される)からのトリアセチルレスベラトロール、レスベラトロールおよびケルセチン(図ではそれぞれ「TAR」、「RESV」、「QUER」として示す)の血管平滑筋細胞による取り込みの代表的細胞取り込みデータを示す。血管平滑筋細胞をトリアセチルレスベラトロールおよびケルセチンを含むナノ粒子で負荷するかまたはトリアセチルレスベラトロールおよびケルセチン単独に曝した。次いで細胞を抽出し、薬物レベル(トリアセチルレスベラトロール、レスベラトロールおよびケルセチン)について0〜72時間HPLCで分析した。データはn=3実験の平均±SEMである。
【0017】
図4】トリアセチルレスベラトロールおよびケルセチンを含む代表的な本発明のポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)/カチオン性ポリメタクリル酸エステルナノ粒子組成物の代表的生体適合性データを示す。生体適合性を、記載するナノ粒子濃度で、陽性対照(Triton−X100)と比較した%RBC溶解として決定した。データはn=3実験の平均±SEMである。ANOVAは、顕著な影響のないことを確認した。
【0018】
図5】トリアセチルレスベラトロールおよびケルセチンを含む代表的な本発明のポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)/カチオン性ポリメタクリル酸エステルナノ粒子組成物で処理後の代表的細胞生存能データを示す。細胞生存能を、6〜72時間細胞ATPレベルの観点で評価した。ATPレベルを対照(ナノ粒子処理無)のパーセンテージとして表す。データはn=3実験の平均±SEMである。*対照と比較したp<0.05。
【0019】
図6】1以上の治療剤を含む本発明のpNPを含むコーティングでDCBカテーテルバルーンをコーティングするための代表的エレクトロスプレーシステムを示す。本図は、コーティング特徴を最適化するために変え得る典型的パラメータを示す。
【0020】
図7図7Aおよび7Bは、ディップコーティング(図7A)またはエレクトロスプレーコーティング(図7B)によりコートしたDCBカテーテルバルーンの代表的蛍光顕微鏡写真を示す。各場合のコーティングは、RESVおよびQUERを含むpNP組成物であった。バルーン材はPEBAX(登録商標)からなった。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のさらなる利点は、続く記載に示され、かつ、一部、記載から明らかであり、または本発明の実施により習得され得る。本発明の利点は、特に添付する特許請求の範囲に示す要素および組み合わせの手段により実現および達成される。先の一般的記載および次の詳細な記載の何れも単なる例示および説明であり、請求する本発明を限定するものではないことは理解されるべきである。
【0022】
詳細な記載
本発明を、可能な実施態様の全てではなく、一部が示されている、次の本発明の詳細な記載およびそれに含まれる実施例を参照してより容易に理解することができる。実際、本発明は種々の異なる形態で具現化でき、ここに示す実施態様に限定されると解釈されてはならない;むしろ、これらの実施態様は、本発明が適用される法的要件を満たすように提供される。全体として、同じ番号は同じ要素をいう。
【0023】
上の記載および添付する図面に示される教示の利益を有するここに開示する多くの修飾および他の実施態様が、本発明組成物および方法の分野の当業者には想起される。それ故に、本発明は、開示される特定の実施態様に限定されず、修飾および他の実施態様が添付する特許請求の範囲の範囲内に入ることが意図されることは理解される。ここで特定的な用語が使用されているが、それらは一般的かつ説明的な意味でのみ使用し、限定する目的では使用されていない。
【0024】
ここで使用する学術用語は、特定の態様を記載する目的でのみ使用され、限定を意図するものではないことも理解されるべきである。本明細書および特許請求の範囲で使用される、用語「含む」は、「からなる」の態様も含み得る。他に定義しない限り、ここで使用する全ての技術的および科学的用語は、本発明組成物および方法が属する分野の当業者に共通して理解されるのと同じ意味を有する。本明細書および添付する特許請求の範囲において、ここに定義すべきいくつかの用語が参照される。
【0025】
本明細書を読んだ当業者には明らかなとおり、ここに記載し、説明する各個々の実施態様は、個別的な要素および特性を有し、これらは、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、他のいくつかの実施態様の何れかの特性と容易に分離するまたは組み合わせすることができる。記載するあらゆる方法を、記載する事象の順番でまたは論理的に可能な何れかの他の順番で実施してよい。
【0026】
ここに記載する全ての刊行物は、刊行物の引用と関連する方法および/または材料を開示または記載するように、本明細書に包含される。ここに記載する刊行物は、本願出願日前のその開示を単に示すだけである。本明細書中のいかなるものも、本発明が先行発明によりそのような刊行物に先行する権利を与えられないことを認めるとして解釈されるべきではない。さらに、ここに記載する公開日は実際の公開日と異なることがあり、個々に確認が必要であり得る。
【0027】
種々の実施態様を記載する前に、次の定義を提供し、特に断らない限り使用すべきである。
【0028】
A. 定義
他に定義しない限り、ここで使用する全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者に共通して理解される意味を有する。一般的に使用される辞書に定義されるような用語は、ここで明らかに定義されない限り、本明細書および関連技術の状況の意味と一致する意味を有するとして解釈されるべきであり、理想化されたまたは過度に形式的な意味で解釈されるべきではない。
【0029】
ここで使用する有機化合物を含む化合物の命名は、一般名、IUPAC、IUBMBまたはCAS推奨命名法を使用して付与され得る。1以上の立体化学特性が存在するとき、立体化学のカーン・インゴルド・プレローグ則を用いて、立体化学優先性、E/Z表記などを指定し得る。当業者は、命名規則を使用する化合物構造の系統的簡略化(systemic reduction)により、またはCHEMDRAWTM(Cambridgesoft Corporation, U.S.A.)などの市販のソフトウェアにより、名称が与えられた場合、化合物の構造を容易に確認できる。
【0030】
ここで使用する「含む」は、言及されるとおり、記載する特性、整数、工程または要素の存在を特定するが、1以上の特性、整数、工程または要素またはそれらの群の存在または付加を除外しない。さらに、用語「含む」は、用語「本質的にからなる」および「からなる」により包含される例を含むことを意図する。同様に、用語「本質的にからなる」は、用語「からなる」により包含される例を含むことを意図する。ここで使用する用語「による」、「含む」、「含み」、「からなり」、「包含する」、「包含し」、「含まれる」、「関与する」、「関与し」、「包含される」および「例えば」は、その開放的、非限定的意味で使用される。
【0031】
本明細書および添付する特許請求の範囲で使用される単数表現は、文脈に明らかに反しない限り、複数表現を含む。故に、例えば、「官能基」、「アルキル」または「残基」は、2以上のこのような官能基、アルキルまたは残基などの混合物を含む。
【0032】
「一つの」化合物への言及は、化合物単一分子の限定ではなく、化合物の1以上の分子をいう。さらに、1以上の分子は、化合物のカテゴリーに属する限り、同一でも同一でなくてもよい。故に、例えば、「一つの」PLGAは、PLGAの1以上のポリマー分子を含むと解釈され、ここで、ポリマー分子は同一でも同一でなくてもよい(例えば、異なる分子量および/または異性体)。
【0033】
比率、濃度、量および他の数値データは、ここで範囲として記載され得ることは注意すべきである。記載の範囲が限度の一端または両端を含むとき、これらに包含される限度のいずれかまたは両方以外の範囲も本開示に含まれ、例えば用語「x〜y」は、‘x’〜‘y’の範囲および‘x’より大きく、かつ‘y’より小さい範囲も含む。範囲はまた上限、例えば‘約x、y、zまたはそれ以下’としても表され得て、‘約x’、‘約y’および‘約z’の特定の範囲ならびに‘x未満’、‘y未満’および‘z未満’の範囲を含むと解釈すべきである。同様に、用語‘約x、y、zまたはそれ以上’は、‘約x’、‘約y’および‘約z’の特定の範囲ならびに‘xを超える’、yを超える’および‘zを超える’範囲を含むと解釈すべきである。さらに、用語「約‘x’〜‘y’」であって、‘x’および‘y’が数値であるとき、「約‘x’〜約‘y’」を含む。このような範囲の方法は勘弁さのおよび簡潔さために使用され、故に、範囲の限度として明示した数値だけでなく、各数値および下位範囲が明示されているかのように、全ての個々の数値または下位範囲も含むと、柔軟に解釈されるべきである。説明のために、「約0.1%〜5%」の数値範囲は、約0.1%〜約5%の明示された値だけでなく、示す範囲内の個々の値(例えば、1%、2%、3%および4%)および下位範囲(例えば、0.5%、1.1%、2.4%、3.2%および4.4%)も含むと解釈されるべきである。
【0034】
ここで使用する用語「約」、「近似」および「正確にまたは約」は、問題の量または値が、指定した正確な値または特許請求の範囲に記載するまたはここに教示するのと同等な結果または効果を提供する値であり得る。すなわち、量、サイズ、製剤、パラメータおよび他の量値および特徴が正確ではなく、正確である必要はなく、同等な結果または効果が得られるような、公差、変換率、四捨五入、測定誤差などおよび当業者に知られる他の因子を反映した、所望により近似および/または大きいまたは小さいものであり得ると理解されるべきである。ある状況で、同等な結果または効果を提供する値は合理的に決定できない。このような場合、一般に、ここで使用する「約」および「正確にまたは約」は、特に示されるか推測されない限り記載する数値±10%変動を意味する。一般に、量、サイズ、製剤、パラメータまたは他の量値または特徴は、そうであると記載されていてもいなくても、「約」、「近似」または「正確にまたは約」である。「約」、「近似」または「正確にまたは約」が量値の前に記載されているとき、特に断らない限り、パラメータは、特定の量値自体も含むと理解される。
【0035】
組成物の特定の要素または成分の重量部が明細書および添付する特許請求の範囲で記載されているとき、組成物または物品中の重量部が示されるこれら要素または成分および何れかの他の要素または成分の重量相関を意味する。故に、2重量部の成分Xおよび5重量部成分Yを含む化合物で、XおよびYは2:5の重量比で存在し、該化合物がさらなる要素を含むか否かにかかわらず、この比で存在する。
【0036】
開示されるのは、本発明の組成物の製造に使用する要素およびここに開示する方法内で使用する組成物自体である。これらおよび他の材料はここに開示され、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、群などが開示されているとき、これら化合物の各種々の個々のおよび集合的組み合わせおよび順列は明示的に開示され得なくても、各々が特に考慮され、ここに開示されると理解されるべきである。例えば、ある特定の化合物が開示および記載され、化合物に含まれる多数の分子になし得る多数の修飾が記載されているならば、反する指示がない限り、化合物および可能な修飾の各および全ての組み合わせおよび順列が特に考慮される。故に、一群の分子A、BおよびCが開示され、同時に一群の分子D、EおよびFおよび組み合わせ分子A〜Dが開示されるならば、各々が個々に記載されていなくても、各々は、個々に集合的に組み合わせを意味し、A〜E、A〜F、B〜D、B〜E、B〜F、C〜D、C〜EおよびC〜Fが開示されると考えられる。同様に、これらのあらゆるサブセットまたは組み合わせも開示される。故に、例えば、A〜E、B〜FおよびC〜Eのサブグループが開示されると考えられる。この考えは、本発明の組成物の製造および使用方法の工程を含むが、これらに限定されない、本出願の全ての態様に適用可能である。故に、実際できる多様なさらなる工程があるならば、これらさらなる工程の各々を、本発明の方法の何らかの特定の態様または態様の組み合わせと共に実施できると理解されるべきである。
【0037】
組成物または物品の特定の要素または成分の重量部が明細書および添付する特許請求の範囲で記載されているとき、組成物または物品中の重量部が示されるこれら要素または成分および何れかの他の要素または成分の重量間の相互関係を意味する。故に、2重量部の成分Xおよび5重量部成分Yを含む化合物で、XおよびYは2:5の重量比で存在し、該化合物がさらなる要素を含むか否かにかかわらず、この比で存在する。
【0038】
ここで使用する用語「重量パーセント」、「wt%」および「wt.%」は、相互交換可能に使用でき、特に断らない限り、組成物の総重量に基づく、ある成分の重量パーセントを示す。すなわち、特に断らない限り、全てのwt%値は組成物の総重量に基づく。本発明組成物または製剤の全要素のwt%値の合計は100に等しいことは理解されるべきである。
【0039】
化合物は標準命名法を使用して記載する。例えば、記載する基の何れでも置換されていないあらゆる位置は、示す結合または水素原子により原子価が充足されていると理解される。2つの文字または記号の間にないダッシュ(「−」)は、置換基の結合点を示す。例えば、−CHOはカルボニル基の炭素で結合する。他に定義しない限り、ここで使用する技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0040】
ここで使用する用語「アルキル基」は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルなどの、1〜24炭素原子の分岐または非分岐飽和炭化水素基をいう。「低級アルキル」基は、1〜6炭素原子を含むアルキル基である。
【0041】
本明細書および添付する特許請求の範囲で使用する化学種の残基は、特定の反応スキームまたはその後の製剤または化学生成物における得られた生成物の化学種である部分を、該部分が該化学種から実際に得られたものであるか否かに関わらずそれを意味する。故に、ポリエステルのエチレングリコール残基は、ポリエステルにおける1以上の−OCHCHO−単位を、エチレングリコールが該ポリエステルの製造に使用されたか否かに関らず、それを意味する。同様に、ポリエステルのセバシン酸残基は、ポリエステルにおける1以上の−CO(CH)CO−部分を、該ポリエステルを得るために該残基がセバシン酸またはそのエステルの反応により得られたか否かに関らずそれを意味する。
【0042】
ここで使用する用語「置換」は、有機化合物の全ての許容される置換基を含むことを意図する。広い態様において、許容される置換基は、有機化合物の非環式および環式、分岐および非分岐、炭素環式およびヘテロ環式および芳香族および非芳香族置換基を含む。説明的置換基は、例えば、下記のものを含む。許容される置換基は適切な有機化合物について1以上であってよく、同一でも異なってもよい。本開示の目的で、窒素などのヘテロ原子は、該ヘテロ原子の原子価を充足する水素置換基および/またはここに記載する何れかの有機化合物の許容される置換基を含む。この開示は、有機化合物の許容される置換基により、いかなる方法でも限定されることを意図しない。また、用語「置換する」または「で置換」は、このような置換が置換原子および置換基の許容される原子価に従い、置換が安定な化合物、例えば、再配置、環化、排除などの変換を自然に受けない化合物をもたらすなどの限定を含意することを含む。ある態様において、反する記載がない限り、個々の置換基は、さらに場合により置換されていてよい(すなわち、さらに置換または非置換)。
【0043】
ここで使用する用語「数平均分子量」または「M」は交換可能に使用でき、サンプルの全ポリマー鎖の統計平均分子量をいい、式
【数1】
〔式中、Mは鎖の分子量であり、Nその分子量の鎖の数である。〕により定義される。Mは、ポリマーについて、例えば、ポリカーボネートポリマーについて、当業者により周知の方法、分子量標品、例えばポリカーボネート標品またはポリスチレン標品、好ましくは証明されたまたは追跡可能分子量標品により規定され得る。
【0044】
ここで使用する「ポリマー」は、反復「構成単位」からなる分子である。構成単位は、モノマーの反応による。構成単位それ自体は、他の化合物の反応産物であり得る。ポリマーは、2以上の異なるモノマーの重合に由来し得て、それ故に2以上の異なる構成単位を含み得る。このようなポリマーは「コポリマー」と称される。「ターポリマー」は「コポリマー」の一部であり、3つの異なる構成単位がある。当業者は、特定のポリマーを考慮して、そのポリマーの構成単位を容易に認識し、構成単位が由来するモノマーの構造を容易に認識できる。ポリマーは、直鎖、分枝鎖、星型または樹状であり得る。一つのポリマーを他のポリマーに結合(移植)し得る。ポリマーの構成単位は、ポリマー鎖に沿って無作為に配置されてよく、個別的なブロックとして存在してよく、ポリマー鎖に沿って濃度勾配を形成するように配置されてよくまたはこれらの組み合わせであってよい。ポリマーは架橋してネットワークを形成し得る。
【0045】
ここで使用する用語「単位」は、例えば、グリコリド反復単位がポリマーの個々のスチレン(コ)モノマー単位をいうように、個々の(コ)モノマー単位をいうように使用され得る。さらに、用語「単位」は、例えば、「グリコリド反復単位」がグリコリドブロック;「ポリラクチド単位」がポリラクチドブロック単位をいう;「ポリグリコリド単位」がポリグリコリドブロック単位をいうなどのように、重合ブロック単位をいうために使用され得る。このような使用は文脈から明らかである。
【0046】
用語「コポリマー」は、2以上のモノマー種を有するポリマーをいい、ターポリマー(すなわち、3モノマー種を含むコポリマー)を含む。
【0047】
ここで使用するナノ粒子またはpNPに「取り込まれる」(incorporated)または「封入される」(encapsulated)は、ナノ粒子が形成するポリマーにより形成されるマトリクス内に物理的に捕捉される治療剤をいう。
【0048】
ここで使用する用語「対象」は、脊椎動物、例えば哺乳類、魚類、鳥類、爬虫類または両生類であり得る。故に、ここに開示する方法の対象はヒト、非ヒト霊長類、ウマ、ブタ、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ネコ、モルモットまたは他の齧歯類であり得る。本用語は特定の年齢または性別を示さない。故に、雄性であれ雌性であれ、成熟および新生対象ならびに胎児が包括されることが意図される。ある態様において、対象は哺乳動物である。患者は、疾患または障害を有する対象をいう。用語「患者」はヒトおよび獣医対象を含む。
【0049】
ここで使用する用語「処置」は、疾患、病態または障害を治癒、軽減、安定化または予防する意図を伴う患者の医学的管理をいう。この用語は積極的処置、すなわち、特に疾患、病態または障害の改善に向けた処置を含みまた原因処置、すなわち、関連疾患、病態または障害の原因の排除に向けた処置も含む。さらに、この用語は軽減的処置、すなわち、疾患、病態または障害の治癒ではなく、症状のために考慮される処置;予防的処置、すなわち、関連疾患、病態または障害の発症を最小化するまたは部分的もしくは完全に阻止するための処置;および支持的処置、すなわち、関連疾患、病態または障害の関連に向けた他の特定の治療を補うために用いる処置;および支持的処置、すなわち、関連疾患、病態または障害の関連に向けた他の特定の治療を補うために用いる処置を含む。種々の態様において、本用語は哺乳動物(例えば、ヒト)を含む対象のあらゆる処置を包含し、(i)疾患の素因があり得るがまだそれを有するとして診断されていない対象において疾患が発症するのを予防する;(ii)疾患を阻止する、すなわち、その進展を停止させる;または(iii)疾患を無くす、すなわち、疾患の退行を起こすことを含む。ある態様において、対象は霊長類などの哺乳動物であり、さらなる態様において、対象はヒトである。用語「対象」は家庭用動物(例えば、ネコ、イヌなど)、家畜、例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなど)および実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット、ミバエ(fruit fly)など)も含む。
【0050】
ここで使用する用語「予防」または「予防する」は、特に、前もっての行動により、起こることを発生を防止、回避、予防、未然防止、停止または妨害することをいう。ここで軽減、阻止または予防が使用されるとき、特に断らない限り、他の2つの単語も明示的に開示されると理解される。
【0051】
ここで使用する用語「診断」は、技術者、例えば、医師による身体検査を受けており、ここに開示する化合物、組成物または方法で診断または処置され得る状態を有することが判明していることを意味する。
【0052】
ここで使用する用語「接触」は、開示する化合物および細胞、標的タンパク質または他の生物学的実体を、直接的に(すなわち、細胞、標的タンパク質または他の生物学的実体自体と相互作用することにより)または間接的に(すなわち、細胞、標的タンパク質または他の生物学的実体自体の活性が依存する他の分子、補因子、因子またはタンパク質と相互作用することにより)、化合物が標的の活性に影響し得るようにすることをいう。
【0053】
ここで使用する用語「有効量」および「有効である量」は、所望の結果の達成または望ましくない症状に影響するのに十分な量をいう。例えば、「治療有効量」は、所望の治療結果の達成または望ましくない状態に影響するのに十分であるが、一般に有害副作用を起こすには不十分である量をいう。ある特定の患者についての特定の治療有効用量レベルは、処置する障害および障害の重症度;用いる特定の組成物;患者の年齢、体重、一般的健康、性別および食習慣;投与の時間;投与経路;用いる特定の化合物の排泄速度;処置期間;用いる特定の化合物と組み合わせてまたは同時に使用される薬物および医学分野で周知のその他の因子を含む、多様な因子による。例えば、化合物を所望の治療効果の達成より低いレベルの用量で開始し、所望の効果が達成されるまで徐々に投与量を増やすのは、十分に当業者の技術範囲内である。所望により、有効1日用量を投与の目的で複数用量に分割してよい。結果として、一用量組成物は、その量または1日用量を構成するその分割量を含み得る。投与量は、何らかの懸念がある場合には、個々の医師により調節され得る。投与量は変わってよく、1〜数日間、連日1以上の用量投与により投与され得る。あるクラスの医薬品についての適切な投与量のガイダンスを文献で見ることができる。さらに種々の態様において、製剤を「予防有効量」、すなわち、疾患または状態の予防に有効な量で投与し得る。
【0054】
ここで使用する「治療剤」は、塩、エステル、アミド、水和物、溶媒和物などを含むが、これらに限定されない、レスベラトロールおよびケルセチンなどのここに開示する治療剤の薬学的に許容される、薬理学的に活性な誘導体もいう。
【0055】
ここで使用する「キット」は、キットを構成する少なくとも2つの要素の集合をいう。合わせて、これら要素はある目的のための機能的単位を構成する。個々のメンバー要素は物理的に一緒にまたは別々に包装され得る。例えば、キットの使用指示を含むキットは、該指示を他の個々のメンバー要素と物理的一緒に含んでも含まなくてもよい。むしろ、指示は、文書の形でまたはコンピューター読み取り可能記憶デバイスもしくはインターネットウェブサイトからダウンロードしてまたは記録した映像として提供され得る電子的形態で、独立した要素として提供され得る。
【0056】
ここで使用する「指示」は、キットに関係する妥当な材料または方法を記載する文書を意味する。これらの物は、次のものの何れかの組み合わせを含み得る:背景情報、要素一覧およびその入手可能性情報(購入情報など)、キットを使用するための短縮版または詳細プロトコール、トラブルシューティング、参考文献、技術的サポートおよび何れかの他の関連文書。指示はキットと共にまたは別のメンバー要素として、紙の形でまたはコンピューター読み取り可能記憶デバイスもしくはインターネットウェブサイトからダウンロードしてまたは記録した映像として提供され得る電子的形態提供され得る。指示は1以上の文書を含んでよく、将来的アップデートを含むことを意図する。
【0057】
ここで使用する用語「治療剤」は、生物(ヒトまたは非ヒト動物)に投与したとき、局所および/または全身作用により、所望の薬理学的、免疫原性および/または生理的効果を誘発する、あらゆる合成または天然に存在する生物学的に活性な化合物または組成物を含む。
【0058】
ここで使用する用語「誘導体」は、親化合物(例えば、ここに開示する化合物)の構造に由来する構造を有し、その構造が個々に開示するものに十分類似し、その類似性から、当業者が本願発明化合物と同等または類似の活性および有用性を発揮すると予測するまたは前駆体として本願発明化合物と同等または類似の活性および有用性を誘発すると予測する、化合物をいう。誘導体の例は、親化合物の塩、エステル、アミド、エステルまたはアミドの塩およびN−オキシドを含む。
【0059】
ここで使用する「心血管疾患」は、心臓、循環系または心臓および循環系両方に影響する疾患、状態または障害である。循環系は、心血管系およびリンパ系を含む。リンパ系はリンパを分配する。心血管系は、血管系、主に動脈および静脈であり、これは、血液を心臓、脳および、腕、脚、腎臓および肝臓などの、しかしこれに限定されない末梢臓器に輸送し、そこから輸送する。冠動脈系は心臓に血液を供給する。頸動脈系は脳に血液を供給する。末梢血管系は、血液を、手、脚、腎臓および肝臓などの、しかしこれに限定されない末梢臓器に(動脈により)およびそこから(静脈により)運搬する。冠動脈系、頸動脈系および末梢動脈系を含む末梢血管系は、心血管系の下位組織である。
【0060】
ここで使用する「血管疾患」は、一般に循環系に影響する疾患、状態または障害をいう。特に「血管疾患」は、冠血管系、頸動脈系および末梢血管系の疾患、障害または状態をいう。
【0061】
「血管疾患」は「心血管疾患」の一部である。
【0062】
心血管疾患の例は、心臓弁疾患、不整脈、心不全および先天性心疾患を含むが、これらに限定されない心臓の疾患ならびにアテローム性動脈硬化症、血栓症、再狭窄、出血、血管切開または穿孔、不安定プラーク、慢性完全閉塞、跛行、血管と人工移植片の吻合増殖、末梢動脈疾患、頸動脈疾患、冠動脈疾患、大動脈瘤、腎臓(腎)動脈疾患、レイノー症候群、ハージャー病、末梢静脈疾患、静脈瘤、静脈の血餅、凝血障害およびリンパ浮腫を含むが、これらに限定されない血管疾患を含む。
【0063】
ここで使用する「埋込型医療機器」は、外科的にまたは内科的に患者体内にまたは医学的介入により自然開口部に完全にまたは一部導入され、この過程の後にそこにとどまることが意図される、あらゆるタイプの機器をいう。埋め込み期間は本質的に永久であり、すなわち、患者が亡くなるまでその場所に残ることが意図されるか、または物理的に除かれるまでである。埋込型医療機器の例は、血管移植片、自己膨張可能ステント、バルーン膨張可能ステントおよびステント移植片を含むが、これらに限定されない。
【0064】
埋込型医療機器の1タイプはステントである。ステントは、一般に円筒形であり、冠動脈疾患、頸動脈疾患および末梢動脈性疾患を含むが、これらに限定されない疾患または障害により血管が狭小化または閉塞したとき、患者体内の血管または他の管腔または管の一部を、開放したままおよび時には拡張するために機能する、埋込型医療機器である。ステントは、限定されないが、神経、頸動脈、冠血管、肺、腎臓、胆管、回腸、大腿および膝窩、ならびに他の末梢脈管構造ならびに他の身体管腔で使用され得る。ステントは、血管障害および他の障害の処置または予防に使用され得る。ステントについて、「外側表面」は管腔内部に面した管腔表面、管腔壁に面した反管腔側表面および存在するならば反管腔側表面と管腔表面を結ぶ側壁表面を含む。
【0065】
「カテーテル」は、自然の体腔、導管または管に挿入するための、薄い、可撓性チューブであり、流体の導入または除去、血管膨張または血管もしくは腔の開放維持に使用できる。
【0066】
「血管カテーテル」は、挿入可能医療機器の一例である。血管カテーテルは、患者体外にある一端に操作手段および患者の動脈または血管に挿入された他端もしくはその近辺に操作可能デバイスを備えた薄い、可撓性チューブである。カテーテルは、標的部位への、しばしば薬物を含む、流体の導入に使用され得る。カテーテルは、ステントの標的部位への送達に使用できまたは血管形成術に使用するバルーンの送達に使用され得る。カテーテルは複数の機能を発揮し得る。
【0067】
ここで使用する「バルーン」は管状膜を形成する比較的薄い、可撓性材料であり、通常血管カテーテルを伴う。患者の管の特定の位置に配置されたとき、それが配置される血管の内径または管腔直径と本質的に同じである外径まで拡張または膨張され得る。バルーンは水または生理食塩水(ここで食塩水は塩、一般に塩化ナトリウムを含むことを意図する)、すなわち、血液と本質的に等張である食塩水などの液体媒体を使用して膨張され得るが、これに限定されない。
【0068】
「バルーンカテーテル」は、カテーテルの一端にバルーンを備えたカテーテルのシステムである医療機器をいう。
【0069】
DCBカテーテルバルーンに関して、「外側表面」は、いずれにしても血管壁または体液などの身体組織と接触する空間的配向の何れかの表面をいう。
【0070】
特に断らない限り、ここでいう温度は大気圧(すなわち1気圧)に基づく。
【0071】
ここで使用するある略語を次に定義する。
・ dは日であり;
・ DCBは薬物被覆バルーンであり;
・ minは分であり;
・ pNPは本明細書をとおして開示する本発明のポリマーナノ粒子であり、所望によりTARおよびQUERを含むポリフェノール組成物などの治療剤を含み;
・ QUERはケルセチンでありそして
・ RESVはレスベラトロールであり;
・ sおよびsecは相互交換可能使用でき、秒をいい;そして
・ TARはトリアセチルレスベラトロールである。
【0072】
B. ポリマーナノ粒子(PNP)組成物
生理活性剤の血管細胞への送達は、血管組織を標的とでき、臨床的効果のために治療剤を放出するシステムを必要とする。現在利用可能なDCBカテーテルバルーンは、組織内への送達を促進するために、尿素、シトレートまたはイオプロミドなどの親水性添加物のみを使用しているが、接着および最大送達の促進のためにはほとんど何もされていない。生理活性剤の適切な沈着および送達のために、本発明がここに開示するのは、2つの新規要素:(1)疎水性ポリマーナノ粒子マトリクスに捕捉または封入された血管再狭窄を阻止し、かつ血管壁の再内皮化も促進する1以上の抗増殖性治療剤、例えば、レスベラトロールまたはその誘導体および/またはケルセチンまたはその誘導体および(2)生理学的pHでカチオン性部分を有するポリマーを含むナノ粒子を含む、1以上の治療剤を含む新規ポリマーナノ粒子(pNP)組成物である。特定の理論に拘束されることを意図しないが、ポリマーカチオン性部分を有するポリマーは、少なくとも一部、外側カチオン性層を形成すると考えられる。カチオン性部分が永久荷電、例えば、4級アンモニウム部分を含むならば、外側カチオン性層は局所pHにかかわらず荷電される。故に、レスベラトロールおよびケルセチンを封入する本発明のpNP(例えば、トリアセチルレスベラトロールおよびケルセチン捕捉pNP)は、バルーンの膨張後放出され、バルーン表面との接触により、脈管構造への付着が促進される。
【0073】
ある態様において、本発明は、ポリマーナノ粒子組成物(pNP)および1以上の治療剤を含むpNP組成物に関する。本発明の1以上の治療剤を含むpNP組成物を、薬物被覆バルーンを含むデバイスと共に使用でき、本発明の組成物およびデバイスを使用する末梢動脈疾患を処置する方法に使用できる。さらなる態様において、pNPは、例えば、4級アンモニウム部分により提供される、正電荷を有する少なくとも一つのポリマーを含む。特定の理論に拘束されることを意図しないが、正電荷を有するポリマーを含むpNPは、バルーンマトリクスへの強固な結合、続く血管壁の負荷電二層への接着を可能とする。なおさらなる態様において、正電荷を有する少なくとも一つのポリマーは正電荷を有する乳酸グリコール酸共重合体である。なおさらなる態様において、pNPは、レスベラトロールまたはその誘導体、ケルセチンまたはその誘導体またはそれらの組み合わせを含む1以上の治療剤を含む。
【0074】
ある態様において、本発明は、1以上の治療剤を封入するpNPに関する。さらなる態様において、pNPは、レスベラトロール、その薬学的に許容される塩および薬学的に許容される誘導体からなる群から選択される治療剤を封入する。さらなる態様において、pNPは、ケルセチン、その薬学的に許容される塩および薬学的に許容される誘導体からなる群から選択される治療剤を封入する。さらに他の態様において、pNPは、レスベラトロール、その薬学的に許容される塩および薬学的に許容される誘導体からなる群から選択される第一治療剤および、所望によりケルセチン、その薬学的に許容される塩および薬学的に許容される誘導体からなる群から選択される第二治療剤を封入する。
【0075】
種々の態様において、これら治療剤の比は、重量パーセントで約1:5、約1:2および約1:1レスベラトロール対ケルセチンからなる群から選択される範囲内である。本発明は、さらに第一活性剤および第二活性剤を重量パーセントで約1:1、約1:2、約2:1、約1:2.5、約2.5:1、約1:4、約4:1、約1:5、約5:1、約1:10、約10:1、約1:20、約20:1、約1:25、約25:1、約1:50、約50:1、約1:100、約100:1、約1:200、約200:1、約1:250、約250:1、約1:500および約500:1からなる群から選択される比で含むpNPを提供する。
【0076】
種々の態様において、pNPはポリマー鎖あたり少なくとも1つの正電荷を有する第一ポリマーおよび第二ポリマーを含む。
【0077】
さらなる態様において、第一ポリマーは、ポリマー鎖あたり1以上の正荷電部分を含むアクリレートポリマーである。種々の態様において、「正荷電部分」は、4級アンモニウム基などの生理学的pHで正荷電であるか、共有結合構造により正電荷を担持できる官能基を含む。さらなる態様において、正電荷を有する部分はアンモニウム部分、4級アンモニウム部分またはそれらの組み合わせである。さらなる態様において、第一ポリマーはポリマー鎖あたり1以上の正荷電部分を含むアクリレートポリマーである。さらに他の態様において、アクリレートポリマーはメタクリレートポリマーである。さらに他の態様において、第一ポリマーは、4級化アンモニウム基が低割合であるアクリル酸とメタクリル酸のコポリマーである。なおさらなる態様において、第一ポリマーは、85〜98重量%アクリル酸またはメタクリル酸のフリーラジカル重合C1〜C4アルキルエステルおよび15〜2重量%アルキル基に4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレートモノマーからなるコポリマーまたはコポリマーの混合物からなる。さらに他の態様において、第一ポリマーは、4級アンモニウム基を有するモノマーを含む(メタ)アクリレートコポリマー、例えばEP−A−181515およびDE1617751に記載のもののようなトリメチルアンモニウムエチルメタクリレートクロライドである。なおさらなる態様において、第一ポリマーは4級化ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマーである。
【0078】
さらなる態様において、アクリル酸またはメタクリル酸のC1〜C4アルキルエステルを含む第一ポリマーは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレートおよびメチルメタクリレートである。さらに他の態様において、4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレートモノマーを含む第一ポリマーは、2−トリメチルアンモニウムエチルメタクリレートクロライドである。
【0079】
さらなる態様において、第一ポリマーは、例えば、93〜98重量%アクリル酸またはメタクリル酸のフリーラジカル重合C1〜C4アルキルエステルおよび7〜2重量%2−トリメチルアンモニウムエチルメタクリレートクロライドから製造されたコポリマーである。さらに他の態様において、このようなポリマーは、50〜70重量%メチルメタクリレート、20〜40重量%エチルアクリレートを含む。なおさらなる態様において、第一ポリマーは、例えば、65重量%メチルメタクリレート、30重量%エチルアクリレートおよび5重量%2−トリメチルアンモニウムエチルメタクリレートクロライドからなるコポリマーを含む。このタイプの適切なポリマーは、Evonikから商品名EUDRAGIT(登録商標)RSの下に利用可能である。
【0080】
さらなる態様において、第一ポリマーは、例えば、85〜93重量%未満のアクリル酸またはメタクリル酸のフリーラジカル重合C1〜C4アルキルエステルおよび15〜7重量%を超える2−トリメチルアンモニウムエチルメタクリレートクロライドから製造されたコポリマーを含む。さらに他の態様において、このようなポリマーは、50〜70重量%メチルメタクリレート、20〜40重量%エチルアクリレートを含む。なおさらなる態様において、第一ポリマーは、例えば、60重量%メチルメタクリレート、30重量%エチルアクリレートおよび10重量%2−トリメチルアンモニウムエチルメタクリレートクロライドからなるコポリマーを含む。このタイプの適切なポリマーは、Evonikから商品名EUDRAGIT(登録商標)RLの下に利用可能である。
【0081】
第一ポリマーは、モノマー混合物に溶解したフリーラジカル開始剤存在下のバルク重合により製造できる。ポリマーは同様に溶液または沈殿重合によっても製造できる。ポリマーは、この方法で、微粉末の形態で得ることができ、これは、バルク重合の場合、粉砕、溶液および沈殿重合の場合、例えば噴霧乾燥により達成可能である。
【0082】
種々の態様において、第二ポリマーはポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)、ポリ(グリコリド−コ−カプロラクトン)およびポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド−コ−ε−カプロラクトン)からなる群から選択される。さらに他の態様において、第二ポリマーはA−Bブロックコポリマーであり、ここで、ブロックAはポリ乳酸、ポリグリコール酸またはポリ(カプロラクトン)であってよく、ブロックBは独立してブロックAと異なるポリマーであり、ポリ乳酸、ポリグリコール酸またはポリ(カプロラクトン)から選択される。なおさらなる態様において、第二ポリマーはターポリマーである。ターポリマーは交互、ランダム交互または純粋ランダムコポリマーまたはブロックコポリマーであり得る。
【0083】
さらなる態様において、第二ポリマーは、ラクチドとグリコリドのコポリマー、すなわち、PLGAと略されるポリ(ラクチド−コ−グリコリド)である。さらに他の態様において、第二ポリマーはPLGAであり、該PLGAのラクチド対グリコリドのモル比は90:10〜10:90であり得る。なおさらなる態様において、第二ポリマーは、75:25〜25:75のラクチド対グリコリドのモル比のPLGAである。なおさらなる態様において、第二ポリマーは、60:40〜40:60のラクチド対グリコリドのモル比のPLGAである。ある態様において、第二ポリマーは、50:50のラクチド対グリコリドのモル比のPLGAである。PLGAの例は、Resomer(登録商標)RG504Hポリ(乳酸−コ−グリコール酸)PLGA 50:50などの商品名Resomer(登録商標)の下に商業的に入手可能である。
【0084】
さらなる態様において、第二ポリマーは、約5,000〜約100,000ダルトンの分子量のPLGAである。さらに他の態様において、第二ポリマーは、約30,000〜約60,000ダルトンの分子量のPLGAである。なおさらなる態様において、第二ポリマーは、約35,000〜約57,000ダルトンの分子量のPLGAである。さらに他の態様において、第二ポリマーは、約38,000〜約54,000ダルトンの分子量のPLGAである。ここで使用する用語「分子量」は、「重量平均分子量」をいう。
【0085】
本発明のpNPは、本発明の第一ポリマーおよび第二ポリマーを含むナノ粒子の形成に適する種々の技術、例えば、単一エマルジョン蒸発技術により形成され得る。簡潔には、有機相を、適当な有機溶媒の存在下、第一ポリマーおよび第二ポリマーの混合により作る。第一ポリマー対第二ポリマーの重量比は、約1:1〜約1:10であり得る。さらなる態様において、第一ポリマー対第二ポリマーの重量比は約1:2〜約1:4である。適当な溶媒は、約8:2の体積比の酢酸エチル対アセトンを含む。撹拌したら、第一治療剤および所望により第二治療剤を、上記のとおり製造した有機相に加える。次いで、1以上の治療剤を封入するナノ粒子の形成を、前記に、所望によりTween 80などの洗剤を含み得る水相に滴加して、達成し得る。製造は、さらにこうして形成したエマルジョンのマイクロフルイダイジングを含む。次いで、エマルジョンまたはマイクロフルイダイズエマルジョンの有機相を減圧下蒸発により除去し(例えば、「回転蒸発」)、続いて、得られたナノ粒子懸濁液を、適当な量のトレハロースなどの薬剤、例えば、ナノ粒子懸濁液対トレハロース1:2質量比で混合し得る。混合は、さらに適当な凝集破壊剤、例えば、ポリビニルアルコールを含んでよく、約1:4〜約1:10の凝集破壊剤対ナノ粒子懸濁液の質量比で加えられ得る。
【0086】
種々の態様において、第一ポリマー対第二ポリマーの重量比は、約1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10;前記比の何れかの組み合わせまたは前記比の何れかの二つに含まれる何れかの範囲であり得る。さらなる態様において、第一ポリマー対第二ポリマーの重量比は、約1.0:1.0、1.0:1.1、1.0:1.2、1.0:1.3、1.0:1.4、1.0:1.5、1.0:1.6、1.0:1.7、1.0:1.8、1.0:1.9、1.0:2.0、1.0:2.1、1.0:2.2、1.0:2.3、1.0:2.4、1.0:2.5、1.0:2.6、1.0:2.7、1.0:2.8、1.0:2.9、1.0:3.0、1.0:3.1、1.0:3.2、1.0:3.3、1.0:3.4、1.0:3.5、1.0:3.6、1.0:3.7、1.0:3.8、1.0:3.9、1.0:4.0、1.0:4.1、1.0:4.2、1.0:4.3、1.0:4.4、1.0:4.5、1.0:4.6、1.0:4.7、1.0:4.8、1.0:4.9、1.0:5.0、1.0:5.1、1.0:5.2、1.0:5.3、1.0:5.4、1.0:5.5、1.0:5.6、1.0:5.7、1.0:5.8、1.0:5.9、1.0:6.0、1.0:6.1、1.0:6.2、1.0:6.3、1.0:6.4、1.0:6.5、1.0:6.6、1.0:6.7、1.0:6.8、1.0:6.9、1.0:7.0、1.0:7.1、1.0:7.2、1.0:7.3、1.0:7.4、1.0:7.5、1.0:7.6、1.0:7.7、1.0:7.8、1.0:7.9、1.0:8.0、1.0:8.1、1.0:8.2、1.0:8.3、1.0:8.4、1.0:8.5、1.0:8.6、1.0:8.7、1.0:8.8、1.0:8.9、1.0:9.0、1.0:9.1、1.0:9.2、1.0:9.3、1.0:9.4、1.0:9.5、1.0:9.6、1.0:9.7、1.0:9.8、1.0:9.9、1.0:10.0;前記比の何れかの組み合わせまたは前記比の何れかの二つに含まれる何れかの範囲であり得る。
【0087】
種々の態様において、本発明のナノ粒子は、直径約50nm〜約500nmである。さらなる態様において、本発明のナノ粒子は、直径約100nm〜約500nm、直径約100nm〜約400nm、直径約100nm〜約300nmまたは直径約100nm〜約200nmである。さらに他の態様において、本発明のナノ粒子は直径約150nm〜約500nm、直径約150nm〜約400nm、直径約150nm〜約300nmまたは直径約150nm〜約200nmである。なおさらなる態様において、本発明のナノ粒子は、直径約50nm、100nm、120nm、130nm、150nm、160nm、170nm、180nm、190nm、200nm、210nm、220nm、230nm、240nm、250nm、前記値の何れかの組み合わせまたは前記に含まれる何れかの範囲を有する。
【0088】
種々の態様において、本発明のナノ粒子は、多分散指数約0.05〜約0.25を有する。さらなる態様において、本発明のナノ粒子は、約0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24または0.25未満の多分散指数を有する。さらに他の態様において、本発明のナノ粒子は約0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、前記値の何れかの組み合わせまたは前記に含まれる何れかの範囲の多分散指数を有する。
【0089】
種々の態様において、本発明のナノ粒子は、生理学的pHで正ゼータ電位を有する。さらなる態様において、本発明のナノ粒子は、生理学的pHで約0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.30、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.40、0.41、0.42、0.43、0.44、0.45、0.46、0.47、0.48、0.49、0.50、前記値の何れかの組み合わせまたは前記に含まれる何れかの範囲のゼータ電位(mVで表す)を有する。
【0090】
種々の態様において、本発明のナノ粒子は、pH非依存的正ゼータ電位を有する。さらなる態様において、本発明のナノ粒子は、約0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.30、0.31、0.32、0.33、0.34、0.35、0.36、0.37、0.38、0.39、0.40、0.41、0.42、0.43、0.44、0.45、0.46、0.47、0.48、0.49、0.50、前記値の何れかの組み合わせまたは前記に含まれる何れかの範囲のpH非依存的ゼータ電位(mVで表す)を有する。
【0091】
C. レスベラトロール
種々の態様において、本発明は、再狭窄および/または冠動脈心疾患の進行もしくは再発を予防するための対象へのレスベラトロールまたはその誘導体の投与に関する。
【0092】
レスベラトロールはその天然形態で、すなわち、ブドウの皮、ワインまたは他の植物由来組成物から単離して投与できまたは実験室で化学合成して(例えば、Moreno-Manas et al., (1985) Anal. Quim 81:157-61; Jeandet et al., (1991) Am. J. Enol. Vitic. 42:41-46;またはGoldberg et al. (1994) Anal. Chem. 66:3959-63の方法使用)または商業的に、例えば、Sigma-Aldrich Corporation(St. Louis, Mo.)から入手して投与できる。
【0093】
レスベラトロール活性剤は、薬理学的に許容される塩、エステル、アミド、プロドラッグもしくはアナログの形態またはこれらの組み合わせとして投与され得る。しかしながら、不活性エステル、アミド、プロドラッグまたはアナログから活性形態への変換は、標的組織または細胞への到達前にまたは到達により生じなければならない。活性剤の塩、エステル、アミド、プロドラッグおよびアナログは、合成有機化学の当業者に知られ、例えば、J. March, “Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms and Structure,” 4th Ed. (New York: Wiley-Interscience, 1992)に記載の方法を使用して、製造され得る。例えば、塩基付加塩は、活性剤の1以上の遊離ヒドロキシル基と適当な塩基の反応を含む、慣用手段を使用して、中性薬物から製造される。一般に、中性形態の薬物をメタノールまたはエタノールなどの極性有機溶媒に溶解し、塩基をそこに加える。得られた塩は沈殿するかまたは低極性溶媒の付加により溶液から析出させ得る。塩基付加塩の形成に適当な塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、トリメチルアミンなどの無機塩基を含むが、これらに限定されない。エステルの製造は、薬物の分子構造内に存在し得るヒドロキシル基の官能化を含む。エステルは、一般に遊離アルコール基、すなわち、式RCOOH(ここで、Rはアルキルおよび好ましくは低級アルキルである)のカルボン酸由来の部分のアシル置換誘導体である。エステルを、所望により、慣用の水素化分解または加水分解法を使用して、遊離酸に変換し得る。アミドおよびプロドラッグの製造は類似法で実施され得る。活性剤の他の誘導体およびアナログは、合成有機化学の当業者に知られる標準技術を使用して製造できまたは関連文献を参照して推定され得る(米国特許6,022,901参照)。
【0094】
レスベラトロールは、化学的に3,4’,5−トリヒドロキシ−trans−スチルベン、5−[(1E)−2−(4−ヒドロキシフェニル)エテニル]−1,3−ベンゼンジオールとして知ら得る。それは、式Iの構造を有する。
【化1】
【0095】
cis−およびtrans−レスベラトロールの誘導体の非限定的例は、化合物のヒドロキシル基の1以上の水素が置換されてエステルまたはエーテルを形成するものを含む(例えば、式I参照)。エーテル形成例は、メチル基およびエチル基などのアルキル鎖ならびにグルコース、ガラクトース、マルトース、ラクトースおよびスクロースなどのコンジュゲート単糖または二糖の付加を含むが、これらに限定されない。ヒドロキシル基のさらなる修飾は、グルクロン酸抱合または硫酸化を含む。
【0096】
cis−およびtrans−レスベラトロールの誘導体の非限定的例は、化合物のヒドロキシル基の1以上の水素が置換されてエステルまたはエーテルを形成するものを含む(例えば、式I参照)。エーテル形成例は、メチル基およびエチル基などのアルキル鎖の付加ならびにグルコース、ガラクトース、マルトース、ラクトースおよびスクロースなどのコンジュゲート単糖または二糖を含むが、これらに限定されない。ヒドロキシル基のさらなる修飾は、グルクロン酸抱合または硫酸化を含む。
【0097】
エステル化生成物は、RGDまたはKGDなどのアミノ酸セグメントの付加により形成した化合物またはレスベラトロールヒドロキシル基と他のカルボン酸の反応に由来する他の化合物を含むが、これらに限定されない。
【0098】
さらなる誘導体は、親レスベラトロール化合物または官能化レスベラトロールバリアントの酸化的二量体化または官能基付加に由来する化合物を含むが、これらに限定されない。これらの化合物の例は、4位、2’位および3’位へのヒドロキシル、メトキシおよびエトキシ基の付加に由来する物質を含む。二量体化は、縮合環系を形成する1つのレスベラトロール分子のエタン結合と第二レスベラトロール分子のヒドロキシル基の一つの反応に由来する。4位、2’位および3’位のアルキル化は、メチル、エチルおよびプロピルを含むが、これらに限定されない基の付加ならびに4−メチル−2−ペンテン、4−メチル−3−ペンテンおよびイソペンタジエンなどの大きな炭素鎖の付加により、他の誘導体を形成する。
【0099】
さらなる誘導体は、親分子のヒドロキシル基の何れかの喪失、別の位置へのヒドロキシル基付加に由来する化合物および脱ヒドロキシル化化合物の官能化バリアントを提供する前記反応に由来し得る何らかの化合物を含むが、これらに限定されない。
【0100】
例示的レスベラトロール誘導体の構造を、下記式II−VIIに示す。トリアセチルレスベラトロール(TAR)の構造は式VIIに示す。
【化2】
【0101】
レスベラトロールは、再狭窄の多くの経路に関与し得る。故に、本発明の組成物、デバイスおよび方法で使用される限り、レスベラトロールは、再狭窄の問題の原因の全てではないにしても多くに対処し得る。例えば、それは抗炎症性利益を提供し、内皮細胞機能を促進する。レスベラトロールが、インビボおよびインビトロ両者で、内皮前駆細胞の細胞増殖を刺激するとの報告がある(J. Gu, et al., 2006, J Cardiovasc Pharmacol., 47(5): 711-721参照)。特定の理論に拘束されることを意図しないが、これが再内皮化の重要な過程であり得る可能性がある。
【0102】
レスベラトロールは、内皮一酸化窒素合成酵素活性も増加させる(Wallerath T et al., Circulation. 2002 Sep. 24; 106(13):1652-8参照)。さらに、レスベラトロールは、内皮依存性血管弛緩も増強する(Rush J W, Quadrilatero J, Levy A S, Ford R J. Exp Biol Med (Maywood). 2007 June; 232(6):814-22)。それ故に、本発明によるDCBおよび/または他の医療機器へのレスベラトロールの使用は、ステント埋め込み後の再狭窄低減および血流改善のための多面的アプローチを提供する。
【0103】
薬物溶出ステント以外の方法を介する再狭窄処置におけるレスベラトロールの使用のさらなる情報は、引用により全体として本明細書に包含させる、“Administration of resveratrol to prevent or treat restenosis following coronary intervention”なる名称のDavid William Goodmanの米国特許6,022,901に記載されている。
【0104】
レスベラトロールは、赤ワイン摂取による心保護の報告と関連しているポリフェノールである。赤ワイン摂取により報告される心保護効果は、フランス南西部のCHDによる死亡率の低さを記載する新しい用語である、「フレンチ・パラドックス」を報告する疫学調査により注目された。この地区の住民は血清コレステロールおよび血圧が高く、アメリカ人より多くラードおよびバターを食するにも関わらず、他の西洋社会よりCHDによる死亡が40%少ない。この逆説的効果は、赤ワインの毎日の摂取が寄与している。疫学調査は、定期的にアルコールを摂取する集団のCHDリスク減少を示唆するが、かなりのデータが、他のアルコール飲料よりワインが大きな保護を提供することを示す。
【0105】
レスベラトロールは、ブドウ、マルベリー、ピーナツおよびブドウの木などの食品に見られるフィトアレキシンポリフェノールである。ブドウ自体の中で、レスベラトロールは皮に最も豊富である(約50〜100μg/gm)。1液量オンスの赤ワインは、約160μgレスベラトロールを提供する。レスベラトロールがすぐに接合して、グルクロニドおよびスルフェートを形成することは、経口投与レスベラトロール濃度が治療に有用なレベルに達し得ない証拠として議論されている。しかしながら、摂取直後、レスベラトロールは血漿、心臓、肝臓および腎臓で測定され得る。慢性摂取は、さらに心臓および肝臓などの組織のレスベラトロールのレベルを増加させる。
【0106】
他の研究者らによる先の報告は、レスベラトロールが、血管の健康を促進するために多様な機構を介して作用することを示している。抗酸化剤ポリフェノールとして、低密度リポタンパク質の酸化を制限し、そうして脂肪線条形成を阻止する。さらにNFκB活性化阻害を介する抗炎症性効果を示す。いくつかの研究所で、レスベラトロールがeNOS活性増加により内皮機能を促進することが証明されており、最近の報告は、この効果の機構がeNOSリン酸化増加であることを示唆している。レスベラトロールは、おそらく、NADPHオキシダーゼ活性化阻害により、酸化因子傷害に対して内皮保護も促進する。最後に、レスベラトロールは、接着分子発現阻害により、炎症性細胞の血管内皮への接着を阻害する。
【0107】
先の報告は、血管平滑筋細胞(VSMC)増殖阻害におけるレスベラトロールの有効性を示す。例えば、有糸分裂促進因子エンドセリン−1および血小板由来増殖因子で刺激したVSMCで、レスベラトロールは細胞周期トラバースを阻害し、冠動脈平滑筋において、レスベラトロールは、エンドセリン−1誘発マップキナーゼ刺激を阻害した。
【0108】
これらの効果の機構は、一部、テトラヒドロバイオプテリン(BH4)生合成生合成の上方制御に至るレスベラトロール介在ER活性化による。本発明者らは、NOS補因子として知られるBH4レベルの結果的な増加が、細胞周期停止に至るNO濃度上昇を促進することを示している。NO濃度の効果は、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)活性増加に依存するが、その発現には依存しない。この新規ER依存的経路に加えて、本発明は、レスベラトロールがNFκB活性化を極めて強力に阻害することも示す。
【0109】
故に、本発明によって、レスベラトロールは、VSMC増殖に多面的効果を発揮し、NO産生をER依存性経路介して増加させるだけでなく、ER非依存的経路を介してNFκB活性化を阻害もする。VSMC増殖に対して観察される効果をもたらすのは、これら2経路間の協同性である。
【0110】
レスベラトロールはエストラジオールと同じ結合部位を有し、ER−アルファアゴニストとして挙動するが、エストラジオールより低い結合親和性である。これは、女性月経周期異常および男性の女性化副作用などのエストロゲン副作用に対する保護を提供する。
【0111】
D. ケルセチン
種々の態様において、本発明は、再狭窄および/または冠動脈心疾患の進行もしくは再発を予防するための対象へのケルセチンまたはその誘導体の投与に関する。
【0112】
ケルセチンは、一般に植物でグリコンまたは炭水化物コンジュゲートとして見られる。ケルセチン自体、アグリコンまたはアグルコンである。すなわち、ケルセチンは、その構造に炭水化物部分を有しない。ケルセチンのアナログは、ルチンおよびツジンを含むそのグリコンコンジュゲートを含む。ルチンはケルセチン−3−ルチノシドとしても知られる。ツジンはクエルシトリン、ケルセチン−3−L−ラムノシドおよび3−ラムノシルケルセチンとしても知られる。玉ねぎはケルセチンコンジュゲートおよび炭水化物イソラムネチンを含み、ケルセチン−3,4’−ジ−O−ベータグルコシド、イソラムネチン−4’−O−ベータ−グルコシドおよびケルセチン−4’−O−ベータ−グルコシドを含む。ケルセチン自体は、水に実質的に不溶性である。ケルセチン炭水化物コンジュゲートは、ケルセチンよりはるかに高い水溶解度を有する。
【0113】
ケルセチンは、化学的に2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−3,5,7−トリヒドロキシ−4H−1−ベンゾピラン−4−オンおよび3,3’,4’5,7−ペンタヒドロキシフラボンとして知られる。それは、構造式VIIIの構造を有する。
【化3】
【0114】
ケルセチンは、フェノール性抗酸化剤であり、脂質過酸化反応を阻害することが示されている。インビトロおよび動物試験で、ケルセチンは肥満細胞、好塩基球および好中球の脱顆粒を阻害することが示されている。このような活性は、一部、ケルセチンの抗炎症および免疫調節活性の理由である。他のインビトロおよび動物試験は、ケルセチンがチロシンキナーゼを阻害し、炎症性メディエーター、NF−κBの活性化を減少することを示す。ケルセチンのさらなる活性は、抗ウイルスおよび抗癌活性を含む。ケルセチンは、さらにアルドースレダクターゼを阻害することが知られる。本発明で使用するケルセチンまたはそのアナログは、チロシンキナーゼの阻害剤であり得る。ケルセチンの最も重要な生物学的活性は、その血小板活性化阻害とその抗炎症性性質であり、これら2つの効果の相互作用が、現在のDESと関連する血栓形成の発生を減少できる。ケルセチンは血小板活性化および血小板凝集両者を阻害する。血小板由来一酸化窒素を増強して、プロテインキナーゼC依存性NADPHオキシダーゼの活性化を阻害する。さらに、ケルセチンは、ホスホイノシチドキナーゼ阻害により血小板凝集を阻害する。本発明の状況に妥当なケルセチンまたはそのアナログのさらなる性質は、細胞周期阻害、平滑筋細胞増殖および/または遊走阻害を含む。適当なケルセチンのアナログ/誘導体は、そのグリコンコンジュゲートルチンおよびツジンを含む(米国特許出願公開2007/0212386(Patravale et al.)参照)。
【0115】
ケルセチンおよび/またはそのアナログは、単独で使用したとき、上記活性を発揮できる。しかしながら、ケルセチンおよび/またはそのアナログの上記性質は、ケルセチンおよび/またはそのアナログおよびレスベラトロールおよび/またはその誘導体などのさらなる治療剤(ここに開示するとおり)の相乗効果の利用により、さらに増強され得る。
【0116】
ある実施態様において、ポリマーおよび薬学的活性剤の組み合わせは、薬学的活性剤の組み合わせを含む。1を超える薬学的活性剤が使用されるならば、それらは同じ層または別のポリマー層に組み合わせて存在し得る。組み合わせの例は、1以上のコーティングに別々にまたは組み合わせたレスベラトロール+ケルセチンと1以上のコーティングのレスベラトロールまたはケルセチン単独もしくは組み合わせである。
【0117】
ケルセチンの誘導体の例は、化合物のヒドロキシル基の1以上の水素、最も一般には3ヒドロキシルが置換されてエステルまたはエーテルを形成するものである(例えば式VIII参照)。エーテル形成例は、メチル基およびエチル基などのアルキル鎖の付加ならびにフコースおよびラムノースなどのデオキシ糖の付加を含むが、これらに限定されない。エステル化生成物は、酢酸、プロピオン酸およびパルミチン酸などのカルボン酸含有物質の反応により形成される化合物を含むが、これらに限定されない。ケルセチンのウレタン誘導体は、ベンジル2−イソシアナートアセテートおよび(S)−メチル2−イソシアナートプロパノエートなどの物質の付加により形成されるアミノ酸エステルカルバメートを含むが、これらに限定されない。
【0118】
さらなるケルセチン誘導体は、ヒドロキシル位置の何れかでのグルクロニル基などの糖様誘導体の付加により形成される代謝物として記載され得る化合物を含むが、これらに限定されない。これら代謝物の例は、7−O−グルクロニル−ケルセチンおよび3’−O−グルクロニル−ケルセチンを含む。
【0119】
さらなる誘導体は、親分子のヒドロキシル基の何れかの喪失、別の位置へのヒドロキシル基付加に由来する化合物および脱ヒドロキシル化化合物の官能化バリアントを提供する前記反応に由来し得る何らかの化合物を含むが、これらに限定されない。
【0120】
ケルセチンもまた赤ワインに存在するポリフェノールであり、同様にアテローム性動脈硬化症に対する保護を発揮することが報告されている。薬理学的観点から、本発明の薬物組み合わせ、レスベラトロールおよびケルセチンの例は、合理的であると考えられ、赤ワインは、実際に相乗作用して、長期赤ワイン摂取により臨床的に観察される効果を発揮する、低レベルの多くの生物活性ポリフェノール組み合わせである。
【0121】
ケルセチンは、血小板およびNFκB活性化両者の阻害剤である。本発明のDESへのケルセチンの付加は、NFκB活性化の阻害性効果の後押しにより、VSMC増殖に対するレスベラトロールの効果を増強する。さらに、強力なNFκB阻害はまた再狭窄の炎症性成分のレスベラトロール介在阻害も増強する。ケルセチンの付加は、また再狭窄に至るバルーン血管形成術およびステント埋め込みの炎症性応答の一部である血小板活性化を限定する。あるいは、血小板活性化および/または凝集を阻害する他の1以上の薬剤をケルセチンの代わりにレスベラトロールと使用し得る。このような代替的選択肢は、アスピリン、チクロピジン、クロピドグレル、ジピリダモールなどを含むが、これらに限定されない。
【0122】
ある態様において、使用されるケルセチンはアセチル化ケルセチンである。特定の理論に拘束されることを意図しないが、アセチル化ケルセチンは、レスベラトロールまたはアセチル化レスベラトロールに類似するタイムコースで、組織部位でケルセチン薬物レベルを維持できる。
【0123】
例示的ケルセチン誘導体の構造を、式IX−XIIに示す。
【化4】
【0124】
E. レスベラトロールおよびケルセチン
種々の態様において、本発明の治療剤は、レスベラトロール、その薬学的に許容される塩および薬学的に許容される誘導体からなる群から選択される第一治療剤および所望によりケルセチン、その薬学的に許容される塩および薬学的に許容される誘導体からなる群から選択される第二治療剤を含む。
【0125】
さらなる態様において、第一治療剤を、低量の第二治療剤と組み合わせて使用し得る。さらに他の態様において、第一治療剤は、第二治療剤に対して約1:1〜約5:1の比率で存在する。なおさらなる態様において、第一治療剤は、第二治療剤に対して約1:1〜約2.5:1の比率で存在する。なおさらなる態様において、第一治療剤は、第二治療剤に対して約1.5:1〜約2.5:1の比率で存在する。
【0126】
種々の態様において、第一治療剤を、低量の第二治療剤と組み合わせて、第一治療剤が第二治療剤に対して1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1;前記値の何れかの組み合わせ;または前記値の2つによって定まる何れかの範囲の比で存在するように、使用され得る。
【0127】
種々の態様において、第一治療剤を、低量の第二治療剤と組み合わせて、第一治療剤が第二治療剤に対して1.10、1.11、1.12、1.13、1.14、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.20、1.21、1.22、1.23、1.24、1.25、1.26、1.27、1.28、1.29、1.30、1.31、1.32、1.33、1.34、1.35、1.36、1.37、1.38、1.39、1.40、1.41、1.42、1.43、1.44、1.45、1.46、1.47、1.48、1.49、1.50、1.51、1.52、1.53、1.54、1.55、1.56、1.57、1.58、1.59、1.60、1.61、1.62、1.63、1.64、1.65、1.66、1.67、1.68、1.69、1.70、1.71、1.72、1.73、1.74、1.75、1.76、1.77、1.78、1.79、1.80、1.81、1.82、1.83、1.84、1.85、1.86、1.87、1.88、1.89、1.90、1.91、1.92、1.93、1.94、1.95、1.96、1.97、1.98、1.99、2.00、2.01、2.02、2.03、2.04、2.05、2.06、2.07、2.08、2.09、2.10、2.11、2.12、2.13、2.14、2.15、2.16、2.17、2.18、2.19、2.20、2.21、2.22、2.23、2.24、2.25、2.26、2.27、2.28、2.29、2.30、2.31、2.32、2.33、2.34、2.35、2.36、2.37、2.38、2.39、2.40、2.41、2.42、2.43、2.44、2.45、2.46、2.47、2.48、2.49、2.50;前記値の何れかの組み合わせ;または前記値の2つによって定まる何れかの範囲の比で存在するように、使用され得る。
【0128】
F. 薬物被覆バルーン
本発明はまた1以上の治療剤を含むpNPコーティングを含むDCBカテーテルバルーンを提供する。ある態様において、第一コーティングを、DCBカテーテルバルーンの外側表面に直接適用する。特定の理論に拘束されることを意図しないが、1以上の治療剤を含むpNP組成物とリン脂質層の間の強いイオン性相互作用が、バルーンにpNPを保持する吸着力に打ち勝つ。このような強いイオン性相互作用は、膨張中の限定的接触時間内に、バルーンからpNPの脱離を達成するための引き金を提供し得る。
【0129】
さらなる態様において、本発明は、外側表面を有する膨張可能バルーンカテーテル;およびレスベラトロール、その薬学的に許容される塩および薬学的に許容される誘導体からなる群から選択されるpNPを含むバルーンカテーテル上の接着層(ここで、pNPは該治療剤を封入する)を含む、埋込型医療機器に関する。
【0130】
さらなる態様において、本発明は、外側表面を有する膨張可能バルーンカテーテル;およびケルセチン、その薬学的に許容される塩および薬学的に許容される誘導体からなる群から選択されるpNPを含むバルーンカテーテル上の接着層(ここで、pNPは該治療剤を封入する)を含む、埋込型医療機器に関する。
【0131】
さらなる態様において、本発明は、外側表面を有する膨張可能バルーンカテーテル;およびレスベラトロール、その薬学的に許容される塩および薬学的に許容される誘導体からなる群から選択される第一治療剤および、所望によりケルセチン、その薬学的に許容される塩および薬学的に許容される誘導体からなる群から選択される何れかの第二治療剤を含むpNPを含むバルーンカテーテル上の接着層(ここで、pNPは該第一治療剤および第二治療剤を封入する)を含む、埋込型医療機器に関する。
【0132】
さらなる態様において、本発明は、外側表面を有する膨張可能バルーンカテーテル;およびレスベラトロール、その薬学的に許容される塩および薬学的に許容される誘導体からなる群から選択される第一治療剤および、所望によりケルセチン、その薬学的に許容される塩および薬学的に許容される誘導体からなる群から選択される第二治療剤を含むpNPを含むバルーンカテーテル上の接着層(ここで、pNPは該第一治療剤および第二治療剤を封入する)を含む、埋込型医療機器に関する。
【0133】
種々の態様において、DCBカテーテルバルーンは、強度、柔軟性および摩擦特性の適当な組み合わせの適当な医薬グレードポリマーからなる。ある態様において、バルーンはナイロンを含む。さらなる態様において、バルーンは、カルボン酸ポリアミド(PA6、PA11、PA12)と、アルコール端末ポリエーテル(ポリテトラメチレングリコールPTMG)、PEG)の重縮合により得たポリアミドブロックコポリマーを含む。ナイロンの例は、商品名PEBAX(登録商標)(Arkema)およびVESTAMID(登録商標)E(Evonik Industries)の下に入手可能なものを含む。さらなる態様において、DCBカテーテルバルーンは、負ゼータ電位を有する1以上のポリマー、例えば、PEBAX(登録商標)などのナイロンブロックコポリマーを含む。別の態様において、DCBカテーテルバルーンは、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレンおよび類似材料の1以上を含む。
【0134】
種々の態様において、バルーンは、平滑な壁であってよくまたはある態様において溝または孔を備え、バルーン部分の表面積を部分的に増加させる。DCBカテーテルバルーンは、一般に予定したサイズまで膨張可能であり、好ましくは狭窄動脈をその元の直径まで拡張させて戻すことができるように、耐圧である。
【0135】
さらなる態様において、DCBカテーテルバルーンは、所望によりさらに1以上のポリマーコーティング材を含む1以上の層を含む第一コーティングを含み得る。ある態様において、第一コーティングはDCBカテーテルバルーンの外側表面に適用され、その上にpNPコーティングが提供される。種々の態様において、第一コーティングは、ポリL−ラクチドポリマー(PLLA)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)、ポリ(l−ラクチド−コ−トリメチレンカーボネート)、ポリ(d,l−ラクチド−コ−トリメチレンカーボネート)、ポリビニルアルコール(PVA)およびポリアルキレングリコール(PAG)、例えばポリエチレングリコール(PEG)、アルブミン、ゼラチン、デンプン、セルロース、デキストラン、多糖、フィブリノゲン、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)、ポリグリコール酸、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(アルキルカーボネート)およびポリ(オルトエステル)の1以上を含み得る。選択したポリマーコーティングを、何れかの所望の濃度の選択した薬物の選択した生物活性薬物と、混合しても、組み合わせても、共有結合させてもよい。2以上のポリマーを互いに組み合わせて、第二コーティングに使用するポリマーマトリクスを形成し得る。第二コーティングは、このようなポリマーの複数コーティングまたは複数層を含み得る。
【0136】
さらなる態様において、DCBカテーテルバルーンは、1以上のポリマーコーティング材を含む1以上の層を含む第二コーティングを所望によりさらに含み得る。ある態様において、第二コーティングはpNPコーティングに適用される。さらに他の態様において、DCBカテーテルバルーンは、DCBカテーテルバルーン表面を第一コーティングでコーティングし、次いで、1以上の治療剤を含む本発明のpNPの1以上の層でコーティングし、さらに第二ポリマーコーティングでコーティングし得る。あるいは、DCBカテーテルバルーンは、バルーンの外側表面をpNPコーティングでコーティングし、次いでその上に第二コーティングでコーティングし得る。種々の態様において、第二コーティングは、ポリL−ラクチドポリマー(PLLA)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)、ポリ(l−ラクチド−コ−トリメチレンカーボネート)、ポリ(d,l−ラクチド−コ−トリメチレンカーボネート)、ポリビニルアルコール(PVA)およびポリアルキレングリコール(PAG)、例えばポリエチレングリコール(PEG)、アルブミン、ゼラチン、デンプン、セルロース、デキストラン、多糖、フィブリノゲン、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)、ポリグリコール酸、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(アルキルカーボネート)およびポリ(オルトエステル)の1以上を含み得る。2以上のポリマーを互いに組み合わせて、第二コーティングに使用するポリマーマトリクスを形成し得る。第二コーティングは、このようなポリマーの複数コーティングまたは複数層を含み得る。
【0137】
pNPコーティングは、ここに記載するとおり、その中に1以上の治療剤が封入されたpNPを含む。pNPに封入され得て、次いで、DCBカテーテル上のpNPコーティングに含まれる1以上の治療剤の例は、バルーンカテーテルのコーティング中/その上に使用するためのレスベラトロールおよびケルセチンを含むが、これらに限定されない。
【0138】
ディップコーティング技術を、バルーン表面のコーティングに使用できるが、噴霧コーティングまたはエレクトロスプレーコーティング方法などの他の方法も使用し得る。さらなる態様において、エレクトロスプレー方法を使用して、pNPコーティング、第一コーティングおよび/または第二コーティングを提供する。コーティングは、一般に一層を含むが、コーティングに含まれる薬物の含量および放出プロファイルにより複数層も含み得る。
【0139】
種々の態様において、本発明は、外側表面を有する膨張可能バルーン;およびバルーンの表面積に基づく第一活性剤の濃度が約1〜約5μg/mmの範囲であり、そしてバルーンの表面積に基づく第二活性剤の濃度が約1〜約5μg/mmの範囲であるように、本発明のpNP組成物を含む膨張可能バルーンの外側表面をコーティングするナノ粒子を含む、薬物被覆バルーンカテーテルに関する。
【0140】
さらなる態様において、膨張可能バルーンの外側表面をコーティングするナノ粒子は、本発明のpNP組成物を、第一活性剤の濃度がμg/mm単位で約1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6.、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6.、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6.、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6.、4.7、4.8、4.9、5.0;前記値の何れかの組み合わせ;または前記値の何れかの2つで定まる範囲;および第二活性剤の濃度が、μg/mm単位で約1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6.、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6.、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6.、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6.、4.7、4.8、4.9、5.0;前記値の何れかの組み合わせで含む。
【0141】
本発明のDCBカテーテルバルーンは、血管再生、カテーテル留置、バルーン膨張およびステント送達過程およびここに記載する方法に有用である。ステント送達過程において、例えば、本発明の薬物被覆バルーンは、偶発的にステント埋め込みの局所部位に位置しない管領域に薬物を送達し得る。バルーン表面からのこのような薬物の偶発的送達は、目的部位に至る小さくかつ蛇行状管通路に特に有用であり得る。さらに、治癒および抗増殖剤を持たないステント部位の再内皮化が薬物被覆バルーンの使用により促進され得る。
【0142】
DCBカテーテルを用いて、バルーン壁は、膨張したとき血管壁と接触し、薬物が放出される。それ故に、薬物は、実際の膨張中または血管壁との接触時に放出され得る。実施に際し、薬物の治療量が血管壁に送達され、一方、全身送達は限定的であるかまたは低減される。故に、バルーンの表面と血管壁の、ステント送達またはその他の結果としての圧接により、治療剤を含むpNPが血管壁表面に接着し、治療剤が、例えば、数秒、数分または数時間まで放出される。
【0143】
種々の態様において、膨張後最初の3時間以内に送達される治療剤の用量は、薬物負荷量(デバイスあたりの薬物の総含量または薬物の量)の少なくとも約10%、総薬物負荷量の少なくとも約25%、薬物負荷量の少なくとも約50%であってよく、総薬物負荷量の少なくとも約75%が放出される。ある態様において、薬物負荷量の少なくとも約10%、総薬物負荷量の少なくとも約25%、薬物負荷量の少なくとも約50%および総薬物負荷量の少なくとも約75%が膨張後最初の5分以内に放出される。ある態様において、DCBカテーテルは薬物の25%以上を膨張開始後最初の3分で放出してよくまたは薬物の25%以上を膨張開始後最初の2分で放出してよい。DCBカテーテルについて、未放出薬物は、患者から抜去したときに、デバイスに残存する薬物であり、その残りの量は放出されており、好ましくは限定的量(総含量の50%を超えない)が全身性に放出される。全身性に放出される薬物の量は、DCBに付着した薬物の特定の薬物動態および薬力学による。
【0144】
種々の態様において、DCBカテーテルバルーンの表面は、デバイス表面、例えば、膨張可能バルーン外側表面の平方ミリメートルあたり0.1〜15μgのレスベラトロールおよび/またはケルセチンを含むpNPを含み、膨張による薬物の即時放出を可能とする。さらなる態様において、DCBカテーテルバルーンは、バルーンカテーテルの表面積に基づいて、第一治療剤を約1〜約5μg/mm範囲で含み、バルーン表面積に基づく何れかの第二活性剤の濃度は約1〜約5μg/mm範囲である。
【0145】
さらなる態様において、膨張可能バルーンの外側表面をコーティングするナノ粒子は、本発明のpNP組成物を、第一活性剤の濃度、レスベラトロール(またはその薬学的に許容される塩または誘導体)、μg/mm単位で、約1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6.、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6.、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6.、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6.、4.7、4.8、4.9、5.0;前記値の何れかの組み合わせ;または前記値の何れかの2つで定まる範囲;および第二活性剤、ケルセチン(またはその薬学的に許容される塩または誘導体)の濃度を、μg/mm単位で、約1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6.、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6.、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6.、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6.、4.7、4.8、4.9、5.0;前記値の何れかの組み合わせで含む。
【0146】
種々の態様において、DCBカテーテルおよび/または他の医療機器の表面の治療剤を含むpNPの放出プロファイルは、約20〜約40秒、約1分〜100分、約1時間〜20時間、約1日〜1か月、約1日〜10日、約1日〜約30日、約1日〜約2か月、約1日〜約6か月、約1日〜約6か月、約1日〜約1年の時間である。遅延プロファイルコーティングの非限定的例は、1活性剤および/または複数活性剤を、埋め込み後少なくとも1か月、少なくとも2か月、少なくとも6か月または少なくとも1年放出の期間にわたり放出する。
【0147】
実施例に進む前に、この開示は、記載する特定の態様に限定されず、そのようなものとして、当然変わり得ることは理解されるべきである。組成物を形成するおよびその要素の他のシステム、方法、特性および利点は当業者には明らかであるかまたは次の図面および詳細な記載の考察により、明らかとなる。このようなさらなるシステム、方法、特性および利点の全ては本記載に包含され、本開示の範囲内であり、添付する特許請求の範囲により保護されることが意図される。ここで使用する用語は特定の態様を記載する目的のみであり、限定する意図はない。当業者はここに記載する態様の多くのバリアントおよび適応を認識する。これらのバリアントおよび適応は、本開示の教示に含まれ、本特許請求の範囲により包含されることが意図される。
【0148】
G. 血管疾患を処置する方法
本発明はまた、本発明の薬物被覆バルーンで対象を処置することを含む、血管疾患を処置する方法にも関する。さらなる態様において、本発明の方法は、血管傷害または血管形成術と関連する少なくとも1つの疾患または状態を処置する方法である。血管形成術は、コレステロール、脂肪、カルシウムおよび瘢痕組織からなるプラークが血管壁に構築され、管腔を狭小化し、血流を妨害する疾患を意味するとしてここで使用する「アテローム性動脈硬化」のための「血管再生」処置の一部として使用される。ここで使用する「血管再生」は、狭小化動脈を通る活発な血流を再建する何らかの処置を意味し、バイパス手術、血管形成術、ステント留置および他の介入性過程を含む。血管再生後の二次的合併症は、再狭窄、新生内膜、新生内膜過形成および血栓症を含み得る。ここで使用する「再狭窄」は、先の処置と同じ位置の動脈の再狭小化として定義される;臨床的再狭窄は、通常再発性狭心症の形態での虚血性事象の顕在化である。ここで使用する「新生内膜」は、自然の治癒過程の一部として、血管形成術またはステント留置後の管傷害の結果としてしばしば形成される、細胞および細胞分泌物からなる瘢痕組織として定義される。ここで使用する「新生内膜過形成」は、動脈内層からの平滑筋細胞の過剰増殖を意味する。血管形成術および/またはステント留置後、これら細胞の過剰増殖は動脈を再狭窄し得る。ここで使用する「血栓症」は、血管または心臓腔自体内部の血餅の形成を意味し、「血栓」は血餅である。
【0149】
血管再生後、3つの病態生理学的相が区別され得る。ステージI、血栓性相(血管再生後0〜3日目)。このステージは、迅速血栓形成からなる。動脈性傷害に対する最初の応答は、爆発的活性化、接着、凝集および血小板沈着である。血小板血栓は、しばしば大きい可能性があり、心筋梗塞で生じるように、血管を閉塞させるのに十分な大きさまで成長し得る。24時間以内に、富フィブリン血栓が血小板部位周囲に蓄積する。2つの形態的特性が顕著である:1)血小板/フィブリンおよび2)フィブリン/赤血球血栓。血小板は傷害部位で高密度で凝集し、フィブリン/赤血球血栓が血小板塊に結合する。ステージII、動員相(3〜8日目)。動脈性傷害部位の血栓が内皮細胞層を発生させる。内皮細胞出現直後、激しい細胞浸潤が生じる。浸潤は、主に単球であり、これは、マクロファージとなり、血流に放出されて、内皮下壁在血栓に移動する。リンパ球も存在し、両タイプの細胞が血流から出る。この浸潤は、傷害動脈の管腔側から発達し、細胞は壁在血栓深くに徐々に移動する。ステージIII、増殖性相:(8日目〜最終治癒)。アクチン陽性細胞が管腔からの残存血栓に定着し、この最終段階で壁在血栓頂部に「キャップ」を形成する。細胞は傷害された中膜に向かい徐々に増殖し、血栓を完全になくなるまで分解し、新生内膜細胞に置き換える。この時点で、治癒が完了する。ブタで、この過程は残存血栓厚により、21〜40日間かかる。退化血栓への平滑筋細胞遊走および増殖は新生内膜体積を増加させ、血栓単独より大きくなる。平滑筋細胞は、傷害位置の遠位部位から遊走し、分解された血栓は新生内膜細胞のための生体吸収性「増殖マトリクス」となり、遊走し、置き換える。血栓は、新生内膜治癒が完了するまで、徐々に深いレベルまで定着する。
【0150】
さらなる態様において、本発明の方法を使用して、上記3段階のいずれか、例えば、活性化、接着、凝集、血小板沈着、血栓症、血小板凝集、増殖および内膜新生後の状態などの、血管再生後のこれらの状態を処置し得る。
【0151】
さらなる態様において、第一治療剤および第二治療剤は、血管形成術後の新生内膜過形成阻害などの血管形成術後の再狭窄の予防または処置のためである。
【0152】
さらなる態様において、本発明の方法は、血管形成術と関連する急性、亜急性および慢性二次的合併症の予防に関する。このような血管形成術の後および/または関連する二次的合併症は上に定義され、例えば、再狭窄、新生内膜、新生内膜過形成、血栓症および炎症を含む。
【0153】
さらなる態様において、本発明の方法は、しばしば多くの疾患過程の要素である、望ましくない細胞増殖の処置に関する。望ましくない細胞増殖は、矯正手術後の再狭窄、狭窄再発または動脈狭窄の要素であり得る。再狭窄は、冠動脈バイパス(CAB)、血管内膜切除、心臓移植後または血管形成術、アテローム切除術、レーザーアブレーションまたはステント留置後に起こる。再狭窄は、管腔開放過程中の血管壁の傷害の結果である。一部患者において、傷害は、血管形成術により外傷を受けた領域の「過形成」と称される、平滑筋細胞増殖により特徴づけられる修復応答を開始する。この平滑筋細胞増殖は、数週間〜数か月内に血管形成術で開けた管腔を再狭窄し、それにより、再狭窄を軽減する反復血管形成術または他の過程が必要である。
【0154】
さらなる態様において、本発明の方法は、高用量全身送達による副作用を低減するための、本発明の治療剤の局所送達を提供する。
【0155】
H. 態様
次の例示的態様の一覧はここに提供する開示を支持し、かつ本発明はそれらにより支持される。
【0156】
態様1.第一ポリマー、第二ポリマー、第一治療剤および所望により第二治療剤を含むナノ粒子組成物であって、ここで、第一ポリマーはポリマー鎖あたり1以上の正荷電部分を含むアクリレートポリマーであり、第二ポリマーはポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)、ポリ(グリコリド−コ−カプロラクトン)およびポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド−コ−ε−カプロラクトン)からなる群から選択され、第一治療剤はレスベラトロール、その薬学的に許容される塩および薬学的に許容される誘導体からなる群から選択され、そして、第二治療剤はケルセチン、その薬学的に許容される塩および薬学的に許容される誘導体から所望により選択される、ナノ粒子組成物。
【0157】
態様2. 第一ポリマーがアクリレートを含むコポリマーである、態様1に記載のポリマーナノ粒子組成物。
【0158】
態様3. アクリレートを含むコポリマーが約60重量%メチルメタクリレート、30重量%エチルアクリレートおよび10重量%2−トリメチルアンモニウムエチルメタクリレートクロライドを含む、態様2に記載のポリマーナノ粒子組成物。
【0159】
態様4. 第二ポリマーがポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)、ポリ(グリコリド−コ−カプロラクトン)およびポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド−コ−ε−カプロラクトン)からなる群から選択される、態様1〜態様3の何れかに記載のポリマーナノ粒子組成物。
【0160】
態様5. 第二ポリマーがポリ(ラクチド−コ−グリコリド)である、態様4に記載のポリマーナノ粒子組成物。
【0161】
態様6. 第一治療剤がトリアセチルレスベラトロールである、態様1〜態様5の何れかに記載のポリマーナノ粒子組成物。
【0162】
態様7. 第二治療剤がケルセチンである、態様1〜態様6の何れかに記載のポリマーナノ粒子組成物。
【0163】
態様8. 第一治療剤および第二治療剤が約1:1〜約1:5の比で存在する、態様1〜態様7の何れかに記載のポリマーナノ粒子組成物。
【0164】
態様9. 直径約100nm〜約300nmを有するナノ粒子を含む、態様1〜態様8の何れかに記載のポリマーナノ粒子組成物。
【0165】
態様10. 約0.35mV〜約0.60mVのpH非依存的ゼータ電位を有するナノ粒子を含む、態様1〜態様9の何れかに記載のポリマーナノ粒子組成物。
【0166】
態様11. 外側表面を有する膨張可能バルーン;および本発明のpNP組成物を含む膨張可能バルーンの外側表面をコーティングする態様1〜態様10の何れかに記載のナノ粒子を含み、ここで、膨張可能バルーンの外側表面の少なくとも一部の第一活性剤の濃度は約1〜約5μg/mmの範囲であり、そしてバルーンの表面積に基づく第二活性剤の濃度は約1〜約5μg/mmの範囲である、薬物被覆バルーンカテーテル。
【0167】
態様12. バルーン外側表面がポリアミドブロックコポリマーを含む、態様11に記載の薬物被覆バルーンカテーテル。
【0168】
態様13. 対象を態様11〜態様12の何れかに記載の薬物被覆バルーンカテーテルで処置することを含む、血管疾患を処置する方法。
【0169】
態様14. 態様11〜態様12の何れかに記載の薬物被覆バルーンカテーテル態様11〜態様12および血管疾患の処置に該薬物被覆バルーンカテーテルを使用するための指示を含む、キット。
【0170】
態様15. 態様1〜態様10の何れかに記載のポリマーナノ粒子組成物、膨張可能バルーン上に該ポリマーナノ粒子組成物をコーティングするための指示、および(a)膨張可能バルーンを含むバルーンカテーテル;または(b)バルーンカテーテルに使用するのに適する膨張可能バルーン
を含む、キット。
【0171】
前記から、ここに記載する態様が明らかであり、本構造に内在する他の利点と共に、上記目標および目的の全てを達成するために十分に適応されていることが分かる。
【0172】
特定の要素および工程を互いに結び付けて記載しているが、ここに提供される何れかの要素および/または工程は、明示がなくても、何れかの他の要素および/または工程と組み合わせ可能であることが意図され、なおここに提供される範囲内であると理解されるべきである。
【0173】
ある特性および何れかの下位の組み合わせが有用であり、他の特性および下位の組み合わせを引用せずに用い得ることは理解される。これは、特許請求の範囲により考慮され、その範囲内である。
【0174】
多くの可能な態様が範囲を逸脱することなくなすことができるため、ここに示すまたは添付の図面および詳細な記載に示す全ての事項は、説明的であると解釈すべきであり、限定的意味はない。
【0175】
また、ここで使用する用語は特定の態様を記載する目的のみであり、限定する意図はない。当業者はここに記載する態様の多くのバリアントおよび適応を認識する。これらのバリアントおよび適応は、本開示の教示に含まれ、本特許請求の範囲により包含されることが意図される。
【0176】
ここで、本発明の態様を記載しているが、一般に、次の実施例は、いつくかのさらなる本発明の態様を記載する。本発明の態様を次の実施例および対応する文章および図面とむつび付けて記載しているが、本発明の態様をこの記載に限定する意図はない。それどころか、本発明の精神および範囲内に含まれる全ての代替物、修飾および等価物をカバーする意図がある。
【0177】
I. 実施例
実施例
ここで、本発明の態様を記載しているが、一般に、次の実施例は、いつくかのさらなる本発明の態様を記載する。次の実施例は、本開示の完全に例示的であり、本発明がその開示として考える範囲を限定する意図はない。本発明の態様を次の実施例および対応する記載および図面と結び付けて記載しているが、本発明の態様をこの記載に限定する意図はない。むしろ、本発明の精神および範囲内に含まれる全ての代替物、修飾および等価物をカバーすることを意図している。数値(例えば、量、温度など)は精度を確実にする努力をしているが、ある程度の誤差および偏差は考慮すべきである。特に断らない限り、部は重量部であり、温度は℃または環境温度であり、圧力は大気圧またはほぼ大気圧である。
【実施例】
【0178】
実施例1. ナノ粒子合成法。
ここに記載する実施例および下記他の実施例において、ある材料を試験に使用し、次のとおり、得た:Resomer(登録商標)RG504Hポリ(乳酸−コ−グリコール酸)PLGA 50:50、ケルセチン(QUER)およびアセトニトリルはSigma Aldrich Corp. (St. Louis, MO)から得た;酢酸エチル、Tween 80、レスベラトロール(RESV)およびトリアセテートレスベラトロール(TAR)はThermo Fisher Scientific(Waltham, MA)から得た;そしてEudragit RL100はEvonik Industries AG(Essen, Germany)から得た。ポリマーナノ粒子合成は、単一エマルジョン蒸発技術に従った(Astete C.E. and Sabliov C.M. J. Biomater Sci Polym Ed. 2006;17(3):247-89)。
【0179】
簡潔には、有機相を、Eudragit RL100(60mg)とPLGA(200mg)を酢酸エチル対アセトン(8:2)溶液(6mL)中、室温で30分間穏やかに撹拌することにより混合して、製造した。次に、1:2モル比のケルセチンおよびトリアセテートレスベラトロール(TAR)を有機相に加えた。アセチル化レスベラトロールを、その捕捉効率がレスベラトロールより大きいことがパイロット試験で示された後、利用した。さらに、1:2モル比は、先の試験で化合物間の最大生物学的相乗性を誘発することが示された12。15分間、室温で連続撹拌後、有機相を4mg/mL Tween 80を含む60mLの水相に滴加した。液滴サイズを小さくするために、エマルジョンをMicrofluidizer M-110P (Microfluidics Corp, Westwood, MA)で4℃、30,000 PSIおよび4回通過で微小流体化した。懸濁液中のを、Rotavapor Buchi R-300(Buchi Corp., New Castle, DE)を使用して、減圧下、32℃で2時間蒸発させた。最後に、ナノ粒子懸濁液をトレハロースと1:2質量比で混合し、懸濁液をFreeZone 2.5(Labconco Corp., Kansas City, MO)で−80℃で2日間凍結乾燥した。ポリマーナノ粒子再懸濁後の凝集を最小化するために、ポリビニルアルコール(PVA)(30mg)2mL溶液を加えて、その後乾燥した。粉末化サンプルをさらなる特徴づけおよび使用まで、−20℃で保存した。
【0180】
実施例2. 薬物負荷および捕捉効率を決定する方法。
薬物負荷および捕捉効率をHPLCを使用して決定した。まず標準曲線を、抽出溶媒ジメチルホルムアミド(DMF)で作成した。最初の試験は、ケルセチンは分解を最少にするためにアスコルビン酸が必要であることを示したが、TARは、アスコルビン酸を加えることなく、DMF中で測定した。薬物負荷を、負荷ポリマーナノ粒子をDMF中、3.9mg/mL濃度で懸濁することにより測定した。各200μLサンプルを採り、80μLのアスコルビン酸をそれぞれに加えた。サンプルを遠心により浄化し、次いでHPLCを使用して分析した。アスコルビン酸添加サンプルをケルセチンについて測定したが、無添加のものをTARおよびレスベラトロールについて測定した。分析をトリプリケートで実施した。理論的負荷を、合成中に加えたケルセチンおよびTARの最初の量に対して計算した。
【0181】
実施例3. 薬物放出プロファイルを評価する方法。
薬物放出プロファイルを実施して、10日間にわたるpNPからの両薬物の放出を測定した。放出試験を、生理学的条件を模倣するため、模擬血液でpH7.4で実施した。ナノ粒子を19.5mg/L濃度で懸濁した。この懸濁液を透析バッグに移し、これを密閉し、模擬血液に入れた13。システム全体を、10日間ロッキングインキュベーターに入れた。各日に、サンプルを透析バッグ内部から採り、サンプルを薬物負荷の決定に使用したのに類似するプロトコールを使用して、HPLCにより分析した。
【0182】
実施例4. 薬物の細胞取り込みの方法。
ラット大動脈平滑筋細胞を6ウェルプレートでコンフルエントまで増殖させた。第一群について、細胞をケルセチン(QUER)またはTARでそれぞれ12.5μMおよび25μMで処理し、先の試験で最大相乗性を示した1:2モル比を目的とした12。第二群について、細胞を、捕捉QUERおよびTARを含む1.4mg/mL pNPで処理した。処理後、細胞を、予備試験で最大取り込みが生じることが示された6時間インキュベートした。メタノールおよびアスコルビン酸を使用してタンパク質を沈殿させ、細胞の全ての他の成分を保持した。HPLCを実施して、細胞に存在するケルセチンおよびTARの量を決定し、データをBCAタンパク質アッセイを使用して定量した細胞タンパク質に対して標準化した。
【0183】
実施例5. 薬物レベル定量法。
ナノ粒子から放出されたおよび細胞内の薬物を、逆相HPLCで、Waters 2487二重波長吸光度検出器および4チャネルESA 5600A CoulArray電気化学検出器(Chelmsford, MA)に接続した、Waters 2695 Alliance分離モジュール(Milford, MA)を使用して、定量した。分離は、Targa C18 3μM 150×4mmカラム(Higgins Analytical, Mountain View, CA)を使用して、達成した。移動相Aは、75mM クエン酸および25mM 酢酸アンモニウム含有10:90 アセトニトリル/水からなった。移動相Bは、75mM クエン酸および25mM 酢酸アンモニウム含有50:50 アセトニトリル/水からなった。相を、カラムに0.53mL/分で、次の線形勾配を使用して行った:70%A/30%B〜10%A/90%Bを35分間かけて、10%A/90%Bを12分間、続く3分間にわたる最初の条件への再平衡化。QUERを、合わせた200mV、580mVおよび750mVチャネルで検出されたピーク面積で定量した。TARを750mVチャネルで定量した。RESVを検出し、合わせた100mV、200mV、580mVおよび750mVチャネルで定量した。サンプルピークは、保持時間に基づき、認められた標品に適合した。
【0184】
実施例6. 生体適合性の評価法。
pNP存在下の赤血球溶解を生体適合性指標として測定した。溶血性アッセイについて14、トリアセチルレスベラトロール(TAR)およびケルセチン含有ポリマーナノ粒子を使用した。ナノ粒子溶液を、PBSを使用して次の濃度に希釈した:0.1mg/mL、0.3mg/mL、0.9mg/mL、1.5mg/mLおよび2.0mg/mL。使用した血液は、Institutional Care and Use Committee at the Louisiana State University School of Veterinary Medicineにより承認された他の試験で屠殺したマウスから採った。血中ヘモグロビン濃度140mg/mLを考慮して、血液を、PBSを使用して10mg/mLに希釈した。次に、700μLのPBS、100μLの希釈血液および100μLの各ナノ粒子濃度を合わせた。陽性対照として、ナノ粒子溶液の代わりに100μLの10%Triton X溶液を加えた。さらに、陰性対照はナノ粒子溶液を欠いた。次いでサンプルを37℃水浴に約3時間入れた。インキュベーション後、サンプルを15分間、800xgで室温遠心分離した。遠心分離後、各サンプルからの上清100μLを96ウェルプレートにトリプリケートで加えた。次に、100μlのcyanmetヘモグロビンを各ウェルに加え、サンプルを10分間インキュベートした。標準曲線をcyanmetヘモグロビン試薬を使用して、作成した14。試薬の連続希釈を、リン酸緩衝化食塩水(PBS)を使用して作製し、1〜150mg/mL濃度範囲に変換した。200μLの各希釈サンプルを96ウェルプレートにトリプリケートで加えた。Biotek Citation 3分光光度計(Winooski, VA)を使用して、532nmでサンプル吸光度を測定した。最後に、吸光度を、BioTek分光光度計で532nmで測定した。
【0185】
実施例7. 細胞毒性を決定する方法。
ATPの相対レベルを評価する発光細胞生存能アッセイ(Promega, Madison, WI)を、ナノ粒子アッセイの細胞毒性を試験するために使用した。ラット大動脈平滑筋細胞を4つの別々の時点で試験すべき不培養培地中、透明壁96ウェルプレートで播種した。コンフルエントまで増殖後、第一群の細胞を、元のナノ粒子で0.1mg/mL、0.3mg/mL、0.9mg/mL、1.5mg/mLおよび2.0mg/mL濃度で処理し、第二群の細胞を、ナノ粒子で0〜1.5mg/mL濃度で処理した。各濃度のナノ粒子をトリプリケートで試験し、実験を3回実施した。6時間、24時間、48時間および72時間インキュベーションで、プレートをインキュベーターから出して、室温に30分間置いた。CellTiter-Glo(登録商標)試薬を各ぅえるに加えた。内容物を、2分間、オービタルシェーカーで振盪して、細胞溶解を誘発した。プレートを室温で10分間インキュベートして、発光シグナルを安定させた。次いで、ルミネセンスをBiotek Synergyマイクロプレートリーダーで読んだ。
【0186】
実施例8. QUERおよびRESVを含むナノ粒子の特徴づけ。
例示的ナノ粒子を上記方法を使用して製造し、上記の種々の方法を使用して、特徴づけした。捕捉QUERおよびRESVを含む例示的ナノ粒子組成物は、狭いサイズ分布の球形を示した(図1)。ナノ粒子は、超純水に再懸濁後平均サイズ185±12nmを有し、ゼータ電位+48±4.5mVであった(表1)。特定の理論に拘束されることを意図しないが、正ゼータ電位はメタクリレートポリマー(Eudragit RL100)のアミノアルキル側鎖基による可能性がある。
【表1】

【0187】
理論的負荷を、合成中に加えたQUERおよびTARの最初の量に対して計算した。次いで、薬物負荷、捕捉効率およびQUER対TARモル比を計算した(表1)。観察された比(1:1.09)は、1:2モル比のQUER:TARの設計目標を満たす近似であった。
【0188】
10日にわたり測定した薬物放出プロファイルで、82%のケルセチンおよび76%のpNP捕捉TARが10日目までに放出された。両薬物は、爆発的放出を第一日目内に示したが、pNPは、両薬物を全10日期間放出し続けた(図2)。
【0189】
レスベラトロールを細胞処理に使用しなかったが、アセチル化薬物は常在エステラーゼの作用により、細胞内でエステル加水分解されることが知られる(Davis, B.H., et al., Int J Lab Hematol. 2010. 32(2):139-41)。故に、TAR自体ではなくRESVが6時間のHPLCで観察されたのは当然である。ポリフェノール捕捉pNP処理細胞は、ナノ粒子ではない直接薬物処理した細胞より、高い細胞内RESV、QUERおよびTAR量を示した(図3)。直接薬物処理と比較したpNPを利用する薬物細胞取り込みをより徹底的に比較するために、各検体の曲線下面積(AUC)をGraphPad Prism version 6 software(La Jolla, CA)を使用して計算した。得られたAUCは、薬物をpNPに捕捉して送達したとき、RESVおよびQUERについてそれぞれ約2040および361であったが、薬物をpNPを用いずに送達したとき94.4および0.0116であった。故に、pNPを使用する捕捉は、細胞への薬物送達を、RESVで>20倍およびQUERで>4桁増強した。
【0190】
生体適合性を、赤血球溶血を増加させるポリフェノール捕捉pNPの能力として評価した。試験した全用量(0〜1.5mg/mL)で、薬物捕捉pNP存在下の溶血は、ベースラインで約24%の媒体を超えなかった(図4)。
【0191】
ポリフェノール捕捉pNPが細胞生存能を変えるかを、平滑筋細胞で、これらが膨張によりバルーンが内皮を剥がす際、粒子と密接に結合する細胞であるため、使用して評価した。pNP処理していない細胞と比較したATPレベルとして評価する生存能は、最大用量で維持されまたは増加すらした。しかしながら、1.5mg/mL濃度で、ATPレベルは、6時間、48時間および72時間時点で12〜24%減少した(図5)。それにも関わらず、臨床使用のために、pNP濃度は、血中でこのレベルに到達するとは想定されない。
【0192】
ここに記載する試験で、ポリフェノール組成物含有ナノ粒子を特徴づけした。これらのナノ粒子は、バルーンカテーテルに適する新規ナノ捕捉薬物溶出送達システムを提供する。記載するポリフェノール組成物を含むナノ粒子は、パクリタキセルおよび他の有糸分裂阻害剤を利用する薬物被覆バルーン(DCB)と現在関連するリスクを最小化する、PADの理想的代替処置を提供する。Panyam and Labhasetwar (Panyam J. and Labhasetwar V. Pharm Res. 2003. 20(2):212-20)により推奨される、エンドサイトーシスを確実にするのに必要なナノ粒子径は100〜500nmであることは留意すべきである。ここで製造した本発明のpNPは、平均185nmのサイズであり、細胞によるエンドサイトーシスが予測される。ここでの開示に基づき、条件および方法をさらに最適化して、薬物負荷を1:2 QUER:TAR比に調節した。合成および試験したナノ粒子は、ここで、最小細胞毒性で生体的合成であることが示された。さらに、本発明のナノ粒子は、ここで細胞取り込みに理想的であり、長期放出を提供することが示された。ここで示される10日間までの放出反応速度は、再狭窄を促進する細胞事象が、一般に血管形成術後最初の10〜14日間以内に生じることが示されているため、これらデバイスでの使用に理想的である(Finn, A.V., et al., Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2007. 27(7):1500-10)。
【0193】
実施例9. バルーンコーティングのための前向きエレクトロスプレー法。
RESVおよびQUERを含むポリフェノール捕捉pNPを、上記のとおり合成する。バルーンカテーテルを、エレクトロスプレーを使用してpNPでコーティングし、乾燥させる。コーティング品質をスペクトロスコピーおよびSEMならびに総薬物負荷および放出のHPLC指標を使用して特徴づけする。
【0194】
バルーンへのpNP結合を最適化するために、しばしば市販の、負ゼータ電位を有するPEBAX(登録商標)を使用するバルーンポリマーを最初に選択する。PEBAXの電気陰性度は、正荷電TAR:Q捕捉pNPの結合のための良好なマトリクスを提供する。pNPをディップコーティングまたはエレクトロスプレー方法により適用できる。エレクトロスプレー方法は、種々の化学的および生物学的剤と共に使用でき、均一性を増加させ、数層の適用を可能とし、既に生物医薬分野で60を超える溶媒、医薬化合物およびポリマーで使用されている。
【0195】
エレクトロスプレーは、電圧源からの電気エネルギーを使用して、溶液中の分子を励起し、気相に入る。エレクトロスプレーシステムの主な物理要素は、電圧源、シリンジポンプおよび接地された回転式コレクターである。分子を気体状態に移行させるための3工程には、液滴を帯電させて細かいスプレーを達成すること、溶液中の溶媒を(乾燥ガスを使用して)蒸発させることおよび正に帯電した液滴からイオンを放出することが含まれる。粒子サイズを変えるために、流量、電圧供給、コレクター距離および溶液粘度を変更できる(図6)。コレクター距離を増減することにより、乾燥、ほぼ乾燥または湿潤のコーティングを実現でき、さまざまな表面プロファイルが可能になる。
【0196】
図6に示すとおり、TAR:QUER捕捉pNPおよびポリエチレングリコール(PEG;溶液粘性増強のため)を含む溶液を、粒子が電荷を帯びるように、電圧をかけるTaylorコーンから一定流速で適用できる。液滴が電界を通過してコーンチップから離れ、不活性ガスが適用されると、液滴は脱溶媒和され、その結果、徐々に小さくなる。それらは最終的に反対の電荷の領域、この場合はそれらが沈着するバルーン表面に引き付けられる。スプレープロセス中にバルーンカテーテルを回転させて、すべての面に均一なコーティングを塗布し、吹き付け後、フローフード内でバルーンを乾燥させる。
【0197】
パイロット試験により、TAR:QUER捕捉pNPは蛍光性であり、蛍光イメージングとImageJソフトウェアを使用した分析を使用する表面被覆率の決定が可能となった。TAR:Q捕捉pNPが合成され、バルーンカテーテルにエレクトロスプレーまたはディップコーティングされ、フローフード下で乾燥された。バルーンをカテーテルから取り外し、蛍光顕微鏡を使用して画像化した。同等のサイズの視野を選択し、ある視野の緑色蛍光の明るさと相関する分布プロットを作成した。エレクトロスプレーされた表面の蛍光強度ははるかに大きく、ディップコーティングされたDCBで観察されたのは最小限の強度のみであった。各バルーンのすべてのセグメントを分析した後、被覆率を計算した。ディップコーティングされたバルーン(図7A)と比較して、エレクトロスプレーされたバルーン(図7B)は、約65%大きい表面被覆率を生成し、バルーンの70%がTAR:QUER捕捉pNPで被覆された。
【0198】
上記単一エマルジョン蒸発技術をpNP合成に使用できる。方法は、2相 − 水および有機を含む。有機相を、Eudragit RL100およびPLGAを、酢酸エチル:アセトン溶液中、室温で20分間、穏やかな撹拌下に混合することにより製造する。次に、1:2モル比のQUERおよびTARを有機相に加える。撹拌後、有機相を、室温で撹拌下、Tween 80含有水相に滴加する。次に、エマルジョンをマイクロフルイダイザーで、4〜8℃および3回通過でマイクロフルイダイズして、液滴サイズを小さくする。有機溶媒を、減圧下、32℃で2時間蒸発させる。最後に、NP懸濁液をトレハロースと混合し、凍結乾燥し、−80℃で保存する。凝集を最小化するために、糖凍結保護剤と共にポリビニルアルコールを加えて、その後凍結乾燥する。
【0199】
pNPシステムにTARおよびQUERを充填し、pNP特徴づけをFTIR、H−NMR、DLSおよびTEMを使用して行う。薬物負荷および放出反応速度論を、上記に類似するHPLC方法を使用して、生理学的に妥当な条件下で測定する。簡潔には、サンプルを、ESA Coularray 4チャネル電子化学検出器と連結したWaters 2695 HPLCシステムに注入する。検体を、先に記載した勾配分離を使用して、分離する。
【0200】
溶液で満たされたハミルトンシリンジがシリンジポンプに配置され、供給源が所望のコレクター距離に配置される。エレクトロスプレーノズルは、溶液中の分子を励起するための電圧源に接続される。設置が適用される。バルーンは一定の回転速度を供給するアルドゥイーノに取り付けられる。図6に示すとおり、溶液の流速、粘度(PEGを使用して調整)、電圧、回転速度、コレクターの距離などを変更して、最大の薬物負荷で均一なコーティングを提供する。上記の予備調査で説明したとおり、約70%の被覆率がすでに達成されている(図7B)。
【0201】
バルーンコーティングを、LSUのShared Instrumentation Facilityに設置された機器を使用して、SEM下に試験する。被覆率、均一性および亀裂は、バルーンごとの複数の視野にわたる画像の観察と、コーティングおよび乾燥後の最大14日間の観察によって評価される。均一性は、上記の蛍光イメージング技術を使用して計算される。
【0202】
4つの異なる品質試験が実施される。(1)5つのバルーンのサブセットから、エタノールを使用して薬物捕捉pNPを除去し、HPLCに注入して総薬物負荷を測定する(通常、DCB製品の薬物負荷は約2〜3μg/mm2);(2)各5つのバルーンを縦方向および横方向に切断し、次いでエタノールで溶出して薬物負荷を評価する(セクション間の±10%の変動性は成功と見なす);(3)5つのバルーンを実験室に設置したバルーン膨張装置を使用して膨張させ、エタノールを使用して薬物捕捉pNPをバルーンから抽出し、抽出物をHPLCに注入して残存薬物負荷量を決定する(市販のDCBは最大11%の乾燥した薬物を示し;したがって、20%未満の結果を肯定的な結果と見なすことに注意);(4)5つのバルーンのそれぞれを、循環水浴を使用して流れをシミュレートした血液溶液に挿入し、薬物溶液中のレベルを0〜6時間で測定する。血管形成術の手技で30秒の経過時間と2分間の膨張時間を考慮に入れて、20%以上の6時間までのバルーン残存薬剤を成功と見なす。これは、輸送中に薬物の80%を失う現在のDCBと比較して大幅な進歩である。
【0203】
実施例10. バルーン血管形成術の動物モデルでの前向きインビボ試験。
DCBを成功させるための重要なパラメータは、生物学的に適切な時点での治療効果のあるレベルの治療薬の送達である。故に、適切な動物モデル、すなわち、退役したSprague Dawleyの繁殖動物を使用したラット頸動脈モデルを使用した試験を行い、重要な時間枠内のバルーン膨張部位内およびその周辺の薬物レベルを示す。血管形成術後に発生し、再狭窄を促進する重要な細胞事象は、最初の14日以内に発生する。最適には、再内皮化もこのウィンドウ内で行われるべきである。本前向き試験では、バルーン膨張後の1〜14日間における組織薬物レベルを試験した。これらの試験費用を低く抑えるために、Dugas研究所ですでに確立されているラット頸動脈モデルを利用した。引退したSprague Dawley繁殖動物の頸動脈は、バルーンカテーテルを膨張させるのに十分な大きさであることは留意すべきである。腸骨動脈や大腿骨などの末梢動脈を使用するのが望ましいこともあるが、ラットのこれらの管径は、購入またはカスタム設計できる最小のバルーンカテーテルの半分のサイズであるが<1mmである。時々、研究者はラットの試験にFoley塞栓術カテーテルを利用するが、それらを使用しても、PEBAXオーバーザワイヤーバルーンプロトタイプの開発を進めない。
【0204】
インビボ動物実験は、雄性と雌性のSprague Dawleyラットを使用し、12ラット/群が性別に均等に層別化される。ポリフェノール捕捉pNPコーティングバルーンを、上記のとおり製造する。コーティングバルーンは、標準的な方法でエチレンオキシド滅菌される。血栓症を抑えるために、手術の1週間前から飲料水にアスピリンを加える。アスピリン自体が血管の治癒を変える可能性があるが、その使用は、処置中/処置後の損傷した動脈での致命的な血栓形成を回避するために必要である。手術当日、イソフルラン/Oを添加したペントバルビタールを使用して、実験動物を麻酔する。腹側の首の部分を剃り、洗う。正中線切開により、左総頸動脈、外頸動脈、内頸動脈を露出させる。動脈の下に絹の縫合糸を挿置し、血流を約5分間遮断する。左外頸動脈に動脈横向き切開術を行う。薬物捕捉pNPコーティングバルーンを総頸動脈に挿入し、10気圧で2分間膨らませ、空気を抜いて引き出す。外頸動脈を動脈切開の遠位で結紮し、総頸動脈を通して血流を回復させる。血流を回復させた後、ヘパリンを腹腔内注射する。筋膜と皮膚を縫合する。ガス麻酔を辞め、ラットをモニターする。1日目、2日目、7日目、10日目および14日目に、ラットを屠殺する。大静脈から血液を採取し、組織を切除して急速冷凍する。FDAのガイダンスに従って、薬物レベルを、バルーンの膨張部位、血漿、膨張部位の近位および遠位の組織、肝臓、肺、腎臓、心臓などで測定する。
【0205】
組織を均質化し、メタノールで2回抽出し、N下に濃縮し、上記のHPLC法を使用して、またはそのような方法と同様に分析する。より高濃度のレスベラトロールおよびケルセチンは、工程後1〜2日以内に検出され、その後は低レベルになると予想される。
【0206】
GraphPad Prismソフトウェアを使用した反復測定ANOVAを適用して、組織の薬物レベルの経時的な大幅な増加を評価する。ラットの頸動脈に埋め込まれたRQ溶出薬剤溶出ステント(DES)試験で収集されたデータを使用して、G*Power(Dusseldorf)による力分析が以前に行われた。仮定は次のとおりである。効果=0.05、効果サイズ=0.5μg/cm2、検出力=0.9および5測定。この先の試験に基づいて、ここに記載する試験は、8匹のラット/群で経時的な組織薬物レベルの有意な増加を検出できるはずであると予想される。しかしながら、1)手術中にラットの約10%が失われる可能性があり、2)DCBからの薬物の蓄積がDESよりも少ない場合がある。故に、ここに記載する試験は、12匹のラット/群で開始する。試験アプローチの厳格さと特定の操作の状況によるバイアスの低減を確実にするために、これらの動物は2回の手術試験をとおして分配する。血管壁内の薬物の蓄積は性別によって異ならないことが予想される。この前向き試験で得られたデータがヒトの母集団を表すことを保証することが重要である。故に、性別に均等に階層化することが提案されている。
【0207】
ポリフェノール、すなわち、RESVおよびQUERを、血管形成術後最初の数日検出できることは明らかであるが、7日目の測定可能レベルは、相当高いと考えられる。
【0208】
当業者には、種々の修飾および変動を、開示する範囲または精神から逸脱することなく、本開示になし得ることは明らかである。本発明の他の実施態様は、明細書の考察およびここに開示する発明の実施により当業者には明らかである。明細書および実施例は単なる例であり、本開示の真の範囲および精神は添付する特許請求の範囲により示されることが意図される。
図1
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【国際調査報告】