(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
抗AS−SPIK抗体が、そのような抗体を作製する方法、そのような抗体を含む、医薬組成物を含む組成物、およびAS−SPIKの発現により特徴付けられる障害(例えば、肝臓がん)を診断するためのその使用と共に開示される。診断方法および抗AS−SPIK抗体を含むキットもまた開示される。
前記CDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、およびCDRL3配列がフレームワーク配列内に存在する、請求項1に記載の抗体または抗原結合断片。
(a)配列番号:15のCDRH1配列、配列番号:19のCDRH2配列、配列番号:23のCDRH3配列、配列番号:27のCDRL1配列、配列番号:31のCDRL2配列、および配列番号:35のCDRL3配列;または
(b)配列番号:16のCDRH1配列、配列番号:20のCDRH2配列、配列番号:24のCDRH3配列、配列番号:28のCDRL1配列、配列番号:32のCDRL2配列、および配列番号:36のCDRL3配列;または
(c)配列番号:17のCDRH1配列、配列番号:21のCDRH2配列、配列番号:25のCDRH3配列、配列番号:29のCDRL1配列、配列番号:33のCDRL2配列、および配列番号:37のCDRL3配列;または
(d)配列番号:18のCDRH1配列、配列番号:22のCDRH2配列、配列番号:26のCDRH3配列、配列番号:30のCDRL1配列、配列番号:34のCDRL2配列、および配列番号:38のCDRL3配列を含む、請求項5に記載の抗体または抗原結合断片。
配列番号:7〜10の配列のいずれか1つに対して少なくとも95%の配列同一性を有する重鎖可変領域および/または配列番号:11〜14の配列のいずれか1つに対して少なくとも95%の配列同一性を有する軽鎖可変領域を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合断片。
配列番号:7〜10からなる群から選択される重鎖可変領域配列および/または配列番号:11〜14からなる群から選択される軽鎖可変領域配列を含む、請求項7に記載の抗体または抗原結合断片。
(a)ヒトVHフレームワーク中にCDRH1、CDRH2およびCDRH3配列を含む重鎖可変領域であって、前記CDRH配列が配列番号:15〜26からなる群から選択される、前記重鎖可変領域;ならびに
(b)ヒトVLフレームワーク中にCDRL1、CDRL2およびCDRL3配列を含む軽鎖可変領域であって、前記CDRL配列が配列番号:27〜38からなる群から選択される、前記軽鎖可変領域を含む、請求項10に記載の抗体。
AS−SPIKの発現により特徴付けられる障害の処置方法であって、前記障害を有する対象に請求項1〜19のいずれか1項に記載の抗体もしくは抗原結合断片、または請求項20に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
請求項1〜19のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合断片を産生する方法であって、前記抗体または抗原結合断片の発現を許容する条件下で請求項32に記載の宿主細胞を生育すること、および前記細胞から前記抗体または抗原結合断片を単離することを含む、方法。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施は、他に指し示さない限り、当業者の技術的範囲内である、分子生物学(組換え技法を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、および免疫学の従来の技法を用いる。そのような技法は、“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,second edition(Sambrook et al.,1989);“Oligonucleotide Synthesis”(M.J.Gait,ed.,1984);“Animal Cell Culture”(R.I.Freshney,ed.,1987);“Methods in Enzymology”(Academic Press,Inc.);“Current Protocols in Molecular Biology”(F.M.Ausubel et al.,eds.,1987および定期的な改訂);“PCR:The Polymerase Chain Reaction”,(Mullis et al.,ed.,1994);“A Practical Guide to Molecular Cloning”(Perbal Bernard V.,1988);“Phage Display:A Laboratory Manual”(Barbas et al.,2001);Harlow,Lane and Harlow,Using Antibodies:A Laboratory Manual:Portable Protocol No.I,Cold Spring Harbor Laboratory(1998);ならびにHarlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory;(1988)などの文献内に充分に説明されている。
【0029】
値の範囲が提供される場合、文脈が明確に他に規定しない限り、下限の単位の10分の1までのその範囲の上限と下限との間の各介在する値およびその記載される範囲中の任意の他の記載されるまたは介在する値が本発明に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限は独立して、記載される範囲における任意の特に除外される限度を受けて、これもまた本発明に包含されるより小さい範囲に含められてもよい。記載される範囲が限度の一方または両方を含む場合、これらの含まれる限度のいずれかまたは両方を除外する範囲もまた本発明に含まれる。
【0030】
他に指し示さない限り、本明細書における抗体残基は、Kabatのナンバリングシステムにしたがってナンバリングされる(例えば、Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest.5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。
【0031】
以下の記載において、本発明のより徹底的な理解を提供するために多数の特定の詳細が示される。しかしながら、本発明はこれらの特定の詳細の1つまたは複数を有しないで実施されてもよいことは当業者に明らかである。他の事例では、周知の特徴および当業者に周知の手順は、本発明が曖昧になるのを回避するために記載されない。
【0032】
特許出願および刊行物を含む、本開示を通じて参照される全ての参考文献は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0033】
定義
本明細書を解釈する目的のために、以下の定義が適用され、適切な場合、単数形において使用される用語はまた複数を含むことになる、逆もまた然りである。示される任意の定義が、参照により本明細書に組み込まれるいずれかの文献と矛盾する場合、以下に示す定義が優先される。
【0034】
「エピトープ」は、単一の抗体分子が結合する抗原分子の表面上の部位である。一般に、抗原はいくつかのまたは多くの異なるエピトープを有し、多くの異なる抗体と反応する。該用語は、リニアエピトープおよびコンホメーショナルエピトープを特に含む。該用語は、抗体に特異的に結合する能力を有する任意の分子決定因子を含む。ある特定の実施形態では、エピトープ決定因子は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル、またはスルホニルなどの分子の化学的に活性の表面グループ分けを含み、ある特定の実施形態では、特定の三次元構造的特徴、および/または特定の電荷的特徴を有してもよい。エピトープは、抗体が結合する抗原の領域である。「結合領域」は、結合分子が結合する結合標的上の領域である。
【0035】
「エピトープマッピング」は、標的抗原上の、抗体の結合部位、またはエピトープを特定するプロセスである。抗体エピトープはリニアエピトープまたはコンホメーショナルエピトープであってもよい。リニアエピトープは、タンパク質中のアミノ酸の連続的な配列により形成される。コンホメーショナルエピトープは、タンパク質配列中で不連続であるがその三次元構造へのタンパク質のフォールディングにより一緒になるアミノ酸から形成される。
【0036】
「エピトープビニング」は、本明細書において定義される場合、抗体を認識するエピトープに基づいてグループ分けするプロセスである。より特異的には、エピトープビニングは、そのエピトープ認識特性に基づいて抗体をクラスター化し、かつ独特の結合特異性を有する抗体を特定するコンピュータによるプロセスと組み合わせて、異なる抗体のエピトープ認識特性を識別するための方法およびシステムを含む。
【0037】
2つの抗体が同一のまたは立体的に重なり合うエピトープを認識する場合に、抗体は参照抗体と「本質的に同じエピトープ」を結合する。2つのエピトープが同一のまたは立体的に重なり合うエピトープに結合するかどうかを決定するための最も広く使用されている迅速な方法は競合アッセイであり、これは、標識された抗原または標識された抗体のいずれかを使用して、任意の数の異なるフォーマットで構成することができる。通常、抗原は96ウェルプレート上に固定化され、標識された抗体の結合を遮断する非標識抗体の能力が放射性または酵素標識を使用して測定される。
【0038】
アミノ酸残基/位置の「改変」は、本明細書において使用される場合、出発アミノ酸配列と比較した一次アミノ酸配列の変化であって、該変化が前記アミノ酸残基/位置に関与する配列変化の結果としてもたらされるものを指す。例えば、典型的な改変としては、別のアミノ酸による(または前記位置における)残基の置換(例えば、保存的または非保存的置換)、前記残基/位置に隣接する1つまたは複数の(一般的に5つまたは3つより少ない)アミノ酸の挿入、および前記残基/位置の欠失が挙げられる。「アミノ酸置換」またはその変形は、異なるアミノ酸残基による予め決定された(出発)アミノ酸配列中の既存のアミノ酸残基の置換を指す。一般に、かつ好ましくは、改変は、出発(または「野生型」)アミノ酸配列を含むポリペプチドと比較してバリアントポリペプチドの少なくとも1つの物理的または生化学的活性における変化を結果としてもたらす。例えば、抗体の場合、変化する物理的または生化学的活性は、標的分子に対する結合親和性、結合能力および/または結合効果とすることができる。
【0039】
「抗体」という用語は、モノクローナル抗体(免疫グロブリンFc領域を有する全長抗体を含む)、一本鎖分子だけでなく、抗体断片(例えば、Fab、F(ab’)2、およびFv)も含む。「免疫グロブリン」(Ig)という用語は、本明細書において「抗体」と交換可能に使用される。基本的な4鎖抗体単位は、2つの同一の軽(L)鎖および2つの同一の重(H)鎖から構成されるヘテロ4量体糖タンパク質である。他に記載されない限り、「抗体」という用語は、本明細書において最も広い意味において使用され、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgE抗体ならびにその断片、好ましくは抗原結合断片を含む、抗体の全てのアイソタイプ、サブクラスおよび形態を特異的に含む。
【0040】
他に記載されない限り、「抗体」という用語は、天然に存在する変異体を含む、天然のヒトおよび非ヒトIgG1、IgG2(IgG2a、IgG2b)、IgG3、IgG4、IgE、IgA、IgDおよびIgM抗体を特異的に含む。
【0041】
本明細書において使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、微量で存在する場合がある天然に存在する突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位を標的とする。さらに、異なる決定因子(エピトープ)を標的とする異なる抗体を典型的には含む従来(ポリクローナル)の抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定因子を標的とする。「モノクローナル」という修飾語は、抗体の実質的に均質な集団から得られるという抗体の特徴を指し示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解されるべきではない。例えば、本発明にしたがって使用されるモノクローナル抗体は、Kohler et al.(1975)Nature 256:495により最初に記載されたハイブリドーマ法により作製されてもよく、または組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号明細書を参照のこと)により作製されてもよい。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clackson et al.(1991)Nature 352:624−628およびMarks et al.(1991)J.Mol.Biol.222:581−597において記載されている技法を使用してファージ抗体ライブラリーから単離されてもよい。
【0042】
本明細書におけるモノクローナル抗体は、重鎖および/または軽鎖の部分が特定の種に由来する抗体中の対応する配列と同一または相同的であり、一方で鎖の残余が別の種に由来する抗体中の対応する配列と同一または相同的である「キメラ」抗体(免疫グロブリン)だけでなく、所望の生物学的活性を呈する限り、そのような抗体の断片も特異的に含む(米国特許第4,816,567号明細書;およびMorrison et al.(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851−6855)。
【0043】
「ヒト化」形態の非ヒト(例えば、マウス)抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含有する抗体である。ほとんどの部分について、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、レシピエントの超可変領域からの残基が、所望の特異性、親和性、および能力を有するマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長動物などの非ヒト種(ドナー抗体)の超可変領域からの残基により置換されている。一部の事例では、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基もまた、対応する非ヒト残基により置換されている。さらには、ヒト化抗体は、レシピエント抗体中にもドナー抗体にも見出されない残基を含んでもよい。これらの改変は、抗体性能をさらに精密化するために為される。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、超可変ループの全てまたは実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、かつFR領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体はまた、任意選択的に、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの少なくとも一部分を含む。さらなる詳細については、Jones et al.(1986)Nature 321:522−525;Riechmann et al.(1988)Nature 332:323−329;およびPresta(1992)Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596を参照のこと。
【0044】
参照ポリペプチド配列に対する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、いかなる保存的置換も配列同一の部分とは考えずに、配列のアライメントおよび必要な場合にはギャップの導入により最大の配列同一性パーセントを達成した後の、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のアライメントは、当該技術分野の技術的範囲内である様々な方法を使用して達成することができ、該方法は、例えば、BLAST、BLAST−2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公開されているコンピューターソフトウェアを使用する。当業者は、比較されている配列の全長にわたり最大のアライメントを達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む、配列をアライメントするための適切なパラメーターを決定することができる。しかしながら、本明細書における目的のために、アミノ酸配列同一性%値は、配列比較コンピュータープログラムALIGN−2を使用して生成される。
【0045】
本明細書において使用される場合、「配列相同性パーセント」という用語は、任意の所与のクエリ配列と対象配列との間の相同性の程度を指す。例えば、天然に存在するAS−SPIKポリペプチドまたはNS−SPIKポリペプチドをクエリ配列とすることができ、かつAS−SPIKポリペプチドまたはNS−SPIKポリペプチドの断片を対象配列とすることができる。同様に、AS−SPIKポリペプチドまたはNS−SPIKポリペプチドの断片をクエリ配列とすることができ、かつその生物学的に活性なバリアントを対象配列とすることができる。
【0046】
本明細書における「単離された」抗体は、特定され、かつ組換え宿主細胞中のその天然の環境の成分から分離および/または回収された抗体である。その天然の環境の夾雑物成分は、抗体の診断または治療的使用に干渉することになる材料であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性溶質だけでなく、産生の望ましくない副産物も含む場合がある。好ましい実施形態では、本明細書における単離された抗体は、(1)SDS−PAGEもしくはSEC−HPLC法によって決定されるとき、95重量%より高く、もしくは98重量%より高く、もしくは99重量%より高くまで、(2)アミノ酸シークエンサーの使用によりN末端もしくは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るために充分な程度まで、または(3)クマシーブルーもしくは好ましくは銀染色剤を使用する還元もしくは非還元条件下でのSDS−PAGEによる均質状態まで、精製される。通常、単離された抗体は少なくとも1つの精製ステップにより調製される。
【0047】
IgGの場合、4鎖単位は一般的に約150,000ダルトンである。各L鎖は1つの共有結合性ジスルフィド結合によりH鎖に連結されており、一方で2つのH鎖はH鎖アイソタイプに依存して1つまたは複数のジスルフィド結合により互いに連結されている。各HおよびL鎖はまた、定期的な間隔の鎖内ジスルフィド架橋を有する。各H鎖はN末端において、可変ドメイン(VH)ならびにそれに続いてα鎖およびγ鎖のそれぞれについて3つの定常ドメイン(CH)、μおよびεアイソタイプについて4つのCHドメインを有する。各L鎖はN末端において、可変ドメイン(VL)ならびにそれに続いてその他の末端において定常ドメインを有する。VLはVHとアライメントされ、CLは重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)とアライメントされる。特定のアミノ酸残基は、軽鎖および重鎖可変ドメインの間の境界を形成すると考えられる。VHおよびVLのペア形成は、一緒になって単一の抗原結合部位を形成する。
【0048】
「ポリペプチド」という用語は最も広い意味において本明細書において使用され、ペプチド配列を含む。「ペプチド」という用語は、一般的にペプチド結合により共有結合的に連結した約60個まで、好ましくは約30個までのアミノ酸を含有するアミノ酸の直鎖状分子鎖を記載する。
【0049】
「特異的結合」または「特異的に結合する」または「特異的である」という用語は、標的抗原、例えば、特定のポリペプチド、ペプチド、または他の標的(例えば、糖タンパク質標的)上のエピトープへの抗体の結合を指し、非特異的相互作用とは測定できる程度に異なる結合を意味する(例えば、非特異的相互作用はウシ血清アルブミンまたはカゼインに結合してもよい)。特異的結合を、例えば、対照分子への結合と比較して標的分子への抗体の結合を決定することにより、測定することができる。例えば、特異的結合は、標的と類似の対照分子、例えば、過剰な非標識化標的との競合により決定することができる。この場合、特異的結合は、プローブへの標識化標的の結合が過剰な非標識化標的により競合的に阻害される場合に指し示される。本明細書において使用されるような特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド標的上のエピトープへの「特異的結合」またはそれに「特異的に結合する」またはそれが「特異的である」という用語は、例えば、分子が標的に対して少なくとも約200nM、代替的に少なくとも約150nM、代替的に少なくとも約100nM、代替的に少なくとも約60nM、代替的に少なくとも約50nM、代替的に少なくとも約40nM、代替的に少なくとも約30nM、代替的に少なくとも約20nM、代替的に少なくとも約10nM、代替的に少なくとも約8nM、代替的に少なくとも約6nM、代替的に少なくとも約4nM、代替的に少なくとも約2nM、代替的に少なくとも約1nM、またはより大きいKdを有することにより呈することができる。ある特定の事例では、「特異的結合」という用語は、分子が、任意の他のポリペプチドまたはポリペプチドエピトープに実質的に結合することなく特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド上のエピトープに結合する場合の結合を指す。
【0050】
「結合親和性」は、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有相互作用の総計の強度を指す。他に指し示さない限り、本明細書において使用される場合、「結合親和性」は、結合ペアのメンバー(例えば、抗体および抗原)間の1:1の相互作用を反映した固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般的に解離定数(Kd)により表すことができる。例えば、Kdは、約200nM、150nM、100nM、60nM、50nM、40nM、30nM、20nM、10nM、8nM、6nM、4nM、2nM、1nM、またはより強いものとすることができる。親和性は、本明細書に記載の方法を含む、当該技術分野において公知の一般的な方法により測定することができる。低親和性抗体は、一般的に抗原に緩徐に結合して容易に解離する傾向がある一方、高親和性抗体は、一般的に抗原に迅速に結合してより長く結合したままとなる傾向がある。結合親和性を測定する様々な方法が当該技術分野において公知である。
【0051】
本明細書において使用される場合、「Kd」または「Kd値」は、例えば、約10応答単位(RU)での固定化抗原CM5チップと共に25℃でBIAcore(商標)−2000またはBIAcore(商標)−3000(BIAcore,Inc.、Piscataway,N.J.)を使用して、例えば表面プラズモン共鳴アッセイを使用して、抗体および標的ペアのために適切な技法により測定される解離定数を指す。
【0052】
本明細書において使用される「価」(valent)という用語は、抗体中の指定された数の結合部位の存在を表す。そのため、「二価」という用語は2つの結合部位の存在を表す。
【0053】
「ポリエピトープ特異性」は、同じまたは異なる標的上の2つまたはより多くの異なるエピトープに特異的に結合する能力を指す。「単一特異的」は1つのエピトープのみに結合する能力を指す。一部の実施形態では、抗体は、少なくとも10
−7M、または10
−8Mまたはより良好な親和性で各エピトープに結合する。
【0054】
「標的」または「結合標的」という用語は最も広い意味において使用され、天然に存在する場合の生物学的機能を有するまたは有しないポリペプチド、核酸、炭水化物、脂質、細胞、および他の分子を特異的に含むがそれに限定されない。
【0055】
「抗原」という用語は、抗体に結合することまたは細胞性免疫応答をトリガすることができる実体またはその断片を指す。免疫原は、生物、特に動物、より特異的にはヒトを含む哺乳動物において免疫応答を誘発することができる抗原を指す。抗原という用語は、上記に定義されるような抗原決定基またはエピトープとして公知の領域を含む。
【0056】
本明細書において使用される場合、「免疫原性」という用語は、抗体の産生を誘発し、かつ/またはT細胞および/もしくは免疫原の抗原を標的とする他の反応性免疫細胞を活性化させる物質を指す。
【0057】
本発明の抗体の「抗原結合部位」または「抗原結合領域」は、典型的には、異なる程度において抗原に対する結合部位の親和性に寄与する6つの超可変領域(HVR)を含有する。「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、「超可変領域」または「HVR」という用語と本明細書において交換可能に使用される。3つの重鎖可変ドメインHVR(HVR−H1、HVR−H2およびHVR−H3)ならびに3つの軽鎖可変ドメインHVR(HVR−L1、HVR−L2およびHVR−L3)がある。HVRおよびフレームワーク領域(FR)の広がりは、それらの領域が抗体/抗原複合体からの配列および/または構造情報の間の可変性にしたがって定義されているアミノ酸配列のコンパイルされたデータベースとの比較により決定される。より少ないHVRを含む機能的な抗原結合部位もまた本発明の範囲内に含まれる(すなわち、結合特異性が3つ、4つまたは5つのHVRにより決定される場合)。6つのHVRの完全なセットに満たないものでも、一部の結合標的への結合のために充分なことがある。したがって、一部の事例では、VHまたはVLドメインのHVRは単独で充分である。さらには、ある特定の抗体は、抗原に対して非HVR関連の結合部位を有する場合がある。そのような結合部位は本発明の定義内に特異的に含まれる。
【0058】
本明細書において使用される「宿主細胞」という用語は、本発明にしたがって抗体を生成するために操作することができる任意の種類の細胞系を表す。一実施形態では、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞が宿主細胞として使用される。
【0059】
本明細書において使用される場合、「細胞」、「細胞株」、および「細胞培養物」という表現は交換可能に使用され、全てのそのような記載は子孫を含む。したがって、「形質転換体」および「形質転換細胞」という語は、初代対象細胞および移入の回数によらずにそれに由来する培養物を含む。意図的なまたは意図しない突然変異に起因して、全ての子孫はDNA内容が精密に同一でなくてもよいこともまた理解される。元々の形質転換細胞においてスクリーニングされたものと同じ機能または生物学的活性を有する多様体子孫が含まれる。
【0060】
核酸は、別の核酸配列と機能的な関係性に置かれている場合に「作動可能に連結されている」。例えば、プレ配列もしくは分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に参加するプレタンパク質として発現される場合にポリペプチドのDNAに作動可能に連結されており、プロモーターもしくはエンハンサーは、配列の転写に影響する場合にコーディング配列に作動可能に連結されており、またはリボソーム結合部位は、翻訳を促進するように配置されている場合にコーディング配列に作動可能に連結されている。一般的に、「作動可能に連結されている」とは、連結されているDNA配列が連続しており、分泌リーダーの場合、連続しかつリーディングフレームになっていることを意味する。しかしながら、エンハンサーは連続している必要はない。連結は、簡便な制限部位におけるライゲーションにより達成される。そのような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが従来の実施にしたがって使用される。
【0061】
「抗AS−SPIK抗体」、「AS−SPIK抗体」、または「AS−SPIKに結合する抗体」という用語は全て、AS−SPIKの標的化において診断剤および/または治療剤として有用であるような充分な親和性でAS−SPIKに結合できる抗体を指す。
【0062】
一実施形態では、「AS−SPIK抗体」は、(i)配列番号:7〜10のいずれか1つにおいて提供されるような重鎖可変ドメイン配列、および/もしくは配列番号:11〜14のいずれか1つにおいて提供されるような軽鎖可変ドメイン配列を含む;または(ii)配列番号:15〜38において提供されるCDRの1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、もしくは6つを含む、抗AS−SPIKモノクローナル抗体を特異的に指すために本明細書において使用される。
【0063】
「可変」という用語は、可変ドメインのある特定のセグメントの配列が抗体間で大規模に異なるという事実を指す。「可変」または「V」ドメインは、抗原結合を媒介し、かつその特定の抗原に対する特定の抗体の特異性を定義する。しかしながら、可変性は、可変ドメインの110アミノ酸スパンにわたり均等に分布しているわけではない。その代わりに、V領域は、それぞれ9〜12アミノ酸の長さの「超可変領域」と呼ばれる極度に可変性のより短い領域により分離された15〜30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的不変のストレッチからなる。天然の重鎖および軽鎖の可変ドメインはそれぞれ4つのFRを含み、これは概ねβ−シート配置をとり、3つの超可変領域により接続され、3つの超可変領域は、β−シート構造を接続し、一部の場合にはその部分を形成するループを形成する。各鎖中の超可変領域は、FRにより近接されて一緒に、かつ他の鎖からの超可変領域と共に保持され、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991)を参照のこと)。
【0064】
「インタクト」な抗体は、抗原結合部位だけでなく、軽鎖定常ドメイン(CL)および特定の抗体クラスの少なくとも重鎖定常ドメインも含む抗体である。例えば、インタクトなIgG抗体は、抗原結合部位、軽鎖定常ドメインCL、ならびに少なくとも重鎖定常ドメインCH1(Cγ1)、CH2(Cγ2)およびCH3(Cγ3)を含む。インタクトなIgM抗体は、抗原結合部位、軽鎖定常ドメインCL、ならびに少なくとも重鎖定常ドメインCM1(Cμ1)、CM2(Cμ2)、CM3(Cμ3)およびCM4(Cμ4)を含む。インタクトなIgA抗体は、抗原結合部位、軽鎖定常ドメインCL、ならびに少なくとも重鎖定常ドメインCA1(Cα1)、CA2(Cα2)およびCA3(Cα3)を含む。インタクトなIgD抗体は、抗原結合部位、軽鎖定常ドメインCL、ならびに少なくとも重鎖定常ドメインCD1(Cδ1)、CD2(Cδ2)およびCD3(Cδ3)を含む。インタクトなIgE抗体は、抗原結合部位、軽鎖定常ドメインCL、ならびに少なくとも重鎖定常ドメインCE1(Cε1)、CE2(Cε2)、CE3(Cε3)およびCE4(Cε4)を含む。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列バリアントとすることができる。好ましくは、インタクトな抗体は1つまたは複数のエフェクター機能を有する。
【0065】
「抗体断片」または抗体の「抗原結合断片」は、インタクトな抗体の部分、好ましくはインタクトな抗体の抗原結合または可変領域を含む。抗体断片の非限定的な例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFv断片;ダイアボディ;直鎖状抗体(米国特許第5,641,870号明細書、実施例2;Zapata et al.,Protein Eng.8(10):1057−1062(1995)を参照のこと);単鎖抗体分子;および抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。一実施形態では、抗体断片は、インタクトな抗体の抗原結合部位を含み、したがって抗原に結合する能力を保持する。当業者は、抗体断片は、抗体の少なくとも抗原結合部分をその軽鎖および重鎖の残余から分離して抗原結合断片を作製することにより、任意のインタクトな抗体から、例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、またはIgE抗体から生成することができることを理解するであろう。ある特定の実施形態では、抗体断片は、抗体の抗原結合領域だけでなく、抗体の軽鎖および/または重鎖の1つまたは複数の追加のドメインも含むことができる。例えば、一部の実施形態では、抗体断片は、VHおよびVLドメインを含む抗原結合領域、軽鎖定常ドメインCL、ならびに1つまたは複数の重鎖定常ドメイン、例えば、CH1(Cγ1)ドメイン、CM1(Cμ1)ドメイン、CA1(Cα1)ドメイン、CD1(Cδ1)ドメイン、またはCE1(Cε1)ドメインを含むことができる。
【0066】
IgG抗体断片の場合、パパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片、および容易に結晶化する能力を反映した呼称の残余の「Fc」断片を生じさせる。Fab断片は、H鎖の可変領域ドメイン(VH)、および1つの重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)と共にL鎖全体からなる。各Fab断片は抗原結合に関して一価であり、すなわち、単一の抗原結合部位を有する。IgG抗体のペプシン処理は単一の大きいF(ab’)2断片をもたらし、これは概ね、二価抗原結合活性を有する2つのジスルフィド連結Fab断片に対応し、依然として抗原を架橋することができる。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1つまたは複数のシステインを含むCH1ドメインのカルボキシ末端における追加の数個の残基を有することによりFab断片とは異なる。Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を有するFab’についての本明細書における呼称である。F(ab’)2抗体断片は元々、それらの間にヒンジシステインを有するFab’断片のペアとして産生された。抗体断片の他の化学的なカップリングもまた公知である。
【0067】
IgG抗体のFc断片は、ジスルフィドにより一緒に保持された両方のH鎖のカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域中の配列により決定され、該領域はまた、ある特定の種類の細胞上に見出されるFc受容体(FcR)により認識される部分である。
【0068】
「Fv」は、完全な抗原認識および結合部位を含有する最小の抗体断片である。この断片は、緊密な非共有結合性の会合をした1つの重鎖および1つの軽鎖可変領域ドメインの二量体からなる。単鎖Fv(scFv)種において、1つの重鎖および1つの軽鎖可変領域ドメインは、軽鎖および重鎖が2鎖Fv種におけるものと類似の「二量体」構造において会合できるように柔軟なペプチドリンカーにより共有結合的に連結することができる。これらの2つのドメインのフォールディングから、抗原結合のためのアミノ酸残基に寄与して抗原結合特異性を抗体に付与する6つの超可変ループ(H鎖およびL鎖からそれぞれ3つのループ)が出る。しかしながら、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つのHVRのみを含むFvの半分)でさえ、結合部位全体より低い親和性であるが、抗原を認識してそれに結合する能力を有する。
【0069】
「sFv」または「scFv」とも略記される「単鎖Fv」は、単一のポリペプチド鎖となるように接続されたVHおよびVL抗体ドメインを含む抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、これは、sFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能とする。sFvのレビューについては、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer−Verlag,New York,pp.269−315(1994);Borrebaeck 1995(下記)を参照のこと。
【0070】
「キメラ抗原受容体」または「CAR」という用語は、所望の結合特異性(例えば、モノクローナル抗体または他のリガンドの抗原結合領域)を膜貫通および細胞内シグナル伝達ドメインにグラフトする、操作された受容体を指すために最も広い意味において本明細書において使用される。典型的には、受容体は、モノクローナル抗体の特異性をT細胞にグラフトしてキメラ抗原受容体(CAR)を作製するために使用される(Dai et al.,J Natl Cancer Inst,2016;108(7):djv439;およびJackson et al.,Nature Reviews Clinical Oncology,2016;13:370−383)。
【0071】
本明細書において使用される場合、「エフェクター細胞」という用語は、免疫応答の認知および活性化相ではなく、免疫応答のエフェクター相に関与する免疫細胞を指す。一部のエフェクター細胞は、特定のFc受容体を発現し、特定の免疫機能を実行する。一部の実施形態では、ナチュラルキラー細胞などのエフェクター細胞は、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を誘導する能力を有する。例えば、FcRを発現する単球およびマクロファージは、標的細胞の特異的殺傷および免疫系の他の成分への抗原の提示、または抗原を提示する細胞への結合に関与する。一部の実施形態では、エフェクター細胞は、標的抗原または標的細胞を貪食してもよい。
【0072】
「ヒトエフェクター細胞」は、T細胞受容体またはFcRなどの受容体を発現し、かつエフェクター機能を行う白血球である。好ましくは、細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、かつADCCエフェクター機能を行う。ADCCを媒介するヒト白血球の例としては、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞および好中球が挙げられ、NK細胞が好ましい。エフェクター細胞は、その天然の供給源から、例えば、本明細書に記載されるような血液またはPBMCから単離されてもよい。
【0073】
「免疫細胞」という用語は、最も広い意味において本明細書において使用され、骨髄またはリンパ起源の細胞、例えば、リンパ球(例えば、B細胞および細胞溶解性T細胞(CTL)を含むT細胞)、キラー細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、単球、好酸球、多形核細胞、例えば、好中球、顆粒球、肥満細胞、および好塩基球が挙げられるがそれに限定されない。
【0074】
抗体「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(天然配列Fc領域またはアミノ酸配列バリアントFc領域)に帰せられる生物学的活性を指す。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合、補体依存性細胞傷害性、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体;BCR)の下方調節などが挙げられる。
【0075】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性」および「ADCC」は、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、およびマクロファージ)が標的細胞上の結合した抗体を認識しかつその後に標的細胞の溶解を引き起こす細胞媒介性の反応を指す。ADCCを媒介する主要な細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現する一方、単球はFcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIを発現する。造血細胞上のFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9:457−92(1991)の第464頁の表3に要約されている。目的の分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号明細書または同第5,821,337号明細書において記載されるものなどのin vitro ADCCアッセイが行われてもよい。そのようなアッセイのための有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。代替的に、または追加的に、目的の分子のADCC活性は、in vivoで、例えば、Clynes et al.PNAS(USA)95:652−656(1998)において開示されるものなどの動物モデルにおいて、評価されてもよい。
【0076】
「補体依存性細胞傷害性」または「CDC」は、補体の存在下で標的を溶解する分子の能力を指す。補体活性化経路は、コグネイト抗原と複合体化した分子(例えば、抗体)への補体システム(C1q)の第1の成分の結合により開始される。補体活性化を評価するために、例えば、Gazzano−Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996)において記載されるようなCDCアッセイが行われてもよい。
【0077】
「遮断」抗体または「アンタゴニスト」(antagonist)もしくは「アンタゴニスト」(antagonistic)抗体は、それが結合する抗原の生物学的活性を阻害または低減する抗体である。好ましい遮断抗体またはアンタゴニスト抗体は、抗原の生物学的活性を実質的にまたは完全に阻害する能力を有する。
【0078】
目的の抗原、例えば、AS−SPIKまたはNS−SPIKポリペプチドに「結合する」抗体は、抗原を発現する細胞または組織の標的化において治療剤として有用であるような充分な親和性で抗原に結合し、かつ他のタンパク質と顕著に交差反応しない抗体である。標的分子への抗体の結合に関して、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド標的上のエピトープへの「特異的結合」またはそれに「特異的に結合する」もしくは「特異的である」という用語は、非特異的相互作用から測定できる程度に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、対照分子の結合と比較して分子の結合を決定することにより測定することができ、対照分子は、一般的に結合活性を有しない類似の構造の分子である。例えば、特異的結合は、標的と類似の対照分子、例えば、過剰な非標識化標的との競合により決定することができる。この場合、特異的結合は、プローブへの標識化標的の結合が過剰な非標識化標的により競合的に阻害される場合に指し示される。一実施形態では、「特異的結合」という用語は、分子が、いかなる他のポリペプチドまたはポリペプチドエピトープにも実質的に結合することなく特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド上のエピトープに結合する結合を指す。
【0079】
「がん」および「がん性」という用語は、典型的には調節されない細胞増殖により特徴付けられる、哺乳動物中の生理的条件を指すまたは記載する。「腫瘍」は1つまたは複数のがん性細胞を含む。がんの例としては、がん腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病またはリンパ性悪性腫瘍が挙げられるがそれに限定されない。そのようながんのより具体的な例としては、扁平細胞がん(例えば、上皮扁平細胞がん)、皮膚がん、黒色腫、小細胞肺がん、非小細胞肺がん(「NSCLC」)、肺の腺がんおよび肺の扁平がんを含む肺がん、腹膜のがん、胃腸がんを含む胃(gastric)または胃(stomach)がん、膵臓がん(例えば、膵管腺がん)、膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん(例えば、高グレード漿液性卵巣がん)、肝臓がん(例えば、肝細胞がん(HCC)、肝内胆管がん(ICC))、膀胱がん(例えば、尿路上皮膀胱がん)、精巣(生殖細胞腫瘍)がん、ヘパトーマ、乳がん、脳のがん(例えば、星状細胞腫)、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜または子宮がん、唾液腺がん、腎臓(kidney)または腎臓(renal)がん(例えば、腎細胞がん、腎芽腫またはウィルムス腫瘍)、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、肝臓がん、肛門がん、陰茎がん腫だけでなく、頭頸部がんも挙げられる。がんの追加の例としては、網膜芽腫、莢膜細胞腫、男化腫瘍、ヘパトーマ、非ホジキンリンパ腫(NHL)、多発性骨髄腫および急性血液学的悪性腫瘍を含む血液学的悪性腫瘍、子宮内膜または子宮がん、子宮内膜症、線維肉腫、絨毛がん、唾液腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、食道がん、肝臓がん、肛門がん、陰茎がん腫、鼻咽頭がん、喉頭がん、カポジ肉腫、黒色腫、皮膚がん、神経鞘腫、乏突起膠腫、神経芽腫、横紋筋肉腫、骨肉腫、平滑筋肉腫、および尿路がんが挙げられるがそれに限定されない。
【0080】
「転移がん」という用語は、起源となる組織のがん細胞が、血管またはリンパ管により、元々の部位から身体中の1つまたは複数の他の部位に伝達されて、起源となる組織の他に1つまたは複数の臓器において1つまたは複数の二次腫瘍を形成するがんの状態を意味する。
【0081】
本明細書において使用される場合、「AS−SPIKの発現により特徴付けられる障害」の「AS−SPIK関連障害」は、AS−SPIK遺伝子または遺伝子産物(AS−SPIKポリペプチド)の発現または過剰発現と関連付けられる障害であり、好適な対照細胞と比べて、正常なまたは上昇したレベルのAS−SPIKを発現する細胞により特徴付けられる任意の障害とすることができる。好適な対照細胞は、AS−SPIK発現もしくは過剰発現がんに罹患していない個体からの細胞とすることができ、またはそれは、必要とするいずれかの対象からの非がん性細胞であってもよく、またはそれは、AS−SPIK発現もしくは過剰発現がんに罹患した別の個体からの非がん性細胞であってもよい。AS−SPIK関連障害の1つの顕著な例は肝臓がんである。
【0082】
「細胞増殖性障害」および「増殖性障害」という用語は、何らかの程度の異常な細胞増殖と関連付けられる障害を指す。一実施形態では、細胞増殖性障害はがんである。
【0083】
「腫瘍」は、本明細書において使用される場合、悪性であれ良性であれ、全ての新生物性の細胞成長および増殖、ならびに全ての前がん性およびがん性の細胞および組織を指す。
【0084】
本明細書において使用される「予測的」(predictive)および「予後的」(prognostic)という用語もまた、予測または予後のための方法は、抗AS−SPIK抗体を含む抗がん剤を用いる処置に応答する可能性がより高いとみなされる(必ずしもそうではないが、通常は処置に先立って)患者を選択する方法の実施を可能とするという意味において、交換可能である。
【0085】
本明細書において使用される「処置する」、「処置」または「処置すること」という用語は、治療的処置および予防的手段の予防の両方を指し、その目的は、標的化された病的状態または障害を予防しまたは減速(減少)させることである。処置を必要とする対象には、特定の状態または障害を既に有する対象だけでなく、障害を有する傾向がある対象または障害を予防すべき対象も含まれる。
【0086】
詳細な説明
本発明は、少なくとも部分的に、ある特定の障害が特有の形態またはセリンプロテアーゼ阻害剤カザル(SPIK)の発現により特徴付けられるという発見に基づく。1つの(once)顕著な例は、肝細胞がん(HCC)および肝内胆管がん(ICC)が挙げられるがそれに限定されない肝臓がんである。より詳細には、本発明者らは、肝臓がんなどのある特定のがんは、分泌されるSPIKポリペプチドのN末端において追加の23アミノ酸を含む形態のSPIKを発現することを見出した。この23アミノ酸セグメント(配列番号:6)は、膵臓細胞などの正常細胞から分泌されるSPIKポリペプチド中には見出されない。これは、この23アミノ酸セグメントの最初の9アミノ酸は肝臓がん細胞株により分泌されるプロセシングされていないSPIK中に存在する場合があるという我々の以前の報告と合致する。Lu et al.,Immunology 2011;134(4):398−408。我々は、より長い形態のSPIKをAS−SPIK、すなわちAbnormal Secreted SPIKと称する場合がある。我々はまた、肝臓がん細胞により産生されるAS−SPIKをLC−SPIK、すなわちLiver Cancer Secreted SPIKと称する場合がある。AS−SPIKおよびLC−SPIKという用語は、本明細書において交換可能に使用される。例示的なAS−SPIKポリペプチドは配列番号:2のアミノ酸配列を有することができる。我々は、膵臓細胞などの正常細胞により分泌される形態のSPIKをNS−SPIK、すなわちNormal Secreted SPIKと称する場合がある。例示的なNS−SPIKポリペプチドは配列番号:4のアミノ酸配列を有することができる。我々はまた、AS−SPIKのコンホメーション(例えば、3D構造)がNS−SPIKのものとは異なることを見出した。
【0087】
したがって、本発明の態様は、AS−SPIKに特異的または優先的に結合し、かつNS−SPIKに結合しない、抗体などの組成物を含む。AS−SPIK複合体もまた提供される。本発明の実施形態によるAS−SPIK複合体は、AS−SPIK、およびAS−SPIKポリペプチド、またはその断片に特異的または優先的に結合する抗体を含む。本発明の態様はまた、AS−SPIKの発現により特徴付けられる障害、例えば、肝臓障害、例えば、肝臓がん、例えば、HCCまたはICCの検出のために対象の抗体を使用する方法も含む。
【0088】
我々はAS−SPIKの発現の間に起こるある特定の事象を理解していると考えるが、本発明の組成物および方法は、任意の特定の細胞機構に影響することにより機能するものに限定されない。理論に縛られないが、本発明者らは、SPIKはプロテアーゼ阻害剤であるので、がん細胞におけるSPIKの過剰発現はプロテアーゼの一種であるシグナルペプチドペプチダーゼの活性を抑制して、非減弱型の全長タンパク質ががん細胞から分泌されることを結果としてもたらすという仮説を立てる。
【0089】
組成物
本明細書において提供される組成物は、AS−SPIKに特異的または優先的に結合しかつNS−SPIKに結合しない抗体を含む。
【0090】
SPINK1、PSTI、およびTATIとしても公知のセリンプロテアーゼ阻害剤カザル(SPIK)は、トリプシン様プロテアーゼおよびキモトリプシン様プロテアーゼなどの多くの細胞プロテアーゼの活性を広く調節することが示されている小タンパク質である。Greene,LJ,J Surg Oncol.1975;7(2):151−154;Horii et al.,Biochemical and biophysical research communications 1987;149(2):635−641;Stenman,UH,Clin Chem.2002;48(8):1206−1209(1)。SPIKはまた、アポトーシスの阻害において役割を果たすことがある。Lu et al.,Immunology 2011;134(4):398−408。例示的なヒトSPIKアミノ酸配列としては、GenBankアクセッション番号:M11949、GI番号:190687;GenBankアクセッション番号:NM003122、GI:657940887;およびGeneBankアクセッション番号:BC025790、GI:19343607が挙げられる。
【0091】
抗体
本明細書において提供される抗体は、配列番号:2のアミノ酸1〜23内のエピトープ、またはこの領域内の少なくとも1つのアミノ酸を含有するエピトープに特異的または優先的に結合する抗体を含むことができる。エピトープはコンホメーショナルエピトープ(コンホメーション特異的エピトープ)またはリニアエピトープとすることができる。一部の実施形態では、抗体は、配列番号:6に示されるAS−SPIKタンパク質配列中のエピトープに特異的または優先的に結合する。一部の実施形態では、抗体は、配列番号:6の少なくとも1つのアミノ酸を含むコンホメーション特異的エピトープに特異的または優先的に結合する。
【0092】
本発明の実施形態による抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナル、特にモノクローナルであってもよく、ヒト、マウス、ウサギ、ヒツジもしくはヤギ細胞により、またはこれらの細胞に由来するハイブリドーマにより産生されてもよい。一部の実施形態では、抗体は、ヒト化、またはキメラ抗体とすることができる。
【0093】
本発明の実施形態による抗体は様々な構成をとることができ、また免疫グロブリン遺伝子により実質的にコードされる1つまたは複数のポリペプチドからなるタンパク質を包含する。インタクトな抗体、抗体多量体、または機能的な抗体の抗原結合領域を含む抗体断片もしくはその他のバリアントを含む様々な抗体構造のいずれか1つを使用することができる。「免疫グロブリン」という用語は「抗体」と同義に使用される場合がある。抗体はモノクローナルまたはポリクローナルの起源であってもよい。抗体の供給源にかかわらず、好適な抗体としては、インタクトな抗体、例えば、2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を有するIgG四量体、単鎖抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、相補性(complementary)決定領域(CDR)グラフト抗体だけでなく、抗体断片、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFv、Fv、およびそのような断片に由来する組換え抗体、例えば、キャメルボディ(camelbodies)、マイクロ抗体、ダイアボディおよび二重特異性抗体も挙げられる。
【0094】
インタクトな抗体は、抗原結合可変領域(V
HおよびV
L)だけでなく、軽鎖定常ドメイン(C
L)ならびに重鎖定常ドメイン、C
H1、C
H2およびC
H3も含む抗体である。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列バリアントであってもよい。当該技術分野において周知のように、V
HおよびV
L領域は、より保存されたフレームワーク領域(FR)と共に散在された、「相補性決定領域」(CDR)と称される超可変性の領域にさらに分割される。抗体のCDRは、典型的には、天然の免疫グロブリン結合部位の天然のFv領域の結合親和性および特異性を一緒になって定義するアミノ酸配列を含む。
【0095】
抗AS−SPIK抗体は、免疫グロブリンの任意のクラス、例えば、IgA、IgG、IgE、IgD、IgM(ならびにそのサブタイプ(例えば、IgG
1、IgG
2、IgG
3、およびIgG
4))からのものとすることができ、また免疫グロブリンの軽鎖はカッパまたはラムダの種類のものであってもよい。認識されるヒト免疫グロブリン遺伝子としては、カッパ、ラムダ、アルファ(IgA
1およびIgA
2)、ガンマ(IgG
1、IgG
2、IgG
3、IgG
4)、デルタ、イプシロン、ならびにミュー定常領域遺伝子だけでなく、無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子も挙げられる。
【0096】
免疫グロブリンまたは抗体の「抗原結合部分」という用語は、一般的に、標的、この場合は、AS−SPIK上のアミノ酸残基(配列番号:6)を含むエピトープに特異的または優先的に結合するがNS−SPIKに結合しない免疫グロブリンの部分を指す。免疫グロブリンの抗原結合部分は、したがって、分子中の1つまたは複数の免疫グロブリン鎖が全長ではないが、細胞標的に特異的または優先的に結合する分子である。抗原結合部分または断片の例としては、(i)VLC、VHC、CLおよびCH1ドメインからなる一価断片である、Fab断片;(ii)ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋により連結された2つのFab断片を含む二価断片である、F(ab’)
2断片;(iii)抗体の単一アームのVLCおよびVHCドメインからなるFv断片、ならびに(v)例えば可変領域の抗原結合部分に特異的または優先的に結合するために充分なフレームワークを有する単離されたCDRが挙げられる。軽鎖可変領域の抗原結合部分および重鎖可変領域の抗原結合部分、例えば、Fv断片の2つのドメイン、VLCおよびVHCは、VLCおよびVHC領域がペア形成して一価分子(単鎖Fv(scFv)として公知)を形成する単一のタンパク質鎖としてそれらが作製されることを可能とする合成リンカーにより、組換え法を使用して、連結することができる。そのようなscFvは抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される。
【0097】
「Fv」断片は、完全な抗原認識および結合部位を含有する最小の抗体断片である。この領域は、緊密な非共有結合性(con−covalent)の会合をした1つの重鎖および1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。各可変ドメインの3つの超可変領域が相互作用してV
H−V
L二量体の表面上に抗原結合部位を定義するのはこの構成においてである。6つの超可変領域は抗原結合特異性を付与するが、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的な3つの超可変領域のみを含むFvの半分)でさえ、結合部位全体より低い親和性であるが、抗原を認識してそれに結合する能力を有する。安定性を向上させるために、VH−VLドメインは、(Gly
4Ser)
3などの柔軟なペプチドリンカーにより接続されて単鎖FvもしくはscFV抗体断片を形成してもよく、またはフレームワーク領域に2つのシステイン残基を導入することによりジスルフィド結合を形成するように操作してジスルフィド安定化Fv(dsFv)をもたらしてもよい。
【0098】
抗体の断片は、全長抗体の所望の特異性および/またはAS−SPIKに結合しかつNS−SPIKに結合しない充分な特異性を保持する限り、提供される方法において使用するために好適である。
【0099】
本明細書に記載の抗体の抗原結合ドメインは、T細胞エンゲージャー分子(例えば、二重特異性T細胞エンゲージャー、別名BiTE分子)だけでなく、CAR−T構造物の産生においても利用することができる。T細胞エンゲージャー分子は、例えば、Huehls et al.,Bispecific T cell engagers for cancer immunotherapy,Immunol Cell Biol.2015 Mar;93(3):290−296に記載されている。結合(標的化)ドメインとして単一ドメイン抗体を含むCAR−T構造物は、例えば、Iri−Sofla et al.,2011,Experimental Cell Research 317:2630−2641およびJamnani et al.,2014,Biochim Biophys Acta,1840:378−386に記載されている。
【0100】
抗体断片を調製する方法は、生化学的方法(例えば、化学的架橋が後続してもよい、インタクトな抗体のタンパク質消化分解)および所望の断片の合成を指令するように免疫グロブリン配列が遺伝子操作される組換えDNAベースの方法の両方を包含する。抗体断片は、非特異的チオールプロテアーゼ、パパインによる全体免疫グロブリンのタンパク質加水分解により得られ得る。パパイン消化は、それぞれが単一の抗原結合部位を有する、「Fab断片」と称される2つの同一の抗原結合断片、および残余の「Fc断片」をもたらす。様々な画分は、プロテインA−セファロースまたはイオン交換クロマトグラフィーにより分離することができる。ウサギおよびヒト起源のIgGからのF(ab’)
2断片の調製のための通常の手順は、酵素ペプシンによる制限されたタンパク質加水分解である。インタクトな抗体のペプシン処理は、2つの抗原結合部位を有しかつ依然として抗原を架橋する能力を有するF(ab’)
2断片をもたらす。Fab断片は、軽鎖の定常ドメインおよび重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含有する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1つまたは複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端における数個の残基の付加によりFab断片とは異なる。F(ab’)
2抗体断片は元々、それらの間にヒンジシステインを有するFab’断片のペアとして産生された。
【0101】
抗AS−SPIK抗体を作製する方法もまた本発明の範囲内である。例えば、可変領域は、PCR突然変異誘発方法を使用して免疫グロブリン鎖をコードするDNA配列を変化させることにより構築することができる(例えば、ヒト化免疫グロブリンを生成するために用いられる方法を使用する)。
【0102】
モノクローナル抗体は、抗体産生細胞の単一のクローンにより産生される同一の抗原特異性の均質な抗体であり、またポリクローナル抗体は、一般的に同じ抗原上の異なるエピトープを認識し、抗体産生細胞の1つより多くのクローンにより産生される。各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定因子を目的とする。モノクローナルという修飾語は、抗体の実質的に均質な集団から得られるという抗体の特徴を指し示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解されるべきではない。
【0103】
本明細書におけるモノクローナル抗体は、特定の種に由来するまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一のまたはそれに相同的な重鎖および/または軽鎖の部分を典型的には有すると同時に、鎖の残余が、別の種に由来するまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列だけでなく、所望の生物学的活性を呈する限り、そのような抗体の断片と同一またはそれに相同的であるキメラ抗体も含むことができる。目的のキメラ抗体としては、非ヒト霊長動物(例えば、類人猿、旧世界ザル、新世界ザル、原猿類)に由来する可変ドメイン抗原結合配列およびヒト定常領域配列を含む霊長動物化抗体が挙げられる。
【0104】
マウスおよびラットモノクローナル抗体は、NS−SPIKおよびAS−SPIKの両方において見出されるアミノ酸配列である共通の領域(配列番号:4)に加えて、NS−SPIK中に見出されないAS−SPIK中に見出される追加の23アミノ酸配列(配列番号6)を有する特に設計された組換えタンパク質を用いてマウスまたはラットを免疫化することを通じて生成された。一部の実施形態では、組換えタンパク質は、AS−SPIKのみに結合し、NS−SPIKに結合しないことにおいて効果的な抗体を生成するために23アミノ酸配列(配列番号:6)の全体を有することは必要とされないことがある。AS−SPIKに特異的または優先的に結合する抗体をスクリーニングおよび選択する方法は実施例4に記載される。
【0105】
図7においてモノクローナル抗体の試験結果が提供され、これは、本発明の抗体はAS−SPIKを特異的または優先的に認識できるがNS−SPIKを認識しないことを示し、これらには、IM−CA18、IM−CA22、IM−CA29、IM−CA34、IM−CA46およびIM−CA71が含まれるがそれに限定されない。試験の記載について実施例4を参照のこと。
【0106】
AS−SPIKに特異的または優先的に結合する(かつNS−SPIKに対してはそうではない)モノクローナル抗体の軽鎖の可変領域(VL)および重鎖の可変領域(VH)の配列を決定した(配列番号7〜14)。これらの抗体の全てのCDRもまた決定した(配列番号15〜38)。
図19〜23は、これらの領域のアライメントを提供する。以下の表は、本発明の4つの例示的な抗体の様々なVHおよびVL領域についての配列番号を提供する。
【0107】
例えば、CA−18抗体は、配列番号:7に示されるVH領域を有し、かつ配列番号:11に示されるVL領域を有する。VH領域は、配列番号:15、19および23を有する3つのCDRを有する。VL領域は、配列番号:27、31および35を有する3つのCDRを有する。
【0108】
CA22抗体は、配列番号:8に示されるVH領域を有し、かつ配列番号:12に示されるVL領域を有する。VH領域は、配列番号:16、20および24を有する3つのCDRを有する。VL領域は、配列番号:28、32および36を有する3つのCDRを有する。
【0109】
CA−46抗体は、配列番号:9に示されるVH領域を有し、かつ配列番号:13に示されるVL領域を有する。VH領域は、配列番号:17、21および25を有する3つのCDRを有する。VL領域は、配列番号:29、33および37を有する3つのCDRを有する。
【0110】
CB77抗体は、配列番号:10に示されるVH領域を有し、かつ配列番号:14に示されるVL領域を有する。VH領域は、配列番号:18、22および26を有する3つのCDRを有する。VL領域は、配列番号:30、34および38を有する3つのCDRを有する。
【0111】
加えて、本発明の実施形態による抗体は、AS−SPIKに特異的または優先的に結合しかつNS−SPIKに結合しない任意の天然に存在しない(人工の)抗体とすることができる。
【0112】
一部の実施形態では、抗体は、配列番号:7、8、9もしくは10において提供される配列を有するVH領域を含み、または抗体がAS−SPIKに特異的もしくは優先的に結合しかつNS−SPIKに結合しない限り、配列番号:8に対して少なくとも約50%、65%、68%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%相同的な(もしくは記載された同一性パーセンテージを有する)VH領域を有する。VH領域は、抗体がAS−SPIKに特異的または優先的に結合しかつNS−SPIKに結合しない限り、配列番号:8に対して少なくとも50〜68%、50〜95%、65〜95%、または78%〜95%相同的(または記載された同一性パーセンテージを有する)であってもよい。本発明の抗体は、抗体がAS−SPIKに特異的または優先的に結合し、かつNS−SPIKに結合しない限り、このパラグラフにおいて本明細書において使用されない任意のVH領域を含んでもよく、かつ任意のVL領域を含んでもよい。
【0113】
一部の実施形態では、抗体は、配列番号:11、12、13もしくは14において提供される配列を有するVL領域を含み、または、抗体がAS−SPIKに特異的もしくは優先的に結合しかつNS−SPIKに結合しない限り、配列番号:12に対して少なくとも69%相同的な(もしくは少なくとも69%同一の)VL領域を有する。VL領域は、抗体がAS−SPIKに特異的または優先的に結合しかつNS−SPIKに結合しない限り、配列番号:12に対して少なくとも69%〜95%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%相同的(または記載された同一性パーセンテージを有する)であってもよい。本発明の抗体は、抗体がAS−SPIKに特異的または優先的に結合しかつNS−SPIKに結合しない限り、本明細書に記載のVL領域のいずれかを含んでもよく、かつ本明細書に記載の任意のVH領域を含んでもよい。
【0114】
一部の実施形態では、抗体は、抗体がAS−SPIKに特異的または優先的に結合しかつNS−SPIKに結合しない限り、配列番号:15、16、17または18において提供される配列を有するVH CDR1領域を有する。VH CDR1領域は、抗体がAS−SPIKに特異的または優先的に結合しかつNS−SPIKに結合しない限り、配列番号:15、16、17または18に対して少なくとも40%、50%、60%、40〜95%、50〜95%、60〜95%、40〜60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%相同的であってもよい。
【0115】
一部の実施形態では、抗体は、抗体がAS−SPIKに特異的または優先的に結合しかつNS−SPIKに結合しない限り、配列番号:19、20、21または22において提供される配列を有するVH CDR2領域を含む。VH CDR2領域は、抗体がAS−SPIKに特異的または優先的に結合しかつNS−SPIKに結合しない限り、配列番号:19、20、21または22に対して少なくとも44%、50%、44〜50%、44〜95%、50〜95%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%相同的であってもよい。
【0116】
一部の実施形態では、抗体は、抗体がAS−SPIKに特異的または優先的に結合しかつNS−SPIKに結合しない限り、配列番号:23、24、25または26において提供される配列を有するVH CDR3領域を含む。VH CDR3領域は、抗体がAS−SPIKに特異的または優先的に結合しかつNS−SPIKに結合しない限り、配列番号:23、24、25または26に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または95〜99%相同的であってもよい。
【0117】
一部の実施形態では、抗体は、抗体がAS−SPIKに特異的または優先的に結合しかつNS−SPIKに結合しない限り、配列番号:27、28、29または30において提供される配列を有するVL CDR1領域を含む。VL CDR1領域は、抗体がAS−SPIKに特異的または優先的に結合しかつNS−SPIKに結合しない限り、配列番号:27、28、29または30に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または95〜99%相同的であってもよい。
【0118】
一部の実施形態では、抗体は、抗体がAS−SPIKに特異的または優先的に結合しかつNS−SPIKに結合しない限り、配列番号:31、32、33または34において提供される配列を有するVL CDR2領域を含む。VL CDR2領域は、抗体がAS−SPIKに特異的または優先的に結合しかつNS−SPIKに結合しない限り、配列番号:31、32、33または34に対して少なくとも43%、57%、43〜57%、43〜95%、57〜95%、または95〜99%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%相同的であってもよい。
【0119】
一部の実施形態では、抗体は、抗体がAS−SPIKに特異的または優先的に結合しかつNS−SPIKに結合しない限り、配列番号:35、36、37または38において提供される配列を有するVL CDR3領域を含む。VL CDR3領域は、抗体がAS−SPIKに特異的または優先的に結合しかつNS−SPIKに結合しない限り、配列番号:35、36、37または38に対して少なくとも44%、44〜95%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%相同的であってもよい。
【0120】
本発明の実施形態による抗体は、抗体がAS−SPIKに結合しかつNS−SPIKに結合しない限り、上記に提供される記載される相同性または同一性パーセントを有する配列を含めて、本明細書に記載のVH、VL、VH CDR1、VH CDR2もしくはVH CDR3、またはVL CDR1、VL CDR2、もしくはVL CDR3領域のいずれか、またはこれらの領域の任意の組合せを含むことができる。
【0121】
これらの抗体の配列相同性は、North Carolina State Universityにより開発されたソフトウェアプログラム「BioEdit」を使用して決定された。
【0122】
抗体の相同性およびAS−SPIKへの結合活性もまた研究された。結果は実施例6および7に記載される。
【0123】
モノクローナル抗体を産生する方法は精製ステップを含むことができる。例えば、抗体は一般的に、例えば、濾過、遠心分離および様々なクロマトグラフィー法、例えば、HPLCまたはアフィニティークロマトグラフィー(これらの全ては当業者に周知の技法である)を使用してさらに精製することができる。これらの精製技法はそれぞれ、混合物の他の成分から所望の抗体を分離するための分画に関与する。抗体の調製に特に適した分析方法としては、例えば、プロテインA−セファロースおよび/またはプロテインG−セファロースクロマトグラフィーが挙げられる。
【0124】
本発明の抗AS−SPIK抗体は、ヒトまたは非ヒト供給源からのCDRを含んでもよい。「ヒト化」抗体は、一般的にヒト定常および/もしくは可変領域ドメインまたは特定の変化を有する、マウス、ラット、ハムスター、ウサギまたは他の種からのキメラまたは突然変異体モノクローナル抗体である。免疫グロブリンのフレームワークは、ヒト、ヒト化、または非ヒト(例えば、ヒトにおいて抗原性を減少させるように改変されたマウスフレームワーク)、または合成フレームワーク(例えば、コンセンサス配列)とすることができる。ヒト化免疫グロブリンは、フレームワーク残基がヒト生殖細胞系列配列に対応しかつCDRがV(D)J組換えおよび体細胞突然変異の結果としてもたらされるものである。しかしながら、ヒト化免疫グロブリンはまた、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン核酸配列においてコードされないアミノ酸残基(例えば、ex vivoでのランダムまたは部位特異的突然変異誘発により導入された突然変異)も含んでもよい。生殖細胞系列配列に基づくが、例えばin vivoでの体細胞突然変異プロセスにより導入された、フレームワーク突然変異を有する抗体可変ドメイン遺伝子は、「ヒト」と称される。
【0125】
ヒト化抗体は、当該技術分野において公知の様々な方法により操作されてもよく、該方法としては、例えば、(1)非ヒト相補性決定領域(CDR)をヒトフレームワークおよび定常領域にグラフトすること(当該技術分野においてヒト化と称されるプロセス)、または、代替的に、(2)非ヒト可変ドメイン全体を移植するが、表面残基の置換によりそれらにヒト様表面を提供すること(当該技術分野においてベニア化(veneering)と称されるプロセス)が挙げられる。ヒト化抗体は、ヒト化抗体およびベニア化抗体の両方を含むことができる。同様に、ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座をトランスジェニック動物、例えば、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的にまたは完全に不活性化されているマウスに導入することにより作製することができる。チャレンジにより、遺伝子再構成、アセンブリー、および抗体レパートリーを含む全ての点においてヒトにおいて見られるものと密接に似ているヒト抗体産生が観察される。
【0126】
キメラおよびヒト化抗体に加えて、完全ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウスに由来する可能性がある。一部の実施形態では、抗体は、scFv−ファージディスプレイライブラリーにより産生および特定されてもよい。
【0127】
抗AS−SPIK抗体は、その抗原結合親和性、そのエフェクター機能、またはその薬物動態をモジュレ―トするように改変されてもよい。特に、ランダム突然変異をCDRにおいて行うことができ、産物は、より高い親和性および/またはより高い特異性を有する抗体を特定するためにスクリーニングすることができる。典型的には、CDRは、1つまたは2つのアミノ酸において異なってもよい。
【0128】
例えば、CDRシャッフリングおよび移植技術は、本明細書において提供される抗体と共に使用することができる。CDRシャッフリングは、CDR配列を特定のフレームワーク領域の中へと挿入する。CDR移植技法は、単一のマスターフレームワークへのCDR配列のランダムな組合せを可能とする。そのような技法を使用して、例えば、抗AS−SPIK抗体のCDR配列は、複数の異なる配列を作製するために突然変異誘発することができ、該複数の異なる配列をスキャフォールド配列へと組み込み、そして結果として生じる抗体バリアントを所望の特徴、例えば、より高い親和性についてスクリーニングすることができる。
【0129】
SPIKの機能の我々の研究は、SPIKはグランザイムA(GzmA)に結合してそれがアポトーシスを誘導することを阻害できることを示す。Lu et al.,Immunology 2011;134(4):398−408。GzmAは、免疫サーベイランスの間に標的細胞を殺傷するために活性化CTLおよびNK細胞により分泌される細胞傷害性セリンプロテアーゼである。腫瘍前駆体/腫瘍生殖細胞などの悪性細胞の除去におけるGzmA誘導性アポトーシスの役割が確認されている。Pardo et al.,Eur J Immunol.2002;32(10):2881−2887。したがって、肝臓がん細胞におけるAS−SPIKの過剰発現が、細胞を免疫クリアランスの間にGzmAにより誘導されるアポトーシスに対して耐性にすることが可能である。これは、免疫経路による殺傷からのこれらのがん細胞の回避を結果としてもたらす。Lu et al.,Immunology 2011;134(4):398−408。この仮説に基づき、かつ理論に縛られることなく、AS−SPIKの過剰発現の抑制、または過剰発現されるAS−SPIKの活性の阻害が、ヒトの身体の免疫クリアランスの間にGzmAにより誘導されるがん細胞の免疫殺傷を回復させる場合があると我々は結論する。
【0130】
実施例11において、抗AS−SPIK抗体がAS−SPIKの活性を阻害できることが実証される。したがって、GzmAとのAS−SPIKの結合を遮断し、GzmAを遊離させ、かつ免疫クリアランスを介してこれらのがん細胞のアポトーシス性殺傷を回復させるために抗AS−SPIK抗体を使用することができる。この目的のために、抗SPIK抗体は、がん、ウイルス感染症、および炎症が挙げられるがそれに限定されないAS−SPIKの過剰発現により引き起こされる障害の処置において使用されてもよい。
【0131】
抗体の1つの治療的使用はヒト化を通じたものである。ヒト化モノクローナル抗体を用いる療法は急速に開発されている分野であり、その特異性および効率はよく研究されている。Rothernberg,ME,Cell 2016;165(3):509。IM−CA18、IM−CA22、IM−CA46およびIM−CB77、ならびにSPIKの活性を阻害できる本発明の他の抗体が挙げられるがそれに限定されない対象抗AS−SPIKモノクローナル抗体もまた、ヒト化されて疾患の処置のために使用することができる。
【0132】
例えばファージミド技術を使用する組換え技術は、広範な抗体をコードする組換え遺伝子からの所望の特異性を有する抗体の調製を可能とする。ある特定の組換え技法は、免疫化動物の脾臓から単離されたRNAから調製されたコンビナトリアル免疫グロブリンファージ発現ライブラリーの免疫学的スクリーニングによる抗体遺伝子の単離に関与する。そのような方法のために、コンビナトリアル免疫グロブリンファージミドライブラリーは、免疫化動物の脾臓から単離されたRNAから調製することができ、かつ適切な抗体を発現するファージミドは、抗原を発現する細胞および対照細胞を使用してパニングにより選択することができる。
【0133】
上記に開示されるコンビナトリアル免疫グロブリンファージ発現ライブラリーに加えて、1つの分子クローニングアプローチは、ヒト抗体ライブラリーを含有するトランスジェニックマウスから抗体を調製することである。そのようなトランスジェニック動物を、単一のアイソタイプ、より特異的には、IgMおよび場合によりIgDなどの、B細胞成熟のために必須のアイソタイプのヒト抗体を産生するために用いることができる。
【0134】
抗AS−SPIK免疫グロブリンは、グリコシル化を低減または無化するように改変されてもよい。グリコシル化を欠いた免疫グロブリンは、全くグリコシル化されていない、完全にはグリコシル化されていない、または変則的にグリコシル化されている(すなわち、突然変異体のグリコシル化パターンが対応する野生型免疫グロブリンのグリコシル化パターンとは異なる)免疫グロブリンであってもよい。IgGポリペプチドは、グリコシル化を減弱する1つまたは複数(例えば、1、2、または3またはより多く)の突然変異、すなわち、グリコシル化を欠いた、または完全にはグリコシル化されていない、または変則的にグリコシル化されているIgG CH2ドメインを結果としてもたらす突然変異を含む。オリゴ糖構造もまた、例えば、N結合型グリカンからフコース部分を除去することにより、改変することができる。
【0135】
抗体はまた、非タンパク質ポリマー、例えば、ポリエチレングリコールへの結合によりin vivoでの安定性およびまたは溶解性を増加させるように改変することができる。抗AS−SPIK抗体がAS−SPIKに選択的に結合しかつNS−SPIKに結合しない能力を保持する限り、任意のPEG化方法を使用することができる。
【0136】
結果として生じるポリペプチドが標的、すなわち、AS−SPIKに対して特異的な少なくとも1つの結合領域を含む限り、多様な抗体/免疫グロブリンフレームワークまたはスキャフォールドを用いることができる。そのようなフレームワークまたはスキャフォールドは、ヒト免疫グロブリンの5つの主なイディオタイプ、またはその断片(例えば、本明細書の他の箇所に開示されるもの)を含み、好ましくはヒト化された態様を有する、他の動物種の免疫グロブリンを含む。ラクダ科動物において特定されたものなどの単一の重鎖抗体は、これに関して特に興味深いものである。
【0137】
本発明の抗AS−SPIK抗体は、AS−SPIK上のエピトープに特異的または優先的に結合しかつNS−SPIK上のエピトープに結合しない。エピトープは、パラトープが特異的に結合する標的上の抗原決定基、すなわち、抗体の結合部位を指す。エピトープ決定因子は、通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性の表面グループ分けからなり、典型的には、特定の三次元構造的特徴だけでなく、特定の電荷的特徴も有する。エピトープは、一般的に約4〜約10、好ましくは4〜8の、連続するアミノ酸(直鎖状のもしくは連続的なエピトープ)を有し、または代替的に、特定の構造(例えば、コンホメーショナルエピトープ)を定義する不連続のアミノ酸のセットであり得る。したがって、エピトープは、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、および少なくとも12のそのようなアミノ酸から成ることができる。アミノ酸の空間的コンホメーションを決定する方法は当該技術分野において公知であり、例えば、X線結晶学および二次元核磁気共鳴が挙げられる。
【0138】
抗体が結合することができる他の潜在的なエピトープを予測する方法としては、カイト−ドーリトル解析(Kyte−Doolittle Analysis)(Kyte and Dolittle,J.Mol.Biol.157:105−132(1982))、ホップ−ウッド解析(Hopp and Woods Analysis)(Hopp and Woods,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:3824−3828(1981);Hopp and Woods,Mol.Immunol.20:483−489(1983);Hopp,J.Immunol.Methods 88:1−18(1986))、ジェームソン−ウォルフ解析(Jameson−Wolf Analysis)(Jameson and Wolf,Comput.Appl.Biosci.4:181−186(1988))、およびエミニ解析(Emini Analysis)(Emini et al.,Virology 140:13−20(1985))、チョウ−ファスマン解析(Chou and Fasman analysis)(Ponomarenko & Regenmortel,Structural Bioinformatics,2009)、カープラス−シュルツ解析(Karplus and Schulz Analysis)(Kolaskar and Tongaonkar Analysis Kolaskar & Tongaonkar,FEBS Letters,172−174(1990))、およびパーカー解析(Parker analysis)を挙げることができるがそれに限定されない。一部の実施形態では、潜在的なエピトープは、他の研究から既知の抗原部位との相関を通じて決定され、これらの予測技法は、X線結晶学的データなどの構造データと組み合わせることができる。エピトープ予測はまた、連続的なエピトープおよび不連続のエピトープの両方を予測する技法を含んでもよい。不連続のエピトープを予測する方法としては、以下が挙げられるがそれに限定されない:DiscoTope、BEpro、ElliPro、SEPPA、EPITOPIA、EPCES、Bpredictor、およびEPMeta(Yao et al.,PLOS ONE,(2013))。一部の実施形態では、潜在的なエピトープは、理論的な細胞外ドメインを決定することにより特定される。そのような予測を行うためにTMpred(Hofmann and Stoffel,Biol.Chem.374:166(1993)を参照のこと)またはTMHMM(Krogh et al.,J.Mol.Biol.,305(3):567−580(2001))などの解析アルゴリズムを使用することができる。シグナルペプチドの存在を予測するため、およびそれらのペプチドが全長タンパク質からどこで切断されるかを予測するためにSignalP 3.0(Bednsten et al.,J.Mol.Biol.340(4):783−795(2004))などの他のアルゴリズムを使用することができる。細胞の外側上のタンパク質の部分は、抗体相互作用のための標的として機能を果たすことができる。
【0139】
本発明の組成物は、(1)閾値レベルの結合活性を呈し、(2)既知の関連するポリペプチド分子と有意に交差反応せず、(3)AS−SPIKに結合しかつ(4)NS−SPIKに結合しない本明細書に記載の抗体を含む。抗体の結合親和性は、例えばスキャッチャード解析(Scatchard,Ann.NY Acad,Sci.51:660−672(1949))により、当業者により容易に決定され得る。
【0140】
一部の実施形態では、抗AS−SPIK抗体は、AS−SPIKに対してある程度の相同性を有することが予測される他のタンパク質、例えば、NS−SPIKに対してよりも標的AS−SPIKについて少なくとも1.5倍、2倍、5倍、10倍、100倍、10
3倍、10
4倍、10
5倍、10
6倍またはより強くその標的エピトープまたは模倣的デコイに結合することができる。
【0141】
一部の実施形態では、抗AS−SPIK抗体は、10
−4Mもしくはそれ未満、10
−7Mもしくはそれ未満、10
−9Mもしくはそれ未満の高親和性またはサブナノモル濃度の親和性(0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1nMもしくはそれ未満)で結合する。一部の実施形態では、各々の標的に対する抗AS−SPIK抗体の結合親和性は少なくとも1×10
6Kaである。一部の実施形態では、AS−SPIKに対する抗AS−SPIK抗体の結合親和性は、少なくとも5×10
6Ka、少なくとも1×10
7Ka、少なくとも2×10
7Ka、少なくとも1×10
8Ka、またはより高い。抗体はまた、AS−SPIKに対する結合親和性の点で記載または指定されてもよい。一部の実施形態では、結合親和性としては、5×10
−2M、10
−2M、5×10
−3M、10
−3M、5×10
−3M、10
−4M、5×10
−5M、10
−5M、5×10
−6M、10
−6M、5×10
−7M、10
−7M、5×10
−8M、10
−8M、5×10
−9M、10
−9M、5×10
−10M、10
−10M、5×10
−11M、10
−11M、5×10
−12M、10
−12M、5×10
−13M、10
−13M、5×10
−14M、10
−14M、5×10
−15M、もしくは10
−15M未満またはより低いKdを有するものが挙げられる。すなわち、本明細書において使用される例えばAS−SPIKに対する「特異的結合」、それに「特異的に結合すること」、または「特異的に結合する」という用語は、AS−SPIKに結合しかつNS−SPIKに結合しない抗体を指す。理論により縛られるものではないが、AS−SPIKに特異的に結合する本発明の抗体は、AS−SPIK中に存在する最初の1〜23アミノ酸(配列番号:6を参照のこと)内のみにありNS−SPIK中に存在しないエピトープに結合すると考えられる。本発明の抗体は、AS−SPIKの1〜23アミノ酸にわたるが共通の領域中の一部のアミノ酸(AS−SPIKおよびNS−SPIKの両方に存在するアミノ酸)も含むエピトープに結合するものである可能性がある。または、抗体は、AS−SPIKの最初の1〜23アミノ酸中の少なくとも1つのアミノ酸に結合するが共通の領域中の少なくとも1つのアミノ酸にも結合するものである可能性がある。これらの事例では、抗体はまたNS−SPIKに結合してもよいが、結合のレベルはバックグラウンドレベルであるかまたはそれより低い。これは本明細書において「優先的に結合する」または「優先的な結合」と称される。AS−SPIKに優先的に結合する抗体は診断方法において依然として有用であり、その理由は、結合のバックグラウンドレベルを「ノイズ」として割り引くようにアッセイを開発することができるためである。そのため、アッセイは、AS−SPIKの発現により特徴付けられる障害、例えば、肝臓がんなどの肝臓障害を有する患者の診断を結果としてもたらすために結合のある特定のレベル(ある特定の閾値レベルより高い、およびバックグラウンドノイズより高い)のみが許容されることを指し示すことになる。
【0142】
本発明の抗体は、10
−4Mもしくはそれ未満、10
−7Mもしくはそれ未満、10
−9Mもしくはそれ未満の親和性またはサブナノモル濃度の親和性(0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1nMもしくはさらにそれ未満)で結合してもよい。一部の実施形態では、各々の標的に対する抗AS−SPIK抗体の結合親和性は少なくとも1×10
6Kaである。一部の実施形態では、AS−SPIKに対する抗AS−SPIK抗体の結合親和性は、少なくとも5×10
6Ka、少なくとも1×10
7Ka、少なくとも2×10
7Ka、少なくとも1×10
8Ka、またはより高い。一部の実施形態では、結合親和性としては、5×10
−2M、10
−2M、5×10
−3M、10
−3M、5×10
−3M、10
−4M、5×10
−5M、10
−5M、5×10
−6M、10
−6M、5×10
−7M、10
−7M、5×10
−8M、10
−8M、5×10.
−9M、5×10
−10M、10
−10M、5×10
−11M、10
−11M、5×10
−12M、10
−12M、5×10
−13M、10
−13M、5×10
−14M、10
−14M、5×10
−15M、もしくは10
−15M未満またはより低いKdを有するものが挙げられる。それと対照的に、本明細書において使用される例えばNS−SPIKに「非特異的に結合する」という用語は、例えばAS−SPIKに対する「特異的結合」について決定されるものより少なくとも1.5、2、5、10、100、10
3、10
4、10
5、10
6またはより大きい率だけ低い結合親和性を指す。Kdなどの親和性は、Fab型の目的の抗体およびその抗原を用いて行われる放射性標識抗原結合アッセイ(ラジオイムノアッセイ、RIA)により測定されてもよい。別の実施形態によれば、Kdは、固定化された抗原を用いて表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定されてもよい。好ましい実施形態では、本発明の抗体は、AS−SPIKに特異的または優先的に結合し、かつNS−SPIKには特異的に結合せず、AS−SPIKに対する抗体の親和性は、NS−SPIKに対してより少なくとも1.5倍、2倍、5倍、10倍、100倍、10
3倍、10
4倍、10
5倍または10
6倍大きい。
【0143】
一部の実施形態では、抗体は既知の関連するポリペプチド分子に結合せず、例えば、それらはAS−SPIKに結合するが既知の関連するポリペプチド、例えば、NS−SPIKに結合しない。抗体は、AS−SPIKに特異的または優先的に結合する抗体集団を単離するために既知の関連するポリペプチドに対してスクリーニングされてもよい。例えば、AS−SPIKに特異的な抗体は、適切な緩衝液条件下で不溶性のマトリックスに接着したNS−SPIKを含むカラムを通過する。そのようなスクリーニングは、密接に関連するポリペプチドに非交差反応性のポリクローナルおよびモノクローナル抗体の単離を可能とする。特異的な抗体のスクリーニングおよび単離の他の方法としては、例えば、同時免疫電気泳動(concurrent immunoelectrophoresis)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、放射性免疫沈降、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ドットブロットまたはウエスタンブロットアッセイ、阻害または競合アッセイ、およびサンドイッチアッセイが挙げられるがそれに限定されない。
【0144】
本発明の実施形態による抗体は、レポーター(例えば、検出可能なレポーター)とも称されることがある、検出可能な標識を含むことができる。一部の実施形態では、検出可能な標識は、タグ化ペプチドの発現または活性の定性的および/または定量的な評価を可能とする抗体(例えば、抗AS−SPIK抗体)またはその生物学的活性断片に共有結合的に連結される任意の分子とすることができる。活性は、生物学的活性、物理化学的活性、またはその組合せを含むことができる。標識された抗体が生物学的活性を保持する限り、検出可能な標識の形態および位置の両方を変動させることができる。多くの異なる標識を使用することができ、また特定の標識の選択は所望の応用に依存することになる。標識された抗AS−SPIK抗体は、例えば、生物学的試料、例えば、尿、唾液、脳脊髄液、血液または生検試料中のAS−SPIKのレベルを評価するために使用することができる。
【0145】
検出可能な標識としては、酵素、光親和性リガンド、放射性同位体、および蛍光または化学発光化合物を挙げることができる。例示的な酵素標識としては、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、およびウレアーゼを挙げることができる。酵素への抗AS−SPIK抗体の共有結合連結は、異なる方法、例えば、遊離アミノ基を介するグルタルアルデヒドとの連結により行われてもよい。代替的に、抗AS−SPIK抗体は、糖残基を介して酵素に連結することができる。炭水化物を含有する他の酵素もまたこの方式で抗体に連結することができる。酵素連結はまた、スクシンイミジル6−(N−マレイミド)ヘキサノエートなどのヘテロ二官能性リンカーを使用して、β−ガラクトシダーゼなどの酵素の遊離チオール基と抗体のアミノ基を相互連結することにより行われてもよい。西洋ワサビペルオキシダーゼ検出システムを、例えば、発色基質テトラメチルベンジジン(TMB)と共に使用することができ、これは過酸化水素の存在下で450nmにおいて検出可能な可溶性の産物をもたらす。アルカリホスファターゼ検出システムは、例えば、発色基質p−ニトロフェニルホスフェートと共に使用することができ、これは405nmにおいて容易に検出可能な可溶性の産物をもたらす。同様に、β−ガラクトシダーゼ検出システムは、発色基質o−ニトロフェニル−P−D−ガラクトピラノシド(o−nitrophenyl−P−D−galactopyranoxide)(ONPG)と共に使用することができ、これは、410nmにおいて検出可能な可溶性の産物をもたらす。ウレアーゼ検出システムは、尿素−ブロモクレゾールパープルなどの基質と共に使用することができる。
【0146】
検出可能な標識はフルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリスリン(phycoerytherin)、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルアルデヒド(o−phthaldehyde)およびフルオレスカミンが挙げられるがそれに限定されない蛍光標識;ルミノール、イソルミノール、芳香族アクリジニウムエステル、イミダゾール、アクリジニウム塩およびシュウ酸エステルからなる群から選択される化学発光化合物;リポソームもしくはデキストラン;またはルシフェリン、ルシフェラーゼおよびエクオリンなどの生物発光化合物とすることができる。代替的または追加的に、検出可能な標識としては、放射線不透過または造影剤、例えば、バリウム、ジアトリゾ酸塩、エチオダイズド油、クエン酸ガリウム、イオカルム酸、ヨーセタム酸、ヨーダミド、ヨージパミド、ヨードキサム酸、ヨーグラミド、イオヘキソール、イオパミドール、イオパノ酸、イオプロセム酸、イオセファム酸、イオセル酸、イオスラミドメグルミン、イオセメチン酸(iosemetic acid)、イオタスル、イオテトル酸、イオタラム酸、イオトロクス酸、イオキサグル酸、イオキソトリゾ酸、イポデート、メグルミン、メトリザミド、メトリゾ酸塩、プロピリオドン、および塩化タリウムなどが挙げられるがそれに限定されない。
【0147】
標識は、合成の間または合成後に付加することができる。組換え抗AS−SPIK抗体またはその生物学的に活性なバリアントはまた、形質転換細胞が生育される培養培地への標識された前駆体(例えば、放射性標識されたアミノ酸)の添加により標識され得る。一部の実施形態では、検出可能なマーカーの組込みを容易にするためにペプチドのアナログまたはバリアントを使用することができる。例えば、任意のN末端フェニルアラニン残基は、
125Iを用いて簡単に標識することができるチロシンなどの密接に関連する芳香族アミノ酸により置換することができる。一部の実施形態では、効果的な標識化をサポートする追加の官能基を、抗AS−SPIK抗体またはその生物学的に活性なバリアントの断片に付加することができる。例えば、3−トリブチルスズベンゾイル(3−tributyltinbenzoyl)基を天然の構造のN末端に付加することができ、
125Iを用いたトリブチルスズ基のその後の置換は、放射性標識されたヨードベンゾイル基を生成することになる。
【0148】
ポリペプチド
一部の実施形態では、本発明の組成物は、SPIKポリペプチド、例えば、上記の任意の核酸配列によりコードされるAS−SPIKポリペプチドを含むことができる。「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」という用語は本明細書において交換可能に使用されるが、典型的にはそれらは異なるサイズのペプチド配列を指す。それらがアミノ酸残基の直鎖状ポリマーであることを伝えるため、および全長タンパク質からそれらを区別することを助けるために、本発明のアミノ酸ベースの組成物を「ポリペプチド」と呼ぶことがある。本発明の実施形態によるポリペプチドは、AS−SPIKポリペプチドまたはNS−SPIKポリペプチドの断片を「構成」すること、または「含む」ことができ、また本発明は、AS−SPIKポリペプチドまたはNS−SPIKポリペプチドの生物学的に活性なバリアントを構成する、または含むポリペプチドを包含する。ポリペプチドは、したがって、AS−SPIKポリペプチドまたはNS−SPIKポリペプチド(またはその生物学的に活性なバリアント)の断片のみを含むことができるが、追加の残基もまた含んでもよいことが理解されるであろう。生物学的に活性なバリアントは、プロテアーゼを阻害するために充分な活性を保持する。
【0149】
アミノ酸残基間の結合は、従来のペプチド結合または別の共有結合(例えば、エステルもしくはエーテル結合)とすることができ、ポリペプチドは、アミド化、リン酸化またはグリコシル化により修飾することができる。修飾は、ポリペプチド骨格および/または1つもしくは複数の側鎖に影響する可能性がある。化学修飾は、ポリペプチドをコードするmRNAの翻訳後にin vivoで為される天然に存在する修飾(例えば、細菌宿主中でのグリコシル化)またはin vitroで為される合成修飾とすることができる。AS−SPIKポリペプチドまたはNS−SPIKポリペプチドの生物学的に活性なバリアントは、天然に存在する(すなわち、in vivoで天然に為される)修飾および合成修飾(すなわち、in vitroで為される天然に存在するもしくは天然に存在しない修飾)の任意の組合せの結果としてもたらされる1つまたは複数の構造修飾を含むことができる。修飾の例としては、アミド化(例えば、アミノ基によるC末端の遊離カルボキシル基の置換);ビオチン化(例えば、ビオチン分子によるリジンまたは他の反応性アミノ酸残基のアシル化);グリコシル化(例えば、糖タンパク質または糖ペプチドを生成するためのアスパラギン、ヒドロキシリジン、セリンまたはスレオニン残基のいずれかへのグリコシル基の付加);アセチル化(例えば、典型的にはポリペプチドのN末端における、アセチル基の付加);アルキル化(例えば、アルキル基の付加);イソプレニル化(例えば、イソプレノイド基の付加);リポイル化(例えば、リポエート部分の取付け);およびリン酸化(例えば、セリン、チロシン、スレオニンまたはヒスチジンへのリン酸基の付加)が挙げられるがそれに限定されない。
【0150】
生物学的に活性なバリアント中のアミノ酸残基の1つまたは複数は、天然に存在しないアミノ酸残基であってもよい。天然に存在するアミノ酸残基としては、遺伝コードにより天然にコードされるものだけでなく、非標準アミノ酸(例えば、L配置の代わりにD配置を有するアミノ酸)も挙げられる。本発明のペプチドはまた、修飾型の標準的な残基であるアミノ酸残基も含むことができる(例えば、ピロールリジンをリジンの代わりに使用することができ、セレノシステインをシステインの代わりに使用することができる)。天然に存在しないアミノ酸残基は、天然に見出されないが、アミノ酸の基本的な式に合致し、かつペプチドの中へと組み込むことができるものである。これらとしては、D−アロイソロイシン(2R,3S)−2−アミノ−3−メチルペンタン酸およびL−シクロペンチルグリシン(S)−2−アミノ−2−シクロペンチル酢酸が挙げられる。他の例のために、参考書またはワールドワイドウェブを参照することができる(サイトは現在、California Institute of Technologyにより維持されており、機能的タンパク質への組込みが成功した非天然アミノ酸の構造を示す)。
【0151】
代替的に、または加えて、生物学的に活性なバリアント中のアミノ酸残基の1つまたは複数は、野生型配列中の対応する位置において見出される天然に存在する残基とは異なる天然に存在する残基とすることができり。換言すれば、生物学的に活性なバリアントは、1つまたは複数の、特に1つまたは2つの、アミノ酸置換を含むことができる。アミノ酸残基の置換、付加、または欠失を野生型配列の突然変異と称する場合がある。記載されるように、置換は、天然に存在するアミノ酸残基を、天然に存在しない残基または単に異なる天然に存在する残基で置き換えることができる。さらには、置換は保存的または非保存的置換を構成することができる。保存的アミノ酸置換としては、典型的には、以下の群内の置換が挙げられる:グリシンおよびアラニン;バリン、イソロイシン、およびロイシン;アスパラギン酸およびグルタミン酸;アスパラギン、グルタミン、セリンおよびスレオニン;リジン、ヒスチジンおよびアルギニン;ならびにフェニルアラニンおよびチロシン。
【0152】
AS−SPIKの生物学的に活性なバリアントであるポリペプチドは、その配列が、対応する野生型ポリペプチドに類似または相同的である程度の点で特徴付けることができる。例えば、生物学的に活性なバリアントの配列は、野生型ポリペプチド中の対応する残基に対して少なくともまたは約80%相同的(または同一)とすることができる。例えば、AS−SPIKポリペプチドまたはNS−SPIKポリペプチドの生物学的に活性なバリアントは、AS−SPIKポリペプチド(配列番号:2、4もしくは6)またはそのホモログもしくはオルソログに対して少なくともまたは約80%の配列相同性(例えば、少なくともまたは約85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列相同性)(または記載される同一性パーセンテージ)を有するアミノ酸配列を有することができる。
【0153】
AS−SPIKポリペプチドまたはNS−SPIKポリペプチドの生物学的に活性なバリアントは、本発明の方法において有用であるために充分な生物学的活性を保持することになる。生物学的に活性なバリアントは、プロテアーゼ活性の阻害剤として機能するために充分な活性を保持することになる。生物学的活性は、in vitroでの切断アッセイまたは機能アッセイが挙げられるがそれに限定されない当業者に公知の方法において評価することができる。
【0154】
ポリペプチドは、例えば、組換え技法または化学合成を含む様々な方法により生成することができる。ポリペプチドが生成されると、それは、任意の所望の程度まで単離および精製することができる。例えば、逆相(好ましい)もしくは順相HPLC、またはSephadex G−25などの多糖ゲル媒体でのサイズ排除もしくは分配クロマトグラフィーの後に、例えば凍結乾燥を使用することができる。最終ポリペプチドの組成は、標準的な手段によるペプチドの分解後のアミノ酸解析、アミノ酸シークエンシング、またはFAB−MS技法により確認されてもよい。ポリペプチドの酸塩を含む塩、エステル、アミド、およびアミノ基のN−アシル誘導体は当該技術分野において公知の方法を使用して調製されてもよく、そのようなペプチドは本発明の文脈において有用である。
【0155】
AS−SPIK複合体もまた提供される。本発明の実施形態によるAS−SPIK複合体は、AS−SPIK、およびAS−SPIKポリペプチドまたはその断片に特異的または優先的に結合する、本明細書に記載されるような本発明の抗体を含む。断片は、特に、少なくとも23アミノ酸(配列番号:6)、好ましくは少なくとも10アミノ酸の長さを有し、より好ましくは、配列番号:6の少なくとも7番目(それを含む)から23番目のアミノ酸を有し、よりいっそう好ましくは、配列番号:6の少なくとも8番目(それを含む)から17番目のアミノ酸を有する。抗体は、上記の抗AS−SPIK抗体のいずれかとすることができる。AS−SPIKポリペプチドまたはその断片は、上記のAS−SPIKポリペプチドまたはその断片とすることができる。一部の実施形態では、抗体は、抗AS−SPIKモノクローナル抗体、IMCA18、IM−CA22、IM−CA46またはIMCB−77(VLおよびVH配列は配列データに列記される)である。一部の実施形態では、AS−SPIKポリペプチドは、配列番号:2または配列番号:6のアミノ酸配列に対して少なくとも98%の相同性(または同一性)を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドである。一部の実施形態では、AS−SPIKポリペプチドは、配列番号:2のアミノ酸配列を有するポリペプチドである。
【0156】
IM−CA18、IM−CA22、IM−CA46またはIM−CB77などの抗AS−SPIK抗体の特異的結合は、ある特定の条件下でAS−SPIKまたはAS−SPIKペプチドとの免疫複合体を形成することができる。複合体は、例えばサンドイッチELISA試験を使用する、さらなる分析のために溶液から沈殿させることができる。キャリアとして第2の抗AS−SPIK抗体を固定化した96ウェルプレートを使用して、免疫複合体をプレートによって捕捉することができる。複合体中の抗体が西洋ワサビペルオキシダーゼ(HPR)などのレポーターを用いて標識される場合、形成されたAS−SPIK免疫複合体の量を次に決定することができる。
図10は、試験溶液中の抗AS−SPIK抗体/AS−SPIK複合体の量を決定するために使用したELISAの結果を提供する。AS−SPIK免疫複合体を、ウエスタンブロット解析のために第2の抗AS−SPIK抗体と連結したアガロースビーズにより捕捉することもでき、
図9はAS−SPIK複合体のウエスタンブロット解析の結果を示す。
【0157】
核酸
「核酸」および「ポリヌクレオチド」という用語は、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA、および核酸アナログを含有するDNA(またはRNA)を含む、RNAおよびDNAの両方を指すために本明細書において交換可能に使用され、これらのいずれも本発明のポリペプチドをコードする場合があり、またこれらの全ては本発明により包含される。ポリヌクレオチドは本質的に任意の三次元構造を有することができる。核酸は、二本鎖または一本鎖(すなわち、センス鎖もしくはアンチセンス鎖)とすることができる。ポリヌクレオチドの非限定的な例としては、遺伝子、遺伝子断片、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)およびその部分、転移RNA、リボソームRNA、siRNA、マイクロRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、ならびにプライマーだけでなく、核酸アナログも挙げられる。本発明の文脈において、核酸は、天然に存在するAS−SPIKポリペプチドまたはNS−SPIKポリペプチドまたはその生物学的に活性なバリアントの断片をコードすることができる。核酸の非限定的な例としては、配列番号:1またはその生物学的活性断片、および配列番号:3または配列番号:5またはその生物学的活性断片がそれぞれ挙げられる。断片は、少なくとも66ヌクレオチド、好ましくは少なくとも54ヌクレオチドの長さを有してもよく、より好ましくは、配列番号:3の28番目から105番目(それを含む)のヌクレオチドを有し、よりいっそう好ましくは、配列番号:3の49番目から105番目(それを含む)のヌクレオチドを有する。Lu et al.,Immunology 2011;134(4):398−408。
【0158】
「単離された」核酸は、天然に存在するゲノム中で通常そのDNA分子のすぐ脇に見出される核酸配列の少なくとも1つが除去されている、または存在しないならば、例えば、天然に存在するDNA分子またはその断片とすることができる。したがって、単離された核酸としては、他の配列から独立した別々の分子として存在するDNA分子(例えば、化学合成された核酸、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)もしくは制限エンドヌクレアーゼ処理により産生されたcDNAもしくはゲノムDNA断片)が挙げられるがそれに限定されない。単離された核酸はまた、ベクター、自律複製プラスミド、ウイルス、または原核生物もしくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれたDNA分子を指す。加えて、単離された核酸は、ハイブリッドまたは融合核酸の部分であるDNA分子などの操作された核酸を含むことができる。例えば、cDNAライブラリーまたはゲノムライブラリー、またはゲノムDNA制限消化物を含有するゲルスライス内で多く(例えば、数十、または数百〜数百万)の他の核酸の中に存在する核酸は単離された核酸ではない。
【0159】
単離された核酸分子は、本明細書に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、本明細書に記載のヌクレオチド配列を含有する単離された核酸を得るために使用することができる、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技法により産生することができる。PCRは、トータルゲノムDNAまたはトータル細胞RNAからの配列を含む、DNAだけでなくRNAから特定の配列を増幅するためにも使用することができる。一般的に、目的の領域の末端からまたはそれを越えた配列情報が、増幅される鋳型の反対鎖に対して配列が同一または類似のオリゴヌクレオチドプライマーを設計するために用いられる。部位特異的なヌクレオチド配列改変を鋳型核酸に導入することができる様々なPCR戦略もまた利用可能である。
【0160】
単離された核酸はまた、単一の核酸分子(例えば、ホスホロアミダイト技術を使用する3’→5’方向の自動化されたDNA合成を使用して)または一連のオリゴヌクレオチドのいずれかとして化学合成することができる。例えば、所望の配列を含有する長いオリゴヌクレオチド(例えば、>50〜100ヌクレオチド)の1つまたは複数のペアを合成することができ、各ペアは、オリゴヌクレオチドペアがアニールされた場合にデュプレックスが形成されるような相補性の短いセグメント(例えば、約15ヌクレオチド)を含有する。DNAポリメラーゼを使用してオリゴヌクレオチドが伸長されて、オリゴヌクレオチドペア当たり単一の二本鎖核酸分子が結果としてもたらされ、それを次にベクターにライゲートすることができる。本発明の単離された核酸はまた、例えば、DNAをコードするAS−SPIKまたはNS−SPIK(例えば、上記の式による)の天然に存在する部分の突然変異誘発によっても得ることができる。
【0161】
2つの核酸またはそれらがコードするポリペプチドは、互いにある特定の程度の相同性または同一性を有するとして記載されることがある。例えば、AS−SPIKポリペプチドまたはNS−SPIKポリペプチドおよびその生物学的に活性なバリアントは、ある特定の程度の相同性または同一性を呈するとして記載されることがある。アライメントは、短いAS−SPIKポリペプチドまたはNS−SPIKポリペプチド配列をProtein Information Research(PIR)サイト(http://pir.georgetown.edu)に入れた後に、NCBIウェブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast)上の「short nearly identical sequences」Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)アルゴリズムを用いた解析を行うことによりアセンブルされてもよい。
【0162】
配列相同性または同一性を決定するために、例えば、全長にわたる核酸またはタンパク質配列のアライメント(グローバルアライメント)の実行を可能とするBioEdit(バージョン4.8.5、North Carolina State University)、または上記のALIGN−2などのコンピュータープログラムを使用して、クエリ核酸またはアミノ酸配列を1つまたは複数のそれぞれ対象核酸またはアミノ酸配列にアライメントすることができる。
【0163】
BioEditは、同一性、類似性および差異を決定することができるように、クエリと1つまたは複数の対象配列との最良の一致を算出し、そしてそれらをアライメントする。1つまたは複数の残基のギャップをクエリ配列、対象配列、または両方に挿入して配列アライメントを最大化することができる。核酸配列の迅速なペアワイズアライメントのために、以下のデフォルトのパラメーターが使用される:ワードサイズ:2;ウインドウサイズ:4;スコアリング方法:パーセンテージ;トップダイアゴナルの数:4;およびギャップペナルティ:5。核酸配列の多重アライメントのために、以下のパラメーターが使用される:ギャップオープニングペナルティ:10.0;ギャップエクステンションペナルティ:5.0;およびウェイトトランジション:イエス。タンパク質配列の迅速なペアワイズアライメントのために、以下のパラメーターが使用される:ワードサイズ:1;ウインドウサイズ:5;スコアリング方法:パーセンテージ;トップダイアゴナルの数:5;ギャップペナルティ:3。タンパク質配列の多重アライメントのために、以下のパラメーターが使用される:ウェイトマトリックス:blosum;ギャップオープニングペナルティ:10.0;ギャップエクステンションペナルティ:0.05;親水性ギャップ:オン;親水性残基:Gly、Pro、Ser、Asn、Asp、Gln、Glu、Arg、およびLys;残基特異的ギャップペナルティ:オン。出力は、配列間の関係性を反映する配列アライメントである。
【0164】
クエリ配列と対象配列との相同性パーセントを決定するために、BioEditは、最良アライメント中の同一性の数を比較される残基の数(ギャップ位置は除外される)で割り、結果に100を掛ける。出力は、クエリ配列に対する対象配列の相同性パーセントである。相同性パーセント値は小数点以下第1位へと四捨五入される可能性があることが留意される。例えば、78.11、78.12、78.13、および78.14は78.1に四捨五入されるが、78.15、78.16、78.17、78.18、および78.19は78.2に四捨五入される。
【0165】
本明細書に記載の核酸およびポリペプチドは「外因性」と称されることがある。「外因性」という用語は、核酸またはポリペプチドが組換え核酸構築物の部分である、もしくはそれによりコードされること、またはその天然の環境にないことを指し示す。例えば、外因性核酸は、別の種に導入された1つの種からの配列、すなわち、異種核酸である可能性がある。典型的には、そのような外因性核酸は、組換え核酸構築物を介して他の種へと導入される。外因性核酸はまた、生物にとって天然でありかつその生物の細胞に再導入された配列である可能性もある。天然配列を含む外因性核酸は、多くの場合、外因性核酸に連結された非天然配列、例えば、組換え核酸構築物中の天然配列の脇にある非天然の調節配列の存在により天然に存在する配列から区別される可能性がある。加えて、安定的に形質転換された外因性核酸は、典型的には、天然配列が見出される位置以外の位置において組み込まれる。
【0166】
組換え構築物もまた本明細書において提供され、AS−SPIKを発現させるためにそれを使用して細胞を形質転換することができる。組換え核酸構築物は、特定の細胞中でAS−SPIKまたはNS−SPIKを発現するために好適な調節領域に作動可能に連結されたAS−SPIKまたはNS−SPIK配列をコードする核酸を含む。多数の核酸が特定のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードすることができることが理解される。遺伝コードの縮重は当該技術分野において周知である。多くのアミノ酸について、アミノ酸のコドンとして機能を果たす1つより多くのヌクレオチドトリプレットがある。例えば、AS−SPIKまたはNS−SPIKのコーディング配列におけるコドンは、特定の生物のための適切なコドンバイアス表を使用して、その生物において最適な発現が得られるように改変することができる。
【0167】
本明細書に記載の核酸などの核酸を含有するベクターもまた提供される。「ベクター」は、挿入されたセグメントの複製をもたらすように別のDNAセグメントが挿入される場合があるプラスミド、ファージ、またはコスミドなどのレプリコンである。一般的に、ベクターは、適切な制御エレメントと関連付けられた場合に複製する能力を有する。好適なベクター骨格としては、例えば、プラスミド、ウイルス、人工染色体、BAC、YAC、またはPACなどの当該技術分野においてルーチンに使用されるものが挙げられる。「ベクター」という用語は、クローニングおよび発現ベクターだけでなく、ウイルスベクターおよび組込みベクターも含む。「発現ベクター」は、調節領域を含むベクターである。本明細書に記載の核酸配列を発現するために多様な宿主/発現ベクターの組合せを使用してもよい。好適な発現ベクターとしては、プラスミド、ならびに、例えば、バクテリオファージ、バキュロウイルス、およびレトロウイルスに由来するウイルスベクターが挙げられるがそれに限定されない。
【0168】
本明細書において提供されるベクターはまた、例えば、複製起点、スキャフォールド取付け領域(scaffold attachment region;SAR)、および/またはマーカーも含むことができる。マーカー遺伝子は、宿主細胞に選択可能な表現型を付与することができる。例えば、マーカーは、殺傷剤抵抗性、例えば、抗生物質(例えば、カナマイシン、G418、ブレオマイシン、またはハイグロマイシン)への抵抗性を付与することができる。上述したように、発現ベクターは、発現されるポリペプチドのマニピュレーションまたは検出(例えば、精製または局在性)を促進するために設計されたタグ配列を含むことができる。緑色蛍光タンパク質(GFP)、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、ポリヒスチジン、c−myc、ヘマグルチニン、またはFlag(商標)タグ(Kodak、New Haven,CT)配列などのタグ配列は、典型的には、コードされるポリペプチドとの融合物として発現される。そのようなタグは、カルボキシル末端またはアミノ末端のいずれかを含む、ポリペプチド内の任意の位置に挿入することができる。
【0169】
追加の発現ベクターとしてはまた、例えば、染色体、非染色体および合成DNA配列のセグメントを挙げることができる。好適なベクターとしては、SV40および公知の細菌プラスミドの誘導体、例えば、E.coliプラスミドcol E1、pCR1、pBR322、pMal−C2、pET、pGEX、pMB9およびその誘導体、RP4などのプラスミド;ファージDNA、例えば、ファージ1の多数の誘導体、例えば、NM989、および他のファージDNA、例えば、M13および線維状一本鎖ファージDNA;酵母プラスミド、例えば、2μプラスミドまたはその誘導体、真核細胞において有用なベクター、例えば、昆虫または哺乳動物細胞において有用なベクター;プラスミドとファージDNAとの組合せに由来するベクター、例えば、ファージDNAまたは他の発現制御配列を用いるように改変されたプラスミドなどが挙げられる。
【0170】
ベクターはまた、調節領域も含むことができる。「調節領域」という用語は、転写または翻訳の開始および速度、ならびに転写または翻訳産物の安定性および/またはモビリティに影響を及ぼすヌクレオチド配列を指す。調節領域としては、プロモーター配列、エンハンサー配列、応答エレメント、タンパク質認識部位、誘導性エレメント、タンパク質結合配列、5’および3’非翻訳領域(UTR)、転写開始部位、終結配列、ポリアデニル化配列、核局在シグナル、ならびにイントロンが挙げられるがそれに限定されない。
【0171】
本明細書において使用される場合、「作動可能に連結された」という用語は、核酸中の調節領域および転写される配列の位置付けであって、そのような配列の転写または翻訳に影響を及ぼすようなものを指す。例えば、コーディング配列をプロモーターの制御下とするために、ポリペプチドの翻訳リーディングフレームの翻訳開始部位は、典型的には、プロモーターの1〜約50ヌクレオチド下流に位置付けられる。プロモーターは、しかしながら、翻訳開始部位の約5,000ヌクレオチドほど上流または転写開始部位の約2,000ヌクレオチドほど上流に位置付けることができる。プロモーターは、典型的には、少なくともコア(基底)プロモーターを含む。プロモーターはまた、エンハンサー配列、上流エレメントまたは上流活性化領域(UAR)などの少なくとも1つの制御エレメントも含んでもよい。含まれるプロモーターの選択はいくつかの要因に依存し、該要因としては、効率、選択可能性、誘導可能性、所望の発現レベル、および細胞または組織優先的発現が挙げられるがそれに限定されない。プロモーターおよび他の調節領域をコーディング配列に対して適切に選択し、かつ適切に位置付けることによりコーディング配列の発現をモジュレ―トすることは当業者にとってルーチンである。
【0172】
AS−SPIKまたはNS−SPIK核酸配列を含むベクターは、細胞、すなわち、原核または真核細胞、例えば、哺乳動物細胞による取込みを促進するような方法で配合することができる。有用なベクターシステムおよび配合物は上記されている。一部の実施形態では、ベクターは、特定の細胞種に組成物を送達することができる。しかしながら、本発明はそのように限定されず、また例えば、リン酸カルシウム、DEAEデキストラン、リポソーム、リポプレックス、界面活性剤、およびパーフルオロ化学液を使用する、化学的トランスフェクションなどのDNA送達の他の方法もまた想定され、エレクトロポレーション、マイクロ注入、弾道粒子、および「遺伝子銃」システムなどの物理的送達方法もまた想定される。一部の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドはまた、陽イオン性リポソーム、他の脂質含有複合体、および宿主細胞へのポリヌクレオチドの送達を媒介することができる他の高分子複合体などのマイクロ送達ビヒクルと共に使用されてもよい。別の送達方法は、発現された産物を細胞内に産生することができる一本鎖DNA産生ベクターを使用する。
【0173】
使用方法
本明細書に開示される組成物は、AS−SPIKの発現により特徴付けられる障害の診断および/または処置のために一般的に、かつ様々に有用である。そのような障害としては、がん、ウイルス感染症、および炎症性障害が挙げられるがそれに限定されない。1つの顕著な例は肝臓がんである。他の非限定的な例としては、「がん」という用語の定義との関連で本明細書に記載したがんが挙げられる。したがって、本発明の態様は、前記がん(例えば、肝臓がん)を有する対象、または前記がんを発生するリスクがある対象においてがんを診断および/または処置する方法に関与する。「対象」、「患者」、および「個体」という用語は本明細書において交換可能に使用される。
【0174】
一部の実施形態では、方法は、対象からの生物学的試験試料をAS−SPIK抗体または抗原結合断片と接触させてAS−SPIK−抗体複合体を生成すること;生物学的試験試料中のAS−SPIK−抗体複合体の濃度を検出すること;およびAS−SPIK−抗体複合体の濃度を参照値と比較して、対象が障害を有するまたはその障害を発生するリスクがあるかどうかを決定することに関与する。ある特定の実施形態では、方法は、生物学的試験試料をSPIKに結合する第1の抗体または抗原結合断片と接触させてSPIK−抗体複合体を生成すること;SPIK−抗体複合体をAS−SPIK抗体または抗原結合断片と接触させて生物学的試験試料中にAS−SPIK−抗体複合体を生成すること;およびAS−SPIK−抗体複合体の濃度を参照値と比較して、対象が障害を有するまたはその障害を発生するリスクがあるかどうかを決定することを含む。そのような方法において利用することができる抗体のいくつかの非限定的な例は本明細書に記載されている。
【0175】
肝臓がん
AS−SPIKの発現により特徴付けられる障害の1つの顕著な例は肝臓がんである。肝臓がんは、肝臓への損傷または肝臓機能不全を結果としてもたらす広範な状態を包含する。肝臓がんは、例えば、感染性因子、疾患、外傷、もしくは遺伝学的条件、または感染性因子、疾患、外傷、および遺伝学的条件の組合せの結果としてもたらされる可能性がある。
【0176】
肝臓がんは、原発性肝臓がん、例えば、肝細胞がん、胆管がん、血管肉腫、および肝芽腫などの異常な細胞増殖に関与する疾患を含む可能性がある。そのようながんは、疾患進行のあらゆるステージにおけるがん、例えば、非常に早期ステージ(Barcelona Clinic Liver Cancer system(BCLC)ステージ0で、かつ腫瘍サイズ<2cm)、早期ステージ(BCLCステージA、腫瘍サイズ:2cm〜5cm)、中期ステージ(BCLCステージB、中間の腫瘍サイズ>5cm)、後期ステージ(BCLCステージCおよびD、進行したステージ)、または転移ステージ(Pons et al.,HPB 2005;7(1):35−41のHCC、ならびにICC早期ステージ(ステージI、IIおよびIIIa、腫瘍サイズ<2cm)、中期ステージ(ステージIIIbおよびIIIc、腫瘍サイズ≧2cm)、および後期ステージ(ステージIV)のICC(Farges et al.,Cancer 2011;117(10):2170−2177)を含む可能性がある。
【0177】
肝臓がんはまた、B型肝炎、C型肝炎、およびD型肝炎などのウイルスにより引き起こされる感染性疾患により誘導される可能性がある。特定の肝炎ウイルスにかかわらず、そのような感染症は急性または慢性のいずれかである可能性がある。
【0178】
肝臓がんはまた、肝臓損傷、例えば、肝硬変からも生じる可能性がある。肝臓の後期ステージ瘢痕化または線維症である硬変は、多くの形態の肝臓疾患および状態により引き起こされる可能性がある。硬変は、遺伝学的状態、例えば、ヘモクロマトーシス、嚢胞性線維症、ウィルソン病、および自己免疫障害の結果として起こる可能性がある。硬変はまた、肝炎ウイルス感染症およびアルコール摂取からも生じる可能性がある。
【0179】
肝臓がんはまた、アルコール性肝臓疾患、脂肪肝などの肝臓における異常な脂肪含有量に関する障害、非アルコール性脂肪肝疾患、非アルコール性脂肪症、および肝臓線維症が挙げられるがそれに限定されない他の疾患により引き起こされる可能性がある。
【0180】
生物学的試料
「生物学的試料」、「試験試料」または「試料」は、患者から得られるまたは患者に由来する試料を指す。試料は例えば体液試料とすることができる。例示的な体液試料としては、血液、血清、血漿、尿、唾液、精液、糞便、痰、脳脊髄液、涙液、粘液、羊水、またはその任意の組合せが挙げられる。一部の実施形態では、生物学的試料は組織試料とすることができる。例示的な組織試料としては、肝臓生検検体などの生検検体、または患者の細胞から調製された初代細胞培養検体、または初代培養物からの上清が挙げられる。
【0181】
イムノアッセイ
本発明の態様は、試験試料中のAS−SPIKの存在または非存在を検出するために使用することができる診断アッセイ方法、例えば、診断イムノアッセイを含む。AS−SPIKの検出のために使用されるイムノアッセイフォーマットは、様々な方法において構成することができる。イムノアッセイは、均質および不均質アッセイ、競合および非競合アッセイ、直接および間接アッセイ、ならびに「サンドイッチ」アッセイを含むことができる。有用なフォーマットとしては、酵素イムノアッセイ、例えば、酵素連結免疫吸着アッセイ(ELISA)、化学発光免疫アッセイ(CLIA)、電気化学発光アッセイ、ラジオイムノアッセイ、免疫蛍光、蛍光異方性、免疫沈降、平衡透析、免疫拡散、イムノブロッティング、凝集、発光近接アッセイ、および比濁分析が挙げられるがそれに限定されない。
【0182】
フォーマットにかかわらず、生物学的試料は、本発明の抗AS−SPIK抗体と接触させられる。一部の実施形態では、生物学的試料は、固体支持体に固定化され得る。一部の実施形態では、生物学的試料は、固体支持体に固定化された本発明の抗SPIK抗体と接触させられる。固体支持体は、例えば、プラスチック表面、ガラス表面、紙もしくは繊維表面、または粒子の表面とすることができる。より特異的には、支持体は、マイクロプレート、ビーズ、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜、ニトロセルロース膜、ナイロン膜、多孔性膜、非多孔性膜を含むことができる。基材の組成は変更することができる。例えば、基材または支持体は、ガラス、セルロース系の材料、熱可塑性ポリマー(ポリエチレン、ポリプロピレン、もしくはポリエステルなど)、粒子状物質(例えば、ガラスもしくは様々な熱可塑性ポリマー)から構成される焼結構造物、またはニトロセルロース、ナイロン、もしくはポリスルホンから構成されるキャストされた膜フィルムを含んでもよい。全般的な実施形態では、基材は、抗体またはポリペプチドを固定化することができる任意の表面または支持体であってもよく、これには、固体支持体(例えば、ガラス(ガラススライドもしくはコーティングされたプレートなど)、シリカ、プラスチックもしくは誘導化プラスチック、常磁性もしくは非磁性金属)、半固体支持体(例えば、ポリマー材料、ゲル、アガロース、もしくは他のマトリックス)、および/または多孔性支持体(例えば、フィルター、ナイロンもしくはニトロセルロース膜もしくは他の膜)のうちの1つまたは複数が含まれる。一部の実施形態では、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリグリシジルメタクリレート、アミノ化またはカルボキシル化ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリアミド、およびポリ塩化ビニルを含む合成ポリマーを基材として使用することができる。
【0183】
一部の実施形態では、イムノアッセイフォーマットは2抗体「サンドイッチ」アッセイとすることができる。生物学的試料は、固体支持体、例えば、マイクロタイタープレートに固定化された本発明の抗SPIK抗体と接触させられる。試料および第1の抗体は、特異的結合およびSPIK−抗体複合体の形成に有利に働く条件下でインキュベートされる。接触ステップ後に、生物学的試料の未結合の構成要素は除去される。次に、複合体は、第2の抗SPIK抗体と接触させられる。第2の抗体は、第1の抗体が結合したエピトープとは異なるSPIKエピトープに結合する。したがって、第1および第2の抗体は、SPIKへの結合について互いに競合的に阻害しない。一部の実施形態では、第1の抗体は、AS−SPIKおよびNS−SPIKの両方に存在するエピトープ、すなわち、抗原決定基を認識することができる。我々はそのような抗体を「汎SPIK」(pan−SPIK)抗体と称することがある。代替的に、第1の抗体は、AS−SPIKにのみ存在するエピトープを認識することができる。一部の実施形態では、第2の抗体は、AS−SPIKおよびNS−SPIKの両方に存在するエピトープ、すなわち、抗原決定基を認識することができる。代替的に、第2の抗体は、AS−SPIKまたはNS−SPIKのみに存在するエピトープを認識することができる。したがって、サンドイッチアッセイは、第1の抗体が汎SPIK抗体であり、かつ第2の抗体がAS−SPIKに特異的または優先的に結合しかつNS−SPIKに特異的に結合しないように構成することができる。代替的に、サンドイッチアッセイは、第1および第2の抗体の両方がAS−SPIKに特異的または優先的に結合しかつNS−SPIKに特異的に結合しないように構成することができる。
【0184】
抗体結合は、様々な方法で測定することができる。例えば検出可能な標識により生成されたシグナルは、複合体形成と関連付けられるシグナル、例えば、蛍光シグナル、発光シグナル、またはリン光シグナル、または放射性シグナルの測定を可能とする光学スキャナーまたは他の画像取得デバイスおよびソフトウェアを使用して解析および適用可能な場合には定量化することができる。検出可能なシグナルを測定するための例示的な計測装置としては、マイクロプレートリーダー、蛍光高度計、分光光度計、およびガンマカウンターを挙げることができるがそれに限定されない。
【0185】
参照試料
生物学的試料中のAS−SPIKのレベルは、参照試料のそれと比較することができる。標準的な参照レベルは、典型的には、個体の集団に由来する平均AS−SPIKレベルを表す。参照集団は、類似の年齢、身体サイズ、民族的背景または対象とする個体としての一般的健康状態の個体を含んでもよい。したがって、患者の試料中のAS−SPIKレベルは、1)肝臓がんを有することが既知であり、かつAS−SPIKを発現し、またその体液がAS−SPIKを含有する個体;2)肝臓がんを有さずかつその体液が低いレベルのAS−SPIKを含有する個体に由来する値と比較することができる。
【0186】
一般に、AS−SPIKの上昇したレベルは、対照試料において見出されるAS−SPIKのレベルまたは肝臓がんを有しない通常の健常個体の集団からの試料中に見出されるAS−SPIKの平均レベル(参照値)のいずれかより高い、好ましくは少なくとも1、2、3、4または5%高い、より好ましくは少なくとも5%高いAS−SPIKの任意のレベルである可能性がある。AS−SPIKの低減したレベルは、対照試料中に見出されるAS−SPIKのレベルまたは肝臓がんを有する個体の集団からの試料中に見出されるAS−SPIKの平均レベルのいずれかより低いAS−SPIKの任意のレベルである可能性がある。通常の健常個体の集団からの試料中に見出されるAS−SPIKの平均レベルを決定するために任意の集団サイズを使用することができる。例えば、通常の健常個体の集団からの試料中のAS−SPIKの平均レベルを決定するために2〜250、例えば、2、3、4、5、10、15、20、25、30、40、50、100、150、200、250またはより多くの個体の集団を使用することができ、より大きい試料集団からの測定では正確性はより高くなる。
【0187】
一部の実施形態では、試料中のAS−SPIKの特定のレベルが対照試料またはより大きい集団と比べて上昇しているか否かを決定するために参照チャートを使用することができる。例えば、参照チャートは、対象とする個体として同じ年齢、民族的背景または全般的健康状態の健常個体において見出されるAS−SPIKの正常範囲を含有することができる。この参照チャートを使用して、試料中で測定されたAS−SPIKの任意のレベルは、対照試料と比べて、またはより大きい集団に由来する平均値と比べて低い、正常、または上昇しているとして分類することができる。「上昇したレベル」という用語は、参照レベルより高い、好ましくは少なくとも2%高い、より好ましくは少なくとも5%高いレベルとして定義される。
【0188】
代替的に、または加えて、生物学的試料中のAS−SPIKのレベルは、1つまたは複数の追加の生物学的マーカー、例えば、その発現がAS−SPIK発現から独立している別のマーカーのレベルに対して「正規化」することができる。すなわち、追加のマーカーのレベルは、同時または別々の機会のいずれかにおいて、AS−SPIKのレベルと並行して評価することができる。追加のマーカーは、試料の調製、取扱いおよび貯蔵だけでなく、日毎のアッセイのばらつきに対しても内部対照として機能を果たすことができる。AS−SPIKおよび追加のマーカーのレベルの値は比として表されてもよく、比は、参照試料または集団について得られた類似の比と比較されてもよい。有用な第2のマーカーはアルファ−フェトプロテインとすることができる。
【0189】
対照試料
一部の実施形態では、方法は、標準的な参照セットの使用を含むことができる。参照セットは、精製されたSPIKポリペプチドまたはその断片の1つまたは複数の試料を含むことができる。複数の試料が使用される場合、これらは異なる濃度とすることができる。一実施形態では、参照セットは、50ng/ml、30ng/ml、8ng/ml、3ng/ml、1ng/mlおよび0ng/mlの濃度のAS−SPIKである組換えAS−SPIKの6つの試料を含むことができる。組換えAS−SPIKは、IM−CA22などの抗AS−SPIK抗体または抗タグ抗体のいずれかを使用してアフィニティークロマトグラフィー(HPLC)を用いて精製することができる。血液または他の体液中の参照値は変動し得る。しかしながら、当業者は、各々の集団の異なる体液中のAS−SPIKの平均レベルを決定し、かつ決定すべき肝臓がんを有する患者におけるAS−SPIKのレベルが参照値より充分に高い一方、検出すべき肝臓がんを患っていない患者または健常個体のレベルが各々の参照値より充分に低いことを確実にする各々の参照値を決定することができる。好ましい実施形態では、参照値は、通常の健常個体の集団からの試料中に見出されるAS−SPIKの平均レベルより約5%、より好ましくは約7%、よりいっそう好ましくは約10%高い。生物学的試料中および対照試料中のAS−SPIKのレベルは同じ方法を介して決定され、それにより比較可能性が与えられることが留意される。例えばAS−SPIKレベルの絶対値は、上記のような組換えAS−SPIKを使用してキャリブレーション曲線を介して決定することができる。
【0190】
一部の実施形態では、陽性対照は、真核細胞または細胞株により産生されたAS−SPIKの試料を含むことができる。例えば、有用な対照は、安定な細胞株S2−3からの100ng/mlのAS−SPIKを含有する培地とすることができる。これは、AS−SPIKのDNA配列を、AS−SPIKを過剰発現する人工的なプロモーターの制御下でHCC細胞の染色体の中へと挿入することにより本発明者らにより作製された。
【0191】
本明細書に開示される方法は、肝臓がんを有することが疑われるまたはそのリスクがある患者における肝臓がんの検出において有用である。方法はまた、患者が肝細胞がんの寛解を経験するリスクがあるかどうかを決定するために、肝臓がん、例えば、肝細胞がんについて処置された患者からの試料の分析において使用することができる。方法はまた、処置、例えば、小分子薬物もしくは治療的抗体などの治療剤、化学療法、放射線療法または手術を用いる処置の過程をモニターして、処置の有効性を決定し、そして必要な場合には臨床医が処置を変更することを管理することを可能とするためにも使用することができる。方法はまた、患者から得られた生物学的試料、例えば、血液または血清試料中のAS−SPIKのレベルの調整、例えば増加と関連付けられる任意の障害を患っているまたはそのリスクがある患者の検出、モニタリング、または分析においても使用されてもよい。
【0192】
本明細書に開示される方法は、他の標準的な診断方法、例えば、肝臓酵素もしくはアルファ−フェトプロテインの血清学的分析、超音波(超音波検査法)、コンピュータ断層撮影(CTスキャン)、磁気共鳴映像法(MRI)、血管造影、腹腔鏡検査法、または生検と組み合わせて使用することができる。
【0193】
製品
本明細書に記載の組成物は、例えば、生物学的試料中のAS−SPIKの検出、特定、および定量化において使用するために、ラベルを付けた好適な容器中に包装することができる。「キット」とも称される製品は、本発明の抗体、培地、陽性対照として使用するための抗原の精製された試料、またはその任意の組合せを含んでもよい。キットに含まれる容器は、AS−SPIKに特異的または優先的に結合するがNS−SPIKに対してはそうではない本発明の抗体を含む組成物を含むことができる。キットはまた、AS−SPIKおよびNS−SPIKの両方に結合する抗体も含むことができる。試験試料および抗体を希釈または再構成するための好適な緩衝液もまた提供されてもよい。成分の一部は乾燥形態で提供されてもよく、また再構成を必要としてもよい。抗SPIK抗体は、アッセイデバイス、例えば、マイクロプレートにあらかじめ結合することができる。したがって、一実施形態では、AS−SPIKの検出、特定および定量化のためのキットは、抗AS−SPIK抗体および汎SPIK抗体を含む。キットは、検出可能な標識を任意選択的に備えてもよい。
【0194】
したがって、本発明の少なくとも1つの組成物、例えば抗AS−SPIK抗体を含む、包装された製品(例えば、本明細書に記載の組成物の1つまたは複数を収容し、かつ貯蔵、輸送、または濃縮もしくは使用準備済みの濃度での販売のために包装された無菌の容器)およびキットもまた本発明の範囲内である。製品は、1つまたは複数の本発明の組成物を収容する容器(例えば、バイアル、ジャー、ボトル、またはバッグなど)を含むことができる。加えて、製品は、例えば、包装材料、使用説明書、シリンジ、送達デバイス、緩衝液、または診断もしくは処置が必要とされる状態を処置もしくはモニターするための他の対照試薬をさらに含んでもよい。
【0195】
特定の種類のアッセイ用の試薬もまた本発明のキット中に提供することができる。したがって、キットは、ビーズの集団(例えば、凝集アッセイもしくはラテラルフローアッセイのために好適なもの)、またはプレート(例えば、ELISAアッセイのために好適なプレート)を含むことができる。他の実施形態では、キットは、ラテラルフローイムノアッセイデバイス、解析ローター(analytical rotor)、または電気化学的、光学的、もしくは光電子的センサーなどのデバイスを含む。ビーズの集団、プレート、およびデバイスは、イムノアッセイを行うために有用である。例えば、それらは、第1の剤−被解析物−第2の剤の複合体の形成を検出するために有用である可能性がある。
【0196】
加えて、キットは、様々な希釈剤および緩衝液、標識されたコンジュゲートまたは特異的に結合した抗原もしくは抗体の検出のための他の剤、ならびに他のシグナル生成試薬(酵素基質など)、補因子および色原体を含むことができる。キットは、様々な濃度の1つまたは複数の参照試料、例えば、精製された組換えAS−SPIKを含むことができる。キットはまた、陽性対照、例えば、AS−SPIKを過剰発現する細胞株からの細胞上清も含むことができる。キットの他の成分は、コーティング試薬、試験される抗原または被解析物に特異的なポリクローナルまたはモノクローナル捕捉抗体、または抗体の2つもしくはより多くのカクテル、標準物質としてのこれらの抗原の精製または半精製された抽出物、モノクローナル抗体検出抗体、インジケーター分子が結合された抗マウス、抗イヌ、抗ニワトリ、または抗ヒト抗体、比色法による比較のためのインジケーターチャート、使い捨て用手袋、夾雑物除去の指示、アプリケータースティックまたは容器、試料準備用カップなどを含むことができる。一実施形態では、キットは、ペプチド−抗体複合体の形成を可能とする反応媒体を構成するために適切な緩衝液または他の試薬を含む。
【0197】
そのようなキットは、対象が肝臓がんを有するまたはそのリスクがあるかどうかを臨床医が決定するための簡便で効率的な方法を提供する。したがって、ある特定の実施形態では、キットは、使用説明書をさらに含む。製品はまた、説明文(例えば、印刷されたラベルまたは挿入物または製品の使用を記載する他の媒体(例えば、オーディオテープもしくはビデオテープ))を含んでもよい。説明文は、容器に付属(例えば、容器に貼付)されていてもよく、アッセイを行うべき方式、そのための指示、および他の使用を記載することができる。
【0198】
以下の実施例は、実例的な目的のためにのみ与えられ、いかなる意味でも本発明の範囲を限定することは意図されない。いくつかの実施形態が本開示において提供されるが、当然のことながら、開示される組成物および方法は本開示の趣旨または範囲から離れることなく多くの他の特定の形態で具現化されてもよい。本実施例は、実例的なものとして考えられるべきであり、限定的なものとして考えられるべきではなく、本発明は本明細書において与えられる詳細に限定されることは意図されない。変更、置換、および改変の様々な例が当業者により確認可能であり、それは本明細書に開示される趣旨および範囲から逸脱することなく為すことが可能である。
【実施例】
【0199】
実施例1:AS−SPIKとNS−SPIKとの構造的差異
HPLCを使用してAS−SPIKをS2−3細胞の培地から精製し、NS−SPIKを膵臓細胞の培地から精製した。1μgの各タンパク質を5〜15%の勾配のSDS−PAGEゲル(Invitrogen、Carlsbad,CA)に流した。PVDF膜に転写した後、タンパク質をクマシーブルー染色により可視化した。
図1は、膵臓細胞により産生されたNS−SPIKのサイズは約6.5KDであることを示し、これは刊行された配列データと合致しており、NS−SPIK内の最初の23アミノ酸が分泌の間に除去されることを示唆する(
図2、下線を引いた配列)。Horii et al.,Biochemical and biophysical research communications 1987;149(2):635−641;Bartelt et al.,Arch Biochem Biophys.1977;179(1):189−199。対照的に、AS−SPIKのサイズはNS−SPIKより大きく、約10〜15KDである。
【0200】
AS−SPIKの配列を決定するために、AS−SPIKのバンドを膜から切断した。Alphalyse Inc.(Palo Alto,CA)がエドマンN末端解析を行った。S2−3細胞分泌SPIKのN末端におけるエドマン分解により予測される配列に下線を引いている。エドマン分解のデータは、AS−SPIKのN末端がSPIKの残基2〜6の配列(開始コドンの最初のメチオニンを除く)と一致することを示唆し(
図2を参照のこと)、(M)K(リジン)で開始するSPIKのN末端における23アミノ酸が分泌後のAS−SPIKにおいて保持されることを示唆した。AS−SPIKおよびNS−SPIKの構造を
図3において比較している。
【0201】
実施例2:AS−SPIKとNS−SPIKとのコンホメーションの差異
NS−SPIKおよびAS−SPIKは共通の配列(残基24〜79)を共有する(
図3を参照のこと)。AS−SPIKにおける追加のアミノ酸がタンパク質コンホメーションに効果を有するかどうかを解析した。抗体IM−BA1に対するAS−SPIKおよびNS−SPIKの結合活性を測定した。IM−BA1は本発明者らが開発したモノクローナル抗体であり、AS−SPIKおよびNS−SPIKの両方に見出されるC1−C2領域に結合する(
図3および
図4)。96ウェルプレートを、それぞれS2−3および膵臓細胞培地から部分的に精製されたAS−SPIKおよびNS−SPIKでコーティングした後、モノクローナル抗体IM−BA1と共にインキュベートした。37℃で1時間のインキュベーション後、洗浄緩衝液(PBS、リン酸緩衝生理食塩水、pH7.4、0.5%のTween 20を含む)を用いてプレートを3回洗浄した後、ウマペルオキシダーゼ(HRP)を用いて標識された抗マウス抗体と共にインキュベートした。TMB(Thermo Scientific、Rockford,lL)とのインキュベーション後に顕色し、それをOD
450nm(光学密度)においてプレートリーダーにより測定した。
図5に示すように、IM−BA1はNS−SPIKに強く結合したが、AS−SPIKには弱く結合したかまたは全く結合しなかった。AS−SPIKに結合するIM−BA1の能力の強度はバックグラウンドレベルに類似しており(
図5、バックグラウンド)、IM−BA1とAS−SPIKとの非常に弱い相互作用を示唆した。これらのデータは、AS−SPIKのN末端の追加的長さは、タンパク質のコンホメーションの変化を引き起こし、またはIM−BA1の標的エピトープへのアクセスを遮断することを示唆した。
【0202】
実施例3:AS−SPIKのみを認識しNS−SPIKを認識しない抗体を生成するための組換えタンパク質の設計
AS−SPIKは、そのN末端において23個の追加のアミノ酸を有するという点でNS−SPIKとは異なる(
図3)。したがって、抗AS−SPIK抗体はこの領域を特異的または優先的に認識するはずである。そのような抗体を生成するために、この領域の異なるサブセットを含有する一連の組換えタンパク質を設計し、それを使用してマウスを免疫化した。組換えタンパク質は、1)GSTおよびHisなどのタグ、2)トロンビン切断部位(アミノ酸VPRGS)を含むアミノ酸配列VPRGSPGIHRAだけでなく、配列番号:6のサブセットである22アミノ酸までの異なる長さの配列などのリンカー、ならびに3)AS−SPIKおよびNS−SPIKの共通の領域(配列番号:4)からなる(
図6を参照のこと)。我々の研究は、AS−SPIKの追加の23AA断片におけるアミノ酸の一部は、AS−SPIKのみを認識できる抗体の生成において不可欠であることを示唆する。
【0203】
実施例4:AS−SPIKに特異的なモノクローナル抗体の産生
周知かつ標準的な手順によりモノクローナル抗体を生成した。簡潔に述べれば、以前に記載された組換えタンパク質を用いてマウスを免疫化した。血液を3または4回のインバースメント(imbursements)後にELISAにより試験した。S2−3細胞からの部分的に精製されたAS−SPIKおよび膵臓細胞からのNS−SPIKを96ウェルプレートを使用して捕捉した。血液をプレートと反応させ、HRPを用いて標識された抗マウス抗体とのプレートのインキュベーションにより顕色させ、基質TMBとの反応後に光学密度を測定した。AS−SPIKのみに結合することができる(かつNS−SPIKに結合しない)抗体を産生したマウスを屠殺した。脾臓を次に骨髄腫細胞と融合させた。融合後、クローンをスクリーニングし、AS−SPIKに結合する抗体を産生した陽性クローンを以前のようにELISAにより評価および選択した。最後に、AS−SPIKに対する高い親和性を有する最良のハイブリドーマを選んだ。この技術を使用して、22個より多くのモノクローナル抗体を選択した。
図7は、IM−C18、IM−CA22、IM−CA29、IM−CA34、IMCA46およびIM−CA71と命名した6つのクローンを示し、これらは、AS−SPIKへの高い結合活性を示したが、これらのNS−SPIKへの結合活性は陰性対照としてのバックグラウンドレベルに過ぎない(
図7、陰性対照)。対照的に、AS−SPIKおよびNS−SPIKの共通の区画に結合できる陽性対照、モノクローナル抗SPIK抗体MA86は、両方のSPIKに対して高い結合活性を示した(
図7、陽性対照)。
【0204】
AS−SPIKのみを認識するIM−CA系列モノクローナル抗体の能力をイムノブロッティングによりさらに実証した。ここおよび後に提示するデータはIM−CA22からのものである。簡潔に述べれば、AS−SPIKを分泌するS2−3細胞、およびNS−SPIKを分泌する膵臓細胞からの15μl/ウェルの培養培地を5〜15%の勾配のSDS−PAGEゲル(Invitrogen、Carlsbad,CA)に流した。タンパク質を次にPVDF膜に転写した。複製膜を次にモノクローナル抗SPIK抗体IM−CA22またはMA86のいずれかとインキュベートした。37℃で1時間のインキュベーション後、抗マウスHRP二次抗体を用いて膜を染色した。ECL Advance kitを使用して画像を可視化した。
図8は、IM−CA22はS2−3細胞により分泌されたAS−SPIKに結合したが、膵臓細胞により分泌されたNS−SPIKには結合しなかったことを示す(
図8、IM−CA22)。対照的に、AS−SPIKおよびNA−SPIKの共通の領域を認識する抗体MA86はAS−SPIKおよびNS−SPIKの両方に結合した(
図8、M86)。これらのデータは、モノクローナル抗体IM−CA22はAS−SPIKに特異的に結合するがNS−SPIKに対してはそうではないことを示した。
【0205】
実施例5:抗AS−SPIK抗体の配列およびそれらの相同性
IM−CA系列の抗体(配列番号7〜14)などのAS−SPIKに特異的なモノクローナル抗体だけでなく、IM−BA1、IM−S14などのAS−SPIKおよびNS−SPIKの共通の領域に結合する他の抗体の軽鎖(VL)および重鎖(VH)の可変領域の配列も決定した。さらに、CB77などの、AS−SPIKに対してはるかに弱い結合親和性を有するがNS−SPIKに対してはそうではない抗体の配列もまた決定した。上記の抗体の全てのCDRのシークエンシングも行った。全ての記載した抗体の配列を、North Carolina State Universityにより開発されたソフトウェアプログラム「BioEdit」を使用して比較した。配列が少なくとも50%相同的である場合、それらは顕著な類似性を有すると考えられる。IM−CA46、IM−CA29、IM−CA34およびIM−CA71は同一の配列を有するので(多くは同じ親クローンからのものであり得る)、さらなる研究のためにIM−CA46を使用することのみを選択した。
【0206】
可変領域のCDRは抗体の特異性をほぼ決定し、したがって、研究用抗体のCDRの相同性を研究した。結果は、AS−SPIKのみに結合する抗体は、顕著な類似性を有するVHまたはVLのいずれかにおける少なくとも1つのCDRを有することを示す。我々のデータはほぼCA22により生成されたので、比較用の参照としてCA22を使用した。結果は、CA18はCA22とCDRL2の57%の相同性および69%のVLフレーム相同性を有し、CA46はCA22とそれぞれ60%および50%の相同性を有する2つのCDR(CDRH1およびCDRH2)ならびに68%のVHフレーム相同性を有することを示す。これもまたAS−SPIKに結合するがCA22よりはるかに弱いCB77は、CA22と50%および44%の相同性を有する2つのCDR(CDRH1およびCDRH2)ならびに65%のVHフレーム相同性を有する(
図17、表1を参照のこと)。AS−SPIKに結合しない抗体は、BA1およびS14などのようにSPIKの共通の領域に結合するのか、それとも抗VD受容体などのようにSPIKに完全に無関連であるのかにかかわらず、CDRまたは可変領域のいずれにおいてもCA22と顕著な類似性を有しない(表1)。BA1、S14はAS−SPIKおよびNS−SPIKの共通の領域に結合する結合する。抗VD受容体抗体は、AS−SPIKまたはNS−SPIKのいずれにも結合せず、陰性対照として使用した。
【0207】
実施例6:結合活性との抗AS−SPIK抗体の相同性の関係性
可変領域中のCDRは抗体の特異性を決定するので、研究用抗体のCDRとAS−SPIKへの結合活性との関係性を研究した。CA22と57%の相同性のCDRL2および69%のVLフレーム相同性を有するCA18は、LS−SPIKに対してほぼ同じ結合親和性を有し、CA22と顕著な類似性(それぞれ60%および50%の相同性)を有する2つのCDR(CDRH1およびCDRH2)ならびに68%のVHフレーム相同性を有するCA46はAS−SPIKに対して顕著な結合親和性を有する(CA22の70%)ことを見出した。CDRおよび可変鎖の相同性が低くなるとAS−SPIKに結合する親和性はより弱くなる。CA18およびCA46と比較して、CB77はAS−SPIKに対してCA22の20%の親和性を有するに過ぎない。より重要なことに、CA22とCDRまたは可変領域の両方においていかなる顕著な類似性も有しない抗体は、BA1およびS14などのようにSPIKの共通の領域に結合するか、または抗VD受容体などのようにSPIKに完全に無関連であるのかにかかわらず、AS−SPIKに全く結合しない(表1)。これらの結果は、抗体のCDR相同性、恐らくは可変領域の相同性がAS−SPIKへの抗体の結合活性に高度に関係することを暗示する。
【0208】
実施例7:AS−SPIKの免疫沈降
免疫沈降アッセイは、IM−CA22だけでなく、他の抗AS−SPIK抗体もAS−SPIKと免疫複合体を特異的に形成することができることを示した。IM−CA22をアガロースビーズに共有結合的に連結させた後、ビーズをS2−3細胞の培地からのAS−SPIKと共にインキュベートした。洗浄して非特異的なタンパク質を除去した後、アガロースビーズを遠心分離により収集した。ビーズに結合したタンパク質をpH2.5の緩衝液処理によりビーズから解放させ、SDS PAGEにおいて分離した。沈殿したタンパク質をPVDF膜に転写し、抗SPIKコンジュゲートを用いて膜を染色した。
図8に示すように、抗AS−SPIK抗体IM−CA22およびAS−SPIKの両方の存在下でAS−SPIKを沈殿させた(
図9の3および4を参照のこと、重複)。AS−SPIKまたはIM−CA22が省略された対照試料中ではAS−SPIKは検出されなかった(
図9の1および2を参照のこと)。これらのデータは、IM−CA22はAS−SPIKと複合体を形成することができ、該複合体を溶液から沈殿させることができることを指し示す。
【0209】
実施例8:AS−SPIK複合体を検出するためのイムノアッセイ
AS−SPIKを特異的に検出するためのELISAアッセイを確立した。96ウェルプレートを100μl/ウェル(1μg/ml)のポリクローナル抗SPIK抗体でコーティングした。非特異的結合を1%のウシ血清アルブミン(BSA)を用いて遮断した。プレートを次にS2−3細胞または膵臓細胞の100μl/ウェルの培養培地と37℃で2時間反応させて、AS−SPIKまたはNS−SPIKが捕捉されることを確実にした。洗浄後、HRPを用いて標識されたモノクローナル抗AS−SPIK抗体IM−CA22と共にプレートを37℃で1時間インキュベートして、抗体−抗原複合体(AS−SPIK複合体)を形成させた。洗浄して未結合のIM−CA22を除去した後、形成されたAS−SPIK複合体を定量化するために使用した基質TMBを加えることにより、光学密度(OD
450nm)で顕色させた。
図10は、IM−CA22のみがS2−3の培地中でAS−SPIKとAS−SPIK複合体を形成したことを示す(
図10、S2−3)。膵臓細胞培地中のSPIKの存在がウエスタンブロットにより確認されたが(
図7、MA86)、バックグラウンドレベルのみの光学密度(陰性対照と同じ)がIM−CA22を使用して膵臓細胞培地中に検出された(
図10、PanC1および対照)。
【0210】
実施例9:AS−SPIK複合体の定量的検出
実施例8に記載の免疫アッセイを使用して、AS−SPIK複合体の濃度を定量的に決定した。簡潔に述べれば、96ウェルプレートをポリクローナル抗SPIK抗体でコーティングした。非特異的結合を1%のBSAを用いて遮断した。PMVプロモーターの制御下のSPIK遺伝子全体をコードするベクターから生成され、親和性カラムにより精製された一連の組換えAS−SPIKポリペプチドを1ng/ml〜100ng/mの濃度範囲でプレートに加えた。HRP標識されたIM−CA22抗体を加えることによりAS−SPIK複合体を形成させ、基質TMBを加えることにより顕色させた。プレートリーダーを用いて光学密度を測定した。
図11に示すように、形成されたAS−SPIK複合体の濃度はAS−SPIKの濃度に正比例した。この直線状の関係性は60ng/mlまでのAS−SPIK濃度において維持された。グラフの直線部分における最良適合線のR値は0.94であり、AS−SPIKとAS−SPIK複合体形成との相関を指し示した。
【0211】
実施例10:AS−SPIK複合体の定量的検出の感度および特異性
AS−SPIK複合体を検出するためのアッセイを開発した。アッセイは、1)HPRを用いて標識されたIM−CA22抗体(本発明の任意のAS−SPIK抗体は、IM−CA22の代わりにまたはIM−CA22に加えて使用することができる;アッセイは、本発明のAS−SPIK抗体の混合物を含むことが可能である);2)IM−CA22との一致したペアの一部として作用する(異なる領域に結合し、IM−CA22結合に干渉しない)ポリクローナルまたはモノクローナル抗SPIK抗体で固定化された96ウェルプレート;3)6つの異なる濃度の精製された組換えAS−SPIKからなる標準的な参照セット;ならびに4)陽性対照としての100μlのS2−3細胞培地および陰性対照としての100μlの膵臓細胞培地を含んだ。我々のアッセイの感度を決定するために、精製された組換えAS−SPIKを、1ng/ml〜100ng/mlの範囲に及ぶ一連の濃度において、固定化されたポリクローナル抗SPIK抗体を含有するプレートを用いてインキュベートした後、IM−CA22コンジュゲートと反応させてAS−SPIK複合体を形成させた。TMBを加えた後、光学密度を測定した。結果は、このアッセイを使用してAS−SPIK複合体の推定される最小の検出可能な濃度が1.0ng/mlであることを示した。線形曲線が回帰分析を用いて生成された(
図12)。試験の直線範囲はおおよそ1ng/ml〜50ng/mlであり、これは6つの独立した試験により確認され、
図12に示される。IBMソフトウェアSPSS 22(IBM、Armonk,NY)を使用して信頼性を解析し、試験についてのクロンバックのアルファ値は0.998であり、優れた一貫性を示唆した。標準参照曲線の式は、AS−SPIK複合体(ng/ml)=31.5×OD450nm−6.80、R=0.95である。
【0212】
実施例11:SPIK活性に対する抗AS−SPIK抗体の効果
トリプシン基質BML(Boc−Gln−Ala−Arg−AMC、Enzo Life Sciences、Farmingdale,NY)を使用してSPIK活性に対する本発明のAS−SPIK抗体の効果を測定した。合成基質のトリプシン消化は蛍光色素(AMC)を生成し、これは蛍光分光計により検出可能である。蛍光の強度はトリプシン活性のレベルと直接的に相関し、定量的に測定することができる。BMLのトリプシン消化へのAS−SPIKの添加は、トリプシン活性を遮断し、結果として生じる蛍光を低減する。
図13に示すように、2ng/mlのトリプシン(Sigma、ST Louis、MO)へのS2−3細胞の培地から精製された3nMのAS−SPIKの添加は、60分後に1μMのBMLのトリプシン消化を70%阻害した(
図13、トリプシン単独およびAS−SPIK)。トリプシン活性を回復させる抗AS−SPIK抗体の能力を評価するために、3nMのAS−SPIKを最初に1μg/mlのIM−CA22と20分間インキュベートした後、2ng/mlのヒトトリプシンと室温で30分インキュベートした。1μMのBMLを次に加え、380nmでの励起および440nmでの発光と共に0、20、40、60、80および100分後に蛍光分光計により蛍光を測定した。式:AS−SPIK活性の阻害%=(ΔD−ΔS)/(ΔG−ΔS)×100を使用して、トリプシン消化が最大に達する60分時にAS−SPIK活性の阻害を算出した。ここで、ΔGは、0分時および60分時のトリプシン処理単独の間の吸光度の差異を表し、ΔSは、0分時および60分時のAS−SPIKの添加の間の吸光度の差異を表し、ΔDは、0分時または60分時のいずれかにおける、最初に抗AS−SPIKとインキュベートされた後にトリプシンとインキュベートされたAS−SPIKの間の吸光度の差異を表す。
図13は、IM−CA22は60%より多くのトリプシン活性を回復させることができたことを示す。この結果は、抗AS−SPIK抗体がAS−SPIK活性を阻害できることを暗示する。
【0213】
実施例12:HCCを有する患者におけるAS−SPIKの解析
HCC患者からの合計で58の血清検体ならびに健常個体、B型/C型肝炎患者、肝硬変患者、および膵炎患者からの88の血清検体を実施例9に記載のアッセイ系を使用して試験し、20μlの各血清検体を希釈緩衝液で100μlに希釈し、解析のために使用した。各試料を3回ずつ試験した。各試料についてのOD450nm値の平均および標準偏差(SD)を算出し、標準的な参照セットにより生成された標準曲線との比較によりAS−SPIK複合体レベルを決定した。IBMソフトウェアSPSS 22を使用して統計解析を行った。AS−SPIKレベルが対照対象と比較してHCC患者において有意に異なるかどうかを決定するために、一元配置分散分析を使用し、多重ペアワイズ比較を行った。HCC患者の血清中のAS−SPIKの平均濃度は43ng/mlであり、対照においてはわずか2〜11ng/mlであった。より特異的には、HCC患者におけるAS−SPIKの平均レベル(43ng/ml)は、肝炎、肝硬変、膵炎を有する患者および健常対象(それぞれ11ng/ml、10ng/ml、2.3ng/mlおよび3.2ng/ml)におけるより有意に高かった(P<0.001)。22ng/mlのカットオフ値を使用して、HCCについてのアッセイの感度および特異性はそれぞれ79%および94%であった(
図15)。患者の年齢、性別、およびALTなどの肝臓機能の亜群の間でAS−SPIKレベルの有意差はなかった(全てP>0.05)。これらの結果は、AS−SPIKはHCCの診断のための有用なバイオマーカーであることを示した。膵炎を有する患者の血清中のNS−SPIKの存在はAS−SPIKの検出を妨げなかった。これは、高レベルのNS−SPIK(平均37ng/ml、95% CI:28.8〜44.2、t検定)が膵炎を有する患者において観察されたが健常対照においては観察されなかったとはいえ、膵炎を有する患者および健常対象の血清中のAS−SPIK複合体レベルは有意に異ならないという観察(P>0.05)によりサポートされた(
図14、膵炎および健常)。
【0214】
実施例13:非常に早期ステージのHCCを有する患者におけるAS−SPIKの解析
我々のシステムがその非常に最初期のステージの肝細胞がん(BCLCステージ0;サイズ<2cm)を検出できるかどうかを解析した。非常に早期ステージのHCCを有する患者からの15の血清検体を実施例9に記載の方法を使用し、対照と比較した。実施例9に記載したものと同じ分散分析方法を使用して結果を解析した。
図16に示すように、非常に早期ステージのHCCを有する患者の血清中のAS−SPIKのレベルの平均は36ng/ml(95% CI:23.49〜48.37)であった。このレベルは、対照群におけるレベルより有意に高かった(P<0.001)。これらの結果は、AS−SPIKは非常に早期ステージのHCCの診断のための有用なバイオマーカーであることを指し示す。
【0215】
実施例14:ICCを有する患者におけるAS−SPIKの解析
HCCおよびICCは共に肝臓がんの種類であり、SPIK mRNAの過剰発現がHCCおよびICCの両方において実証されたので(Lee et al.,The America Journal of Gastroenterology 2008;103(7):1716−1720)、我々のシステムがICCを有する患者の血清中のAS−SPIKの増加を検出できるか否かの研究を開始した。表2は、定量的解析が、異なるステージのICCを有する5人全ての患者は血液中のAS−SPIKのレベルの有意な増加を有することを示唆することを示した。HCC検出(実施例9)におけるようにカットオフ値として22ng/mlを使用する場合、5人全ての患者は陽性の結果を有する。試験した患者におけるAS−SPIKの平均値は64ng/ml(95% CI、24.8〜104.1)であり、これは全ての対照群:B型/C型肝炎の11ng/ml(95% CI:2.14〜19.98)(p<0.001)、肝硬変の10ng/ml(95% CI:4.15〜16.19)(P<0.001)、および健常対象の3.2ng/ml(95% CI:1.22〜5.23)(p<0.001)から有意に異なる。