特表2021-513508(P2021-513508A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-513508抗がんマイクロRNA及びその脂質製剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-513508(P2021-513508A)
(43)【公表日】2021年5月27日
(54)【発明の名称】抗がんマイクロRNA及びその脂質製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7105 20060101AFI20210430BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20210430BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20210430BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20210430BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20210430BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20210430BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20210430BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20210430BHJP
   C12N 15/88 20060101ALI20210430BHJP
【FI】
   A61K31/7105ZNA
   A61K9/14
   A61K47/18
   A61K47/28
   A61K47/24
   A61P35/00
   A61K48/00
   C12N15/113 110Z
   C12N15/88 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】111
(21)【出願番号】特願2020-538933(P2020-538933)
(86)(22)【出願日】2019年2月12日
(85)【翻訳文提出日】2020年9月8日
(86)【国際出願番号】EP2019053466
(87)【国際公開番号】WO2019155094
(87)【国際公開日】20190815
(31)【優先権主張番号】18156376.8
(32)【優先日】2018年2月12日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】18167239.5
(32)【優先日】2018年4月13日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】513175686
【氏名又は名称】インテアールエヌエー テクノロジーズ ビー.ヴイ.
【氏名又は名称原語表記】InteRNA Technologies B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】デ ガンスト, マテウス マリア
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ピンクステレン, ローレンス アドリアヌス ヘンドリクス
(72)【発明者】
【氏名】ジャニコ, ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ, イマン ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】シャープベルド, ローランド クイリヌス ヨゼフ
(72)【発明者】
【氏名】イェヒェネジャド, サナズ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA30
4C076CC27
4C076CC29
4C076DD49
4C076DD49N
4C076DD63
4C076DD63N
4C076DD70
4C076DD70N
4C076FF32
4C076FF34
4C084AA13
4C084MA05
4C084MA43
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB26
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA43
4C086NA13
4C086NA14
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、マイクロRNAを含む脂質製剤に関する。製剤は、マイクロRNAと共に脂質ナノ粒子を形成することができるカチオン性脂質を含む。製剤は、医薬品において有用である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子を含む組成物であって、前記ナノ粒子が、ジアミノ脂質及びmiRNA又はmiRNAのソースを含み、
i)前記miRNAが、miRNA分子、isomiR、又はその模倣体であり、抗がんmiRNAであり、配列番号17〜50で表されるシード配列の7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを含むシード配列を有するオリゴヌクレオチドが好ましく、前記miRNAは、miRNA−193a、miRNA−323、miRNA−342、miRNA−520f、miRNA−520f−i3、miRNA−3157、及びmiRNA−7、又はそのisomiR、又はその模倣体からなる群から好ましくは選択され、
ii)前記ジアミノ脂質は、一般式(I)
【化1】

(式中、
nは、0、1、又は2であり、
、T、及びTは、それぞれ独立して、任意選択で不飽和であり、0、1、2、3、又は4つの置換基を有するC10〜C18鎖であり、置換基は、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、及びC〜Cアルコキシからなる群から選択される)
のものである、組成物。
【請求項2】
前記miRNAが、
i)miRNA−323−5p分子、miRNA−323−5p isomiR,、若しくはmiRNA−323−5p模倣体、又は
ii)miRNA−342−5p分子、miRNA−324−5p isomiR,、若しくはmiRNA−324−5p模倣体、又は
iii)miRNA−520f−3p分子、miRNA−520f−3p isomiR、若しくはmiRNA−520f−3p模倣体、又は
iv)miRNA−520f−3p−i3分子、miRNA−520f−3p−i3 isomiR、若しくはmiRNA−520f−3p−i3模倣体、又は
v)miRNA−3157−5p分子、miRNA−3157−5p isomiR、若しくはmiRNA−3157−5p模倣体、又は
vi)miRNA−193a−3p分子、miRNA−193a−3p isomiR、若しくはmiRNA−193a−3p模倣体、又は
vii)miRNA−7−5p分子、miRNA−7−5p isomiR、若しくはmiRNA−7−5p模倣体
である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
miRNAのソースが、miRNAの前駆体であり、少なくとも50ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドである、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記miRNAが、配列番号51〜125、209、211、213、215、217、219、若しくは221のうちのいずれか1つと少なくとも70%の配列同一性を共有する、
及び/又は前記miRNAが、15〜30ヌクレオチド長である、
及び/又はmiRNAの前記ソースが、前記miRNAの前駆体であり、配列番号1〜16のうちのいずれか1つと、好ましくは配列番号1〜8のうちのいずれか1つと少なくとも70%の配列同一性を共有する、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
さらなるmiRNA又はその前駆体をさらに含み、前記miRNAが、miRNA−193a、miRNA−323、miRNA−342、miRNA−520f、miRNA−520f−i3、miRNA−3157、及びmiRNA−7、又はそのisomiR、又はその模倣体からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ジアミノ脂質が、一般式(I)(式中、T、T、及びTが、それぞれ独立して、ファルネシル、ラウリル、トリデシル、ミリスチル、ペンタデシル、セチル、マルガリル、ステアリル、α−リノレニル、γ−リノレニル、リノレイル、ステアリジル、バクセニル、オレイル、エライジル、パルミトレイル、及び3,7,11−トリメチルドデシルからなる群から選択される)のものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ジアミノ脂質が、一般式(I)(式中、nが1である)のものである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ジアミノ脂質が、一般式(I)(式中、T、T、及びTが、同一である)のものである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
好ましくはアドステロール、ブラシカステロール、カンペステロール、コレカルシフェロール、コレステンジオン、コレステノール、コレステロール、デルタ−7−スチグマステロール、デルタ−7−アベナステロール、ジヒドロタキステロール、ジメチルコレステロール、エルゴカルシフェロール、エルゴステロール、エルゴステノール、エルゴスタトリエノール、エルゴスタジエノール、エチルコレステノール、フシジン酸、ラノステロール、ノルコレスタジエノール、β−シトステロール、スピナステロール、スチグマスタノール、スチグマステノール、スチグマスタジエノール、スチグマスタジエノン、スチグマステロール、及びスチグマステノン、より好ましくはコレステロールからなる群から選択される、ステロールをさらに含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
好ましくはジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)、ジオレイルホスファチジルコリン(DOPC)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DOPE)、卵ホスファチジルコリン(EggPC)、ダイズホスファチジルコリン(SoyPC)、より好ましくはジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)からなる群から選択されるリン脂質をさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
水溶性ポリマーと親油性アンカーのコンジュゲートをさらに含み、
i)水溶性ポリマーが、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(ヒドロキシエチル−l−アスパラギン)(PHEA)、ポリ−(ヒドロキシエチル−L−グルタミン)(PHEG)、ポリ(グルタミン酸)(PGA)、ポリグリセロール(PG)、ポリ(アクリルアミド)(PAAm)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)(PHPMA)、及びポリ(2−オキサゾリン)(POx)、好ましくはポリ(エチレングリコール)からなる群から選択され、
ii)親油性アンカーが、ステロール、脂質、及びビタミンE誘導体からなる群から選択される、
請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記ナノ粒子が、
i)20〜60モル%のジアミノ脂質、及び
ii)0〜40モル%のリン脂質、及び
iii)30〜70モル%のステロール、及び
iv)請求項11において規定されているような、0〜10%の水溶性ポリマーと親油性アンカーのコンジュゲート
を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
医薬として使用するための、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
がんの処置、防止、遅延、又は軽快において使用するための、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
免疫抑制腫瘍微小環境を下方調節することによって、がんの処置、防止、遅延、又は軽快において使用するための、請求項13若しくは14に記載の組成物、又は請求項1で規定した抗がんmiRNA。
【請求項16】
前記抗がんmiRNAが、miRNA−193a、又はそのisomiR、模倣体若しくは前駆体である、請求項15に記載の組成物又は抗がんmiRNA。
【請求項17】
がん細胞におけるG2/Mアレストを促進又は増加させることにより、がんの処置、防止、遅延、又は軽快において使用するための、請求項15又は16に記載の組成物又は抗がんmiRNA。
【請求項18】
miRNAの細胞内取込みを刺激するためのin vivo、in vitro、又はex vivo方法であって、細胞を請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物と接触させるステップを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロRNAを含む脂質製剤に関する。製剤は、マイクロRNAと共に脂質ナノ粒子を形成することができるカチオン性脂質を含む。製剤は、医薬品において有用である。
【背景技術】
【0002】
マイクロRNA(miRNA)は、標的mRNAにおける相補的配列に結合し、それによって、翻訳を阻害するか又はmRNA分解を誘導することによって遺伝子発現を制御する、天然に存在する、一本鎖の低分子非コードRNAである。miRNAは、近年、発生中の遺伝子発現の重要な調節因子として出現し、ヒトの疾患状態、特にがんにおいて誤って発現される頻度が高い。実際に、miRNAは、特定のがん遺伝子をサイレンシングさせるために使用することができる。いくつかのmiRNAは、がんの有効なモジュレーターであると報告されている。現在、miRNA療法を開発する際の主要な課題は、有効な送達系の欠如である。miRNAは、ヌクレアーゼによる分解に感受性であり、低い生理学的安定性を示し、天然形態で細胞毒性を有する場合がある。miRNAをヌクレアーゼによる分解から保護する一方で、いかなる有害事象も誘導せずに、機能的なmiRNA分子又はそのisomiR若しくは模倣体若しくはソースを標的(がん)細胞の細胞質中に送達する、有効な送達系に対する緊急の必要性がある。
【0003】
有望な送達系は、封入されたmiRNAを細胞膜を介して細胞内へと通過させる、細胞膜と同じ材料を含むか、又は類似する脂質若しくは脂質様材料を含む送達系である。送達系のこの分類の中には、いわゆる脂質ナノ粒子がある。脂質ナノ粒子は、一般的に、直径10〜100nmの小型の複合体構造であり、生理学的条件で安定であり、免疫学的に不活性である(T.Admadzadaら Biophysical Reviews(2018年)10:69〜86頁)。他の種類のオリゴヌクレオチドの送達における利点にもかかわらず、脂質ナノ粒子を使用するmiRNA送達の成功について公知の報告は存在しない。封入されたmiRNAの作用を改善するために有効なmiRNAナノ粒子製剤に対する継続的な必要性が存在する。
【0004】
がんに対するマイクロRNA療法を改善するための継続的な必要性、及び処置に関する新たな戦略を切り開くことができる、がんのマイクロRNA処置へのより深い推定機構のための継続的な必要性が存在する。がん免疫応答のモジュレーションのための継続的な必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
驚くべきことに、本発明者らは、いくつかのがん適応症において顕著なin vivo有効性を示すmiRNAナノ粒子製剤を特定した。
【0006】
組成物
本発明者らは、驚くべきことに、ジアミノ脂質を含むナノ粒子製剤がすぐれた結果をもたらすことを見出した。したがって、本発明の第1の態様は、ナノ粒子を含む組成物であって、ナノ粒子が、ジアミノ脂質及びそのmiRNA、antagomiR、又はソースを含み、
i)miRNA又はantagomirは、miRNA分子、isomiR、又はその模倣体であり、抗がんmiRNA、好ましくは、配列番号17〜50で表されるシード配列の7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを含むシード配列を有するオリゴヌクレオチドであるか、又はそのantagomirであり、前記miRNA又はantagomirは、miRNA−193a、miRNA−323、miRNA−342、miRNA−520f、miRNA−520f−i3、miRNA−3157、miRNA−7、miRNA−135a、miRNA−135b、及びmiRNA−196a、又はそのisomiR、又はその模倣体、又はそのantagomirからなる群から好ましくは選択され、
ii)ジアミノ脂質は、一般式(I)
【0007】
【化1】
【0008】
(式中、
nは、0、1、又は2であり、
、T、及びTは、それぞれ独立して、任意選択で不飽和であり、0、1、2、3、又は4つの置換基を有するC10〜C18鎖であり、置換基は、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、及びC〜Cアルコキシからなる群から選択される)
のものである、組成物を提供する。
【0009】
このような組成物は、以降で、本発明による組成物と称される。本発明による組成物中に含まれるナノ粒子は、以降で、本発明によるナノ粒子と称される。下のi)に記載されているように、miRNA若しくはantagomir又はそのソースは、以降で、組成物由来のmiRNAと称され;組成物由来のmiRNAは、好ましくは、miRNA分子、isomiR、若しくはその模倣体、又はmiRNA分子の前駆体、isomiR、若しくは模倣体である。
【0010】
この出願の文脈では、ナノ粒子は、ナノメートル範囲、又は一部の場合にはマイクロメートル範囲の寸法を有する粒子である。好ましくは、ナノ粒子は、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200ナノメートル又はそれを超えるナノメートルの直径であり、直径は、好ましくは、ナノ粒子の集団の平均径である。好ましくは、ナノ粒子は、最大100、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1100、1200、1300、1400、1500、2000、5000、又は10000ナノメートルの直径である。より好ましくは、ナノ粒子は、40〜300nmの、さらにより好ましくは50〜200nmの、さらにより好ましくは50〜150nmの、最も好ましくは65〜85nmの、例えば約70nmの平均径を有する。
【0011】
本発明によるナノ粒子は、オリゴヌクレオチドをさらに含む脂質ナノ粒子である。オリゴヌクレオチドは、ナノ粒子のカーゴ又はペイロードと考えることができる。したがって、ナノ粒子は、例えば、ミセル、リポソーム、リポプレックス、単層ベシクル、多層ベシクル、又はその架橋バリアントであり得る。ナノ粒子は、ミセル、リポソーム、又はリポプレックスであることが好ましい。ナノ粒子の組成について言及される場合、ジアミノ脂質及び任意選択でさらなる賦形剤への言及が意図され、いずれのカーゴ物質への言及も意図されない。非限定的な例として、ナノ粒子が50モル%のジアミノ脂質及び50モル%の他の賦形剤を含むと考えられる場合、モルパーセンテージは、ジアミノ脂質及び他の賦形剤のみに関し、オリゴヌクレオチドのモル分率又は溶媒のモル分率は考慮されていない。
【0012】
本発明が、2以上のmiRNA分子、そのisomiR、模倣体、若しくはソース又はそのantagomirを含む組成物に関する場合、各miRNA分子、そのisomiR、模倣体、若しくはソース又はそのantagomirは、別々の組成物中にそれぞれ存在することが包含される。各組成物は、経時的に又は同時に対象に投与することができ、又は使用前に、単一の組成物中に混合することもできる。或いは、2以上のmiRNA分子、そのisomiR、模倣体、若しくはソース又はそのantagomirが、本明細書において定義されている組成物中に存在することも包含される。
【0013】
ジアミノ脂質
本発明によるナノ粒子は、一般式(I)のジアミノ脂質を含むが、脂質をさらに含んでもよい。好ましい実施形態では、ジアミノ脂質は、モルパーセントで、ナノ粒子中に最も蔓延している。本明細書で使用される場合、脂質という用語は、非極性溶媒に可溶性である物質を指す。本発明において使用されるジアミノ脂質は、スペーサーに連結した3つのテイルを有し、よって、天然に存在するトリグリセリド脂質に似ている。いくつかのこのような脂質が公知である(米国特許第8691750号)。
【0014】
一般式(I)のジアミノ脂質は、様々な長さの脂肪族スペーサーによって分離されている2つの第三級アミンを含む。スペーサーは、脂質の頭部サイズを決定する助けとなる。nは、0、1、又は2であり得、そのため、スペーサーは、事実上、1,2−エチレン、n−1,3−プロピレン、又はn−1,4−ブチレンスペーサーである。特に好ましい実施形態では、nは、0である。特に好ましい実施形態では、nは、1である。特に好ましい実施形態では、nは、2である。nが1であることが最も好ましい。したがって、好ましい実施形態では、本発明は、本発明による組成物を提供し、ジアミノ脂質は、一般式(I)(式中、nは1である)のものである。したがって、好ましい実施形態では、本発明は、ナノ粒子を含む組成物であって、ナノ粒子が、ジアミノ脂質及びmiRNA、antagomiR、又はそのソースを含み、
i)miRNA又はantagomirが、miRNA分子、isomiR、又はその模倣体であり、配列番号17〜50によって表されるシード配列の7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを含むシード配列を有するオリゴヌクレオチドであるか、又はそのantagomirであり、前記miRNA又はantagomirが、miRNA−193a、miRNA−323、miRNA−342、miRNA−520f、miRNA−520f−i3、miRNA−3157、及びmiRNA−7、又はそのisomiR、又はその模倣体、又はそのantagomirからなる群から選択され、
ii)ジアミノ脂質が、一般式(I−1)
【0015】
【化2】
【0016】
(式中、T、T、及びTは、それぞれ独立して、任意選択で不飽和であり、0、1、2、3、又は4つの置換基を有するC10〜C18鎖であり、置換基は、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、及びC〜Cアルコキシからなる群から選択される)
のものである、組成物を提供する。
【0017】
、T、及びTは、脂質のテイルと考えることができ、任意選択で不飽和あり、最大4つの任意選択の置換基を有する脂肪族C10〜C18である。T、T、及びTは、独立して選択されてもよく、又はT、T、及びTのうちの2若しくは3つについて、同じ選択がなされてもよい。好ましい実施形態では、この態様は、本発明による組成物であって、ジアミノ脂質が、一般式(I)(式中、T、T、及びTは同一である)のものである、組成物を提供する。同一であることは、同位体の天然存在比を考慮すべきであることを意味するほど狭く解釈されるべきではなく−同一であることは、好ましくは、描写された構造式に表される分子構造を指すに過ぎない。
【0018】
鎖が長いほど、一般的には、より強固な脂質膜をもたらすことになる。この出願では、C10〜C18における数値は、Cの総含量ではなく、決定することができる最も長い連続した鎖を指す。非限定的な例として、6位にn−プロピル置換基を有するn−ドデシル鎖は、15C原子を含むが、最も長い連続鎖が12C原子の長さを有することから、C12鎖である。不飽和であることは、不飽和が鎖のcisにある場合、より強固ではない膜をもたらし、それを曲げることができる。好ましい不飽和は、cisである。好ましい実施形態では、T、T、及びTは、0、1、2、3、又は4つの不飽和を含有する。より好ましい実施形態では、T、T、及びTは、1、2、3、又は4つの不飽和を含有する。さらにより好ましい実施形態では、T、T、及びTは、1、2、又は3つの不飽和、好ましくは3つの不飽和を含有する。
【0019】
任意選択の置換基は、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、及びC〜Cアルコキシからなる群から選択される。好ましい任意選択の置換基は、C〜Cアルキルであり、より好ましくはC〜Cアルキルであり、最も好ましくはメチル(−CH)である。このような置換基のうちの0、1、2、3、又は4つが存在し、このことは、置換基が存在しない可能性もあることを意味する。このように、置換基は任意選択的である。好ましくは、0、1、2、又は3つのこのような置換基が存在する。
【0020】
好ましい実施形態では、T、T、及びTは、それぞれ独立して、任意選択で不飽和であり、0、1、2、3、又は4つの置換基を有するC10〜C18鎖であり、置換基は、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、及びC〜Cアルコキシからなる群から選択される。より好ましい実施形態では、T、T、及びTは、それぞれ独立して、任意選択で不飽和であり、0、1、2、3、又は4つの置換基を有するC10〜C14鎖であり、置換基は、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、及びC〜Cアルコキシからなる群から選択される。最も好ましくは、T、T、及びTは、それぞれ独立して、任意選択で不飽和であり、0、1、2、3、又は4つの置換基を有するC12鎖であり、置換基は、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、及びC〜Cアルコキシからなる群から選択される。
【0021】
好ましい実施形態では、T、T、及びTは、それぞれ独立して、1、2、3つ又は4つの不飽和を有し、0、1、2、3、又は4つの置換基を有するC10〜C18鎖であり、置換基は、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、及びC〜Cアルコキシからなる群から選択される。
【0022】
好ましい実施形態では、T、T、及びTは、それぞれ独立して、1、2、又は3つの不飽和を有し、1、2、3、又は4つの置換基を有するC10〜C18鎖であり、置換基は、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、及びC〜Cアルコキシからなる群から選択される。
【0023】
好ましい実施形態では、T、T、及びTは、それぞれ独立して、1、2、又は3つの不飽和を有し、1、2、3、又は4つの置換基を有するC10〜C18鎖であり、置換基は、C〜Cアルキルからなる群から選択される。
【0024】
好ましい実施形態では、T、T、及びTは、それぞれ独立して、1、2、又は3つの不飽和を有し、1、2、又は3つの置換基を有するC10〜C14鎖であり、置換基は、C〜Cアルキルからなる群から選択される。
【0025】
、T、及びTに関する好ましい実施形態は、以下の各構造式を表すそれぞれの選択肢に対する名称と共に、以下に示されている。体系的なCの番号付けにおいて、コロンの後の番号は(C12:3におけるように)、不飽和の程度を示す。
【0026】
【化3】
【0027】
【化4】
【0028】
したがって、好ましい実施形態では、この態様は、本発明による組成物であって、ジアミノ脂質が、一般式(I)(式中、T、T、及びTが、それぞれ独立して、ファルネシル、ラウリル、トリデシル、ミリスチル、ペンタデシル、セチル、マルガリル、ステアリル、α−リノレニル、γ−リノレニル、リノレイル、ステアリジル、バクセニル、オレイル、エライジル、パルミトレイル、及び3,7,11−トリメチルドデシルからなる群から選択される)のものである、組成物を提供する。好ましくは、T、T、及びTは、それぞれ独立して、ファルネシル、ラウリル、トリデシル、ミリスチル、ペンタデシル、セチル、α−リノレニル、γ−リノレニル、リノレイル、ステアリジル、オレイル、パルミトレイル、及び3,7,11−トリメチルドデシルからなる群から選択される。より好ましくは、T、T、及びTは、それぞれ独立して、ファルネシル、ラウリル、トリデシル、ミリスチル、ステアリジル、パルミトレイル、及び3,7,11−トリメチルドデシルからなる群から選択される。さらにより好ましくは、T、T、及びTは、それぞれ独立して、ファルネシル、ラウリル、トリデシル、ミリスチル、及び3,7,11−トリメチルドデシルからなる群から選択される。さらにより好ましくは、T、T、及びTは、それぞれ独立して、ファルネシル、ラウリル、及び3,7,11−トリメチルドデシルからなる群から選択される。最も好ましくは、T、T、及びTは、それぞれ独立して、ファルネシル、例えば、(2E,6E)ファルネシル、(2E,6Z)ファルネシル、(2Z,6E)ファルネシル、又は(2Z,6Z)ファルネシルであり、好ましくは、それらは、それぞれ、(2E,6E)ファルネシルである。
【0029】
ファルネシルは、3,7,11−トリメチルドデカ−2,6,10−トリエニルとしても公知であり、不飽和直鎖状C12鎖であり;(2E,6E)、(2E,6Z)、(2Z,6E)、又は(2Z,6Z)であり得;好ましくは、(2E,6E)である。ラウリルは、ドデシルとしても知られており、飽和直鎖状C12鎖である。トリデシルは、飽和直鎖状C13鎖である。ミリスチルは、テトラデシルとしても知られており、飽和直鎖状C14鎖である。ペンタデシルは、飽和直鎖状C15鎖である。セチルは、パルミチルとしても知られており、飽和直鎖状C16鎖である。マルガリルは、ヘプタデシルとしても知られており、飽和直鎖状C17鎖である。ステアリルは、オクタデシルとしても知られており、飽和直鎖状C18鎖である。α−リノレニルは、(9Z,12Z,15Z)−9,12,15−オクタデカトリエニルとしても知られており、不飽和直鎖状C18鎖である。γ−リノレニルは、(6Z,9Z,12Z)−6,9,12−オクタデカトリエニルとしても知られており、不飽和直鎖状C18鎖である。リノレイルは、(9Z,12Z)−9,12−オクタデカジエニルとしても知られており、不飽和直鎖状C18鎖である。ステアリジルは、(6Z,9Z,12Z,15Z)−6,9,12,15−オクタデカテトラエニルとしても知られており、不飽和直鎖状C18鎖である。バクセニルは、(E)−オクタデカ−11−エニルとしても知られており、不飽和直鎖状C18鎖である。オレイルは、(9Z)−オクタデカ−9−エニルとしても知られており、不飽和直鎖状C18鎖である。エライジルは、(9E)−オクタデカ−9−エニルとしても知られており、不飽和直鎖状C18鎖である。パルミトレイルは、(9Z)−ヘキサデカ−9−エニルとしても知られており、不飽和直鎖状C18鎖である。3,7,11−トリメチルドデシルは、飽和ファルネシルであり、飽和直鎖状C12鎖である。
【0030】
抗がんmiRNA、antagomiR、又はそのソース
好ましい実施形態では、前記抗がんmiRNA又はantagomirは、miRNA−193a、miRNA−323、miRNA−342、miRNA−520f、miRNA−520f−i3、miRNA−3157、miRNA−135a、miRNA−135b、及びmiRNA−196a、又はそのisomiR、又はその模倣体、又はそのantagomirからなる群から選択される。より好ましい実施形態では、前記miRNA又はantagomirは、miRNA−193a、miRNA−323、miRNA−342、miRNA−520f、miRNA−520f−i3、miRNA−3157、及びmiRNA−7、又はそのisomiR、又はその模倣体、又はそのantagomirからなる群から選択される。他のより好ましい実施形態では、前記miRNA又はantagomirは、miRNA−193a、miRNA−323、miRNA−342、miRNA−520f、miRNA−520f−i3、及びmiRNA−3157、又はそのisomiR、又はその模倣体、又はそのantagomirからなる群から選択される。他のより好ましい実施形態では、前記miRNA又はantagomirは、miRNAであり、miRNA−193a、miRNA−323、miRNA−342、miRNA−520f、miRNA−520f−i3、及びmiRNA−3157、又はそのisomiR、又はその模倣体、又はそのantagomirからなる群から選択される。
【0031】
本発明による好ましいナノ粒子は、miRNA、antagomiR、又はそのソース、好ましくはmiRNA又はそのソースを含み、miRNA又はantagomirは、miRNA分子、isomiR、又はその模倣体であり、配列番号17〜50によって表されるシード配列の7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを含むシード配列を有するオリゴヌクレオチドであるか、又はそのantagomirであり、前記miRNA又はantagomirは、miRNA−193a、miRNA−323、miRNA−342、miRNA−520f、miRNA−520f−i3、miRNA−3157、miRNA−7、miRNA−135a、miRNA−135b、及びmiRNA−196a、又はそのisomiR、又はその模倣体、又はそのantagomirからなる群から選択される。より好ましくは、本発明によるナノ粒子は、miRNA又はそのソースを含み、miRNAは、miRNA分子、isomiR、又はその模倣体であり、配列番号17〜50によって表されるシード配列の7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを含むシード配列を有するオリゴヌクレオチドであり、前記miRNAは、miRNA−193a、miRNA−323、miRNA−342、miRNA−520f、miRNA−520f−i3、miRNA−3157、及びmiRNA−7、又はそのisomiR、又はその模倣体からなる群から選択される。
【0032】
マイクロRNA(miRNA)は、17〜25ヌクレオチドの小さなRNAであり、真核生物における遺伝子発現のレギュレーターとして機能する。miRNAは、一次miRNA(プリ−miRNA)と呼ばれる長い一次転写産物の一部として、核内で最初に発現される。核の内部では、プリ−miRNAが、酵素Droshaによって部分的に消化され、活性分子であるより短い成熟miRNAへと、Dicerによってさらに処理するために細胞質へと輸送される、65〜120ヌクレオチド長のヘアピン前駆体miRNA(プリ−miRNA)を形成する。動物では、これらの短いRNAは、5’の近位「シード」領域(一般的には、ヌクレオチド2〜8)を含み、これは、miRNAの、標的mRNAの3’非翻訳領域(3’−UTR)への対合特異性の主要な決定因子であると考えられる。より詳細な説明が、一般的定義に掲げられた部分に与えられる。
【0033】
miRNA分子、miRNA模倣体又はmiRNA isomiR又はmiRNA antagomir又はそれらのいずれかのソースに関する以下に与えられる定義のそれぞれを、この出願の、特定されたmiRNA、分子若しくは模倣体若しくはisomiR若しくはantagomir又はそのソース:miRNA miRNA−193a、miRNA−323、miRNA−342、miRNA−520f、miRNA−520f−i3、miRNA−3157、及びmiRNA−7、若しくはisomiR若しくは模倣体若しくはantagomir又はそのソースのそれぞれに対して使用するべきである。好ましい成熟配列(配列番号51〜57)、シード配列(配列番号17〜50、ここで、配列番号17〜23は、カノニカルなmiRNAのシード配列であり、配列番号24〜50は、isomiRに関するシード配列である)、isomiR配列(配列番号58〜125)、又は前記miRNA分子又はその模倣体若しくはisomiRのソースの配列(配列番号1〜8のようなRNA前駆体、又は配列番号9〜16のようなRNA前駆体をコードするDNA))は、それぞれ、配列表において特定される。
【0034】
好ましい実施形態では、この態様は、本発明による組成物であって、前記miRNAが、
i)miRNA−323−5p分子、miRNA−323−5p isomiR、若しくはmiRNA−323−5p模倣体、又は
ii)miRNA−342−5p分子、miRNA−342−5p isomiR、若しくはmiRNA−324−5p模倣体、又は
iii)miRNA−520f−3p分子、miRNA−520f−3p isomiR、若しくはmiRNA−520f−3p模倣体、又は
iv)miRNA−520f−3p−i3分子、miRNA−520f−3p−i3 isomiR、若しくはmiRNA−520f−3p−i3模倣体、又は
v)miRNA−3157−5p分子、miRNA−3157−5p isomiR、若しくはmiRNA−3157−5p模倣体、又は
vi)miRNA−193a−3p分子、miRNA−193a−3p isomiR、若しくはmiRNA−193a−3p模倣体、又は
vii)miRNA−7−5p分子、miRNA−7−5p isomiR、若しくはmiRNA−7−5p模倣体
である、組成物を提供する。
【0035】
他の好ましい実施形態では、この態様は、本発明による組成物であって、前記miRNA又はantagomirが、miRNA−135a分子、miRNA−135b分子、miRNA−196a−5p分子、miRNA−135aのisomiR、miRNA−135bのisomiR、miRNA−196a−5pのisomiR、miRNA−135aのantagomir、miRNA−135bのantagomir、miRNA−196a−5pのantagomir、又はその模倣体である、組成物を提供する。
【0036】
模倣体は、miRNA分子と類似するか又は同一の活性を有する分子である。この文脈では、類似する活性は、活性の許容されるレベルと同じ意味を与えられる。模倣体は、機能的決定において、antagomirに対抗する。好ましい模倣体は、好ましくは、ロックド核酸モノマーなどの1つ若しくは複数のヌクレオチド類似体を含む合成オリゴヌクレオチド、並びに/又は足場修飾を含むヌクレオチド及び/若しくは塩基修飾を含むヌクレオチドである。模倣体は、miRNAに関するか又はisomiRに関する模倣体であってもよく、また、antagomirに関する模倣体であってもよい。好ましい模倣体は、miRNAに関するか又はisomiRに関する模倣体である。
【0037】
好ましい模倣体は、センス鎖及びアンチセンス鎖を含む二重鎖オリゴヌクレオチドである。天然に存在するようなカノニカルなmiRNAは、天然に存在する標的のセンス配列に対して相補的であるため、アンチセンス配列を有するものとして、本明細書において定義される。本発明による組成物に対して好ましい模倣体である二重鎖模倣体において、一方がセンス鎖として設計され、もう一方がアンチセンス鎖として設計されている二本鎖が存在することになる。アンチセンス鎖は、miRNAと、若しくはmiRNAの前駆体と、若しくはisomiRと同じ配列を有してもよく、又はその断片と同じ配列を有するか、若しくは同じ配列を含むか、若しくはその断片と同じ配列を含んでもよい。センス鎖は、アンチセンス鎖に対して少なくとも部分的に逆相補的であり、二重鎖模倣体の形成を可能にする。これらのセンス鎖は、それ自体必ずしも生物学的に活性ではなく、その重要な機能のうちの1つは、アンチセンス鎖を安定化させること又はその分解を防ぐことである。成熟miRNAに関するセンス鎖の例は、配列番号126〜132である。isomiRに関するセンス鎖の例は、配列番号133〜200である。
【0038】
好ましい実施形態では、アンチセンス鎖は、好ましくは、架橋核酸ヌクレオチド、例えば、ロックド核酸(LNA)ヌクレオシド、2’−O−アルキルヌクレオシド、例えば、2’−O−メチルヌクレオシド、2’−フルオロヌクレオシド、及び2’−アジドヌクレオシド、好ましくは2’−O−アルキルヌクレオシド、例えば、2’−O−メチルヌクレオシドからなる群から選択される少なくとも1つの修飾ヌクレオシドを含む。このような少なくとも1つの修飾ヌクレオシドによって、1番目若しくは最後のRNAヌクレオシドが置き換えられるか、又は2番目若しくは最後から2番目のRNAヌクレオシドが置き換えられることが好ましい。好ましい実施形態では、少なくとも2つの修飾ヌクレオシドによって、最初の2つの又は最後の2つのRNAヌクレオシドが置き換えられる。より好ましくは、1番目と最後のRNAヌクレオシドの両方が置き換えられ、さらにより好ましくは、最初の2つと最後の2つの両方が置き換えられる。修飾ヌクレオシドを置き換えることが、置き換えられるヌクレオシドと同じ対合能を有すること、好ましくは、同じ核酸塩基を有することが理解されるべきである。好ましくは、アンチセンス鎖は、最初の2つ又は最後の2つのRNAヌクレオシドを除いて修飾ヌクレオシドを含まない。好ましい実施形態では、アンチセンス鎖の最後の塩基は、DNAヌクレオシドであり;より好ましくは、アンチセンス鎖の最後の2つの塩基は、DNAヌクレオシドである。好ましくは、アンチセンス鎖がセンス鎖と対を形成する場合、アンチセンス鎖の最後の1つ又は2つの残基がオーバーハングを形成し;より好ましくは、アンチセンス鎖の最後の2つの残基が、このようなオーバーハングを形成する。好ましくは、アンチセンス鎖は、最後の2つのヌクレオシドを除いて、又はオーバーハングを除いて、DNAヌクレオシドを含まない。好ましくは、センス鎖は、RNAヌクレオシドのみを含む。
【0039】
好ましくは、センス鎖とアンチセンス鎖は、完全には重複せず、3’末端に1、2、3、又は4つの追加の塩基を有し、好ましくは3’末端に2つの追加の塩基を有し、付着末端を形成する。したがって、対応するアンチセンス鎖では、3’末端の1、2、3、又は4つの塩基は、好ましくは、センス鎖に逆相補的塩基を有さず、付着末端も形成し;より好ましくは、センス鎖の最初の2つの塩基は、付着末端を形成し、アンチセンス鎖に相補的塩基を有さない。センス鎖は、必ずしも生物学的に活性ではなく、アンチセンス鎖の安定性を増加させるために主に作用する。模倣体に関するセンス/アンチセンス対の好ましい配列の例は、センス鎖では配列番号201〜207、208、210、212、214、216、218、及び220、より好ましくはセンス鎖では配列番号208、210、212、214、216、218、及び220、並びにアンチセンス鎖では配列番号209、211、213、215、217、219、及び221である。好ましい対は、配列番号201又は208及び配列番号209、配列番号202又は210及び配列番号211、配列番号203又は212及び配列番号213、配列番号204又は214及び配列番号215、配列番号205又は216及び配列番号217、配列番号206又は218及び配列番号219、及び配列番号207又は220及び配列番号221、より好ましくは配列番号218及び配列番号219である。
【0040】
好ましい実施形態では、模倣体は、センス鎖とアンチセンス鎖を含む二重鎖オリゴヌクレオチドであり、両方の鎖は、15〜30ヌクレオチド長、好ましくは17〜27ヌクレオチド長を有し、アンチセンス鎖は、配列番号51〜125のうちのいずれか1つと70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、又は100%の配列同一性を有し、センス鎖は、配列番号126〜200のうちのいずれか1つと70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、又は100%の配列同一性を任意選択で有し、センス鎖とアンチセンス鎖は、好ましくはアニーリングして、前記二重鎖オリゴヌクレオチドを形成することができ、任意選択で、オリゴヌクレオチドの一方又は両方の末端は、1、2、3、又は4つの、好ましくは2つのヌクレオチドの重複を有する付着末端であり、センス鎖は、化学修飾されたヌクレオチドを任意選択で含む。好ましくは、二重鎖模倣体の二本鎖は、同じ長さを有するか、又は1、2、3、4、5、若しくは6ヌクレオチド長で異なる。
【0041】
miRNA分子、isomiR、模倣体、又はそのソースのantagomirは、それが導出される対応するmiRNA分子のうちの1つに対して反対又は逆である、活性を有する分子である。miRNA、isomiR、又は模倣体のantagomirもまた、前記miRNA分子又はisomiR又は模倣体に拮抗することができるか又はその活性をサイレンシングするか若しくは低下させることができる分子として定義され得る。それが導出される対応するmiRNA分子のうちの1つと反対若しくは逆である活性又はそれが導出される前記miRNA分子の活性と拮抗することができる活性は、好ましくは、前記miRNA分子又はisomiR又は模倣体又はそのソースの活性を低下させることができる活性である。この文脈では、低下とは、前記miRNA分子又はisomiR又は模倣体又はそのソースの活性の少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%の低下を意味する。antagomirの模倣体は、本明細書で後に定義されているものなど化学的修飾を有する合成オリゴヌクレオチドであり得る。好ましい活性及び前記活性を評価するための好ましいアッセイについて、後に本明細書において定義される。
【0042】
別段に指定されていなければ、本出願の全文脈内で、miRNAは、miRNA分子、miR、isomiR、antagomir、若しくは模倣体、又はそのソース若しくは前駆体と称される場合もある。本明細書で特定される各配列は、本出願の本文で使用される配列番号として、又は配列表における対応する配列番号として特定することができる。この出願において定義される配列番号は、前記miRNA、isomiR、antagomir、模倣体、又は前駆体などのそのソースの塩基配列を指し得る。すべての配列番号について、一部の塩基が交換可能であることを当業者は認識している。例えば、各例のTは、Uで個々に置換可能であり、その逆も同様である。成熟miRNAに与えられるRNA配列は、例えば、RNAヌクレオチドの代わりにDNAヌクレオチドを使用して、DNAオリゴヌクレオチドとして合成され得る。このような場合には、ウラシル塩基の代わりにチミン塩基が使用され得る。或いは、デオキシリボース足場のチミン塩基が使用され得る。当業者は、塩基対合挙動が正確な配列よりも重要であり、T及びUがこのような目的で一般的に交換可能であることを理解する。したがって、antagomirは、DNA又はRNA分子のいずれかであってもよく、又は本明細書で後に定義されているようにさらに修飾されたオリゴヌクレオチドであってもよい。したがって、模倣体は、DNA又はRNA分子のいずれかであってもよく、又は本明細書で後に定義されているように、さらに修飾されたオリゴヌクレオチドであってもよい。
【0043】
miRNA antagomirは、本発明においても言及される。この用語は、本明細書において特定される治療適用において使用されるために、発現が上方調節/過剰発現/増加されるべきではない及び/又は活性が増加されるべきではない、本発明のmiRNA分子に関する。対照的に、治療上の所望の効果を得るために、これらのmiRNA分子の内因性発現は下方調節/低下される必要がある及び/又はこのようなmiRNA分子の活性は低下されるか若しくは低減されるか若しくは阻害される必要がある。これは、antagomirを使用して、本明細書で後に説明されているように行われることが好ましい。したがって、本発明において、治療用途においてこれらのmiRNA分子のいずれかについて言及される場合、miRNA−135a、miRNA−135b、若しくはmiRNA−196a−5p分子のantagomir又はこれらのmiRNAのantagomirの模倣体又はこれらのmiRNAのantagomirのソースの使用を通常指す。したがって、antagomirに言及する場合、本明細書において示されているように、miRNA−135a、miRNA−135b、若しくはmiRNAー196a−5p分子のantagomir又は模倣体又はそのソースの使用を通常指す。miRNA分子又は模倣体又はisomiR又はこれらのいずれかのソースに関して本明細書において与えられる各定義は、この段落において特定されるantagomirとして使用されるmiRNA分子のいずれにも適用することができる。miRNA分子の所与のantagomirに関して本明細書において与えられる各定義は、それぞれ本明細書において定義されているように、別個のmiRNA分子の他のantagomirも保持する。antagomirは、miRNA、isomiR、又はその模倣体に相補的であるか又は逆相補的であることが好ましい。
【0044】
本発明の文脈では、miRNA分子又は模倣体又はisomiR又はそのantagomirは、一般的定義に掲げられた部分においてさらに定義されているように、合成であるか又は天然であるか又は組換えであるか又は成熟しているか又は成熟miRNA若しくはヒトmiRNAの一部であってもよく、又はヒトmiRNAから導出されてもよい。ヒトmiRNA分子は、ヒトの細胞、組織、器官又は体液中に見られるmiRNA分子である(すなわち、内因性ヒトmiRNA分子)。ヒトmiRNA分子は、ヌクレオチドの置換、欠失及び/又は付加によって内因性ヒトmiRNA分子から導出されるヒトmiRNA分子でもあり得る。miRNA分子又は模倣体又はisomiR又はそのantagomirは、一本鎖又は二本鎖RNA分子であり得る。
【0045】
好ましくは、miRNA分子又はその模倣体若しくはisomiRは、6〜30ヌクレオチド長、好ましくは12〜30ヌクレオチド長、好ましくは15〜28ヌクレオチド長であり、より好ましくは、前記分子は、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド長又はそれより長いヌクレオチド長を有する。
【0046】
好ましくは、miRNA分子のantagomirは、8〜30ヌクレオチド長、好ましくは10〜30ヌクレオチド長、好ましくは12〜28ヌクレオチド長であり、より好ましくは、前記分子は、少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド長又はそれより長いヌクレオチド長を有する。
【0047】
好ましい実施形態では、miRNA分子又は模倣体又はisomiRは、前記miRNA分子若しくはその模倣体若しくはisomiR(配列番号17〜50)のシード配列に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを含むか、又はそのantagomirである。好ましくは、この実施形態では、miRNA分子又は模倣体又はisomiRは、6〜30ヌクレオチド長であり、より好ましくは、前記miRNA分子若しくは模倣体若しくはisomiRのシード配列に存在する、7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを含むか、又は同じ長さのそのantagomirである。さらにより好ましくは、miRNA分子又は模倣体又はisomiRは、15〜28ヌクレオチド長であり、より好ましくは、シード配列中に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを含み、さらにより好ましくは、miRNA分子は、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド長又はそれより長いヌクレオチド長を有するか、又は同じ長さのそのantagomirである。
【0048】
この文脈では、シード配列に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを含むことは、最大1つの位置でシード配列と異なる7ヌクレオチドの連続ストレッチを指すことを意図する。或いは、これは、単一ヌクレオチドの脱落によってのみシード配列と異なる6ヌクレオチドの連続ストレッチを指し得る。本出願全体を通して、より好ましいmiRNA分子、isomiR、模倣体、若しくはその前駆体は、示されたシード配列に存在する7ヌクレオチドのうちの7つすべてを含むか、又は、言い換えれば、前記シード配列と100%の配列同一性を有する。好ましくは、miRNA、isomiR、又は模倣体中に含まれる場合、シード配列は、ヌクレオチド番号1、2、又は3で始まり、ヌクレオチド番号7、8、9、10、又は11で終わり;最も好ましくは、このようなシード配列は、ヌクレオチド番号2で始まり、ヌクレオチド番号8で終わる。
【0049】
好ましいmiRNA−135a、miRNA−135b、及びmiRNAー196a分子、isomiR、又はその模倣体は、欧州特許第17199997号の表2、4、5、及び6に記載されている。好ましいその前駆体は、欧州特許第17199997号の表1及び3に記載されている。好ましいmiRNA−135a、miRNA−135b、及びmiRNA−196a分子、isomiR、又はその模倣体は、欧州特許第17199997号の表4又は5に特定されたシード配列に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを含み、より好ましくは、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド長又はそれより長いヌクレオチド長を有する。好ましくは、antagomirでは、欧州特許第17199997号の表4又は5で特定されるシード配列中に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つに対して逆相補的な配列が代わりに含まれる。miRNA−135a、miRNA−135b、又はmiRNA−196aの好ましいantagomirは、上記のmiRNA−135a、miRNA−135b、又はmiRNA−196a分子、isomiR、又はその模倣体に対して相補的であるか又は逆相補的であり、好ましくは、欧州特許第17199997号の表6に記載されている通りである。
【0050】
好ましいmiRNA−323は、miRNA−323−5p分子、isomiR、又はその模倣体であり、配列番号17又は24〜28のシード配列中に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを含み、より好ましくは、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド長又はそれより長いヌクレオチド長を有する。好ましくは、antagomirでは、配列番号17又は24〜28のシード配列中に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つに対して逆相補的な配列が代わりに含まれる。miRNA−323の好ましいantagomirは、上記のmiRNA−323分子、isomiR、又はその模倣体に対して相補的であるか又は逆相補的である。
【0051】
miRNA−323の好ましい模倣体は、センス鎖及びアンチセンス鎖を有し、アンチセンス鎖は、配列番号17又は24〜28のシード配列中に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを含み、アンチセンス鎖は、好ましくは、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド長又はそれより長いヌクレオチド長を有し、アンチセンス鎖は、好ましくは、配列番号51、58〜68、又は209に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有し、センス鎖は、好ましくは、配列番号126、133〜143、201、又は208に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有し、センス鎖は、好ましくは、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド長又はそれより長いヌクレオチド長を有する。
【0052】
好ましいmiRNA−342は、miRNA−342−5p分子、isomiR、又はその模倣体であり、配列番号18又は29〜42のシード配列中に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つ含み、より好ましくは、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド長又はそれより長いヌクレオチド長を有する。好ましくは、antagomirでは、配列番号18又は29〜42のシード配列中に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つに対して逆相補的な配列が代わりに含まれる。miRNA−342の好ましいantagomirは、上記のmiRNA−342分子、isomiR、又はその模倣体に対して相補的であるか又は逆相補的である。
【0053】
miRNA−342の好ましい模倣体は、センス鎖及びアンチセンス鎖を有し、アンチセンス鎖は、配列番号18又は29〜42のシード配列中に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを含み、アンチセンス鎖は、好ましくは、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド長又はそれより長いヌクレオチド長を有し、アンチセンス鎖は、好ましくは、配列番号52、69〜113、又は211に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有し、センス鎖は、好ましくは、配列番号127、144〜188、202、又は210に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有し、センス鎖は、好ましくは、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド長又はそれより長いヌクレオチド長を有する。
【0054】
好ましいmiRNA−520fは、miRNA−520f−3p分子、isomiR、又はその模倣体であり、配列番号19又は43〜44のシード配列中に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを含み、より好ましくは、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド長又はそれより長いヌクレオチド長を有する。好ましくは、antagomirでは、配列番号19又は43〜44のシード配列中に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つに対して逆相補的な配列が代わりに含まれる。miRNA−520fの好ましいantagomirは、上記のmiRNA−520f分子、isomiR、又はその模倣体に対して相補的であるか又は逆相補的である。
【0055】
miRNA−520fの好ましい模倣体は、センス鎖及びアンチセンス鎖を有し、アンチセンス鎖は、配列番号19又は43〜44のシード配列中に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを含み、アンチセンス鎖は、好ましくは、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド長又はそれより長いヌクレオチド長を有し、アンチセンス鎖は、好ましくは、配列番号53、114、115、又は213に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有し、センス鎖は、好ましくは、配列番号128、189、190、203、又は212に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有し、センス鎖は、好ましくは、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド長又はそれより長いヌクレオチド長を有する。
【0056】
さらに好ましいmiRNA−520fは、miRNA−520f−3p−i3分子又はその模倣体であり、配列番号20のシード配列中に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを含み、より好ましくは、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド長又はそれより長いヌクレオチド長を有する。好ましくは、antagomirでは、配列番号20のシード配列中に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つに対して逆相補的な配列が代わりに含まれる。miRNA−520f−3p−i3の好ましいantagomirは、上記のmiRNA−520f−3p−i3分子又はその模倣体に対して相補的であるか又は逆相補的である。
【0057】
miRNA−520f−3p−i3の好ましい模倣体は、センス鎖及びアンチセンス鎖を有し、アンチセンス鎖は、配列番号20のシード配列中に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを含み、アンチセンス鎖は、好ましくは、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド長又はそれより長いヌクレオチド長を有し、アンチセンス鎖は、好ましくは、配列番号54又は215に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有し、センス鎖は、好ましくは、配列番号129、204、又は214に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有し、センス鎖は、好ましくは、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド長又はそれより長いヌクレオチド長を有する。
【0058】
好ましいmiRNA−3157は、miRNA−3157−5p分子、isomiR、又はその模倣体であり、配列番号21又は45〜48のシード配列中に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを含み、より好ましくは、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド長又はそれより長いヌクレオチド長を有する。好ましくは、antagomirでは、配列番号21又は45〜48のシード配列中に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つに対して逆相補的な配列が代わりに含まれる。miRNA−3157の好ましいantagomirは、上記のmiRNA−3157分子、isomiR、又はその模倣体に対して相補的であるか又は逆相補的である。
【0059】
miRNA−3157の好ましい模倣体は、センス鎖及びアンチセンス鎖を有し、アンチセンス鎖は、配列番号21又は45〜48のシード配列中に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを含み、アンチセンス鎖は、好ましくは、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド長又はそれより長いヌクレオチド長を有し、アンチセンス鎖は、好ましくは、配列番号55、116〜120、又は217に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有し、センス鎖は、好ましくは、配列番号130、191〜195、205、又は216に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有し、センス鎖は、好ましくは、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド長又はそれより長いヌクレオチド長を有する。
【0060】
好ましいmiRNA−193aは、miRNA−193a−3p、より好ましくは、miRNA−193a−3p分子、isomiR、又はその模倣体であり、配列番号22又は49のシード配列中に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを含み、より好ましくは、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド長又はそれより長いヌクレオチド長を有する。好ましくは、antagomirでは、配列番号22又は49のシード配列中に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つに対して逆相補的な配列が代わりに含まれる。miRNA−193aの好ましいantagomirは、上記のmiRNA−193a分子、isomiR、又はその模倣体に対して相補的であるか又は逆相補的である。
【0061】
miRNA−193aの好ましい模倣体は、センス鎖及びアンチセンス鎖を有し、アンチセンス鎖は、配列番号22又は49のシード配列中に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを含み、アンチセンス鎖は、好ましくは、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド長又はそれより長いヌクレオチド長を有し、アンチセンス鎖は、好ましくは、配列番号56、121、122、又は219、好ましくは56又は219、より好ましくは219に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有し、センス鎖は、好ましくは、配列番号131、196、197、206、又は218、より好ましくは218に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有し、センス鎖は、好ましくは、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド長又はそれより長いヌクレオチド長を有する。
【0062】
好ましいmiRNA−7は、miRNA−7−5p分子、isomiR、又はその模倣体であり、配列番号23又は50のシード配列中に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを含み、より好ましくは、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド長又はそれより長いヌクレオチド長を有する。好ましくは、antagomirでは、配列番号23又は50のシード配列中に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つに対して逆相補的な配列が代わりに含まれる。miRNA−7の好ましいantagomirは、上記のmiRNA−7分子、isomiR、又はその模倣体に対して相補的であるか又は逆相補的である。
【0063】
miRNA−7の好ましい模倣体は、センス鎖及びアンチセンス鎖を有し、アンチセンス鎖は、配列番号23又は50のシード配列中に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを含み、アンチセンス鎖は、好ましくは、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド長又はそれより長いヌクレオチド長を有し、アンチセンス鎖は、好ましくは、配列番号57、123〜125、又は221に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有し、センス鎖は、好ましくは、配列番号132、198〜200、207、又は220に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有し、センス鎖は、好ましくは、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド長又はそれより長いヌクレオチド長を有する。
【0064】
好ましくは、miRNA分子、isomiR、又はその模倣体は、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド長又はそれより長いヌクレオチド長を有し、配列番号17〜50のうちのいずれか1つの所与のシード配列中に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを含み、配列番号51〜125のうちのいずれか1つの成熟配列全体に対して少なくとも70%の同一性を有する。好ましくは、同一性は、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%である。
【0065】
或いは、好ましくは、miRNA分子、isomiR、又はその模倣体は、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40ヌクレオチド以下の長さを有し、配列番号17〜50のうちのいずれか1つの所与のシード配列中に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを含み、配列番号51〜125のうちのいずれか1つの成熟配列全体に対して少なくとも70%の同一性を有する。好ましくは、同一性は、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%である。
【0066】
別の好ましい実施形態では、miRNA分子のisomiRは、配列番号58〜125のうちのいずれか1つのisomiR配列全体に対して少なくとも70%の同一性を有する。好ましくは、同一性は、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%又はそれを超える。好ましくは、この実施形態では、miRNA分子のisomiR又はその模倣体は、少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30ヌクレオチド長又はそれより長いヌクレオチド長を有する。
【0067】
したがって、好ましいmiRNA−323分子、isomiR、又はその模倣体は、miRNA−323−5p分子、isomiR、又はその模倣体であり、配列番号17、24〜28として特定されるシード配列中に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを含む及び/又は配列番号51、58〜68に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有する及び/又は少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40ヌクレオチド長若しくはそれより長いヌクレオチド長を有する。
【0068】
したがって、好ましいmiRNA−323分子、isomiR、又はその模倣体は、miRNA−323−5p分子、isomiR、又はその模倣体であり、配列番号17、24〜28として特定されるシード配列中に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを含む及び/又は配列番号51、58〜68に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有する及び/又は少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40ヌクレオチド長若しくはそれより長いヌクレオチド長を有する。
【0069】
したがって、好ましいmiRNA−342分子、isomiR、又はその模倣体は、miRNA−342−5p分子、isomiR、又はその模倣体であり、配列番号18、29〜42として特定されるシード配列中に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを含む及び/又は配列番号52、69〜113に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有する及び/又は少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40ヌクレオチド長若しくはそれより長いヌクレオチド長を有する。
【0070】
したがって、好ましいmiRNA−520f分子、isomiR、又はその模倣体は、miRNA−520f−3p分子、isomiR、又はその模倣体であり、配列番号19、43〜44として特定されるシード配列中に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを含む及び/又は配列番号53、114〜115に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有する及び/又は少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40ヌクレオチド長若しくはそれより長いヌクレオチド長を有する。さらに好ましいmiRNA 520f分子、isomiR、又はその模倣体は、miRNA−520f−3p−i3分子又はその模倣体であり、配列番号20として特定されるシード配列中に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを含む及び/又は配列番号54に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有する及び/又は少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40ヌクレオチド長若しくはそれより長いヌクレオチド長を有する。
【0071】
したがって、好ましいmiRNAー3157分子、isomiR、又はその模倣体は、miRNA−3157−5p分子、isomiR、又はその模倣体であり、配列番号21、45〜48として特定されるシード配列中に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを含む及び/又は配列番号55、116〜120に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有する及び/又は少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40ヌクレオチド長若しくはそれより長いヌクレオチド長を有する。
【0072】
したがって、好ましいmiRNA−193a分子、isomiR、又はその模倣体は、miRNA−193a−3p分子、isomiR、又はその模倣体であり、配列番号22又は49として特定されるシード配列中に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを含む及び/又は配列番号56、121〜122に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有する及び/又は少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40ヌクレオチド長若しくはそれより長いヌクレオチド長を有する。
【0073】
したがって、好ましいmiRNA−7分子、isomiR、又はその模倣体は、miRNA−7−5p分子、isomiR、又はその模倣体であり、配列番号23又は50として特定されるシード配列中に存在する7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを含む及び/又は配列番号57、123〜125に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%若しくは100%の同一性を有する及び/又は少なくとも6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40ヌクレオチド長若しくはそれより長いヌクレオチド長を有する。
【0074】
別の好ましいmiRNA分子、isomiR、又はその模倣体は、配列番号17〜50のうちのいずれか1つのシード配列と、又は配列番号51〜57のいずれか1つの成熟配列と、又は配列番号1〜16のいずれか1つ、好ましくは配列番号1〜8のいずれか1つの前駆体配列と、又は配列番号9〜16のいずれか1つのRNA前駆体をコードするDNAと、又は配列番号58〜125のいずれか1つのisomiR配列と、少なくとも60%の同一性を有する。同一性は、少なくとも65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%又は100%であり得る。同一性は、所与の配列番号で特定されるように、配列番号全体に関して評価されるのが好ましい。しかし、同一性はまた、所与の配列番号の一部に関して評価されてもよい。一部とは、その配列番号の長さの少なくとも50%、少なくとも60%、70%、80%、90%又は100%を意味し得る。
【0075】
前駆体配列は、成熟プロセスに応じて2つ以上のisomiR配列を生じる場合がある−例えば、ある特定の組織において、複数のisomiRが特定されている(配列番号58〜68)miRNA−323(成熟配列の配列番号51)を参照されたい。miRNA分子のisomiRは同じ前駆体に由来し、逆に、前駆体は複数のmiRNA分子をもたらす可能性があり、そのうちの1つはカノニカルなmiRNAと称され(例えば、miRNA−323−5p、配列番号51)、その他はisomiRと称される(例えば、配列番号58〜68によって表されるオリゴヌクレオチド)。カノニカルなmiRNAとそのisomiRの間の差は、それらの蔓延度においてのみ存在すると考えられるが、一般的には、最も蔓延している分子がカノニカルなmiRNAと呼ばれ、一方、その他はisomiRである。種類、環境、生活環における位置、又は細胞の病理学的状態に応じて、個々のisomiR又はmiRNAは異なるレベルで発現される可能性があり;発現は、人種又は性別間でさらに異なる可能性がある(Loherら、Oncotarget(2014年)DOI:10.18632/oncotarget.2405頁)。
【0076】
miRNA分子又は模倣体又はisomiR又はそのソースのantagomirは、核酸、好ましくは、対応するmiRNA分子若しくはisomiR又はその模倣体の一部に対して相補的であるか又は逆相補的であるRNAであってもよい。antagomirは、対応するmiRNA分子若しくはisomiR又はその模倣体の一部とハイブリダイズすることが好ましい。好ましいantagomirは、配列番号51〜125の成熟miRNA又はisomiRの配列の一部に対して相補的であるか又は逆相補的である。一部とは、その配列番号の長さの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は100%を意味する。好ましい実施形態では、antagomir又はその模倣体は、miRNA分子若しくはisomiR又はその模倣体のシード配列又は前記シード配列の一部に対して相補的であるか又は逆相補的である。一部とは、そのシード配列の長さの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は100%を意味する。
【0077】
miRNA分子若しくは模倣体又はそのソースのantagomirの、或いはmiRNAの又はisomiRの模倣体におけるセンス鎖又はアンチセンス鎖のヌクレオチドの化学構造を修飾して、安定性、結合親和性及び/又は特異性を増加させてもよい。前記antagomir又はセンス鎖若しくはアンチセンス鎖は、RNA分子又は好ましくは修飾されたRNA分子を含むか又はそれからなってもよい。好ましい修飾されたRNA分子は、修飾された糖を含んでもよい。このような修飾の1つの例は、ヌクレアーゼ耐性及びRNAに対する結合親和性を改善するための、核酸における2’−O−メチル又は2’−O−メトキシエチル基若しくは2’フルオリド基の導入である。このような修飾の別の例は、立体構造をロックし(ロックド核酸(LNA))、相補的一本鎖RNAへの親和性を改善するための、2’−O原子と核酸の4’−C原子を接続するメチレン架橋の導入である。第3の例は、ヌクレアーゼの攻撃に対する安定性を改善するための、RNA鎖における核酸間のリンカーとしてのホスホロチオエート基の導入である。第4の修飾は、安定性及び細胞内送達を改善するための、コレステロールなどの分子の3’末端における親油性部分のコンジュゲーションである。好ましい実施形態では、miRNA分子のantagomirは、完全にLNA修飾されたホスホロチオエートオリゴヌクレオチドからなる。本明細書において定義されるantagomirは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個又はそれを超える糖修飾を含んでもよい。1つのantagomirに2つ以上の別個の糖修飾を導入することも本発明によって包含される。
【0078】
好ましい実施形態では、模倣体のセンス鎖の最初の2塩基は、修飾糖、好ましくは2’−O−メチル修飾を有する。好ましい実施形態では、模倣体のセンス鎖の最後の4塩基のうちの最初の2塩基は、修飾糖、好ましくは2’−O−メチル修飾を有する。好ましい実施形態では、模倣体のセンス鎖の最初の2塩基と最後の4塩基のうちの最初の2塩基とは、修飾糖、好ましくは2’−O−メチル修飾を有する。好ましい実施形態では、模倣体のセンス鎖の最後の2塩基は、修飾糖、好ましくは2’−O−メチル修飾を有する。好ましい実施形態では、模倣体のセンス鎖の最初の2塩基と最後の2塩基とは、修飾糖、好ましくは2’−O−メチル修飾を有する。好ましい実施形態では、模倣体のセンス鎖の最後の2塩基は、DNA塩基である。好ましい実施形態では、模倣体のセンス鎖の最初の2塩基と最後の4塩基のうちの最初の2塩基は、修飾糖、好ましくは2’−O−メチル修飾を有し、前記センス鎖の最後の2塩基は、DNA塩基である。好ましい実施形態では、模倣体のセンス鎖の最初の2塩基は、修飾糖、好ましくは2’−O−メチル修飾を有し、前記センス鎖の最後の2塩基は、DNA塩基である。好ましい実施形態では、模倣体のセンス鎖の最後の4塩基のうちの最初の2塩基は、修飾糖、好ましくは2’−O−メチル修飾を有し、前記センス鎖の最後の2塩基は、DNA塩基である。
【0079】
好ましい実施形態では、この態様は、本発明による組成物であって、
前記miRNAが、配列番号51〜125、209、211、213、215、217、219、若しくは221のうちのいずれか1つと少なくとも70%の配列同一性を共有する、
及び/又は前記miRNAが、15〜30ヌクレオチド長である、
及び/又はmiRNAの前記ソースが、前記miRNAの前駆体であり、配列番号1〜16のうちのいずれか1つと、好ましくは配列番号1〜8のうちのいずれか1つと少なくとも70%の配列同一性を共有する、組成物を提供する。
【0080】
好ましい実施形態では、この態様は、本発明による組成物であって、前記miRNAが、配列番号51〜125、209、211、213、215、217、219、又は221のうちのいずれか1つと少なくとも70%の配列同一性を共有し、前記miRNAが、15〜30ヌクレオチド長である、組成物を提供する。好ましい実施形態では、この態様は、本発明による組成物であって、前記miRNAが、配列番号51〜125、209、211、213、215、217、219、又は221のうちのいずれか1つと少なくとも70%の配列同一性を共有し、前記miRNAが、15〜30ヌクレオチド長であり、miRNAの前記ソースが、前記miRNAの前駆体であり、配列番号1〜16のうちのいずれか1つと、好ましくは配列番号1〜8のうちのいずれか1つと少なくとも70%の配列同一性を共有する、組成物を提供する。好ましい実施形態では、この態様は、本発明による組成物であって、前記miRNAが、配列番号51〜125、209、211、213、215、217、219、又は221のいずれか1つと少なくとも70%の配列同一性を共有し、miRNAの前記ソースが、前記miRNAの前駆体であり、配列番号1〜16のうちのいずれか1つと、好ましくは配列番号1〜8のうちのいずれか1つと、少なくとも70%の配列同一性を共有する、組成物を提供する。
【0081】
miRNAのソース又は模倣体若しくはisomiRのソースは、本明細書において特定されるmiRNA分子の又は模倣体若しくはisomiRの産生を誘導することができ、好ましくはヘアピン様構造及び/若しくは二本鎖核酸分子を含む任意の分子であってもよい。ヘアピン様構造の存在は、80、100及び120nt又はそれを超えるスライディングウインドウを使用するRNAshapesプログラム(Steffen Pら 2006年)を使用して評価することができる。ヘアピン様構造は、miRNA分子の天然又は内因性ソースに通常存在するが、二本鎖核酸分子は、miRNA分子の又はisomiR若しくはその模倣体の組換え又は合成ソースに通常存在する。
【0082】
miRNA分子のantagomirのソース又はmiRNA分子のantagomirの模倣体のソースは、適当なベクターなどの前記antagomirの産生を誘導することができる任意の分子であってもよい。
【0083】
miRNA分子の又はその模倣体若しくはisomiR若しくはantagomirのソースは、一本鎖、二本鎖RNA又は部分的に二本鎖のRNAであってもよく、又は三本鎖を含んでもよく、その例は、国際公開第2008/10558号に記載されている。本明細書で使用される場合、部分的に二本鎖とは、5’及び/又は3’末端に、一本鎖構造も含む二本鎖構造を指す。miRNA分子の各鎖が同じ長さを有さない場合も生じ得る。一般的に、このような部分的に二本鎖のmiRNA分子は、75%未満の二本鎖構造及び25%を超える一本鎖構造、又は50%未満の二本鎖構造及び50%を超える一本鎖構造、又はより好ましくは、25%、20%若しくは15%未満の二本鎖構造及び75%、80%、85%を超える一本鎖構造を有してもよい。
【0084】
或いは、miRNA分子の又はその模倣体模倣体若しくはisomiRのソースは、miRNA分子又はその模倣体若しくはisomiRの前駆体をコードするDNA分子である。この文脈では、好ましいDNA分子は、配列番号9〜16である。本発明は、前記配列番号9〜16と少なくとも70%の同一性を有するmiRNA分子の前駆体をコードするDNA分子の使用を包含する。好ましくは、同一性は、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%である。好ましくは、この実施形態では、DNA分子は、少なくとも50、55、60、70、75、80、85、90、95、100、130、150、200、250、300、350、400ヌクレオチド長又はそれより長いヌクレオチド長を有し、配列番号9〜16のDNA配列と少なくとも70%の同一性を有する。
【0085】
所与のmiRNA分子の又は模倣体若しくはisomiRの産生の誘導、或いはその所与のantagomirの産生の誘導は、前記ソースが、以下に定義されているように、1つのアッセイを使用して細胞中に導入される場合に得られることが好ましい。本発明に包含される細胞は、後で定義される。
【0086】
miRNA分子の又はその模倣体若しくはisomiRの好ましいソースは、その前駆体、より好ましくは前記miRNA分子又はその模倣体若しくはisomiRをコードする核酸である。好ましい前駆体は、天然に存在する前駆体である。前駆体は、合成又は組換え前駆体であってもよい。合成又は組換え前駆体は、天然に存在する前駆体を発現することができるベクターであってもよい。好ましい実施形態では、この態様は、本発明による組成物であって、miRNAのソースが、miRNAの前駆体であり、少なくとも50ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドである、組成物を提供する。
【0087】
所与のmiRNA分子の好ましい前駆体は、配列番号1〜16のうちのいずれか1つで表される配列を有する。本発明は、前記配列と少なくとも70%の同一性を有する、miRNA分子の又はそのisomiR若しくは模倣体の前駆体の使用を包含する。好ましくは、同一性は、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%である。好ましくは、この実施形態では、DNA分子は、少なくとも50、55、60、70、75、80、85、90、95、100、130、150、200、250、300、350、400ヌクレオチド長又はそれより長いヌクレオチド長を有し、配列番号1〜16のうちのいずれか1つで表される配列と少なくとも70%の同一性を有する。好ましくは、この実施形態では、前駆体は、配列番号17〜50によって表される群から選択されるシード配列と、7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを共有するシード配列を含む。より好ましくは、前駆体は、配列番号17〜50によって表される群から選択されるシード配列を含む。所与のmiRNA分子のより好ましい前駆体は、配列番号1〜8のうちのいずれか1つで表される配列を有する。本発明は、前記配列と少なくとも70%の同一性を有する、miRNA分子の又はそのisomiR若しくは模倣体の前駆体の使用を包含する。好ましくは、同一性は、少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%である。好ましくは、この実施形態では、DNA分子は、少なくとも50、55、60、70、75、80、85、90、95、100、130、150、200、250、300、350、400ヌクレオチド長又はそれより長いヌクレオチド長を有し、配列番号1〜8のうちのいずれか1つで表される配列と少なくとも70%の同一性を有する。好ましくは、この実施形態では、前駆体は、配列番号17〜50によって表される群から選択されるシード配列と、7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを共有するシード配列を含む。より好ましくは、前駆体は、配列番号17〜50によって表される群から選択されるシード配列を含む。
【0088】
したがって、miRNA−323分子の好ましいソースは、配列番号1又は9、好ましくは配列番号1と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有し、少なくとも50、55、60、70、75、80、85、90、95、100、130、150、200、250、300、350、400ヌクレオチド長又はそれより長いヌクレオチド長を任意選択で有し、配列番号17又は24〜28のうちのいずれか1つの7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを共有するシード配列を任意選択で含む。このようなソースは、miRNA−323分子の及びmiRNA−323 isomiRの前駆体である。
【0089】
したがって、miRNA−342分子の好ましいソースは、配列番号2又は10、好ましくは配列番号2と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有し、少なくとも50、55、60、70、75、80、85、90、95、100、130、150、200、250、300、350、400ヌクレオチド長又はそれより長いヌクレオチド長を任意選択で有し、配列番号18又は29〜42のうちのいずれか1つの7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを共有するシード配列を任意選択で含む。このようなソースは、miRNA−342分子の及びmiRNA−342 isomiRの前駆体である。
【0090】
したがって、miRNA−520f分子の好ましいソースは、配列番号3又は11、好ましくは配列番号3と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有し、少なくとも50、55、60、70、75、80、85、90、95、100、130、150、200、250、300、350、400ヌクレオチド長又はそれより長いヌクレオチド長を任意選択で有し、配列番号19、20、43、又は44のうちのいずれか1つの7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを共有するシード配列を任意選択で含む。このようなソースは、miRNA−520f分子の及びmiRNA−520f−3p−i3などのmiRNA−520f isomiRの前駆体である。
【0091】
したがって、miRNA−3157分子の好ましいソースは、配列番号4又は12、好ましくは配列番号4と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有し、少なくとも50、55、60、70、75、80、85、90、95、100、130、150、200、250、300、350、400ヌクレオチド長又はそれより長いヌクレオチド長を任意選択で有し、配列番号21又は45〜48のうちのいずれか1つの7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを共有するシード配列を任意選択で含む。このようなソースは、miRNA−3157分子の及びmiRNA−3157 isomiRの前駆体である。
【0092】
したがって、miRNA−193a分子の好ましいソースは、配列番号5又は13、好ましくは配列番号5と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有し、少なくとも50、55、60、70、75、80、85、90、95、100、130、150、200、250、300、350、400ヌクレオチド長又はそれより長いヌクレオチド長を任意選択で有し、配列番号22又は49のうちのいずれか1つの7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを共有するシード配列を任意選択で含む。このようなソースは、miRNA−193a分子の及びmiRNA−193a isomiRの前駆体である。
【0093】
したがって、miRNA−7分子の好ましいソースは、配列番号6〜8又は14〜16、好ましくは配列番号6〜8と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有し、少なくとも50、55、60、70、75、80、85、90、95、100、130、150、200、250、300、350、400ヌクレオチド長又はそれより長いヌクレオチド長を任意選択で有し、配列番号23又は50のうちのいずれか1つの7ヌクレオチドのうちの少なくとも6つを共有するシード配列を任意選択で含む。このようなソースは、miRNA−7分子の及びmiRNA−7 isomiRの前駆体である。
【0094】
この文脈では、所与の成熟miRNA分子のいくつかの前駆体が同一のmiRNA分子をもたらす場合があることが指摘される。例えば、miRNA−7は、前駆体miRNA−7−1、miRNA−7−2又はmiRNA−7−3(好ましくは、それぞれ、配列番号6、7、又は8として特定される)に由来してもよい。また、この文脈では、所与の成熟miRNA分子のいくつかのisomirが同一のシード配列を有するmiRNA分子をもたらす場合があることが指摘される。例えば、成熟miRNA−323−5p(配列番号51)及び配列番号58又は59を少なくとも有するisomirはすべて、同じシード配列(好ましくは、配列番号17として特定される)を共有する。
【0095】
好ましいソース又は前駆体は、本明細書の他の箇所で定義されている。好ましいソースは、前記miRNAの前記前駆体をコードするか又は前記antagomirをコードする、核酸、すなわち、DNAを含む発現構築物を含むか(include)又は含み(comprise)、より好ましくは、前記発現構築物は、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス及びレトロウイルスに基づいて、遺伝子療法ベクターから選択されるウイルス性遺伝子療法ベクターである。好ましいウイルス遺伝子療法ベクターは、AAV又はレンチウイルスベクターである。他の好ましいベクターは、腫瘍溶解性ウイルスベクターである。このようなベクターについては、本明細書の以下においてさらに記載される。或いは、ソースは、一般的定義に掲げられた部分でさらに定義されているように、合成miRNA分子又は化学的模倣体であってもよい。
【0096】
好ましい実施形態では、この態様は、本発明によるナノ粒子組成物であって、miRNA−193a、miRNA−323、miRNA−342、miRNA−520f、miRNA−520f−i3、miRNA−3157、及びmiRNA−7、又はそのisomiR、又はその模倣体、又はそのantagomirからなる群から選択されるさらなるmiRNA又はantagomirをさらに含む、ナノ粒子組成物を提供する。したがって、好ましい実施形態では、この態様は、
i)miRNA−323、miRNA−342、miRNA−520f、miRNA−520f−i3、miRNA−3157、及びmiRNA−7、若しくはそのisomiR、若しくはその模倣体、若しくはそのantagomirのうちの1つ若しくは複数、又は
ii)miRNA−193a、miRNA−342、miRNA−520f、miRNA−520f−i3、miRNA−3157、及びmiRNA−7、若しくはそのisomiR、若しくはその模倣体、若しくはそのantagomirのうちの1つ若しくは複数、又は
iii)miRNA−193a、miRNA−323、miRNA−520f、miRNA−520f−i3、miRNA−3157、及びmiRNA−7若しくはそのisomiR、若しくはその模倣体、若しくはそのantagomirのうちの1つ若しくは複数、又は
iv)miRNA−193a、miRNA−323、miRNAー342、miRNA−520f−i3、miRNA−3157、及びmiRNA−7、若しくはそのisomiR、若しくはその模倣体、若しくはそのantagomirのうちの1つ若しくは複数、又は
v)miRNA−193a、miRNA−323、miRNAー342、miRNA−520f、miRNA−3157、及びmiRNA−7、若しくはそのisomiR、若しくはその模倣体、若しくはそのantagomirのうちの1つ若しくは複数、又は
vi)miRNA−193a、miRNA−323、miRNAー342、miRNA−520f、miRNA−520f−i3、及びmiRNA−7、若しくはそのisomiR、若しくはその模倣体、若しくはそのantagomirのうちの1つ若しくは複数、又は
vii)miRNA−193a、miRNA−323、miRNAー342、miRNA−520f、miRNA−520f−i3、及びmiRNA−3157、若しくはそのisomiR、若しくはその模倣体、若しくはそのantagomirのうちの1つ若しくは複数、又は
viii)miRNA−193a、miRNA−323、miRNAー342、miRNA−3157、及びmiRNA−7、若しくはそのisomiR、若しくはその模倣体、若しくはそのantagomirのうちの1つ若しくは複数
をさらに含む組成物を提供する。
【0097】
したがって、より好ましい実施形態では、この態様は、
i)miRNA−323、miRNA−342、miRNA−520f、miRNA−520f−i3、miRNA−3157、及びmiRNA−7、若しくはそのisomiR、若しくはその模倣体のうちの1つ若しくは複数、又は
ii)miRNA−193a、miRNA−342、miRNA−520f、miRNA−520f−i3、miRNA−3157、及びmiRNA−7、若しくはそのisomiR、若しくはその模倣体のうちの1つ若しくは複数、又は
iii)miRNA−193a、miRNA−323、miRNA−520f、miRNA−520f−i3、miRNA−3157、及びmiRNA−7若しくはそのisomiR、若しくはその模倣体のうちの1つ若しくは複数、又は
iv)miRNA−193a、miRNA−323、miRNA−342、miRNA−520f−i3、miRNA−3157、及びmiRNA−7、若しくはそのisomiR、若しくはその模倣体のうちの1つ若しくは複数、又は
v)miRNA−193a、miRNA−323、miRNA−342、miRNA−520f、miRNA−3157、及びmiRNA−7、若しくはそのisomiR、若しくはその模倣体のうちの1つ若しくは複数、又は
vi)miRNA−193a、miRNA−323、miRNA−342、miRNA−520f、miRNA−520f−i3、及びmiRNA−7、若しくはそのisomiR、若しくはその模倣体のうちの1つ若しくは複数、又は
vii)miRNA−193a、miRNA−323、miRNA−342、miRNA−520f、miRNA−520f−i3、及びmiRNA−3157、若しくはそのisomiR、若しくはその模倣体のうちの1つ若しくは複数、又は
viii)miRNA−193a、miRNA−323、miRNA−342、miRNA−3157、及びmiRNA−7、若しくはそのisomiR、若しくはその模倣体、若しくはそのantagomirのうちの1つ若しくは複数
をさらに含む組成物を提供する。
【0098】
ナノ粒子組成物
組成物は、溶媒及び/又は賦形剤、好ましくは薬学的に許容される賦形剤をさらに含むことができる。好ましい溶媒は、薬学的に許容される緩衝液、例えば、PBS又はクエン酸緩衝液などの水性溶液である。好ましいクエン酸緩衝液は、好ましくはNaOHを使用して設定された、pH2.5〜3.5、例えば、pH3の50mMのクエン酸塩を含む。好ましいPBSは、pH7〜8、例えば、pH7.4である。PBSは、二価のカチオン、例えば、Ca2+及びMg2+を含まないのが好ましい。別の好ましい薬学的に許容される賦形剤は、エタノールである。最も好ましくは、組成物は、生理的緩衝液、例えば、PBS又はグッドの緩衝液又はHepes緩衝食塩水又はハンクス平衡塩類溶液又はリンガー平衡塩類溶液又はTris緩衝液を含む。好ましい組成物は、医薬組成物である。
【0099】
組成物は、さらなる賦形剤を含んでもよい。これらのさらなる賦形剤は、ナノ粒子中に含まれてもよい。
【0100】
好ましい実施形態では、この態様は、本発明による組成物であって、好ましくはアドステロール、ブラシカステロール、カンペステロール、コレカルシフェロール、コレステンジオン、コレステノール、コレステロール、デルタ−7−スチグマステロール、デルタ−7−アベナステロール、ジヒドロタキステロール、ジメチルコレステロール、エルゴカルシフェロール、エルゴステロール、エルゴステノール、エルゴスタトリエノール、エルゴスタジエノール、エチルコレステノール、フシジン酸、ラノステロール、ノルコレスタジエノール、β−シトステロール、スピナステロール、スチグマスタノール、スチグマステノール、スチグマスタジエノール、スチグマスタジエノン、スチグマステロール、及びスチグマステノン、より好ましくはコレステロールからなる群から選択される、ステロールをさらに含む組成物を提供する。より詳細には、好ましい実施形態では、この態様は、本発明による組成物であって、ナノ粒子が、好ましくは、アドステロール、ブラシカステロール、カンペステロール、コレカルシフェロール、コレステンジオン、コレステノール、コレステロール、デルタ−7−スチグマステロール、デルタ−7−アベナステロール、ジヒドロタキステロール、ジメチルコレステロール、エルゴカルシフェロール、エルゴステロール、エルゴステノール、エルゴスタトリエノール、エルゴスタジエノール、エチルコレステノール、フシジン酸、ラノステロール、ノルコレスタジエノール、β−シトステロール、スピナステロール、スチグマスタノール、スチグマステノール、スチグマスタジエノール、スチグマスタジエノン、スチグマステロール、及びスチグマステノン、より好ましくはコレステロールからなる群から選択される、ステロールをさらに含む、組成物を提供する。
【0101】
好ましくは、このようにさらに含まれるステロールは、いずれの部分にもコンジュゲートされない。コンジュゲートされたステロールはまた、本明細書で後に説明されるように含まれ得る。このように、コンジュゲートされたステロールとコンジュゲートされていないステロールの両方が含まれ得る。別段に明示的に示されていなければ、ステロールへの言及は、コンジュゲートされていないステロールへの言及を意図する。
【0102】
ステロールが組成物中に含まれる場合、ナノ粒子中に含まれることが好ましく、好ましくは、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、又は70モル%のステロールが含まれ;好ましくは、最大80、75、70、65、60、65、50、45、40、35、又は30モル%のステロールが含まれる。上記で説明されたように、このモルパーセンテージは、脂質ナノ粒子を作製する物質に関するに過ぎず、溶媒又はオリゴヌクレオチドなどのカーゴに関するものではない。ステロールが組成物中に含まれる場合、好ましくは5〜70モル%、15〜60モル%、25〜60モル%、35〜60モル%、40〜60モル%、又は45〜55モル%が含まれ;より好ましくは40〜60モル%又は45〜55モル%が含まれ、最も好ましくは45〜55モル%、例えば、48モル%又は54モル%が含まれる。
【0103】
好ましい実施形態では、この態様は、本発明による組成物であって、好ましくはジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)、ジオレイルホスファチジルコリン(DOPC)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DOPE)、卵ホスファチジルコリン(EggPC)、ダイズホスファチジルコリン(SoyPC)、より好ましくはジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)からなる群から選択されるリン脂質をさらに含む、組成物を提供する。より詳細には、好ましい実施形態では、この態様は、本発明による組成物であって、ナノ粒子が、好ましくは、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジラウロイルホスファチジルコリン(DLPC)、ジオレイルホスファチジルコリン(DOPC)、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DOPE)、卵ホスファチジルコリン(EggPC)、ダイズホスファチジルコリン(SoyPC)、より好ましくはジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)からなる群から選択されるリン脂質をさらに含む、組成物を提供する。
【0104】
好ましくは、このようにさらに含まれるリン脂質は、いずれの部分にもコンジュゲートされない。コンジュゲートされたリン脂質はまた、本明細書で後に説明されるように含まれ得る。このように、コンジュゲートされたリン脂質とコンジュゲートされていないリン脂質の両方が含まれ得る。
【0105】
リン脂質が組成物中に含まれる場合、ナノ粒子中に含まれることが好ましく、好ましくは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、又は60モル%のリン脂質が含まれ;好ましくは、最大65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、又は5モル%のリン脂質が含まれる。上記で説明されたように、このモルパーセンテージは、脂質ナノ粒子を作製する物質に関するに過ぎず、溶媒又はオリゴヌクレオチドなどのカーゴに関するものではない。リン脂質が組成物中に含まれる場合、好ましくは0〜40モル%、0〜35モル%、0〜30モル%、5〜30モル%、5〜25モル%、又は5〜20モル%が含まれ;より好ましくは5〜20モル%又は5〜15モル%が含まれ、最も好ましくは5〜15モル%、例えば、10モル%又は11モル%が含まれる。
【0106】
好ましい実施形態では、この態様は、本発明による組成物であって、水溶性ポリマーと親油性アンカーのコンジュゲートをさらに含み、
i)水溶性ポリマーが、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(ヒドロキシエチル−l−アスパラギン)(PHEA)、ポリ−(ヒドロキシエチル−L−グルタミン)(PHEG)、ポリ(グルタミン酸)(PGA)、ポリグリセロール(PG)、ポリ(アクリルアミド)(PAAm)、ポリ(ビニルピロリドン)(PVP)、ポリ(N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)(PHPMA)、及びポリ(2−オキサゾリン)(POx)、例えば、ポリ(2−メチル−2−オキサゾリン)(PMeOx)及びポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)(PEtOx)、又はそのコポリマーからなる群から選択され、
ii)親油性アンカーが、ステロール、脂質、及びビタミンE誘導体からなる群から選択される、組成物を提供する。好ましくは、親油性アンカーは、脂質、より好ましくはジグリセリドである。
【0107】
より詳細には、好ましい実施形態では、この態様は、本発明による組成物であって、ナノ粒子が、上記のように、水溶性ポリマーと親油性アンカーのコンジュゲートをさらに含む、組成物を提供する。水溶性ポリマーは、一般的に、親油性アンカーを介して連結されている、ナノ粒子のコロイド安定性を増大させる。一般的に、親油性アンカーは、脂質二重層又はミセル中に埋め込まれ、よって、水溶性ポリマーをナノ粒子表面に連結させる。このために、このような水溶性ポリマーを使用することは、当技術分野で公知である(Knopら、2010年、doi:10.1002/anie.200902672)。好ましい水溶性ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)である。好ましくは、水溶性ポリマーは、約750Da〜約15000Da、より好ましくは約1000Da〜約6000Da、さらにより好ましくは約1000Da〜約3000Da、最も好ましくは約1500Da〜約3000Daの範囲の、例えば、約2000Daの分子量を有する。したがって、PEG−2000は、上記のように、コンジュゲートにおいて使用するのに好ましい水溶性ポリマーである。水溶性ポリマーは、直鎖状ポリマーであることが好ましく、その2つの末端のうちの1つでコンジュゲートされていることが好ましい。他の末端は、生理的条件で非荷電であること、例えば、ヒドロキシル基又はメチル若しくはエチルエーテルであることが好ましい。好ましくは、コンジュゲートされていない末端は、メチルエーテル又はヒドロキシル基、最も好ましくはメチルエーテルである。
【0108】
水溶性ポリマーがコンジュゲートされる親油性アンカーは、一般的に、水溶性ポリマーとナノ粒子の間の接続を確保するために機能する。ポリマーとアンカーの間のコンジュゲーション方法は重要ではなく、当業者は、任意の好適な化学結合、例えば、エステル結合、アミド結合、エーテル連結、トリアゾール、又は水溶性ポリマーを親油性アンカーにコンジュゲートすることによって得られる任意の他の部分を選択することができる。コハク酸又はグルタル酸などの小さなリンカーの使用も想定される。親油性アンカーは、ステロール、脂質、及びビタミンE誘導体からなる群から選択される。好ましいステロールは上記されている。好ましいビタミンE誘導体は、トコフェロール及びトコトリエノール、例えば、アルファ−トコフェロール、ベータ−トコフェロール、ガンマ−トコフェロール、デルタ−トコフェロール、及び対応するトコトリエノールである。好ましくは、親油性アンカーは、脂質、より好ましくはジグリセリド又はリン脂質である。好ましい脂質の例は上記されており、好ましいジグリセリドの例は、ジステアロイルグリセロール、好ましくは、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロール、ジパルミトイルグリセロール、好ましくは1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロール、ジオレオイルグリセロール、好ましくは1,2−ジオレオイル−sn−グリセロール、及びジアラキドイルグリセロール、好ましくは1,2−ジアラキドイル−sn−グリセロールである。最も好ましいジグリセリドは、ジステアロイルグリセロール、好ましくは1,2−ジステアロイル−sn−グリセロールである。
【0109】
上記のように、コンジュゲートの好適な例は、(1,2−ジステアロイル−sn−グリセロール)−[メトキシ(ポリエチレングリコール−2000)]エーテル、(1,2−ジステアロイル−sn−グリセロール)−[メトキシ(ポリエチレングリコール−1500)]エーテル、(1,2−ジステアロイル−sn−グリセロール)−[メトキシ(ポリエチレングリコール−3000)]エーテル、(1,2−ジステアロイル−sn−グリセロール)−[ヒドロキシ(ポリエチレングリコール−2000)]エーテル、(1,2−ジステアロイル−sn−グリセロール)−[ヒドロキシ(ポリエチレングリコール−1500)]エーテル、(1,2−ジステアロイル−sn−グリセロール)−[ヒドロキシ(ポリエチレングリコール−3000)]エーテル、(1,2−ジステアロイル−sn−グリセリル)−[メトキシ(ポリエチレングリコール−2000)カルボキシレート]、(1,2−ジステアロイル−sn−グリセリル)−[メトキシ(ポリエチレングリコール−1500)カルボキシレート]、(1,2−ジステアロイル−sn−グリセリル)−[メトキシ(ポリエチレングリコール−3000)カルボキシレート]、(1,2−ジステアロイル−sn−グリセリル)−[ヒドロキシ(ポリエチレングリコール−2000)カルボキシレート]、(1,2−ジステアロイル−sn−グリセリル)−[ヒドロキシ(ポリエチレングリコール−1500)カルボキシレート]、(1,2−ジステアロイル−sn−グリセリル)−[ヒドロキシ(ポリエチレングリコール−3000)カルボキシレート]、(1,2−ジステアロイル−sn−グリセリル)−[メトキシ(ポリエチレングリコール−2000)カルバメート]、(1,2−ジステアロイル−sn−グリセリル)−[メトキシ(ポリエチレングリコール−1500)カルバメート]、(1,2−ジステアロイル−sn−グリセリル)−[メトキシ(ポリエチレングリコール−3000)カルバメート、(1,2−ジステアロイル−sn−グリセリル)−[ヒドロキシ(ポリエチレングリコール−2000)カルバメート]、(1,2−ジステアロイル−sn−グリセリル)−[ヒドロキシ(ポリエチレングリコール−1500)カルバメート]、及び(1,2−ジステアロイル−sn−グリセリル)−[ヒドロキシ(ポリエチレングリコール−3000)カルバメート]であり、ステアロイル部分は、他の脂肪酸によって、好ましくは他のC10〜C20脂肪酸によって任意選択で置き換えることができる。上記のように、カルバメート及びエステルでは、親アミン及び親アルコール及び親カルボン酸を入れ替えることもでき、例えば、PEG−アルコールをジグリセリドのカルボン酸類似体と反応させることができる。コンジュゲートの最も好ましい例は、DSG−PEG(CAS番号:308805ー39−2)としても知られている、(1,2−ジステアロイル−sn−グリセロール)−[メトキシ(ポリエチレングリコールー2000)]エーテル、及びそのエステル類似体(1,2−ジステアロイル−sn−グリセリル)−[メトキシ(ポリエチレングリコール−2000)カルボキシレート]、及びそのカルバメート類似体(1,2−ジステアロイル−sn−グリセリル)−[メトキシ(ポリエチレングリコールー2000)カルバメート]又はDSA−PEG、及びそのアミンド類似体としても知られている、1,2−ジステアロイルオキシプロピルアミン3−N−メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000カルバモイルである。
【0110】
上記のようなコンジュゲートが組成物中に含まれる場合、ナノ粒子中に含まれることが好ましく、好ましくは、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、又は5.0モル%のコンジュゲートが含まれ;好ましくは、最大6.5、6.0、5.5、5.0、4.5、4.0、3.5、3.0、2.5、2.0、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、1.0、0.9、0.8、0.7、0.6、又は0.5モル%のコンジュゲートが含まれる。上記で説明されているように、このモルパーセンテージは、脂質ナノ粒子を作製する物質に関するに過ぎず、溶媒又はオリゴヌクレオチドなどのカーゴに関するものではない。コンジュゲートが組成物中に含まれる場合、好ましくは、0〜4モル%、0〜3モル%、0.3〜3モル%、0.5〜3モル%、0.5〜2.5モル%、又は1〜2.5モル%が含まれ、より好ましくは、0.5〜2.5モル%又は0.7〜2.5モル%が含まれ、最も好ましくは、0.8〜2.4モル%、例えば、1モル%又は2モル%が含まれる。
【0111】
好ましいナノ粒子は、ジアミノ脂質及びステロールを含む。さらに好ましいナノ粒子は、ジアミノ脂質及びリン脂質を含む。さらに好ましいナノ粒子は、ジアミノ脂質及び水溶性ポリマーと親油性アンカーのコンジュゲートを含む。好ましいナノ粒子は、ジアミノ脂質及びステロール及びリン脂質を含む。好ましいナノ粒子は、ジアミノ脂質及びステロール及び水溶性ポリマーと親油性アンカーのコンジュゲートを含む。好ましいナノ粒子は、ジアミノ脂質及びリン脂質及び水溶性ポリマーと親油性アンカーのコンジュゲートを含む。最も好ましいナノ粒子は、ジアミノ脂質及びステロール及びリン脂質及び水溶性ポリマーと親油性アンカーのコンジュゲートを含む。
【0112】
好ましい実施形態では、この態様は、本発明による組成物であって、ナノ粒子が:
i)20〜60モル%のジアミノ脂質、及び
ii)0〜40モル%のリン脂質、及び
iii)30〜70モル%のステロール、好ましくはコレステロール、及び
iv)0〜10モル%の、上で定義された水溶性ポリマーと親油性アンカーのコンジュゲート
を含む、組成物を提供する。
【0113】
さらなる好ましい実施形態では、ナノ粒子は、
i)25〜55モル%のジアミノ脂質、及び
ii)1〜30モル%のリン脂質、及び
iii)35〜65モル%のステロール、好ましくはコレステロール、及び
iv)0.1〜4モル%の、水溶性ポリマーと親油性アンカーのコンジュゲート
を含む。
【0114】
さらなる好ましい実施形態では、ナノ粒子は、
i)35〜50モル%のジアミノ脂質、及び
ii)5〜15モル%のリン脂質、及び
iii)40〜60モル%のステロール、好ましくはコレステロール、及び
iv)0.5〜2.5モル%の、水溶性ポリマーと親油性アンカーのコンジュゲート
を含む。
【0115】
さらなる好ましい実施形態では、ナノ粒子は、
i)約38〜42モル%のジアミノ脂質、及び
ii)約8〜12モル%のリン脂質、及び
iii)約46〜50モル%のステロール、好ましくはコレステロール、及び
iv)約1.8〜2.2モル%の、水溶性ポリマーと親油性アンカーのコンジュゲート
を含む。
【0116】
医学的使用
本発明は、これらのナノ粒子、及び組成物由来のmiRNAの医学的使用を提供する。したがって、この態様は、医薬品として使用するための、本発明による組成物の使用を提供する。したがって、この態様は、医薬品として使用するための、組成物由来のmiRNAの使用を提供する。この使用は医薬品の製造における、組成物又はmiRNAの使用であってもよい。好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、好ましくはがんの処置において、医薬品として使用するためのものである。これは、がんを防止する、処置する、回復させる、治癒させる及び/又は遅延させるための医薬品として使用するためのものであってもよく、言い換えれば、抗腫瘍効果を得るためのものであってもよい。このような使用のための組成物は、以降で、本発明による使用のための組成物と称させる。上記の医学的使用では、組成物由来の好ましいmiRNAは、miRNA−193a又はその模倣体若しくはisomiR若しくは前駆体であり、本発明による好ましい組成物は、miRNA−193a又はその模倣体若しくはisomiR若しくは前駆体を含む。
【0117】
この文脈において好ましいがんは、結腸直腸がん、結腸がん、頭頚部がん、神経膠芽腫、脳腫瘍、子宮頸がん、癌腫、造血器腫瘍及びリンパ系腫瘍の腫瘍、肝臓がん、三重陰性乳がんなどの乳がん、前立腺がん、膀胱がん、卵巣がん、肺がん、腎細胞がん、膵臓がん、又は黒色腫であり、より好ましいのは、結腸直腸がん、結腸がん、頭頚部がん、神経膠芽腫、脳腫瘍、子宮頚がん、癌腫、造血器腫瘍及びリンパ系腫瘍の腫瘍、肝臓がん、三重陰性乳がんなどの乳がん、又は黒色腫であり、なおより好ましくは、癌腫、造血器腫瘍及びリンパ系腫瘍の腫瘍、肝臓がん、三重陰性乳がんなどの乳がん、又は黒色腫であり、さらにより好ましくは、肝細胞癌(HCC)などの肝がん、非小細胞肺癌(NSCLC)などの肺がん、白血病又はリンパ腫又は骨髄腫(白血病が好ましい)などの造血器腫瘍及びリンパ系腫瘍の腫瘍、三重陰性乳がん(TNBC)などの乳がん、黒色腫、膵臓がん、結腸がん、腎細胞がん(RCC)、頭頚部がん(HNSCC)などの扁平上皮癌、前立腺がん、及び肝細胞癌(HCC)又は非小細胞肺癌又は扁平上皮癌などの癌腫である。白血病の例は、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性白血病(SLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄異形成症候群、及び急性単球性白血病(AMoL)であり、AMLが好ましい。リンパ腫の例は、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)、B細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫(4つの亜型すべて、すなわち、結節硬化型、混合細胞型、リンパ球豊富型、及びリンパ球減少型)、及び非ホジキンリンパ腫(及びその亜型)である。骨髄腫は、形質細胞性骨髄腫としても知られている、多発性骨髄腫としても知られている。
【0118】
好ましい実施形態では、抗腫瘍活性は、対象の腫瘍細胞において評価される。より好ましくは、前記腫瘍細胞は、HNSCC細胞(頭頚部扁平上皮癌)、すなわち、扁平上皮癌又は唇、内唇、口腔(口)、舌、口腔底、歯肉、硬口蓋、鼻腔(鼻の内部)、副鼻腔、上咽頭、中咽頭、下咽頭及び喉頭(すなわち、声門、声門上及び声門下のがんを含む喉頭がん)を含む咽頭、気管を含む上部気道消化管の粘膜若しくは上皮細胞である。或いは、前記腫瘍細胞は、結腸直腸細胞、結腸細胞、脳細胞、神経膠芽腫細胞、乳房細胞、子宮頚部細胞であってもよい。
【0119】
好ましい実施形態では、がんは、結腸直腸がんである。好ましい実施形態では、がんは、結腸がんである。好ましい実施形態では、がんは、頭頚部がんである。好ましい実施形態では、がんは、神経膠芽腫である。好ましい実施形態では、がんは、脳腫瘍である。好ましい実施形態では、がんは、三重陰性乳がんなどの乳がんである。好ましい実施形態では、がんは、子宮頸がんである。好ましい実施形態では、がんは、癌腫である。好ましい実施形態では、がんは、造血器腫瘍及びリンパ系腫瘍の腫瘍である。好ましい実施形態では、がんは、肝臓がんである。好ましい実施形態では、がんは、前立腺がんである。好ましい実施形態では、がんは、膀胱がんである。好ましい実施形態では、がんは、卵巣がんである。好ましい実施形態では、がんは、肺がんである。好ましい実施形態では、がんは、腎細胞がんである。好ましい実施形態では、がんは、膵臓がんである。好ましい実施形態では、がんは、黒色腫である。
【0120】
別段に指定されていなければ、抗腫瘍効果は、処置前に及び処置された対象において少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月又はそれより長い期間後に、評価又は検出されることが好ましい。抗腫瘍効果は:
増殖の阻害又は腫瘍細胞の増殖の検出可能な低下又は腫瘍細胞若しくはメラニン形成細胞の細胞生存率の低下、並びに/或いは
腫瘍細胞の分化能の増加、並びに/或いは
腫瘍細胞の生存の低下と等しい、腫瘍細胞死の増加、並びに/或いは
転移及び/又は腫瘍細胞の移動の発生の遅延、並びに/或いは
腫瘍重量又は成長の増加の阻害又は防止又は遅延、並びに/又は
少なくとも1カ月、数カ月又はそれより長い期間の患者の生存の延長(処置されていないか若しくは対照で処置されたものと比較して、又は処置の開始時の対象と比較して)、並びに/或いは
腫瘍サイズ又は体積の減少
として対象において特定されるのが好ましい。
【0121】
本発明の文脈では、患者は、生存していてもよく、疾患を有さないとみなされてもよい。或いは、疾患又は状態が、停止又は遅延又は消失していてもよい。腫瘍細胞の増殖の阻害は、少なくとも20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%若しくは75%又はそれより高い割合であってもよい。細胞の増殖は、公知の技法を使用して評価することができる。腫瘍細胞又はメラニン形成細胞の細胞生存率の低下は、少なくとも20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%若しくは75%又はそれより高い割合の低下であってもよい。このような低下は、所与のmiRNA分子、その等価物又はソースによるトランスフェクションの4日後に評価されてもよい。細胞生存率は、MTSアッセイなどの公知の技法によって評価することができる。
【0122】
がんの処置は、腫瘍体積の低減又は腫瘍細胞生存率の低下であり得る。腫瘍体積の低減は、カリパスを使用して評価することができる。腫瘍体積又は細胞生存率又は生存の低下は、少なくとも、少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%若しくは75%、又はそれより高い割合の低下であり得る。腫瘍細胞におけるアポトーシスの誘導又は腫瘍細胞死の誘導は、少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%若しくは75%、又はそれより高い割合であり得る。腫瘍細胞生存率又は生存又は死滅は、当業者に公知の技法を使用して評価することができる。腫瘍細胞生存率及び死滅は、MRI、CT若しくはPETなどの通常の撮像法、及びその派生法、又は生検を使用して評価することができる。腫瘍細胞生存率は、いくつかの時点で、病変の拡大を可視化することによって評価されてもよい。少なくとも一度に観察される病変の10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%若しくは75%、又はそれより高い割合の低下が、腫瘍細胞生存率の低下と考えられることになる。
【0123】
腫瘍細胞の増殖の阻害は、少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%若しくは75%、又はそれより高い割合であり得る。細胞の増殖は、標準的な増殖アッセイのような公知の技法を使用して評価することができる。このような増殖アッセイは、Cell Titer Blue(Promega)などの生体染色を使用してもよい。これには、代謝酵素によって蛍光分子へと変換される基質分子が含まれる。その後、蛍光のレベルが、生きている、代謝的に活性な細胞の数を反映する。或いは、このような増殖アッセイは、有糸分裂指数を決定し得る。有糸分裂指数は、全腫瘍細胞数と比較した、増殖段階にある腫瘍細胞数に基づく。増殖細胞の標識化は、抗体Ki−67及び免疫組織化学染色を使用して実施することができる。腫瘍細胞の増殖の阻害は、有糸分裂指数が少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%又はそれより高い割合で低減する場合に見ることができる(Kearsley J.Hら、1990年、PMID:2372483頁に記載されているように)。
【0124】
転移及び/又は腫瘍細胞の移動の発生の遅延は、少なくとも1週間、1カ月、数カ月、1年又はそれより長い期間の遅延であり得る。転移の存在は、MRI、CT若しくはエコー検査又は循環腫瘍細胞(CTC)の検出を可能とする技法を使用して評価することができる。後者の検査の例は、CellSearch CTC検査(Veridex)、すなわち、末梢血由来のCTCのEpCamに基づく磁気選別である。
【0125】
ある特定の実施形態では、腫瘍重量の阻害若しくは低下又は腫瘍成長の遅延又は腫瘍成長の阻害は、少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%若しくは75%、又はそれより高い割合であり得る。腫瘍重量又は腫瘍成長の体積は、当業者に公知の技法を使用して評価することができる。腫瘍成長の検出又は腫瘍細胞の増殖の検出は、グルコース類似体2−[18F]−フルオロ−2−デオキシ−D−グルコース(FDG−PET)又は[18F]−’3−フルオロ−’3−デオキシ−L−チミジン PETによるポジトロン放出断層撮影によって、グルコース利用の変化を測定することによって、in vivoで評価することができる。ex vivoでの代替法は、Ki67による腫瘍生検の染色であり得る。
【0126】
腫瘍細胞の分化能の増加は、特異的分化マーカーを使用し、処置細胞におけるこのようなマーカーの存在を追跡して評価することができる。好ましいマーカー又はパラメーターは、p16、Trp−1及びPLZF、c−Kit、MITF、チロシナーゼ、及びメラニンである。これは、RT−PCR、ウエスタンブロッティング又は免疫組織化学を使用してなされる。分化能の増加は、特定された技法のいずれかを使用して、処置の少なくとも1週間後の少なくとも検出可能な増加であり得る。好ましくは、増加は、1%、5%、10%、15%、20%、25%、又はそれより高い割合の増加であり、したがって、所与の試料内の分化細胞数が増加することになる。ある特定の実施形態では、腫瘍成長は、少なくとも1週間、1カ月、2カ月又はそれより長い期間遅延され得る。ある特定の実施形態では、転移の発生は、少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月、6カ月又はそれより長い期間遅延される。
【0127】
これらの方法又は医学的使用の例示的な実施形態の実践に対する縮図が実施例に示されている。
【0128】
本発明は、miRNAの細胞内取込みを刺激するためのin vivo、in vitro、又はex vivo方法、細胞を本発明による組成物と接触させるステップを含む方法を提供する。方法は、好ましくは、細胞膜を通過させることによって、本発明のナノ粒子を能動的又は受動的に細胞に侵入させることをさらに包含し得る。方法は、好ましくは、処置において使用するためのmiRNAの有効性を増加させるためのものである。これらの方法又は医学的使用の例示的な実施形態の実践に対する縮図が実施例に示されている。
【0129】
好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、がんの処置において使用するためのものである。したがって、本発明は、本明細書で前記するように、miRNA分子、isomiR、模倣体、又はmiRNA分子の前駆体、isomiR、若しくは模倣体などの、がんの処置のための組成物由来のmiRNAを提供する。
【0130】
好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、化学療法耐性のがん、例えば、ソラフェニブ耐性のがんの処置において使用するためのものである。
【0131】
好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、癌腫の処置において使用するためのものである。より好ましくは、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、化学療法耐性の癌腫、例えば、ソラフェニブ耐性の癌腫の処置において使用するためのものである。
【0132】
好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、肝細胞癌(HCC)の処置において使用するためのものである。より好ましくは、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、受容体チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、VEGF受容体阻害剤、例えば、アキシチニブ、セジラニブ、レンバチニブ、ニンテダニブ、パゾパニブ、レゴラフェニブ、セマクサニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、チボザニブ、トセラニブ、又はバンデタニブ、好ましくはソラフェニブに耐性である肝細胞癌腫(HCC)などの化学療法耐性のHCCの処置において使用するためのものである。
【0133】
好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、非小細胞肺癌(NSCLC)の処置において使用するためのものである。より好ましくは、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、プラチナ系細胞周期非特異的抗腫瘍剤(例えば、カルボプラチン、シスプラチン、ジシクロプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、又はサトラプラチン、好ましくはシスプラチン又はカルボプラチン)に耐性であるか、又はタキサン(例えば、カバジタキセル、ドセタキセル、ラロタキセル、オルタタキセル、パクリタキセル、又はテセタキセル、好ましくはパクリタキセル又はドセタキセル、より好ましくはパクリタキセル)に耐性であるか、又はピリミジン系抗代謝薬(例えば、フルオロウラシル、カペシタビン、ドキシフルリジン、テガフール、カルモフール、フロクスウリジン、シタラビン、ゲムシタビン、アザシチジン、又はデシタビン、好ましくはゲムシタビン)に耐性であるか、又はビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンフルニン、ビンデシン、又はビノレルビン、好ましくはビノレルビン)に耐性であるか、又は葉酸抗代謝薬(アミノプテリン、メトトレキサート、ペメトレキセド、プララトレキサート、又はラルチトレキセド、好ましくはペメトレキセド)に耐性である、NSCLCなどの化学療法耐性NSCLCの処置において使用するためのものである。
【0134】
好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、三重陰性乳がん(TNBC)の処置において使用するためのものである。より好ましくは、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、アントラサイクリン耐性TNBC、例えば、アクラルビシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、アムルビシン、ピラルビシン、バルルビシン、又はゾルビシン、好ましくはドキソルビシンに耐性のTNBCなどの化学療法耐性TNBCの処置において使用するためのものである。
【0135】
好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、黒色腫の処置において使用するためのものであり。より好ましくは、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、非古典的細胞周期非特異的抗腫瘍剤(例えば、プロカルバジン、ダカルバジン、テモゾロミド、アルトレタミン、ミトブロニトール、又はピポブロマン、好ましくはダカルバジン又はテモゾロミド)に耐性であるか、又はタキサン(例えば、カバジタキセル、ドセタキセル、ラロタキセル、オルタタキセル、パクリタキセル、又はテセタキセル、好ましくはパクリタキセル、例えば、アルブミン結合パクリタキセル)に耐性であるか、又はプラチナ系細胞周期非特異的抗腫瘍剤(例えば、カルボプラチン、シスプラチン、ジシクロプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、又はサトラプラチン、好ましくはシスプラチン又はカルボプラチン)に耐性であるか、又はビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンフルニン、ビンデシン、又はビノレルビン、好ましくはビンブラスチン)に耐性である、黒色腫などの化学療法耐性黒色腫の処置において使用するためのものである。
【0136】
好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、膵臓がんの処置において使用するためのものである。より好ましくは、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、タキサン(例えば、カバジタキセル、ドセタキセル、ラロタキセル、オルタタキセル、パクリタキセル、又はテセタキセル、好ましくはパクリタキセル、例えば、アルブミン結合パクリタキセル)に耐性であるか、又はピリミジン系抗代謝薬(例えば、フルオロウラシル、カペシタビン、ドキシフルリジン、テガフール、カルモフール、フロクスウリジン、シタラビン、ゲムシタビン、アザシチジン、又はデシタビン、好ましくはフルオロウラシル又はゲムシタビン)に耐性であるか、又はトポイソメラーゼ阻害剤(例えば、カンプトテシン、コシテカン、ベロテカン、ジマテカン、エキサテカン イリノテカン、ラルトテカン、シラテカン、トポテカン、ルビテカン、好ましくはイリノテカン)に耐性である、膵臓がんなどの化学療法耐性膵臓がんの処置において使用するためのものである。
【0137】
好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、結腸がんの処置において使用するためのものである。より好ましくは、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、ピリミジン系抗代謝薬(例えば、フルオロウラシル、カペシタビン、ドキシフルリジン、テガフール、カルモフール、フロクスウリジン、シタラビン、ゲムシタビン、アザシチジン、又はデシタビン、好ましくはフルオロウラシル又はカペシタビン)に耐性であるか、又はトポイソメラーゼ阻害剤(例えば、カンプトテシン、コシテカン、ベロテカン、ジマテカン、エキサテカン、イリノテカン、ラルトテカン、シラテカン、トポテカン、ルビテカン、好ましくはイリノテカン)に耐性であるか、又はプラチナ系細胞周期非特異的抗腫瘍剤(例えば、カルボプラチン、シスプラチン、ジシクロプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、又はサトラプラチン、好ましくはオキサリプラチン)に耐性であるか、又はトリフルリジン若しくはチピラシル、又はトリフルリジンとチピラシルの組合せに耐性である、結腸がんなどの化学療法耐性結腸がんの処置において使用するためのものである。
【0138】
好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、腎細胞がん(RCC)の処置において使用するためのものである。より好ましくは、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、受容体チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、VEGF受容体阻害剤、例えば、アキシチニブ、セジラニブ、レンバチニブ、ニンテダニブ、パゾパニブ、レゴラフェニブ、セマクサニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、チボザニブ、トセラニブ、又はバンデタニブ、好ましくはスニチニブ、ソラフェニブ、又はパゾパニブ、より好ましくはソラフェニブに耐性であるRCCなどの化学療法耐性RCCの処置において使用するためのものである。
【0139】
好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、頭頚部がん(HNSCC)の処置において使用するためのものである。より好ましくは、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、タキサン(例えば、カバジタキセル、ドセタキセル、ラロタキセル、オルタタキセル、パクリタキセル、又はテセタキセル、好ましくはパクリタキセル又はドセタキセル)に耐性であるか、又はピリジン系抗代謝薬(例えば、フルオロウラシル、カペシタビン、ドキシフルリジン、テガフール、カルモフール、フロクスウリジン、シタラビン、ゲムシタビン、アザシチジン、又はデシタビン、好ましくはフルオロウラシル)に耐性であるか、又は葉酸抗代謝薬(アミノプテリン、メトトレキサート、ペメトレキセド、プララトレキサート、又はラルチトレキセド、好ましくはメトトレキサート)に耐性であるか、又はプラチナ系細胞周期非特異的抗腫瘍剤(例えば、カルボプラチン、シスプラチン、ジシクロプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、又はサトラプラチン、好ましくはシスプラチン)に耐性であるか、又はアントラサイクリン(例えば、アクラルビシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、アムルビシン、ピラルビシン、バルルビシン、又はゾルビシン、好ましくはドキソルビシン)に耐性であるか、又はインターカレート架橋剤(例えば、アクチノマイシン、ブレオマイシン、マイトマイシン、プリカマイシン、好ましくはブレオマイシン又はマイトマイシン)に耐性である、HNSCCなどの化学療法耐性HNSCCの処置において使用するためのものである。
【0140】
好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、前立腺がんの処置において使用するためのものである。より好ましくは、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、タキサン(例えば、カバジタキセル、ドセタキセル、ラロタキセル、オルタタキセル、パクリタキセル、又はテセタキセル、好ましくはドセタキセル)に耐性であるか、又はアントラセンジオン(例えば、ミトキサントロン又はピクサントロン、好ましくはミトキサントロン)に耐性であるか、又はアルキル化抗腫瘍剤(例えば、エストロゲン系アルキル化抗腫瘍剤、例えば、アレストラムスチン、アトリムスチン、シテストロールアセテート(cytestrol acetate)、エストラジオールマスタード、エストラムスチン、エストロムスチン、スチルボスタット(stilbostat);又はフェネストロール、好ましくはエストラムスチン)に耐性である、前立腺がんなどの化学療法耐性前立腺がんの処置において使用するためのものである。
【0141】
好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、造血器腫瘍及びリンパ系腫瘍の腫瘍の処置において使用するためのものである。より好ましくは、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、ボルテゾミブに耐性であるか、若しくはレナリドミドに耐性である骨髄腫など、又はシクロホスファミドに若しくはヒドロキシダウノルビシンなどのアントラサイクリンに若しくはオンコビンに若しくはプレドニゾンに対する耐性など、CHOPに若しくはリツキシマブに耐性であるリンパ腫など、又はビンクリスチン、アントラサイクリン、例えば、ドキソルビシン、L−アスパラギナーゼ、シクロホスファミド、メトトレキサート、6−メルカプトプリン、クロラムブシル、シクロホスファミド、コルチコステロイド、例えば、プレドニゾン若しくはプレドニゾロン、フルダラビン、ペントスタチン、若しくはクラドリビンに耐性である白血病などの、造血器腫瘍及びリンパ系腫瘍の化学療法耐性腫瘍の処置において使用するためのものである。本明細書に記載のソラフェニブ耐性がんなどの化学療法耐性がんの処置は、ソラフェニブ処置などの化学療法が、有効でないこと、又は所期若しくは所望の効果よりも低いことが判明した場合に、セカンドライン処置となり得る。
【0142】
固形腫瘍は、もともと上皮系であることが多い(すなわち、癌腫)。上皮細胞マーカー(例えば、E−カドヘリン)の損失及び間葉細胞マーカー(例えば、N−カドヘリン及びビメンチン)の取得は、前立腺がんを含む患者の腫瘍試料に対して公知である。がん細胞は、このいわゆる上皮間葉転換(EMT)によって脱分化し得る。EMTの間、細胞間の細胞結合が破壊され、それによって、腫瘍細胞に、周囲組織へと又は血管壁を通って移動及び侵入する能力が与えられる。このような表現型の変化は、疾患の伝播において重要な役割を果たし、最終的に疾患の進行をもたらし、これは、患者にとって予後不良を伴うことが多い。
【0143】
E−カドヘリン発現の損失は、EMTの分子ホールマークとみなされる。腫瘍細胞におけるEMTは、細胞の転写再プログラミングから生じる。特に、E−カドヘリン(CDH1)遺伝子プロモーターの転写抑制は、EMT表現型を誘発することが示されている。E−カドヘリンタンパク質は、上皮細胞/組織において細胞間の接触を媒介する最も重要なカドヘリン分子の1つである。CDH1は、転写抑制因子、SNAI1、SNAI2、TCF3、TWIST、ZEB1、ZEB2又はKLF8の、CDH1近位プロモーター領域の3つのいわゆるE−ボックスへの結合によって抑制される。これらの抑制因子のCDH1プロモーターへの結合を阻害することにより、間葉上皮転換(MET)とも呼ばれるEMTが回復し、腫瘍細胞の侵入及び腫瘍進行が阻害される。
【0144】
好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物のためのmiRNAは、EMTに関連する疾患又は状態の処置、防止、遅延、又は軽快において使用するためのものである。本明細書では、miRNAは、好ましくは、miRNA−518b分子、miRNA−520f分子、若しくはmiRNAー524分子;又はそのisomiR若しくは模倣体、又はその前駆体である。EMTに関連する疾患又は状態は、好ましくはがん、より好ましくは膀胱がん又は前立腺がんである。この使用は、間葉上皮転換を誘導することによるのが好ましい。
【0145】
好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物のためのmiRNAは、免疫抑制腫瘍微小環境を下方調節することによる、がんの処置、防止、遅延、又は軽快において使用するためのものである。関連する好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物のためのmiRNAは、腫瘍による宿主免疫の回避を防止又は低減することによる、がんの処置、防止、遅延、又は軽快において使用するためのものである。このような使用は、例えば、アデノシンを産生するためにATPを脱リン酸化するものなどの細胞表面エクトエンザイムの活性を阻害又は低減することによって、アデノシン生成を防止、阻害、又は低減するのに好ましい。このような使用は、NT5E発現を低減する及び/又はENTPD1発現を低減する及び/又はアデノシン生成を阻害するのにより好ましい。より好ましくは、本発明による組成物又は組成物のためのmiRNAは、NT5E発現を低減するためのものであり;ここで、組成物のためのmiRNAは、好ましくは、miRNA−193aである。より好ましくは、本発明によるこの組成物又は組成物に関するこのmiRNAは、ENTPD1発現を低減するためのものである。より好ましくは、本発明によるこの組成物又は組成物に関するこのmiRNAは、アデノシン生成を阻害するためのものである。さらにより好ましい実施形態では、本発明によるこの組成物又は組成物に関するこのmiRNAは、がん細胞の移動を低減するためのものであり、好ましくは、アデノシン誘導性のがん細胞の移動を低減するためのものであり、最も好ましくは、NT5E発現に関連するアデノシン誘導性のがん細胞の移動を低減するためのものである。NT5E又はENTPD1発現の低減は、ルシフェラーゼアッセイによって又はRT−PCRによって、より好ましくは、実施例に記載されているように評価されるのが好ましい。がん細胞の移動の低減は、好ましくは、in vitroトランスウェルアッセイによって、より好ましくは、実施例に記載されているように評価される。
【0146】
好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物のためのmiRNAは、がん細胞における、好ましくは肝臓がん細胞における、肺がん細胞における、膵臓がん細胞における、癌腫細胞における、又は黒色腫細胞における、より好ましくは、肝臓がん細胞における、癌腫細胞における、又は黒色腫細胞における、さらにより好ましくは、肝細胞癌細胞における又は黒色腫細胞における、G2/Mアレストを促進又は増加させることによる、がんの処置、防止、遅延、又は軽快において使用するためのものである。このような使用は、MPP2及び/又はSTMN1などの細胞骨格に関連することによって、細胞分裂及び/又は増殖を調節する因子の発現又は活性を低減するのに好ましい。このような使用は、YWHAZ及び/又はCCNA2などの、サイクリン依存性キナーゼに結合及び/又はそれを封鎖する因子を促進又は増加させるのに好ましい。好ましくは、本発明による組成物又は組成物のためのmiRNAは、MPP2、STMN1、YWHAZ、及びCCNA2のうちの少なくとも1つの発現又は活性を低減することによる、より好ましくは、少なくともYWHAZ又はSTMN1の、さらにより好ましくは、少なくともYWHAZの、最も好ましくは、MPP2、STMN1、YWHAZ、及びCCNA2のそれぞれの発現又は活性を低減することによる、がんの処置、防止、遅延、又は軽快において使用するためのものである。G2/Mアレストの増加は、未処置細胞と比較した場合の増加であることが好ましく、少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50%又はそれより高い割合の増加であることが好ましい。これは、DNA染色と、その後の、DNA含量に基づく核強度を決定するための顕微鏡画像によって評価されるのが好ましい。MPP2、STMN1、YWHAZ、及びCCNA2のうちの少なくとも1つの発現又は活性の低減は、好ましくは、RT−PCRを使用して評価され、より好ましくは、実施例に記載されているように評価される。
【0147】
好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物のためのmiRNAは、がん細胞の移動、がん細胞の付着、若しくはがん細胞の増殖を低下させるか若しくは低減することによる、又はがん細胞のアポトーシスを増加させるか若しくは促進することによる、がんの処置、防止、遅延、又は軽快において使用するためのものである。これらのがん細胞は、好ましくは、肺がん細胞、肝臓がん細胞、乳がん細胞、黒色腫細胞、又は癌腫細胞、より好ましくは肺がん細胞、肝臓がん細胞、乳がん細胞、又は癌腫細胞、さらにより好ましくは肺がん細胞、例えば、A549及びH460、肝臓がん細胞、例えば、Hep3B及びHuh7、乳がん細胞、例えば、BT549、並びに皮膚がん細胞、例えば、A2058である。より好ましい実施形態では、がんの処置、防止、遅延、又は軽快におけるこの使用は、FOXRED2、ERMP1、NT5E、SHMT2、HYOU1、TWISTNB、AP2M1、CLSTN1、TNFRSF21、DAZAP2、C1QBP、STARD7、ATP5SL、DCAF7、DHCR24、DPY19L1、AGPAT1、SLC30A7、AIMP2、UBP1、RUSC1、DCTN5、ATP5F1、CCDC28A、SLC35D2、WSB2、SEC61A1、MPP2、FAM60A、PITPNB、及びPOLE3からなる群から選択される、さらにより好ましくは、NT5E及びTNFRSF21からなる群から選択される、少なくとも1つの遺伝子の発現又は活性を低下させることによるものであり;好ましくは、アポトーシス、細胞の移動、付着、及び増殖に関する上記の使用は、これらの遺伝子の少なくとも1つと関連するアポトーシス、細胞の移動、付着、及び/又は増殖に関する使用である。発現は、好ましくは、RT−PCRによって評価され、より好ましくは、実施例に記載されているように評価される。
【0148】
好ましい実施形態では、本発明によるこの組成物又は組成物のためのmiRNAは、がん細胞のアポトーシスを増加させるか又は促進することによる、好ましくは、KCNMA1、NOTCH2、TNFRSF21、YWHAZ、CADM1、NOTCH1、CRYAA、ETS1、AIMP2、SQSTM1、ZMAT3、TGM2、CECR2、PDE3A、STRADB、NIPA1、MAPK8、TP53INP1、PRNP、PRT1、GCH1、DHCR24、TGFB2、NET1、PHLDA2、及びTPP1からなる群から、より好ましくは、NOTCH2、TNFRSF21、YWHAZ、ETS1、TGFB2、及びMAPK8からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子と関連するアポトーシスを増加させるか又は促進することによる、がんの処置、防止、遅延、又は軽快において使用するためのものである。遺伝子の発現又は活性は、本発明による組成物によって又は組成物のためのmiRNAによって、例えば、miRNA−193aによって、低減されるのが好ましい。
【0149】
好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物のためのmiRNAは、血管新生、好ましくはがん細胞に関連する血管新生を低下させるか又は阻害することによる、より好ましくはCRKL、CTGF、ZMIZ1、TGM2、ELK3、LOX、UBP1、PLAU、CYR61、及びTGFB2、さらにより好ましくはCRKL,TGFB2又はPLAU、最も好ましくはPLAUからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子と関連する血管新生を低下させるか又は阻害することによる、がんの処置、防止、遅延、又は軽快において使用するためのものである。遺伝子の発現又は活性は、本発明による組成物によって又は組成物のためのmiRNAによって、例えば、miRNA−193aによって、低減されるのが好ましい。
【0150】
好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物のためのmiRNAは、がん細胞の小胞体ストレス応答をモジュレートすることによる、より好ましくはERMP1、NCEH1、SEC31A、CLSTN1、FOXRED2、SEPN1、EXTL2、HYOU1、SLC35D1、SULF2、PTPLB、HHAT、ERAP2、FAF2、DPM3、PDZD2、SEC61A1、DHCR24、IDS、MOSPD2、DPM、PRNP、及びAGPAT1からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子と関連する小胞体ストレス応答をモジュレートすることによる、がんの処置、防止、遅延、又は軽快において使用するためのものである。遺伝子の発現又は活性は、本発明による組成物によって又は組成物のためのmiRNAによって、例えば、miRNA−193aによって、低減されるのが好ましい。小胞体ストレス応答のモジュレーションは、好ましくは、小胞体ストレス応答の阻害又は低減である。
【0151】
好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物のためのmiRNAは、がん細胞の走化性を低下させるか又は阻害することによる、より好ましくはCXCL1、RAC2、CXCL5、CYR61、PLAUR、KCNMA1、ABI2、及びHPRT1、最も好ましくはPLAURからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子と関連する走化性を低下させるか又は阻害することによる、がんの処置、防止、遅延、又は軽快において使用するためのものである。遺伝子の発現又は活性は、本発明による組成物によって又は組成物のためのmiRNAによって、例えば、miRNA−193aによって、低減されるのが好ましい。
【0152】
好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物のためのmiRNAは、がん細胞におけるタンパク質輸送を低下させるか又は阻害することによる、より好ましくはSTON2、RAB11FIP5、SRP54、YWHAZ、SYNRG、GCH1、THBS4、SRP54、TOMM20、SEC31A、TPP1、SLC30A7、TGFB2、AKAP12、AP2M1、ITGB3、GNAI3、SORL1、KRAS、SLC15A1、SEC61A1、APPL1、LRP4、PLEKHA8、STRADB、SCAMP4、HFE、CADM1、ZMAT3、ARF3、VAMP8、NUP50、DHCR24、RAB11FIP5、ATP6V1B2、SQSTM1、及びWNK4、さらにより好ましくは,YWHAZ,TGFB2,又はKRAS、最も好ましくはYWHAZからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子と関連するタンパク質輸送を低下させるか又は阻害することによる、がんの処置、防止、遅延、又は軽快において使用するためのものである。遺伝子の発現又は活性は、本発明による組成物によって又は組成物のためのmiRNAによって、例えば、miRNA−193aによって、低減されるのが好ましい。
【0153】
好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物のためのmiRNAは、がん細胞におけるヌクレオシドの代謝を低下させるか又は阻害することによる、より好ましくはNUDT3、NUDT15、NUDT21、DERA、NT5E、GCH1、及びHPRT1、最も好ましくはNT5Eからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子と関連するヌクレオシドの代謝を低下させるか又は阻害することによる、がんの処置、防止、遅延、又は軽快において使用するためのものである。遺伝子の発現又は活性は、本発明による組成物によって又は組成物のためのmiRNAによって、例えば、miRNA−193aによって、低減されるのが好ましい。
【0154】
好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物のためのmiRNAは、がん細胞のグリコシル化を低下させるか又は阻害することによる、より好ましくはSLC35D1、ST3GAL5、SULF2、LAT2、GALNT1、NCEH1、ST3GAL4、CHST14、B3GNT3、DPM3、GALNT13、DHCR24、NUDT15、IDH2、PPTC7、HPRT1、EXTL2、SEC61A1、ERAP2、及びGALNT14からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子と関連するグリコシル化を低下させるか又は阻害することによる、がんの処置、防止、遅延、又は軽快において使用するためのものである。遺伝子の発現又は活性は、本発明による組成物によって又は組成物のためのmiRNAによって、例えば、miRNA−193aによって、低減されるのが好ましい。
【0155】
好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物のためのmiRNAは、発癌を低下させるか又は阻害することによる、より好ましくはCCND1、CBL、CXCL1、CRKL、MAX、KCNMA1、TBL1XR1、GNAI3、YWHAZ、RAC2、ETS1、PTCH1、MAPK8、LAMC2、PIK3R1、CDK6、CBL、APPL1、GNAI3、PDE3A、TGFB2、ABI2、MAX、ITGB3、LOX、CXCL5、ARPC5、PPARGC1A、及びTHBS4からなる群から選択される、さらにより好ましくはCRKL、TGFB2、YWHAZ、ETS1、MAPK8、及びCDK6から、最も好ましくはYWHAZ、ETS1、MAPK8、及びCDK6から選択される少なくとも1つの遺伝子と関連する発癌を低下させるか又は阻害することによる、がんの処置、防止、遅延、又は軽快において使用するためのものである。遺伝子の発現又は活性は、本発明による組成物によって又は組成物のためのmiRNAによって、例えば、miRNA−193aによって、低減されるのが好ましい。
【0156】
好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物のためのmiRNAは、機能障害性創傷治癒を低下させるか又は阻害することによる、より好ましくはNOTCH2、KCNMA1、CXCL1、ITGB3、PLAU、CCND1、ZMIZ1、ELK3、YWHAZ、IL11、PLAUR、LOX、CTGF、及びTGFB2からなる群から選択される、さらにより好ましくはTGFB2、NOTCH2、PLAU、YWHAZ、及びPLAURから、最も好ましくはNOTCH2、PLAU、YWHAZ、及び任意選択でPLAURから選択される、少なくとも1つの遺伝子と関連する機能障害性創傷治癒を低下させるか又は阻害することによる、がんの処置、防止、遅延、軽快において使用するためのものである。遺伝子の発現又は活性は、本発明による組成物によって又は組成物のためのmiRNAによって、例えば、miRNA−193aによって、低減されるのが好ましい。
【0157】
好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物のためのmiRNAは、免疫活性化、好ましくはがんに対する免疫応答と関連する免疫活性化を増加させるか又は促進することによる、より好ましくはNOTCH2、LAT2、CRKL、LRRC8A、YWHAZ、PIK3R1、IRF1、TGFB2、IL11、UNG、CDK6、及びHPRT1からなる群から選択される、さらにより好ましくはCRKL、TGFB2、NOTCH2、YWHAZ、及びCDK6から、最も好ましくはNOTCH2、YWHAZ、及びCDK6から選択される、少なくとも1つの遺伝子と関連する免疫活性化を増加させるか又は促進することによる、がんの処置、防止、遅延、又は軽快において使用するためのものである。遺伝子の発現又は活性は、本発明による組成物によって又は組成物のためのmiRNAによって、例えば、miRNA−193aによって、低減されるのが好ましい。
【0158】
本発明は、本発明による組成物のためのmiRNA又は組成物で、好ましくはmiRNA−193aで又はmiRNA−193aを含む本発明による組成物で処置した対象から得られたT細胞も提供する。このようなT細胞は、本明細書の他の箇所に記載したがんの処置において使用するためのものであり得る。その使用において、T細胞は、本発明による組成物のためのmiRNAで又は組成物で処置した対象から前もって得られることが好ましい。T細胞は、ヒト対象に由来することが好ましい。ワクチンとして、又はがんの再発若しくは転移を防止するのに使用するためのものであることが好ましい。
【0159】
好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物のためのmiRNA、好ましくはmiRNA−193a又はmiRNA−193aを含む本発明による組成物は、CDK6、EIF4B、ETS1、IL17RD、MCL1、MAPK8、NOTCH2、NT5E、PLAU、PLAUR、TNFRSF21、及びYWHAZからなる群から選択される、より好ましくはNOTCH2、NT5E、PLAU、PLAUR、及びYWHAZから選択される、少なくとも1つの遺伝子と関連するがんの処置、防止、遅延、又は軽快において使用するためのものである。
【0160】
好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物のためのmiRNA、好ましくはmiRNA−193a又はmiRNA−193aを含む本発明による組成物は、CDK4、CDK6、CRKL、NT5E、HMGB1、IL17RD、KRAS、KIT、HDAC3、RTK2、TGFB2、TNFRSF21、PLAU、NOTCH1、NOTCH2、及びYAP1からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子と関連するがんの処置、防止、遅延、又は軽快において使用するためのものである。これらの遺伝子は、抗腫瘍免疫における関与が知られている。
【0161】
好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物のためのmiRNA、好ましくはmiRNA−193a又はmiRNA−193aを含む本発明による組成物は、ETS1、YWHAZ、MPP2、PLAU、CDK4、CDK6、EIF4B、RAD51、CCNA2、STMN1、及びDCAF7からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子と関連するがんの処置、防止、遅延、又は軽快において使用するためのものである。これらの遺伝子は、細胞周期の調節に関与する。
【0162】
好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物のためのmiRNA、好ましくはmiRNA−193a又はmiRNA−193aを含む本発明による組成物は、がんの処置、防止、遅延、又は軽快において使用するためのものであり、好ましいがんは、結腸癌などの結腸がん、肺癌などの肺がん、黒色腫、細網肉腫などのリンパ腫、膵腺癌などの膵臓がん、肝細胞癌又は肝細胞腫などの肝臓がん、乳癌などの乳がん、前立腺がん、腎腺癌などの腎臓がん、腺癌又は結腸、肺、肝臓、膵臓、腎臓、若しくは乳癌などの癌腫、及び膵腺癌又は腎腺癌などの腺癌からなる群から選択されるがんである。より好ましいがんは、結腸癌などの結腸がん、肺癌などの肺がん、黒色腫、細網肉腫などのリンパ腫、膵腺癌などの膵臓がん、肝細胞癌などの肝臓がん、乳癌などの乳がん、前立腺がん、腺癌又は結腸、肺、肝臓、膵臓、若しくは乳癌などの癌腫、及び膵腺癌などの腺癌からなる群から選択されるがんである。さらにより好ましいがんは、結腸癌などの結腸がん、肺癌などの肺がん、黒色腫、細網肉腫などのリンパ腫、及び結腸、肺などの癌腫からなる群から選択されるがんである。
【0163】
さらに好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、がんの処置において使用するためのものであり、組成物は、ソラフェニブなどのさらなる化学療法剤と組み合わされる。これは、以降で、本発明による組合せと称される。本発明による組合せは、本発明による使用のための組成物として、上記のように、使用するためのものであることが好ましい。
【0164】
本発明による組合せは、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAを含む、及びがんの処置に好適なキナーゼ阻害剤薬物などの化学療法剤を含む組合せ、例えば、本発明による組成物を含む、及びソラフェニブを含む、又は、例えば、組成物由来のmiRNAを含む及びソラフェニブを含む組合せなどである。
【0165】
好適な化学療法剤は、ソラフェニブなどのキナーゼ阻害剤薬物又はB−raf阻害剤又はMEK阻害剤又はRNR阻害剤又はAURKB阻害剤である。好ましいB−raf阻害剤は、ベムラフェニブ及び/又はダブラフェニブである。好ましくはMEK阻害剤は、トラメチニブ及び/又はセルメチニブである。好ましいRNR阻害剤は、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、clolar クロファラビン及びトリアピンからなる群から選択される。
【0166】
B−raf阻害剤は、BRAF遺伝子の変異形態をコードする、B−rafタンパク質を特異的に阻害する化合物である。BRAF遺伝子のいくつかの変異は、黒色腫を引き起こすことが知られており、B−rafタンパク質の変異形態を阻害する特異的化合物が開発されてきた。B−raf阻害剤は、当技術分野で公知であり、これらに限定されないが、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、トラメチニブ、GDCー0879、PLXー4720、ソラフェニブ、SB590885,PLX4720,XL281及びRAF265を含む。B−raf阻害剤は、例えば、Wong K.K.らに記載されている。1つのB−raf阻害剤は、本発明による組合せにおいて他のB−raf阻害剤と一緒に使用されてもよい。本発明で使用される好ましいB−raf阻害剤は、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ又はベムラフェニブとダブラフェニブの混合物である。ベムラフェニブは、RG7204又はN−(3−{[5−(4−クロロフェニル)−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル]カルボニル}−2,4ージフルオロフェニル)プロパン−1−スルホンアミドとしても知られており、Zelborafとして市販されている。ダブラフェニブは、N−{3−[5−(2−アミノピリミジン−4−イル)−2−(1,1−ジメチルエチル)チアゾール−4−イル]−2−フルオロフェニル−2,6−ジフルオロベンゼンスルホンアミドとしても知られている。
【0167】
MEK阻害剤は、MEKタンパク質を特異的に阻害する化合物である。いくつかのMEK阻害剤は、当技術分野で公知であり、これらに限定されないが、トラメチニブ(GSK1120212)、セルメチニブ(AZD−6244)、XL518、CI−1040、PD035901を含む。トラメチニブは、N−(3−(3−シクロプロピル−5−(2−フルオロ−4−ヨードフェニルアミノ)−6,8−ジメチル−2,4,7−トリオキソ−3,4,6,7−テトラヒドロピリド[4,3−d]ピリミジン−1(2H)−イル)フェニル)アセトアミドとしても公知である。セルメチニブは、6−(4−ブロモ−2−クロロフェニルアミノ)−7−フルオロ−N−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチル−3Hベンゾ[d]イミダゾール−5−カルボキサミドとしても公知である。MEK阻害剤は、例えば、Wong,K.K.(PMID:19149686)に記載されている。1つのMEK阻害剤は、本発明による組合せにおいて、他のMEK阻害剤と一緒に使用されてもよい。いくつかのMEK阻害剤は、いくつかの別個のMEK阻害剤と同義である。本発明において使用される好ましいMEK阻害剤は、トラメチニブ及び/又はセルメチニブである。
【0168】
RNR及び/又はAURKB阻害剤は、RNA及び/又はAURKBタンパク質を特異的に阻害する化合物である。RNRは、リボヌクレオチド還元酵素(RNR)であり、それ自体、リボヌクレオシド二リン酸(NDP)のデオキシリボヌクレオシド二リン酸(dNDP)へのde novo変換を担う唯一の酵素である(Zhouら 2013年)。RNRは、細胞内のdNTP供給の重要な調節因子である。均衡なdNTPプールの維持は、DNA合成及び修復のための基質における不均衡の結果に変異誘発及び細胞死が含まれるため、基礎的な細胞機能である。ヒトRNRは、酵素調節因子に対する触媒部位と2つの結合部位を含有するサブユニット(RRM1)及び触媒に必要な安定したチロシルラジカルを生じる二核鉄補因子(binuclear iron cofactor)を有するbサブユニット(RRM2)から構成される。RNRの阻害剤は、RRM1及び/又はRRM2を阻害し得る。好ましいRNR阻害剤は、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、clolar クロファラビン及びトリアピンからなる群から選択される。
【0169】
AURKB(Aurora Bキナーゼ)は、セントロメアへの紡錘体の付着において機能するタンパク質である。有糸分裂及び減数分裂の間の染色体分離は、キナーゼとホスファターゼによって調節される。Auroraキナーゼは、染色体移動及び分離の間の微小管に関連する。がん細胞では、これらの酵素の過剰発現が、がんのホールマークである異数体細胞を作成する、遺伝情報の不均一な分布をもたらす。
【0170】
化学療法剤は、本明細書で定義される抗がん作用を誘導又は促進することができる薬物である。好ましい化学療法剤は、キナーゼ阻害剤又はRNR阻害剤又はAURKB阻害剤である。このような阻害剤の例は、RNR及び/又はAURKBタンパク質を特異的に阻害する化合物である。RNR及び/又はAURKBタンパク質を阻害する治療用化合物の能力を評価するために、リードアウトとしてRNR(RRM1及び/又はRRM2)又はAURKBタンパク質を用いるウエスタンブロッティングを実施することができる。細胞を6ウェルプレートにプレーティングし、0.01、0.1及び1uMの前記化合物で72時間処置した。処置後、RIPA溶解緩衝液としての溶解緩衝液中に細胞をスクレープする。等量のタンパク質抽出物を10%のSDS PAGEを使用することによって分離し、次いで、ポリフッ化ビニリデンの膜に移した。0.1%のTween 20と5%の無脂肪乳を含有するTris緩衝生理食塩水中で1時間ブロッキングした後、RNR(すなわち、RRM1及び/又はRRM2)及び/又はAURKB一次抗体、続いて、フィルム上での化学蛍光検出のための西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートされた二次抗体で膜をプローブした。チューブリンをローディング対照として使用する。使用される好ましいRRM2抗体は、Santa Cruz(製品番号 sc−10846)に由来し、及び/又は好ましいAURKB抗体は、Cell Signalling(製品番号 3094)に由来する。前記RNR及び/又はAURKB阻害剤の治療能力の評価は、ノーザンブロットを行うことによって又はPCRによってRNAレベルでも評価することができる。
【0171】
本発明による好ましい組合せは:
i)組成物が、好ましくは、miRNA−193a又はその模倣体若しくはisomiR若しくは前駆体を含むか、或いは組成物由来のmiRNAが、miRNA−193a又はその模倣体若しくはisomiR若しくは前駆体である、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNA、並びに
ii)
a.VEGF受容体阻害剤などの受容体チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、アキシチニブ、セジラニブ、レンバチニブ、ニンテダニブ、パゾパニブ、レゴラフェニブ、セマクサニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、チボザニブ、トセラニブ、又はバンデタニブ、好ましくはスンチニブ、ソラフェニブ、又はパゾパニブ、より好ましくはソラフェニブ;
b.プラチナ系細胞周期非特異的抗腫瘍剤、例えば、カルボプラチン、シスプラチン、ジシクロプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、又はサトラプラチン、好ましくはシスプラチン又はカルボプラチン又はオキサリプラチン;
c.タキサン、例えば、カバジタキセル、ドセタキセル、ラロタキセル、オルタタキセル、パクリタキセル、又はテセタキセル、好ましくはパクリタキセル又はドセタキセル、より好ましくはパクリタキセル又はドセタキセル;
d.ピリミジン系抗代謝薬、例えば、フルオロウラシル、カペシタビン、ドキシフルリジン、テガフール、カルモフール、フロクスウリジン、シタラビン、ゲムシタビン、アザシチジン、又はデシタビン、好ましくはフルオロウラシル又はゲムシタビン又はカペシタビン;
e.ビンカアルカロイド、例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンフルニン、ビンデシン、又はビノレルビン、好ましくはビノレルビン又はビンブラスチン;
f.葉酸抗代謝薬、アミノプテリン、メトトレキサート、ペメトレキセド、プララトレキサート、又はラルチトレキセド、好ましくはペメトレキセド又はメトトレキサート;
g.アントラサイクリン、例えば、アクラルビシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、アムルビシン、ピラルビシン、バルルビシン、又はゾルビシン、好ましくはドキソルビシン;
h.非古典的細胞周期非特異的抗腫瘍剤、例えば、プロカルバジン、ダカルバジン、テモゾロミド、アルトレタミン、ミトブロニトール、又はピポブロマン、好ましくはダカルバジン又はテモゾロミド;
i.タキサン、例えば、カバジタキセル、ドセタキセル、ラロタキセル、オルタタキセル、パクリタキセル、又はテセタキセル、好ましくはパクリタキセル、例えば、アルブミン結合パクリタキセル;
j.トポイソメラーゼ阻害剤、例えば、カンプトテシン、コシテカン、ベロテカン、ジマテカン、エキサテカン、イリノテカン、ラルトテカン、シラテカン、トポテカン、ルビテカン、好ましくはイリノテカン;
k.トリフルリジン又はチピラシル、又はトリフルリジンとチピラシルの組合せ;
l.インターカレート架橋剤、例えば、アクチノマイシン、ブレオマイシ、マイトマイシン、プリカマイシン、好ましくはブレオマイシン又はマイトマイシン;
m.アントラセンジオン、例えば、ミトキサントロン又はピクサントロン、好ましくはミトキサントロン;及び
n.アルキル化抗腫瘍剤、例えば、エストロゲン系アルキル化抗腫瘍剤、例えば、アレストラムスチン、アトリムスチン、シテストロールアセテート、エストラジオールマスタード、エストラムスチン、エストロムスチン、スチルボスタット;又はフェネストロール、好ましくはエストラムスチン
からなる群から選択される、少なくとも1つの化学療法剤
を含む。
【0172】
好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、がんの処置において使用するためのものであり、組成物は、がん細胞への免疫応答を増加させる。これは、免疫応答が存在しない場合に、免疫応答が開始することを意味し得る。
【0173】
免疫応答を増加させるためにより好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、サイトカイン、例えば、IL−2を活性化する免疫系の生成を増加させるためのものである。好ましくは、サイトカイン産生は、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%若しくは75%、又はそれより高い割合で増加され、好ましくは、FACSによって、より好ましくは、実施例で実証されるように検出されるのが好ましい。実施例で実証されるように、サイトカインを活性化する免疫系を、処置の1週間後に、三重陰性乳がん(TNBC)に関する4T1マウスモデルで増加させる。サイトカインの増加により、がんの免疫抑制の上昇が導かれ、そうでなければ免疫抑制に感受性ではないがんの免疫抑制又は部分的免疫抑制がもたらされ得る。好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、T細胞の機能を増大させる、例えば、IFNγ及びIL−2の産生を増加させるためのものである。
【0174】
免疫応答を増加させるためのより好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、調節性T細胞集団を減少させるためのものである。調節性T細胞(Treg)は、免疫抑制調節性T細胞であり、Tregを減少させることは、がんに対する免疫応答を増加させる。好ましくは、Tregは、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%若しくは75%、又はそれより高い割合で減少する。Tregの減少は、FOXP3又はLAG3の決定によって、例えば、実施例に記載されているように決定することができる。この効果は、上記のように、サイトカイン産生の増加と並行することが好ましい。
【0175】
実施例で実証されているように、CD8+エフェクターT細胞の動員は、処置の2週間後に、三重陰性乳がん(TNBC)に関する4T1マウスモデルで増加し、T細胞の機能が誘導される一方、Treg集団は減少する。したがって、免疫応答を増加させるための好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、T細胞の出現頻度を増加させるためのものである。好ましくは、このような増加は、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%若しくは75%、又はそれより高い割合である。このような増加は、CD8を測定することによって、例えば、実施例で実施されるように決定することができる。免疫応答を増加させるための好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、T細胞の機能を誘導させるため、好ましくは、IFNγ産生を誘導することによってT細胞の機能を誘導するためのものである。最も好ましくは、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、T細胞の出現頻度を増加させ、好ましくは同時に調節性T細胞集団を減少させながら、同時にT細胞の機能を誘導するためのものである。Tregが減少し、CD8+エフェクターT細胞が増加した腫瘍は、「ホット」腫瘍と称され、免疫抑制された微小環境を有さない腫瘍である。逆に、免疫抑制された微小環境における腫瘍は、「コールド」腫瘍と称される。
【0176】
さらに、本発明による組成物は、ENTPD1(CD39)又はTIM−3などの免疫抑制標的遺伝子の発現を低減することができる。このような低減は、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%若しくは75%、又はそれより高い割合であることが好ましい。TIM−3又はENTPD1発現は、qPCRによって、例えば、実施例で実証されているように、決定することができる。ENTPD1は、トリホスホ及びジホスホヌクレオシドのγ−及びβーホスフェート残基のモノホスホヌクレオシド誘導体への加水分解を触媒するエクトヌクレオチダーゼである。これは、多量のアデノシンの生成によって免疫抑制の役割を有する。ENTPD1発現の低減は、腫瘍細胞への免疫応答を増加させる。TIM−3は、A型肝炎ウイルス細胞受容体2(HAVCR2)としても知られており、免疫抑制マーカーとして作用する阻害性受容体である、免疫チェックポイントである。TIM−3は、活性化CD8+T細胞上で主に発現され、マクロファージの活性化を抑制する。TIM−3発現の低減は、腫瘍細胞への免疫応答を増加させる。好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、ENTPD1の若しくはTIM−3の発現を低減するためのものであるか又はENTPD1及びTIM−3の発現を低減するためのものである。
【0177】
免疫系に関する本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAのプラスの効果は、それが、腫瘍細胞及びがん細胞に関するため、新たな腫瘍の成長を防止するか、転移を防止するか、又は例えば、手術によって、サイズで除去された腫瘍の成長を低減するのに好適である、本発明をもたらす。例えば、実施例4.4で実証されているように、本発明による組成物による処置によって、手術によって切除された腫瘍の再成長が低減され、このような腫瘍の転移が低減され、罹患した対象の生存が増加する。転移が由来する腫瘍は、原発腫瘍と称される。さらに、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAで処置された特定の腫瘍型を有する対象は、既に処置されたのと同じ型の新たな腫瘍細胞を再度負荷した場合に、腫瘍取込みの制限を示す。腫瘍取込みの制限後に、腫瘍は完全に退縮する。異なる腫瘍型を負荷した場合、腫瘍を完全に取り込むが、次に、完全に退縮もする。
【0178】
したがって、好ましい実施形態では、本発明による組成物及び組成物由来のmiRNAは、がん又は転移性がんを防止する、低減する、又は遅延させるための医薬品として使用するためのものである。この文脈では、好ましいがんは、乳がん、癌腫、及び肝臓がん、より好ましくは乳がん及び肝臓がんである。
【0179】
したがって、好ましい実施形態では、本発明による組成物及び組成物由来のmiRNAは、がんワクチンとして使用するためのものであり、好ましくは、がんの防止又は処置のためのがんワクチンとして使用するためのものである。このようなワクチンは、好ましくは、原発腫瘍の再成長又は再発を防止又は低減するためのものである。好ましくは、再成長は、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%若しくは75%、又はそれより高い割合で低減される。別の使用では、このようなワクチンは、好ましくは、転移性がんを低減又は処置するためのものである。好ましくは、転移性がんは、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%若しくは75%、又はそれより高い割合で低減され、或いはがん細胞の運動能は、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%若しくは75%、又はそれより高い割合で低減される。この文脈では、好ましいがんは、乳がん、癌腫、及び肝臓がん、より好ましくは乳がん及び肝臓がんである。
【0180】
したがって、好ましい実施形態では、本発明による組成物及び組成物由来のmiRNAは、医薬として使用するためのものであり。医薬は、転移性がんの防止、低減、又は処置のためのものであり、好ましくは、原発腫瘍は、手術によって切除されているか又は退縮しており、より好ましくは、原発腫瘍は、手術によって切除されている。好ましくは、転移性がんは、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%若しくは75%、又はそれより高い割合で低減される。この文脈では、好ましいがんは、乳がん、癌腫、及び肝臓がん、より好ましくは乳がん及び肝臓がんである。
【0181】
したがって、好ましい実施形態では、本発明による組成物及び組成物由来のmiRNAは、医薬として使用するためのものであり、医薬は、手術による切除後に、がんの再成長又は再発の防止、低減、又は処置のためのものである。好ましくは、再成長又は再発は、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%若しくは75%、又はそれより高い割合で低減される。この文脈では、好ましいがんは、乳がん、癌腫、及び肝臓がん、より好ましくは乳がん及び肝臓がんである。
【0182】
したがって、好ましい実施形態では、本発明による組成物及び組成物由来のmiRNAは、医薬として使用するためのものであり、医薬は、前記がんが退縮したか又は処置に成功した後の、がんの再成長又は再発の防止、低減、又は処置のためのものである。好ましくは、再成長又は再発は、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%若しくは75%、又はそれより高い割合で低減される。この文脈では、好ましいがんは、乳がん、癌腫、及び肝臓がん、より好ましくは乳がん及び肝臓がんである。
【0183】
好ましい実施形態では、本発明による組成物及び組成物由来のmiRNAは、腫瘍細胞の増殖を阻害するためのものである。実施例で実証されているように、本発明による組成物は、K−RAS及びMCL1の発現を低減し、腫瘍細胞の増殖の低減をもたらすことができる。KRAS、K−ras、Ki−rasとしても知られているK−RASは、当技術分野で公知の癌原遺伝子である。MCL1は、誘導性骨髄性白血病細胞分化タンパク質Mcl−1としても公知である。これは、アポトーシスを阻害することによって、がん細胞の生存を促進し得る。K−RASとMCL1は両方とも、がん細胞の増殖を促進する。好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、K−RASの若しくはMCL1の発現を低減するためのものであるか又はK−RAS及びMCL1の発現を低減するためのものである。好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、K−RAS及びMCL1及びENTPD1及びTIM−3の発現を低減するためのものである。
【0184】
増殖の阻害は、アポトーシスの誘導によることが好ましい。実施例で実証されているように、本発明による組成物は、カスパーゼの活性化及びPARP切断によるPARPの不活性化によって、がん細胞のアポトーシスを誘導する。好ましいカスパーゼの活性化は、カスパーゼ3/7の活性化である。PARPは、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼとしても公知であり、プログラム細胞死に関与するタンパク質のファミリーを指す。これは、カスパーゼ3によって及びカスパーゼ7によって、in vivoで切断され、アポトーシスを誘発する。PARPの切断は、ブロッティング技法によって決定することができ、カスパーゼの活性化は、ブロッティングによりPARPの切断を決定することによって、又はqPCRによって、例えば、実施例で実証されているように、アッセイすることができる。好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、がん細胞においてアポトーシスを誘導するためのものである。好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、カスパーゼ3及びカスパーゼ7を活性化するためのものである。好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、PARPを不活性化するためのものである。好ましくは、PARPは、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%若しくは75%、又はそれより高い割合で不活性化される。PARPの不活性化は、実施例で実証されているように、ブロッティング技法によってモニタリングし、未切断酵素のより小さい断片を検出することができる。好ましくは、カスパーゼの活性は、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%若しくは75%、又はそれより高い割合で増加する。
【0185】
さらなる好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、K−RAS、MCL1、ENTPD1、TIM−3、c−Kit、CyclinD1、及びCD73からなる群から選択される遺伝子のうちの少なくとも1つの発現を低減するためのものである。c−Kitは、チロシン−タンパク質キナーゼキット又はCD117としても知られている癌原遺伝子であり、受容体チロシンキナーゼタンパク質をコードする。サイクリンD1の過剰発現は、早期のがん発症及び腫瘍進行と相関する。CD73は、5’−ヌクレオチダーゼ(5’−NT)として、及びエクト−5’−ヌクレオチダーゼとしても公知である。CD73によってコードされる酵素は、エクト−5−プライム−ヌクレオチダーゼ(5−プライム−リボヌクレオチドホスホヒドロラーゼ;EC 3.1.3.5)であり、中性pHで、プリン5−プライムモノヌクレオチドのヌクレオシドへの変換を触媒し、好ましい基質はAMPである。このような遺伝子の発現は、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%若しくは75%、又はそれより高い割合で低減されるのが好ましく、例えば、実施例で実証されているようなqPCR技法によって決定することができる。
【0186】
好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、アデノシンA2A受容体経路を調節するためのものである。ADORA2Aとしても知られているアデノシンA2A受容体は、免疫細胞を抑制することができるアデノシン受容体である。上記のように、CD73の及び/又はENTPD1の発現を低減する際の、本発明による組成物の活性は、A2A受容体経路を妨害し、免疫抑制を低減する。これは、免疫監視を回避する腫瘍細胞の能力が低減されるため、抗腫瘍効果をもたらす。好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、免疫監視に対する腫瘍細胞の感受性を増加させるためのものである。このような増加は、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%若しくは75%、又はそれより高い割合の腫瘍体積の低減をもたらすのが好ましい。より好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、CD8+エフェクターT細胞の動員を増加させながら、好ましくは、LAG3の若しくはFoxP3の、又は両方の発現を低減することなどによって、Tregを減少させながら、免疫監視に対する腫瘍細胞の感受性を増加させるためのものである。免疫監視に対して増加した感受性は、腫瘍体積の低減をもたらすことが好ましい。
【0187】
本発明による組成物及び組成物由来のmiRNAは、腫瘍細胞における細胞周期アレストを促進する。好ましい実施形態では、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、がんの処置において使用するためのものであり、その使用は、細胞周期アレストを誘導するためのものである。細胞周期アレストのプロファイルは、例えば、核の画像化又はフローサイトメトリーのいずれかを実施することによって、好ましくは、実施例で実証されているように、測定することができる。この文脈では、細胞周期アレストは、好ましくは、G2/M又はSubG1細胞周期アレストのプロファイルの誘導である。好ましくは、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、55%、60%、65%、70%若しくは75%、又はそれより高い割合の腫瘍細胞が、細胞周期アレストを受ける。好ましくは、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAが、黒色腫、肝臓がん、癌腫、肺がん、又は膵臓がんを処置するためのものである場合、本発明による組成物又は組成物由来のmiRNAは、細胞周期アレストのプロファイルを増加させるためのものである。
【0188】
一般的定義
この文書及びその特許請求の範囲では、動詞「含むこと(to comprise)」及びその活用形は、その語の後に続く項目が含まれることを意味するために非限定的意味で使用されるが、具体的に述べられていない項目を除外するものではない。さらに、不定冠詞「a」又は「an」による要素への言及は、文脈が要素のうちの1つ及び1つだけが存在することを明確に要求していなければ、要素の2つ以上が存在する可能性を除外するものではない。よって、不定冠詞「a」又は「an」は、通常、「少なくとも1つ」を意味する。
【0189】
「約(about)」又は「およそ(approximately)」という語は、数値と共に使用される場合(例えば、約10)、好ましくは、その値が、その値の1%多いか又は少ない所与の値であってもよいことを意味する。分子の部分又は下位構造が同一であると言われる場合、同位体の天然存在度分布は説明されない。同一の性質は、描かれるであろう構造式を指す。
【0190】
本明細書で使用される場合、モル%は、モル分率(mole fraction)又はモル分率(molar fraction)又はモルパーセント又は物質量分率としても公知である、モルパーセンテージを指す。これは、混合物中の全成分の総量で除した、成分のモル量を指し、モルでも表される。
【0191】
構造式又は化学名が、キラル中心を有すると当業者によって理解されるが、キラリティーが未だ示されていない場合、各キラル中心に対して、ラセミ混合物、純粋なR鏡像異性体、及び純粋なS鏡像異性体の3つすべてに対して個別に言及がなされる。
【0192】
物質のパラメーターが、本発明の文脈で議論される場合はいつでも、別段に特定されていなければ、パラメーターは、生理学的条件下で、決定、測定、又は顕在化されることが想定される。生理学的条件は当業者に公知であり、水性溶媒系、気圧、6〜8の間のpH値、室温から約37℃までの範囲の温度(約20℃〜約40℃)、及び緩衝塩又は他の構成成分の好適な濃度を含む。電荷は平衡と関連することが多いことが理解される。電荷を運ぶか又は有すると考えられる部分は、このような電荷を有さないか又は運ばないよりも高い頻度で、このような電荷を有するか又は運ぶ状態で見られる部分である。それ自体、荷電される本開示で示されている原子は、特定の条件下で荷電されていない場合があり、天然の部分は、当業者に理解されるように、特定の条件下で荷電され得る。
【0193】
本発明の文脈では、評価されるパラメーターの低下又は増加は、そのパラメーターに対応する値の少なくとも5%の変化を意味する。より好ましくは、値の低下又は増加は、少なくとも10%、さらにより好ましくは少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも90%、又は100%の変化を意味する。この後者の場合には、パラメーターと関連する検出可能な値がもはや存在しない場合であり得る。
【0194】
この文書において記載されているように、医薬としての物質の使用は、医薬の製造における前記物質の使用として解釈することもできる。同様に、物質が処置のために又は医薬として使用される際は常に、その物質は、処置のための医薬の製造のためにも使用することができる。使用のための製品は、処置方法において使用するのに好適である。
【0195】
本発明は、いくつかの例示的な実施形態に関して上記されている。いくつかの部品又は要素の修飾及び代替的実施が可能であり、添付の特許請求の範囲に定義されているように、保護の範囲内に含まれる。文献及び特許文書についての引用はすべて、参照により本明細書に組み込まれる。
【0196】
本明細書で言及される一般的定義及び一般的技術
マイクロRNA分子(「miRNA」)は、17ヌクレオチド長から最大25ヌクレオチド長であることが報告されているが、一般的には、21〜22ヌクレオチド長である。したがって、17、18、19、20、21、22、23、24、25の任意の長さが本発明に包含される。miRNAはそれぞれ、より長い前駆体RNA分子(「前駆体miRNA」)からプロセシングされる。前駆体miRNAは、非タンパク質コード遺伝子から転写される。前駆体は、少なくとも50、70、75、80、85、100、150、200ヌクレオチド長又はそれより長いヌクレオチド長を有し得る。前駆体miRNAは、動物においてDicer及びDroshaと呼ばれる酵素によって切断される、ステム−ループ−又はフォールド−バック様構造の形成を可能にする2つの相補的な領域を有する。Dicer及びDroshaは、リボヌクレアーゼIII様ヌクレアーゼである。プロセシングされたmiRNAは、典型的には、ステムの一部である。
【0197】
プロセシングされたmiRNA(「成熟miRNA」とも称される)は、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)という複合体として知られている大きな複合体の一部となり、特定の標的遺伝子を(下方)調節する。動物のmiRNAの例には、mRNA標的と完全に又は不完全に塩基対合し、それぞれ、mRNA分解又は翻訳の阻害をもたらすものを含む(Olsenら、1999年、Seggersonら、2002年)。SiRNA分子もDicerによってプロセシングされるが、長い、二本鎖RNA分子からはプロセシングされない。SiRNAは、動物細胞で天然には見られないが、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)中のこのような細胞では機能し、mRNA標的の配列特異的切断を指示することができる(Denliら 2003年)。
【0198】
SIROCCOは、真核生物の複雑さのオーガナイザー及びコーディネーターとしてのサイレンシングRNAを調査するEUコンソーシアムである(例えば、ウェブサイトcordis.europa.eu/pub/lifescihealth/docs/sirocco.pdf及びwww.sirocco−project.euを参照されたい)。コンソーシアムとして、SIROCCOは、miRNA配列情報のデータベースを維持している。SIROCCOデータベースに列挙される各miRNAエントリーは、観察され、検証された前記miRNAの発現に基づく。
【0199】
内因性miRNA分子の研究は、米国特許出願第60/575,743号に記載されている。miRNAは、miRNAにハイブリダイズするmRNAの翻訳を調節するタンパク質複合体が、成熟した、一本鎖RNAに結合する場合に、miRNAは、細胞において明らかに活性である。内因的に発現したmiRNAと同じように細胞に影響を及ぼす外因性RNA分子を導入することは、内因性の成熟miRNAと同じ配列の一本鎖RNA分子が、翻訳の制御を容易にするタンパク質複合体によって取り込まれることを必要とする。種々のRNA分子の設計が評価されている。miRNA経路によって所望の一本鎖miRNAの取込みを最大化する3つの一般的な設計が特定されている。3つの設計のうちの少なくとも1つを有するmiRNA配列を有するRNA分子は、合成miRNAと称される場合がある。
【0200】
本発明のmiRNA分子は、内因性miRNAの遺伝子サイレンシング活性を置き換えるか又は補うことができる。このような分子の例、このような分子及びこのような分子を含む組成物の好ましい特徴及び修飾について、国際公開第2009/091982号に記載されている。
【0201】
本発明のmiRNA分子又はそのisomiR若しくは模倣体若しくはソースは、一部の実施形態では、2つのRNA分子を含み、1つのRNAは、天然に存在する、成熟miRNAと同一である。成熟miRNAと同一であるRNA分子は、活性鎖又はアンチセンス鎖と称される。第2のRNA分子は、相補鎖又はセンス鎖と称され、活性鎖に少なくとも部分的に相補的である。活性鎖と相補鎖はハイブリダイズされ、二本鎖RNAを生じ、これは、細胞内のmiRNA活性化の直前に、タンパク質複合体が結合する天然に存在するmiRNA前駆体に類似する。前記miRNAの活性を最大化することは、翻訳のレベルで遺伝子発現を調節するmiRNAタンパク質複合体によって、活性鎖の取込みを最大化し、相補鎖の取込みを最小化することを必要とする。最適なmiRNA活性をもたらす分子設計は、相補鎖の修飾を含む。2つの設計は、相補鎖の化学的修飾を組み込んでいる。第1の修飾は、5’末端にホスフェート又はヒドロキシル以外の基を有する相補的RNAを生じることを含む。5’修飾の存在は、相補鎖の取込みを明らかに排除し、次に、miRNAタンパク質複合体による活性鎖の取込みを支持する。5’修飾は、NH2、NHCOCH3、ビオチン、その他を含む種々の分子のいずれかであり得る。miRNA経路による相補鎖の取込みを有意に低減する第2の化学的修飾戦略は、相補鎖の最初の2〜6ヌクレオチドに糖修飾を有するヌクレオチドを組み込むことである。第2の設計戦略と一致する糖修飾を、miRNA活性をさらに促進する第1の設計戦略と一致する5’末端修飾と結びつけることができることに留意すべきである。第3のmiRNA設計は、活性鎖に相補的ではない相補鎖の3’末端にヌクレオチドを組み込むことを含む。得られた活性且つ相補的RNAのハイブリッドは、活性鎖の3’末端で非常に安定であるが、活性鎖の5’末端では比較的不安定である。siRNAに関する研究によって、5’ハイブリッドの安定性が、RNA干渉をサポートするタンパク質複合体によるRNA取込みの重要な指標であり、少なくとも細胞内のmiRNA経路に関連することが示される。本発明者らは、相補的RNA鎖におけるミスマッチの賢明な使用によって、前記miRNAの活性が有意に促進されることが見出された。
【0202】
核酸
本発明は、培養細胞に又は対象へとmiRNAを導入することができるmiRNAのソース又は前駆体とも呼ばれる核酸分子に関する。核酸は、化学的合成によって優先的に生成されるが、精製した酵素によって細胞内又はin vitroで生成される場合もある。これらは、粗製であっても又は精製されていてもよい。用語「miRNA」は、別段に示されていなければ、その前駆体から切断された後の、プロセシングされたmiRNAを指す。miRNAの名称は、省略される場合が多く、接頭辞なしで称され、文脈に応じてそのまま理解される。別段に示されていなければ、本出願において言及されるmiRNAは、mir−X又はlet−X(式中、Xは、数値及び/又は文字である)として特定されるヒト配列である。
【0203】
miRNAは、ゲノム配列又は非コード遺伝子に由来することが理解される。この点で、用語「遺伝子」は、所与のmiRNAに関する前駆体miRNAをコードするゲノム配列を指すために、簡便化のために使用される。しかし、本発明の実施形態は、プロモーター又は他の調節配列などのその発現に関与するmiRNAのゲノム配列に関与する場合がある。
【0204】
用語「組換え」が使用されてもよく、これは、一般的に、in vitroで操作されたか、又は分子の複製産物又は発現産物である、このような分子を指す。
【0205】
用語「核酸」は当技術分野で周知である。「核酸」は、本明細書で使用される場合、一般的に、DNA、RNAの分子(1又は複数の鎖)又は核酸塩基を含む、その誘導体若しくは類似体を指す。核酸塩基は、例えば、DNA(例えば、アデニン「A」、グアニン「G」、チミン「T」又はシトシン「C」)又はRNA(例えば、A、G、ウラシル「U」又はC)で見られる、天然に存在するプリン又はピリミジン塩基を含む。用語「核酸」は、それぞれ、用語「核酸」の次類として、用語「オリゴヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」を包含する。
【0206】
用語「miRNA」は、一般的に、一本鎖分子を指すが、特定の実施形態では、本発明において実施される分子は、同じ一本鎖分子の別の領域に対して又は別の核酸に対して、部分的に(鎖長全体にわたり、10〜50%の相補性)、実質的に(鎖長全体にわたり50%を超えるが100%未満の相補性)又は完全に相補的である領域又は追加の鎖も包含することになる。よって、核酸は、1つ若しくは複数の相補鎖若しくは自己相補鎖(複数可)を含む分子又は分子を含む特定の配列の「相補体(複数可)」を包含してもよい。例えば、前駆体miRNAは、最大100%の相補性である、自己相補性領域を有してもよい。
【0207】
本明細書で使用される場合、「ハイブリダイゼーション」、「ハイブリダイズする」又は「ハイブリダイズすることが可能な」は、サザンブロッティング手順などの当業者に公知の技法を使用して、二本鎖若しくは三本鎖分子又は部分的に二本鎖若しくは三本鎖の性質を有する分子を形成することを意味すると理解される。用語「アニーリングする」は、本明細書で使用される場合、「ハイブリダイズする」と同義である。用語「ハイブリダイゼーション」、「ハイブリダイズする」又は「ハイブリダイズすることが可能な」は、以下に定義されるように、「低い」、「中程度の」又は「高い」ハイブリダイゼーション条件を意味し得る。
【0208】
低い、中程度、高いストリンジェンシー条件は、42℃で、5×SSPE、0.3%のSDS、200pg/mlの剪断して変性させたサケの精子のDNA、及び、それぞれ、低い、中程度、高いストリンジェンシーに対して25%、35%又は50%のホルムアミド中でのプレハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションを意味する。次に、ハイブリダイゼーション反応物を、それぞれ、2×SSC、0.2%のSDS及び低い、中程度、高いストリンジェンシーに対して55℃、65℃、又は75℃のいずれかを使用して、30分間、3回洗浄する。
【0209】
本発明の核酸又はその誘導体は、一部の実施形態では、配列番号51〜125に記載のいずれかのmiRNAのmiRNA配列を含むことになる。配列番号51〜125に由来する本発明の核酸配列は、配列番号51〜125由来の5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23ド(又はその中から導き出せる任意の範囲)の連続ヌクレオチを有するか、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23ド(又はその中から導き出せる任意の範囲)の連続ヌクレオチドを有するか、又は最大5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23ド(又はその中から導き出せる任意の範囲)の連続ヌクレオチドを有する場合がある。他の実施形態では、核酸は、配列番号51〜125のmiRNA配列と、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100%同一であるか、少なくとも80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100%同一であるか、又は最大80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100%同一である。
【0210】
核酸塩基
本明細書で使用される場合、「核酸塩基」は、複素環塩基、例えば、少なくとも1つの天然に存在する核酸(すなわち、DNA及びRNA)に見られる天然に存在する核酸塩基(すなわち、A、T、G、C又はU)、並びにこのような核酸塩基の天然に存在するか又は天然に存在しない誘導体(複数可)及び類似体などを指す。核酸塩基は、一般的に、天然に存在する核酸塩基の対合(例えば、AとT、GとC、及びAとUの間の水素結合)の代わりとなり得る方法で、少なくとも1つの天然に存在する核酸塩基と1つ又は複数の水素結合(「アニーリングする」又は「ハイブリダイズする」)を形成することができる。
【0211】
「プリン」及び/又は「ピリミジン」核酸塩基(複数可)は、天然に存在するプリン及び/又はピリミジン核酸塩基並びにこれらに限定されないが、アルキル、カルボキシアルキル、アミノ、ヒドロキシル、ハロゲン(すなわち、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨード)、チオール又はアルキルチオール部分のうちの1つ又は複数で置換されたプリン又はピリミジンを含む、その誘導体(複数可)及び類似体(複数可)も包含する。好ましくは、アルキル(例えば、アルキル、カルボキシアルキルなど)部分は、約1、約2、約3、約4、約5から約6個の炭素原子を含む。プリン又はピリミジンの他の非限定的な例としては、デアザプリン、2,6−ジアミノプリン、5−フルオロウラシル、キサンチン、ヒポキサンチン、8−ブロモグアニン、8−クロログアニン、ブロモチミン、8−アミノグアニン、8−ヒドロキシグアニン、8−メチルグアニン、8−チオグアニン、アザグアニン、2−アミノプリン、5−エチルシトシン、5−メチルシトシン、5−ブロモウラシル、5−エチルウラシル、5−ヨードウラシル、5−クロロウラシル、5−プロピルウラシル、チオウラシル、2−メチルアデニン、メチルチオアデニン、N,N−ジメチルアデニン、アザアデニン、8−ブロモアデニン、8−ヒドロキシアデニン、6−ヒドロキシアミノプリン、6−チオプリン、4−(6−アミノヘキシル/シトシン)などが挙げられる。他の例は当業者に周知である。
【0212】
核酸塩基は、本明細書に記載されているか、又は当業者に公知の任意の化学的又は天然合成法を使用して、ヌクレオシド又はヌクレオチド中に含まれ得る。このような核酸塩基は、標識されてもよく、又は標識されて核酸塩基を含有する分子の一部であってもよい。
【0213】
ヌクレオシド
本明細書で使用される場合、「ヌクレオシド」は、核酸塩基のリンカー部分に共有結合によって結合された核酸塩基を含む個々の化学的単位を指す。「核酸塩基のリンカー部分」の非制限的な例は、これらに限定されないが、デオキシリボース、リボース、アラビノース、又は5−炭素糖の誘導体若しくは類似体を含む、5−炭素原子を含む糖(すなわち、「5−炭素糖」)である。5−炭素糖の誘導体又は類似体の非制限的な例としては、2’−フルオロ−2’−デオキシリボース又は炭素が糖環中の酸素原子と置換された炭素環糖が挙げられる。
【0214】
核酸塩基のリンカー部分に対する核酸塩基の様々なタイプの共有結合による結合は、当技術分野で公知である。非制限的な例として、プリン(すなわち、A又はG)又は7−デアザプリン核酸塩基を含むヌクレオシドは、典型的には、プリン又は7−デアザプリンの9位を5−炭素糖の1’位に共有結合により結合している。別の非制限的な例では、ピリミジン核酸塩基(すなわちC、T、又はU)を含むヌクレオシドは、典型的には、ピリミジンの1位を5−炭素糖の1’位に共有結合により結合している(Kornberg及びBaker、1992年)。
【0215】
ヌクレオチド
本明細書で使用される場合、「ヌクレオチド」は、「骨格部分」をさらに含むヌクレオシドを意味する。骨格部分は一般的に、ヌクレオチドを、ヌクレオチドを含む別の分子に、又は別のヌクレオチドに、共有結合により結合させて、核酸を形成する。天然に存在するヌクレオチド中の「骨格部分」は典型的には、5−炭素糖に共有結合により結合されるリン部分を含む。骨格部分の結合は、典型的には、5−炭素糖の3’−位又は5’−位のいずれかにおいて生じる。しかし、他のタイプの結合は、特に、ヌクレオチドが天然に存在する5−炭素糖又はリン部分の誘導体又は類似体を含む場合には、当技術分野で公知である。
【0216】
核酸類似体
核酸は、核酸塩基の誘導体又は類似体、天然に存在する核酸中に存在し得る核酸塩基のリンカー部分及び/又は骨格部分を含むか、又はこれらから完全に構成されてもよい。核酸類似体を有するRNAも、本発明の方法に従って標識され得る。本明細書で使用される場合、「誘導体」は、天然に存在する分子の化学的に修飾されたか又は改変された形態を指し、一方、用語「模倣体」又は「類似体」は、天然に存在する分子又は部分に構造的に似ている場合もあれば似ていない場合もあるが、類似の機能を有する分子を指す。本明細書で使用される場合、「部分(moiety)」は、一般的に、より大きな化学的構造又は分子構造の、より小さな化学的成分又は分子的成分を指す。核酸塩基、ヌクレオシド及びヌクレオチドの類似体又は誘導体は、当技術分野で周知であり、文献に記載されている(例えば、Scheit、1980年を参照されたい)。
【0217】
ヌクレオシド、ヌクレオチド又は5−炭素糖及び/若しくは骨格部分の誘導体若しくは類似体を含む核酸の追加の非制限的な例は、以下に記載する例を含む:dsDNAとの3重らせんを形成する及び/又はdsDNAの発現を妨げるプリン誘導体を含むオリゴヌクレオチドについて記載している、米国特許第5,681,947号;特に、蛍光核酸プローブとして使用される、DNA又はRNA中に見られるヌクレオシドの蛍光類似体を組み込んだ核酸について記載している、米国特許第5,652,099号及び同第5,763,167号;高いヌクレアーゼ安定性を有するピリミジン環上の置換を有するオリゴヌクレオチド類似体について記載している、米国特許第5,614,617号;核酸の検出に使用される修飾された5−炭素糖(すなわち、修飾型T−デオキシフラノシル部分)を有するオリゴヌクレオチド類似体について記載している、米国特許第5,670,663号、同第5,872,232号及び同第5,859,221号;ハイブリダイゼーションアッセイに使用することができる、4’位で水素以外の置換基と置換された少なくとも1つの5−炭素糖部分を含むオリゴヌクレオチドについて記載している、米国特許第5,446,137号;3’−5’のヌクレオチド間連結を有するデオキシリボヌクレオチドと、2’−5’のヌクレオチド間連結を有するリボヌクレオチドの両方を有するオリゴヌクレオチドについて記載している、米国特許第5,886,165号;核酸のヌクレアーゼ耐性を高めるために、ヌクレオチド間連結の3’−位の酸素が炭素と置き換えられている、修飾されたヌクレオチド間結合について記載している、米国特許第5,714,606号;ヌクレアーゼ耐性を高める1つ又は複数の5’メチレンホスホネートヌクレオチド間連結を含有するオリゴヌクレオチドについて記載している、米国特許第5,672,697号;高いヌクレアーゼ安定性と、薬物又は検出部分を輸送する能力とを提供するための、薬物又は標識を含むことができる置換基部分の、オリゴヌクレオチドの2’炭素への連結について記載している、米国特許第5,466,786号及び第5,792,847号;細胞内取込み、ヌクレアーゼに対する耐性、及び標的RNAに対するハイブリダイゼーションを高めるために、隣接する5−炭素糖部分の4’位及び3’位を結合させる、2’又は3’炭素骨格の連結を有するオリゴヌクレオチド類似体について記載している、米国特許第5,223,618号;核酸ハイブリダイゼーション用プローブとして有用な少なくとも1つのスルファメート又はスルファミドのヌクレオチド間結合を含むオリゴヌクレオチドについて記載している米国特許第5,470,967号;ヌクレアーゼ耐性、細胞内取込み及びRNA発現の調節の改善のために使用されるホスホジエステル骨格部分を置き換える、3個又は4個の原子リンカー部分を有するオリゴヌクレオチドについて記載している、米国特許第5,378,825号、第5,777,092号、第5,623,070号、第5,610,289号及び第5,602,240号;膜透過性及び安定性を高めるためにオリゴヌクレオチドの2’−O位に結合された疎水性担体剤について記載している、米国特許第5,858,988号;DNA又はRNAに対する高いハイブリダイゼーション;ヌクレアーゼに対する高い安定性を有する、5’端においてアントラキノンにコンジュゲートされたオリゴヌクレオチドについて記載している、米国特許第5,214,136号;DNAが、ヌクレアーゼ耐性、結合親和性、及びRNase Hを活性化する能力を高めるための2’−デオキシ−エリスロ−ペントフラノシルヌクレオチドを含む、PNA−DNA−PNAのキメラについて記載している、米国特許第5,700,922号;並びにリボース部分が、2’酸素及び4’炭素に接続している余分な架橋で修飾されている、修飾されたRNAヌクレオチドについて記載している、国際公開第WO98/39352号、同第WO99/14226号、同第WO2003/95467号及び同第WO2007/085485号。ロックドリボースは、結合親和性と特異性を有意に増加させる;国際公開第2008/147824号は、UNA(アンロックド核酸)と称される修飾されたRNAヌクレオチドについて記載している。UNAは、C2’原子とC3’原子の間の結合が切断されたRNAの非環式類似体であり、相補鎖への結合親和性を低下させる。UNAは、RNaseのH認識とRNA切断に対応し、siRNA媒介性遺伝子サイレンシングを改善する;国際公開第WO2008/036127号は、非荷電のサブユニット間連結とカチオン性サブユニット間連結の両方を含有するモルホリノ核酸類似体について記載している;国際公開第2007/069092号及び欧州特許第EP2075342号は、カチオン部分としてスペルミン誘導体(Z単位)をオリゴヌクレオチドにコンジュゲートさせることを含有するZip Nucleic Acids(ZNA)について記載している;米国特許第5,708,154号は、DNA−RNAハイブリッドを形成するためにDNAに連結したRNAについて記載している;米国特許第5,728,525号は、ユニバーサル蛍光標識を有するヌクレオシド類似体の標識化について記載している。
【0218】
ヌクレオシド類似体及び核酸類似体に関する追加の教示は、末端標識されているヌクレオシド類似体について記載している、米国特許第5,728,525号;米国特許第5,637,683号、同第6,251,666号(L−ヌクレオチド置換基)、及び同第5,480,980号(7−デアザ−2’−デオキシグアノシンヌクレオチド及びその核酸類似体)。他の類似体の使用は、本発明の文脈において使用するために具体的に企図される。分子全体にわたって又は選択されたヌクレオチドにおいての両方で、このような類似体は、本発明の合成核酸分子において使用されてもよい。これらには、以下に限定されないが、
1)リボース修飾(2’F、2’ NH2、2’N3,4’チオ、又は2’O−CH3など)及び
2)ホスフェート修飾(ホスホロチオエート、メチルホスホネート、及びホスホロボレートに見られるものなど)
が含まれる。
【0219】
このような類似体は、リボヌクレアーゼによって切断されるそれらの能力を低減又は排除することによって、RNAに安定性を付与するために作成されている。これらのヌクレオチド類似体がRNA中に存在する場合、これらは、動物のRNAの安定性に大いにプラスの効果を有し得る。ヌクレオチド類似体の使用は単独で又は本発明の任意の核酸に関する合成miRNAの設計修飾のいずれかと併せて使用することができることが具体的に企図される。
【0220】
修飾されたヌクレオチド
本発明のmiRNAは、それらの活性を高めるよう修飾されたヌクレオチドの使用を企図する。このようなヌクレオチドは、RNAの5’又は3’末端に存在するもの及び分子内に存在するものを含む。前記miRNAの相補鎖で使用される修飾されたヌクレオチドは、RNAの5’OH若しくはホスフェートをブロックするか又はmiRNAの活性鎖の取込みを促進する内部糖修飾を導入するかのいずれかである。miRNAに関する修飾は、ハイブリダイゼーションを促進する及び細胞内で分子を安定化する内部糖修飾並びに細胞内で核酸をさらに安定化する末端修飾を含む。さらに企図されるのは、合成miRNAを含有する細胞を特定するために、顕微鏡又は他の方法で検出することができる修飾である。
【0221】
核酸の調製
核酸は、例えば、化学合成、酵素的産生又は生物学的産生など、当業者に公知の任意の技法によって作製することができる。
【0222】
miRNAの設計
miRNAは、典型的には、2つの鎖、すなわち、研究される成熟miRNAと配列が同一である活性鎖と活性鎖に少なくとも部分的に相補的である相補鎖を含む。活性鎖は、生物学的に関連する分子であり、mRNAの分解又は翻訳の制御のいずれかによって翻訳をモジュレートする細胞内の複合体によって優先的に取り込まれるべきである。活性鎖の優先的取込みは、2つの重大な結果を有する:(1)前記miRNAの観察される活性が劇的に増加し、(2)意図しない効果が取込みによって誘導され、相補鎖の活性化が本質的に排除される。本発明によれば、いくつかのmiRNAの設計を使用して、活性鎖の優先的取込みを確保することができる。
【0223】
5’ブロッキング剤
相補鎖の5’末端のホスフェート又はヒドロキシル以外の安定な部分を導入することにより、miRNA経路におけるその活性が損なわれる。このことによって、miRNAの活性鎖のみが、細胞において翻訳を調節するために使用されることが確実となる。5’修飾としては、これらに限定されないが、NH2、ビオチン、アミン基、低級アルキルアミン基、アセチル基、2’O−Me、DMTO、フルオレセイン、チオール、若しくはアクリジン又はこのタイプの官能性を有する任意の他の基が挙げられる。
【0224】
他のセンス鎖修飾。2’−O Me、2’−デオキシ、T−デオキシ−2’−フルオロ、2’−O−メチル、2’−O−メトキシエチル(2’−0−MOE)、2’−O−アミノプロピル(2’−0−AP)、2’−O−ジメチルアミノエチル(2’−0−DMAOE)、2’−O−ジメチルアミノプロピル(2’−0−DMAP)、2’−O− ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’−0−DMAEOE)、又は2’−O−N−メチルアセトアミド(2’−0−NMA)、NH2、ビオチン、アミン基、低級アルキルアミン基、アセチル基、DMTO、フルオレセイン、チオール、若しくはアクリジン又はmiRNAの相補鎖においてこのタイプの官能性を有する任意の他の基のようなヌクレオチド修飾の導入によって、相補鎖の活性が排除され、miRNAの活性鎖の取込みが促進され得る。
【0225】
センス鎖の塩基ミスマッチ。siRNAに関するように(Schwarz 2003年)、miRNAの活性鎖の5’及び3’末端の相対的安定性によって、miRNA経路による活性鎖の取込み及び活性化が明らかに決定される。合成miRNAの相補鎖の3’末端の塩基ミスマッチの戦略的配置による、miRNAの活性鎖の5’末端の脱安定化が、活性鎖の活性を促進し、相補鎖の活性を本質的に排除する。
【0226】
宿主細胞及び標的細胞
miRNA又はそのソースが導入されるか又はmiRNAの存在が評価される細胞は、任意の生物に由来するか又は含有されていてもよい。好ましくは、細胞は、脊椎動物の細胞である。より好ましくは、細胞は、哺乳動物の細胞である。さらにより好ましくは、細胞は、ヒトの細胞である。
【0227】
哺乳動物の細胞は、生殖系列又は体細胞、全能性又は多能性、分裂中又は非分裂中、上皮、不死化又は形質転換などに由来してもよい。細胞は、幹細胞などの未分化細胞であってもよく、又は器官若しくは組織の細胞由来のものなどの分化細胞であってもよい。或いは、細胞は、上皮又は内皮細胞、間質細胞、脳、乳房、子宮頚部、結腸、消化管、心臓、腎臓、大腸、肝臓、肺、卵巣、膵臓、心臓、前立腺、膀胱、小腸、胃、精巣又は子宮として識別されてもよい。
【0228】
本明細書で使用される場合、用語「細胞」、「細胞株」、及び「細胞培養物」は、互換的に使用され得る。これらの用語はすべて、細胞分裂によって形成されるあらゆるすべての次の世代である、それらの子孫も含む。すべての子孫は、計画的又は偶然の変異によって同一ではない場合があることを理解されたい。宿主細胞は、「トランスフェクトされる」又は「形質転換される」場合があり、これは、外因性核酸が宿主細胞中に移入されるか又は導入されるプロセスを指す。形質転換細胞は、主要な対象細胞とその子孫を含む。本明細書で使用される場合、用語「操作された」及び「組換え」細胞又は宿主細胞は、外因性核酸配列、例えば、小さな干渉RNA又はレポーター遺伝子をコードする鋳型構築物などが導入される細胞を指すことが意図される。したがって、組換え細胞は、組換えにより導入された核酸を含有しない天然に存在する細胞と区別される。
【0229】
組織は、形質転換されるか又は核酸送達組成物及び/又は追加の薬剤と接触させる宿主細胞又は細胞を含んでもよい。組織は、生物に由来する部分であるか又は生物から分離されていてもよい。ある特定の実施形態では、組織及びその構成細胞は、これらに限定されないが、脳、小脳(cerbellum)、脊髄、上腕神経、肋間神経、筋皮神経(musculocultaneous nerve)、肋下神経、腰神経叢、仙骨神経叢、大腿神経、陰部神経(pudental nerve)、坐骨神経、大腿神経の筋枝、伏在神経(saphnous nerve)、脛骨神経、橈骨神経、正中神経、腸骨下腹神経(iliophypogastric nerve)、陰部大腿神経、閉鎖神経、尺骨神経、総腓骨神経、深腓骨神経(deep pernneal nerve)、浅腓骨神経、神経節、視神経、神経細胞、幹細胞を含んでもよい。
【0230】
ある特定の実施形態では、宿主細胞又は組織は、少なくとも1つの生物に含まれてもよい。ある特定の実施形態では、生物は、哺乳動物、ヒト、霊長類又はマウスであってもよい。当業者は、上記宿主細胞のすべてをインキュベートしてそれらを維持する条件及びそれらを分裂させて子孫を形成する条件をさらに理解するであろう。
【0231】
送達方法
RNA分子は、ベクターに含まれる核酸分子によってコードされていてもよい。用語「ベクター」は、複製され得る細胞に導入するために核酸配列を挿入することができるキャリア核酸分子を指すために使用される。核酸配列は、「外因性」であってもよく、これは、核酸配列が、ベクターが導入される細胞に対して外来であること、又は配列が、その配列が通常見られない宿主細胞の核酸内の位置ではなく、細胞内の配列に対して相同であることを意味する。ベクターは、プラスミド、コスミド、ウイルス(バクテリオファージ、動物ウイルス、レンチウイルス、及び植物ウイルス)、及び人工染色体(例えば、YAC)を含む。当業者は、共に参照により本明細書に組み込まれる、Sambrookら、1989年及びAusubelら、1996年に記載されている、標準的な組換え技法によってベクターを構築するために十分に用意するであろう。修飾されたゲロニンなどの修飾されたポリペプチドをコードすることに加えて、ベクターは、タグ又は標的分子などの非修飾ポリペプチド配列をコードしてもよい。標的分子は、所望の核酸を、対象の身体内の特定の器官、組織、細胞、又は他の位置に方向付ける分子である。
【0232】
用語「発現ベクター」は、転写されることが可能な遺伝子産物の少なくとも一部をコードする核酸配列を含有するベクターを指す。発現ベクターは、種々の「制御配列」を含有することができ、これは、特定の宿主生物の作動可能に連結したコード配列の転写及び可能であれば翻訳に必要な核酸配列を指す。転写及び翻訳を支配する制御配列に加えて、ベクター及び発現ベクターは、他の機能も果たし、記載されている核酸配列を含有してもよい。このようなベクターは、本発明による脂質ナノ粒子に封入されていてもよい。
【0233】
ナノ粒子の機能付与
種々の化合物をナノ粒子の周辺に付着させ、細胞膜を通るそれらの輸送を促進してきた。HIV TAT、HSV VP22、Drosphila antennapedia、及び他のタンパク質に見られる短いシグナルペプチドは、膜を通る生体分子の急速な移入を可能にすることが見出されている(Schwarze 2000年によって精査された)。これらのシグナルペプチドは、タンパク質形質導入ドメイン(PTD)と称され、オリゴヌクレオチドに結合して、それらの培養細胞への送達を促進している(Eguchi A、Dowdy SF、Trends Pharmacol Sci.、2009年 7:341〜5頁)。同様に、ポリL−リジンをオリゴヌクレオチドにコンジュゲートさせ、実効負電荷を低下させ、細胞への取込みを改善させた(Leonetti 1990年)。様々なシグナルペプチド又はリガンド又は形質導入ペプチド又はリガンドを、例えば、ペプチド又はリガンドを本明細書で先に定義した親油性アンカーにコンジュゲートさせることによって、本発明によるナノ粒子の表面に連結させることができる。
【0234】
治療適用
表現型形質に影響を及ぼすmiRNAは、治療適用及び診断適用に対する介入点を提供する(特定のmiRNAの存在又は非存在をスクリーニングすることによって)。本発明のRNA分子を使用して、前出の項目で議論した疾患又は状態のいずれかを処置できることが具体的に企図される。さらに、上記方法のいずれかを、本発明の治療態様及び診断態様に関して用いることもできる。例えば、miRNAを検出すること又はそれをスクリーニングすることに関する方法を、診断の文脈で用いることもできる。治療適用では、有効量の本発明のmiRNAが、動物におけるものであってもそうでなくてもよい細胞に投与される。一部の実施形態では、治療有効量の本発明のmiRNAが、疾患又は状態の処置のために個体に投与される。用語「有効量」は、本明細書で使用される場合、それが投与される細胞又は組織において所望の生理学的変化をもたらすのに必要である、本発明の分子の量として定義される。用語「治療有効量」は、本明細書で使用される場合、本明細書で先に定義した血管新生に関連する疾患又は状態に関して所望の効果を達成する、本発明の分子の量として定義される。当業者は、多くの場合、分子は、治癒をもたらさないかもしれないが、部分的な利益、例えば、少なくとも1つの症状の軽減又は改善をもたらすことができることを容易に認識する。一部の実施形態では、いくつかの利益を有する生理学的変化は、治療上有益であるとも考えられる。よって、一部の実施形態では、生理学的変化をもたらす分子の量は、「有効量」又は「治療有効量」とみなされる。
【0235】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、例えば、少なくとも約0.1%の活性化合物を含んでもよい。他の実施形態では、活性化合物は、2%〜75%の重量の単位、又は例えば、25%〜60%、及びその中から導き出せる任意の範囲を含んでもよい。他の非限定的な例では、用量は、投与当たり、体重1kg当たり1マイクログラム未満、又は体重1kg当たり1マイクログラム、体重1kg当たり5マイクログラム、体重1kg当たり10マイクログラム、体重1kg当たり50マイクログラム、体重1kg当たり100マイクログラム、体重1kg当たり200マイクログラム、体重1kg当たり350マイクログラム、体重1kg当たり500マイクログラム、体重1kg当たり1ミリグラム、体重1kg当たり5ミリグラム、体重1kg当たり10ミリグラム、体重1kg当たり50ミリグラム、体重1kg当たり100ミリグラム、体重1kg当たり200ミリグラム、体重1kg当たり350ミリグラム、又は体重1kg当たり500ミリグラムから体重1kg当たり1000mg又はそれを超える量、及びその中から導き出せる任意の範囲を含んでもよい。本明細書に列挙した数値から導き出せる範囲の非限定的な例では、体重1kg当たり5mg〜体重1kg当たり100mg、体重1kg当たり5マイクログラム〜体重1kg当たり500ミリグラムなどの範囲を、上記数値に基づいて投与することができる。
【0236】
いずれの場合にも、組成物は、1つ又は複数の構成成分の酸化を遅らせるための様々な抗酸化剤を含んでもよい。さらに、微生物の作用の防止は、これらに限定されないが、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール又はこれらの組合せを含む、様々な抗菌剤及び抗真菌剤などの保存剤によってもたらすことができる。
【0237】
分子は、遊離塩基、中性又は塩形態で組成物中に製剤化され得る。薬学的に許容される塩は、酸付加塩、例えば、タンパク性組成物の遊離アミノ基により形成されたもの、又は例えば、塩酸若しくはリン酸などの無機酸、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸若しくはマンデル酸のような有機酸により形成されたものを含む。遊離のカルボキシル基により形成された塩は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム若しくは水酸化鉄などの無機塩基;又はイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン若しくはプロカインのような有機塩基に由来してもよい。
【0238】
組成物は、一般的に、水性媒体中のナノ粒子の懸濁液である。しかし、これは、凍結乾燥されても、粉末として提供されてもよく、粉末は、ナノ粒子と任意選択で緩衝塩又は他の賦形剤を含む。
【0239】
有効投薬量
本発明の分子は、一般的に、意図される目的を達成するために有効な量で使用される。疾患状態を処置又は防止するための使用では、本発明の分子、又はその医薬組成物は、治療有効量で投与又は適用される。治療有効量は、症状を軽快させるか又は防止するのに、又は処置される患者の生存を延長するのに有効な量である。治療有効量の決定は、特に、本明細書で提供される詳細な開示を考慮して、十分に、当業者の能力の範囲内である。全身投与では、治療有効用量は、in vitroアッセイから最初に推定することができる。例えば、用量は、細胞培養において決定されるEC50を含む循環濃度範囲を達成するために、動物モデルで製剤化することができる。このような情報を使用して、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定することができる。初期投薬量は、当技術分野で周知の技法を使用して、in vivoデータ、例えば、動物モデルから推定することもできる。当業者は、動物データに基づいて、ヒトへの投与を容易に最適化することができる。投与量と投与間隔は、個々に調整され、治療効果を維持するのに十分な分子の血漿レベルをもたらすことができる。注射による投与のための通常の患者の投薬量は、1日に0.01〜0.1mg/kg、又は1日に0.1〜5mg/kg、好ましくは1日に0.5〜1mg/kg又はそれ以上の範囲である。治療上有効な血漿レベルは、毎日複数用量を投与することによって達成することができる。
【0240】
局所投与又は選択的取込みの場合には、タンパク質の有効な局所濃度は、血漿濃度に関連しなくてもよい。当業者であれば、過度な実験なしで、治療上有効な局所投薬量を最適化することができるであろう。投与される分子の量は、当然のことながら、処置される対象、対象の重量、苦痛の重症度、投与方式及び処方する医師の判断に依存することになる。治療は、症状が検出可能である間又は症状が検出可能でない場合でさえ、断続的に繰り返すことができる。治療は、単独で又は他の薬物若しくは処置(手術を含む)と組み合わせて提供されてもよい。
【0241】
キット
本明細書に記載の組成物のいずれかは、キットに含まれていてもよい。非限定的な例では、個々のmiRNAはキットに含まれ、ジアミノ脂質も含まれる。キットは、合成miRNAの送達の作用を制御するために使用することができる、1つ又は複数の陰性対照合成miRNAをさらに含んでもよい。キットは、合成miRNAの2つの鎖のハイブリダイゼーションを容易にするための水及びハイブリダイゼーション緩衝液をさらに含んでもよい。キットは、miRNAの細胞への送達を容易にするための1つ又は複数のトランスフェクション試薬(複数可)を含んでもよい。
【0242】
配列同一性
「配列同一性」は、本明細書において、配列を比較することによって決定される、2つ又はそれより多い核酸(ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、RNA、DNA)配列の間の関係として定義される。当技術分野では、「同一性」は、核酸配列間の配列の関連性の程度も意味し、場合場合で、このような配列のストリング間のマッチによって決定される。「同一性」及び「類似性」は、これらに限定されないが、Computational Molecular Biology、Lesk, A. M.編、Oxford University Press、New York、1988年;Biocomputing: Informatics and Genome Projects、Smith, D. W.編、Academic Press、New York、1993年;Computer Analysis of Sequence Data、Part I、Griffin, A. M.、及びGriffin, H. G.編、Humana Press、New Jersey、1994年;Sequence Analysis in Molecular Biology、von Heine, G.、Academic Press、1987年;並びにSequence Analysis Primer、Gribskov, M. 及びDevereux, J.編、M Stockton Press、New York、1991年;並びにCarillo, H.,、及びLipman, D.、SIAM J. Applied Math.、48:1073頁(1988年)に記載されているものを含む、公知の方法によって容易に算出することができる。実施形態では、同一性は、所与の配列番号の全長に関して評価される。
【0243】
同一性を決定するための好ましい方法は、検査される配列間に最大マッチを与えるように設計される。同一性及び類似性を決定するための方法は、公に利用可能なコンピュータープログラムで体系化される。2つの配列間の同一性及び類似性を決定するために好ましいコンピュータープログラム方法は、例えば、GCGプログラムパッケージ(Devereux, J.ら、Nucleic Acids Research 12(1): 387頁(1984年))、BestFit、BLASTP、BLASTN、及びFASTA(Altschul, S. F.ら、J. Mol. Biol. 215:403〜410頁(1990年)を含む。BLAST Xプログラムは、NCBI及び他の供給源から公に利用可能である(BLAST Manual、Altschul, S.ら、NCBI NLM NIH Bethesda、MD 20894;Altschul, S.ら、J. Mol. Biol. 215:403〜410頁(1990年)。周知のSmith Watermanアルゴリズムを使用して、同一性を決定してもよい。
【0244】
核酸の比較に対して好ましいパラメーターは、以下のものを含む:アルゴリズム:Needleman及びWunsch、J. Mol. Biol. 48:443〜453頁(1970年);比較マトリックス:マッチ=+10、ミスマッチ=0;ギャップペナルティ:50;ギャップレングスペナルティ:3。ウィスコンシン州マディソンに位置するGenetics Computer Groupからのギャッププログラムとして利用可能である。上記は、核酸比較のデフォルトパラメーターである。
【0245】
化学療法剤
本発明による組合せにおいて使用するための化学療法剤の例としては、チオテパ及びシクロホスファミドなどのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンなどのアルキルスルホネート;ベンゾドーパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドーパ(meturedopa)、及びウレドーパ(uredopa)などのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホロアミド、トリエチレンチオホスホロアミド及びトリメチロールメラミンを含むエチレンイミン及びメチロールメラミン(methylamelamines);アセトゲニン(特に、ブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC−1065(アドゼレシン、カルゼルシン及びビセレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオルカマイシン(合成類似体、KW−2189及びCBI−TMIを含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノブエンビキン、フェネステリン、プレドニマスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチンなどのニトロソウレア;エンジイン抗生物質などの抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンガンマ及びカリケアマイシンオメガ);ジネマイシンAを含むジネマイシン;クロドロネートなどのビスホスホネート;エスペラマイシン;並びにネオカルジノスタチン発色団及び関連する色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カルビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ−ドキソルビシン(morpholmo−doxorubicm)、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリン−ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、マイコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾトシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサート及び5−フルオロウラシル(5−FU)などの抗代謝薬;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロキシウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎剤;フォリン酸などの葉酸補填剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビスアントレン;エダトラキセート;デフォファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルフォルミチン;エリプチニウム酢酸塩;エポチロン;エトグルシド;ガリウムトリニトラート;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);マイタンシン及びアンサマイトシンなどのマイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK多糖複合体;ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T−2トキシン、ベラクリン(verracurin)A、ロリジンA及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル及びドセタキセル;クロラムブシル;ゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン、オキサリプラチン及びカルボプラチンなどの白金配位錯体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP−16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン(例えば、CPT−II);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;カペシタビン;ゲフィチニブ、並びに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸又は誘導体が挙げられる。
【0246】
この定義には、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン(keoxifene)、LYI17018、オナプリストン、及びトレミフェンを含む抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)などの、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように作用する抗ホルモン剤;例えば、4(5)−イミダゾール、アミノグルテチミド、酢酸メゲストロール、エキセメスタン、ホルメスタニー(formestanie)、ファドロゾール、ボロゾール、レトロゾール、及びアナストロゾールなどの副腎におけるエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤;並びにフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリンなどの抗アンドロゲン;並びにトロキサシタビン(troxacitabine)(1,3−ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド、例えば、PKC−α、Raf及びH−Rasなどの、特に異常な細胞増殖に関与するシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害するもの;VEGF発現阻害剤及びHER2発現阻害剤などのリボザイム;遺伝子療法ワクチンなどのワクチン並びに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、又は誘導体も含まれる。認可された指示を伴う米国FDA認可癌薬物のリストは、accessdata.fda.gov/scripts/cder/onctools/druglist.cfmにおけるワールドワイドウェブ上で見出すことができる。好適なRNR阻害剤は、ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、clolar、クロファラビン、及びトリアピンからなる群から選択される。好適なAURKB阻害剤は、AZD1152、VX−680、MLN8054、MLN8237、PHA680632、PH739358、ヘスペリジン、ZM447439、JNJ770621、SU6668、CCT129202、AT9283、MP529、SNS314、R763、ENMD2076、XL228、TTP687、PF03814735及びCYC116からなる群から選択される。別の好適な抗がん薬は、ゲフィチニブである。
【0247】
さらに、特定の経路の活性において差を有する試料が比較されてもよいことが企図される。このような細胞経路は、これらに限定されないが、以下のものを含む:サイクリックAMP、タンパク質キナーゼA、Gタンパク質共役受容体、アデニリルシクラーゼ、L−セレクチン、E−セレクチン、PECAM、VCAM−I、α−アクチニン、パキシリン、カドヘリン、AKT、インテグリン−α、インテグリン−β、RAF−I、ERK、PI−3キナーゼ、ビンキュリン、マトリックスメタロプロテイナーゼ、Rho GTPase、p85、トレフォイル因子、プロフィリン、FAK、MAPキナーゼ、Ras、カベオリン、カルパイン−1、カルパイン−2、上皮成長因子受容体、ICAM−1、ICAM−2、コフィリン、アクチン、ゲルゾリン、RhoA、Rac、ミオシン軽鎖キナーゼ、血小板由来成長因子受容体又はエズリンに関与するものを含むがそれらに限定されない、任意の接着又は運動性経路;AKT、Fasリガンド、NFKB、カスパーゼ−9、PBキナーゼ、カスパーゼ−3、カスパーゼ−7、ICAD、CAD、EndoG、グランザイムB、Bad、Bax、Bid、Bak、APAF−I、シトクロムC、p53、ATM、Bcl−2、PARP、Chk1、Chk2、Rho−21、c−Jun、Rho73、Rad51、Mdm2、Rad50、c−Abl、BRCA−1、パーフォリン、カスパーゼ−4、カスパーゼ−8、カスパーゼ−6、カスパーゼ−1、カスパーゼ−2、カスパーゼ−10、Rho、Junキナーゼ、Junキナーゼキナーゼ、Rip2、ラミン−A、ラミン−B1、ラミン−B2、Fas受容体、H2O2、グランザイムA、NADPHオキシダーゼ、HMG2、CD4、CD28、CD3、TRADD、IKK、FADD、GADD45、DR3死受容体、DR4/5死受容体、FLIP、APO−3、GRB2、SHC、ERK、MEK、RAF−1、サイクリックAMP、タンパク質キナーゼA、E2F、網膜芽細胞腫タンパク質、Smac/Diablo、ACH受容体、14−3−3、FAK、SODD、TNF受容体、RTP、サイクリン−D1、PCNA、Bcl−XL、PIP2、PIP3、PTEN、ATM、Cdc2、タンパク質キナーゼC、カルシニューリン、IKKα、IKKβ、IKKγ、SOS−1、c−FOS、Traf−1、Traf−2、IκBβ又はプロテアソームに関与するものを含むがそれらに限定されない、任意のアポトーシス経路;タンパク質キナーゼA、一酸化窒素、カベオリン−1、アクチン、カルシウム、タンパク質キナーゼC、Cdc2、サイクリンB、Cdc25、GRB2、SRCタンパク質キナーゼ、ADP−リボシル化因子(ARF)、ホスホリパーゼD、AKAP95、p68、オーロラB、CDK1、Eg7、ヒストンH3、PKAc、CD80、PI3キナーゼ、WASP、Arp2、Arp3、p34、p20、PP2A、アンジオテンシン、アンジオテンシン変換酵素、プロテアーゼ活性化型受容体−1、プロテアーゼ活性化型受容体−4、Ras、RAF−1、PLCβ、PLCγ、COX−1、Gタンパク質共役受容体、ホスホリパーゼA2、IP3、SUMO1、SUMO2/3、ユビキチン、Ran、Ran−GAP、Ran−GEF、p53、グルココルチコイド、グルココルチコイド受容体、SWI/SNF複合体の構成成分、RanBP1、RanBP2、インポーチン、エクスポーチン、RCC1、CD40、CD40リガンド、p38、DCKα、IKKβ、NFKB、TRAF2、TRAF3、TRAF5、TRAF6、IL−4、IL−4受容体、CDK5、AP−1転写因子、CD45、CD4、T細胞受容体、MAPキナーゼ、神経成長因子、神経成長因子受容体、c−Jun、c−Fos、Junキナーゼ、GRB2、SOS−1、ERK−1、ERK、JAK2、STAT4、IL−12、IL−12受容体、一酸化窒素合成酵素、TYK2、IFNγ、エラスターゼ、IL−8、エピセリン、IL−2、IL−2受容体、CD28、SMAD3、SMAD4、TGFβ若しくはTGFβ受容体に関与するものを含むがそれらに限定されない、任意の細胞活性化経路;TNF、SRCタンパク質キナーゼ、Cdc2、サイクリンB、Grb2、Sos−1、SHC、p68、オーロラキナーゼ、タンパク質キナーゼA、タンパク質キナーゼC、Eg7、p53、サイクリン、サイクリン依存性キナーゼ、神経成長因子、上皮成長因子、網膜芽細胞腫タンパク質、ATF−2、ATM、ATR、AKT、CHK1、CHK2、14−3−3、WEE1、CDC25、CDC6、起点認識複合体タンパク質、p15、p16、p27、p21、ABL、c−ABL、SMAD、ユビキチン、SUMO、熱ショックタンパク質、Wnt、GSK−3、アンジオテンシン、p73任意PPAR、TGFα、TGFβ、p300、MDM2、GADD45、Notch、cdc34、BRCA−1、BRCA−2、SKP1、プロテアソーム、CUL1、E2F、pi07、ステロイドホルモン、ステロイドホルモン受容体、IκBα、IκBβ、Sin3A、熱ショックタンパク質、Ras、Rho、ERK、IKK、PI3キナーゼ、Bcl−2、Bax、PCNA、MAPキナーゼ、ダイニン、RhoA、PKAc、サイクリンAMP、FAK、PIP2、PIP3、インテグリン、トロンボポエチン、Fas、Fasリガンド、PLK3、MEK、JAK、STAT、アセチルコリン、パキシリン カルシニューリン、p38、インポーチン、エクスポーチン、Ran、Rad50、Rad51、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、Ran−GAP、Ran−GEF、NuMA、Tpx2、RCC1、ソニックヘッジホッグ、Crm1、パッチド(Ptc−1)、MPF、CaMキナーゼ、チューブリン、アクチン、動原体関連タンパク質、セントロメア結合タンパク質、テロメラーゼ、TERT、PP2A、c−MYC、インシュリン、T細胞受容体、B細胞受容体、CBP、IKB、NFKB、RAC1、RAF1、EPO、ジアシルグリセロール、c−Jun、c−Fos、Junキナーゼ、低酸素誘導因子、GATA4、β−カテニン、α−カテニン、カルシウム、アレスチン、スルビビン、カスパーゼ、プロカスパーゼ、CREB、CREM、カドヘリン、PECAM、コルチコステロイド、コロニー刺激因子、カルパイン、アデニリルシクラーゼ、成長因子、一酸化窒素、膜貫通受容体、レチノイド、Gタンパク質、イオンチャネル、転写活性化因子、転写共活性化因子、転写リプレッサー、インターロイキン、ビタミン、インターフェロン、転写コリプレッサー、核孔、窒素、毒、タンパク質分解、若しくはリン酸化に関与するものを含むがそれらに限定されない、任意の細胞周期調節、シグナル伝達、若しくは分化経路;又は、アミノ酸の生合成、脂肪酸の酸化、神経伝達物質及びその他の細胞シグナル伝達分子の生合成、ポリアミンの生合成、脂質及びスフィンゴ脂質の生合成、アミノ酸及び栄養素の異化、ヌクレオチド合成、エイコサノイド、電子伝達反応、ER関連分解、解糖、線維素溶解、ケトン体の形成、ファゴソームの形成、コレステロール代謝、食物摂取の調節、エネルギーホメオスタシス、プロトロンビン活性化、ラクトース及び他の糖の合成、多剤耐性、ホスファチジルコリンの生合成、プロテアソーム、アミロイド前駆体タンパク質、Rab GTPase、デンプン合成、グリコシル化、ホスホグリセリドの合成、ビタミン、クエン酸回路、IGF−1受容体、尿素回路、小胞輸送、又はサルベージ経路に関与するものを含むがそれらに限定されない、任意の代謝経路。本発明の核酸分子は、上記経路又は因子のいずれかに関する診断及び治療方法において用いることができることがさらに企図される。よって、本発明の一部の実施形態では、miRNAは、本発明の方法の一部として企図される上記経路又は因子のうちの1つ又は複数を阻害するか、排除するか、活性化するか、誘導するか、増加させるか、又はそうでなければ、モジュレートする。核酸は、上記経路のいずれかに対するmiRNAの関連に基づいて、疾患又は状態を診断するために使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0248】
図1】3mg/kgのsiHPRT1を3回、毎日連続注射した最後の注射の47〜49時間後のsubqヒトA2058黒色腫腫瘍におけるHPRT1 mRNA発現。
図2】処置開始の12日後の相対的腫瘍体積。subqヒトA2058黒色腫腫瘍を有するマウスを、3mg/kgのジアミノ脂質ナノ粒子中で製剤化したmiRNA−193aで、1週目に5日連続で処置し、その後、週に2回注射した(月曜日/木曜日)。データは、メジアン(中央値)+IQR(四分位範囲)を表す(n=8)。
図3】Nov340又はジアミノ脂質ナノ粒子中で製剤化した異なる用量のmiR−7及びmiR−193aで、1週目に3又は5日連続で処置し、その後、さらに3週間、1週間に2回注射した(月曜日/木曜日)同所性Hep3腫瘍保有マウスの、PBS又はソラフェニブで処置したマウスと比較した、AFPレベル(42日目、左)及び腫瘍重量(49日目、右)。データは、メジアン+IQRを表す(n=6〜16)。=p<0.05、**=p<0.01、***=p<0.001、****=p<0.0001
図4】処置開始の1週間後(A)及び2週間後(B)のCD8+T細胞/Treg細胞の比。miRNA−193a処置により、免疫抑制から免疫刺激性4T1腫瘍微小環境へのシフトがもたらされた(CD8+T細胞/Treg細胞>miRNA−193a処置開始の1、2週間後)。
図5A】CD45+ 腫瘍細胞集団における免疫細胞及び細胞内サイトカインのパーセンテージ。1週目:A)miRNA−193a処置により、T細胞機能の有意な増加がもたらされた(IFNγ及びIL−2の産生)。
図5B】B)調節性T細胞集団の有意な減少がもたらされた(FOXP3+/LAG3+)。
図5C】2週目:miRNA−193a処置により、T細胞機能(IFNγ)の穏やかな誘導と共に、T細胞出現頻度(CD8+)の有意な増加がもたらされた。
図5D】2週目:miRNA−193a処置により、調節性T細胞集団(FOXP3+/LAG3+)の有意な減少がもたらされた。データは、メジアン+IQRを表す。=p<0.05、**=p<0.01。
図6】免疫細胞におけるCD73(NT5E)発現レベルのパーセンテージ。miRNA−193a処置の際に、CD73発現レベルは、免疫細胞において下方調節される。データは、メジアン+IQRを表す。=p<0.05、**=p<0.01。A)1週目、2回目の投与の48時間後;B)2週目、4回目の投与の48時間後。
図7】4T1腫瘍切除後に原発腫瘍の再成長を示すマウスのパーセンテージ。マウスに、乳房脂肪パッドにおける4T1細胞を注射し、細胞注射の1週間後に、週2回の処置(i.v.)を開始し、細胞注射後20日目に、原発腫瘍を除去した。原発腫瘍の除去後、10mg/kgのジアミノ脂質ナノ粒子中で製剤化したmiR−193aで、週に2回のスケジュールでさらに6週間マウスを処置し、PBS又は抗PD1で処置した、又は組合せで処置したマウスと比較した。
図8】4T1腫瘍切除後に原発腫瘍の再成長を伴う個々のマウス。マウスに、乳房脂肪パッドにおける4T1細胞を注射し、細胞注射の1週間後に、週2回の処置(i.v.)を開始し、細胞注射後20日目に、原発腫瘍を除去した。原発腫瘍の除去後、10mg/kgのジアミノ脂質ナノ粒子中で製剤化したmiR−193aで、週に2回のスケジュールでさらに6週間マウスを処置し、PBS又は抗PD1で処置した、又は組合せで処置したマウスと比較した。群1、2、3、及び4において、それぞれ、11頭のマウスのうちの5頭、10頭のマウスのうちの1頭、12頭のマウスのうちの6頭、及び11頭のマウスのうちの3頭が、原発腫瘍除去後に腫瘍再成長を示した(処置後に示した日まで追跡した)。A)PBSで処置した群;B)ジアミノ脂質ナノ粒子中のmiRNA−193aで処置した群;C)抗PD1で処置した群;D)ジアミノ脂質ナノ粒子中のmiRNA−193aと抗PD1の組合せで処置した群。
図9】4T1腫瘍切除(66日目)後に原発腫瘍の再成長を示すマウスのパーセンテージ。マウスに、乳房脂肪パッドにおける4T1細胞を注射し、細胞注射の1週間後に、週2回の処置(i.v.)を開始し、細胞注射後20日目に、原発腫瘍を除去した。原発腫瘍の除去後、10mg/kgのジアミノ脂質ナノ粒子中で製剤化したmiR−193aで、週に2回のスケジュールでさらに6週間マウスを処置し、PBS又は抗PD1で処置したマウスと比較した。
図10】生存しているmiRNA−193aで処置したマウスに、左に示したように、処置の終了後75日目、14日目に、4T1細胞を再負荷した。4T1細胞を負荷したナイーブマウスと比較して、腫瘍体積を真中と右のグラフに示す。***=p<0.001
図11】4T1細胞を再負荷した際に、ナイーブマウスと比較して、腫瘍取込みを示した3頭のmiRNA−193aで処置したマウスの詳細な腫瘍体積(図10から)。
図12】A)生存しているmiRNA−193aで処置したマウスに、処置の終了後101日目、38日目に、H22細胞を再負荷した。B)H22細胞を負荷したナイーブマウスと比較した腫瘍体積。***=p<0.001。C)H22細胞を再負荷した際に、ナイーブマウスと比較して、腫瘍取込み(100%)を示したmiRNA−193aで処置したマウスの詳細な腫瘍体積(miRNA−193aで処置したマウスのすべてで、1週間後に、顕著な時間依存的腫瘍退縮を伴う)。
図13】処置開始の21日後の相対的腫瘍体積。subqヒトA2058黒色腫腫瘍を有するマウスを、異なる用量及び異なるレジメンの、ジアミノ脂質ナノ粒子中で製剤化したmiRNA−193aで、又はベムラフェニブで処置した。データは、メジアン+IQRを表す。=p<0.05
図14】10mg/kgでQD×2(1日に1回の注射、2日連続して)でi.v.注射した後の経時的な腫瘍中のmiRNA−193a標的遺伝子の発現レベル。同所性4T1腫瘍を有するマウスを同様に処置し、異なる時点での薬力学分析のために、腫瘍を除去した(表13を参照されたい)。個々の腫瘍発現値を表す。様々な標的遺伝子が、異なる時点で有意に下方調節される。データは、メジアン+IQRを表す。=p<0.05、**=P<0.01。軸上の時間は、最終のmiRNA−193a投与後の時間を示す。A)mKRAS;B)mMCL−1;C)mTIM3;D)mENTPD1。
図15】miRNA−193a−3pが、NT5E遺伝子を直接標的とし、異なる細胞株のNT5EとENTPD1の両方の遺伝子発現を下方調節すること。A)10nMのmiRNA−193a−3p、偽(モック)及びHela細胞のスクランブル対照の存在下で、NT5E変異レポーターと比較したNT5E野生型レポーターのルシフェラーゼ活性。NT5E野生型レポーターは、変異NT5Eレポーター及び対照と比較して、ルシフェラーゼ活性を低減する。B)A2058黒色腫細胞株の偽対照と比較した、10nMのmiRNA−193a−3pの存在下でのNT5E mRNAの下方調節。C)A2058黒色腫細胞株の変異miRNA−193a−3p、偽及びスクランブル対照と比較した、10nMのmiRNA−193a−3p投与の24時間後及び48時間後のNT5Eタンパク質の下方調節。チューブリンをローディング対照として使用する。変異したmiR−193a−3pは、そのシード配列に3つのヌクレオチドの変異を含有する D)示したがん細胞株において、10nMのmiRNA−193a−3p、偽対照、及びスクランブル対照(示さず)の存在下でのENTPD1のmRNAの下方調節。すべてのmRNA値は、偽に対して正規化する(偽の値を1に設定する)。
図16】miR−193a−3pによる処置が、アデノシン生成経路に影響を及ぼすこと。A)A2058黒色腫細胞における対照条件(未処置(UT)、偽、スクランブル)と比較して、10nMのmiRNA−193a−3pで処置した際に、遊離ホスフェート生成(アデノシン生成に関する間接的リードアウト)が低減する。NT5Eに対するsiRNAは、同じ表現型を複製する。B)A2058黒色腫細胞における対照条件(未処置(UT)、偽、スクランブル)と比較して、10nMのmiRNA−193a−3pで処置した際に、アデノシン生成が低減する。NT5Eに対するsiRNAは、同じ表現型を複製する。C)A2058黒色腫細胞におけるスクランブルと比較して、10nMのmiRNA−193a−3pで処置した際に、A2058細胞の移動能は低下する。NT5Eに対するsiRNAは、同じ表現型を複製する。
図17】核の画像化によって決定されるように、偽対照と比較して、濃度依存的方法で、miRNA−193a−3pが、がん細胞におけるG2/Mアレストを促進する(A:HEP3B;B:SNU449;C:A2058)こと。G0、G1、S、G2/Mは、細胞周期の異なる相である。
図18】RT−PCRによって決定されるように、異なる時点(時間で)の偽と比較して、異なる細胞株で(A:HEP3B;B:SNU449;C:H1975)、10nMのmiRNA−193a−3pを投与した際に、G2/Mに関連するmiRNA−193a−3pの標的遺伝子(MPP2、STMN1、YWHAZ、及びCCNA2)は下方調節される。
図19A】A)生存しているmiRNA−193aで処置したマウスと週齢の一致するナイーブマウスに、4T1細胞を再負荷した。
図19B】B)miRNA−193aで処置した、4T1再負荷の生存者と週齢の一致するナイーブマウスの群のT細胞を枯渇させ、4T1腫瘍細胞を再負荷し、腫瘍成長を追跡した。
図19C】miRNA−193aで処置した4T1を再負荷した生存者からナイーブマウスにT細胞を移入したマウスに、4T1を再負荷し、腫瘍成長を追跡した(miR−193aは、製剤と一緒のmiR−193a−3pを指す)。
図20】Nov340中で製剤化した異なるマイクロRNAで、1日置きに3週間処置した同所性Hep3腫瘍保有マウスの、PBS又はソラフェニブで処置したマウスと比較した、AFPレベル(39日目、A)及び腫瘍重量(39日目、B)。データはメジアンを表す =p<0.05、**=p<0.01、***=p<0.001、****=p<0.0001
【実施例】
【0249】
実施例1−ジアミノ脂質の提供
一般式(I)のジアミノ脂質を提供するための一般的方法
対応する式T−OH、T−OH、又はT−OHのアルコールは一般的に市販されている。これらのアルコールは、当技術分野で公知の方法を使用して、例えば、ピリジニウムクロロクロマートを使用して、対応するアルデヒドに変換することができ、又はアルデヒドがさらに市販されている場合もある。次いで、アルデヒドを必要とされるジアミンと、例えば、N−,エチル−1,3−ジアミノプロパン(式中、n=1)と反応させて、イミンを形成し、次に、T、T、及びT部分の還元アミノ化で対応するアミンを還元することができる。以下は非限定的な例である:
【0250】
ファルネサール(又はファルネシルアルデヒド)
ファルネソール(又はファルネシルアルコール)の混合物(10.0g、44.9mmol、1等量)に、500mLのジクロロメタンピリジニウムクロロクロマート(PCC、14.5g、67.4 mmol、1.5等量)中の炭酸ナトリウム(2.38g、22.5mmol、0.5等量)及び分子篩3Å(5g)を添加した。懸濁液を室温で1時間撹拌した。次いで、250mLのジクロロメタンを混合物に添加し、懸濁液を250mLのシリカゲル(シリカゲル60、0.04〜0.063mm、230〜400メッシュ)を通して濾過した。溶媒を減圧下で蒸発させたところ、得られた残留物はアルデヒドであり、それをさらに精製することなく使用した。シクロヘキサン溶媒系(Rf=0.5)中10%の酢酸エチルと染色のためのメタノール中10%の硫酸を使用して、化合物をTLCプレートで解析した。
【0251】
(N’−メチル−N’,N’’,N’’−tris((2E,6E)−3,7,11−トリメチルドデカ−2,6,10−トリエン−1−イル)プロパン−1,3−ジアミン)(一般式(I)の化合物(式中、n = 1 であり、T、T、及びTはそれぞれファルネシルである)):
1,2−ジクロロエタン100mL中ファルネサール(8.75g、39.7mmol、3.5等量)及びN−メチル−1,3−ジアミノプロパン(1g、11.3mmol、1.0等量)の溶液に、NaBH(OAc)(10.9g、51.4 mmol、4.55等量)及び酢酸(2.94mL、51.4mmol、4.55等量)を室温で添加した。反応混合物を室温で18時間撹拌した。水酸化ナトリウム2M溶液で反応をクエンチし、ジクロロメタン(100mL)で混合物を2回抽出した。合わせた有機層をブライン(塩化ナトリウムの飽和水溶液)で洗浄し、NaSOで脱水した。溶媒を減圧下で除去し、粗生成物をシリカゲル(300mLのシリカゲル60、0.04〜0.063mm、230〜400メッシュ)によるフラッシュクロマトグラフィーに供した。10カラム容積の、酢酸エチルから0.5%のトリメチルアミンを含有する酢酸エチル中の4%メタノール(MeOH)までの勾配を用いて、生成物を溶出させた。所望の化合物が溶出している場合、20mLの画分を回収し、その後、化合物溶出液50〜100mLの画分を回収した。ジクロロメタン溶媒系中5%のMeOHと染色のためのメタノール中10%の硫酸(Rf=0.4)を使用して、回収した画分をTLCプレートで解析した。表題の化合物を、RP−HPLCによって測定した場合の典型的純度が96%以上である、淡黄色の油状物(約4.6g、6.6mmol、収率60%;化学式:C4984;正確な質量:700.66)として得た。
【0252】
実施例2−ナノ粒子の提供
一般的手順
すべてのプラスチックバイアルとボトルを、使用前に滅菌濾過した脱イオン水で濯いだ。gスケールでの重量に対する標準誤差は、0.01gであり、mgでは0.001gである。
【0253】
50mMのクエン酸緩衝液 pH3
800mLの滅菌脱イオン水に、10.51gのクエン酸一水和物と0.93gのNaOHを添加した。pHを測定し、必要な場合は、2MのNaOHでpH3に調整した。滅菌脱イオン水を添加して1Lにした。試料を濾過する前に、20mLの滅菌濾過脱イオン水で濯いだ0.2μmのボトルトップフィルターを通して緩衝液を濾過した。
【0254】
1×PBS緩衝液 pH7.4
10gのPBS ダルベッコ w/o Ca2+ w/oMg2+を10Lの滅菌脱イオン水中に溶解させた。
【0255】
粒子の生成
ジアミノ脂質、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)、コレステロール、及びPEG2000−DSGのストック溶液を、エタノール中50mMの濃度で調製、混合し、それぞれ、40:10:48:2のモル比で得た。最終脂質混合溶液をエタノールで希釈して、33.8mMの濃度にした。HO中20mg/mLの濃度の核酸(RNA)ストック溶液を、50mMのクエン酸ナトリウム緩衝液(pH3)中に希釈し、最終濃度を0.65mg/mLとした。RNA質量に対する総脂質の比は、10.3であった。
【0256】
脂質ナノ粒子を調製するために、有機脂質混合溶液をRNA水溶液中に注入し、25%のエタノールを含有する最終懸濁液を得た。HPLCポンプ(Pump P−900、GE Healthcare、ドイツ)を相対的容積流量3:1(1分当たり18.75mLの水溶液:1分当たり6.25mLの有機溶液)で使用して溶液を注入し、T字型接合部(PEEK Low Pressure Tee Assembly 1/16” PEEK .020スルーホール、IDEX Health & Science LLC、USA)を介して混合した。
【0257】
10kDのMWCOを用いる70mLのSlide−A−Lyzerを使用して、ナノ粒子溶液の200倍容積のPBS緩衝液(pH7.4)に対して、ナノ粒子懸濁液を2回、直ちに透析し、エタノールを除去して、緩衝液の交換を達成した。1回目の透析を室温で4時間実施し、次いで、製剤を4℃で終夜透析した。得られたナノ粒子懸濁液を、VIVASPIN 20濃縮機を使用して遠心分離によって濃縮した。製剤を充填する前に、濃縮機を、2mLの1×PBS(pH7.4)で濯いだ(製剤の最大量は20mL)。所望の濃度が達成されるまで(例えば、2mg/mL)、濃縮機を、4℃で、Heraeus Multifuge X3 FR遠心分離器(Thermo Fisher Scientific、ドイツ)のスイングローターで1000gにてスピンした。異なる濃度のアリコートを、濃縮した製剤(例えば、2mg/mL)を滅菌濾過した1×PBS緩衝液(pH7.4)で希釈することによって調製した。得られたナノ粒子懸濁液を、0.2μmの滅菌フィルターに通してガラスバイアル中に濾過し、圧着閉鎖で密封した。表1は、調製したさらなるナノ粒子の例を示す。
【0258】
【表1】
【0259】
粒子のサイズ及び多分散指数(PDI)を、He−Neレーザー(633nm)を用いる、Zetasizer Nano ZSP、ZEN5600、Malvern Instruments Ltd.、英国を使用して、動的光散乱(DLS)法によって測定した。DLSは、ブラウン運動により動く粒子の拡散を測定し、Stokes−Einsteinの関係を使用して、これをサイズ及びサイズ分布に変換する。測定は、25℃で、散乱角173°にて三連で、透明の使い捨てキュベット(10×10×48mm、Sarstedt)を使用して実施した。測定前に、PBS緩衝液(pH7.4)で、試料を100倍希釈した。マルチプルナローモード分析において、Malvernソフトウェア(DTS v 7.11、Malvern Instrument、英国)を使用して、分析を行った。結果は、三連の測定値の平均値であり、Z平均径及びPDIで表した。
【0260】
ナノ粒子のゼータ電位を、M3−PALS技法を使用して同じZetasizerで測定した。粒子のゼータ電位は、粒子の電気泳動移動度を決定し、Henryの方程式を適用することによって算出した。電気泳動移動度は、粒子が電気泳動によって移動している間の粒子の速度を測定することによって得られる。Smoluchowskiの近似を使用して、電気泳動移動度を水性媒体中で決定した。測定は、25℃にて三連で、透明の使い捨て折り曲げキャピラリーセル(DTS1070、Malvern Instrument、英国)中で実施した。測定前に、0.1×PBS緩衝液(pH7.4)で、試料を100倍希釈した。オートモード分析において、Malvernソフトウェア(DTS v 7.11、Malvern Instrument、英国)を使用して、分析を行った。結果は、三連の測定値の平均値であり、ゼータ電位として表した。
【0261】
DU 800分光光度計(Beckman Coulter、Beckman Coulter, Inc.、Brea、CAを使用するUV−Vis分光光度計によって核酸濃度(全RNAを測定する)を確定した。希釈したRNA試料の吸光度を260nmで測定し、Beer−Lambertの法則を使用して濃度を算出した。簡便には、100μLの1×PBS中で希釈した製剤を、900μLのメタノールとクロロホルムの4:1(v/v)混合物中に添加し、LNPを溶解させた。混合した後、溶液の吸光度スペクトラムを、クウォーツのキュベットを使用して230nmから330nmの間で記録した(10mmのパス長、12.5×12.5×45mm、Hellma)。製剤中のRNA濃度を、製剤中で使用されるRNAの減衰係数及び260nmの波長での吸光度と330nmの波長でのベースライン補正値の間の差に基づいて算出した。RNAの減衰係数は、0.005〜0.05mg/mLの範囲の異なる濃度の6つのRNA溶液の260nmでの吸光度を測定し、Beer−Lambertの法則を適用することによって確定する。
【0262】
RNAの封入効率を、Quant−iT(商標) RiboGreen(登録商標) RNAアッセイによって評価した。簡便には、Tris−EDTA(TE)緩衝液(pH7.5)中でおよそ5ng/mLの濃度まで試料を希釈した。希釈した試料の50μLをポリスチレン96ウェルプレートに移し、次いで、50μLのTE緩衝液(未封入RNAを測定する)又は50μLの2%Triton X−100溶液(全RNA、すなわち、LNP内に封入されたRNAと未封入「遊離」RNAの両方を測定する)を添加した。試料を三連で調製した。プレートを37℃の温度で15分間インキュベートした。RiboGreen試薬をTE緩衝液中で1:100に希釈し、100μLのこの溶液を各ウェルに添加した。約480nmの励起波長及び約520nmの発光波長で、蛍光プレートリーダー(Wallac Victor 1420 Multilablel Counter、Perkin Elmer、マサチューセッツ州、ウォルサム)を使用して、蛍光強度を測定した。試薬ブランクの蛍光値を各試料の蛍光値から減算し、封入効率を以下のように決定した:
【0263】
封入効率=(1−([未封入RNA]/[全RNA]))×100
【0264】
表2は、多分散性(PDI)を含む得られたナノ粒子の分析値を示す。
【0265】
【表2】
【0266】
参照ナノ粒子
参照として、いわゆるNov340脂質ナノ粒子も調製した。Nov340脂質ナノ粒子の組成物は、米国特許第9737482号に記載されており、以下のタイプの脂質を含む:両性脂質対(カチオン性及びアニオン性脂質)及び中性脂質。Nov340脂質ナノ粒子の脂質組成は以下の通りである:
【0267】
POPC パルミトイル−オレオイルホスファチジルコリン
DOPE ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン
CHEMS コレステロールヘミスクシネート
MoChol 4−(2−アミノエチル)−モルホリノ−コレステロールヘミスクシネート
【0268】
Nov340脂質混合物は、モルで構成される。以下の比率の%:6(POPC)、24(DOPE)、23(CHEMS)、及び47(Mochol)。Nov340脂質ナノ粒子の製剤は、米国特許第6843942号に記載されている方法に基づく。
【0269】
脂質(POPC、Chems、及びDOPE)を、55℃の温蔵庫で、無水EtOH中に溶解させる。脂質が完全に溶解した後に、この溶液を、MoCholが既に秤量された別のボトルに定量的に移した。この脂質混合物を、MoCholが溶解するまで、55℃で撹拌する。MoChol及びChemsはMerckから入手し、POPC及びPOPEはAvanti Polar Lipidsから入手した。2ステップの脂質溶解を行い、MoCholのCholへの分解を減少させる。次いで、最終脂質溶液を、0.2μm孔径のフィルターを通して、55℃に予熱した調製システム中に濾過する。並行して、オリゴヌクレオチドを、室温(RT)で、Na−アセテート/スクロースのpH4の緩衝液に溶解させ、0.2μm孔径のフィルターを通して、APIボトルに直接濾過した。
【0270】
米国特許第6843942号に記載されている方法を使用して、脂質溶液とAPI溶液を合わせた場合、リポソームは注射部位に形成する。リポソーム形成後直ちに、懸濁液を、NaCl/Na2HPO4のpH9.0の緩衝液で希釈し、製剤のpHをpH7.5まで上昇させる。注射緩衝液及び希釈緩衝液は、RTに保たれる。生じたリポソーム(中間体積)をボトルに集める。押出し前に、リポソームをRTで30分間撹拌する。
【0271】
中間体積を、200nm孔径のポリカーボネート膜を通して押出し、そのサイズとサイズ分布を精緻化する。両パラメーターは、最終0.2μmの滅菌濾過を可能にし、生成物のロスを減らすのに重要である。
【0272】
中空糸膜(100kDa MWCO、Merck Millipore)を使用する限外濾過/透析濾過を実施して、遊離のRNA及びEtOHをリポソーム試料から除去した。限外濾過中に、試料を標的体積まで濃縮し(標的RNA濃度を達成するため)、次いで、透析濾過中に、PBスクロース(pH7.5)で10容量交換を実施し、EtOHと遊離オリゴヌクレオチドの完全な除去を保証し、外側の緩衝液を交換した。リポソームを、シリンジフィルターを使用して、0.2μmで濾過し、滅菌バイアルに充填した。バイアルを密封したままにして、2〜8℃で保存し、光から保護した。
【0273】
サイズ測定:リポソームのサイズ/Pdl決定のための測定を、Zetasizer Nano ZS(Malvern)を使用して動的レーザー光散乱(DLS)で実施した。このシステムは、633nm波長の4mWのヘリウム/ネオンレーザーを備え、検出角度173°の非侵襲的後方散乱技術によりリポソーム試料を測定する。リポソームを精製水で希釈し、最適なリポソーム濃度にして、実験を25℃で行った。
【0274】
ゼータ電位:リポソームのゼータ電位を、Zetasizer Nano ZS(Malvern)を使用して測定した。
【0275】
RNAの定量:RNAの定量は、OD:260nmの分光光度計によって行った。製剤化した脂質ナノ粒子を、最初に精製水で希釈し、次いで、メタノール/クロロホルムで希釈し、リポソームを溶解し、封入されたRNAの量を放出させた。
【0276】
脂質の定量:試料中の脂質濃度を、HPLC法を使用して、バルク体積から測定した。
【0277】
実施例3−オリゴヌクレオチドの提供
この発明で使用されるすべてのmiRNA及びsiRNA分子、例えば、miR−193a−3p、miR−7−5p、及びHRPT1 siRNAなどでは、パッセンジャー鎖とガイド鎖が、Oligopilot 400オリゴヌクレオチド合成機などの市販の合成機を使用して、固相合成によって化学的に合成される。一本鎖を製造するために使用されるプロセスは、si/miRNAオリゴヌクレオチドを生成するために、産業において通常使用される。合成後、オリゴヌクレオチドの一本鎖が固体支持体から切断され、脱保護される。粗製のオリゴヌクレオチドの一本鎖は、HPLCを使用して精製される。その後、一本鎖は脱塩され、濃縮され、アニーリングされ、凍結乾燥される。これらの実施例を通して、何か他に意図されていることが文脈によって明らかにならなければ、miR−193aは、配列番号219のアンチセンス鎖を有する配列番号218(模倣体、センス)のmiRNA−193a−3pの二本鎖を指す。これは、in vitro研究において、ネイキッドで使用されるか、又はin vivo研究において製剤と一緒に使用される。
【0278】
実施例4−前臨床in vivoマウス実験
材料及び方法
RNAの単離
全RNAを、製造業者の使用説明書に従って、TriZol(Thermo Fisher)を使用して、腫瘍から単離した。単離したRNAをヌクレアーゼを含まない水(NFW)中に再懸濁させた。
【0279】
RT−qPCR
cDNAを調製するために、最初に100ngの全RNAを、NFW中最終体積が12.5μlのRandom Hexamers(Qiagen;最終濃度 2μM)と混合し、70℃で5分間変性させ、直ちに氷上で冷却した。次に、5×RT緩衝液(Promega)4μl、25mMのdNTP(Promega)0.4μl、200U/μLのMMLV RT酵素(Promega)1μl、40U/μLのRNAse阻害剤(Promega)0.5μL及びNFW1.6μLからなるcDNA合成ミックス7.5μlを添加した。以下のcDNA合成プロトコールを使用した:
1. 10分 25℃
2. 60分 37℃
3. 5分 85℃
4. 無限 4℃
【0280】
単回のqPCR反応のために、以下のミックスを調製した:
1. cDNA 1μL
2. フォワードプライマー(250μM) 0.05μL
3. リバースプライマー(250μM) 0.05μL
4. NFW 8.9μL
5. SYBR Green(Bio−Rad) 10μL
【0281】
以下のqPCRプロトコールを使用した:
1. 1サイクル:5分 95℃
2. 40サイクル:15秒 95℃+30秒 60℃
【0282】
各試料を、CFX96リアルタイムqPCR機器(Bio−Rad)で、技術的に三連として分析した。HPRT1の発現を2−(CtHPRT1 − GEOMEAN(CtUBC;CtGUSB))を使用して算出した。qPCRで使用したプライマーを以下に示す:
【0283】
【表3】
【0284】
腫瘍成長阻害(TGI)効果の決定:
TGI効果を決定するために、T/C(腫瘍/対照)比を、各群の個々のマウスに対して、TV(腫瘍体積)の相対的パーセンテージ増加を算出し(基準点として無作為化の日のTV)、次いで、処置群に関するTVの群のメジアンの相対的増加を、PBS群のもので除すことによって決定した。各処置群内のはずれ値(個々のTVに関する)を、式Q1−1.5×IQR(下限)とQ3+1.5×IQR(上限)を使用して決定した。
【0285】
統計分析:
統計分析をGraphpad Prism 7を使用して実施した。両側、ノンパラメトリックMann−Whitney検定を使用して、相対的腫瘍体積の差を算出した(「X」日目のTVを無作為化の日のTVで除した)。すべての統計検定で、検定項目の効果をPBS群と比較した。p値<0.05を統計的に有意とみなした。
【0286】
この発明で使用されるすべてのmiRNA及びsiRNA分子、例えば、miR−193a−3p、miR−7−5p、及びHPRT1 siRNAなどでは、パッセンジャー鎖とガイド鎖が、Oligopilot 400オリゴヌクレオチド合成機などの市販の合成機を使用して、固相合成によって化学的に合成される。一本鎖を製造するために使用されるプロセスは、si/miRNAオリゴヌクレオチドを生成するために、産業において通常使用される。合成後、オリゴヌクレオチドの一本鎖が固体支持体から切断され、脱保護される。粗製のオリゴヌクレオチドの一本鎖は、HPLCを使用して精製される。その後、一本鎖は脱塩され、濃縮され、アニーリングされ、凍結乾燥される。
【0287】
腫瘍試料に関するFACS分析
新たに単離した同所性4T1腫瘍を、最小腫瘍体積(TV)の300mmに達した際に、miRNA−193a処置後5日目(1週目)と12日目(2週目)に、FACS分析のために調製した。腫瘍試料を、Miltenyiからのマウス腫瘍分解キット(カタログ番号130−096−730)を使用して消化した。腫瘍細胞消化後に、1μg/mlのFc−Block(Mouse BD Fc Block(商標) カタログ番号553141)を含む200μlの染色緩衝液中に、細胞を再懸濁させ、暗所で4℃にて15分間インキュベートした。様々なマーカー(CD45、CD3、CD4、CD8、FoxP3、CD335、F4/80、CD11b、Gr−1、CD73、LAG3/CD223、IL−2、IFN−r、PD−1、L/D染料)がFACS分析のために使用されている。IL−2、IFN−r及びLAG3を除くすべてのマーカーのための抗体混合物を、各試料用にFcブロッキング緩衝液中で希釈し、暗所で、氷上にて30分間染色した。次いで、2mlの氷冷PBSを各チューブに添加することによって、細胞を穏やかに洗浄した。各チューブを300gで5分間遠心分離し、上清を廃棄した。細胞内マーカー(IL−2、IFN−r及びLAG3)を検出するために、消化された細胞の刺激を実施した。そうするために、BD GolgiPlug(商標)を含む白血球活性化カクテルを使用した。水浴中でカクテルを37℃で急速に解凍し、1mLの細胞培養物(例えば、約10細胞/mL)毎に、2μLのカクテルを添加し、しっかり混合した。刺激するために、細胞培養ミックスを37℃の加湿したCOインキュベーターに4〜6時間置いた。次いで、細胞を採取し、FACS染色緩衝液で洗浄した。染色のために、細胞ペレットをパルスボルテックスで再懸濁させ、200ulの調製したFixation/Permeabilizationを各試料に添加した。試料を、暗所で、RTにて10分間インキュベートした。次いで、1mlの1×透過緩衝液(蒸留したHOで希釈した10×透過緩衝液から作製した)を添加することによって、試料を2回洗浄し、続いて遠心分離し、上清をデカントし、各試料を、1×透過緩衝液中のFoxP3、IFN−r及びIL−2を含有する抗体カクテルと共にインキュベートし、暗所で室温にて30分間インキュベートした。最後に、細胞を150μlの染色緩衝液に再懸濁させ、血球計算機で解析した。Kaluzaフローサイトメトリーソフトウェア(Beckman Coulterから)によってデータを解析した。
【0288】
T細胞枯渇及び全血に関するFACS分析
すべての場合に、モノクローナル抗体を、リン酸緩衝生理食塩水200μl中で、腹腔内注射によりマウスに送達した。枯渇及び中和実験のために、CD4(クローンGK1.5)とCD8(クローン2.43)抗体を同時に使用した。枯渇又は中和は、腫瘍細胞接種の1週間前に開始した。CD4+及びCD8+T細胞枯渇のために、250μgの示された抗体を、最初の週にQOD×3のスケジュールで、次いで、Q3Dのスケジュールでさらに3週間送達した。所望のT細胞集団(複数可)の枯渇を、フローサイトメトリーによって全血で確認した(データは示さず)。100μLの全血を、腫瘍細胞接種後0日目と14日目に、動物毎に採血した(0日目=QOD×3の24時間後、14日目:QOD×3とQ3Dを2週間の24時間後)。次いで、抗体と混合した。穏やかなボルテックスの後に、ミックスを、暗所で、室温(RT)にて30分間インキュベートした。2mlの1×FACS溶解緩衝液を溶液に添加し、RTで10分間インキュベートした。次いで、溶液ミックスを5分間遠心分離し、上清を除去した。最後に、細胞を、150μlの染色緩衝液に再懸濁させ、血球計算機で解析した。BD Biosciencesからの抗CD3を除き、すべてのフローサイトメトリー抗体(抗−CD45−PerCP−cy55(クローン:30−F11、抗i−CD3−FITC(クローン:17A2)、抗−CD4−APC(クローン:RM4−4)、抗−CD8−PE(クローン:53−6.7))をBiolegendから購入した。(QOD×3:1日置きに3日間、Q3D:3日置き(月曜日〜木曜日))。
【0289】
養子T細胞の移入
生存マウス由来の養子CD3+ T細胞のナイーブマウスへの移入を、脾臓、補助、上腕、及び鼠径リンパ節切除後に実施した。細胞懸濁液を示した器官とプールから作製した。次いで、製造業者のプロトコール(Miltenyi Biotech)に従って、CD3+ T細胞を磁性ビーズを使用してプールから単離した。マウス1頭当たり1×107のCD3+ T細胞を静脈内に注射した。
【0290】
MTSアッセイ
がん細胞型に応じて、3000〜6000個の細胞を96ウェルプレートに播種した。細胞が付着した後、これらを異なる濃度のmiRNA−193aでトランスフェクトし、異なる時点で生存能を測定した。CellTiter 96 AQueous One Solution Cell Proliferation Assay(Promega)を使用して生存能の測定を実施した。20μLのMTS試薬を96ウェルプレートの各ウェルの100μLの培地に添加し、37℃で2時間インキュベートした。96ウェルプレートリーダーで各試料について、490nMで吸光度を測定した。
【0291】
カスパーゼGLO カスパーゼ3/7アッセイ(アポトーシスアッセイ)
がん細胞型に応じて、3000〜6000個の細胞を96ウェルプレートに播種した。細胞が付着した後、これらを異なる濃度のmiRNA−193aでトランスフェクトし、異なる時点でアポトーシス誘導を測定した。このアッセイは、Promegaのキットを使用して実施した。100μLのカスパーゼ試薬を96ウェルプレートの各ウェルの100μLの培地に添加し、暗所で、室温にて2時間インキュベートした。蛍光プレートリーダーで蛍光シグナルを読み取った。
【0292】
ボイデンチャンバーアッセイ
細胞の移動能をチェックするために、0.8μm孔径の膜(BD falcon)によって分離された2つの培地を充填した区画のチャンバーに基づくボイデンチャンバーアッセイを実施した。このアッセイでは、細胞型に応じて、60,000〜120,000個の細胞を、無血清培地中の膜の上の区画に播種し、膜の孔を通って、培地中に血清が存在する下の区画に移動させた。血清は、化学誘因物質として作用する。適当なインキュベーション時間の後、2つの区画の間の膜を固定し、染色して、各膜から6つの異なる画像を得た。移動性細胞の数を、Image J 分析を使用して計数した。
【0293】
核画像化(細胞周期プロファイルを測定する)
がん細胞型に応じて、3000〜6000個の細胞を96ウェルプレートに播種した。細胞が付着した後、これらを異なる濃度のmiRNA−193aでトランスフェクトし、異なる時点で細胞周期プロファイルを測定した。選択した時点で、培地をウェルから吸い取り、DNA染色溶液(Hoescht 33342/Saponin/PFA)を各ウェルに添加し、37℃で2時間インキュベートした。次いで、Thermo CellInsiteを使用して細胞の画像を得て、ここで、核を特定し、核強度を測定した。プログラムRを使用して核強度を分析し、DNA含量に基づいて細胞周期(G0/G1、S、G2/M)の異なる相を決定した。
【0294】
アネキシンV/ヨウ化プロピジウムアポトーシスアッセイ(フローサイトメトリー)
アポトーシスを受けている細胞を特異的に検出するために、FITC Annexin V アポトーシス検出キット(BD pharmingen)を使用した。がん細胞型に応じて、異なる数の細胞を6ウェルプレートに播種し、測定の時点で約70%のコンフルエンシーを有した。細胞が付着した後、これらを異なる濃度のmiRNA−193aでトランスフェクトし、製造業者のプロトコールに従って、異なる時点でアポトーシスアッセイを測定した。このアッセイで、本発明者らは、細胞周期のSubG1相を示すアポトーシス細胞のパーセンテージを検出した。
【0295】
3’UTRルシフェラーゼアッセイ
NT5E(CD73)の3’非翻訳領域(UTR)を含有するホタルルシフェラーゼレポーター構築物を、10nMのmiRNA−193a−3p又はスクランブル対照と共にHela細胞においてトランスフェクトした。細胞抽出物をトランスフェクションの24時間後に調製し、Dual Luciferase Reporter Assay System(Promega)を使用して、ルシフェラーゼ活性を測定した。3’UTRがmiRNAの標的である場合、miRNAは3’UTRと相互作用し、より低いルシフェラーゼシグナルをもたらす。
【0296】
ウエスタンブロット
およそ1×10個の細胞を採取し、免疫沈降RIPA溶解緩衝液中に溶解させ、ライセートをPVDF膜上にブロッティングした。一次抗体で膜を終夜プローブし、結合した抗体をHRP連結二次抗体(Cell−Signalling)を使用して可視化した。ウエスタンブロットに使用した抗体は、Cell Signalling Technologyからの抗NT5E(D7F9A)、及びSanta Cruzからの抗αチューブリンを含んでいた。αチューブリンをウエスタンブロット実験のローディング対照として使用した。
【0297】
マラカイトグリーンホスフェートアッセイ
2000個のA2058黒色腫細胞を、96ウェルプレートのウェル毎に播種した。播種の24時間後に、細胞を異なる濃度のmiRNA−193a−3p、スクランブル対照、対照としてのsiNT5E及びsiPoolでトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間と48時間後に、miRNA−193a−3pの標的遺伝子としてのCD39(ENTPD1)及びCD73(NT5E)を阻害した後、マラカイトグリーンホスフェートアッセイ(Sigma Aldrich)を使用して、ヌクレオシド三リン酸ATPからのリン酸の遊離を測定した。反応からの急速な色素形成を、プレートリーダー(600〜660nm)で都合よく測定することができる。
【0298】
アデノシンアッセイ
4000個のA2058黒色腫細胞を、96ウェルプレートのウェル毎に播種した。播種の4時間後に、細胞を異なる濃度のmiRNA−193a−3p、スクランブル対照、対照としてのsiNT5E及びsiPoolでトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後に、細胞を500μMのAMPで処理し、処理の24時間後に、アデノシン測定キット(BioVision)からのステップに従って、アデノシン測定を実施した。
【0299】
RNAシーケンシングのための細胞調製
6つのヒトがん細胞株を適当な培地で培養し(表3)、Lipofectamine RNAiMAX(Thermofisher)を使用する10nMのmiRNA−193a−3p又は偽によるトランスフェクションの24時間前に、6ウェルプレートに播種した。トランスフェクションの16時間後に試薬を吸い取り、新たな6ウェルプレートに細胞を継代した。トランスフェクションの24時間後に培地を吸い取り、プレートを−80℃で保存した。各細胞株について、3つの独立した複製を実施した。
【0300】
【表4】
【0301】
RNAシーケンシングのためのRNA単離
miRNeasy Mini kit(Qiagen)を使用してRNAを単離した。手順は、オンカラムDNase処理を含んだ。NanodropOneでRNA濃度を測定した。150ngのそれぞれ独立した複製をプールし、450ngの試料(表)をGenomeScan BV(オランダ、ライデン)に提出した。
【0302】
【表5】
【0303】
RNAシーケンシングの手順
ポリA濃縮を実施し、続いて、GenomeScan BVでIllumina NovaSeq 6000を使用して、次世代RNAシーケンシングを実施した。データ処理ワークフローは、生データ品質管理、アダプタートリミング、及び短いリードのアラインメントを含んだ。参照GRCh37.75.dna.primary_assemblyを各試料に対するリードのアラインメントに使用した。アラインメントファイルにマッピングした位置に基づいて、どの程度の頻度でリードが転写物にマッピングされたかを決定した(特徴集計)。集計をカウントファイルに保存し、下流RNA−Seq示差発現分析のためのインプットとした。
【0304】
RNAシーケンシングのためのデータ解析
GenomeScan BVによって設定された短いリードデータに関して、示差発現分析を実施した。リード集計をR platform v3.4.4内の統計パッケージであるDESeqパッケージ v1.30.0にローディングした。試料サイズが小さく、過剰に分散したRNA−Seqデータに関して、2つの条件(偽対miRNA−193a−3p)の間の示差発現遺伝子を見つけるために、DESeqを特異的に開発した。示差発現比較の群分けを表に示す。
【0305】
【表6】
【0306】
実施例4.1:subqヒトA2058黒色腫腫瘍を有するマウスにおけるLNPの有効性の比較
4〜6週齢の雌の胸腺欠損ヌードマウス(Crl:NU(NCr)−Foxn1nu; Charles River)に、50%のマトリゲル中1×107個のA2058細胞を、脇腹に、片側性に皮下注射した(マウス1頭当たり0.2mL)。無作為化の時点で、TVは134.5〜538.7mm3の範囲であった(メジアン213.4、IQR178.3〜265.9)。体重とTV(カリパス測定)を1週間に3回決定した。
【0307】
無作為化後、マウスは全部で3回のi.v.注射を受け、それぞれ3日連続で投与した(QD×3)。投与スキームについて、表6を参照されたい。QD×3=1日当たり1回の注射を3日連続。
【0308】
【表7】
【0309】
最終投与後47〜49時間に腫瘍を回収した。最初に、イソフルランを使用してマウスに麻酔し、次いで、頸椎脱臼によって屠殺した。腫瘍を液体窒素中で急速に凍結させ、−80℃で保存した。図1は、3mg/kgのsiHPRT1の3日連続注射の最終注射の47〜49時間後の、subqヒトA2058黒色腫腫瘍におけるHPRT1のmRNA発現を示す。
【0310】
結論:
本発明によるナノ粒子は、subq腫瘍へのsiHPRT1の機能的送達を媒介し、一方、NOV340は媒介しなかった(図1)。
【0311】
実施例4.2:subqヒトA2058黒色腫腫瘍を有するマウスにおけるジアミノ脂質ナノ粒子中で製剤化したmiRNA−193aの腫瘍成長阻害効果
4〜6週齢の雌の胸腺欠損ヌードマウス(Crl:NU(NCr)−Foxn1nu; Charles River)に、50%のマトリゲル中1×107個のA2058細胞を、脇腹に、片側性に皮下注射した(マウス1頭当たり0.2mL)。無作為化の時点で、TV(腫瘍体積)は139.4〜245.5mm3の範囲であった(メジアン161.3、IQR=149.9〜175.1)。体重とTV(カリパス測定)を1週間に3回決定した。
【0312】
無作為化後、マウスは、最初の週に全部で5日連続のi.v.注射を受け、その後、BIQ維持投与を受けた。投与スキームについて、表7を参照されたい。*QD×5=1日当たり1回の注射を5日連続;BIW=1週間に2回。
【0313】
【表8】
【0314】
処置開始の12日後の相対的腫瘍体積を図12に表す。この段階で、本発明による組成物で処置した群で、0.44のT/Cが観察された。本発明者らは、研究のリマインダーの間のBIW維持投与が、有意なTGI効果を支持するのに不十分であったことに気付いた。図2は、処置開始の12日後の相対的腫瘍体積を示し、この図では、miR−193aは、脂質ナノ粒子製剤中のmiR−193a−3pを指す。3mg/kgのジアミノ脂質ナノ粒子中で製剤化したmiRNA−193aで、1週目に5日連続で処置され、続いて、週に2回注射された(月曜日/木曜日)subqヒトA2058黒色腫腫瘍を有するマウス。
【0315】
結論:
本発明によるナノ粒子中で製剤化したmiRNA−193aは、ヒトA2058黒色腫腫瘍のsubqマウスモデルにおいて有意なTGI効果を媒介した。
【0316】
実施例4.3:同所性ヒトHep3b肝細胞癌腫瘍を有するマウスにおけるジアミノ脂質ナノ粒子中で製剤化したmiRNA−193a又はmiRNAー7又はNOV340の腫瘍成長阻害効果
7〜8週齢の雌のSCID/Beigeマウス(Shanghai Lingchang Bio−Technology Co. Ltd、中国、上海)に、subq成長Hep3b腫瘍の単一の2×2×2mm片を左の肝葉に同所的に移植した。21日目のAFPレベルに基づいてマウスを無作為化した。無作為化の時点で、AFPレベル(血漿1ml当たりのng)は1019〜19779ng/mlの範囲であった(メジアン 5203、IQR=2690〜9498)。処置を22日目に開始し、3週間続けた(投与スキームについては表8を参照されたい)。AFPを1週間に1回測定し(合計4回)、BWを1週間に2回測定した。研究の終了時に、腫瘍重量も決定した。QD×3、QD×5=1日当たり1回の注射を3日又は5日連続;BIW=1週間に2回;BID=1日に2回;po=経口。
【0317】
【表9】
【0318】
最終的な屠殺後に決定した、42日目の血漿中AFPレベルと腫瘍重量を図3に表す。
【0319】
結論:
ジアミノ脂質ナノ粒子中で製剤化したmiR−193aは、ヒトHep3b HCC(肝細胞癌)腫瘍の同所性マウスモデルにおいて有意なTGI効果を媒介したが、ジアミノ脂質ナノ粒子中で製剤化したmiR−7又はNOV340では、それぞれ、非常に弱い効果を示すか又は効果を示さなかった。
【0320】
実施例4.4:乳房脂肪パッドに移植した4T1三重陰性乳がん腫瘍の同系マウスモデルにおけるジアミノ脂質ナノ粒子中で製剤化したmiRNA−193aの腫瘍成長阻害効果及び長期免疫
6〜8週齢の雌のBALB/c マウス(Shanghai Lingchang Bio−Technology Co. Ltd、中国、上海)に、PBS中3×105個の4T1マウス腫瘍細胞(マウス1頭当たりの0.1mL)を乳房脂肪パッドに注射した。無作為化の時点で、TVは、69.9〜173.9mm3の範囲であった(メジアン 105.7、IQR=100.7〜125.4)。体重とTV(カリパス測定)は、1週間に2〜3回決定した。
【0321】
無作為化後(腫瘍接種後9日目)に、マウスは、異なる投与レジメンで異なる処置を受けた(投与スキームについては表9を参照されたい)。すべての群で、最初の週と2番目の週に、2回目のmiRNA−193a注射の48時間後に、4頭のマウスを屠殺した。接種後20日目に、原発腫瘍を乳房脂肪パッドから手術により除去した。3日間の回復期間後、63日目まで、さらに6週間処置を再開した。(遠位)腫瘍の再成長を、BWに加えてモニタリングし、エンドポイントに達したらマウスを屠殺した。
【0322】
4T1細胞に対してmiRNA−193aで処置したマウスの長期免疫を調査するために、接種後75日目に、miRNA−193aを処置したマウスと8頭のナイーブ(腫瘍を有さない)マウスに、PBS中3×105個の4T1マウス腫瘍細胞(マウス1頭当たり0.1mL)の右脇腹前方への皮下注射を再負荷した。TVとBWを3週間モニタリングした。次いで、他の細胞型に対してmiRNA−193aで処置したマウスの免疫化状態を調査するために、101日目に、miRNA−193aを処置したマウスと8頭のナイーブ(腫瘍を有さない)マウスに、PBS中H22(マウスの肝臓腫瘍細胞)細胞(マウス1頭当たり0.1mL)の右脇腹下部への皮下注射を再負荷した。
【0323】
【表10】
【0324】
図4は、処置開始の1週間後(A)と2週間後(B)のCD8+T細胞/Treg細胞の比を示す。miRNA−193a処置により、免疫抑制から免疫刺激性4T1腫瘍微小環境へのシフトがもたらされた(CD8+T細胞/Treg細胞>miRNA−193a処置開始の1、2週間後)。
【0325】
図5は、CD45+腫瘍細胞集団における免疫細胞及び細胞内サイトカインのパーセンテージを示す。1週間後、miRNA−193a処置により、T細胞機能の有意な増加がもたらされ(IFNγ及びIL−2の産生)、調節性T細胞集団の有意な減少がもたらされた(FOXP3+/LAG3+)。2週間後、miRNA−193a処理により、T細胞機能(IFNγ)の穏やかな誘導と共に、T細胞出現頻度(CD8+)の有意な増加がもたらされ、調節性T細胞集団の有意な減少がもたらされた(FOXP3+/LAG3+)。
【0326】
図6は、免疫細胞におけるCD73(NT5E)発現レベルのパーセンテージを示す。miRNA−193a処置の際に、CD73発現レベルは、免疫細胞において下方調節される。
【0327】
結論では、miRNA−193a処置により、1週目にT細胞の機能を高め、2週目にT細胞の出現頻度を誘導することによって、免疫抑制から免疫刺激性4T1腫瘍微小環境へのシフトがもたらされた。このがん免疫プロファイルは、miRNA−193aがコールド腫瘍微小環境をホット腫瘍微小環境に転じることができることを示す。
【0328】
図7は、4T1腫瘍切除後の原発腫瘍再成長を示すマウスのパーセンテージを示す。マウスに、乳房脂肪パッドにおける4T1細胞を注射し、細胞注射の1週間後に、週2回の処置(i.v.)を開始し、細胞注射後20日目に、原発腫瘍を除去した。原発腫瘍の除去後、10mg/kgのジアミノ脂質ナノ粒子中で製剤化したmiR−193aで、週に2回のスケジュールでさらに6週間マウスを処置し、PBS又は抗PD1で処置した、又は組合せで処置したマウスと比較した。図8は、4T1腫瘍切除後の原発腫瘍再成長を有する個々のマウスに関する結果を示す。
【0329】
結論
ジアミノ脂質ナノ粒子中で製剤化したmiRNA−193aによる処置によって、腫瘍切除後の腫瘍再成長が低減した。
【0330】
図9は、4T1腫瘍切除後に原発腫瘍再成長を示すマウスのパーセンテージを示す(66日目)。図10は、生存しているmiRNA−193aで処置したマウスが、4T1細胞を再負荷された場合の結果を示す。図11は、4T1細胞を再負荷した場合に、ナイーブマウスと比較して腫瘍取込みを示した3頭のmiRNA−196aで処置したマウスの詳細な腫瘍体積を示す(図10から)。
【0331】
結論
ジアミノ脂質ナノ粒子中で製剤化したmiRNA−193aによる処置によって、腫瘍切除後と4T1腫瘍の再負荷後の両方で腫瘍再成長が低減し、マウスの生存にもプラスの影響を及ぼした。予想通り、再移植したマウス4T1細胞は、ナイーブ動物においてsubq腫瘍を形成することができた。miRNA−193aで処置した動物における腫瘍取込み/成長の顕著な防止は、4T1細胞に対する長期免疫化を強く示唆している。
【0332】
図12は、生存しているmiRNA−193aで処置したマウスが、処置終了後101日目、38日目にH22細胞を再負荷される方法を示し、H22細胞を負荷したナイーブマウスと比較した腫瘍体積を示す。H22細胞を再負荷した際に、ナイーブマウスと比較して、腫瘍取込み(100%)を示したmiRNA−193aで処置したマウスの詳細な腫瘍体積(miRNA−193aで処置した動物のすべてで、1週間後に、顕著な時間依存的腫瘍退縮を伴う)。
【0333】
結論
予想通り、移植したマウスH22細胞は、ナイーブ動物においてsubq腫瘍を形成することができた。効率的な(100%)腫瘍取込みがmiRNA−196aで処置したマウスにおいて起こったが、H22腫瘍成長の迅速な阻害が見られ、時間依存的退縮がもたらされた。このことは、関連しないH22細胞に対する長期免疫化を強く示唆する(交差抗原反応)。
【0334】
全体的に、ジアミノ脂質ナノ粒子中で製剤化したmiRNA−193aによる処置は:
腫瘍切除後の腫瘍再成長を低減し、マウスの生存にプラスの影響を及ぼした
免疫抑制から免疫刺激性4T1腫瘍微小環境へのシフトがもたらされた
miRNA−193aで処置した動物における腫瘍取込み/成長の顕著な防止は、4T1細胞に対する長期免疫化を強く示唆する(CD8+T細胞/Treg細胞>1)
効率的な(100%)腫瘍取込みがmiRNA−193aで処置した動物において起こるが、H22腫瘍成長の迅速な阻害が、時間依存的退縮をもたらし、関連しないH22細胞に対する長期免疫化を示唆する(交差抗原「ワクチン接種」)。
【0335】
実施例4.5:subqヒトA2058黒色腫腫瘍を有するマウスにおける異なる濃度の、ジアミノナノ粒子中で製剤化したmiRNA−193aの腫瘍成長阻害効果
6〜8週齢の雌のBALB/cヌードマウス(Shanghai Lingchang Bio−Technology Co. Ltd、中国、上海)に PBS中5×106個のA2058腫瘍細胞を、右脇腹に、片側性に皮下注射した(マウス1頭当たり0.1mL)。無作為化の時点で、TVは、50.3〜156.3mm3の範囲であった(メジアン 104.8、IQR=91.9〜127.1)。無作為化後、マウスは、異なる投与レジメンで異なるmiRNA−193a投与濃度を受けた(投与スキームについては表10を参照されたい)。BRAF阻害剤であるベムラフェニブも含まれた。体重とTV(カリパス測定)を1週間に3回決定した。*QD×3、QD×4=1日当たり1回の注射を3日又は4日連続;BIW=1週間に2回;BID=1日に2回。Po=経口。
【0336】
【表11】
【0337】
図13は、処置開始後21日目の相対的腫瘍体積を示す。subqヒトA2058黒色腫腫瘍を有するマウスを、異なる用量及び異なるレジメンの、ジアミノ脂質ナノ粒子中で製剤化したmiRNA−193aで、又はベムラフェニブで処置した。
【0338】
結論:
6.7mg/kgの本発明によるナノ粒子中で製剤化したmiR−193aをQD×3で、腫瘍成長の有意な低減が観察されたが、他の投与レジメンでは弱い傾向しか示されなかった。
【0339】
実施例4.6:異なる時点での同所性4T1マウス乳がん同系モデルにおけるmiRNA−193a処置のPD効果を調査すること
6〜8週齢の雌のBALB/cマウス(Shanghai Lingchang Bio−Technology Co. Ltd、中国、上海)に、PBS中3×105個の4T1マウス腫瘍細胞(マウス1頭当たりの0.1mL)を乳房脂肪パッドに注射した。無作為化の時点で、腫瘍体積(TV)は、252.30〜370.45mm3の範囲であった。
【0340】
無作為化後、マウスは、類似する投与レジメンで類似する処置を受けた(表11を参照されたい)。所定の時点でマウスを屠殺した(表11を参照されたい)。各マウスからの腫瘍を回収し、液体窒素中で急速に凍結させ、次いで、−80℃で保存した。
【0341】
【表12】
【0342】
miRNA−193aの標的遺伝子であることが判明したいくつかの重要な遺伝子mRNA発現レベルに関するmiRNA−193aの効果を調査するために(薬力学的効果)、qPCR及び上記プライマーを使用して、腫瘍における異なる時点での発現レベルを定量した。評価した遺伝子には、K−RAS、MCL1、ENTPD1(CD39)及びTIM−3が含まれた。これらの標的遺伝子の役割及び生物学的重要性は、表12において明白に議論されている。結果を図14に示す。
【0343】
【表13】
【0344】
図14は、10mg/kgのi.v.注射をQD×2(1日に1回の注射を2日間連続で)後の経時的な腫瘍におけるmiRNA−193a標的遺伝子の発現レベルを示す。同所性4T1腫瘍を有するマウスを同様に処置し、異なる時点での薬力学分析のために、腫瘍を除去した(表11を参照されたい)。個々の腫瘍発現値を表す。様々な標的遺伝子が、異なる時点で有意に下方調節される。
【0345】
結論
QD×2のスケジュールで、10mg/kgを投与したmiRNA−193a処置により、様々な時点でのアポトーシス及び免疫経路に関与する標的mRNA発現の有意な低下がもたらされた。
【0346】
実施例4.7:使用されるin vitro設定におけるmiRNA−193aの作用方式
miRNA−193a−3pの異なる生物学的効果を種々のがん細胞系で試験した(表13を参照されたい)。このために、様々な細胞を、異なる濃度(1、3、10nM)のmiRNA−193aで処置した。すべての実験について、対照(未処置、偽及びスクランブル)を測定した。すべてのアッセイは、24時間、48時間及び72時間の時点で実施した。表13に示されているデータは、指定した時点での10nM濃度のmiRNA−193aに関する結果である。すべての結果を定量し、偽対照に対して正規化した。10nMは、細胞がその濃度で毒性作用の徴候を示さないため、in vitroでのmiRNA−193a処置に対して好適な濃度であることが示された。
【0347】
【表14】
【0348】
様々ながん細胞株におけるmiRNA−193a処置によって、MTSアッセイ又は細胞計数のいずれかによって測定した場合、経時的な細胞生存率が低下した。カスパーゼ3/7アポトーシスアッセイによって測定した場合、アポトーシス誘導が経時的に促進された。核画像化又はフローサイトメトリーを実施して、細胞周期アレストプロファイルを測定した。miRNA−193a処置は、細胞株に依存する方式で、G2/M又はSubG1細胞周期アレストプロファイルを誘導した。Huh7、H1299、及びHCT166では、指定した方法の後に、明らかな細胞周期アレストプロファイルは観察されなかったが、これらの細胞株におけるmiRNA−193a処置の後に、カスパーゼ3/7の活性化によって示され、ウエスタンブロットでparpタンパク質の切断が促進されたように(データは示さず)、アポトーシスの増加が観察された。この結果は、miRNA−193a処置がアポトーシスの誘導を介してがん細胞の生存率に影響を及ぼすことを示す。各細胞株の固有特性及び遺伝子変異状態により、アポトーシスを検出するために1つの方法を実施することが、すべての細胞株にとって常に理想的であるとは限らないことに留意されたい。いくつかのがん細胞株の細胞運動能は、ボイデンチャンバーアッセイによって評価した場合、miRNA−193a処置で有意に低下した。
【0349】
結論
がん細胞株に関するmiRNA−193a処置は、アポトーシスを誘導し、細胞周期アレストプロファイルを増加させることによって、部分的に細胞生存率を低下させる。miRNA−193a処置はまた、がん細胞の細胞運動能も低下させ、がん細胞移動の阻害の役割を示している。
【0350】
実施例4.8:miRNA−193aは、CD73及びCD39の調節によってアデノシン生成経路に部分的に影響を及ぼす
アデノシン生成は、特定の腫瘍が宿主免疫を回避するルートの1つである。CD39(ENTPD1)及びCD73(NT5E)は、ATPを脱リン酸化してアデノシンを生成する2つの細胞表面エクトエンザイムであり、よって、細胞外空間におけるアデノシン及びATPレベルを制御する。細胞外のアデノシンは、抗腫瘍T細胞免疫を制限することによって、腫瘍成長及び転移を促進することが示されている。CD73及びCD39は、ほとんどの腫瘍細胞でかなり過剰発現され、腫瘍微小環境におけるアデノシンレベルの上昇をもたらす。
【0351】
miRNA−193a−3pに対する標的として、CD73を検証するために、3’UTRアッセイを実施し、ここで、miRNA−193a−3pは、Hela細胞において過剰発現し、偽及びスクランブル対照と比較して、NT5E 3’UTR領域を含有するレポーター構築物の活性の下方調節をもたらした。一方、miRNA−193a−3pの過剰発現は、CD73 3’UTRの変異形態を含有するレポーター構築物のルシフェラーゼ活性に影響を及ぼさなかった(図15A)。これは、CD73の3’UTRがmiRNA−193a−3pと完全に相補的であり、CD73は、miRNA−193a−3pの検証済み標的の1つであることを示す。
【0352】
図15B〜Dに示されているように、miRNA−193a−3p処置は、mRNAレベル及びタンパク質レベルで、様々な細胞株のアデノシン生成経路に関与する両酵素の発現を下方調節した。アデノシン生成に関するmiRNA−193a−3pの影響を評価するために、A2058黒色腫細胞における遊アウト離ホスフェートの放出を、上清中のATP、ADP、及びAMPの脱リン酸化からのリードとして測定した。図16に例証されているように、miRNA−193a−3p処置は、遊離ホスフェート生成のレベルを低下させた。細胞培養物上清において、アデノシンの直接的な量を測定することによって、同様の結果が見られた(図16B)。さらに、A2058がん細胞移動におけるmiRNA−193aの役割を調査した。in vitroトランスウェルアッセイを使用して、本発明者らは、miRNA−193a−3p処置が、A2058細胞の移動能を有意に抑制したことを示した(図16C)。興味深いことに、siRNAに媒介されるNT5Eの枯渇は、これらの実験におけるmiRNA−193a処置の効果の表現型を複製し、miRNA−193aが、NT5Eを標的とすることによって、少なくとも部分的に、アデノシン生成と移動に関してその機能を発揮することを強く示唆した(図16A、16B及び16C)。
【0353】
結論
miRNA−193aは、NT5E及びENTPD1を標的とすることによって、部分的に免疫抑制腫瘍微小環境を下方調節すること並びにアデノシン生成の阻害に役割を果たす。miRNA−193aはまた、NT5Eを標的とすることによって、アデノシンに誘導されるがん細胞の移動能を部分的に低下させる。
【0354】
実施例4.9:最適な時点での異なる細胞株におけるmiRNA−193a処置の際の細胞周期分布
miRNA−193aの抗増殖特性を調査するために、本発明者らは、対照としての偽と比較して、異なる濃度(1nM、3nM及び10nM)及び時点(48時間、72時間及び96時間)でのmiRNA−193a−3p処置の際の異なるがん細胞の細胞周期状態をプロファイルした。miRNA−193a−3p処置は、Hep3B及びSNU449のHCC細胞株及び黒色腫A2058細胞においてG2/Mアレスト表現型をもたらし(図17)、これは、最終的には細胞死をもたらした(データは示さず)。同様の表現型がPanc1(膵臓がん細胞)及びH1975(肺がん細胞)で観察された(データは示さず)。miRNA−193a依存性G2/Mアレスト表現型に部分的に対処するために、G2/Mアレストにおいて役割を果たすいくつかのmiRNA−193a標的遺伝子の発現レベルを異なる時点で(24時間、48時間及び72時間)調査し、Hep3B、SNU449及びH1975がん細胞において下方調節されることが示された(図18)。これらの遺伝子の発現レベルは、G2/Mアレスト表現型が示される他の細胞株でも下方調節される(データは示さず)。MPP2及びSTMN1は、細胞骨格に関連し、したがって、G2/M相での細胞分裂及び増殖を調節するが、一方、YWHAZ及びCCNA2は、サイクリン依存性キナーゼに結合し、封鎖することによってG2/M相チェックポイントの調節に役割を果たす。
【0355】
結論
すべての検査したがん細胞株において、miRNA−193aの発現は、そのG2/Mアレスト表現型を誘導し、細胞分裂を停止するその効果によって、少なくとも部分的にがん細胞死を誘発する。この表現型は、細胞骨格及び細胞分裂に関連する遺伝子を阻害するマイクロRNA薬物によって部分的にもたらされる。
【0356】
実施例4.10:6つの異なるがん細胞株におけるmiRNA−193a処置の際のRNAシーケンシング、遺伝子セット濃縮分析、及び経路分析
ハイスループットRNAシーケンシングの実施は、遺伝子及びエクソンレベルで、全トランスクリプトームの包括的特徴に対して、並びに高い解像度及び有効性で、差示的に発現した遺伝子、新規遺伝子及び転写物を特定する特有の能力に関する強力なツールとなっている。しかし、今日まで、がん発症におけるその特異的役割について非常に少ないmiRNAしか特徴付けられてこなかった。したがって、本発明者らは、10nMのmiRNA−193a−3p処置の24時間後に、A540及びH460(共に肺がん)、Huh7及びHep3B(共に肝臓がん)A2058(皮膚がん)及びBT549(乳がん)を含む6つの異なるがん細胞株でmiRNA−193a−3pを過剰発現させた後、ハイスループットRNAシーケンシングを使用した。遺伝子発現を対照としての偽と比較し、本発明者らは、差示的に発現した遺伝子及びそれらの生物学的経路を特定した。
【0357】
トランスフェクションの24時間後に下方調節された遺伝子のリスト(相対的発現miRNA−193a−3p/相対的発現 偽<1)を6つの細胞株すべてについて作成した。次に、本発明者らは、少なくとも1つの細胞株で又は複数の細胞株で有意に(p<0.1に調整)下方調節された遺伝子のリストを作成した(表14)。少なくとも2つの細胞株で下方調節された遺伝子の65%超が、TargetScanツール(miRNA標的予測ツール)にしたがって、miRNA−193a−3p標的を予測した。
【0358】
【表15】
【0359】
miRNA−193aは、調整したp<0.1を考慮して、6つの細胞株すべてにおいて35の遺伝子を下方調節し(表15)、アポトーシス、細胞移動、付着、増殖、及び他の発癌機能の調節において役割を果たすことが期待される。
【0360】
【表16】
【0361】
クラスタリング及び経路分析のために、より大きな遺伝子セットを必要とした。したがって、本発明者らは、遺伝子を機能的に関連する群にクラスタリングする、DAVID機能的分類ツールのためのインプットとして少なくとも3つの細胞株(p<0.1に調整)で下方調節された242の遺伝子を使用した(表16)。この分析は、最も豊富なクラスターが、アポトーシスを調節する遺伝子を含むことを示した。他のクラスターは、血管新生、小胞体ストレス応答、走化性、タンパク質輸送、ヌクレオシド代謝、グリコシル化、発癌、創傷治癒において役割を果たす遺伝子を含有した。興味深いことに、免疫活性化を調節する遺伝子は、miRNA−193aによっても影響を受けていた。少なくとも3つのがん細胞株(p<0.1に調整)において下方調節された242の有意な遺伝子の中で、161の遺伝子が、miRNA−193aに対する標的であると、異なる標的予測プログラムによっても予測されたため、miRNA−193a−3pの文脈で対象となる。これら161の遺伝子は、ERMP1、MCL1、ZDHHC18、KIAA1147、IDS、EIF4B、ETS1、TXLNA、NT5E、WSB2、PLAUR、LRRC40、PTPLB、SLC15A1、NCEH1、IL17RD、STMN1、AIMP2、PHACTR2、GALNT1、LAMC2、SCP2、SLC26A2、LUZP1、SHMT2、UBP1、PHLDA2、ST5、ENDOD1、CGNL1、MARCKSL1、RAB11FIP5、CCND1、RUSC1、FAM168B、ZC3H7B、PPTC7、SLC39A5、ACSS2、TPP1、HYOU1、DCTN5、CRKL、WDFY2、WDR82、SLC6A12、CDK6、SULF2、TWISTNB、ATP5F1、ALDH9A1、TOR4A、NET1、RSF1、NUP50、ZMAT3、AP2M1、MPP2、ITGB3、GALNT14、SLC35D1、PPARGC1A、TBL1XR1、MSANTD3、CLSTN1、PITPNB、CECR2、KIAA1644、ARHGAP29、KIAA1191、GREB1、PIK3R1、TNFRSF21、SEPN1、SYNRG、LRP4、ZNF365、CRYAA、MED21、GNAI3、ATP5SL、UBE2L6、ANKRD13A、GCH1、NIPA1、TRIM62、USP39、HEG1、DCAF7、LRRC8A、SOX5、IRF1、MORC4、UNC119B、FAF2、SLC30A1、C1QBP、ST3GAL4、TRIB2、TBC1D5、TMPPE、MAPK8、CBX1、CADM1、CCDC28A、YWHAZ、ERAP2、STON2、AP5M1、TGFB2、CYTH1、FAM20B、DPY19L1、ARHGAP19、LPAR3、LMLN、NUDT15、PLAU、VAMP8、HHAT、AGPAT1、ATP8B2、ACPL2、SCAMP4、LAT2、OSMR、NUDT21、HPRT1、STARD7、GABPA、CDC42EP2、THBS4、ATP6V1B2、PRNP、GFPT1、MAX、KRAS、CNOT6、NUDT3、RFWD3、APPL1、SLC23A2、BOD1、PDE3A、SLC30A7、CEP41、NOTCH2、RGS2、CDC42EP4、TP53INP1、SQSTM1、DDAH1、SLC35D2、FOCAD、GPATCH11、CBL、TMEM30B、HFE、PLEKHB2、ARPC5、及びABI2である。これらの遺伝子の中で、NT5E、TNFRSF21、YWHAZ、MAPK8、PLAU、PLAUR、NOTCH2、ETS1、IL17RD、CDK6、EIF4B、及びMCL1は、細胞周期の経路、免疫活性化、及び細胞移動において、これらが重大に関与するため、特に興味深い。有意に下方調節された(P<0.05)すべての遺伝子の中で、CDK4、CDK6、CRKL、NT5E、HMGB1、IL17RD、KRAS、KIT、HDAC3、RTK2、TGFB2、TNFRSF21、PLAU、NOTCH1、NOTCH2、及びYAP1は、抗腫瘍免疫において、これらの公知の関与のために、特に興味深い。ETS1、YWHAZ、MPP2、PLAU、CDK4、CDK6、EIF4B、RAD51、CCNA2、STMN1、及びDCAF7は、細胞周期の調節において、これらが重大に関与するため、特に興味深い。
【0362】
【表17】
【0363】
結論:
6つの異なるがん細胞株におけるmiR−193aの過剰発現によって、異なる経路に影響を及ぼす種々の標的の阻害がもたらされた。6つの異なるがん細胞すべてにおいて顕著に標的化されているいくつかの共通遺伝子が存在したが、各細胞株においてのみ標的化された特有の遺伝子も存在し、状況依存的な効果が示された。少なくとも3つの異なるがん細胞株において標的とされた遺伝子に関するパスウェイエンリッチメント分析(pathway enrichment analysis)により、血管新生、小胞体ストレス応答、走化性、タンパク質輸送、ヌクレオシド代謝、グリコシル化、発癌、創傷治癒、及び免疫活性化の遺伝子サインが顕著に示される。これらのデータによって、miR−193aが腫瘍進行の重要なモジュレーターであり、複数の経路を標的とするその能力により、抗がん薬としての治療能力が魅力的であることが示唆される。
【0364】
実施例4.11:乳房脂肪パッドに移植された4T1の三重陰性乳がん腫瘍の同系マウスモデルにおけるジアミノ脂質ナノ粒子中で製剤化したmiRNA−193aのT細胞媒介性免疫
4T1がん細胞に対するmiRNA−193aで処置したマウスにおけるT細胞媒介性長期免疫を調査するために、実施例4.4に類似する条件で新たな研究を実施した。腫瘍接種の5日後に、マウスを2つの群に無作為化し、実施例4.4に類似する処置と投与レジメンを受けさせた(表9の群1〜2のみを参照されたい)。群の平均腫瘍体積が800mm3に達した場合に原発腫瘍を外科手術により除去した後に、処置を再度行い、58日目まで続けた。
【0365】
PBS対照と比較して、miRNA−193aで処置したマウスでは、腫瘍が再成長しなかったため(この研究に関しては示されていないが、類似のデータが実施例4.4に関して図8Bに示されている)、本発明者らは、4T1細胞に対するmiRNA−193aで処置したマウスの長期免疫について再調査した。そうするために、腫瘍接種後76日目に、miRNA−193aで処置したマウスとナイーブ(週齢の一致する腫瘍を有さない)マウスに、4T1マウス腫瘍細胞を再度負荷した。再負荷後の腫瘍再成長は、最大3週間追跡した。以前に見えるmiRNA−193aで処置したマウスは、ナイーブマウスと比較して、いかなる触知可能な腫瘍も生じなかった(図19)。これらのマウスにおけるT細胞媒介性長期免疫に関する本発明者らの仮定を調査するために、腫瘍細胞接種後103日目に、以前にmiRNA−193aで処置した4T1再負荷マウスとナイーブマウスを、抗CD4及び抗CD8抗体で処置してT細胞を枯渇させた(処置スケジュールに関する表17を参照されたい)。すべての群のマウス由来の血液試料に関してFACS分析して、T細胞の枯渇に関する結果を確認した。CD8+細胞は完全な枯渇を示し、CD4+細胞は部分的枯渇を示した(データは示さず)。枯渇処理の5日後に、すべての群のマウスに、4T1マウス腫瘍細胞を再度再負荷し(脇腹の前方にPBS 0.1mL中の3×105)、腫瘍成長を最長4週間追跡した。興味深いことに、ナイーブマウスと同様に、miRNA−193aで以前に処置したマウスにおけるT細胞枯渇によって4T1腫瘍成長がもたらされたが、T細胞を枯渇させなかった、miRNA−193aで以前に処置したマウスは触知可能な4T1腫瘍を示さなかった(図19)。
【0366】
miRNA−193aで以前に処置したマウスのT細胞依存性長期免疫についてさらに確認するために、週齢の一致するナイーブマウスにおいて触知可能な腫瘍を生じなかった生存マウス(表17、群2b)からのT細胞の移入を実施した。腫瘍細胞接種後133日目に、生存している動物の脾臓、補助、上腕、及び鼠径リンパ節からCD3+T細胞を採取した。T細胞をプールし、6頭の週齢の一致するナイーブマウスにi.v.移入した(0日目にマウス1頭当たり1×107のCD3+T細胞)。T細胞移入の1日後に、6頭の週齢の一致するナイーブマウス(対照群として)と6頭のCD3+T細胞を受けたマウスの右側乳房脂肪パッドにPBS中の3×105 4T1細胞(マウス1頭当たり0.1mL)を再負荷した。腫瘍成長を約5週間追跡した。興味深いことに、T細胞を受けたナイーブマウスは、対照のナイーブマウスと比較して、いかなる4T1腫瘍成長も示さなかった(図19)。
【0367】
【表18】
【0368】
結論
miRNA−193aによる処置(この場合には、ジアミノ脂質ナノ粒子中で製剤化したmiRNA−193a−3p)により、4T1腫瘍細胞による再負荷後の腫瘍成長が低減され、マウスの生存が促進された。予想通り、再移植したマウス4T1細胞によって、ナイーブ動物におけるsubq腫瘍の形成が可能となった。miRNA−193aで処置した動物における腫瘍取込み/腫瘍成長の顕著な防止によって、4T1に対する長期間の免疫化が強く示唆された。以前に、マウス4T1細胞を再移植後に生存していたmiRNA−193aで処置したマウスは、T細胞非枯渇群と比較して、T細胞枯渇の際にのみ腫瘍再成長を示した。この結果は、T細胞に依存する免疫化を強く示す。さらに、以前にmiRNA−193aで処置した再負荷後も生存していたマウスからナイーブマウスへのT細胞の移入によって、4T1腫瘍による再負荷後の腫瘍再成長が抑制された。このことにより、miRNA−193aで処置したマウスにおけるT細胞媒介性免疫が強く示唆される。
【0369】
実施例4.12:12の同系腫瘍モデルにおける原発腫瘍成長に関するジアミノ脂質ナノ粒子中で製剤化したmiRNA−193aの有効性
この研究では、ジアミノ脂質ナノ粒子中で製剤化したmiRNA−193aの効果を、12の同系腫瘍モデルのパネルにおける原発腫瘍成長に関して調査した。6〜8週齢のマウス(Shanghai Lingchang Bio−Technology Co. Ltd、中国、上海)に、がんモデルに応じて、適当な数の同系がん細胞を皮下注射した(表18を参照)。無作為化の際に、腫瘍体積(TV)はおよそ80〜120mmであった。体重とTV(カリパス測定)を1週間に2〜3回決定した。無作為化後に(0日目と示される)、マウスは、表19に示されているように、PBS又はmiR−193a(ジアミノ脂質ナノ粒子中で製剤化した)による処置を受けた。各腫瘍モデルは、表19に示したように2つの群を有した。マウスについて、最大4週間の処置後に、フォローアップを2週間行った後、安楽死させるようスケジュールを立てた。しかし、様々な処置及び実験腫瘍モデルの腫瘍成長速度に応じて、何頭かのマウスは、人道的エンドポイントで計画したよりも早く安楽死させた(1群当たりの平均TVが2000mm3に達するか又は個々のマウスが3000mm3のTVを示した場合)。H22、Pan02、B16−BL6、RM−1、B16F10、MC38、A20、及びEMT−6モデルにおいて、miRNA−193aは、腫瘍成長の阻害(TGI)を有意に誘導した。CT26、Renca、及びHepa1−6モデルでは、miR−193aによる処置は、有意なTGIを誘導しなかった(表20)。表20では、PBSと比較したmiRNA−193aによる腫瘍成長阻害(TGI)のパーセンテージを、処置群の間で最も直近の比較可能な時点でメジアン腫瘍体積を使用して計算した。
【0370】
【表19】
【0371】
【表20】
【0372】
【表21】
【0373】
結論:
miRNA−193aによる処置によって、広範囲の同系腫瘍モデル(すなわち、H22、Pan02、B16−BL6、RM−1、B16−F10、MC38、A20、及びEMT−6)における原発腫瘍に関する有意な腫瘍成長阻害がもたらされた。これらの結果によって、miRNA−193aが、広範囲の同系モデルにおける確立された皮下原発腫瘍の成長への抑制剤効果を有することが示唆された。
【0374】
実施例4.13:他の脂質ナノ粒子中で製剤化したmiRNAは同所性ヒトHep3b肝細胞癌腫瘍を有するマウスにおいて腫瘍成長を阻害しない
6〜8週齢の雌のSCID/Beigeマウス(Shanghai Lingchang Bio−Technology Co. Ltd、中国、上海)の左の肝葉中に、単一の2×2×2mmの皮下成長したHep3b腫瘍片を、同所性移植した。21日目のAFPレベルに基づいて、マウスを無作為化した。無作為化の際に、AFPレベル(血漿1ml当たりのng)は、401〜40628ng/mlの範囲であった(メジアン 2536、IQR=1037〜5510)。処置は、ソラフェニブ、ビヒクル対照、又はNO340脂質ナノ粒子に包まれた様々なmiRNA(又はスクランブルされたmiRNA対照)によるものであった(Simonson及びDas、Mini Rev Med Chem、2015年、15(6):467〜474頁、PMID:25807941)。処置は、22日目に開始し、3週間続けた(表21の投与スキーム)。AFPを、週に1回、4週間測定し、BWを1週間に2回測定した。研究の終了時に、腫瘍重量も決定した。QODx9=1日置きに1回の注射を9回;BID=1日に2回;po=経口。
【0375】
【表22】
【0376】
39日目の最終の屠殺後に、AFPレベルと腫瘍重量を決定した。NOV340ナノ粒子を含有する様々なmiRNA(miR−7;miR−34a又はmiR−193a−3p)は、AFPによって測定したヒトHep3b HCC(肝細胞癌)腫瘍の成長及び腫瘍重量を阻害しなかったが、ソラフェニブ(10mg/kg、BID)は阻害した。これらの結果を図20に表している。
【0377】
結論:
ソラフェニブと比較して、様々なNOV340ナノ粒子により製剤化したmiRNAによる処置は、腫瘍成長及び/又は重量を阻害することができない。
【0378】
参照文献:
Admadzada T. et al, Biophysical Reveiews(2018) 10:69-86
Kearsley J.H., et al, 1990, PMID: 2372483
Knop et al., 2010, doi: 10.1002/anie.200902672
Loher et al., Oncotarget (2014) DOI:10.18632/oncotarget.2405
Steffen P., Voss B., et al., Bioinformatics,22:500-503, 2006
Wong, K.K. (PMID: 19149686)
Zhou et al., 2013, DOI:10.1158/0008-5472.CAN-13-1094
EP17199997 WO2008/10558 US8691750 US9737482 US6843942
図1
図2
図3
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図8
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図16
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図18
図19A
図19B
図19C
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【配列表】
2021513508000001.app
【国際調査報告】