特表2021-512875(P2021-512875A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-512875(P2021-512875A)
(43)【公表日】2021年5月20日
(54)【発明の名称】細胞免疫療法の組み合わせ
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/17 20150101AFI20210423BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20210423BHJP
   A61K 31/44 20060101ALI20210423BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20210423BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20210423BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20210423BHJP
【FI】
   A61K35/17
   A61K45/00
   A61K31/44
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61K35/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】72
(21)【出願番号】特願2020-542127(P2020-542127)
(86)(22)【出願日】2019年2月2日
(85)【翻訳文提出日】2020年10月1日
(86)【国際出願番号】CN2019074535
(87)【国際公開番号】WO2019149279
(87)【国際公開日】20190808
(31)【優先権主張番号】201810107786.5
(32)【優先日】2018年2月2日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201810129611.4
(32)【優先日】2018年2月8日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201910008444.2
(32)【優先日】2019年1月4日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】518023832
【氏名又は名称】カースゲン セラピューティクス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CARSGEN THERAPEUTICS CO., LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】504200870
【氏名又は名称】上海市腫瘤研究所
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI CANCER INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100120293
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 智子
(72)【発明者】
【氏名】李宗海
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼秀奇
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZB27
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB43
4C087BB44
4C087MA02
4C087MA52
4C087NA05
4C087ZB26
4C087ZB27
(57)【要約】
本発明は、腫瘍抗原を認識する受容体を発現する免疫エフェクター細胞と、式Iで表される化合物またはその薬学上許容される塩である第2の治療剤とを、腫瘍に罹患している個体に投与する、腫瘍を治療する方法を提供する。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腫瘍に罹患している個体に免疫エフェクター細胞と第2の治療剤とを投与することを特徴とする、腫瘍を治療する方法であって、前記免疫エフェクター細胞は、腫瘍抗原を認識する受容体を発現し、
前記第2の治療剤は、式Iで表される化合物、またはその薬学上許容される塩を含む、方法。
【化1】
[式中、Ar’は非置換または置換フェニル基であり、置換基はハロゲンおよびC1−10アルキル基から選択され、
Mは、−O−またはーS−から選択される1つ以上の架橋基であり、
Py(X)はXで置換されたピリジル基であり、XはーC(O)Rxであり、その中で、RxはNRabであり、RaとRbはそれぞれ、
a)水素、
b)C1−10アルキル基、
c)ヒドロキシで置換されたC1−10アルキル基、
d)1〜3個のN、SまたはOのヘテロ原子を含むC3−12シクロアルキル基、または
e)−OSi(Rf)3(式中、RfはC1−10アルキル基である)
であり、
Ar”は非置換または置換フェニル基であり、置換基はハロゲンまたはWnから選択され、n=0〜3であり、Wは、
a)C1−10アルキル基、
b)C1−10アルコキシ基、
c)C1−10ハロアルキル基、
d)1〜3個のN、SまたはOのヘテロ原子を含むかつC1−10アルキル基で置換されてもよいC3−12ヘテロアリール基
から選択される。]
【請求項2】
腫瘍に罹患している個体に免疫エフェクター細胞と第2の治療剤とを投与することを特徴とする、癌細胞の成長、生存または活力を低下させる方法であって、前記免疫エフェクター細胞は、腫瘍抗原を認識する受容体を発現し、
前記第2の治療剤は、式Iで表される化合物、またはその薬学上許容される塩である、方法。
【化2】
[式中、Ar’は非置換または置換フェニル基であり、置換基はハロゲンおよびC1−10アルキル基から選択され、
Mは、−O−またはーS−から選択される1つ以上の架橋基であり、
Py(X)はXで置換されたピリジル基であり、XはーC(O)Rxであり、その中で、RxはNRabであり、RaとRbはそれぞれ、
a)水素、
b)C1−10アルキル基、
c)ヒドロキシで置換されたC1−10アルキル基、
d)1〜3個のN、SまたはOのヘテロ原子を含むC3−12シクロアルキル基、および
e)−OSi(Rf)3(式中、RfはC1−10アルキル基である)
であり、
Ar”は非置換または置換フェニル基であり、置換基はハロゲンまたはWnから選択され、n=0〜3であり、Wは、
a)C1−10アルキル基、
b)C1−10アルコキシ基、
c)C1−10ハロアルキル基、および
d)1〜3個のN、SまたはOのヘテロ原子を含むかつC1−10アルキル基で置換されてもよいC3−12ヘテロアリール基
から選択される。]
【請求項3】
腫瘍に罹患している個体に免疫エフェクター細胞を投与する前に、前記個体に対してリンパ球を除去しないことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記免疫エフェクター細胞と第2の治療剤の治療効果は、前記免疫エフェクター細胞と第2の治療剤のいずれか1つを単独で使用する効果より大きいことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記Ar”は置換フェニル基であり、置換基は、塩素、臭素、フッ素、トリフルオロメチル、メトキシ、及びtert−ブチルからなる群より選択されるいずれか1つまたはそれらの組み合わせであることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記MはーO−であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記RaとRbはそれぞれHまたはC1−10アルキルであり、好ましくは、RaとRbはそれぞれHとメチル基であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記薬学上許容される塩は、a)無機酸および有機酸の塩基性塩と、b)有機および無機塩基の酸性塩とから選択され、前記酸は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、シュウ酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、安息香酸、サリチル酸、フェニル酢酸およびマンデル酸からなる群より選択され、前記有機および無機塩基のカチオンは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、アンモニウムカチオン、脂肪族基置換アンモニウムカチオン、及び芳香族基置換アンモニウムカチオンからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の治療剤は、下記の
N−(2−メトキシ−(5−トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−(2−カルバモイル−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−(5−トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−(2−(N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−(5−トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(4−(2−カルバモイル−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−(5−トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(4−(2−(N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−(5−トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(4−(2−(N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルチオ)フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−(5−トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(2−クロロ−4−(2−(N−メチルカルバモイル)(4−ピリジルオキシ))フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−(5−トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−クロロ−4−(2−(N−メチルカルバモイル)(4−ピリジルオキシ))フェニル)尿素、
N−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−(2−カルバモイルー4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−(2−(N−メチルカルバモイル)ー4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(4−(2−カルバモイルー4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(4−(2−(N−メチルカルバモイル)ー4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−2−フルオロ−(4−(2−(N−メチルカルバモイル)ー4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(4−ブロモ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−(2−(N−メチルカルバモイル)ー4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(4−ブロモ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(4−(2−(N−メチルカルバモイル)ー4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(4−ブロモ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−(2−(N−メチルカルバモイル)ー4−ピリジルチオ)フェニル)尿素、
N−(4−ブロモ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(2−クロロ−4−(2−(N−メチルカルバモイル)(4−ピリジルオキシ))フェニル)尿素、
N−(4−ブロモ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−クロロ−4−(2−(N−メチルカルバモイル)(4−ピリジルオキシ))フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−4−クロロ−5−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−(2−(N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−4−クロロ−5−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(4−(2−(N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−4−クロロ−5−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(2−クロロ−4−(2−(N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−4−クロロ−5−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−クロロ−4−(2−(N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素
のいずれか1つで示される化合物またはその薬学上許容される塩から選択されるものであることを特徴とする、請求項1〜8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の治療剤は、下記式IIまたは式IIIで表される化合物、またはその薬学上許容される塩から選択されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【化3】
【化4】
【請求項11】
前記薬学上許容される塩は、トルエンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、塩酸塩、メタンスルホン酸塩からなる群より選択されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の治療剤は、式IIIで表される化合物または式IIIで表される化合物の水和物であり、好ましくは一水和物であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の治療剤を、1日あたり100〜1000mg投与し、好ましくは、1日あたり200〜800mg投与し、より好ましくは、1日あたり400〜800mgを投与し、
好ましくは、前記第2の治療剤を1日あたり1〜3回投与し、
より好ましくは、第2の治療剤を1日あたり2回投与し、
さらに好ましくは、薬剤を中止する必要がある、または薬剤を中止することができると医師が評価するまで、例えば、完全に改善された後に薬剤を中止する、または疾患の進行によって薬剤を中止すると医師が評価するまで、前記第2の治療剤を継続的に投与することを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記免疫エフェクター細胞の1回当たりの投与量は約1×105〜1×108細胞/kg被験者の体重であり、
好ましくは、1回あたりの投与量は約1×105〜1×107細胞/kg被験者の体重であることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
免疫エフェクター細胞と第2の治療剤の投与順序は決まっていなく、
好ましくは、前記第2の治療剤の投与中に前記免疫エフェクター細胞を投与することを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の治療剤は経口投与されることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記受容体は、キメラ抗原受容体(Chimeric Antigen Receptor、CAR)、T細胞受容体(T cell receptor、TCR)、T細胞融合タンパク質(T cell fusion protein、TFP)、T細胞抗原カプラー(T cell antigen coupler、TAC)またはそれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記キメラ抗原受容体は、
(i)腫瘍抗原を特異的に認識する抗体またはそのフラグメント、CD28またはCD8の膜貫通領域、CD28の共刺激シグナルドメインおよびCD3ζの細胞内ドメイン;または
(ii)腫瘍抗原を特異的に認識する抗体またはそのフラグメント、CD28またはCD8の膜貫通領域、CD137の共刺激シグナルドメインおよびCD3ζの細胞内ドメイン;または
(iii)腫瘍抗原を特異的に認識する抗体またはそのフラグメント、CD28またはCD8の膜貫通領域、CD28の共刺激シグナルドメイン、CD137の共刺激シグナルドメインおよびCD3ζの細胞内ドメイン
を有することを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記腫瘍抗原は、
甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR);CD171;CS−1;Cタイプレクチン様分子−1;ガングリオシドGD3;Tn抗原;CD19;CD20;CD22;CD30;CD70;CD123;CD138;CD33;CD44;CD44v7/8;CD38;CD44v6;B7H3(CD276)、B7H6;KIT(CD117);インターロイキン13受容体サブユニットα(IL−13Rα);インターロイキン11受容体サブユニットα(IL−11Rα);前立腺幹細胞抗原(PSCA);前立腺特異膜抗原(PSMA);癌胎児性抗原(CEA);NY−ESO−1;HIV−1 Gag;MART−1;gp100;チロシナーゼ;メソセリン;EpCAM;プロテアーゼセリン21(PRSS21);血管内皮増殖因子受容体;ルイス(Y)抗原;CD24;血小板由来成長因子受容体β(PDGFR−β);ステージ特異的胎児抗原−4(SSEA−4);細胞表面関連ムチン1(MUC1)、MUC6;上皮成長因子受容体ファミリーおよびその変異体(EGFR、EGFR2、ERBB3、ERBB4、EGFRvIII);神経細胞接着分子(NCAM);炭酸脱水酵素IX(CAIX);LMP2;エフリンA受容体2(EphA2);フコシルGM1;シアリルルイス接着分子(sLe);ガングリオシドGM3(aNeu5Ac(2−3)bDGalp(1−4)bDGlcp(1−1)Cer;TGS5;高分子量黒色腫関連抗原(HMWMAA);O−アセチルGD2ガングリオシド(OAcGD2);葉酸受容体;腫瘍血管内皮マーカー1(TEM1/CD248);腫瘍血管内皮マーカー7関連(TEM7R);Claudin6、Claudin18.2、Claudin18.1;ASGPR1;CDH16;5T4;8H9;αvβ6インテグリン;B細胞成熟抗原(BCMA);CA9;κ軽鎖(kappa light chain);CSPG4;EGP2;EGP40;FAP;FAR;FBP;胚性AchR;HLA−A1、HLA−A2;MAGEA1、MAGE3;KDR;MCSP;NKG2Dリガンド;PSC1;ROR1;Sp17;SURVIVIN;TAG72;TEM1;フィブロネクチン;テネイシン;腫瘍壊死ゾーンの癌胎児性変異体;Gタンパク質共役受容体Cグループ5−メンバーD(GPRC5D);X染色体オープンリーディングフレーム61(CXORF61);CD97;CD179a;未分化リンパ腫キナーゼ(ALK);ポリシアル酸;胎盤特異的1(PLAC1);globoH glycoceramideのヘキソース部分(GloboH);乳腺分化抗原(NY−BR−1);urоplakin2(UPK2);A型肝炎ウイルス細胞受容体1(HAVCR1);アドレナリン受容体β3(ADRB3);pannexin3(PANX3);Gタンパク質共役受容体20(GPR20);リンパ球抗原6複合遺伝子座K9(LY6K);臭覚受容体51E2(OR51E2);TCRγ代替リーディングフレームタンパク質(TARP);ウィルムス腫瘍タンパク質(WT1);ETS転座バリアント遺伝子6(ETV6−AML);精子タンパク質17(SPA17);X抗原ファミリーメンバー1A(XAGE1);アンジオゲニン結合細胞表面受容体2(Tie2);黒色腫癌精巣抗原−1(MAD−CT−1);黒色腫癌精巣抗原−2(MAD−CT−2);Fos関連抗原1;p53変異体;ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT);肉腫転座ブレークポイント;アポトーシスのメラノーマ阻害剤(ML−IAP);ERG(膜貫通プロテアーゼセリン2(TMPRSS2)ETS融合遺伝子);N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV(NA17);ペアリングボックスタンパク質Pax−3(PAX3);アンドロゲン受容体;サイクリンB1;V−myc鳥類骨髄症ウイルス癌遺伝子神経芽細胞腫由来ホモログ(MYCN);RasホモログファミリーメンバーC(RhoC);チトクロームP450 1B1(CYP1B1);CCCTC結合因子(ジンクフィンガータンパク質)様(BORIS);T細胞によって認識される扁平上皮癌抗原3(SART3);ペアリングボックスタンパク質Pax−5(PAX5);proacrosin結合タンパク質sp32(OYTES1);リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ(LCK);Aキナーゼアンカータンパク質4(AKAP−4);滑膜肉腫、Xブレークポイント2(SSX2);CD79a;CD79b;CD72;白血球関連免疫グロブリン様受容体1(LAIR1);IgA受容体のFcフラグメント(FCAR);白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーメンバー2(LILRA2);CD300分子様ファミリーメンバーf(CD300LF);C型レクチンドメインファミリー12メンバーA(CLEC12A);骨髄間質細胞抗原2(BST2);EGF様モジュール含有ムチン様ホルモン受容体様2(EMR2);リンパ球抗原75(LY75);グリピカン−3(GPC3);Fc受容体様5(FCRL5);免疫グロブリンλ様ポリペプチド1(IGLL1)
からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記腫瘍抗原は固形腫瘍抗原であり、好ましくは、前記固形腫瘍抗原は血管内皮増殖因子受容体、EGFR、EGFRvIII、GPC3、またはClaudin18.2であり、より好ましくは、前記固形腫瘍抗原はGPC3、EGFR、EGFRvIII、または血管内皮増殖因子受容体であることを特徴とする、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記腫瘍抗原を特異的に認識する抗体は、SEQ ID NO:15、16、17に示されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、及びSEQ ID NO:18、19、20に示されるLCDR1、LCDR2、LCDR3を含むことを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記腫瘍抗原を特異的に認識する抗体のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:14に示される配列と少なくとも90%の同一性を有することを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記腫瘍抗原を特異的に認識する抗体のキメラ抗原受容体のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:21、22、23または24に示される配列と少なくとも90%の同一性を有することを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記キメラ抗原受容体は、
腫瘍抗原を特異的に認識する抗体またはそのフラグメント、膜貫通ドメインおよび細胞質シグナル伝達ドメインを有し、
前記腫瘍抗原を特異的に認識する抗体またはそのフラグメントは、SEQ ID NO:15、16、17に示されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、及びSEQ ID NO:18、19、20に示されるLCDR1、LCDR2、LCDR3を含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記キメラ抗原受容体は、
(i)腫瘍抗原を特異的に認識する抗体またはそのフラグメント、CD28またはCD8の膜貫通領域、CD28の共刺激シグナルドメインおよびCD3ζの細胞内ドメイン;または
(ii)腫瘍抗原を特異的に認識するフラグメント、CD28またはCD8の膜貫通領域、CD137の共刺激シグナルドメインおよびCD3ζの細胞内ドメイン;または
(iii)腫瘍抗原を特異的に認識するフラグメント、CD28またはCD8の膜貫通領域、CD28の共刺激シグナルドメイン、CD137の共刺激シグナルドメインおよびCD3ζの細胞内ドメインを有し、
前記腫瘍抗原を特異的に認識する抗体またはそのフラグメントは、SEQ ID NO:15、16、17に示されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、及びSEQ ID NO:18、19、20に示されるLCDR1、LCDR2、LCDR3を含むことを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第2の治療剤は式IIで表される化合物、またはその薬学上許容される塩であり、
【化5】
前記第2の治療剤の1回当たりの投与量として、1日あたり100〜1000mg投与し、好ましくは、1日あたり200〜800mg投与し、より好ましくは、1日あたり400〜800mgを投与し、
好ましくは、前記第2の治療剤を1日あたり1〜3回投与し、より好ましくは、1日あたり2回投与し、
さらに好ましくは、薬剤を中止する必要がある、または薬剤を中止することができると医師が評価するまで、例えば、完全に改善された後に薬剤を中止する、または疾患の進行によって薬剤を中止すると医師が評価するまで、前記第2の治療剤を継続的に投与することを特徴とする、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記腫瘍は、乳癌、神経膠腫、血液癌、結腸癌、直腸癌、腎細胞癌、肝臓癌、肺癌、小腸癌、食道癌、黒色腫、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚または眼の悪性黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部肉腫、尿道癌、陰茎癌、小児固形腫瘍、膀胱癌、腎癌または尿管癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)腫瘍 、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫、環境誘発性癌、前記癌の組み合わせおよび前記癌の転移巣の組み合わせを含み、
好ましくは、前記腫瘍は、肝臓癌、腎細胞癌、肺扁平上皮癌、及び甲状腺癌から選択されることを特徴とする、請求項1〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記免疫エフェクター細胞は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)、マスト細胞または骨髄由来の食細胞またはそれらの組み合わせから選択され、
好ましくは、前記免疫エフェクター細胞はT細胞またはNK細胞から選択され、
より好ましくは、前記免疫エフェクター細胞は自己免疫エフェクター細胞であることを特徴とする、請求項1〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
薬物の調製における、腫瘍抗原を認識する受容体を発現する免疫エフェクター細胞の使用であって、腫瘍の治療のために前記薬物はソラフェニブと組み合わされ、前記薬物とソラフェニブをそれぞれ単独で使用する場合よリ優れた効果を提供できるように前記薬物とソラフェニブを配合することを特徴とする、使用。
【請求項30】
腫瘍を治療するためのキットであって、前記キットは、
1)腫瘍抗原を認識する受容体を発現する免疫エフェクター細胞;
2)ソラフェニブ;
3)上記1)と2)に記載の物質を含むための容器;および
4)前記キットを使用して腫瘍を治療するための投与プロトコルを含み、
前記免疫エフェクター細胞とソラフェニブをそれぞれ単独で使用する場合よリ優れた効果を提供できるように前記免疫エフェクター細胞とソラフェニブを配合し、
好ましくは、前記免疫エフェクター細胞はCAR T細胞であり、
より好ましくは、前記CAR T細胞は、EGFR、EGFRvIII、グリピカン3、claudin18.2、BCMAのいずれか1つ以上を特異的に認識することを特徴とする、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞免疫療法の分野に属し、特に、抗腫瘍療法のための免疫エフェクター細胞とキナーゼ阻害剤系化学療法剤との組み合わせの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年来、CAR−T細胞療法などの細胞免疫療法は、血腫の治療において驚くべき治療効果を示している。現在、200を超えたCAR−T細胞が血腫治療の臨床試験で使用されている(Clinical development of CAR T cells−challenges and opportunities in translating innovative treatment concepts, Jessica Hartmann et al., EMBO Molecule Medicine, Published on line, August 1, 2017)。しかしながら、固形腫瘍の治療では、血腫治療の効果を達成するのが難しい。
【0003】
これは、血腫の場合、CAR−T細胞は静脈内注射を通してより容易に腫瘍細胞と接触して殺傷を実現できるが、CAR−T細胞は固形腫瘍の腫瘍組織にホーミングするほうがより困難である。さらに、固形腫瘍は通常、腫瘍細胞、良性細胞、間質細胞、血管細胞などを相互作用させることができる複雑で動的な腫瘍微小環境を持っている。また、腫瘍微小環境には、サイトカインと成長因子の相互作用のネットワークも存在するため、CAR−T療法は固形腫瘍の治療に使用した場合、通常は治療効果が低かった。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、固形腫瘍における免疫細胞療法、特にCAR−T細胞療法の使用効果を高めるための腫瘍治療方法を提供することを目的としている。
本発明の第一態様では、腫瘍抗原を認識する受容体を発現する免疫エフェクター細胞と、キナーゼ阻害剤である第2の治療剤とを、腫瘍に罹患している個体に投与する、腫瘍を治療する方法が提供されている。
【0005】
具体的な実施形態では、前記第2の治療剤は、式Iで表される化合物、またはその薬学上許容される塩であり、
【0006】
【化1】
【0007】
式中、Ar’は非置換または置換フェニル基であり、置換基はハロゲンおよびC1−10アルキル基から選択され、
Mは、−O−またはーS−から選択される1つ以上の架橋基であり、
Py(X)はXで置換されたピリジル基であり、XはーC(O)Rxであり、その中で、RxはNRabであり、RaとRbはそれぞれ、
a)水素、
b)C1−10アルキル基、
c)ヒドロキシで置換されたC1−10アルキル基、
d)1〜3個のN、SまたはOのヘテロ原子を含むC3−12シクロアルキル基、または
e)−OSi(Rf)3[式中、RfはC1−10アルキル基である]、
であり、
Ar”は非置換または置換フェニル基であり、置換基はハロゲンまたはWnから選択され、n=0〜3であり、Wは、
a)C1−10アルキル基、
b)C1−10アルコキシ基、
c)C1−10ハロアルキル基、
d)1〜3個のN、SまたはOのヘテロ原子を含む、C1−10アルキル基で置換されてもよいC3−12ヘテロアリール基
から選択される。
【0008】
本発明の第二態様では、腫瘍に罹患している個体に免疫エフェクター細胞と第2の治療剤とを投与することを特徴とする、癌細胞の成長、生存または活力を低下させる方法が提供され、前記免疫エフェクター細胞は、腫瘍抗原を認識する受容体を発現し、
前記第2の治療剤は、式Iで表される化合物、またはその薬学上許容される塩であり、
【0009】
【化2】
【0010】
式中、Ar’は非置換または置換フェニル基であり、置換基はハロゲンおよびC1−10アルキル基から選択され、
Mは、−O−またはーS−から選択される1つ以上の架橋基であり、
Py(X)はXで置換されたピリジル基であり、XはーC(O)Rxであり、その中で、RxはNRabであり、RaとRbはそれぞれ、
a)水素、
b)C1−10アルキル基、
c)ヒドロキシで置換されたC1−10アルキル基、
d)1〜3個のN、SまたはOのヘテロ原子を含むC3−12シクロアルキル基、または
e)−OSi(Rf)3[式中、RfはC1−10アルキル基である]、
であり、
Ar”は非置換または置換フェニル基であり、置換基はハロゲンまたはWnから選択され、n=0〜3であり、Wは、
a)C1−10アルキル基、
b)C1−10アルコキシ基、
c)C1−10ハロアルキル基、
d)1〜3個のN、SまたはOのヘテロ原子を含む、C1−10アルキル基で置換されてもよいC3−12ヘテロアリール基
から選択される。
【0011】
一つの好ましい形態では、上記腫瘍を治療する方法、または癌細胞の成長、生存または活力を低下させる方法を使用する場合、腫瘍に罹患している個体に免疫エフェクター細胞を投与する前に、前記個体に対してリンパ球を除去しない。
【0012】
一つの好ましい形態では、上記腫瘍を治療する方法、または癌細胞の成長、生存または活力を低下させる方法を使用する場合、前記免疫エフェクター細胞と第2の治療剤の治療効果は、前記免疫エフェクター細胞と第2の治療剤のいずれか1つを単独で使用する効果より大きい。
【0013】
もう一つの好ましい形態では、前記Ar”は置換フェニル基であり、置換基は、塩素、臭素、フッ素、トリフルオロメチル、メトキシ、及びtert−ブチルからなる群より選択されるいずれか1つまたはそれらの組み合わせである。
【0014】
もう一つの好ましい形態では、前記MはーO−である。
もう一つの好ましい形態では、前記RaとRbはそれぞれHまたはC1−10アルキルであり、好ましくは、RaとRbはそれぞれHとメチル基である。
【0015】
もう一つの好ましい形態では、前記薬学上許容される塩は、a)無機酸および有機酸の塩基性塩と、b)有機および無機塩基の酸性塩とから選択され、前記酸は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、シュウ酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、安息香酸、サリチル酸、フェニル酢酸およびマンデル酸からなる群より選択され、前記カチオンは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、アンモニウムカチオン、脂肪族基置換アンモニウムカチオン、及び芳香族基置換アンモニウムカチオンからなる群より選択される。
【0016】
具体的な実施形態では、前記第2の治療剤は、下記の
N−(2−メトキシ−(5−トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−(2−カルバモイル−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−(5−トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−(2−(N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−(5−トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(4−(2−カルバモイル−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−(5−トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(4−(2−(N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−(5−トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(4−(2−(N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルチオ)フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−(5−トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(2−クロロ−4−(2−(N−メチルカルバモイル)(4−ピリジルオキシ))フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−(5−トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−クロロ−4−(2−(N−メチルカルバモイル)(4−ピリジルオキシ))フェニル)尿素、
N−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−(2−カルバモイルー4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−(2−(N−メチルカルバモイル)ー4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(4−(2−カルバモイルー4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(4−(2−(N−メチルカルバモイル)ー4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−2−フルオロ−(4−(2−(N−メチルカルバモイル)ー4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(4−ブロモ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−(2−(N−メチルカルバモイル)ー4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(4−ブロモ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(4−(2−(N−メチルカルバモイル)ー4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(4−ブロモ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−(2−(N−メチルカルバモイル)ー4−ピリジルチオ)フェニル)尿素、
N−(4−ブロモ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(2−クロロ−4−(2−(N−メチルカルバモイル)(4−ピリジルオキシ))フェニル)尿素、
N−(4−ブロモ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−クロロ−4−(2−(N−メチルカルバモイル)(4−ピリジルオキシ))フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−4−クロロ−5−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−(2−(N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−4−クロロ−5−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(4−(2−(N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−4−クロロ−5−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(2−クロロ−4−(2−(N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−4−クロロ−5−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−クロロ−4−(2−(N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素
のいずれか1つで示される化合物またはその薬学上許容される塩から選択されるものである。
【0017】
具体的な実施形態では、前記第2の治療剤は、下記式IIまたは式IIIで表される化合物、またはその薬学上許容される塩から選択される。
【0018】
【化3】
【0019】
【化4】
【0020】
具体的な実施形態では、前記第2の治療剤の薬学上許容される塩は、トルエンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、塩酸塩、メタンスルホン酸塩からなる群より選択される。
具体的な実施形態では、前記第2の治療剤は、式IIで表される化合物または式IIで表される化合物の水和物であり、好ましくは一水和物である。
【0021】
もう一つの好ましい形態では、被験者個体に対して、第2の治療剤を、1日あたり100〜1000mg投与し、好ましくは、1日あたり200〜800mg投与し、より好ましくは、1日あたり400〜800mgを投与する。
【0022】
もう一つの好ましい形態では、被験者個体に対して、前記第2の治療剤を1日あたり1〜3回投与し、好ましくは、第2の治療剤を1日あたり2回投与する。
もう一つの好ましい形態では、被験者個体に対して、前記免疫エフェクター細胞の1回当たりの投与量は約1×105〜1×108細胞/kg被験者の体重であり、より好ましくは、1回あたりの投与量は約1×105〜1×107細胞/kg被験者の体重である。
【0023】
もう一つの好ましい形態では、免疫エフェクター細胞と第2の治療剤の投与順序は決まっていなく、第2の治療剤を投与してから免疫エフェクター細胞を投与してもよく、両方を同時に投与してもよく、また、免疫エフェクター細胞を投与してから第2の治療剤を投与してもよく、好ましくは、前記第2の治療剤の投与中に前記免疫エフェクター細胞を投与する。
【0024】
具体的な実施形態では、前記第2の治療剤は経口投与される。
もう一つの好ましい形態では、前記受容体は、キメラ抗原受容体(Chimeric Antigen Receptor、CAR)、T細胞受容体(T cell receptor、TCR)、T細胞融合タンパク質(T cell fusion protein、TFP)、T細胞抗原カプラー(T cell antigen coupler、TAC)またはそれらの組み合わせから選択される。
【0025】
具体的な実施形態では、前記キメラ抗原受容体は、
(i)腫瘍抗原を特異的に認識する抗体またはそのフラグメント、CD28またはCD8の膜貫通領域、CD28の共刺激シグナルドメインおよびCD3ζの細胞内ドメイン;または
(ii)腫瘍抗原を特異的に認識する抗体またはそのフラグメント、CD28またはCD8の膜貫通領域、CD137の共刺激シグナルドメインおよびCD3ζの細胞内ドメイン;または
(iii)腫瘍抗原を特異的に認識する抗体またはそのフラグメント、CD28またはCD8の膜貫通領域、CD28の共刺激シグナルドメイン、CD137の共刺激シグナルドメインおよびCD3ζの細胞内ドメインを含む。
【0026】
具体的な実施形態では、前記腫瘍抗原は、甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR);CD171;CS−1;Cタイプレクチン様分子−1;ガングリオシドGD3;Tn抗原;CD19;CD20;CD22;CD30;CD70;CD123;CD138;CD33;CD44;CD44v7/8;CD38;CD44v6;B7H3(CD276)、B7H6;KIT(CD117);インターロイキン13受容体サブユニットα(IL−13Rα);インターロイキン11受容体サブユニットα(IL−11Rα);前立腺幹細胞抗原(PSCA);前立腺特異膜抗原(PSMA);癌胎児性抗原(CEA);NY−ESO−1;HIV−1 Gag;MART−1;gp100;チロシナーゼ;メソセリン;EpCAM;プロテアーゼセリン21(PRSS21);血管内皮増殖因子受容体;ルイス(Y)抗原;CD24;血小板由来成長因子受容体β(PDGFR−β);ステージ特異的胎児抗原−4(SSEA−4);細胞表面関連ムチン1(MUC1)、MUC6;上皮成長因子受容体ファミリーおよびその変異体(EGFR、EGFR2、ERBB3、ERBB4、EGFRvIII);神経細胞接着分子(NCAM);炭酸脱水酵素IX(CAIX);LMP2;エフリンA受容体2(EphA2);フコシルGM1;シアリルルイス接着分子(sLe);ガングリオシドGM3(aNeu5Ac(2−3)bDGalp(1−4)bDGlcp(1−1)Cer;TGS5;高分子量黒色腫関連抗原(HMWMAA);O−アセチルGD2ガングリオシド(OAcGD2);葉酸受容体;腫瘍血管内皮マーカー1(TEM1/CD248);腫瘍血管内皮マーカー7関連(TEM7R);Claudin6、Claudin18.2、Claudin18.1;ASGPR1;CDH16;5T4;8H9;αvβ6インテグリン;B細胞成熟抗原(BCMA);CA9;κ軽鎖(kappa light chain);CSPG4;EGP2;EGP40;FAP;FAR;FBP;胚性AchR;HLA−A1、HLA−A2;MAGEA1、MAGE3;KDR;MCSP;NKG2Dリガンド;PSC1;ROR1;Sp17;SURVIVIN;TAG72;TEM1;フィブロネクチン;テネイシン;腫瘍壊死ゾーンの癌胎児性変異体;Gタンパク質共役受容体Cグループ5−メンバーD(GPRC5D);X染色体オープンリーディングフレーム61(CXORF61);CD97;CD179a;未分化リンパ腫キナーゼ(ALK);ポリシアル酸;胎盤特異的1(PLAC1);globoH glycoceramideのヘキソース部分(GloboH);乳腺分化抗原(NY−BR−1);urоplakin2(UPK2);A型肝炎ウイルス細胞受容体1(HAVCR1);アドレナリン受容体β3(ADRB3);pannexin3(PANX3);Gタンパク質共役受容体20(GPR20);リンパ球抗原6複合遺伝子座K9(LY6K);臭覚受容体51E2(OR51E2);TCRγ代替リーディングフレームタンパク質(TARP);ウィルムス腫瘍タンパク質(WT1);ETS転座バリアント遺伝子6(ETV6−AML);精子タンパク質17(SPA17);X抗原ファミリーメンバー1A(XAGE1);アンジオゲニン結合細胞表面受容体2(Tie2);黒色腫癌精巣抗原−1(MAD−CT−1);黒色腫癌精巣抗原−2(MAD−CT−2);Fos関連抗原1;p53変異体;ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT);肉腫転座ブレークポイント;アポトーシスのメラノーマ阻害剤(ML−IAP);ERG(膜貫通プロテアーゼセリン2(TMPRSS2)ETS融合遺伝子);N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV(NA17);ペアリングボックスタンパク質Pax−3(PAX3);アンドロゲン受容体;サイクリンB1;V−myc鳥類骨髄症ウイルス癌遺伝子神経芽細胞腫由来ホモログ(MYCN);RasホモログファミリーメンバーC(RhoC);チトクロームP450 1B1(CYP1B1);CCCTC結合因子(ジンクフィンガータンパク質)様(BORIS);T細胞によって認識される扁平上皮癌抗原3(SART3);ペアリングボックスタンパク質Pax−5(PAX5);proacrosin結合タンパク質sp32(OYTES1);リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ(LCK);Aキナーゼアンカータンパク質4(AKAP−4);滑膜肉腫、Xブレークポイント2(SSX2);CD79a;CD79b;CD72;白血球関連免疫グロブリン様受容体1(LAIR1);IgA受容体のFcフラグメント(FCAR);白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーメンバー2(LILRA2);CD300分子様ファミリーメンバーf(CD300LF);C型レクチンドメインファミリー12メンバーA(CLEC12A);骨髄間質細胞抗原2(BST2);EGF様モジュール含有ムチン様ホルモン受容体様2(EMR2);リンパ球抗原75(LY75);グリピカン−3(GPC3);Fc受容体様5(FCRL5);免疫グロブリンλ様ポリペプチド1(IGLL1)からなる群より選択される。
【0027】
具体的な実施形態では、前記腫瘍抗原は固形腫瘍抗原である。好ましくは、前記固形腫瘍抗原は血管内皮増殖因子受容体、EGFR、EGFRvIII、GPC3、またはClaudin18.2である。より好ましくは、前記固形腫瘍抗原はGPC3、EGFR、EGFRvIII、または血管内皮増殖因子受容体である。
【0028】
具体的な実施形態では、前記血管内皮増殖因子受容体は血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)である。
具体的な実施形態では、前記固形腫瘍抗原はGPC3である。
【0029】
具体的な実施形態では、前記腫瘍抗原を特異的に認識する抗体は、グリピカン3(GPC3)を標的とする抗体である。
一つの好ましい形態では、腫瘍抗原を特異的に認識する抗体は、SEQ ID NO:17、18、19に示されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、及びSEQ ID NO:20、21、22に示されるLCDR1、LCDR2、LCDR3を含む。
【0030】
具体的な実施形態では、腫瘍抗原を特異的に認識する抗体のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:14に示される配列と少なくとも90%の同一性を有する。
具体的な実施形態では、前記キメラ抗原受容体のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:21、22、23または24に示される配列と少なくとも90%の同一性を有する。
【0031】
一つの好ましい形態では、前記治療は、次の臨床結果、すなわち、免疫エフェクター細胞の抗腫瘍活性の増加、増強または延長;治療前の数と比較して、抗腫瘍免疫エフェクター細胞または活性化免疫エフェクター細胞の数の増加、またはそれらの組み合わせにより決められる。
【0032】
具体的な実施形態では、前記臨床結果は、腫瘍の退縮;腫瘍の縮小;腫瘍の壊死;免疫系を介した抗腫瘍反応;腫瘍の拡大、再発または拡散、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0033】
具体的な実施形態では、治療効果は、免疫エフェクター細胞の存在、またはT細胞炎症を示す遺伝子マーカーの存在、またはそれらの組み合わせによって予測され、好ましくは、IFN−γ、TNFαレベルの変化を検出することによって予測される。
【0034】
具体的な実施形態では、前記腫瘍は、血液癌、乳癌、神経膠腫、結腸癌、直腸癌、腎細胞癌、肝臓癌、肺癌、小腸癌、食道癌、黒色腫、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚または眼の悪性黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部肉腫、尿道癌、陰茎癌、小児固形腫瘍、膀胱癌、腎癌または尿管癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)腫瘍 、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫、環境誘発性癌、前記癌の組み合わせおよび前記癌の転移巣の組み合わせを含む。好ましくは、肝臓癌、腎細胞癌、肺扁平上皮癌、及び甲状腺癌から選択される。
【0035】
具体的な実施形態では、前記免疫エフェクター細胞は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)、マスト細胞または骨髄由来の食細胞またはそれらの組み合わせから選択され、好ましくは、前記免疫エフェクター細胞は、自己T細胞、同種T細胞または同種NK細胞から選択され、より好ましくは、前記T細胞は自己T細胞である。
【0036】
本発明の第三態様では、本発明は、腫瘍抗原を認識する受容体を発現する免疫エフェクター細胞と、第2の治療剤とを含む、薬剤投与系を提供している。
前記第2の治療剤は、式Iで表される化合物、またはその薬学上許容される塩であり、
【0037】
【化5】
【0038】
式中、Ar’は非置換または置換フェニル基であり、置換基はハロゲンおよびC1−10アルキル基から選択され、
Mは、−O−またはーS−から選択される1つ以上の架橋基であり、
Py(X)はXで置換されたピリジル基であり、XはーC(O)Rxであり、その中で、RxはNRabであり、RaとRbはそれぞれ、
a)水素、
b)C1−10アルキル基、
c)ヒドロキシで置換されたC1−10アルキル基、
d)1〜3個のN、SまたはOのヘテロ原子を含むC3−12シクロアルキル基、または
e)−OSi(Rf)3[式中、RfはC1−10アルキル基である]、
であり、
Ar”は非置換または置換フェニル基であり、置換基はハロゲンまたはWnから選択され、n=0〜3であり、Wは、
a)C1−10アルキル基、
b)C1−10アルコキシ基、
c)C1−10ハロアルキル基、
d)1〜3個のN、SまたはOのヘテロ原子を含む、C1−10アルキル基で置換されてもよいC3−12ヘテロアリール基
から選択される。
【0039】
一つの好ましい形態では、前記Ar”は置換フェニル基であり、置換基は、塩素、臭素、フッ素、トリフルオロメチル、メトキシ、及びtert−ブチルからなる群より選択されるいずれか1つまたはそれらの組み合わせである。
【0040】
もう一つの好ましい形態では、前記MはーO−である。
もう一つの好ましい形態では、前記RaとRbはそれぞれHまたはC1−10アルキルであり、好ましくは、RaとRbはそれぞれHとメチル基である。
【0041】
もう一つの好ましい形態では、前記薬学上許容される塩は、a)無機酸および有機酸の塩基性塩と、b)有機および無機塩基の酸性塩とから選択され、前記酸は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、シュウ酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、安息香酸、サリチル酸、フェニル酢酸およびマンデル酸からなる群より選択され、前記カチオンは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、アンモニウムカチオン、脂肪族基置換アンモニウムカチオン、及び芳香族基置換アンモニウムカチオンからなる群より選択される。
【0042】
具体的な実施形態では、前記第2の治療剤は、下記の
N−(2−メトキシ−(5−トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−(2−カルバモイル−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−(5−トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−(2−(N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−(5−トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(4−(2−カルバモイル−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−(5−トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(4−(2−(N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−(5−トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(4−(2−(N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルチオ)フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−(5−トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(2−クロロ−4−(2−(N−メチルカルバモイル)(4−ピリジルオキシ))フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−(5−トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−クロロ−4−(2−(N−メチルカルバモイル)(4−ピリジルオキシ))フェニル)尿素、
N−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−(2−カルバモイルー4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−(2−(N−メチルカルバモイル)ー4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(4−(2−カルバモイルー4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(4−(2−(N−メチルカルバモイル)ー4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−2−フルオロ−(4−(2−(N−メチルカルバモイル)ー4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(4−ブロモ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−(2−(N−メチルカルバモイル)ー4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(4−ブロモ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(4−(2−(N−メチルカルバモイル)ー4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(4−ブロモ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−(2−(N−メチルカルバモイル)ー4−ピリジルチオ)フェニル)尿素、
N−(4−ブロモ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(2−クロロ−4−(2−(N−メチルカルバモイル)(4−ピリジルオキシ))フェニル)尿素、
N−(4−ブロモ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−クロロ−4−(2−(N−メチルカルバモイル)(4−ピリジルオキシ))フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−4−クロロ−5−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−(2−(N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−4−クロロ−5−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(4−(2−(N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−4−クロロ−5−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(2−クロロ−4−(2−(N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−4−クロロ−5−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−クロロ−4−(2−(N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素
のいずれか1つで示される化合物またはその薬学上許容される塩から選択されるものである。
【0043】
具体的な実施形態では、前記第2の治療剤は、下記式IIまたは式IIIで表される化合物、またはその薬学上許容される塩から選択される。
【0044】
【化6】
【0045】
【化7】
【0046】
式IIまたは式IIIで表される化合物の化学名はそれぞれ、
N−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−(2−(N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−2−フルオロ−(4−(2−(N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素である。
【0047】
具体的な実施形態では、前記薬学上許容される塩は、トルエンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、塩酸塩、メタンスルホン酸塩である。
もう一つの好ましい形態では、被験者個体に対して、第2の治療剤を、1日あたり100〜1000mg投与し、好ましくは、1日あたり200〜800mg投与し、より好ましくは、1日あたり400〜800mgを投与する。
【0048】
もう一つの好ましい形態では、被験者個体に対して、前記第2の治療剤を1日あたり1〜3回投与し、好ましくは、第2の治療剤を1日あたり2回投与する。
もう一つの好ましい形態では、被験者個体に対して、前記免疫エフェクター細胞の1回当たりの投与量は約1×105〜1×108細胞/kg被験者の体重であり、より好ましくは、1回あたりの投与量は約1×105〜1×107細胞/kg被験者の体重である。
【0049】
もう一つの好ましい形態では、免疫エフェクター細胞と第2の治療剤の投与順序は決まっていなく、第2の治療剤を投与してから免疫エフェクター細胞を投与してもよく、両方を同時に投与してもよく、また、免疫エフェクター細胞を投与してから第2の治療剤を投与してもよく、好ましくは、前記第2の治療剤の投与中に前記免疫エフェクター細胞を投与する。
【0050】
具体的な実施形態では、前記第2の治療剤は経口投与される。
もう一つの好ましい形態では、前記受容体は、キメラ抗原受容体(Chimeric Antigen Receptor、CAR)、T細胞受容体(T cell receptor、TCR)、T細胞融合タンパク質(T cell fusion protein、TFP)、T細胞抗原カプラー(T cell antigen coupler、TAC)またはそれらの組み合わせから選択される。
【0051】
具体的な実施形態では、前記キメラ抗原受容体は、
(i)腫瘍抗原を特異的に認識する抗体またはそのフラグメント、CD28またはCD8の膜貫通領域、CD28の共刺激シグナルドメインおよびCD3ζの細胞内ドメイン;または
(ii)腫瘍抗原を特異的に認識する抗体またはそのフラグメント、CD28またはCD8の膜貫通領域、CD137の共刺激シグナルドメインおよびCD3ζの細胞内ドメイン;または
(iii)腫瘍抗原を特異的に認識する抗体またはそのフラグメント、CD28またはCD8の膜貫通領域、CD28の共刺激シグナルドメイン、CD137の共刺激シグナルドメインおよびCD3ζの細胞内ドメインを含む。
【0052】
具体的な実施形態では、前記腫瘍抗原は、甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR);CD171;CS−1;Cタイプレクチン様分子−1;ガングリオシドGD3;Tn抗原;CD19;CD20;CD22;CD30;CD70;CD123;CD138;CD33;CD44;CD44v7/8;CD38;CD44v6;B7H3(CD276)、B7H6;KIT(CD117);インターロイキン13受容体サブユニットα(IL−13Rα);インターロイキン11受容体サブユニットα(IL−11Rα);前立腺幹細胞抗原(PSCA);前立腺特異膜抗原(PSMA);癌胎児性抗原(CEA);NY−ESO−1;HIV−1 Gag;MART−1;gp100;チロシナーゼ;メソセリン;EpCAM;プロテアーゼセリン21(PRSS21);血管内皮増殖因子受容体;ルイス(Y)抗原;CD24;血小板由来成長因子受容体β(PDGFR−β);ステージ特異的胎児抗原−4(SSEA−4);細胞表面関連ムチン1(MUC1)、MUC6;上皮成長因子受容体ファミリーおよびその変異体(EGFR、EGFR2、ERBB3、ERBB4、EGFRvIII);神経細胞接着分子(NCAM);炭酸脱水酵素IX(CAIX);LMP2;エフリンA受容体2(EphA2);フコシルGM1;シアリルルイス接着分子(sLe);ガングリオシドGM3(aNeu5Ac(2−3)bDGalp(1−4)bDGlcp(1−1)Cer;TGS5;高分子量黒色腫関連抗原(HMWMAA);O−アセチルGD2ガングリオシド(OAcGD2);葉酸受容体;腫瘍血管内皮マーカー1(TEM1/CD248);腫瘍血管内皮マーカー7関連(TEM7R);Claudin6、Claudin18.2、Claudin18.1;ASGPR1;CDH16;5T4;8H9;αvβ6インテグリン;B細胞成熟抗原(BCMA);CA9;κ軽鎖(kappa light chain);CSPG4;EGP2;EGP40;FAP;FAR;FBP;胚性AchR;HLA−A1、HLA−A2;MAGEA1、MAGE3;KDR;MCSP;NKG2Dリガンド;PSC1;ROR1;Sp17;SURVIVIN;TAG72;TEM1;フィブロネクチン;テネイシン;腫瘍壊死ゾーンの癌胎児性変異体;Gタンパク質共役受容体Cグループ5−メンバーD(GPRC5D);X染色体オープンリーディングフレーム61(CXORF61);CD97;CD179a;未分化リンパ腫キナーゼ(ALK);ポリシアル酸;胎盤特異的1(PLAC1);globoH glycoceramideのヘキソース部分(GloboH);乳腺分化抗原(NY−BR−1);urоplakin2(UPK2);A型肝炎ウイルス細胞受容体1(HAVCR1);アドレナリン受容体β3(ADRB3);pannexin3(PANX3);Gタンパク質共役受容体20(GPR20);リンパ球抗原6複合遺伝子座K9(LY6K);臭覚受容体51E2(OR51E2);TCRγ代替リーディングフレームタンパク質(TARP);ウィルムス腫瘍タンパク質(WT1);ETS転座バリアント遺伝子6(ETV6−AML);精子タンパク質17(SPA17);X抗原ファミリーメンバー1A(XAGE1);アンジオゲニン結合細胞表面受容体2(Tie2);黒色腫癌精巣抗原−1(MAD−CT−1);黒色腫癌精巣抗原−2(MAD−CT−2);Fos関連抗原1;p53変異体;ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT);肉腫転座ブレークポイント;アポトーシスのメラノーマ阻害剤(ML−IAP);ERG(膜貫通プロテアーゼセリン2(TMPRSS2)ETS融合遺伝子);N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV(NA17);ペアリングボックスタンパク質Pax−3(PAX3);アンドロゲン受容体;サイクリンB1;V−myc鳥類骨髄症ウイルス癌遺伝子神経芽細胞腫由来ホモログ(MYCN);RasホモログファミリーメンバーC(RhoC);チトクロームP450 1B1(CYP1B1);CCCTC結合因子(ジンクフィンガータンパク質)様(BORIS);T細胞によって認識される扁平上皮癌抗原3(SART3);ペアリングボックスタンパク質Pax−5(PAX5);proacrosin結合タンパク質sp32(OYTES1);リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ(LCK);Aキナーゼアンカータンパク質4(AKAP−4);滑膜肉腫、Xブレークポイント2(SSX2);CD79a;CD79b;CD72;白血球関連免疫グロブリン様受容体1(LAIR1);IgA受容体のFcフラグメント(FCAR);白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーメンバー2(LILRA2);CD300分子様ファミリーメンバーf(CD300LF);C型レクチンドメインファミリー12メンバーA(CLEC12A);骨髄間質細胞抗原2(BST2);EGF様モジュール含有ムチン様ホルモン受容体様2(EMR2);リンパ球抗原75(LY75);グリピカン−3(GPC3);Fc受容体様5(FCRL5);免疫グロブリンλ様ポリペプチド1(IGLL1)からなる群より選択される。
【0053】
具体的な実施形態では、前記腫瘍抗原は固形腫瘍抗原であり、好ましくは、前記固形腫瘍抗原は血管内皮増殖因子受容体、EGFR、EGFRvIII、GPC3、またはClaudin18.2であり、より好ましくは、前記固形腫瘍抗原はGPC3、EGFR、EGFRvIII、または血管内皮増殖因子受容体である。
【0054】
具体的な実施形態では、前記血管内皮増殖因子受容体は血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)である。
具体的な実施形態では、前記固形腫瘍抗原はGPC3である。
【0055】
具体的な実施形態では、前記腫瘍抗原を特異的に認識する抗体は、グリピカン3(GPC3)を標的とする抗体である。
一つの好ましい形態では、腫瘍抗原を特異的に認識する抗体は、SEQ ID NO:15,16、17に示されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、及びSEQ ID NO:18,19、20に示されるLCDR1、LCDR2、LCDR3を含む。
【0056】
具体的な実施形態では、腫瘍抗原を特異的に認識する抗体のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:14に示される配列と少なくとも90%の同一性を有する。
具体的な実施形態では、前記キメラ抗原受容体のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:21、22、23または24に示される配列と少なくとも90%の同一性を有する。
【0057】
一つの好ましい形態では、前記治療は、次の臨床結果、すなわち、免疫エフェクター細胞の抗腫瘍活性の増加、増強または延長;治療前の数と比較して、抗腫瘍免疫エフェクター細胞または活性化免疫エフェクター細胞の数の増加、またはそれらの組み合わせにより決められる。
【0058】
具体的な実施形態では、前記臨床結果は、腫瘍の退縮;腫瘍の縮小;腫瘍の壊死;免疫系を介した抗腫瘍反応;腫瘍の拡大、再発または拡散、またはそれらの組み合わせから選択される。
【0059】
具体的な実施形態では、治療効果は、免疫エフェクター細胞の存在、またはT細胞炎症を示す遺伝子マーカーの存在、またはそれらの組み合わせによって予測され、好ましくは、IFN−γ、TNFαレベルの変化を検出することによって予測される。
【0060】
具体的な実施形態では、前記腫瘍は、血液癌、乳癌、神経膠腫、結腸癌、直腸癌、腎細胞癌、肝臓癌、肺癌、小腸癌、食道癌、黒色腫、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚または眼の悪性黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部肉腫、尿道癌、陰茎癌、小児固形腫瘍、膀胱癌、腎癌または尿管癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)腫瘍 、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫、環境誘発性癌、前記癌の組み合わせおよび前記癌の転移巣の組み合わせを含む。好ましくは、肝臓癌、腎細胞癌、肺扁平上皮癌、及び甲状腺癌から選択される。
【0061】
具体的な実施形態では、前記免疫エフェクター細胞は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)、マスト細胞または骨髄由来の食細胞またはそれらの組み合わせから選択され、好ましくは、前記免疫エフェクター細胞は、自己T細胞、同種T細胞または同種NK細胞から選択され、より好ましくは、前記T細胞は自己T細胞である。
【0062】
本発明の第四態様では、薬物の調製における、腫瘍抗原を認識する受容体を発現する免疫エフェクター細胞の使用が提供され、前記薬物はソラフェニブと組み合わせて使用される。
【0063】
具体的な実施形態では、上記使用の場合、ヒト患者における腫瘍治療のために使用され、前記細胞とソラフェニブをそれぞれ単独で使用する場合よリ優れたまたはより大きい治療効果を提供できるように前記細胞とソラフェニブを配合し、すなわち、前記試薬をそれぞれ単独で使用する場合よリ大きい治療効果を提供できるように前記細胞とソラフェニブを配合する。
【0064】
本発明の第五態様では、腫瘍を治療するためのキットが提供され、前記キットは、
1)腫瘍抗原を認識する受容体を発現する免疫エフェクター細胞;
2)ソラフェニブ;
3)上記1)と2)に記載の物質を含むための容器;および
4)前記キットを使用して腫瘍を治療するための投与プロトコルを含み、
前記免疫エフェクター細胞とソラフェニブをそれぞれ単独で使用する場合よリ大きい治療効果を提供できるように前記免疫エフェクター細胞とソラフェニブを配合し、好ましくは、前記免疫エフェクター細胞はCAR T細胞であり、より好ましくは、前記CAR T細胞は、EGFR、EGFRvIII、グリピカン3、claudin18.2、BCMAを特異的に認識する。
【0065】
具体的な実施形態では、前記CAR T細胞はグリピカン3を特異的に認識する。
本発明の第六態様では、腫瘍抗原を認識する受容体を発現する免疫エフェクター細胞と、第2の治療剤とを含むことを特徴とする、腫瘍を治療するための製品が提供されている。
【0066】
前記製品は、
1)腫瘍抗原を認識する受容体を発現する免疫エフェクター細胞;
2)ソラフェニブ式IIで表される化合物;
3)上記1)と2)に記載の物質を含むための容器;および
4)前記製品を使用して腫瘍を治療するための投与プロトコルを含み、
前記免疫エフェクター細胞は、腫瘍抗原を認識するキメラ抗原受容体を発現し、前記免疫エフェクター細胞と第2の治療剤は、上記の本発明の第一態様、第二態様、及び第三態様に係る定義と同じである。
【0067】
本発明の第六態様では、薬物または製品の調製における、腫瘍抗原を認識する受容体を発現する免疫エフェクター細胞と第2の治療剤の使用が提供され、前記薬物は、ヒト患者における腫瘍の治療に使用され、前記細胞と第2の治療剤を処方してなる薬物は、前記細胞と第2の治療剤をそれぞれ単独で使用する場合よリ優れたまたはより大きい治療効果を提供することができる。
【0068】
免疫エフェクター細胞と第2の治療剤は、上記の本発明の第一態様、第二態様、及び第三態様に係る定義と同じである。
本発明の一つの具体的な実施形態では、腫瘍抗原を認識するキメラ抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞と、ソラフェニブとを、腫瘍に罹患している個体に投与することを特徴とする、腫瘍を治療する、または癌細胞の成長、生存、または活力を低下させる方法が提供されている。前記キメラ抗原受容体は、腫瘍抗原を特異的に認識する抗体またはそのフラグメント、膜貫通ドメインおよび細胞質シグナル伝達ドメインを有する。前記腫瘍抗原を特異的に認識する抗体またはそのフラグメントは、SEQ ID NO:15、16、17に示されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、及びSEQ ID NO:18、19、20に示されるLCDR1、LCDR2、LCDR3を含む。前記腫瘍は肝臓癌であり、前記癌細胞は肝臓癌細胞である。
【0069】
本発明の一つの具体的な実施形態では、腫瘍抗原を認識するキメラ抗原受容体を発現する免疫エフェクター細胞と、レゴラフェニブとを、腫瘍に罹患している個体に投与することを特徴とする、腫瘍を治療する、または癌細胞の成長、生存、または活力を低下させる方法が提供されている。前記キメラ抗原受容体は、腫瘍抗原を特異的に認識する抗体またはそのフラグメント、膜貫通ドメインおよび細胞質シグナル伝達ドメインを有する。前記腫瘍抗原を特異的に認識する抗体またはそのフラグメントは、SEQ ID NO:15、16、17に示されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、及びSEQ ID NO:18、19、20に示されるLCDR1、LCDR2、LCDR3を含む。前記腫瘍は肝臓癌であり、前記癌細胞は肝臓癌細胞である。
【0070】
本発明の一つの具体的な実施形態では、腫瘍を治療するための製品またはキットが提供され、前記製品またはキットは、
1)免疫エフェクター細胞;
2)ソラフェニブまたはレゴラフェニブ;
3)上記1)と2)に記載の物質を含むための容器;および
4)前記製品を使用して腫瘍を治療するための投与プロトコルを含み、
前記免疫エフェクター細胞は、腫瘍抗原を認識するキメラ抗原受容体を発現する。前記キメラ抗原受容体は、腫瘍抗原を特異的に認識する抗体またはそのフラグメント、膜貫通ドメインおよび細胞質シグナル伝達ドメインを有する。前記腫瘍抗原を特異的に認識する抗体またはそのフラグメントは、SEQ ID NO:15、16、17に示されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、及びSEQ ID NO:18、19、20に示されるLCDR1、LCDR2、LCDR3を含む。前記腫瘍は肝臓癌であり、前記癌細胞は肝臓癌細胞である。
【0071】
なお、本発明の範囲内で、本発明の上記各技術的特徴及び以下に(例えば、実施例)具体的に説明する各技術的特徴を互いに組み合わせて新しいまたは好ましい技術構成を形成できることを理解されたい。スペースの制限上、ここでは一々贅言しない。
【0072】
本発明の有益な効果:
1、本発明により提供される式Iで表される化合物と免疫エフェクター細胞とを組み合わせて使用すると、腫瘍細胞を殺す能力を有意に高めることができる。
【0073】
2、本発明の治療スキームを採用することは、癌微小環境における免疫阻害に抵抗することができ、これによって、固形腫瘍に対する作用を有意に高め、難治性および進行性の癌に対してもより良い効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1A】PRRLSIN−hu9F2−28Zのプラスミドプロファイルである。
図1B】CAR T細胞の陽性率の検出を示す図である。
図2】肝臓癌細胞及びCAR T細胞に対するソラフェニブの毒性検出を示す図である。
図3】ソラフェニブで処理された腫瘍細胞に対するCAR T細胞の殺傷能力のインビトロ検出を示す図である。
図4】Hepa1−6細胞でのGPC3発現のフローサイトメトリー検出を示す図である。
図5】ソラフェニブとCAR T細胞との組み合わせの使用の、hepa1−6−GPC3皮下腫瘍の腫瘍体積に対する阻害効果を示す図である。
図6】ソラフェニブとCAR T細胞との組み合わせの使用の、hepa1−6−GPC3皮下腫瘍の腫瘍重量に対する阻害効果を示す図である。
図7A】ソラフェニブで処理されたCAR T細胞の脱顆粒能力のインビトロ検出を示す図である。
図7B】ソラフェニブで処理されたCAR T細胞の増殖能力のインビトロ検出を示す図である。
図7C】ソラフェニブで処理されたCAR T細胞の殺傷能力のインビトロ検出を示す図である。
図8A】ヒトCAR T細胞のサイトカインのIL−2の分泌に対するソラフェニブの影響の検出を示す図である。
図8B】ヒトCAR T細胞のサイトカインのIFN−γの分泌に対するソラフェニブの影響の検出を示す図である。
図8C】ヒトCAR T細胞のサイトカインのTNF−αの分泌に対するソラフェニブの影響の検出を示す図である。
図9A】ソラフェニブとヒトCAR T細胞との組み合わせの使用による肝臓癌治療の腫瘍体積を示す図である。
図9B】ソラフェニブとヒトCAR T細胞との組み合わせの使用による肝臓癌治療の腫瘍重量を示す図である。
図10A】CAR T細胞腫瘍内の浸潤を示す図である。
図10B】CAR T細胞腫瘍内のアポトーシスを示す図である。
図10C】CAR T細胞腫瘍内のアポトーシスを示す図である。
図11】ソラフェニブとヒトCAR T細胞がPLC/RPF/5細胞のアポトーシスを相乗的に促進する状況のインビトロ検出を示す図である。
図12】マウスの肝臓癌移植腫瘍に対する、CAR T細胞とレゴラフェニブとの組み合わせの使用の治療結果を示す図である。
図13】CAR T細胞とソラフェニブとの組み合わせにより治療した後の被験者の画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0075】
本発明は、腫瘍の治療における免疫エフェクター細胞と第2の治療剤(式Iで表される化合物)との組み合わせの使用に関するものであり、本発明は、記載されている方法および実験条件に限定されてないことを理解されたい。本明細書で特別に定義されていない限り、使用されるすべての技術用語および科学用語は、遺伝子治療、生化学、遺伝学、分子生物学、及び医薬品化学分野において当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0076】
【化8】
【0077】
本明細書に記載されるものと同様または同等の方法および材料は、本発明の実施または試験において使用することができる。本明細書で言及されているすべての出版物、特許出願、特許、及びその他の参考文献は、参考としてその全体が本明細書に組み込まれる。矛盾する場合は、本明細書に含まれる定義に準ずる。また、特に明記しない限り、材料、方法、および実施例は、単に例示的なものであり、限定的なものではない。
【0078】
特に明記しない限り、本発明の実施は、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNAおよび免疫学の伝統的な技術を採用し、これらはすべて本分野の技術範囲に属す。これらの技術は、文献で十分に説明されている。例えば、Current Protocols in Molecular Biology (FrederickM.AUSUBEL,2000,Wileyand sonInc,Library of Congress,USA);Molecular Cloning: A Laboratory Manual,Third Edition,(Sambrooketal,2001,Cold Spring Harbor,NewYork: Cold Spring Harbor Laboratory Press);Oligonucleotide Synthesis (M.J.Gaited.,1984);Mullis et al. U.S. Pat. No. 4,683,195;Nucleic Acid Hybridization (B. D. Harrie & S. J. Higginseds 1984);Transcription And Translation (B. D. Hames & S. J. Higginseds. 1984);Culture Of Animal Cells (R. I. Freshney,Alan R. Liss,Inc.,1987);Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press,1986);B. Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning (1984);the series,Methods In ENZYMOLOGY (J. AbelsonとM. Simon,eds.−in−chief,Academic Press,Inc.,New York)、特にVols.154と155(Wuetal. eds.)とVol.185,“Gene Expression Technology” (D. Goeddel,ed.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells (J. H. MillerとM. P. Caloseds.,1987,Cold Spring Harbor Laboratory);Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (MayerとWalker,eds.,Academic Press,London,1987);Handbook Of Experimental Immunology,Vol.I−IV (D. M. WeirとC. C. Blackwell,eds.,1986);およびManipulating the Mouse Embryo (Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1986)参照できる。
【0079】
本発明は少なくとも部分的に次の認識に基づく。すなわち、第2の治療剤と免疫エフェクター細胞を連続的に、任意の順序で、または実質的に同時に、1つ以上のサイクルおよび/または用量で投与する組み合わせの治療スキームは、一部の被験者の癌の治療では免疫細胞の活性および/または数をより効果的に増加、増強、または延長して、抗腫瘍効果を達成することであり得る。
【0080】
本明細書で使用される用語「約」とは、当業者に容易に分かる各値の通常の誤差範囲を指す。本明細書で言及される「約」に関連する値またはパラメータは、当該値またはパラメータ自体を指す実施形態を含む(且つ説明する)。例えば、「約X」という記載は、「X」の記載を含む。例えば、「約」または「含む」は、当該分野内の実際の標準偏差に応じて、1以内または1を超えることを意味することができる。あるいは、「約」または「含む」は、多くとも10%(つまり、±10%)の範囲を意味することができる。例えば、約5mgは、4.5mgと5.5mgの間の任意の数を含み得る。特定の値または組成が出願および特許出願の範囲で提供される場合、特に明記しない限り、「約」または「含む」は、当該特定の値または組成の許容誤差範囲内であると想定されるべきである。
【0081】
特に断りのない限り、本明細書に記載される濃度範囲、パーセンテージ範囲、比率範囲、または整数範囲のいずれも、当該範囲内の任意の整数、及び適切な場合には、その分数(例えば、整数の10分の1及び100分の1)を含むと理解すべきである。
【0082】
本明細書に記載の「用量」とは、重量に基づいて算出された用量または体表面積(BSA)に基づいて算出された用量で表すことができる。重量に基づいて算出された用量は、患者の体重に基づいて算出された、患者に与える用量であり、例えば、mg/kgである。BSAに基づいて算出された用量は、患者の表面積に基づいて算出された、患者に与える用量であり、例えば、mg/m2である。
【0083】
具体的な実施形態では、本発明に使用される第2の治療剤は、式Iで表される化合物、またはその薬学上許容される塩である。
【0084】
【化9】
【0085】
式中、Ar’は非置換または置換フェニル基であり、置換基はハロゲンおよびC1−10アルキル基から選択され、
Mは、−O−またはーS−から選択される1つ以上の架橋基であり、
Py(X)はXで置換されたピリジル基であり、XはーC(O)Rxであり、その中で、RxはNRabであり、RaとRbはそれぞれ、
a)水素、
b)C1−10アルキル基、
c)ヒドロキシで置換されたC1−10アルキル基、
d)1〜3個のN、SまたはOのヘテロ原子を含むC3−12シクロアルキル基、または
e)−OSi(Rf)3[式中、RfはC1−10アルキル基である]、
であり、
Ar”は非置換または置換フェニル基であり、置換基はハロゲンまたはWnから選択され、n=0〜3であり、Wは、
a)C1−10アルキル基、
b)C1−10アルコキシ基、
c)C1−10ハロアルキル基、
d)1〜3個のN、SまたはOのヘテロ原子を含む、C1−10アルキル基で置換されてもよいC3−12ヘテロアリール基
から選択される。
【0086】
本発明において、「C1−10アルキル」という用語は、1〜10個の炭素原子を含有する任意の直鎖または分岐鎖基を指し、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、t−ペンチル、n−ヘキシル、n−へプチル、n−オクチル、イソオクチル、2−エチルヘキシル、n−ノニル、イソノニル、n−デジルなどが挙げられる。
【0087】
「C1−10アルコキシ」という用語は、任意の上記C1−C10アルキル基が酸素原子(−O−)を介して分子の残りの部分に結合していることを指す。
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素を指す。
【0088】
「ハロアルキル」という用語は、フルオロアルキル、クロロアルキル、ブロモアルキル、ヨードアルキルを指す。
「C3−12シクロアルキル」という用語は、3〜12個の炭素原子を有する非芳香族の、飽和または不飽和の単環式または二環式炭化水素環を指す。例示的な「シクロアルキル」は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、及びシクロへプチルなどを含むが、これらに限定されない。
【0089】
「ヘテロアリール」という用語は、芳香族複素環、通常、N、O、またはSから選択される1〜3個のヘテロ原子を有する5〜8員複素環を指し、ヘテロアリール環は、芳香族および非芳香族の炭素環および複素環にさらに縮合または結合してもよい。ヘテロアリールの非限定的な例として、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリル、イミダゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアキサゾリル、ピロリル、フェニル−ピロリル、フラニル、フェニル−フラニル 、オキサゾリル、イソキサゾリル、ピラゾリル、チエニル、ベンゾチエニル、イソインドリニル、ベンズイミダゾリル、インダゾリル、キノリニル、イソキノリニル、1,2,3−トリアゾリル、1−フェニル−1,2,3−トリアゾリル、2,3−インドリニル、2,3−ジヒドロベンゾフラニル、2,3−ジヒドロベンゾチエニル、ベンゾピラニル、2,3−ジヒドロベンゾオキサジニル、2,3−ジヒドロキノキサリニルなどが挙げられる。
【0090】
上記のすべての説明から当業者にとって明らかなのは、「アリールアミノ」など、その名前が複合名の任意の基である場合、通常にその誘導された部分、例えば、アリール基で置換されたアミノ基から構築されることを指すべきであり、アリール基は上記で定義した通りである。
【0091】
具体的な実施形態では、式Iで表される化合物は、式IIおよび式IIIで表される化合物を含むが、これらに限定されていない。
【0092】
【化10】
【0093】
【化11】
【0094】
具体的な実施形態では、第2の治療剤は、式IIで表される化合物の薬学上許容される塩であってもよく、例えば、トルエンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、塩酸塩、メタンスルホン酸塩などであってもよい。
【0095】
具体的な実施形態では、式IIIで表される化合物はさらに、その一水和物、二水和物などの水和物を使用してもよく、また、塩酸塩などのその薬学上許容される塩も使用してもよい。
【0096】
出願人は、化合物IIなどの第2の治療剤がCAR T細胞によるサイトカインIL2の分泌を促進するだけではなく、腫瘍組織におけるCAR T細胞の浸潤を促進し、抗腫瘍効果を改善できることを見出した。したがって、化合物IIなどの第2の治療剤と、腫瘍特異的抗原を標的とする免疫細胞療法との組み合わせの使用は、抗腫瘍効果を有意に改善することができる。
【0097】
出願人はまた、本発明が難治性癌の抗癌効果を改善するだけではなく、CAR−T細胞を使用する時にリンパ球を除去しなくても、良好な抗腫瘍効果を達成できることを見出して、それによって、リンパ球除去による抗癌治療効果の低下を大幅に改善し、正常な組織への損傷による毒性の副作用、特に骨髄に対する激しい抑制を軽減する。
【0098】
具体的な実施形態では、化合物IIなどの第2の治療剤は、それ自体で安全に経口または非経口投与することができ、または薬学上許容される担体賦形剤およびその他の添加剤からなる化合物(例えば、錠剤、徐放性製剤、カプセル、注射剤、溶液)として安全に経口または非経口投与することができる。経口投与される場合、組成物は、錠剤、糖衣錠またはカプセルに配合され得る。経口組成物を調製するために、ラクトースまたはデンプンを担体として使用することができ、ゼラチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロースポリビニルピロリドンなどは適切な結合剤または造粒剤である。崩壊剤として、デンプンまたは微結晶セルロースが選択でき、タルク、コロイダルシリカ、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸カルシウムまたはステアリン酸マグネシウムなどは、適切な結合防止剤と滑剤としてよく使用される。例えば、湿った顆粒を圧縮することによって錠剤を調製することができる。活性成分と担体、および必要に応じて崩壊添加剤と一緒に混合物を形成し、この混合物は結合剤の含水溶液、アルコール性または含水アルコール性溶液と適切な装置内で造粒され、乾燥した顆粒をその他の崩壊剤に加え、滑剤と抗結合剤でこの混合物を錠剤に形成させる。用量は治療対象、投与方法、症状、およびその他の要素によって変わるが、溶解性を高めるために、複素環式誘導体を遊離させてから薬学上許容される有機酸にしてもよく、好ましくはメタンスルホン酸、フマル酸などにして注射剤の形で投与しやすいようにする。
【0099】
具体的な実施形態では、第2の治療剤はソラフェニブ(Sorafenib)(式IIで表される化合物に示される構造を有する)であり、好ましくはソラフェニブトシレートである。
【0100】
具体的な実施形態では、第2の治療剤はレゴラフェニブ(Ragorafenib)(式IIIで表される化合物に示される構造を有する)であり、好ましくはレゴラフェニブトシレートである。
【0101】
出願人は、ソラフェニブとCAR−T細胞の相乗効果により、低用量のソラフェニブでもより良い効果を達成できるため、本発明の技術構成がソラフェニブの毒副作用を低減できることを発見した。
【0102】
具体的な実施形態では、第2の治療剤の低用量は、単独で投与して達成できる臨床的治療効果の用量より低い用量を指し、例えば、ソラフェニブの低用量とは、ソラフェニブを単独で投与して達成できる臨床的治療効果の用量より低いものを指し、具体的には、臨床的に推奨されるソラフェニブの用量、すなわち、ソラフェニブの推奨用量:1回0.4g(2×0.2g)、1日2回を指す;または、化合物IIの単独投与後の臨床試験における患者の体内のおおよその濃度6.5uMより低いことを指す。
【0103】
本発明におけるソラフェニブの投与量は、臨床的に有効な投与量よりも低くなってもよい。一部の実施形態では、腫瘍に罹患している個体の体内のソラフェニブの平均濃度は、約6、5.5、5、4.5、4、3.5、3、2.5、2、1.5、1、0.95、0.9、0.85、0.8、0.75、0.7、0.65、0.6、0.55、0.5、0.45、0.4、0.35、0.3、0.25、0.2、0.15、0.1、0.095、0.09、0.085、0.08、0.075、0.07、0.065、0.06、0.055、0.05、0.045、0.04、0.035、0.034、0.033、0.032、0.031、0.03、0.029、0.028、0.027、0.026、0.025、0.024、0.023、0.022、0.021、0.02、0.019、0.018、0.017、0.016、0.015、0.014、0.013、0.012、0.011、0.01、0.009、0.008、0.007、0.006、0.005、0.004、0.003、0.002、または0.001uMである。一部の実施形態では、腫瘍に罹患している個体の1日当たりのソラフェニブの経口用量は、約700、650、600、550、500、450、400、350、300、290、280、270、260、250、240、230、220、210、200、190、180、170、160、150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2、または1mgであり、好ましくは、400〜800mg/日である。
【0104】
本発明において、ソラフェニブは、1日1回投与してもよく、1日複数回投与してもよく、例えば、1日2回投与してもよい。
ソラフェニブは、1日あたりの投与量が、100〜1000mgであってもよく、好ましくは、1日あたり200〜800mg投与し、より好ましくは、1日あたり400〜800mgを投与する。
【0105】
本発明において、免疫エフェクター細胞と第2の治療剤の投与順序は決まっていなく、第2の治療剤を投与してから免疫エフェクター細胞を投与してもよく、両方を同時に投与してもよく、また、免疫エフェクター細胞を投与してから第2の治療剤を投与してもよい。
【0106】
一部の実施形態では、免疫エフェクター細胞は、第2の治療剤を投与する前の1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、1か月、またはそれらの任意の組み合わせで投与される。
【0107】
一部の実施形態では、免疫エフェクター細胞は、第2の治療剤を投与した後の1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、21日、22日、23日、24日、25日、26日、27日、28日、29日、1か月、またはそれらの任意の組み合わせで投与される。
【0108】
一部の実施形態では、薬剤を中止する必要がある、または薬剤を中止することができると医師が評価するまで、例えば、完全に改善された後に薬剤を中止する、または疾患の進行によって薬剤を中止すると医師が評価するまで、第2の治療剤を継続的に投与する。一部の実施例では、第2の治療剤は、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、またはそれ以上に継続的に投与される。免疫エフェクター細胞は、第2の治療剤の継続投与中に投与される。
【0109】
「免疫エフェクター細胞」という用語は、免疫応答に関与する、例えば、免疫効果を促進する細胞を指す。免疫エフェクター細胞の例として、T細胞、例えば、α/βのT細胞及びγ/δT細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、マスト細胞、および骨髄由来の食細胞が挙げられる。好ましくは、前記T細胞は、自己T細胞、異種T細胞、同種T細胞を含み、前記ナチュラルキラー細胞は同種NK細胞である。本明細書で使用されるように、「免疫エフェクター機能または免疫エフェクター応答」という用語は、免疫エフェクター細胞の、例えば、標的細胞の免疫攻撃を増強または促進する機能または応答を指す。例えば、免疫エフェクター機能または応答とは、標的細胞の殺傷を促進する、または成長または増殖を阻害するT細胞またはNK細胞の特性をいう。
【0110】
「治療有効量」、「治療に有効」、および「有効量」という用語は、本明細書で置き換えて使用することができ、本明細書に記載の特定の生物学的結果を達成するのに有効な化合物、製剤、物質、または組成物の量を指し、例えば、T細胞応答を促進するのに十分な量または用量などが挙げられるが、これらに限定されない。「免疫学的有効量」、「抗腫瘍有効量」、「腫瘍阻害有効量」、または「治療有効量」を示す場合、投与される本発明の免疫エフェクター細胞、治療剤の正確な数は、個体の年齢、体重、腫瘍サイズ、感染または転移の程度、および患者(被験者)の状況を考慮した後に医師が決定してもよい。有効量の免疫エフェクター細胞とは、免疫エフェクター細胞の抗腫瘍活性を増加、増強、または延長させること;抗腫瘍免疫エフェクター細胞または活性化免疫エフェクター細胞の数を増加させること;IFN−γ、TNFαの分泌を促進させること;腫瘍を退縮、腫瘍を縮小、腫瘍を壊死させることができる免疫エフェクター細胞の数を指すが、これらに限定されない。
【0111】
「リンパ球を除去しない」または「リンパ球の除去をしない」という用語は、被験者の体内のリンパ球を除去しないことを意味する。リンパ球スカベンジャー、全身放射線療法、またはそれらの組み合わせ、またはリンパ球枯渇を引き起こす他の手段を与えないことを含むが、これらに限定されない。ただし、リンパ球スカベンジャー、全身放射線療法、またはそれらの組み合わせ、またはリンパ球枯渇を引き起こす他の手段を与えた後、被験者体内のリンパ球の除去率が60%より低い場合、例えば、体内のリンパ球の除去率が55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、または10%である場合も等しく、本願の「リンパ球を除去しない」という範囲内にある。
【0112】
本明細書では、リンパ球の除去率は、リンパ球を除去する前のリンパ球の数を検出し、リンパ球除去後のリンパ球の数を検出して算出でき、例えば、リンパ球除去薬を投与する前のリンパ球の数−リンパ球除去薬を投与した後のリンパ球の数/リンパ球除去薬を投与する前のリンパ球の数によって算出できる。リンパ球の検出は、血液ルーチンなど、リンパ球の数を検出ために医療スタッフが一般的に使用する方法で行うことができる。
【0113】
「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」という用語は置き換えて使用でき、いずれもペプチド結合によって共有結合されたアミノ酸残基からなる化合物を指す。タンパク質またはペプチドは少なくとも2つのアミノ酸を含む必要があり、タンパク質またはペプチドの配列を含むことができるアミノ酸の最大数には制限はない。ポリペプチドは、ペプチド結合によって互いに結合された2つ以上のアミノ酸を含む任意のペプチドまたはタンパク質を含む。本明細書で使用される「キメラ受容体」は、すなわち、異なる供給源からのDNA断片またはタンパク質対応cDNAを遺伝子組換え技術によって接続して形成される融合分子であり、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内ドメインを含む。キメラ受容体は、キメラ抗原受容体(CAR)、修飾されたT細胞(抗原)受容体(TCR)、T細胞融合タンパク質(TFP)、T細胞抗原カプラー(TAC)を含むが、これらに限定されない。
【0114】
本明細書で使用される「キメラ抗原受容体」または「CAR」とは、免疫エフェクター細胞内にある場合に、標的細胞(通常は癌細胞)に対する特異性を細胞に提供し、細胞内シグナル生成がある一群のポリペプチドをいう。CARは通常、少なくとも1つの細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞質シグナル伝達ドメイン(本明細書では「細胞内シグナル伝達ドメイン」とも呼ばれる)を含み、以下に定義される刺激分子及び/または共刺激分子に由来する機能的シグナル伝達ドメインを含む。一部の態様では、ポリペプチド群は互いに隣接している。ポリペプチド群は、二量体化分子の存在下でポリペプチドを互いにカップリングすることのできる二量体化スイッチを含み、例えば、抗原結合ドメインを細胞内シグナル伝達ドメインにカップリングすることのできるスイッチを含む。一態様では、刺激分子は、T細胞受容体複合体に結合するζ鎖である。一態様では、細胞質シグナル伝達ドメインは、以下に定義される少なくとも1つの共刺激分子に由来する1つ以上の機能的シグナル伝達ドメインをさらに含む。一態様では、共刺激分子は、4−1BB(すなわち、CD137)、CD27、および/またはCD28などの、本明細書に記載される共刺激分子から選択される。一態様では、CARはキメラ融合タンパク質を含み、この融合タンパク質は、細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および刺激分子に由来する機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む。一態様では、CARはキメラ融合タンパク質を含み、この融合タンパク質は、細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および共刺激分子に由来する機能的シグナル伝達ドメインと刺激分子に由来する機能的シグナル伝達ドメインを含む細胞内シグナル伝達ドメインを含む。一態様では、CARはキメラ融合タンパク質を含み、この融合タンパク質は、細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、および1つ以上の共刺激分子に由来する2つの機能的シグナル伝達ドメインを含む。
【0115】
一態様では、本発明は、機能的に同等な分子を生成する出発抗体またはフラグメント(例えば、scFv)のアミノ酸配列の修飾を想定する。例えば、CARに含まれるscFvなど、本明細書に記載の癌関連抗原の抗原結合ドメインのVHまたはVLは、本明細書に記載の癌関連抗原の抗原結合ドメインの出発VHまたはVLフレームワーク領域(例えば、scFv)の少なくとも約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を保持するように修飾されてもよい。本発明、機能的に同等な分子を生成するように、CAR構築体の複数のドメインの1つ以上のアミノ酸配列の修飾など、CAR構築体全体の修飾を想定している。CAR構築体は、出発CAR構築体の少なくとも約70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を保持するように修飾されてもよい。
【0116】
本明細書で使用される「膜貫通ドメイン」は、膜貫通領域に隣接する1つ以上の追加のアミノ酸、例えば、前記膜貫通の由来であるタンパク質の細胞外領域に関連する1つ以上のアミノ酸(例えば、細胞外領域の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10から15のアミノ酸)および/または前記膜貫通タンパク質の由来であるタンパク質の細胞外領域に関連する1つ以上のアミノ酸(例えば、細胞内領域の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10から15のアミノ酸)を含むことができる。一態様では、膜貫通ドメインは、キメラ受容体の他のドメインの1つに関連するドメインであり、例えば、一実施形態では、前記膜貫通ドメインは、シグナル伝達ドメイン、共刺激ドメイン、またはヒンジドメインの由来であるタンパク質と同じタンパク質に由来し得る。場合によっては、膜貫通ドメインは、例えば、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小限にするように、選択またはアミノ酸の置換修飾によって、このようなドメインが同じまたは異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインと結合することを防ぐことができる。一態様では、膜貫通ドメインは、キメラ受容体を発現する細胞の細胞表面上の別のキメラ受容体とホモ二量体化することができる。異なる一態様では、同じキメラ受容体を発現する細胞に存在する天然の結合パートナーの結合ドメインとの相互作用を最小限にするように、膜貫通ドメインのアミノ酸配列は修飾または置換されてもよい。膜貫通ドメインは、天然または組換え供給源に由来することができる。前記供給源が天然の場合、前記ドメインは任意の膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質に由来してもよい。一態様では、前記キメラ受容体が前記標的抗原に結合する限り、膜貫通ドメインは細胞内ドメインにシグナルを伝達することができる。本発明で具体的に使用される膜貫通ドメインは、少なくとも以下の膜貫通ドメイン、例えば、T−細胞受容体のα、β、またはζ鎖、CD28、CD27、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154を含むことができる。一部の実施形態では、膜貫通ドメインは、少なくとも以下の膜貫通ドメイン、例えば、KIRDS2、OX40、CD2、CD27、LFA−1(CD11a、CD18)、ICOS( CD278 )、4−1BB(CD137)、GITR、CD40、BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD160、CD19、IL2Rβ、IL2Rγ、IL7Rα、ITGA1、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA−6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA−1、ITGAM、CD11B、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA−1、ITGB7、TNFR2、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、CD100(SEMA4D)、SLAMF6(NTB−A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO−3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、PAG/Cbp、NKG2D、NKG2Cを含むことができる。
【0117】
場合によっては、膜貫通ドメインはヒンジ(例えば、ヒトタンパク質からのヒンジ)を介して、CARの抗原結合ドメインなどのCARの細胞外領域に接続することができる。例えば、一実施形態では、ヒンジは、ヒトIg(免疫グロブリン)ヒンジ(例えば、IgG4ヒンジ、IgDヒンジ)、GSリンカー(例えば、本明細書に記載のGSリンカー)、KIR2DS2ヒンジまたはCD8aヒンジであってもよい。一態様では、膜貫通ドメインは組換えられたものであってもよく、この場合、主にロイシンやバリンなどの疎水性残基を含むようになる。一態様では、フェニルアラニン、トリプトファンおよびバリンのトリプレットが、組換え膜貫通ドメインの各末端に見えられる。必要に応じて、2〜10アミノ酸長の短いオリゴペプチドまたはポリペプチドリンカーは、CARの膜貫通ドメインと細胞質領域との間に結合を形成することができる。グリシン−セリン二量体は、極めて適切なリンカーを提供する。
【0118】
本明細書で使用される「細胞質ドメイン」は、細胞内シグナル伝達ドメインを含む。細胞内シグナル伝達ドメインは一般に、キメラ受容体が導入された免疫細胞の正常なエフェクター機能の少なくとも1つの活性化に関与する。「エフェクター機能」という用語は、細胞の特殊化された機能を指す。T細胞のエフェクター機能は、例えば、サイトカインの分泌を含む細胞溶解活性または補助活性であることができる。そのため、「細胞内シグナル伝達ドメイン」という用語は、エフェクター機能シグナルを伝達し、特定の機能を実行するように細胞を誘導するタンパク質の部分を指す。通常、細胞内シグナル伝達ドメイン全体を使用できるが、多くの場合、鎖全体を使用する必要はない。細胞内シグナル伝達ドメインの切断部分を使用する場合、エフェクター機能シグナルを伝達する限り、完全な鎖の代わりにこのような切断部分を使用することができる。したがって、細胞内シグナル伝達ドメインという用語は、エフェクター機能シグナルを伝達するのに十分な細胞内シグナル伝達ドメインの切断部分を含むことを意味する。
【0119】
TCRだけで生成されたシグナルはT細胞を完全に活性化するのに十分ではなく、二次シグナルおよび/または共刺激シグナルも必要であることはよく知られている。そのため、T細胞の活性化は、TCRを通じて抗原依存性一次活性化をトリガーするもの(一次細胞内シグナル伝達ドメイン)と、抗原非依存的に作用して二次シグナルまたは共刺激シグナルを提供するもの(共刺激ドメインのような二次細胞質ドメイン)という2つの異なる種類の細胞質シグナル伝達配列によって媒介されると言うことができる。
【0120】
「刺激」という用語は、刺激分子(例えば、TCR/CD3複合体またはCAR)とその相同リガンド(またはCARの場合は腫瘍抗原)と結合し、これによりシグナル伝達イベント(例えば、TCR/CD3複合体を介したシグナル伝達、または適切なNK受容体またはCARのシグナル伝達ドメインを介したシグナル伝達が挙げられるが、これらに限定されない)を媒介して誘導される初期応答を指す。刺激は、一部の分子の変化した発現を媒介することができる。
【0121】
「刺激分子」という用語は、免疫細胞(例えば、T細胞、NK細胞、B細胞)によって発現される、細胞質シグナル伝達配列を提供する分子を指し、このシグナル伝達配列は、免疫細胞シグナル伝達経路の少なくともいくつかの面に使用される免疫細胞の活性化を刺激的な方法で調節する。一態様では、シグナルは、例えば、TCR/CD3複合体と、ペプチドが担持されているMHC分子の結合によって開始される一次シグナルであり、増殖、活性化、分化などを含むがこれらに限定されないT細胞応答の媒介を引き起こす。刺激的に作用する一次細胞質シグナル伝達配列(「一次シグナル伝達ドメイン」とも呼ばれる)は、免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフまたはITAMのシグナル伝達モチーフと呼ばれるものを含んでもよい。本発明で特に使用されるITAM含有細胞質シグナル伝達配列の例として、CD3ζ、一般的なFcRγ(FCER1G)、FcγRIIa、FcRβ(FcEpsilоn R1b)、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD79a、CD79b、DAP10、およびDAP12が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の特異的なCARにおいて、本発明の任意の1つ以上のCARにおける細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3−ζの一次シグナル伝達配列などの細胞内シグナル伝達配列を含む。本発明の特異的なCARにおいて、CD3−ζの一次シグナル伝達配列は、ヒト、またはマウス、げっ歯類、サル、類人猿などの非ヒト種由来の同等の残基である。
【0122】
「共刺激分子」という用語は、共刺激リガンドに特異的に結合し、それによりT細胞の共刺激反応を媒介する、T細胞上の相同結合パートナーを指し、前記T細胞の共刺激反応として、増殖が挙げられるが、これに限定されない。共刺激分子は、抗原受容体またはそのリガンド以外の細胞表面分子であり、効果的な免疫応答を促進する。共刺激分子は、MHCクラスI分子、BTLAおよびTollリガンド受容体、およびOX40、CD27、CD28、CDS、ICAM−1、LFA−1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、および4−1BB(CD137)を含むが、これらに限定されない。このような共刺激分子のさらなる例には、CDS、ICAM−1、GITR、 BAFFR、HVEM(LIGHTR)、SLAMF7、NKp80(KLRF1)、NKp44、NKp30、NKp46、CD160、CD19、CD4、CD8α、 CD8β、IL2Rβ、IL2Rγ、IL7Rα、ITGA4、VLA1、CD49a、ITGA4、IA4、CD49D、ITGA6、VLA−6、CD49f、ITGAD、CD11d、ITGAE、CD103、ITGAL、CD11a、LFA−1、ITGAM、CD11b、ITGAX、CD11c、ITGB1、CD29、ITGB2、CD18、LFA−1、ITGB7、NKG2D、NKG2C、TNFR2、TRANCE/RANKL、DNAM1(CD226)、SLAMF4(CD244、2B4)、CD84、CD96(Tactile)、CEACAM1、CRTAM、Ly9(CD229)、CD160(BY55)、PSGL1、 CD100(SEMA4D)、CD69、SLAMF6(NTB−A、Ly108)、SLAM(SLAMF1、CD150、IPO−3)、BLAME(SLAMF8)、SELPLG(CD162)、LTBR、LAT、GADS、SLP−76、PAG/Cbp、CD19a、およびCD83に特異的に結合するリガンドが含まれる。
【0123】
共刺激細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激分子の細胞内部分であってもよい。共刺激分子は、TNF受容体タンパク質、免疫グロブリン様タンパク質、サイトカイン受容体、インテグリン、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAMタンパク質)、およびNK細胞受容体というタンパク質ファミリーで表すことができる。このような分子の例には、CD27、CD28、4−1BB(CD137)、OX40、GITR、CD30、CD40、ICOS、BAFFR、HVEM、ICAM−1、リンパ球機能関連の抗原−1(LFA−1)、CD2、CDS、CD7、CD287、LIGHT、NKG2C、NKG2D、SLAMF7、NKp80、NKp30、NKp44、NKp46、CD160、B7−H3、およびCD83に特異的に結合するリガンドなどが含まれる。
【0124】
細胞内シグナル伝達ドメインは、分子のすべての細胞内部分またはすべての天然の細胞内シグナル伝達ドメイン、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体を含むことができる。
【0125】
「4−1BB」という用語は、GenBank Accession No.AAA62478.2で提供されるアミノ酸配列を持つTNFRスーパーファミリーのメンバー、またはマウス、げっ歯類、サル、類人猿などの非ヒト種由来の同等の残基を指す。また、「4−1BB共刺激ドメイン」は、GenBank Accession No.AAA62478.2のアミノ酸残基214〜255、またはウス、げっ歯類、サル、類人猿などの非ヒト種由来の同等の残基として定義される。一態様では、「4−1BB共刺激ドメイン」は、ヒト、またはマウス、げっ歯類、サル、類人猿などの非ヒト種由来の同等の残基である。
【0126】
「scFv」という用語は、軽鎖の可変領域を含む少なくとも1つの抗体フラグメントと、重鎖の可変領域を含む少なくとも1つの抗体フラグメントを含む融合タンパク質を指し、前記軽鎖および重鎖可変領域は隣接し(例えば、短い柔軟なポリペプチドリンカーなどの合成リンカーを介して)、一本鎖ポリペプチドとして発現されることができ、しかも前記scFvは、それの由来である完全な抗体の特異性を保持する。特に明記しない限り、本明細書で使用されるように、scFvは任意の順序で(例えば、ポリペプチドのN−末端とC末端に対して)VLとVH可変領域を持つことができ、scFvはVL−リンカー−VH、またはVH−リンカー−VLを含むことができる。
【0127】
「抗体重鎖」という用語は、天然に存在する構造として抗体分子に存在し、且つ通常に抗体のタイプを決定する2つのポリペプチド鎖のうちの大きい方を指す。
「抗体軽鎖」という用語は、天然に存在する構造として抗体分子に存在する2つのポリペプチド鎖のうちの小さい方を指す。κ(k)とλ(l)軽鎖は、2つの主要な抗体軽鎖のアイソタイプを指す。
【0128】
「組換え抗体」という用語は、例えば、ファージまたは酵母発現系によって発現する抗体など、組換えDNA技術を使用して生成される抗体を指す。この用語は、抗体をコードするDNA分子(しかもその中で、DNA分子は抗体タンパク質を発現する)または指定された抗体のアミノ酸配列を合成することによって生成された抗体を指すとも解釈すべきであり、前記DNAまたはアミノ酸配列は、組換えDNAまたは本分野で利用可能且つよく知られているアミノ酸配列技術によって得られた。
【0129】
「抗原」または「Ag」という用語は、免疫応答を引き起こす分子を指す。免疫応答は、抗体の生成または特異的免疫能力を有する細胞の活性化に係ることができる。当業者は理解すべきであるように、また、事実上、すべてのタンパク質またはペプチドの任意の高分子は抗原とされることができる。また、抗原は組換えまたはゲノムDNAに由来することができる。本明細書で当該用語が使用される場合、免疫応答を引き起こすタンパク質をコードするヌクレオチド配列または一部のヌクレオチド配列の任意のDNAが含まれると当業者は理解すべきである。さらに、当業者は、抗原が遺伝子の完全長ヌクレオチド配列のみによってコードされる必要がないことを理解すべきである。本発明は、複数の遺伝子の一部のヌクレオチド配列の使用を含むが、これに限定されず、これらのヌクレオチド配列は、所望の免疫応答を引き起こすポリペプチドをコードするように異なる組み合わせで排列される。また、当業者は、抗原が「遺伝子」によってコードされる必要がないことを理解すべきである。抗原は合成によって生成してもよく、生物学的サンプルに由来してもよく、ポリペプチド以外の高分子であってもよい。このような生物学的サンプルは、組織サンプル、腫瘍サンプル、その他の生物学的成分を有する細胞または液体を含むことができるが、これらに限定されない。
【0130】
「腫瘍抗原」とは、細胞癌化の過程で発現される新生物または過剰発現産物をいう。一部の態様では、本発明の過剰増殖性障害抗原は癌に由来する。本発明の腫瘍抗原は、甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR);CD171;CS−1;Cタイプレクチン様分子−1;ガングリオシドGD3;Tn抗原;CD19;CD20;CD22;CD30;CD70;CD123;CD138;CD33;CD44;CD44v7/8;CD38;CD44v6;B7H3(CD276)、B7H6;KIT(CD117);インターロイキン13受容体サブユニットα(IL−13Rα);インターロイキン11受容体サブユニットα(IL−11Rα);前立腺幹細胞抗原(PSCA);前立腺特異的膜抗原(PSMA);癌胎児性抗原(CEA);NY−ESO−1;HIV−1 Gag;MART−1;gp100;チロシナーゼ;メソセリン;EpCAM;プロテアーゼセリン21(PRSS21);血管内皮増殖因子受容体;血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2);ルイス(Y)抗原;CD24;血小板由来成長因子受容体β(PDGFR−β);ステージ特異的胎児抗原−4(SSEA−4);細胞表面関連ムチン1(MUC1)、MUC6;上皮成長因子受容体ファミリーおよびその変異体(EGFR、EGFR2、ERBB3、ERBB4、EGFRvIII);神経細胞接着分子(NCAM);炭酸脱水酵素IX(CAIX);LMP2;エフリンA受容体2(EphA2);フコシルGM1;シアリルルイス接着分子(sLe);ガングリオシドGM3;TGS5;高分子量黒色腫関連抗原(HMWMAA);O−アセチルGD2ガングリオシド;葉酸受容体;腫瘍血管内皮マーカー1(TEM1/CD248);腫瘍血管内皮マーカー7関連(TEM7R);Claudin6、Claudin18.2、Claudin18.1;ASGPR1;CDH16;5T4;8H9;αvβ6インテグリン;B細胞成熟抗原(BCMA);CA9;κ軽鎖(kappa light chain);CSPG4;EGP2;EGP40;FAP;FAR;FBP;胚性AchR;HLA−A1、HLA−A2;MAGEA1、MAGE3;KDR;MCSP;NKG2Dリガンド;PSC1;ROR1;Sp17;SURVIVIN;TAG72;TEM1;フィブロネクチン;テネイシン;腫瘍壊死ゾーンの癌胎児性変異体;Gタンパク質共役受容体Cグループ5−メンバーD(GPRC5D);X染色体オープンリーディングフレーム61(CXORF61);CD97;CD179a;未分化リンパ腫キナーゼ(ALK);ポリシアル酸;胎盤特異的1(PLAC1);globoH glycoceramideのヘキソース部分(GloboH);乳腺分化抗原(NY−BR−1);urоplakin2(UPK2);A型肝炎ウイルス細胞受容体1(HAVCR1);アドレナリン受容体β3(ADRB3);pannexin3(PANX3);Gタンパク質共役受容体20(GPR20);リンパ球抗原6複合遺伝子座K9(LY6K);臭覚受容体51E2(OR51E2);TCRγ代替リーディングフレームタンパク質(TARP);ウィルムス腫瘍タンパク質(WT1);ETS転座バリアント遺伝子6(ETV6−AML);精子タンパク質17(SPA17);X抗原ファミリーメンバー1A(XAGE1);アンジオゲニン結合細胞表面受容体2(Tie2);黒色腫癌精巣抗原−2(MAD−CT−2);Fos関連抗原1;p53変異体;ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT);肉腫転座ブレークポイント;アポトーシスのメラノーマ阻害剤(ML−IAP);ERG(膜貫通プロテアーゼセリン2(TMPRSS2)ETS融合遺伝子);N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV(NA17);ペアリングボックスタンパク質Pax−3(PAX3);アンドロゲン受容体;サイクリンB1;V−myc鳥類骨髄症ウイルス癌遺伝子神経芽細胞腫由来ホモログ(MYCN);RasホモログファミリーメンバーC(RhoC);チトクロームP450 1B1(CYP1B1);CCCTC結合因子(ジンクフィンガータンパク質)様(BORIS);T細胞によって認識される扁平上皮癌抗原3(SART3);ペアリングボックスタンパク質Pax−5(PAX5);proacrosin結合タンパク質sp32(OYTES1);リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ(LCK);Aキナーゼアンカータンパク質4(AKAP−4);滑膜肉腫Xブレークポイント2(SSX2);CD79a;CD79b;CD72;白血球関連免疫グロブリン様受容体1(LAIR1);IgA受容体のFcフラグメント(FCAR);白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーメンバー2(LILRA2);CD300分子様ファミリーメンバーf(CD300LF);C型レクチンドメインファミリー12メンバーA(CLEC12A);骨髄間質細胞抗原2(BST2);EGF様モジュール含有ムチン様ホルモン受容体様2(EMR2);リンパ球抗原75(LY75);グリピカン−3(GPC3);Fc受容体様5(FCRL5);免疫グロブリンλ様ポリペプチド1(IGLL1)を含むが、これらに限定されない。
【0131】
「癌」という用語は、インビトロ(例えば、形質転換された細胞)またはインビボでの過剰増殖性細胞増殖を特徴する広範な病症カテゴリーを指す。本発明の方法により治療または予防できる病状は、例えば、良性または悪性腫瘍、さまざまな過形成などを含む様々な新生物を含む。本発明の方法は、このような病状に係る望ましくない過剰増殖性細胞増殖の阻害および/または逆転を達成することができる。癌は、乳癌、神経膠腫、血液癌、結腸癌、直腸癌、腎細胞癌、肝臓癌、肺癌、小腸癌、食道癌、黒色腫、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚または眼の悪性黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部肉腫、尿道癌、陰茎癌、小児固形腫瘍、膀胱癌、腎癌または尿管癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)腫瘍 、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫、環境誘発性癌、前記癌の組み合わせおよび前記癌の転移巣の組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0132】
「トランスフェクション」または「形質導入(transduction)」という用語は、外因性核酸が宿主細胞に転移または導入されるプロセスを指す。「トランスフェクションされた」または「形質導入された」細胞は、外因性核酸でトランスフェクション、形質転換、または形質導入された細胞である。前記細胞は、原発性被験者細胞及びその後代を含む。
【0133】
「特異的に結合する」および「特異的に認識する」という用語は本明細書では同じ意味を有し、サンプルに存在する抗原(例えば、腫瘍抗原)を認識して結合する抗体またはリガンドを指し、当該抗体またはリガンドは基本的にはサンプル内の他の分子を認識または結合することはない。
【0134】
ここで使用される「難治」とは、治療に応答しない癌などの疾患を指す。実施形態では、難治性癌は、治療前または治療開始時に治療に対して耐性があることであってもよい。他の実施形態では、難治性癌は、治療中に耐性があることであってもよい。難治性癌は耐性癌とも呼ばれる。本発明において、難治性癌は、放射線療法に反応しない、放射線療法後に再発する、化学療法に反応しない、化学療法後に再発する、CAR−T治療に反応しないまたは治療後に再発する癌を含むが、これらに限定されない。難治性または再発性の悪性腫瘍について、本明細書に記載されている治療スキームを使用することができる。
【0135】
本明細書で使用される「再発した」とは、改善の期間、例えば、癌治療などの療法による以前の治療後、疾患(例えば、癌)、または癌などの疾患の徴候および症状の回復をいう。
「個体」および「被験者」という用語は、本明細書では同等の意味を有し、ヒトおよび他の種の動物に由来し得る。
【0136】
「増強」という用語は、被験者または腫瘍細胞が本明細書に開示された治療に応答する能力を改善することを可能にすることを指す。例えば、増強された応答は、応答性の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%またはそれ以上の増加を含むことができる。本明細書で使用されるように、「増強」はまた、免疫エフェクター細胞療法などの治療に応答する被験者の数を増やすことを指すこともできる。例えば、増強された応答は、治療に応答する被験者の合計パーセンテージを指すことができ、パーセンテージは、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または98%またはそれ以上である。
【0137】
一態様では、治療は、次の臨床結果、すなわち、T細胞の抗腫瘍活性の増加、増強または延長;治療前の数と比較して、抗腫瘍T細胞または活性化T細胞の数の増加、IFN−γ、TNFαの分泌の促進、またはそれらの組み合わせにより決められる。もう一態様では、臨床結果は、腫瘍の退縮;腫瘍の縮小;腫瘍の壊死;免疫系を介した抗腫瘍反応;腫瘍の拡大、再発または拡散、またはそれらの組み合わせである。もう一態様では、治療効果は、T細胞の存在、T細胞炎症を示す遺伝子マーカーの存在、IFN−γ、TNFαの分泌の促進、またはそれらの組み合わせによって予測される。一態様では、腫瘍の治療は、治療によって癌細胞の成長、生存または活力を低下させることを含む。
【0138】
本明細書に開示されたような免疫エフェクター細胞は、経口、または、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、眼窩内、嚢内、腹腔内、直腸内、大槽内、腫瘍内、鼻腔内(intravasally)、皮内、または皮膚パッチまたは経皮イオントフォレーシスを使用して皮膚を通した受動的または促進された吸収などの非経口胃腸外を含む様々な経路によって個体に投与することができる。
【0139】
本発明の方法を実施する際に投与される試薬の総量は、単一用量としてボーラス注入、または比較的短時間にわたる注入によって被験者に投与することができ、または段階的治療スキームを使用して投与することができ、延長した時間にわたって複数の用量を投与する。被験者の病状を治療するための組成物の量が、被験者の年齢および一般的な健康、並びに投与経路および投与される治療回数を含む多くの要因に依存することは、当業者は分かるであろう。これらの要因を考慮に入れて、当業者は必要に応じて具体的な用量を調整する。一般に、最初に、フェースIとフェースIIの臨床試験を使用して組成物の調製および投与経路と頻度を測定する。
【0140】
範囲:この開示全体を通して、本発明の様々な態様は範囲の形で存在することができる。範囲の形に対する説明は、単に便宜および簡潔さのためであり、本発明の範囲に対する変更不可能な制限と見なされるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲についての説明は、すべての可能なサブ範囲およびその範囲内の個々の値を具体的に開示したと見なされるべきである。例えば、1〜6のような範囲の説明は、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6などのサブ範囲、および、1、2、2.7、3、4、5、5.3、および6など、その範囲内の個々の値を具体的に開示したと見なされるべきである。別の例として、95〜99%の同一性などの範囲は、95%、96%、97%、98%または99%の同一性の範囲を含み、さらに、96〜99%、96〜98%、96〜97%、97〜99%、97〜98%、および98〜99%の同一性などのサブ範囲をも含む。これは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0141】
本開示に基づいて、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、開示された具体的な実施形態において多くの変更または変化をすることができ、しかも依然として同じまたは類似した結果を得ることができると当業者は理解するのであろう。本発明は範囲上で、本明細書に記載の具体的な実施形態(本発明の各態様としての例示説明のみを目的とする)に制限されていなく、機能的に同等の方法および組成は本発明の範囲内にある。実際、本発明の様々な修飾および本明細書に示されて説明された修飾は、前述の説明により当業者にとって明らかになるであろう。
【0142】
次は、具体的な実施例を組み合わせて本発明についてさらに説明する。これらの実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。以下の実施例において具体的な条件を示していない実験方法は、通常の条件、例えば、J.Sambrookらの『Molecular Cloning』(科学出版社、2002)に記載の条件、または製造業者によって推奨された条件に従う。
【0143】
本発明の例示的な抗原受容体、CARを含み、およびエンジニアリング改善のための、並びに受容体を細胞に導入する方法について、例えば、中国特許出願公開番号CN107058354A、CN107460201A、 CN105194661A、CN105315375A、CN105713881A、CN106146666A、CN106519037A、CN106554414A、CN105331585A、CN106397593A、CN106467573A、CN104140974A、国際特許出願公開番号WO2017186121A1 、WO2018006882A1、WO2015172339A8、WO2018/018958A1に開示されたものを参照する。
【実施例】
【0144】
実施例1:CAR−T細胞の構築
図1Aに示されるプラスミドプロファイルを参照すると、本分野の従来の分子生物学的方法が使用されて、ヒト化抗体hu9F2(ヌクレオチド配列はSEQ ID NO:5に示される通りであり、アミノ酸配列はSEQ ID NO:14に示される通りである)の次世代キメラ抗原受容体を発現するレンチウイルスプラスミドPRRLSIN−hu9F2−28Zが構築された。
【0145】
抗体hu9F2は、SEQ ID NO:15、16、17に示されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、及びSEQ ID NO:18、19、20に示されるLCDR1、LCDR2、LCDR3を含む。
【0146】
Hu9F2−28Z配列は、CD8αシグナルペプチド(SEQ ID NO:6)、hu9F2 scFv(SEQ ID NO:5)、CD8 hinge(SEQ ID NO:7)、CD28膜貫通領域(SEQ ID NO:10)と細胞内シグナル伝達ドメイン(SEQ ID NO:8)、およびCD3の細胞内セグメントCD3ζ(SEQ ID NO:9)から構成される。PRRLSIN−hu9F2−28Zを293Tパッケージングレンチウイルスにトランスフェクションして、レンチウイルスを得た。
【0147】
T細胞の活性化:ヒトPBMCをAIM−V培地で培養し、2%ヒトAB型血清、500U/mL組換えヒトIL−2を加え、CD3/CD28抗体結合磁気ビーズを加えて48時間活性化した。得られたレンチウイルスを活性化されたT細胞に感染させ、hu9F2−28Z CART細胞を得た。フローサイトメトリーの結果は図1Bに示され、そのCARの配列はSEQ ID NO:22に示される。
【0148】
実施例2:CCK8実験による、肝臓癌細胞及びCAR−T細胞に対するソラフェニブの毒性の検出
実施例1のhu9F2−28Z CAR T細胞を取って、1ウェルあたり100ul培地で、4×104の細胞にするように96ウェルプレートに広げた。肝臓癌細胞PLC/RPF/5(GPC3を低発現する)、SK−HEP−1(GPC3を発現しない)、Huh7(GPC3を高発現する)を取って、1ウェルあたり100ul培地で、4000の細胞にするように96ウェルプレートに広げた。溶解度の異なるソラフェニブを取ってそれぞれ細胞に加え、6つの勾配(すなわち、10μM、5μM、1μM、0.5μM、0.1μM、0μMの6つの溶解度勾配、10μM、5μM、1μM、0.5μM、0.1μMは投与群、0μM1は0投与群)にし、さらに、培地のみのウェルの群をブランク群として設立した。48時間後、各ウェルに10μlのCCK8試薬(Dojindo社)を加え、37℃で1時間インキュベーションした後、マイクロプレートリーダーで450nmの吸光度を測定し、細胞生存率をそれぞれ算出した。
【0149】
計算式は次の通りである:細胞生存率(%)=[A(投与)−A(ブランク)]/[A(0投与)−A(ブランク)]
その結果は図2に示すように、ソラフェニブはCAR T細胞に対して明らかな阻害効果を有さない。
【0150】
実施例3:ソラフェニブで前処理された腫瘍細胞に対するCAR T細胞の殺傷活性
Huh7細胞を含む培地に、異なる濃度のソラフェニブ(1μM、0.1μM、0μM)をそれぞれ加え、37℃で24時間培養した後、トリプシン消化し、PBSで残りの薬剤を洗浄した。実施例1のhu9F2−28Z CAR T細胞を取って、上記異なる濃度のソラフェニブで前処理されたHuh7細胞とそれぞれ1:1でインキュベーションし、18時間後にCytox 96 Non−Radioactive Cytotoxicity Assay(Promaga社、REF:G1782)を使用して、異なる濃度のソラフェニブで前処理された腫瘍細胞に対するhu9F2−28Z CAR T細胞の殺傷を検出した。
【0151】
その結果、図3に示すように、ソラフェニブを加えなかった群と比較して、0.1μmソラフェニブで処理された腫瘍細胞は、CAR T細胞の殺傷に対する感受性が11%増加し、1μmソラフェニブで処理された腫瘍細胞は、CAR T細胞の殺傷に対する感受性が16.8%増加した。
【0152】
実施例4:hepa1−6−GPC3皮下腫瘍に対する、ソラフェニブとCAR T細胞との組み合わせの使用の阻害効果
本実施例では、マウスの遺伝子配列を使用してCARの膜貫通ドメインと細胞内ドメインを構築した。C57BL/6マウス(免疫系が正常なマウス)を次の5つの群に分けた:
Vehicle群:ソラフェニブ非投与群;
Sorafenib群:ソラフェニブ単独投与群;
CAR T+vehicle群:hu9F2−m28Z CAR T細胞と溶媒投与群;
UTD+sorafenib群:CARに感染していないT細胞とソラフェニブ投与群;
CAR T+sorafenib群:hu9F2−m28Z CAR T細胞とソラフェニブ投与群。
【0153】
1、従来の分子生物学的手段を使用して、ヒトマウスキメラGPC3(SEQ ID NO:11)の過剰発現されたマウス肝臓癌細胞Hepa1細胞モデル(Hepa1−6−GPC3)を構築した。図4に示すように、GPC3を過剰発現するHepa1−6細胞はフローサイトメトリーにより確認された。
【0154】
2、対数増殖期にあり、且つ良好に増殖しているHepa1−6−GPC3細胞を収集し、C57BL/6マウス(免疫系が正常なマウス)の右腋窩皮下に1×107の標的細胞を播種した。
【0155】
3、腫瘍播種後4日目に、マウス脾臓Tリンパ球を採取して、hu9F2−m28Z CAR T細胞を構築した。構築方法は下記の通りである。
マウスCD8αシグナルペプチドのコード配列(SEQ ID NO:4)、hu9F2 scFv(SEQ ID NO:5)、マウスCD8αヒンジ領域および膜貫通領域のコード配列(SEQ ID NO:1)、マウスCD28細胞内ドメインのコード配列(SEQ ID NO:2)、マウスCD3ζ細胞内ドメインのコード配列(SEQ ID NO:3)を順に接続し、hu9F2−m28Z遺伝子断片をインビトロ遺伝子合成によって取得し、レトロウイルスベクターMSCV−IRES−GFP(Addgeneから購入)におけるIRES−GFPフラグメントをMlu IとSal I二重制限酵素消化部位で置き換えて、組換えベクターMSCV−hu9F2−m28Zを得た。MSCV−hu9F2−m28Zで293T細胞を感染させ、パッケージングされたレトロウイルスを得た。
【0156】
マウス脾臓Tリンパ球を採取し、Dynabeads Mouse T−activator CD3/CD28で活性化したあと、レトロウイルスを加えて12時間感染させ、hu9F2−m28Z CAR T細胞を得た。
【0157】
4、腫瘍播種後7日目にソラフェニブまたは溶媒を次のように投与した。すなわち、ソラフェニブを溶媒(5%DMSO、45%PEG400、50%H2O)に溶解し、Sorafenib群、UTD+sorafenib群、CAR T+sorafenib群マウスに強制飼養し、マウスあたりの投与量は7.5mg/kgであった。Vehicle群とCAR T+vehicle群に溶媒を強制飼養した。ソラフェニブの最初の投与は0日目として記録し、連続5日間、1日1回投与した。
【0158】
5、腫瘍播種後8日目に、CAR T+vehicle群とCAR T+sorafenib群に対して、各マウスに3×106のhu9F2−m28Z CAR T細胞を与え、UTD+sorafenib群には3×106のCARを感染していないT細胞を与えた。
【0159】
腫瘍体積の変化を観察し続け、週に3回測定した。腫瘍体積の計算式は、(長さ×幅2)/2である。腫瘍体積の検出結果は図5に示すように、他の群と比較して、CAR T+sorafenib群は、腫瘍増殖を有意に阻害する効果を有する(Two−way ANOVA with Bonferroni post−tests,*はp<0.05を表し、**はp<0.01を表し、***はp<0.001を表す)。
【0160】
治療後22日までに、CAR T+sorafenib併用治療群のマウス6匹中、4匹の腫瘍が消えたが、他の群には腫瘍が消えたマウスはなかった。治療後22日目(すなわちDay22)にマウスの首を切って殺処分し、マウスの皮下腫瘍を剥がして腫瘍の重量を量った。結果は図6に示す。その結果、Vehicle群、Sorafenib群、CAR T+vehicle群、UTD+sorafenib群と比較して、CAR T+sorafenib併用治療群には有意な腫瘍阻害効果があることは示された(Unpaired t test、*はp<0.05を表し、**はp<0.01を表し、***はp<0.001を表す)。
【0161】
実施例5:CAR T細胞の脱顆粒、増殖、および殺傷に対するソラフェニブの影響の検出
1、脱顆粒マーカーCD107aに対するソラフェニブの影響
実施例1のhu9F2−m28Z CAR T細胞と、異なる濃度のソラフェニブと、PLC/RPF/5細胞と一緒に24時間インキュベーションした後、処理されたCAR T細胞を収集し、抗ヒトCD107a−PerCP抗体(eBioscience)およびGFP蛍光タンパク質付きGPC3タグタンパク質をインキュベーションし、それぞれヒトCD107aとCARの発現状況を表したPerCPおよびGFPの蛍光強度をフローサイトメトリーで検出した。その結果、図7Aに示すように、ソラフェニブ未添加群とソラフェニブ処理群のCD107aの発現能力には有意な変化はなかった。
【0162】
2、CAR T細胞の増殖に対するソラフェニブの影響
CellTrace Violetキット(Thermofisher)を使用して異なる世代の細胞増殖の状況を監視した。hu9F2−m28Z CAR T細胞を取り、CellTrace色素作業溶液を加え、37℃でインキュベーションして色素を中和した。
【0163】
上記の処理後のhu9F2−28Z CAR T細胞とPLC/RPF/5細胞を1:1の比率で24ウェルプレートに広げ、それぞれ異なる濃度のソラフェニブ(0、1、5、10μM)を加えて24時間共培養し、各群に3つの複製ウェルを設けた。
【0164】
各群の細胞をフローサイトメトリーで検出し、ソラフェニブの結果を図7Bに示す。ソラフェニブ未添加群とソラフェニブ処理群をGPC3を発現する腫瘍細胞と共インキュベーションした後、CAR T細胞の増殖能力には有意な変化はなかった。
【0165】
3、インビトロ細胞毒性試験
a)PLC/RPF/5細胞を標的細胞とし、実施例1のhu9F2−28Z CAR T細胞をエフェクター細胞とした。適切な量のhu9F2−28Z CAR T細胞を取り、異なる濃度のソラフェニブ(0、1、5、10μM)で4時間処理した後、それぞれ遠心分離して収集した。
【0166】
実験群プレーティング:標的細胞の数は10000/ウェルであり、エフェクター細胞は、ソラフェニブで処理されたhu9F2−28Z CAR T細胞であった。エフェクター細胞と標的細胞との比率はそれぞれ、20:1、10:1、5:1、2.5:1であり、その比率によって異なる数のエフェクター細胞を加えた。各群に5つの複製ウェルを設けた。
【0167】
対照群プレーティング:この実験では、エフェクター細胞、標的細胞から自発的に放出されるLDHの干渉、および培地に含まれるLDHの干渉を排除するために、他の対照群を設置する必要がある。それぞれ、標的細胞の最大放出LDH対照群;標的細胞の自発放出LDH対照群;エフェクター細胞の自発放出LDH対照群;ブランク培地バックグラウンド群;ブランク培地バックグラウンドにライセートを加えた群であった。各群に5つの複製ウェルを設けた。
【0168】
上記の細胞プレーティングを完成した後、37℃、5%CO2恒温インキュベーターでインキュベーションしてから、基質の発色のためにELISAマイクロプレートに移した。490nmでの吸光度をマイクロプレートリーダーで測定し、細胞の殺傷毒性をそれぞれ算出した。
【0169】
b)計算式は次の通りである:細胞毒性(%)=(実験群−エフェクター細胞自発群−標的細胞自発群−バックグラウンド群)/(標的細胞最大群−標的細胞自発群−ライセートバックグラウンド群)。
【0170】
その結果は図7Cに示すように、ソラフェニブで処理されたhu9F2−28Z CAR T細胞は、GPC3陽性の腫瘍細胞に対する殺傷毒性に有意な変化はなかった。
上記の結果は、ソラフェニブがCAR T細胞の脱顆粒能力、増殖、および腫瘍細胞に対する殺傷毒性を影響しないことを示した。
【0171】
実施例6:CAR T細胞のサイトカイン分泌に対するソラフェニブの影響
具体的な手順について、cytometric bead array system(BD,USA)の説明書に記載の手順を参照するが、以下のように簡単に説明する。
【0172】
a)上澄を収集する:実施例1の1×105hu9F2−28Z CAR T細胞をGPC3タンパク質コーティングプレートの24ウェルプレートに広げ、異なる濃度のソラフェニブ(0、1、5、10μM)を加えて処理し、37℃、5%CO2インキュベーターで培養した後に遠心分離して細胞の上澄を収集し、その中のヒトサイトカインIL2、IFN−γ、TNF−αの濃度を検出した。
【0173】
b)ヒトサイトカインIL2、IFN−γ、TNF−αの捕捉用ミクロスフェア(cytometric bead array system,BD,USA)を取って懸濁して混合した。
【0174】
c)捕捉用ミクロスフェアの混合液および検出抗体を標準品または上澄サンプルに加え、暗所で室温でインキュベーションした。インキュベーション後、洗浄緩衝液で洗浄し、遠心分離して上澄を捨てた。
【0175】
IL2、IFN−γ、TNF−αの分泌レベルをフローサイトメトリーで検出し、その結果は図8A、8B、8Cに示し、その中で、nsはp>0.05、*はp<0.05、**はp<0.01、***はp<0.0001、1way ANOVAを表す。
【0176】
実施例7:ソラフェニブとヒトCAR T細胞の併用による肝臓癌治療
1、ヒト肝臓癌細胞の移植腫瘍モデルを構築する:対数増殖期のPLC/RPF/5細胞5×106の細胞をNSGマウスの腋窩皮膚に播種し、播種当日を0日目(Day 0)とした。
【0177】
2、11日目(Day 11):マウスの皮下腫瘍の体積は約150mm3であり、腫瘍の体積によってランダムに6つの群に分け、各群で5〜6匹にした。ソラフェニブを溶媒(5%DMSO、45%PEG400、50%H2O)に溶解させた。ソラフェニブ非投与群には溶媒を与えた。
【0178】
(1)対照群(Vehicle):Day 11から実験群と同じ容量で溶媒を1日1回、2週間与えた。
(2)単独治療群(合計3つの群):
Sora7.5:Day 11からソラフェニブ7.5mg/kgを1日1回、2週間強制飼養した。
【0179】
Sora30:Day 11からソラフェニブ30mg/kgを1日1回、2週間強制飼養した。
CAR+Vehicle:Day 11から実験群と同じ容量で溶媒を1日1回、2週間与えた。同日(Day 11)に溶媒投与後、実施例1の2×106のhu9F2−28Z CAR T細胞を尾静脈注射により投与した。
【0180】
(3)併用治療群(合計2つの群):
CAR+Sora7.5:Day 11からソラフェニブ7.5mg/kgを1日1回、2週間強制飼養した。同日(Day 11)にソラフェニブ投与後、実施例1の2×106のhu9F2−28Z CAR T細胞を尾静脈注射により投与した。
【0181】
CAR+Sora30:Day 11からソラフェニブ30mg/kgを1日1回、2週間強制飼養した。同日(Day 11)にソラフェニブ投与後、実施例1の2×106のhu9F2−28Z CAR T細胞を尾静脈注射により投与した。
【0182】
3、週に2回、マウスの皮下腫瘍の体積変化を測定して記録した。腫瘍体積の計算式は、腫瘍体積=(腫瘍長さ×腫瘍幅2)/2である。結果を図9Aに示す。単独治療群と比較して、ソラフェニブとhu9F2−28Z CAR T細胞の併用治療は、腫瘍増殖を有意に阻害することができる(P<0.001、2way ANOVA)。
【0183】
対照群を参照して腫瘍阻害率を算出し、腫瘍播種後の43日目(Day 43)の各群の腫瘍阻害率は、Sora7.5では18.8%、Sora30では35.8%、CAR+Vehicleでは25.3%、CAR+Sora7.5では68.7%、CAR+Sora30では75.2%であった。
【0184】
43日目(Day 43)にマウスを安楽死させ、皮下腫瘍を剥し、腫瘍の重量を量った。その結果、図9Bに示すように、単独治療群と比較して、ソラフェニブとhu9F2−28Z CAR T細胞の併用治療(7.5mg/kgまたは30mg/kg)における腫瘍の重量は有意に減少した(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、1way ANOVA)。
【0185】
4、CAR T細胞腫瘍内の浸潤と細胞アポトーシス
1)従来の組織切片調製方法を用いて、安楽死させたマウスの腫瘍組織を組織切片にした。
【0186】
2)抗ヒトCD3抗体(Thermo Scientific)を用いてステップ1)で準備した腫瘍組織切片中のヒトCAR T細胞を検出した。結果を図10Aに示す。hu9F2−28Z CAR T細胞単独で治療したマウスと比較して、hu9F2−28Z CAR T細胞とソラフェニブ(7.5mg/kgまたは30mg/kg)を組み合わせて治療したマウスの方は、腫瘍組織にはより多くのCD3+のヒトCAR T細胞があり(*p<0.05、**p<0.01、1way ANOVA)、hu9F2−28Z CAR T細胞治療を受けなかった群では、CD3+ヒトCAR T細胞の染色は観察されなかった。その結果は、ソラフェニブが腫瘍組織におけるCAR T細胞の浸潤を促進できることを示した。
【0187】
3)抗cleaved caspase−3抗体(Cell Signaling Technology)を使用して、ステップ1での腫瘍組織切片のアポトーシス細胞を検出した
組織切片を免疫組織化学染色し、腫瘍組織の細胞核をヘマトキシリンで再染色した。結果を図10Bに示す。対照群とhu9F2−28Z CAR T細胞で単独治療したマウスと比較して、hu9F2−28Z CAR T細胞とソラフェニブ(7.5mg/kgまたは30mg/kg)を組み合わせて治療したマウスのほうは、腫瘍組織ではより多くのcleaved caspase−3陽性細胞を有する。
【0188】
2匹のマウスの腫瘍切片で合計5つの異なる視野から観察して統計した結果、図10Cに示すように、ソラフェニブとCAR T細胞を組み合わせて使用する場合、アポトーシスが発生した腫瘍細胞の数は有意に増加した(**p<0.01、***p<0.001、1way ANOVA)。
【0189】
実施例8:ソラフェニブとヒトCAR T細胞との相乗作用のインビトロ検出
CellTrace Violetキットの実験操作を参照して、ヒト肝癌細胞PLC/RPF/5をCellTrace色素で標識した。標識されたPLC/RPF/5をhu9F2−28Z CAR T細胞と1:1の比率で混合し、異なる濃度のソラフェニブ(0、1、5、10μM)をそれぞれ加えて細胞インキュベーターに48時間共インキュベーションし、遠心分離して細胞を収集し、FITC Annexin Vアポトーシス検出キット(BDから購入)における染色緩衝液を使用して細胞ペレットを再懸濁し、染色するためにAnnexin V−FITC色素を加えた。機器による検出:染色された細胞を遠心分離して収集し、染色緩衝液で再懸濁し、フローサイトメトリーで検出した。BV421チャネルで収集された紫色の光のシグナルは、すべての腫瘍細胞を表す。FITCチャネルで収集された緑色の光は、アポトーシスが発生した腫瘍細胞を表す。FlowJoソフトウェアでデータを処理した。
【0190】
その結果、図11に示すように、hu9F2−28Z CAR T細胞とソラフェニブとを組み合わせて治療した腫瘍細胞のアポトーシスの割合は有意に上昇し、アポトーシスが発生した腫瘍細胞の数は有意に増加した(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、1way ANOVA)。
【0191】
上記のインビトロ実験結果は、ソラフェニブとCAR T細胞の併用治療が腫瘍細胞のアポトーシスを相乗的に促進できることを示した。
実施例9:マウスの肝臓癌移植腫瘍の治療に対するCAR T細胞とレゴラフェニブとの組み合わせの使用の影響
実施例4の操作を参照して、Hepa1−6−chGPC3細胞C57BL/6の移植腫瘍モデルとhu9F2−28Z CAR T細胞を構築した。
【0192】
腫瘍細胞移植後8日目に、マウスを腫瘍の体積によってランダムに3つの群に分け、レゴラフェニブ治療群と、レゴラフェニブ+CAR T併用群のマウスに10mg/kgのレゴラフェニブを強制飼養し、対照群に溶媒を与え、1日1回、連続して10日間与えた。
【0193】
腫瘍細胞移植後9日目に、CAR T治療群マウスおよびレゴラフェニブ+CAR T併用群に2×106のCAR T細胞を尾静脈注射により投与した後、マウスの皮下腫瘍の体積変化を週に2回測定して記録し、その結果を図12に示す。
【0194】
実施例10:ソラフェニブとCAR T細胞の併用治療の臨床試験
被験者Aは60歳、体重77kg、身長170cmであり、肝細胞癌と診断されて7か月の手術治療後も進行性の状態にあり、免疫組織化学ではGPC3陽性(70%、++〜+++)を示した。この状況下で、患者は本発明の技術構成の治療を受けた。
【0195】
アフェレーシス後、患者はソラフェニブを1日2回、1回当たり200mg〜400mgを経口服用し(患者の耐容用量を基準にして、当該被験者では1回200mg)、毎日投与し続けた。
【0196】
実施例1の操作を参照し、レンチウイルスを患者のT細胞に感染させた後、hu9F2−28Z CAR T細胞を調製した。
ソラフェニブを投与し始めて2週間後、しかもCAR−T細胞の投与前に、患者は、フルダラビン約39mg/日×4日(約20mg/m2/日)とシクロホスファミド約1000mg/日×2日(約500mg/m2/日)を含む、リンパ球の除去を受けた。
【0197】
リンパ球の除去処理後の3日目から、5×108のCAR−T細胞(約6.49×106のCAR−T細胞/kg患者の体重、合計投与量は約0.13×108のCAR−T細胞)を2日間連続して与えた。
【0198】
CAR−T細胞投与後の3日目に、CAR−T細胞投与前と比較してAFPは35%低下し、CAR−T細胞投与後の13日目に、CAR−T細胞投与前と比較してAFPは58.2%低下した。
【0199】
4週間治療した後にCT検査した結果、画像は図13に示すように、ベースラインと比べて、3つの可能な標的巣は明らかに縮小し、時点での部分寛解(PR)に達した。
上記実施例において、例示的に、GPC3を標的とするCAR−T細胞のCARに有するSEQ ID NO:22に示されるアミノ酸配列を使用した。当業者は上記実施例の教示に従って、例えば、SEQ ID NO:21、23、または24に示される配列を使用することができる。
【0200】
上記実施例において、例示的に、GPC3を標的とするCAR−T細胞を使用した。当業者は本願の教示に従って、他の標的を標的とするCAR−T細胞を使用することができ、例えば、EGFRを標的とするCAR−T細胞(例示的に、EGFRを標的とするCAR−T細胞のscFvの配列はSEQ ID NO:12に示される)、CLD18A2を標的とするCAR−T細胞(例示的に、CLD18A2を標的とするCAR−T細胞のscFvの配列はSEQ ID NO:13に示される)を使用することができる。
【0201】
本発明に係る配列情報は以下の通りである:
【0202】
【表1】
【0203】
本発明において言及されたすべての文献は、各文献が参照として単独で引用されるように、参照として本願に引用される。また、本発明の上記の教示内容を読んだ上で、当業者は本発明について様々な修正または変更をすることができ、これらの同等の形態も、本願の添付の請求の範囲によって限定される範囲内にあると理解されたい。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13
【配列表】
2021512875000001.app
【手続補正書】
【提出日】2020年12月3日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疫エフェクター細胞および第2の治療剤を含有することを特徴とする、腫瘍治療剤または癌細胞の成長、生存若しくは活力の低下剤であって、前記免疫エフェクター細胞は、腫瘍抗原を認識する受容体を発現し、
前記第2の治療剤は、式Iで表される化合物、またはその薬学上許容される塩である腫瘍治療剤または癌細胞の成長、生存若しくは活力の低下剤
【化1】
[式中、Ar’は非置換または置換フェニル基であり、置換基はハロゲンおよびC1−10アルキル基から選択され、
Mは、−O−またはーS−から選択される1つ以上の架橋基であり、
Py(X)はXで置換されたピリジル基であり、XはーC(O)Rであり、その中で、RはNRであり、RとRはそれぞれ、
a)水素、
b)C1−10アルキル基、
c)ヒドロキシで置換されたC1−10アルキル基、
d)1〜3個のN、SまたはOのヘテロ原子を含むC3−12シクロアルキル基、または
e)−OSi(R)3(式中、RはC1−10アルキル基である)
であり、
Ar”は非置換または置換フェニル基であり、置換基はハロゲンまたはWnから選択され、n=0〜3であり、Wは、
a)C1−10アルキル基、
b)C1−10アルコキシ基、
c)C1−10ハロアルキル基、
d)1〜3個のN、SまたはOのヘテロ原子を含むかつC1−10アルキル基で置換されてもよいC3−12ヘテロアリール基
から選択される]。
【請求項2】
腫瘍に罹患している個体に前記免疫エフェクター細胞投与される前に、前記個体に対してリンパ球除去されないことを特徴とする、請求項1に記載の腫瘍治療剤または癌細胞の成長、生存若しくは活力の低下剤
【請求項3】
前記免疫エフェクター細胞および前記第2の治療剤の治療効果は、前記免疫エフェクター細胞および前記第2の治療剤のいずれか1つを単独で使用する効果より大きいことを特徴とする、請求項1に記載の腫瘍治療剤または癌細胞の成長、生存若しくは活力の低下剤
【請求項4】
前記Ar”は置換フェニル基であり、置換基は、塩素、臭素、フッ素、トリフルオロメチル、メトキシ、及びtert−ブチルからなる群より選択されるいずれか1つまたはそれらの組み合わせであり、若しくは、
前記MはーO−であり、若しくは、
前記Raおよび前記RbはそれぞれHまたはC1−10アルキルであり、好ましくは、前記Raおよび前記RbはそれぞれHとメチル基であることを特徴とする、請求項1に記載の腫瘍治療剤または癌細胞の成長、生存若しくは活力の低下剤
【請求項5】
前記薬学上許容される塩は、a)無機酸および有機酸の塩基性塩と、b)有機および無機塩基の酸性塩とから選択され、前記無機酸および有機酸は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、1−ナフタレンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、シュウ酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、安息香酸、サリチル酸、フェニル酢酸およびマンデル酸からなる群より選択され、前記有機および無機塩基のカチオンは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、アンモニウムカチオン、脂肪族基置換アンモニウムカチオン、及び芳香族基置換アンモニウムカチオンからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の腫瘍治療剤または癌細胞の成長、生存若しくは活力の低下剤
【請求項6】
前記第2の治療剤は、下記の
N−(2−メトキシ−(5−トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−(2−カルバモイル−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−(5−トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−(2−(N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−(5−トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(4−(2−カルバモイル−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−(5−トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(4−(2−(N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−(5−トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(4−(2−(N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルチオ)フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−(5−トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(2−クロロ−4−(2−(N−メチルカルバモイル)(4−ピリジルオキシ))フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−(5−トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−クロロ−4−(2−(N−メチルカルバモイル)(4−ピリジルオキシ))フェニル)尿素、
N−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−(2−カルバモイルー4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−(2−(N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(4−(2−カルバモイルー4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(4−(2−(N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(4−クロロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−2−フルオロ−(4−(2−(N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(4−ブロモ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−(2−(N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(4−ブロモ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(4−(2−(N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(4−ブロモ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−(2−(N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルチオ)フェニル)尿素、
N−(4−ブロモ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(2−クロロ−4−(2−(N−メチルカルバモイル)(4−ピリジルオキシ))フェニル)尿素、
N−(4−ブロモ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−クロロ−4−(2−(N−メチルカルバモイル)(4−ピリジルオキシ))フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−4−クロロ−5−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−(2−(N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−4−クロロ−5−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(4−(2−(N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−4−クロロ−5−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(2−クロロ−4−(2−(N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素、
N−(2−メトキシ−4−クロロ−5−(トリフルオロメチル)フェニル)−N’−(3−クロロ−4−(2−(N−メチルカルバモイル)−4−ピリジルオキシ)フェニル)尿素
のいずれか1つで示される化合物またはその薬学上許容される塩から選択されるものであり、
好ましくは、前記第2の治療剤は、下記式IIまたは式IIIで表される化合物、またはその薬学上許容される塩から選択されることを特徴とする、請求項1〜いずれか一項に記載の腫瘍治療剤または癌細胞の成長、生存若しくは活力の低下剤
【化2】
【請求項7】
前記薬学上許容される塩は、トルエンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、塩酸塩、メタンスルホン酸塩からなる群より選択されることを特徴とする、請求項に記載の腫瘍治療剤または癌細胞の成長、生存若しくは活力の低下剤
【請求項8】
前記第2の治療剤は、式IIIで表される化合物または式IIIで表される化合物の水和物であり、好ましくは一水和物であることを特徴とする、請求項に記載の腫瘍治療剤または癌細胞の成長、生存若しくは活力の低下剤
【請求項9】
前記第2の治療剤を、1日あたり100〜1000mg投与し、好ましくは、1日あたり200〜800mg投与し、より好ましくは、1日あたり400〜800mgを投与し、
好ましくは、前記第2の治療剤を1日あたり1〜3回投与し、
より好ましくは、第2の治療剤を1日あたり2回投与し、
さらに好ましくは、薬剤を中止する必要がある、または薬剤を中止することができると医師が評価するまで、例えば、完全に改善された後に薬剤を中止する、または疾患の進行によって薬剤を中止すると医師が評価するまで、前記第2の治療剤を継続的に投与することを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の腫瘍治療剤または癌細胞の成長、生存若しくは活力の低下剤
【請求項10】
前記免疫エフェクター細胞の1回当たりの投与量は約1×10〜1×10細胞/kg被験者の体重であり、
好ましくは、1回あたりの投与量は約1×10〜1×10細胞/kg被験者の体重であることを特徴とする、請求項に記載の腫瘍治療剤または癌細胞の成長、生存若しくは活力の低下剤
【請求項11】
前記免疫エフェクター細胞および前記第2の治療剤の投与順序は決まっておらず
好ましくは、前記第2の治療剤の投与中に前記免疫エフェクター細胞を投与し、
更に好ましくは、前記第2の治療剤は経口投与されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の腫瘍治療剤または癌細胞の成長、生存若しくは活力の低下剤
【請求項12】
前記受容体は、キメラ抗原受容体(Chimeric Antigen Receptor、CAR)、T細胞受容体(T cell receptor、TCR)、T細胞融合タンパク質(T cell fusion protein、TFP)、T細胞抗原カプラー(T cell antigen coupler、TAC)およびそれらの組み合わせからなる群より選択され
好ましくは、前記キメラ抗原受容体は、
(i)腫瘍抗原を特異的に認識する抗体またはそのフラグメント、CD28またはCD8の膜貫通領域、CD28の共刺激シグナルドメインおよびCD3ζの細胞内ドメイン;または
(ii)腫瘍抗原を特異的に認識する抗体またはそのフラグメント、CD28またはCD8の膜貫通領域、CD137の共刺激シグナルドメインおよびCD3ζの細胞内ドメイン;または
(iii)腫瘍抗原を特異的に認識する抗体またはそのフラグメント、CD28またはCD8の膜貫通領域、CD28の共刺激シグナルドメイン、CD137の共刺激シグナルドメインおよびCD3ζの細胞内ドメインを有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の腫瘍治療剤または癌細胞の成長、生存若しくは活力の低下剤
【請求項13】
前記腫瘍抗原は、
甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR);CD171;CS−1;Cタイプレクチン様分子−1;ガングリオシドGD3;Tn抗原;CD19;CD20;CD22;CD30;CD70;CD123;CD138;CD33;CD44;CD44v7/8;CD38;CD44v6;B7H3(CD276)、B7H6;KIT(CD117);インターロイキン13受容体サブユニットα(IL−13Rα);インターロイキン11受容体サブユニットα(IL−11Rα);前立腺幹細胞抗原(PSCA);前立腺特異膜抗原(PSMA);癌胎児性抗原(CEA);NY−ESO−1;HIV−1 Gag;MART−1;gp100;チロシナーゼ;メソセリン;EpCAM;プロテアーゼセリン21(PRSS21);血管内皮増殖因子受容体;ルイス(Y)抗原;CD24;血小板由来成長因子受容体β(PDGFR−β);ステージ特異的胎児抗原−4(SSEA−4);細胞表面関連ムチン1(MUC1)、MUC6;上皮成長因子受容体ファミリーおよびその変異体(EGFR、EGFR2、ERBB3、ERBB4、EGFRvIII);神経細胞接着分子(NCAM);炭酸脱水酵素IX(CAIX);LMP2;エフリンA受容体2(EphA2);フコシルGM1;シアリルルイス接着分子(sLe);ガングリオシドGM3(aNeu5Ac(2−3)bDGalp(1−4)bDGlcp(1−1)Cer;TGS5;高分子量黒色腫関連抗原(HMWMAA);O−アセチルGD2ガングリオシド(OAcGD2);葉酸受容体;腫瘍血管内皮マーカー1(TEM1/CD248);腫瘍血管内皮マーカー7関連(TEM7R);Claudin6、Claudin18.2、Claudin18.1;ASGPR1;CDH16;5T4;8H9;αvβ6インテグリン;B細胞成熟抗原(BCMA);CA9;κ軽鎖(kappa light chain);CSPG4;EGP2;EGP40;FAP;FAR;FBP;胚性AchR;HLA−A1、HLA−A2;MAGEA1、MAGE3;KDR;MCSP;NKG2Dリガンド;PSC1;ROR1;Sp17;SURVIVIN;TAG72;TEM1;フィブロネクチン;テネイシン;腫瘍壊死ゾーンの癌胎児性変異体;Gタンパク質共役受容体Cグループ5−メンバーD(GPRC5D);X染色体オープンリーディングフレーム61(CXORF61);CD97;CD179a;未分化リンパ腫キナーゼ(ALK);ポリシアル酸;胎盤特異的1(PLAC1);globoH glycoceramideのヘキソース部分(GloboH);乳腺分化抗原(NY−BR−1);urоplakin2(UPK2);A型肝炎ウイルス細胞受容体1(HAVCR1);アドレナリン受容体β3(ADRB3);pannexin3(PANX3);Gタンパク質共役受容体20(GPR20);リンパ球抗原6複合遺伝子座K9(LY6K);臭覚受容体51E2(OR51E2);TCRγ代替リーディングフレームタンパク質(TARP);ウィルムス腫瘍タンパク質(WT1);ETS転座バリアント遺伝子6(ETV6−AML);精子タンパク質17(SPA17);X抗原ファミリーメンバー1A(XAGE1);アンジオゲニン結合細胞表面受容体2(Tie2);黒色腫癌精巣抗原−1(MAD−CT−1);黒色腫癌精巣抗原−2(MAD−CT−2);Fos関連抗原1;p53変異体;ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT);肉腫転座ブレークポイント;アポトーシスのメラノーマ阻害剤(ML−IAP);ERG(膜貫通プロテアーゼセリン2(TMPRSS2)ETS融合遺伝子);N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼV(NA17);ペアリングボックスタンパク質Pax−3(PAX3);アンドロゲン受容体;サイクリンB1;V−myc鳥類骨髄症ウイルス癌遺伝子神経芽細胞腫由来ホモログ(MYCN);RasホモログファミリーメンバーC(RhoC);チトクロームP450 1B1(CYP1B1);CCCTC結合因子(ジンクフィンガータンパク質)様(BORIS);T細胞によって認識される扁平上皮癌抗原3(SART3);ペアリングボックスタンパク質Pax−5(PAX5);proacrosin結合タンパク質sp32(OYTES1);リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ(LCK);Aキナーゼアンカータンパク質4(AKAP−4);滑膜肉腫、Xブレークポイント2(SSX2);CD79a;CD79b;CD72;白血球関連免疫グロブリン様受容体1(LAIR1);IgA受容体のFcフラグメント(FCAR);白血球免疫グロブリン様受容体サブファミリーメンバー2(LILRA2);CD300分子様ファミリーメンバーf(CD300LF);C型レクチンドメインファミリー12メンバーA(CLEC12A);骨髄間質細胞抗原2(BST2);EGF様モジュール含有ムチン様ホルモン受容体様2(EMR2);リンパ球抗原75(LY75);グリピカン−3(GPC3);Fc受容体様5(FCRL5);免疫グロブリンλ様ポリペプチド1(IGLL1)
からなる群より選択され
好ましくは、前記腫瘍抗原は固形腫瘍抗原であり、好ましくは、前記固形腫瘍抗原は血管内皮増殖因子受容体、EGFR、EGFRvIII、GPC3、またはClaudin18.2であり、より好ましくは、前記固形腫瘍抗原はGPC3、EGFR、EGFRvIII、または血管内皮増殖因子受容体であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の腫瘍治療剤または癌細胞の成長、生存若しくは活力の低下剤
【請求項14】
前記腫瘍抗原を特異的に認識する抗体は、配列番号15、16、17に示されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、および配列番号18、19、20に示されるLCDR1、LCDR2、LCDR3を含み、
好ましくは、前記腫瘍抗原を特異的に認識する抗体のアミノ酸配列は、配列番号14に示される配列と少なくとも90%の同一性を有し、
更に好ましくは、前記腫瘍抗原を特異的に認識する抗体のキメラ抗原受容体のアミノ酸配列は、配列番号21、22、23または24に示される配列と少なくとも90%の同一性を有することを特徴とする、請求項12に記載の腫瘍治療剤または癌細胞の成長、生存若しくは活力の低下剤
【請求項15】
前記キメラ抗原受容体は、
腫瘍抗原を特異的に認識する抗体またはそのフラグメント、膜貫通ドメインおよび細胞質シグナル伝達ドメインを有し、
前記腫瘍抗原を特異的に認識する抗体またはそのフラグメントは、配列番号15、16、17に示されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、および配列番号18、19、20に示されるLCDR1、LCDR2、LCDR3を含むことを特徴とする、請求項12に記載の腫瘍治療剤または癌細胞の成長、生存若しくは活力の低下剤
【請求項16】
前記第2の治療剤は式IIで表される化合物、またはその薬学上許容される塩であり、
【化3】
前記第2の治療剤の1回当たりの投与量として、1日あたり100〜1000mg投与し、好ましくは、1日あたり200〜800mg投与し、より好ましくは、1日あたり400〜800mgを投与し、
好ましくは、前記第2の治療剤を1日あたり1〜3回投与し、より好ましくは、1日あたり2回投与し、
さらに好ましくは、薬剤を中止する必要がある、または薬剤を中止することができると医師が評価するまで、例えば、完全に改善された後に薬剤を中止する、または疾患の進行によって薬剤を中止すると医師が評価するまで、前記第2の治療剤を継続的に投与することを特徴とする、請求項15に記載の腫瘍治療剤または癌細胞の成長、生存若しくは活力の低下剤
【請求項17】
前記腫瘍は、乳癌、神経膠腫、血液癌、結腸癌、直腸癌、腎細胞癌、肝臓癌、肺癌、小腸癌、食道癌、黒色腫、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚または眼の悪性黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門癌、胃癌、精巣癌、子宮癌、卵管癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部肉腫、尿道癌、陰茎癌、小児固形腫瘍、膀胱癌、腎癌または尿管癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)腫瘍 、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫、環境誘発性癌、前記癌の組み合わせおよび前記癌の転移巣の組み合わせを含み、
好ましくは、前記腫瘍は、肝臓癌、腎細胞癌、肺扁平上皮癌、および甲状腺癌からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に記載の腫瘍治療剤または癌細胞の成長、生存若しくは活力の低下剤
【請求項18】
前記免疫エフェクター細胞は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)、マスト細胞骨髄由来の食細胞およびそれらの組み合わせからなる群より選択され、
好ましくは、前記免疫エフェクター細胞はT細胞またはNK細胞から選択され、
より好ましくは、前記免疫エフェクター細胞は自己免疫エフェクター細胞であることを特徴とする、請求項1〜17のいずれか一項に記載の腫瘍治療剤または癌細胞の成長、生存若しくは活力の低下剤
【請求項19】
前記第2の治療剤はソラフェニブ又はレゴラフェニブであることを特徴とする、請求項1〜18のいずれか一項に記載の腫瘍治療剤または癌細胞の成長、生存若しくは活力の低下剤。
【請求項20】
腫瘍を治療するためのキットであって、前記キットは、
1)腫瘍抗原を認識する受容体を発現する免疫エフェクター細胞;
2)第2の治療剤
3)上記1)および2)に記載の物質を含むための容器;および
4)前記キットを使用して腫瘍を治療するための投与プロトコルを含み、
前記免疫エフェクター細胞と第2の治療剤をそれぞれ単独で使用する場合よリ優れた効果を提供できるように前記免疫エフェクター細胞と第2の治療剤を配合し、
前記第2の治療剤は、式Iで表される化合物、またはその薬学上許容される塩を含み、
【化4】
[式中、Ar’は非置換または置換フェニル基であり、置換基はハロゲンおよびC1−10アルキル基から選択され、
Mは、−O−またはーS−から選択される1つ以上の架橋基であり、
Py(X)はXで置換されたピリジル基であり、XはーC(O)Rであり、その中で、RはNRであり、RとRはそれぞれ、
a)水素、
b)C1−10アルキル基、
c)ヒドロキシで置換されたC1−10アルキル基、
d)1〜3個のN、SまたはOのヘテロ原子を含むC3−12シクロアルキル基、または
e)−OSi(R)3(式中、RはC1−10アルキル基である)
であり、
Ar”は非置換または置換フェニル基であり、置換基はハロゲンまたはWnから選択され、n=0〜3であり、Wは、
a)C1−10アルキル基、
b)C1−10アルコキシ基、
c)C1−10ハロアルキル基、
d)1〜3個のN、SまたはOのヘテロ原子を含むかつC1−10アルキル基で置換されてもよいC3−12ヘテロアリール基
から選択される。]
好ましくは、前記免疫エフェクター細胞はCAR T細胞であり、
より好ましくは、前記CAR T細胞は、EGFR、EGFRvIII、グリピカン3、claudin18.2、BCMAのいずれか1つ以上を特異的に認識することを特徴とする、キット。
【請求項21】
免疫エフェクター細胞および第2の治療剤を含有する医薬組成物であって、前記免疫エフェクター細胞は、腫瘍抗原を認識する受容体を発現し、
前記第2の治療剤は、式Iで表される化合物、またはその薬学上許容される塩である、医薬組成物
【化5】
[式中、Ar’は非置換または置換フェニル基であり、置換基はハロゲンおよびC1−10アルキル基から選択され、
Mは、−O−またはーS−から選択される1つ以上の架橋基であり、
Py(X)はXで置換されたピリジル基であり、XはーC(O)Rであり、その中で、RはNRであり、RとRはそれぞれ、
a)水素、
b)C1−10アルキル基、
c)ヒドロキシで置換されたC1−10アルキル基、
d)1〜3個のN、SまたはOのヘテロ原子を含むC3−12シクロアルキル基、または
e)−OSi(R)3(式中、RはC1−10アルキル基である)
であり、
Ar”は非置換または置換フェニル基であり、置換基はハロゲンまたはWnから選択され、n=0〜3であり、Wは、
a)C1−10アルキル基、
b)C1−10アルコキシ基、
c)C1−10ハロアルキル基、
d)1〜3個のN、SまたはOのヘテロ原子を含むかつC1−10アルキル基で置換されてもよいC3−12ヘテロアリール基
から選択される]。
【国際調査報告】