(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-515815(P2021-515815A)
(43)【公表日】2021年6月24日
(54)【発明の名称】水性防曇樹脂、水性防曇塗料組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 8/30 20060101AFI20210528BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20210528BHJP
C09D 133/26 20060101ALI20210528BHJP
C09D 133/14 20060101ALI20210528BHJP
C09D 7/47 20180101ALI20210528BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20210528BHJP
【FI】
C08F8/30
C09D5/02
C09D133/26
C09D133/14
C09D7/47
C09K3/00 R
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2019-565799(P2019-565799)
(86)(22)【出願日】2019年1月23日
(85)【翻訳文提出日】2019年11月25日
(86)【国際出願番号】CN2019072789
(87)【国際公開番号】WO2020133616
(87)【国際公開日】20200702
(31)【優先権主張番号】201811586921.5
(32)【優先日】2018年12月25日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】519420399
【氏名又は名称】湖南松井新材料股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HUNAN SOKAN NEW MATERIALS CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】繆培凱
(72)【発明者】
【氏名】凌雲剣
(72)【発明者】
【氏名】王衛国
(72)【発明者】
【氏名】楊波
(72)【発明者】
【氏名】呂国強
【テーマコード(参考)】
4J038
4J100
【Fターム(参考)】
4J038CG011
4J038CG141
4J038CG171
4J038CH121
4J038CH211
4J038CH261
4J038MA08
4J038MA10
4J038NA06
4J100AJ02Q
4J100AL03T
4J100AL04P
4J100AL08S
4J100AL09R
4J100AM15T
4J100AM19T
4J100BA32H
4J100BA38H
4J100BA56S
4J100CA03
4J100CA31
4J100FA03
4J100FA19
4J100HA31
4J100HA61
4J100HB43
4J100HC43
4J100HC85
4J100HE12
4J100HE41
4J100JA01
(57)【要約】
本発明は、水性防曇樹脂を開示し、前記水性防曇樹脂は良好な親水性、吸湿性を有する分子セグメント及び官能基を導入し、水性防曇樹脂に優れた防曇性、塗膜強度及び透明なレベリング外観を付与することができ、硬化コーティングの水接触角は1〜10°に達することができる。本発明は、さらに、上記防曇樹脂を含む塗料組成物を開示し、該塗料組成物の硬化コーティングは、良好な防曇性、耐摩耗性、耐水性、耐薬品性、耐汚染性、耐紫外線性を有し、基材への付着力が優れ、また、コーティングは堅牢性が高く、優れた成膜強度及び耐カール性を有し、携帯電話のスクリーン、PC又はPMMA透明材料、自動車用ガラス及びバスルームミラー等の表面への防曇処理に適用でき、長期安定性に優れる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性防曇樹脂であって、以下の構造式を有することを特徴とする水性防曇樹脂。
【化1】
(式中、m、s、n、p、q、a、b、cはそれぞれ各モノマーの重合度を表し、各モノマーの重合度の値は水性防曇樹脂の数平均分子量で5000〜100000に制限され、m、s、n、p、q、a、b、cはともに正の整数であり、
R
1とイソシアネート基はジイソシアネート系化合物を形成し、R
1はジイソシアネート系化合物の母体構造であり、
R
2はヒドロキシル(OH)とカルボキシル(COOH)を同時に含む化合物であり、
R
3、R
4、R
5、R
6はそれぞれH及びCH
3から選ばれる1種であり、
R
7は−O
−N
+H(C
2H
5OH)
3、−O
−N
+H(C
2H
5)
3、−O
−K
+又は−O
−Na
+のうちの1種である。)
【請求項2】
前記ジイソシアネート系化合物はトルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート又はジシクロヘキシルメタンジイソシアネートのうちの1種であり、前記R2は乳酸又はジメチロールプロピオン酸であることを特徴とする請求項1に記載の水性防曇樹脂。
【請求項3】
前記R1はイソホロンジイソシアネートの母体構造、前記R2はジメチロールプロピオン酸、R3、R4、R6はCH3、R5はH、R7は−O−N+H(C2H5OH)3であることを特徴とする請求項2に記載の水性防曇樹脂。
【請求項4】
前記水性防曇樹脂の数平均分子量は50000−100000であることを特徴とする請求項1に記載の水性防曇樹脂。
【請求項5】
請求項1に記載の水性防曇樹脂の製造方法であって、
(1)ジブチル錫ジラウレート又はp−トルエンスルホン酸を触媒とし、ヒドロキシル及びカルボキシルを含むR2化合物とR1を含むジイソシアネート系化合物を40〜60℃で0.5〜2時間反応させて化合物1を得る;
(2)窒素保護下において、イソオクチルアクリレート、メタクリルアミド又はアクリルアミド、メタクリル酸メチル又はアクリル酸メチル、アクリル酸又はメタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N,N−ジメチルアクリルアミド、メタクリル酸ヒドロキシエチル又はアクリル酸ヒドロキシエチル、アゾビスイソブチロニトリルを60〜90℃で4〜8時間反応させて化合物2を得る;
(3)前記化合物1と前記化合物2を60〜90℃で0.5〜4時間反応させ、さらにトリエタノールアミン、トリエチルアミン、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムである塩基性化合物を添加して60〜90℃で0.1〜0.5時間反応させ、塩基性化合物をスルホン酸基及びカルボキシルの一部と反応させて塩を形成し、水性防曇樹脂を得るステップと、を含むことを特徴とする水性防曇樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記ジイソシアネート系化合物はトルエンジイソシアネート又はジフェニルメタンジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネート又はジシクロヘキシルメタンジイソシアネートであり、前記ヒドロキシル及びカルボキシルを含むR2化合物は乳酸又はジメチロールプロピオン酸であることを特徴とする請求項5に記載の水性防曇樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記ステップ(1)では、前記ヒドロキシル及びカルボキシルを含むR2化合物と、R1を含むジイソシアネート系化合物とのモル比は1:2〜2.5であり、前記触媒の質量はヒドロキシル及びカルボキシルを含むR2化合物とR1を含むジイソシアネート系化合物との全質量の0.2〜1%であることを特徴とする請求項5に記載の水性防曇樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記ステップ(2)では、前記イソオクチルアクリレート、メタクリルアミド又はアクリルアミド、メタクリル酸メチル又はアクリル酸メチル、アクリル酸又はメタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N,N−ジメチルアクリルアミド、メタクリル酸ヒドロキシエチル又はアクリル酸ヒドロキシエチルのモル比は1:0.1〜0.4:0.8〜1:0.1〜0.4:0.4〜0.8:0.1〜0.4:0.6〜1.2であり、前記アゾビスイソブチロニトリルの使用量はほかの反応原料の全質量の0.1〜0.5%であることを特徴とする請求項5に記載の水性防曇樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記ステップ(3)では、前記化合物2と前記化合物1とのモル比は1:0.2〜0.8、前記塩基性化合物と前記化合物2とのモル比は1:0.5〜1.2であることを特徴とする請求項5に記載の水性防曇樹脂の製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載の水性防曇樹脂30〜60重量部、架橋剤5〜20重量部、界面活性剤5〜10重量部、レベリング剤0.1〜1重量部、希釈剤20〜60重量部を含むことを特徴とする水性防曇塗料組成物。
【請求項11】
前記架橋剤は水性ポリカルボジイミド、前記レベリング剤はアクリル酸官能基を含むポリエーテル変性シリコーン、前記希釈剤は脱イオン水又は蒸留水であることを特徴とする請求項10に記載の水性防曇塗料組成物。
【請求項12】
請求項10に記載の水性防曇塗料組成物の製造方法であって、
前記水性防曇樹脂30〜60重量部、架橋剤5〜20重量部、界面活性剤5〜10重量部、レベリング剤0.1〜1重量部、希釈剤20〜60重量部を均一に混合して前記水性防曇塗料組成物を得ることを特徴とする水性防曇塗料組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水性塗料の技術分野に関し、特に水性防曇樹脂及びその製造方法に関する。また、本発明はさらに上記水性防曇樹脂を含む水性防曇塗料組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日常生活では、プラスチック又はガラスの両側に明らかな温度差及び湿度差がある。高温側の空気では、気化した液体がプラスチック又はガラス等の材料に遭遇すると、その表面に凝縮して流動性の悪い小さな液滴を形成し、プラスチック又はガラスの表面に曇りが生じる。これら小さな液滴によって光の不規則な散乱、反射及び回折を引き起こし、プラスチック又はガラス等の透明材料の光透過能力を損なってぼやけてしまう。
【0003】
上記現象の発生を低減させるために、従来技術においてプラスチック又はガラスの表面の防曇を改善するための様々な方法がある。例えば、(1)界面活性剤の直接浸透法、(2)界面活性剤の直接塗布法、(3)高分子材料塗布法が挙げられる。方法1)〜2)によって形成される防曇コーティングは安定性が悪く、防曇効果の耐久性が低く、プラスチック又はガラスの表面での活性剤処理を頻繁に繰り返す必要がある。方法3)は防曇効果が優れ、且つ防曇コーティングの耐摩耗性が高く、防曇効果の耐久性が高い。しかしながら、従来の高分子塗料の製造プロセスでは様々な有機溶剤を添加する必要があり、環境に優しくなく、且つ水性塗料ではない。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、従来の高分子塗料の製造では有機溶剤を添加する必要があり、且つ水性塗料ではないという技術的課題を解決するために、水性防曇樹脂及びその製造方法、並びに該水性防曇樹脂を含む防曇塗料組成物を提供する。
【0005】
本発明の一態様によれば、水性防曇樹脂を提供し、以下の構造式を有する。
【化1】
(式中、m、s、n、p、q、a、b、cはそれぞれ各モノマーの重合度を表し、各モノマーの重合度の値は水性防曇樹脂の数平均分子量で5000〜100000に制限され、m、s、n、p、q、a、b、cはともに正の整数であり、
R
1とイソシアネート基はジイソシアネート系化合物を形成し、R
1はジイソシアネート系化合物の母体構造であり、
R
2はヒドロキシル(OH)とカルボキシル(COOH)を同時に含む化合物であり、
R
3、R
4、R
5、R
6はそれぞれH及びCH
3から選ばれる1種であり、
R
7は−O
−N
+H(C
2H
5OH)
3、−O
−N
+H(C
2H
5)
3、−O
−K
+又は−O
−Na
+のうちの1種である。)
【0006】
さらに、ジイソシアネート系化合物はトルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート又はジシクロヘキシルメタンジイソシアネートのうちの1種である。
【0007】
さらに、R
2は乳酸又はジメチロールプロピオン酸である。
【0008】
さらに、R
1はイソホロンジイソシアネートの母体構造、R
2はジメチロールプロピオン酸、R
3、R
4、R
6はCH
3、R
5はH、R
7は−O
−N
+H(C
2H
5OH)
3である。
【0009】
さらに、水性防曇樹脂の数平均分子量は50000−100000である。
【0010】
本発明の別の態様によれば、上記水性防曇樹脂の製造方法をさらに提供し、
(1)ジブチル錫ジラウレート又はp−トルエンスルホン酸を触媒とし、ヒドロキシル及びカルボキシルを含むR
2化合物とR
1を含むジイソシアネート系化合物を40〜60℃で0.5〜2時間反応させて化合物1を得るステップと、
(2)窒素保護下において、イソオクチルアクリレート、メタクリルアミド又はアクリルアミド、メタクリル酸メチル又はアクリル酸メチル、アクリル酸又はメタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N,N−ジメチルアクリルアミド、メタクリル酸ヒドロキシエチル又はアクリル酸ヒドロキシエチル、アゾビスイソブチロニトリルを60〜90℃で4〜8時間反応させて化合物2を得るステップと、
(3)化合物1と化合物2を60〜90℃で0.5〜4時間反応させ、さらにトリエタノールアミン、トリエチルアミン、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムである塩基性化合物を添加して60〜90℃で0.1〜0.5時間反応させ、塩基性化合物をスルホン酸基及びカルボキシルの一部と反応させて塩を形成し、水性防曇樹脂を得るステップと、を含む。
【0011】
さらに、ジイソシアネート系化合物はトルエンジイソシアネート又はジフェニルメタンジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネート又はジシクロヘキシルメタンジイソシアネートであり、ヒドロキシル及びカルボキシルを含むR
2化合物は乳酸又はジメチロールプロピオン酸であり、
さらに、ステップ(1)では、ヒドロキシル及びカルボキシルを含むR
2化合物と、R
1を含むジイソシアネート系化合物とのモル比は1:2〜2.5であり、触媒の質量はヒドロキシル及びカルボキシルを含むR
2化合物とR
1を含むジイソシアネート系化合物との全質量の0.2〜1%である。
【0012】
さらに、ステップ(2)では、イソオクチルアクリレート、メタクリルアミド又はアクリルアミド、メタクリル酸メチル又はアクリル酸メチル、アクリル酸又はメタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N,N−ジメチルアクリルアミド、メタクリル酸ヒドロキシエチル又はアクリル酸ヒドロキシエチルのモル比は1:0.1〜0.4:0.8〜1:0.1〜0.4:0.4〜0.8:0.1〜0.4:0.6〜1.2であり、アゾビスイソブチロニトリルの使用量はほかの反応原料の全質量の0.1〜0.5%である。
【0013】
さらに、ステップ(3)では、化合物2と化合物1とのモル比は1:0.2〜0.8、塩基性化合物と化合物2とのモル比は1:0.5〜1.2である。
【0014】
本発明のさらに別の態様によれば、水性防曇塗料組成物をさらに提供し、上記水性防曇樹脂又は上記製造方法によって製造された水性防曇樹脂30〜60重量部、架橋剤5〜20重量部、界面活性剤5〜10重量部、レベリング剤0.1〜1重量部、希釈剤20〜60重量部を含む。
【0015】
さらに、前記架橋剤は水性ポリカルボジイミド、前記レベリング剤はアクリル酸官能基を含むポリエーテル変性シリコーン、前記希釈剤は脱イオン水又は蒸留水である。
【0016】
本発明のまたさらに別の態様によれば、上記塗料組成物の製造方法をさらに提供し、前記水性防曇樹脂、架橋剤、界面活性剤、レベリング剤、希釈剤を上記重量部で均一に混合して前記水性防曇塗料組成物を得るステップを含む。該塗料組成物は熱硬化方法を採用し、焼付温度が60−120℃、焼付時間が5−30分間である。
【発明の効果】
【0017】
本発明は以下の有益な効果を有する。
【0018】
本発明の水性防曇樹脂は良好な親水性、吸湿性を有する分子セグメント及び官能基を導入する。N,N−ジメチルアクリルアミドは優れた吸湿性及び帯電防止性を有し、メタクリル酸ヒドロキシエチル又はアクリル酸ヒドロキシエチルは親水性ヒドロキシル官能基を提供し、メタクリル酸又はアクリル酸と乳酸又はジメチロールプロピオン酸は親水性カルボキシル官能基を提供し、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸は親水性を提供し、メタクリルアミド又はアクリルアミドは高吸水特性を有し、メタクリル酸メチル又はアクリル酸メチルは剛性を提供し、イソオクチルアクリレートは柔軟性を提供する。従って、大量の親水性、吸水性官能基の存在によって、水性防曇樹脂に優れた防曇性、塗膜強度及び透明なレベリング外観を付与することができ、硬化コーティングの水接触角は1〜10°に達することができる。本発明の水性防曇樹脂はカルボキシルCOOHを含有し、ポリカルボジイミドと化学架橋反応して硬化塗膜の強度及び特性を高めることができるとともに、ポリカルボジイミドは塗布基材への付着力の安定性向上を支援する機能を有する。本発明の塗料組成物の硬化コーティングは、良好な防曇性、耐摩耗性、耐水性、耐薬品性、耐汚染性、耐紫外線性を有し、基材への付着力が優れ、また、コーティングは堅牢性が高く、優れた成膜強度及び耐カール性を有し、携帯電話のスクリーン、PC又はPMMA透明材料、自動車用ガラス及びバスルームミラー等の表面への防曇処理に適用でき、長期安定性に優れる。
【0019】
上記説明された目的、特徴及び利点を除き、本発明はほかの目的、特徴及び利点を有する。以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明は以下限定及びカバーされる様々な方式によって実施できる。
【0021】
本発明の一態様は水性防曇樹脂を提供し、以下の構造式を有する。
【化2】
(式中、m、s、n、p、q、a、b、cはそれぞれ各モノマーの重合度を表し、各モノマーの重合度の値は水性防曇樹脂の数平均分子量で5000〜100000に制限され、m、s、n、p、q、a、b及びcはともに正の整数である。)
【0022】
R
1とイソシアネート基はジイソシアネート系化合物を形成し、R
1はジイソシアネート系化合物の母体構造であり、ジイソシアネート系化合物はトルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート又はジシクロヘキシルメタンジイソシアネートのうちの1種であってもよい。
【0023】
R
2はヒドロキシル(OH)とカルボキシル(COOH)を同時に含む化合物であり、ヒドロキシルを含む乳酸、ジメチロールプロピオン酸のうちの1種から選ばれてもよい。
【0024】
R
3、R
4、R
5、R
6はそれぞれH及びCH
3から選ばれる1種である。
【0025】
R
7は−O
−N
+H(C
2H
5OH)
3、−O
−N
+H(C
2H
5)
3、−O
−K
+又は−O
−Na
+のうちの1種である。
【0026】
水性防曇樹脂は複数の化合物モノマーを重合してなる。R
1はジイソシアネート系化合物の母体構造、すなわちジイソシアネート系化合物の構造単位であり、イソシアネート基はR
1で表される母体構造上でジイソシアネート系化合物を形成する。具体的には、水性防曇樹脂において、ジイソシアネート系化合物の2つのイソシアネート基がともに反応に関与し、
の構造を形成し、具体的には水性防曇樹脂の構造式に示される。上記ジイソシアネート系化合物中のいくつかの物質は複数種の異性体を含み、R
1は対応する構造に対応する母体構造である。R
1がトルエンジイソシアネートの母体構造であることを例に説明する。トルエンジイソシアネートは
の2種の異性体を含み、対応するR
1は
である。
【0027】
R
2はヒドロキシル含有化合物の構造単位であり、ヒドロキシル含有化合物は乳酸、ジメチロールプロピオン酸を含む。ヒドロキシル含有化合物の末端ヒドロキシルからHを除去してR
2基を得る。
【0028】
本発明の水性防曇樹脂は良好な親水性、吸湿性を有する分子セグメント及び官能基を導入する。N,N−ジメチルアクリルアミドは優れた吸湿性及び帯電防止性を有し、メタクリル酸ヒドロキシエチル又はアクリル酸ヒドロキシエチルは親水性ヒドロキシル官能基を提供し、メタクリル酸又はアクリル酸と乳酸又はジメチロールプロピオン酸は親水性カルボキシル官能基を提供し、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸は親水性を提供し、メタクリルアミド又はアクリルアミドは高吸水特性を有し、メタクリル酸メチル又はアクリル酸メチルは剛性を提供し、イソオクチルアクリレートは柔軟性を提供する。従って、大量の親水性、吸水性官能基の存在によって、水性防曇樹脂に優れた防曇性及び塗膜強度を付与することができ、硬化コーティングの水接触角は1〜10°に達することができる。また、スルホン酸基及びカルボン酸基の一部が塩基性化合物によって中和して塩を形成し、水性防曇樹脂の水性化を実現し、蒸留水又は脱イオン水に溶解/分散可能である。
【0029】
さらに、R
1はイソホロンジイソシアネートの母体構造、R
2はジメチロールプロピオン酸、R
3、R
4、R
6はCH
3、R
5はH、R
7は−O
−N
+H(C
2H
5OH)
3である。該構造の水性防曇樹脂は水接触角が小さく、防曇効果がさらに良好で、特性がさらに優れる。
【0030】
さらに、水性防曇樹脂の数平均分子量は50000〜100000である。該数平均分子量の水性防曇樹脂は成膜しやすく、防曇効果をさらに向上させる。
【0031】
本発明の別の態様は上記水性防曇樹脂の製造方法を提供し、
(1)ジブチル錫ジラウレート又はp−トルエンスルホン酸を触媒とし、ヒドロキシル及びカルボキシルを含むR
2化合物とR
1を含むジイソシアネート系化合物を40〜60℃で0.5〜2時間反応させて化合物1を得るステップと、
(2)窒素保護下において、イソオクチルアクリレート、メタクリルアミド又はアクリルアミド、メタクリル酸メチル又はアクリル酸メチル、アクリル酸又はメタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N,N−ジメチルアクリルアミド、メタクリル酸ヒドロキシエチル又はアクリル酸ヒドロキシエチル、アゾビスイソブチロニトリルを60〜90℃で4〜8時間反応させて化合物2を得るステップと、
(3)化合物1と化合物2を60〜90℃で0.5〜4時間反応させ、さらにトリエタノールアミン又はトリエチルアミン、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムである塩基性化合物を添加して60〜90℃で0.1〜0.5時間反応させ、塩基性化合物をスルホン酸基及びカルボキシルの一部と反応させて塩を形成し、水性防曇樹脂を得るステップと、を含む。
【0032】
ステップ(1)では、ジブチル錫ジラウレート又はp−トルエンスルホン酸を触媒とし、ヒドロキシル及びカルボキシルを含むR
2化合物とR
1を含むジイソシアネート系化合物のモノマーを40〜60℃で0.5〜2時間反応させて化合物1を得る。ステップ(1)の反応式は以下の通りである。
【化3】
【0033】
ステップ(1)では、ジイソシアネート系化合物はトルエンジイソシアネート又はジフェニルメタンジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネート又はイソホロンジイソシアネート又はジシクロヘキシルメタンジイソシアネートであり、ヒドロキシルを含むR
2化合物は乳酸又はジメチロールプロピオン酸であるが、それらに限定されない。本発明の最終合成樹脂はカルボキシルCOOHを含有し、ポリカルボジイミドと化学架橋反応して硬化塗膜の強度及び特性を高めることができるとともに、ポリカルボジイミドは塗布基材への付着力の安定性向上を支援する機能を有する。
【0034】
ステップ(2)では、四つ口フラスコにイソオクチルアクリレートモノマー、メタクリルアミド又はアクリルアミド、メタクリル酸メチル又はアクリル酸メチル、アクリル酸又はメタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N,N−ジメチルアクリルアミド、メタクリル酸ヒドロキシエチル又はアクリル酸ヒドロキシエチル、アゾビスイソブチロニトリルモノマーを順に投入し、窒素を使用して反応フラスコ中の空気を置換し、窒素保護下において、60〜90℃に昇温させ、4〜8時間凝縮還流反応させて化合物2を得る。メタクリルアミド又はアクリルアミド、メタクリル酸メチル又はアクリル酸メチル、アクリル酸又はメタクリル酸、メタクリル酸ヒドロキシエチル又はアクリル酸ヒドロキシエチル中の「又は」は二者択一を表し、ステップ(2)の反応式は以下の通りである。
【化4】
【0035】
ステップ(3)では、上記化合物2と化合物1を60〜90℃で0.5〜4時間反応させ、さらに塩基性化合物を添加して60〜90℃で0.1〜0.5時間反応させ、最終的に水性防曇樹脂を得る。メタクリル酸ヒドロキシエチル又はアクリル酸ヒドロキシエチルの重合度はs+(n−s)であり、その反応を分かりやすくするために、それを2つの部分、すなわち、化合物1と反応した重合物がsの構造、及び反応していない重合物がn−sの構造に分けて説明する。ステップ(3)の反応式は以下の通りである。
【化5】
【0036】
上記ステップでは、反応温度及び時間が設定値よりも低い場合、各ステップでの反応の進行度が低く、対応する生成物の重合度が低く、合成される水性防曇樹脂の分子量が低くなり、樹脂が成膜し難く、防曇効果が悪い一方、反応温度及び時間が設定値よりも高い場合、エネルギー及び時間がかかり、且つ水性防曇樹脂が爆縮してゲル化するリスクがある。
【0037】
さらに、ステップ(1)では、ヒドロキシル及びカルボキシルを含むR
2化合物と、R
1を含むジイソシアネート系化合物とのモル比は1:2〜2.5である。触媒の質量はヒドロキシル及びカルボキシルを含むR
2化合物とR
1を含むジイソシアネート系化合物との全質量の0.2〜1%である。
【0038】
さらに、ステップ(2)では、イソオクチルアクリレート、メタクリルアミド又はアクリルアミド、メタクリル酸メチル又はアクリル酸メチル、アクリル酸又はメタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N,N−ジメチルアクリルアミド、メタクリル酸ヒドロキシエチル又はアクリル酸ヒドロキシエチルのモル比は1:0.1〜0.4:0.8〜1:0.1〜0.4:0.4〜0.8:0.1〜0.4:0.6〜1.2であり、モル比が該範囲外である場合、化合物1中のイソシアネート基の含有量が低すぎ又は高すぎてしまい、低すぎる場合、化合物1と化合物2中のヒドロキシルとの反応が不充分で、水性防曇樹脂の分子量が低すぎる一方、高すぎる場合、水性防曇樹脂中のイソシアネート基の残留が多すぎ、樹脂の貯蔵安定性を損ない、ゲル化しやすい。アゾビスイソブチロニトリルの使用量は上記モノマーの全質量の0.1〜0.5%である。すなわち、アゾビスイソブチロニトリルの使用量はイソオクチルアクリレート、メタクリルアミド又はアクリルアミド、メタクリル酸メチル又はアクリル酸メチル、アクリル酸又はメタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N,N−ジメチルアクリルアミド、メタクリル酸ヒドロキシエチル又はアクリル酸ヒドロキシエチルの全質量の0.1〜0.5%である。
【0039】
さらに、ステップ(3)では、化合物2と化合物1とのモル比は1:0.2〜0.8、塩基性化合物と化合物2とのモル比は1:0.5〜1.2である。モル比が該範囲外である場合、水性防曇樹脂の分子量を設定範囲値に制御することが困難で、樹脂の成膜性及び防曇効果が悪くなる。
【0040】
さらに、ステップ(1)では、ヒドロキシル及びカルボキシルを含むR
2化合物とR
1を含むジイソシアネート系化合物を60℃で2時間反応させる。該条件下では、反応条件が温和で、反応の収率がさらに高い。
【0041】
さらに、ステップ(2)中の反応温度が90℃、反応時間が8時間である。該条件下では、反応条件が温和で、反応の収率がさらに高い。
【0042】
さらに、ステップ(3)では、化合物2と化合物1を90℃で4時間反応させ、トリエタノールアミンを添加して90℃で0.5時間反応させ、トリエタノールアミンの添加量と化合物2とのモル比が1:1.2である。該条件下では、反応条件が温和で、反応の収率がさらに高い。
【0043】
本発明のさらに別の態様によれば、水性防曇塗料組成物をさらに提供し、上記水性防曇樹脂又は上記製造方法によって製造された水性防曇樹脂30〜60重量部、架橋剤5〜20重量部、界面活性剤5〜10重量部、レベリング剤0.1〜1重量部、希釈剤20〜60重量部を含む。
【0044】
さらに、前記架橋剤は水性ポリカルボジイミド(例えば、上海尤恩化工有限公司製の水性ポリカルボジイミドUN−557)であり、水性防曇樹脂中のカルボン酸構造単位(COOH)と化学架橋反応して成膜し、コーティングの耐摩耗性、耐水性、耐薬品性、耐汚染性、耐紫外線性を向上させ、特殊の基材への付着力を高めることができるとともに、コーティングがさらに堅牢になり、それにより成膜強度及び耐カール性を向上させることができ、
前記界面活性剤は少なくとも水溶性ドデシル硫酸ナトリウム及びスルホコハク酸ナトリウムジオクチルエステルのうちの1種である。
【0045】
前記レベリング剤はアクリル酸官能基を含むポリエーテル変性シリコーン(例えば、ドイツBYK社製のBYK475)であり、塗膜の鏡面レベリングを促進し、前記溶剤は脱イオン水又は蒸留水であり、塗布粘度を調製する。
【0046】
上記塗料組成物の製造方法は、前記水性防曇樹脂、架橋剤、レベリング剤、希釈剤を上記重量部で均一に混合して前記水性防曇塗料組成物を得るステップを含む。該塗料組成物は熱硬化方法を採用し、焼付温度が60〜120℃、焼付時間が5〜30分間である。本発明によって合成された樹脂は熱硬化性樹脂であるため、熱硬化方法を採用する。
【0047】
水性防曇樹脂の製造の実施例
実施例1
(1)ジブチル錫ジラウレートを触媒とし、ジメチロールプロピオン酸とトルエンジイソシアネートモノマーを40℃で0.5時間反応させ、化合物1を得た。ジメチロールプロピオン酸とトルエンジイソシアネートモノマーとのモル比は1:2であり、触媒の使用量は上記2種の原料の全質量の0.2%であった。
【0048】
(2)四つ口フラスコにイソオクチルアクリレート、メタクリルアミド、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸ヒドロキシエチル、アゾビスイソブチロニトリルを順に投入し、窒素を使用して反応フラスコ中の空気を置換し、窒素保護下において、60℃に昇温させ、4時間凝縮還流反応させて化合物2を得た。イソオクチルアクリレート、メタクリルアミド、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸ヒドロキシエチルのモル比は1:0.1:0.8:0.4:0.4:0.4:1.2であった。アゾビスイソブチロニトリルの使用量は上記モノマーの全質量の0.1%であった。
【0049】
(3)上記化合物2と化合物1をモル比1:0.2で、60℃で0.5時間反応させ、さらにトリエタノールアミンを化合物2とのモル比が1:0.5となるように添加し、60℃で0.1時間反応させて、最終的に水性防曇樹脂1を得て、数平均分子量が5000であった。
【0050】
実施例2
(1)ジブチル錫ジラウレートを触媒とし、乳酸とイソホロンジイソシアネートモノマーを60℃で2時間反応させ、化合物1を得た。乳酸とイソホロンジイソシアネートモノマーとのモル比は1:2.5であり、触媒の使用量は上記2種の原料の全質量の0.5%であった。
【0051】
(2)四つ口フラスコにイソオクチルアクリレート、アクリルアミド、クリル酸メチル、メタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N,N−ジメチルアクリルアミド、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アゾビスイソブチロニトリルを順に投入し、窒素を使用して反応フラスコ中の空気を置換し、窒素保護下において、90℃に昇温させ、8時間凝縮還流反応させて、化合物2を得た。イソオクチルアクリレート、アクリルアミド、クリル酸メチル、メタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N,N−ジメチルアクリルアミド、メタクリル酸ヒドロキシエチルのモル比は1:0.4:1:0.4:0.8:0.4:1.2であった。アゾビスイソブチロニトリルの使用量は上記モノマーの全質量の0.5%であった。
【0052】
(3)上記化合物2と化合物1をモル比1:0.8で、90℃で4時間反応させ、さらにトリエタノールアミンを化合物2とのモル比が1:1.2となるように添加し、90℃で0.5時間反応させて、最終的に水性防曇樹脂2を得て、数平均分子量が100000であった。
【0053】
実施例3
(1)p−トルエンスルホン酸を触媒とし、ジメチロールプロピオン酸とヘキサメチレンジイソシアネートモノマーを50℃で1時間反応させ、化合物1を得た。ジメチロールプロピオン酸とヘキサメチレンジイソシアネートモノマーとのモル比は1:2.2であり、触媒の使用量は上記2種の原料の全質量の1%であった。
【0054】
(2)四つ口フラスコにイソオクチルアクリレート、メタクリルアミド、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸ヒドロキシエチル、アゾビスイソブチロニトリルを順に投入し、窒素を使用して反応フラスコ中の空気を置換し、窒素保護下において、70℃に昇温させ、5時間凝縮還流反応させて、化合物2を得た。イソオクチルアクリレート、メタクリルアミド、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸ヒドロキシエチルのモル比は1:0.2:0.9:0.2:0.6:0.3:0.8であった。アゾビスイソブチロニトリルの使用量は上記モノマーの全質量の0.2%であった。
【0055】
(3)上記化合物2と化合物1をモル比1:0.6で、80℃で1時間反応させ、さらにトリエチルアミンを化合物2とのモル比が1:1となるように添加し、70℃で0.2時間反応させて、最終的に水性防曇樹脂3を得て、数平均分子量が60000であった。
【0056】
実施例4
(1)ジブチル錫ジラウレートを触媒とし、ジメチロールプロピオン酸とジフェニルメタンジイソシアネートモノマーを50℃で1.5時間反応させ、化合物1を得た。ジメチロールプロピオン酸と、イソホロンジイソシアネートモノマーとのモル比は1:2.2であり、触媒の使用量は上記2種の原料の全質量の0.4%であった。
【0057】
(2)四つ口フラスコにイソオクチルアクリレート、メタクリルアミド、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸ヒドロキシエチル、アゾビスイソブチロニトリルを順に投入し、窒素を使用して反応フラスコ中の空気を置換し、窒素保護下において、70℃に昇温させ、6時間凝縮還流反応させて、化合物2を得た。イソオクチルアクリレート、メタクリルアミド、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸ヒドロキシエチルのモル比は1:0.3:0.9:0.2:0.6:0.2:0.9であった。アゾビスイソブチロニトリルの使用量は上記モノマーの全質量の0.3%であった。
【0058】
(3)上記化合物2と化合物1をモル比1:0.6で、80℃で2時間反応させ、さらに水酸化カリウムを化合物2とのモル比が1:0.6となるように添加し、60℃で0.2時間反応させて、最終的に水性防曇樹脂4を得て、数平均分子量が30000であった。
【0059】
比較例1
(1)ジブチル錫ジラウレートを触媒とし、ジメチロールプロピオン酸とトルエンジイソシアネートモノマーを50℃で0.3時間反応させ、化合物1を得た。ジメチロールプロピオン酸とトルエンジイソシアネートモノマーとのモル比は1:1.5であり、触媒の使用量は上記2種の原料の全質量の0.1%であった。
【0060】
(2)四つ口フラスコにイソオクチルアクリレート、メタクリルアミド、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸ヒドロキシエチル、アゾビスイソブチロニトリルを順に投入し、窒素を使用して反応フラスコ中の空気を置換し、窒素保護下において、80℃に昇温させ、4時間凝縮還流反応させて化合物2を得た。イソオクチルアクリレート、メタクリルアミド、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸ヒドロキシエチルのモル比は1:0.05:0.2:0.1:0.2:0.1:0.3であった。アゾビスイソブチロニトリルの使用量は上記モノマーの全質量の0.1%であった。
【0061】
(3)上記化合物2と化合物1をモル比1:0.2で、60℃で0.5時間反応させ、さらにトリエタノールアミンを化合物2とのモル比が1:0.2となるように添加し、60℃で0.1時間反応させて、最終的に水性防曇樹脂5を得て、数平均分子量が3000であった。
【0062】
比較例2
(1)ジブチル錫ジラウレートを触媒とし、ジメチロールプロピオン酸とトルエンジイソシアネートモノマーを35℃で0.5時間反応させ、化合物1を得た。ジメチロールプロピオン酸とトルエンジイソシアネートモノマーとのモル比は1:2であり、触媒の使用量は上記2種の原料の全質量の0.2%であった。
【0063】
(2)四つ口フラスコにイソオクチルアクリレート、メタクリルアミド、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸ヒドロキシエチル、アゾビスイソブチロニトリルを順に投入し、窒素を使用して反応フラスコ中の空気を置換し、窒素保護下において、50℃に昇温させ、4時間凝縮還流反応させて、化合物2を得た。イソオクチルアクリレート、メタクリルアミド、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸ヒドロキシエチルのモル比は1:0.1:0.8:0.4:0.4:0.4:1.2であった。アゾビスイソブチロニトリルの使用量は上記モノマーの全質量の0.1%であった。
【0064】
(3)上記化合物2と化合物1をモル比1:0.2で、50℃で0.5時間反応させ、さらにトリエタノールアミンを化合物2とのモル比が1:0.5となるように添加し、50℃で0.1時間反応させて、最終的に水性防曇樹脂6を得て、数平均分子量が2000であった。
【0065】
水性防曇塗料組成物の実施例
以下の水性防曇塗料組成物の実施例5〜8と比較例1〜2の各成分の含有量は表1に示され、ここで、塗料組成物の含有量はそれぞれ重量部である。
【0067】
上記実施例5〜8の塗料組成物を透明PC基材の表面に塗布し、焼付温度70℃及び焼付時間20分間で処理して防曇コーティングを得た。上記実施例5〜8で塗布されたコーティングに対して付着力、耐摩耗性、硬度、水接触角及び防曇性の試験を行った。試験方法は以下の通りである。
【0068】
付着力はGB9286−1998標準に従って試験された。
【0069】
RCA耐摩耗性試験方法は公知のRCA耐摩耗性試験方法であり、NormanRCA耐摩耗性試験機を使用し、塗膜の荷重が175gであった。
【0070】
鉛筆硬度試験はGB/T6739−2006標準に従って行われ、荷重が1000gであり、付着力試験はGB9286−1998標準に従って行われた。
【0071】
水接触角試験はGB/T23764−2009標準に従って行われた。
【0072】
防曇特性試験は冷霧と熱霧の2種の方法で評価した。冷霧試験法は、硬化コーティングを含むガラス製品を−15℃で静置し30分間保存した後に取り出し、50%湿度の室温条件下でコーティング製品の透明度を観察した。熱霧試験法は、製品のコーティング面を80℃の飽和水蒸気に静置し60分間後に取り出し、50%湿度の室温条件下でコーティング製品の透明度を観察した。透明度等級は順に1〜5で表され、そのうち、5は完全透明、1は不透明を表す。
【0073】
実施例5〜8及び比較例1〜2を透明PCに塗布して得たコーティングの特性試験結果は表2に示される。
【0075】
表2から分かるように、実施例5〜8の塗料組成物を透明PCに塗布して形成されたコーティングはすべて優れた表面特性を示し、特に実施例6の塗料組成物の防曇性は顕著であるとともに、良好な付着力、耐摩耗性及び硬度を有する。比較例のうち、比較例1〜2は製造される水性防曇樹脂の数平均分子量がそれぞれ3000及び2000であり、ともに本発明が要求する値よりも小さいため、塗料組成物の硬化コーティングの防曇性が大幅に低下し、且つコーティングの耐摩耗性も硬度もが大幅に低下する。
【0076】
以上は本発明の好適な実施例にすぎず、本発明を限定するためのものではない。当業者にとっては、本発明に対するさまざまな補正や変更が可能である。本発明の趣旨とその実質を逸脱しない場合に、いかなる補正、等価置換、改良などは、いずれも本発明の保護範囲内に属する。
【国際調査報告】