特表2021-516180(P2021-516180A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-516180(P2021-516180A)
(43)【公表日】2021年7月1日
(54)【発明の名称】潜在性硬化樹脂および関連する方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/106 20170101AFI20210604BHJP
   B29C 64/264 20170101ALI20210604BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20210604BHJP
   B29C 64/307 20170101ALI20210604BHJP
【FI】
   B29C64/106
   B29C64/264
   B33Y10/00
   B29C64/307
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2020-568938(P2020-568938)
(86)(22)【出願日】2019年3月1日
(85)【翻訳文提出日】2020年11月2日
(86)【国際出願番号】US2019020188
(87)【国際公開番号】WO2019169211
(87)【国際公開日】20190906
(31)【優先権主張番号】62/637,446
(32)【優先日】2018年3月2日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】516373915
【氏名又は名称】フォームラブス,インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】FORMLABS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ジーリンガー,マキシミリアン
(72)【発明者】
【氏名】キミョノク,アルペイ
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA21
4F213AA24
4F213AA31
4F213AA32
4F213AB04
4F213AB11
4F213AB12
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL12
4F213WL24
4F213WL26
(57)【要約】
本開示は、一般に、硬化性樹脂に、とりわけ潜在性硬化樹脂に、および付加製作(例として、3次元印刷)デバイス用の関連する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造された(additively-manufactured)物品を生成する方法であって、該方法が、以下:
第1前駆体構成要素、および第1前駆体構成要素とは異なる少なくとも第2前駆体構成要素を含む硬化性材料であって、ここで、第1前駆体構成要素が、有効量の化学線に供与されるとき硬化するように構成され、および第2前駆体構成要素が、水分またはガスに供与されるとき硬化するように構成される、前記材料を提供すること;
硬化性材料を化学線に曝露し、中間体ポリマー構造を生成し、ここで、2次前駆体構成要素が、かかる中間体ポリマー構造中に懸濁されること;および
中間ポリマー構造を充分な水分またはガスに曝露し、2次前駆体構成要素を少なくとも部分的に硬化させ、それによって物品を生成すること、
を含む、前記方法。
【請求項2】
硬化性材料が、第1前駆体構成要素および第2前駆体構成要素の混合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
硬化性材料をビルドプラットフォームへ提供するのに先立ち、硬化性材料が、第1前駆体構成要素および第2前駆体構成要素を混合することによって形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第1前駆体構成要素が、アクリルまたはその誘導体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第1前駆体構成要素が、光開始剤、顔料、染料、添加剤、および/または充填剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第2前駆体構成要素が、イソシアナートまたはその誘導体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
第2前駆体構成要素が、顔料、染料、添加剤、および/または充填剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
硬化性材料が、液体である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
第1前駆体構成要素が、光重合性化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
硬化性材料が、少なくとも1ヶ月の貯蔵寿命を有するように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
形成された物品が、相互侵入ポリマーネットワーク(interpenetrating polymer network)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
形成された物品が、125%以上の破断伸度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
形成された物品が、50以上のショアA硬度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
形成された物品が、5MPa以上の引張強度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
硬化性材料における第1前駆体構成要素対第2前駆体構成要素の比率が、15:85以上および95:5以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
第2前駆体構成要素が、イソシアナート末端モノマーまたはオリゴマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
第2前駆体構成要素が、ウレタン、エステル、またはエーテル種を含む、モノマーまたはオリゴマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
第2前駆体構成要素が、触媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
第1前駆体構成要素が、光開始剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
ビルドプラットフォーム上に固体材料の層を形成することによって物品を製作するように構成される付加製作(additive fabrication)デバイスにおいて物品を形成する方法であって、方法が、以下:
第1前駆体構成要素第および第1前駆体構成要素とは異なる少なくとも第2前駆体構成要素を含む硬化性材料を、ビルドプラットフォーム上に提供すること;
第1前駆体構成要素を少なくとも部分的に硬化させることによって第1層を形成すること;
第1層上に硬化性材料を提供すること;
第1層上に堆積された硬化性材料の第1前駆体構成要素を少なくとも部分的に硬化させることによって第2層を形成すること;および
続いて、第1層および第2層中の第2前駆体構成要素を少なくとも部分的に硬化させること;
を含む、前記方法。
【請求項21】
第1前駆体構成要素を少なくとも部分的に硬化させることが、第1前駆体構成要素を有効量の化学線に曝露することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
第2前駆体構成要素を少なくとも部分的に硬化させることが、物品を、湿度、熱、および/または有効量の化学線に曝露することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
第2前駆体構成要素を硬化させるための有効量の化学線が、第1前駆体構成要素を硬化させるための有効量の化学線とは異なる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
第1前駆体構成要素を少なくとも部分的に硬化させることが、硬化性材料を、50%以下の湿度に曝露することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
第2前駆体構成要素を少なくとも部分的に硬化させることが、物品を、1%以上および100%以下の湿度に曝露することを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
第1前駆体構成要素が、アクリルまたはその誘導体を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
第2前駆体構成要素が、イソシアナートまたはその誘導体を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
硬化性材料が、液体である、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
硬化性材料における第1前駆体構成要素対第2前駆体構成要素の比率が、15:85以上および95:5以下である、請求項20に記載の方法。
【請求項30】
第2前駆体構成要素が、ウレタン、エステル、またはエーテル種を含む、モノマーまたはオリゴマーを含む、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、「Latent Cure Resins And Related Methods」と表題を付され、2018年3月2日に出願された米国仮特許出願第62/637,446号の利益を35U.S.C.§119(e)の下で主張し、これによって、その全体において参照により組み込まれる。
【0002】
本発明の分野
本発明は、一般に、硬化性樹脂、とりわけ潜在性硬化樹脂、および付加製作(例として、3次元印刷)デバイス用の関連する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
付加製作、例として3次元(3D)印刷は、典型的には建材の一部を特定の位置で固化させることによる、物体を製作するための技法を提供する。付加製作技法は、ステレオリソグラフィ、選択堆積モデリング法(selective deposition modeling)または熱溶解積層法(fused deposition modeling)、直接複合製造法(direct composite manufacturing)、薄膜積層法(laminated object manufacturing)、多相ジェット固化法(multi-phase jet solidification)、弾道粒子製造法(ballstic particle manufacturing)、粒子堆積法、レーザー焼結法またはその組み合わせを包含してもよい。多くの付加製作技法は、典型的には所望される物体の断面である、連続的な層を形成することによって物体を作る。典型的には、各層は、既に形成された層または物体がその上に組立てられる基板のいずれかに接着するように形成される。ステレオリソグラフィとして知られる付加製作への1つのアプローチにおいて、固体物は、硬化性ポリマー樹脂の薄層を、典型的には第1層を基板上へ、および次いで重ねて、連続的に形成することによって創作される。化学線への曝露は、液体樹脂の薄層を硬化し、それを硬くし、既に硬化された層へ、または、ビルドプラットフォーム(build platform)の底部表面へ接着させる。
【0004】
あらゆる付加製造(additive manufacturing)技術は、一般に、いくつかの形態の特定された材料を必要とする。ステレオリソグラフィ(SLAおよびDLP)などの、液体材料を硬化する物体への光を使用する付加製造技法は、光硬化性材料を必要とする。
【0005】
多くの最新の付加製造材料は、(メタ)アクリラート重合体から形成される。(メタ)アクリラートは、モノマーおよびオリゴマーがラジカル光重合を介して高度に反応性であるため、3D印刷塗布において有用である。この反応性は、印刷プロセスが高い程度の的確さを伴ってより急速かつ効率的に進行するようにする。しかしながら、反応性はまた、あまり好ましくない質を導入するか、3D印刷プロセスにおいて得られる質のタイプを制限する可能性がある。その結果得られるポリマーは一般に不均一であり、かつ、高度に架橋されているため、端材が脆い可能性がある。付加製造がより機能的なプロトタイピングまたは最終的な使用の用途における応用を押し進めるにつれて、(メタ)アクリラート系ポリマーの材料性能が制限因子になる可能性がある。
【0006】
結果的に、当該技術分野において、付加製造の適用のための、新しい材料および拡張された材料特性の必要性がある。
【発明の概要】
【0007】
本発明の概要
本開示は、一般に、硬化性樹脂、とりわけ潜在性硬化樹脂、および付加製作(例として、3次元印刷)デバイス用の関連する方法に関する。
【0008】
1以上の態様に従って、付加製造された物品を生成する方法が提供される。
【0009】
いくつかの態様において、方法は、第1前駆体構成要素、および第1前駆体構成要素とは異なる少なくとも第2前駆体構成要素を含む硬化性材料であって、ここで、第1前駆体構成要素は、有効量の化学線に供与されるとき硬化するように構成され、および第2前駆体構成要素が、水分またはガスに供与されるとき硬化するように構成される、前記材料を提供すること、硬化性材料を化学線に曝露し、中間体ポリマー構造を生成し、ここで、2次前駆体構成要素が、かかる中間体ポリマー構造中に懸濁されること、および中間体ポリマー構造を充分な水分またはガスに曝露し、2次前駆体構成要素を少なくとも部分的に硬化させ、それによって物品を生成することを含む。
【0010】
いくつかの態様において、ビルドプラットフォーム上に固体材料の層を形成することによって物品を製作するように構成される、付加製作デバイスにおける物品を形成する方法が提供される。いくつかの態様において、方法は、第1前駆体構成要素、および第1前駆体構成要素とは異なる第2前駆体構成要素を含む硬化性材料をビルドプラットフォーム上に提供すること、第1前駆体構成要素を少なくとも部分的に硬化させることによって第1層を形成すること、第1層上に硬化性材料を提供すること、第1層上に堆積された硬化性材料の第1前駆体構成要素を少なくとも部分的に硬化させることによって第2層を形成すること、および続いて、第1層および第2層中の第2前駆体構成要素を少なくとも部分的に硬化させることを含む。
【0011】
ある態様において、硬化性材料は、第1前駆体構成要素および第2前駆体構成要素の混合物を含む。
【0012】
ある態様において、硬化性材料は、ビルドプラットフォームへ組成物を提供するのに先立ち、第1前駆体構成要素および第2前駆体構成要素を混合することによって形成される。
【0013】
ある態様において、第1前駆体構成要素は、アクリルまたはその誘導体を含む。
【0014】
第1前駆体構成要素は、光開始剤、顔料、染料、添加剤、および/または充填剤を含む。
【0015】
ある態様において、第2前駆体構成要素は、イソシアナートまたはその誘導体を含む。
【0016】
ある態様において、第2前駆体構成要素は、顔料、染料、添加剤、および/または充填剤を含む。
【0017】
ある態様において、第1前駆体構成要素を硬化させることは、第1前駆体構成要素を有効量の化学線に曝露することを含む。
【0018】
ある態様において、第2前駆体構成要素を硬化させることは、物品を、湿度、熱、および/または有効量の化学線に曝露することを含む。
【0019】
ある態様において、第2前駆体構成要素を硬化せるための有効量の化学線は、第1前駆体構成要素を硬化させるための有効量の化学線とは異なる。
【0020】
ある態様において、第1前駆体構成要素は、光重合性化合物を含む。
【0021】
ある態様において、硬化性材料は、少なくとも1ヶ月の貯蔵寿命を有するように構成される。
【0022】
ある態様において、形成された物品は、相互侵入ポリマーネットワークを含む。
【0023】
上記は、本発明の非限定的な概要であり、それは添付された特許請求の範囲によって定義される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図面の簡単な記載
図1A図1A〜1Bは、いくつかの態様に従う、例となる付加製作システムを描写する。
図1B図1A〜1Bは、いくつかの態様に従う、例となる付加製作システムを描写する。
【0025】
図2A図2A〜2Cは、いくつかの態様に従う、例となる付加製作システムを描写する。
図2B図2A〜2Cは、いくつかの態様に従う、例となる付加製作システムを描写する。
図2C図2A〜2Cは、いくつかの態様に従う、例となる付加製作システムを描写する。
【0026】
図3図3は、いくつかの態様に従う、潜在的な硬化機構を引き起こす追加の後処理段階の前後にステレオリソグラフィプリンターを使用して部分的に形成された内部構造の例示の態様を説明する;および
【0027】
図4図4は、いくつかの態様に従う、ポリ尿素形成の概略図を描写する。
【0028】
本発明の他の側面、態様および特色は、付随する図面と併せて考慮されるとき、以下の詳細な説明から明らかになるだろう。付随する図は概略図であり、および縮尺どおりに描かれることは意図されない。明確さの目的のため、あらゆる構成要素はあらゆる図中に表示されるものではなく、本発明の各態様のあらゆる構成要素は当業者に本発明を理解してもらうために説明が必要ではない箇所には示されるものでもない。参照により本明細書に組み込まれるすべての特許出願および特許は、それらの全体において参照により組み込まれる。矛盾が生じる場合、定義を包含する本明細書が優先する(control)。
【0029】
詳細な記載
本開示は、一般に、潜在性硬化樹脂および付加製作(例として、3次元印刷)デバイス用の関連する方法に関する。
【0030】
上に開示されるとおり、付加製作において、材料の複数の層がビルドプラットフォーム上に形成されてもよい。1つの例示の付加製作システムを説明するために、反転ステレオリソグラフィプリンター(inverse stereolithographic printer)が図1A〜Bに表される。例となるステレオリソグラフィプリンター100は、支持ベース101、ディスプレイおよびコントロールパネル108、および液体フォトポリマー(例として、フォトポリマー樹脂)の貯蔵および分注のためのリザーバおよび分注システム104を含む。支持ベース101は、システムを使用して物体(例として、物品)を製作することを可能にし得る、様々な機械的、光学的、電気的、および電子的構成要素を含んでもよい。
【0031】
操作の間、液体フォトポリマーは、分注システム104から容器102中へ分注されてもよい。ビルドプラットフォーム105は、製作されている物体の底部表面層(最も低いz軸位置)またはビルドプラットフォーム105自体の底部表面層が容器102の底部111からz軸に沿って所望される距離であるように、縦軸103(図1A〜Bに示されるとおりz軸に沿って配向される)に沿って配置されてもよい。所望される距離は、ビルドプラットフォーム上に、または、製作されている物体の既に形成された層上に生成される固体材料の層の所望される厚さに基づき選択されてもよい。
【0032】
図1A〜Bの例において、容器102の底部111は、容器102の底部111およびビルドプラットフォーム105またはその上で製作されている物体の底表面部の間に位置付けられる液体フォトポリマー樹脂などの硬化性材料が放射線に曝露されてもよいように、支持ベース101内に位置付けられる放射線源(図示されない)によって生成される化学線に透過性であってもよい。かかる化学線へ曝露の際、硬化性材料は、曝露されたフォトポリマーを固化し、およびビルドプラットフォーム105の底表面部へ、またはその上で製作されている物体へ付着させる、「硬化する」と称されることもある化学的な反応を受けてもよい。
【0033】
図1A〜Bは、ビルドプラットフォーム105上の物体の任意の層の形成に先立つ、ステレオリソグラフィプリンター101の立体配置を表し、およびまた、明確性のために、表された容器102内に示されるものから任意の硬化性材料を省略する。
【0034】
材料の層の光硬化に続き、分離プロセスが、硬化された材料および容器102の底部111の間に生成され得る任意の結合(例として、接着結合)を切断するために典型的に実行される。一例として、ビルドプラットフォーム105は、新しい層の形成のためビルドプラットフォーム105を再配置させるために、および/または、容器102の底部111との任意の結合に分離力を与えるために、運動縦軸103に沿って動かされてもよい。加えて、容器102は、ステレオリソグラフィプリンター101が運動横軸110に沿って容器を動かしてもよいように支持ベース上に取り付けられ、それによって有利なことに、運動は、少なくともいくつかの場合において追加の分離力を導入する。運動横軸110に沿った運動を可能にする任意のワイパー106が加えて提供され、およびそれは取り外し可能であり、またはそうでなければ109にて支持ベース上へ取り付けられる。
【0035】
1以上の態様に従って、図2Aおよび2Bは、反転ステレオリソグラフィプリンター200を表す。図2A〜Bの例において、ステレオリソグラフィプリンター200は、ビルドプラットフォーム205、容器202、レベリング機構201、および硬化性材料(例として、液体樹脂)212を含む。下向きビルドプラットフォーム205は、フォトポリマー樹脂212を収容する容器211に対向する。
【0036】
図2Aは、ビルドプラットフォーム205上の一部の任意の層の形成に先立つ、ステレオリソグラフィプリンター200の立体配置を表す。ビルドプラットフォームおよび容器の底の間に位置付けられるいくつかのまたはすべてのフォトポリマーは(例として、上に記載されるとおり、化学線を容器のベースを介して樹脂上へ向けることによって)硬化されてもよい。
【0037】
上に記載されるとおり、図1A〜Bおよび図2A〜Bに示されるステレオリソグラフィプリンター100および200は、夫々、所望されるビルド表面(例として、ビルドプラットフォーム105または205および/または材料の既に形成された層)および対向する表面111または211の両方と接触するフォトポリマー樹脂の層を硬化させてもよい。かかるアプローチは、「反転」ステレオリソグラフィ機として知られることもある、化学線が容器の底部における光学窓(optical window)を介して導入されるシステムにおいて採用されてもよい。
【0038】
一部が別の層以外の表面またはビルドプラットフォームと接触して形成される1つの例示の付加製作技法を説明するために、物体203のいくつかの層を形成した後の反転ステレオリソグラフィプリンターが図2Bにおいて表される。
【0039】
いくつかの態様において、硬化性材料(例として、液体樹脂)は、オリゴマー、モノマー、および光開始剤の組み合せを含むことができる。いくつかのケースにおいて、硬化性材料は、任意に顔料、染料および他の特定の添加剤を同様に包含することができる。加えて、混合物は、所望される機械的特性を達成するために、シリカ、ガラス、セラミック、金属、または他の粒子などの充填剤または添加剤を包含することができる。
【0040】
いくつかの態様において、硬化性材料は、分注システム104から容器102中へ分注されてもよい。プリンター100または200について上で議論されるとおりすべて整った状態で、化学線の供給源は硬化性材料を曝露するために使用されることができる。化学線は、一般に液体樹脂中に存在する任意の光開始剤に光反応性種を形成させる。これらの光反応性種は、いくつかのケースにおいて、次いでモノマー性またはポリマー性構成要素と反応してもよく、および架橋またはさらなる重合反応を開始させてもよい。この重合は一般に、層を、化学線に曝露される断面において硬化させる。この断面は、ビルドプラットフォーム205へ、または物体の先の(previous)層のいずれかへ接着する。形成された物体は、ポリマー性材料で作られているだろう。材料のタイプおよび特性は、樹脂のベースとしてのモノマー性、オリゴマー性、および/またはポリマー性構成要素に依存するだろう。上の態様は、標準的な光硬化性ポリマーを記載する;理解され得るように、追加の充填剤、または充填剤などの構成要素の使用が、材料の特性にさらに影響を与えてもよい。
【0041】
図2Cは、1以上の態様に従って、グリーン状態(green state)における物体220を示す。物体220は、図2Bに関して上で議論されるとおり、連続的な光硬化層203を形成するプロセスによって形成されてもよい。グリーン状態における物体220は、中間体ポリマー構造225、ならびに実質的な2次重合をまだ受けていない、すなわち潜在性状態における(in a latent state)2次前駆体構成要素の第1前駆体種230および第2前駆体種235を含んでもよい。グリーン状態において、物体220は、中間体ポリマー構造225によって与えられるいくつかの定義された構造を有するが、まだ完全には硬化されておらず、その最終的な状態における物体を提供するものではない。2次構成要素は、2次重合プロセスを引き起こし、物品250を生成させる開始事象240(例として、水分への曝露)に供与されてもよい。いくつかの態様において、最終的な物品は、光硬化ポリマー種または中間体ポリマー構造225、ならびに2次ポリマー種またはポリマー性ネットワーク255を両方含む。2次硬化に関する機構は、本明細書においてさらに議論される。
【0042】
付加製造用の潜在性硬化樹脂は、一般に本明細書に記載されている。本明細書に使用されるとき、用語「潜在性硬化樹脂」は、同時にまたは連続して生じてもよい、少なくとも2の別々の硬化段階を有する樹脂を指す。例えば、本発明のいくつかの態様によると、硬化性材料は、硬化するように構成される(例として、化学線に供与されるとき)第1(first)構成要素または1次(primary)構成要素、および、硬化が環境水分またはガス種などの別々の事象または条件の導入を介して開始される、少なくとも第2(second)構成要素または2次(secondary)構成要素を含む、潜在性硬化樹脂であってもよい。硬化を開始させる他の機構もまた、本明細書で議論のとおり可能である。
【0043】
ある態様において、硬化性材料は、第1前駆体構成要素、および第1前駆体構成要素とは異なる第2前駆体構成要素を含む。各前駆体構成要素(例として、第1前駆体構成要素、第2前駆体構成要素)は、1以上のオリゴマー、モノマー、および/または光開始剤を含んでもよい。いくつかのケースにおいて、硬化性材料および/または1以上の前駆体構成要素は、任意に、顔料、染料および他の特定の添加剤を同様に包含することができる。加えて、混合物は、所望される機械的特性を達成するために、シリカ、ガラス、セラミック、金属、または他の粒子などの充填剤または添加剤を1以上の前駆体構成要素中に包含することができる。
【0044】
有利なことに、2次重合機構を組み込むことは、より多くのポリマー性化学物質を、例として、単一硬化(single-cure)樹脂においては達成することが困難または不可能である傑出したおよび多様な機械的特性に導く付加製造にアクセス可能にし得る。1以上の態様によると、1次または初期の硬化段階は、例として、足場(scaffolding)物品またはグリーン物品を創作するために既存の付加製造技法を含むだろう。つまり、いくつかの態様において、第1前駆体構成要素は、少なくとも部分的に硬化されてもよく(例として、化学線への曝露によって)、それによって中間体ポリマーを生成し、ここで2次前駆体構成要素は、中間体ポリマー構造中に懸濁される。
【0045】
一旦初期反応が所望される物体を構築すると、2次反応が起きてもよく(例として、第2前駆体構成要素を硬化させる)および増大した強度などの所望される特性が獲得され得る。有利なことに、いくつかの態様において、2段階硬化は、材料をより完全に硬くさせるだろう2次硬化機構に物品を供与する前に、それが成形可能および/またはゲル状である間に、材料の形状または配置を調整するための時間を許容し得る。1次硬化段階から形成される物体は、グリーン物品(green article)またはグリーン状態における(in a green state)と称されてもよい。
【0046】
図3は、1次構成要素301および2次構成要素302を有する例示の硬化性材料300を示す。フォトポリマー混合物は、光重合または硬化プロセスにおけるある特性または補助を達成するために図示されない無数の他の添加剤を含有してもよい。いくつかのケースにおいて、所望される機械的特性を達成するために、顔料または染料などのさらなる添加剤、シリカ、ガラス、セラミック、金属、または他の粒子などの充填剤または添加剤を包含することもまた、有利であり得る。
【0047】
図2Aおよび2Bにおいて表されるとおりの印刷プロセスの間、化学線の供給源は、硬化性材料300を曝露して、1次構成要素301を少なくとも部分的に重合化させ、および1次ポリマー性ネットワーク303中へ硬化させることを引き起こしてもよい。1次構成要素の硬化は、一般に、懸濁された2次構成要素またはグリーン状態構造310を有する中間体ポリマー構造を創作する。物体は、図2に関して上で議論されるとおり、形成時にグリーン状態構造を有する各層を有する連続的な光硬化層203を形成するプロセスによって形成されてもよい。グリーン状態における物体310は、1次構成要素301、ならびに実質的な2次重合をまだ受けていない、すなわち潜在性状態における2次構成要素302を含んでもよい。
【0048】
グリーン状態において、物体は、1次硬化構成要素301および303によって与えられるいくつかの定義された構造を有し得るが、まだ完全には硬化されておらず、その最終的な状態における物体320を提供するものではない。2次構成要素は、開始事象(例として、水分またはガス状鎖延長剤などの他の鎖延長剤への曝露)へ供与されてもよい。いくつかのかかる態様において、開始事象は、2次重合プロセス(例として、第2前駆体構成要素の少なくとも部分的な硬化)を引き起こして物体320を生成することを生じさせる、環境水分または湿度などの環境条件であってもよい。最終的な物品は、1次ポリマー性ネットワーク303、ならびに2次ポリマー性ネットワーク304の両方を含む。いくつかの態様において、最終的な物品は、相互侵入ポリマーネットワークを含む。2次硬化に関連する機構は、本明細書でさらに議論される。
【0049】
目下開示されている態様は、材料特性の強化された範囲をもつ新しいポリマー性材料の産業における必要性を満たす。
【0050】
本明細書に開示されるいくつかの態様は、初期の光反応性硬化段階が、いくつかの態様に従う材料の機械的特性を確定させるために、2次潜在性硬化プロセスを受けることができる所望される形状における「グリーン」構造または足場を形成することができるような2種のポリマー性前駆体構成要素の混合物を使用することによって、これらの目標を成し遂げる。かかる潜在性硬化の第2段階で、2次硬化構成要素が早く反応し過ぎないようにすること、および、初期のグリーン構造創作を妨げないようにすることが一般に重要である。加えて、グリーン構造は、一般に、いくつかの態様において、印刷プロセスまたは後処理段階によって影響されないような充分な機械的特性を有する。
【0051】
潜在性硬化樹脂は、第1ポリマーを形成するための1次前駆体構成要素および第2ポリマーを形成するための1次前駆体構成要素とは異なる2次前駆体構成要素を含んでもよい。前駆体構成要素の各々は、ある条件の開始に際して、硬化する、または反応してポリマーを形成する(例として、(メタ)アクリラートからポリ(メタ)アクリラートへ、イソシアナートからポリ尿素へ)1以上の前駆体種を含んでもよい。
【0052】
いくつかの態様において、硬化性材料は、有効量の化学線に供与されるとき硬化するように構成される光硬化性構成要素を含む1次前駆体構成要素を含む。ある態様において、硬化される(1次)ポリマー性材料は、(メタ)アクリラートまたはアクリラートポリマーのタイプであってもよい。(メタ)アクリラートは、モノマーおよびオリゴマーが環境条件において一般に安定的であるため、3D印刷塗布において有用であり得る。光硬化性構成要素は、光開始剤をさらに含んでもよい。光開始剤および関係のある光源(例として、化学線)の添加を以て、材料はラジカル光重合を介して高度に反応性になり、および硬化してポリマーを形成し得る。この段階で形成される物品は、さらなる硬化および強化が起こり得る事実を示唆する、「グリーン」物品と称されてもよい。本明細書に記載されるとおり、「グリーン」物品は、中間体ポリマー構造であって、ここで2次プレポリマー構成要素がかかる中間体ポリマー構造中に懸濁される、前記構造を含んでもよい。
【0053】
認識され得るとおり、最終物の材料特性は、様々な因子に依存してもよい。いくつかのかかる因子は、1次硬化構成要素混合物、2次構成要素混合物、2以上の構成要素間の比率、ならびに後処理段階を包含してもよい。1次構成要素は、1以上のモノマー性またはオリゴマー性(メタ)アクリラートを包含する多くの構成要素を有するポリマー性(メタ)アクリラートに基づいてもよい。オリゴマーのメタクリラートモノマーの混合物を使用することは、様々な材料特性をグリーン構造に付与し得る。例えば、理論によって拘束されることは望まないが、いくつかの単官能性アクリラートは架橋比率を低減することによって%(破断)伸度を保持し得、二官能性アクリラートはより急速に反応させるおよび適正なグリーン強度を保証するのに有用であり得るより高い剛性を提供する働きをし得る。さらなるモノマーおよびオリゴマーが、1次構成要素および2次構成要素の間の相溶性を改善するために安定剤として添加されてもよい。
【0054】
いくつかのケースにおいて、第1前駆体構成要素は、1以上の単官能性アクリルモノマー、二官能性アクリルモノマー、および/または光開始剤を含んでもよい。例示の態様において、第1前駆体構成要素は、単官能性アクリルモノマー、二官能性アクリルモノマー、二官能性ウレタン−アクリラートモノマー、および/または光開始剤を含む。別の例示の態様において、第1前駆体構成要素は、単官能性アクリルモノマー、二官能性ウレタン−アクリラートモノマー、および光開始剤を含む。
【0055】
好適な単官能性アクリルモノマーの非限定例は、ラウリルアクリラートおよびメトキシポリエチレングリコールモノアクリラートを包含する。例えば、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリラート、ジエチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリラート、アルコキシル化ラウリルメタ(アクリラート)、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリラート、環状脂肪族(メタ)アクリラート、ステアリール(メタ)アクリラート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリラート、イソボルニル(メタ)アクリラート、トリデシル(メタ)アクリラート、エトキシル化ノニルフェノール(メタ)アクリラート、環状トリメチロールプロパンフォルマール(メタ)アクリラートを包含する他の単官能性アクリルモノマーもまた可能である。
【0056】
好適な二官能性アクリルモノマーは、ポリエチレングリコールジアクリラートおよびネオペンチルグリコールプロポキシル化ジアクリラートを包含する。例えば、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリラート、アルコキシル化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリラート)、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリラート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリラート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリラート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリラートを包含する他の二官能性および多官能性モノマーもまた可能である。いくつかのケースにおいて、第1前駆体構成要素は、二官能性ウレタン−アクリラートモノマーを含む。
【0057】
光開始剤の非限定例は、(エチル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィナート、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシド、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、ベンジルジメチルケタール、4−クロロベンゾフェノン、2−エチルアントラキノン、メチルベンゾイルフォルマートを包含する。
【0058】
硬化性材料は、ある条件の開始に際して、硬化される、または反応して2次ポリマーを形成するように構成される2次前駆体構成要素をさらに含んでもよい。いくつかのケースにおいて、刺激の意図的な付加を介して2次構成要素を開始させることが、有利であり得る。ある態様において、2次構成要素は、環境水分条件下、および/または、熱および/またはガス種(例として、アンモニアなどの触媒)の添加などの他の環境的な変化に伴って重合し、潜在的に硬化することができる。本明細書の教示に基づいて認識され得るとおり、環境水分条件において重合される2次構成要素は、1次光硬化性構成要素と同時に重合してもよい。したがって、いくつかの態様において、印刷プロセスから後処理までを通じて大気の条件を慎重に制御するか、または印刷に有用な速度で2次硬化が進行するように材料の組成物を調整するかのいずれかによってこの硬化段階を制御することが、有利であり得る。
【0059】
本明細書の記載の多くは1次前駆体構成要素および2次前駆体構成要素を含む硬化性材料に関する一方で、追加の前駆体構成要素(例として、第3前駆体構成要素、第4前駆体構成要素、等々)もまた硬化性材料中に存在してもよい。いくつかの態様において、各前駆体構成要素は、異なっていてもよく、および/または、異なる条件(例として、化学線の波長および/または強度、水分への曝露、鎖延長剤への曝露、ガスへの曝露)下で少なくとも部分的に硬化するように構成されてもよい。
【0060】
いくつかの態様において、不要な硬化を阻止するために、2次前駆体構成要素を物理的に隔離させる(isolate)ことは、有利であり得る。2次前駆体構成要素の物理的な隔離は、例えば、「Dual-Cure Resins and Related Methods」と表題を付され、2017年5月1日付で出願された米国特許出願第15//583,083号においてより詳細に記載されており、すべての目的のために、その全体において参照により本明細書に組み込まれる。
【0061】
いくつかの態様において、本明細書に記載されるとおり、自由に入り混じった構成要素(例として、第1前駆体構成要素、第2前駆体構成要素)を有することは、有利であり得る。例えば、ある態様において、キットであって、付加製作(例として、3次元印刷)デバイスにおいて分注されるように構成される、第1前駆体構成要素、および第1前駆体構成要素とは異なる少なくとも第2前駆体構成要素を含む、前記キットが提供されてもよい。いくつかのケースにおいて、キットは、第1前駆体構成要素および第2前駆体構成要素の混合物を含む硬化性材料を含む。
【0062】
ポリ尿素などの材料のための前駆体は、水分または熱の存在下で容易に反応し得る。いくつかのケースにおいて、水分は、ポリマー反応を促進するために鎖延長剤として作用し得る。熱は、いくつかの態様において、イソシアナート間での反応を進行させる(例として、より冷たい温度での速度と比較してより迅速に進行させる)ことを許容するため、熱力学的エネルギーを改善するために使用されてもよい。
【0063】
いくつかの態様によると、第2前駆体構成要素は、所望される2次ポリマーを形成するために選択されてもよい。例えば、いくつかのケースにおいて、第2前駆体構成要素は、所望される2次ポリマー(例として、ポリ尿素、ポリウレタン)を形成するために、1以上のモノマー、オリゴマー、および/またはポリマーを含んでもよい。2次ポリマーは、熱硬化性プラスチックポリマーであってもよい。他の2次ポリマーもまた可能である。
【0064】
有利なことに、本明細書に記載されるとおり、1次ポリマー(例として、(メタ)アクリラート)に加えた2次ポリマーの使用は、可能な材料特性の拡大を促進させることができる。例えば、ポリ尿素は、一般に、より所望される材料特性、熱応答、および経年劣化に対する耐性を有する傾向がある。加えて、いくつかのケースにおいて、ポリ尿素は、相対的に高い伸度と共に、相対的に強固であり得、その結果得られる材料をより頑丈におよび反復使用により良好に耐えることができるようにする。以下の議論は、ポリ尿素に関するが、当業者が本明細書の教示に基づき理解するだろうとおり、いくつものポリマー基に適用されることができる。
【0065】
いくつかの態様において、2次前駆体構成要素は、硬化時にポリ尿素を形成するように構成されてもよい。ある態様において、2次前駆体構成要素は、イソシアナート末端プレポリマーを含んでもよい。
【0066】
従来のポリ尿素の合成は、2段階アプローチが典型的に使用される。例えば、第1に、小分子ジイソシアナートポリマーが、過剰量の二官能性アミンと反応する。第2に、アミン系の鎖延長剤が、完全なポリマーを形成するために添加される。従来のポリ尿素合成の例が、図4に示される。図4に表される態様において、イソシアナート分子は水と反応して、アミンおよび二酸化炭素を生成する。これらのアミンは、他のイソシアナートと反応して、尿素種を生成してもよい。鎖が反応を継続するにつれて、ポリ尿素が形成されてもよい。いくつかの態様において、任意のアミン促進剤または触媒もまた、反応スピードを改善するために組み込まれてもよい。理解され得るとおり、反応は任意のイソシアナート末端分子と置換されることができる。これは、例えば、脂肪族イソシアナート、芳香族イソシアナート、または同種のものを包含してもよい。
【0067】
2次前駆体構成要素は、任意の好適な数のイソシアナート末端プレポリマーを含んでもよい。イソシアナートプレポリマーは、一般に、イソシアナートおよびポリオールの反応によって合成される。芳香族および/または脂肪族イソシアナートは、プレポリマーを生成するために採用されてもよい。ポリウレタンおよびポリ尿素は、多くの異なる形態があり、および高い剛性から高い可撓性まで変動する材料特性の多様な範囲を達成することができる。一例として、芳香族イソシアナートは、より剛性の材料を創作するために使用されてもよく、脂肪族イソシアナートは、UVにより耐性があるより軟性の材料を創作するために使用されてもよい。
【0068】
本明細書に記載されるとおり、2次前駆体構成要素は、オリゴマーを含んでもよく、および/または、イソシアナート末端である他のポリマー性またはモノマー性ビルディングブロック(building block)を含んでもよい。使用される前駆体構成要素の組成物は、その結果得られるポリマーの材料特性を決定してもよい。いくつかの態様において、所望される材料特性を達成するために、異なるイソシアナート末端プレポリマーを使用することが、有利であり得る。これらのプレポリマーは、様々な異なる内部のポリマー性鎖を含有することができる。例えば、内部のポリマーは、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、またはいくつものポリマービルディングブロックを含有することができる。いくつかの例示のイソシアナート末端ポリエステルは、所望の引張強度を材料へ提供し得る。いくつかの例示のイソシアナート末端ポリエーテルは、有利なガラス転移温度を有する、より低い温度で可撓性のままである材料を提供し得る。
【0069】
本明細書の教示に基づき当業者に理解され得るとおり、2次前駆体構成要素は、任意の好適なイソシアナート末端ポリマー性ビルディングブロック(単数または複数)および/またはポリオールビルディングブロック(単数または複数)を含んでもよい。好適な芳香族イソシアナートの非限定例は、トルエンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、キシレンジイソシアナート、p−フェニレンジイソシアナート、ナフタレン1,5−ジイソシアナート、および4,4’−ジベンジルジイソシアナートを包含する。好適な脂肪族イソシアナートの非限定例は、1,6−ヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、水素化キシレンジイソシアナート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、およびメタ−テトラメチルキシレンジイソシアナートを包含する。好適なポリオール化合物の非限定例は、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールおよびポリエーテルポリオールを包含する。一例として、有用であり得るいくつかのポリエーテルポリオールは、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、またはポリテトラメチレンエーテルグリコールを包含する。
【0070】
当業者に知られるとおり、イソシアナート末端ポリマー性ビルディングブロックの異なる組み合せは、端材に種々の特徴を付与し得る。異なるポリマーの組み合わせは、その結果得られる材料の潜在的な最終特性を示唆し得るイソシアナート含量の異なる比率をもたらし得る。相対的に低いイソシアナート含量はより弾性の端材をもたらし得るが、一方で高いイソシアナート含量は、より急速に反応し、より剛性の材料をもたらし得る。知られ得るとおり、イソシアナートパーセンテージが低過ぎる場合、ポリマー性ビルディングブロックは室温で固体である傾向があり得、それは好ましくない印刷条件をもたらし得る。これは、付加される熱を増加させることによって、または増大したイソシアナートパーセンテージをもつ2次構成要素を求めることによって是正され得る。イソシアナートパーセンテージが少なくとも2%であるポリマー性ビルディングブロックを使用することが、有利であり得る。
【0071】
2次硬化構成要素は、例として鎖延長剤として働く添加剤を添加することによって進行してもよい。いくつかの態様において、鎖延長剤は、中間体構造、例えば図4のアミンを形成するために、イソシアナートと反応する働きをするだろう。ある態様において、鎖延長剤は、水(例として、水分、湿度)を含んでもよい。例えば、図4において、水は、鎖延長剤として働く。他の代替の鎖延長剤もまた使用されてもよい。いくつかの鎖延長剤の非限定例は、ヒドラジン、エチレンジアミン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、エタノールアミン、等を包含する。ある態様において、鎖延長剤は、ガス状形態であってもよい。例えば、いくつかの態様において、中間体ポリマー構造は、鎖延長剤を含むガスに曝露されてもよい。
【0072】
ポットライフは、一般に、典型的には環境条件下で決定される混合物の使用可能性の用語である。付加製造技法は、いくつかのケースにおいて、混合物が印刷の期間使用できるような長いポットライフを要求し得る。印刷時間は、数分だけの極めて短い時間から数時間またはさらに数日までの範囲に及び得る。いくつかの態様において、存在する水分を限定し、それによって硬化性材料(例として、潜在性硬化樹脂)のポットライフを改善するために、環境印刷条件を調整することは、有利であり得る。例えば、いくつかの態様において、硬化性材料は、2次前駆体構成要素の硬化に先立ち、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または1%以下の湿度で維持されてもよい。いくつかのケースにおいて、硬化性材料は相対的に高い湿度で維持されてもよい。例えば、ある態様において、硬化性材料は、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上の湿度で維持されてもよい。
【0073】
加(徐)湿は、印刷方法のエリアにおいて除湿機を使用するなどの様々なやり方において成し遂げられてもよい。いくつかの態様において、除湿機は印刷筐体自体において配置されてもよい。いくつかの態様において、除湿機を備える1の筐体において複数のプリンター100を有することが、有利であり得る。
【0074】
認識され得るとおり、熱縮合除湿(thermal condensation dehumidification)、吸着またはデシカント除湿、イオン性膜除湿を包含する任意の除湿の方法が採用されてもよい。複数の3Dプリンターが単一の筐体にある機械的/冷却(refigerative)除湿システムは、乾燥された空気が増大した温度で戻るため、さらなる利益を有し得る。デシカント除湿は、モレキュラーシーブまたはゼオライトなどのいくつもの水分吸着材料を使用することができる。オキサゾリジン、ベンゾイルクロリド、およびフェニルイソシアナートなどの水と反応する水分スカベンジャーもまた採用されてもよい。窒素またはアルゴンなどの不活性ガスをプリンター筐体中へ導入することによって乾燥空気環境を使用することもさらに有利であり得る。
【0075】
貯蔵寿命は、一般に、典型的には製造から最終的な使用までに、配送および貯蔵の間に想定できる様々な条件および温度下、ならびにプリンター自体における環境条件下で決定される混合物の使用可能性の用語である。樹脂がユーザーによって購入後に混合されるより製造段階で予混合されることを許容するため、樹脂の貯蔵寿命を充分な時間の長さまで延長することが、有利であり得る。1ヶ月以上、3ヶ月以上、1年以上、15ヶ月以上またはより長い貯蔵寿命を有することが、有利であり得る。
【0076】
いくつかのケースにおいて、樹脂の改善されたポットライフおよび貯蔵寿命は、水分から適切に保護された硬化性材料(例として、潜在性硬化樹脂)の生成、包装、および輸送を保証することにより促進され得る。これは、例えば、上に概説されるとおりの追加の除湿の取り組み、ならびに2次硬化段階のために所望されるとおりの時間まで材料の水分との相互作用を制限するのに好適な、より小さい体積における包装または他の特殊な容器による包装を包含してもよい。
【0077】
2次硬化に起因する液体樹脂における早期のゲル化または粘度増加は、ポットライフ/貯蔵寿命を低減させ得る。2次構成要素の一部が反応するにつれて、粘度が増加し、次に、容器からの物体の分離および印刷の後に続く層のための材料移動などの付加製造プロセスの様々な機構に影響を与え、および樹脂の使用可能期間を低減する。
【0078】
1以上の態様によると、例として、第1前駆体構成要素および第2前駆体構成要素を含む硬化性材料は、温度30度で測定されるとき、約1cP〜約20,000cP、または約約1,000cP〜約6,000cPの粘度を有してもよい。他の値もまた可能である。
【0079】
いくつかの態様において、1次(例として、光硬化性)前駆体構成要素および2次前駆体構成要素は、硬化性材料においてある重量による比率で存在する。例えば、いくつかの態様において、1次前駆体構成要素(例として、1以上の光硬化性モノマー、オリゴマー、および/またはポリマーを含む)対2次前駆体構成要素(例として、2次硬化機構への曝露に際して硬化性の1以上のモノマー、オリゴマー、および/またはポリマーを含む)の比率は、約5:95〜約95:5、または約10:90〜約90:10、または約15:85〜約85:15、または約30:70〜約70:30、または約35:65〜約65:35、または約40:60〜約60:40、または約50:50である。他の範囲もまた可能である。いくつかの態様において、第1構成要素対第2構成要素の比率は、例として、2次ポリマーの高い含量に対する要望と「グリーン」状態(すなわち、2次前駆体構成要素の硬化前)における高い強度に対する要望とのバランスをとるために選択されてもよい。加えて、および理論によって拘束されることは望まないが、2次硬化構成要素の体積を希釈させることによって、1次ポリマーの高い含量は、より長いポットライフを提供するために2次硬化速度のスピードをさらに低減し得る。これらの比率の各々は、いくつかのケースにおいて、最終生成物における多種多様な材料特性を提供するために有用であり得る。これらの比率の各々は、いくつかのケースにおいて、1次構成要素の強度および特性にさらに依存してもよい。
【0080】
一例として、いくつかのケースにおいて、硬化性材料における1次硬化構成要素対第2硬化構成要素の重量の比率は、最終的な物体(例として、1次硬化構成要素の硬化およびこれに続く2次硬化構成要素の硬化後)が相対的に高い破断伸度を有するように選択されてもよい。別の例示の態様において、硬化性材料における1次硬化構成要素対第2硬化構成要素の重量の比率は、最終的な物体が相対的に高いショアA硬度および相対的に高い引張強度を有するように選択されてもよい。もう1つの例示の態様において、硬化性材料における1次硬化構成要素対第2硬化構成要素の重量の比率は、最終的な物体が相対的に高い破断伸度および相対的に高い引張強度を有するように選択されてもよい。さらなる例示の態様において、硬化性材料における1次硬化構成要素対第2硬化構成要素の重量の比率は、最終的な物体が低い破断伸度を有するように選択されてもよい。理論によって拘束されることは望まないが、いくつかのケースにおいて、硬化性材料における2次前駆体構成要素の1次前駆体構成要素に対するより高い比率は、相対的に高い破断伸度を有する物体につながり得る。なお理論によって拘束されることは望まないが、いくつかのケースにおいて、硬化性材料における1次前駆体構成要素の2次前駆体構成要素に対するより高い比率は、相対的に軟性の材料につながり得る。
【0081】
いくつかの態様において、第1前駆体構成要素および少なくとも第2前駆体構成要素は、物体(すなわち、形成された物品)が、125%以上、140%以上、160%以上、180%以上、200%以上、225%以上、250%以上、275%以上、300%以上、350%以上、400%以上、450%以上、または500%以上の破断伸度を有し得るように選択されてもよい。ある態様において、物体は、600%以下、500%以下、450%以下、400%以下、350%以下、300%以下、275%以下、250%以下、225%以下、200%以下、180%以下、160%以下、140%以下の破断伸度を有してもよい。上に参照される範囲の組み合わせ(例として、125%以上および600%以下)もまた可能である。他の範囲もまた可能である。
【0082】
ある態様において、第1前駆体構成要素および少なくとも第2前駆体構成要素は、物体が、50以上、60以上、70以上、80以上、または90以上のショアA硬度を有するように選択されてもよい。ある態様において、物体は、100以下、90以下、80以下、70以下、または60以下のショアA硬度を有してもよい。上に参照される範囲の組み合わせ(例として、50以上および100以下)もまた可能である。他の範囲もまた可能である。
【0083】
いくつかのケースにおいて、第1前駆体構成要素および少なくとも第2前駆体構成要素は、物体が、5MPa以上、10MPa以上、15MPa以上、20MPa以上、または25MPa以上の引張強度を有するように選択されてもよい。ある態様において、物体は、30MPa以下、25MPa以下、20MPa以下、または15MPa以下の引張強度を有してもよい。上に参照される範囲の組み合わせ(例として、10以上および30以下)もまた可能である。他の範囲もまた可能である。
【0084】
1次硬化構成要素対2次硬化構成要素の理想的な比率はまた、印刷プロセスの間にモデルが供与され得る力、材料の所望される最終的な特性、外形の形状(geometry of form)、液体材料の要求されるポットライフ、1次構成要素の強度、2次構成要素硬化反応の期待されるスピード、ならびに他の関係の因子を包含する様々な因子に依存してもよい。
【0085】
印刷プロセスは、形成されている物体を、ピールサイクル(peel cycle)の間に適用される力を包含する様々なストレスおよび力に供与し得る。より強い力は、より強い1次ポリマー構成要素の使用で補償されてもよい。加えて、より大きく、より固体の形状は、より大きい力に供与されてもよく、およびより小さいモデルまたは格子構造より、より高いグリーン強度(例として、中間体ポリマー性材料の引張強度/または硬度)を要求してもよい。より大きい構造はまた、2次硬化が充分に、および反応の間ガスの放出から発泡することなく進行できることを保証するめに、2次構成要素のより低い量を要求してもよい。
【0086】
2次構成要素の所望の材料特徴を達成するために、最低限の1次構成要素を使用して、印刷プロセスに耐えさせるおよび所望されるグリーン強度を生成することが所望され得る。
【0087】
1次構成要素および2次構成要素の間の比率を調整することは、所望されるポットライフを達成するために有利であり得る。1次構成要素のより大きい比率は、2次構成要素を希釈させ得、およびさらに潜在性硬化プロセスを緩やかにさせることによってポットライフを延長させ得る。この関係性は、一般に標準的な熱力学的原理に基づく。
【0088】
第2前駆体構成要素の硬化率は、例えば、2次硬化反応をさらに促進するために、1以上の触媒構成要素の硬化性材料および/または中間体ポリマー性構成要素への添加によってさらに調整されてもよい。かかる2次反応を促進することができ得る好適な触媒の非限定例として、一例として、いくつかの市販のアミン触媒は、2,2−ジモルホリノジエチルエーテル、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N−ジメチルエタノールアミン、およびN,N,N’−トリメチル−N’−ヒドロキシエチル−ビスアミノエチルエーテルを包含してもよい。ジブチルチンラウラートおよびスズオクトアートなどの金属触媒もまた使用されてもよい。有利なことに、触媒の採用によって、後硬化速度は、いくつかのケースにおいて増大され得、最終的な材料特性を得るための有意に短縮された後処理時間をもたらす。
【0089】
上に記載される組成物および樹脂は、付加製造物品のための方法中へ組み込まれてもよい。
【0090】
方法は、上に記載される本発明の1以上の態様に従う、1次(光硬化性)構成要素および2次構成要素を含む硬化性材料を提供することを含んでもよい。
【0091】
方法は、光硬化されるポリマーを生成するために、光硬化性構成要素を化学線に供与することをさらに含んでもよい。光硬化されるポリマーを生成するための光硬化性構成要素を化学線へ供与する段階は、光硬化されるポリマーの連続層を形成して2次構成要素を含むグリーン物品を生成することを含んでもよい。
【0092】
方法は、2次構成要素を反応に好適な環境へ供与し、2次前駆体種に2次硬化を受けさせるようにすることをさらに含んでもよい。2次硬化は、本明細書に記載されるとおりのポリ尿素、ポリウレタンなどの2次ポリマーをもたらし得る。いくつかの態様において、物品がグリーン物品である間に(すなわち、光硬化段階後)、開始事象が生じ得る。いくつかのさらなる態様において、潜在性硬化は、初期の光硬化性構成要素と同時に進行してもよい。
【0093】
例示の態様において、第1前駆体構成要素は、アクリルまたはその誘導体を含み、および第2前駆体構成要素は、イソシアナートまたはその誘導体を含む。いくつかのケースにおいて、第2前駆体構成要素は、顔料、染料、添加剤、および/または充填剤をさらに含んでもよい。ある態様において、第1前駆体構成要素を硬化することは、第1前駆体構成要素を有効量の化学線に曝露することを含む。ある態様において、第2前駆体構成要素を硬化することは、物品を湿度、熱、および/または有効量の化学線に曝露することを含む。いくつかのかかる態様において、第2前駆体構成要素を硬化するための有効量の化学線は、第1前駆体構成要素を硬化するための有効量の化学線とは異なる。例えば、第2前駆体構成要素を硬化するための有効量の化学線は、第1前駆体構成要素を硬化するための有効量の化学線とは、波長、強度、および/または曝露時間において異なってもよい。
【0094】
2次硬化が、標準状態において可能な水分および温度をもつ環境条件において進行できることは認識され得るが、より良好に制御し、および2次反応を推進させることは有利であり得る。ポリ尿素を生成するイソシアナートと水との反応は、実質的に発熱性であり得、および反応が急速に進行し過ぎる場合、二酸化炭素の放出と共に発泡する傾向があり得る。発泡(foaming)および気泡(bubble)は、ポリウレタンの所望の材料特性を低減させ得る。可能な水分を制限することによって2次硬化環境を制御することが、有利であり得る。所望の環境は、より大きいまたはより厚い部分よりも、より少ない水分レベルで硬化することができる薄い格子をもつ部分の形状に、さらに依存してもよい。
【0095】
認識され得るとおり、環境の温度は、2次硬化速度にさらに影響を与え得る。イソシアナートはより容易に反応し得、および熱力学的関係性は高温でより有利であり得る。
【0096】
認識され得るとおり、イソシアナート+鎖延長剤反応は、相当容易に進行する。したがって、反応が合理的なペースで進行し、その結果得られるガス副生成物をシステムの外へ発散させるように、鎖延長剤を制限することが、有利であり得る。いくつかの態様において、反応のスピードを制御するためにガス鎖延長剤を使用することが、有利であり得る。水を以て、これは制御された湿度チャンバーまたは環境水分を使用することによって達成され得る。他の鎖延長剤について、鎖延長剤がガス状であることを保証するために、延長剤およびグリーン状態構造を高圧力または高温度システム中へ導入することは有利であり得る。
【0097】
上に基づき、制御された水分含量および湿度をもつチャンバーにおいて2次硬化段階を行うことが、有利であり得る。いくつかの態様において、水分は、1次硬化構成要素対2次硬化構成要素の比率、物体の形状、および反応が起こる温度を包含する多くの因子に依存した最適な範囲で、1%〜100%の範囲に及ぶ所与のパーセント湿度で空気を以て導入されるだろう。特に厚い形状のために、反応が極めて緩やかに進行することを保証するためにより低い湿度パーセンテージを使用することが、有利であり得る。いくつかの薄い構造または格子のために、グリーン状態構造から最終的な物体への要求される時間を低減するために、高い湿度パーセンテージを使用することが、有利であり得る。
【0098】
いくつかの態様において、2次前駆体構成要素(例として、中間体ポリマー構造中に懸濁された)は、中間体ポリマー構造体を、1%以上、2%以上、5%以上、10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上の湿度を有する空気に曝露することによって硬化される。ある態様において、2次前駆体構成要素は、100%以下、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下、10%以下、5%以下、または2%以下の湿度を有する空気への曝露に際して硬化される。上に参照される範囲の組み合わせもまた可能である(例として、1%以上および100%以下)。他の範囲もまた可能である。
【0099】
硬化に先立ち、第1および第2の2次前駆体種は、同じ硬化性材料(例えば、カートリッジの同じポット中または同じチャンバー中、または同じ「グリーン」物品中)に存在していてもよく、一方で第1の2次前駆体種は、第2の2次前駆体種から物理的に隔離されたままかまたは実質的に物理的に隔離されたままであり、それによって早期の硬化を阻止する。硬化を阻止するために、例えば、2次構成要素の第1前駆体種は、物理的な障壁を提示するシェルがそれを第2前駆体種から物理的に隔離することによって、カプセル化されてもよい。別の例において、第1種は、不溶性粒子または粉末形状において樹脂中に存在し、前駆体種の小さい画分(例として、各粒子の表面での材料の小さいパーテンテージ)のみが別の前駆体種に曝露されるようにし、それによって前駆体種を相互に実質的に物理的に隔離する。前駆体種の物理的な隔離は、次いで、開始事象の発生に際して取り除かれ、前駆体を混合および硬化させるようにする。例えば、前駆体種の1つがカプセル化される箇所で、開始事象は、分解事象−シェルのカプセル化の低下、および以前に物理的に隔離された前駆体種の放出を引き起こす事象、であり得る。前駆体種の1つが粒子形状において懸濁される態様において、開始事象は、溶解事象−前駆体種を含む粒子の溶解、および以前に実質的に物理的に隔離された前駆体種の放出を引き起こす事象、であり得る。分解事象または溶解事象は、熱または機械的力(例として、振動力)、または化学的な種の導入(例として、溶媒または触媒)の任意の適用を含んでもよい。他の機構もまた可能である。
【0100】
以下の例は、本発明のある側面の態様を説明する。本明細書に記載される方法および/または材料は、当業者に知られるとおり、改変および/または規模を調整されてもよい。
【0101】
例1
【0102】
以下の例は、本明細書に記載した方法を使用して形成した、相対的に高い(破断)伸度を包含する相対的に「軟性」の機械的特性を有する、例示の物品を記載する。
【0103】
30wt%の第1(1次硬化)前駆体構成要素および70wt%の第2(2次硬化)前駆体構成要素の比率を一緒に混合した。
【0104】
第1(1次硬化)前駆体構成要素に、少なくとも単官能性アクリルモノマー、二官能性ウレタン−アクリラートモノマー、二官能性アクリルモノマーおよび光開始剤が含まれた。
【0105】
第2(2次硬化)前駆体構成要素に、イソシアナート末端プレポリマーが含まれた。
【0106】
第1前駆体構成要素および第2前駆体構成要素を本明細書に記載したとおり硬化し、60のショアA硬度、13MPaの引張強度、および245%の(破断)伸度をもつ材料が生成された。
【0107】
例2
【0108】
以下の例は、本明細書に記載した方法を使用して形成した、相対的に高いショアA硬度および相対的に高い引張強度を包含する、相対的に高い剛性を有する、例示の物品を記載する。
【0109】
35wt%の第1(1次硬化)前駆体構成要素および65wt%の第2(2次硬化)前駆体構成要素の比率を一緒に混合した。
【0110】
第1(1次硬化)前駆体構成要素に、少なくとも単官能性アクリルモノマー、二官能性ウレタン−アクリラートモノマー、二官能性アクリルモノマーおよび光開始剤が含まれた。
【0111】
第2(2次硬化)前駆体構成要素に、イソシアナート末端プレポリマーが含まれた。
【0112】
第1前駆体構成要素および第2前駆体構成要素を本明細書に記載したとおり硬化し、90のショアA硬度、23MPaの引張強度、および196%の(破断)伸度をもつ材料が生成された。
【0113】
例3
【0114】
以下の例は、本明細書に記載したとおりの方法を使用して形成した、相対的に高いショアA硬度および相対的に高い(破断)伸度を有する、例示の物品を記載する。
【0115】
30wt%の第1(1次硬化)前駆体構成要素および70wt%の第2(2次硬化)前駆体構成要素の比率を一緒に混合した。
【0116】
第1(1次硬化)前駆体構成要素に、二官能性ウレタン−アクリラートモノマー、単官能性アクリラートモノマーおよび光開始剤が含まれた。
【0117】
第2(2次硬化)前駆体構成要素に、イソシアナート末端プレポリマーが含まれた。
【0118】
第1前駆体構成要素および第2前駆体構成要素を本明細書に記載したとおり硬化し、84のショアA硬度、16MPaの引張強度、および491%の(破断)伸度をもつ材料が生成された。
【0119】
例4
【0120】
以下の例は、本明細書に記載した方法を使用して形成した、相対的に低い(破断)伸度を有する、例示の物品を記載する。
【0121】
40wt%の第1(1次硬化)前駆体構成要素および60wt%の第2(2次硬化)前駆体構成要素の比率を一緒に混合した。
【0122】
第1(1次硬化)前駆体構成要素に、二官能性ウレタン−アクリラートモノマー、単官能性アクリルモノマー、二官能性アクリルモノマー、および光開始剤が含まれた。
【0123】
第2(2次硬化)前駆体構成要素に、イソシアナート末端プレポリマーが含まれた。
【0124】
第1前駆体構成要素および第2前駆体構成要素を本明細書に記載したとおり硬化し、82のショアA硬度、14MPaの引張強度、および166%の(破断)伸度をもつ材料が生成された。
【0125】
例5
【0126】
以下の例は、本明細書に記載した方法を使用して形成した、脂肪族前駆体構成要素を包含する、例示の物品を記載する。
【0127】
35wt%の第1(1次硬化)前駆体構成要素および65wt%の第2(2次硬化)前駆体構成要素の比率を一緒に混合した。
【0128】
第1(1次硬化)前駆体構成要素に、単官能性アクリルモノマー、二官能性アクリルモノマー、二官能性ウレタン−アクリラートモノマー、および光開始剤が含まれた。
【0129】
第2(2次硬化)前駆体構成要素に、イソシアナート末端プレポリマーが含まれた。
【0130】
第1前駆体構成要素および第2前駆体構成要素を本明細書に記載したとおり硬化し、70のショアA硬度、5MPaの引張強度、および147%の(破断)伸度をもつ材料が生成された。
【0131】
例6
【0132】
以下の例は、本明細書に記載した方法を使用して形成した例示の物品を記載する。
【0133】
85wt%までの第2(2次硬化)前駆体構成要素および残部の第1(1次硬化)前駆体構成要素の比率を一緒に混合した。形成された物品は、相対的に高い破断伸度、相対的に高い弾性および反発弾性を有する。
【0134】
例7
【0135】
以下の例は、本明細書に記載した方法を使用して形成した例示の物品を記載する。
【0136】
90〜95wt%の第1(1次硬化)前駆体構成要素および残部の第2(2次硬化)前駆体構成要素の比率を一緒に混合した。形成した物品は、(第1(1次硬化)前駆体構成要素単独の硬化から形成された物品と比較して)相対的に高い伸度および弾性を有する。
【0137】
例8
【0138】
以下の例は、本明細書に記載の方法を使用して形成された例示の物品を記載する。
【0139】
40wt%までの第1(1次硬化)前駆体構成要素および残部の第2(2次硬化)前駆体構成要素の比率を一緒に混合した。
【0140】
第1前駆体構成要素に、二官能性ウレタン−アクリラートオリゴマー、単官能性アクリルモノマーおよび光開始剤が含まれた。
【0141】
第2前駆体構成要素に、イソシアナート末端プレポリマーが含まれた。
【0142】
第1前駆体構成要素および第2前駆体構成要素を本明細書に記載したとおり硬化し、65のショアD硬度、32MPaの引張強度、および165%の(破断)伸度をもつ材料が生成された。
【0143】
本発明の少なくとも一態様に記載されたいくつかの側面を有することによって、さまざまな変更、改変、および改善が容易に生じることが当業者に認識されるだろう。
【0144】
かかる変更、改変、および改善は、本開示の一部であることが意図され、および本発明の精神および範囲内であることが意図される。さらに、本発明の利点が示唆されるが、本明細書に記載される技術のあらゆる態様があらゆる記載された利点を包含するわけではないことが認識されるべきである。いくつかの態様は、本明細書中で有利なものとして記載される任意の特色を実装しなくてもよく、およびいくつかの場合において、記載された特色の1以上がさらなる態様を達成するために実装されてもよい。結果的に、上記の記載および図面は、一例に過ぎない。
【0145】
本発明の様々な側面は、単独でまたは組み合わせにおいて、または上記において記載される態様において具体的に議論されていない様々な取り合わせにおいて使用されてもよく、およびしたがってその適用において、上記の記載に規定されたまたは図面において説明された構成要素の詳細または取り合わせに限定されるものではない。例えば、一態様において記載された側面は、他の態様において記載された側面と共に任意の様式において組み合わせられてもよい。
【0146】
また、本発明は、例が提供されている方法として具体化されてもよい。方法の一部として実施される行為は、任意の好適なやり方において順序付けられてもよい。結果的に、例となる態様において逐次的な行為として示されているにもかかわらず、いくつかの行為を同時に実施することを包含する、行為が説明されたものと異なる順序において実施される態様が構築されてもよい。
【0147】
特許請求の範囲の要素を改変するための特許請求の範囲における「第1」、「第2」、「第3」等々の順序的な用語の使用は、それ自体何らの優先度、先行性、または1つの特許請求の範囲の要素の別のものに対する順序、または方法の行為が実施される時間的順序を含意するものではないが、特許請求の範囲の要素を区別するために、ある名称を有する1つの特許請求の範囲の要素を同じ名称(しかし順序的な用語の使用のための)を有する別の要素から区別するための標識としてのみ使用される。
【0148】
本明細書に定義されるおよび使用されるとおりのすべての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれた文献中の定義および/または定義された用語の通常の意味に対して優先すると理解されるべきである。
【0149】
不定冠詞「a」および「an」は、本明細書に使用されるとき、それとは反対に明確に指示されない限り、「少なくとも1の」を意味すると理解されるべきである。
【0150】
本明細書に使用されるとき、1以上の要素の一覧を指し示す句「少なくとも1の」は、要素の一覧における任意の1以上の要素から選択される少なくとも1の要素を意味すると理解されるべきであるが、要素の一覧内に具体的に一覧される少なくとも1の各要素およびあらゆる要素を必ずしも包含するものではなく、および要素の一覧における要素の任意の組み合わせを排除するものでもない。この定義はまた、句「少なくとも1の」が指し示す要素の一覧内で具体的に特定された要素以外の要素が、具体的に特定されたそれらの要素に関連するか関連していないかに関わらず、任意に存在していてもよいことを許容する。
【0151】
句「および/または」は、本明細書に使用されるとき、連結された要素、すなわち、いくつかのケースにおいて共同的に(conjunctively)存在するおよび他のケースにおいて非共同的に(disjunctively)存在する要素の「いずれかまたは両方」を意味すると理解されるべきである。「および/または」を伴って一覧される複数の要素は、同じように、すなわち連結される「1以上の」要素と解釈されるべきである。「および/または」によって具体的に特定されていない要素以外の他の要素が、具体的に特定された要素に関連するか関連していないかに関わらず、任意に存在していてもよい。よって、非限定例として、「Aおよび/またはB」への言及は、「含む」などの開放式(open-ended)の言葉と併せて使用されるとき、一態様において、Aのみ(任意にB以外の要素を包含する);別の態様において、Bのみ(任意にA以外を包含する);もう1つの態様において、AおよびBの両方(任意に他の要素を包含する);等々を指し示すことができる。
【0152】
本明細書に使用されるとき、「または」は、上に定義されるとおりの「および/または」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、一覧における項目を分離するとき、「または」または「および/または」は、包括的である、すなわち、少なくとも1の、だけではなく、1を超える数または要素の一覧、および任意に追加の一覧されていない項目を包含するものとして解される。「1のみの」または「厳密に〜の1の」などの、それとは反対に明確に指し示された用語のみが、数または要素の一覧の厳密に1の要素の包含を指し示すだろう。一般に、本明細書に使用されるとおりの用語「または」は、「いずれか」、「〜の一方」、「〜の一方のみ」または「厳密に〜の一方」などの排他性の用語によって先行されるとき、排他的な代替手段(すなわち、「一方または他方、しかし両方ではない」)を指し示すものとして解される。
【0153】
本明細書において使用される言い回しおよび専門用語は、記載の目的のためであり、および限定するものとして見なされるべきではない。「含む(comprising)」、「包含する(including)」「有する(carrying)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「含む(involving)」、「保有する(holding)」等の使用は、開放式である、すなわち、これらに限定されないものを包含することを意味すると理解されるべきである。米国特許庁特許審査便覧、セクション2111.03において規定されるとおり、移行句「からなる」および「本質的にからなる」のみが、夫々、閉鎖式(closed)または半閉鎖式(semi-closed)移行句である。
【0154】
いくつかの態様を詳細に記載したことによって、様々な改変および改善が当業者に容易に生じるだろう。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3
図4
【国際調査報告】