特表2021-514680(P2021-514680A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-514680(P2021-514680A)
(43)【公表日】2021年6月17日
(54)【発明の名称】ヒト臍帯から幹細胞を分離する方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0735 20100101AFI20210521BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALI20210521BHJP
【FI】
   C12N5/0735
   C12N5/0775
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2020-571324(P2020-571324)
(86)(22)【出願日】2019年3月28日
(85)【翻訳文提出日】2020年9月8日
(86)【国際出願番号】KR2019003674
(87)【国際公開番号】WO2019190246
(87)【国際公開日】20191003
(31)【優先権主張番号】10-2018-0036230
(32)【優先日】2018年3月29日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】520348004
【氏名又は名称】エースソステム バイオストラテジーズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ヒョン チョル
(72)【発明者】
【氏名】イ,ア−ヨン
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA87X
4B065AA90X
4B065AA93X
4B065BB01
4B065BC31
4B065CA44
4B065CA46
(57)【要約】
本発明は、臍帯由来幹細胞の分離方法に関し、より詳しくは、本発明の臍帯由来幹細胞の分離方法によって一定サイズの臍帯から顕著に多数の幹細胞を分離することができる。本発明の分離方法は、酵素的処理無しに臍帯組織から幹細胞を分離できるので、細胞に与えられるストレスを顕著に抑制できるという点で非常に大きい長所がある。また、本発明の分離方法で分離された幹細胞は、従来の分離方法で分離された幹細胞に比べて優れた細胞増殖能を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の段階を含む臍帯由来幹細胞の分離方法:
(a)分離された臍帯組織を、横と縦の長さがそれぞれ2〜4mmに粉砕された切片として製造する段階;及び
(b)前記(a)段階で得られた切片を培養培地上で培養する段階。
【請求項2】
前記(a)段階は、臍帯組織を培養培地内に含入させた後、横と縦の長さがそれぞれ2〜4mmの切片として細かく切断する段階を含むことを特徴とする、請求項1に記載の臍帯由来幹細胞の分離方法。
【請求項3】
前記臍帯組織1g当たりに0.5〜3.0mlの培養培地を添加することを特徴とする、請求項2に記載の臍帯由来幹細胞の分離方法。
【請求項4】
前記培養培地は、DMEM(Dulbeccos Minimum Essential Medium)、RPMI、Hams F−10、Hams F−12、a−MEM(a−Minimal Essential Medium)、GMEM(Glasgow’s Minimal Essential Medium)及びIMDM(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium)からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の臍帯由来幹細胞の分離方法。
【請求項5】
前記切片は単位面積(cm)当たりに0.0007〜0.0068gが含まれるように培養することを特徴とする、請求項1に記載の臍帯由来幹細胞の分離方法。
【請求項6】
前記(b)段階は60〜120分間行われることを特徴とする、請求項1に記載の臍帯由来幹細胞の分離方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、臍帯由来幹細胞の分離方法に関し、特に、本発明の臍帯由来幹細胞の分離方法を用いて一定サイズの臍帯から顕著に多い数の間葉系幹細胞を分離することができる。
[背景技術]
幹細胞(stem cell)は生物組織を構成する様々な細胞に分化可能な細胞であり、胚芽、胎児及び成体の各組織から得られる分化される前段階の未分化細胞を総称する。幹細胞はその分化能によって、万能(pluripotency)、多分化能(multipotency)及び単分化能(unipotency)幹細胞に分けられる。万能幹細胞(pluripotent stem cells)は全ての細胞に分化できる潜在力を持つ全分化能(pluripotency)の細胞であり、胚幹細胞(embryonic stem cells,ES cells)及び誘導万能幹細胞(induced pluripotent stem cells,iPS cells)などがこれに該当する。多分化能及び/又は単分化能幹細胞としては成体幹細胞を挙げることができ、造血幹細胞(hematopoietic stem cell)、間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell)、神経幹細胞(neural stem cell)などがこれに該当する。
【0002】
幹細胞の利用技術は難病治療の新しい対策案として考えられており(大韓民国公開特許2015−0016117号)、これまでは難病治療のために臓器移植や遺伝子治療などが提示されたが、免疫拒否反応や供給臓器不足、又はベクター開発や疾患遺伝子に対する知識不足によって効率的な実用化には至っていない現状である。
【0003】
そこで、幹細胞研究に対する関心が高まりつつあり、幹細胞を用いた臓器再生やパーキンソン病、糖尿病、脊髄損傷などの治療に様々な幹細胞の可能性が提示されてきている。
【0004】
幹細胞源(stem cell source)の確保のための様々な方法がある。倫理的な問題がない成体幹細胞を確保する方法にも、最近、iPSが新しい可能性を提示しているが、まだ研究のごく初期の段階であり、現実的な代案になるまでは多くの科学的検証を受ける必要がある。
【0005】
上記のような問題点から、骨髄、脂肪などの成体幹細胞源を活用する技術が台頭しているが、前記細胞の増殖はあるレベル以上は不可能である。特に、成人の骨髄及び脂肪由来間葉系幹細胞は、継代培養が続くと幹細胞の老化が急激に進行され、年齢の高い骨髄幹細胞では継代培養そのものが困難となる問題点がある。言い換えると、年齢が高いか、慢性疾患があるほど、幹細胞の品質も低下するといえよう。
【0006】
具体的に、幹細胞の採取年齢が増加すると、採取された幹細胞のコロニー形成能と増殖速度及び分化能が減少し、骨関節炎などの慢性疾患を持つ患者は、採取した幹細胞の増殖力及び分化能が正常群に比べて減少することを確認したことがある。
【0007】
したがって、幹細胞の採取は、患者自身も不便を訴え、品質が悪くて使用できない場合が殆どであり、同種の間葉系幹細胞を移植したり治療するためには品質はもとより迅速な使用を担保し、移植に必要な感染性標識子検査などの移植適合性を判定するために十分な量の幹細胞供給が切実な実情である。すなわち、従来の幹細胞培養、分離技術は非常に制限的であるため、既存に用いた技術では十分な量の幹細胞を提供するに限界がある。
【0008】
成体幹細胞の供給源として、新生児出産と共に排出される生物学的廃棄物は最も若い細胞で構成されている。臍帯血、臍帯、胎盤、羊膜などがそれに該当する組織であり、特に、臍帯血は既に造血幹細胞の供給源として治療において認定されている。しかし、臍帯血由来間葉系幹細胞は分離成功率が非常に低いことが大問題であり、臍帯血保管後に間葉系幹細胞が分離されない場合は諸問題点を引き起こすことがあり、Hows等及びWexler等は、臍帯血からは間葉系幹細胞を分離できないと報告するなど、分離成功率があまり高くない問題がある(Hows,1992;Wexler,2003;Pojda,2005;Bieback,2004)。
【0009】
そこで、臍帯組織が新しい細胞治療源として台頭しており、臍帯は胎児組織であるから、胚芽以外の幹細胞を採取できる最も若い組織であり、年齢及び様々な疾患による幹細胞‘品質’の低下を根本的に避けることができ、胚幹細胞と成体幹細胞の短所をともに避けることができるという根本的な長所がある。特に、臍帯由来幹細胞は骨髄由来幹細胞に比べてCFU−Fの数字が大きく、増殖速度が速く、継代培養能力も大きいと報告されている(Karahuseyinoglu,2007;Lund,2007;Baksh,2007;Lu,2006)。
【0010】
これによって、臍帯から最大限の細胞活性を維持しながら多い数の幹細胞を分離する技術が台頭している実情である。
【0011】
上述した背景技術として説明された事項は、本発明の背景に対する理解増進のためのものに過ぎず、この技術分野における通常の知識を有する者に既に知られた従来技術に該当するものとして理解してはならないだろう。
[発明の概要]
[発明が解決しようとする課題]
本発明者らは、幹細胞を臍帯組織から大量生産できる方法を見つけようと鋭意努力した。その結果、多数の優れた増殖能を有する幹細胞分離ができる戦略を考案し、それを用いて臍帯組織を外植的方法で製造した後、これを培養して幹細胞を大量生産できることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0012】
したがって、本発明の目的は、臍帯由来幹細胞の分離方法を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、前記分離方法で分離された臍帯由来幹細胞を提供することにある。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、前記臍帯由来幹細胞又はその分化された細胞を有効成分として含む細胞治療剤を提供することにある。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、前記臍帯由来幹細胞又はその分化された細胞を有効成分として含む薬学組成物を提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的及び利点は、下記する発明の詳細な説明、特許請求の範囲及び図面からより明らかになる。
[課題を解決するための手段]
本発明は、上記の目的を達成するために、(a)分離された臍帯組織を、横と縦の長さが2〜4mmに粉砕された切片として製造する段階;及び(b)前記(a)段階で得られた切片を培養培地上で培養する段階を含む臍帯由来幹細胞の分離方法を提供する。
【0017】
前記臍帯組織1g当たりに0.5〜3.0mlの培養培地を添加することができる。
【0018】
前記培養培地は、DMEM(Dulbeccos Minimum Essential Medium)、RPMI、Hams F−10、Hams F−12、a−MEM(a−Minimal Essential Medium)、GMEM(Glasgow’s Minimal Essential Medium)及びIMDM(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium)からなる群から選ばれるいずれか一つ以上であり得る。
【0019】
前記切片は、単位面積(cm)当たりに0.0007〜0.0068gが含まれるように培養することができる。
【0020】
前記(b)段階は60〜120分間行われ得る。
【0021】
本発明は、上記の他の目的を達成するために、前記分離方法から製造された臍帯由来幹細胞を提供する。
【0022】
本発明は、上記のさらに他の目的を達成するために、前記臍帯由来幹細胞又はその分化された細胞を有効成分として含む細胞治療剤を提供する。
【0023】
前記分化された細胞は、中胚葉、内胚葉及び外胚葉由来細胞からなる群から選ばれる一つ以上であり得る。
【0024】
前記分化された細胞は、神経細胞、希突起膠細胞、星状細胞、シュワン細胞、造骨細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、腱又は靭帯細胞及び筋肉細胞からなる群から選ばれる一つ以上であり得る。
【0025】
前記細胞治療剤は、タンパク質又はペプチド製剤、グリコサミノグリカン(glycosaminoglycan)、プロテオグリカン(proteoglycan)、成長因子(growth factor)及び遺伝子治療剤からなる群から選ばれる一つ以上をさらに含むことができる。
【0026】
前記細胞治療剤は、抗炎症製剤、幹細胞動員因子及び血管成長誘導因子からなる群から選ばれる一つ以上をさらに含むことができる。
【0027】
前記細胞治療剤は、臍帯由来幹細胞又はその分化された細胞を有効成分として含む注射剤形態で提供されたり、或いは支持体又は運搬体に含まれて提供され得る。
【0028】
本発明は、上記のさらに他の目的を達成するために、臍帯由来幹細胞又はその分化された細胞を有効成分として含む薬学組成物を提供する。
【0029】
前記薬学組成物は、骨、軟骨、筋肉、腱又は靭帯疾患の予防又は治療用であり得る。
【0030】
前記薬学組成物は、骨代謝性疾患の予防又は治療用であり得る。
【0031】
前記骨代謝性疾患は、骨多孔症、ページェット病、歯周疾患、骨転移癌又はリウマチ関節炎であり得る。
[発明の効果]
本発明の特徴及び利点を要約すると、次の通りである:
(i)本発明は、臍帯から幹細胞を効率的に分離できる方法を提供する。
【0032】
(ii)また、本発明の分離方法を用いる場合、従来に知られた方法と比較して同一サイズの臍帯から顕著に多数の幹細胞を分離することができる。
【0033】
(iii)本発明の分離方法は、酵素的処理無しに臍帯組織から幹細胞を分離できるので、細胞に与えられるストレスを顕著に抑制できるという点で非常に大きな長所がある。また、本発明の分離方法で分離された幹細胞は、従来の分離方法で分離された幹細胞に比べて優れた細胞増殖能を有する。
【0034】
すなわち、本発明の臍帯由来幹細胞の分離方法は、外植的方法を用いて一定サイズの臍帯から多数の幹細胞を簡単ながらも効率的に分離できる技術であり、この機能を用いて、幹細胞を大量に必要とする分野或いは治療用途に有用に活用することができる。
[図面の簡単な説明]
図1A]実施例1〜5から製造された時間による組織切片の数を測定して示す図である。
【0035】
図1B]実施例1〜5から製造された切片サイズによる細胞数を示すグラフである。
【0036】
図1C]実施例1〜5から製造された切片サイズによって培養されたコロニーのサイズを示すグラフである。
【0037】
図2A]0ml/g、0.5ml/g、1ml/gの培地が入っている培養容器において、臍帯組織を外植した結果、総切られた組織を示すグラフである。
【0038】
図2B]0ml/g、0.3ml/g、0.5ml/g、1ml/g、2ml/g、3ml/g、4ml/g、5ml/gの培地が入っているそれぞれの培養容器において、臍帯組織を外植した結果、総分離細胞数を測定して示すグラフである。
【0039】
図3A]切片の重量による臍帯由来幹細胞のCFU−fsの数を示すもので、クリスタルバイオレット染色結果であり、下段のグラフは、形成されたCFU−fsの数とサイズを示す。
【0040】
図3B]切片の重量による臍帯由来幹細胞の分離細胞数を測定して示すグラフである。
【0041】
図4A]実施例8から製造された臍帯由来幹細胞の分離細胞数を測定して示すグラフである。
【0042】
図4B]実施例8から製造された臍帯由来幹細胞のCFU−fsの数を示すもので、クリスタルバイオレット染色結果であり、下段のグラフは、形成されたCFU−fsの数とサイズを示す。
【0043】
図5A]実施例9から製造された臍帯由来幹細胞のモルフォロジーを観察するための光学顕微鏡写真である。
【0044】
図5B]酵素的方法で製造された臍帯由来幹細胞(比較例1)と実施例9から製造された臍帯由来幹細胞の培養期間によるCPDLを測定して示すグラフである。
【0045】
図5C]酵素的方法で製造された臍帯由来幹細胞(比較例1)と実施例9から製造された臍帯由来幹細胞の群集倍加時間(PDT)を測定して示すグラフである。
【0046】
図6]実施例9から分離した臍帯由来幹細胞の流細胞分析機を用いて分析した免疫表面学的特性を示すグラフである。
【0047】
図7]実施例9から分離した臍帯由来幹細胞の脂肪生成(Adipogenesis)(A)、骨形成(osteogenesis)(B)、軟骨形成(Chondrogenesis)(C)、腱発生(Tenogenesis)(D)への分化能力を示す図である。
[発明を実施するための形態]
本発明の一態様によれば、本発明は、臍帯由来幹細胞の分離方法を提供する。
【0048】
従来の胚幹細胞(embryonic stem cells)は倫理的な問題が存在し、誘導万能幹細胞(induced pluripotent stem cells)が新しい可能性を提示しているが、まだ研究のごく初期段階であるため現実的な代案となるには多くの科学的検証を受ける必要がある。また、成体幹細胞として脚光を浴びている骨髄又は脂肪幹細胞は、年齢によって幹細胞の頻度、増殖能、分化能が低下し、幹細胞を分離する組織を得るために侵襲的な手術が必要であるという問題がある。
【0049】
このような限界点及び問題点を解決するために、臍帯から酵素や付加的な過程無しに、一定のサイズの切片から、体外増殖能力に優れるとともに分化能力が著しい幹細胞が高収率で得られることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0050】
本発明において用語、“臍帯(umbilical cord)”とは、胎盤と胎児とを結びつけているへその緒を意味する。
【0051】
本発明において用語“臍帯由来幹細胞”とは、臍帯及びこれに関連した組織から分離された幹細胞のことを指し、好ましくは、臍帯血(umbilical cord blood)、臍帯静脈内皮(umbilical cord vein subendothelium)、臍帯血管周囲メトリックス(umbilical cord perivascular matrix)、臍帯ウォートンジェリー(umbilical cord Wharton’s Jelly)、臍帯羊膜下部位(umbilical cord subamnion)及び羊膜(amnion)又は羊水(amniotic fluid)と胎盤(placenta)及び絨毛膜(chorion)を含み、より好ましくは、臍帯血、臍帯静脈内皮、臍帯血管周囲メトリックス、臍帯ウォートンジェリー又は臍帯羊膜下部位から分離されたものである。
【0052】
特に、臍帯は他の臓器又は組織とは違い、分娩過程で捨てられる物質であり、分娩過程で特別な操作や手術無しで容易に得ることができ、その量に比べて多い幹細胞を含んでいると知られているが、体外で臍帯から幹細胞を培養するためには様々な条件を全て満足させなければならず、培養しても回収可能な幹細胞は非常に少量であるため、治療剤開発に限界があった。
【0053】
本発明の臍帯由来幹細胞の分離方法は、下記の段階を含む:
(a)分離された臍帯組織を、横と縦の長さを2〜4mmに粉砕された切片として製造する段階;及び
(b)前記a)段階で得られた切片を培養培地上で培養する段階。
【0054】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明の分離方法は、培養された臍帯由来幹細胞を回収する段階をさらに含む(段階c)。
【0055】
臍帯は代表的な幹細胞由来組織であり、分娩過程で特別な操作や手術及び副作用無しで採取できるので、幹細胞を分離及び培養するための組織需給上の問題点がなく、異質的細胞から汚染される可能性が低いので、難治性疾患の細胞治療剤の製造目的で分離、培養するのに利点がある。
【0056】
ただし、前述したように、臍帯由来幹細胞は、体外で培養することが非常に複雑で困難であり、たとえ可能であるとしても、収率が顕著に低いため、回収される幹細胞の数が非常に低いか、分化能力が非常に低下しているという問題点がある。
【0057】
したがって、本発明は、幹細胞を大量で回収できながらも、分化能に非常に優れた幹細胞を分離するための方法を提供する。
【0058】
本発明は、まず、(a)分離された臍帯組織を横と縦の長さがそれぞれ2〜4mmに粉砕された切片として製造する段階を含む。本発明の分離された臍帯組織の粉砕された切片は、横と縦の長さが2〜4mmサイズの切片が30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上含まれる。最も好ましくは、前記粉砕された切片は、横、縦及び高さがそれぞれ2〜4mmである切片が50%〜70%含まれ得るが、組織の切片は六面体であるので、横、縦及び高さがそれぞれ2〜4mmとなるように組織を切片として細かく切断する場合、片のサイズがより均一になって、後述する実験例のように、分離される細胞の数が大きく増加する効果を有する。本発明の臍帯由来幹細胞分離方法の一例として、前記(a)段階は、臍帯組織を培養培地内に含入させた後、横と縦の長さがそれぞれ2〜4mmになるように組織を切片として細かく切断する段階を含むことができる。これは、均一なサイズの切片の製造が容易であり、最小限のはさみ作業で少量の組織を均一なサイズの切片として製造できるので、汚染される可能性が低くて分離培養が容易であるという利点がある。
【0059】
このとき、前記臍帯組織1g当たりに0〜10ml、好ましくは0〜5.0ml、より好ましくは0.5〜3.0mlの培養培地が添加されることが好ましいが、仮に前記臍帯組織1g当たりに培養培地が10.0mlを超える場合、分離細胞数がより減少する問題点が生じ得る。
【0060】
次いで、(b)前記(a)段階で得られた切片を培養培地上で培養する。このとき、前記切片は、培養容器の単位面積(cm)当たりに0.0001〜0.05g、好ましくは0.0006〜0.03g、より好ましくは0.0006〜0.0135g、最も好ましくは0.0007〜0.0068gが含まれるように培養することが好ましい。仮に、前記切片が培養容器の単位面積(cm)当たりに0.0001g未満で含まれるか、或いは0.05gを超えて含まれる場合、分離細胞数が顕著に減少する問題が生じ得る。
【0061】
また、前記(b)段階は、1分〜600分、好ましくは10分〜180分、より好ましくは30分〜120分、最も好ましくは60分〜120分間行われることが好ましいが、これも同様、1分未満で培養されるか、600分を超えて培養される場合、分離細胞数が顕著に減少することがある。
【0062】
本発明は、上述したそれぞれの培養条件を全て満たして培養する場合、切片1g当たりに1×10〜5×10個の細胞を分離でき、好ましくは1.5×10〜2×10個を分離できることを確認した。これは従来の様々な方法に比べて最も優れた効果であることを、次表1から確認できる。
【0063】
【表1】
【0064】
前記培養培地は、生体外で臍帯由来幹細胞の活性を維持したり或いは増殖を誘導できる培地を意味でき、哺乳動物細胞培養に用いられる通常の培地を全て含むことができる。本発明の一例として、商業的に製造された培養培地であるDMEM(Dulbeccos Minimum Essential Medium)、RPMI、Hams F−10、Hams F−12、a−MEM(a−Minimal Essential Medium)、GMEM(Glasgow’s Minimal Essential Medium)及びIMDM(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium)などを用いることができる。
【0065】
また、本発明の培養培地内には、臍帯由来幹細胞の増殖を促進させ得る血清(すなわち、ヒトを含む動物の血清)及び/又は成長因子をさらに含むことができ、これらの成長因子は、bFGF(basic fibroblastic growth factor)、VEGF(vascular endothelial growth factor)、インスリン(Insulin)、EGF(epidermal growth gactor)、LIF(leukemia inhibitory factor)、IGF(insulin−like growth factor)、PDGF(platelet−derived growth factor)、PRP(platelet−rich plasma)及びSCF(platelet lysate(PL)、stem cell factor)などを含むことができるが、これに制限されない。
【0066】
また、前記成長培養液は、ペニシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシンなどの抗生剤を含むことができる。
【0067】
本発明の培養培地は、DMEM:HamsF12(1:1)培養液、ウシ胎児血清、EGF、bFGF、IGF、ゲンタマイシンで構成され得、より具体的に70〜95(vol/vol)%のDMEM:HamsF12(1:1)培養液、5〜15(vol/vol)%のウシ胎児血清、5〜50ng/mlのEGF、0.5〜10ng/mlのbFGF、5〜50ng/mlのIGF、5〜50mg/mlのゲンタマイシンで構成され得る。
【0068】
最終的に、培養された幹細胞を回収する。前記過程によって製造された臍帯由来幹細胞を増幅させることができ、この増幅方法は特に限定されないが、好ましくは単層培養法を用いることができる。前記過程によって回収した臍帯由来幹細胞を培養容器に播種後、培養容器表面積の60〜90%を占めると、それらの細胞をトリプシン−EDTAで処理して培養容器から剥がし、新しい培養容器に再び播種する継代培養を用いて、治療容量に必要な細胞数を増幅培養することができる。
【0069】
本発明の臍帯由来幹細胞の培養方法は、少量の臍帯からこれを無限反復して培養できるので、反復的臍帯組織の採取無しで難治性疾患の治療に必要な量の幹細胞を分離することができる。
【0070】
前記臍帯由来幹細胞は間葉系幹細胞であり、内胚葉(endoderm)、中胚葉(mesoderm)、外胚葉(ectoderm)及びこれら由来の組織及び組織細胞に分化可能である。
【0071】
本発明の好ましい具現例によれば、前記中胚葉起源細胞は、造骨細胞、軟骨細胞、脂肪細胞及び骨格筋細胞からなる群から選ばれる一つ以上である。
【0072】
本発明の一実施例によれば、本発明の臍帯由来幹細胞は、脂肪分化(Adipogenic)、骨粉化(Osteogenic)、軟骨分化(Chondrogenic)及び腱/靭帯分化(Teno/ligamentognic)能力を有することを確認した。
【0073】
前記臍帯由来幹細胞は、1つの細胞が2つの細胞に分裂する倍加時間が30〜50時間であり、優れた体外成長能力を示し得る。従来の培養方法によって得た間葉系幹細胞では1つの細胞が2つの細胞に分裂するのに60時間以上がかかる点に比べて、体外成長能力に優れるので、短時間で難治性疾患の治療に必要な有効容量の幹細胞を確保できるという長所がある。
【0074】
前記臍帯由来幹細胞は間葉系幹細胞であり得、神経細胞、希突起膠細胞、星状細胞、シュワン細胞、造骨細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、腱及び靭帯細胞、筋肉細胞などに分化でき、これに制限されない。
【0075】
前記臍帯由来幹細胞が自発的に分化可能な細胞はその種類に特に限定はないが、好ましくは、造骨細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、腱及び靭帯細胞、筋肉細胞などに分化できる。
【0076】
本発明の他の態様によれば、本発明は、前記分離方法によって製造された臍帯由来幹細胞を提供する。
【0077】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、前記分離方法によって製造された臍帯由来幹細胞又はその分化された細胞を有効成分として含む細胞治療剤を提供する。
【0078】
前記細胞治療剤は、臍帯由来幹細胞を、特別な分化過程無しに直接利用することもでき、或いは、細胞治療をしようと目的する細胞に分化して利用することができる。
【0079】
前記細胞治療剤における分化された細胞は特に限定されるものではないが、一例として、神経細胞、希突起膠細胞、星状細胞、シュワン細胞、造骨細胞、軟骨細胞、脂肪細胞、腱及び靭帯細胞、筋肉細胞などからなる群から選ばれる一つ以上の細胞を含むことができる。
【0080】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明の細胞治療剤は、タンパク質又はペプチド製剤、グリコサミノグリカン(glycosaminoglycan)、プロテオグリカン(proteoglycan)、成長因子(growth factor)及び遺伝子治療剤からなる群から選ばれる一つ以上をさらに含むことができる。
【0081】
また、本発明の細胞治療剤は、前記幹細胞が内胚葉、中胚葉及び外胚葉などに分化して示す効果の他にも、幹細胞が分泌するmiRNAなどを含有するエクソソーム(exosome)やマイクロベシクル(microvesicle)を含むMSC由来細胞外小胞(MSC−derived extracellular vesicle)及び基質による周辺分泌効果(paracrine effect)をさらに保有することができ、前記幹細胞の周辺分泌効果については当業界によく知られている(韓国公開特許第2017−0103697号(肝線維症の治療)、米国公開特許第2015−0190429号(抗炎及び免疫抑制作用)、ヨーロッパ公開特許第3145493号(肺疾患の治療)、中国公開特許第101854941号(急性腎不全の治療)など)。
【0082】
前記細胞治療剤の臍帯由来幹細胞又はその分化された細胞を細胞治療剤として用いる方法は特に限定されないが、従来の当業界に公知の方法を用いることができ、好ましくは、前記臍帯由来幹細胞を支持体或いは運搬体に入れて提供することができる。
【0083】
前記支持体或いは運搬体は、宿主に実質的に有害な反応を誘発せず、必要時に生分解又は生物学的システムから自然的に除去可能な及び/又は生物学的システムに化学的に混入可能なものであり得る。前記支持体或いは運搬体はその種類に特に限定はないが、好ましくは、フィブリン、血小板溶解物(platelet lysate)、血小板豊富血漿(Platelet Rich Plasma,PRP)、天然及び合成高分子などを含むゲル又はハイドロゲルの形態であり得る。
【0084】
前記臍帯由来幹細胞は、ハイドロゲルと混合して細胞治療剤として用いることができる。前記使用可能なハイドロゲルは特に限定されないが、天然高分子で構成されたハイドロゲルであり得、好ましくはコラーゲンハイドロゲルであり得る。一例として、コラーゲンハイドロゲルを使用時に、コラーゲン濃度を調節して生体内で分解速度を調節することができる。前記ハイドロゲルは、細胞注入時に血液内に消失される短所を防止することができ、また、損傷部位内炎症細胞及び酵素による細胞損傷を減少させることができる。
【0085】
前記細胞治療剤はさらに、抗炎症製剤、幹細胞動員因子及び血管成長誘導因子からなる群から選ばれる一つ以上を含むことができる。
【0086】
前記抗炎症製剤は、ハイドロゲルが移植された臍帯由来幹細胞を、過度な炎症反応から保護するために用いることができ、幹細胞動員因子又は血管成長誘導因子を含むことによって末梢神経内幹細胞の動員及び血管成長を誘導し、細胞再生効果を増大させることができる。
【0087】
前記抗炎症製剤は特に限定されないが、一例として、COX抑制剤、ACE抑制剤、サリチル酸塩(salicylate)、デキサメタゾン(dexamethasone)及びテストステロン(Testosterone)などを含むステロイド及びタンパク同化ステロイド(anabolic steroid)製剤及びその前駆物質などからなる群から選ばれる一つ以上を含むことができる。
【0088】
前記幹細胞動員因子は特に限定されないが、一例として、IGF、bFGF、PDGF及びEGFからなる群から選ばれる一つ以上を含むことができる。
【0089】
前記血管成長誘導因子は特に限定されないが、一例として、EGF、PDGF、VEGF、ECGF及びアンギオゲニン(angiogenin)からなる群から選ばれる一つ以上を含むことができる。
【0090】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明の細胞治療剤は、タンパク質又はペプチド製剤、グリコサミノグリカン(glycosaminoglycan)、プロテオグリカン(proteoglycan)、成長因子(growth factor)及び遺伝子治療剤から構成された群から選ばれる一つ以上の物質と共に用いることができる。
【0091】
本発明の細胞治療剤は、臍帯由来幹細胞又はその分化された細胞を有効成分として含む注射剤の形態で提供されたり、或いは支持体又は運搬体に含まれて提供され得る。
【0092】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は、前記臍帯由来幹細胞又はその分化された細胞を有効成分として含む薬学組成物を提供する。
【0093】
本発明の薬学組成物は、幹細胞が保有する組織再生能及びこれを用いた疾患の予防又は治療効果、幹細胞の周辺分泌効果(paracrine effect)に起因した抗炎症及び免疫調節効果を呈することができる。
【0094】
本発明の薬学組成物が保有する組織再生能及びこれを用いた疾患の予防又は治療効果は、好ましくは、1)循環系において、心臓、血液及び血管の損傷及びこれによる疾患、2)外皮系において、皮膚、毛髪、脂肪、爪の損傷及びこれによる疾患、3)骨格系において、骨、軟骨、腱、靭帯及び筋肉の損傷及びこれによる疾患、4)生殖器官において、卵巣、卵管、子宮、膣、乳腺、皐丸、精管、精液及び前立腺のような性器の損傷及びこれによる疾患、5)消化器官において、唾液腺、食道、胃、肝、胆嚢、膵臓、内臓、直腸及び肛門の損傷及びこれによる疾患、6)泌尿器官において、体液、電解質均衡、腎臓、尿管、膀胱及び尿道の損傷及びこれによる疾患、7)呼吸器システムにおいて、気管、咽頭、喉頭、気管支、肺及び横隔膜の損傷及びこれによる疾患、8)内分泌系において、視床下部脳下垂体、松果体又は松果腺、甲状腺、副甲状腺、副腎及び内分泌腺の損傷及びこれによる疾患、9)免疫体系において、免疫体系の損傷及びこれによる疾患、10)リンパ系において、リンパノードと血管の損傷及びこれによる疾患、11)筋肉系において、骨格筋肉、平滑筋及び心臓筋肉の損傷及びこれによる疾患、12)神経系において、脳、脊髄、自律神経及び末梢神経系の損傷及びこれによる疾患を含むが、これに限定されない。
【0095】
本発明の薬学組成物が保有する抗炎症及び免疫調節効果は、好ましくは、1)関節炎、ベーチェット病、痛風などをはじめとする関節炎及び様々な器官及び組織における炎症性疾患、2)ループス、アトピー、リウマチ関節炎などの疾患、3)癌をはじめとする腫瘍、4)感染性疾患及びショック、5)移植(transplantation)時拒否反応治療及びGVHD治療を含むが、これに制限されない。
【0096】
本発明の好ましい具現例によれば、本発明の薬学組成物は、骨、軟骨、筋肉、腱又は靭帯疾患の予防又は治療用に用いることができる。
【0097】
本発明の薬学組成物は骨代謝性疾患の予防又は治療用に用いることができ、好ましくは、骨多孔症、ページェット病、歯周疾患、骨転移癌又はリウマチ関節炎の予防又は治療目的に用いることができる。
【0098】
本発明の分離方法によって60〜120分内に多量の臍帯由来幹細胞を培養することができ、PDTが30〜50時間であって体外成長能力に優れるので、短時間内に細胞治療剤として使用可能な有効量を得ることができる。
【0099】
本発明の臍帯由来幹細胞は、体外増殖能力、優れた多分化能を有するので、組織再生能及びこれを用いた疾患の予防又は治療効果及び/又は抗炎症及び免疫調節効果を示す薬学組成物として効果的に活用することができる。
【0100】
本発明の薬学組成物に含まれる薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通常用いられるものであり、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルジネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、滑石、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイルなどを含むが、これに限定されるものではない。本発明の薬剤学的組成物は、前記成分の他に潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含むことができる。適切な薬剤学的に許容される担体及び製剤はRemington’s Pharmaceutical Sciences(19th ed.,1995)に詳細に記載されている。
【0101】
本発明の薬学組成物は、経口又は非経口で投与でき、好ましくは非経口投与であり、例えば、静脈内注入、局所注入及び腹腔注入などで投与できる。
【0102】
本発明の薬学組成物の適度の投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、飲食、投与時間、投与経路、排泄速度及び反応感応性のような要因によって様々であり、通常の熟練した医師は、所望する治療又は予防に効果的な投与量を容易に決定及び処方することができる。
【0103】
本発明の薬学組成物は、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に実施できる方法によって、薬剤学的に許容される担体及び/又は賦形剤を用いて製剤化することによって単位容量の形態で製造されてもよく、多回容量の容器内に内入させて製造されてもよい。このとき、剤形は、本発明の臍帯由来幹細胞又はその分化された細胞を有効成分として含む注射剤の形態で提供されてもよく、支持体又は運搬体に含まれて提供されてもよく、必要によって、タンパク質又はペプチド製剤、グリコサミノグリカン(glycosaminoglycan)、プロテオグリカン(proteoglycan)、成長因子(growth factor)及び遺伝子治療剤から構成された群から選ばれる一つ以上の物質と共に提供され得る。
[発明を実施するための形態]
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は本発明をより具体的に説明するためのもので、本発明の要旨によって本発明の範囲がそれらの実施例に制限されないということは、当業界における通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【0104】
実験方法
1.CFU−F実験(Colony−forming unit−fibroblast;CFU−F assay)
培養14日に培養容器をDPBSで2回洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで20分間固定した後、0.1%クリスタルバイオレット(Merck,Darmstadt,Germany)溶液で10分間染色した。染色された細胞の数が50個以上の細胞集合体をCFU−Fで定義し、個数と面積を測定した。
【0105】
2.幹細胞の増殖能分析(Growth Kinetics Assay)
増殖能は累積集団倍加数(cumulative population doubling level;CPDL)と集団倍加時間(population doubling time;PDT)を測定して分析した。9継代間培養し、総培養期間は分離期間を含めて60日がかかった。累積集団倍加数を測定するために、臍帯幹細胞を培養容器に3,333cells/cmの密度で接種後、各継代培養ごとに細胞数をトリパンブルー除外方式(trypan blue excluding)で測定した。次のような公式を用いて値を算出し、Niは初期細胞数、Nfは最後の細胞数を表す。全ての実験は3回反復した。PD=Log(Nf/Ni)/Log2、PDT=CT/PD
3.免疫表現型分析(Immunophenotyping)
細胞表面抗原の免疫表現型を分析するために3世代継代培養細胞(P3)を用いて流細胞分析(flow cytometry)を行った。DPBSで洗浄した細胞を2×10個ずつ分注し遠心分離後に、冷たい染色緩衝溶液(staining buffer、DPBS、0.1%アジ化ナトリウム、及び2%ウシ胎児血清)を入れる。
【0106】
総8個の抗体(HLA−DR、CD11b、CD19、CD34、CD45、CD73、CD90(以上、Becton Dickinson,San Jose,Calif.,USA)、CD105(Abcam,Cambridge,UK)に、FITC(fluorescein isothiocyanate)又はPE(phycoerythrin)が結合された抗体を、4℃、暗室で30分間反応させた。その後、DPBSで洗浄後に1%パラホルムアルデヒドで細胞を固定させた。それぞれに該当する同種対照抗体(isotypic controls)としてIgG1−FITC、IgG1−PE、IgG2a−FITC(以上、Becton Dickinson,San Jose,CA,USA)が用いられた。データは、Becton Dickinson FACSAriaとFACSDivaソフトウェア(Becton Dickinson,San Jose,Calif.,USA)を用いて総10,000個のイベントを分析した。
【0107】
4.実時間逆転写重合酵素連鎖反応
実時間逆転写重合酵素連鎖反応(quantitative real time polymerase chain reaction,qPCR)を用いて脂肪、骨、軟骨、腱細胞特異遺伝子の発現を確認した。まず、各細胞の全RNA(total RNA)を分離するために、HiYield Total RNA mini kit(Real Biotech Corporation,Taiwan)を利用し、分光光度計(NanoDrop,Wilmington,Delaware)を用いて260nmと280nmにおける吸光度を測定した後、流出液中の全RNAを定量した。それぞれの全RNA 1μgを50μMオリゴ(dT)、10mM dNTPと混合し、最終体積が10ulになるように蒸留水を加えた後、65℃で5分間反応させた後、この溶液を10X RTバッファー、25mM MgCl、0.1M DTT、40U/ml RNaseOut、200U/mLのSuperscript II Reverse Transcriptase(Superscript II Reverse Transcription kit(Invitrogen,Carlsbad,California))混合溶液と混ぜて50℃、50分間反応させ、85℃で5分反応させた。4℃で冷ました溶液に2U/ml RNase H溶液を添加した後、37℃で20分間反応させてcDNAを合成した。合成されたcDNAは、Taq−Man Gene Expression Assays(Applied Biosystems,Foster City,California)を用いて次の遺伝子発現を実時間で確認した;aP2(assay ID:Hs01086177_m1)、OPN(assay ID:Hs00959010_m1)、Aggrecan(assay ID:Hs00153936_m1)、SCX A/B(assay ID:Hs03054634_g1)、GAPDH(assay ID:Hs99999905_m1)。重合酵素連鎖反応はLightCycler 480(Roche Applied Science,Mannheim,Germany)機械を用いて、変性(denaturation)段階95℃で10分、アニール段階95℃10秒、60℃1分、72℃4秒であり、60サイクル数に合わせて実験した後、重合反応(polymerization)は72℃で7分間反応して結果を観察した。遺伝子発現の定量化は、GAPDHの発現程度を対照群にして計算した。
【0108】
実施例
<実施例1〜5>臍帯組織由来幹細胞の培養
臍帯は、臨月の正常産婦から帝王切開又は経膣分娩後に産婦の同意下に採取した。前記採取した臍帯は、抗生剤(100U/mlペニシリン、100μg/ml硫酸ストレプトマイシン、及び0.25μg/mlアンホテリシンB(抗生物質−抗真菌剤溶液(antibiotic−antimycotic solution);Welgene,Daegu,Korea))が添加されたカルシウム及びマグネシウム不在Dulbeccoリン酸塩緩衝食塩水(Ca2+,Mg2+−free Dubecco’s phosphate−buffered saline;DPBS,Gibco)で2〜3回洗浄して臍帯外部の血液を除去した後、長さと重さを測定した。大量の臍帯をはさみで均一に切るために、およそ、横、縦及び高さがそれぞれ5cmである単位片に切った後、臍帯組織を、横、縦及び高さがそれぞれ1mm未満のものから10mmまで(≦1mm(実施例1)、1〜2mm(実施例2)、2〜4mm(実施例3)、>4mm(実施例4)、10mm(実施例5))多様に切断した切片(explant)を、それぞれ滅菌された状態のDMEM培地が入っている培養容器(culture dish)に整列して接種した後、切片が培養容器に完全に付着された後、培養培地を添加した。
【0109】
培養容器の60〜80%程度に細胞が育つとDPBSで2回洗浄し、トリプシン−EDTA溶液(0.05%トリプシン及び0.53mMエチレンジアミン四酢酸(trypsin−EDTA;Welgene,Daegu,Korea)を3分間処理して付着された細胞を剥がした後、細胞はトリパンブルー除外方式(trypan blue excluding)を用いて染色した後に計数し、3,333cells/cmの密度で細胞を培養し続けた。
【0110】
<実施例6>切片製造時に、培養培地の有無による臍帯組織由来幹細胞の培養
臍帯は、臨月の正常産婦から帝王切開又は経膣分娩後に産婦の同意下に採取した。前記採取した臍帯は、抗生剤(100U/mlペニシリン、100μg/ml硫酸ストレプトマイシン、及び0.25μg/mlアンホテリシンB(抗生物質−抗真菌剤溶液;Welgene,Daegu,Korea))が添加されたカルシウム及びマグネシウム不在Dulbeccoリン酸塩緩衝食塩水(Ca2+,Mg2+−free Dubecco’s phosphate−buffered saline;DPBS,Gibco)で2〜3回洗浄して臍帯外部の血液を除去した後、長さと重さを測定した。
【0111】
採取した臍帯は多量で粘性の特徴があるので、はさみで切断時に時間がかかるとい不具合がある。そのため、分離時間を節約し、多い数の細胞を分離するために、前記回収した臍帯組織を、臍帯組織1g当たり0〜5mlの培養培地を添加した後、横、縦及び高さがそれぞれ2〜4mmとなるように細かく切って切片を製造した。前記切片を培養容器に整列して接種し、完全に付着された後、培養培地を添加した。
【0112】
培養容器の60〜80%程度に細胞が育つとDPBSで2回洗浄し、トリプシン−EDTA溶液(0.05%トリプシン及び0.53mMエチレンジアミン四酢酸(trypsin−EDTA;Welgene,Daegu,Korea)を3分間処理して付着された細胞を剥がした後、細胞はトリパンブルー除外方式(trypan blue excluding)を用いて染色した後に計数し、3,333cells/cmの密度で細胞を培養し続けた。
【0113】
<実施例7>臍帯の初期接種容量による臍帯組織由来幹細胞の培養
臍帯は臨月の正常産婦から帝王切開又は経膣分娩後に産婦の同意下に採取した。前記採取した臍帯は、抗生剤(100U/mlペニシリン、100μg/ml硫酸ストレプトマイシン、及び0.25μg/mlアンホテリシンB(抗生物質−抗真菌剤溶液;Welgene,Daegu,Korea))が添加されたカルシウム及びマグネシウム不在Dulbeccoリン酸塩緩衝食塩水(Ca2+,Mg2+−free Dubecco’s phosphate−buffered saline;DPBS,Gibco)で2〜3回洗浄して臍帯外部の血液を除去した後、長さと重さを測定した。
【0114】
前記臍帯組織をさらに横、縦及び高さがそれぞれ2〜4mmとなるように切って切片を製造した後、前記切片(explant)を培養容器の面積(cm)に対して重量が0〜13.5mgになるように培養容器に整列して接種した。切片が培養容器に完全に付着された後、培養培地を慎重に添加した。
【0115】
培養容器の60〜80%程度に細胞が育つとDPBSで2回洗浄し、トリプシン−EDTA溶液(0.05%トリプシン及び0.53mMエチレンジアミン四酢酸(trypsin−EDTA;Welgene,Daegu,Korea)を3分間処理して付着された細胞を剥がした後、細胞はトリパンブルー除外方式(trypan blue excluding)を用いて染色した後に計数し、3,333cells/cmの密度で細胞を培養し続けた。
【0116】
<実施例8>付着時間による臍帯組織由来幹細胞の培養
臍帯は、臨月の正常産婦から帝王切開又は経膣分娩後に産婦の同意下に採取した。前記採取した臍帯は、抗生剤(100U/mlペニシリン、100μg/ml硫酸ストレプトマイシン、及び0.25μg/mlアンホテリシンB(抗生物質−抗真菌剤溶液;Welgene,Daegu,Korea))が添加されたカルシウム及びマグネシウム不在Dulbeccoリン酸塩緩衝食塩水(Ca2+,Mg2+−free Dubecco’s phosphate−buffered saline;DPBS,Gibco)で2〜3回洗浄して臍帯外部の血液を除去した後、長さと重さを測定した。
【0117】
前記臍帯組織を横、縦及び高さがそれぞれ2〜4mmとなるように切断して切片(explant)を製造した。前記切片を培養容器(culture dish)に付着させて37℃、5% COが供給される培養器内で10分、30分、60分、120分、180分間それぞれインキュベーターに放置した。
【0118】
培養容器の60〜80%程度に細胞が育つとDPBSで2回洗浄し、トリプシン−EDTA溶液(0.05%トリプシン及び0.53mMエチレンジアミン四酢酸(trypsin−EDTA;Welgene,Daegu,Korea)を3分間処理して付着された細胞を剥がした後、細胞はトリパンブルー除外方式(trypan blue excluding)を用いて染色した後に計数し、3,333cells/cmの密度で細胞を培養し続けた。
【0119】
<実施例9>全ての条件を満たす臍帯由来幹細胞の分離
臍帯は、臨月の正常産婦から帝王切開又は経膣分娩後に産婦の同意下に採取した。前記採取した臍帯は、抗生剤(100U/mlペニシリン、100μg/ml硫酸ストレプトマイシン、及び0.25μg/mlアンホテリシンB(抗生物質−抗真菌剤溶液;Welgene,Daegu,Korea))が添加されたカルシウム及びマグネシウム不在Dulbeccoリン酸塩緩衝食塩水(Ca2+,Mg2+−free Dubecco’s phosphate−buffered saline;DPBS,Gibco)で2〜3回洗浄して臍帯外部の血液を除去した後、長さと重さを測定した。
【0120】
前記回収した臍帯組織を臍帯組織1g当たり0〜2mlの培養培地を添加した後、横、縦及び高さがそれぞれ2〜4mmとなるように細かく切って切片(explant)を製造した。前記切片(explant)を培養容器の面積(cm)に対して重量が0.7〜6.8mgとなるように培養容器に整列して接種した。これを37℃、5% COが供給される培養器内で60分間それぞれインキュベーターに放置した。
【0121】
培養容器の60〜80%程度に細胞が育つとDPBSで2回洗浄し、トリプシン−EDTA溶液(0.05%トリプシン及び0.53mMエチレンジアミン四酢酸(trypsin−EDTA;Welgene,Daegu,Korea)を3分間処理して付着された細胞を剥がした後、細胞はトリパンブルー除外方式(trypan blue excluding)を用いて染色した後に計数し、3,333cells/cmの密度で細胞を培養し続けた。
【0122】
<比較例1>臍帯組織由来幹細胞の培養
臍帯は臨月の正常産婦から帝王切開又は経膣分娩後に産婦の同意下に採取した。前記採取した臍帯は、抗生剤(100U/mlペニシリン、100μg/ml硫酸ストレプトマイシン、及び0.25μg/mlアンホテリシンB(抗生物質−抗真菌剤溶液;Welgene,Daegu,Korea))が添加されたカルシウム及びマグネシウム不在Dulbeccoリン酸塩緩衝食塩水(Ca2+,Mg2+−free Dubecco’s phosphate−buffered saline;DPBS,Gibco)で2〜3回洗浄して臍帯外部の血液を除去した後、長さと重さを測定した。大量の臍帯をはさみで均一に切るために約5cm単位に切った。
【0123】
前記臍帯をはさみとカッターを用いてそれぞれ1〜2mm横、縦及び高さに細かく切った後、0.1%第1型コラゲナーゼ(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO,USA)と抗生剤が含まれている低グルコースダルベッコ改変イーグル培地(LG DMEM;Welgene,Daegu,Korea)内で軽く撹拌しながら37℃で2時間処理した。その後、同量の培養培地(LG DMEM,10%ウシ胎児血清(FBS;Welgene,Daegu,Korea)、及び抗生物質−抗真菌剤溶液)を添加した後、分解されていない組織を100−μm細胞濾過器を用いて除去した。20℃で500gで15分間遠心分離して細胞を集め、培養培地で2回洗浄した。分離された細胞をトリパンブルー除外方式(trypan blue excluding)を用いて細胞数を計数し、1×10cells/cm密度で150mm培養容器に入れ、37℃、5% COが供給される培養器内で培養した。培養3日後、培養容器の底に付着していない細胞を培地交換によって除去した後、1週に2〜3回培養液を入れ替えた。
【0124】
培養容器の60〜80%程度に細胞が育つとDPBSで2回洗浄し、トリプシン−EDTA溶液(0.05%トリプシン及び0.53mMエチレンジアミン四酢酸(trypsin−EDTA;Welgene,Daegu,Korea)を3分間処理して付着された細胞を剥がした後、細胞はトリパンブルー除外方式(trypan blue excluding)を用いて染色した後に計数し、3,333cells/cmの密度で細胞を培養し続けた。
【0125】
実験例1.実施例1〜5及び比較例1による臍帯由来幹細胞の分離細胞数測定
実施例1〜4及び比較例1から回収した細胞の数を数えた。その結果は図1及び表2の通りである。
【0126】
図1Aは、はさみ作業時間によって製造された実施例1〜4の臍帯由来幹細胞を示す図であり、図1Bは、実施例1から製造された切片サイズによる臍帯由来幹細胞の分離細胞数を示すグラフであり、図1Cは、実施例1から製造された切片サイズによって培養された臍帯由来幹細胞のコロニーサイズを示すグラフである。
【0127】
図1によれば、実施例3から分離した臍帯由来幹細胞の細胞数を測定した結果、1.86±0.49×10/g細胞数が測定され、CFU−f染色結果からも同一の結果が測定された。すなわち、比較例1、実施例1、2、4、5に比べてより多くの細胞が実施例3から分離されたことを確認した。また、効率的な細胞分離のために理想的な臍帯サイズである実施例3の切片を製造するためには、はさみ作業1分が最も好適であることを確認した。
【0128】
また、はさみ作業を1分行った結果、横、細胞及び高さがそれぞれ2〜4mmである切片が50%以上含まれ、これによって製造された実施例3の臍帯由来幹細胞は、後述する実験例から、細胞増殖などの面において非常に容易であることが分かる。
【0129】
【表2】
【0130】
実験例2:実施例6による分離細胞数測定
図2Aは、0ml/g、0.5ml/g、1ml/gの培地が入っている培養容器において、臍帯組織を外植した結果、総切られた組織を示すグラフであり、図2Bは、0ml/g、0.3ml/g、0.5ml/g、1ml/g、2ml/g、3ml/g、4ml/g、5ml/gの培地が入っているそれぞれの培養容器において、臍帯組織を外植した結果、総分離細胞数を測定して示すグラフである。
【0131】
【表3】
【0132】
【表4】
【0133】
図2及び表3、表4に示すように、培地を入れて臍帯組織を切ると、より細かく、より多くの切片に切られることを確認した。臍帯組織1g当たりに0、0.3、0.5、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0mlの培養培地を入れて臍帯を切った後、80%占有率(confluence)になると細胞数測定をした。臍帯組織を切片にして外植する時、培地の量が多いほど臍帯組織がより細かく切られるが、分離細胞数はより減少することを確認した。
【0134】
したがって、臍帯組織1gを基準に培養培地の量は0〜5.0ml、好ましくは0.5〜3mlであることを確認した。具体的に、培地を入れずに切片を製造した時に比べて、培地と一緒に臍帯組織を切る場合、切片の個数が1.4倍増加した。
【0135】
また、実施例3の臍帯由来幹細胞において、その他サイズの切片を用いた場合に比べて有意に大きいCFU−F面積を示すことを確認した。特に、切片1g当たりに2〜4mmサイズの切片を50%以上含んでいる実施例3は、総CFU−F面積が9.0±0.4cmで、実施例2は4.2±1.2cmで、比較例1は4.5±0.0cmであった。
【0136】
実験例3:切片の量による分離細胞数測定
150mm培養容器に移送された、外植片(explant)の重量(g)による分離細胞数変化を確認した。150mm培養容器に0.1g、0.5g、1.0g、2.0gの2〜4mm切片を整列した後、2週間培養した後、80%占有率になった時、分離細胞数を測定し、CFU−fをした。
【0137】
図3Aは、切片の重量による実施例7の臍帯由来幹細胞のCFU−fsの数を示すもので、クリスタルバイオレット染色結果であり、下段のグラフは、形成されたCFU−fsの数とサイズを示している。図3Bは、切片の重量による臍帯由来幹細胞の分離細胞数を測定して示すグラフである。
【0138】
【表5】
【0139】
図3及び表5に示すように、切片の重量によって分離細胞数は大きな差を示さなかたったが、切片の重量が多いほど、コロニーの個数が増加したことを確認した。特に、0.1g、1g、2g、5gでは有意の差を示し、1.0g及び2.0gの切片を含めた場合、これから分離された臍帯由来幹細胞のコロニー個数には差がなかった。
【0140】
しかも、切片の重量による培養容器の単位面積に換算すれば(0.0007〜0.0135g/cm)、却って2.0gの切片を入れた培養容器では臍帯由来幹細胞の分離細胞数が減少することが確認された。すなわち、実施例5のように切片重量によって分離された臍帯由来成体幹細胞は臍帯組織の重量が過度に多いほど却って低下するので、前記切片が単位面積(cm)当たりに0.0007〜0.0068g含まれるように培養することが、最も多い臍帯由来幹細胞が得られることが確認できる。
【0141】
実験例4:付着時間による臍帯由来幹細胞の分離細胞数分析
付着時間による効果を評価するために、実施例8によって製造された臍帯由来幹細胞をCO培養器で10分、30分、60分、120分、180分間培養及び付着させ、その分離細胞数を測定し、CFU−fをした。
【0142】
図4Aは、実施例8から製造された臍帯由来幹細胞の分離細胞数を測定して示すグラフであり、図4Bは、実施例8から製造された臍帯由来幹細胞のCFU−fsの数を示すもので、クリスタルバイオレット染色結果であり、下段のグラフは、形成されたCFU−fsの数とサイズを示している。
【0143】
【表6】
【0144】
図4及び表6に示すように、切片を長く付着させるほど分離細胞数も漸次増加したことを確認し、60分間付着時に最大分離細胞数が測定された。
【0145】
しかし、120分を超えると分離細胞数がますます減少し、これはCFU−fの数を測定した結果からも同一傾向を示すことが確認された。具体的に、CFU−Fの面積は60分付着時に45.7±6.9cmと最大面積を示し、120分及び180分付着時に、60分付着時と比べて有意の差がなかった。
【0146】
要すると、横、縦及び高さがそれぞれ2〜4mmに製造された臍帯組織の切片を培養容器に整列した後に培養器で60分間培養することが、最も好ましいということを確認した。
【0147】
実験例5:成長特性
培養培地から回収した臍帯由来幹細胞の群集倍加時間(population doubling time,PDT)を測定するために、実施例9から製造された細胞を48−マルチウェル培養容器に播種して培養した。PDTは公式、PDT=[(days in exponential phase)/((logN2−logN1)/log2)]によって算定した。このとき、N1は指数成長期の初期における細胞数であり、N2は指数成長期の末期における細胞数である。
【0148】
図5Aは、実施例9から製造された臍帯由来幹細胞のモルフォロジーを観察するための光学顕微鏡写真であり、図5Bは、酵素的方法で製造された臍帯由来幹細胞(比較例2)と実施例9から製造された臍帯由来幹細胞の培養期間によるCPDLを測定して示すグラフであり、図5Cは、酵素的方法で製造された臍帯由来幹細胞(比較例2)と実施例9から製造された臍帯由来幹細胞の群集倍加時間(PDT)を測定して示すグラフである。
【0149】
【表7】
【0150】
図5Aに示すように、本発明の方法を用いて製造された臍帯由来幹細胞は防錘形の形状を示し、継代培養においても繊維芽細胞形態の特徴的な幹細胞形状を維持していることを確認した。
【0151】
図5B及び図5Cに示すように、実施例9から製造された臍帯由来幹細胞のCPDLは、培養60日と88日後、それぞれ35.5±2.36と55.8±1.96であり、比較例1から製造された臍帯由来幹細胞及び既存に報告された研究における値よりも顕著に大きいことを確認した。
【0152】
また、図5及び表7に示すように、本発明の実施例9から製造された臍帯由来幹細胞は、比較例1から分離された臍帯由来幹細胞に比べて、P2、P5、P7、及びP9の培養段階のいずれにおいても有意に小さなPDTを示した。また、実施例9の臍帯由来幹細胞は、継代培養が増加することに伴うPDT変化が観察されなかった。
【0153】
実験例6:免疫表現型分析(Immunophenotyping)
前述した免疫表現型分析法を用いて分析した。一般に、間葉系幹細胞は、CD73、CD90、及びCD105で陽性であり、CD11b(又はCD14)、CD19(又はCD79alpha)、CD34、CD45、及びHLA−DRで陰性を示すものと知られている。したがって、本発明の方法で分離された臍帯由来幹細胞もこの基準に適する所見が見られると予想し、分析を行った。
【0154】
図6は、実施例9から分離した臍帯由来幹細胞の流細胞分析機を用いて分析した免疫表面学的特性を示すグラフであり、その結果を表8に整理した。これによれば、実施例9から分離した臍帯由来幹細胞は、CD73、CD90及びCD105(>95%)で強く陽性であったが、HLA−DR、CD11b、CD19、CD34及びCD45では陰性であった(<1.5%)。
【0155】
【表8】
【0156】
実験例7:臍帯由来幹細胞の多分化能力
1)脂肪細胞への分化能力
実施例9から製造された臍帯由来幹細胞の脂肪細胞で分化能力を評価するために、8,000cells/cmの密度で細胞を培養容器に入れて60〜80%程度に満たされると、脂肪細胞分化培養液(10%ウシ胎児血清、1%抗生剤溶液、0.5mM3−イソブチル−1−メチルキサンチン(Sigma)、1μMデキサメタゾン、5μg/mlインスリン(Gibco)、60μMインドメタシン(Sigma)を添加したLG−DMEM)で21日間培養した。オイルレッドO(Oil Red O)染色と脂肪細胞マーカー遺伝子発現によって分化程度を確認した。オイルレッドO染色は、培養した細胞を1回蒸留水で洗浄し、4%パラホルムアルデヒドで室温で1時間固定させた後、3回洗浄後に0.18%オイルレッドO(Sigma)溶液を適用して常温で10分間反応させ、蒸留水で洗浄後に観察した。
【0157】
図7は、実施例9から分離した臍帯由来幹細胞の脂肪細胞(Adipogenesis)(A)、骨細胞(osteogenesis)(B)、軟骨細胞(Chondrogenesis)(C)、腱細胞(Tenogenesis)(D)への分化能力を示す図である。
【0158】
図7Aで提示するように、臍帯由来幹細胞は脂肪細胞への分化を誘導した後、中性脂質蓄積を示す赤色が観察され(PPARγ2)、脂タンパク質リパーゼ(LPL)及び脂肪細胞タンパク質2(aP2)の発現が有意に増加することを確認した。具体的に、脂肪分化マーカーであるaP2が355±31.94倍と未分化細胞においてより高く測定された。
【0159】
2)骨細胞への分化能力
実施例9から分離された臍帯由来幹細胞の骨細胞への分化能力を評価するために、8,000cells/cmの密度で細胞を培養皿に入れ、60〜80%程度に満たされると粉化培養液(10%ウシ胎児血清、1%抗生剤溶液、100nMデキサメタゾン(Sigma,St.Louis,MO,USA)、10mM β−グリセロリン酸塩(Sigma)、0.2mMアスコルビン酸2−リン酸塩(Sigma)を添加したLG−DMEM)で21日間培養した。フォン−コッサ(Von Kossa)染色と骨マーカー遺伝子発現によって分化程度を確認した。フォン−コッサ染色は<蒸留水で1回洗浄した培養細胞を4%パラホルムアルデヒドで室温で1時間固定させ、3回洗浄後、5%硝酸銀(Sigma)溶液を60Wランプ下で1時間適用して反応させた。その後、蒸留水で3回洗浄後、5%チオ硫酸ナトリウムで5分間処理し、0.1%ニュークリアファストレッド(nuclear fast red)溶液を5分間反応させて観察した。
【0160】
図7Bに示すように、細胞外カルシウムの存在を確認し、実時間PCRでRunt関連転写因子2(Runx2)、ALP(alkaline phosphatase)及びOPN(osteopontin)発現レベルが未分化細胞に比べて有意に高いことを確認した。具体的に、骨分化マーカーであるOPNが未分化細胞に比べて5.9±1.94倍さらに高く検出された。したがって、本発明による臍帯由来幹細胞は造骨細胞への分化能力を有することが確認できる。
【0161】
3)軟骨細胞への分化能力
軟骨細胞への分化能力を評価するために、実施例9から製造された臍帯由来幹細胞を、ウシ胎児血清が含まれないHG−DMEM培地に2×10個の細胞を浮遊した後、15mlポリプロピレンチューブ(polypropylene tube)に入れて遠心分離し、3次元培養のためのペレットを得た。DMEM−HGに50μg/mlアスコルビン酸2−リン酸塩、100nMデキサメタゾン、100μg/mlピルビン酸ナトリウム、40μg/mlプロリン、10ng/ml形質転換成長因子(transforming growth factor)−β1、1Xインスリン−トランスフェリン−亜セレン酸(Insulin−Transferrin−Serenite)(ITS;Gibco)が添加された分化培地で21日間培養した。軟骨細胞への分化程度を確認するために、サフラニンO(Safranin O)染色と軟骨細胞マーカー遺伝子発現によって分化程度を確認した。サフラニンO染色をするために、ペレットを4%パラホルムアルデヒド溶液に4℃で24時間固定した後、5μm標本として作った。0.2%サフラニンO溶液で10分間染色し、蒸留水で洗浄後、0.04%ファストグリーン(fast green)溶液で15秒間反応させて軟骨細胞分化の有無を観察した。
【0162】
図7Cに示すように、分化された臍帯由来幹細胞でサフラニンO染色されたアグレカン(aggrecan)が確認されたところ、未分化細胞に比べて軟骨細胞分化能が高いことを確認した。また、軟骨分化マーカーであるアグレカンが未分化細胞に比べて5.1±1.65倍さらに高く検出されたところ、このことから、本発明に係る臍帯由来幹細胞は軟骨細胞に分化可能であることを確認した。
【0163】
4)腱細胞への分化能力
腱細胞への分化能力を評価するために、実施例9から製造された臍帯由来幹細胞は腱細胞に分化させるために、まず、35mm培養皿にSYLGARD(Dow Corning,Midland,MI,USA)を注いで1〜2週間コーティングさせた後、5mmサイズの2つの絹縫合糸(silk suture)をSYLGARD上に入れた。培養皿と縫合糸はクリーンベンチで100%エタノール及びUVを用いて滅菌し、2時間乾かした後、DMEMを37℃ COインキュベーターで1時間あらかじめ浸して置く。2×10個の細胞をトロンビン混合溶液(thrombin mixture;10%ウシ胎児血清追加DMEM、1%抗生剤溶液、1U/mlトロンビン(Merck Chemicals,UK)、200μMアミノヘキサン酸(Sigma−Aldrich)、及び10mg/mlアプロチニン(Roche,UK))と混ぜ、10mg/mlフィブリノゲン(Sigma−Aldrich)溶液を入れた。この混合溶液をSYLGARDがコーティングされた培養皿の表面に迅速に展開し、37℃で1時間放置した。その後、DMEM−HGに250μMアスコルビン酸、50μM L−プロリンが含まれている腱細胞分化培養液で14日間培養した。腱細胞への分化程度を確認するためにH&E(hematoxylin and eosin)、ピクロシリウスレッド(picrosirius red)、免疫組織化学染色を施した。また、腱細胞マーカー遺伝子発現によって分化程度を確認した。細胞を4%パラホルムアルデヒド溶液に24時間固定した後、パラフィンに包埋して10μmの薄切標本にした後、H&E(hematoxylin and eosin)染色とピクロシリウスレッド染色を施し、また、免疫組織化学染色のためにanti−Col I(Abcam)を1:200に希釈して常温で2時間反応させ、HRPが結合されている2次抗体を室温で30分反応させた後に観察した。
【0164】
図7Dに示すように、長い軸に沿って整列された繊維素構造の存在を確認したが、具体的に、H&E染色を用いて、健康な腱基質と類似の薄い赤色で染色された基質及び防錘形の細胞を確認した。前記腱基質がピクロシリウスレッドによって黄色に染色される第1型コラーゲンであることが確認できた。第1型コラーゲン抗体を用いた免疫組織化学染色によって前記部分が第1型コラーゲンであることを再び確認した。
【0165】
実時間PCRで分化された実施例9から製造された臍帯由来幹細胞は、Scleraxis(SCX)とMohawk(MKX)発現レベルが未分化細胞においてより有意に高いことを確認したが、具体的に、SCXが57.4±1.97倍さらに高く分析されたところ、本発明に係る臍帯由来幹細胞は腱細胞への分化能力を有することが確認できる。
【0166】
以上、本発明の特定の部分を詳細に記述したところ、当業界における通常の知識を有する者にとって、当該具体的な記述は単に好ましい具現例であるだけで、これらに本発明の範囲が制限されるものでない点は明らかである。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とその等価物によって定義されるといえよう。
【図面の簡単な説明】
【0167】
図1A】実施例1〜5から製造された時間による組織切片の数を測定して示す図である。
図1B】実施例1〜5から製造された切片サイズによる細胞数を示すグラフである。
図1C】実施例1〜5から製造された切片サイズによって培養されたコロニーのサイズを示すグラフである。
図2A】0ml/g、0.5ml/g、1ml/gの培地が入っている培養容器において、臍帯組織を外植した結果、総切られた組織を示すグラフである。
図2B】0ml/g、0.3ml/g、0.5ml/g、1ml/g、2ml/g、3ml/g、4ml/g、5ml/gの培地が入っているそれぞれの培養容器において、臍帯組織を外植した結果、総分離細胞数を測定して示すグラフである。
図3A】切片の重量による臍帯由来幹細胞のCFU−fsの数を示すもので、クリスタルバイオレット染色結果であり、下段のグラフは、形成されたCFU−fsの数とサイズを示す。
図3B】切片の重量による臍帯由来幹細胞の分離細胞数を測定して示すグラフである。
図4A】実施例8から製造された臍帯由来幹細胞の分離細胞数を測定して示すグラフである。
図4B】実施例8から製造された臍帯由来幹細胞のCFU−fsの数を示すもので、クリスタルバイオレット染色結果であり、下段のグラフは、形成されたCFU−fsの数とサイズを示す。
図5A】実施例9から製造された臍帯由来幹細胞のモルフォロジーを観察するための光学顕微鏡写真である。
図5B】酵素的方法で製造された臍帯由来幹細胞(比較例1)と実施例9から製造された臍帯由来幹細胞の培養期間によるCPDLを測定して示すグラフである。
図5C】酵素的方法で製造された臍帯由来幹細胞(比較例1)と実施例9から製造された臍帯由来幹細胞の群集倍加時間(PDT)を測定して示すグラフである。
図6】実施例9から分離した臍帯由来幹細胞の流細胞分析機を用いて分析した免疫表面学的特性を示すグラフである。
図7-1】実施例9から分離した臍帯由来幹細胞の脂肪生成(Adipogenesis)(A)、骨形成(osteogenesis)(B)、軟骨形成(Chondrogenesis)(C)、腱発生(Tenogenesis)(D)への分化能力を示す図である。
図7-2】図7−1の続き。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7-1】
図7-2】
【国際調査報告】