特表2021-512222(P2021-512222A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-512222球状金属粉体混合物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-512222(P2021-512222A)
(43)【公表日】2021年5月13日
(54)【発明の名称】球状金属粉体混合物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/04 20060101AFI20210416BHJP
   C22C 14/00 20060101ALI20210416BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20210416BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20210416BHJP
   B22F 3/105 20060101ALN20210416BHJP
   B22F 3/16 20060101ALN20210416BHJP
【FI】
   B22F9/04 C
   C22C14/00 Z
   B22F1/00 R
   B22F1/00 J
   B33Y70/00
   B22F3/105
   B22F3/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-560866(P2020-560866)
(86)(22)【出願日】2018年12月28日
(85)【翻訳文提出日】2020年9月9日
(86)【国際出願番号】US2018067785
(87)【国際公開番号】WO2019143454
(87)【国際公開日】20190725
(31)【優先権主張番号】15/874,134
(32)【優先日】2018年1月18日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520269628
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】キャサリン・ジェイ・パリッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・ディー・コットン
【テーマコード(参考)】
4K017
4K018
【Fターム(参考)】
4K017AA02
4K017BA10
4K017BB01
4K017BB08
4K017CA01
4K017CA07
4K017EA03
4K017EA04
4K017EA09
4K018AA06
4K018BA03
4K018BB03
4K018BB04
4K018BC12
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
4K018KA01
(57)【要約】
金属原料を用いて球状金属粉体混合物を製造するための方法が提供される。本方法は、金属原料を粉砕して中間粉体を得ることと、中間粉体を球状化して第一球状粉体成分を得ることと、第一球状粉体成分を第二球状粉体成分と混合することとを含み、第一球状粉体成分と第二球状粉体成分は実質的に同じ化学組成を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属原料を用いて球状金属粉体混合物を製造するための方法であって、
前記金属原料の粉砕を行い中間粉体を得ることと、
前記中間粉体の球状化を行い第一球状粉体成分を得ることと、
前記第一球状粉体成分を第二球状粉体成分と混合することと、を備え、前記第一球状粉体成分と前記第二球状粉体成分が実質的に同じ化学組成を有する、方法。
【請求項2】
前記金属原料がチタンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属原料が略2100ppmから略4000ppmの範囲内の酸素濃度を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属原料が削り屑を含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記金属原料がTi‐6Al‐4V合金を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記金属原料の粉砕を行い中間粉体を得ることが、略10μmから略100μmの間の平均粒径を得るように粉砕することを備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記中間粉体のうち少なくとも80%の粉体粒子が前記平均粒径から±20パーセント以内の粒径を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記粉砕が遊星ミル、ボールミル、又はローラーミル内で行われる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記粉砕の前に前記金属原料を水素化することを更に備える請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記球状化の前に前記中間粉体を脱水素化することを更に備える請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記中間粉体の球状化を行うことが、前記中間粉体を誘導プラズマに晒すことを備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第二球状粉体成分がチタンを含み、前記第二球状粉体成分が最大略1800ppmの酸素濃度を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第一球状粉体成分を第二球状粉体成分と混合することが、第一球状粉体成分対第二球状粉体成分の比が少なくとも1:1となるようにして混合することを備える、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第一球状粉体成分対第二球状粉体成分の比が少なくとも2:1である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記金属原料と前記第二球状粉体成分がTi‐6Al‐4V合金を含み、前記第一球状粉体成分を第二球状粉体成分と混合することが、最大略2000ppmの酸素濃度を有する混合物をもたらす第一球状粉体成分対第二球状粉体成分の比で混合することを備える、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の方法によって製造された球状金属粉体混合物。
【請求項17】
球状金属粉体混合物を製造するための方法であって、
第一球状粉体成分を第二球状粉体成分と混合することを備え、
前記第一球状粉体成分がチタンを含み且つ略2100ppmから略4000ppmの範囲内の酸素濃度を有し、
前記第二球状粉体成分がチタンを含み且つ最大略1800ppmの酸素濃度を有する、方法。
【請求項18】
前記第二球状粉体成分の酸素濃度が略800ppmから略1800ppmの範囲内にある、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第一球状粉体成分の酸素濃度が略2100ppmから略2300ppmの範囲内にあり、
前記第二球状粉体成分の酸素濃度が略900ppmから略1100ppmの範囲内にある、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
請求項17から19のいずれか一項に記載の方法によって製造された球状金属粉体混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、球状金属粉体混合物に係り、特に、目標酸素濃度を有する球状金属粉体の混合物に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン系合金は、典型的に、高い強度対重量比、優れた耐腐食性、高温特性を示す。従って、Ti‐6Al‐4V等のチタン系合金は、航空宇宙産業において一般的に使用されており、例えば、多様な航空機部品を製造すること等に使用される。
【0003】
チタン系合金は、比較的高価であり、また、航空宇宙仕様に合致する複雑な部品への機械加工が難しいものとなり得る。このことが、航空宇宙産業によるネットシェイプ(又はニアネットシェイプ)技術、例えば、必要とされる機械加工の量を減らすアディティブマニュファクチャリングプロセス等の開発につながっている。
【0004】
アディティブマニュファクチャリングは、従来のサブトラクティブマニュファクチャリングプロセスと比較すると、部品当たりの材料消費が少ないものであるが、アディティブマニュファクチャリング用の特定の原料の要求がコストを増やす傾向にあり、アディティブマニュファクチャリングに関するコスト節約を相殺し得る。例えば、流動性の要求や、均一で高密度の充填の必要性のため、アディティブマニュファクチャリングでは球状金属粉体が使用されることが多い。チタン系合金の場合、或る程度の酸素は機械特性を有利に改善し得るが、過度の酸素は、延性の低下(脆化)や、所与の強度における低い靭性等の悪影響を有し得る。従って、産業的仕様では、一般的に、閾値/最大酸素濃度、例えば、Ti‐6Al‐4Vについて最大2000ppm(0.2重量%)の酸素を有する球状チタン粉体が要求される。2017年の時点では、略2000ppmの酸素を有する高品質球状Ti‐6Al‐4V粉体の原価は、1ポンド当たり100米国ドルを超え得る。
【0005】
そこで、当業者は、アディティブマニュファクチャリングプロセス用に適した球状金属粉体といった球状金属粉体の分野における研究開発を鋭意続けている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、本開示の球状金属粉体混合物の製造方法は、(1)金属原料を粉砕して中間粉体を得ることと、(2)中間粉体を球状化して第一球状粉体成分を得ることと、(3)第一球状粉体成分を第二球状粉体成分と混合することとを含み、第一球状粉体成分と第二球状粉体成分は実質的に同じ化学組成を有する。
【0007】
他の態様において、本開示の球状金属粉体混合物の製造方法は、第一球状粉体成分を第二球状粉体成分と混合することを含み、第一球状粉体成分は、チタンを含み、略2100ppmから略4000ppmの範囲内の酸素濃度を有し、第二球状粉体成分は、チタンを含み、最大略1800ppmの酸素濃度を有する。
【0008】
一態様において、本開示の球状金属粉体混合物は、(1)金属原料を粉砕して中間粉体を得ることと、(2)中間粉体を球状化して第一球状粉体成分を得ることと、(3)第一球状粉体成分を第二球状粉体成分と混合することとを含む方法の生成物であり、第一球状粉体成分と第二球状粉体成分は実質的に同じ化学組成を有する。
【0009】
他の態様において、本開示の球状金属粉体混合物は、第一球状粉体成分と第二球状粉体成分の混合物を含み、第一球状粉体成分は、チタンを含み、略2100ppmから略4000ppmの範囲内の酸素濃度を有し、第二球状粉体成分は、チタンを含み、最大略1800ppmの酸素濃度を有する。
【0010】
本開示の球状金属粉体混合物及びその製造方法の他の態様は、以下の詳細な説明、添付図面、添付の特許請求の範囲から明らかとなるものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の球状金属粉体混合物の製造方法の一態様を示す流れ図である。
図2】航空機の製造と修理方法の流れ図である。
図3】航空機のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
球状金属粉体混合物及びその製造方法が開示される。本開示の方法によって生成される球状金属粉体混合物は、閾値(例えば、Ti‐6Al‐4Vについて最大2000ppm)以下の酸素濃度を有することができながら、市販されている同等の低酸素球状金属粉体よりも安価となり得る。
【0013】
図1は、本開示の球状金属粉体混合物の製造方法10の一態様を示す。一般的に、方法10は、金属原料14を処理して、第一球状粉体成分16を得ることと、次いで、第一球状粉体成分16と第二球状粉体成分20の混合18を行い、球状金属粉体混合物22を得ることとを含む。第二球状粉体成分20の化学組成は第一球状粉体成分16の化学組成と実質的に同じであり得る。しかしながら、第二球状粉体成分20の酸素濃度は第一球状粉体成分16の酸素濃度とは実質的に異なり得る(例えば、低い)。従って、閾値以下の酸素濃度を有する球状金属粉体混合物22をもたらすような適切な比で第一球状粉体成分16と第二球状粉体成分20の混合18を行い得る。酸素濃度閾値の適切な選択によって、球状金属粉体混合物22を用いて、例えば、アディティブマニュファクチャリングや他の粉末冶金法によって、延性と靭性/強度を犠牲にせずに、部品を製造することができる。
【0014】
組成的には、金属原料14、そして、第二球状粉体成分20と結果物の球状金属粉体混合物は、チタン又はチタン合金となり得る。非限定的で具体的な一例では、金属原料14はTi‐6Al‐4Vであり得る。本開示はチタン合金、特にTi‐6Al‐4Vに注目しているが、当業者は、ジルコニウム合金、マンガン合金、ニッケル合金等の他の金属や金属合金も、本開示の範囲から逸脱せずに本開示の方法10の金属原料14として使用可能であることを理解されたい。
【0015】
金属原料14は比較的高い酸素濃度(第二球状粉体成分20の酸素濃度に対して相対的に高い)、例えば、工業規格(例えば、AMS4911やAMS4998)によって特定されるような特定の化学組成についての最大酸素濃度閾値を超える酸素濃度を有し得る。例えば、Ti‐6Al‐4Vの場合、金属原料14は、2000ppmを超える酸素濃度を有し得て、その酸素濃度は、結果的に製造される部品/物品の機械的特性(延性及び靭性/強度)が懸念事項である場合の許容/閾値レベルを超えている。一例では、金属原料14の酸素濃度は略2100ppmから略4000ppmの範囲内であり得る。他の例では、金属原料14の酸素濃度は略2100ppmから略2300ppmの範囲内であり得る。
【0016】
本開示の範囲から逸脱せずに、金属原料14の酸素濃度、第一球状粉体成分16の酸素濃度、第二球状粉体成分20の酸素濃度及び/又は球状金属粉体混合物20の酸素濃度といった酸素濃度を測定するために多様な方法が使用可能である。非限定的で具体的な一例では、酸素濃度はASTM E1409−13(「Standard Test Method for Determination of Oxygen and Nitrogen in Titanium and Titanium Alloys by Inert Gas Fusion」)に従って測定可能である。
【0017】
具体的な一実施形態では、金属原料14は削り屑であり得る。そして、その削り屑を生じさせるプロセス(例えば、機械加工、旋盤加工、粉砕等)が、比較的高い酸素濃度をもたらし得るが、金属原料14の比較的高い酸素濃度の原因はそれに限定されるものではない。当業者は、削り屑を本開示の方法10の金属原料14として再利用することが、低酸素濃度を有する高価な未使用材料の需要を減らすことによって、特に、削り屑が社内で発生したり、低コスト(又は無料)で得られたりする場合に顕著なコスト節約の機会を与えることを理解するものである。
【0018】
引き続き図1を参照すると、金属原料14の処理12は、金属原料14の粉砕24を行い、中間粉体26を得ることを含み得る。粉砕24は、球状金属粉体混合物22の使用目的等の多数の要因に依存し得る所望の物理的特性(例えば、所望の平均粒径と分布)を有する粉体(中間粉体26)に金属原料14を変換することができる。
【0019】
粉砕24のために多様な方法が本開示の範囲から逸脱せずに使用可能である。非限定的な一例では、粉砕24を遊星ミル内で行うことができる。他の非限定的な例では、粉砕24をローラーミル内で行うことができる。更に他の非限定的な例では、粉砕24をボールミル内で行うことができる。遊星ミル、ローラーミル、ボールミルは、特にアディティブマニュファクチャリングに適した粒径分布を有する中間粉体26を生成可能である。
【0020】
球状金属粉体混合物22がアディティブマニュファクチャリングプロセス用のものである場合、粉砕24は、中間粉体26が密重点を促進する粒径分布を有するようにして行われ得る。一例では、粉砕24は、中間粉体26が略5μmから略500μmの間の平均粒径を有するようにして行われ得る。他の例では、粉砕24は、中間粉体26が略10μmから略100μmの間の平均粒径を有するようにして行われ得る。
【0021】
任意で、粉砕24によって生成された粉体の篩分け28を行い、所望の粒径分布を得ることができる。例えば、篩分け28は、より狭い粒径分布を有する中間粉体26をもたらすことができ、結果としてアディティブマニュファクチャリングで製造される部品/物品の密度を高め、表面品質と機械的特性を改善することができる。一例では、篩分け28は、中間粉体26のうち少なくとも40パーセントの粒子が平均粒径から±20パーセントの範囲内の粒径を有するという粒径分布を有する中間粉体26をもたらすことができる。他の例では、篩分け28は、中間粉体26のうち少なくとも60パーセントの粒子が平均粒径から±20パーセントの範囲内の粒径を有するという粒径分布を有する中間粉体26をもたらすことができる。更に他の例では、篩分け28は、中間粉体26のうち少なくとも80パーセントの粒子が平均粒径から±20パーセントの範囲内の粒径を有するという粒径分布を有する中間粉体26をもたらすことができる。
【0022】
任意で、チタン合金(例えば、Ti‐6Al‐4V)の場合等において、粉砕24の前の水素化ステップ30において金属原料14を水素化することによって、金属原料をより脆弱で粉砕24を行い易いものにし得る。例えば、水素ガスの存在下(例えば、チューブ炉中)で金属原料14を或る期間(例えば、24時間)にわたって高温(例えば、600〜700℃)に加熱することによって、水素化ステップ30において金属原料14を水素化することができる。
【0023】
水素化ステップ30を行う場合には、次いで、対応する脱水素化ステップ32を行うこともできる。脱水素化ステップ32を、粉砕24の後であって、任意の篩分け28の前又は後のいずれかで行うことによって、中間粉体26を得ることができる。例えば、脱水素化32を、真空下において、或る期間(例えば、72時間)にわたって高温(例えば、550〜700℃)で行うことができる。
【0024】
引き続き図1を参照すると、金属原料14の処理12は、中間粉体26の球状化34を行い、第一球状粉体成分16を得ることを更に含むことができる。従って、第一球状粉体成分16の粒子は実質的に球状となり得る。本願において、「球状」とは、真球であることを要せず、「実質的に球状」であることを意味する。
【0025】
中間粉体26の球状化34のために本開示の範囲から逸脱せずに多様な方法が使用可能である。具体的な一実施形態では、球状化34は、中間粉体26の粒子を誘導プラズマ等のプラズマに晒して、粒子を急速に加熱及び溶融させ、次いで冷却することを含み得る。例えば、カナダケベック州のTekna Plasma Systems社製のTEKSPHERO200(登録商標)を用いて、誘導プラズマでの中間粉体26の球状化34を行うことができる。
【0026】
金属原料14の処理12によって生成された第一球状粉体成分16は、金属原料14の化学組成を保持しているか、又は、更に高い酸素濃度を有し得る(例えば、粉砕24に起因して)。更に、金属原料14と同様に、第一球状粉体成分16は比較的高い酸素濃度を有し得る。従って、第一球状粉体成分16と第二球状粉体成分20の混合18を行い、球状金属粉体混合物22を得る。
【0027】
第二球状粉体成分20は、第一球状粉体成分16と組成的には同じであり得て、また、第一球状粉体成分16と同様に実施的に球状の粒子を含み得る。しかしながら、第二球状粉体成分20は、比較的低い酸素濃度(第一球状粉体成分16の酸素濃度に対して相対的に低い)、例えば、工業規格(例えば、AMS4911やAMS4998)によって特定されるような特定の化学組成についての最大酸素濃度閾値以下の酸素濃度を有し得る。例えば、Ti‐6Al‐4Vの場合、第二球状粉体成分20は2000ppm未満の酸素濃度を有し得て、これが延性の増加と所与の強度における高い靭性に寄与し得る。一例では、第二球状粉体成分20の酸素濃度は最大略1900ppmであり得る。一例では、第二球状粉体成分20の酸素濃度は最大略1800ppmであり得る。他の例では、第二球状粉体成分20の酸素濃度は略800ppmから略1800ppmまでの範囲内であり得る。更に他の例では、第二球状粉体成分20の酸素濃度は略900ppmから略1100ppmまでの範囲内であり得る。
【0028】
第二球状粉体成分20は多様なソースから入手可能である。一例として、第二球状粉体成分20を供給業者や商業的供給源から未使用材料として購入し得る。他の例として、第二球状粉体成分20を従来のガス噴霧法を用いて製造し得る。更に他の例として、第二球状粉体成分20を従来のプラズマ回転電極法を用いて製造し得る。
【0029】
所望の酸素濃度を有する球状金属粉体混合物22をもたらす第一球状粉体成分対第二球状粉体成分の比(例えば、1:1、2:1等)で混合18を行うことができる。つまり、球状金属粉体混合物22は、第一量の第一球状粉体成分16と、第二量の第二球状粉体成分20を含み得て、その第一量と第二量は同じであるか又は異なり得る。Ti‐6Al‐4Vの場合、第一量と第二量は、結果物の球状金属粉体混合物22が最大略2000ppmの酸素濃度を有するようにして選択され得る。
【0030】
理論例
Ti‐6Al‐4V削り屑から本開示の方法10に係る処理12によって、二種類の「第一球状粉体成分」(成分1Aと成分1B)を調製することができる。例えば、成分1Aは略4000ppmの酸素濃度を有し、1ポンド当たり略48米国ドルの生産コストがかかり、一方、成分1Bは略2200ppmの酸素濃度を有し、1ポンド当たり略50米国ドルの生産コストがかかる。
【0031】
二種類の「第二球状粉体成分」(成分2Aと成分2B)を多様な商業的供給源から入手することができる。例えば、成分2Aは、略1800ppmの酸素濃度を有し、1ポンド当たり略100米国ドルのコストの未使用Ti‐6Al‐4Vであり得て、成分2Bは、略1000ppmの酸素濃度を有し、1ポンド当たり略105米国ドルのコストの未使用Ti‐6Al‐4Vであり得る。
【0032】
多様な混合物を調製することができ、(1)成分1Aと成分2Aの多様な混合物(表1を参照)、(2)成分1Bと成分2Aの多様な混合物(表2を参照)、(3)成分1Aと成分2Bの多様な混合物(表3を参照)、(4)成分1Bと成分2Bの多様な混合物(表4を参照)といった多様な混合物を調製することができる。以下の表に示されている計算結果は、混合法則(rule‐of‐mixtures)に従ったものである。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
【表4】
【0037】
以上のように、これらの理論例は、多様な混合物が、最大略2000ppmの酸素濃度を有するTi‐6Al‐4V球状金属粉体混合物をもたらすことができ、2000ppmよりも実質的に高い酸素濃度を有するTi‐6Al‐4V球状金属粉体を用いて製造される同様の部品/物品と比較して高い延性と所与の強度における高い靭性を示す部品/物品を得ることができることを示している。更に、これらの理論例は、多様な混合物が未使用粉体のみを使用する場合と比較してコストを削減することを示している。
【0038】
本開示の例を、図2に示されるような航空機の製造と修理方法100と、図3に示されるような航空機102に関して説明することができる。製造準備段階においては、航空機の製造修理方法100は、航空機102の仕様設計104と材料調達106を含み得る。製造段階においては、航空機102の部品/サブアセンブリ製造108とシステム統合110が行われる。その後、航空機102は、認証と配送112を経て、就航114する。顧客による就航中には、航空機102の定期的な保守点検と修理116のスケジュールが立てられ、これには変更、再構成、改修等も含まれ得る。
【0039】
方法100の各プロセスは、システムインテグレータ、サードパーティ、及び/又はオペレータ(例えば、顧客)によって実行され得る。説明目的として、システムインテグレータとしては、特に限定されず、任意の航空機製造業者、主要システム下請け業者が挙げられ、サードパーティとしては、特に限定されず、任意のベンダ、下請け業者、供給業者が挙げられ、オペレータは、航空会社、リース業者、軍隊、修理業者等であり得る。
【0040】
図3に示されるように、例示的な方法100によって製造される航空機102は、機体118と、複数のシステム120と、内装122を含み得る。複数のシステム120の例としては、推進システム124、電気システム126と、油圧システム128と、環境システム130のうち一つ以上が挙げられる。任意の他のシステムも含まれ得る。
【0041】
本開示の球状金属粉体混合物及びその製造方法は、航空機の製造と修理方法100の一つ以上の段階において採用可能である。一例として、部品/サブアセンブリ製造108、システム統合110及び/又は保守点検と修理116に対応する部品又はサブアセンブリを本開示の球状金属粉体混合物を用いて製造することができる。他の例として、本開示の球状金属粉体混合物を用いて航空機118を構築することができる。また、一つ以上の装置例、方法例、又はそれらの組み合わせを部品/サブアセンブリ製造108及び/又はシステム統合110中に利用して、例えば、機体118及び/又は内装122等の航空機102の組み立てを促進したり、コストを削減したりし得る。同様に、一つ以上のシステム例、方法例、又はそれらの組み合わせを航空機102の就航中、例えば保守点検と修理116において利用し得るがこれらに限定されるものではない。
【0042】
更に、本開示は以下の項に係る例を含む。
【0043】
項1
金属原料を用いて球状金属粉体混合物を製造するための方法であって、金属原料を粉砕して中間粉体を得ることと、中間粉体を球状化して第一球状粉体成分を得ることと、第一球状粉体成分を第二球状粉体成分と混合することとを備え、第一球状粉体成分と第二球状粉体成分が実質的に同じ化学組成を有する、方法。
【0044】
項2
金属原料がチタンを含む、項1に記載の方法。
【0045】
項3
金属原料が略2100ppmから略4000ppmの範囲内の酸素濃度を有する、項2に記載の方法。
【0046】
項4
金属原料が削り屑を含む、項2又は3に記載の方法。
【0047】
項5
金属原料がTi‐6Al‐4Vを含む、項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【0048】
項6
金属原料を粉砕して中間粉体を得ることが、略10μmから略100μmの間の平均粒径を得るように粉砕することを備える、項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【0049】
項7
中間粉体のうちの少なくとも80%の粉体粒子が平均粒径から±20パーセント以内の粒径を有する、項6に記載の方法。
【0050】
項8
粉砕が遊星ミル、ボールミル、又はローラーミル内で行われる、項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【0051】
項9
粉砕の前に金属原料を水素化することを更に備える項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【0052】
項10
球状化の前に中間粉体を脱水化することを更に備える項9に記載の方法。
【0053】
項11
中間粉体を球状化することが、中間粉体を誘導プラズマに晒すことを備える、項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【0054】
項12
第二球状粉体成分がチタンを含み、第二球状粉体成分が最大略1800ppmの酸素濃度を有する、項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【0055】
項13
第一球状粉体成分を第二球状粉体成分と混合することが、第一球状粉体成分対第二球状粉体成分の比が少なくとも1:1であるようにして混合することを備える、項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【0056】
項14
第一球状粉体成分対第二球状粉体成分の比が少なくとも2:1である、項13に記載の方法。
【0057】
項15
金属原料と第二球状粉体成分がTi‐6Al‐4Vを含み、第一球状粉体成分を第二球状粉体成分と混合することが、最大略2000ppmの酸素濃度を有する混合物をもたらす第一球状粉体成分対第二球状粉体成分の比で混合することを備える、項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【0058】
項16
項1から15のいずれか一項に記載の方法によって製造された球状金属粉体混合物。
【0059】
項17
球状金属粉体混合物を製造するための方法であって、第一球状粉体成分を第二球状粉体成分と混合することを備え、第一球状粉体成分がチタンを含み且つ略2100ppmから略4000ppmの範囲内の酸素濃度を有し、第二球状粉体成分がチタンを含み且つ最大略1800ppmの酸素濃度を有する、方法。
【0060】
項18
第二球状粉体成分の酸素濃度が略800ppmから略1800ppmの範囲内にある、項17に記載の方法。
【0061】
項19
第一球状粉体成分の酸素濃度が略2100ppmから略2300ppmの範囲内にあり、第二球状粉体成分の酸素濃度が略900ppmから略1100ppmの範囲内にある、項17に記載の方法。
【0062】
項20
項17から19のいずれか一項に記載の方法によって製造された球状金属粉体混合物。
【0063】
本開示の球状金属粉体混合物及びその製造方法は航空機に関して説明されているが、当業者は、本開示の球状金属粉体混合物及びその製造方法が多様な応用に利用可能であることを容易に理解するものである。例えば、本開示の球状金属粉体混合物は、多様な種類のビークル、例えば、ヘリコプター、旅客船、自動車、海洋ビークル(例えば、ボートやモーター等)において利用可能である。ビークル以外の多様な応用、例えば医療応用も想定される。
【0064】
本開示の球状金属粉体混合物及びその製造方法の多様な態様を図示して説明してきたが、当業者には本明細書を読むことで多様な変更が想起されるものである。本願はそのような変更も含むものであり、特許請求の範囲のみによって限定されるものである。
図1
図2
図3
【国際調査報告】