特表2021-513641(P2021-513641A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-513641マイケルソン型フリービーム干渉計を用いる2次元インターフェログラムの作成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-513641(P2021-513641A)
(43)【公表日】2021年5月27日
(54)【発明の名称】マイケルソン型フリービーム干渉計を用いる2次元インターフェログラムの作成方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/17 20060101AFI20210430BHJP
   A61B 3/10 20060101ALI20210430BHJP
【FI】
   G01N21/17 630
   A61B3/10 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-535652(P2020-535652)
(86)(22)【出願日】2019年1月25日
(85)【翻訳文提出日】2020年8月7日
(86)【国際出願番号】EP2019051816
(87)【国際公開番号】WO2019145459
(87)【国際公開日】20190801
(31)【優先権主張番号】102018101768.5
(32)【優先日】2018年1月26日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520272879
【氏名又は名称】ヴィゾテック・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Visotec GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 富雅
(72)【発明者】
【氏名】ミュンスト, ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】スドカンプ, ヘルゲ
(72)【発明者】
【氏名】コッホ, ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ヒュットマン, ゲレオン
【テーマコード(参考)】
2G059
4C316
【Fターム(参考)】
2G059AA06
2G059BB12
2G059EE02
2G059EE09
2G059FF02
2G059JJ13
2G059JJ22
2G059KK01
2G059MM01
2G059MM09
2G059MM10
2G059NN06
4C316AA09
4C316AB02
4C316AB11
4C316FY01
4C316FY05
4C316FY06
(57)【要約】
本発明は、マイケルソン型フリービーム干渉計を用いて2次元インターフェログラムを作成するための方法に関し、該マイケルソン型フリービーム干渉計は、拡張型の部分空間コヒーレント光源と、2次元光検出器とを備え、光源からの光は、半透明のビームスプリッタミラーを備えるビームスプリッタによりサンプル光ビームと参照光ビームとに分割されて、サンプルアームおよび参照アームへ取り込まれ、サンプルから戻るサンプル光ビームは、ビームスプリッタミラーによって光検出器上へ方向づけられ、参照アームから出現する参照光ビームは、サンプル光ビームと共に光検出器上でゼロより大きい予め決められた角度を作り、かつ参照アームの長さは、可変であり、参照光ビームは、各反射面における奇数回の反射により少なくとも1つの参照アームセクション内へ方向づけられ、よって、参照光ビームは、参照光ビーム自体に対して横方向へ変位され、かつ参照アームの出口に固定される、屈折または回折により機能する光偏向素子を介して逆平行へ移動することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイケルソン型フリービーム干渉計を用いて2次元インターフェログラムを作成するための方法であって、前記マイケルソン型フリービーム干渉計は、拡張型の部分空間コヒーレント光源と、2次元光検出器とを備え、前記光源からの光は、半透明のビームスプリッタミラーを備えるビームスプリッタによりサンプル光ビームと参照光ビームとに分割されて、サンプルアームおよび参照アームへ取り込まれ、サンプルから戻る前記サンプル光ビームは、前記ビームスプリッタミラーによって前記光検出器上へ方向づけられ、前記参照アームから出現する前記参照光ビームは、前記サンプル光ビームと共に前記光検出器上でゼロより大きい予め決められた角度を作り、かつ前記参照アームの長さは、可変であり、前記参照光ビームは、各反射面における奇数回の反射により少なくとも1つの参照アームセクション内へ方向づけられ、よって、前記参照光ビームは、前記参照光ビーム自体に対して横方向へ変位され、かつ前記参照アームの出口に固定される、屈折または回折により機能する光偏向素子を介して逆平行へ移動することを特徴とする、マイケルソン型フリービーム干渉計を用いて2次元インターフェログラムを作成するための方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの参照アームセクションにおける前記参照アームの長さは、前記参照光ビームが前記参照光ビーム自体から横方向へ変位されて進み、かつ逆平行に延びることにおいて変更されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記参照光は、可変長の前記参照アーム部分の背後のプリズムまたは格子を介して方向づけられることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記参照ビームは、3つのミラーを横切って共通の反射面内に方向づけられることを特徴とする、請求項1〜請求項3の1項に記載の方法。
【請求項5】
前記参照ビームは、一平面内のプリズムおよびミラーによって少なくとも2回屈折され、かつ正確に1回反射されることを特徴とする、請求項1〜請求項3の1項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの側面に反射コーティングを有するプリズムが使用されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
マイケルソン型フリービーム干渉計を備える、先行する請求項の1項に記載の方法のうちの1つを実装するためのデバイスであって、前記マイケルソン型フリービーム干渉計は、拡張型の部分空間コヒーレント光源と、2次元光検出器とを備え、前記光源からの光は、半透明のビームスプリッタミラーを備えるビームスプリッタによりサンプル光ビームと参照光ビームとに分割されて、サンプルアームおよび参照アームへ取り込まれ、サンプルから戻る前記サンプル光ビームは、前記ビームスプリッタミラーによって前記光検出器上へ方向づけられ、前記参照アームから出現する前記参照光ビームは、前記サンプル光ビームと共に前記光検出器上でゼロより大きい予め決められた角度を作り、前記参照アームの長さは、可変であり、この配置は、さらに屈折または回折により機能する光偏向素子を備え、前記参照光ビームは、各反射面における奇数回の反射により少なくとも1つの参照アームセクション内へ方向づけられ、よって、前記参照光ビームは、前記参照光ビーム自体に対して横方向へ変位され、かつ前記参照アームの出口に固定される、屈折または回折により機能する前記光偏向素子を介して逆平行へ移動することを特徴とする、デバイス。
【請求項8】
前記デバイスは、さらに、少なくとも3つのミラーを備え、前記参照ビームは、前記少なくとも3つのミラーによって共通の反射面内へ方向づけられることを特徴とする、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記デバイスは、さらに、プリズムとミラーとを備え、前記参照ビームは、一平面内の前記プリズムおよび前記ミラーによって少なくとも2回屈折され、かつ正確に1回反射されることを特徴とする、請求項7および請求項8の1項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記プリズムは、少なくとも1つの側面に反射コーティングを有することを特徴とする、請求項9に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイケルソン型フリービーム干渉計を用いて2次元インターフェログラムを作成する方法に関し、該干渉計は、拡張型の部分空間コヒーレント光源と、2次元光検出器とを備え、光源からの光は、半透明のビームスプリッタミラーを備えるビームスプリッタにより、サンプル光ビームと参照光ビームとに分割されて可変長のサンプルアームおよび参照アームへ送られる。
【背景技術】
【0002】
本明細書において、拡張型の、部分空間コヒーレント光源とは、光源が、一部空間的にコヒーレントな光を放射する表面を有することを意味し、第1の周縁表面領域から放射される光モードは、第1の領域とは反対側に位置づけられる第2の周縁表面領域からの光モードと、もはや干渉せず、すなわち、第1の領域からざっと表面直径分で離間される。こうした光源の一例が、非ファイバ結合型スーパールミネッセントダイオード(SLD)である。
【0003】
フリービームマイケルソン型干渉計は、光干渉断層撮影(OCT)およびその他のデバイスにおいて使用され、2次元サンプルにより散乱される全ての光を同時に検出し(「全視野」OCT、FF−OCT)、かつこれをサンプル上の横方向散乱部位と一致させるように設計されている。発明者のワーキンググループに由来する特許文献1は、こうしたデバイスの1つ、および対応する測定方法について記載している。
【0004】
具体的には、特許文献1に記載の方法およびデバイスは、NIRスペクトルからの短いコヒーレンス長−25マイクロメートル未満−の部分空間コヒーレント光を利用し、かつフリービーム干渉計は、可動参照ミラーによって長さを変えられる参照アームを備える。干渉計からの出口における2次元光検出器−CCDまたはCMOSカメラなど−に対する干渉は、参照光および散乱サンプル光の光波長がコヒーレンス長内でよく調和される場合にのみ発生する。したがって、可変参照アームは、異なるサンプル深さからのサンプル光を参照光と干渉させることを可能にする。参照アームの長さの変更は、参照ミラーを光軸に沿って一般的な「時間領域」(TD)OCT式に移動することによって実現可能であり、ディープスキャンを反復するために、ミラーを反復して移動させることが可能である。
【0005】
参照光と干渉しない散乱したサンプル光は、バックグラウンドと同時に光検出器に到達する。後処理でバックグラウンドをインターフェログラムから分離して、サンプル光の位相および振幅を決定するために、参照光およびサンプル光は、互いに予め決められた角度の傾斜で重畳され、次に、結果として得られる光強度の分布が検出される(「軸外」、OA)。この方法において、インターフェログラムは、検出器表面に沿って追加的な干渉縞パターンを含む。したがって、検出された画像データのフーリエ変換において、インターフェログラムに関連づけられるフーリエ成分は、バックグラウンドのフーリエ係数に対して予め決められたkベクトルだけ変位される。
【0006】
上述の内容によれば、特許文献1に記載のデバイスおよび方法は、「軸外全磁界時間−領域OCT」(OA−FF−TD−OCT)の概念による他のOCT方法とは明らかに区別される。
【0007】
特許文献1の教示の実際の実装では、特に、その図1に基づけば、参照ミラーを傾けると、参照ビームが傾き、かつこれが光検出器上へ配向される一方で、これがサンプルビームに対して横方向へも変位される、という問題が生じる。この横方向変位は、光学装置の設計スペースが不十分である場合、および/または干渉計アームの長さがビーム直径に比べて長い場合に問題となることが判明している。こうした場合は、参照ビームが検出器の中心に当たらない。
【0008】
OA−FF−TD−OCT方法を用いて眼底を検査する場合、技術的理由により、サンプルアームの長さは、数百mmになる。参照アームは、サンプルアームと同じこの光路長を有していなければならない。たとえば、参照ミラーと光検出器との間の典型的な間隔は、250mmである。参照ビームおよびサンプルビームが、検出可能な縞パターンを生成するために光検出器に対して成さなければならない角度は、検出器の個々の感光性ピクセルの直径、3.45μm(2045x1536ピクセルのSony252センサ)など、および、部分空間コヒーレント光源の中心波長、830nmなど、に依存し、たとえば、α≒3.5゜になる。画像センサ上のサンプル光に対する参照光の横方向オフセットΔSは、ΔS=tan αxlであり、ここで、lは、参照ミラー(中間点)と画像センサとの間のスペーシングである。前述の例示的な値を用いれば、光検出器上に、15.26mmの横方向オフセットが生じる。よって、ビーム直径は、検出器のサイズ、約7mm、に加えて少なくともこの15.26mmを有していなければならず、よって光の大部分は利用されないことになる。部分空間コヒーレント光源の場合、干渉信号のコントラスト、延ては網膜画像の感度およびコントラスト範囲にも減少がみられる。
【0009】
さらに、参照アームの長さを変えるための参照ミラーのあらゆる動きも、光検出器における横方向オフセットをさらに変えることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2017/029160号A1パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の課題は、光検出器においてサンプル光および参照光が横方向オフセットなしに、かつ互いにゼロより大きい予め決められた角度で重畳されることが可能である、マイケルソン型フリービーム干渉計を用いる干渉分光方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、マイケルソン型フリービーム干渉計を用いて2次元インターフェログラムを作成するための方法によって解決され、該マイケルソン型フリービーム干渉計は、拡張型の部分空間コヒーレント光源と、2次元光検出器とを備え、光源からの光は、半透明のビームスプリッタミラーを備えるビームスプリッタによりサンプル光ビームと参照光ビームとに分割されて、サンプルアームおよび参照アームへ導かれ、サンプルから戻るサンプル光ビームは、ビームスプリッタミラーによって光検出器上へ方向づけられ、参照アームから出現する参照光ビームは、サンプル光ビームと共に光検出器上でゼロより大きい予め決められた角度を作り、参照アームの長さは、可変であり、参照光ビームは、各反射面における奇数回の反射により少なくとも1つの参照アームセクション内へ方向づけられ、よって、参照光ビームは、参照光ビーム自体に対して横方向へ変位され、かつ参照アームの出口に固定される、屈折または回折により機能する光偏向素子を介して逆平行へ移動することを特徴とする。
【0013】
従属請求項は、効果的な実施形態を示す。
【0014】
最初に、ここに述べた課題が、マッハ−ツェンダ干渉計などの他のタイプの干渉計において極く容易に回避できることは、留意されるべきである。しかしながら、マイケルソン干渉計は、その単純な設計、および必要な光学コンポーネントの数が少ないというところに魅力があり、故に、特に、OCTシステムの大量生産にとっては魅力的である。
【0015】
古典的なマイケルソン干渉計では、参照ビームが参照ミラーによってそれ自体に反射され、よって、参照アームの入口と出口とが同一である。現在の事例では、本発明により、参照アームの入口および出口は、空間的に分離され、よって、本発明によれば、出口に追加的な光学素子を固定して、戻り参照光を予め決められた角度だけ偏向させることができる。予め決められるこの角度は、数度にしかならないことから、光偏向素子は、偏向を、反射ではなく回折または屈折によって偏向をもたらすことになる。光偏向素子は、好ましくは、プリズムまたは回折格子であってもよい。
【0016】
参照アームにおける参照光が、常に光偏向素子上の同じ場所に同じ角度で、特に参照アームの所与の任意長さで当たるように方向づけられる場合、本発明により固定される回折または屈折素子は、参照光が常時検出器へ予め決められた偏向角で、かつサンプル光から横方向へオフセットすることなく到達するように調整されることが可能である。
【0017】
当業者は、レトロリフレクタが参照ビームを、それが逆平行に、かつ参照ビーム自体から横方向へ変位されて進行するように反射し得ることを認知している。したがって、これらの状況は、従来の参照ミラーではなく、レトロリフレクタで達成され得る。このためのレトロリフレクタとしては、直角ミラーまたは古典的なコーナーキューブ、すなわち、互いに対して角度90゜に配向される2つまたは3つのミラーより成る装置、が考えられる。
【0018】
本発明によれば、参照アームの少なくとも1つのセクションは、参照光に対してこの種の経路を有するものとする。好ましくは、少なくとも1つの参照アームセクションにおける参照アームの長さは、参照光ビームを参照光ビーム自体から横方向へ変位させかつ逆平行に進ませることによって変更される。よって、参照アームの長さは、出口に位置づけられる光偏向素子への衝突時に、参照ビームの位置または角度に影響を与えない。
【0019】
しかしながら、図らずも、レトロリフレクタは、本発明の実装に不適であることが分かる。すなわち、インターフェログラムが非常に弱いものとなり、あるいは、画像の周縁へと消えていく。
【0020】
その理由は、拡張型の部分空間コヒーレント光源にある。
【0021】
サンプル光と参照光との間の角度がゼロである古典的なマイケルソン配置を用いる場合は、双方のビーム部分が検出器に到達する時点で正確に2回、すなわち、ビームスプリッタで1回、およびサンプルの参照ミラーで1回、反射されていることから、光検出器の全てのピクセルで干渉が生じることになる。しかしながら、直角ミラーなどのレトロリフレクタは、2回の反射を実行し、その結果、参照アームから現出する参照ビームは、サンプルビームに対してミラー反転される。検出器の片側の周縁上のピクセルに入射するサンプル光および参照光の光成分は、実際には、2次元的に広がる光源の反対側の2つの周縁領域から到来し、よって干渉しない。
【0022】
この問題は、本発明によれば、参照光ビームが、少なくとも1つの参照アームセクションの各反射面における奇数回の反射により参照光ビーム自体から横方向へ変位されかつ逆平行へ方向づけられることにおいて、排除されることが可能である。したがって、たとえば、サンプル光との干渉に適する参照光を得るために、1つの反射面において3回の反射が実行されてもよい。
【0023】
この場合の反射面とは、平面ミラーの法線方向と、平面ミラーにより反射される光ビームの入射または出射方向とによって張られる空間内の平面を意味する。干渉計の配置は、全てのビーム方向を確立し、かつミラー装置、すなわち、全ての反射面は、設計に固有であって、既知である。原則として、参照アームにおいて、参照光の経路として設けられる反射面は、1つのみである。しかしながら、参照ビームは、参照アームの入口と出口との間で横方向へ変位されなければならないことから、少なくとも、提供される1つの反射面は、必然的に明確に画定されたものである。
【0024】
コーナーキューブ式のレトロリフレクタは、3回の反射を実行できるが、これらは、少なくとも2つの異なる反射面で発生する。この場合も、現出する参照光は、検出器全体でのサンプル光との干渉に適さない。
【0025】
しかしながら、参照アームにおける光に対して、各反射面で奇数回の反射を実行する−よって、2回以上の反射が発生する−場合、参照光は、参照アームから反射されて、あたかも伝統的なマイケルソン干渉計において反射が1回だけ生じたかのように、現出することができる。次に、本発明により出口に追加的に位置づけられる光偏向素子は、参照ビームを、サンプルビームに対する予め決められた角度で、光検出器の予め決められた領域−通常は、検出器表面全体−へと方向づける。サンプル光および参照光は、光検出器全体で干渉することができる。2つのビームが、光検出器より広い必要はない。参照アームの長さを変更しても、検出器における参照ビームの横方向位置に影響しない。
【0026】
参照アームにおけるその経路上で、参照光は、所望に応じた数の回折または屈折性の光学コンポーネントを透過し、これにより、ビーム方向を変更することができる。参照アームの入口と出口との間に少なくとも1回の反射があるだけでしかない限り、これが、サンプル光と完全に干渉するというその能力にさらに影響を与えることはない。
【0027】
好ましくは参照アームの長さを変更するために提供される、少なくとも1つの参照アームセクションにおける入射ビームと出射ビームとの間の横方向オフセットによる参照ビーム方向の正確な反転は、様々な方法で達成することができるが、その全てをここに提示する必要はない。
【0028】
代わりに、本発明による方法を実装する干渉計装置の例示的な実施形態を、図を用いてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】ビーム方向を横方向に変位して反転するための3つのミラーと、光偏向素子としてのプリズムとを備える例示的な実施形態を示す。
図2】ビーム方向を横方向変位により反転するための2つの光回折面および1つの反射面を備えるプリズムと、光偏向素子としての回折格子とを有する、例示的な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明による方法を実現する、マイケルソン型フリービーム干渉計を示す。拡張型の部分空間コヒーレント光源(10)の光は、まず、コリメーションレンズ(20)によってコリメートされ、次に、ビーム・スプリッタ・キューブ(70)によってサンプル光と参照光とに分割される。サンプル光は、可能な限りの最大面積を横切って、生体眼の網膜(60)上へ方向づけられることになる。このために、眼(60)の前のフォーカスレンズ(40)で集束が行われ、よって、生体レンズは、焦点から現出する発散光線を適切な方法で屈折させる。網膜により散乱されるサンプル光は、ビーム・スプリッタ・キューブ(70)における反射によって、眼のレンズおよびフォーカスレンズ(40)を介して電子カメラ(30)上へ投影される。
【0031】
これと同時に、参照光ビームは、3つのミラーより成る装置(90)によってコリメートされ、ミラー共通の単一の反射面へ方向づけられ、よって、これは、逆平行にかつ参照光ビーム自体から横方向へ変位されて進む。これは、次に、プリズム(80)に当たり、プリズム(80)は、ビームを屈折させ、かつこれを2次元光検出器(30)上へと、サンプル光ビームに対して予め決められた角度で偏向させる。この場合のプリズム(80)は、定位置にあるが、3つのミラーより成る装置(90)は、参照光ビームの入口または出口の方向に沿って移動可能である。個々のミラーをバーへ接続する線は、図1に示すように、ここでは、ミラー共通の支持システムを示し、これにより、ミラーは、変位の間であっても確実にその相互的配置を維持する。装置(90)のこの変位は、参照アームの長さを変えるが、光検出器(30)への参照光の入射角または入射軌跡を変えるものではない。
【0032】
図1に示すビーム経路からは、コリメーションレンズ(20)の背後に、たとえば光ビームの左周縁領域に伝搬する光モードが、サンプルアームおよび参照アームの双方によって検出器(30)の下側の周縁領域へ方向づけられることも明らかである。仮に、装置(90)ではなく、直角ミラーが参照アームにおけるレトロリフレクタとして存在していれば、これらの光モードは、検出器(30)の下側領域におけるサンプルアームから、および上側領域における参照アームから現出することになる。
【0033】
また、3つ以上のミラーが存在していて、全てのミラーの法線が共通平面に存在し、入射光がこの平面に沿って方向づけられて横方向に変位されかつ逆平行に進む光ビームが生成されるものを含む、様々なミラー装置も考察し得ることは、明らかであろう。しかしながら、本発明による拡張型の部分空間コヒーレント光源を用いる干渉分光法で機能し得る変形例は、光ビームが奇数回の反射を完全に経験するものに限られる。
【0034】
図2は、本発明による方法を実装する参照アームの、第2の極めて単純な、よって好ましい実施形態を示す。フリービーム干渉計の他のコンポーネントは、図1の場合と同じである。
【0035】
参照光ビームの横方向にオフセットされかつ逆平行に進む経路は、同じく唯一のミラーで達成されることが可能であるが、この場合の光は、ミラーへ垂直に当たらない。たとえば、図2の参照光ビームは、プリズム(110)の第1の光透過性表面によって屈折されて偏向され、プリズム(110)を介してプリズム(110)の反射面上へ取り込まれて反射され、最後に、第2の透過性表面によって再度屈折され、よって、出現する参照ビームは、横方向に変位されかつ入射ビームに対して逆平行である。図2に示すように、プリズム(110)を対称に設計することは、明らかに効果的である。さらに、屈折面および反射面は、1つの構造ユニットを形成すべきであり、よって、これらは、参照ビームの方向に沿って、互いに対する配置を変えることなく、共通の動き−両方向矢印で示す−を実行することができる。
【0036】
概して、参照ビームは、同じ平面内のプリズムおよびミラーによって少なくとも2回屈折され、かつ正確に1回反射されることが効果的である。この場合の平面は、共通の屈折および反射面であり、屈折面は、反射面からの類推によりビーム方向および反射面の法線によって張られる。さらに、少なくとも1つの側面に反射コーティングを有するプリズム(110)を用いることは、効果的であると考えられる。
【0037】
しかしながら、たとえば、対称性のプリズムが使用されないものといった、多くの代替構成が可能である。反射プリズムを用いることも、必要不可欠ではない。ミラーは、たとえば、プリズムの透明な背面より後方に予め決められた距離で配置される場合もある。この場合、参照光ビームは、背側の完全に透明なプリズムを出て、空隙を通って進み、次いで反射される。これは、参照アームにおけるその経路上で、少なくとも合計4回屈折され、1回反射される。
【0038】
空隙は、装置に関しては不利であることがあるが、その理由は、光が通過する各境界面で、移動時間の遅延を伴う追加的な反射も生成され、これが、遅くともサンプル光との干渉中に破壊的影響を与え得ることにある。しかしながら、屈折媒体を介する参照光の透過も、概して波長分散を生成し、これも同様に望ましくない。屈折媒体を介する参照光の経路長は、可能な限り短く保つように努力される。
【0039】
いずれの場合も、プリズムの材料およびその設計、すなわち屈折面および正確に1つのミラーの配置、の選択は、非常に多様であり得、かつ個々のインスタンスにおいては、使用される波長をも考慮して、妥協されかつ最適化が考察される。
【0040】
最後に、図2には、固定回折格子(100)が透過における光偏向素子として示されている。図1のプリズムとは対照的に、格子(100)は、参照光全体を予め決められた角度で偏向せず、二次回折極大において格子(100)を出る参照ビームの発散束線、およびゼロ次の主極大における非偏向ビームを生成する。格子(100)を用いて、たとえばビームを光検出器(30)に向かって1番目の二次極大へと方向づける場合には、ビーム幅に起因して、他の全ての回折次数における線束ビームが検出器(30)に到達できなくなることが考慮されなければならない。これは、格子(100)が検出器(30)から最小距離に配置される必要があり、そのサイズは、幾何学的形状によって容易に決定され得ることを意味する。
図1
図2
【国際調査報告】