特表2021-514926(P2021-514926A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-514926過硫酸塩を効率よく活性化可能なグラフェン系中空硫化コバルトのナノ結晶及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-514926(P2021-514926A)
(43)【公表日】2021年6月17日
(54)【発明の名称】過硫酸塩を効率よく活性化可能なグラフェン系中空硫化コバルトのナノ結晶及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 51/00 20060101AFI20210521BHJP
   C01B 32/194 20170101ALI20210521BHJP
   C01B 32/198 20170101ALI20210521BHJP
   B01J 27/043 20060101ALI20210521BHJP
   B01J 37/10 20060101ALI20210521BHJP
   B01J 37/34 20060101ALI20210521BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20210521BHJP
【FI】
   C01G51/00 C
   C01B32/194
   C01B32/198
   B01J27/043 M
   B01J37/10
   B01J37/34
   B01J37/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-545353(P2020-545353)
(86)(22)【出願日】2018年11月13日
(85)【翻訳文提出日】2020年8月28日
(86)【国際出願番号】CN2018115125
(87)【国際公開番号】WO2020037845
(87)【国際公開日】20200227
(31)【優先権主張番号】201810949426.X
(32)【優先日】2018年8月20日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】515190906
【氏名又は名称】南京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100206612
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 修博
(74)【代理人】
【識別番号】100209749
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 和輝
(74)【代理人】
【識別番号】100217755
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 淳史
(72)【発明者】
【氏名】リウ フーチャン
(72)【発明者】
【氏名】ズー チャンチン
(72)【発明者】
【氏名】リン チェン
(72)【発明者】
【氏名】ジアン ハオ
(72)【発明者】
【氏名】ウー ハイデ
(72)【発明者】
【氏名】リ アイミン
【テーマコード(参考)】
4G048
4G146
4G169
【Fターム(参考)】
4G048AA07
4G048AB02
4G048AC08
4G048AD04
4G048AE07
4G146AA01
4G146AA15
4G146AB07
4G146AD15
4G146AD17
4G146AD35
4G146CA16
4G146CB10
4G146CB12
4G146CB13
4G146CB23
4G146CB24
4G146CB34
4G146CB35
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA08A
4G169BA08B
4G169BB09A
4G169BB09B
4G169BB12C
4G169BC67A
4G169BC67B
4G169BD08A
4G169BD08B
4G169BE01C
4G169BE06C
4G169BE08C
4G169BE14C
4G169BE15C
4G169BE21C
4G169BE37C
4G169BE38C
4G169CA05
4G169CA10
4G169CA11
4G169DA06
4G169EA08
4G169EB18Y
4G169EC27
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB06
4G169FB10
4G169FB30
4G169FC03
4G169FC04
4G169FC06
4G169FC07
4G169FC08
(57)【要約】
本発明は、環境触媒の合成分野に属している。まず、酸化グラフェンの表面に沈降法によりゼオライトイミダゾレートフレームワーク67を成長させ、次に、イミダゾレートフレームワーク67を自己テンプレートとし、チオアセトアミドを硫黄源とし、溶媒熱反応により中空構造の四硫化三コバルトを製造し、最後に、不活性雰囲気で焼成し、脱硫反応により四酸化三コバルトを中空硫化コバルトに変換させるとともに、酸化グラフェンをグラフェンに還元することにより、グラフェン系中空硫化コバルトのナノ結晶を製造する、過硫酸塩を効率よく活性化可能なグラフェン系中空硫化コバルトのナノ結晶及びその製造方法である。本発明で製造された中空硫化コバルトのナノ結晶は、触媒活性が高く、ラジカルの収率が大きく、リサイクルが簡単である等の利点を有し、通常の酸化法を強化し、反応時間を顕著に短縮し、触媒、酸化剤の使用量を大幅に低減させることができ、顕著な技術・経済的優位性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.酸化グラフェンを超音波により水に均一に分散させて酸化グラフェン分散液を得、続いて、それに硝酸コバルト(II)六水和物を添加し、常温で0.5〜2h撹拌し、その後、2−メチルイミダゾール水溶液を添加し、常温で5〜30min撹拌してから、遠心分離し、水洗いし、乾燥させて酸化グラフェン系ゼオライトイミダゾレートフレームワーク67を得る、酸化グラフェン系ゼオライトイミダゾレートフレームワーク67の製造工程と、
b.工程aで得られた酸化グラフェン系ゼオライトイミダゾレートフレームワーク67を超音波によりエタノールに均一に分散させて酸化グラフェン系ゼオライトイミダゾレートフレームワーク67のエタノール分散液を得、続いて、それにチオアセトアミドを添加し、撹拌して溶解させた後、混合液を水熱反応釜に移し、加熱反応後、生成物を遠心分離し、水洗いし、乾燥させて酸化グラフェン系中空四硫化三コバルトを得る、酸化グラフェン系中空四硫化三コバルトの製造工程と、
c.工程bで得られた酸化グラフェン系中空四硫化三コバルトを管状炉に入れ、不活性ガスの保護で、高温で焼成してグラフェン系中空硫化コバルトのナノ結晶を得る、グラフェン系中空硫化コバルトの製造工程と、
を含むことを特徴とする、過硫酸塩を効率よく活性化可能なグラフェン系中空硫化コバルトのナノ結晶の製造方法。
【請求項2】
前記工程aにおける酸化グラフェン分散液の濃度は、0.5〜3mg/mLであり、硝酸コバルト(II)六水和物の添加量は、10〜20mg/mLであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記工程aにおける2−メチルイミダゾール水溶液の濃度は、45〜115mg/mLであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記工程bにおける酸化グラフェン系ゼオライトイミダゾレートフレームワーク67のエタノール分散液の濃度は、1〜3mg/mLであり、チオアセトアミドの添加量は、1.5〜4.5mg/mLであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記工程bにおける溶媒熱反応温度は、120〜140℃であり、反応時間は、3〜6hであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記工程cにおける焼成温度は、600〜700℃であり、焼成時間は、2〜6hであり、昇温速度は、1〜10℃/minであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載のグラフェン系中空硫化コバルトのナノ結晶。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1つに記載のグラフェン系中空硫化コバルトのナノ結晶の有機物分解における使用。
【請求項9】
具体的な方法として、前記グラフェン系中空硫化コバルトのナノ結晶と有機物を含む溶液とを十分に混合した後、過硫酸塩を添加することを特徴とする請求項8に記載の使用。
【請求項10】
具体的な方法として、前記グラフェン系中空硫化コバルトのナノ結晶を濾過膜に濾過保持し、過硫酸塩及び有機物を含む混合溶液を濾過するために用いることを特徴とする請求項8に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境触媒の合成分野に属し、過硫酸塩を効率よく活性化可能なグラフェン系中空硫化コバルトのナノ結晶及びその製造方法である。
【背景技術】
【0002】
工業、生活及び医薬などの有機廃水の無規制排出により、より深刻な水質汚染を引き起こす。高毒性及び持続性の有機物に対して、従来の吸着、膜処理などの物理化学的方法は、その毒性を転移できるが低減しにくく、生物化学的方法において、微生物は、高毒性有機物に対する耐性が強くないので、処理効果がよくない。高級酸化技術は、有機物を分解、さらに鉱化することができ、顕著にその毒性を低下させ生分解性を向上させることができ、水処理プロセスの前端又は末端に設けられ、有機汚染物に対する効率的な除去を実現することができる。
【0003】
ヒドロキシルラジカルに基づく酸化技術と、サルフェートラジカルに基づく酸化技術とは、二種類の重要な高級酸化技術である。ヒドロキシルラジカルに比べて、サルフェートラジカルは、酸化還元電位が高く(2.5〜3.1V vs 1.8〜2.7V)、pH適用範囲が広く、半減期が長い(t1/2=30〜40μs vs 10〜3μs)等の内在優位性を有するため、研究の焦点となっている。サルフェートラジカルは、過硫酸塩から均一触媒作用又は不均一触媒作用により生成されてもよい。均一触媒作用の過程において、触媒の使用量が大きいため、二次汚染を引き起こしやすく、且つ触媒をリサイクルしにくいが、不均一触媒作用は、固体触媒の界面活性部位により過硫酸塩を活性化し、以上の難題を効果的に回避することができる。現在、不均一触媒作用の効率を向上させる研究は、主に、外部エネルギーを印加することにより触媒の構造設計を強化又は最適化し、その内在触媒活性を向上させることに集中している。例えば、中国特許番号が201610174029.0で、出願公開日が2016年3月24日である特許出願書類には、電気化学とNi−Fe−LDH/rGO触媒との相乗的作用により過硫酸塩を活性化して有機廃水を処理する方法が開示されている。また、中国特許番号が201510234345.8で、出願公開日が2015年5月11日である特許出願書類には、フォトアシスト多孔質ビスマス酸銅により過硫酸塩を活性化して水処理する高級酸化技術の構築及び応用方法が開示されている。前記2つの引例は、それぞれ電気、光などの外部エネルギーを印加することにより触媒効果を向上させたが、このような方法は、エネルギー消費が高く、それに必要な装置が複雑であり、大規模で普及することが困難である。
【0004】
不均一触媒の内在活性を向上させるには、界面活性部位の密度の増加、電子伝達速度の加速、目的汚染物に対する富化能力の向上の3点により実現することができる。既存の報道によれば、金属触媒のうち、コバルトは、過硫酸塩に対する活性化効果が最もよい。よく見られているコバルト系触媒は、コバルト又はコバルトを含有する酸化物であることが多く、例えば、中国特許番号が201510928060.4で、出願公開日が2015年12月15日である特許出願書類には、三次元磁気秩序メソポーラスコバルトフェライトに基づいて過硫酸塩を活性化して染料廃水を処理する方法が開示されている。また、中国特許番号が201510487197.0で、出願公開日が2015年8月10日である特許出願書類には、マンガンコバルト複合酸化物により過硫酸塩を活性化して有機廃水を分解させる方法が開示されている。しかしながら、前記2つの引例に記載された触媒は、いずれも以上の3点の要求を同時に満たしにくいので、触媒効果がよくなく、触媒活性をさらに向上させる必要がある。最近、Huangらは、コバルトを含有するゼオライトイミダゾレートフレームワーク67を自己テンプレートとし、溶媒熱加硫反応によりゼオライトイミダゾレートフレームワーク67内部のコバルトイオンを表面に移動させて高密度の界面触媒部位を形成し、得られた中空四硫化三コバルトは、非常に高い電気触媒及び光触媒による水素生成効率を示す(Huang et al. Hollow Cobalt−Based Bimetallic Sulfide Polyhedra for Efficient All−pH Value Electrochemical and Photocatalytic Hydrogen Evolution, J. Am. Chem. Soc. 2016, 138, 1359−1365)。しかしながら、当該触媒活性は、依然として四硫化三コバルトの低導電能力に制限されている。Kongらは、溶媒熱法により、グラフェンで担持された中実硫化コバルトをリチウムイオン電池及び光触媒として一段階合成した(Kong et al. Morphological Effect of Graphene Nanosheets on Ultrathin CoS Nanosheets and Their Applications for High−Performance Li−Ion Batteries and Photocatalysis, J. Phys. Chem. C 2014, 118, 25355−25364)が、中実硫化コバルトは、界面触媒部位の密度が低く、内部部位の利用率が高くない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術に存在する前記技術課題を解決するために、過硫酸塩を効率よく活性化可能なグラフェン系中空硫化コバルトのナノ結晶及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の技術方案は、以下のとおりである。
a.酸化グラフェンを超音波により水に均一に分散させて酸化グラフェン分散液を得、続いて、それに硝酸コバルト(II)六水和物を添加し、常温で0.5〜2h撹拌してコバルトイオンを酸化グラフェンの表面に吸着させ、その後、2−メチルイミダゾール水溶液を添加し、常温で5〜30min撹拌してから、遠心分離し、水洗いし、乾燥させて酸化グラフェン系ゼオライトイミダゾレートフレームワーク67を得る、酸化グラフェン系ゼオライトイミダゾレートフレームワーク67の製造工程と、
b.工程aで得られた酸化グラフェン系ゼオライトイミダゾレートフレームワーク67を超音波によりエタノールに均一に分散させて酸化グラフェン系ゼオライトイミダゾレートフレームワーク67のエタノール分散液を得、続いて、それにチオアセトアミドを添加し、撹拌して溶解させた後、混合液を水熱反応釜に移し、加熱反応後、生成物を遠心分離し、水洗いし、乾燥させて酸化グラフェン系中空四硫化三コバルトを得る、酸化グラフェン系中空四硫化三コバルトの製造工程と、
c.工程bで得られた酸化グラフェン系中空四硫化三コバルトを管状炉に入れ、不活性ガスの保護で、高温で焼成して四硫化三コバルトを脱硫反応させてグラフェン系中空硫化コバルトのナノ結晶を得る、グラフェン系中空硫化コバルトの製造工程と、
を含む、過硫酸塩を効率よく活性化可能なグラフェン系中空硫化コバルトのナノ結晶の製造方法である。
【0007】
好ましくは、前記工程aにおける酸化グラフェン分散液の濃度は、0.5〜3mg/mLであり、硝酸コバルト(II)六水和物の添加量は、10〜20mg/mLである。
好ましくは、前記工程aにおける2−メチルイミダゾール水溶液の濃度は、45〜115mg/mLである。
好ましくは、前記工程bにおける酸化グラフェン系ゼオライトイミダゾレートフレームワーク67のエタノール分散液の濃度は、1〜3mg/mLであり、チオアセトアミドの添加量は、1.5〜4.5mg/mLである。
好ましくは、前記工程bにおける溶媒熱反応温度は、120〜140℃であり、反応時間は、3〜6hである。
好ましくは、前記的工程cにおける不活性ガスは、高純度の窒素ガス又はアルゴンガスのうちの1種である。
好ましくは、前記工程cにおける焼成温度は、600〜700℃であり、焼成時間は、2〜6hであり、昇温速度は、1〜10℃/minである。
【0008】
本発明は、グラフェン系中空硫化コバルトのナノ結晶の有機物分解における使用にも関わる。
前記グラフェン系中空硫化コバルトのナノ結晶は、触媒として、過硫酸塩を活性化し、有機物を分解することができる。
【0009】
具体的な方法は、以下のとおりである。
方法1、前記グラフェン系中空硫化コバルトのナノ結晶と有機物を含む溶液とを十分に混合した後、過硫酸塩を添加する。
方法2、前記グラフェン系中空硫化コバルトのナノ結晶を濾過膜に濾過保持し、過硫酸塩及び有機物を含む混合溶液を濾過するために用いる。
【0010】
好ましくは、前記過硫酸塩は、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸水素カリウム複合塩のうちの1種又は複数種を含む。
【発明の効果】
【0011】
従来技術に対して、本発明の利点は、以下のとおりである。
(1)本発明は、簡単な有機金属フレームワークの自己テンプレート法により、溶媒熱加硫及び高温脱硫反応を組み合わせ、グラフェンで担持された中空構造を有する新規な硫化コバルトのナノ結晶を製造した。当該複合材料は、グラフェンによる、よく見られている有機汚染物に対する富化、電子の迅速な伝達及び硫化コバルトの過硫酸塩に対する効率的な活性化能力を組み合わせるため、水中の有機汚染物を迅速に分解することができる。
(2)本発明で製造されたグラフェン系中空硫化コバルトのナノ結晶は、均一触媒作用において薬剤の添加量が大きく、触媒を回収しにくく、よく見られている外部エネルギーは不均一触媒作用とともにエネルギー消費が高く、装置が複雑であり、通常の不均一触媒の過硫酸塩に対する活性化効率が高くない等の欠点を克服することができ、効率がよく消費が低く、複数回リサイクルできる新規な触媒であり、汚染物を迅速に処理すると同時に、触媒、酸化剤の使用量を大幅に節約することができ、環境的・経済的意義が著しい。
(3)本発明は、通常のコバルト系不均一触媒がコバルト又はコバルトを含有する酸化物であることが多いのに対して、始めてコバルトの硫化物を過硫酸塩の活性化に応用し、サルフェートラジカルに基づく高級酸化技術に新規な効率的触媒を提供し、応用見通しが広い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明におけるグラフェン系中空硫化コバルトのナノ結晶の(A)走査及び(B)透過型電子顕微鏡図である。
図2】本発明の実施例1におけるグラフェン系中空硫化コバルトのナノ結晶のビスフェノールAに対する分解効果図である。
図3】本発明の実施例1におけるグラフェン系中空硫化コバルトのナノ結晶に基づく触媒膜構築(A)及びそのリサイクル性(B)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施例1
a.酸化グラフェンを超音波により水に均一に分散させて濃度3mg/mLの酸化グラフェン分散液を得、続いて、それに濃度12mg/mLの硝酸コバルト(II)六水和物を添加し、常温で0.5〜2h撹拌してコバルトイオンを酸化グラフェンの表面に吸着させ、その後、濃度54mg/mLの2−メチルイミダゾール水溶液を添加し、常温で5〜30min撹拌してから、遠心分離し、水洗いし、乾燥させて酸化グラフェン系ゼオライトイミダゾレートフレームワーク67を得た、酸化グラフェン系ゼオライトイミダゾレートフレームワーク67の製造工程と、
b.工程aで得られた酸化グラフェン系ゼオライトイミダゾレートフレームワーク67を超音波によりエタノールに均一に分散させて濃度1.5mg/mLの酸化グラフェン系ゼオライトイミダゾレートフレームワーク67のエタノール分散液を得、続いて、それに濃度2.25mg/mLのチオアセトアミドを添加し、撹拌して溶解させた後、混合液を水熱反応釜に移し、120℃で4h加熱反応させた後、生成物を遠心分離し、水洗いし、乾燥させて酸化グラフェン系中空四硫化三コバルトを得た、酸化グラフェン系中空四硫化三コバルトの製造工程と、
c.工程bで得られた酸化グラフェン系中空四硫化三コバルトを管状炉に入れ、窒素ガスの保護で、5℃/minの昇温速度で600℃に昇温させ、2h焼成して四硫化三コバルトを脱硫反応させてグラフェン系中空硫化コバルトのナノ結晶を得た、グラフェン系中空硫化コバルトの製造工程と、
を含む、過硫酸塩を効率よく活性化可能なグラフェン系中空硫化コバルトのナノ結晶及びその製造方法。
【0014】
本実施例における工程cで得られたグラフェン系中空硫化コバルトのナノ結晶の走査及び透過型電子顕微鏡図は、図1に示される。サイズ10〜40nmの中空硫化コバルトのナノ結晶は、グラフェンナノシートに均一に担持されたことが分かる。
【0015】
ビスフェノールAは、通常、プラスチック及び樹脂の添加剤に用いられ、内分泌かく乱化学物質として、水体中に広く存在した。当該実施例では、得られたグラフェン系中空硫化コバルトのナノ結晶で過硫酸水素カリウム複合塩を活性化することによりビスフェノールAに対する分解性能を測定した。具体的な実験条件として、触媒2mgを濃度20mg/LのビスフェノールA溶液20mLに入れ、初期pHが6.65であり、且つ、実験過程においてpHを調節せず、実験温度が25℃であり、触媒を超音波により分散させた後、30min吸着させて吸着−脱着バランスを達成し、続いて、4mgの過硫酸水素カリウム複合塩を添加して反応を開始した。ビスフェノールAの分解結果は、図2に示される。結果から、ビスフェノールAは、8minで分解率が97%に達することができたことが分かり、当該触媒の高効率を検証した。
【0016】
良好なリサイクル性を有する触媒は、廃水処理コストを効果的に低減することができた。本実施例では、まず、0.5mgのグラフェン系中空硫化コバルトのナノ結晶を5mLの水に超音波により均一に分散させ、次に、不活性の円形ポリテトラフルオロエチレン濾過膜(孔径:0.22μm、直径:1.5cm)に濾過保持した。図3Aのとおり、濃度10mg/mLのビスフェノールAと濃度0.2mg/mLの過硫酸水素カリウム複合塩とを含有する混合液2mLを注射器により押し出して1番目の濾過膜(M1)に通過させ、濾過速度が1mL/minであり、一回目の分解を完成した。続いて、すぐに濾液を改めて以上の速度で2番目の濾過膜(M2)に通過させ、二回目の分解を完成した。二回の分解を完成した後、超純水を用いて2つの濾過ヘッドを簡単に洗い流し、続いて、別の同じ反応液を取り、以上の操作を繰り返して材料の安定性を調査した。図3Bは、3つのサイクルにおける吸着剤の触媒効率の変化図を示し、3つのサイクルにおける触媒の触媒効率が明らかに低下しなかったことが分かる。
【0017】
実施例2
工程aにおける酸化グラフェン分散液の濃度は、0.5mg/mLであり、
工程bにおける酸化グラフェン系ゼオライトイミダゾレートフレームワーク67のエタノール分散液の濃度は、3mg/mLであり、チオアセトアミドの濃度は、4.5mg/mLであり、溶媒熱反応温度は、140℃であり、反応時間は、6hであり、
工程cにおける不活性保護ガスは、アルゴンガスであり、昇温速度は、10℃/minであった以外、実施例1と同様であった。
得られた触媒は、実施例1と同じ実験条件で、8minでビスフェノールAに対する分解率が88%であった。
【0018】
実施例3
工程aにおける硝酸コバルト(II)六水和物の濃度は、20mg/mLであり、2−メチルイミダゾールの濃度は、90mg/mLであり、
工程bにおける酸化グラフェン系ゼオライトイミダゾレートフレームワーク67のエタノール分散液の濃度は、1mg/mLであり、チオアセトアミドの濃度は、1.5mg/mLであり、溶媒熱反応温度は、120℃であり、反応時間は、3hであった以外、実施例1と同様であった。
得られた触媒は、実施例1と同じ実験条件で、8minでビスフェノールAに対する分解率が99%であった。
【0019】
実施例4
工程aにおける硝酸コバルト(II)六水和物の濃度は、10mg/mLであり、2−メチルイミダゾールの濃度は、45mg/mLであり、
工程bにおける酸化グラフェン系ゼオライトイミダゾレートフレームワーク67のエタノール分散液の濃度は、2mg/mLであり、チオアセトアミドの濃度は、3mg/mLであり、溶媒熱反応温度は、130℃であり、反応時間は、5hであった以外、実施例1と同様であった。
得られた触媒は、実施例1と同じ実験条件で、8minでビスフェノールAに対する分解率が89%であった。
【0020】
実施例5
工程cにおける焼成温度は、650℃であり、加熱時間は、4hであり、昇温速度は、2℃/minであった以外、実施例1と同様であった。得られた触媒は、実施例1と同じ実験条件で、8minでビスフェノールAに対する分解率が98%であった。
【0021】
実施例6
工程cにおける焼成温度は、700℃であり、加熱時間は、6hであり、昇温速度は、1℃/minであった以外、実施例1と同様であった。得られた触媒は、実施例1と同じ実験条件で、8minでビスフェノールAに対する分解率が99%であった。
【0022】
実施例7
酸化グラフェン分散液の濃度は、2mg/mLであった以外、実施例1と同様であった。触媒は、実施例1と同じ実験条件で、8minでビスフェノールAに対する分解率が95%であった。
【0023】
実施例8
使用された過硫酸塩は、過硫酸ナトリウム又は過硫酸カリウムのうちの1種又はその混合物であった以外、実施例1と同様であった。触媒は、実施例1と同じ実験条件で、8minでビスフェノールAに対する分解率が86%であった。
【0024】
実施例9
当該触媒の異なる典型的な有機汚染物に対する分解効果の広域性を検証するために、触媒実験に使用された汚染物をメチルオレンジ、フェノール、スルファメトキサゾールのうちの1種に変更した以外、実施例1と同様であった。実施例1と同じ実験条件で、8minでこれらの汚染物に対する分解率は、それぞれ99%、96%及び98%であり、当該触媒は、水中によく見られている有機汚染物に対して、いずれも優れた除去効果を有することが示された。
【0025】
比較例1
工程cにおける焼成温度は、500℃であった以外、実施例1と同様であった。当該温度で四硫化三コバルトを脱硫反応させて硫化コバルトを生成させることができないので、得られた最終材料は、グラフェン系中空四硫化三コバルトのナノ結晶であり、実施例1と同じ実験条件で、8minでビスフェノールAに対する分解率が75%であった。
【0026】
比較例2
工程cにおける焼成温度は、800℃であった以外、実施例1と同様であった。当該温度で四硫化三コバルトを二回脱硫反応させて八硫化九コバルトを生成させたので、得られた最終材料は、グラフェン系中空八硫化九コバルトのナノ結晶であり、水中に保存又は放置したときに空気中又は水中の水素と反応して不安定になり、コバルトロスを引き起こしやすいので、水中の汚染物を分解する触媒として使用されるのに適しなかった。
【0027】
比較例3
本材料の製造方法及びその触媒性能の優位性をより目立たせるために、背景技術における参照文献(Huang et al. Hollow Cobalt−Based Bimetallic Sulfide Polyhedra for Efficient All−pH Value Electrochemical and Photocatalytic Hydrogen Evolution, J. Am. Chem. Soc. 2016, 138, 1359−1365)により、中空四硫化三コバルトを製造し、当該材料は、導電性がよくなく、且つ、コバルトが全て+2価で存在するものではないので、実施例1と同じ実験条件で、8minでビスフェノールAに対する分解率が63%であった。
【0028】
比較例4
本材料の製造方法及びその触媒性能の優位性をより目立たせるために、背景技術における参照文献(Kong et al. Morphological Effect of Graphene Nanosheets on Ultrathin CoS Nanosheets and Their Applications for High−Performance Li−Ion Batteries and Photocatalysis, J. Phys. Chem. C 2014, 118, 25355−25364)により、グラフェンで担持された中実硫化コバルトを製造し、中実構造により活性部位の密度が低いので、実施例1と同じ実験条件で、8minでビスフェノールAに対する分解率が82%であった。
【0029】
前記実施例は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明の保護範囲を限定するためのものではなく、これに基づいて行われる等価置換又は代替は、いずれも本発明の保護範囲に属していることを説明しておく。
図1
図2
図3
【国際調査報告】