(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-513660(P2021-513660A)
(43)【公表日】2021年5月27日
(54)【発明の名称】浸漬機械時計
(51)【国際特許分類】
G04B 1/26 20060101AFI20210430BHJP
【FI】
G04B1/26
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-565520(P2020-565520)
(86)(22)【出願日】2019年1月16日
(85)【翻訳文提出日】2020年10月5日
(86)【国際出願番号】EP2019051047
(87)【国際公開番号】WO2019154601
(87)【国際公開日】20190815
(31)【優先権主張番号】102018001049.0
(32)【優先日】2018年2月9日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102018007229.1
(32)【優先日】2018年9月13日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520300471
【氏名又は名称】モントレ リキッド アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】バイアー モルテン
(57)【要約】
本発明は、流体の流れに対する抵抗に基づく脱進機を備えた時計であって、前記流体を連続的で途切れなく送り出すように配置されたポンプを備える時計に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流れに対する抵抗に基づく脱進機を備えた時計であって、前記流体を連続的で途切れなく送り出すように配置されたポンプを備える、時計。
【請求項2】
その主または唯一の動力供給装置として少なくとも1つの巻くことのできるばねを備える、請求項1に記載の時計。
【請求項3】
流体、特に10KPaを超える圧力および220Kを超える状態下で液体である流体、を内部に含む、請求項1または2に記載の時計。
【請求項4】
流体が、500MPaまでおよび400Kまでの状態下で液体である、請求項3に記載の時計。
【請求項5】
流体が、不活性液体、特に少なくとも1つのシリコーン油、好ましくは非反応性の不活性シリコーン油を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の時計。
【請求項6】
前記ポンプは、機械的ポンプであり、好ましくは、ギアポンプ、ピストンポンプ、膜ポンプ、またはベローズポンプである、請求項1から5のいずれか1項に記載の時計。
【請求項7】
前記ポンプは、巻くことのできるばねによって駆動される、請求項6に記載の時計。
【請求項8】
好ましくは調節可能な、流量制御装置を備え、前記流量制御装置は、それを通る流体の流れを制限するように配置される、請求項1から7のいずれか1項に記載の時計。
【請求項9】
前記流量制御装置は、バルブであり、好ましくは流体の調整可能なスループットのために配置されたバルブであり、最も好ましくは調節可能な開口を有するニードルバルブである、請求項8に記載の時計。
【請求項10】
前記流量制御装置を通る液体の流量が液体の温度から独立していることを保証するように、温度補償機能を備えた請求項8または9に記載の時計であって、前記温度補償は、好ましくは、液体の温度の変化を補償する熱膨張性能を有する少なくとも1つの材料を選択することに基づき、特に、前記特徴を有する、均質性材料、例えばポリマー材料、または非均質性材料、例えばバイメタル材料、を選択することに基づく、時計。
【請求項11】
流体は、前記流量制御装置を通じて送り出され、流体の流量は、時間の経過を測定および表示するのに使用される、請求項8、9または10のいずれか1項に記載の時計。
【請求項12】
前記ポンプの運転速度は、前記流量制御装置を通る流体の流量に依存し、前記運転速度は、時間の経過を測定および表示するのに使用される、請求項11に記載の時計。
【請求項13】
前記流量制御装置を出る流体は、流体によって駆動される駆動ユニットに導かれ、前記駆動ユニットの運転速度は、時間の経過を測定および表示するのに使用される、請求項11に記載の時計。
【請求項14】
時計ムーブメントは、ハウジングによって囲まれ、補償装置が配置され、前記ハウジングの熱膨張および収縮を補償し、前記補償装置は、好ましくは、膜または蛇腹を備え、前記膜または蛇腹は、その内面が前記ハウジングの周囲の外部に接続しながら、その外面を前記ハウジングの内部に露出させるように、配置される、請求項1から13のいずれか1項に記載の時計。
【請求項15】
ムーブメントを囲むハウジングを備えた、請求項1から14のいずれか1項に記載の時計であって、前記ハウジングは、流体、特に液体、で内部的に完全に満たされている、時計。
【請求項16】
前記時計に動力を提供する1つ以上のばねを巻くための巻き取り装置を備えた、好ましくは、流体の流量の設定装置を備えた、請求項1から15のいずれか1項に記載の時計。
【請求項17】
時計仕掛けまたはムーブメントを囲むハウジングを備えた、好ましくは請求項1から16のいずれか1項に記載の時計である、機械時計であって、前記時計の内部が、実質的におよび好ましくは完全に、周囲圧力および温度で、特に100KPaおよび273Kで、液体である流体で満たされている、機械時計。
【請求項18】
前記脱進機は、液体の流れ抵抗に基づく、請求項17に記載の時計。
【請求項19】
調節可能な流量制御装置が、液体の流量を設定するように配置される、請求項18に記載の時計。
【請求項20】
前記時計は、携帯時計、特に腕時計である、請求項1から19のいずれか1項に記載の時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計、特に、時計歯車を駆動する電気モータに依存しない機械時計に関する。より具体的には、本発明は、機械式携帯時計に関する。
【背景技術】
【0002】
腕(懐中)時計(watch)は、人が携帯または着用することを意図した時計である。人の活動によって生じる動きにもかかわらず、作動を続けるように設計されている。腕時計(wristwatch)は、ある種類のストラップまたはブレスレットによって取り付けられて、手首の周りに着用されるように設計されている。
【0003】
その歴史の大半で、時計は、主ぜんまいを巻き上げることによって動力を供給される、ぜんまい仕掛けによって駆動され、振動するてん輪で正確に作動する機械装置だった。今日、ほとんどの時計は、安価で中程度の値段であり、主に時間管理に使用され、クオーツムーブメントを有するが、より高価なコレクティブル時計は、従来の機械的ムーブメントを有することが多い。電子式ムーブメントと比べると、機械時計は、精度が落ちることが多く、位置、温度、磁気の影響を受ける。それらは、また、製造するのに費用がかかり、定期的なメンテナンスおよび調整を必要とし、より故障しやすい。それにもかかわらず、機械時計の技巧は、時計を購入する人々の一部から、特に時計コレクターの間で、依然として関心を集めている。
【0004】
従来の機械時計ムーブメントは、動力源として、主ぜんまいと称されることが多い渦巻きばねを使用する。手動時計では、ばねは、ユーザーが時計の竜頭を回すことによって定期的に巻き戻されなければならない。あるいは、ばねは、着用者の自然な動きを用いて自動的に巻き戻されてよい(自動巻き腕時計)。本発明は、これらのタイプの機械時計の両方に関する。
【0005】
従来の機械的ムーブメントは、脱進機構を用いて主ぜんまいの巻き戻しを制御および制限しており、そうでなければ単純な巻き戻しとなるものを、制御された周期的なエネルギー放出に変換する。従来の機械的ムーブメントは、ひげぜんまい(ヘアスプリングとしても知られる)と共にてん輪を備える脱進機を用いて、時計のギアシステムの動作を制御する。そのような従来の脱進機は、エネルギーを計時要素に伝達し(「インパルス作用」)、その振動の数が数えられることを可能にする。インパルス作用は、エネルギーをてん輪に伝達して、その周期中に摩擦および他の類似の要因に失われたエネルギーを置き換え、タイムキーパを振動させ続ける。脱進機は、時計の歯車列を通じて伝達された、主ぜんまいからの力によって駆動される。てん輪の各揺動は、脱進機のガンギ歯車の歯を解放し、時計の歯車列が一定の量だけ前進または「脱進する」ことを可能にする。この規則的で周期的な前進は、時計の針を一定の速度で前進させる。同時に、歯は、別の歯が脱進機のパレットに引っ掛かる前に、時計要素をひと押しし、脱進機をその「ロック」状態に戻す。脱進機の歯の急停止は、機械時計や腕時計を動かす際に聞こえる特徴的な「ティッキング」音を発生させるものである。
【0006】
そのような公知の機械的ムーブメントには、多くの欠点がある。脱進機にはかなり壊れやすいひげぜんまいが使用されている。このひげぜんまいは、破損または磨耗する可能性があり、機械的衝撃に非常に弱い。そのようなひげぜんまいは、また、時計の内部が、制御された圧力範囲で、空気などの気体で満たされている場合にのみ使用することができる。これは、時計が作動することができる外圧の範囲を著しく制限し、時計が、水中で、特に潜水時に関連する深さなどの高圧下で、機能を果たすことができなければならない場合に、高性能シールを有することを求める。一般に、そのような時計仕掛けは、時計仕掛けが「沈められた」場合に、すなわち、時計の内部が油などの液体で満たされている場合に、液体の粘度がてん輪の機能を効果的に妨げるので、動作することができない。
【0007】
従来技術の時計のこれらのおよび他の欠点を克服するために、本発明は、てん輪/ひげぜんまい型の脱進機を使用しない機械的ムーブメント時計に特に関する。その代わりに、本発明は、流体、特に液体の流れに対する抵抗に基づく脱進機を使用する。
【0008】
液体駆動の脱進機は、当技術分野で知られている。それらは、一般に、液体、一般的には水、の(連続的または不連続的である)流れから液体の等しい漸増する部分を導出し、その部分を数えることに基づいている。液体の流れが均一であり、時間と共に変化せず、部分の数が時間の経過に正比例するようになっていると、考えられている。本発明は、根本的に異なる概念に基づいているが、この従来技術は、ここで、より詳細に説明される。
【0009】
初期の液体駆動脱進機は、ギリシャの技術者であるビザンティウムのPhilo(紀元前3世紀)によって、彼の技術論文Pneumatics(第31章)で記述されたようである。水槽から供給されるカウンターウェイトスプーンは、満杯になったときにボウル型の容器でひっくり返り、その過程で軽石の球形片を放出する。スプーンが空になると、スプーンはカウンターウェイトによって再び引き上げられ、締め付けストリングによって軽石上でドアを閉じる。Philoは、「その構造は時計の構造に似ている」とコメントし、そのような脱進機構は既に古代の水時計に組み込まれていたことを示している。
【0010】
中国では、唐の僧侶Yi Xingが、723年(または725年)に水力式の輪でできた球および時計駆動の仕組みに脱進機を作り上げた。Needham,Joseph(1986)参照。中国における科学および文明:第4巻、物理および物理技術、第2部、機械工学。台北:Caves Books Ltd,第319頁。中国の水に基づく脱進機に関するさらなる情報は、脱進機に関するウィキペディアの項目で見ることができ、それから上記の情報が導き出される。例えば、水は、旋回軸上の容器に流入した。脱進機の役割は、満杯になるたびに容器をひっくり返し、等量の水を量り分けるたびに時計のホイールを前進させることであった。放出の間の時間は、流量に依存し、源容器内の水位が低下するにつれて水圧と共に減少した。
【0011】
機械時計の発達は、時計のムーブメントが振動錘によって制御されることを可能にする脱進機の発明に依存していた。中国の装置における水の連続的な流れとは異なり、中世の脱進機は、規則的な、反復的な一連の離散的な動作と、自己反転動作の性能とを特徴とした。
【0012】
どちらの技術も脱進機を使用したが、これらは名前しか共通していない。中国のは間欠的に動作し、ヨーロッパのは離散的だが連続的なビートで動作した。どちらのシステムも、原動機として重力を使用したが、その動作は非常に異なっていた。機械時計では、落錘は、連続的で均等な力をトレーンに及ぼし、それは、脱進機が制御装置によって制約されたリズムで交互に止められて解放された。巧妙に、ガンギ車を回したまさにその力が、ガンギ車を減速させ、それを途中まで戻した。言い換えれば、一方向の力は、自己反転動作を生じさせ、3ステップ前進について約1ステップ戻した。しかしながら、中国のタイムキーパでは、及ぼされる力は変動し、それぞれの連続するバケットの重量は、先端が解放してホイールを所定の位置に保持していた止め具を持ち上げるまで、蓄積する。これにより、ホイールは、約10度回転し、次のバケットを、止め具がはじかれている間に水の流れの下に運ぶことができる。
【0013】
上述の従来技術の装置は、大きく、水の巨視的な取り扱いに限定され、文字通りバケット内であり、水の連続的な流れが機構に供給するために利用可能であり、出口またはリザーバが廃棄される水のために利用可能であることは、明らかである。そのような技術は、精度が非常に限られており、当然、モバイル時計、特に腕時計などのユーザーが着用可能な時計には使用できない。
【0014】
特許文献1は、ピストンを収容するオイル入チャンバを備えた時計を開示している。ピストンは、貫通穴を有し、チャンバ内を主ぜんまいで動き、これによりオイルが穴を流れるようになる。この流れの速度は、ピストンがチャンバ内を動くのに要する時間を決定する。ピストンがその移動経路の終わりに到達したときに、ピストンは、その開始位置に戻されなければならず、これは、時間測定プロセスを中断する。従って、この時計は、連続的な途切れない時間計測を行うことはできない。
【0015】
本発明の重要な目的は、てん輪/ひげぜんまい脱進機に依存する公知の機械時計の欠点を回避する時計を開示することである。
【0016】
本発明のさらなる重要な目的は、時間の経過を測定するために流体、特に液体、の流れを使用し、着用可能なアイテムとして具現化することができる、時計を開示することである。
【0017】
本発明の別の重要な目的は、時計の内部が液体で満たされるようにサブマージドムーブメントを有することができる、特に腕時計などのユーザーが着用可能な時計である、時計を開示することである。
【0018】
本発明のさらなる重要な目的は、連続的な途切れない時間の測定を可能にする、特に腕時計などのユーザーが着用可能な時計である、時計を開示することである。
【0019】
本発明のこれらのおよび他の目的は、添付の独立クレームに定められる本発明によって達成される。
【0020】
添付のサブクレームは、本発明の好ましい実施形態を定める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国特許第3,540,208号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
上述の中国の従来技術の機構とは対照的に、本発明は、その数が時間の経過を示す液体の個別の漸増する部分を生成するという考えから逸脱する。その代わりに、本発明は、好ましくは時計の動作条件下で液体である流体の正確に制御された流れを使用して、好ましくは主ぜんまいである時計の動力源の巻き戻しを制御および調整する。当然、動力源は、ばねである必要はない。好ましい実施形態では、主ぜんまいは、設定可能なバルブなどの流量制御装置を通じて液体の流れを生じさせるポンプを駆動する。この流量は、流量制御装置の設定に応じて一定の流れ抵抗を満たす。
【0023】
液体の流れは、ポンプの動作に対応し、流量制御装置を設定することによって流れを制限することが、ポンプの動作を対応して制限するようになっている。流量制御装置を通る流れが低減されると、流量制御装置がポンプを制動するように作用するので、ポンプの動作は、対応して低減される。このように、流量制御装置を液体の特定の流量に設定することは、主ぜんまいがポンプと機械的に関係しているので、主ぜんまいの巻き戻しを効果的に制御する。流れが均一で経時的に一定であれば、それは、例えばポンプの作用を監視することによって、主ぜんまいの巻き戻しを監視することによって、時間の経過を測定および表示するのに使用されることができる。ポンプは、好ましくは連続流ポンプである。すなわち、それは、液体の連続流を維持することができ、従って、必要な巻きまたは設定ステップの間も、時間の連続的な途切れない測定を維持することができる。
【0024】
従って、本発明は、基本的に、流体の流れに対する抵抗に基づく脱進機を備えた時計として定義することができる。なお、この動作では、上述した中国の従来技術のように、バルブを通過する液体の量を監視または測定する必要はない。液体の流量は無関係である。唯一の関連する作用は、流量制御装置を、主ぜんまいの巻き戻しが時計を適切な速度で駆動して時間を正確に示す流量に、設定することである。
【0025】
全ての典型的な現代の機械時計のように、発明的時計の好ましい実施形態は、その主または唯一の動力供給装置として巻くことのできるばね(すなわち主ぜんまい)を備える。必要に応じて、2つ以上の主ぜんまいを積み重ねた配置で使用することができ、時計のパワーリザーブを増加させる。時計は、時間表示等を設定するために、ばねを巻くためのかなり従来のクラウン配置を有してよい。
【0026】
時計は流体を含み、その流れ抵抗は脱進機で使用される。好ましくは、流体は、時計がさらされ得る状態の完全セットにわたる液体である。そのような状態は、好ましくは、10KPaを超える圧力および220Kを超える、ならびに500MPaまでおよび400Kまでの状態を含む。
【0027】
適切な液体は、基本的に、上記の状態を満たす、および関連する化学的および/または物理的変化をその特性に示さずに長期間にわたって十分に安定である、全ての液体を含む。具体的には、適切な液体は、時計内で優勢な状態下で、光に曝された場合でさえ、数年または数十年にわたって、化学分解または他の反応を示さない。現在、最も好ましいそのような液体は、シリコーン油、特に反応性官能基を有しないシリコーン油である。シリコーン油は、有機側鎖を有する任意の液体重合シロキサンである。本発明では、反応性をできるだけ低下させるべきであるので、液体を形成するシロキサンは、可能な限り反応性をほとんど示さない不活性側鎖を有する。
【0028】
好ましいシリコーン油の一例は、Clearco Productsから入手可能なポリジメチルシロキサン油であるPSF−20cSt Pure Silicone Fluidである。
【0029】
本発明の時計は、その脱進機内で、流体、好ましくは液体、の流れ抵抗を使用する。好ましい実施形態では、必要な流れを作り出すために、時計は、液体を送り出すように配置されたポンプを内部に備える。ポンプは、ポンプに最適な動力供給を作り出すように通常はギアホイールのセットを通じて、巻き上げ可能な主ぜんまいによって駆動される。ポンプは、好ましくは機械的ポンプであり、最も好ましくはギアポンプである。あるいは、ポンプは、ピストンポンプ、膜ポンプ、ベローズポンプ、または連続運転が可能な任意の他の適切なタイプのポンプであることができ、前記の運転は、主ぜんまいによって提供される駆動力がポンプを駆動するのに十分である限り、中断されない。
【0030】
送り出される液体に適切な、明確に定義された、一定の流れ抵抗を有するために、時計は、好ましくは、そこを通る流体の流れを制限するように配置された、好ましくは調整可能な、流量制御装置を備える。液体は、主ぜんまいの巻き戻しによって駆動されるポンプによって、流量制御装置を通じて送り出される。流量制御装置は、液体の流れを制限し、それによって、ポンプのブレーキとして作用する。ポンプの運転速度は、主ぜんまいに蓄えられたパワーリザーブに関係なく、流量制御装置を通る液体の流れによって決定する。必要に応じて、ポンプは、減圧装置を介して流量制御装置に接続されることができる。それは、流量制御装置の入力圧力が適切かつ一定であることを確実にする。従って、流量制御装置は、主ぜんまいが巻き戻る速度を決定し、この速度を一定に保つ。これは、液体の流量を設定することによって、時計の速度を設定することを可能にし、主ぜんまいから流量制御装置への伝動機構の基本的に全ての要素(例えばギアホイール)から時間測定および表示機能を導出することを可能にする。例えば、ポンプの運転速度は、流量制御装置を通る流体の流量に依存するので、ポンプの運転速度は、時間の経過を測定および表示するのに直接使用することができる。
【0031】
必要に応じて、時間測定および表示機能は、流量制御装置を出る流体が、流体によって駆動される駆動ユニットに導かれ、駆動ユニットの運転速度が、時間の経過を示すのに使用されるということにおいて、実現することができる。駆動ユニットは、例えば、流量制御装置からの出力流によって駆動されるロータを備えることができる。
【0032】
流量制御装置を通過するときの流体(特に液体)の流れ抵抗は、脱進機の作用の基礎であり、従来の機械時計におけるてん輪の作用と同じくらい確実に一定でなければならないので、流量制御装置の一定の変化しない動作は、重要である。一方、流れは、時計が初めて始動するときに、ある初期設定を一般に必要とし、また、いくらか後の調整を必要とすることさえある。流れは、時計がさらされ得る変化する周囲条件下でも極めて均一でなければならない。本発明の1つの非常に好適な実施形態では、流量制御装置は、バルブであり、好ましくは流体の調整可能なスループットのために配置されたバルブであり、最も好ましくは調整可能な開口を有するニードルバルブであることが、分かっている。時計の適切な全体構造が与えられれば、バルブ、特にニードルバルブは、時計を開く必要なしに、外部から設定または調節できるように、配置することができる。例えば、時計の外側に延びてそのような調節を可能にする内蔵コネクタを有することが考えられており、これは、時針の設定を可能にし、主ぜんまいを巻き上げることを可能にする、公知のクラウン装置に相当する。
【0033】
流量制御装置は、温度補償機能を有し、流量制御装置を通る液体の流量が液体の温度から独立していることを保証する。温度補償は、液体の温度の変化を補償する熱膨張性能を有する少なくとも1つの材料を選択することに、基づくことができる。これは、前記の特性を有する、均質性材料、例えばポリマー材料、または非均質性材料、例えばバイメタル材料を選択することによって、達成することができる。例えば、流量制御装置がニードルバルブである場合、ニードルは、時計が通常さらされる温度変動(例えば5℃と65℃との間)を自動的に補償するように、適切なポリマー材料から作製され、ホルダ内に配置されることができる。そのような配置は、例えば油圧サスペンション制御装置から基本的に知られており、本発明での使用に容易に適合することができる。
【0034】
本発明の現在好ましい全ての実施形態では、時計は、好ましくは液体である流体で、内部的に実質的に、好ましくは完全に、満たされている。言い換えれば、本発明は、好ましくは「サブマージド」ムーブメントを使用し、全てのその機械的部分が、脱進機能を提供するのにも役立つ液体に完全に浸漬する。これは、時計内のシリコーン油などの液体と、海水などの外部液体と、の間の圧縮性の関連差がないので、深海潜水作業においてなど、非常に高い外部液圧に時計がさらされることが意図されている場合であっても、高機能のシールが必要とされないという点で、いくつかの利点を有する。時計が完全に液体で満たされている場合、流量制御装置に液体を供給するポンプは、時計内の液体充填から液体を単に取り込むだけでよく、流量制御装置は、基本的に任意の所望の仕方で時計の内部に戻る液体の流れを解放し得る。ポンプ出口と流量制御装置入口との間の接続を除いて、特別な圧力抵抗性または耐圧コンジットの必要はない。
【0035】
時計が完全に液体で満たされている場合、液体の熱膨張は、流量制御装置に影響を与える以上に問題を引き起こし得る。時計は、外部流体を破裂させたり吸引したりすることなく、増加または減少する液体体積に適応できなければならない。従って、本発明は、好ましい実施形態では、時計内の増加または減少する液圧を補償するように配置された補償装置を有することができ、補償装置は、好ましくは、膜または蛇腹を備え、膜または蛇腹は、その内面を時計の周囲の外部に露出させながら、その外面を時計の内部に露出させるように、配置される。この配置では、蛇腹は、時計内の液体が膨張するときに圧縮し、液体が収縮するときに膨張する。当然、補償装置は、反対方向に膨張および圧縮するように配置することができる。
【0036】
本発明に特有の上述の要素および部品以外、発明的時計は、従来の機械時計に対応することができる。それは、特に、任意の通例の腕時計のような歯車、針、文字盤等を有することができる。従って、本発明は、従来の機械時計の脱進機構を本発明の脱進機に置き換え、その時計に本発明の液体を充填することによって、基本的に作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の一実施形態のいくつかのコア要素およびそれらの相互作用を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の第1の好ましい実施形態を、本発明のいくつかのコア要素およびそれらの相互作用を概略的に示す添付の
図1を参照して、これから説明する。
【0039】
時計ムーブメント全体を取り囲むハウジング(図示せず)を備える第1の好ましい実施形態では、ハウジングは、ジメチコンオイルなどの液体で満たされる。従って、ムーブメントは、液体中に沈んでいる。
【0040】
この実施形態では、時計は、主ぜんまい1によって動力が供給され、この主ぜんまい1は、巻き戻し時に時計の動きを駆動する。
【0041】
主ぜんまい1は、適切に配置された歯車装置2を通じてポンプ3を駆動する。ポンプ3は、ギアポンプなどの油圧ポンプである。
【0042】
歯車装置2を通じて主ぜんまい1によって駆動されると、ポンプ3は、ハウジングを満たしている液体量から液体を吸い込む。ポンプ3は、液体をダクト4に送り込み、このダクト4は、ポンプの出口をバルブ5に接続する。バルブ5は、そのスループットを設定することができるように調節可能であり、バルブのスループット温度を独立させる温度補償機能を備えている。
【0043】
作動中、バルブ5のスループットは、ポンプ3の速度を制御する。ポンプ3は、バルブ5を通る液体の通過が許容するよりも速く作動することができないからである。ポンプ3は、歯車装置2によって主ぜんまい1と機械的に連結されているので、ポンプ3の速度は、主ぜんまい1の巻き戻しを制御する。
【0044】
時計は、目盛り盤または時計の文字盤(図示せず)上に時間を表示するための針または何らかの他の装置を有する。これらは、それ自体公知の方法で、例えば歯車装置2またはポンプ3のところで、これらをムーブメントに接続することによって、動かすことができる。図に示す脱進機は、適切な歯車装置を介して接続された公知の時計の機械式脱進機に、取って代わることができる。
【0045】
図2および
図3に部分的に示される別の好ましい実施形態では、時計は、基本的に第1の実施形態のように構成される。しかしながら、第1の実施形態のギアポンプは、連続流ピストンポンプに置き換えられている。第2の実施形態では、ピストンポンプ(6)は、3つの膨張・圧縮室(8)を備え、それは、この実施形態では、内部で往復移動可能なピストン(80)を収容するシリンダ(30)によって形成され、前記のシリンダは、
図3に概略的に示すように、星型の構成で配置される。
【0046】
他の実施形態では、膨張・圧縮室の数は、異なることができる。好ましくは、死点問題を回避するために、少なくとも2つのそのようなチャンバが存在する。さらに、他の実施形態では、ポンプは、第2の実施形態のシリンダ要素およびピストン要素の代わりに、膜ポンプ要素またはベローズポンプ要素を備えてよい。この構成は、星型以外であってよい。
【0047】
図2および
図3に示すように、ピストン(80)は、通常、ポンプ(6)の中心でクランクシャフト(70)によって駆動され、前記のクランクシャフトは、適切な歯車装置を通じて時計の主ぜんまいによって駆動される。ピストン(80)は、ピストンロッド(40)によってクランクシャフト(70)に接続されている。
【0048】
図2は、第2の実施形態で使用したタイプの単一シリンダユニット(7)を示すが、
図3のように他の2つのシリンダとは組み合わせていない。
【0049】
シリンダユニット(7)は、その上端にシリンダ(30)を閉じるシリンダヘッド(10)を有する。シリンダカバーは、吸入バルブ(90)および排出バルブ(20)を収容し、それは、膨張・圧縮室(8)内の液体の連続流を制御する役割を果たす。両方のバルブ(90,20)は、通常閉じられる(NCバルブ)ように、ばね付勢される。
【0050】
ピストン(80)は、ピストンロッド(40)を介してクランクシャフト(70)によってシリンダ(30)内を往復運動するように駆動される。ピストン(80)がクランクシャフト(70)の方に動くと、吸入バルブ(90)が開き、ハウジングからチャンバ(8)内に液体が流入する。ピストン(80)がクランクシャフト(70)に最も近い位置に到達すると、吸入バルブ(90)が閉じる。ピストン(80)がクランクシャフト(70)から離れ始めると、排出バルブ(20)が開き、液体がチャンバ(8)から流出するようにする。
【0051】
図3の配置では、シリンダユニットには、
図2に示す底部とオイル受け(60)がない。その代わりに、それらは、クランクシャフト(70)をその中心に有するクランクケース(50)を共有し、全てのシリンダユニットが、共通して前記のクランクシャフト(70)によって駆動されることができるようになっている。
【0052】
排出バルブ(20)は、第1の実施形態におけるバルブ(5)のように、全てのシリンダユニットをバルブに接続するダクト(図示せず)内に液体を流入させる。従って、このバルブは、シリンダユニットから出る全ての液体を受け取り、その設定は、排出バルブ(20)ごとに背圧上昇を制御する。この背圧は、第1の実施形態におけるギアポンプの機能と同様に、シリンダユニットの作動速度を制御するように作用する。全てのシリンダユニットの出口を共通の調整可能なバルブ、参照
図1、バルブ(5)、に接続するダクトは、例えば、液体圧に耐える機械的強度を有する金属チューブで作ることができる。
【国際調査報告】