特表2021-512809(P2021-512809A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-512809(P2021-512809A)
(43)【公表日】2021年5月20日
(54)【発明の名称】レーザー印刷プロセス
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/48 20060101AFI20210423BHJP
   B41M 5/382 20060101ALI20210423BHJP
   B41M 5/46 20060101ALI20210423BHJP
   B41M 5/41 20060101ALI20210423BHJP
   B41M 5/385 20060101ALI20210423BHJP
【FI】
   B41J2/48
   B41M5/382 310
   B41M5/46 510
   B41M5/41 300
   B41M5/385 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-562836(P2020-562836)
(86)(22)【出願日】2019年1月22日
(85)【翻訳文提出日】2020年9月18日
(86)【国際出願番号】EP2019051508
(87)【国際公開番号】WO2019145300
(87)【国際公開日】20190801
(31)【優先権主張番号】102018000653.1
(32)【優先日】2018年1月27日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520275032
【氏名又は名称】ヘリオソニック ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レーマン ウド
【テーマコード(参考)】
2H111
【Fターム(参考)】
2H111AA35
2H111BA03
2H111BA32
2H111BB05
(57)【要約】
被印刷基材がインク層を有するインクキャリアに対向して配置され、インク層に隆起が形成されるようにインク層が局部的に加熱され、隆起が基材に接触し、基材とインクキャリアとの間の相対移動によってインクの分裂がもたらされる、印刷プロセス。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷基材がインク層を有するインクキャリアに対向して配置され、前記インク層に隆起が形成されるように前記インク層が局部的に加熱され、前記隆起が前記被印刷基材に接触し、前記被印刷基材と前記インクキャリアとの間の相対移動によってインクの分裂がもたらされる、印刷プロセス。
【請求項2】
前記インク層がレーザーによって、より具体的にはスイッチレーザーによって加熱されることを特徴とする、請求項1に記載の印刷プロセス。
【請求項3】
インクキャリアおよびインク層が互いに平行に移動されることを特徴とする、請求項1または2に記載の印刷プロセス。
【請求項4】
基材およびインクキャリアが、少なくとも前記印刷速度に対応する速度で、好ましくは前記印刷速度の少なくとも2倍で相対的に移動されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の印刷プロセス。
【請求項5】
前記隆起が接触している間の前記基材が、0.01mm超および/または3mm未満、好ましくは0.1mm超および/または1mm未満、より好ましくは0.1mm超および/または0.5mm未満の距離で、前記インク層のそばを通り過ぎるようにガイドされることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の印刷プロセス。
【請求項6】
1〜100μm、好ましくは10〜50μmの厚さのインク層が前記基材に塗布されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の印刷プロセス。
【請求項7】
前記インク層が、レーザーを透過するインクキャリア上に配置されるウェットインク層であること、および/または使用される前記インクキャリアがポリマーフィルム、より具体的にはポリイミドフィルムを含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の印刷プロセス。
【請求項8】
エフェクト顔料、金属粒子、および/または1μmを超える、好ましくは5μmを超える平均直径を有する粒子を含むインクが使用されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の印刷プロセス。
【請求項9】
印刷後の前記インクが焼き付けられること、および/または2つ以上のインク層が互いに重ねられて塗布されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の印刷プロセス。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成される印刷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指定されたパターンに従ってインクキャリアから基材にインクが転移され、インクが最初に転移デバイスによりインク貯留部からインクキャリア上に転移される、基材上に印刷するためのプロセスに関する。本発明はさらに、指定されたパターンに従って被印刷基材にインクを転移するためのインクキャリアを備える印刷機に関し、また、インクをインクキャリア上に転移するための転移デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
インクコーティングされたキャリアから被印刷基材上にインクの液滴が射出される、基材に印刷するためのプロセスが、特許文献1から知られている。インクを転移するために、エネルギーがキャリアを介してキャリア上のインクへ、基材に印刷される位置に導入される。これにより、インクの一部、またはインク内に存在する液体が気化して、インクがキャリアから離れる。気化したインクの圧力によって、そのように離れたインクの液滴は、基材上に射出される。
【0003】
指示されたようにエネルギーを導入することにより、印刷されるパターンに従ってインクを基材上に転移することが可能になる。インクを転移するために必要なエネルギーは、たとえば、レーザーによって導入される。塗布されるインクを担持するキャリアは、たとえば、印刷領域の前に塗布デバイスによってインクが塗布される循環リボンである。レーザーが循環リボンの内側に配置されているので、レーザーはキャリアの、インクから見て外方に向く側に作用する。インクキャリアへのインクの塗布は、たとえば、インク貯留部に浸されたロールによって実現される。
【0004】
この種の印刷機は、特許文献2からも知られている。同様にこの文書の教示によれば、貯留容器から塗布デバイスを使用して循環リボンにインクが塗布され、循環リボン内にレーザーがあり、それによってインクが指定された位置で蒸発し、その結果、被印刷基材上に射出される。この場合のリボンは、レーザーを透過する材料でできている。対象を絞ってインクを気化させるために、循環リボンを吸収層でコーティングすることが可能であり、吸収層でレーザー光が吸収され、熱に変換されて、インクがレーザーにさらされた位置で気化する。
【0005】
上記の方法を使用して、レーザーによって液体インクを対向する基材に転移する場合、その結果は一般に、多数の隣接するサテライト(飛沫)を有する不明瞭な「スポット」になる。さらに、インクベルト上のインク担持層から液滴を離して、自由飛行で対向する基材上に運ぶには、大量のエネルギーが必要となる。このため、特に、許容できる速さの印刷速度を達成するには、非常に強力なレーザーを使用する必要があり、それによってコストが増加し、可能な用途が制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,241,344号明細書
【特許文献2】米国特許第5,021,808号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これに対し、本発明は、従来技術の上記の欠点が少なくとも低減される印刷プロセス、より詳細には、レーザー印刷プロセスを提供する目的に基づいている。
【0008】
本発明の詳細な目的は、印刷に必要なエネルギー入力を最小化しつつ、印刷画像を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、請求項1の主題に従って既に達成される。
【0010】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項の主題、本説明、および図面から明らかである。
【0011】
本発明は、被印刷基材がインク層を有するインクキャリアに対向して配置される印刷プロセスに関する。本発明は、より具体的には、ライン上の印刷プロセスに関する。
【0012】
基材はインクキャリアに塗布されたインクから間隙によって離れている。
【0013】
使用される基材は、可撓性のシート状の構造、より具体的には、フィルム、不織布、紙、カード、または繊維材料で構成されてもよい。
【0014】
使用される基材は、剛性材料、より具体的には板状の材料、たとえば、プラスチック、ガラス、またはセラミック製のシートなどであってもよい。
【0015】
インク層に隆起(bulge)を形成するようにインク層が局部的に加熱される。
【0016】
具体的には、インクキャリアを介してインク層を局部的に、好ましくはラインごとに加熱するレーザーによってインク層が加熱され、その結果インクは、具体的には気化する成分によって加熱されて隆起を形成する。
【0017】
使用されるレーザーは、具体的にはスイッチレーザーであってもよい。一実施形態によれば、レーザーは、印刷画像を形成するドットのグリッドを生成する。他の実施形態によれば、レーザーはライン単位で走行する。ドットとラインとの組み合わせも同様に考えられる。
【0018】
しかしながら、印刷画像を生成するためのインク層は、形を成したインク粒子が分裂して基材の方向に射出されるようには加熱されない。
【0019】
代わりに、エネルギー入力は非常に低いので、インクキャリアと基材との間の間隙にまたがる隆起が形成されるのみである。
【0020】
本発明によれば、隆起が基材に接触し、基材とインクキャリアとの間の相対移動によってインクの分裂がもたらされる。
【0021】
インクの分裂はインク転移のプロセスであり、具体的には、インクの液滴が基材に到達して、永久に付着し、印刷されたドットまたは印刷されたラインを形成するものである。
【0022】
そのため、インクの分裂は、レーザーだけでなく、隆起の基材への付着および相対移動によってもたらされる。
【0023】
付着は、好ましくは主に、より好ましくは排他的に、基材と、形を成したインクの液滴との間の接着力によって発生する。
【0024】
しかしながら、少なくとも支援機能で、磁力または静電力を利用して隆起を基材に付着させて、基材上に渡る液滴を形成することも考えられる。
【0025】
本発明の結果として、必要とされるレーザー出力を低減することが可能である。また、転移されたインクの液滴周辺のサテライトの形成を大幅に回避することができる。
【0026】
本発明のプロセスを通じて、300dpi以上の解像度を達成することができる。
【0027】
インク分裂のために、インクキャリアおよびインク層は互いに平行に移動されることが好ましい。より具体的には、基材はプリントヘッドを通過するように移動され、同時にプリントヘッドが基材の移動方向に対して垂直に移動されて、基材にラインごとに印刷する。
【0028】
また、プリントヘッドを基材上で蛇行状に移動させることも可能であり、本発明のこの実施形態の場合の基材は、静止している間に印刷されることが好ましい。
【0029】
本発明のさらなる実施形態の場合、基材は、プリントヘッドの特定の実装が接触した後、垂直に遠ざかるように移動される。そのため、この実施形態の場合、インク分裂は、インクキャリアと基材との間の間隙を広げることによって実現される。
【0030】
基材およびインクキャリアは、好ましくは、少なくとも印刷速度に対応する速度で、より好ましくは印刷速度の少なくとも2倍で相対的に移動される。これにより、きれいな印刷画像および/または高解像度を実現することが可能になる。
【0031】
本発明の好ましい一実施形態によれば、隆起が基材と接触している間の基材は、0.01mm超および/または3mm未満、好ましくは0.1mm超および/または1mm未満、より好ましくは0.1mm超および/または0.5mm未満の距離で、インク層のそばを通り過ぎるようにガイドされる。
【0032】
これは、インクキャリアが基材と反対方向に移動されるか否かとは無関係である。
【0033】
しかしながら、インクリボンおよび基材が印刷方向とは逆に移動される場合、インクの分裂を改善することができる。
【0034】
印刷速度はレーザーに対する基材の前進速度であり、または静止した基材の場合は、レーザーユニットが基材上で印刷方向に移動する速度である。
【0035】
本発明の方法では、1〜100μm、好ましくは10〜50μmの厚さのインク層を基材に塗布することが可能である。
【0036】
インク層は、より具体的には、レーザーを透過するインクキャリア上に配置されるウェットインク層である。
【0037】
本発明の一実施形態に従って使用されるインクキャリアは、ポリマーフィルム、より具体的にはポリイミドフィルムで構成される。
【0038】
ポリマーフィルムは、具体的には、インク層を生成するために、インキングユニット、より具体的にはニップインキングユニットを通るようにガイドされる循環リボンとして構成されてもよい。
【0039】
本発明により、具体的には、エフェクト顔料、金属粒子、および/または1μmを超える、好ましくは5μmを超える平均直径を有する粒子を含むインクの印刷が可能になる。
【0040】
したがって、まず、たとえばキラキラした顔料などの大きなエフェクト粒子を印刷することが可能である。
【0041】
また、たとえば導体トラックを印刷するために、金属粒子を含む、より具体的には銅または銀の粒子を含むインクを使用することが可能である。
【0042】
一実施形態では、印刷後のインクは焼き付けられる。このように、具体的には、耐熱性の導電層を生成するために、金属粒子を焼結することができる。
【0043】
2つ以上のインク層を互いに重ねて塗布することも可能である。実現できる層の厚さが厚いため、それに基づいて実質的に任意の所望の高さの3次元構造でさえ提供することが可能である。
【0044】
本発明はさらに、上述のプロセスを実行するように構成される印刷機に関する。
【0045】
この機械は、インク層に隆起が生成されるように、レーザーを用いてインクキャリアを介してインクキャリア上のインク層を局所的に加熱するプリントヘッドを備えることが好ましい。
【0046】
印刷機は、被印刷基材が、インク層を担持するインクキャリアからある距離で間隙を隔ててガイドされるように構成される。隆起は基材と接触し、インクキャリアに対する基材の相対移動によりインクの分裂が発生して、インクの液滴が基材に移る。
【0047】
本発明の主題は、概略図である図1から図7を参照して、例示的な実施形態によって以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】印刷されるドットを塗布する場合の本発明のプロセスの過程の概略図である。
図2】印刷されるドットを塗布する場合の本発明のプロセスの過程の概略図である。
図3】印刷されるドットを塗布する場合の本発明のプロセスの過程の概略図である。
図4】印刷されるドットを塗布する場合の本発明のプロセスの過程の概略図である。
図5】印刷されるドットを塗布する場合の本発明のプロセスの過程の概略図である。
図6】印刷されるドットを塗布する場合の本発明のプロセスの過程の概略図である。
図7】本発明の印刷機の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図1を参照して、本発明の印刷プロセスの基本的なステップを説明する。
【0050】
ステップ(a)において、インク層(2)を形成する印刷されるインク(2)がインクキャリア(1)上に配置される。ステップ(b)における書き込みレーザー(3)による、好ましくはスイッチレーザーの衝撃により、インク(2)の一部、より具体的にはインクが含む溶媒が加熱され、その結果、ステップ(c)に示すようにインク(2)から隆起(4)が形成されるが、この隆起ではインクは分離せず、またはわずかにしか分離しない。この図ではステップ(d)に示すように、隆起(4)はその下に位置する基材に接着力で付着することができないので、突起(bump)は少なくとも部分的に後退し、インクはほとんどまたは全く転移されない。そのため、本発明によれば、基材がインク層を有するインクキャリア(1)の下に、隆起(4)が基材と接触するように配置されている場合にのみ、印刷が行われる。
【0051】
図2は基本的に図1と同じ構造を示しているが、ここでは被印刷基材(6)がインクキャリア(1)およびインク層(2)の下に配置される(ステップa)。レーザー衝撃(3)の結果、インク層(2)は被印刷基材(6)の方向に膨らむ(ステップb〜c)。基材(6)とインク隆起(4)との間で接触が発生する(ステップc)。インク隆起(4)と基材(6)とで速度が異なる結果、インクのくびれ(5)が生じる(ステップd)。最後に、インクの分裂が発生して、インク突起(4)の少なくとも一部が基材(6)上に転移インクドット(7)として転移される(e)。
【0052】
図3は、基本的に図1および図2と同じ構造を示している。図2とは対照的に、この図での基材(6)は、インクキャリア(1)およびインク層(2)と平行にではなく、垂直方向に移動している。基材(6)とインク隆起(4)との間の垂直方向の位置の変化によりインクが分離し、それと同時に、インク突起(4)、基材(6)、およびインク層(2)の間でインクが分裂する。
【0053】
基材(6)およびインクキャリア(1)の相互に平行な移動および相互に垂直な移動の組み合わせ、換言すれば、図2および図3に示すプロセスの組み合わせも可能である。
【0054】
図4に、インク層(2)を含むインクキャリア(1)を印刷速度よりも遅く基材に対して相対移動させた場合の結果を示す。基材は図4には示していない(図5および図6も同様)。
【0055】
基材に対するインクキャリア(1)の相対速度が遅い結果、書き込みレーザー(3)は、既に空になっているインクキャリア(1)のインク領域(5)にパルスを繰り返し送る。書き込みレーザー(3)が完全に充填されたインク領域(2)に出会わなくなるので、ここで隆起(4)の領域に転移するインクの量は、前のショットのインクの量よりも少なくなる。その結果、レーザー出力が低下すると、印刷画像の品質が低下する。しかしながら、結果的に得られる不安定な品質の印刷画像は、たとえば、ベタ領域の転移、またはデジタルインクスプレーに使用することができる。
【0056】
図5に、インクキャリア(1)およびインク層(2)が印刷速度で移動している場合の結果を示す。この場合、書き込みレーザー(3)は常に部分的に空になったインク領域(5)に出会うので、前のレーザーショットと同じ量のインクを印刷することができなくなる。この場合もやはり、レーザー出力が低下すると、生成される印刷画像の品質は不安定になるが、このプロセスも同様に、ベタ領域の転移、またはデジタルインクスプレーに使用することができる。
【0057】
図6に、本発明の好ましい一実施形態による印刷手順を示す。この場合、インク層(2)を含むインクキャリア(1)は、印刷速度よりも速く基材に対して相対移動する。その結果、書き込みレーザー(3)は、常に完全に充填されたインク領域(2)に出会う。これらの条件下において、より高いレーザー出力によって、安定した高品質な印刷画像を生成することができる。
【0058】
以下に説明するのは、様々なパラメータの状況下での本発明の印刷プロセスの結果である。
【0059】
以下の典型的なシステム設定では、以下の印刷結果が得られる。
【0060】
設定1(図5に図示):
・インクリボン:連続ポリマーリボン
・レーザー:固体レーザー、特に800〜1800nm
・レーザー出力:1〜500kW/mm
・書き込みフォーカス:20〜100μm
・インクキャリア上のインク層の厚さ:20〜50μm
・インク粘度:500〜10000mPa・s、好ましくは1000〜5000mPa・s
・インクキャリアの速度:0.9〜1.1*印刷速度
・インクキャリアから基材までの距離:約0.5〜2mm
・印刷速度:1〜10m/分、および/または、
・印刷幅:10〜2000mm
【0061】
これにより、インクキャリア上のインク層の厚さにほぼ一致する厚さのウェットインク膜層を有する均質な印刷面が生成される。
【0062】
設定2(図6に図示):
・インクリボン:連続ポリマーリボン
・レーザー:固体レーザー、特に800〜1800nm
・レーザー出力:1〜500kW/mm
・書き込みフォーカス:20〜100μm
・インクキャリア上のインク層の厚さ:20〜50μm
・インク粘度:500〜10000mPa・s、好ましくは1000〜5000mPa・s
・インクキャリアの速度:2.5〜3.5*印刷速度
・インクキャリアから基材までの距離:約0.1〜0.5mm
・印刷速度:1〜10m/分、および/または、
・印刷幅:10〜2000mm
【0063】
これにより、インクキャリア上のインク層の厚さにほぼ一致する厚さのウェットインク膜層を有する均質な印刷面ならびに詳細なパターンが生成される。
【0064】
本発明は、インクキャリアと基材との間のインク分離を機械的な手段によって実現する。その結果、選択されたインク層の、印刷基材の方向への一部分の位置変化を実現するために追加で必要となるのは、レーザーエネルギーのみである。レーザー衝撃はこの場合、基材の方向へのインクの隆起のみをもたらし、レーザーによって膨らまされたインクがその後接触し、また、基材とインク膜との速度差によって、インクが分離される。機械的なインクの分離では、インクリボンと印刷基材との速度差は絶対に必要というわけではなく、印刷基材に対するインクリボンの、高さに関する相対的な位置変化によって同じ効果がもたらされる。
【0065】
「インク突起」と基材との間に接触がない場合、インク突起の弾性収縮によって、インク転移は極めて限定的となるか、またはインク転移は全くなくなる。
【0066】
本発明の印刷プロセスでは、一般に、レーザーによってインクの液滴が射出される従来の印刷プロセスと比べて、わずかなレーザーエネルギーしか必要とされず、飛散する飛沫も同時に減少する。これにより、印刷速度が向上するだけでなく、印刷画像の品質が大幅に上昇する。
【0067】
インクリボンと基材との速度差を調整する場合に、印刷画像を安定させたければ、インクリボンの速度が、発生させる印刷速度を下回ってはならない。これに関連して、インクリボンが基材の方向に移動するか、または印刷されるインクが反対方向に運ばれるかは重要ではない。決定的な要素は、インクリボンと基材との間の速度差の確立である。
【0068】
最小のインクリボンの速度は印刷速度であることが好ましい。
【0069】
インクリボンの速度が印刷速度未満である場合、インクの転移は制御されず、その理由は、その場合のインクが既にインクを使い果たしたインクリボンの領域から転移されることになるので、不均質になるためである。
【0070】
インクリボンの速度が印刷速度と同じ場合、必要なレーザー出力は原理的に低くなるが、インクの転移が不均一であるため、印刷画像も不均一になる。
【0071】
インクリボンの速度が印刷速度よりも高い場合、インクを転移するために必要なレーザー出力は確かに大きくなるが、リボンの速度が上がると、印刷精度は高くなる。最適な印刷精度は、印刷速度の約2〜3倍のインクリボン速度で達成することができるが、インクリボンの移動方向は関係ない。
【0072】
図7は、本発明の印刷機(14)の例示的な実施形態の概略図である。
【0073】
印刷機(14)のインクキャリア(1)は、循環インクリボンである。
【0074】
インクリボンは、インキングユニット(8)によりインク(2)で均一に、その全面積にわたってコーティングされる。次に、インクリボンは矢印の方向に、印刷ニップ(10)まで移動する。ここで、インクキャリア(1)は、被印刷基材(6)から間隙によって離れている。間隙の幅は、好ましくは調整可能であり、および/または連続的に調節される。これは、たとえば、調節可能な離間ロール(12)によって行うことができる。
【0075】
印刷ニップ(10)において、レーザースキャナによって、レーザービーム(3)がインクキャリア(1)によりインク(2)に集束される。レーザービーム(3)によりインク(2)の一部を局所的に、対象を絞って加熱することにより、インク(2)の小さな領域の爆発的な気化が発生し、その結果、印刷インク(2)の一部がインクリボン(1)からある程度離れ、隆起が形成され、その後対向する基材(6)に接触して転移される。そのため、印刷ニップ(10)は、インクの隆起がニップに広がるように構成される。
【0076】
続いて、インクリボンは離間ロール(12)および偏向ローラ(11)によって制御されて、インキングユニット(8)の方向に戻る。インキングユニット(8)とインクリボンとの接触により、消費されたインク(2)が補充される。インキングユニット(8)の余分なインク(2)は、下部のインクトラフ(9)に集められ、継続的に繰り返し印刷動作に加えられる。
【0077】
本発明の結果として、レーザー出力を大幅に低減しつつ、改善された印刷画像を生成することに成功した。
【符号の説明】
【0078】
1.インクキャリア
2.インク/インク層/インク領域
3.書き込みレーザー/レーザー衝撃/レーザービーム
4.隆起/インク隆起
5.インクのくびれ/空のインク領域
6.基材
7.インクドット
8.インキングユニット
9.インクトラフ
10.印刷ニップ
11.偏向ローラ
12.離間ロール
13.レーザースキャナ
14.印刷機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2020年9月29日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷基材がインク層を有するインクキャリアに対向して配置され、前記インク層に隆起が形成されるように前記インク層が局部的に加熱され、前記隆起が前記被印刷基材に接触し、前記被印刷基材と前記インクキャリアとの間の相対移動によってインクの分裂がもたらされる、印刷プロセス。
【請求項2】
前記インク層がレーザーによって加熱されることを特徴とする、請求項1に記載の印刷プロセス。
【請求項3】
前記インクキャリアおよび前記インク層が互いに平行に移動されることを特徴とする、請求項1または2に記載の印刷プロセス。
【請求項4】
前記被印刷基材および前記インクキャリアが、少なくとも印刷速度に対応する速度で相対的に移動されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の印刷プロセス。
【請求項5】
前記隆起が接触している間の前記被印刷基材が、0.01mm超および/または3mm未満の距離で、前記インク層のそばを通り過ぎるようにガイドされることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の印刷プロセス。
【請求項6】
1〜100μmの厚さのインク層が前記被印刷基材に塗布されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の印刷プロセス。
【請求項7】
前記インク層が、レーザーを透過するインクキャリア上に配置されるウェットインク層であること、および/または使用される前記インクキャリアがポリマーフィルムを含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の印刷プロセス。
【請求項8】
エフェクト顔料、金属粒子、および/または1μmを超える平均直径を有する粒子を含むインクが使用されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の印刷プロセス。
【請求項9】
印刷後の前記インクが焼き付けられること、および/または2つ以上のインク層が互いに重ねられて塗布されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の印刷プロセス。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の印刷プロセスを実行するように構成される印刷機。
【国際調査報告】