特表2021-516147(P2021-516147A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-516147有機アルカリで修飾された複合触媒及び一酸化炭素の水素化によるエチレンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-516147(P2021-516147A)
(43)【公表日】2021年7月1日
(54)【発明の名称】有機アルカリで修飾された複合触媒及び一酸化炭素の水素化によるエチレンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/26 20060101AFI20210604BHJP
   B01J 29/24 20060101ALI20210604BHJP
   B01J 29/18 20060101ALI20210604BHJP
   C07C 11/02 20060101ALI20210604BHJP
   C07C 11/04 20060101ALI20210604BHJP
   C07C 11/06 20060101ALI20210604BHJP
   C07C 1/04 20060101ALI20210604BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20210604BHJP
【FI】
   B01J29/26 M
   B01J29/24 M
   B01J29/18 M
   C07C11/02
   C07C11/04
   C07C11/06
   C07C1/04
   C07B61/00 300
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2020-544508(P2020-544508)
(86)(22)【出願日】2019年1月28日
(85)【翻訳文提出日】2020年8月21日
(86)【国際出願番号】CN2019073387
(87)【国際公開番号】WO2019144953
(87)【国際公開日】20190801
(31)【優先権主張番号】201810079670.5
(32)【優先日】2018年1月26日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】503190796
【氏名又は名称】中国科学院大▲連▼化学物理研究所
【氏名又は名称原語表記】DALIAN INSTITUTE OF CHEMICAL PHYSICS,CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】潘 秀蓮
(72)【発明者】
【氏名】焦 峰
(72)【発明者】
【氏名】包 信和
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BA47A
4G169BB04A
4G169BB04B
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC16A
4G169BC16B
4G169BC17A
4G169BC17B
4G169BC18A
4G169BC18B
4G169BC25A
4G169BC25B
4G169BC35A
4G169BC35B
4G169BC43A
4G169BC43B
4G169BC51A
4G169BC51B
4G169BC58A
4G169BC58B
4G169BC62A
4G169BC62B
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BC67A
4G169BC67B
4G169BE14C
4G169CC21
4G169DA06
4G169EA02Y
4G169ZA06A
4G169ZA06B
4G169ZC04
4G169ZD06
4H006AA02
4H006AC29
4H006BA07
4H006BA08
4H006BA09
4H006BA10
4H006BA13
4H006BA14
4H006BA16
4H006BA19
4H006BA20
4H006BA30
4H006BA55
4H006BA81
4H006BA85
4H006BC10
4H006BC11
4H006BC18
4H006BC31
4H006BC37
4H006BE20
4H006BE40
4H039CA99
4H039CL35
(57)【要約】
本発明は合成ガスからのエチレンの直接製造に関し、具体的には、有機アルカリで修飾された複合触媒及び一酸化炭素の水素化によるエチレンの製造方法に関する。一酸化炭素と水素の混合ガスを反応原料として固定床又は移動床で転化反応を行い、前記触媒は複合触媒であり、成分Iと成分IIは機械的混合により複合され、成分Iの活性成分は金属酸化物であり、成分IIは有機アルカリで修飾されたMOR構造の分子篩である。成分Iの活性成分と成分IIの重量比は、0.1〜20、好ましくは0.3〜8の範囲にある。反応過程はごく高い製品の収率と選択性を備え、C〜Cオレフィンの選択性は78〜87%に達し、C以上の炭化水素の選択性は10%未満であり、副産物であるメタンの選択性は9%未満と非常に低く、エチレンの選択性は75〜82%に達し、優れた適用が見込まれる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分Iと成分IIを含み、成分Iと成分IIは機械的混合により複合され、成分Iの活性成分が金属酸化物であり、成分IIがMORトポロジー構造の分子篩であり、成分IIにおいて前記MORトポロジー構造の分子篩が脂肪アミンで修飾処理され、前記修飾処理とは脂肪アミンを前記MORトポロジー構造の分子篩の12員環チャンネル内におけるB酸点に分散させる、ことを特徴とする触媒。
【請求項2】
前記脂肪アミンは、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノプロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、1、2−ジメチルプロピルアミン、1、2−プロパンジアミン、2−プロペンアミン、シクロプロピルアミン、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、1、4−ブタンジアミン、tert−ブチルアミン、ジイソブチルアミンヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリオクチルアミンのうちの1種又は2種以上である、
ことを特徴とする請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記金属酸化物は、MnO、MnCr(1−a)、MnAl(1−a)、MnZr(1−a)、MnIn(1−a)、ZnO、ZnCr(1−a)、ZnAl(1−a)、ZnGa(1−a)、ZnIn(1−a)、CeO、CoAl(1−a)、FeAl(1−a)、GaO、BiO、InO、InAlMn(1−a−b)、InGaMn(1−a−b)のうちの1種又は2種以上であり、
前記MnO、ZnO、CeO、GaO、BiO、InOの比表面積は1〜100m/g、好ましくは50〜100m/gであり、
前記MnCr(1−a)、MnAl(1−a)、MnZr(1−a)、MnIn(1−a)、ZnCr(1−a)、ZnAl(1−a)、ZnGa(1−a)、ZnIn(1−a)、CoAl(1−a)、FeAl(1−a)、InAlMn(1−a−b)、InGaMn(1−a−b)の比表面積は5〜150m/g、好ましくは50〜150m/gであり、
前記xの数値範囲は0.7〜3.7であり、aの数値範囲は0〜1であり、a+bの数値範囲は0〜1である、
ことを特徴とする請求項1に記載の触媒。
【請求項4】
前記成分Iにおける活性成分と成分IIの重量比は0.1〜20倍、好ましくは0.3〜8である、
ことを特徴とする請求項1に記載の触媒。
【請求項5】
前記成分Iには分散剤をさらに添加し、分散剤はAl、SiO、Cr、ZrO、TiO、Ga、活性炭、グラフェン、カーボンナノチューブのうちの1種又は2種以上であり、金属酸化物は分散剤に分散され、成分Iにおける分散剤の含有量は0.05〜90wt%、好ましくは0.05〜25wt%であり、残りは活性金属酸化物である、
ことを特徴とする請求項1に記載の触媒。
【請求項6】
MORトポロジー構造を備えた前記分子篩の骨格元素の組成は、Si−Al−O、Ga−Si−O、Ga−Si−Al−O、Ti−Si−O、Ti−Al−Si−O、Ca−Al−O、Ca−Si−Al−Oのうちの1種又は2種以上である、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項7】
合成ガスを反応原料とし、請求項1〜6のいずれか1項に記載の触媒を用いて固定床又は移動床で転化反応を行い、エチレンを主要成分とする低級オレフィン産物を得る、
ことを特徴とする合成ガス反応により高選択性でエチレンを製造する方法。
【請求項8】
前記合成ガスの圧力が0.5〜10MPa、好ましくは1〜8MPa、より好ましくは2〜8MPaであり、反応温度が300〜600℃、好ましくは300〜450℃であり、対気速度が300〜10000h−1、好ましくは500〜9000h−1、より好ましくは500〜6000h−1であり、前記合成ガスはH/CO混合ガスであり、H/COモル比は0.2〜3.5、好ましくは0.3〜2.5であり、前記合成ガスには更にCOが含まれ、ここで合成ガス中のCOの体積濃度は0.1〜50%である、
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
合成ガスからのワンステップ合成法の直接転化によりC2−4オレフィンを製造し、エチレンの選択性は75〜82%であり、副産物であるメタンの選択性は9%未満であり、炭素原子数4以上の炭化水素産物の選択性は10%未満である、
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一酸化炭素の水素化により合成された低級オレフィンなどの高価値化学物質に関し、具体的には、有機アルカリで修飾された複合触媒及び一酸化炭素の水素化によるエチレンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレンは非常に重要な基礎化学工業原料であり、世界で最大産量の化学製品の1つであり、エチレン業界は石油化学産業の中核であって、国民経済において重要な位置を占めている。低級オレフィンとは、炭素原子4以下のオレフィンを指す。エチレンやプロピレンに代表される低級オレフィンは非常に重要な基本的な有機化学工業原料であり、中国経済の急速な成長に伴い、中国のエチレン業界は急速に発展しつつ、世界のエチレン市場で重要な位置を占めている。低級オレフィン市場は、長期にわたって供給不足の状態である。現在、エチレンの生産は主にナフサ及び軽ディーゼル油を分解する石油化学プロセス又はエタン分解技術を採用しており、中国の石油は長期にわたって輸入に依存してきたため、中国のエネルギー安全保障にはリスクが大きく、石油に依存しないエチレン生産技術の開発を至急必要とする。石炭、天然ガス、バイオマス、その他の再生可能な材料は、一酸化炭素と水素の混合物、即ち合成ガスに転化され、合成ガス中の一酸化炭素と水素の比率は、原料によって異なる。これらの合成ガスを原料として、一酸化炭素と水素の比率を適当な値に調整した後、一酸化炭素と水素から適当な触媒の作用下でフィッシャー・トロプシュ合成反応により炭素原子数4以下の低級オレフィンを直接合成でき、これにより、オレフィンのワンステップ合成が可能であり、その技術ロードはナフサ分解技術によるエチレンの製造に代替的な解決策を提供する。該プロセスにおいては、間接法のプロセスのように合成ガスからメタノール又はジメチルエーテルを経てオレフィンをさらに合成する必要がないため、プロセスが簡素化され、コストが大幅に削減される。
【0003】
フィッシャー・トロプシュ合成により合成ガスから低級オレフィンを直接製造することは、フィッシャー・トロプシュ合成触媒の開発における研究焦点の一つになっている。中国科学院大連化学物理研究所により提出された特許文献1においては、MgOなどのIIA族のアルカリ金属酸化物又はハイシリカゼオライト分子篩(又はホスフェエートアルミノゼオライト)に担持された鉄・マンガン触媒系を用い、強塩基K又はCsイオンを助剤とし、合成ガスから低級オレフィンを製造する反応圧力を1.0〜5.0MPa、反応温度を300〜400℃とする条件下で、比較的高い活性(CO転化率が90%)及び選択性(低級オレフィンの選択性が66%)が得られる。北京化工大学により出願された中国特許登録番号ZL03109585.2において、真空含浸法を採用して、マンガン、銅、亜鉛、シリコン、カリウム等を補助剤とするFe/活性炭触媒を製造して合成ガスから低級オレフィン合成する反応に用いることにより、原料ガス循環がない条件下で、CO転化率が96%であり、炭化水素中の低級オレフィンの選択率が68%である。上記に報告された触媒は、金属鉄又は炭化鉄を活性成分とするものであり、その反応は、金属表面での連鎖成長メカニズムに従って行い、産物である低級オレフィンの選択性が低く、特にエチレンなどの単一産物の選択性は30%未満である。2016年、上海高等研究所の孫予罕研究員と鍾良枢研究員らの優先的曝露の[101]及び[020]マンガン助炭化コバルト触媒に対しての報告では、CO転化率が31.8%、低級オレフィンの選択性が60.8%に達し、且つメタンの選択性が5%であるが、エチレンの単一選択性は20%未満である。中国科学院大連化学物理研究所の包信和院士と潘秀蓮研究員によって、アルミナに担持されたZnCr酸化物と多段細孔SAPO−34分子篩の複合二元機能触媒(非特許文献1)が報告されており、CO転化率が17%である時、低級オレフィンの選択性が80%に達成するが、エチレンの選択性は30%未満である。彼らにより出願された中国特許出願第201710129620.9号では、酸素ホールとMOR分子篩を含む複合二元機能触媒を用いて、合成ガスからワンステップ法でオレフィンを合成しており、エチレンの選択性は75〜80%にまで増加できたが、副産物には炭素原子数3以上の炭化水素が多く、該技術の応用に影響がある。本発明は、MOR分子篩の酸性特性を調整することにより、副産物であるメタンの選択性をさらに9%未満に低下させ、且つ炭素原子数4以上の炭化水素の選択性をさらに低下させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国特許出願公開第1083415号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Jiao et al.,Science 351 (2016) 1065−1068
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、先行技術の欠陥を克服することができる、有機アルカリで修飾された複合触媒及び一酸化炭素の水素化によるエチレンの製造方法を提供する。本案で提供される触媒は、一酸化炭素と水素の反応を触媒して低級オレフィンを直接生成するようにし、本案の反応において、C〜Cオレフィンの選択性が78〜87%に達し、単一産物のエチレンの選択性は75〜82%に達し、メタンの選択性は9%未満であり、炭素原子数4以上の炭化水素の選択性は10%未満である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の技術的手段は、以下の通りである。
【0008】
本発明は、触媒を提供し、該触媒は、成分Iと成分IIを含み、成分Iと成分IIは機械的混合により複合され、成分Iの活性成分が金属酸化物であり、成分IIがMORトポロジー構造の分子篩であり、成分IIにおいて前記MORトポロジー構造の分子篩が脂肪アミンで修飾処理され、前記修飾処理とは脂肪アミンを前記MORトポロジー構造の分子篩の12員環チャンネル内におけるB酸点に分散させる。
【0009】
前記脂肪アミンは、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノプロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、1、2−ジメチルプロピルアミン、1、2−プロパンジアミン、2−プロペンアミン、シクロプロピルアミン、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、1、4−ブタンジアミン、tert−ブチルアミン、ジイソブチルアミンヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ヘキサメチレンジアミン、およびトリオクチルアミンのうちの1種又は2種以上である。
【0010】
本発明において、前記機械的混合は、機械攪拌、ボールミーリング、シェーカー混合及び機械的研磨のうちの1種又は2種以上で複合を行うことができる。
【0011】
前記MORトポロジー構造の分子篩は、脂肪アミンで修飾されることで、有機アルカリ分子が12員環のB酸点を選択的に占めるようになり、有機アルカリ分子が8員環チャンネルに入るのを防ぐことができる。
【0012】
本発明において、前記MORトポロジー構造は、斜方晶系結晶系であり、互いに平行の楕円形の直通チャンネルを備えた一次元チャンネル構造を有し、8員環のポケット及び12員環の一次元チャンネルを含む。
【0013】
本発明において、脂肪アミンの修飾とは、脂肪アミン分子を用いてMOR分子篩の12員環チャンネル内におけるB酸点を完全に又は部分的に占めることを指す。占められた12員環チャンネル内におけるB酸点は50〜100%である。
【0014】
前記MOR分子篩の12員環チャンネル内におけるB酸点に脂肪アミンを分散させる前記方法について、この目的の達成ができるすべての既知の方法は、要件を満たすことができる。真空脱水吸着法を例にとると、先ず真空ラインにおいて温度350〜500℃、圧力1Pa〜10−5Pa、時間4h〜24hで分子篩サンプルの脱水と脱気処理を行い、次いで、脱気した分子篩を10Pa〜100kPaの脂肪アミンの雰囲気又は不活性ガスで希釈した有機アルカリの雰囲気中に暴露させ、吸着温度を室温〜300℃とし、且つ無機ガスを用いて200℃〜330℃下で、30分間〜12時間パージし、脂肪アミンで修飾された分子篩を得る。
【0015】
10Pa〜100kPa的脂肪?的气氛中或惰性气体稀?的有机?的气氛中,控制吸附温度是室温前記金属酸化物は、MnO、MnCr(1−a)、MnAl(1−a)、MnZr(1−a)、MnIn(1−a)、ZnO、ZnCr(1−a)、ZnAl(1−a)、ZnGa(1−a)、ZnIn(1−a)、CeO、CoAl(1−a)、FeAl(1−a)、GaO、BiO、InO、InAlMn(1−a−b)、InGaMn(1−a−b)のうちの1種又は2種以上である。
【0016】
前記MnO、ZnO、CeO、GaO、BiO、InOの比表面積は1〜100m/gであり、好ましい比表面積は50〜100m/gである。
【0017】
前記MnCr(1−a)、MnAl(1−a)、MnZr(1−a)、MnIn(1−a)、ZnCr(1−a)、ZnAl(1−a)、ZnGa(1−a)、ZnIn(1−a)、CoAl(1−a)、FeAl(1−a)、InAlMn(1−a−b)、InGaMn(1−a−b)の比表面積は、5〜150m/gであり、好ましい比表面積は50〜150m/gである。
【0018】
前記xの数値範囲は0.7〜3.7であり、aの数値範囲は0〜1であり、a+bの数値範囲は0〜1である。本発明において、a、b、(1−a)、(1−a−b)、xは金属酸化物中の元素化学組成の相対的な比率のみを表し、同じ比率の金属酸化物は同じ金属酸化物と見なされる。
【0019】
成分Iにおける有効成分と成分IIとの重量比は0.1〜20倍であり、好ましくは0.3〜8である。多成分の協同的作用がある反応を有効的に進行させることができ、一つの成分の多すぎ又は少なすぎのいずれにしても反応の進行に不利である。
【0020】
前記成分Iには分散剤が更に添加され、分散剤はAl、SiO、Cr、ZrO、TiO、Ga、活性炭、グラフェン、カーボンナノチューブのうちの1種又は2種以上であり、金属酸化物は分散剤に分散され、成分Iにおける分散剤の含有量は0.05〜90wt%であり、好ましくは0.05〜25wt%であり、残りは活性金属酸化物である。
【0021】
MORトポロジー構造を備える前記分子篩の骨格元素の組成は、Si−Al−O、Ga−Si−O、Ga−Si−Al−O、Ti−Si−O、Ti−Al−Si−O、Ca−Al−O、Ca−Si−Al−Oのうちの1種又は2種以上である。
【0022】
本発明は、更に合成ガスの直接転化による低級オレフィンの製造方法を提供し、該製造方法は、合成ガスを反応原料とし、前記触媒を採用して固定床又は移動床で転化反応を行い、高い選択性でエチレンを生成できる。合成ガス中には、さらに、一定量の二酸化炭素を含んでもよい。
【0023】
合成ガスは、圧力が0.5〜10MPaであり、好ましくは1〜8MPaであり、より好ましくは2〜8MPaであり、反応温度が300〜600℃であり、好ましくは300〜450℃であり、対気速度が300〜10000h−1であり、好ましくは500〜9000h−1であり、より好ましくは500〜6000h−1であり、より高い時空収率を得ることができる。
【0024】
前記反応に用いる合成ガスのH/COモル比は0.2〜3.5であり、好ましくは0.3〜2.5であり、より高い空時収率及び選択性を得ることができ、合成ガスはさらにCOを含んでもよく、その場合、合成ガス中のCOの体積濃度は0.1〜50%である。
【0025】
本発明係る前記触媒は、合成ガスのワンステップ法の直接転化によるエチレン又はC〜Cオレフィンの製造に用いられ、その中、C〜Cオレフィンの選択性は78〜87%に達し、エチレンの選択性は75〜82%に達し、また副産物であるメタンの選択性は9%未満で非常に低く、炭素原子数4以上の炭化水素の選択性は10%未満である。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、以下の有益な効果を有する。
(1)本発明は、従来のメタノールから低級オレフィンを製造する技術(MTOと略称)とは異なり、ワンステップで合成ガスをエチレンに直接転化する直接転化することを実現することができる。
(2)本発明の産物における単一産物エチレンの選択性は75−82%と高く、且つ空時収率が高く(オレフィンの収率が1.33mmol/hgに達する)、産物の分離が容易であり、優れた応用の見込みを有する。
(3)触媒における金属酸化物は高比表面積を有するので、金属酸化物の表面にはより多くの活性サイトを備え、触媒反応の進行により有利である。
(4)触媒における成分IIの作用は、一方では成分Iとカップリングを行うことにより、成分Iによって生成された活性気相中間体をさらに転化して低級オレフィンを得、成分IIのカスケード反応の平衡に対する駆動作用により、成分Iによる合成ガスの活性化と転化が促進されて、転化率が向上され、一方、本発明に用いられる成分IIおける分子篩の特別なチャンネル構造は、独特な形状選択効果を有し、より多くのエチレン産物を高度選択性に得ることができる。
(5)本発明に記載の成分I又は成分IIをそれぞれ個別に用いると、本発明の機能を全然実現できず、例えば、成分Iのみを用いる場合、産物におけるメタンの選択性は非常に高いわりに、転化率が非常に低いに対して、成分IIのみを用いる場合、合成ガスの活性化及び転化がほとんどできない。成分Iと成分IIとが協同的触媒作用を果たしてはじめて、高効率の合成ガスの転化を実現するとともに、優れた選択性を得ることができる。これは、成分Iが合成ガスを活性化させて特定の活性気相中間体を生成し、中間体が気相を介して成分IIのチャンネル内に拡散されるからである。本発明において選択されたMOR構造の分子篩は特別なチャンネル構造および酸性度を有するので、成分Iによって生成される活性気相中間体をさらに活性化し、オレフィンに転化する。成分IIの特別なチャネル構造のため、産物は特別な選択性を備えるようになる。
(6)本発明の触媒において、成分IIは脂肪アミンで修飾され、合成ガスの転化を触媒し、単一成分のエチレンが得、その中エチレン選択性は75〜82%に達するわりに、メタンの選択性は9%未満であり、炭素元素数4以上の炭化水素の選択性は10%未満と大幅に抑制される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、実施例により、本発明をさらに詳述するが、本発明の特許請求の範囲はこれらの実施例に限制されない。また、実施例にはこの目的を実現するための一部の条件が示されるが、目的を達成するためにこれらの条件が満たさなければならないことを意味するのではない。
【0028】
サンプルの比表面積は、窒素又はアルゴンによる物理吸着方法で測定することができる。
【0029】
本発明に係る金属酸化物は、市販の高比表面積の金属酸化物を購入してもよいし、以下の方法で取得してもよい。
【0030】
(実施例1)
I.触媒の成分Iの製造
(一)、沈降法による高比表面積を有するZnO材料の合成
(1)1部あたり0.446g(1.5mmol)のZn(NO3)・6HOを3部秤取し、3つの容器に加え、次いで0.300g(7.5mmol)、0.480g(12mmol)、0.720g(18mmol)をそれぞれ秤取して上記3つの容器に順次に加え、次いで30ml脱イオン水をそれぞれ量り取って3つの容器に加え、70℃で0.5h以上攪拌して溶液を均一に混合し、室温までに自然冷却させる。反応液を遠心分離して遠心分離後の沈澱物を収集し、脱イオン水で2回洗浄してZnO金属酸化物の前駆体を得る。
(2)焙焼:上記の得られた産物を空気中で乾燥させた後、雰囲気において焼成処理を行うことで、高比表面積のZnO材料を得る。雰囲気は、不活性ガス、還元性ガス又は酸化性ガスであり、不活性ガスはN、He及びArのうちの1種又は2種以上であり、還元性ガスはH及びCOの1種又は2種であり、還元性ガスには不活性ガスが含まれてもよく、酸化性ガスはO、O、NOのうちの1種又は2種以上であり、酸化性ガスには不活性ガスが含まれてもよい。焼成温度は300〜700℃であり、焼成時間は0.5〜12hである。
【0031】
焙焼の目的は、沈澱された後の金属酸化物の前駆体を高温下で高比表面積の酸化物ナノ粒子に分解させるとともに、分解して生成された酸化物表面の吸着物を焙焼の高温処理により完全に除去することである。
【0032】
具体的なサンプル及びその製造条件を表1に示し、比較例として、表中のZnO#4は、市販の低比表面積のZnO単結晶である。
【0033】
【表1】
【0034】
(二)共沈降法による高比表面積を有するMnO材料の合成
製造過程は上記ZnO#2と同様であるが、相違点は、Znの前駆体に代えて、Mnの前駆体を用いることであり、Mnの前駆体は硝酸マンガン、塩化マンガン、酢酸マンガンの中の1種でもよく、ここでは、硝酸マンガンを用い、対応する産物はMnOとされ、比表面積は23m/gである。
【0035】
(三)共沈降法による高比表面積を有するCeO材料の合成
製造過程は上記ZnO#2と同様であるが、相違点は、Znの前駆体に代えて、Ceの前駆体を用いることであり、Ceの前駆体は硝酸セリウム、塩化セリウム、酢酸セリウムのうちの1種でもよく、ここでは、硝酸セリウムを用い、対応する産物はCeOとされ、比表面積は92m/gである。
【0036】
(四)共沈降法による高比表面積を有するGa材料の合成
製造過程は上記ZnO#2と同様であるが、相違点は、Znの前駆体に代えて、Gaの前駆体を用いることであり、Gaの前駆体は硝酸ガリウム、塩化ガリウム、酢酸ガリウムのうちの1種でもよく、ここでは、硝酸ガリウムを用い、対応する産物はGaとされ、比表面積は55m/gである。
【0037】
(五)共沈降法による高比表面積を有するBi材料の合成
製造過程は上記ZnO#2と同様であるが、相違点は、Znの前駆体に代えて、Biの前駆体を用いることであり、Biの前駆体は硝酸ビスマス、塩化ビスマス、酢酸ビスマスの1種でもよく、ここでは、硝酸ビスマスを用い、対応する産物はBiとされ、比表面積は87m/gである。
【0038】
(六)共沈降法による高比表面積を有するIn材料の合成
製造過程は上記ZnO#2と同様であるが、相違点は、Znの前駆体をInの前駆体を用いることであり、Inの前駆体は硝酸インジウム、塩化インジウム、酢酸インジウムのうちの1種でもよく、ここでは、硝酸インジウムを用い、対応する産物はInとされ、比表面積は52m/gである。
【0039】
(七)沈降法による高比表面積を有するMnCr(1−a)、MnAl(1−a)、MnZr(1−a)、MnIn(1−a)、ZnCr(1−a)、ZnAl(1−a)、ZnGa(1−a)、ZnIn(1−a)、CoAl(1−a)、FeAl(1−a)、InAlMn(1−a−b)、InGaMn(1−a−b)の合成
硝酸亜鉛、硝酸アルミニウム、硝酸クロム、硝酸マンガン、硝酸ジルコニウム、硝酸インジウム、硝酸コバルト、硝酸鉄を前駆体として用い、室温で炭酸アンモニウムと水中に混合し(ここで炭酸アンモニウムを沈殿剤とし、仕込み比は、炭酸アンモニウムの過剰であるか、又は好ましくはアンモニウムイオンと金属イオンの比が1:1である)、混合液をエージングした後、取り出して洗浄、ろ過、乾燥し、得られた固体を空気雰囲気下で焼成し、高比表面積の金属酸化物を得る。具体的なサンプル及びその製造条件は下記の表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
(八)分散剤Cr、Al又はZrOで分散した金属酸化物
分散剤Cr、Al又はZrOを担体とし、沈澱堆積法によりCr、Al又はZrOで分散した金属酸化物を製造する。分散ZnOの製造を例にとると、市販のCr(比表面積は約5m/g)、Al(比表面積は約20m/g)又はZrO(比表面積は約10m/g)を担体として事前に水に分散し次いで、硝酸亜鉛を原料として室温で水酸化ナトリウムという沈殿剤と混合して沈殿させる。Zn2+のモル濃度は0.067Mであり、Zn2+と沈殿剤のモル比は1:8であり、その後、160℃で24時間エージングし、Cr、Al、ZrOを担体として分散したZnO(成分Iにおける分散剤の含有量は順次に0.1wt%、20wt%、85wt%である)を得る。得られたサンプルを空気中に500℃で1時間焼成し、産物は順次に分散酸化物1〜3として定義し、その比表面積は順次に148m/g、115m/g、127m/gである。
【0042】
同様の方法により、SiO(比表面積が約2m/g)、Ga(比表面積が約10m/g)又はTiO(比表面積が約15m/g)を担体として分散したMnO酸化物(成分Iにおける分散剤の含有量が順次に5wt%、30wt%、60wt%である)を得、産物は順次に分散酸化物4〜6として定義し、比表面積は順次に97m/g、64m/g、56m/gである。
【0043】
同様方法により、活性炭(比表面積が約1000m/g)、グラフェン(比表面積が約500m/g)又はカーボンナノチューブ(比表面積が約300m/g)を担体として分散したZnO酸化物(成分Iにおける分散剤の含有量は順次に5wt%、30wt%、60wt%である)を得、産物は順次に分散酸化物7〜9と定義し、比表面積は順次に177m/g、245m/g、307m/gである。
【0044】
二、成分II(MORトポロジー構造の分子篩)の製造
前記MORトポロジー構造は、斜方晶系であり、互いに平行する楕円形の直通チャンネルを備える一次元チャンネル構造を有し、一次元チャンネルに平行する8員環及び12員環を含み、12員環の主チャンネルの側辺が8員環のポケットと連通する。
【0045】
本発明の前記MOR分子篩は、直接購入された市販の分子篩を用いてもよいし、自己で合成した分子篩を用いてもよい。本発明では、南開大学の触媒工場で製造されたMOR分子篩をMOR1として用い、同時に水熱合成法によりMOR構造を備えた7つの分子篩を自己で製造している。
【0046】
具体的な製造過程は次のとおりである。
n(SiO)/n(Al)=15、n(NaO)/n(SiO)=0.2、n(HO)/n(SiO)=26に従って硫酸アルミニウムと水酸化ナトリウム溶液を混合してからシリカゾルを加え、1時間攪拌して均質の初期ゲルを得る。
次に、初期ゲルを高圧合成釜に移し、180℃で24時間静的に結晶化した後、急速に冷却させ、洗浄、乾燥して、モルデン沸石サンプルを得、Na−MORとされる。
Na−MORを取り、1mol/Lの塩化アンモニウム溶液と混合し、90℃下において3時間攪拌し、洗浄及び乾燥を4回繰り返し、450℃で6時間焼成して水素型モルデン沸石を得る。
【0047】
上記の過程に従って製造されたMORトポロジー構造を有する前記分子篩の骨格元素の組成は、Si−Al−O、Ga−Si−O、Ga−Si−Al−O、Ti−Si−O、Ti−Al−Si−O、Ca−Al−O、Ca−Si−Al−Oのうちの1種又は2種以上である。
【0048】
一部の骨格のO元素はHHが結合されており、対応する産物は順に次MOR1−8として定義する。
【0049】
【表3-1】
【0050】
【表3-2】
【0051】
適切な量の製造済みの分子篩を取り、真空下で脱水脱気の処理を行い、処理時の温度は400℃とし、圧力は10−4Paとし、10時間処理した後、300℃にまで温度を下げ、次いで真空チャンバー内に200Paの有機アルカリ性ガスを導入して、10時間平衡させた後、同じ温度で1時間脱離する。
【0052】
MOR1、MOR2、MOR3、MOR4、MOR5、MOR6、MOR7及びMOR8を、順次にジメチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノプロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、1,2−ジメチルプロピルアミン、1、2−プロパンジアミン、2−プロペンアミン、シクロプロピルアミン、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、1,4−ブタンジアミン、tert−ブチルアミン、ジイソブチルアミンヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ヘキサメチレンジアミン、及びトリオクチルアミンで処理し、MOR9、MOR10、MOR11、MOR12、MOR13、MOR14、MOR15、MOR16、MOR17、MOR18、MOR19、MOR20、MOR21、MOR22、MOR23、MOR24、MOR25、MOR26、MOR27、MOR28、MOR29、MOR30、MOR31、MOR32をそれぞれ得る。
【0053】
III.触媒の製造
成分Iと成分IIを所用割合で容器に入れ、これらの材料及び/又は容器の高速運動による押圧力、衝撃力、剪断力、摩擦力などのうちの1種又は2種以上の作用により、分離、破砕、均一な混合などの目的を達成し、温度とキャリアガスの雰囲気を調整することで機械的エネルギー、熱エネルギー、化学エネルギーの転換を実現し、さらに異なる成分間の相互作用を調整する。
【0054】
機械的混合の過程において、混合温度を20〜100℃に設定してもよく、雰囲気中又はそのまま空気中で行ってもよい。雰囲気は以下のいずれかの気体から選ばれる。
a)窒素ガス及び/又は不活性ガス。
b)水素ガスと窒素ガス及び/又は不活性ガスの混合ガスであって、混合ガスにおける水素ガスの体積が5〜50%である。
c)COと窒素ガス及び/又は不活性ガスの混合ガスであって、混合ガスにおけるCOの体積が5〜20%である。
d)Oと窒素ガス及び/又は不活性ガスの混合ガスであって、混合ガスにおけるOの体積が5〜20%であり、前記不活性ガスがヘリウム、アルゴン、ネオンのうちの1種又は2種以上である。
【0055】
機械的混合は、機械攪拌、ボールミーリング、シェーカー混合、機械的研磨のうちの1種又は2種以上を用いて複合を行うことができ、詳細は以下通りである。
機械攪拌:攪拌槽において、攪拌棒を用いて成分Iと成分IIを混合し、攪拌時間(5min〜120min)及び速度(30〜300r/min)を制御することにより、成分Iと成分IIとの混合程度を調整することができる。
ボールミーリング:研磨剤と触媒を研磨タンク内で高速で回転させつことで、触媒に強い衝撃、圧延を与え、成分Iと成分IIを分散、混合する作用を達成する。研磨剤(材質がステンレス、瑪瑙、石英でもよい。サイズ範囲が5mm〜15mm)と触媒との割合(質量比の範囲が20〜100:1)を制御することで、均一な混合を実現する。
シェーカー混合法:成分Iと成分IIを予備混合し、容器に入れ、シェーカーの往復振動又は円周振動を制御することで、成分Iと成分IIとの混合を達成し、振動速度(範囲が170r/分)と時間(範囲が5min〜120min)を調整することにより、均一な混合を実現する。
機械的研磨法:成分Iと成分IIを予備混合し、容器に入れ、一定の圧力(範囲が5kg〜20kg)下で、混合された触媒とラッパーとの相対的運動(速度範囲が30〜300r/min)により、均一な混合作用を実現する。
【0056】
具体的な触媒製造及びその特性パラメータは表4に示す。
【0057】
【表4-1】
【0058】
【表4-2】
【0059】
【表4-3】
【0060】
【表4-4】
【0061】
[触媒反応の実例]
固定床反応を例とするが、触媒は移動床反応器にも適用できる。該装置には気体質量流量計、オンライン産物分析クロマトグラフィー(反応器のテールガスはクロマトグラフィーの定量バルブに直接接続され、周期的及びリアルタイムのサンプリング及び分析を行う)が取り付けられている。
【0062】
上記本発明の触媒を2g取って固定床反応器に入れ、Arで反応器における空気を置換した後、H雰囲気において300℃までに昇温し、合成ガス(H/COモル比=0.2〜3.5)を切り替え、合成ガスの圧力を0.5〜10MPaとし、反応温度300〜600℃までに昇温し、反応原料ガスの対気速度を500〜10000ml/g/hに調整する。合成ガス中にはCOが含まれてもよく、合成ガス中のCOの体積濃度は0.1〜50%である。産物はオンラインクロマトグラフィーで測定し分析を行う。
【0063】
温度、圧力、対気速度を変更することで、反応性能を変更することができる。産物においてエチレン及びプロピレンの選択性の和は78〜87%に達し、原料の転化率は10〜60%である。分子篩と酸化物との有効的な協同作用により、メタン及び炭素元素数4以上(C4+)の炭化水素の大量の生成を防ぐことができる。
【0064】
【表5-1】
【0065】
【表5-2】
【0066】
比較例2〜9の反応結果からわかるように、MORは脂肪アミンを用いて後処理を行うと触媒性能に対する調節作用が明らかであり、脂肪アミンで処理してない触媒に比べると、後処理により調節した触媒はメタン及び炭素元素4以上の炭化水素の選択性を明らかに低下させるとともに、低級オレフィンとエチレンの選択性を向上させる。
【0067】
比較例10で用いられた触媒の成分Iは、金属ZnCoであり、ZnCoのモル比は1:1であり、その他のパラメータや混合プロセスなどは触媒Cのものと同じである。
【0068】
比較例11で用いられた触媒の成分Iは金属TiOであり、自余パラメータや混合プロセスなどは触媒Cのものと同じである。
【0069】
比較例12で用いられた触媒は、成分IであるZnO#1のみを有する、MOR分子篩を含まないサンプルであり、反応転化率が非常に低く、且つ産物は主にジメチルエーテルやメタンなどの副産物であり、エチレンはほとんど生成されていない。
【0070】
比較例13で用いられた触媒は、成分IIのみを有するMOR9分子篩であり、成分Iを活性成分とする金属酸化物を含まず、反応に対しての触媒活性が殆どない。
【0071】
比較例12、13からわかるように、成分I又は成分IIのみがある場合、反応効果が非常に悪く、本発明に記載の優れた反応性能を全然持っていない。
【0072】
上記の実施例は、ただ本発明を説明するために提供されたものであって、本発明の保護範囲を限定するものではない。本発明の保護範囲は、提供する請求項により定義され、本発明の趣旨及び原理から逸脱することなく行った様々な同等の置換及び変更は、本発明の範囲内に含まれるべきである。
【0073】
(付記)
(付記1)
成分Iと成分IIを含み、成分Iと成分IIは機械的混合により複合され、成分Iの活性成分が金属酸化物であり、成分IIがMORトポロジー構造の分子篩であり、成分IIにおいて前記MORトポロジー構造の分子篩が脂肪アミンで修飾処理され、前記修飾処理とは脂肪アミンを前記MORトポロジー構造の分子篩の12員環チャンネル内におけるB酸点に分散させる、ことを特徴とする触媒。
【0074】
(付記2)
前記脂肪アミンは、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノプロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、1、2−ジメチルプロピルアミン、1、2−プロパンジアミン、2−プロペンアミン、シクロプロピルアミン、n−ブチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、1、4−ブタンジアミン、tert−ブチルアミン、ジイソブチルアミンヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリオクチルアミンのうちの1種又は2種以上である、
ことを特徴とする付記1に記載の触媒。
【0075】
(付記3)
前記金属酸化物は、MnO、MnCr(1−a)、MnAl(1−a)、MnZr(1−a)、MnIn(1−a)、ZnO、ZnCr(1−a)、ZnAl(1−a)、ZnGa(1−a)、ZnIn(1−a)、CeO、CoAl(1−a)、FeAl(1−a)、GaO、BiO、InO、InAlMn(1−a−b)、InGaMn(1−a−b)のうちの1種又は2種以上であり、
前記MnO、ZnO、CeO、GaO、BiO、InOの比表面積は1〜100m/g、好ましくは50〜100m/gであり、
前記MnCr(1−a)、MnAl(1−a)、MnZr(1−a)、MnIn(1−a)、ZnCr(1−a)、ZnAl(1−a)、ZnGa(1−a)、ZnIn(1−a)、CoAl(1−a)、FeAl(1−a)、InAlMn(1−a−b)、InGaMn(1−a−b)の比表面積は5〜150m/g、好ましくは50〜150m/gであり、
前記xの数値範囲は0.7〜3.7であり、aの数値範囲は0〜1であり、a+bの数値範囲は0〜1である、
ことを特徴とする付記1に記載の触媒。
【0076】
(付記4)
前記成分Iにおける活性成分と成分IIの重量比は0.1〜20倍、好ましくは0.3〜8である、
ことを特徴とする付記1に記載の触媒。
【0077】
(付記5)
前記成分Iには分散剤をさらに添加し、分散剤はAl、SiO、Cr、ZrO、TiO、Ga、活性炭、グラフェン、カーボンナノチューブのうちの1種又は2種以上であり、金属酸化物は分散剤に分散され、成分Iにおける分散剤の含有量は0.05〜90wt%、好ましくは0.05〜25wt%であり、残りは活性金属酸化物である、
ことを特徴とする付記1に記載の触媒。
【0078】
(付記6)
MORトポロジー構造を備えた前記分子篩の骨格元素の組成は、Si−Al−O、Ga−Si−O、Ga−Si−Al−O、Ti−Si−O、Ti−Al−Si−O、Ca−Al−O、Ca−Si−Al−Oのうちの1種又は2種以上である、
ことを特徴とする付記1〜5のいずれか1つに記載の触媒。
【0079】
(付記7)
合成ガスを反応原料とし、付記1〜6のいずれか1つに記載の触媒を用いて固定床又は移動床で転化反応を行い、エチレンを主要成分とする低級オレフィン産物を得る、
ことを特徴とする合成ガス反応により高選択性でエチレンを製造する方法。
【0080】
(付記8)
前記合成ガスの圧力が0.5〜10MPa、好ましくは1〜8MPa、より好ましくは2〜8MPaであり、反応温度が300〜600℃、好ましくは300〜450℃であり、対気速度が300〜10000h−1、好ましくは500〜9000h−1、より好ましくは500〜6000h−1であり、前記合成ガスはH/CO混合ガスであり、H/COモル比は0.2〜3.5、好ましくは0.3〜2.5であり、前記合成ガスには更にCOが含まれ、ここで合成ガス中のCOの体積濃度は0.1〜50%である、
ことを特徴とする付記7に記載の方法。
【0081】
(付記9)
合成ガスからのワンステップ合成法の直接転化によりC2−4オレフィンを製造し、エチレンの選択性は75〜82%であり、副産物であるメタンの選択性は9%未満であり、炭素原子数4以上の炭化水素産物の選択性は10%未満である、
ことを特徴とする付記7に記載の方法。
【国際調査報告】