特表2021-512279(P2021-512279A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-512279自動車のダイナモメータ試験のための方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-512279(P2021-512279A)
(43)【公表日】2021年5月13日
(54)【発明の名称】自動車のダイナモメータ試験のための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/10 20060101AFI20210416BHJP
   G01M 17/007 20060101ALI20210416BHJP
【FI】
   G01L3/10 311
   G01M17/007 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2020-537461(P2020-537461)
(86)(22)【出願日】2019年1月31日
(85)【翻訳文提出日】2020年9月7日
(86)【国際出願番号】SE2019050079
(87)【国際公開番号】WO2019151934
(87)【国際公開日】20190808
(31)【優先権主張番号】1850126-2
(32)【優先日】2018年2月5日
(33)【優先権主張国】SE
(31)【優先権主張番号】1850659-2
(32)【優先日】2018年5月31日
(33)【優先権主張国】SE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】516293602
【氏名又は名称】ロトテスト インターナショナル アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】特許業務法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】エングストローム,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】エングストローム,ニルス ゲー
(72)【発明者】
【氏名】フェーンルンド,ヨンニィ
(57)【要約】
本発明は、車両のダイナモメータ試験のための車両用ダイナモメータシステムに使用されるように構成されたダイナモメータ試験ユニットに関する。ダイナモメータ試験ユニットは車両のホイールシャフトに接続されるように構成される。ダイナモメータ試験ユニットは、試験中、試験対象車両のホイールシャフトにトルクを加えるように構成された、ステータとロータとを有する動力源を備える。動力源はステータ支持部によって担持される。ステータはステータ支持部に対して軸支される。ダイナモメータ試験ユニットは、弾性鋼帯を備えたトルク測定手段を更に備える。弾性鋼帯はステータをステータ支持部に接続し、これにより、ステータとステータ支持部との間の相対回転運動を抑制する。弾性鋼帯は、ステータとステータ支持部との間で力を伝達するように構成される。弾性鋼帯は、弾性鋼帯の長手方向に均質な引張プレストレスを受けるように、堅固に固着される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のダイナモメータ試験のための車両用ダイナモメータシステムに使用されるように構成されたダイナモメータ試験ユニットであって、
前記ダイナモメータ試験ユニットは車両のホイールシャフトに接続されるように構成され、
前記ダイナモメータ試験ユニットは、試験中にトルクを試験対象車両のホイールシャフトに加えるように構成された、ステータとロータとを有する動力源を備え、
前記動力源はステータ支持部によって担持され、
前記ステータは前記ステータ支持部に対して軸支されており、
トルク測定手段が、例えば細長い、弾性鋼帯を備え、
前記弾性鋼帯は前記ステータを前記ステータ支持部に接続し、これにより、前記ステータと前記ステータ支持部との間の相対回転運動を抑制し、前記弾性鋼帯は前記ステータと前記ステータ支持部との間で力を伝達するように構成され、前記弾性鋼帯が前記弾性鋼帯の長手方向に均質な引張プレストレスを受けるように、前記弾性鋼帯は堅固に固着される、ダイナモメータ試験ユニット。
【請求項2】
前記弾性鋼帯は前記ステータ支持部に堅固に固着されているが、前記ステータからは解放されているときも、またはこの逆であるときも、前記弾性鋼帯が引張プレストレスを受けるように、前記弾性鋼帯は前記弾性鋼帯の長手方向に引張プレストレスを受けることを特徴とする、請求項1に記載のダイナモメータ試験ユニット。
【請求項3】
例えば細長い前記弾性鋼帯の両端が前記ステータまたは前記ステータ支持部のどちらかに堅固に固着され、前記弾性鋼帯の前記両端間の部分が前記ステータまたは前記ステータ支持部のもう一方に堅固に固着され、前記両端間の前記部分が前記ステータまたは前記ステータ支持部のもう一方から解放されているときにも前記鋼帯が引張プレストレスを長手方向に受けているように、前記弾性鋼帯は堅固に固着されることを特徴とする、請求項1または2に記載のダイナモメータ試験ユニット。
【請求項4】
前記ダイナモメータ試験ユニットは、試験中、多くとも第1の所定トルクを吸収するように設計され、前記弾性鋼帯は、前記ダイナモメータ試験ユニットが前記第1の所定トルクを吸収するときに、前記弾性鋼帯が受けている応力に少なくとも対応する引張プレストレスを受けていることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載のダイナモメータ試験ユニット。
【請求項5】
前記弾性鋼帯の両端が前記ステータ支持部に堅固に固着され、前記弾性鋼帯の中心部分が前記ステータに堅固に固着されることを特徴とする、請求項1〜4の何れか一項に記載のダイナモメータ試験ユニット。
【請求項6】
組立中、前記鋼帯の一端が前記ステータまたは前記ステータ支持部に固着されるによって実現される前記鋼帯の長手方向に作用する力の作用下で、前記鋼帯はプレストレスを受け、もう一方の端部が前記ステータまたはステータ支持部に固着されているときに、前記鋼帯は前記力を受けていることを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載のダイナモメータ試験ユニット。
【請求項7】
前記トルク測定手段は、例えば細長い前記鋼帯に固着された少なくとも1対の歪みゲージ(R1/R4;R2/R3)を更に備え、前記歪みは、前記ダイナモメータ試験ユニットがトルクを受けているときに前記鋼帯の歪みによって引き起こされた相対抵抗差を測定することによって、測定されることを特徴とする、請求項1〜6の何れか一項に記載のダイナモメータ試験ユニット。
【請求項8】
前記鋼帯の前記両端部は前記ステータおよび前記ステータ支持部のどちらか一方に堅固に固着され、その中心部分は前記ステータおよび前記ステータ支持部のもう一方に堅固に固着され、第1の歪みゲージ対(R1/R4;R2/R3)は前記鋼帯中心部分の一方の側で前記鋼帯に固着され、第2の歪みゲージ対(R1/R4;R2/R3)は前記鋼帯中心部分のもう一方の側で前記鋼帯に固着され、前記歪みゲージは電気測定ブリッジ回路において接続され、前記鋼帯に作用する前記力は、トルクが前記ダイナモメータ試験ユニットに加えられているときに前記鋼帯の歪みによって引き起こされた相対抵抗差を測定することによって、測定されることを特徴とする、請求項1〜7の何れか一項に記載のダイナモメータ試験ユニット。
【請求項9】
前記第1の歪みゲージ対(R1/R4;R2/R3)を備えた前記鋼帯中心部分の側で、第3の歪みゲージ対が前記鋼帯に固着され、前記第1および第2の歪みゲージ対(R1/R4;R2/R3)に対して角度をもって、例えば垂直に配置され、
前記第2の歪みゲージ対(R1/R4;R2/R3)を備えた前記鋼帯中心部分の側で、第4の歪みゲージ対が前記鋼帯に固着され、前記第2の歪みゲージ対に対して角度をもって、例えば垂直に配置され、前記第3および前記第4の歪みゲージ対は、電気測定ブリッジ回路において接続され、前記鋼帯に作用する前記力は、トルクが前記ダイナモメータ試験ユニットに加えられているときに前記鋼帯の歪みによって引き起こされた相対抵抗差を測定することによって、測定されることを特徴とする、請求項8に記載のダイナモメータ試験ユニット。
【請求項10】
前記ステータは、前記ステータ支持部に対する回転運動のために、筒状ステータ部材が少なくとも2つの転がり軸受を備えた軸受組立体によって軸支されることによって、前記ステータ支持部によって支持され、前記ダイナモメータ試験ユニット出力シャフトは、前記ステータに対する回転のために、前記筒状ステータ部材内に、前記筒状ステータ部材と同心円状に、転がり軸受上に軸支されることを特徴とする、請求項1〜9の何れか一項に記載のダイナモメータ試験ユニット。
【請求項11】
前記軸受組立体は、試験中にホイールシャフトに接続されるように構成された前記ステータ支持部の端部に、または前記ステータ支持部の端部に向いて配置され、前記動力源の大きな方の部分は、前記軸受組立体によって担持されているときに、前記軸受組立体から前記ステータ支持部の反対側に向かって片持ち式に延在することを特徴とする、請求項10に記載のダイナモメータ試験ユニット。
【請求項12】
前記ステータ支持部は、前記ダイナモメータ試験ユニットがトルクを受けているときに前記ダイナモメータ試験ユニットの回転を防止する地面係合支持部を備えることを特徴とする、請求項1〜11の何れか一項に記載のダイナモメータ試験ユニット。
【請求項13】
前記ダイナモメータ試験ユニット(110、111)は表面上で自立するように配置され、前記ホイールシャフトへの剛結合によって前記車両に接続され、前記剛結合によって前記車両の重量を支持することを特徴とする、請求項1〜12の何れか一項に記載のダイナモメータ試験ユニット。
【請求項14】
請求項1〜13の何れか一項に記載のダイナモメータ試験ユニットを少なくとも1つ備えた、車両のダイナモメータ試験のための車両用ダイナモメータシステム。
【請求項15】
トルクの測定時に、
−前記第1のダイナモメータ動力源の第1の反力トルクの第1の測定値を求め、
−前記第1の反力トルクの前記第1の測定値に対する慣性モーメントの影響を求め、
−前記求められた慣性モーメントの影響によって前記第1の反力トルクの前記第1の測定値を相殺する、
ことを特徴とする、請求項14に記載の車両用ダイナモメータシステム。
【請求項16】
−前記車両用ダイナモメータシステムは、前記ダイナモメータ試験ユニット出力シャフトの回転毎にトルク値を複数回求めるように構成され、
−前記車両用ダイナモメータシステムは、前記求められたトルク値を前記ダイナモメータ出力シャフトおよび/またはホイールシャフトの対応する回転角度に関連付けるための手段を備える、
ことを特徴とする、請求項14または15に記載の車両用ダイナモメータシステム。
【請求項17】
−前記車両用ダイナモメータシステムは、試験対象車両に取り付けられているとき、ほぼ鉛直の軸線を中心に旋回運動させられているときに前記ダイナモメータ試験ユニットが受けている前記トルクを測定するように構成される、
ことを特徴とする、請求項14〜16の何れか一項に記載の車両用ダイナモメータシステム。
【請求項18】
車両のダイナモメータ試験のための車両用ダイナモメータシステムに使用されるように構成されたダイナモメータ試験ユニットを組み立てるための組立方法であって、
前記ダイナモメータ試験ユニットは車両のホイールシャフトに接続されるように構成され、
前記ダイナモメータ試験ユニットは、試験中、試験対象車両のホイールシャフトにトルクを加えるように構成された、ステータとロータとを有する動力源を備え、
前記動力源はステータ支持部によって担持され、
前記ステータは前記ステータ支持部に対して軸支されており、
トルク測定手段が、例えば細長い弾性鋼帯を備え、
前記弾性鋼帯は、前記ステータを前記ステータ支持部に接続し、これにより、前記ステータと前記ステータ支持部との間の相対回転運動を抑制し、前記ステータと前記ステータ支持部との間で力を伝達するように構成され、
前記弾性鋼帯は一方の端部で前記ステータおよび前記ステータ支持部の一方に堅固に固着され、前記第1の端部の取り付け後、前記弾性鋼帯が引張応力を長手方向に受けているときに、前記第2の端部が前記ステータまたは前記ステータ支持部の前記一方に取り付けられ、それにより、前記堅固に固着された弾性鋼帯は均質な引張プレストレスを前記弾性鋼帯の長手方向に受ける、組立方法。
【請求項19】
前記弾性鋼帯は、例えば細長い前記鋼帯に固着された少なくとも1対の歪みゲージ(R1/R4;R2/R3)を更に備え、前記歪みは、前記ダイナモメータ試験ユニットがトルクを受けているときに前記鋼帯の歪みによって引き起こされた相対抵抗差を測定することによって測定され、前記組立方法は、
前記鋼帯が前記引張応力を受けているときに前記歪みゲージを使用して前記鋼帯の前記引張応力を測定し、これにより、堅固に固着されているときの所定の引張プレストレスを突き止めるステップを更に含む、請求項18に記載の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のダイナモメータ試験に関し、特に、少なくとも1本のホイールシャフトと前記第1のホイールシャフトに動力を与えるための動力源とを有する車両のダイナモメータ試験時に使用されるダイナモメータ試験ユニットに関する。本発明は、更に、このようなダイナモメータ試験ユニットを組み立てるための組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のダイナモメータ試験は、それ自体は公知であり、例えば、車両ホイールを支持し、制動トルクを車両の駆動ホイールに加えるために使用される大型ローラを備えたローラ型(道路転動)ダイナモメータによって実施可能である。これらローラは一般に摩擦式であり、ダイナモメータシステムは、車両の従動ホイールのタイヤに摩擦係合によって係合する。タイヤとフリクションローラとの間の不可避で、多くの場合は予測不能でもある、可変のスリップおよび摩擦は、試験結果に望ましくない誤差を引き起こし得る。
【0003】
フリクションローラ式システムは、所望される測定精度および/または測定自由度を必ずしも提供できるとは限らない。
【0004】
別の種類の車両用ダイナモメータシステムは、車両のダイナモメータ試験用の装置を利用する。この装置においては、例えば静液圧ポンプ組立体の形態の、荷重吸収手段が、試験対象車両の駆動シャフトとの係合用の入力軸を有する。車両の各駆動シャフトはこの種の個別装置に固定的に接続され得るので、車両からの総実効トルクを精確に測定できる。
【0005】
この種のシステムは、二輪駆動システムに関して、および四輪、またはそれ以上の、駆動システムに関しても、複雑な試験の実施に利用され得る。また、車両の変速機は、動力を車両のホイールシャフトに供給するための、さまざまな種類の、および複数の、動力源を含み得る。これら動力源は、推進力を供給するために、および、例えば回生制動のために使用されるときは、制動力も供給するために、配置され得る。車両の変速機の複雑度の上昇は、ダイナモメータ試験システムを使用した更なる機能の試験の可能性に対する要望をもたらす。加えて、運転手支援システムを具備した車両が増えている。このようなシステムは、さまざまな状況において運転手を支援するために利用され得る。
【0006】
車両制御システムの複雑度の上昇は、所望される機能を保証するために、極めて多数の実走行状況および条件における試験が必要となり得る。このような実走行試験の少なくとも一部が車両用ダイナモメータを使用した試験に交換されると望ましいであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一目的は、試験中に優勢な条件が試験毎に変化し得る場合でも、車両機能の精確な試験を可能にする車両用ダイナモメータを提供することである。
【0008】
本発明によると、車両のダイナモメータ試験のための車両用ダイナモメータシステムに使用されるように構成されたダイナモメータ試験ユニットが提供される。本ダイナモメータ試験ユニットは、試験対象車両のホイールシャフトに接続されるように構成される。本ダイナモメータ試験ユニットは、試験中にトルクを試験対象車両のホイールシャフトに加えるように構成された、ステータとロータとを有する動力源を備える。この動力源はステータ支持部によって担持される。ステータは、ステータ支持部に対して軸支される。ダイナモメータ試験ユニットは、弾性鋼帯を備えたトルク測定手段を備える。弾性鋼帯は、ステータをステータ支持部に接続し、これにより、ステータとステータ支持部との間の相対回転運動を抑制する。弾性鋼帯は、ステータとステータ支持部との間で力を伝達するように構成される。弾性鋼帯の長手方向に均質な引張プレストレスを受けるように、弾性鋼帯は堅固に固着される。
【0009】
弾性鋼帯は、細長い弾性鋼帯でもよい。
【0010】
ダイナモメータ試験ユニットは、1つ以上のダイナモメータ試験ユニットを備えた車両用ダイナモメータシステムの一部を形成し得る。
【0011】
ステータ支持部は、ダイナモメータ試験ユニットを表面上に、例えば、試験が実施される場所の床上などに、自立させるように構成された地面係合支持部を備え得る。
【0012】
地面係合支持部は、ダイナモメータ試験ユニットがトルクを受けているときにダイナモメータ試験ユニットの回転を防止し得る。これにより、ダイナモメータ試験ユニットは、受けているトルクに耐える。
【0013】
動力源を備えた1つ以上のダイナモメータ試験ユニットが車両のホイールシャフトに接続されているシステムを使用すると、車両の試験時に精確な測定結果を提供できる。例えば、急加速中の車両を試験でき、車両のエンジン回転数範囲全体にわたってホイールトルクを精確に測定できる。一般に、トルク/荷重は、試験対象シャフト上で直接測定する測定手段によって測定されるように、配置可能である。ただし、このような測定は、例えば回転部品等々に関して、困難に直面する。あるいは、回転シャフトに加えられるトルク荷重の測定は、本発明におけるように、反力荷重の測定によって行うことができる。反力荷重/トルクの測定は、動作毎に等しい逆向きの反力が存在するという事実を使用する。ダイナモメータ測定に関して、これが意味するのは、荷重/トルクの測定は、この場合はダイナモメータ試験ユニットの、旋回を防止するために必要な荷重/トルク量を測定することによって、行えることである。この荷重は、一般に、反力荷重または反力トルクと呼ばれている。これは、本発明により測定されるトルクでもある。
【0014】
上記のように、ステータはステータ支持部に対して軸支される。したがって、ステータ、ひいてはステータハウジングを含む動力源は、ステータ支持部に対して回転可能である。この回転運動は、その後、ステータをステータ支持部に接続する、例えば細長い、弾性鋼帯によって制限される。トルクがダイナモメータ試験ユニットに加えられると、弾性鋼帯によって動力源の回転が防止される。その後、弾性鋼帯は、ステータが受けているトルクをステータからステータ支持部に伝達する。鋼帯は、ステータとステータ支持部との間に張力伝達リンクを形成する。
【0015】
弾性鋼帯は、ダイナモメータ試験ユニットが受けるトルクを測定する手段の一部を形成する。その理由は、弾性鋼帯もこのトルクを受けるからである。
【0016】
トルクの測定は、弾性鋼帯が受けている引張応力を測定することによって行われ得る。
【0017】
弾性鋼帯が受けている引張応力を測定するために、弾性鋼帯に引張プレストレスがかけられる。一般に、材料の応力−歪み曲線は、比例部分を有する。この部分では、材料は加えられている力に比例して歪む。生じる歪みが加えられている力に比例することを保証するために、プレストレスは応力−歪み曲線上のこの比例部分内のレベルに制御され得る。
【0018】
鋼帯は十分に高い応力レベルまでプレストレスがかけられ得るので、鋼帯は応力から完全には解放されないことが保証される。応力から完全に解放されると、鋼帯は座屈し得る。鋼帯は十分に高い応力レベルまでプレストレスがかけられ得るので、ダイナモメータ試験ユニットがそのために設計されたトルクを受けているときに、鋼帯が応力−歪み曲線の比例領域にない、または比例領域を離れる、ことも保証される。
【0019】
本発明によると、弾性鋼帯は、弾性鋼帯の長手方向に均質な引張プレストレスを受ける。これによる利点は、材料特性が弾性鋼帯内で同じになり、これにより、鋼帯は温度変化に均質に反応することである。これにより、例えば膨張係数によって、温度変動を容易に相殺できる以上には、温度変動は測定結果に悪影響を及ぼさない。鋼帯が均質な引張プレストレスを受けず、代わりに、一般にそうであるように、鋼帯に沿った位置に応じて変化するプレストレスを受けた場合、材料は温度変動により異なる影響を受けるので、相殺が困難になるであろう。
【0020】
弾性鋼帯に関して、これは、鋼帯が受け得る高トルクを支持するために、高強度鋼で形成される。したがって、鋼帯は、物理学の定義によると弾性である。すなわち、本体は歪ませようとする影響に抵抗でき、その影響または力が除かれたときにその元のサイズおよび形状に戻ることができる。弾性鋼帯の例示的寸法は、長さが15〜30cm、幅が3〜7cmであるが、例えば吸収されるトルクのレベルによっては、他の寸法も適切であり得る。
【0021】
本発明の複数の実施形態によると、弾性鋼帯はステータ支持部には堅固に固着されているが、ステータからは解放されているときも、またはこの逆であるときも、弾性鋼帯が均質な引張プレストレスを受けるように、弾性鋼帯は、弾性鋼帯の長手方向に均質な引張プレストレスを受け得る。すなわち、弾性鋼帯がステータ支持部およびステータの両方に固着される前に既にプレストレスが加えられているように、弾性鋼帯は堅固に固着され得る。
【0022】
本発明の複数の実施形態によると、例えば細長い、弾性鋼帯の両端はステータまたはステータ支持部のどちらか一方に堅固に固着され得る一方で、弾性鋼帯の両端の間の部分は、ステータまたはステータ支持部のもう一方に堅固に固着される。それでも、両端がステータまたはステータ支持部に堅固に固着されているときに、中間部分がステータまたはステータ支持部のもう一方から解放されていても、弾性鋼帯が弾性鋼帯の長手方向に引張プレストレスを受けるように、弾性鋼帯は堅固に固着される。
【0023】
本発明の複数の実施形態によると、弾性鋼帯が受ける引張プレストレスは、前記ダイナモメータ試験ユニットが第1の所定トルクを吸収するときに弾性鋼帯が受けている応力に少なくとも対応する。この第1の所定トルクは、試験中、ダイナモメータ試験ユニットが多くとも吸収する、および/または車両ホイールシャフトに加えるようにダイナモメータ試験ユニットが設計されたトルクである。これは、例えば、ダイナモメータ試験ユニットの動力源が供給可能な最大トルクであり得る。
【0024】
本発明の複数の実施形態によると、弾性鋼帯の両端はステータ支持部に接続され、弾性鋼帯の中心部分はステータに堅固に固着される。
【0025】
鋼帯の引張プレストレスは、組立中に鋼帯の長手方向に作用する力の作用によって実現され得る。鋼帯が前記力を受けるのは、組立中、鋼帯が一端でステータまたはステータ支持部のどちらか一方に固着された後、もう一方の端部がステータまたはステータ支持部の前記一方に固着されているときである。このようにして、鋼帯に均質にプレストレスがかけられることになる。
【0026】
トルク測定手段は、弾性鋼帯に固着される少なくとも1対の歪みゲージを更に備え得る。歪みの測定は、ダイナモメータ試験ユニットがトルクを受けているときに、鋼帯の歪みによって歪みゲージに引き起こされた相対抵抗差を測定することによって行われる。
【0027】
鋼帯の各端部は、ステータおよびステータ支持部のどちらか一方に堅固に固着され得る。鋼帯の中心部分は、ステータおよびステータ支持部のもう一方に堅固に固着され得る。第1対の歪みゲージは、鋼帯の中心部分の一方の側で鋼帯に固着され得る。第2対の歪みゲージは、鋼帯の中心部分のもう一方の側で鋼帯に固着され得る。これら歪みゲージは、ホイートストンブリッジなどの電気測定ブリッジ回路において接続される。鋼帯に作用する力の測定は、トルクがダイナモメータ試験ユニットに加えられているときに鋼帯の歪みによって引き起こされた相対抵抗差を測定することによって行われ得る。鋼帯の中心部分に対して鋼帯の一方の側が受ける応力は小さく、もう一方の側が受ける応力は大きい。この応力差は、加えられた力に比例し、ひいてはダイナモメータ試験ユニットが受けているトルクに比例する、歪みゲージの抵抗差をもたらす。
【0028】
ステータは、例えばステータのステータハウジングの一部を形成する、筒状ステータ部材を使用して、ステータ支持部によって支持され得る。ステータは、ステータ支持部に対する回転運動のために、少なくとも2つの転がり軸受を備えた軸受組立体によって、軸支される。
【0029】
更に、ダイナモメータ試験ユニット出力シャフトは、ステータに対する回転のために、筒状ステータ部材内に筒状ステータ部材と同心円状に位置する転がり軸受を使用して、軸支され得る。
【0030】
軸受組立体は、試験中に試験対象車両に面するステータ支持部の端部に、またはその端部を向いて配置され得る。この場合、動力源の大きい方の部分は、軸受組立体によって担持されて軸受組立体からステータ支持部の反対側に向かって片持ち式に延在する。
【0031】
地面係合支持部は、ダイナモメータ試験ユニットが車両に取り付けられていないときにダイナモメータ試験ユニットの後傾を防止するように構成され得る。
【0032】
本発明の複数の実施形態によると、少なくとも2本の平行な弾性鋼帯がステータをステータ支持部に接続する。これにより、ステータとステータ支持部との間の相対回転運動が抑制される。この少なくとも2本の平行な鋼帯は、ステータとステータ支持部との間で力を伝達するように構成される。このようにして、ダイナモメータ試験ユニットは、より高レベルのトルクを吸収するように設計され得る。
【0033】
本方法は、ダイナモメータ試験ユニットが電気機械を動力源として有する種類である車両用ダイナモメータシステムにおいて実施可能である。
【0034】
ダイナモメータ試験ユニットは、試験工程中に制動トルクを自動車のホイールシャフトに加えるように、制御された制動のために制御可能な液圧ポンプを更に有し得る。
【0035】
ダイナモメータ試験ユニットが載っている表面に接触する支持手段は、ホイール、例えば旋回ホイールまたはキャスタホイールなど、を備え得るが、本発明によると、ダイナモメータ試験ユニットが載っている表面上でのダイナモメータ試験ユニットの移動を可能にする他の何れか適切な手段を更に備え得る。この支持手段は、本発明によると、移動を容易にするために、ダイナモメータ試験ユニットの動きに抗する摩擦が相対的に低いように設計され得る。
【0036】
ダイナモメータ試験中、ダイナモメータ試験ユニットの出力シャフトの回転速度は、何れか適したセンサを使用して検出され得る。本発明の複数の実施形態によると、回転速度が求められるのに加え、回転位置も求められ得る。例えば、シャフトの角度位置は、出力シャフトの回転位置を検出するために利用される1つ以上の適切なエンコーダなど、適切な位置判定手段を使用して、求めることができる。例えば、シャフト位置判定手段は、1つ以上のアブソリュート型ロータリエンコーダ、1つ以上の光学式エンコーダ、1つ以上のホール効果センサ、または回転速度および角度位置を求めるために適した他の何れかのセンサ手段、を備え得る。
【0037】
トルクは、前記トルク測定手段を使用して、例えば高いサンプリングレート、例えば1秒間に100〜100000回など、で求められ得る。求められたトルクは、その後、ダイナモメータ出力シャフト/ホイールシャフトの現在の回転角度に関連付けられ得る。この現在の回転角度は、対応する分解能で求められ得る。すなわち、トルク値毎に、トルク値が求められる正にその時点毎に、現在の回転位置がそれぞれ求められ得る。その後、これら相関値は、例えば、特定のシャフト回転角度が逸脱したトルク測定値を引き起こすかどうかを判定するために利用され得る。例えば、ダイナモメータ試験ユニットが、例えばホイールシャフトとの位置合わせに関して、適正にセットアップされていない場合、ダイナモメータ試験ユニットは、トルク測定値に影響を及ぼし得る望ましくない振動を呈し得る。シャフトの回転角度と対応するトルク測定値との相関関係は、このような異常ならびに他の異常を検出するために利用され得る。
【0038】
更に、車両ホイールの代わりに、ダイナモメータ試験ユニットを旋回させるために、車両操舵機構が、例えば車両のステアリングホイールの旋回によって、ホイールハブの旋回運動を行わせたときなどに、ダイナモメータ試験ユニットがヨー軸、すなわちほぼ鉛直の軸線、を中心とした旋回運動を受けているときに受けるヨーモーメントを測定したいという要望が存在し得る。
【0039】
本発明の複数の実施形態によると、鋼帯は、この種の測定のためにも利用され得る。この場合、例えば細長い鋼帯の長手方向の歪みの測定に加え、鋼帯が横断方向に受ける歪みも測定され得る。この場合、ヨーモーメントは、この歪みから求められ得る。上記のトルク測定に関して説明したのと同様に、ダイナモメータ試験ユニットの旋回運動は、ヨーモーメント(トルク)を発生させる。その結果、鋼帯は、例えば、ステータまたはステータ支持部に取り付けられた鋼帯の中間部分の、両側で異なるレベルの応力を受けることになる。鋼帯上の歪みの差は検出可能であり、例えば車両のステアリングホイールの旋回によって、旋回されたときにダイナモメータ試験ユニットが受けるヨーモーメントを求めるために利用され得る。
【0040】
本発明の複数の実施形態によると、ダイナモメータ試験ユニットが受けるヨーモーメントを求めるときに、長手方向の歪みならびに横断方向の歪みの両方が利用される。
【0041】
本発明の複数の実施形態によると、加えて、例えば車両操舵機構によって、ダイナモメータ試験ユニットが旋回されたときに軸受が受ける曲げモーメントを測定するために、例えば、ダイナモメータ試験ユニット動力源を支持する軸受ハウジング内に、トルク測定手段が設けられ得る。軸受が受ける曲げモーメントは、その後、ダイナモメータ試験ユニットが受けるヨーモーメントを求めるために利用され得る。
【0042】
ダイナモメータ試験ユニットは、車両の同じ一ホイールシャフト、例えばハーフシャフトなど、に動力を供給するための2つの(またはより多い数の)ダイナモメータ動力源を有する種類のものでもよい。前記複数の動力源のうちの1つを電気機械とすることができる。
【0043】
例示的実施形態の以下の詳細な説明から、および添付の図面から、本発明の更なる特徴およびそれらの利点が明らかになるであろう。
【0044】
次に、図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】車両の従動ホイールシャフトに接続されている2つのダイナモメータ試験ユニットを備えた本発明の複数の実施形態による例示的車両用ダイナモメータシステムを示す。
図2図1に開示されているシステムのダイナモメータ試験ユニットの側面図を模式的に示す。
図3図2のダイナモメータ試験ユニットの一部分の軸線方向断面の側面図をより詳細に示す。
図4】本発明の複数の実施形態による歪みゲージ配置を備えた弾性鋼帯を示す。
図5図2の左側から見たダイナモメータ試験ユニットの一部分である。
図6】測定鋼帯の非均質プレストレスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1は、本発明の複数の実施形態によるダイナモメータ試験ユニットを複数備えた車両用ダイナモメータシステムによる試験のためにセットアップされた車両100を開示している。
【0047】
開示されている車両100は、二輪(フロントホイール)駆動車両であり、前車軸ホイールシャフト、またはハーフシャフト、103、104と後車軸ホイールシャフト105、106とを含む。
【0048】
開示されている車両100は、動力伝達系を更に含む。この動力伝達系は、本例によると、ギアボックス102に接続された燃焼機関101を含む。ギアボックス102は何れか適した種類のものでよく、例えば、手動変速機または自動変速機で構成され得る。変速機がない場合もあり得る。例えば、車両が電動車両であり、車両のホイールシャフトに動力を直接供給する電気モータを1つ以上有する場合などである。車両100の特定の動力伝達系は、専ら説明のためである。ハーフシャフトなどの前車軸ホイール(駆動)シャフト103、104は、ギアボックスから車両100の前車軸ホイールまで延在する。図1は、後車軸ホイール107、108のみを開示している。前車軸ホイールは取り外されているので、下記のように、これらホイールの代わりに、ダイナモメータ試験ユニット110、111をハーフシャフト103、104に剛接続できる。
【0049】
したがって、車両100に接続された車両用ダイナモメータシステムは、基本的に同一の2つのダイナモメータ試験ユニット110、111を備える。ダイナモメータ試験ユニット110、111は、測定および制御システム114、例えば、ディスプレイ115が対応付けられたコンピュータなど、に接続される。測定および制御システム114によって、例えば、試験が制御され得る。および、測定および制御システム114によって、システムの操作者が、例えば、試験を開始し得るし、またダイナモメータ試験の実施に必要な情報を提供し得る。
【0050】
試験中、測定および制御システム114は、ハーフシャフト103、104への所望の荷重(トルク)、更にはおそらく所望の回転速度、の付与を要求するために、制御信号をダイナモメータ試験ユニット110、111に送信し得る。
【0051】
本発明の複数の実施形態によるトルクの測定を以下に説明する。ダイナモメータ試験ユニット110、111は、ほぼ同一の複数の試験ユニットで構成され得る。図2図5を参照して、ダイナモメータ試験ユニット110、111をより詳細に説明する。
【0052】
以下の説明は、ダイナモメータ試験ユニット110のみを対象としているが、お分かりのように、ダイナモメータ試験ユニット111にも等しく適用可能である。
【0053】
図2は、試験対象車両100に接続されているときの一方のダイナモメータ試験ユニット、例えばダイナモメータ試験ユニット111、の側面図を示す。試験中、試験ユニット111の出力シャフト202は、車両100のホイールシャフト104に剛接続されるように配置されている(同様に、試験ユニット110の出力シャフトは、ホイールシャフト103に剛接続されるように配置されている)。これは、図1に模式的に示されており、より詳細に図2に示されている。この剛接続は、車両ホイールを取り外し、ダイナモメータ試験ユニットの出力シャフト202をホイールハブ203に直接、または本例のようにアダプタ板204を使用して、取り付けることによって行われるので、車両100とダイナモメータ試験ユニット111との間の剛接続が簡素な方法で得られる。アダプタ板204は、車両100のハーフシャフト104のホイール担持端に嵌合するように、およびホイールのリムの代わりに締結具によって固着されるように、適合化され得る。
【0054】
アダプタ板204は、更に、ダイナモメータ試験ユニット111の出力シャフト202に固定的に接続される。これは、例えば環状結合フランジ205を使用して、実現可能である。環状結合フランジ205は、例えば、ダイナモメータ試験ユニット111の出力シャフト202に締め付けられたカラーに溶接可能である、または、出力シャフト202に別様に固着可能である。アダプタ板204は、ボルトなどの締結具によって結合フランジ205に不動に、しかし解放可能に、固着される。アダプタ板204は、更に、結合フランジ205に軸線方向に位置合わせされるように配置され得る。これにより、ハーフシャフト104も出力シャフト202に位置合わせされる、またはほぼ位置合わせされる。これにより、出力シャフト202とハーフシャフト104とは互いに回転可能に係止される。この剛接続は、とりわけ、電気機械201の出力シャフト202の回転速度を測定する適切なセンサによって、ホイールシャフトの回転速度を測定できるという利点を有する。
【0055】
したがって、例えば床230上に自立可能な、ダイナモメータ試験ユニット110、111は、ホイールシャフト(ホイールハブ)への(剛)結合(および、おそらく、車両制御システムとの通信用の或る種の電子線接続)によってのみ車両に接続され、更には、取り外されたホイールの代わりに、車両の重量を支持、すなわち担持、している。
【0056】
図示の実施形態によると、試験ユニット111は、電気機械218の形態の動力源を備える。ダイナモメータ試験ユニットにおける動力源としての電気機械の使用は、例えば内燃機関によって加えられた、トルクを吸収できるばかりでなく、例えば回生制動を試験するために、例えば車両の電気機械によって吸収されるトルクを加えることもできるので、好都合であり得る。ただし、本発明の複数の実施形態によると、ダイナモメータ試験ユニットは、他の種類の動力吸収手段で、例えば静液圧ポンプ組立体、または1つ以上の電気機械と1つ以上の静液圧ポンプ組立体との組み合わせ、などで、実現することも可能である。
【0057】
電気機械218は、ステータハウジング220内に包含されて固着されたステータと、ステータ内での回転のために取り付けられたロータとを、それ自体は公知の方法で、備える。電気機械218の出力シャフトは、ダイナモメータ試験ユニット111の出力シャフト202を形成し得る。または、ダイナモメータ試験ユニット111の出力シャフト202は、ホイールシャフトと電気機械のロータとを接続するために、電気機械218の出力シャフトに堅固に固着されて軸線方向に位置合わせされ得る。
【0058】
図2から分かるように、ダイナモメータ試験ユニット110、111は、更に、支持構造207を介して、床230に載っている。支持構造207は、本例においては、フレームとホイール210、211とを備える。ホイール210、211は、例えば、ダイナモメータ試験ユニット110、111を試験対象車両/ホイールシャフトに対して位置決めするために、ダイナモメータ試験ユニット110、111の操縦を容易にし得る。
【0059】
以下においてはステータ支持部と称される、支持構造207は、電気機械のステータ、ひいては電気機械全体、を支持するように、および、試験中、本例による内燃機関および電気機械218などの車両動力源によって動力が加えられたとき、車両ホイールシャフト104によってダイナモメータ試験ユニット111に加えられるトルクを伝達するように、構成される。
【0060】
したがって、ステータ支持部207は、電気機械218の重量ばかりでなく、電気機械218に取り付けられた他の複数の要素、例えば、本例によると、電気モータ226によって駆動されて電気機械218を冷却するための冷却ファン225など、の重量も担持する。
【0061】
図2に模式的に示されているように、ステータ、ひいては完全な電気機械218組立体、は、試験中に車両100に面するように構成されたダイナモメータ試験ユニットの端部側においてのみ支持される。ステータひいては電気機械218をステータ支持部に取り付ける方法は、図3に示されている。
【0062】
図3は、試験中に試験対象車両に面するダイナモメータ試験ユニット111の端部の一部分を示す。この部分は、図2では、大部分が隠れている。図3は、ダイナモメータ出力シャフト202の軸線Aに交わる鉛直面における図2の軸線Bに沿った鉛直断面の側面図を示している。
【0063】
図3は、図2においてアダプタ板204を介して車両ホイールハブ203に接続されている結合フランジ205を更に示す。上記のように、結合フランジ205は、例えば、出力シャフト202に締め付けられたカラー(図示せず)に溶接またはボルト留めされ得る。
【0064】
ステータハウジング220によって表されている、そこから電気機械/ダイナモメータ試験ユニットの出力シャフト202が延在する、試験中は車両に面するステータの端部は、筒状延長部、またはカラー303、を備える。ステータ220は、ひいては、電気機械218を含み、図2に破線228で識別され、結合ボックス229によって部分的に覆い隠されている完全な組立体は、ダイナモメータ出力シャフト202と同軸の回転運動のために、一対の転がり軸受304、305を備えた軸受ハウジング307を介して、カラー303によって軸支される。したがって、電気機械218は、ステータ支持部207に対して回転可能に軸支され、軸受304、305を介してステータ支持部207によって完全に担持される。したがって、電気機械218は、軸受304、305によって担持されて軸受304、305から片持ち式に突出する。したがって、ダイナモメータ試験ユニット111の大部分は、軸受ハウジング307から片持ち式に突出し、これにより、かなりの曲げモーメントを引き起こす。したがって、軸受ハウジング307は、例えば、トラックにおいてホイール用軸受として使用される種類の軸受304、305、または電気機械218によって課せられる荷重に対応可能な他の適切に寸法設計された軸受け、を備え得る。
【0065】
ダイナモメータ試験ユニット111の出力シャフト202は、ステータハウジングカラー303内で軸受308、309を介して自由に回転するように、軸支される。その結果、ダイナモメータ試験ユニット出力シャフト202は、ステータ支持部207に対して回転可能に軸支されたステータハウジングに対して自由に回転する。
【0066】
ステータ支持部207は、固定型地面係合支持部を備える。地面係合支持部は、通常、それによって支持されているダイナモメータ試験ユニットの各要素の重量、ならびに試験中は取り外されている車両ホイールの代わりに試験対象自動車の重量の一部分の重量、の両方を担持する目的に適う。したがって、試験中、ステータ支持部207は、試験ユニット111の重量の大部分と車両100の重量のかなりの部分とを担持する。地面係合支持部は、ダイナモメータ試験ユニットがトルクを受けているときに、ダイナモメータ試験ユニットの回転を防止する。地面係合支持部は、さまざまなデザインを取り得る。地面係合支持部は、図示の例によると、一対の距離を置いて配置され、支持ホイール211をそれぞれ備えた、脚部131、132(図1を参照)を備える。ホイール210が対応付けられた別の脚部240は、車両100から切り離されているときのダイナモメータ試験ユニット111の後傾を防止する。
【0067】
更に、支持ホイール211、210は、車両100および試験ユニット111の側方移動を、さしたる力を試験ユニットに加えずに、可能にする。更に、支持ホイール211、210は、試験ユニット111の取り扱いを容易にするので、試験ユニット111を車両に向けて、または車両から離れる方向に、都合よく移動させることができる。
【0068】
本発明の一目的は、車両の試験中にダイナモメータ試験ユニット/ステータ支持部が受けるトルクを測定することである。ステータ支持部207に加わるトルクを測定する手段は、弾性鋼帯を備える。この鋼帯は、均一幅の高強度鋼製でもよく、ダイナモメータ試験ユニットに堅固に固着されているときに、引張プレストレスを受ける。トルクの測定は、トルクによって引き起こされた力を受けているときに鋼帯が被る歪みを測定することによって行われる。その後、この力、ひいてはトルク、が求められ得る。
【0069】
本発明の複数の実施形態による弾性鋼帯401の一例が図4Aに示されている。この鋼帯は細長く、本非限定例によると、鋼帯をステータおよびステータ支持部に固締するときに使用される3群の穴402〜404を備える。
【0070】
図5は、ダイナモメータ試験ユニットに適正に据え付けられている鋼帯を示す。図5は、図2の左側から見たダイナモメータ試験ユニットの拡大部分を示す。図2の断面は、図5の軸線Dに沿っている。ステータは、ステータハウジングを介して、突出部310を備える。突出部310は図3にも示されており、ステータと共に回転するので、上記によるステータ支持部に対して回転可能である。
【0071】
更に、ステータ支持部は、突出部501、502を備えた略U字状構造500を備える。本例によると、鋼帯401の端部401A、401Bは、突出部501、502に、例えば、ねじまたはボルトなどの適切な固締手段によって、堅固に締め付けられる。構造500は、ステータ支持部207の一体部分を形成する。または、構造500は、ステータ支持部207に堅固に固着される。
【0072】
更に、鋼帯401の中心部分401Cは、複数の穴403および適切な固締手段、例えば、ねじ/ボルトおよびステータ突出部310の対応する穴505など、によって、ステータ突出部310に堅固に固着される。鋼帯は図3にも示されている。このようにして、鋼帯401は、電気機械とステータ支持部207との間にリンクを形成する。このリンクは、引張力をステータ支持部とステータとの間で伝達する。鋼帯401が存在しなければ、ステータ支持部とステータとは、軸受ハウジング307を介して、互いに対して極めて低い摩擦抵抗で自由に回転するであろう。鋼帯401が取り付けられているときに許容される相対回転運動の量は、伝達された引張力によって引き起こされる鋼帯の伸びによって求められる。鋼帯は高強度鋼によって形成されるので、相対運動は小さいが、下記のように測定可能である。車両の試験中にステータにトルクが加えられると、このトルクは、鋼帯401を介して、ステータ支持部に伝達されることになる。このトルクは、このトルクを受けているときに鋼帯が被る歪みを測定することによって、測定され得る。鋼帯の取り付け後に棒鋼503をステータ支持部突出部に堅固に固着することによって、システムの剛性/スチフネスが更に高められ得る。
【0073】
本発明の複数の実施形態によると、鋼帯401は、ステータ突出部501、502への取り付け中、長手方向Cに均質な引張応力を受ける。鋼帯401は、例えば、ステータ突出部501、502の一方に固着され得る。その後、鋼帯401は、ステータ突出部501、502のもう一方に固着される前、および特に固着されているとき、長手方向の引張応力を受けることになる。このようにして、鋼帯401は、両ステータ突出部に取り付けられているときに、既にプレストレスがかけられていることになる。したがって、取り付けられたとき、鋼帯の長手方向に均質な引張応力を受けることになる。
【0074】
この均質なプレストレスの確立は、有利であり、例えば、試験実施時の温度変動を簡単に(in a straight-forward manner)相殺できる配置を提供する。例えば、相対的に高い温度ならびにゼロよりかなり低い温度の両方で車両試験を実施することが望ましいこともある。均質なプレストレスは、トルク測定結果における温度依存性を少なくとも大きく排除し得る。例えば、生じる力/トルクを、力を受けているときに鋼帯が被る歪みから求めるときに、膨張係数を考慮に入れることによって、温度依存性を簡単に考慮できる。引張応力が均質でない場合、鋼帯の特定の一点における優勢な応力に応じて鋼帯の複数の異なる部分の温度変動に対する反応が異なるので、結果として、トルク測定値が校正された温度以外の温度における測定結果に不確実性がもたらされ得る。
【0075】
例えば細長い鋼帯に引張応力をかけるためのより明白で簡単な方法は、応力が緩和された状態にある鋼帯を両端で堅固に固着することである。この場合、鋼帯は、例えば鋼帯の中心部分の、横変位によって引張応力を受ける。本例によると、これは、ステータ突出部を、例えば1.5〜2mm横方向にオフセットすることによって容易に実現され得る。この種の解決策は、例えば、ダイナモメータ試験ユニットの組立中に優勢であった温度に関して、基本的に同様の条件で試験が実施されるときは、通常、十分な測定精度をもたらすが、この種の設計は、鋼帯の複数の異なる部分における、特に曲がる箇所における、応力の不均質性の故に周囲温度がこのような条件から逸脱しているときは、精度を失い得る。
【0076】
これは、図6に模式的に示されている。図6は、ステータ支持部とステータ突出部610との間の鋼帯611の例示的取り付けを示している。図6において、鋼帯は、引張応力から解放されているときはステータ支持部突出部601、602に固着されている。その後、ステータ突出部610が横断方向に適切な距離dだけ変位されることによってステータ突出部610に取り付けられている鋼帯の中心部分が引張応力を受けるので、鋼帯がステータ突出部610に取り付けられているとき、鋼帯は横断方向の変位によって引張プレストレスを受ける。この種の設計は、上記のように、十分な測定結果を提供し得るが、測定結果が完全に申し分ないとは言えない状況が存在する。
【0077】
これは、プレストレスを受けているときに鋼帯が被る曲げによる。図6から分かるように、これらの曲げが発生するのは、円604で示されている、鋼帯がステータ支持部突出部を離れる箇所、および円605で示されている、ステータ突出部を離れる箇所、の両方である。鋼帯611が受ける引張応力は、これらの曲げの位置で特に高い。更に、この異なる非均質な方法でプレストレスがかけられている鋼帯が、例えば周囲温度に関して、試験の実施条件の変動を受けると、熱膨張(または、場合によっては、負の熱膨張/収縮)は、特にこれら曲げの位置において、非一様になるであろう。これにより、もたらされる引張プレストレスが変動し得る。この変動は予測困難であるので、トルクトランスデューサによって得られる測定結果に不確実性をもたらす。
【0078】
それでも、トルク測定の実施を可能にするためにプレストレスが必要とされる理由は、そうしないと、トルクを受けているときに鋼帯が座屈し、代表的な測定が不可能になるからである。
【0079】
この種の諸問題は、本発明によると、代わりに、鋼帯に長手方向の引張プレストレスをかけることによって、軽減される。これにより、鋼帯に均質なプレストレスが得られる。
【0080】
プレストレスをかけるレベルに関して、鋼帯401にプレストレスをかける引張力は、動作中、鋼帯がステータとステータ支持部との間で伝達すべき最大の引張力より少なくとも僅かに高いレベルに制御され得る。換言すると、引張プレストレスは、試験ユニットの動作中、ダイナモメータが吸収するべく設計された最大トルクを受けているときも、鋼帯に常に引張プレストレスがかけられていることを保証するために十分である必要がある。
【0081】
このプレストレスは、更に、例えば降伏点(弾性限界)、すなわち、引張応力が弾性挙動を呈する限界を示す応力−歪み曲線上の点、の半分に制御され得る。この点を超えて更なる応力が加えられると、塑性挙動が始まり、すなわち永久変形が発生するので、加えられた応力が除去されたときに、材料はもはや元の形状に戻らない。
【0082】
本発明の複数の実施形態によると、比例限界の半分、またはほぼ半分、まで鋼帯にプレストレスがかけられる。この点まで、応力は歪みに比例しており、この点までの応力−歪みグラフは、基本的に直線で表される。比例限界は、降伏点より低い。応力−歪み曲線の比例部分においてトルク測定を行うことが好ましい。そうしないと、力歪み関係の判定が困難または不可能であり得る。
【0083】
プレストレスも、例えば、応力−歪み曲線の比例部分のほぼ中心に設定され得る。プレストレスは、例えば、鋼帯が最大トルクを受けているときに鋼帯が受ける応力に対応する応力だけ比例部分の底部からオフセットされた応力−歪み曲線上のレベルにも設定され得る。
【0084】
弾性限界を決して超えないことによって塑性変形が起きないことを保証できる応力レベルまで鋼帯にプレストレスがかけられることが好ましい。このレベルは同時に十分に高いので、ダイナモメータ試験ユニットがそのために設計されたトルクを鋼帯が受けているときに鋼帯が座屈し得る、または応力−歪み曲線の比例領域を離れ得る程度までは鋼帯は応力から決して解放されないであろう。
【0085】
上記のように、トルクの測定は、鋼帯がトルクを受けているときに鋼帯が被る歪みを測定することによって行われる。この歪みは、上述の比例領域にあるとき、鋼帯が受けている力に比例する。この力は、トルクに比例する。このようにして、トルクを簡単に求めることができる。歪みの測定は、少なくとも1つの歪みゲージ要素を鋼帯401の2つの区間の各々に周知の方法で固着することによって、すなわち、一方のステータ突出部310と他方のステータ支持部突出部501、502の各々との間に歪みゲージ要素を位置付けることによって、実現され得る。歪みゲージは図4Bに示されている。この図では、各側に2つずつ、4つの歪みゲージ要素が設けられている。これら歪みゲージは、ホイートストンブリッジ回路の分岐を周知のように形成する抵抗器R1、R2、R3、R4として示されている。歪みゲージ要素R1〜R4は鋼帯401の長手方向中心線の近くに位置付けられる。歪みゲージ要素R1およびR4はステータ突出部310の一方の側の鋼帯区間に位置付けられ、歪みゲージ要素R2およびR3は、ステータ突出部のもう一方の側の鋼帯区間に位置付けられる。更に、図5から分かるように、要素R1、R2は鋼帯401の上側にあり、要素R3、R4は下側にある。
【0086】
ステータからステータ支持部に力が伝達されると、鋼帯401の引張応力は、ステータ突出部310の一方の側で増加し、ステータ突出部のもう一方の側で減少することになる。結果として、一方の歪みゲージ要素対、例えばR1、R4の抵抗が或る意味で変化する、例えば増加する一方で、もう一方の対R2、R3の抵抗が反対の意味で変化、例えば減少する。これらの接続が図4Cに示されている。ブリッジの不均衡は、点410において、周知のように測定される。この測定値は、伝達された力の大きさを求めるために使用される。この力は、ステータとステータ支持部との間のトルク反力に比例する。
【0087】
更に、プレストレスが不変であるため、鋼帯によって形成されたステータとステータ支持部との間の接続において遊びまたは摩擦は皆無である。
【0088】
本発明の複数の実施形態によると、正に所望の引張プレストレスも得られることを保証するために、歪みゲージも使用され得る。鋼帯401が一端でステータ支持部突出部、例えば突出部501に固着されると、鋼帯がステータ支持部突出部502に堅固に固着される前、または固着されているときに、鋼帯は引張応力を受けるので、歪みゲージを使用して歪み、ひいては引張応力が測定され得る。所望レベルの引張プレストレスに達したと判定されたら、例えば、鋼帯を延伸させる適切な工具を使用して、鋼帯の未だ固着されていない端部を支持部突出部502に堅固に固着できる。このようにして、プレストレスが鋼帯全体にわたって均質であるように、所望のプレストレスが得られる。この場合、鋼帯に均質にプレストレスがかけられるように、鋼帯は、横方向の遊びを一切必要とせずに、ステータ突出部310に堅固に固着され得る。
【0089】
更に、例えば、ダイナモメータ試験ユニットが受け得る最大トルクを増加させるために、2つ以上の鋼帯が平行に使用され得る。各鋼帯に均質にプレストレスがかけられ、使用される1つ以上の、または全ての鋼帯に歪みゲージが設けられる。
【0090】
最後に、上記の例によると、各ダイナモメータ試験ユニットは、一電気機械で構成された単一の動力源を備える。ただし、上記のように、本発明の複数の実施形態によると、ダイナモメータ試験ユニットは、個々に制御可能な2つ以上の動力源を備え得る。これら動力源は、複数の電気機械、複数の液圧ポンプ、またはこれらの何れか適した組み合わせとすることができる。
【0091】
以上、特定の種類の車両の試験に関連して、本発明を例示した。当然、本発明は、試験対象ホイールシャフトのうちの少なくとも1つが車両の操舵方向を変えるために使用される限り、従来の二輪または四輪燃焼機関車両、または上で開示した以外の何れか他の種類のハイブリッド車両など、如何なる種類の車両の試験にも適用可能である。したがって、2より多い数のホイールに接続される2より多い数のダイナモメータ試験ユニットを使用できる。単一のホイールシャフトのみが1つのダイナモメータ試験ユニットに接続されることも考えられる。
【0092】
更に、この種のトルク測定は反力トルクを測定する。これが意味するのは、測定されたトルクは、電気機械の慣性モーメントの影響を含むことである。これら測定の精度は、特に、ダイナモメータが接続されているシャフトの加速および減速中、ダイナモメータ試験ユニット動力源の慣性モーメントが測定結果に対して有する同期影響によってこの測定結果を相殺することによって、向上され得る。2つ以上の動力源が単一のダイナモメータ試験ユニットのために使用される場合、これら動力源の各々について慣性モーメントを別個に求めることができるので、測定に現在関与している慣性モーメント(動力源)のみが結果の相殺時に使用される。
【0093】
上記から明らかなように、動力源という用語は、動力(トルク)を、それが推進(正)トルクであろうと、制動(負)トルクであろうと、この両方の組み合わせであろうと、ホイールシャフトに付与できる動力源を意味する。
【0094】
更に、試験中、ダイナモメータ出力シャフト202、ひいてはホイールシャフト104の回転角度が求められ得る。例えば、この回転角度は、上記のように、適切なシャフト位置判定手段を使用して求めることができる。
【0095】
トルクは、上記によると、鋼帯を使用して、例えば高いサンプリングレート、例えば1秒間に100〜100000回などで測定され得る。求められたトルクは、その後、ダイナモメータ出力シャフト/ホイールシャフトの現在の回転角度に関連付けられ得る。これら関連付けられた値は、その後、例えば、特定のシャフト回転角度が逸脱したトルク測定値をもたらすかどうかを判定するために、利用され得る。このようにして、例えば、適正にセットアップされていないダイナモメータ試験ユニットによって引き起こされた、または車両の内部不均衡など他の原因によって引き起こされた異常が検出され得る。シャフトの回転角度と対応するトルク測定値との相関関係は、このような異常を検出するために利用され得る。
【0096】
更に、上記のように、ダイナモメータ試験ユニットがヨー軸、すなわちほぼ鉛直の軸線を中心に旋回運動させられているときにダイナモメータ試験ユニットが受けるヨーモーメント、すなわちトルクを測定したいという要望が存在し得る。図7は、この種の旋回運動の一例を示す。
【0097】
図7は、図1のダイナモメータ試験ユニット111を開示している。したがって、ダイナモメータ試験ユニット111は、ホイールシャフト(ホイールハブ)への(剛)結合(および、おそらく車両制御システムとの通信用の或る種の電子線接続)によってのみ車両に接続され、取り外されたホイールの代わりに、車両の重量を支持、すなわち担持している。
【0098】
車両の試験は、車両の舵角を変化させずに実施され得るが、上記のように、試験中に車輪の舵角を変化させることが望ましい状況も存在し得る。多くの場合、車両は、例えば、アンチスキッドシステムまたは同様の機能、および/または自動駐車機能、および/またはホイールの舵角に少なくとも或る程度まで追従する旋回カーブライト、および/または動作中に車両舵角の影響を受ける、または車両舵角に影響を及ぼす、他の可能なさまざまな種類のシステム、を備えている。
【0099】
例えば車両100のステアリングホイールの旋回によって、舵角の変化がフロントホイールシャフトに加えられると、これは、取り付けられているホイールハブ203とホイールとを旋回させることになる。この場合、ダイナモメータ試験ユニット111とホイールシャフト104との間の剛接続は、ホイールハブの舵角の変化に追従するための回転運動をダイナモメータ試験ユニット111に引き起こす。
【0100】
この旋回運動は、図2に「E」で示されている相対的に鉛直の軸線を中心に発生する。この軸線は、例えば、ホイールハブ203の旋回を可能にするキングピン/ステアリングナックル/ステアリングスピンドルのスプリングストラットおよびジョイント291の上側支持部290の中心を通る軸線によって規定される。
【0101】
このジョイントは、図1に参照符号280によって上から模式的に示されている。したがって、試験ユニット111は軸線Eによって規定された回転中心を中心に回転されるので、例えば舵角変化をシミュレートするための、ホイールハブの旋回運動は、ダイナモメータ試験ユニット111が載っている床上でのダイナモメータ試験ユニット111の再配置をもたらす。ホイールハブの旋回に追従する回転によって引き起こされたダイナモメータ試験ユニット111の例示的再配置(回転)が図7に示されている。この図において、ダイナモメータ試験ユニット111は、回転中心280を中心に軸線Aによって表されている位置から軸線Aと軸線A’との間の角度によって表されている角度だけ回転されている。
【0102】
したがって、このようにダイナモメータ試験ユニットの操縦性を可能にする可能性は、車両の舵角によって影響される車両システムも試験され得るので、車両の試験時に、例えば車両のステアリングホイールの転舵によって、車両ホイールの代わりに、ダイナモメータ試験ユニットが旋回されることによって、車両操舵機構がホイールハブの旋回運動を実現させるときなど、追加の可能性を提供し得る。
【0103】
上記のように、移動中、ダイナモメータ試験ユニットはヨーモーメントを受けているので、本発明の複数の実施形態によると、ヨーモーメントを求めるためにも、基本的に図示の種類の鋼帯が利用され得る。
【0104】
この場合、前述のような長手方向における歪みの測定に加え、図4A〜Cの鋼帯などの鋼帯は、歪みゲージ要素を含み得る。この歪みゲージ要素は、横断方向に配置される。例えば、図4A〜Cに示されている歪みゲージ要素R1〜R4に垂直に、または歪みゲージ要素R1〜R4に対して少なくとも角度をもって配置される。
【0105】
トルク測定に関して上で説明したのと同様に、ヨーモーメントを引き起こすダイナモメータ試験ユニットの旋回運動は、ステータ突出部310への鋼帯の両取り付け側において鋼帯が横断方向にそれぞれ異なるレベルの応力を受けるという結果を有することになる。追加の横断歪みゲージを使用すると、この応力によって生じる横断歪みが測定され得る。この場合、ヨーモーメントはこの歪みから、および、歪みゲージR1〜R4によって検出された歪みもおそらく使用して、求められ得る。
【0106】
本発明の複数の実施形態によると、トルク測定装置が軸受ハウジング307にも設けられ得る。このトルク測定装置は、特に、ダイナモメータ試験ユニットが例えば車両操舵機構によって旋回されたときに転がり軸受304、305の一方または両方が受ける曲げモーメントを測定するために配置される。これら軸受が受けた曲げモーメントは、その後、ダイナモメータ試験ユニットが受けたヨーモーメントを求めるために利用され得る。
【0107】
最後に、本発明は上記の各実施形態に限定されず、添付の独立請求項の範囲内の全ての実施形態に関連し、これらを組み込むことを理解されたい。例えば、鋼帯を使用してステータ支持部をステータに接続するための他の設計が考えられる。例えば、鋼帯の両端をステータに取り付け、その間の一部分をステータ支持部に取り付ける設計が考えられる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
【国際調査報告】