特表2021-515854(P2021-515854A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-515854(P2021-515854A)
(43)【公表日】2021年6月24日
(54)【発明の名称】ナノ材料被覆繊維
(51)【国際特許分類】
   D01F 1/09 20060101AFI20210528BHJP
   H01B 1/00 20060101ALI20210528BHJP
   H01B 5/00 20060101ALI20210528BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20210528BHJP
【FI】
   D01F1/09
   H01B1/00 H
   H01B5/00 H
   H01B13/00 501M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2020-568862(P2020-568862)
(86)(22)【出願日】2019年2月28日
(85)【翻訳文提出日】2020年10月19日
(86)【国際出願番号】IB2019051634
(87)【国際公開番号】WO2019166993
(87)【国際公開日】20190906
(31)【優先権主張番号】62/637,699
(32)【優先日】2018年3月2日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520335141
【氏名又は名称】メゾマット インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】フォウラー ポール
(72)【発明者】
【氏名】デモンサン シャルロット
(72)【発明者】
【氏名】ダングレモン アドリアン
(72)【発明者】
【氏名】シュルマン ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】ダルノキ−ヴェレス カロリー ジェイ.ティー
(72)【発明者】
【氏名】アームストロング クレア リンジー
【テーマコード(参考)】
4L035
5G307
【Fターム(参考)】
4L035EE13
5G307AA08
(57)【要約】
ナノ材料被覆繊維及びその製造方法が提供される。ナノ材料被覆繊維は、伸縮性繊維コアと、この伸縮性繊維コアの周りに被覆された高アスペクト比ナノ材料のメッシュとを含む。このメッシュは、ナノ材料被覆繊維の全長にわたって連続して材料特性をそのナノ材料被覆繊維に付与する。このメッシュは、ナノ材料被覆繊維の長さの伸縮の際にその材料特性を維持する。ナノ材料被覆繊維は、伸縮性繊維コアを得る工程と、この伸縮性繊維コアを高アスペクト比ナノ材料で被覆する工程と、この伸縮性繊維コアの周りに上記高アスペクト比ナノ材料のメッシュを形成する工程とにより製造される。このメッシュは、電気伝導率をナノ材料被覆繊維に付与するために導電性であってもよい。ナノ材料被覆繊維は、撚り糸へと巻かれてもよい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ材料被覆繊維であって、
伸縮性繊維コアと、
前記伸縮性繊維コアの周りに被覆された高アスペクト比ナノ材料のメッシュであって、前記メッシュは、前記ナノ材料被覆繊維の全長にわたって連続して材料特性を前記ナノ材料被覆繊維に付与し、前記メッシュはさらに、前記ナノ材料被覆繊維の長さの伸縮の際に、前記材料特性を維持するメッシュと
を含むナノ材料被覆繊維。
【請求項2】
前記高アスペクト比ナノ材料が導電性であり、前記材料特性が電気伝導率である請求項1に記載のナノ材料被覆繊維。
【請求項3】
前記伸縮性繊維コアがポリマーを含む請求項1又は請求項2に記載のナノ材料被覆繊維。
【請求項4】
前記伸縮性繊維コアが少なくとも約10%伸縮可能である請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のナノ材料被覆繊維。
【請求項5】
前記伸縮性繊維コアが約1ミリメートル未満の半径を有する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のナノ材料被覆繊維。
【請求項6】
前記高アスペクト比ナノ材料が、少なくとも約500:1の平均の長さ対直径のアスペクト比を有する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のナノ材料被覆繊維。
【請求項7】
前記高アスペクト比ナノ材料が約50ナノメートル未満の平均直径を有する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のナノ材料被覆繊維。
【請求項8】
前記高アスペクト比ナノ材料のメッシュの周りに処理層をさらに含む請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のナノ材料被覆繊維。
【請求項9】
前記メッシュの前記高アスペクト比ナノ材料が、前記ナノ材料被覆繊維の長さに垂直な周方向との整列に向かって斜交している請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のナノ材料被覆繊維。
【請求項10】
ナノ材料被覆繊維の撚り糸であって、
第1伸縮性繊維コアと、
前記第1伸縮性繊維コアと一緒に巻かれて撚り糸を形成する第2伸縮性繊維コアと、
前記撚り糸の周り、及び前記第1伸縮性繊維コアと前記第2伸縮性繊維コアとの間に被覆された高アスペクト比ナノ材料のメッシュであって、前記メッシュは、前記ナノ材料被覆繊維の撚り糸の全長にわたって連続して材料特性を前記ナノ材料被覆繊維の撚り糸に付与し、前記メッシュはさらに、前記ナノ材料被覆繊維の撚り糸の長さの伸縮の際に前記材料特性を維持するメッシュと
を含むナノ材料被覆繊維の撚り糸。
【請求項11】
前記高アスペクト比ナノ材料が導電性であり、前記材料特性が電気伝導率である請求項10に記載のナノ材料被覆繊維の撚り糸。
【請求項12】
ナノ材料被覆繊維の製造方法であって、
伸縮性繊維コアを得る工程と、
前記伸縮性繊維コアを高アスペクト比ナノ材料で被覆する工程と、
前記伸縮性繊維コアの周りに前記高アスペクト比ナノ材料のメッシュを形成する工程であって、前記メッシュは、前記ナノ材料被覆繊維の全長にわたって連続して材料特性を前記ナノ材料被覆繊維に付与し、前記メッシュは、前記ナノ材料被覆繊維の長さの伸縮の際に前記材料特性を維持する工程と
を備える方法。
【請求項13】
前記高アスペクト比ナノ材料が導電性であり、前記材料特性が電気伝導率である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記高アスペクト比ナノ材料を、前記ナノ材料被覆繊維の長さに垂直な周方向との整列に向かって斜交させる工程をさらに備える請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ナノ材料被覆繊維の撚り糸の製造方法であって、
第1伸縮性繊維コアを得る工程と、
第2伸縮性繊維コアを得る工程と、
前記第1伸縮性繊維コアを高アスペクト比ナノ材料で被覆する工程と、
前記第2伸縮性繊維コアを高アスペクト比ナノ材料で被覆する工程と、
前記第1伸縮性繊維コア及び前記第2伸縮性繊維コアを一緒に巻いて、撚り糸を形成する工程と、
前記撚り糸の周り、及び前記第1伸縮性繊維コアと前記第2伸縮性繊維コアとの間に前記高アスペクト比ナノ材料のメッシュを形成する工程であって、前記メッシュは、前記ナノ材料被覆繊維の撚り糸の全長にわたって連続して材料特性を前記ナノ材料被覆繊維の撚り糸に付与し、前記メッシュは、前記ナノ材料被覆繊維の撚り糸の長さの伸縮の際に前記材料特性を維持する工程と
を備える方法。
【請求項16】
前記高アスペクト比ナノ材料が導電性であり、前記材料特性が電気伝導率である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記高アスペクト比ナノ材料を、前記ナノ材料被覆繊維の撚り糸の長さに垂直な周方向との整列に向かって斜交させる工程をさらに備える請求項15又は請求項16に記載の方法。
【請求項18】
導電性のナノ材料被覆繊維であって、
伸縮性繊維コアと、
前記伸縮性繊維コアの周りに被覆された導電性の高アスペクト比ナノ材料の導電性のメッシュであって、前記導電性のメッシュは、前記導電性のナノ材料被覆繊維の全長にわたって電気を伝導し、前記導電性のメッシュはさらに、前記導電性のナノ材料被覆繊維の長さの伸縮の際に電気伝導率を維持する導電性のメッシュと
を含む導電性のナノ材料被覆繊維。
【請求項19】
前記導電性のメッシュの周りに電気絶縁層をさらに含む請求項18に記載のナノ材料被覆繊維。
【請求項20】
導電性のナノ材料被覆繊維の撚り糸であって、
第1伸縮性繊維コアと、
前記第1伸縮性繊維コアと一緒に巻かれて撚り糸を形成する第2伸縮性繊維コアと、
前記撚り糸の周り、及び前記第1伸縮性繊維コアと前記第2伸縮性繊維コアとの間に被覆された導電性の高アスペクト比ナノ材料の導電性のメッシュであって、前記導電性のメッシュは、前記導電性のナノ材料被覆繊維の撚り糸の全長にわたって電気を伝導し、前記導電性のメッシュはさらに、前記導電性のナノ材料被覆繊維の撚り糸の長さの伸縮の際に電気伝導率を維持する導電性のメッシュと
を含む導電性のナノ材料被覆繊維の撚り糸。
【請求項21】
前記導電性のメッシュの周りに電気絶縁層をさらに含む請求項20に記載の導電性のナノ材料被覆繊維の撚り糸。
【請求項22】
導電性のナノ材料被覆繊維の製造方法であって、
伸縮性繊維コアを得る工程と、
前記伸縮性繊維コアを導電性の高アスペクト比ナノ材料で被覆する工程と、
前記伸縮性繊維コアの周りに前記導電性の高アスペクト比ナノ材料の導電性のメッシュを形成する工程であって、前記導電性のメッシュは、前記ナノ材料被覆繊維の全長にわたって連続的に導電性であり、前記導電性のメッシュは、前記ナノ材料被覆繊維の長さの伸縮の際に電気伝導率を維持する工程と
を備える方法。
【請求項23】
前記導電性の高アスペクト比ナノ材料を、前記導電性のナノ材料被覆繊維の長さに垂直な周方向との整列に向かって斜交させる工程をさらに備える請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記導電性のメッシュを電気絶縁層で被覆する工程をさらに備える請求項22又は請求項23に記載の方法。
【請求項25】
導電性のナノ材料被覆繊維の撚り糸の製造方法であって、
第1伸縮性繊維コアを得る工程と、
第2伸縮性繊維コアを得る工程と、
前記第1伸縮性繊維コアを導電性の高アスペクト比ナノ材料で被覆する工程と、
前記第2伸縮性繊維コアを導電性の高アスペクト比ナノ材料で被覆する工程と、
前記第1伸縮性繊維コア及び前記第2伸縮性繊維コアを一緒に巻いて、撚り糸を形成する工程と、
前記撚り糸の周り、及び前記第1伸縮性繊維コアと前記第2伸縮性繊維コアとの間に前記導電性の高アスペクト比ナノ材料の導電性のメッシュを形成する工程であって、前記導電性のメッシュは、前記ナノ材料被覆繊維の全長にわたって連続的に導電性であり、前記導電性のメッシュは、前記ナノ材料被覆繊維の長さの伸縮の際に電気伝導率を維持する工程と
を備える方法。
【請求項26】
前記導電性のメッシュを電気絶縁層で被覆する工程をさらに含む請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記導電性の高アスペクト比ナノ材料を、前記導電性のナノ材料被覆繊維の撚り糸の長さに垂直な周方向との整列に向かって斜交させる工程をさらに備える請求項25又は請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全体として材料に、特に繊維材料に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維材料は、繊維の組み合わせから形成される。繊維は、その幅よりも著しく長い天然物質又は合成物質である。天然繊維としては、植物繊維、木質繊維、及び他の天然に存在する繊維が挙げられる。合成繊維としては、とりわけ金属繊維、炭素繊維、ポリマー繊維、及びマイクロファイバー(超極細繊維)が挙げられる。多くの繊維が織物生産で使用されている。
【0003】
合成繊維は、与えられる用途に好適な所定の材料特性を持つように改変されてもよい。例えば、合成繊維は、所定の密度、引張強さ、弾性係数、吸水性、又は他の特性を持つように設計されてもよい。所定の材料特性を持つ合成繊維は、その材料特性、又は類似の材料特性を、その合成繊維が組み込まれる繊維材料又は物理的な物品に付与する可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書の一態様によれば、ナノ材料被覆繊維は、伸縮性繊維コアと、この伸縮性繊維コアの周りに被覆された高アスペクト比ナノ材料のメッシュとを含む。このメッシュは、ナノ材料被覆繊維の全長にわたって連続して材料特性をそのナノ材料被覆繊維に付与し、ナノ材料被覆繊維の長さの伸縮の際に、その材料特性を維持するためのものである。
【0005】
本明細書の別の態様によれば、ナノ材料被覆繊維の撚り糸(紡糸、ヤーン)は、第1伸縮性繊維コアと、この第1伸縮性繊維コアと一緒に巻かれて撚り糸を形成する第2伸縮性繊維コアと、上記撚り糸の周り、及び第1伸縮性繊維コアと第2伸縮性繊維コアとの間に被覆された高アスペクト比ナノ材料のメッシュとを含む。このメッシュは、ナノ材料被覆繊維の撚り糸の全長にわたって連続して材料特性をそのナノ材料被覆繊維の撚り糸に付与し、ナノ材料被覆繊維の撚り糸の長さの伸縮の際にその材料特性を維持するためのものである。
【0006】
本明細書の別の態様によれば、ナノ材料被覆繊維の製造方法は、伸縮性繊維コアを得る工程と、この伸縮性繊維コアを高アスペクト比ナノ材料で被覆する工程と、この伸縮性繊維コアの周りに上記高アスペクト比ナノ材料のメッシュを形成する工程とを備える。このメッシュは、ナノ材料被覆繊維の全長にわたって連続して材料特性をそのナノ材料被覆繊維に付与し、ナノ材料被覆繊維の長さの伸縮の際にその材料特性を維持するためのものである。
【0007】
本明細書の別の態様によれば、ナノ材料被覆繊維の撚り糸の製造方法は、第1伸縮性繊維コアを得る工程と、第2伸縮性繊維コアを得る工程と、第1伸縮性繊維コアを高アスペクト比ナノ材料で被覆する工程と、第2伸縮性繊維コアを高アスペクト比ナノ材料で被覆する工程と、上記第1伸縮性繊維コア及び上記第2伸縮性繊維コアを一緒に巻いて、撚り糸を形成する工程と、この撚り糸の周り、及び上記第1伸縮性繊維コアと上記第2伸縮性繊維コアとの間に上記高アスペクト比ナノ材料のメッシュを形成する工程とを備える。このメッシュは、ナノ材料被覆繊維の撚り糸の全長にわたって連続して材料特性をそのナノ材料被覆繊維の撚り糸に付与し、ナノ材料被覆繊維の撚り糸の長さの伸縮の際にその材料特性を維持する。
【0008】
本明細書の別の態様によれば、導電性のナノ材料被覆繊維は、伸縮性繊維コアと、この伸縮性繊維コアの周りに被覆された導電性の高アスペクト比ナノ材料の導電性のメッシュとを含む。この導電性のメッシュは、導電性のナノ材料被覆繊維の全長にわたって電気を伝導し、その導電性のナノ材料被覆繊維の長さの伸縮の際に電気伝導率を維持するためのものである。
【0009】
本明細書の別の態様によれば、導電性のナノ材料被覆繊維の撚り糸は、第1伸縮性繊維コアと、この第1伸縮性繊維コアと一緒に巻かれて撚り糸を形成する第2伸縮性繊維コアと、この撚り糸の周り、及び第1伸縮性繊維コアと第2伸縮性繊維コアとの間に被覆された導電性の高アスペクト比ナノ材料の導電性のメッシュとを含む。この導電性のメッシュは、導電性のナノ材料被覆繊維の撚り糸の全長にわたって電気を伝導し、その導電性のナノ材料被覆繊維の撚り糸の長さの伸縮の際に電気伝導率を維持するためのものである。
【0010】
本明細書の別の態様によれば、導電性のナノ材料被覆繊維の製造方法は、伸縮性繊維コアを得る工程と、この伸縮性繊維コアを導電性の高アスペクト比ナノ材料で被覆する工程と、この伸縮性繊維コアの周りに上記導電性の高アスペクト比ナノ材料の導電性のメッシュを形成する工程とを備える。この導電性のメッシュは、ナノ材料被覆繊維の全長にわたって連続的に導電性であり、そのナノ材料被覆繊維の長さの伸縮の際に電気伝導率を維持する。
【0011】
本明細書の別の態様によれば、導電性のナノ材料被覆繊維の撚り糸の製造方法は、第1伸縮性繊維コアを得る工程と、第2伸縮性繊維コアを得る工程と、この第1伸縮性繊維コアを導電性の高アスペクト比ナノ材料で被覆する工程と、第2伸縮性繊維コアを導電性の高アスペクト比ナノ材料で被覆する工程と、上記第1伸縮性繊維コア及び上記第2伸縮性繊維コアを一緒に巻いて、撚り糸を形成する工程と、この撚り糸の周り、及び上記第1伸縮性繊維コアと上記第2伸縮性繊維コアとの間に上記導電性の高アスペクト比ナノ材料の導電性のメッシュを形成する工程とを備える。この導電性のメッシュは、ナノ材料被覆繊維の全長にわたって連続的に導電性であり、そのナノ材料被覆繊維の長さの伸縮の際に電気伝導率を維持する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、例示のナノ材料被覆繊維のセグメントの図である。
図2図2は、例示のナノ材料被覆繊維のセグメントの顕微鏡写真である。
図3図3は、例示のナノ材料被覆繊維のセグメントのクローズアップ顕微鏡写真である。
図4A図4Aは、例示のナノ材料被覆繊維のセグメントの図である。
図4B図4Bは、図4Aのナノ材料被覆繊維のメッシュと同様の例示のナノ材料被覆繊維のメッシュの一部分のクローズアップ顕微鏡写真である。
図5A図5Aは、例示のナノ材料被覆繊維のセグメントの図であり、このナノ材料被覆繊維は、ナノ材料被覆繊維の長さに対して垂直な周方向との整列に向かって斜交した高アスペクト比ナノ材料のメッシュを含む。
図5B図5Bは、図5Aのナノ材料被覆繊維のメッシュと同様の例示のナノ材料被覆繊維のメッシュの一部分のクローズアップ顕微鏡写真である。
図6A図6Aは、例示のナノ材料被覆繊維のセグメントの図である。
図6B図6Bは、長さに沿って伸長した図6Aのナノ材料被覆繊維のセグメントの図である。
図6C図6Cは、長さに沿って圧縮された図6Aのナノ材料被覆繊維のセグメントの図である。
図7図7は、ナノ材料被覆繊維の例示の製造方法のフロー図である。
図8図8は、例示のナノ材料被覆繊維の撚り糸のセグメントの図である。
図9図9は、例示のナノ材料被覆繊維の撚り糸のセグメントの顕微鏡写真である。
図10図10は、例示のナノ材料被覆繊維の撚り糸のセグメントの図であり、この撚り糸は絶縁層によって覆われている。
図11図11は、ナノ材料被覆繊維の撚り糸の例示の製造方法のフロー図である。
図12図12は、ナノ材料被覆繊維を製造するための例示の装置の概略図である。
図13図13は、例示のナノ材料被覆繊維の撚り糸の電気抵抗を歪みの関数として示すプロットである。
図14図14は、一連の伸長サイクルにわたる例示のナノ材料被覆繊維の撚り糸の電気抵抗を示すプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
繊維材料は、各々望ましい材料特性を持ち、組み合わさって望ましい全体的な材料特性をその繊維材料に付与するいくつかの繊維から作製されてもよい。しかしながら、このいくつかの繊維は、望ましくない材料特性を副次的効果として繊維材料に付与する可能性もある。例えば、各々が導電性であるいくつかの金属繊維は、望ましくは全体としても導電性である繊維材料を製造するために組み合わされる可能性がある。しかしながら、その金属繊維は、繊維材料を望ましくないほどに剛性にし、それゆえ伸縮性の電子機器等の特定の用途にとって使用できないものにする可能性がある。
【0014】
繊維のナノ材料被覆(コーティング)は、別の方法では繊維によって付与される可能性がある望ましくない材料特性という副次的効果を軽減しつつ、繊維によって付与される望ましい材料特性を持つ繊維材料の製造を可能にしうる。繊維コアは、組み合わさって繊維コアの周りにメッシュを形成してその繊維に望ましい材料特性を全体的に付与する高アスペクト比ナノ材料で被覆されてもよい。メッシュを介して望ましい材料特性を付与することは、繊維コア自体がその望ましい材料特性を持つ必要性を取り除く。これにより、繊維コア自体は、付加的な望ましい材料特性を持つ可能性があり、又は別の方法であれば望ましくない副次的効果を繊維材料に付与する可能性がある望ましくない材料特性を持つことを回避する可能性がある。
【0015】
図1は、例示のナノ材料被覆繊維100のセグメントの図であり、部分的に断面で示されている。ナノ材料被覆繊維100は、伸縮性繊維コア110と、伸縮性繊維コア110の周りに被覆された高アスペクト比ナノ材料122のメッシュ120とを含む。
【0016】
伸縮性繊維コア110は、それが柔軟であり、曲げることができ、変形可能であり、破断することなくかなりの程度伸長されても、又は圧縮されてもよいという点で、伸縮可能である。伸縮性繊維コア110は、好ましくは少なくとも約10%、より好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約50%伸縮性があってもよい。伸縮性繊維コア110は、約1ミリメートル未満の半径を有してもよく、従ってマイクロファイバーと呼ばれてもよく、好ましくは、伸縮性繊維コア110は、約1〜約500マイクロメートルの半径を有してもよい。
【0017】
伸縮性繊維コア110は、任意の伸縮可能な材料、例えば高分子材料を含んでもよい。例えば、この高分子材料は、ポリスチレン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸n−ブチル)、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニル、ポリオレフィン、アクリル系ポリマー、ポリウレタン、及び熱可塑性ポリウレタン(TPU)のうちの1つの又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0018】
メッシュ120は、ナノ材料被覆繊維100の全長にわたって連続して材料特性をナノ材料被覆繊維100に付与するためのものである。メッシュ120は、さらには、ナノ材料被覆繊維100の長さの伸縮の際に材料特性を維持するためのものである。換言すれば、ナノ材料被覆繊維100が伸縮され、湾曲され、又は別の態様で変形されるときに、メッシュ120は、十分に連続で留まり、その材料特性をナノ材料被覆繊維100に付与することを維持する。いくつかの例では、変形にもかかわらず材料特性を維持することは、高アスペクト比ナノ材料122が変形のあいだ接触したままで留まることにより成し遂げられてもよい。
【0019】
高アスペクト比ナノ材料122は、換言すれば、長さが幅又は直径よりも実質的に大きい細長いナノ材料堆積物を含む。高アスペクト比ナノ材料122は、少なくとも約50:1、又はより好ましくは約500:1、より好ましくはなお約1000:1、より好ましくはなお10,000:1の平均の長さ対直径のアスペクト比を有してもよい。約1,000,000:1以上の平均の長さ対直径のアスペクト比を有する高アスペクト比ナノ材料122が使用されてもよい。高アスペクト比ナノ材料122は、約50ナノメートル未満の平均直径を有してもよい。
【0020】
メッシュ120によって付与される材料特性としては、所定の特性を有し伸縮性繊維コア110の周りにメッシュ120を形成する複数の高アスペクト比ナノ材料122の協働の結果として現れるナノ材料被覆繊維100全体に帰属できるいずれの材料特性を挙げてもよい。メッシュ120は、材料特性を所定の長さのナノ材料被覆繊維100に付与するために、ナノ材料被覆繊維100の全長に、又は少なくともそのセグメントの長さに広がってもよい。
【0021】
例えば、高アスペクト比ナノ材料122は導電性であってもよく、材料特性は電気伝導率であってもよい。換言すれば、それぞれ個々の高アスペクト比ナノ材料122の電気伝導率が組み合わされて、全体としての電気伝導率がナノ材料被覆繊維100に付与される。そのような例では、ナノ材料被覆繊維100は、導電性のナノ材料被覆繊維と呼ばれてもよい。このような導電性のナノ材料被覆繊維は、伸縮性繊維コアと、この伸縮性繊維コアの周りに被覆された導電性の高アスペクト比ナノ材料の導電性のメッシュとを含み、この導電性のメッシュは、導電性のナノ材料被覆繊維の全長にわたって電気を伝導し、この導電性のメッシュは、さらに、導電性のナノ材料被覆繊維の長さの伸縮の際に電気伝導率を維持する。そのような例では、導電性の高アスペクト比ナノ材料が変形のあいだ接触したままで留まることにより、導電性のメッシュの電気伝導率は、変形にもかかわらず維持される。
【0022】
高アスペクト比ナノ材料122が導電性である場合、ナノ材料被覆繊維100は、伸縮性配線、導電性の織物、例えばスポーツ用又は医療センシング用のウェアラブル(装着用)技術の生産において、及び軽量で耐久性があり、伸縮又は他の態様で変形されるあいだ導電性を保つ材料が望まれるフレキシブルな電子機器の開発において使用されてもよい。高アスペクト比ナノ材料122は、電気伝導率以外の他の望ましい材料特性を持つように設計されてもよい。例えば、加熱用途のために、高アスペクト比ナノ材料122は高熱伝導率及び高電気抵抗率を持つように設計されてもよく、そのような高アスペクト比ナノ材料122は、衣類、航空機の翼、又はフレキシブルな電熱線が望ましい可能性がある他の用途において使用されるべき電熱線の製造において使用されてもよい。別の例として、高アスペクト比ナノ材料122は、保護用衣服の製造において使用するための耐薬品性という材料特性を有してもよい。
【0023】
高アスペクト比ナノ材料122が導電性である場合、高アスペクト比ナノ材料122は、ナノワイヤ形態の銅、銀、金、白金、鉄等の金属化合物又は金属元素、カーボンナノチューブ、他の高アスペクト比ナノ粒子、及び他の高アスペクト比ナノ材料を含んでもよい。高アスペクト比ナノ材料122は、伸縮性繊維コア110を被覆するための被覆材料に組み込まれるとき、高アスペクト比ナノ材料122の粉末の乾燥固体形態にあってもよいし、又は溶液に分散されてもよい。
【0024】
ナノ材料被覆繊維100は、処理層を高アスペクト比ナノ材料122のメッシュ120の周りにさらに備えてもよい。例えば、伸縮性繊維コア110へのメッシュ120の接着を高めるために、ナノ材料被覆繊維100は化学的に処理されてもよい。別の例として、メッシュ120の周りに絶縁コーティングを形成するために、ナノ材料被覆繊維100は絶縁材料の層で処理されてもよい。ナノ材料被覆繊維100を被覆するための被覆材料に組み込まれるときの絶縁処理層は、ポリスチレン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸n−ブチル)、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニル、ポリオレフィン、アクリル系ポリマー、ポリウレタン又は熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含んでもよい。絶縁処理層は、高アスペクト比ナノ材料122が導電性である例では電気絶縁をもたらしてもよいし、又は耐薬品性等の保護的な絶縁をもたらしてもよい。絶縁処理層は、伸縮能力について選択されてもよく、従って、伸縮性繊維コア110と同様の伸縮性を有するように選択されてもよい。
【0025】
このように、ナノ材料被覆繊維100は、高度に柔軟性で高弾性であってもよく、メッシュ120が導電性である場合には、高導電性であってもよい。例えば、ナノ材料被覆繊維100は、約1ギガパスカル(GPa)未満の曲げ弾性率を有してもよく、破断することなく約10%、30%、又は50%の歪みに耐える可能性があり、約1000ohm/cm未満、又はより好ましくは約1ohm/cm未満の抵抗率を維持してもよい。
【0026】
図2は、例示のナノ材料被覆繊維200のセグメントの顕微鏡写真である。この顕微鏡写真は光学顕微鏡法を使用して撮影された。示されるナノ材料被覆繊維200は、図1のナノ材料被覆繊維100と同様であり、従って伸縮性繊維コア210と、高アスペクト比ナノ材料222のメッシュ220とを含む。上記の要素のさらなる説明については、図1のナノ材料被覆繊維100の説明が参照されてもよい。
【0027】
図3は、例示のナノ材料被覆繊維300のセグメントのクローズアップ顕微鏡写真である。この顕微鏡写真は光学顕微鏡法を使用して撮影された。示されるナノ材料被覆繊維300は、図1のナノ材料被覆繊維100と同様であり、従って伸縮性繊維コア310と、高アスペクト比ナノ材料322のメッシュ320とを含む。上記の要素のさらなる説明については、図1のナノ材料被覆繊維100の説明が参照されてもよい。
【0028】
図4Aは、例示のナノ材料被覆繊維400のセグメントの図である。ナノ材料被覆繊維400は、図1のナノ材料被覆繊維100と同様であり、従って伸縮性繊維コア410と、高アスペクト比ナノ材料422のメッシュ420とを含む。上記の要素のさらなる説明については、図1のナノ材料被覆繊維100の説明が参照されてもよい。ナノ材料被覆繊維400は、長手方向402、及び伸縮性繊維コア410の外周の周りに延びる周方向404を含む。高アスペクト比ナノ材料422は、メッシュ420の中にランダムに配置されている。それゆえ、高アスペクト比ナノ材料422は、ランダム配置で他の高アスペクト比ナノ材料422と重なり接触する。
【0029】
図4Bは、ナノ材料被覆繊維400のメッシュ420と同様の例示のナノ材料被覆繊維のメッシュの一部分のクローズアップ顕微鏡写真である。この顕微鏡写真は原子間力顕微鏡法を使用して撮影された。高アスペクト比ナノ材料422は、メッシュ420の中にランダムに配置されて示されている。それゆえ、高アスペクト比ナノ材料422は、ランダム配置で他の高アスペクト比ナノ材料422と重なり接触する。
【0030】
図5Aは、例示のナノ材料被覆繊維500のセグメントの図である。ナノ材料被覆繊維500は、図1のナノ材料被覆繊維100と同様であり、従って伸縮性繊維コア510と、高アスペクト比ナノ材料522のメッシュ520とを含む。上記の要素のさらなる説明については、図1のナノ材料被覆繊維100の説明が参照されてもよい。ナノ材料被覆繊維500は、長手方向502、及び伸縮性繊維コア510の外周の周りに延びる周方向504を含む。図4Aのナノ材料被覆繊維400とは対照的に、高アスペクト比ナノ材料522は、周方向504との整列に向かって斜交して(ねじれて)おり、周方向504は、ナノ材料被覆繊維500の長手方向502に、それゆえ長さに垂直である。
【0031】
図5Bは、ナノ材料被覆繊維500のメッシュ520と同様の例示のナノ材料被覆繊維のメッシュの一部分のクローズアップ顕微鏡写真である。この顕微鏡写真は原子間力顕微鏡法を使用して撮影された。高アスペクト比ナノ材料522は、周方向504との整列に向かって斜交して配置されて示されている。
【0032】
高アスペクト比ナノ材料522が導電性である場合、周方向504との整列に向かって斜交したメッシュ520は、伸縮、曲げ又は他の変形の際に、ナノ材料被覆繊維500の長さに沿って長手方向502に電気伝導性の接続をより良好に保持する。
【0033】
図6Aは、例示のナノ材料被覆繊維600のセグメントの図である。ナノ材料被覆繊維600は、図1のナノ材料被覆繊維100と同様であり、従って伸縮性繊維コア610と、高アスペクト比ナノ材料622のメッシュ620とを含む。上記の要素のさらなる説明については、図1のナノ材料被覆繊維100の説明が参照されてもよい。示されるように、ナノ材料被覆繊維600は、長手方向に第1長さ602を有する。
【0034】
図6Bは、ナノ材料被覆繊維600のセグメントの、その長さに沿って伸長したときの図であり、従ってこのセグメントは長手方向に第2長さ604を有し、この第2長さ604は第1長さ602よりも大きい。メッシュ620は、相互に接続されたメッシュ構造を伸長のあいだ及び伸長後に実質的に維持する。
【0035】
図6Cは、ナノ材料被覆繊維600のセグメントの、その長さに沿って圧縮されたときの図であり、従ってこのセグメントは長手方向に第3長さ606を有し、この第3長さは第1長さ602及び第2長さ604よりも小さい。メッシュ620は、相互に接続されたメッシュ構造を圧縮のあいだ及び圧縮の後に実質的に維持する。
【0036】
図示されるとおり、ナノ材料被覆繊維600のメッシュ620は、ナノ材料被覆繊維600の伸長及び圧縮のあいだ並びに伸長及び圧縮の後に連続性を維持する。
【0037】
図7は、ナノ材料被覆繊維を製造するための例示の方法700のフロー図である。方法700は、例えば図1のナノ材料被覆繊維100等のナノ材料被覆繊維を製造するために使用されてもよい。従って、方法700は、導電性のナノ材料被覆繊維を製造するために使用されてもよい。方法700はブロック702で始まる。
【0038】
ブロック704において、伸縮性繊維コアが得られる。この伸縮性繊維コアは、図1の伸縮性繊維コア110と同様であってもよい。伸縮性繊維コアの材料は、図1の伸縮性繊維コア110に関して提供された例示の材料のいずれかから選択されてもよい。いくつかの例では、ポリマー製の出発物質が、例えばペレット、円柱状のフィラメント、又は繊維の巻物として保管されて維持され、加熱部で加熱され、所望の直径で加熱部から押し出されてもよい。そのような例では、種々の糸車、引張要素、及び他の機械的手段が伸縮性繊維コアを製造するための形成プロセスを通して材料を案内してもよい。例えば、TPUの1mm直径の巻物が約210℃〜240℃で加熱され、直径約0.5mmのノズルを通して押し出されてもよい。引張要素は、円筒状に集める回転式のスプールを備えてもよい。ポリマー製の出発物質がTPUである例では、そのTPUを約0.01cm/s〜約0.025cm/sの範囲の速度で加熱要素に供給し、押し出された液体を約1.8m/s〜約4.5m/sの速度で回転する円筒の上に引っ張ることにより、約5〜約100マイクロメートルの範囲の半径を有する伸縮性繊維コアが製造されてもよい。
【0039】
ブロック706において、伸縮性繊維コアは高アスペクト比ナノ材料で被覆される。この高アスペクト比ナノ材料は、図1の高アスペクト比ナノ材料122と同様であってもよい。方法700が導電性のナノ材料被覆繊維を製造するために使用される場合、高アスペクト比ナノ材料は導電性であり、従って図1の高アスペクト比ナノ材料122に関して上で論じられた導電性の高アスペクト比ナノ材料の一覧から選択されてもよい。
【0040】
被覆(コーティング)は、伸縮性繊維コアを被覆材料で被覆するコーティングチャンバーに伸縮性繊維コアを通すことを伴ってもよい。この被覆材料は、粉末形態、揮発性溶媒の溶液、又は別の形態の高アスペクト比ナノ材料を含んでもよい。いくつかの例では、マイクロファイバーが通される開口は、被覆材料が毛細管力によってチャンバー内に保持されるように、十分小さい。
【0041】
伸縮性繊維コアは、高アスペクト比ナノ材料で複数回被覆されてもよい。同じ被覆材料の多数の層が塗布されてもよいし、又は異なる被覆材料の異なる層が塗布されてもよい。従って、いくつかの被覆物が当該方法における種々の段階で塗布されてもよいという点で、ナノ材料被覆繊維の製造方法は、モジュール式であってもよい。
【0042】
ブロック708において、高アスペクト比ナノ材料のメッシュが伸縮性繊維コアの周りに形成される。このメッシュは、図1のメッシュ120と同様であってもよい。このメッシュは、ナノ材料被覆繊維の全長にわたって連続して材料特性をナノ材料被覆繊維に付与する。このメッシュは、ナノ材料被覆繊維の長さの伸縮の際にその材料特性を維持する。方法700が導電性のナノ材料被覆繊維を製造するために使用される場合、高アスペクト比ナノ材料は導電性であり、上記材料特性は電気伝導率である。従って、そのような例では、上記メッシュは、伸縮性繊維コアの周りの導電性の高アスペクト比ナノ材料の導電性のメッシュであり、この導電性のメッシュは、ナノ材料被覆繊維の全長にわたって連続的に導電性であり、この導電性のメッシュは、ナノ材料被覆繊維の長さの伸縮の際に電気伝導率を維持する。方法700はブロック710で終了する。
【0043】
方法700は、上記高アスペクト比ナノ材料を、ナノ材料被覆繊維の長さに垂直な周方向との整列に向かって斜交させる(ねじる)工程をさらに含んでもよい。従って、伸縮性繊維コアは、長手方向、及び伸縮性繊維コアの外周の周りに延びる周方向を有してもよく、高アスペクト比ナノ材料は、周方向との整列に向かって斜交していてもよい。高アスペクト比ナノ材料の整列を斜交させるために、高アスペクト比ナノ材料は、例えば、伸縮性繊維コアが高アスペクト比ナノ材料の被覆物を通る時に伸縮性繊維コアを回転させるか、又は被覆物を塗布する装置を回転させることによりせん断整列されてもよい。
【0044】
方法700は、伸縮性繊維コアへのメッシュの接着を高めるために、伸縮性繊維コアを処理する工程をさらに含んでもよい。接着を高めるための処理は、例えば、伸縮性繊維コアの表面を揮発性溶媒で膨潤させること、又は熱を加えて伸縮性繊維コアの表面を部分的に融解及び/又は軟化させることを伴ってもよい。上記処理が伸縮性繊維コアの表面を揮発性溶媒で膨潤させることを伴う場合、その揮発性溶媒は、トルエン、アセトン、メタノール、アセトニトリル、シクロヘキサノン、又はテトラヒドロフランを含んでもよい。
【0045】
方法700が導電性のナノ材料被覆繊維を製造するために使用される場合、方法700は、導電性のメッシュを電気絶縁層で被覆する工程をさらに含んでもよい。
【0046】
方法700は、示されるのとまったく同じ順序で実行される必要はない。方法700のあるブロックがさらなるブロックと結合されてもよいし、又はさらなるブロックへと分割されてもよい。
【0047】
図8は、例示のナノ材料被覆繊維の撚り糸800のセグメントの図である。撚り糸800は、一緒に巻かれた複数の伸縮性繊維コア810を含む。例えば、撚り糸800は、少なくとも第1伸縮性繊維コア810Aと、第1伸縮性繊維コア810Aと一緒に巻かれた第2伸縮性繊維コア810Bとを含む。撚り糸800は、いくつかのより多くの伸縮性繊維コア810,例えば一緒に巻かれた約75本又は約100本の伸縮性繊維コア810等を含んでもよい。伸縮性繊維コア810は、図1の伸縮性繊維コア110と同様であってもよく、伸縮性繊維コア810については、さらなる説明のために、図1の説明を参照されてもよい。
【0048】
撚り糸800は、撚り糸800の周りに、及び伸縮性繊維コア810の間に、例えば第1伸縮性繊維コア810Aと第2伸縮性繊維コア810Bとの間に被覆された高アスペクト比ナノ材料822のメッシュ820を含む。メッシュ820は、図1のメッシュ120と同様であってもよく、メッシュ820については、さらなる説明のために、図1の説明を参照されてもよい。従って、メッシュ820は、ナノ材料被覆繊維822の撚り糸800の全長にわたって連続して材料特性をナノ材料被覆繊維822の撚り糸800に付与するためのものである。メッシュ820は、さらに、ナノ材料被覆繊維822の撚り糸800の長さの伸縮の際にその材料特性を維持するためのものである。
【0049】
図1のナノ材料被覆繊維100に関して上記したのと同様に、メッシュ820によって付与される材料特性は、所定の特性を有し撚り糸800の周りに、及び伸縮性繊維コア810の間にメッシュ820を形成する複数の高アスペクト比ナノ材料822の協働の結果として現れるナノ材料被覆繊維の撚り糸800全体に帰属できるいずれの材料特性を挙げてもよい。メッシュ120は、材料特性を所定の長さのナノ材料被覆繊維の撚り糸800に付与するために、ナノ材料被覆された撚り糸800の全長に、又は少なくともそのセグメントの長さに広がってもよい。撚り糸800の外部の周りに、及び伸縮性繊維コア810の間に形成されているメッシュ820は、より安定な材料特性、例えばより安定な電気伝導率を撚り糸800に付与してもよい。
【0050】
例えば、高アスペクト比ナノ材料822は導電性であってもよく、材料特性は電気伝導率であってもよい。換言すれば、それぞれ個々の高アスペクト比ナノ材料822の電気伝導率が組み合わされて、全体としての電気伝導率がナノ材料被覆繊維の撚り糸800に付与される。そのような例では、ナノ材料被覆繊維の撚り糸800は、導電性のナノ材料被覆繊維の撚り糸と呼ばれてもよい。このような導電性のナノ材料被覆繊維の撚り糸は、第1伸縮性繊維コアと、この第1伸縮性繊維コアと一緒に巻かれて撚り糸を形成する第2伸縮性繊維コアと、この撚り糸の周りに、及び第1伸縮性繊維コアと第2伸縮性繊維コアとの間に被覆された導電性の高アスペクト比ナノ材料の導電性のメッシュとを含み、この導電性のメッシュは、導電性のナノ材料被覆繊維の撚り糸の全長にわたって電気を伝導し、この導電性のメッシュは、さらに、導電性のナノ材料被覆繊維の撚り糸の長さの伸縮の際に電気伝導率を維持する。例えば、各々約10マイクロメートルの直径を有する約100本の伸縮性繊維コアの撚り糸が一緒に巻かれ、導電性のメッシュで被覆され、そして約50%までの伸長の間及び伸長の後に約1ohm/cm未満の抵抗率を維持してもよい。
【0051】
撚り糸800が導電性である例では、多くの伸縮性繊維コアを撚り糸へと一緒に束ねることは、伸長の際に電気伝導率、破断点伸び及び電気伝導率の維持等の特性の改善をもたらしうる。このような撚り糸の電気伝導率は、電子が導電性のメッシュを通って移動するときの自由度に依存し、この自由度は、メッシュが撚り糸の周り、及び撚り糸の個々の伸縮性繊維コアの間に存在するとき向上する。
【0052】
図9は、例示のナノ材料被覆繊維の撚り糸900のセグメントの顕微鏡写真である。この顕微鏡写真は光学顕微鏡法を使用して撮影された。示される撚り糸900は、図8のナノ材料被覆繊維の撚り糸800と同様であり、従って複数の伸縮性繊維コアと、撚り糸900の周り、及び伸縮性繊維コアの間にある高アスペクト比ナノ材料922のメッシュ920とを含む。上記の要素のさらなる説明については、図8のナノ材料被覆繊維の撚り糸800の説明が参照されてもよい。
【0053】
図10は、例示のナノ材料被覆繊維の撚り糸1000のセグメントの図である。撚り糸1000は、図8の撚り糸800と同様であり、従って複数の伸縮性繊維コア1010と、撚り糸1000の周り、及び伸縮性繊維コア1010の間にある高アスペクト比ナノ材料1022のメッシュ1020とを含む。上記の要素のさらなる説明については、図8のナノ材料被覆繊維の撚り糸800の説明が参照されてもよい。
【0054】
撚り糸1000は、メッシュ1020を取り囲む絶縁層1002をさらに含む。撚り糸1000が導電性のナノ材料被覆繊維の撚り糸である場合、絶縁層1002は、撚り糸1000の電気絶縁をもたらす。
【0055】
図11は、ナノ材料被覆繊維の撚り糸を製造するための例示の方法1100のフロー図である。方法1100は、ナノ材料被覆繊維の撚り糸、例えば、図8のナノ材料被覆繊維の撚り糸800等を製造するために使用されてもよい。従って、方法1100は、導電性のナノ材料被覆繊維の撚り糸を製造するために使用されてもよい。方法1100はブロック1102で始まる。
【0056】
ブロック1104において、第1伸縮性繊維コアが得られる。この第1伸縮性繊維コアは、図8の第1伸縮性繊維コア810Aと同様であってもよい。ブロック1106において、第2伸縮性繊維コアが得られる。この第2伸縮性繊維コアは、図8の第2伸縮性繊維コア810Bと同様であってもよい。この第1及び第2の伸縮性繊維は、並行して、又は任意の順番で得られてもよい。伸縮性繊維コアを得る工程は、図7の方法700のブロック704と同様であってもよく、さらなる説明のためにブロック704が参照されてもよい。
【0057】
ブロック1108において、第1伸縮性繊維コアは、高アスペクト比ナノ材料で被覆される。ブロック1110において、第2伸縮性繊維コアは、高アスペクト比ナノ材料で被覆される。この高アスペクト比ナノ材料は、図8の高アスペクト比ナノ材料822と同様であってもよい。この第1及び第2の伸縮性繊維は、並行して、又は任意の順番で被覆されてもよい。方法1100が導電性のナノ材料被覆繊維を製造するために使用される場合、上記高アスペクト比ナノ材料は導電性である。
【0058】
ブロック1112において、第1及び第2の伸縮性繊維コアは、一緒に巻かれて撚り糸が形成される。撚り糸は、多くの個々の伸縮性繊維コアを一緒に機械的に捻じるか、又は複数の伸縮性繊維コア互いの周りに巻くことにより製造されてもよい。
【0059】
ブロック1114において、高アスペクト比ナノ材料のメッシュが、伸縮性繊維コアの撚り糸の周りに形成される。このメッシュは、図8のメッシュ820と同様であってもよい。このメッシュは、ナノ材料被覆繊維の撚り糸の全長にわたって連続して材料特性をそのナノ材料被覆繊維の撚り糸に付与する。このメッシュは、ナノ材料被覆繊維の撚り糸の長さの伸縮の際にその材料特性を維持する。例えば、高アスペクト比ナノ材料は導電性であってもよく、材料特性は電気伝導率であってもよい。方法1100が導電性のナノ材料被覆繊維の撚り糸を製造するために使用される場合、上記高アスペクト比ナノ材料は導電性であり、上記材料特性は電気伝導率である。従ってそのような例では、上記メッシュは、撚り糸の周り、及び第1伸縮性繊維コアと第2伸縮性繊維コアとの間にある導電性の高アスペクト比ナノ材料の導電性のメッシュであり、導電性のメッシュは、ナノ材料被覆繊維の全長にわたって連続的に導電性であり、導電性のメッシュは、ナノ材料被覆繊維の長さの伸縮の際に電気伝導率を維持する。方法1100は、ブロック1116で終了する。
【0060】
方法1100は、導電性のナノ材料被覆繊維の撚り糸の長さとの整列に向かって導電性の高アスペクト比ナノ材料を斜交させる工程をさらに含んでもよい。
【0061】
方法1100が導電性のナノ材料被覆繊維を製造するために使用される場合、方法1100は、導電性のメッシュを電気絶縁層で被覆する工程をさらに含んでもよい。
【0062】
方法1100は、示されるのとまったく同じ順序で実行される必要はない。方法1100のあるブロックがさらなるブロックと結合されてもよいし、又はさらなるブロックへと分割されてもよい。例えば、第1及び第2の伸縮性繊維コアは、いずれの順序で得られ被覆されてもよい。さらに、他の例では、第1及び第2の伸縮性繊維コアは、高アスペクト比ナノ材料で被覆される前に、一緒に巻かれて撚り糸を形成してもよい。
【0063】
図12は、ナノ材料被覆繊維を製造するための例示の装置1200である。装置1200は、図7の方法700の1つのバリエーションを実施するために使用されてもよい1つの例示の装置である。装置1200は、高分子材料を維持するための保管庫1210と、ナノ材料被覆繊維の伸縮性繊維コアを形成するために使用されるべき高分子材料1202を溶融し押し出すための加熱要素1220とを備える。装置1200は、高分子材料1202をコーティングユニット1240の中へと案内するための案内要素1230と、コーティングユニット1240を通して及びコーティングユニット1240から高分子材料1202を引っ張るための引張要素1250とをさらに備える。
【0064】
コーティングユニット1240は、1以上のコーティングチャンバー1242及び処理プロセス1244を備える。コーティングチャンバー1242は、高アスペクト比ナノ材料の被覆物を高分子材料1202に塗布してもよい。コーティングチャンバー1242に入る前の乾燥した固体被覆材料、例えば銀ナノ粒子粉末を含有するコーティングチャンバー1242について、高分子材料1202は、高分子材料1202を濡らして被覆材料を高分子材料1202に接着させる溶媒に通されてもよい。濡れた高分子材料1202が以降のコーティングチャンバー1242を通過するときに、乾燥した被覆材料が濡れた高分子材料1202に接着し、残留溶媒があればその残留溶媒が急速に蒸発して薄い固体コーティングが残る。コーティングチャンバー1242は、高分子材料1202がディップコーティングと同様の機構でコーティングチャンバー1242を通過するときに、被覆材料の溶液、例えばエタノールに分散した銀ナノワイヤを高分子材料1202の上へ塗布してもよい。高分子材料1202がコーティングチャンバー1242を出るときに、液体−空気界面にある溶媒の急速な蒸発により固体被覆材料の薄層が残る。高分子材料がチャンバーを通過する速度が、塗布される被覆物の得られる厚さを決定してもよい。
【0065】
高分子材料を一連のコーティングチャンバー1242に通すことにより、複数の被覆物が塗布されてもよく、導電性材料及び非導電性材料の組み合わせが使用されてもよい。いくつかの実施形態では、各々が銀ナノワイヤ等の導電性被覆材料を含有するいくつかのチャンバー1242に高分子材料1202を通すことにより、堅牢な薄い導電性の被覆物が高分子材料1202の上に堆積されて、例えば約1000ohms/cm未満の低線形抵抗率を有する導電繊維が得られてもよい。いくつかの例では、一連の導電性の被覆物の塗布の後で、非導電性の絶縁層が、高分子材料1202の上に形成された導電性のメッシュの表面に堆積されてもよい。
【0066】
高分子材料1202がTPUを含む例では、高分子材料1202は、3つのコーティングチャンバー1242を介して銀ナノワイヤで被覆されて、約10〜約100ohm/cmの線形抵抗率を有するナノ材料被覆繊維が得られてもよい。第1コーティングチャンバー1242は、約50ナノメートルの平均半径を有する銀ナノワイヤの粉末を含有してもよい。高分子材料1202を銀ナノワイヤに通すことに先立って、高分子材料1202は、高分子材料1202を濡らすシクロヘキサノンモジュールに通されてもよい。他の例では、使用される溶媒は、例えばトルエン、メタノール、アセトン、エタノール、テトラヒドロフラン、又はアセトニトリルであってもよい。次に、高分子材料1202は、2つの付加的なコーティングチャンバー1242に通されてもよく、この2つの付加的なコーティングチャンバー1242には、各々、約30ナノメートルの平均直径及び約100〜約200マイクロメートルの長さを有する銀ナノワイヤが約20mg/mLの濃度でエタノールに分散された溶液が入っている。生成される最終の銀ナノワイヤ被覆は、厚さが約1マイクロメートル未満であってよく、コーティングチャンバー1242内のコーティング溶液の濃度及び高分子材料1202がコーティングチャンバー1242に通される速度によって制御されてもよい。
【0067】
コーティングチャンバー1242又は高分子材料1202自体が、高分子材料1202に堆積される高アスペクト比ナノ材料の整列を斜交させるために回転されてもよい。約100〜約200マイクロメートルの平均長さ及び約30ナノメートルの平均直径を有する銀ナノワイヤの1マイクロメートル被覆を有する10マイクロメートルのTPUフィラメントの出発物質の例では、この銀ナノワイヤは、約20mg/mLの濃度の上記ナノワイヤの溶液が入っているコーティングチャンバー1242をTPUフィラメントが通るときに、TPUフィラメントを回転させることにより高分子材料1202の表面の周りに螺旋状に巻かれてもよい。螺旋状ナノワイヤのピッチは、高分子材料1202がコーティングチャンバー1242を通されるときに高分子材料1202が回転される速度によって制御される。
【0068】
処理プロセス1244は、特定の処理を高分子材料1202に提供するために適用できる任意の装置を備える。例えば、処理プロセス1244は、高分子材料1202の最外層を部分的に融解又は軟化させて高分子材料1202と塗布された被膜との界面の強化をもたらすために、高分子材料1202の融解温度の近くの温度に維持された加熱用チャンバー又は加熱用コイルを備えてもよい。別の例として、処理プロセス1244は、化学品塗布チャンバー、例えば高分子材料1202への被膜の接着を高めるために、高分子材料1202をシクロヘキサノン、アセトン、メタノール、トルエン、又はアセトニトリル等の溶媒で処理するためのチャンバーを備える。
【実施例】
【0069】
図13は、例示のナノ材料被覆繊維の撚り糸の電気抵抗(Ω/cm)を歪み(%)の関数として示すプロットである。試験した例示のナノ材料被覆繊維の撚り糸は、各々約30マイクロメートルの直径を有する60本の伸縮性繊維コアを含み、それらが約232マイクロメートルの直径の撚り糸へと一緒に巻かれている。この伸縮性繊維コアはTPUから作製され、その撚り糸の周りに厚さが約100ナノメートルの銀ナノワイヤのメッシュが被覆されている。この銀ナノワイヤは、約200マイクロメートルの平均長さ及び約30ナノメートルの直径、従って約6667:1の長さ対直径比を有する。伸縮性繊維コアは、銀ナノワイヤとTPUとの間の接着を高めるために、加熱及びトルエンの塗布で処理された。
【0070】
上記撚り糸に、種々の程度の長さ方向の伸長という歪みを与えた。このプロットは、撚り糸が約0%歪みで約2Ω/cm、約10%歪みで約3Ω/cm、約20%歪みで約4Ω/cm、約30%歪みで約5Ω/cm、及び約40%歪みで約6Ω/cmの抵抗値を有することを示す。
【0071】
図14は、一連の伸長サイクルにわたる例示のナノ材料被覆繊維の撚り糸の電気抵抗(Ω/cm)を示すプロットである。試験した例示のナノ材料被覆繊維の撚り糸は、各々約30マイクロメートルの直径を有する30本の伸縮性繊維コアを含み、それらが約164マイクロメートルの直径を有する撚り糸へと一緒に巻かれている。この伸縮性繊維コアはTPUから作製され、その撚り糸の周りに厚さが約100ナノメートルの銀ナノワイヤのメッシュが被覆されている。この銀ナノワイヤは、約200マイクロメートルの平均長さ及び約30ナノメートルの直径、従って約6667:1の長さ対直径比を有する。伸縮性繊維コアは、銀ナノワイヤとTPUとの間の接着を高めるために、加熱及びトルエンの塗布で処理された。
【0072】
上記撚り糸に、交互に、約20%の長さ方向の伸長という歪みを与え及び緩和し、これを約120サイクル繰り返した。このプロットは、撚り糸が約20%歪みで約7Ω/cmの抵抗値に到達し、緩和すると約4Ω/cmに戻ることを示す。撚り糸は、試験全体にわたって約20%歪みで約7Ω/cm抵抗率及び緩和時に約4Ω/cm抵抗率を実質的に維持する。
【0073】
それゆえ、材料コーティングは、繊維がその材料自体から作製された場合に有する可能性がある望ましくない副次的効果なしに、その材料が持つ望ましい材料特性を繊維にもたらす可能性がある。例えば、繊維が過度の剛性なしに導電性になりうる。
【0074】
請求項の範囲は、上記の例によって限定されることはなく、請求項の範囲には、上記説明全体と整合する最も広い解釈が与えられるべきである。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】