(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-512941(P2021-512941A)
(43)【公表日】2021年5月20日
(54)【発明の名称】メサコニンの結晶形およびその調製方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/439 20060101AFI20210423BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20210423BHJP
【FI】
A61K31/439
A61P9/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2020-562818(P2020-562818)
(86)(22)【出願日】2019年1月23日
(85)【翻訳文提出日】2020年7月22日
(86)【国際出願番号】CN2019072874
(87)【国際公開番号】WO2019144889
(87)【国際公開日】20190801
(31)【優先権主張番号】201810071927.2
(32)【優先日】2018年1月24日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520274655
【氏名又は名称】グッドドクター ファーマシューティカル グループ カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】耿越飛
(72)【発明者】
【氏名】耿福能
(72)【発明者】
【氏名】馬秀英
(72)【発明者】
【氏名】晁若氷
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC27
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA03
4C086ZA37
(57)【要約】
本発明は、メサコニンの結晶形に関する。具体的には、本発明は、メサコニンの結晶形A、結晶形B、および結晶形C、ならびにそれらの調製方法に関する。当該方法では、メサコニンを溶媒中で結晶化し、次いで粗製物を乾燥させて、目的の結晶形を得る。本発明に係るメサコニンの結晶形は、良好な溶解性、良好な安定性、低い吸湿性、長期的な保存特性、および良好な再現性を有し、薬物として開発される良好な将来性を有している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メサコニンの結晶形Aであって、当該メサコニンの結晶形Aは、Cu−Kα放射を用いる粉末X線回折スペクトルにおいて、8.3°±0.2°、10.6°±0.2°、13.3°±0.2°、13.7°±0.2°、および19.0°±0.2°の2θで特徴的ピークを示すことを特徴とする、メサコニンの結晶形A。
【請求項2】
前記メサコニンの結晶形Aはまた、Cu−Kα放射を用いる粉末X線回折スペクトルにおいて、11.6°±0.2°、19.8°±0.2°、24.2°±0.2°、および26.9°±0.2°の2θで特徴的ピークを示すことを特徴とする、請求項1に記載のメサコニンの結晶形A。
【請求項3】
請求項1または2に記載のメサコニンの結晶形Aを調製する方法であって、当該方法は、
メサコニンを溶媒中に添加し、次いで得られた溶液を50〜90℃に加熱して当該メサコニンを溶解させて、メサコニン溶液を得るステップ(1)と;
前記メサコニン溶液を−10〜30℃に冷却し、当該溶液を撹拌して結晶を沈殿させ、次いで濾過を行うステップ(2)と;
前記ステップ(2)における濾過によって得られた固体を真空で乾燥させて、メサコニンの結晶形Aを得るステップ(3)とを含むことを特徴とする、方法。
【請求項4】
前記溶媒は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、およびアセトニトリルからなる群から選ばれる1つまたは複数であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
メサコニンの結晶形Bであって、当該メサコニンの結晶形Bは、Cu−Kα放射を用いる粉末X線回折スペクトルにおいて、6.6°±0.2°、9.2°±0.2°、13.4°±0.2°、14.3°±0.2°、および15.5°±0.2°の2θで特徴的ピークを示すことを特徴とする、メサコニンの結晶形B。
【請求項6】
前記メサコニンの結晶形Bはまた、Cu−Kα放射を用いる粉末X線回折スペクトルにおいて、18.3°±0.2°、20.2°±0.2°、23.6°±0.2°、および24.2°±0.2°の2θで特徴的ピークを示すことを特徴とする、請求項5に記載のメサコニンの結晶形B。
【請求項7】
請求項5または6に記載のメサコニンの結晶形Bを調製する方法であって、当該方法は、
請求項1に記載のメサコニンの結晶形Aを有機溶媒中に40〜60℃で懸濁および撹拌して、懸濁液を得るステップ(1)と;
前記懸濁液を−10〜30℃に冷却し、当該懸濁液を撹拌して結晶を沈殿させ、次いで濾過を行うステップ(2)と;
前記ステップ(2)における濾過によって得られた固体を真空で乾燥させて、メサコニンの結晶形Bを得るステップ(3)とを含むことを特徴とする、方法。
【請求項8】
前記有機溶媒は、N−メチルピロリドンであることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
メサコニンの結晶形Cであって、当該メサコニンの結晶形Cは、Cu−Kα放射を用いる粉末X線回折スペクトルにおいて、7.90°±0.2°、10.1°±0.2°、13.0°±0.2°、17.4°±0.2°、および19.4°±0.2°の2θで特徴的ピークを示すことを特徴とする、メサコニンの結晶形C。
【請求項10】
前記メサコニンの結晶形Cはまた、Cu−Kα放射を用いる粉末X線回折スペクトルにおいて、19.9°±0.2°、21.0°±0.2°、23.8°±0.2°、及び26.6°±0.2°の2θで特徴的ピークを示すことを特徴とする、請求項9に記載のメサコニンの結晶形C。
【請求項11】
請求項9または10に記載のメサコニンの結晶形Cを調製する方法であって、当該方法は、
請求項5に記載のメサコニンの結晶形Bを真空で加熱して、メサコニンの結晶形Cを得るステップを含むことを特徴とする、方法。
【請求項12】
前記加熱の温度は、140〜230℃、好ましくは170〜200℃であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1もしくは2に記載のメサコニンの結晶形A、請求項5もしくは6に記載のメサコニンの結晶形B、または請求項9もしくは10に記載のメサコニンの結晶形Cと、薬学的に許容される賦形剤とを含む、薬学的組成物。
【請求項14】
請求項1もしくは2に記載のメサコニンの結晶形A、請求項5もしくは6に記載のメサコニンの結晶形B、請求項9もしくは10に記載のメサコニンの結晶形C、または請求項13に記載の薬学的組成物の、強心剤および抗心不全剤の調製における使用。
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、結晶形(crystalline form)の分野に関し、具体的にはメサコニンの結晶形およびその調製方法に関する。
【0002】
〔背景技術〕
漢方薬のトリカブトは、Aconitum carmichaeli Debx.の細根から得られる加工品であり、これは、陽を回復させ、風冷湿気を除去し、経線を加温して疼痛を緩和することによる虚脱からの救出の効果を有する(volume 1, Chinese pharmacopoeia, 2015 edition)。そしてそれは、臨床において有名な漢方薬として広く使用されている。
【0003】
以下の文献において記録されているように、研究により、メサコニンがトリカブトの主要な強心活性成分であることが見出されている:Xiu-Xiu Liu, et al, Chem. Pharm. Bull, 2012, 60(1), 144-149; Xi-Xian Jian, et al, Nat. Prod. Commun, 2012, 7(6), 713-720; 中国特許, 2012, 第CN102146057B号; Zhong-Tang Zhang, et al, Nat. Prod. Commun, 2015, 10(12),2075-2084。それゆえ、メサコニンは、抗心不全薬およびその他の疾病の治療用薬剤に発展する見込みを有する。
【0004】
メサコニンは、C
24H
39NO
9の分子式およびCAS番号:6792−09−2とともに、N−メチル−1α,6α,16β,18−テトラメトキシル−4−メチル−アコニット−3α,8β,13β,14α,15α−ペントールの化学名を有し、そして以下の構造式によって表される構造を有する。
【0006】
中国特許CN102146057B号には、メサコニンの調製方法、およびそれによって得られたメサコニンがアモルファス粉末であることが開示されている。しかし、当該アモルファス粉末は吸湿しやすく、長期的保存に適していない。
【0007】
現在、メサコニンの結晶形に関する報告がないため、物理的および化学的特性、ならびに生物学的利用能(bioavailability)等が改善されたメサコニンの結晶形の研究および開発が必要とされている。
【0008】
〔発明の概要〕
本発明の目的は、溶解性、安定性、吸湿性、および加工適合性(濾過、乾燥等)が改善されたメサコニンの結晶形を提供することにある。
【0009】
本発明の第1の態様では、Cu−Kα放射を用いる粉末X線回折スペクトルにおいて、8.3°±0.2°、10.6°±0.2°、13.3°±0.2°、13.7°±0.2°、および19.0°±0.2°の2θで特徴的ピークを示す、メサコニンの結晶形(以下、メサコニンの結晶形Aと称する)を提供する。
【0010】
さらに、本発明に係るメサコニンの結晶形Aはまた、Cu−Kα放射を用いる粉末X線回折スペクトルにおいて、11.6°±0.2°、19.8°±0.2°、24.2°±0.2°、および26.9°±0.2°の2θで特徴的ピークを示す。
【0011】
限定されないが、本発明に係るメサコニンの結晶形Aは、
図1に示される粉末X線回折(XRPD)スペクトルを示す。
【0012】
限定されないが、本発明に係るメサコニンの結晶形Aは、
図2に示される熱重量分析(TGA)スペクトルを示す。
【0013】
限定されないが、本発明に係るメサコニンの結晶形Aは、
図3に示される示差走査熱量測定(DSC)スペクトルを示す。
【0014】
本発明はまた、メサコニンの結晶形Aの調製方法であって、
メサコニンを溶媒中に添加し、次いで得られた溶液を50〜90℃(好ましくは60〜80℃まで昇温)に加熱して当該メサニコンを溶解させて、メサコニン溶液を得るステップ(1)と;
前記メサコニン溶液を−10〜30℃(好ましくは0〜30℃、より好ましくは20〜30℃)に冷却し、当該溶液を撹拌して結晶を沈殿させ、次いで濾過を行うステップ(2)と;
前記ステップ(2)における濾過によって得られた固体を真空で乾燥させて、メサコニンの結晶形Aを得るステップ(3)とを含む方法を提供する。
【0015】
本発明に係るメサコニンの結晶形Aの調製方法において、前記溶媒は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、およびアセトニトリルからなる群から選ばれる1つまたは複数である。
【0016】
本発明の第2の態様では、Cu−Kα放射を用いる粉末X線回折スペクトルにおいて、6.6°±0.2°、9.2°±0.2°、13.4°±0.2°、14.3°±0.2°、および15.5°±0.2°の2θで特徴的ピークを示す、他のメサコニンの結晶形(以下、メサコニンの結晶形Bと称する)を提供する。
【0017】
さらに、本発明に係るメサコニンの結晶形Bはまた、Cu−Kα放射を用いる粉末X線回折スペクトルにおいて、18.3°±0.2°、20.2°±0.2°、23.6°±0.2°、および24.2°±0.2°の2θで特徴的ピークを示す。
【0018】
限定されないが、本発明に係るメサコニンの結晶形Bは、
図6に示されるXRPDスペクトルを示す。
【0019】
限定されないが、本発明に係るメサコニンの結晶形Bは、
図7に示されるTGAスペクトルを示す。
【0020】
限定されないが、本発明に係るメサコニンの結晶形Bは、
図8に示されるDSCスペクトルを示す。
【0021】
本発明はまた、メサコニンの結晶形Bの調製方法であって、
メサコニンの結晶形Aを有機溶媒中に投入して40〜60℃で懸濁および撹拌して、懸濁液を得るステップ(1)と;
前記懸濁液を−10〜30℃(好ましくは0〜30℃、より好ましくは20〜30℃)に冷却し、当該懸濁液を撹拌して結晶を沈殿させ、次いで濾過を行うステップ(2)と;
前記ステップ(2)における濾過によって得られた固体を真空で乾燥させて、メサコニンの結晶形Bを得るステップ(3)とを含む方法を提供する。
【0022】
本発明に係るメサコニンの結晶形Bの調製方法において、前記有機溶媒は、N−メチルピロリドンである。
【0023】
本発明の第3の態様では、Cu−Kα放射を用いる粉末X線回折スペクトルにおいて、7.90°±0.2°、10.1°±0.2°、13.0°±0.2°、17.4°±0.2°、および19.4°±0.2°の2θで特徴的ピークを示す、他のメサコニンの結晶形(以下、メサコニンの結晶形Cと称する)を提供する。
【0024】
さらに、本発明に係るメサコニンの結晶形Cはまた、Cu−Kα放射を用いる粉末X線回折スペクトルにおいて、19.9°±0.2°、21.0°±0.2°、23.8°±0.2°、および26.6°±0.2°の2θで特徴的ピークを示す。
【0025】
限定されないが、本発明に係るメサコニンの結晶形Cは、
図10に示されるXRPDスペクトルを示す。
【0026】
限定されないが、本発明に係るメサコニンの結晶形Cは、
図11に示されるTGAスペクトルを示す。
【0027】
限定されないが、本発明に係るメサコニンの結晶形Cは、
図12に示されるDSCスペクトルを示す。
【0028】
本発明はまた、メサコニンの結晶形Bを真空で加熱して、メサコニンの結晶形Cを得るステップを含む、メサコニンの結晶形Cの調製方法を提供する。
【0029】
本発明に係るメサコニンの結晶形Cの調製方法において、前記加熱の温度は、140℃〜230℃、好ましくは170℃〜200℃である。
【0030】
本発明の第4の態様では、本発明のメサコニンの結晶形A、メサコニンの結晶形B、またはメサコニンの結晶形Cと、薬学的に許容される賦形剤とを含む薬学的組成物を提供する。
【0031】
本発明の第5の態様では、メサコニンの結晶形A、メサコニンの結晶形B、もしくはメサコニンの結晶形C、またはそれらの薬学的組成物の、強心剤および抗心不全剤の調製における使用を提供する。
【0032】
本発明によって調製されるメサコニンの結晶形は、安定性、吸湿性、および加工適合性において、アモルファスのメサコニンよりも優れている。
【0033】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、メサコニンの結晶形AのXRPDスペクトルである。
【0034】
図2は、メサコニンの結晶形AのTGAスペクトルである。
【0035】
図3は、メサコニンの結晶形AのDSCスペクトルである。
【0036】
図4は、安定性試験の間のメサコニンの結晶形Aの試料の比較XRPDスペクトルである。
【0037】
図5は、180℃に加熱した前後のメサコニンの結晶形Aの比較XRPDスペクトルである。
【0038】
図6は、メサコニンの結晶形BのXRPDスペクトルである。
【0039】
図7は、メサコニンの結晶形BのTGAスペクトルである。
【0040】
図8は、メサコニンの結晶形BのDSCスペクトルである。
【0041】
図9は、115℃に加熱した前後のメサコニンの結晶形Bの比較XRPDスペクトルである。
【0042】
図10は、メサコニンの結晶形CのXRPDスペクトルである。
【0043】
図11は、メサコニンの結晶形CのTGAスペクトルである。
【0044】
図12は、メサコニンの結晶形CのDSCスペクトルである。
【0045】
〔発明を実施する形態〕
後述する実施例は、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はそれらに限定されない。
【0046】
後述する実施例において使用されたメサコニンは、以下の方法によって調製した。
【0047】
I.Aconitum soongaricum Stapfのトリカブト植物からの全アルカロイドの抽出
(1)Aconitum soongaricum Stapfのトリカブト植物の乾燥根10kgを粉砕し、次いで20メッシュ篩で篩い、粉末を得た;
(2)5‰硫酸および85%エタノールを含む水溶液80L、36Lおよび24Lで、Aconitum soongaricum Stapfのトリカブト植物の粉末を、各抽出3回および2時間還流下で順に抽出し、次いで混合物を濾過し、濾液を混ぜ合わせた;
(3)濾液を減圧下で濃縮して、流体抽出物の相対密度が1.05〜1.10となるまでエタノールを回収し、次いで流体抽出物0.46kgを収集した;
(4)流体抽出物に1.4Lの水で希釈し、アンモニア水でアルカリ化してpH=10に調整し、次いで抽出器において酢酸エチルで抽出し(2L×3回)、各回5〜10分間撹拌し、抽出物を収集した;
(5)得られた抽出物を減圧下で濃縮して、酢酸エチルを回収し、全アルカロイド129gを得た。全アルカロイドをサンプリングし、HPLC法によって全アルカロイド中のアコニチンの百分率での含有量を測定した。上記で測定した百分率での含有量および全アルカノイドの湿重量(wet weight)に基づく計算を通して、全アルカロイド中のアコニチン(I)の全含有量は、収率0.42%で約42.5gであった。
【0048】
II.メサコニンの調製
(1)アコニン(II)の調製
【0050】
100gの全アルカロイド(33gのアコニチンを含む)を500mlの95%エタノールに溶解した後、7.2g(78mmol)の水酸化ナトリウムをそれに加え、室温で2時間撹拌し、減圧下で溶媒を回収して、120gの固体を得た。固体を1000mlの水で希釈し、ジクロロメタンにて抽出した(500ml×2回)。水相は、濃塩酸でpH=5に調整し、次いでエタノール中の水酸化ナトリウムの希釈溶液でpH=11〜12に調整した。得られた混合物を乾くまで減圧下で濃縮して、90gの固体を得た。ジクロロメタン−無水エタノール(9:1;V/V)900mlを固体に加えて、加熱下で溶解した。結果として得られた混合物を濾過し、濾液を減圧下で濃縮して、固体を得た。結果として得られた固体を加熱沸騰したイソプロパノール−水(100:5)中で結晶化して、22.5gの目的の化合物を得た。
【0051】
収率86%;白色のアモルファス粉末;C
25H
41NO
9。
【0052】
(2)3,14,15−トリアセチルアコニン(III)の調製
【0054】
10.0g(20mmol)のアコニン(II)を7.1g(70mmol)の無水酢酸および100mlのピリジンと混合し、還流下で2.5時間反応させた。反応後、結果として得られた混合物を減圧下で濃縮して、残渣を得た。残渣を170mlの水で希釈し、アンモニア水でpH=9〜10にアルカリ化し、次いで結果として得られた混合物をジクロロメタンで抽出した(80ml×3)。抽出物を混ぜ合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮して、固体を得た。結果として得られた固体を、溶離剤としてジクロロメタン−無水エタノール(200:1)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供して、10.7gの目的の化合物を得た。
【0055】
収率85.6%;白色のアモルファス粉末;C
31H
47NO
12。
【0056】
(3)N−デスエチル−3,14,15−トリアセチルアコニン(V)の調製
【0058】
10.0g(17mmol)の3,14,15−トリアセチルアコニン(III)を100mlの氷酢酸中に溶解し、9.9g(66mmol)のN−ブロモスクシンイミドをそれに加え、混合物を室温で2時間撹拌した。次いで、得られた混合物を減圧下で濃縮して、固体を得た。固体を少量のジクロロメタン中に溶解し、150mlの水をそれに加えた。結果として得られた混合物を濃アンモニア水でpH=10にアルカリ化し、次いでジクロロメタンで抽出した(80ml×2回)。抽出物を混ぜ合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮して、10.5gの固体を得た。結果として得られた固体を、溶離剤として石油エーテル−アセトン(2:1)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供して、6.4gの目的の化合物を得た。
【0059】
収率67.0%;白色のアモルファス粉末;C
29H
43NO
12。
【0060】
(4)3,14,15−トリアセチルメサコニン(VII)の調製
【0062】
10g(17mmol)のN−デスエチル−3,14,15−トリアセチルアコニン(V)を25mlのテトラヒドロフラン中に溶解し、室温で2mlの40%ホルムアルデヒド水溶液および1mlの氷酢酸をそれに加え、30分間撹拌しながら温度を維持した。次いで、7.1g(33.5mmol)のNaBH(OAc)
3をそれに加え、結果として得られた混合物を30分間撹拌した。混合物を濃アンモニア水を用いることによってpH9=に調整し、希釈のために15mlの水をそれに加えた。結果として得られた混合物を20mlのジクロロメタンで2回抽出し、抽出物を混ぜ合わせ、順に、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、乾くまで減圧下で濃縮して、5.5gの固体を得た。固体を溶離剤としてクロロホルム−メタノール(9:1)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供して、5.41gの目的の化合物を得た。
【0063】
収率53.1%;白色のアモルファス粉末;C
30H
45NO
12。
【0066】
10g(16.3mmol)の3,14,15−トリアセチルメサコニン(VII)を75mlの95%エタノール溶液中に溶解し、2.29g(57.2mmol)の水酸化ナトリウムをそれに加え、混合物を30分間還流下で反応させた。反応液を室温に冷却し、濃塩酸を用いてpH=5に調整し、次いでエタノール中の水酸化ナトリウムの希釈溶液を用いてpH=11〜12に調整した。不溶物を濾過し、濾液を減圧下で濃縮して、固体を得た。固体を110mlのジクロロメタン−無水エタノール(9:1;V/V)中に溶解し、結果として得られた溶液を吸引濾過し、濾液を乾くまで減圧下で濃縮して、7.22gのメサコニンを91.1%の収率で得た。
【0067】
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ:3.07(1H,dd,J=8.4,6.0Hz,H−1β),3.75(1H,m,H−3β),4.15(d,J=6.8Hz,H−6β),3.93(1H,d,J=5.2Hz,H−14β),4.49(1H,t,J=5.6Hz,H−15β),3.19(1H,d,J=6.0Hz,H−16),2.91(1H,s,H−17),3.65,3.74(各1H,ABq,J=9.6Hz,H
2−18),2.48,2.79(各1H,ABq,J=11.2Hz,H
2−19),2.34(3H,s,NCH
3),3.26(3H,s,OCH
3−1),3.34(3H,s,OCH
3−6),3.64(3H,s,OCH
3−16),3.32(3H,s,OCH
3−18)。
【0068】
〔実施例1:メサコニンの結晶形Aの調製〕
40mlのイソプロパノールを10gのメサコニンに加え、混合物を水浴中還流下で加熱して、メサコニンを溶解した。2mlの水をそれに加え、撹拌下でメサコニンを結晶化した。結果として得られた混合物を一晩自然に冷却し、次いで吸引濾過した。濾過ケーキを少量のイソプロパノールで洗浄し、次いで混合物を排水して、結晶を收集した。結晶を85℃の真空で8時間乾燥させ、白色の固体結晶を得た。試験後、白色の固体結晶はメサコニンの結晶形Aであることを確認し、そのXRPDスペクトルを
図1に示した。収率:70%、HPLC:99.7%。
【0069】
〔実施例2:メサコニンの結晶形Aの調製〕
40mlのイソプロパノールを10gのメサコニンに加え、混合物を水浴中還流下で加熱して、メサコニンを溶解した。メサコニンを撹拌下で結晶化し、結果として得られた混合物を一晩自然に冷却し、次いで吸引濾過した。濾過ケーキを少量のイソプロパノールで洗浄し、次いで混合物を排水して、結晶を收集した。結晶を85℃の真空で8時間乾燥させて、目的の生成物、即ちメサコニンの結晶形Aを得た。そのXRPDスペクトルは
図1と一致した。収率:78%、HPLC:99.6%。
【0070】
〔実施例3:メサコニンの結晶形Aの調製〕
30mlのエタノールを10gのメサコニンに加え、混合物を水浴中還流下で加熱して、メサコニンを溶解した。メサコニンを撹拌下で結晶化し、結果として得られた混合物を一晩自然に冷却し、次いで吸引濾過した。濾過ケーキを少量のエタノールで洗浄し、混合物を排水して、結晶を收集した。結晶を85℃の真空で8時間乾燥させて、目的の生成物、即ちメサコニンの結晶形Aを得た。そのXRPDスペクトルは
図1と一致した。収率:58%、HPLC:99.8%。
【0071】
〔実施例4:メサコニンの結晶形Aの調製〕
30mlのメタノールを10gのメサコニンに加え、混合物を水浴中還流下で加熱して、メサコニンを溶解した。メサコニンを撹拌下で結晶化し、得られた混合物を一晩自然に冷却し、次いで吸引濾過した。濾過ケーキを少量のメタノールで洗浄し、次いで混合物を排水して、結晶を收集した。結晶を85℃の真空で8時間乾燥させて、目的の生成物、即ちメサコニンの結晶形Aを得た。そのXRPDスペクトルは
図1と一致した。収率:38%、HPLC:99.8%。
【0072】
〔実施例5:メサコニンの結晶形Aの調製〕
30mlのイソプロパノールを10gのメサコニンに加え、混合物を水浴中還流下で加熱して、メサコニンを溶解した。10mlのエタノールをそれに加え、メサコニンを撹拌下で結晶化し、結果として得られた混合物を一晩自然に冷却し、次いで吸引濾過した。濾過ケーキを少量のイソプロパノールで洗浄し、次いで混合物を排水して、結晶を收集した。結晶を85℃の真空下で8時間乾燥させて、目的の生成物、即ちメサコニンの結晶形Aを得た。そのXRPDスペクトルは
図1と一致した。収率:68%、HPLC:99.8%。
【0073】
〔実施例6:メサコニンの結晶形Aの特性化〕
実施例1における方法によって調製されたメサコニンの結晶形Aをサンプリングし、以下の試験に供した。
【0074】
1.X線粉末回折法
メサコニンの結晶形Aをサンプリングし、Cu,Kα,Kα1(Å):1.540598;Kα2(Å):1.544426,Kα2/Kα1強度比:0.50、走査範囲:3°〜40°の条件下でのPANalytical Empyrean&X’Pert3X線粉末回折分析装置における試験に供した。メサコニンの結晶形Aの試料のX線回折スペクトルは
図1に示し、メサコニンの結晶形Aの試料のXRPDスペクトルの基本情報は表1に示した。
【0076】
これらの回折ピークは、メサコニンの結晶形Aの回折ピークの詳細の全てを表すものではないということは当業者によって理解されるべきである。XRPDの2θ値は、試験した装置、ならびに調製の間の変動およびバッチの変動により、誤差の範囲内で変化し得るため、挙げられた値は絶対的な値と見なされるべきではない。さらに、ピークの相対強度は配向効果で変化し得るため、本発明に含まれるXRPDの結果において示される強度は例示的なものであって、絶対的な比較に用いるべきではない。
【0077】
2.熱分析
(1).熱重量分析
適量のメサコニンの結晶形Aの試料を、保護ガスが窒素であり、室温〜350℃の範囲内において10℃/分の一定速度で昇温する条件下でTA Q5000/Discovery 5500熱重量分析装置に置き、温度に伴う質量の変化を測定し、TGA曲線(
図2参照)を描いた。TGA曲線から、結晶形Aの試料は、180℃に加熱したとき、2.1%の重量損失を有したことが分かった。
【0078】
(2).示差走査熱量測定
適量のメサコニンの結晶形Aの試料を、保護ガスが窒素であり、25〜250℃の範囲内において10℃/分の一定速度で昇温する条件下でTA Q2000/Discovery 2500示差走査熱量測定装置に置き、メサコニンの結晶形Aの試料を測定し、DSC曲線(
図3参照)を描いた。DSCの結果によれば、207.6℃(開始温度)におけるシャープな吸熱ピークの存在が示され、これはメサコニンの結晶形Aの溶融吸熱ピークであった。
【0079】
(3).融点
メサコニンの結晶形Aをサンプリングし、「融点の測定法」(『中国薬典』2015年版第四部の一般規則0612による第1方法(the first method of 0612, general rule, volume 4, the Chinese Pharmacopoeia, 2015 edition))に従って融点を測定した。結果を下記の表2に示した。
【0081】
その結果、試料の溶融現象が顕著で、融点が206〜209℃の範囲内であったことが示された。
【0082】
〔実施例7:メサコニンの結晶形Aの安定性、溶解性、および吸湿性〕
実施例1における方法に従って調製されたメサコニンの結晶形Aをサンプリングし、以下の試験に供した。
【0083】
A.メサコニンの結晶形Aの安定性
メサコニンの結晶形Aの試料を25℃、60%RH、および40℃、75%RHで4週間置いた後、XRPD試験を行った。試験結果をメサコニンの結晶形Aの比較試料のXRPDスペクトル(安定性試験前のメサコニンの結晶形AのXRPDスペクトル)と比較し、結果を
図4に示した。メサコニンの結晶形Aの他の試料を180℃に加熱し、次いでXRPD試験を行った。その結果をメサコニンの結晶形Aの比較試料のXRPDスペクトル(安定性試験前のメサコニンの結晶形AのXRPDスペクトル)と比較し、結果を
図5に示した。
【0084】
図4によれば、メサコニンの結晶形Aの試料を25℃、60%RH、および40℃、75%RHで4週間置いた後、XRPDスペクトルにおける主な回折ピークの位置および相対強度は著しく変化しなかった。これは、結晶形が変化せず、依然として結晶形Aであることを示した。
図5によれば、メサコニンの結晶形Aの試料を180℃に加熱した後、XRPDスペクトルにおける主な回折ピークの位置および相対強度は著しく変化しなかった。これは、結晶形が変化せず、依然として結晶形Aであったことを示した。以上の試験結果から、メサコニンの結晶形Aが良好な安定性を有することが示された。
【0085】
さらに、メサコニンの結晶形Aをサンプリングし、「原料薬物および製剤の安定性試験のガイドライン」(『中国薬典』2015年版の一般規則9001(general rule 9001, the Chinese pharmacopoeia, 2015 edition))に従って影響要因について試験した。
【0086】
高温試験:試料を、60℃で10日間、開口した扁平な秤量瓶(open flat weighing bottle)に入れた。次いで、試料を安定性試験の重要検査項目に応じて試験し、X線粉末回折によって分析した。
【0087】
高湿試験:試料を、25℃および相対湿度90%で10日間、開口した扁平な秤量瓶に入れた。次いで、試料を安定性試験の重要検査項目に応じて試験し、X線粉末回折によって分析した。
【0088】
強光照射試験:試料を、照度4500lxの条件下で10日間、開口した扁平な秤量瓶に入れた。次いで、試料を安定性試験の重要検査項目に応じて試験するとともに、X線粉末回折によって分析した。
【0089】
その結果、試料を10日間、高温試験、高湿試験、および強光照射試験に供した後、X線粉末回折スペクトルにおける主な回折ピークの位置および相対強度は著しく変化しなかったことが示された。
【0090】
メサコニンの結晶形Aの試料をさらにサンプリングし、「融点測定法」(『中国薬典』2015年版第四部の一般規則0612による第1方法)に従って融点を測定した。結果として、試料を10日間、上述した高温試験、高湿試験、および強光照射試験に供した後、試料の融点は、それぞれ、207.0〜208.9℃、206.9〜209.5℃、および207.3〜209.2℃であり、試験前の試料の融点(206.6〜208.4℃)と基本的には一致した。以上の試験結果から、メサコニンの結晶形Aが良好な安定性を有することが示された。
【0091】
B.メサコニンの結晶形Aの溶解性
メサコニンの結晶形Aをサンプリングし、『中国薬典』(2015年版凡例)による溶解度試験方法に従って試験した。結果を下記の表3に示した。
【0093】
表3における結果から、メサコニンの結晶形Aが水に溶解しやすく、これはメサコニンの結晶形Aが良好な水溶性を有することを示すことが分かった。
【0094】
C.メサコニンの結晶形Aの吸湿性
『中国薬典』(2015年版第四部の一般規則9103)における「薬物の吸湿性試験のガイドライン」に従って、試験を行った。2バッチ分のメサコニンの結晶形Aをサンプリングし、試験し、結果を表4に示した。
【0096】
『中国薬典』(2015年版第四部の一般規則9103)における、吸湿性に関する規定によれば、吸湿による重量増加が2%よりも低いが0.2%以上の場合、弱吸湿性を有する。メサコニンの結晶形Aの重量増加は、試験条件下で0.85%であり、弱吸湿性を有し、良好な耐潮解性を有する。
【0097】
〔実施例8:メサコニンの結晶形Bの調製〕
実施例1における方法に従ってメサコニンの結晶形Aの試料130mgを調製した。メサコニンの結晶形Aの試料を0.3mlのN−メチルピロリドン中に懸濁し、50℃で24時間撹拌した。次いで、混合物を20〜30℃に冷却し、撹拌して結晶化し、次いで濾過した。得られた濾過ケーキを85℃で10時間真空乾燥させて、白色の固体結晶を得た。試験後、白色の固体結晶はメサコニンの結晶形Bであることを確認し、そのXRPDスペクトルを
図6に示した。DSCスペクトル(
図8)から、本発明のメサコニンの結晶形Bは、メサコニンおよびN−メチルピロリドンの溶媒和物であることが示された。
【0098】
〔実施例9:メサコニンの結晶形Bの調製〕
実施例1における方法に従ってメサコニンの結晶形Aの試料400mgを調製した。メサコニンの結晶形Aの試料を0.9mLのN−メチルピロリドン中に懸濁し、40℃で36時間撹拌した。次いで、混合物を20〜30℃に冷却し、撹拌して結晶化し、次いで濾過した。得られた濾過ケーキを85℃で12時間真空乾燥させて、白色の固体結晶を得た。試験後、白色の固体結晶はメサコニンの結晶形Bであることを確認し、そのXRPDスペクトルは
図6と一致した。
【0099】
〔実施例10:メサコニンの結晶形Bの特性化〕
実施例8における方法に従って調製されたメサコニンの結晶形Bをサンプリングし、以下の試験に供した。
【0100】
1.X線粉末回折法
メサコニンの結晶形Bをサンプリングし、Cu,Kα,Kα1(Å):1.540598;Kα2(Å):1.544426,Kα2/Kα1強度比:0.50,走査範囲:3°〜40°の条件下でのPANalytical Empyrean&X’Pert3X線粉末回折分析装置における試験に供した。メサコニンの結晶形Bの試料のX線回折スペクトルは
図6に示し、メサコニンの結晶形Bの試料のXRPDスペクトルの基本情報は表5に示した。
【0102】
これらの回折ピークは、メサコニンの結晶形Bにおいて示される回折ピークの詳細の全てを表すものではないということは当業者によって理解されるべきである。XRPDの2θ値は、試験した装置、ならびに調製の間の変動およびバッチの変動により、誤差の範囲内で変化し得るため、挙げられた値は絶対的な値と見なされるべきではない。さらに、ピークの相対強度は配向効果で変化し得るため、本発明に含まれるXRPDの結果において示される強度は例示的なものであって、絶対的な比較に用いるものではない。
【0103】
2.熱分析
(1).熱重量分析
適量のメサコニンの結晶形Bの試料を、保護ガスが窒素であり、室温〜350℃の範囲内において10℃/分の一定速度で昇温する条件下でTA Q5000/Discovery 5500熱重量分析装置に置き、温度に伴う質量の変化を測定し、TGA曲線(
図7参照)を描いた。TGA曲線から、結晶形Bの試料は、室温から115℃まで加熱したとき、3.0%の重量損失を有し、185℃まで加熱したとき、16.1%の重量損失を有したことが分かった。
【0104】
(2).示差走査熱量測定
適量のメサコニンの結晶形Bの試料を、保護ガスが窒素であり、25〜250℃の範囲内において10℃/分の一定速度で昇温する条件下でTA Q2000/Discovery 2500示差走査熱量分析装置に置き、メサコニンの結晶形Bの試料を測定し、DSC曲線(
図8参照)を描いた。DSC結果によれば、158.7℃(ピーク温度)におけるブロードな吸熱ピーク、および222.4℃(開始温度)におけるシャープな吸熱ピークの存在が示され、これはメサコニンの結晶形Bの溶融吸熱ピークであった。
【0105】
〔実施例11:メサコニンの結晶形Bの安定性〕
実施例8における方法に従って調製されたメサコニンの結晶形Bをサンプリングし、以下の試験に供した。
【0106】
適量のメサコニンの結晶形Bをサンプリングし、115℃に加熱し、次いでXRPD試験を行った。試験結果をメサコニンの結晶形Bの比較試料のXRPDスペクトル(安定性試験前のメサコニンの結晶形BのXRPDスペクトル)と比較し、結果を
図9に示した。
【0107】
その結果、メサコニンの結晶形Bの試料を115℃に加熱したとき、XRPDスペクトルの主な回折ピークの位置および相対強度は著しく変化しなかった。これは、結晶形が変化せず、依然として結晶形Bであったことを示した。以上の試験結果から、メサコニンの結晶形Bが良好な安定性を有することが示された。
【0108】
〔実施例12:メサコニンの結晶形Cの調製〕
実施例8における方法に従ってメサコニンの結晶形Bの試料100mgを調製した。メサコニンの結晶形Bの試料を真空で185℃に24時間加熱し、白色の固体結晶を得た。試験後、白色の固体結晶はメサコニンの結晶形Cであることを確認し、そのXRPDスペクトルを
図10に示した。
【0109】
〔実施例13:メサコニンの結晶形Cの調製〕
実施例8における方法に従ってメサコニンの結晶形Bの試料100mgを調製した。メサコニンの結晶形Bの試料を真空で190℃に16時間加熱し、白色の固体結晶を得た。試験後、白色の固体結晶はメサコニンの結晶形Cであることを確認し、そのXRPDスペクトルは
図10と一致した。
【0110】
〔実施例14:メサコニンの結晶形Cの特性化〕
実施例11における方法に従って調製されたメサコニンの結晶形Cをサンプリングし、以下のとおり測定を行った。
【0111】
1.X線粉末回折法
メサコニンの結晶形Cをサンプリングし、Cu,Kα,Kα1(Å):1.540598;Kα2(Å):1.544426,Kα2/Kα1強度比:0.50,走査範囲:3°〜40°の条件下でのPANalytical Empyrean&X’Pert3X線粉末回折分析装置における試験に供した。メサコニンの結晶形Cの試料のX線回折スペクトルは
図10に示し、メサコニンの結晶形Cの試料のXRPDスペクトルの基本情報は表6に示した。
【0113】
これらの回折ピークは、メサコニンの結晶形Cにおいて示される回折ピークの詳細の全てを表すものではないということは当業者によって理解されるべきである。XRPDの2θ値は、試験した装置、ならびに調製の間の変動およびバッチの変動により、誤差の範囲内で変化し得るため、挙げられた値は絶対的な値と見なされるべきではない。さらに、ピークの相対強度は配向効果で変化し得るため、本発明に含まれるXRPDの結果において示される強度は例示的なものであって、絶対的な比較に用いるものではない。
【0114】
2.熱分析
(1).熱重量分析
適量のメサコニンの結晶形Cの試料を、保護ガスが窒素であり、室温〜350℃の範囲内において10℃/分の一定速度で昇温する条件下でTA Q5000/Discovery 5500熱重量分析装置に置き、温度に伴う質量の変化を測定し、TGA曲線(
図11参照)を描いた。TGA曲線から、結晶形Cは、室温から185℃まで加熱したとき、0.5%の重量損失を有したことが分かった。
【0115】
(2).示差走査熱量測定
適量のメサコニンの結晶形Cの試料を、保護ガスが窒素であり、25〜250℃の範囲内において10℃/分の一定速度で昇温する条件下でTA Q2000/Discovery 2500示差走査熱量分析装置に置き、メサコニンの結晶形Cの試料を測定し、DSC曲線(
図12参照)を描いた。DSC結果によれば、224.4℃(開始温度)におけるシャープな吸熱ピークの存在が示され、これはメサコニンの結晶形Cの溶融吸熱ピークであった。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【
図1】メサコニンの結晶形AのXRPDスペクトルである。
【
図2】メサコニンの結晶形AのTGAスペクトルである。
【
図3】メサコニンの結晶形AのDSCスペクトルである。
【
図4】安定性試験の間のメサコニンの結晶形Aの試料の比較XRPDスペクトルである。
【
図5】180℃に加熱した前後のメサコニンの結晶形Aの比較XRPDスペクトルである。
【
図6】メサコニンの結晶形BのXRPDスペクトルである。
【
図7】メサコニンの結晶形BのTGAスペクトルである。
【
図8】メサコニンの結晶形BのDSCスペクトルである。
【
図9】115℃に加熱した前後のメサコニンの結晶形Bの比較XRPDスペクトルである。
【
図10】メサコニンの結晶形CのXRPDスペクトルである。
【
図11】メサコニンの結晶形CのTGAスペクトルである。
【
図12】メサコニンの結晶形CのDSCスペクトルである。
【手続補正書】
【提出日】2020年7月22日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0110
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0110】
〔実施例14:メサコニンの結晶形Cの特性化〕
実施例
12における方法に従って調製されたメサコニンの結晶形Cをサンプリングし、以下のとおり測定を行った。
【国際調査報告】