(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-516027(P2021-516027A)
(43)【公表日】2021年6月24日
(54)【発明の名称】過電圧保護機能を含む電圧制限器
(51)【国際特許分類】
H02H 9/04 20060101AFI20210528BHJP
【FI】
H02H9/04 B
H02H9/04 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-548869(P2019-548869)
(86)(22)【出願日】2018年3月15日
(85)【翻訳文提出日】2019年10月4日
(86)【国際出願番号】IB2018051751
(87)【国際公開番号】WO2018167716
(87)【国際公開日】20180920
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】519321155
【氏名又は名称】サルテック エス.アール.オー.
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】スヒー、ヤロミール
(72)【発明者】
【氏名】ルジッカ、ヤロスラフ
(72)【発明者】
【氏名】ボチェザ、パベル
【テーマコード(参考)】
5G013
【Fターム(参考)】
5G013AA01
5G013AA09
5G013BA02
5G013CB02
5G013CB05
5G013CB12
5G013DA06
5G013DA12
(57)【要約】
第1の接続点(1)を有する電気伝導性および熱伝導性の第1の接触プレート(2)によって上部が閉じられ、第2の接続点(9)を有する電気伝導性および熱伝導性の第2の接触プレート(10)によって下部が閉じられている絶縁シェル(26)からなる。逆方向を向いた2つのトリガ半導体要素(5、13)と、このトリガ半導体要素と並列接続し、2つの内プレート(3、11)の間に位置している保護部材(17)との実施形態は、絶縁シェル(26)の内部に位置している。半導体要素(5、13)は、電気制御装置および接続点(1、9)と同時に相互接続される。制限器は、個々の部品をクランプして電気的に相互接続するために圧縮構造を有している。第1のトリガ半導体要素(5)は、この半導体要素の陰極(7)と接触している熱および電気伝導性の第1の内プレート(3)と、陽極(6)と接触している第1の接触プレート(2)との間に位置している。第2のトリガ半導体要素(13)は、この半導体要素の陰極と(15)接触している熱および電気伝導性の第2の内プレート(11)と、陽極(14)と接触している第2の接触プレート(10)との間に位置している。電気制御装置は、絶縁シェル(26)の外部または内部に位置していてよく、第1のトリガ半導体要素(5)の制御電極(8)、第1の接触プレート(2)および第1の内プレート(3)と相互接続している第1の制御装置(4)と、第2のトリガ半導体要素(13)の制御電極(16)、第2の接触プレート(10)および第2の内プレート(11)と相互接続している第2の制御装置(12)とからなる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過電圧保護機能を含む電圧制限器であって、第1の接続点(1)を有する電気伝導性および熱伝導性の第1の接触プレート(2)によって上部が閉じられ、第2の接続点(9)を有する電気伝導性および熱伝導性の第2の接触プレート(10)によって下部が閉じられている絶縁シェル(26)からなり、逆方向を向いた2つのトリガ半導体要素(5、13)の形態が、前記絶縁シェル(26)の内部に位置し、前記トリガ半導体要素に並列接続していて1つのバリスタまたはそれ以上のバリスタからなる保護部材(17)、前記保護要素(17)は、2つの内プレート(3、11)の間に位置し、前記半導体要素(5、13)は、補助線を介して電気制御装置および接続点(1、9)と同時に相互接続し、制限器は、個々の部品を互いにクランプして電気的に相互接続するために圧縮構造を有し、前記部品は、陰極(7)と接触している熱伝導性および電気伝導性の第1の内プレート(3)と、陽極(6)と接触している熱および電気伝導性の第1の接触プレート(2)との間に位置している前記第1のトリガ半導体要素(5)、ならびに陰極(15)と接触している熱伝導性および電気伝導性の前記第2の内プレート(11)と、陽極(14)と接触している熱伝導性および電気伝導性の前記第2の接触プレート(10)との間に位置している第2のトリガ半導体要素(13)があり、前記第1の接触プレート(2)および前記第2の内プレート(11)は少なくとも、前記第1の絶縁シェル(20)によって前記第1の内プレート(3)から電気的に絶縁されてX軸に対して垂直に位置している2つの電気伝導性の第1のスラスト部材(18)によって、前記第1のトリガ半導体要素(5)と前記第1の内プレート(3)および前記保護要素(17)とを介して互いに押圧し合い、前記第1の接触プレート(2)および前記第2の内プレート(11)は、同時に電気的に相互接続し、前記第2の接触プレート(10)および前記第1の内プレート(3)は、第2の絶縁シェル(21)によって前記第2の内プレート(11)から電気的に絶縁されて前記X軸に対して垂直に位置している2つの電気伝導性の第2のスラスト部材(19)によって、前記第2のトリガ半導体要素(13)と前記第2の内プレート(11)および前記保護要素(17)とを介して互いに押圧し合い、前記第2の接触プレート(10)および前記第1の内プレート(3)は、同時に電気結合されている
ことを特徴とする電圧制限器。
【請求項2】
前記電気制御装置は、前記絶縁シェル(26)の外部に位置し、前記第1のトリガ半導体要素(5)の制御電極(8)、前記第1の接触プレート(2)および前記第1の内プレート(3)と相互接続している第1の制御装置(4)と、前記第2のトリガ半導体要素(13)の制御電極(16)、前記第2の接触プレート(10)および前記第2の内プレート(11)と相互接続している第2の制御装置(12)とからなる
請求項1に記載の電圧制限器。
【請求項3】
前記電気制御装置は、前記絶縁シェル(26)の内部に位置し、前記第1の制御装置(4)および前記第2の制御装置(12)からなり、また、前記第1の内プレート(3)は、第1の平坦プレート(3A)および、前記第1の平坦プレートの上面に載っている断面が逆U字型の第1の追加プレート(3B)とからなり、前記第1の制御装置(4)は、形成された第1の凹部(24)に位置し、前記第1の追加プレート(3B)にある開口を貫通している第1の相互接続ピン(22)を介して、前記第1の追加プレート(3B)と前記第1の接触プレート(2)との間に位置している前記第1のトリガ半導体要素(5)の前記制御電極(8)と相互接続し、前記補助線を介して前記第1の接触プレート(2)および前記第1の追加プレート(3B)と相互接続し、前記第2の内プレート(11)は、前記第2の平坦プレート(11A)および、前記第2の平坦プレートの下面に接している断面がU字型の第2の追加プレート(11B)とからなり、形成された第2の凹部(25)に位置している前記第2の制御装置(12)は、前記第2の追加プレート(11B)にある開口を貫通している前記第2の相互接続ピン(23)を介して、前記第2の追加プレート(11B)と前記第2の接触プレート(10)との間にある前記第2のトリガ半導体要素(13)の前記制御電極(16)と相互接続し、前記補助線を介して前記第2の接触プレート(10)および前記第2の追加プレート(11B)と相互接続している
請求項1に記載の電圧制限器。
【請求項4】
前記第1のトリガ半導体要素(5)および前記第2のトリガ半導体要素(13)は、密閉されたサイリスタからなる
請求項1ないし3のいずれかに記載の電圧制限器。
【請求項5】
前記第1のトリガ半導体要素(5)および前記第2のトリガ半導体要素(13)は、半導体チップからなる
請求項1ないし3のいずれかに記載の電圧制限器。
【請求項6】
前記絶縁シェル(26)は、表面と前記制限器の他の部品との間の空間に充填するシーリング性かつ絶縁性の材料からなる
請求項1ないし5のいずれかに記載の電圧制限器。
【請求項7】
前記第1のスラスト部材(18)および前記第2のスラスト部材(19)は、スタッドボルトおよびナットからなる
請求項1ないし6のいずれかに記載の電圧制限器。
【請求項8】
前記保護要素(17)は、前記絶縁シェル(26)のX軸に直接位置し、前記第1のトリガ半導体要素(5)および前記第2のトリガ半導体要素(13)は、前記X軸に対して互いに対称に位置している
請求項1ないし7のいずれかに記載の電圧制限器。
【請求項9】
前記第1の接触プレート(2)、第2の接触プレート(10)、簡易で複合型の前記第1の内プレート(3)、それぞれ(3A、3B)および簡易で複合型の前記第2の内プレート(11)、それぞれ(11A、11B)は、筒形状である
請求項1ないし8のいずれかに記載の電圧制限器。
【請求項10】
前記第1の制御装置(4)および前記第2の制御装置(12)は、1つのユニットを形成する
請求項1ないし9のいずれかに記載の電圧制限器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術的解決策は、許容できない高い接触電圧が発生するのを防止し、特に鉄道すなわち旅客鉄道の駅およびき電区分所で過電圧を低減する保護装置に関する。
【0002】
保護装置は、動作中および短絡中にレール電位によって生じる許容できない電圧から保護する。保護装置は、許容電圧値を超えている時間にわたって牽引の帰線路と牽引システムの接地との間に一時的な接続をもたらす。したがって、保護装置は、これらの部分と接触する可能性のある人を保護する。
【背景技術】
【0003】
電気牽引時の接触電圧から保護する装置および電気鉄道機器に対するサージ避雷器に関する法改正により、保護装置に対する用件が全面的に変更された。一部の保護装置は、そのパラメータでは用件の一部または全体を満たせないか、あるいは技術的にあまりにも困難、すなわちコストがかかりすぎる。
【0004】
公知の解決策が米国特許第2004257742A1号(特許文献1)の「Voltage limiter」に記載されている。同文献には、トリガ要素に接続されたバリスタの設計が記載されており、このバリスタは、2つの非並列のサイリスタと、電位差および危険な接触電圧を監視する制御装置とからなり、関連するサイリスタを作動させることによって危険な電圧を排除する。この文献にはさらに保護装置の設計が記載されており、特に、個々の下位システムを接続して1つのユニットにすることに関するものである。構造は非対称に構成され、保護要素は、バリスタが上に位置し、制御装置が真ん中に位置し、両サイリスタが下に位置して2つのプレートの間にある。外プレートは、第1のサイリスタの陽極と接触していると同時に第2のサイリスタの陰極と接触し、第1のサイリスタの陰極および第2のサイリスタの陽極は内プレートと接触している。内プレートは、ハウジングの内部に位置し、シェルおよび内側の絶縁材によって周囲環境から絶縁されているため、外プレートと同量の熱を除去することは不可能である。この解決策の欠点は、非対称な構造になっているために一方のサイリスタの陽極の冷却が不均等になることである。その結果、サイリスタの負荷が不均等になり、それによって熱の除去がさらにできていない場合でも必要なパラメータを達成するためにより高いサイリスタのパラメータを選択する必要がある。
【0005】
別の公知の技術的解決策が特許文献に記載されている。欧州特許第1855365A1号(特許文献2)の「Overvoltage protection device module and method for forming the same」には、バリスタが含まれ、このバリスタには、2つのサイリスタおよび1つのトリガ回路が非並列に接続されている。トリガ回路は、電位差の発生および危険な接触電圧を監視し、関連するサイリスタを作動させることによって危険な電圧を排除する。この文献はさらに、保護装置の設計が記載されており、特に、個々の下位システムを接続して1つのユニットにすることと、個々の下位システムの取り付けプレート上の位置に関するものである。この装置は、先行する技術的解決策の欠点の一部を解消しているが、その欠点は、スペースに対する要件が厳しく、構造が複雑な点である。米国特許第2004257742A1号(特許文献1)による解決策にも関連する欠点があり、両サイリスタの陽極の冷却が不均等である。
【0006】
実用新案で保護されている技術的解決策の別の例が、チェコ国特許第22115号(特許文献3)の「Power semiconductor overvoltage limiter」である。この文献には、サイリスタ、トリガダイオード、ツェナーダイオード、バリスタ、抵抗器およびコンデンサなどのいくつかの要素の回路相互接続を含む2つの同一の電力半導体ブロックを非並列に設計することが可能な解決策の1つが記載されている。制限器の個々の要素の機械的構成についての具体的な設計は明記されていない。
【0007】
独国特許第4217234号(特許文献4)で知られている別の文献の「Voltage limiting circuit for current cut−out electronic extinction device」は、非線形抵抗およびGTOサイリスタを用いてコンデンサの電圧を制限する消光コンデンサの両端に並列回路を有し、この設計の特色は、SiCを含有するサイリスタおよびバリスタである。この技術的解決策は、とりわけSiCのバリスタがインパルスに対して十分な抵抗がなく、生産も使用もされていないため、現在の技術状況に適合しない要素の電気的相互接続のみに関するものである。
【0008】
さらに他の可能性のある例が、国際特許出願第9623343号(特許文献5)の「Overvoltage protector」および国際特許出願第2011098359号(特許文献6)の「Surge−limiting device for direct current networks」である。これらの文献に明記されている設計には、サイリスタ、バリスタおよびダイオードなどのいくつかの同一要素が含まれているが、両文献にはこれらの要素の電気的相互接続が記載されているだけで、その機械構成は記載されていない。
【0009】
さらに他の特許文献から、半導体装置のハウジングの構造を記載しているいくつかの文献に言及しなければならない。例えば米国特許第2013062749号(特許文献7)の「Semiconductor module」および欧州特許第0159797A2号(特許文献8)の「A semiconductor device and the process of producing the same field of the invention」である。両文献は、第1の筒状電極プレートおよび第2の筒状電極プレートと接触している半導体チップを含む半導体モジュールの構造に関し、両プレートは、スレッドまたはねじの力によって互いに押圧し合っている。両解決策の欠点は、インパルス過電圧に対する保護要素がまったく含まれておらず、制御回路がない点である。
【0010】
技術的解決策の別の例が、チェコ国特許第299882号(特許文献9)の「Separating member」に記載されている構造で、特に、埋め込んで絶縁された金属構造を電圧依存で接地することが明記されている。半導体装置は、共通ベースからなり、この共通ベースの一方の側には、非並列に配列されたシリカプレートの列が少なくとも2つあり、もう一方の側にはシート状の金属端子がある。この列は、圧縮構造のスタッドボルトによってクランプされる。この解決策の欠点は、パルス過電圧に対する保護要素または適切に機能する制御回路がまったく含まれていない点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第2004257742A1号
【特許文献2】欧州特許第1855365A1号
【特許文献3】チェコ国特許第22115号
【特許文献4】独国特許第4217234号
【特許文献5】国際特許出願第9623343号
【特許文献6】国際特許出願第2011098359号
【特許文献7】米国特許第2013062749号
【特許文献8】欧州特許第0159797A2号
【特許文献9】チェコ国特許第299882号
【発明の概要】
【0012】
上記の欠点は、提起する過電圧保護機能を含む電圧制限器によって解消される。本電圧制限器は、第1の接続点を有する電気伝導性および熱伝導性の第1の接触プレートによって上部が閉じられ、第2の接続点を有する電気伝導性および熱伝導性の第2の接触プレートによって下部が閉じられている筒状絶縁シェルを備えている。絶縁シェルの設計には、逆方向を向いた2つのトリガ半導体要素と、並列接続した1つ以上のバリスタからなる並列接続した保護部材とがある。保護要素は、2つの内プレートの間に位置している。トリガ半導体要素は、補助線を介して電気制御装置および接続点に接続している。制限器は、部品をクランプして電気的に相互接続するために圧縮構造を有している。新規の解決策の原則は、第1のトリガ半導体要素が、この半導体要素の陰極と接触している第1の内プレートと、陽極と接触している第1の接触プレートとの間に位置していることである。第2のトリガ半導体要素は、この半導体要素の陰極と接触している第2の内プレートと、陽極と接触している第2の接触プレートとの間に位置している。第1の接触プレートおよび第2の内プレートは、熱および電気伝導性であり、第1の絶縁シェルによって第1の内プレートから電気的に絶縁されてX軸に対して垂直に位置している少なくとも第1の2つのスラスト部材によって、第1のトリガ半導体要素と第1の内プレートおよび保護要素とを介して互いに押圧し合っている。それと同時に、第1の接触プレートおよび第2の内プレートは、電気的に相互接続されている。第2の接触プレートおよび第1の内プレートは、熱および電気伝導性であり、第2の絶縁シェルによって第2の内プレートから電気的に絶縁されてX軸に対して垂直に位置している少なくとも第2の2つのスラスト部材によって、第2のトリガ半導体要素と第2の内プレートおよび保護要素とを介して互いに押圧し合っている。それと同時に、第2の接触プレートおよび第1の内プレートは、電気的に相互接続されている。第1のおよび第2のスラスト要素は電気伝導性である。
【0013】
1つの可能な設計では、電気制御装置は、絶縁シェルの外部に位置し、第1の制御装置および第2の制御装置からなる。第1の制御装置は、第1のトリガ半導体要素の制御電極と相互接続し、補助線を介して第1の接触プレートおよび第1の内プレートと相互接続している。第2の制御装置は、第2のトリガ半導体要素の制御電極と相互接続し、補助線を介して第2の接触プレートおよび第2の内プレートと相互接続している。電気制御装置は、接続点どうしの間に許容できない電圧が発生した場合に、電圧の極性に応じて、一方のトリガ要素を切り替えて許容できない電圧を制限する。
【0014】
第2の可能な設計では、電気制御装置は、絶縁シェルの内部に位置し、第1の制御装置および第2の制御装置からなる。この場合、第1の内プレートは、第1の平坦プレートおよび、この第1の平坦プレートの上面に載っている断面が逆U字型の第1の追加プレートとからなる。第1の制御装置は、形成された第1の凹部に位置し、第1の追加プレートにある開口を貫通している第1の相互接続ピンを介して、第1の追加プレートと第1の接触プレートとの間に位置する第1のトリガ半導体要素の制御電極と相互接続し、補助線を介して第1の接触プレートおよび第1の追加プレートと相互接続している。第2の内プレートは、第2の平坦プレートおよび、この第2の平坦プレートの下面に接している断面が逆U字型の第2の追加プレートとからなる。形成された第2の凹部に位置している第2の制御装置は、第2の追加プレートにある開口を貫通している第2の相互接続ピンを介して、第2の追加プレートと第2の接触プレートとの間に位置する第2のトリガ半導体要素の制御電極と相互接続し、補助線を介して第2の接触プレートおよび第2の追加プレートと相互接続している。
【0015】
第1のトリガ半導体要素および第2のトリガ半導体要素は、密閉されたサイリスタまたは半導体チップからなる。
【0016】
有利には、絶縁シェルは、表面と制限器の他の部品との間の空間に充填するシーリング性かつ絶縁性の材料を含む。
【0017】
1つの可能な実施形態では、第1のスラスト要素および第2のスラスト要素は、スタッドボルトとナットからなり、電気伝導性である。
【0018】
有利な実施形態では、保護要素は、絶縁シェルのX軸に直接位置し、第1のトリガ半導体要素および第2のトリガ半導体要素は、X軸に対して互いに対称に位置している。
【0019】
第1の接触プレート、第2の接触プレート、簡易で複合型の第1の内プレートおよび簡易で複合型の第2の内プレートが筒状であれば、それも有利である。
【0020】
上記から、特定の構成にあるトリガ半導体要素の陽極は、両方が外側接触プレート、すなわち第1の接触プレート、第2の接触プレートにそれぞれ接触していることが明らかにわかり、それによって均等な冷却を実現する、すなわちトリガ半導体要素の両方の陽極に同じ負荷を実現する。有利な設計では、構成は対称で、上および下に位置しているトリガ半導体要素と通常バリスタである保護要素がX軸の中央に位置し、簡易または複合型の第1の内プレートおよび簡易または複合型の第2の内プレートならびに電気伝導性スラスト要素は、接続点を含む保護要素と相互接続している。記載した均等な陽極の冷却のほか、提起した解決策により構造が簡易になり、必要な部品数が少なくなり、その結果コストが低くなる。
【0021】
電圧制限器は、低速、高速、短い、長いなど、あらゆるDCおよびACパルスに応答する。保護要素であるバリスタは、常に最初の過電圧パルスの発生に応答し、大気現象およびトリガ現象の結果生じた過電圧作用から両方のトリガ半導体要素を保護するとともに、装置、センサ、および測定機器も保護する。しかしながら、インパルスが長時間継続するとバリスタが破損してしまう。この場合、一部のトリガ半導体要素は、およそ1ms遅延して作動する。電気制御装置は、接続点間で許容できない電圧が発生するのを常時監視し、極性に応じていずれか一方のトリガ半導体要素を作動させ、このようにして許容できない電圧を制限する。電気制御装置は、受動型であり、いかなる補助電源も必要としない。トリガ半導体要素は、電力損失が少なく、それぞれが長時間にわたって大容量の電流を恒久的に伝導できる。トリガ半導体要素を通過する電流がラッチ電流の値を下回ると、制限器が開いて高いインピーダンス状態に変わる。
【0022】
よりよく理解するために、提起した解決策による過電圧保護機能を含む電圧制限器を添付の図面を用いて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】過電圧保護機能を含む電圧制限器の配線をバイポーラ設計で示している説明図。この設計は保護の対象ではない。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1によるバイポーラ設計の過電圧保護機能を含む電圧制限器は、逆方向を向いた2つのトリガ半導体要素、すなわち第1のトリガ半導体要素5および第2のトリガ半導体要素13と、トリガ半導体要素に並列接続している保護部材17の設計になっており、保護部材はここではバリスタからなる。インパルス抵抗を増大させるために、並列接続したバリスタをこれより多く使用してもよい。図は、トリガ半導体要素を作動させるのに使用する、第1の制御装置4と第2の制御装置12とからなる電気制御装置も示している。
【0025】
図2は、バイポーラ設計の過電圧保護機能を含む電圧制限器の第1の可能な構成を示している。制限器は、第1の接続点1を有する電気伝導性および熱伝導性の第1の接触プレート2によって上部が閉じられている筒状絶縁シェル26を備えている。絶縁シェル26の下部は、第2の接続点9を有する第2の接触プレート10で閉じられている。第1の接触プレート2および第2の接触プレート10は、電気伝導性および熱伝導性である。トリガ半導体要素、すなわち
図1による第1のトリガ半導体要素5および第2のトリガ半導体要素13、ならびに両トリガ半導体要素に並列接続している保護部材17は、絶縁シェル26の内部に位置している。保護要素17は、ここでは2つの内プレートの間、すなわち第1の内プレート3と第2の内プレート11との間に位置している。第1のトリガ半導体要素5および第2のトリガ半導体要素13は、密閉されたサイリスタまたは半導体チップからなるものであってよい。
【0026】
第1のトリガ半導体要素5は、この半導体要素の陰極7と接触している第1の内プレート3と、陽極6と接触している第1の接触プレート2との間に位置している。第2のトリガ半導体要素13は、この半導体要素の陰極15と接触している第2の内プレート11と、陽極14と接触している第2の接触プレート10との間に位置している。第1の内プレート3および第2の内プレート11は、熱および電気伝導性である。第1の接触プレート2および第2の内プレート11は、第1の絶縁シェル20によって第1の内プレート3から電気的に絶縁されてX軸に対して垂直に位置している少なくとも第1の2つの電気伝導性スラスト部材18によって、第1のトリガ半導体要素5と第1の内プレート3および保護要素17とを介して互いに押圧し合っていると同時に、第1の接触プレート2および第2の内プレート11は、この3つの要素によって電気結合している。同様に、第2の接触プレート10および第1の内プレート3はどちらも、第2の絶縁シェル21によって第2の内プレート11から電気的に絶縁されてX軸に対して垂直に位置している少なくとも第2の2つの電気伝導性スラスト部材19によって、第2のトリガ半導体要素13と第2の内プレート11および保護要素17とを介して互いに押圧し合っていると同時に、第2の接触プレート10および第1の内プレート3は、この3つの要素によって電気結合している。第1のスラスト部材18および第2のスラスト部材19は、有利には、互いにクランプするように圧縮構造を形成すると同時に、制限器の関連部品との電気結合をもたらす。
【0027】
トリガ半導体要素5および13は、補助線を介して電気制御装置と相互接続している。
図2の実施形態の例では、電気制御装置は、絶縁シェル26の外部に位置し、2つの部品、すなわち第1のトリガ半導体要素5の制御電極8、第1の接触プレート2および第1の内プレート3と相互接続している第1の制御装置4と、第2のトリガ半導体要素13の制御電極16、第2の接触プレート10および第2の内プレート11と相互接続している第2の制御装置12とからなる。電圧制限器の外部に位置している制御装置4および12は、1つのユニットに統合することができ、そのユニットは、適切な場所であればどこに設けてもよいが、さらに多くの技術的に有利な選択肢がある。絶縁シェル26の表面は、シーリング性かつ絶縁性の化合物からなる。有利なモデルでは、電圧制限器の集合体を型の中に挿入し、低圧でシーリング性かつ絶縁性の化合物を充填するが、この化合物は、絶縁シェルの表面と制限器の他の部品との間の空間に充填される。ハウジングは、この処理過程で密閉される。使用できるシーリング化合物は多数あり、有利には、ポリウレタン、シリコンおよびエポキシのシーリング化合物を使用できる。
【0028】
制限器の第2の可能な実施形態を
図3に示している。この解決策は、電気制御装置が制限器の内部に位置しているという点が異なるが、電気制御装置は同じく第1の制御装置4および第2の制御装置12からなる。この理由から、第1の内プレート3は、分割されており、第1の平坦プレート3Aおよび、この第1の平坦プレートの上面に載っている断面が逆U字型の第1の追加プレート3Bとからなる。第1の制御装置4は、形成された第1の凹部24に位置している。第1の制御装置4は、第1の追加プレート3Bにある開口を貫通している第1の相互接続ピン22をまたいで、第1の追加プレート3Bと第1の接触プレート2との間に位置する第1のトリガ半導体要素5の制御電極8と相互接続している。第1の制御装置4は、補助線を介して、有利には第1の平坦プレート3Aおよび第2の平坦プレート11Aを介して第1の接続点1および第2の接続点9に相互接続されている。この解決策は、電気制御装置の位置が凹部にあることと合わせて、簡易かつ小型の構造になり、簡易な密閉が可能になる。同様に、第2の内プレート11も分割されており、第2の平坦プレート11Aおよび、この第2の平坦プレートの底面に接している断面がU字型の第2の追加プレート11Bからなる。
【0029】
第2の制御装置12は、形成された第2の凹部25に位置し、第2の追加プレート11Bの上面を貫通している第2の相互接続ピン23を介して、第2のトリガ半導体要素13の制御電極16と相互接続し、第2のトリガ半導体要素は、第2の追加プレート11Bと第2の接触プレート10との間に位置している。第2の制御装置12は、補助線を介して、有利には第1の平坦プレート3Aおよび第2の平坦プレート11Aを通って第1の接続点1および第2の接続点9を相互接続している。
【0030】
同様に、
図2の構成のように、第1のスラスト部材18および第2のスラスト部材19は電気伝導性であり、有利には、両スラスト部材は、互いにクランプするように圧縮構造を形成すると同時に、制限器の対応する部品との電気伝導性の相互接続をもたらす。
図2の構成と同じように、第1のスラスト部材18は両方とも、第1の絶縁シェル20を介して第1の追加プレート3Bから電気的に絶縁され、第2のスラスト部材19は、第2の絶縁シェル21を介して第2の追加プレート11Bから電気的に絶縁されている。
【0031】
有利なモデルでは、第1の絶縁シェル20および第2の絶縁シェル21は、シーリング性および絶縁性の化合物で直接形成される。
【0032】
どちらの実施形態の例でも、第1のスラスト部材18および第2のスラスト部材19は、電気伝導性スタッドボルトによって仕上げられる。保護要素17は、この場合は絶縁シェル26のX軸に直接位置し、第1のトリガ半導体要素5および第2のトリガ半導体要素13は、X軸に向かって互いに対称に位置していた。
【0033】
構造が対称であることで、トリガ半導体要素5、13の陽極7および14の両方が、外側接触プレート、すなわち第1の接触プレート2、第2の接触プレート10にそれぞれ接触している状態になり、その結果、均等な冷却が確保され、それに伴いトリガ半導体要素の両方の陽極の負荷が同じになる。有利なモデルでは、電気伝導性スラスト部材18および19は、機械的なクランプを実現すると同時に、電圧制限器の個々の部品を電気接続する。記載した均等な陽極の冷却のほか、提起した解決策により構造が簡易になり、必要な部品数が少なくなり、その結果コストが低くなる。
【0034】
製造過程では、第1の接触プレート2、第2の接触プレート10、簡易で複合型の第1の内プレート3である3A、3Bのそれぞれ、および簡易で複合型の第2の内プレート11である11A、11Bのそれぞれが筒状であれば有利である。
【0035】
電圧制限器は通常、1つの接続点を介して保護対象装置に接続され、第2の接続点を介して保護接地導体に接続される。保護対象装置は、過電圧保護機能を含む電圧制限器に第1の接続点1および第2の接続点9を用いて接続され、接続点は通常、端子、ねじ、またはナット付きスタッドボルトで形成される。
【0036】
電圧制限器は、低速、高速、短い、長いなど、あらゆるDCおよびACパルスに応答する。第1の接続点1と第2の接続点9との間で許容できない電圧が発生した場合、この電圧は、第1のスラスト部材18と第2のスラスト部材19の端から端まで、および第1の内プレート3と第2の内プレート11の端から端までを通って、保護要素17に伝達されると同時に、補助線を介して第1の制御装置4および第2の制御装置12に伝達される。保護要素17は、最初に応答して電圧を制限し、第1のトリガ半導体要素5もしくは第2のトリガ半導体要素13、またはいずれかの制御装置4もしくは12への損傷を防止する。
【0037】
許容できない電圧が正の極性を有し、1msよりも長く続く場合、第1の制御装置4が応答し、第1のトリガ半導体要素5の制御電極8を通して第1のトリガ半導体要素5を作動させ、許容できない電圧を許容閾値まで制限する。トリガ半導体要素は、電力損失が少なく、それぞれが長時間にわたって大容量の電流を恒久的に伝導できる。トリガ半導体要素を通過する電流がラッチ電流の値を下回ると、半導体要素が開いて高いインピーダンス状態に変わる。
【0038】
許容できない電圧が負の極性を有し、1msよりも長く続く場合も同様に、第2の制御装置12が応答し、第2のトリガ半導体要素13の制御電極16を介して第2のトリガ半導体要素13を作動させ、許容できない電圧を許容閾値まで制限する。
【0039】
制御装置の1msという遅延応答時間は指標値にすぎないことに注意されたい。この値および電圧制限器の他の技術的パラメータ、例えば許容できない電圧の大きさなどは、各国の規準に規定されている要件によって異なる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本解決策による過電圧保護機能を含む電圧制限器の設計は、人、機器、機械および金属構造物を危険な接触電圧、過電圧から保護し、かつ/または迷走電流の影響から保護するのに必要な場合に使用され得る。
【0041】
電圧制限器は、動作中および短絡中にレール電位によって生じる許容できない電圧から保護し、装置への電位を平均し、その結果、起こりうる接触電圧を制限する。電圧制限器は、帰線路と接地導体との間、特に旅客鉄道の駅またはき電区分所で接続される。電圧制限器は、許容電圧値を超えている時間にわたって接地している牽引システムと帰線路との一時的な接続を実現する。したがって、電圧制限器は、これらの部品と接触するおそれのある人を保護する。
【0042】
並列接続した過電圧保護は牽引システムまたは鉄道装置に落雷した場合に誘導されたり、動作中に起こったりする高インパルスの過電圧を効果的に排除する。
【国際調査報告】