特表2021-514394(P2021-514394A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-514394(P2021-514394A)
(43)【公表日】2021年6月10日
(54)【発明の名称】止血材
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20210514BHJP
   A61K 45/08 20060101ALI20210514BHJP
   A61K 31/195 20060101ALI20210514BHJP
   A61K 31/197 20060101ALI20210514BHJP
   A61K 38/55 20060101ALI20210514BHJP
   A61K 38/39 20060101ALI20210514BHJP
   A61K 31/717 20060101ALI20210514BHJP
   A61K 33/06 20060101ALI20210514BHJP
   A61K 35/02 20150101ALI20210514BHJP
   A61K 31/722 20060101ALI20210514BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20210514BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20210514BHJP
   A61L 15/24 20060101ALI20210514BHJP
   A61L 15/58 20060101ALI20210514BHJP
   A61L 15/44 20060101ALI20210514BHJP
【FI】
   A61K45/06
   A61K45/08
   A61K31/195
   A61K31/197
   A61K38/55
   A61K38/39
   A61K31/717
   A61K33/06
   A61K35/02
   A61K31/722
   A61K9/70 401
   A61K47/32
   A61L15/24 100
   A61L15/58 100
   A61L15/58 310
   A61L15/44 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-566335(P2020-566335)
(86)(22)【出願日】2019年2月14日
(85)【翻訳文提出日】2020年10月12日
(86)【国際出願番号】GB2019050396
(87)【国際公開番号】WO2019158926
(87)【国際公開日】20190822
(31)【優先権主張番号】1802380.4
(32)【優先日】2018年2月14日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520308396
【氏名又は名称】メッドトレード プロダクツ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ハーディ、クレイグ
(72)【発明者】
【氏名】ホガース、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】グリスト、マシュー
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C084
4C086
4C087
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA72
4C076BB31
4C076CC19
4C076EE06A
4C076EE09
4C076EE14
4C076EE16A
4C076EE23
4C076EE47
4C076EE48
4C076EE49
4C076FF68
4C081AA06
4C081AA12
4C081BA11
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4C081CA081
4C081CA101
4C081CC01
4C081CC02
4C081CC05
4C081DA02
4C081DA05
4C084AA02
4C084AA20
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4C084DC11
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4C084NA10
4C084NA14
4C084ZA531
4C084ZA891
4C086AA01
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4C086HA04
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA32
4C086MA63
4C086NA10
4C086NA14
4C086ZA53
4C086ZA89
4C087AA01
4C087AA02
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4C087NA10
4C087NA14
4C087ZA53
4C087ZA89
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA44
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA52
4C206MA83
4C206NA10
4C206NA14
4C206ZA53
4C206ZA89
(57)【要約】
本発明は、正常及び凝固障害の両方の場合の創傷傷害からの血流を制御するのに有効であり、同時に短縮された圧迫時間を維持し、蘇生輸液の必要性を最小限とし、及び使用が容易かつ安全である止血材に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
止血剤、生体接着剤、及び抗線溶剤又はその誘導体を含む止血組成物。
【請求項2】
前記抗線溶剤が、トラネキサム酸、アミノカプロン酸、アミノメチル安息香酸、アプロチニン、イプシロン−アミノカプロン酸、及びフィブリノーゲンから選択される1又は複数を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記止血剤が、酸化再生セルロース、カオリン、ゼラチン、カルシウムイオン、ゼオライト、コラーゲン、キトサン、又はキトサン塩から選択される1又は複数を含む、請求項1又は請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記止血剤が、キトサン塩を含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記キトサン塩が、キトサン酢酸塩、キトサン乳酸塩、キトサンコハク酸塩、キトサンリンゴ酸塩、キトサン硫酸塩、又はキトサンアクリル酸塩から選択される1又は複数を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記キトサン塩が、乳酸塩及び/又はキトサンコハク酸塩を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記生体接着剤が、カルボマー、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、又はジビニルグリコールで架橋された高分子量アクリル酸ポリマー若しくはジビニルグリコールで架橋されたポリアクリル酸の塩から選択される1又は複数を含む、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記生体接着剤が、アクリル酸の架橋されたポリマーを含み、前記ポリマーは、少なくとも約50000g/molの分子量を有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記生体接着剤が、アリルスクロース若しくはアリルペンタエリスリトールで架橋されたアクリル酸のポリマーを含むホモポリマー;アリルペンタエリスリトールで架橋されたアクリル酸及びC10〜C30アルキルアクリレートのポリマーを含むコポリマー;並びに/又はカルボマーホモポリマー若しくはポリエチレングリコール及び長鎖アルキル酸エステルのブロックコポリマーを含むコポリマーから選択される1又は複数を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、キャリア材料に適用される、請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記キャリア材料が、織布材料、不織布材料、フレキシブル基体、フィルム、フォーム、又はシートゲルから選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
生理学的ターゲット部位からの血流を止めるのに用いるための、請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の止血組成物。
【請求項13】
請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載の止血組成物の製造方法であって、前記方法は、止血剤を、生体接着剤及び抗線溶剤又はその誘導体と組み合わせる工程を含む、方法。
【請求項14】
前記方法が:(1)所定の重量の止血剤、及び所望に応じて不活性材料を、混合容器中に分配する工程;(2)所定の重量の生体接着剤を、前記止血剤及び所望に応じて不活性材料を含有する前記混合容器中に分配する工程;(3)所定の重量の抗線溶剤又はその誘導体を分配する工程;並びに(4)前記止血剤、生体接着剤、及び抗線溶剤又はその誘導体を混合する工程、を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載の止血組成物を、生理学的ターゲット部位に適用する工程、及び前記止血材に圧力を掛ける工程、を含む、止血方法。
【請求項16】
前記圧力が、約1分間以下にわたって掛けられる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載の止血組成物を適用されて含んでいるキャリア材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出血の制御に用いるための止血材に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトであっても非ヒトであっても、動物が出血を起こす傷害又は創傷を受け得る多くの状況が存在する。軽傷の場合、前記出血は、血液の凝固を引き起こし、出血を防いで損傷した血管の修復を補助する固体の血餅を形成する、身体の自然の止血機構によって止めることができる。
【0003】
従来から、創傷からの血流を止めるために主として採用される技術は、前記創傷に圧力を掛け続けることである。これによって、凝固因子が前記創傷の部位に集まり、血流を止めるための凝固した血液塊を形成することができる。しかし、この技術は、重傷の場合、及び出血点が複数ある創傷の場合には適さない。したがって、出血は、主たる死因であり続けている。
【0004】
出血を原因とする死亡は、戦場において特に問題である。典型的には、この状況で発生する創傷は、著しい出血を伴い、多くは死に至る。出血はまた、外傷後の一般市民の間でも、相当な死因である。
【0005】
創傷からの血流を止めることを促進する製品を提供する取り組みが行われてきた。これらとしては、Quick−clot(登録商標)の商品名で販売されている製品が挙げられる。簡単に述べると、この製品は、前記創傷に圧力と共に適用された場合に血流を止めることができる活性化合物でコーティングされたキャリア材料を含有する。
【0006】
より具体的には、Quick−clot(登録商標)は、創傷から流れている血液から水分を吸収し、それによって前記血液中に存在する凝固因子が濃縮されて前記血液がより素早く凝固するように、ゼオライト化合物を含み、そのため、前記ゼオライトと前記凝固した血液とが一緒になって血塊を形成して血流を止める。
【0007】
有効ではあるが、前記出血を制御するために圧力を掛け続けることが必要であることから、これらの組成物に問題がないわけではない。戦術的第一線救護(TCCC)によって2009年11月に提供されたガイダンスによると、止血包帯、具体的にはCombat Gauze(登録商標)を用いる場合に、少なくとも3分間の圧迫を行うべきであることが示された。少なくとも3分間の圧迫を必要とする止血製品の他の例としては、限定されないが、Celox(登録商標)Gauze(Medtrade Products Ltd)及びChitogauze(登録商標)(Hemcon)が挙げられる。
【0008】
より最近では、米国特許出願公開第2014/105950号に記載されるように、圧迫時間を短縮するために、生体接着剤が用いられて、上述した止血ドレッシング材に組み込まれており、血液喪失量及び全体としての治療時間を少なくする可能性がある。
【0009】
医師によって強調されてきたこの研究に対するさらなる態様は、凝固障害に起因する出血を制御する身体の能力の機能障害である。凝固障害は、血液の凝固する(血餅を形成する)能力が損なわれる病状として定められ得る。この病状は、長引く又は過剰な出血の傾向を引き起こす場合があり、それは、傷害又は医療手技の後に発生し得る。上記で述べた止血製品を用いた治療に対する結果としての影響は、圧力を掛ける必要のある時間が長くなることであり、すなわち、凝固障害ではない患者と比較して、さらに長い圧迫期間が必要となる。
【0010】
患者が凝固障害である状況では、このことは、治療後に長引く出血をもたらす可能性があり、病院での手術治療の前に、さらなる医療介入が必要となる(戦場又は一般市民)。凝固障害の患者において止血を得るための治療時間が長くなることは、攻撃下での治療時は、医師の命をさらに危険に曝す結果にもなる可能性があり、又は他の負傷者若しくは傷害に対する対応が遅れる結果となる可能性がある。
【0011】
出血する傷害に対するさらなる態様は、体液及び蘇生輸液を投与する必要があることである。
【0012】
米国の外科研究所によって実施された試験では、生体内凝固障害モデルを用いて、いくつかの既存製品において止血が不充分であること、又は生体接着剤を含有する製品において圧迫が長引くことが報告されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の目的は、正常及び凝固障害の両方の場合の創傷傷害からの血流を制御するのに有効であり、同時に短縮された圧迫時間を維持し、蘇生輸液の必要性を最小限とし、及び使用が容易かつ安全である止血材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本発明の第一の態様によると、止血剤、生体接着剤、及び抗線溶剤又はその誘導体を含む止血組成物が提供される。
【0015】
本発明の組成物は、顆粒、粉末、フレーク、フォーム、溶液、又はゲルが挙げられるがこれらに限定されないいくつかの形態であってよく、これらは、創傷に直接適用されてよく、又はキャリア材料上にコーティング、担持、又は送達されてよい。
【0016】
「止血剤」とは、本明細書において、止血を促進する物質を意味する。前記止血剤は、血液と接触させた場合に、出血を阻止又は抑制するための血餅又は栓子を生成する能力を有し得る。
【0017】
止血材のための生理学的ターゲット部位は、動物の身体中又は身体上のいずれの部位であってもよい。前記動物は、ヒト又は非ヒト動物であってよい。前記生理学的ターゲット部位は、創傷であってよく、又はそれは、医療手技の過程で、例えば外科手術の過程で発生した、身体中の開口部であってもよい。以降、前記生理学的ターゲット部位は、単に便宜上及び例示の目的で、創傷と称される。
【0018】
有益なことには、本発明の止血材は、基礎的な医療トレーニングを受けただけの人によって適用可能である。単に、前記材料を前記生理学的ターゲット部位に適用し、続いて圧力を掛けるだけのことである。
【0019】
なおさらには、前記止血材は、取り扱い及び適用が容易である。典型的には、それは、適用まで乾燥状態で保存される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
生物学的プロセスを利用する製品は、温度依存性を有する傾向にある。多くの場合、失血を起こしている患者は、戦場での激しい活動に起因して非常に熱いか、又は低温の状態に曝されていたために非常に冷たいかのいずれかである。現時点で入手可能な製品は、そのような極端な温度では効果が低くなる。有利には、本発明の材料は、温度の変動による影響を実質的に受けず、したがって、正常の体温よりも高い及び低い温度のいずれにおいても、同等に良好に作用する。「正常の体温」とは、約37℃を意味する。
【0021】
本発明の止血組成物は、正常及び凝固障害のいずれの状態においても、止血包帯を用いて包んだ後の少なくとも3分間の圧迫というTCCCのガイダンスと比較して短い治療時間で出血を効果的に制御することができる。有利には、この結果、医療エリアに運ぶ前に、より短い時間で対象が安定化される。「治療」とは、出血部位の圧迫を含む、止血組成物で創傷又は切開部を包み、塞ぐために掛かる時間を意味する。
【0022】
本発明は、TCCCガイダンスで示される少なくとも3分間と比較して、約45秒間の治療で効果的に出血を制御することができる。
【0023】
前記止血剤は、止血特性を有するいかなる物質であってもよい。前記止血剤は、1又は複数のグルコサミン単位を中に含有するポリマーを含んでいてよい。止血剤の例としては、限定されないが、酸化再生セルロース、カオリン、ゼラチン、カルシウムイオン、ゼオライト、コラーゲン、キチン、キトサン若しくはキトサン塩、キトサンの誘導体、キチンの誘導体、及びこれらのいずれかの組み合わせが挙げられる。グルコサミンは、当然、キトサン及びキチンの構造の一部である。前記止血剤は、好ましくは、キトサン塩である。
【0024】
「誘導体」の用語は、本明細書において、キトサン又はキチンから、1若しくは複数の化学反応又は化学修飾後に誘導される化合物を意味するために用いられる。前記1若しくは複数の化学反応又は化学修飾は、キトサン若しくはキチン中のアミノ又はヒドロキシルプロトンの1又は複数の置換、又はキチンの部分脱アセチル化を含み得る。例えば、キチン誘導体は、部分脱アセチル化キチンを含んでよく、これは、所望に応じて、異なる脱アセチル化の割合を有していてよい。典型的には、本発明での使用に適する前記部分脱アセチル化キチンは、約50%超、より典型的には約75%超、最も典型的には約85%超の脱アセチル化度を有する。また、キトサン又はキチンと他の化合物との反応生成物も、「キトサン又はキチン誘導体」の用語に含まれる。そのような反応生成物としては、限定されないが、カルボキシメチルキトサン、ヒドロキシルブチルキチン、N−アシルキトサン、O−アシルキトサン、N−アルキルキトサン、O−アルキルキトサン、N−アルキリデンキトサン、O−スルホニルキトサン、硫酸化キトサン、リン酸化キトサン、ニトロ化キトサン、アルカリキチン、アルカリキトサン、又はキトサンとの金属キレートなどが挙げられる。
【0025】
キトサンは、貝、甲殻類の処理からの固形廃棄物の誘導体であり、菌類培養物から抽出可能である。それは、水不溶性のポリマー材料である。したがって、本発明で用いるためのキトサンは、まず、水溶性の塩に変換される。前記キトサン塩は、血液中に可溶性で、血流を止めるゲルを形成する。
【0026】
キトサン塩は、本明細書で述べる用途に理想的に適しており、なぜなら、キトサンは、体内で容易に分解されるからである。キトサンは、酵素のリゾチームによってグルコサミンに変換され、したがって、身体から自然に排泄される。前記キトサンを身体から除去するためのいかなる処置も行う必要がない。
【0027】
さらに、キトサン塩は、軽い抗菌性を呈し、そのために、その使用によって感染のリスクが低減される。
【0028】
本発明での使用に適する例示的なキトサン塩としては、限定されないが、単独で又は組み合わせて、酢酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、硫酸塩、又はアクリル酸塩のいずれかが挙げられる。これらは、典型的には、粉末形態である。
【0029】
前記キトサン塩が、キトサン乳酸塩を含む場合に、又はキトサン乳酸塩である場合に、良好な結果が得られた。
【0030】
前記キトサン塩は、キトサンを適切な酸と組み合わせることによって調製される。前記酸は、ヒト又は動物の身体に付随する条件下で、特に血液中で、可溶性であるキトサン塩が得られるいずれの無機酸又は有機酸であってもよいことは理解される。適切な酸は、当業者であれば認識される。例えば、キトサンリン酸塩は、そのような条件下で不溶性であることから、リン酸は適さない。
【0031】
前記止血剤は、前記止血材の少なくとも20重量%を、又はより典型的には、少なくとも約80重量%を成してよい。典型的には、前記止血剤は、前記止血材の20〜99重量%を、好ましくは、前記止血材の45〜95重量%を成す。
【0032】
前記止血剤は、典型的には、顆粒状であるが、短繊維、スポンジ、布、フィルム、粉末、液体、ゲル、又は液体コーティングを含んでよい。前記短繊維は、約7.5mm以下の長さ、より典型的には、約5mm以下の長さであってよい。
【0033】
前記止血剤は、典型的には、約3.5〜約8.0のpHを有する。前記pHは、前記用いられる特定の止血剤に主として依存し、なぜなら、前記止血剤は、各々異なるpHを有するからである。
【0034】
「生体接着剤」とは、生物学的基体と結合する天然又は合成の生体適合性物質を意味する。前記生物学的基体は、例えば、創傷部位の湿潤組織であってよい。実際には、生体接着剤は、一方が生物学的性質のものである2つの物質間の接着を促進することができ、それによって、前記物質が、長い時間にわたって一緒に保持される。前記生体接着剤は、典型的には、手袋又は無傷の皮膚を例とする乾燥面に対しては低い接着性を呈し、創傷又は内臓を例とする濡れた面/湿潤面に対しては高い接着性を呈する。したがって、前記生体接着剤及び前記止血剤を含む前記止血材は、好ましくは、乾燥面に対しては低い接着性を、濡れた面/湿潤面に対しては高い接着性を呈するはずである。好ましくは、前記止血材は、乾燥面に対して接着性を呈さない。有益なことには、前記生体接着剤のこの特性は、取り扱いが容易であり、かつ少なくとも3分間の圧迫というTCCCガイダンスと比較して短い圧迫時間内で効果的に出血を制御することができる止血材を提供する。
【0035】
前記生体接着剤は、好ましくは、前記止血剤と適合性を有するべきであり、前記止血材の効果に干渉するべきではない。前記生体接着剤は、典型的には、固体の乾燥した材料である。
【0036】
「低い接着性」とは、材料25mmあたり0.05N(0.05N/25mmとして示される)以下の剥離強度での面に対する接着を意味する。接着性なしは、0.0N/25mmとして実際には測定される。
【0037】
「高い接着性」とは、0.25N/25mm以上の剥離強度での面に対する接着を意味する。好ましくは、濡れた面/湿潤面に対する前記接着は、0.7N/25mm以上の、より好ましくは1.0N/25mm以上の剥離強度を呈する。濡れた面/湿潤面に対する前記接着は、典型的には、0.6〜2.0N/25mmの範囲内の剥離強度を呈する。
【0038】
したがって、前記生体接着剤は、創傷部位にある湿潤組織に対する前記止血剤の前記接着を促進し得る。有益なことには、このことにより、凝固に要する前記圧迫時間を、血圧によって前記止血剤が前記創傷部位から押し出されることなく、短くすることができる。
【0039】
前記生体接着剤は、前記止血材の90重量%までを成していてよい。好ましくは、前記生体接着剤は、前記止血材の20重量%までを、より好ましくは前記止血材の2〜20重量%を、さらにより好ましくは前記止血材の5〜10重量%を、最も好ましくは前記止血材の7〜8重量%を成していてよい。これらの好ましい範囲では、前記生体接着剤は、取り除く際の、例えば創傷が再度開くなどの有害な影響を引き起こすことなく、前記濡れた組織又は湿潤組織に対する接着について最適化される。
【0040】
前記生体接着剤は、濡れた基体/湿潤基体に適用された場合に、高い接着性を発生させる材料であるべきである。前記生体接着剤は、単独で又は組み合わせて、カルボマー、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、又はジビニルグリコールで架橋された高分子量アクリル酸ポリマー若しくはジビニルグリコールで架橋されたポリアクリル酸の塩、のいずれかから選択されてよい。好ましくは、前記生体接着剤は、アクリル酸の高分子量架橋ポリマーを含む。「高分子量」とは、少なくとも50000g/molの分子量を意味する。好ましくは、前記分子量は、少なくとも60000g/mol、より好ましくは100000〜300000g/molである。そのような実施形態では、前記生体接着剤は、アリルスクロース若しくはアリルペンタエリスリトールで架橋されたアクリル酸のポリマーを含むホモポリマー;アリルペンタエリスリトールで架橋されたアクリル酸及びC10〜C30アルキルアクリレートのポリマーを含むコポリマー;カルボマーホモポリマー若しくはポリエチレングリコール及び長鎖アルキル酸エステルのブロックコポリマーを含むコポリマー;又はこれらの混合物であってよい。そのようなポリマーの例としては、Carbopol(登録商標)NF934、NF974、NF971、及びNF980が挙げられる。
【0041】
前記生体接着剤は、非常に優れた湿潤粘着特性を有する本発明の組成物を提供する。「湿潤粘着」とは、濡れた組織又は湿潤組織に対する接着を意味する。これによって、前記生体接着剤は、前記止血剤と創傷部位にある湿潤組織との間の接着を促進することができる。
【0042】
いくつかの実施形態では、前記止血剤及び前記生体接着剤は、典型的には、少なくとも3:1の比で存在する。典型的には、前記止血剤及び生体接着剤は、少なくとも4:1の比で、より好ましくは少なくとも9:1の比で存在する。
【0043】
「抗線溶剤」とは、線維素溶解を阻害する天然又は合成の物質を意味する。線維素溶解は、血餅の成長を阻止するプロセスである。このプロセスには、一次線維素溶解及び二次線維素溶解の2つの種類がある。前記一次の種類は、正常な身体プロセスであり、一方二次線維素溶解は、医薬、医学的障害、又は他の何らかの原因による血餅の分解である。したがって、抗線溶剤は、血餅の分解を阻止するものであり、血餅は、前記抗線溶剤が存在しなかった場合よりも、強く、長い時間持続されるはずである。
【0044】
前記抗線溶剤は、前記止血剤と化学的に結合、塩形成、若しくは会合していてよく、又はそれは、前記止血剤及び生体接着剤と独立していてもよい。
【0045】
前記抗線溶剤は、セリンプロテアーゼ阻害因子などのプラスミノーゲン活性化因子阻害因子を含んでよい。そのようなセリンプロテアーゼ阻害因子の限定されない例としては、プラスミノーゲン活性化因子阻害因子−1(PAI−1)が挙げられ、これは、内皮プラスミノーゲン活性化因子阻害因子、又はセルピンE1、又はアプロチニンとしても知られる。PAI−1は、プラスミノーゲンの、したがって線維素溶解の活性化因子である組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)及びウロキナーゼ(uPA)の主たる阻害因子として機能するセリンプロテアーゼ阻害因子である。アプロチニンは、いくつかのセリンプロテアーゼの、具体的には、約125000IU/mlの濃度でトリプシン、キモトリプシン、及びプラスミンの、約300000IU/mlの濃度でカリクレインの競合阻害因子である。カリクレインに対するその作用は、第XIIa因子の形成の阻害を引き起こす。その結果、凝固及び線維素溶解の両方の固有の経路が阻害される。プラスミンに対するその作用は、独立して、線維素溶解を遅延させる。
【0046】
別の選択肢として、前記抗線溶剤は、フィブリノーゲンなどの糖タンパク質、又はトラネキサム酸を含んでよい。
【0047】
別の選択肢として、前記抗線溶剤は、C2〜C12アミノカルボン酸、C4〜C8アミノカルボン酸、又はC5〜C7アミノカルボン酸を含んでよく、C6アミノカルボン酸などであり、例えば、アミノカプロン酸又はイプシロン−アミノカプロン酸である。
【0048】
別の選択肢として、前記抗線溶剤は、アミノメチル安息香酸などのアミノ安息香酸を含んでよい。
【0049】
これらの抗線溶剤又はその誘導体のいずれか1又は複数が、単独で又は組み合わせて用いられてよい。
【0050】
前記抗線溶剤に関連する「誘導体」の用語は、本明細書において、上記で挙げた化合物のいずれかから直接誘導される又は誘導可能であり、抗線溶挙動も呈するいずれの化合物をも意味するために用いられる。
【0051】
前記抗線溶剤は、典型的には、前記止血組成物の約0.01〜約99.9重量%、より典型的には約0.1〜約90重量%、より典型的には約1〜約80重量%、より典型的には約2〜約70重量%、より典型的には約5〜約60重量%、より典型的には約10〜約50重量%、より典型的には約12〜約40重量%、より典型的には約15〜約35重量%、より典型的には約20〜約30重量%、より典型的には約22〜約28重量%の量で存在し、約25重量%などである。
【0052】
前記止血剤は、さらに、不活性材料を含んでもよい。「不活性」とは、止血特性を有しない又は止血特性が低く、濡れた面又は湿潤面に対する接着性が低い材料を、すなわち、単独では、出血部位に適用後約3分間、5分間、又はさらには10分間の時間内ではいかなる有意な止血も呈さない材料を意味する。
【0053】
例示的な不活性材料としては、限定されないが、非止血性セルロース、非止血性砂、非止血性クレイ、非止血性アルギネート、微結晶セルロース、グアーガム、キサンタンガム、非止血性キトサン、非止血性キチン、デキストラン、スクロース、ラクトース、ペクチン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロエチルセルロース、挽きトウモロコシ粉、ポリアクリル酸、硫酸バリウム、デンプン、又はこれらのいずれか2つ以上の組み合わせが挙げられる。典型的には、非止血性キトサン、非止血性キチン、及びカルボキシメチルセルロースから選択される1又は複数の不活性材料が用いられる。
【0054】
前記不活性材料は、前記全組成物の約95重量%まで、典型的には約80重量%まで、より典型的には約50重量%までの量で、前記止血剤に添加されてよい。前記不活性材料は、典型的には、前記止血剤とブレンドされるが、前記止血剤と共に溶液中に分散されて、乾燥されてもよい。
【0055】
典型的には、前記不活性材料は、顆粒であるが、粉末、フォーム、繊維、又はフィルムの形態であってもよい。
【0056】
前記止血剤は、さらに、医療用界面活性剤を含んでもよい。「医療用界面活性剤」とは、ヒト又は動物の身体に対する接触又は投与について医薬的に許容され、前記ヒト又は動物の身体にいかなる著しい有害な影響も引き起こすことのないいずれの界面活性剤をも意味する。本発明で用いるための例示的な医療用界面活性剤は、単独で又は組み合わせて、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドをベースとするブロックコポリマー(例:BASF Pluronics(登録商標))、グリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ラウリン酸、オレイン酸、他の脂肪酸などの脂肪酸及び脂肪酸塩、シリコーン系界面活性剤及び乳化剤のいずれかを含む。典型的には、前記医療用界面活性剤は、ラウリン酸及びオレイン酸を含む。
【0057】
前記医療用界面活性剤は、典型的には、前記止血剤の約0.001〜約10重量%を成してよい。
【0058】
より有利には、前記医療用界面活性剤は、前記止血剤の約0.5〜約1重量%を成す。有利には、界面活性剤の存在は、非常に優れた湿潤特性をもたらす。前記止血剤の湿潤の仕方が、その性能にとって重要である。すなわち、前記止血剤は、血液の吸収が早過ぎて、血流を止めることができるゲル血餅を形成するための充分なゲル化を起こすことなく、単に前記血液と混合するだけとなる場合がある。他方、前記止血剤の前記血液の吸収が遅すぎる場合、ゲル化は、前記止血剤のうちの少量でしか、一般的には、創傷部位に最も近い前記止血合の最初の数ミリメートルの厚さ部分でしか起こらない。この場合、形成される前記ゲル血餅は、患者を医療センターへ移動させることができるように充分な時間にわたって前記血流を止めるには、密度が不充分である。典型的には、そのようなゲル血餅は、前記患者を移動させる際に壊れ、再度出血することになる。
【0059】
ある量の不活性材料及び/又はある量の医療用界面活性剤を前記止血剤に添加することによって、すなわち、止血剤の量を事実上希釈することによって、前記止血剤の性能が、実際にさらに向上されることが見出された。前記不活性材料及び前記医療用界面活性剤を一緒に組み合わせることは、前記不活性材料の存在が、前記医療用界面活性剤の特性をさらに向上させ、逆も同様であることから、特に有利である。
【0060】
前記止血剤の粒子サイズは、本発明の止血材の性能に影響を与え得る。前記粒子サイズは、粒子が通った又は保持された篩のサイズによって測定される。
【0061】
例えば、前記止血剤が粒子又は顆粒の形態である場合、それは、200メッシュの篩を通らないように、約200メッシュ超の平均粒子サイズを有してよい。前記平均粒子サイズは、典型的には約100メッシュ超、なおより典型的には約50メッシュ超であってよく、前記粒子又は顆粒が40メッシュの篩を通ることができることは所望されない。
【0062】
より有利には、前記不活性材料の粒子サイズは、前記止血剤の粒子サイズと実質的に同等である。「実質的に同等」とは、前記粒子の相対的サイズの差異が、約25%を超えない、より典型的には約10%を超えないことを意味する。最適な粒子サイズは、前記止血剤を粉砕し、篩分けなどの適切ないずれかの手段によって分級することによって実現される。そのようなサイズを揃えるプロセスは、当業者に公知であり、これ以上記載しない。
【0063】
前記止血組成物は、例えば乾燥粉末、溶液、フォーム、又はゲルなど、特定のいかなる形態で創傷に投与されてもよい。
【0064】
前記止血組成物は、創傷部位に適用するために、キャリア材料に適用されてもよい。前記キャリア材料は、織布材料若しくはビスコース不織布材料を含んでよく、又は別の選択肢として、それは、薄いフレキシブル基体、織布ガーゼ、フィルム、フォーム、溶液、若しくはシートゲルを含んでもよい。本発明の組成物は、凍結乾燥したフォーマットであってもよい。
【0065】
前記組成物は、ヒト又は動物の身体上又は身体中の創傷に付随する条件で分解可能であってもそうでなくてもよい。1つの例では、前記キャリア材料の材料は、前記止血材片全体を、外科的使用又は治療の後に正しい位置に残すことができるように、約30日間などの妥当な期間内で前記身体中で安全に分解可能であってよい。前記組成物に用いるための安全で分解可能な材料の例としては、限定されないが、酸化セルロース、ゼラチン、デキストラン、コラーゲン、ポリカプリラクトン(polycaprylactone)、ポリ乳酸、ポリラクチド−co−グリコリド、ポリグリコリド、キチンなどが挙げられる。
【0066】
前記止血剤は、様々な方法によって前記キャリア材料に適用されてよい。これらとしては、接着剤を用いて前記止血剤を前記キャリア材料に結合すること;前記止血剤を含有する溶液を前記キャリア材料に適用し、前記キャリア材料に塗布し、前記溶液を乾燥すること;又は加熱結合すること、が挙げられる。前記止血剤はまた、前記キャリア材料の加工の過程で前記キャリア材料中に組み込まれてもよい。
【0067】
前記組成物は、適切ないかなる形態を取ってもよく、創傷を扱うのに必要な様々な異なるサイズ、形状、及び厚さで提供されてよく、正方形、長方形、円形、又は楕円形などである。例えば、前記材料は、その幅/奥行きに対して高さがほとんどない概略平坦形状であってよい。規則的な又は不規則ないかなる形状が用いられてもよい。それは、必要とされるサイズに切断することができる大型のシートで提供されてもよい。
【0068】
前記止血組成物は、滅菌又は非滅菌の形態で提供されてよい。前記材料が滅菌形態で提供される場合、滅菌は、ガンマ線照射、電子ビーム処理、熱処理、エチレンオキシド(EtO)滅菌など、従来から知られている方法のいずれを用いて行われてもよい。非滅菌形態の材料は、銀及びその塩など、1若しくは複数の保存剤又は抗菌剤と組み合わせて提供されてよい。
【0069】
前記止血組成物が、エチレンオキシドを用いて滅菌される場合、これは、中間装置を気体のエチレンオキシドに曝露することを含んでよい。前記滅菌のフェーズは、密封されていることが好ましいチャンバー中で実施されてよい。
【0070】
本発明のさらなる態様によると、止血の方法が提供され、前記方法は、本明細書で述べるように、止血剤、生体接着剤、及び抗線溶剤又はその誘導体を含む前記止血組成物を、生理学的ターゲット部位に適用する工程;並びに前記止血材に、約1分間未満、又は約55秒間未満、又は約50秒間未満、又は約45秒間未満の時間にわたって圧力を掛ける工程、を含む。
【0071】
本発明のさらなる態様によると、生理学的ターゲット部位からの血流を止めるのに用いるための、止血剤、生体接着剤、及び抗線溶剤又はその誘導体を含む止血組成物が提供される。
【0072】
前記圧力は、前記ターゲット部位に、約30秒間〜1分間の時間にわたって掛けられてよい。いくつかの実施形態では、前記圧力は、約35秒間〜約55秒間、又は約40秒間〜約50秒間、又は約45秒間にわたって創傷部位に掛けられてよい。本発明の利点は、創傷部位からの血流を充分に凝固させるのに掛かる時間が短いことである。したがって、充分な凝固が、約1分間以内に形成され、そのため、所望される効果を得るために、前記ターゲット部位に掛けられる前記圧力は、より短い時間でよい。いくつかの実施形態では、前記圧力は、前記所望される効果を得るために、前記創傷部位に約55秒間未満、好ましくは約50秒間未満掛けられてよい。
【0073】
本発明のさらなる態様によると、止血剤、生体接着剤、及び抗線溶剤又はその誘導体を含む止血組成物を適用されて含んでいるキャリア材料が提供される。
【0074】
前記キャリア材料は、上記で述べたキャリア材料の特徴のいずれを含んでいてもよい。好ましくは、前記キャリア材料は、ビスコースガーゼを含む。
【0075】
本発明のさらなる態様によると、止血剤、生体接着剤、及び抗線溶剤又はその誘導体を含む止血組成物を製造する方法が提供され、前記方法は、止血剤を、生体接着剤、及び抗線溶剤又はその誘導体と組み合わせる工程を含む。
【0076】
好ましくは、前記止血材を製造する前記方法は:(1)所定の重量の止血剤、及び所望に応じて不活性材料を、混合容器中に分配する工程;(2)所定の重量の生体接着剤を、前記止血剤及び所望に応じて不活性材料を含有する前記混合容器中に分配する工程;(3)所定の重量の抗線溶剤又はその誘導体を分配する工程;及び(4)前記止血剤、生体接着剤、及び抗線溶剤又はその誘導体を混合する工程、を含む。
【0077】
本発明について、単なる例示であり、本発明の範囲を限定するものではない以下の実施例を参照して、以降でさらに記載する。
【実施例1】
【0078】
7重量%の生体接着剤(アクリル酸の高分子量架橋ポリマー(Carbopol(登録商標)980NF)を、キトサン誘導体/非止血性キトサンブレンドとブレンドした。前記キトサン誘導体は、キトサン乳酸塩及びキトサントラネキサム酸塩から成り、前記キトサンは、キトサン、乳酸、及びトラネキサム酸の組み合わせを用いて塩とした。前記混合物を、ビスコースガーゼ上に、45gsmのコーティング重量でダブルコーティングした。これによって、本発明に従う止血組成物を得た。
【0079】
生体内
本発明が、圧迫時間において実際の利点を呈し、包んで圧迫する合計時間45秒間で有効である証拠を提供することを確認するために、実施例1の組成物を、ISRモデルのように6mmの大腿動脈切断モデルを用いたブタモデルで、正常及び凝固障害の両方の状態において試験した。
【0080】
正常状態について、6mmの切断(sever)を、ブタモデルの大腿動脈に外科的に作り出した。前記動脈を、45秒間にわたって出血させ、続いて45秒間の包んで圧迫する合計時間を用いて、前記止血材を前記出血部位に適用した。前記圧迫時間の後、前記創傷を出血について評価した。出血が再発した場合、前記止血材を、さらに1分間の圧力で圧迫した。この時点後の再出血は、いずれも失敗として分類した。
【0081】
凝固障害状態の場合、ブタの血液量の25%をHextend液(25%血液希釈)で置換し、動脈傷害及び出血の前に低体温(深部体温34〜35℃)を前記ブタに誘導した。6mmの切断を、ブタモデルの大腿動脈に外科的に作り出した。前記動脈を、45秒間にわたって出血させ、続いて45秒間包んで圧迫する合計時間を用いて、前記止血組成物を前記出血部位に適用した。前記圧迫時間の後、前記創傷を出血について評価した。出血が再発した場合、前記止血材を、さらに1分間の圧力で圧迫した。この時点後の再出血は、いずれも失敗として分類した。
【0082】
結果から、正常状態下及び凝固障害状態下で処理したモデルの66%が、前記大腿動脈モデルのプロトコル内で、初期時間の45秒間以内に止血を得たことが示された。さらなる1分間の圧力後は、正常状態下で処理したモデルの82%が、前記大腿動脈モデルのプロトコル内で止血を得ており、一方凝固障害状態下で処理したモデルの83%が、前記大腿動脈モデルのプロトコル内で止血を得た。
【0083】
正常状態下では、現在市販されているCelox Rapid止血製品は、止血を実現するために、1分間の継続的な圧迫、及び続いてのさらなる1分間の圧迫(必要とされる場合)というケアのプロトコルを必要とし、一方凝固障害状態では、最近のISRの結果によると、Celox Rapidは、止血を実現するために、2分間の継続的な圧迫を必要とする。
【0084】
対照的に、本発明の組成物は、ほとんどの場合、すなわち、正常状態及び凝固障害状態の両方において、66%が僅かに45秒間で、並びにさらなる1分間の圧力後には、正常状態下では82%、凝固障害状態下では83%で、止血を実現することができる。これは、著しい改善を、特には、創傷からの出血を止めるのに要する時間が決定的に重要であり、患者にとって生死を分ける可能性があるような技術分野における著しい改善を表している。
【0085】
当然、本発明は、単なる例として記載される上記の例に限定されることを意図するものではないことは理解されたい。
【国際調査報告】