(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-513544(P2021-513544A)
(43)【公表日】2021年5月27日
(54)【発明の名称】コア−シェル構造のマイクロ粒子を有効成分として含む成長因子遺伝子発現増加用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 9/16 20060101AFI20210430BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20210430BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20210430BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20210430BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20210430BHJP
A61K 47/28 20060101ALI20210430BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20210430BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20210430BHJP
A61K 38/30 20060101ALI20210430BHJP
A61K 38/22 20060101ALI20210430BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20210430BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20210430BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20210430BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20210430BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20210430BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20210430BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20210430BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20210430BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20210430BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20210430BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20210430BHJP
C12N 15/18 20060101ALN20210430BHJP
【FI】
A61K9/16
A61K47/04
A61K47/06
A61K47/44
A61K47/24
A61K47/28
A61K47/26
A61K47/18
A61K38/30
A61K38/22
A61K48/00
A61P1/16
A61P9/00
A61P25/00
A61P13/12
A61P3/04
A61P19/08
A61P29/00
A61P1/00
A61P3/10
A61P27/02
C12N15/18ZNA
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】44
(21)【出願番号】特願2020-543153(P2020-543153)
(86)(22)【出願日】2019年2月12日
(85)【翻訳文提出日】2020年9月14日
(86)【国際出願番号】KR2019001708
(87)【国際公開番号】WO2019156540
(87)【国際公開日】20190815
(31)【優先権主張番号】10-2018-0017075
(32)【優先日】2018年2月12日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0014955
(32)【優先日】2019年2月8日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】520200609
【氏名又は名称】ジーアンドピー バイオサイエンス カンパニー,リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】520200610
【氏名又は名称】レヨン ファーマシューティカル カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ホ,ソン−ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ス ジン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076BB11
4C076CC09
4C076DD21
4C076DD35
4C076DD49
4C076DD52
4C076DD63
4C076DD69
4C076DD70
4C076EE51
4C084AA02
4C084AA03
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4C084BA44
4C084DB52
4C084DB58
4C084DB62
4C084ZA011
4C084ZA012
4C084ZA331
4C084ZA332
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZA701
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4C084ZA751
4C084ZA752
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4C084ZA812
4C084ZA961
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4C084ZB111
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4C084ZC211
4C084ZC212
4C084ZC351
4C084ZC352
(57)【要約】
【課題】本発明は、コア−シェル構造のマイクロ粒子を有効成分として含む成長因子遺伝子発現増加用組成物に関する。
【解決手段】本発明の成長因子遺伝子発現増加用組成物は、遺伝子と共に生体に投与される場合、共に投与される遺伝子の発現量を少なくとも30%以上増加させ得る。特に、前記組成物は、本発明に適したヒト肝細胞成長因子(Hepatocyte Growth Factor;HGF)遺伝子、ヒト肝細胞成長因子の異型体遺伝子及びその変異体遺伝子から選ばれる1種以上の遺伝子、又はヒト1型インスリン類似成長因子(Insulin like Growth Factor−1;IGF−1)遺伝子、ヒト1型インスリン類似成長因子の異型体遺伝子及びその変異体遺伝子から選ばれる1種以上の遺伝子と共に投与される場合は、前記遺伝子の発現量を少なくとも30%以上増加させ得る。前記組成物は、遺伝子治療剤と共に投与する場合、少量の遺伝子によっても治療効果を得ることができるので有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア−シェル構造のマイクロ粒子を有効成分として含む成長因子遺伝子発現増加用組成物であって、
前記コアは、生体適合性基体として、ハロゲン化炭化水素、ハロゲン化硫黄又はこれらの混合物で、前記シェルは、脂質又はその誘導体を含んで構成され、
前記成長因子遺伝子は、ヒト肝細胞成長因子(Hepatocyte Growth Factor;HGF)遺伝子、ヒト肝細胞成長因子の異型体遺伝子及びその変異体遺伝子から選ばれる1種以上の遺伝子;又はヒト1型インスリン類似成長因子(Insulin like Growth Factor−1;IGF1)遺伝子、ヒト1型インスリン類似成長因子の異型体遺伝子及びその変異体遺伝子から選ばれる1種以上の遺伝子;であることを特徴とする成長因子遺伝子発現増加用組成物。
【請求項2】
前記生体適合性基体は、ヘキサフルオロ化硫黄、オクタフルオロプロパン、ブロモクロロジフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ブロモトリフルオロメタン、クロロトリフルオロメタン、クロロペンタフルオロエタン、ジクロロテトラフルオロエタン及びその混合物から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の成長因子遺伝子発現増加用組成物。
【請求項3】
前記ハロゲン化炭化水素はペルフルオロ化炭化水素であることを特徴とする、請求項1に記載の成長因子遺伝子発現増加用組成物。
【請求項4】
前記ペルフルオロ化炭化水素は、ペルフルオロメタン、ペルフルオロエタン、ペルフルオロプロパン、ペルフルオロブタン、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロプロペン、ペルフルオロブテン、ペルフルオロブタジエン、ペルフルオロブタ−2−イン、ペルフルオロシクロブタン、ペルフルオロメチルシクロブタン、ペルフルオロジメチルシクロブタン、ペルフルオロトリメチルシクロブタン、ペルフルオロシクロペンタン、ペルフルオロメチルシクロペンタン、ペルフルオロジメチルシクロペンタン、ペルフルオロメチルシクロヘキサン、ペルフルオロメチルシクロヘキサン、ペルフルオロメチルシクロヘキサン又はその混合物であることを特徴とする、請求項3に記載の成長因子遺伝子発現増加用組成物。
【請求項5】
前記脂質は、単純脂質、リン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質、コレステロール及び陽イオン脂質からなる群から選ばれた1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の成長因子遺伝子発現増加用組成物。
【請求項6】
前記リン脂質は、ホスファチジルコリン誘導体、ホスファチジルエタノールアミン誘導体、ホスファチジルセリン誘導体、ジアセチル化リン脂質、L−α−ジオレイルホスファチジルエタノールアミン、ジオレイン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、ポリエチレングリコール化リン脂質、卵黄レシチン、大豆レシチン及び水素添加リン脂質からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項5に記載の成長因子遺伝子発現増加用組成物。
【請求項7】
前記グリセロ糖脂質は、スルホキシリボシルグリセリド、ジグリコシルジグリセリド、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド及びグリコシルジグリセリドからなる群から選ばれることを特徴とする、請求項5に記載の成長因子遺伝子発現増加用組成物。
【請求項8】
前記スフィンゴ糖脂質は、ガラクトシルセレブロシド、ラクトシルセレブロシド又はガングリオシドであることを特徴とする、請求項5に記載の成長因子遺伝子発現増加用組成物。
【請求項9】
前記陽イオン脂質は、1,2−ジオレオイル−3−トリメチルアンモニオプロパン(DOTAP)、N−(2,3−ジオレイルオキシプロパン−1−イル)−N,N,N−トリメチル塩化アンモニウム(DOTMA)、2,3−ジオレイルオキシ−N−[2−(スペルミンカルボキシアミド)エチル]−N,N−ジメチル−1−プロパンアミニウムトリフルオロ酢酸(DOSPA)、1,2−ジミリスチルオキシプロピル−3−ジメチルヒドロキシエチル臭化アンモニウム(DMRIE)、1,2−ジオレオイルオキシプロピル−3−ジエチルヒドロキシエチル臭化アンモニウム(DORIE)及び3β−[N−(N'N'−ジメチルアミノエチル)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項5に記載の成長因子遺伝子発現増加用組成物。
【請求項10】
前記組成物は、成長因子遺伝子の発現量を30%以上増加させることを特徴とする、請求項1に記載の成長因子遺伝子発現増加用組成物。
【請求項11】
請求項1の組成物;及びヒト肝細胞成長因子(Hepatocyte Growth Factor;HGF)遺伝子、ヒト肝細胞成長因子の異型体遺伝子及びその変異体遺伝子から選ばれる1種以上の遺伝子;を含む虚血性疾患、神経疾患、腎臓疾患又は肝疾患の予防又は治療用薬学組成物。
【請求項12】
前記ヒト肝細胞成長因子遺伝子は序列番号2の塩基序列からなることを特徴とする、請求項11に記載の虚血性疾患、神経疾患、腎臓疾患又は肝疾患の予防又は治療用薬学組成物。
【請求項13】
前記ヒト肝細胞成長因子の変異体遺伝子は、序列番号3〜序列番号6の塩基序列から選ばれるいずれか一つからなることを特徴とする、請求項11に記載の虚血性疾患、神経疾患、腎臓疾患又は肝疾患の予防又は治療用薬学組成物。
【請求項14】
請求項1の組成物;及びヒト1型インスリン類似成長因子(Insulin like Growth Factor−1;IGF1)遺伝子、ヒト1型インスリン類似成長因子の異型体遺伝子及びその変異体遺伝子から選ばれる1種以上の遺伝子;を含む、IGF1受容体の結合によって媒介される症状又は疾患の予防又は治療用薬学組成物。
【請求項15】
前記ヒト1型インスリン類似成長因子遺伝子は、序列番号7の塩基序列からなることを特徴とする、請求項14に記載のIGF1受容体の結合によって媒介される症状又は疾患の予防又は治療用薬学組成物。
【請求項16】
前記症状又は疾患は、低身長、肥満、体重減少、悪液質、食慾不振、神経退行性障害、線維症−関連症状、軟骨障害、骨疾患、炎症障害、腸障害、インスリン耐性、糖尿病、糖尿病性ケトアシドーシス、ラブソン・メンデンホール症侯群(Rabson−Mendenhall syndrome)、網膜症、末端肥大症(acromegaly)、線維筋性異形成症(fibromuscular hyperplasia)及び心臓障害からなる群から選ばれた1種であることを特徴とする、請求項14に記載の薬学組成物。
【請求項17】
前記低身長に対する治療が要求される個体は、インスリン類似成長因子−1欠乏症(IGFD)を有しているヒト小児個体であって、前記組成物は、ヒト小児個体でIGFDの治療に有効であることを特徴とする、請求項16に記載の薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア−シェル構造のマイクロ粒子を有効成分として含む成長因子遺伝子発現増加用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト肝細胞成長因子(Hepatocyte Growth Factor;HGF)は、中胚葉起源の各細胞から分泌されて多くの細胞に作用し、対象細胞及び環境によって多様な機能を行う(Stella,M.C.and Comoglio,P.M.,The International Journal of Biochemistry & Cell Biology,31:1357−1362(1999))。それらの機能を要約すると、第一、上皮細胞の細胞分裂を促進し、細胞の運動性を促進しながら基質(matrix)の浸透能力を増進するが、これらの各機能は、結果的に、上皮細胞が細尿管構造(tubular structure)を形成することを誘導する。第二、試験管内(in vitro)及び生体内(in vivo)のいずれにおいても内皮細胞による血管新生を促進する。第三、抗−細胞自滅(anti−apoptosis)活性を有しており、肝及び腎臓の再生と連関している。第四、発生過程中には、腎臓、卵巣、精巣の機関形成に関与する。第五、破骨細胞(osteoclast)及び造骨細胞(osteoblast)の機能を調節し、骨の生成過程を調節する。第六、赤血球造血前駆細胞(Erythropoietic progenitor cell)の成長及び分化を促進する。第七、神経の軸索発生(axon sprouting)に関与する。これらの多様な機能に基づいて、肝細胞成長因子は、多様な疾患、例えば、虚血性疾患、神経疾患、腎臓疾患及び肝疾患に対する治療剤として開発され得る。
【0003】
また、ヒト1型インスリン類似成長因子(Insulin like Growth Factor−1;IGF1)は、インスリン類似活性及びミトゲン性生物学的成長活性を有している70個のアミノ酸からなるポリペプチドホルモンである。このようなホルモンは、筋骨格系、肝、腎臓、腸、神経系組織、心臓及び肺などの多様な組織で細胞成長を強化させる。
【0004】
当該技術分野の当業者によく知られているように、IGF1の公知の潜在的な用途は、多様且つ多い方である。例えば、神経退行性症状を治療するための潜在的な治療剤としてのIGF1の用途に対して多くの研究が報告されている。例えば、Kanje et al.,Brain Res.,486:396−398(1989);Hantai et al.,J.Neurol.Sci.,129:122−126(1995);Contreras et al.,Pharmac.Exp.Therap.,274:1443−1499(1995);Di Giulio et al.,Society for Neuroscience,22:1960(1996);Di Giulio et al.,Society for Neuroscience,23:894(1997);Hsu et al.,Biochem.Mol.Med.,60(2):142−148(1997);Gorio et al.,Neuroscience,82:1029−1037(1998)を参照する。IGF1療法は、ALS、脳卒中、癲癇、パーキンソン疾患、アルツハイマー疾患、急性外傷性傷害及び外傷、老化、疾患又は傷害と関連するその他の障害などの数多くの神経症状に対して処方されている。例えば、米国登録特許第5,093,137号、第5,652,214号及び第5,703,045号;国際公開特許第1990−001483号及び第1993−002695号を参照する。
【0005】
他の多様な症状に対するIGF1療法の使用に対しては、多数の公開文献に言及されている。例えば、Schalch et al.,「Short−term metabolic effects of recombinant human insulin−like growth factor I(rhIGF−1) in type II diabetes mellitus」.Modern Concepts of Insulin−Like Growth Factors,Spencer,ed.,New York:Elsevier Science Publ.Co.pp.705−714(1991);Clemmons and Underwood,J.Clin.Endocrinol.Metab.,79(1):4−6(1994);及びLangford et al.,Eur.J.Clin.Invest.,23(9):503−516(1993)(例えば、インスリン−耐性状態及び糖尿病が言及される);O’shea et al.,Am.J.Physiol.,264:F917−F922(1993)(例えば、腎臓機能の減少が言及される)を参照する。また、米国登録特許第7,258,864号(例えば、低身長が言及される);米国登録特許第5,110,604号及び第5,427,778号(例えば、傷の治癒が言及される);米国登録特許第5,126,324号(例えば、心臓障害及び成長遅延が言及される);米国登録特許第5,368,858号(例えば、軟骨欠陥又は傷害が言及される);米国登録特許第5,543,441号及び第5,550,188号(例えば、組織増大が言及される);米国登録特許第5,686,425号(例えば、瘢痕組織、局所筋肉機能不全及び尿失禁が言及される);及び米国登録特許第5,656,598号(例えば、骨の成長が言及される)を参照する。また、国際公開特許第1991−012018号(例えば、腸の障害が言及される);国際公開特許第1992−009301号及び国際公開特許第1992−014480号(例えば、傷の治癒が言及される);国際公開特許第1993−008828号(例えば、虚血症、低酸素症又は神経退行と関連した神経損傷が言及される);国際公開特許第1994−016722号(例えば、インスリン耐性が言及される);国際公開特許第1996−002565号(例えば、骨形成の促進及び骨リモデリングの調節のためのIGF/IGFBP複合体が言及される);米国公開特許第2003−0100505号(例えば、骨粗鬆症が言及される);及び米国公開特許第2005−0043240号(例えば、肥満が言及される)を参照する。
【0006】
本発明の発明者等は、少量の遺伝子によっても治療効果を得ることができる遺伝子治療剤を開発するために研究した結果、コアがハロゲン化炭化水素及び/又はハロゲン化硫黄で、外郭シェルが脂質成分で構成されたコア−シェル構造のマイクロ粒子が前記HGF又はIGF1などの遺伝子と共に生体内に投与される場合、成長因子遺伝子の発現量を著しく増加させることを具体的に確認し、本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国登録特許第10−0562824号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする第一の課題は、コア−シェル構造のマイクロ粒子を有効成分として含む成長因子遺伝子発現増加用組成物を提供することにある。
本発明が解決しようとする第二の課題は、前記組成物を含む虚血性疾患、神経疾患、腎臓疾患又は肝疾患の予防又は治療用薬学組成物を提供することにある。
本発明が解決しようとする第三の課題は、前記組成物を含む、IGF1受容体の結合によって媒介される症状又は疾患の予防又は治療用薬学組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記のような目的を達成するために、本発明は、コア−シェル構造のマイクロ粒子を有効成分として含む成長因子遺伝子発現増加用組成物であって、前記コアは、生体適合性基体としてハロゲン化炭化水素、ハロゲン化硫黄又はこれらの混合物で、前記シェルは、脂質又はその誘導体を含んで構成され、前記成長因子遺伝子は、ヒト肝細胞成長因子(Hepatocyte Growth Factor;HGF)遺伝子、ヒト肝細胞成長因子の異型体遺伝子及びその変異体遺伝子から選ばれる1種以上の遺伝子;又はヒト1型インスリン類似成長因子(Insulin like Growth Factor−1;IGF1)遺伝子、ヒト1型インスリン類似成長因子の異型体遺伝子及びその変異体遺伝子から選ばれる1種以上の遺伝子;であることを特徴とする成長因子遺伝子発現増加用組成物を提供する。
【0010】
本発明の一実施例において、前記生体適合性基体は、ヘキサフルオロ化硫黄、オクタフルオロプロパン、ブロモクロロジフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ブロモトリフルオロメタン、クロロトリフルオロメタン、クロロペンタフルオロエタン、ジクロロテトラフルオロエタン及びその混合物から選ばれ得る。
【0011】
本発明の一実施例において、前記ハロゲン化炭化水素は、ペルフルオロ化炭化水素であり得る。
【0012】
本発明の一実施例において、前記ペルフルオロ化炭化水素は、ペルフルオロメタン、ペルフルオロエタン、ペルフルオロプロパン、ペルフルオロブタン、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロプロペン、ペルフルオロブテン、ペルフルオロブタジエン、ペルフルオロブタ−2−イン、ペルフルオロシクロブタン、ペルフルオロメチルシクロブタン、ペルフルオロジメチルシクロブタン、ペルフルオロトリメチルシクロブタン、ペルフルオロシクロペンタン、ペルフルオロメチルシクロペンタン、ペルフルオロジメチルシクロペンタン、ペルフルオロメチルシクロヘキサン、ペルフルオロメチルシクロヘキサン、ペルフルオロメチルシクロヘキサン又はその混合物であり得る。
【0013】
本発明の一実施例において、前記脂質は、単純脂質、リン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質、コレステロール及び陽イオン脂質からなる群から選ばれた1種以上であり得る。
【0014】
本発明の一実施例において、前記リン脂質は、ホスファチジルコリン誘導体、ホスファチジルエタノールアミン誘導体、ホスファチジルセリン誘導体、ジアセチル化リン脂質、L−α−ジオレイルホスファチジルエタノールアミン、ジオレイン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、ポリエチレングリコール化リン脂質、卵黄レシチン、大豆レシチン及び水素添加リン脂質からなる群から選ばれたものであり得る。
【0015】
本発明の一実施例において、前記グリセロ糖脂質は、スルホキシリボシルグリセリド、ジグリコシルジグリセリド、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド及びグリコシルジグリセリドからなる群から選ばれたものであり得る。
本発明の一実施例において、前記スフィンゴ糖脂質は、ガラクトシルセレブロシド、ラクトシルセレブロシド又はガングリオシドであり得る。
【0016】
本発明の一実施例において、前記陽イオン脂質は、1,2−ジオレオイル−3−トリメチルアンモニオプロパン(DOTAP)、N−(2,3−ジオレイルオキシプロパン−1−イル)−N,N,N−トリメチル塩化アンモニウム(DOTMA)、2,3−ジオレイルオキシ−N−[2−(スペルミンカルボキシアミド)エチル]−N,N−ジメチル−1−プロパンアミニウムトリフルオロ酢酸(DOSPA)、1,2−ジミリスチルオキシプロピル−3−ジメチルヒドロキシエチル臭化アンモニウム(DMRIE)、1,2−ジオレオイルオキシプロピル−3−ジエチルヒドロキシエチル臭化アンモニウム(DORIE)及び3β−[N−(N'N'−ジメチルアミノエチル)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)からなる群から選ばれたものであり得る。
【0017】
本発明の一実施例において、前記ヒト肝細胞成長因子の変異体遺伝子は、序列番号3〜序列番号6の塩基序列から選ばれるいずれか一つからなるものであり得る。
本発明の一実施例において、前記組成物は、成長因子遺伝子の発現量を30%以上増加させ得る。
【0018】
また、本発明は、前記組成物;及びヒト肝細胞成長因子(Hepatocyte Growth Factor;HGF)遺伝子、ヒト肝細胞成長因子の異型体遺伝子及びその変異体遺伝子から選ばれる1種以上の遺伝子;を含む虚血性疾患、神経疾患、腎臓疾患又は肝疾患の予防又は治療用薬学組成物を提供する。
【0019】
前記虚血性疾患、神経疾患、腎臓疾患又は肝疾患の予防又は治療用薬学組成物において、前記ヒト肝細胞成長因子遺伝子は、序列番号2の塩基序列からなるものであって、前記ヒト肝細胞成長因子の変異体遺伝子は、序列番号3〜序列番号6の塩基序列から選ばれるいずれか一つからなるものであり得る。
また、本発明は、前記組成物;及びヒト1型インスリン類似成長因子(Insulin like Growth Factor−1;IGF1)遺伝子、ヒト1型インスリン類似成長因子の異型体遺伝子及びその変異体遺伝子から選ばれる1種以上の遺伝子;を含む、IGF1受容体の結合によって媒介される症状又は疾患の予防又は治療用薬学組成物を提供する。
【0020】
前記IGF1受容体の結合によって媒介される症状又は疾患の予防又は治療用薬学組成物において、前記ヒト1型インスリン類似成長因子遺伝子は、序列番号7の塩基序列からなるものであり得る。
【0021】
本発明の一実施例において、前記症状又は疾患は、低身長、肥満、体重減少、悪液質、食慾不振、神経退行性障害、線維症−関連症状、軟骨障害、骨疾患、炎症障害、腸障害、インスリン耐性、糖尿病、糖尿病性ケトアシドーシス、ラブソン・メンデンホール症侯群(Rabson−Mendenhall syndrome)、網膜症、末端肥大症(acromegaly)、線維筋性異形成症(fibromuscular hyperplasia)及び心臓障害からなる群から選ばれた1種であり得る。
【0022】
本発明の一実施例において、前記低身長に対する治療が要求される個体は、インスリン類似成長因子−1欠乏症(IGFD)を有しているヒト小児個体であって、前記組成物は、ヒト小児個体でIGFDの治療に有効なものであり得る。
【発明の効果】
【0023】
本発明の成長因子遺伝子発現増加用組成物は、遺伝子(例えば、遺伝子を暗号化するポリヌクレオチド又はこれを含むベクター)と共に生体に投与される場合、成長因子遺伝子の発現量を少なくとも30%以上増加させ得る。
【0024】
特に、前記組成物は、本発明に適したヒト肝細胞成長因子(Hepatocyte Growth Factor;HGF)遺伝子、ヒト肝細胞成長因子の異型体遺伝子及びその変異体遺伝子から選ばれる1種以上の遺伝子;又はヒト1型インスリン類似成長因子(Insulin like Growth Factor−1;IGF1)遺伝子、ヒト1型インスリン類似成長因子の異型体遺伝子及びその変異体遺伝子から選ばれる1種以上の遺伝子;と共に投与される場合は、前記成長因子遺伝子の発現量を少なくとも30%以上増加させ得る。
【0025】
前記組成物は、遺伝子治療剤と共に投与する場合、少量の遺伝子によっても治療効果を得ることができるので有用である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施例に係るpGPベクターの開裂地図を示した図である。
【
図2】マウスにおいて、pGP−HGF(遺伝子のみ)、対照群の薬学組成物(HGF−JetPEI)及び実施例1に係る薬学組成物(HGF−MP1、HGF−MP2及びHGF−MP3)の投与によるHGFタンパク質の発現量を比較して示すグラフである。
【
図3】マウスにおいて、pGP−HGFX7(遺伝子のみ)、対照群の薬学組成物(HGFX7−JetPEI)及び実施例2に係る薬学組成物(HGFX7−MP1及びHGFX7−MP2)の投与によるHGFタンパク質の発現量を比較して示すグラフである。
【
図4】マウスにおいて、pGP−IGF1(遺伝子のみ)、対照群の薬学組成物(IGF1−JetPEI)及び実施例3に係る薬学組成物(IGF1−MP1、IGF1−MP2及びIGF1−MP3)の投与によるIGF1タンパク質の発現量を比較して示すグラフである。
【
図5】マウスにおいて、pGP−VEGF(遺伝子のみ)、対照群の薬学組成物(VEGF−JetPEI)及び比較例1に係る薬学組成物(VEGF−MP1及びVEGF−MP2)の投与によるVEGFタンパク質の発現量を比較して示すグラフである。
【
図6】マウスにおいて、pGP−FGF1(遺伝子のみ)及び比較例2に係る薬学組成物(FGF1−MP1及びFGF1−MP2)の投与によるFGF1タンパク質の発現量を比較して示すグラフである。
【
図7】マウスにおいて、pGP−FGF4(遺伝子のみ)及び比較例3に係る薬学組成物(FGF4−MP1及びFGF4−MP2)の投与によるFGF4タンパク質の発現量を比較して示すグラフである。
【
図8】マウスにおいて、pGP−PDGF−B(遺伝子のみ)及び比較例4に係る薬学組成物(PDGF−B−MP1及びPDGF−B−MP2)の投与によるPDGF−Bタンパク質の発現量を比較して示すグラフである。
【
図9】糖尿病で誘発された末梢神経障害(peripheral neuropathy)ラットモデルに本発明の実施例2(HGFX7−MP2)の組成物を投与し、2週経過後にPWT値が著しく上昇することを示すグラフである。
【
図10】慢性絞扼損傷(chronic constriction injury)手術によって誘発された神経障害(neuropathy)ラットモデルにおいて、実施例1(HGF1−MP2)の組成物を投与し、2週経過後にPWT値が著しく上昇することを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の一側面によると、本発明は、コア−シェル構造のマイクロ粒子を有効成分として含む成長因子遺伝子発現増加用組成物であって、前記コアは、生体適合性基体として、ハロゲン化炭化水素、ハロゲン化硫黄又はこれらの混合物で、前記シェルは、脂質又はその誘導体を含んで構成され、前記成長因子遺伝子は、ヒト肝細胞成長因子(Hepatocyte Growth Factor;HGF)遺伝子、ヒト肝細胞成長因子の異型体遺伝子及びその変異体遺伝子から選ばれる1種以上の遺伝子;又はヒト1型インスリン類似成長因子(Insulin like Growth Factor−1;IGF1)遺伝子、ヒト1型インスリン類似成長因子の異型体遺伝子及びその変異体遺伝子から選ばれる1種以上の遺伝子;であることを特徴とする成長因子遺伝子発現増加用組成物を提供する。
【0029】
<コア>
本発明の明細書において、前記「コア」は、生体適合性基体として、ハロゲン化炭化水素、ハロゲン化硫黄又はこれらの混合物からなり得る。
【0030】
前記生体適合性基体は、ヘキサフルオロ化硫黄、オクタフルオロプロパン、ブロモクロロジフルオロメタン、クロロジフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ブロモトリフルオロメタン、クロロトリフルオロメタン、クロロペンタフルオロエタン、ジクロロテトラフルオロエタン、又はその混合物であり得る。
【0031】
前記ハロゲン化炭化水素は、ペルフルオロ化炭化水素であることが好ましい。
【0032】
前記ペルフルオロ化炭化水素としては、ペルフルオロメタン、ペルフルオロエタン、ペルフルオロプロパン、ペルフルオロブタン、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロプロペン、ペルフルオロブテン、ペルフルオロブタジエン、ペルフルオロブタ−2−イン、ペルフルオロシクロブタン、ペルフルオロメチルシクロブタン、ペルフルオロジメチルシクロブタン、ペルフルオロトリメチルシクロブタン、ペルフルオロシクロペンタン、ペルフルオロメチルシクロペンタン、ペルフルオロジメチルシクロペンタン、ペルフルオロメチルシクロヘキサン、ペルフルオロメチルシクロヘキサン、ペルフルオロメチルシクロヘキサン又はその混合物を挙げることができる。
【0033】
本発明の生体適合性基体は、ヘキサフルオロ化硫黄又はペルフルオロブタンであることが好ましい。
【0034】
<シェル>
本発明の明細書において、前記「シェル」は、脂質又はその誘導体を含む成分で構成され得る。
【0035】
前記脂質は、単純脂質、リン脂質、グリセロ糖脂質、スフィンゴ糖脂質、コレステロール及び陽イオン脂質からなる群から選ばれた1種以上であり得るが、特にリン脂質であることが好ましい。
【0036】
前記リン脂質としては、ホスファチジルコリン誘導体、ホスファチジルエタノールアミン誘導体、ホスファチジルセリン誘導体、ジアセチル化リン脂質、L−α−ジオレイルホスファチジルエタノールアミン、ジオレイン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、ポリエチレングリコール化リン脂質、卵黄レシチン、大豆レシチン、水素添加リン脂質などを挙げることができる。
【0037】
前記グリセロ糖脂質としては、スルホキシリボシルグリセリド、ジグリコシルジグリセリド、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド、グリコシルジグリセリドなどを挙げることができる。
【0038】
前記スフィンゴ糖脂質としては、ガラクトシルセレブロシド、ラクトシルセレブロシド、ガングリオシドなどを挙げることができる。
【0039】
また、前記陽イオン脂質としては、1,2−ジオレオイル−3−トリメチルアンモニオプロパン(DOTAP)、N−(2,3−ジオレイルオキシプロパン−1−イル)−N,N,N−トリメチル塩化アンモニウム(DOTMA)、2,3−ジオレイルオキシ−N−[2−(スペルミンカルボキシアミド)エチル]−N,N−ジメチル−1−プロパンアミニウムトリフルオロ酢酸(DOSPA)、1,2−ジミリスチルオキシプロピル−3−ジメチルヒドロキシエチル臭化アンモニウム(DMRIE)、1,2−ジオレオイルオキシプロピル−3−ジエチルヒドロキシエチル臭化アンモニウム(DORIE)、3β−[N−(N'N'−ジメチルアミノエチル)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)などを挙げることができる。
【0040】
<マイクロ粒子>
本発明のマイクロ粒子は、コアである基体を取り囲むシェルによって安定化され、基体の周囲液体への拡散を遅延させ、その結果、マイクロ粒子間の融合を防止する。
前記マイクロ粒子は、生体内に投入される場合、標的細胞又は組織付近に到着するまでは形状を維持しているが、標的細胞又は組織付近で破壊されながら気体を噴射するようになる。このとき、噴射される気体は標的細胞の細胞膜に変化を起こし、気体の噴射力は、成長因子遺伝子が標的細胞の細胞質環境中に進入できるように促進する役割をすることができる。
【0041】
前記マイクロ粒子は、平均直径が1μm〜10μm、好ましくは2μm〜8μm、さらに好ましくは2μm〜4μmである。
【0042】
<遺伝子発現増加用組成物>
最近、基体をコアとするコア−シェルマイクロ粒子と関連して多様な研究がなされてきた。既存の各研究では、マイクロ粒子と共に超音波を照射しないと遺伝子発現増加効果が表れなかった。
【0043】
具体的に、Sang−Chol Lee et al.,Korean Circulation J 2006;36:32−38;「低周波超音波を用いた微細気泡の破壊を通じた筋肉組織への遺伝子伝達増強に対する研究」には、超音波の照射なしでルシフェラーゼ(luciferase)遺伝子−マイクロ粒子混合物のみを注入する場合は遺伝子発現増加効果が表れないという内容が開示されている。
ZP Shen et al.,Gene Therapy(2008)15,1147−1155;「Ultrasound with microbubbles enhances gene expression of plasmid DNA in the liver via intraportal delivery」には、超音波の照射しでルシフェラーゼ遺伝子−マイクロ粒子混合物のみを注入する場合は遺伝子発現増加効果が表れないという内容が開示されている。
【0044】
また、Xingsheng Li et al.,J Ultrasound Med 2008;27:453−460;「Experimental Research on Therapeutic Angiogenesis Induced by Hepatocyte Growth Factor Directed by Ultrasound−Targeted Microbubble Destruction in Rats」には、超音波の照射なしでHGF遺伝子−リポソームマイクロ粒子混合物を注入する場合は遺伝子発現増加効果が表れないという内容が開示されている。
【0045】
しかし、本発明者等は、マイクロ粒子の用途に対して研究した結果、本発明に係るマイクロ粒子をHGF又はIGF遺伝子と共に注入する場合は、特異的に超音波の照射なしでも遺伝子の発現量を著しく増加させることを確認し、本発明を完成するに至った。一方、下記の実験例で具体的に示したように、前記HGF及びIGF1以外の成長因子系列の他の遺伝子では、前記マイクロ粒子による遺伝子発現量の増加効果が表れなかった。
【0046】
本発明に係る成長因子遺伝子発現増加用組成物は、遺伝子と共に生体に投与される場合、成長因子遺伝子の発現量を少なくとも30%以上増加させ得る。
【0047】
特に、本発明に係る成長因子遺伝子発現増加用組成物は、本発明に適したヒト肝細胞成長因子(Hepatocyte Growth Factor;HGF)遺伝子、ヒト肝細胞成長因子の異型体遺伝子及びその変異体遺伝子から選ばれる1種以上の遺伝子、又はヒト1型インスリン類似成長因子(Insulin like Growth Factor−1;IGF1)遺伝子、ヒト1型インスリン類似成長因子の異型体遺伝子及びその変異体遺伝子から選ばれる1種以上の遺伝子と共に投与される場合は、前記遺伝子の発現量を少なくとも30%以上、好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上、最も好ましくは100%以上増加させ得る。
【0048】
下記の実施例において、本発明の遺伝子発現増加用組成物は、HGF、HGFX7又はIGF1遺伝子と共にマウスに投与する場合、前記HGF、HGFX7又はIGF1遺伝子の発現量を著しく増加させることを確認した。さらに具体的には、HGFは45%以上、HGFX7は120%以上、IGF1は35%以上発現量を増加させることを確認した。一方、VEGF、FGF1、FGF4又はPDGF−Bの場合は、本発明の遺伝子発現増加用組成物と共にマウスに投与したとしても遺伝子発現増加率が有意に増加しないことを確認した。具体的には、VEGFは最大16%、FGF4は最大14%、PDGF−Bは最大4%程度にのみ発現量が増加し、FGF1の場合は、むしろ発現量が40%以上減少した。
【0049】
すなわち、本発明の遺伝子発現増加用組成物は、成長因子遺伝子のうちヒト肝細胞成長因子(HGF)、その異型体及びその変異体から選ばれる1種以上の遺伝子;又はヒト1型インスリン類似成長因子(IGF1)、その異型体及びその変異体から選ばれる1種以上の遺伝子;と共に投与される場合にのみ特異的に遺伝子の発現量を増加させる効果を有すると判断される。
【0050】
前記組成物は、安定化剤、緩衝剤、浸透圧の調節のための塩、賦形剤、防腐剤などの薬剤学的補助剤又はその他の治療的に有用な物質をさらに含有することができ、通常の方法によって多様な経口又は非経口の形態に剤形化できるが、非経口の形態であることが好ましい。代表的な非経口投与用剤形は、注射用剤形として等張性水溶液又は懸濁液であることが好ましい。又は、前記組成物を粉末化した後、投与直前に溶剤と共に懸濁して使用することもできる。
【0051】
本発明の遺伝子発現増加用組成物において、前記マイクロ粒子の含量は、特に制限されないが、0.5μl/ml〜2,000μl/ml、好ましくは1μl/ml〜1,000μl/mlであってもよく、5μg/ml〜2,000μg/ml、好ましくは10μg/ml〜1,000μg/mlであってもよい。
【0052】
前記マイクロ粒子の含量が前記範囲を逸脱する場合は、期待する効果を得ることができない。
【0053】
そして、前記組成物は、遺伝子と混合された混合液の形態で投与されることが効果の面で好ましい。
【0054】
<遺伝子>
本発明に係る遺伝子発現増加用組成物は、下記の各遺伝子と共に投与される場合、前記遺伝子の発現効率及びこれによる効能をさらに増大させ得る。
【0055】
〔ヒト肝細胞成長因子(HGF)遺伝子〕
ヒト肝細胞成長因子遺伝子は、序列番号2の塩基序列からなるものであり得る。ヒト肝細胞成長因子遺伝子は、遺伝子治療剤の形態に開発されてもよく、タンパク質治療剤の形態に開発されてもよい。
【0056】
〔ヒト肝細胞成長因子の異型体〕
本明細書において、「ヒト肝細胞成長因子の異型体(isoform)」は、全ての対立遺伝子変異体(variants)を含む、動物で自然に生成される(naturally occurring)HGFアミノ酸序列と少なくとも80%同じアミノ酸序列を有するHGFポリペプチドを意味する。例えば、HGF異型体は、HGFの正常型(normal form)又は野生型(wild type)、そして、HGFの多様な変異体(例えば、スプライシング変異体及び欠損変異体)を全て包括する意味を有する。
【0057】
〔ヒト肝細胞成長因子の変異体〕
本明細書において、「ヒト肝細胞成長因子の変異体」は、HGFの二つの異型体(HGF及びdHGF)を全て発現できるハイブリッドHGF遺伝子であり得る(大韓民国登録特許第10−0562824号参照)。具体的に、前記「ハイブリッドHGF遺伝子」は、HGF cDNAのエクソン4とエクソン5との間にヒトHGF遺伝子のイントロン4又はその断片序列が挿入された、遺伝子発現効率が高く、HGF及びdHGF(deleted varient of HGF)の二つの異型体を同時に発現するハイブリッドHGF遺伝子(序列番号3〜序列番号5)を意味する。
本発明の遺伝子治療剤の戦略によると、HGFの2種類以上の異型体を暗号化する一つ以上のヌクレオチド序列を用いることが治療効果の面で好ましい。2種類以上のHGF異型体−暗号化ヌクレオチド序列には、一つのポリヌクレオチドが提供されてもよく、別途のポリヌクレオチドが提供されてもよい。
【0058】
また、本明細書において、「ヒト肝細胞成長因子の変異体」は、HGFX6(序列番号3)(大韓民国登録特許第10−0562824号参照)であり得る。
【0059】
また、本明細書において、「ヒト肝細胞成長因子の変異体」は、HGFX7(序列番号4)(大韓民国登録特許第10−0562824号参照)であり得る。
【0060】
また、本明細書において、「ヒト肝細胞成長因子の変異体」は、HGFX8(序列番号5)(大韓民国登録特許第10−0562824号参照)であり得る。
【0061】
また、本明細書において、「ヒト肝細胞成長因子の変異体」は、欠損された変異型HGF(deleted varient of HGF;dHGF)(序列番号6)(大韓民国登録特許第10−0562824号参照)であり得る。本明細書で使用される「dHGF」という用語は、動物、好ましくは哺乳動物でHGF遺伝子の選択的スプライシングによって生成されるHGFタンパク質の欠損された変異体、より好ましくは全長HGF序列(728個のアミノ酸)からα鎖の1番目のクリングルドメインで5個のアミノ酸(F、L、P、S及びS)が欠損された723個のアミノ酸からなるヒトHGFを称する。
【0062】
〔ヒト1型インスリン類似成長因子(IGF1)遺伝子〕
ヒトインスリン類似成長因子遺伝子、特に、ヒト1型インスリン類似成長因子(IGF1)遺伝子は、序列番号7の塩基序列からなるものであり得る。ヒトインスリン類似成長因子遺伝子は、タンパク質形態の治療剤に開発されてもよく、遺伝子治療剤の形態に開発されてもよい。
【0063】
IGF1は、主に、ヒト成長ホルモン(hGH)による刺激の結果として肝によって分泌される。人体のほぼ全ての細胞、特に、筋肉、軟骨、骨、肝、腎臓、神経、皮膚及び肺内の細胞はIGF1によって影響を受ける。前記IGF1は、インスリン−類似効果のみならず、細胞成長調節効果を有する。
【0064】
〔ヒト1型インスリン類似成長因子の異型体〕
本明細書で使用される「IGF1異型体(isoform)」という用語は、全ての対立遺伝子変異体(variants)を含む、動物で自然に生成される(naturally occurring)IGF1アミノ酸序列と少なくとも80%同じアミノ酸序列を有するIGF1ポリペプチドを意味する。例えば、IGF1異型体は、IGF1の正常型(normal form)又は野生型(wild type)、そして、IGF1の多様な変異体(例えば、スプライシング変異体、欠損変異体、置換変異体)を全て包括する意味を有する。
【0065】
IGF1異型体の具体的な例としては、IGF1 Ea、IGF1 Eb、IGF1 Ecなどがある。
【0066】
〔ヒト1型インスリン類似成長因子の変異体〕
本明細書において、「IGF1変異体」は、欠損された変異型IGF1(deleted varient of IGF1;dIGF1)又は特定位置のアミノ酸が置換された変異型IGF1であり得る。本明細書で使用される「dIGF1」という用語は、動物、好ましくは哺乳動物でIGF1遺伝子の選択的スプライシングによって生成されるIGF1タンパク質の欠損された変異体を称する。また、置換された変異型IGF1の具体的な例として、「IGF1変異体」は、位置42のアミノ酸グリシンがセリンによって置換されたポリペプチドであり得る。又は、具体的な他の例として、「IGF1変異体」は、IGF1タンパク質のアミノ酸G1、P2、E3、R36、R37、K68、S69及び/又はA70に突然変異があるポリペプチドであり得る。
【0067】
〔プラスミド〕
本発明に係る遺伝子発現増加用組成物は、前記遺伝子を暗号化する単一鎖ポリヌクレオチドを含む各プラスミドと共に投与される場合、遺伝子の発現効率及びこれによる効能をさらに増大させ得る。
【0068】
本明細書において、「プラスミド」という用語は、一般に、外来遺伝子が宿主細胞で発現できるようにベクターに作動的に連結されて形成された環状のDNA分子を言う。しかし、プラスミドは、目的とする遺伝子を含むように遺伝子組換えによって特定の制限酵素によって分解され、新しい遺伝子を導入するベクターとして使用され得る。よって、本願では、プラスミドとベクターは相互交換的に使用され、遺伝工学分野で通常の知識を有する者であれば、それらの名称を区分しないとしても、その意味を十分に理解するだろう。
【0069】
本明細書において、「ベクター」という用語は、外来遺伝子を宿主細胞内に安定的に運搬できる運搬体としてのDNA分子を言う。有用なベクターになるためには複製されるべきであり、宿主細胞内に流入し得る方案を備えるべきで、自分の存在を検出できる手段を備えるべきである。
【0070】
<発現>
〔発現ベクター〕
本発明に係る遺伝子発現増加用組成物は、前記遺伝子を暗号化する単一鎖ポリヌクレオチドを含む各発現ベクターと共に投与される場合、遺伝子の発現効率及びこれによる効能をさらに増大させ得る。
【0071】
本明細書において、「発現(expression)」という用語は、細胞での前記遺伝子の生成を意味する。
【0072】
本明細書において、「発現ベクター」という用語は、適当な宿主で前記遺伝子を発現できるベクターであって、遺伝子挿入物が発現されるように作動可能に連結された必須的な調節要素を含む遺伝子コンストラクトを言う。
【0073】
本明細書において、「作動可能に連結された(operably linked)」という用語は、一般的な機能を行うように核酸発現調節序列と前記遺伝子を暗号化するポリヌクレオチドとが機能的に連結(functional linkage)されていることを意味する。例えば、プロモーターと前記遺伝子を暗号化するポリヌクレオチドとが作動可能に連結され、前記ポリヌクレオチドの発現に影響を及ぼし得る。組換えベクターとの作動的連結は、当該技術分野でよく知られている遺伝子組換え技術を用いて行うことができ、部位−特異的DNA切断及び連結は、当該技術分野で一般的に知られている酵素などを用いて行う。
【0074】
本発明の発現ベクターは、プラスミド、ベクター又はウイルスベクターを用いて製作されるが、これに限定されることはない。適切な発現ベクターは、プロモーター、オペレーター、開始コドン、終結コドン、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーなどの発現調節エレメントなどを含むことができ、目的に応じて多様に製造可能であり、ベクターのプロモーターは構成的又は誘導性であり得る。現在、プラスミドがベクターの最も通常的に使用される形態であるので、本発明の明細書において、「プラスミド(plasmid)」及び「ベクター(vector)」は時々相互交換的に使用される。本発明の目的上、プラスミドベクターを用いることが好ましい。このような目的に使用可能な典型的なプラスミドベクターは、(a)宿主細胞当たりに数個から数百個のプラスミドベクターを含むように複製を効率的に行わせる複製開始点、及び(b)外来DNA切片が挿入され得る制限酵素切断部位を含む構造を有している。適切な制限酵素切断部位が存在しないとしても、通常の方法による合成オリゴヌクレオチドアダプター(oligonucleotide adaptor)又はリンカー(linker)を使用すると、ベクターと外来DNAとを容易にライゲーション(ligation)することができる。
【0075】
本発明に係る遺伝子の過剰発現のために使用されるベクターは、当業界で公知となった発現ベクターであり得る。本発明の骨格ベクターとしては、特に制限されることはないが、pCDNA3.1、pGP、pEF、pVAX、pUDK、pCK、pQE40、pT7、pET/Rb、pET28a、pET−22b(+)及びpGEXからなる群から選ばれる多様なベクターを使用することができ、pGP、pCK、pUDK及びpVAXからなる群から選ばれる一つのベクターを用いることが効果の面で好ましい。
【0076】
好ましい具体例において、本発明の発現ベクターは、
図1の開裂地図を有するpGPベクターを含む発現ベクターであり得る。
【0077】
<薬学組成物>
また、本発明は、前記遺伝子発現増加用組成物;及び前記ヒト肝細胞成長因子(Hepatocyte Growth Factor;HGF)遺伝子、ヒト肝細胞成長因子の異型体遺伝子及びその変異体遺伝子から選ばれる1種以上の遺伝子;を含むことを特徴とする虚血性疾患、神経疾患、腎臓疾患又は肝疾患の予防又は治療用薬学組成物を提供する。前記虚血性疾患、神経疾患、腎臓疾患又は肝疾患の予防又は治療用薬学組成物は、少量のヒト肝細胞成長因子(Hepatocyte Growth Factor;HGF)遺伝子、ヒト肝細胞成長因子の異型体遺伝子又はその変異体遺伝子によっても体内で前記遺伝子の発現が増加することによって優れた治療効果を示すので、虚血性疾患、神経疾患、腎臓疾患又は肝疾患の予防又は治療に有用に利用可能である。
【0078】
前記ヒト肝細胞成長因子遺伝子は、序列番号2の塩基序列からなるものであって、前記ヒト肝細胞成長因子遺伝子の変異体は、序列番号3〜序列番号6の塩基序列から選ばれるいずれか一つからなるものであり得る。
【0079】
前記「虚血性疾患」は、虚血性脳血管疾患、虚血性心臓疾患、虚血性心筋梗塞、糖尿病性血管心臓疾患、虚血性心不全、虚血性血管疾患、閉塞性動脈硬化症、心筋肥大症、虚血性網膜症、虚血性下肢疾患、虚血性大腸炎、虚血性急性腎不全症、虚血性肺疾患、虚血性脳卒中、虚血性怪死、脳外傷、アルツハイマー病、パーキンソン病、新生児低酸素症、緑内障及び糖尿病性神経病症からなる群から選ばれるものであり得る。
【0080】
前記「神経疾患」は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン舞踏病(Huntington’s chorea)、脊髓小脳変性症、脊髓損傷、脳梗塞、脳虚血及び多発性硬化症からなる群から選ばれる中樞神経疾患であり得る。
【0081】
前記「腎臓疾患」は、急性腎不全又は慢性腎不全であり得る。
【0082】
前記「肝疾患」は、肝虚血、脂肪肝、肝炎症、肝癌、肝線維化又は肝硬変症であり得る。
【0083】
また、本発明は、前記遺伝子発現増加用組成物;及びヒト1型インスリン類似成長因子(Insulin like Growth Factor−1;IGF1)遺伝子、ヒト1型インスリン類似成長因子遺伝子の異型体遺伝子及びその変異体遺伝子から選ばれる1種以上の遺伝子;を含む、IGF1受容体の結合によって媒介される症状又は疾患の予防又は治療用薬学組成物を提供する。前記IGF1受容体の結合によって媒介される症状又は疾患の予防又は治療用薬学組成物は、少量のヒト1型インスリン類似成長因子遺伝子によっても体内で前記遺伝子の発現が増加することによって優れた治療効果を示すので、前記IGF1受容体の結合によって媒介される症状又は疾患の予防又は治療に有用に利用可能である。
【0084】
前記ヒト1型インスリン類似成長因子遺伝子は、序列番号7の塩基序列からなるものであり得る。
【0085】
本発明の薬学組成物において、前記遺伝子発現増加用組成物:前記成長因子遺伝子は、1:0.5〜1:30の体積比(w/v)で含まれ得る。
【0086】
一方、前記症状又は疾患は、低身長、肥満、体重減少、悪液質、食慾不振、神経退行性障害、線維症−関連症状、軟骨障害、骨疾患、炎症障害、腸障害、インスリン耐性、糖尿病、糖尿病性ケトアシドーシス、ラブソン・メンデンホール症侯群(Rabson−Mendenhall syndrome)、網膜症、末端肥大症(acromegaly)、線維筋性異形成症(fibromuscular hyperplasia)及び心臓障害からなる群から選ばれた1種であり得る。
【0087】
特に、前記低身長に対する治療が要求される個体は、インスリン類似成長因子−1欠乏症(IGFD)を有しているヒト小児個体であって、本発明の薬学組成物は、ヒト小児個体でIGFDの治療に非常に有効である。
【0088】
本発明の薬学組成物は、遺伝子の治療のためのものであり得る。
【0089】
〔剤形〕
本発明に記述された薬学組成物は、治療用薬剤学的製剤に剤形化され得る。
【0090】
このような薬剤学的担体及び賦形剤のみならず、適当な薬剤学的剤形は当業界に公知となっている(例えば、「Pharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins」,Frokjaer et al.,Taylor & Francis(2000)又は「Handbook of Pharmaceutical Excipients」,3rd edition,Kibbe et al.,Pharmaceutical Press(2000))。特に、本発明の薬学組成物は、凍結乾燥形態又は安定した液体の形態に剤形化され得る。本発明の組成物は、当業界に公知となった多様な手順を通じて凍結乾燥され得る。凍結乾燥された剤形は、注射用滅菌水又は滅菌生理食塩水などの一つ以上の薬剤学的に許容される希釈剤を添加して使用する前に再構成する。
【0091】
組成物の剤形は、任意の薬剤学的に適当な投与手段によって個体に伝達される。多様な伝達システムが公知となっており、組成物を任意の便利な経路で投与するのに使用され得る。主に、本発明の組成物は全身投与される。全身投与用の場合、本発明の組成物は、通常の方法によって非経口(例:静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、脳内、肺内、鼻腔内又は経皮)伝達又は腸(例:経口、膣又は直腸)伝達用に剤形化される。最も優先的な投与経路は静脈内及び筋肉内投与である。これらの剤形は、注入又は一時注射によって連続して投与され得る。一部の剤形は徐放型システムを含む。
【0092】
本発明の組成物は、許容できない副作用を起こす容量に至らず、治療する病態又は兆候の病度又は拡散を予防又は縮小させながら所望の効果を生産するに十分な容量を意味する治療学的有効量で患者に投与する。正確な容量は、兆候、剤形、投与方式などの多様な要因によって変わり得るので、それぞれの兆候ごとに臨床前に及び臨床試験を通じて決定されるべきである。
【0093】
本発明の薬学組成物は、単独で投与することもでき、他の治療剤と併用して投与することもできる。このような製剤は、同一の薬剤の一部として含まれ得る。
【0094】
〔治療方法〕
また、本発明は、虚血性疾患、神経疾患、腎臓疾患又は肝疾患を病んでいる個体、又はIGF1受容体の結合によって媒介される症状又は疾患を病んでいる個体を治療する方法に関する。前記治療方法は、本発明の薬学組成物を有効量で個体に投与する段階を含み得る。
【0095】
本発明の一具現例によると、本発明のHGF又はIGF1などの遺伝子は、10ng〜100mgの投与量で投与され得る。前記HGF又はIGF1、又はこれを暗号化するポリヌクレオチドの投与が1回を超えて繰り返されるとき、投与量は毎回同一又は異なり得る。
【0096】
以下、好ましい実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれによって制限されないことは当業界の通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【実施例】
【0097】
<材料の準備>
〔遺伝子〕
(ヒト肝細胞成長因子(Hepatocyte Growth Factor;HGF))
序列番号2で表示されるヒト肝細胞成長因子(HGF)の遺伝子(NCBI塩基序列NM_000601.6参考)をGenscript社(USA)に依頼して製作した。
【0098】
(ヒト肝細胞成長因子の変異体(HGFX6))
序列番号3で表示されるヒト肝細胞成長因子の変異体遺伝子、HGFX6(大韓民国登録特許第10−0562824号参考)をGenscript社(USA)に依頼して製作した。
【0099】
(ヒト肝細胞成長因子の変異体(HGFX7))
序列番号4で表示されるヒト肝細胞成長因子の変異体遺伝子、HGFX7(大韓民国登録特許第10−0562824号参考)をGenscript社(USA)に依頼して製作した。
【0100】
(ヒト肝細胞成長因子の変異体(HGFX8))
序列番号5で表示されるヒト肝細胞成長因子の変異体遺伝子、HGFX8(大韓民国登録特許第10−0562824号参考)をGenscript社(USA)に依頼して製作した。
【0101】
(ヒト肝細胞成長因子の変異体(dHGF))
序列番号6で表示されるヒト肝細胞成長因子の変異体遺伝子、dHGF(大韓民国登録特許第10−0562824号参考)をGenscript社(USA)に依頼して製作した。
【0102】
(ヒト1型インスリン類似成長因子(Insulin like Growth Factor−1;IGF1))
序列番号7で表示されるヒト1型インスリン類似成長因子遺伝子、IGF1(NCBI塩基序列NM_001111283.2参考)をバイオニクス社(大韓民国)に依頼して製作した。
【0103】
(ヒト血管内皮細胞成長因子(Vascular Endothelial Growth Factor;VEGF))
序列番号8で表示されるヒト血管内皮成長因子遺伝子、VEGF(GenBank塩基序列AB021221.1参考;VEGF
165)をバイオニクス社(大韓民国)に依頼して製作した。
【0104】
(ヒト1型線維芽細胞成長因子(Fibroblast Growth Factor−1;FGF1))
序列番号9で表示されるヒト1型線維芽細胞成長因子遺伝子、FGF1(GenBank塩基序列X65778.1参考)をバイオニクス社(大韓民国)に依頼して製作した。
【0105】
(ヒト4型線維芽細胞成長因子(Fibroblast Growth Factor−4;FGF4))
序列番号10で表示されるヒト4型線維芽細胞成長因子遺伝子、FGF4(GenBank塩基序列M17446.1参考)をバイオニクス社(大韓民国)に依頼して製作した。
【0106】
(ヒトB型血小板由来成長因子(Platelet−derived Growth Factor;PDGF−B))
序列番号11で表示されるヒトB型血小板由来成長因子遺伝子、PDGF−B(GenBank塩基序列X02811.1参考)をバイオニクス社(大韓民国)に依頼して製作した。
【0107】
〔プラスミド(pGP)〕
Lee Y,et al.,Improved expression of vascular endothelial growth factor by naked DNA in mouse skeletal muscles:implication for gene therapy of ischemic diseases.Biochem.Biophys.Res.Commun.2000;272(1):230−235)の論文を参考にしてpCKプラスミドを合成した後、下記の表1のプライマー1及びプライマー2を用いて上述した方法と同一の方法でPCRを行うことによって切片を収得し、EcoRI酵素で37℃で1時間にわたって反応した後、Expin Gel SV(GeneAll、Korea)キットを用いてDNAを精製した。その後、T4リガーゼ(ligase)を用いて30分間ライゲーションを行った後、E.coliに一晩(overnight)培養した。翌日にコロニー(colony)を培養した後、ミニ−プレップ(mini−prep)によってDNAを分離し、序列番号1で表示されるpGPプラスミドを製作した。
図1は、本発明の一実施例に係るpGPベクターの開裂地図を示した図である。
【0108】
【表1】
【0109】
<製造例>
〔遺伝子を含むプラスミドDNAの製造〕
前記のように準備した各遺伝子のそれぞれとpGPプラスミドをそれぞれNheIとNotI酵素で1時間にわたって切断し、アガロースゲルに電気泳動することによって切片を分離した。分離された切片をT4リガーゼを用いて30分間ライゲーションし、E.Coliに一晩培養した。翌日にコロニーを培養した後、ミニ−プレップによってDNAを分離し、これをNheI及びNotIで確認した。クローニングが完了したDNAは、制限酵素で確認されたE.Coli上清液(supernatant)を4Lのフラスコ2個にカナマイシン(kanamycin)と共に入れて一晩培養した後、Endofree Giga prep.キット(Qiagen、USA)を用いてプラスミドDNAに生産し、これを動物実験に使用した。前記製造されたそれぞれのプラスミドDNAを下記の表2にまとめて示した。
【0110】
【表2】
【0111】
<実施例>
〔実施例1:遺伝子発現増加用組成物及びHGFを含む薬学組成物の製造(HGF−MP1、HGF−MP2及びHGF−MP3)〕
(遺伝子発現増加用組成物)
平均直径が約2.5μmで、コアはヘキサフルオロ化硫黄、シェルは脂質を含んで構成されており、標準コード621400210で表示されるコア−シェル構造のマイクロ粒子をブラッコイメージングコリアから購入した(MP1)。また、平均直径が約2.4μm 〜3.6μmで、コアはペルフルオロブタン、シェルは脂質及び界面活性剤を含んで構成されており、標準コード646300210で表示されるコア−シェル構造のマイクロ粒子をGEヘルスケアAS大韓民国支店から購入した(MP2)。また、平均直径が約1.1μm〜3.3μmで、コアはペルフルオロプロパン、シェルは脂質及び界面活性剤を含んで構成されており、標準コード662900020で表示されるコア−シェル構造のマイクロ粒子をBoo Kyung S.Mから購入した(MP3)。
【0112】
前記マイクロ粒子MP1は、製造社のマニュアルによって225μgに2mlの生理食塩水を混合することによって懸濁液(遺伝子発現増加用組成物)に製造し、MP2は、製造社のマニュアルによって16μlを2mlの注射用水と混合することによって懸濁液(遺伝子発現増加用組成物)に製造した。また、生理食塩水と混合されたマイクロ粒子溶液MP3(150μl/ml)は、製造社のマニュアルによって45秒間強く振って懸濁液(遺伝子発現増加用組成物)に製造した。
【0113】
(遺伝子発現増加用組成物及びHGFを含む薬学組成物の製造)
前記それぞれの遺伝子発現増加用組成物(MP1、MP2及びMP3)15μlと前記製造されたpGP−HGF 70μg/35μlとを混合することによってそれぞれの薬学組成物HGF−MP1、HGF−MP2及びHGF−MP3を製造した。
【0114】
〔実施例2:遺伝子発現増加用組成物及びHGFX7を含む薬学組成物の製造(HGFX7−MP1及びHGFX7−MP2)〕
(遺伝子発現増加用組成物)
前記実施例1と同一の方法で遺伝子発現増加用組成物を製造した。
【0115】
(遺伝子発現増加用組成物及びHGFX7を含む薬学組成物の製造)
前記それぞれの遺伝子発現増加用組成物(MP1及びMP2)15μlと前記製造されたpGP−HGFX7 70μg/35μlとを混合することによってそれぞれの薬学組成物HGFX7−MP1及びHGFX7−MP2を製造した。
【0116】
〔実施例3:遺伝子発現増加用組成物及びIGF1を含む薬学組成物の製造(IGF1−MP1、IGF1−MP2及びIGF1−MP3)〕
(遺伝子発現増加用組成物)
前記実施例1と同一の方法で遺伝子発現増加用組成物を製造した。
【0117】
(遺伝子発現増加用組成物及びIGF1を含む薬学組成物の製造)
前記それぞれの遺伝子発現増加用組成物(MP1、MP2及びMP3)15μlと前記製造されたpGP−IGF1 70μg/35μlとを混合することによってそれぞれの薬学組成物IGF1−MP1、IGF1−MP2及びIGF1−MP3を製造した。
【0118】
〔比較例1:遺伝子発現増加用組成物及びVEGFを含む薬学組成物の製造(VEGF−MP1及びVEGF−MP2)〕
(遺伝子発現増加用組成物)
前記実施例1と同一の方法で遺伝子発現増加用組成物を製造した。
【0119】
(遺伝子発現増加用組成物及びVEGFを含む薬学組成物の製造)
前記それぞれの遺伝子発現増加用組成物(MP1及びMP2)15μlと前記製造されたpGP−VEGF 70μg/35μlとを混合することによってそれぞれの薬学組成物VEGF−MP1及びVEGF−MP2を製造した。
【0120】
〔比較例2:遺伝子発現増加用組成物及びFGF1を含む薬学組成物の製造(FGF1−MP1及びFGF1−MP2)〕
(遺伝子発現増加用組成物)
前記実施例1と同一の方法で遺伝子発現増加用組成物を製造した。
【0121】
(遺伝子発現増加用組成物及びFGF1を含む薬学組成物の製造)
前記それぞれの遺伝子発現増加用組成物(MP1及びMP2)15μlと前記製造されたpGP−FGF1 70μg/35μlとを混合することによってそれぞれの薬学組成物FGF1−MP1及びFGF1−MP2を製造した。
【0122】
〔比較例3:遺伝子発現増加用組成物及びFGF4を含む薬学組成物の製造(FGF4−MP1及びFGF4−MP2)〕
(遺伝子発現増加用組成物)
前記実施例1と同一の方法で遺伝子発現増加用組成物を製造した。
【0123】
(遺伝子発現増加用組成物及びFGF4を含む薬学組成物の製造)
前記それぞれの遺伝子発現増加用組成物(MP1及びMP2)15μlと前記製造されたpGP−FGF4 70μg/35μlとを混合することによってそれぞれの薬学組成物FGF4−MP1及びFGF4−MP2を製造した。
【0124】
〔比較例4:遺伝子発現増加用組成物及びPDGF−Bを含む薬学組成物の製造(PDGF−B−MP1及びPDGF−B−MP2)〕
(遺伝子発現増加用組成物)
前記実施例1と同一の方法で遺伝子発現増加用組成物を製造した。
【0125】
(遺伝子発現増加用組成物及びPDGF−Bを含む薬学組成物の製造)
前記それぞれの遺伝子発現増加用組成物(MP1及びMP2)15μlと前記製造されたpGP−PDGF−B 70μg/35μlとを混合することによってそれぞれの薬学組成物PDGF−B−MP1及びPDGF−B−MP2を製造した。
【0126】
〔対照群〕
(遺伝子発現増加用組成物)
in vivo JetPEI(Polyplus、USA)の製造社のマニュアルによってJetPEI 128μlを2mlの5%グルコースと混合することによって懸濁液(遺伝子発現増加用組成物に対応)を製造した。
【0127】
(遺伝子発現増加用組成物及びそれぞれの遺伝子を含む薬学組成物の製造)
前記遺伝子発現増加用組成物15μlと各DNA 70μg/35μlとを混合することによってそれぞれの薬学組成物HGF−JetPEI、HGFX7−JetPEI、IGF1−JetPEI、及びVEGF−JetPEIを製造した。
【0128】
<実験例>
〔実験例1:マウスでのタンパク質の発現量〕
前記対照群、実施例及び比較例に係る薬学組成物のそれぞれをBalb/cマウス(Samtako Bio)の下肢の腓腹筋に75μg/50μl/legずつ注射した。
【0129】
投与後、7日目にマウスを屠殺し、注射した部位の筋肉を切り取った。そして、前記切り取ったそれぞれの筋肉を液体窒素及びタンパク質抽出キット(cellbiolabs、USA)を用いて粉砕した後、総タンパク質を分離した。分離された総タンパク質量は、DCタンパク質分析キット(Bio−Rad laboratories、USA)を用いて測定した。
【0130】
HGFタンパク質の測定のためには、同一の量のタンパク質を用いてELISAキット(R&D systems、USA)を通じて各遺伝子の発現量を測定し、その結果を
図2及び
図3に示した。
【0131】
IGF1タンパク質の測定のためには、同一の量のタンパク質を用いてIGF1 ELISAキット(R&D systems、USA)を通じて各遺伝子の発現量を測定し、その結果を
図4に示した。
【0132】
図2〜
図4を通じて、本発明に係る薬学組成物(実施例1〜実施例3)を投与した場合、各対照群の組成物に比べて統計的に有意に高いHGF又はIGF1遺伝子の発現量を示すことが分かる。
【0133】
VEGFタンパク質の測定のためには、同一の量のタンパク質を用いてVEGF ELISAキット(R&D systems、USA)を通じて各遺伝子の発現量を測定し、その結果を
図5に示した。
【0134】
FGF1タンパク質の測定のためには、同一の量のタンパク質を用いてFGF1 ELISAキット(Abcam、USA)を通じて各遺伝子の発現量を測定し、その結果を
図6に示した。
【0135】
FGF4タンパク質の測定のためには、同一の量のタンパク質を用いてFGF4 ELISAキット(Abcam、USA)を通じて各遺伝子の発現量を測定し、その結果を
図7に示した。
【0136】
PDGF−Bタンパク質の測定のためには、同一の量のタンパク質を用いてPDGF−B ELISAキット(R&D systems、USA)を通じて各遺伝子の発現量を測定し、その結果を
図8に示した。
【0137】
図5〜
図8を通じて、比較例1〜比較例4の組成物を投与した場合は、各対照群の組成物に比べて有意に発現量が増加しないことが分かる。
以上の各結果を通じて、本発明に係る実施例1〜実施例3の組成物において、HGF又はIGF1遺伝子の発現量を有意的に増加できることを確認した。
【0138】
〔実験例2:糖尿病で誘発された末梢神経障害ラットモデルにおける本発明の薬学組成物の効能評価〕
糖尿病性神経病症(diabetic peripheral neuropathy、DPN)の原因は、糖尿病の誘発によって血糖が上昇し、これを通じた微細血管の損傷によって末梢神経損傷が誘発され、臨床的に痛み、異常などの症状が発病される虚血性疾患及び神経疾患の複合疾患である。本研究で使用したストレプトゾトシンで誘発された糖尿病性神経病症(streptozotocin induced diabetic peripheral neuropathy)が代表的な動物モデルである。
【0139】
Samtako Bioで購入した6週齢雄のスプラーグドーリー(Sprague−Dawley)ラットの静脈にSTZ(streptozotocin)70mg/kgを注入し、1型糖尿を誘発した。STZの注入後、1週目に非絶食血糖が300mg/dL以上になる個体を選別し、各個体別に痛み誘発程度を測定するためのマニュアルフォンフレイ(manual Von Frey)テストを通じてPWT(paw withdrawal threshold)を測定し、痛みが誘発された個体(PWT値が4.0以下)を選別した後、各群当たりに5匹ずつ2群に分離した。
【0140】
その後、対照群には、pGP−HGFX7 DNA 400μgを両側の腓腹筋にそれぞれ200μg/200μlずつ投与し、実施例2のHGFX7−MP2を両側の腓腹筋に対照群と同量(400μg)で投与した。
【0141】
投与後、2週目に痛み尺度であるPWTを測定した結果、実施例2のHGFX7−MP2を投与した群では、対照群と比較して統計的に有意にPWT値が上昇したことを確認した(
図9参照)。
【0142】
〔実験例3:慢性絞扼損傷手術によって誘発された神経障害ラットモデルにおける本発明の薬学組成物の効能評価〕
神経性疼痛(neuropathic pain)は、神経系異常に起因した慢性神経疾患として知られており、臨床的に痛みの敏感性が増加し、異常、痛みなどを示すようになる。このような慢性神経性疼痛は、本研究で使用した座骨神経の結紮によって発生する慢性絞扼損傷が代表的な動物モデルである。
【0143】
オリエントバイオで購入した5週齢雄のスプラーグドーリーラットを呼吸麻酔(isoflurane、二酸化窒素、酸素混合)し、左側大腿部の中間部を切開することによって座骨神経を露出させた。露出した座骨神経を4−0catgutの縫合糸3本を用いて1.0mm〜1.5mmの間隔で緩やかに結紮して縫合した。手術1週目にマニュアルフォンフレイテストを通じてPWT(paw withdrawal threshold)を測定し、痛みが誘発された個体(PWT値が4.0以下)を選別し、各群当たりに5匹ずつ2群に分離した。
【0144】
その後、対照群には、pGP−HGF DNA 1mgを左側大腿筋に250μg/250μlずつ4ヶ所に投与し、実施例1のHGF−MP2を対照群と同一の部位に同一に250μg/250μlずつ4ヶ所(合計1mg)に投与した。
【0145】
投与後、2週目に痛み尺度であるPWTを測定した結果、実施例1のHGF−MP2を投与した群では、対照群と比較して統計的に有意にPWT値が上昇し、痛みを感じる力の大きさが有意に増加することが確認された(
図10参照)。
【0146】
以上の結果を通じて、本発明の組成物が遺伝子の発現量を著しく増加させることによって、様々な疾患モデルで遺伝子の効能を向上させることを証明した。
【0147】
具体的に、前記実験例2では、本発明の遺伝子発現増加用組成物をHGFX7と共に糖尿病性神経病症が誘発されたラットモデルに投与した後、2週目になる日にPWT値を測定した結果、対照群に比べて80%ほどPWT値が上昇したことを確認した。
【0148】
また、前記実験例3では、本発明の遺伝子発現増加用組成物をHGFと共に神経性疼痛が誘発されたラットモデルに投与した後、2週目になる日にPWT値を測定した結果、対照群に比べて40%以上PWT値が上昇したことを確認した
【0149】
前記のように、PWT値が上昇することは、痛みを感じる力の大きさが有意に増加すること、すなわち、痛みが緩和されることを意味する。このように、糖尿病性神経病症又は神経性疼痛が誘発された動物モデルで痛みが緩和される効果が表れることは、本発明の遺伝子発現増加用組成物によって体内でHGF又はHGFX7の発現が増加したためであると見なされる。
【0150】
すなわち、前記各実験例を通じて、本発明の遺伝子発現増加用組成物及びヒト肝細胞成長因子(HGF)、その異型体及びその変異体から選ばれる1種以上の遺伝子を含む薬学組成物が、神経性疼痛の動物モデルと糖尿病性神経病症の動物モデルのいずれにおいても痛みを緩和させる効果を有することを確認することができた。したがって、本発明の遺伝子発現増加用組成物及びヒト肝細胞成長因子(HGF)、その異型体及びその変異体から選ばれる1種以上の遺伝子を有効成分として含む薬学組成物を用いる場合、糖尿病性神経病症又は神経性疼痛などの多様な神経疾患を予防、緩和又は治療できると判断される。
【0151】
以上では、本発明を前記言及した好ましい実施例として説明したが、発明の要旨及び範囲から逸脱しない限り、多様な修正や変形を行うことが可能である。また、添付の特許請求の範囲は、本発明の要旨に属するこのような修正や変形を含む。
【国際調査報告】