特表2021-516234(P2021-516234A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ベイラー カレッジ オブ メディスンの特許一覧 ▶ ザ メソジスト ホスピタル ディー/ビー/エー ヒューストン メソジストの特許一覧

特表2021-516234化学放射線療法誘発の組織炎症および瘢痕形成において使用するプロトンポンプ阻害剤および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-516234(P2021-516234A)
(43)【公表日】2021年7月1日
(54)【発明の名称】化学放射線療法誘発の組織炎症および瘢痕形成において使用するプロトンポンプ阻害剤および方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20210604BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20210604BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20210604BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20210604BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20210604BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20210604BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20210604BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20210604BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20210604BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20210604BHJP
   A61P 17/18 20060101ALI20210604BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20210604BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20210604BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20210604BHJP
   A61K 31/282 20060101ALI20210604BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20210604BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20210604BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20210604BHJP
   A61K 31/407 20060101ALI20210604BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20210604BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20210604BHJP
   A61K 31/513 20060101ALI20210604BHJP
   A61K 31/337 20060101ALI20210604BHJP
   A61K 38/04 20060101ALI20210604BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210604BHJP
【FI】
   A61K45/00
   A61K31/4439
   A61P35/00
   A61P17/00
   A61P29/00
   A61P37/06
   A61P29/00 101
   A61P19/02
   A61P1/02
   A61P21/00
   A61P17/02
   A61P17/18
   A61P37/08
   A61P17/06
   A61K45/06
   A61K31/282
   A61K33/24
   A61K31/704
   A61K31/7048
   A61K31/407
   A61K39/395 N
   A61K31/7068
   A61K31/513
   A61K31/337
   A61K38/04
   A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】63
(21)【出願番号】特願2020-545665(P2020-545665)
(86)(22)【出願日】2019年2月28日
(85)【翻訳文提出日】2020年10月26日
(86)【国際出願番号】US2019020117
(87)【国際公開番号】WO2019169175
(87)【国際公開日】20190906
(31)【優先権主張番号】62/636,284
(32)【優先日】2018年2月28日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】391058060
【氏名又は名称】ベイラー カレッジ オブ メディスン
【氏名又は名称原語表記】BAYLOR COLLEGE OF MEDICINE
(71)【出願人】
【識別番号】520328006
【氏名又は名称】ザ メソジスト ホスピタル ディー/ビー/エー ヒューストン メソジスト
【氏名又は名称原語表記】THE METHODIST HOSPITAL D/B/A HOUSTON METHODIST
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲブレ、ヨハネス、ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ルートヴィヒ、ミハエル、エス.
(72)【発明者】
【氏名】ボネン、マーク、デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ジャベリ、パヴァン、ムケシュ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084AA20
4C084DA28
4C084MA13
4C084MA16
4C084MA23
4C084MA27
4C084MA28
4C084MA31
4C084MA34
4C084MA35
4C084MA41
4C084MA43
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA60
4C084MA63
4C084MA65
4C084NA05
4C084NA06
4C084ZA67
4C084ZA89
4C084ZA96
4C084ZB08
4C084ZB11
4C084ZB15
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE03
4C085GG02
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA02
4C086BC39
4C086BC43
4C086CB03
4C086EA10
4C086EA11
4C086EA17
4C086GA07
4C086GA08
4C086HA12
4C086HA28
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA16
4C086MA23
4C086MA27
4C086MA28
4C086MA31
4C086MA34
4C086MA35
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA55
4C086MA56
4C086MA60
4C086MA63
4C086MA65
4C086NA05
4C086NA06
4C086ZA67
4C086ZA89
4C086ZA96
4C086ZB08
4C086ZB11
4C086ZB15
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206JB16
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA33
4C206MA36
4C206MA43
4C206MA47
4C206MA48
4C206MA51
4C206MA54
4C206MA55
4C206MA61
4C206MA63
4C206MA75
4C206MA76
4C206MA80
4C206MA83
4C206MA85
4C206NA05
4C206NA06
4C206ZA67
4C206ZA89
4C206ZA96
4C206ZB08
4C206ZB11
4C206ZB15
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】 化学放射線療法誘発の組織炎症および瘢痕形成において使用するプロトンポンプ阻害剤および方法を提供する。
【解決手段】 本開示の実施形態には、がん治療誘発の組織炎症、皮膚炎および/または瘢痕形成の処置または予防に関連づけられる方法および組成物が含まれる。特定の実施形態において、1つまたは複数のプロトンポンプ阻害剤が、抗がん治療を受ける前に、抗がん治療を受けている間に、および/または抗がん治療を受けた後で個体に与えられる。いくつかの実施形態において、1つまたは複数のプロトンポンプ阻害剤が、健康状態、アレルギー、遺伝的要因、および/または1つもしくは複数の刺激物への曝露の前に、その期間中に、ならびに/あるいはその後で個体に与えられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がん治療により誘発される組織炎症、皮膚炎、瘢痕形成、皮膚線維症、皮膚の移植片対宿主病、強皮症、混合性結合組織病(MCTD)、関節リウマチ(RA)、狼瘡、多発性筋炎、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、レイノー病、口腔粘膜炎;非口腔粘膜炎;直腸炎、腸炎、大腸炎、食道炎、尿路炎症、あらゆる種類の火傷、凍傷または寒冷傷害、化学物質誘発皮膚炎、植皮、移植組織、形成手術または美容手術、あらゆる種類または原因の瘢痕形成、ケロイド;塩素ざ瘡;ざ瘡;しわ皮膚;老化皮膚;皮膚の酸化ストレス;日焼け;光損傷;皮膚バリア保護;皮膚バリア光保護;皮膚がん;乾癬;白斑;アレルギー性皮膚炎;アトピー性皮膚炎;あらゆる種類または原因の炎症性皮膚状態;創傷治癒;ならびに/あるいはアフタ性潰瘍を個体において処置または予防する方法であって、前記個体に有効量の1つまたは複数のプロトンポンプ阻害剤を投与する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記がん治療が、化学療法、放射線、手術、1つまたは複数のホルモン剤、1つまたは複数のチロシンキナーゼ阻害剤、1つまたは複数のモノクローナル抗体、1つまたは複数の免疫チェックポイント阻害剤、あるいはそれらの組合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記投与することが全身的または局所的に行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記プロトンポンプ阻害剤が単独で、あるいは1つまたは複数の他の薬剤との組合わせで配合される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記1つまたは複数の他の薬剤が、1つまたは複数のがん薬物、1つまたは複数のコルチコステロイド、1つまたは複数の抗生物質、亜鉛、アミホスチン、シルバーリーフナイロン包帯材、1つまたは複数の疼痛緩和剤、あるいはそれらの組合わせを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記プロトンポンプ阻害剤が局所投与のために配合される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記プロトンポンプ阻害剤が外用投与のために配合される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記プロトンポンプ阻害剤が消化管外への投与のために配合される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記プロトンポンプ阻害剤が胃のためではない投与のために配合される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記局所投与が、肺、粘膜、皮膚、直腸、腸、食道および/または血管に対してである、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記1つまたは複数のプロトンポンプ阻害剤が、液剤、トローチ、坐剤、クリーム、固形剤、錠剤、丸剤、エアロゾル剤、ゲル剤、フィルム剤、発泡剤、軟膏、ペースト、クリーム、ゲル剤、粉末剤、滴剤、懸濁物、またはそれらの組合わせとして配合される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記1つまたは複数のプロトンポンプ阻害剤が、化学療法、放射線療法または両方を施す前に、化学療法、放射線療法または両方を施している期間中に、ならびに/あるいは化学療法、放射線療法または両方を施した後で投与される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
プロトンポンプ阻害剤が、オメプラゾール、ランソプラゾール、デクスランソプラゾール、エソメプラゾール、パントプラゾール、ラベプラゾール、イラプラゾール、またはそれらの組合わせである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記化学療法が、ブレオマイシン、カルボプラチン、シスプラチン、ドキソルビシン、エトポシド、マイトマイシン、セツキシマブ、ゲムシタビン、カペシタビン、5−フルオロウラシル、パクリタキセル、またはそれらの組合わせである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
化学療法、放射線または両方を施す工程をさらに含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
プロトンポンプ阻害剤の濃度が1%〜100%w/wの範囲である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
プロトンポンプ阻害剤の濃度が20%w/w以下である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記個体が、化学療法誘発および/または放射線療法誘発の組織炎症、皮膚炎、瘢痕形成および/または皮膚線維症を有するか、あるいはその危険性があり、かつ、前記プロトンポンプ阻害剤が、外用配合されるエソメプラゾールである、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は米国仮特許出願第62/636,284号(2018年2月28日出願;これはその全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)の優先権を主張する。
(連邦政府援助による研究または開発に関する言及)
【0002】
本発明は、国立衛生研究所によって認められるK01HL118683のもとでの政府支援を受けて行われた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本開示の様々な実施形態には少なくとも、細胞生物学、分子生物学、生化学、薬理学および医学の分野が含まれる。
【背景技術】
【0004】
化学療法は、放射線を伴うか否かにかかわらず、様々ながんを処置するための標準治療アプローチである。残念なことに、シスプラチン、ドキソルビシン、5−フルオロウラシルおよびパクリタキセル、同様にまた上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤およびチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)などを含めて、一般に使用されている化学療法剤の多くには、一方では腫瘍細胞増殖、血管形成およびがん転移を促進させ、他方では治療計画を過度な炎症応答のために中断させる組織炎症および線維症が伴う。
【0005】
そのような化学放射線療法誘発の線維炎症状態は、肺(肺臓炎)、粘膜(粘膜炎)、皮膚(皮膚炎)、直腸(直腸炎)、腸(腸炎)、食道(食道炎)および血管(血管炎)を含めていくつかの組織および器官に影響を与えている。結果として、がん生存者は、化学放射線療法のこれらのしばしば有痛性の、時には外観を損なう合併症に苦しむことが多い。
【0006】
例えば、皮膚炎は、内皮細胞および表皮基底細胞を巻き込む皮下損傷および血管損傷によって特徴づけられる皮膚の炎症である。この疾患は、乳がん、肉腫および頭頸部がんのための化学放射線療法を受けている患者では発生率が非常に高い(95%にまで達する)。これらの事例のほとんどにおいて、炎症は軽度の紅斑を伴って沈静化する。しかしながら、患者の約20%〜25%が、壊死および瘢痕形成に至る可能性がある湿性落屑および潰瘍形成を含む重篤な皮膚反応を生じさせている。残念なことに、これらの合併症は多くの場合、処置計画を中断させ、また、根底にあるがんの再発をもたらす恐れがある。様々な外用コルチコステロイドが、皮膚炎を処置するために開発されている。しかしながら、それらの使用は、長期間の使用による皮膚萎縮および二次的皮膚感染の危険性のために制限されている。したがって、この適応症のための満たされていない臨床上の必要性がある。
【0007】
放射線療法(RT)は、乳がん、肺がん、頭頸部がんおよび他の固形腫瘍を有する多くの患者のための治療計画の一部である(Mendelsohn他、2002(特許文献1))。この医学的介入の結果として、がん患者の生存および生活の質が着実に改善され続けている。残念なことに、大線量のRTにより処置される多くのがん生存者は多くの場合、有痛性で、外観を損なう瘢痕を、顔、胸、頭頸部領域において引き起こし得る広範囲にわたる皮膚炎症(放射線皮膚炎)および進行性線維症の発症を含めて様々なオフターゲット影響に悩まされている。急性の放射線皮膚炎は、表皮組織、真皮組織および血管組織を巻き込む過度の皮膚炎症によって特徴づけられ、RTを受ける最大で95%の患者において生じている(Chan他、2014(特許文献2))。患者の最大で25%が、壊死および瘢痕形成に至る可能性がある湿性落屑および潰瘍形成を含む重篤な皮膚反応を生じさせている。残念なことに、これらの合併症は多くの場合、処置計画を中断させ、また、腫瘍再成長、転移およびがん関連死を含めて、根底にあるがんの再発をもたらす恐れがある(Chen他、2000(特許文献3);McCloskey他、2009(特許文献4);Putora他、2012(特許文献5))。
【0008】
放射線皮膚炎の症状は、発症および持続期間が、送達される総放射線量に依存して異なる。米国国立がん研究所共通毒性規準−有害事象(National Cancer Institute Common Toxicity Criteria−Adverse Events)(NCI−CTCAE)(米国保健福祉省、有害事象共通用語規準バージョン4.0、2012(特許文献6))および米国腫瘍放射線治療グループ(Radiation Therapy Oncology Group)(RTOG)(Cox他、1995(特許文献7);Trotti他、2000(特許文献8))毒性スコア化システムによれば、軽度の皮膚炎(グレード1)(これは、軽度の発赤(紅斑)、色素沈着過剰、かゆみ、表皮肥厚(過角化症)または乾性落屑を特徴とする)が、RT開始直後に現れる。中等度の皮膚炎(グレード2)が、治療が完了した2週間以内に発生し、有痛性の激しい紅斑、毛根からの毛髪の喪失(脱毛)、表皮壊死、水疱および浮腫が現れる。重度の皮膚炎(グレード3およびグレード4)では、湿性落屑が顕著に発生し、これは、持続的炎症、全層皮膚壊死、および感染しやすい猛烈に有痛性の潰瘍形成を引き起こす場合がある。急性およびより軽度の皮膚影響が2グレイ〜40グレイ(2Gy〜40Gy)の間での放射線量ではほぼ即座に発生し、これに対して、慢性の影響が、(45Gyを超える)高放射線量にさらされた数か月後から数年後に発生しており、典型的な皮膚変化には、壊死、萎縮、瘢痕形成およびクモ状静脈(毛細血管拡張症)が含まれる(Brown他、2011(特許文献9))。皮膚に対するこれらの構造的障害および機能的障害は部分的には、毛包幹細胞、基底ケラチノサイトおよびメラノサイトの放射線に対する鋭敏な感受性によって推し進められる。分割線量の放射線はこれらの常在する皮膚細胞を繰り返し傷つけ、これにより、自己再生、および組織損傷の修復を損なっている(Mendelsohn他、2002)。さらに、循環している炎症細胞の局所血管系への動員、ならびに炎症性サイトカインおよびケモカインの増大したレベル(Brach他、1993(特許文献13);MullerおよびMeineke、2007(特許文献14);Mukherjee他、2014(特許文献15);Okunieff他、2006(特許文献16))(例えば、TNFα、IL1β、IL6、VCAM1およびICAM1)は、傷害を悪化させ、また、皮膚の表皮層および真皮層の一体性を損なっており、これにより、感染に対する増大した感受性、遅れた創傷治癒、線維性肥厚および不可逆的な瘢痕形成を引き起こしている。
【0009】
いくつかの取り組みが、重度の放射線皮膚炎の予防および処置のために評価されている。一般的な予防的戦略のなかでは、ヒアルロン酸に基づく配合物、石油に基づく軟膏、ヒドロゲルに基づく包帯材、アロエベラゲル、蜂蜜、クルクミン、ソルボレン(sorbolene)クリーム、カモジグサ(wheatgrass)抽出物クリーム、アーモンド油、トロラミン、キンセンカおよびスクラルファートが臨床研究において評価されている(Chan他、2014;Sitton、1992(特許文献17);CampbellおよびIllingworth、1992(特許文献18);Roy他、2001(特許文献19);Wells他、2004(特許文献20);Elliott他、2006(特許文献21);Richardson他、2005(特許文献22);Macmillan他、2007(特許文献23))。しかしながら、これらの薬剤のほぼすべての使用が、効力の欠如または不十分な臨床データのために推奨されない(Chan他、2014)。ステロイドに基づく製造物のなかでは、モメタゾンフロアート(0.1%)、ベタメタゾン(0.1%)およびヒドロコルチゾン(1%)が臨床試験において広く研究されている(Halnan、1962(特許文献24);Glees他、1979(特許文献25);Rostrom他、2001(特許文献26);Schmuth他、2002(特許文献27);Omidvari他、2007(特許文献28);Miller他、2011(特許文献29);Ulff他、2013(特許文献30);Ho他、2018(特許文献31))。しかしながら、放射線皮膚炎のための外用コルチコステロイドの実際の使用は、表皮菲薄化、皮膚萎縮、伸展線(皮膚線条)、アレルギーおよび二次的皮膚感染(蜂巣炎)の危険性のために制限される(Coondoo他、2014(特許文献32))。したがって、安全かつ効果的な外用配合物を開発しなければならない満たされていない臨床上の必要性がある。
本開示は、例えば、他の医学的状態のなかでも、化学療法および/または放射線療法によって誘発される組織炎症および瘢痕形成のための治療法を提供するというこの技術分野における長年切望されている必要性を満たす。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Mendelsohn,F.A.,C.M.Divino,E.D.Reis,M.D.Kerstein,Wound care after radiation therapy.Adv Skin Wound Care.15,216−24(2002)
【非特許文献2】Chan,R.J.,J.Webster,B.Chung,L.Marquart,M.Ahmed,S.Garantziotis,Prevention and treatment of acute radiation−induced skin reactions:a systematic review and meta−analysis of randomized controlled trials.BMC Cancer.14,53(2014)
【非特許文献3】Chen,Y.P.,N.M.Tsang,C.K.Tseng,S.Y.Lin,Causes of interruption of radiotherapy in nasopharyngeal carcinoma patients in Taiwan.Jpn J Clin Oncol.30,230−4(2000)
【非特許文献4】McCloskey,S.A.,W.Jaggernauth,N.R.Rigual,W.L.Hicks,Jr.,S.R.Popat,M.Sullivan,T.L.Mashtare,Jr.,M.K.Khan,T.R.Loree,A.K.Singh,Radiation treatment interruptions greater than one week and low hemoglobin levels(12g/dL) are predictors of local regional failure after definitive concurrent chemotherapy and intensity−modulated radiation therapy for squamous cell carcinoma of the head and neck.Am J Clin Oncol.32,587−91(2009)
【非特許文献5】Putora,P.M.,M.Schmuecking,D.Aebersold,L.Plasswilm,Compensability index for compensation radiotherapy after treatment interruptions.Radiat Oncol.7,208(2012)
【非特許文献6】U.S.DEPARTMENT OF HEALTH AND HUMAN SERVICES.Common Terminology Criteria for Adverse Events(CTCAE) Version 4.0.National Cancer Institute,(2009)
【非特許文献7】Cox,J.D.,J.Stetz,T.F.Pajak,Toxicity criteria of the Radiation Therapy Oncology Group(RTOG) and the European Organization for Research and Treatment of Cancer(EORTC).Int J Radiat Oncol Biol Phys.31,1341−6(1995)
【非特許文献8】Trotti,A.,R.Byhardt,J.Stetz,C.Gwede,B.Corn,K.Fu,L.Gunderson,B.McCormick,M.Morrisintegral,T.Rich,W.Shipley,W.Curran,Common toxicity criteria:version 2.0.an improved reference for grading the acute effects of cancer treatment:impact on radiotherapy.Int J Radiat Oncol Biol Phys.47,13−47(2000)
【非特許文献9】Brown K.R.,E.Rzucidlo,Acute and chronic radiation injury.J Vasc Surg.53,15S−21S(2011)
【非特許文献10】Lopez,E.,R.Guerrero,M.I.Nunez,R.del Moral,M.Villalobos,J.Martinez−Galan,M.T.Valenzuela,J.A.Munoz−Gamez,F.J.Oliver,D.Martin−Oliva,J.M.Ruiz de Almodovar,Early and late skin reactions to radiotherapy for breast cancer and their correlation with radiation−induced DNA damage in lymphocytes.Breast Cancer Res.7,R690−8(2005)
【非特許文献11】Gamulin,M.,V.Garaj−Vrhovac,N.Kopjar,Evaluation of DNA damage in radiotherapy−treated cancer patients using the alkaline comet assay.Coll Antropol.31,837−45(2007)
【非特許文献12】Lomax,M.E.,L.K.Folkes,P.O’Neill,Biological consequences of radiation−induced DNA damage:relevance to radiotherapy.Clin Oncol(R Coll Radiol).25,578−85(2013)
【非特許文献13】Brach,M.A.,H.J.Gruss,T.Kaisho,Y.Asano,T.Hirano,F.Herrmann,Ionizing radiation induces expression of interleukin 6 by human fibroblasts involving activation of nuclear factor−kappa B.J Biol Chem.268,8466−72(1993)
【非特許文献14】Muller K.,V.Meineke,Radiation−induced alterations in cytokine production by skin cells.Exp Hematol.35,96−104(2007)
【非特許文献15】Mukherjee,D.,P.J.Coates,S.A.Lorimore,E.G.Wright,Responses to ionizing radiation mediated by inflammatory mechanisms.J Pathol.232,289−99(2014)
【非特許文献16】Okunieff,P.,J.Xu,D.Hu,W.Liu,L.Zhang,G.Morrow,A.Pentland,J.L.Ryan,I.Ding,Curcumin protects against radiation−induced acute and chronic cutaneous toxicity in mice and decreases mRNA expression of inflammatory and fibrogenic cytokines.Int J Radiat Oncol Biol Phys.65,890−8(2006)
【非特許文献17】Sitton,E.,Early and late radiation−induced skin alterations.Part II:Nursing care of irradiated skin.Oncol Nurs Forum.19,907−12(1992)
【非特許文献18】Campbell,I.R.,M.H.Illingworth,Can patients wash during radiotherapy to the breast or chest wall? A randomized controlled trial.Clin Oncol(R Coll Radiol).4,78−82(1992)
【非特許文献19】Roy,I.,A.Fortin,M.Larochelle,The impact of skin washing with water and soap during breast irradiation:a randomized study.Radiother Oncol.58,333−9(2001)
【非特許文献20】Wells,M.,M.Macmillan,G.Raab,S.MacBride,N.Bell,K.MacKinnon,H.MacDougall,L.Samuel,A.Munro,Does aqueous or sucralfate cream affect the severity of erythematous radiation skin reactions? A randomised controlled trial.Radiother Oncol.73,153−62(2004)
【非特許文献21】Elliott,E.A.,J.R.Wright,R.S.Swann,F.Nguyen−Tan,C.Takita,M.K.Bucci,A.S.Garden,H.Kim,E.B.Hug,J.Ryu,M.Greenberg,J.P.Saxton,K.Ang,L.Berk,T.Radiation Therapy Oncology Group,Phase III Trial of an emulsion containing trolamine for the prevention of radiation dermatitis in patients with advanced squamous cell carcinoma of the head and neck:results of Radiation Therapy Oncology Group Trial 99−13.J Clin Oncol.24,2092−7(2006)
【非特許文献22】Richardson,J.,J.E.Smith,M.McIntyre,R.Thomas,K.Pilkington,Aloe vera for preventing radiation−induced skin reactions:a systematic literature review.Clin Oncol(R Coll Radiol).17,478−84(2005)
【非特許文献23】Macmillan,M.S.,M.Wells,S.MacBride,G.M.Raab,A.Munro,H.MacDougall,Randomized comparison of dry dressings versus hydrogel in management of radiation−induced moist desquamation.Int J Radiat Oncol Biol Phys.68,864−72(2007)
【非特許文献24】Halnan,K.E.,The effect of corticosteroids on the radiation skin reaction.A random trial to assess the value of local application of prednisolone and neomycin ointment after x−ray treatment of basal cell carcinoma.Br J Radiol.35,403−8(1962)
【非特許文献25】Glees,J.P.,H.Mameghan−Zadeh,C.G.Sparkes,Effectiveness of topical steroids in the control of radiation dermatitis:a randomised trial using 1% hydrocortisone cream and 0.05% clobetasone butyrate(Eumovate).Clin Radiol.30,397−403(1979)
【非特許文献26】Rostrom et al.,2001
【非特許文献27】Schmuth,M.,M.A.Wimmer,S.Hofer,A.Sztankay,G.Weinlich,D.M.Linder,P.M.Elias,P.O.Fritsch,E.Fritsch,Topical corticosteroid therapy for acute radiation dermatitis:a prospective,randomized,double−blind study.Br J Dermatol.146,983−91(2002)
【非特許文献28】Omidvari,S.,H.Saboori,M.Mohammadianpanah,A.Mosalaei,N.Ahmadloo,M.A.Mosleh−Shirazi,F.Jowkar,S.Namaz,Topical betamethasone for prevention of radiation dermatitis.Indian J Dermatol Venereol Leprol.73,209(2007)
【非特許文献29】Miller,R.C.,D.J.Schwartz,J.A.Sloan,P.C.Griffin,R.L.Deming,J.C.Anders,T.J.Stoffel,R.E.Haselow,P.L.Schaefer,J.D.Bearden,3rd,P.J.Atherton,C.L.Loprinzi,J.A.Martenson,Mometasone furoate effect on acute skin toxicity in breast cancer patients receiving radiotherapy:a phase III double−blind,randomized trial from the North Central Cancer Treatment Group N06C4.Int J Radiat Oncol Biol Phys.79,1460−6(2011)
【非特許文献30】Ulff,E.,M.Maroti,J.Serup,U.Falkmer,A potent steroid cream is superior to emollients in reducing acute radiation dermatitis in breast cancer patients treated with adjuvant radiotherapy.A randomised study of betamethasone versus two moisturizing creams.Radiother Oncol.108,287−92(2013)
【非特許文献31】Ho,A.Y.,M.Olm−Shipman,Z.Zhang,C.T.Siu,M.Wilgucki,A.Phung,B.B.Arnold,M.Porinchak,M.Lacouture,B.McCormick,S.N.Powell,D.Y.Gelblum,A Randomized Trial of Mometasone Furoate 0.1% to Reduce High−Grade Acute Radiation Dermatitis in Breast Cancer Patients Receiving Postmastectomy Radiation.Int J Radiat Oncol Biol Phys.101,325−333(2018)
【非特許文献32】Coondoo,A.,M.Phiske,S.Verma,K.Lahiri,Side−effects of topical steroids:A long overdue revisit.Indian Dermatol Online J.5,416−25(2014)
【発明の概要】
【0011】
本開示の様々な実施形態が、化学放射線療法誘発の炎症および瘢痕形成(線維症);化学放射線療法誘発の下痢または大腸炎、放射線誘発の皮膚炎症および線維症;強皮症;混合性結合組織病(MCTD);関節リウマチ(RA)を含むリウマチ性疾患;狼瘡;多発性筋炎;皮膚筋炎;アトピー性皮膚炎;脂漏性皮膚炎;レイノー病;口腔粘膜炎;あらゆる種類または原因の瘢痕形成;ケロイド;塩素ざ瘡;ざ瘡;しわ皮膚;老化皮膚;皮膚の酸化ストレス;日焼け;光損傷;皮膚バリア保護;皮膚バリア光保護;皮膚がん;乾癬;白斑;アレルギー性皮膚炎;アトピー性皮膚炎;あらゆる種類または原因の炎症性皮膚状態;創傷治癒;あらゆる種類の火傷(熱的、化学的、冷凍)、前立腺炎、直腸炎、膀胱および尿路の炎症、植皮または皮膚移植を伴う形成手術または美容手術、皮膚の移植片対宿主病(例えば、幹細胞移植後の皮膚の移植片対宿主病)、ならびに/あるいはアフタ性潰瘍(口内炎)が例として少なくとも含まれる1つまたは複数の皮膚科学的状態(表皮、真皮または両方を含む皮膚に関連するもの)および他の状態の処置または予防のための方法および組成物に関する。
本開示の様々な実施形態には、例えば、一般集団のマーカーに対して上昇しているマーカーなどの、1つまたは複数の炎症マーカー(例としてのみであるが、C反応性タンパク質(CRP)および腫瘍壊死因子−α)が関与する1つまたは複数の適応症の処置または予防のための方法および組成物が含まれる。本開示の様々な方法および組成物が、あらゆる医学的状態に関連づけられる炎症および/または線維症の処置および予防に関する。
【0012】
特定の実施形態において、1つまたは複数のプロトンポンプ阻害剤(PPI)が、化学放射線療法誘発の炎症および瘢痕形成ならびに/あるいは放射線誘発の皮膚炎症および線維症のために利用される。この関連において、PPIは化学放射線療法誘発の炎症および瘢痕形成ならびに/あるいは放射線誘発の皮膚炎症および線維症を抑制する場合があり、同様にまた、根底にある腫瘍細胞の感受性を増大させることによってそれぞれの治療法の効力を高める場合がある。
【0013】
PPIは特定の経路による投与のために配合され得る。特定の実施形態において、PPIは胃炎または胃炎関連目的のためには利用されない。具体的な実施形態において、本開示の方法および組成物は、胃炎を処置するために使用されていたプロトンポンプ阻害剤(PPI)の、新しい抗炎症/抗線維症の適応症のための、かつ、新しい送達様式での再配合物を包含する。PPIの例には、オメプラゾール、ランソプラゾール、デクスランソプラゾール、エソメプラゾール、パントプラゾール、ラベプラゾール、イラプラゾール(Ilaprazole)およびそれらの組合わせが含まれる。
【0014】
本開示の方法および組成物は、すべての哺乳動物、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウマおよびその他などを含めて、あらゆる種類の個体のために利用され得る。具体的な実施形態において、PPIは、例として、液体配合物、トローチ配合物および坐剤配合物において存在する。
【0015】
1つの実施形態において、化学療法および/または放射線療法により誘発される組織炎症、皮膚炎、線維症および/または瘢痕形成を個体において処置または予防する方法であって、有効量の1つまたは複数のPPIを当該個体に投与する工程を含む方法がもたらされる。投与することが全身的または局所的に行われ得る。局所投与は、肺、粘膜、皮膚、直腸、腸、食道および/または血管に対してであり得る。プロトンポンプ阻害剤が、液剤、トローチ、坐剤、クリーム、固形剤、錠剤、丸剤、エアロゾル剤、ゲル剤、フィルム剤または発泡剤として配合され得る。1つまたは複数のPPIは、化学療法、放射線療法または両方を施す前に、化学療法、放射線療法または両方を施している期間中に、ならびに/あるいは化学療法、放射線療法または両方を施した後で投与され得る。具体的なPPIには、オメプラゾール、ランソプラゾール、デクスランソプラゾール、エソメプラゾール、パントプラゾール、ラベプラゾール、イラプラゾール、またはそれらの組合わせが含まれるが、これらに限定されない。化学療法は、ブレオマイシン、カルボプラチン、シスプラチン、ドキソルビシン、エトポシド、マイトマイシン、セツキシマブ、ゲムシタビン、カペシタビン、5−フルオロウラシル、パクリタキセル、またはそれらの組合わせ(これらに限定されない)を含めて、あらゆる種類のものであり得る。本開示の方法には、化学療法または放射線を含むあらゆるがん治療;1つまたは複数の受容体チロシンキナーゼ阻害剤;1つまたは複数のモノクローナル抗体;1つまたは複数の免疫チェックポイント阻害剤;あるいはそれらの組合わせを施す工程をさらに含む方法が含まれる。
【0016】
上記では、本開示の特徴および技術的利点が、下記の詳細な説明がよりよく理解され得るためにかなり広く概説されている。本明細書における請求項の主題を形成するさらなる特徴および利点が本明細書中下記において記載されるであろう。開示される概念および具体的な実施形態は、本設計の同じ目的を実施するために他の構造を変更するための、または設計するための基礎として容易に利用され得ることが、当業者によって理解されなければならない。そのような同等な組立ては、添付された請求項において示されるような精神および範囲から逸脱しないこともまた、当業者によって認識されなければならない。さらなる目的および利点と一緒にではあるが、構成および操作方法の両方に関して、本明細書中に開示される設計に特徴的であると考えられる新規な特徴が、添付されている図面に関連して検討されたとき、下記の説明からよりよく理解されるであろう。しかしながら、図面のそれぞれが例示および説明のためだけに提供されており、本開示の限界の定義として意図されないことが、明確に理解されなければならない。
【0017】
本開示のより完全な理解のために、添付された図面と併せて考慮される以下の説明が次に参照される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】PPIが、ERK1のリン酸化、Nrf2自体のリン酸化、および/またはKeap1におけるスルフヒドリル基を攻撃し、Keap1−Nrf2複合体を解離させることを介してどちらでもNrf2の核移行を誘導することによってHO1を活性化する例示の一例を提供する。P=リン酸化;PPI=プロトンポンプ阻害剤;HO1=ヘムオキシゲナーゼ;Nrf2=核因子様2;ARE=抗酸化剤応答配列。
【0019】
図2】配合し、貯蔵した30日後におけるエソメプラゾールクリーム(作成されたデルマプラゾール)の安定性を示す代表的なクロマトグラフィー(LC−MS)データを提供する。ただ1つのピークは、デマプラゾールが無傷であること(すなわち、分解していないこと)を示す。
【0020】
図3】ベースライン(「RTなし」)時および14グレイ放射線照射後でのヒト3D皮膚モデルからの細胞抽出物の核画分におけるデルマプラゾール(1〜2%)によるNrf2の誘導を示すタンパク質発現データを明らかにする。ヒストンH3のタンパク質レベルが負荷対照として示される。抗Nrf2ウサギモノクローナル抗体(Abcam;ab62352、1:250)と、ヒストンH3に対するウサギポリクローナル(Abcam;ab1791;1:3000)とが使用される。1%ヒドロコルチゾン(「ステロイド」)が対照として使用される。RT=放射線処置。
【0021】
図4】ベースライン(「RTなし」)時および14グレイ放射線照射後でのヒト3D皮膚モデルからの全細胞抽出物におけるデルマプラゾール(1〜5%)によるHO1の誘導を示すタンパク質発現データを明らかにする。GAPDHのタンパク質レベルが負荷対照として示される。抗HO1ウサギモノクローナル抗体(Enzo;BML−HC3001、1:250)と、GAPDHモノクローナル抗体(ThermoFisher;MA5−15738、1:3000)とが使用される。1%ヒドロコルチゾン(「ステロイド」)が対照として使用される。RT=放射線処置;GAPDH=グリセロアルデヒド3−リン酸デヒドロゲナーゼ。
【0022】
図5】放射線照射(14グレイ)を受けたヒト3D皮膚組織におけるデルマプラゾールによるERK1/2の活性化/リン酸化(pERK1/2)を示すタンパク質発現データを提供する。GAPDHのタンパク質レベルが負荷対照として示される。抗pERK1/2ウサギモノクローナル抗体(Cell Signaling Technology;4370、1:2000)と、GAPDHモノクローナル抗体(ThermoFisher;MA5−15738、1:3000)とが一次抗体として使用される。HRPコンジュゲート化ロバ抗ウサギ(GE Healthcare;NA934V、1:5000)が二次抗体として使用される。ERK=細胞外シグナル制御キナーゼ。
【0023】
図6】14グレイ放射線照射後でのヒト3D皮膚モデル(EpiDermFT;MatTekCorporation)におけるデルマプラゾールによるNrf2およびHO1の誘導を示す遺伝子発現データを明らかにする。VEHは、エソメプラゾールを含まないプラセボクリームである。皮膚炎を処置するために現在使用される1%ヒドロコルチゾン(「ステロイド」)が対照として使用される。p<0.05、VEH対照と比較した場合。HO1=ヘムオキシゲナーゼ;Nrf2=核因子様2;VEH=ビヒクル。
【0024】
図7】PPIによるNOS/DDAH経路の調節を示す。PPIはDDAH酵素活性を直接に阻害し、その結果、内因性基質ADMAの蓄積をもたらす。ADMAは競合的NOS阻害剤であり、活性酸素種および活性窒素種の産生を制限し、その結果、組織炎症および線維症の軽減をもたらす。生理学的には、NOSの存在下でのL−アルギニンの酸化により、一酸化窒素が生成する。iNOS=誘導型一酸化窒素合成酵素;DDAH=ジメチルアルギニンジメチルアミノヒドロラーゼ;ADMA=非対称ジメチルアルギニン;PPI=プロトンポンプ阻害剤。
【0025】
図8】3Dヒト皮膚モデルから得られる放射線照射EpidermFT組織ホモジネートにおける転写因子赤血球系2関連因子2(Nrf2)および抗酸化酵素ヘムオキシゲナーゼ1(HO1)の遺伝子発現プロファイリングを示す。EpidermFTを、様々な濃度のデルマプラゾール、ビヒクルクリーム、またはステロイドのヒドロコルチゾン(1%)に24時間さらした。ビヒクル対照に対して正規化される変化倍数が示される。データが二連の実験から得られる。p<0.05、ビヒクルにおけるNrf2の発現と比較した場合;+p<0.05、ビヒクル群におけるHO1の発現と比較した場合。
【0026】
図9】放射線照射されたEpidermFT組織に由来するホモジネートにおける赤血球系2関連因子2(Nrf2)タンパク質およびヘムオキシゲナーゼ1(HO1)タンパク質のウエスタンブロット分析を提供する。核タンパク質と細胞質タンパク質とを分画し、Nrf2を、ウサギ抗Nrf2抗体(Abcam;ab62352、1:250)を使用して核画分において探査し、ハウスキーピング遺伝子のヒストンH3を、ウサギ抗ヒストンH3抗体(Abcam;ab1791、1:3000)を使用して探査した。HO1を、ウサギ抗HO1(Enzo;BML−HC3001、1:500)を使用して細胞質画分において探査し、GAPDHを、マウス抗GAPDH抗体(ThermoFisher;MA5−15738、1:5000)を使用して検出した。二次抗体は抗ウサギモノクローナル(GE Healthcare;NA934V、1:5000)または抗マウスモノクローナル(1:5000)であった。データは、デルマプラゾールがNrf2およびHO1のタンパク質発現をアップレギュレーションすることを示す。VEH=ビヒクル。
【0027】
図10】放射線非照射のEpidermFT組織に由来するホモジネートにおけるヘムオキシゲナーゼ1(HO1)タンパク質のウエスタンブロット分析を示す。デルマプラゾール(1〜2%)を組織に外用塗布し、生存するEpidermFT組織を370C/5%CO2で24時間インキュベーションした。HO1を、ウサギ抗HO1(Enzo;BML−HC3001、1:500)を使用して探査し、GAPDHを、マウス抗GAPDH抗体(ThermoFisher;MA5−15738、1:5000)を使用して検出した。二次抗体は抗ウサギモノクローナル(GE Healthcare;NA934V、1:5000)であった。データは、デルマプラゾールがHO1発現を電離放射線の非存在下でアップレギュレーションすることを示す。VEH=ビヒクル。
【0028】
図11】PPIエソメプラゾールの外用塗布が皮膚の外観を皮膚炎の分割照射誘発モデルにおいて改善することを明らかにする。マウスに放射線照射(2回、15Gy)を0日目&7日目に行った。外用エソメプラゾール(すなわち、デルマプラゾール)、ビヒクル(基剤)クリーム、またはコルチコステロイドのヒドロコルチゾンを、示された日に1日に1回塗布した(予防群についてはD1〜D30、治療群についてはD10〜D30)。同じ動物からの代表的な画像が示される。
【0029】
図12】PPIエソメプラゾールの外用塗布が皮膚の組織学を皮膚炎の分割照射誘発モデルにおいて改善することを示すH&E染色を明らかにする。マウスに放射線照射(2回、15Gy)を0日目&7日目に行った。外用エソメプラゾール(すなわち、デルマプラゾール)、ビヒクル(基剤)クリーム、またはステロイドのヒドロコルチゾン(1.0%)を、示された日に1日に1回塗布した(予防群についてはD1〜D30、治療群についてはD10〜D30)。皮膚線維症がビヒクル群において認められ、潰瘍形成がステロイド処置群において30日目までに見られる。代表的な画像が20倍の倍率で示される。16日目でのビヒクル群において赤色線で示されるスケールバーは50μmであり、すべての画像に当てはまる。
【0030】
図13】PPIエソメプラゾールの外用塗布が皮膚線維症を皮膚炎の分割照射誘発モデルにおいて抑制することを示すマッソントリクローム染色を明らかにする。マウスに放射線照射(2回、15Gy)を0日目&7日目に行った。外用エソメプラゾール(すなわち、デルマプラゾール)、ビヒクル(基剤)クリーム、またはステロイドのヒドロコルチゾン(1.0%)を、示された日に1日に1回塗布した(予防群についてはD1〜D30、治療群についてはD10〜D30)。増大したコラーゲン沈着(青色の染色)がビヒクル群およびステロイド群において認められる。代表的な画像が20倍の倍率で示される。16日目でのビヒクル群において黒色線で示されるスケールバーは50μmであり、すべての画像に当てはまる。
【0031】
図14A】PPIエソメプラゾールの外用塗布が皮膚の組織学をブレオマイシン誘発の皮膚炎症および線維症の動物モデル(強皮症モデル)において改善することを示すH&E染色を提供する。ビヒクル(アクアフォー(aquaphor))群は表皮の肥厚(赤色線)を示し、ステロイド群は表皮層の喪失(矢印)を示す。
図14B】エソメプラゾールの外用塗布が皮膚線維症を同じ動物モデルにおいて軽減させることを示すマッソントリクローム染色(青色)を提供する。
【0032】
図15】Franz拡散セル技術を使用するエクスビボでのデルマプラゾールの皮膚浸透/保持を示す。マウスの腹部皮膚を様々な濃度のデルマプラゾールにさらし、デルマプラゾールクリームからのエソメプラゾールの放出(Y軸)を時間(X軸)とともに測定した。示されるデータは、二連の実験から得られる平均値である。p<0.05、対応する時点での1%デルマプラゾールと比較した場合。
【0033】
図16A】デルマプラゾールが組織病理学的変化を放射線誘発皮膚炎モデルの皮膚組織において軽減することを明らかにする。
図16B】デルマプラゾールが組織病理学的変化を放射線誘発皮膚炎モデルの皮膚組織において軽減することを明らかにする。H&E染色された皮膚組織が、処置群を知らない委員会認定の皮膚病理学者によって評価された。外用デルマプラゾールは、炎症、表皮肥厚および不全角化を16日目において有意に軽減させ(図16A)、同様にまた、炎症、表皮肥厚、潰瘍、壊死および不全角化を研究の30日目までに有意に軽減させた(図16B)。スコア化は、米国国立がん研究所の共通毒性規準−有害事象(NCI−CTCAE)と、米国腫瘍放射線治療グループ(RTOG)とに基づく。p<0.05、ステロイド(1%ヒドロコルチゾン)処置された対照と比較した場合。
【0034】
図17A】デルマプラゾールが放射線皮膚炎モデルの皮膚組織における炎症促進性分子の発現での放射線誘発変化を調節することを明らかにする。
図17B】デルマプラゾールが放射線皮膚炎モデルの皮膚組織における炎症促進性分子の発現での放射線誘発変化を調節することを明らかにする。
図17C】デルマプラゾールが放射線皮膚炎モデルの皮膚組織における炎症促進性分子の発現での放射線誘発変化を調節することを明らかにする。
図17D】デルマプラゾールが放射線皮膚炎モデルの皮膚組織における炎症促進性分子の発現での放射線誘発変化を調節することを明らかにする。
図17E】デルマプラゾールが放射線皮膚炎モデルの皮膚組織における炎症促進性分子の発現での放射線誘発変化を調節することを明らかにする。
図17F】デルマプラゾールが放射線皮膚炎モデルの皮膚組織における炎症促進性分子の発現での放射線誘発変化を調節することを明らかにする。
図17G】デルマプラゾールが放射線皮膚炎モデルの皮膚組織における炎症促進性分子の発現での放射線誘発変化を調節することを明らかにする。
図17H】デルマプラゾールが放射線皮膚炎モデルの皮膚組織における炎症促進性分子の発現での放射線誘発変化を調節することを明らかにする。下記遺伝子の遺伝子発現プロフィルを示す定量的RT−PCRデータが示される:TNFα(図17A)、IL1β(図17B)、IL6(図17D)、iNOS(図17E)、NFκB(図17C)、TLR4(図17G)、VCAM1(図17F)およびICAM1(図17H)。データは、二連の実験から得られる平均±SEMである。p<0.05、ステロイド処置された対照と比較した場合。Pro=予防的;Ther=治療的
【0035】
図18】デルマプラゾールがコラーゲン肥厚/線維症を放射線誘発皮膚炎のマウスモデルにおいて軽減することを示す。マッソントリクローム染色された皮膚組織が、処置群を知らない委員会認定の皮膚病理学者によって評価された。外用デルマプラゾールは皮膚線維症を30日目におけるビヒクル群またはステロイド(1%ヒドロコルチゾン)群と比較して有意に軽減させた(p<0.05)。+p<0.05、ステロイド群と比較した場合。スコア化は、米国国立がん研究所の共通毒性規準−有害事象(NCI−CTCAE)と、米国腫瘍放射線治療グループ(RTOG)とに基づく。
【0036】
図19A】デルマプラゾールが放射線皮膚炎モデルの皮膚組織における線維化促進性分子の発現での放射線誘発変化を調節することを示す。
図19B】デルマプラゾールが放射線皮膚炎モデルの皮膚組織における線維化促進性分子の発現での放射線誘発変化を調節することを示す。
図19C】デルマプラゾールが放射線皮膚炎モデルの皮膚組織における線維化促進性分子の発現での放射線誘発変化を調節することを示す。
図19D】デルマプラゾールが放射線皮膚炎モデルの皮膚組織における線維化促進性分子の発現での放射線誘発変化を調節することを示す。
図19E】デルマプラゾールが放射線皮膚炎モデルの皮膚組織における線維化促進性分子の発現での放射線誘発変化を調節することを示す。
図19F】デルマプラゾールが放射線皮膚炎モデルの皮膚組織における線維化促進性分子の発現での放射線誘発変化を調節することを示す。下記遺伝子の遺伝子発現プロフィルを示す定量的RT−PCRデータが示される:TGFβ(図19A)、コラーゲン1(Col1)(図19B)、コラーゲン3(Col3)(図19D)、コラーゲン5(Col5)(図19E)、フィブロネクチン(FN1)(図19C)およびDDAH1(図19F)。データは、二連の実験から得られる平均±SEMである。p<0.05、ステロイド処置された対照と比較した場合。Pro=予防的;Ther=治療的
【0037】
図20A】デルマプラゾールが放射線皮膚炎モデルの皮膚組織における酸化ストレス関連遺伝子の発現での放射線誘発変化を一時的に調節することを明らかにする。
図20B】デルマプラゾールが放射線皮膚炎モデルの皮膚組織における酸化ストレス関連遺伝子の発現での放射線誘発変化を一時的に調節することを明らかにする。
図20C】デルマプラゾールが放射線皮膚炎モデルの皮膚組織における酸化ストレス関連遺伝子の発現での放射線誘発変化を一時的に調節することを明らかにする。
図20D】デルマプラゾールが放射線皮膚炎モデルの皮膚組織における酸化ストレス関連遺伝子の発現での放射線誘発変化を一時的に調節することを明らかにする。
図20E】デルマプラゾールが放射線皮膚炎モデルの皮膚組織における酸化ストレス関連遺伝子の発現での放射線誘発変化を一時的に調節することを明らかにする。
図20F】デルマプラゾールが放射線皮膚炎モデルの皮膚組織における酸化ストレス関連遺伝子の発現での放射線誘発変化を一時的に調節することを明らかにする。下記遺伝子の遺伝子発現プロフィルを示す定量的RT−PCRデータが示される:予想された疾患ピーク時(16日目)におけるHO1(図20A)、NADPHオキシダーゼ2(NOX2)(図20B)およびNADPHオキシダーゼ4(NOX4)(図20C)、ならびに研究完了時(30日目)における前記遺伝子(HO1については図20D;NOX2については図20E;NOX4については図20F)。データは、二連の実験から得られる平均±SEMである。p<0.05、ステロイド処置された対照と比較した場合。Pro=予防的;Ther=治療的
【0038】
図21】デルマプラゾールの代表的なLC−MSクロマトグラムを提供する:左側パネルは、新しく調製されたデルマプラゾール(1%)(0日目)、あるいは配合後18日間にわたって室温で貯蔵されたもの(18日目)または配合後32日間にわたって室温で貯蔵されたもの(32日目)を示す。データは、エソメプラゾールが、クリームに配合され、1か月間にわたって周囲温度で貯蔵された後もその完全性を保持していることを示す。右側パネルは、未配合のエソメプラゾール粉末の典型的なクロマトグラムを参照として示す。Y軸は100,000カウントあたりのエソメプラゾール分子カウント数を示し、X軸は分単位での取得時間を示す。
【0039】
図22】デルマプラゾールクリーム(左)のトポグラフィーをクリームのみの対照(右)との比較で示す原子間力顕微鏡法(AFM)での走査を提供する。左側パネルにおける矢印は推定での薬物粒子を示す。デルマプラゾールは、対照クリームよりも硬く、しかし接着性が低いようである。スケール=5μm×5μm。
【0040】
図23】放射線照射されたEpidermFT組織に由来するホモジネートにおけるKelch様ECH結合タンパク質1(Keap1)のウエスタンブロット分析を示す。Keap1を、マウス抗Keap1モノクローナル抗体(Abcam;ab119403、1:1000)を使用して探査し、ハウスキーピング遺伝子のβ−アクチン(ACTB)を、ウサギ抗ACTB抗体(Sigma;A2066、1:1500)を使用して検出した。ウサギモノクローナル抗体(GE Healthcare;NA934V、1:5000)を二次抗体として使用した。データは、Keap1のタンパク質発現がデルマプラゾールによって影響されなかったことを示す。
【0041】
図24】デルマプラゾールの外用塗布が皮膚炎スコア化を分割照射誘発皮膚炎のマウスモデルにおいて改善することを示す。動物に放射線照射(2回、15Gy)を0日目および7日目に行い、動物を予防的経過(P)または治療的経過(T)でデルマプラゾールにより処置した。ビヒクル(基剤)クリームおよびステロイド(1%ヒドロコルチゾン)処置が対照として含められた。皮膚炎の程度が、CTCAE規準を使用して、実験について知らされていない皮膚科医によってスコア化された:0=正常な皮膚外観;1=軽度の紅斑;2=中等度から重度の紅斑;3=放射線照射領域の25%〜50%の落屑;4=50%を超える放射線照射領域の落屑;5=臨床的に明白な潰瘍。
【0042】
図25】PPIエソメプラゾールの外用塗布が皮膚リモデリングをブレオマイシン誘発の皮膚線維症のマウスモデル(すなわち、強皮症モデル)において都合よく修正することを示す。基剤クリーム(ビヒクル)およびモメタゾンフロアート(0.1%)が対照として使用される。外用エソメプラゾール(1%)を使用して、動物を1週間にわたって処置した。
【0043】
図26】PPIエソメプラゾールの外用塗布が炎症促進性マーカーを阻害することを示す、CD11bおよびF4/80についての放射線照射皮膚組織の免疫組織化学的染色を明らかにする。マウスに放射線照射を0日目&7日目に行った。外用エソメプラゾール(すなわち、デルマプラゾール)、ビヒクル(基剤)クリーム、またはステロイドのヒドロコルチゾン(1.0%)を、示された日に1日に1回塗布した(予防群についてはD1〜D30、治療群についてはD10〜D30)。増大した数の炎症性細胞(CD11bについては好中球、F4/80についてはマクロファージ;矢印)がビヒクル群およびステロイド群において認められる。代表的な画像が40倍の倍率で示される。ビヒクル群において赤色線で示されるスケールバーは50μmであり、すべての画像に当てはまる。
【0044】
図27】放射線誘発皮膚炎のマウスモデルの一例を提供する:A)経時的な総体重の測定、ならびにB)剖検時におけるそれぞれの体重に対して正規化される、心臓、肺、肝臓および腎臓についての器官重量が示される。肺および腎臓の重量は左右組織についての合計重量を表す。予防的経過(「DERM−P」)または治療的経過(「DERM−T」)でのデルマプラゾールによる処置は体重または器官重量に対する有害影響がなかった。データは平均±SEMとして表される。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本明細書において使用される場合、“a”または“an”は1つまたは複数を意味する場合がある。本明細書中、請求項において使用される場合、単語“comprising”(含む)と併せて使用されるとき、単語“a”または単語“an”は1つまたは2つ以上を意味する場合がある。本明細書中において使用される場合、“another”(別の)は、少なくとも第2のものまたはさらなるものを意味する場合がある。なおもさらに、用語“having”(有する)、用語“including”(含む)、用語“containing”(含有する)、および用語“comprising”(含む)は交換可能であり、当業者は、これらの用語が制限のない用語であることを認識している。本開示のいくつかの実施形態は、本開示の1つまたは複数の要素、方法工程および/または方法からなる場合があり、あるいは、本開示の1つまたは複数の要素、方法工程および/または方法から本質的になる場合がある。本明細書中に記載される方法または組成物はどれも、本明細書中に記載されるどのような他の方法または組成物に関してでも実施され得ることが意図される。“one embodiment”(1つの実施形態)、“an embodiment”(1つの実施形態)、“a particular embodiment”(特定の実施形態)、“a related embodiment”(関連した実施形態)、“a certain embodiment”(ある特定の実施形態)、“an additional embodiment”(さらなる実施形態)、または“a further embodiment”(さらなる実施形態)、またはそれらの組合わせに対する本明細書全体を通しての参照は、当該実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造または特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたる様々なところでの前述の語句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を示しているとは限らない。さらに、特定の特徴、構造または特性は、1つまたは複数の実施形態においてどのような様式であれ好適な様式で組み合わせられる場合がある。
【0046】
用語「投与される」(“administered”)または用語「投与する」(“administering”)は、本明細書中で使用される場合、組成物が個体に対するその意図された効果を有するように組成物を個体に与える方法をどのようなものであれ示す。例えば、投与する1つの方法が、直接的な機構によるものであり、例えば、局所的な組織投与、経皮パッチ、外用などによるものである。
【0047】
用語「医薬的に」または用語「薬理学的に許容され得る」は、本明細書中で使用される場合、動物またはヒトに投与されたとき、有害反応、アレルギー反応または他の不都合な反応を生じさせない分子実体および組成物を示す。
【0048】
用語「医薬的に許容され得る担体」は、本明細書中で使用される場合、ありとあらゆる溶媒、あるいは、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液状ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物、および植物油(これらに限定されない)を含む分散媒体、コーティング剤、等張剤および吸収遅延剤、リポソーム、ならびに市販のクレンザーなどを含む。補足的な生物活性成分もまた、そのような担体に組み込まれることが可能である。
【0049】
用語「予防する」は、本明細書中で使用される場合、医学的状態の少なくとも1つの症状の発症を回避することを含めて、医学的状態が個体において生じることを回避する方法を示す。
【0050】
用語「対象」または用語「個体」は、本明細書中で使用される場合、医療施設に収容されてもよい、またはされなくてもよい、また、医療施設の外来患者として処置されることがあるヒトまたは動物を示す。個体は、1つまたは複数の医療用組成物をインターネット経由で受け取っている場合がある。個体はあらゆる年齢のヒトまたは非ヒト動物を含んでもよく、したがって、成体/成人と、若年者(すなわち、小児)および乳幼児との両方を含む。用語「個体」は医学的処置の必要性を暗示することは意図されておらず、したがって、個体は、臨床的であれ、または基礎的科学研究の支援においてであれ、自発的または非自発的に実験の一部となる場合がある。用語「対象」または用語「個体」、哺乳動物を含めて、方法または材料の対象物である生物または動物をどのようなものであれ示し、例えば、ヒト、実験動物(例えば、霊長類、ラット、マウス、ウサギ)、家畜(例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、シチメンチョウおよびニワトリ)、家庭用ペット(例えば、イヌ、ネコおよび齧歯類)、ウマ、および遺伝子組換えの非ヒト動物を示す。
【0051】
本明細書中で使用される場合、用語「治療有効量」は、「有効量」、「治療効果的用量」および/または「効果的用量」と同義であり、施術者によって求められている生物学的、美容的または臨床的な応答をその必要性のある個体において誘発するであろう化合物の量を示す。一例として、有効量は、一群の細胞の免疫原性を低下させるために十分な量である。限定されない一例として、有効量は、移植された組織を支持するために十分である血液供給の形成を促進するために十分な量である。別の限定されない一例として、有効量は、新しい血管および関連した脈管構造の形成(血管形成)を促進させるために十分な量、ならびに/あるいは既存の血管および関連した脈管構造の修復または再構築を促進させるために十分な量である。開示された方法の特定の適用のために投与されることになる好適な有効量は、本明細書中に提供される指針を使用して当業者によって決定することができる。例えば、有効量を、本明細書に記載されるようなインビトロアッセイおよびインビボアッセイから外挿することができる。個体の状態が治療経過の始めから終わりまでモニターされ得ること、そして、投与される本明細書中に開示される化合物または組成物の有効量がそれに応じて調節され得ることが、当業者によって認識されるであろう。
【0052】
「処置」(“treatment”)、「処置する」(“treat”)または「処置する」(“treating”)は、疾患または状態の影響を軽減する方法を意味する。処置はまた、単に症状よりもむしろ、疾患自体または状態自体を軽減する方法を示すことができる。そのような処置は、処置前のレベルからのどのような低減であっても可能であり、また、疾患、状態、または疾患もしくは状態の症状の完全な除去であることが可能であり、しかし、これに限定されない。したがって、開示された方法において、処置」は、疾患の少なくとも1つの症状の重篤度における軽減を含めて、確立した疾患の重篤度、または疾患進行における、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%の軽減を示すことができる。例えば、細胞の免疫原性における検出可能な低下が、同じ対象または対照となる対象における処置前のレベルと比較したときに認められるならば、細胞の免疫原性を低下させるための開示された方法は、処置であると見なされる。したがって、そのような低下は、生来的レベルまたは対照レベルと比較した場合、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、または間におけるどのような低下量も可能である。「処置」は疾患または状態の治癒を必ずしも示すのではなく、疾患または状態の見通しにおける改善を示すことが理解され、本明細書中では意図される。具体的な実施形態において、処置は、少なくとも1つの症状の重篤度または程度における緩和を示し、代替では、または加えて、少なくとも1つの症状の発症における遅延を示す場合がある。
【0053】
I.使用方法の例
【0054】
本開示の様々な実施形態が、胃炎や胃炎関連の目的ではない医学的状態のために効果的である1つまたは複数のプロトンポンプ阻害剤(PPI)の使用に関する。特定の実施形態において、方法は、皮膚、表皮および/または真皮が直接的または間接的に影響を受ける医学的状態のためのものである。方法は、皮膚、表皮、真皮および/または粘膜が、1つまたは複数の外的状態にさらされるために影響を受ける医学的状態、ならびに/あるいは内的原因(例えば、遺伝的原因または他の原因など)のために影響を受ける医学的状態を包含する。医学的状態の原因が外的である状態では、方法は、当該外的状態にさらされる前に、当該外的状態にさらされている間に、および/または当該外的状態にさらされた後で利用されることがある。原因が遺伝的原因または他の原因などの内的である状態では、方法は、当該状態の症状が発症する前に、および/または当該状態の症状が発症した後で利用されることがある。個体が、そのような医学的状態を有する素因がある状況では、個体は本開示の方法を予防的に受けることがある。方法は、炎症関連および/または線維症関連のどのような医学的状態であれそのような医学的状態のための処置または予防を含む。具体的な実施形態において、方法は、皮膚、真皮、表皮および/または粘膜に対する治療または予防を提供する。
【0055】
具体的な実施形態において、医学的状態の外的原因は環境的であり、例えば、化学物質、あらゆる種類の放射線、および/または1つもしくは複数の病原体にさらされることなどである。特定の実施形態において、個体は、放射線または化学放射線療法にさらされるという理由から処置を必要としている。個体は、放射線または化学放射線療法にさらされることになるという理由から予防を必要としている場合がある。一例として、放射線療法(RT)が、外科的に切除できないいくつかのがんタイプの処置における主流の戦略である。残念なことに、がん生存者は、線維症に進行することがある重度の皮膚炎症(皮膚炎)を発症することを含めて、RTの意図されない様々な結果に苦しむことが多い。これらの病的な合併症は多くの場合、RTの中断を余儀なくさせ、根底にあるがんの再発をもたらす恐れがある。放射線皮膚炎のための現在の処置選択肢は最適ではなく、安全かつ効果的な治療法を開発する必要があることを強いている。少なくとも頭頸部がん、皮膚がん、甲状腺がん、肺がん、乳がん、結腸がん、肝臓がん、脳がん、血液がん、腎臓がん、胃がん、精巣がん、卵巣がん、子宮内膜がんおよび脾臓がんなどを含めて、がんまたはがん処置に関連づけられる皮膚状態はどれもが、1つまたは複数のPPIを用いて処置または予防され得る。
【0056】
本開示において、外用配合されたPPIの一例が、放射線誘発皮膚炎を、部分的には赤血球系2関連因子2(Nrf2)/ヘムオキシゲナーゼ1(HO1)経路などの抗酸化防御機構を刺激することを介して抑制することにおいて効果的であること、また、電離放射線によって引き起こされる酸化ストレス、炎症および線維症を抑えるために古典的な炎症促進性分子を阻害することのために効果的であることが示される。
【0057】
特に、外用配合されたエソメプラゾール(これはデルマプラゾールと呼ばれる)の生物物理学的特性が評価され、研究が、その効力を3Dヒト皮膚モデルにおいて、また、放射線誘発皮膚炎のマウスモデルにおいて評価するために行われた。3Dモデルについては、Nrf2−HO1経路の活性化がデルマプラゾールの存在下または非存在下で評価された。動物研究については、X線が、皮膚炎をマウスの脇腹に誘発するために使用された。動物は予防的経過または治療的経過で1%または2%のデルマプラゾールにより処置された。3Dヒト皮膚モデルでは、デルマプラゾールがNrf2の核移行を誘発し、HO1の遺伝子発現およびタンパク質発現を有意にアップレギュレーションすることが明らかにされた。動物研究では、デルマプラゾールが、放射線誘発創傷の促進された治癒を含めて、放射線照射皮膚の肉眼的外観を改善することが明らかにされた。組織病理学的データからは、写真による証拠が裏づけられ、また、予防的および治療的に投与されたデルマプラゾールが、潰瘍形成、壊死、炎症および線維症の程度における著しい低下を伴って、強力な抗炎症性作用および抗線維化作用をもたらすことが確認された。遺伝子発現データからは、デルマプラゾールがいくつかの酸化促進遺伝子、炎症促進性遺伝子および線維化促進遺伝子を有意にダウンレギュレーションすることが示された。
【0058】
したがって、PPIの一例として、FDA承認のジェネリック医薬品であるエソメプラゾールの外用配合物は、放射線誘発の皮膚炎症および線維症を緩和することにおいて非常に効果的である。その後の機構研究により、デルマプラゾールはNrf2−HO1経路を活性化し、また、炎症促進性サイトカインおよび線維化促進サイトカインをダウンレギュレーションして、炎症性応答および線維化応答を変化させることが示された。このことは、デルマプラゾールが、少なくとも放射線皮膚炎(腫瘍学全体にわたって多数の患者に影響を与える一般的な病的合併症)の予防および/または処置のために臨床的に有用であることを示している。
【0059】
本開示の様々な実施形態が、少なくとも化学放射線療法誘発の炎症および瘢痕形成(線維症);放射線誘発の皮膚炎症および線維症;強皮症;混合性結合組織病(MCTD);関節リウマチ(RA)を含むリウマチ性疾患;狼瘡;多発性筋炎;皮膚筋炎;アトピー性皮膚炎;脂漏性皮膚炎;レイノー病;口腔組織または非口腔組織を含む、あらゆる種類の粘膜炎;あらゆる種類または原因の瘢痕形成;ケロイド;塩素ざ瘡;ざ瘡;しわ皮膚;老化皮膚;皮膚の酸化ストレス;日焼け;光損傷;皮膚バリア保護;皮膚バリア光保護;皮膚がん;植皮または移植皮膚;形成手術または美容手術;寒冷傷害および凍傷;乾癬;白斑;アレルギー性皮膚炎;アトピー性皮膚炎;あらゆる種類または原因の炎症性皮膚状態;創傷治癒;および/またはアフタ性潰瘍を予防または処置する方法を含む。そのような方法は、少なくとも化学放射線療法誘発の炎症および瘢痕形成(線維症);放射線誘発の皮膚炎症および線維症;強皮症;混合性結合組織病(MCTD);関節リウマチ(RA)を含むリウマチ性疾患;狼瘡;多発性筋炎;皮膚筋炎;アトピー性皮膚炎;脂漏性皮膚炎;レイノー病;口腔粘膜炎;あらゆる種類または原因の瘢痕形成;ケロイド;塩素ざ瘡;ざ瘡;しわ皮膚;老化皮膚;皮膚の酸化ストレス;日焼け;光損傷;皮膚バリア保護;皮膚バリア光保護;皮膚がん;乾癬;白斑;アレルギー性皮膚炎;アトピー性皮膚炎;あらゆる種類または原因の炎症性皮膚状態;創傷治癒;および/またはアフタ性潰瘍の予防または処置を必要としている個体に、有効量の1つまたは複数のPPIをどのような形態であれ送達することを含む。具体的な実施形態において、PPIは、例えば、外用配合物において、例えば、クリームまたはゲルなどにおいて配合される。
【0060】
2つ以上のPPIが、上述の医学的状態の1つを予防または処置する方法のために利用されるとき、それらは同時に、または異なる時間で個体に投与され得る。どちらの場合でも、これらの多数のPPIは同じ組成物または異なる組成物においてであり得る。
【0061】
本開示の様々な実施形態が、皮膚または真皮に直接的または間接的に影響を及ぼす環境条件にさらされることになる、ならびに/あるいはさらされたことがある皮膚の健康および外観を改善する方法を含む。一例として、1つもしくは複数の受容体チロシンキナーゼ阻害剤(例として、イマチニブ、ゲフィチニブおよび/またはエルロチニブ)、1つもしくは複数のモノクローナル抗体またはそのコンジュゲート(例として、ブリナツモマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、アレムツズマブ、トラスツズマブ、イブリツモマブチウキセタン、ブレンツキシマブベドチン、アド−トラスツズマブエムタンシン)、1つもしくは複数の免疫チェックポイント阻害剤(例として、PD−1を標的とする薬物(ペンブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ)、またはPD−L1を標的とする薬物(アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ)、またはCTLA−4を標的とする薬物(イピリムマブ))、がん処置を含めてあらゆる目的のための放射線および/または化学放射線療法にさらされたことがある、ならびに/あるいはさらされることになる皮膚の健康および外観を改善する方法が存在する。皮膚の健康および外見は、皮膚をその治療前の健康および外見に回復させることを含む場合があり、または含まない場合がある。皮膚の健康および/または外観は、例えば、炎症、瘢痕形成、浮腫、水疱、壊死、潰瘍形成、萎縮、クモ状静脈、肥厚、かゆみ、発赤、またはそれらの組合わせの存在に基づいて判断される場合があり、または判断されない場合がある。
【0062】
本開示の様々な実施形態が、あらゆる種類の毛髪喪失または毛髪菲薄化を予防または処置する方法を含む。具体的な実施形態において、毛髪喪失は、化学放射線療法誘発の炎症および瘢痕形成(線維症);放射線誘発の皮膚炎症および線維症;強皮症;混合性結合組織病(MCTD);関節リウマチ(RA)を含むリウマチ性疾患;狼瘡;多発性筋炎;皮膚筋炎;アトピー性皮膚炎;脂漏性皮膚炎;および/またはレイノー病を有することの結果としてである。方法は、化学放射線療法誘発の炎症および瘢痕形成(線維症);放射線誘発の皮膚炎症および線維症;強皮症;混合性結合組織病(MCTD);関節リウマチ(RA)を含むリウマチ性疾患;狼瘡;多発性筋炎;皮膚筋炎;アトピー性皮膚炎;脂漏性皮膚炎;および/またはレイノー病を有すること、あるいは化学放射線療法誘発の炎症および瘢痕形成(線維症);放射線誘発の皮膚炎症および線維症;強皮症;混合性結合組織病(MCTD);関節リウマチ(RA)を含むリウマチ性疾患;狼瘡;多発性筋炎;皮膚筋炎;アトピー性皮膚炎;脂漏性皮膚炎;および/またはレイノー病について処置されることの結果としての毛髪の喪失または菲薄化を逆戻りさせる場合があり、または予防する場合があり、または遅らせる場合がある。化学放射線療法誘発の炎症および瘢痕形成(線維症);放射線誘発の皮膚炎症および線維症;強皮症;混合性結合組織病(MCTD);関節リウマチ(RA)を含むリウマチ性疾患;狼瘡;多発性筋炎;皮膚筋炎;アトピー性皮膚炎;脂漏性皮膚炎;および/またはレイノー病に伴う毛髪の喪失または菲薄化は永続的である場合があり、または永続的でない場合がある。少なくともある特定の場合において、毛髪喪失を予防する方法は毛髪の完全な喪失を予防する場合があり、あるいは、毛髪喪失の開始を遅らせることまたは失う毛髪の量を減少させることを含めて、毛髪の部分的な喪失を予防する場合がある。毛髪喪失を処置するとき、処置は、失われていた毛髪を再成長させることを含む場合があり、失われていた毛髪の一部またはすべてが本開示の方法で再成長させられる場合がある。
【0063】
具体的な実施形態において、方法は放射線誘発皮膚炎の処置または予防を含む。放射線皮膚炎は、放射線療法を受けるがん患者の大きな割合で生じる皮膚に対する線量制限の正常組織毒性である。放射線皮膚炎は放射線照射部位での炎症反応として現れ、発赤、落屑、毛髪の喪失、および壊死性変化を含む場合がある。これらの臨床的症状発現にはまた、剥離、かゆみ、痛み、浮腫、水疱、皮膚退縮、硬結および感染が伴う場合もある。中等度から重度の事例において、炎症性皮膚反応は、放射線照射組織を永久的に瘢痕化する線維症に進行する場合がある。このことは、影響を受けた患者の生活の質を著しく損なう場合があり、また、放射線療法の中断を余儀なくさせ、根底にあるがんの再発をもたらす恐れがある場合がある(Spalek、2016)。強まる研究努力にもかかわらず、放射線誘発皮膚炎のための効果的な治療法は存在しない。がん治療のこの一般に発生する合併症を緩和する効果的な予防計画または治療計画が欠如している。放射線誘発の正常組織毒性における酸化ストレスおよび炎症の中心的な役割のために、皮膚炎、粘膜炎、肺臓炎、直腸炎および食道炎を含む放射線毒性から正常組織を保護するための抗酸化剤および抗炎症性分子を試験し、開発するための努力が進行中である。本開示の具体的な実施形態において、少なくともデルマプラゾールを含む1つまたは複数のPPIにより、電離放射線誘発の皮膚炎が緩和される。
【0064】
本開示の様々な実施形態が、1つまたは複数の化学療法剤および/または放射線を含めて1つまたは複数のがん治療法の炎症性副作用を処置するための組合わせでの、1つ、2つ、3つまたはそれ以上のPPIの使用を含む。1つまたは複数の化学療法薬物により処置されたことがある、処置されている、および/または処置されることになる個体が処置される場合において、化学療法薬物は、アントラサイクリン系薬物、例えば、ドキソルビシン(Adriamycin)およびエピルビシン(Ellence)など;タキサン系薬物、例えば、パクリタキセル(Taxol)およびドセタキセル(Taxotere)など;5−フルオロウラシル(5−FU);シクロホスファミド(Cytoxan);および/またはカルボプラチン(Paraplatin)、シスプラチン(Platinol);ボルテゾミブ(Velcade);クロラムブシル(Leukeran);シクロホスファミド(Cytoxan、Neosar);ゲムシタビン(Gemzar);グリベック;イリノテカン(Camptosar);イリノテカンリポソーム注射剤(Onivyde);メトトレキサート(Rheumatrex、Trexall);オキサリプラチン(Eloxatin);トラスツズマブ(Herceptin);ブレオマイシン(Blenoxane);エトポシド(Etopophos);マイトマイシン(Mitosol);セツキシマブ(Erbitux);カペシタビン(Xeloda)、およびそれらの組合わせである場合があり、しかし、これらに限定されない。
【0065】
本開示の様々な実施形態が、炎症、瘢痕形成、浮腫、水疱、壊死、潰瘍形成、萎縮、クモ状静脈、肥厚、かゆみ、発赤またはこれらの組合わせを有する皮膚または真皮を処置すること、あるいはこれらのいずれか1つまたは複数を予防することを、治療有効量の1つまたは複数のPPIを個体に提供することによってそれらの原因にかかわらず行う方法を含む。
【0066】
本開示の様々な実施形態が、1つまたは複数のPPIが効果的である1つまたは複数の皮膚科学的な医学的状態を処置または予防する方法を含む。皮膚科学的状態は下記症状の1つまたは複数を有する場合がある:炎症、瘢痕形成、浮腫、水疱、壊死、潰瘍形成、萎縮、クモ状静脈、肥厚、かゆみ、発赤またはこれらの組合わせ。
【0067】
個体が皮膚炎を有するか、または皮膚炎にかかりやすい場合、皮膚炎は、例えば、アトピー性皮膚炎(湿疹)、脂漏性皮膚炎または接触性皮膚炎であることがある。
【0068】
いくつかの実施形態において、本明細書中において包含される適応症のための1つまたは複数のPPIを必要としている個体には、有効量の別の治療剤または他の薬剤が、例えば、1つまたは複数のコルチコステロイド、1つまたは複数の抗生物質、亜鉛、アミホスチン、シルバーリーフナイロン包帯材、1つまたは複数の疼痛緩和剤(例えば、リドカイン、麻酔薬、非ステロイド性抗炎症薬など)、あるいはそれらの組合わせなどが与えられたことがあり、与えられており、および/または与えられることになる。
【0069】
特定の実施形態において、1つまたは複数のPPIが治療有効量で個体に提供される。2つ以上のPPIが個体に投与されることになる状況では、それらは同時に、または異なる時間で個体に投与され得る。同時に投与されるとき、それらは同じ組成物において配合される場合があり、または配合されない場合がある。それらが異なる時間で投与されるとき、投与間の時間範囲は、互いに1分以内、1分〜59分の範囲内、1時間〜24時間の範囲内、1日〜7日の範囲内、1週間〜4週間の範囲内、1ヶ月〜12ヶ月の範囲内などであり得る。
具体的な実施形態において、PPIは、がん治療に関連づけられる炎症および/または線維症の処置または予防を必要としている個体に与えられ、当該個体にはがん自体の処置のためには与えられない。個体は、がん治療に関連づけられるものを含めて、炎症および/または線維症の処置または予防のための治療を必要としていると判定される場合がある。PPIは、がん処置のためではない、状態の処置または予防に関連づけられる使用のために配合される場合がある。しかしながら、いくつかの実施形態においては、処置されているがんもまた、少なくとも化学放射線治療を含めてがん治療に対して感作する外用PPI(1つまたは複数)が、がんに関連づけられる炎症および/または線維症を緩和するために使用されることが、本明細書中において包含される。特定の実施形態において、そのようなPPIは、皮膚がんまたは本明細書中に列挙されるどのような医学的状態も、例えば、局所的に処置するために利用される。
【0070】
II.PPIおよびその組成物の例
【0071】
様々なPPIが通常、胃の様々な状態のために利用されており、しかし、本開示は、それらの使用を胃の状態ではない様々な状態のために再構成して、少なくとも化学療法および/または放射線療法により誘発される組織炎症および瘢痕形成を含めてあらゆる種類の1つまたは複数の皮膚科学的状態のために有用な配合物にすることを包含する。様々なPPIのこの特徴により、FDAが承認する適応症(すなわち、胃炎の処置)は含まれない。様々なPPIが、本明細書中において包含されるように、一般に使用されている化学療法剤の多くまたは電離放射線に応答して生成される炎症性サイトカインの多くを直接的に調節する。エソメプラゾールにより調節されるこれらのサイトカインの多くは、例えば、皮膚炎ではアップレギュレーションされることが報告されている。
【0072】
本開示の様々な実施形態が、あらゆる種類の1つまたは複数の皮膚科学的状態を処置するための1つまたは複数のPPIを含む。PPIは、どのような種類の組成物であれ、必要とされる処置または予防のために好適である組成物に配合され得る。PPIは局所投与または全身投与のために配合され得る。だが、特定の実施形態においては、投与は胃適用のためではない。2つ以上のPPIが個体に与えられるとき、それらは同じ組成物において配合される場合あり、または配合されない場合がある。
【0073】
具体的な一例として、本発明者らは、化学放射線療法誘発の皮膚炎を予防および/または処置するために皮膚に直接に塗布するための外用エソメプラゾールクリームを作製し、炎症の抑制をインビトロおよび動物モデルにおいて明らかにする。それによれば、PPIは、例として、化学放射線療法誘発の組織炎症および瘢痕形成を予防および/または処置するために、クリーム(例えば、皮膚炎用)、液体(例えば、腸炎用)、トローチ(例えば、口腔粘膜炎用)および坐剤(例えば、直腸炎用)を含めて様々な調製物において再配合することができる。
【0074】
特定の実施形態において、PPIは、エソメプラゾール、オメプラゾール、ランソプラゾール、デクスランソプラゾール、パントプラゾール、ラベプラゾール、イラプラゾール、またはそれらの組合わせである。多数のPPIが個体に与えられるとき、個体に施される投薬計画にかかわらず、それらは種々のタイプの配合物において配合される場合があり、または配合されない場合がある。
特定の実施形態において、1つまたは複数のPPIは、治療目的または他の目的のために1つまたは複数の他の薬剤とともに組成物において配合される。例には、1つまたは複数の化学療法剤、1つまたは複数のコルチコステロイド、1つまたは複数の抗生物質、亜鉛、アミホスチン、シルバーリーフナイロン包帯材、1つまたは複数の疼痛緩和剤、あるいはそれらの組合わせが含まれる。組成物の1つの特定の実施形態は、1つまたは複数のPPIを、例えば、口腔粘膜炎のために使用され得るリドカインとともに含む。
【0075】
本開示の医薬組成物は、有効量の1つまたは複数のPPIを医薬的に許容され得る担体に溶解されて、または分散されて含む。表現「医薬的な、または薬理学的に許容され得る」は、動物(例えば、ヒトなど)に適切なように投与されたとき、有害反応、アレルギー反応または他の不都合な反応を生じさせない分子実体および組成物を示す。少なくとも1つのPPIまたはさらなる有効成分を含有する医薬組成物の調製は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(第21版、Lippincott Williams and Wilkins、2005;これは参照によって本明細書中に組み込まれる)によって例示されるように、本開示に照らして当業者には知られているであろう。そのうえ、動物(例えば、ヒト)への投与のためには、調製物は、米国食品医薬品局生物製剤規格部(FDA Office of Biological Standards)によって要求されるような無菌性基準、発熱性基準、一般的安全性基準および純度基準を満たさなければならないことが理解されるであろう。
【0076】
本明細書中で使用される場合、「医薬的に許容され得る担体」には、当業者には知られているであろうようなありとあらゆる溶媒、分散媒体、被覆剤、界面活性剤、酸化防止剤、保存剤(例えば、抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延剤、塩、保存剤、薬物、薬物安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑剤、甘味剤、香味矯臭剤、色素など、およびそれらの組合せが含まれる(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版(Mack Printing Company、1990年、1289頁〜1329頁)を参照のこと;これは参照によって本明細書中に組み込まれる)。どのような担体であれ従来の担体は有効成分と配合禁忌である場合を除いて、医薬組成物におけるその使用が意図される。
【0077】
1つまたは複数のPPIは、固体形態、液体形態またはエアロゾル形態で投与されることになるかどうかに依存して、また、注射のような投与経路のために無菌である必要があるかどうかに依存して、異なる様々なタイプの担体を含む場合がある。本発明は、外用的に、局所的に、皮内に、経皮的に、皮下に、粘膜に、クリームまたはゲルで、また、その他で施すことができ、だが、ある特定の場合には、PPIは、当業者には知られているであろうように静脈内に、クモ膜下腔内に、動脈内に、腹腔内に、舌下に、鼻腔内に、膣内に、直腸内に、筋肉内に、経口的に、吸入(例えば、エアロゾル吸入)によって、注射(関節内、皮下など)、点眼剤として、注入、持続注入、標的細胞を直接に浸ける限局性灌流、カテーテルを介して、洗浄(lavage)を介して、脂質組成物(例えば、リポソーム)において、または他の方法によって、あるいは前述のどのような組合せによってでも投与される(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版(Mack Printing Company、1990年)を参照のこと;これは参照によって本明細書中に組み込まれる)。
【0078】
1つまたは複数のPPIは、遊離塩基形態、中性形態または塩形態で組成物に配合される場合がある。医薬的に許容され得る塩には、酸付加塩、例えば、タンパク質性組成物の遊離のアミノ基により形成される酸付加塩、あるいは、無機酸(例えば、塩酸またはリン酸など)、または、酢酸、シュウ酸、酒石酸もしくはマンデル酸のような有機酸により形成される酸付加塩が含まれる。遊離のカルボキシル基により形成される塩はまた、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウムまたは水酸化第二鉄など)、あるいは、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジンまたはプロカインのような有機塩基に由来することができる。配合されると、溶液が、投薬処方と適合する様式で、かつ、治療効果的であるような量で投与されることになる。配合物は、様々な投薬形態物で、例えば、非経口投与のために配合される投薬形態物(例えば、注射可能な溶液、または肺送達用エアロゾルなど)、または消化管投与のために配合される投薬形態物(例えば、薬物放出カプセルなど)などで容易に投与される。
【0079】
さらに、本開示によれば、投与のために好適である本開示の組成物は、不活性な希釈剤を伴って、または伴うことなく、医薬的に許容され得る担体において提供される。担体は同化可能でなければならず、液体担体、半固体担体(すなわち、ペースト)、または固体担体を包含する。従来の媒体、薬剤、希釈剤または担体はどれもが、レシピエントに対して、または、それらにおいて含有される組成物の治療有効性に対して有害である場合を除いて、本発明の方法を実施する際に使用するための投与可能な組成物におけるその使用が適切である。担体または希釈剤の例には、脂肪、油、水、生理食塩水溶液、脂質、リポソーム、樹脂、結合剤および増量剤など、またはそれらの組合せが含まれる。組成物はまた、1つまたは複数の成分の酸化を遅らせるために、メタ重亜硫酸ナトリウム、グルタチオンまたはN−アセチルシステイン(これらに限定されない)を含めて様々な酸化防止剤を含む場合がある。加えて、微生物の作用の防止を、保存剤によって、例えば、パラベン類(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールまたはそれらの組合わせ(これらに限定されない)を含めて、様々な抗菌剤および抗真菌剤などによってもたらすことができる。
【0080】
本開示によれば、組成物は、どのような様式であれ好都合かつ実用的な様式で、すなわち、溶解、懸濁、乳化、混合、カプセル化および吸収などによって担体と組み合わされる場合がある。そのような手順は当業者にとっては日常的である。
【0081】
本開示の具体的な実施形態において、組成物は、半固体担体または固体担体と完全に組み合わされ、または混合される。混合を、どのような様式であれ従来の様式で、例えば、粉砕などにおいて行うことができる。安定化剤もまた、組成物を治療活性の喪失から保護するために、例えば、胃における変性から保護するために、混合プロセスにおいて加えることができる。組成物における使用のための安定剤の例には、緩衝剤、アミノ酸(例えば、グリシンおよびリシンなど)、炭水化物(例えば、デキストロース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、ソルビトール、マンニトールなど)が含まれる。
【0082】
さらなる実施形態において、本開示は、1つまたは複数のPPI、1つまたは複数の脂質、および水性溶媒を含む医薬用の脂質ビヒクル組成物の使用を包含し得る。本明細書中で使用される場合、用語「脂質」は、水に特徴的に不溶性であり、かつ、有機溶媒により抽出可能である幅広い範囲の様々な物質のいずれかを含むように定義されるであろう。この幅広いクラスの様々な化合物が当業者には周知であり、用語「脂質」が本明細書中で使用される場合、これは、どのような構造であれ特定の構造に限定されない。例には、長鎖脂肪族炭化水素およびそれらの誘導体を含有する化合物が含まれる。脂質は、天然に存在するもの、または合成されたもの(すなわち、人によって設計または製造されたもの)である場合がある。しかしながら、脂質は通常、生物学的物質である。様々な生物学的脂質がこの技術分野では広く知られており、これらには、例えば、中性脂肪、リン脂質、ホスホグリセリド、ステロイド、テルペン、リゾ脂質、スフィンゴ糖脂質、糖脂質、スルファチド、エーテル結合脂肪酸およびエステル結合脂肪酸を伴う脂質、および重合性脂質、ならびにそれらの組合せが含まれる。当然のことながら、脂質として当業者によって理解される本明細書中に具体的に記載される化合物でない化合物もまた、本発明の組成物および方法によって包含される。
【0083】
当業者は、組成物を脂質ビヒクルに分散させるために用いることができる様々な技術の範囲に精通しているであろう。例えば、PPI(1つまたは複数)は、脂質を含有する溶液に分散される場合があり、脂質とともに溶解される場合があり、脂質とともに乳化される場合があり、脂質と混合される場合があり、脂質と組み合わされる場合があり、脂質に共有結合される場合があり、脂質における懸濁液として含有される場合があり、ミセルもしくはリポソームとともに含有される場合があり、またはミセルもしくはリポソームと複合体化される場合があり、あるいは、他の場合には、どのような手段であれ当業者には知られている手段によって脂質または脂質構造体と会合させられる場合がある。分散により、リポソームの形成がもたらされる場合があり、またはもたらされない場合がある。
【0084】
個体に投与される本開示の組成物の実際の投薬量を、様々な物理的要因および生理学的要因によって、例えば、体重、状態の重篤度、処置されている疾患のタイプ、以前の治療的介入または同時の治療的介入などによって、ならびに/あるいは投与経路に基づいて決定することができる。投薬量および投与経路に依存して、好ましい投薬量および/または有効量の投与回数が、個体の応答に応じて変化する場合がある。投与責任者はいずれにせよ、組成物における有効成分(1つまたは複数)の濃度および適切な服用(1回または複数回)を個体のために決定するであろう。
【0085】
ある特定の実施形態において、医薬組成物は、例えば、少なくとも約0.1%の活性な化合物を含む場合がある。他の実施形態において、活性な化合物は、単位物の重量の約1%〜約75%の間、または、例えば、約25%〜約60%の間、および、どのような範囲であれそれらにおいて派生し得る範囲を構成する場合がある。当然のこととして、それぞれの治療有用な組成物における活性な化合物(1つまたは複数)の量が、好適な投薬量が当該化合物のどのような所与の単位用量物においてであっても得られることになるような方法で調製される場合がある。様々な要因、例えば、溶解性、生物学的利用能、生物学的半減期、投与経路、製造物の貯蔵寿命など、同様にまた、他の薬理学的検討事項が、そのような医薬用配合物を調製する技術分野の当業者によって意図されるであろうし、また、そのようなものとして、様々な投薬量および治療計画が望ましい場合がある。
【0086】
他の限定されない例において、用量はまた、投与あたり、約1マイクログラム/kg/体重、約5マイクログラム/kg/体重、約10マイクログラム/kg/体重、約50マイクログラム/kg/体重、約100マイクログラム/kg/体重、約200マイクログラム/kg/体重、約350マイクログラム/kg/体重、約500マイクログラム/kg/体重、約1ミリグラム/kg/体重、約5ミリグラム/kg/体重、約10ミリグラム/kg/体重、約50ミリグラム/kg/体重、約100ミリグラム/kg/体重、約200ミリグラム/kg/体重、約350ミリグラム/kg/体重、約500ミリグラム/kg/体重から、約1000ミリグラム/kg/体重またはそれ以上まで、および、どのような範囲であれそれらにおいて派生し得る範囲を含む場合がある。本明細書中に列挙される数字からの派生し得る範囲の限定されない例において、約5ミリグラム/kg/体重〜約100ミリグラム/kg/体重、約5マイクログラム/kg/体重〜約500ミリグラム/kg/体重などの範囲を、上記数字に基づいて投与することができる。
【0087】
ある特定の実施形態において、PPIは組成物において特定の濃度で配合される。具体的な実施形態において、PPIは、1%〜100%w/wの範囲で配合される。具体的な場合において、PPIは、1%〜100%、1%〜75%、1%〜50%、1%〜25%、10%〜100%、10%〜75%、10%〜50%、25%〜100%、25%〜75%、25%〜50%、1%〜20%、1%〜18%、1%〜16%、1%〜15%、1%〜12%、1%〜10%、1%〜8%、1%〜6%、1%〜5%、1%〜4%、1%〜3%、1%〜2%、2%〜5%、2%〜4%、2%〜3%、3%〜5%、3%〜4%、4%〜5%、5%〜20%、5%〜15%、5%〜10%、10%〜20%、10%〜15%、12%〜15%、12%〜20%w/wの範囲で配合される。PPIは場合により、1%、2%、3%、4%または5%w/wの濃度で配合される場合がある。
【0088】
特定の実施形態において、プロトンポンプ阻害剤の濃度は、95%、94%、93%、92%、91%、90%、89%、88%、87%、86%、85%、84%、83%、82%、81%、80%、79%、78%、77%、76%、75%、74%、73%、72%、71%、70%、69%、68%、67%、66%、65%、64%、63%、62%、61%、60%、59%、58%、57%、56%、55%、54%、53%、52%、51%、50%、49%、48%、47%、46%、45%、44%、43%、42%、41%、40%、39%、38%、37%、36%、35%、34%、33%、32%、31%、30%、29%、28%、27%、26%、25%、24%、23%、22%、21 20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%w/wを超えない。
【0089】
A.非経口用の組成物および配合物
さらなる実施形態において、1つまたは複数のPPIが非経口経路を介して投与される場合がある。本明細書中で使用される場合、用語「非経口」には、消化管を迂回する経路が含まれる。具体的には、本明細書中に開示される医薬組成物は、例えば、しかし、限定されないが、静脈内に、皮内に、筋肉内に、動脈内に、クモ膜下腔内に、皮下に、または腹腔内に投与される場合がある。米国特許第6,7537,514号、同第6,613,308号、同第5,466,468号、同第5,543,158号、同第5,641,515号および同第5,399,363号(これらのそれぞれが特に、その全体において参照によって本明細書中に組み込まれる)。
【0090】
遊離塩基または薬理学的に許容され得る塩としての活性な化合物の溶液が、界面活性剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロースなど)と好適に混合される水において調製される場合がある。分散物はまた、グリセロール、液状ポリエチレングリコールおよびそれらの混合物において、また、油において調製される場合がある。貯蔵および使用の通常の条件のもとで、これらの調製物は、微生物の成長を防止するための保存剤を含有する。注射剤使用のために好適である医薬用形態物には、無菌の水性溶液または水性分散物、および無菌の注射可能な溶液または分散物の即時調製のための無菌粉末が含まれる(米国特許第5,466,468号、これは特に、その全体が参照によって本明細書中に組み込まれる)。すべての場合において、形態物は無菌でなければならず、かつ、容易な注射性が存在する程度に流動性でなければならない。形態物は製造および貯蔵の条件のもとで安定でなければならず、かつ、微生物(例えば、細菌および真菌など)の混入作用に逆らって保たれなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(すなわち、グリセロール、プロピレングリコールおよび液状ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物、ならびに/あるいは植物油を含有する溶媒または分散媒体が可能である。適切な流動性が、例えば、被覆剤(例えば、レシチンなど)の使用によって、分散物の場合には要求される粒子サイズの維持によって、また、界面活性剤の使用によって維持される場合がある。微生物の作用を防止することが、様々な抗菌剤および抗真菌剤によって、例えば、パラベン類、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸およびチメロサールなどによってもたらされ得る。多くの場合には、等張剤(例えば、糖または塩化ナトリウムなど)を含むことが好ましいであろう。注射可能な組成物の長期にわたる吸収が、吸収を遅らせる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)を組成物において使用することによってもたらされ得る。
【0091】
水性溶液での非経口投与のために、例えば、溶液は、必要であるならば、好適に緩衝化されなければならず、液体希釈剤が最初に、十分な生理食塩水またはグルコースにより等張性にされなければならない。これらの特定の水性溶液は、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与および腹腔内投与のためにとりわけ適している。これに関連して、用いることができる様々な無菌の水性媒体が、本開示に照らして当業者には知られているであろう。例えば、1つの投薬物が等張性NaCl溶液に溶解され、皮下注入液に加えられるか、または提案された注入部位において注射されるかのどちらであってもよい(例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、第15版、1035頁〜1038頁および1570頁〜1580頁を参照のこと)。投薬量における何らかの変動が、対象の状態が処置されることに依存して必然的に生じるであろう。投与責任者はいずれにせよ、個体対象のための適切な用量を決定するであろう。そのうえ、ヒトへの投与のために、調製物は、米国食品医薬品局生物製剤部(FDA Office of Biologics)の規格によって要求されるような無菌性基準、発熱性基準、一般的安全性基準および純度基準を満たさなければならない。
【0092】
無菌の注射可能な溶液が、活性な化合物を必要量で、要求されるような上記で列挙される様々な他の成分とともに適切な溶媒に組み込み、その後、ろ過滅菌することによって調製される。一般に、分散物が、様々な滅菌された有効成分を、基礎となる分散媒体と、上記で列挙される成分に由来する要求された他の成分とを含有する無菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。無菌の注射可能な溶液を調製するための無菌粉末の場合、好ましい調製方法が、有効成分と、それに加えて、どのような成分であれ、さらなる所望の成分との粉末を、それらの前もって無菌ろ過された溶液からもたらす真空乾燥技術および凍結乾燥技術である。粉末化された組成物が、安定化剤を伴って、または伴うことなく、液体担体(例えば、水または生理食塩水溶液など)と組み合わされる。
【0093】
B.消化管用の組成物および配合物
PPI(1つまたは複数)は好ましくは非経口投与のために配合されるが、本開示の代替的な実施形態において、1つまたは複数のPPIは、消化管経路を介して投与されるように配合される場合がある。消化管経路には、組成物が消化管と直接に接触しているすべての可能な投与経路が含まれる。具体的には、本明細書中に開示される医薬組成物は、経口投与、口腔投与、直腸投与または舌下投与により投与される場合がある。そのようなものとして、これらの組成物は、不活性な希釈剤とともに、または同化可能な食用担体とともに配合される場合があり、あるいは硬質ゼラチンカプセルまたは軟質ゼラチンカプセルに封入される場合があり、あるいは錠剤に圧縮される場合があり、あるいは食事の食物とともに直接に取り込まれる場合がある。
【0094】
ある特定の実施形態において、活性な化合物は賦形剤とともに取り込まれ、摂取可能な錠剤、口腔テーブル剤(buccal tables)、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁物、シロップ剤およびウエハ剤などの形態で使用される場合がある(Mathiowitz他、1997;Hwang他、1998;米国特許第5,641,515号、同第5,580,579号および同第5,792,451号、これらのそれぞれが特に、その全体において参照によって本明細書中に組み込まれる)。錠剤、トローチ剤、丸剤およびカプセル剤などはまた、下記のものを含有する場合がある:結合剤(例えば、トラガカントガム、アラビアゴム、トウモロコシデンプン、ゼラチンまたはそれらの組合わせなど)、賦形剤(例えば、リン酸二カルシウム、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、セルロース、炭酸マグネシウムまたはそれらの組合わせなど)、崩壊剤(例えば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸またはそれらの組合わせなど)、滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムなど)、甘味剤(例えば、スクロース、ラクトース、サッカリンまたはそれらの組合わせなど)、香味矯臭剤(例えば、ペパーミント、ウィンターグリーン油、サクランボ香味料、オレンジ香味料など)など。投薬単位形態物がカプセル剤であるとき、カプセル剤は、上記タイプの材料に加えて、液体担体を含有する場合がある。様々な他の材料が、被覆剤として、または他の場合には投与単位物の物理的形態を変更するために存在する場合がある。例えば、錠剤、丸剤またはカプセル剤が、シェラック、砂糖または両者により被覆される場合がある。投薬形態物がカプセル剤であるとき、カプセル剤は、上記タイプの材料に加えて、様々な担体(例えば、液体担体など)を含有する場合がある。ゼラチンカプセル剤、錠剤または丸剤が腸溶性被覆される場合がある。腸溶性被覆により、pHが酸性である胃または上部腸における組成物の変性が防止される。例えば、米国特許第5,629,001号を参照のこと。小腸に達したとき、小腸における塩基性pHは被覆を溶解させ、組成物が放出され、特殊化された細胞(例えば、上皮腸細胞およびパイエル板M細胞)によって吸収されることを可能にする。エリキシル剤のシロップ剤は、活性な化合物、甘味剤としてのスクロース、保存剤としてのメチルパラベンおよびプロピルパラベン、色素、ならびに香味矯臭剤(例えば、サクランボ香料またはオレンジ香料など)を含有する場合がある。当然のことながら、どのような投薬単位形態物であってもその調製において使用される材料はどれもが、薬学的に純粋でなければならず、かつ、用いられる量において実質的に非毒性でなければならない。加えて、活性な化合物は、徐放性の調製物および配合物に組み込まれる場合がある。
【0095】
経口投与のために、本開示の組成物は代替では、口内洗浄剤、歯磨き剤、口腔錠剤、経口噴霧剤または舌下用経口投与配合物の形態において1つまたは複数の賦形剤とともに組み込まれる場合がある。例えば、必要量での有効成分を適切な溶媒(例えば、ホウ酸ナトリウム溶液(ドーベル液)など)において組み込む口腔洗浄剤が調製される場合がある。代替において、有効成分が、経口用溶液(例えば、ホウ酸ナトリウム、グリセリンおよび重炭酸カリウムを含有する経口用溶液など)に組み込まれる場合があり、または歯磨き剤に分散される場合があり、または、水、結合剤、研磨剤、香味矯臭剤、発泡剤および湿潤剤を含む場合がある組成物に、治療有効量で加えられる場合がある。代替において、組成物は、舌下に置かれ得る、またはそうでない場合には口内で溶解し得る錠剤形態または溶液形態にされる場合がある。
【0096】
他の様式の消化管投与のために好適であるさらなる配合物には、坐剤が含まれる。坐剤は、直腸内への挿入のための、通常の場合には薬物が添加された様々な重量および形状の固体投薬形態物である。挿入後、坐剤は軟化し、溶融し、または腔液に溶解する。一般には、坐剤のために、従来の担体には、例えば、ポリアルキレングリコール、トリグリセリドまたはそれらの組合わせが含まれる場合がある。ある特定の実施形態において、坐剤が、例えば、有効成分を約0.5%〜約10%の範囲で、好ましくは約1%〜約2%の範囲で含有する混合物から形成される場合がある。
【0097】
C.他の様々な医薬用の組成物および配合物
本発明の他の好ましい実施形態において、活性な化合物であるPPI(1つまたは複数)は、様々な多岐にわたる経路を介する投与のために、例えば、外用投与(すなわち、パッチまたは包帯の助けを受ける、または受けない経皮投与)、粘膜投与(鼻腔内投与、膣投与など)および/または吸入による投与のために配合される場合がある。
【0098】
外用投与のための医薬組成物は、薬用塗布物(例えば、軟膏、ペースト、クリームまたは粉末剤など)のために配合される活性な化合物を含む場合がある。軟膏は、吸着、乳化および水溶性に基づく外用塗布用のすべての油性組成物を含み、一方で、クリームおよびローションは、乳化基剤のみを含むそのような組成物である。外用投与医薬品は、皮膚を通した有効成分の吸着を容易にするための浸透増強剤を含有する場合がある。好適な浸透増強剤には、グリセリン、アルコール、アルキルメチルスルホキシド、ピロリドン類およびルアロカプラム(luarocapram)が含まれる。外用塗布用の組成物のための可能な基剤には、ポリエチレングリコール、ラノリン、コールドクリームおよびワセリン、同様にまた、どのような軟膏基剤であれ、他の好適な吸収軟膏基剤、乳化軟膏基剤または水溶性軟膏基剤が含まれる。外用調製物はまた、有効成分を保ち、かつ、均質な混合物を提供するために、必要に応じて、乳化剤、ゲル化剤および抗菌性保存剤を含む場合がある。本発明の経皮投与はまた、「パッチ」の使用を含む場合がある。例えば、パッチは、1つまたは複数の活性な物質を所定の速度で、かつ、連続した様式で、一定の期間にわたって供給する場合がある。
【0099】
ある特定の実施形態において、医薬組成物は、点眼剤、眼用懸濁物、眼用ゲル、眼軟膏、鼻腔内スプレー剤、吸入および/または他のエアロゾル送達ビヒクルによって送達される場合がある。鼻腔エアゾルスプレー剤を介して組成物を肺に直接に送達するための様々な方法が、例えば、米国特許第5,756,353号および同第5,804,212号に記載されている(それぞれが特に、その全体において参照によって本明細書中に組み込まれる)。同様に、鼻腔内微小粒子樹脂を使用する薬物送達(Takenaga他、1998)、およびリゾホスファチジル−グリセロール化合物を使用する薬物送達(米国特許第5,725,871号、その全体が特に参照によって本明細書中に組み込まれる)もまた、製薬の技術分野では広く知られている。同様に、ポリテトラフルオロエチレン支持マトリックスの形態での経粘膜薬物送達が米国特許第5,780,045号に記載される(その全体が特に参照によって本明細書中に組み込まれる)。
【0100】
エアロゾルという用語は、液化されたガス噴射剤または加圧されたガス噴射剤に分散される液体粒子の微細に分割された固体のコロイド系を示す。吸入のための本発明の典型的なエアロゾルは、液体噴射剤における、または液体噴射剤および好適な溶剤の混合物における有効成分の懸濁物からなるであろう。好適な噴射剤には、炭化水素および炭化水素エーテルが含まれる。好適な容器は、噴射剤の圧力要求に従って変化するであろう。エアロゾルの投与は、対象の年齢、体重、ならびに症状の重篤度および応答に従って変化するであろう。
【0101】
III.本開示のキット
【0102】
本明細書中に記載されるPPI組成物のどれもがキットに含められる場合がある。限定されない一例において、1つまたは複数のPPIがキットに含められる場合がある。したがって、キットは好適な容器手段において、PPI(1つまたは複数)および脂質、ならびに/あるいは本開示のさらなる薬剤を含むであろう。1つまたは複数のPPI組成物は、例えば、液剤、トローチ、坐剤、クリーム、固形剤、錠剤、丸剤、エアロゾル剤、ゲル剤、フィルム剤、発泡剤、軟膏、ペースト、クリーム、ゲル剤、粉末剤またはそれらの組合わせとして配合される場合がある。具体的な実施形態において、本明細書中に包含される適応症の予防または処置として使用するために配合される1つまたは複数のPPI組成物はまた、1つまたは複数のがん薬物、1つまたは複数のコルチコステロイド、1つまたは複数の抗生物質、亜鉛、アミホスチン、シルバーリーフナイロン包帯材、1つまたは複数の疼痛緩和剤、あるいはそれらの組合わせとともにキットにおいて提供される場合がある。場合により、第1のPPIが第1の化学療法薬または他の治療剤と一緒に包装され、一方で、第2の包装が、第2の化学療法薬または他の治療剤と一緒に包装される第2のPPIを含む。そのような場合において、PPIおよび化学療法薬ならびに必要な場合には別の治療剤が同じ包装物において包装されるとき、それらは包装物内の異なる容器に収容される場合がある。
【0103】
キットは、PPI、脂質および/またはさらなる薬剤の好適に等分された本開示の組成物を含む場合がある。キットの成分が、水性媒体において、または凍結乾燥形態においてそのどちらでも包装される場合がある。キットの容器手段には一般に、成分が入れられることがある、好ましくは好適に小分けして入れられることがある少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジまたは他の容器手段が含まれるであろう。2つ以上の成分がキットに存在する場合、当該キットはまた一般には、さらなる成分が別々に入れられることがある第2、第3または他のさらなる容器または区画を含むであろう。しかしながら、成分の様々な組合せがバイアルに含められる場合がある。本開示のキットはまた、典型的には、1つまたは複数のPPI、脂質、さらなる薬剤、および、どのような試薬容器であれ、商用販売のための厳重な閉じ込めでの他の試薬容器を含有するための手段を含むであろう。そのような容器には、所望のバイアルが保持される射出成形プラスチック容器またはブロー成形プラスチック容器が含まれる場合がある。
【0104】
しかしながら、キットの成分は、乾燥された粉末(1つまたは複数)として提供される場合がある。試薬および/または成分が乾燥粉末として提供されるとき、粉末は、好適な溶媒を加えることによって再構成することができる。溶媒もまた、別の容器手段において提供され得ることが想定される。
【0105】
容器手段は一般に、配合物(1つまたは複数)が置かれる、好ましくは適切に割り当てられる少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジおよび/または他の容器手段もしくは区画を含むであろう。キットはまた、無菌の医薬的に許容され得る緩衝液および/または他の希釈剤を含有するための第2の容器手段を含む場合がある。
【0106】
本開示のキットはまた、典型的には、バイアルを商用販売のための厳重な閉じ込めで含有するための手段、例えば、所望のバイアルが保持される射出成形プラスチック容器および/またはブロー成形プラスチック容器などを含むであろう。
【実施例】
【0107】
下記の実施例は、本開示の特定の実施形態を明らかにするために含まれる。下記の実施例において開示される技術は、本開示の実施において十分に機能することが本発明者によって見出された技術を表しており、したがって、その実施のための特定の態様を構成するとみなされ得ることが、当業者によって理解されなければならない。しかしながら、当業者は本開示に照らして、多くの変化を、開示される具体的な実施形態において行うことができ、また、多くの変化が依然として、同じ結果または類似する結果を、本開示の精神および範囲から逸脱することなくもたらし得ることを理解しなければならない。
【0108】
(実施例1)
化学放射線療法誘発の組織炎症および瘢痕形成におけるプロトンポンプ阻害剤および使用方法
PPIは、ERK1のリン酸化、Nrf2自体のリン酸化、および/またはKeap1におけるスルフヒドリル基を攻撃し、Keap1−Nrf2複合体を解離させることを介してどちらでもNrf2の核移行を誘導することによってHO1を活性化する(図1)。単なる一例として、エソメプラゾールのクリームを調製し、デルマプラゾールと名づけた。図2は、配合し、貯蔵した30日後におけるデルマプラゾールの安定性を示す代表的なクロマトグラフィー(LC−MS)データを示す。ただ1つのピークは、デルマプラゾールが無傷であること(すなわち、分解していないこと)を示す。Nrf2のレベルを示すために、図3は、ベースライン(「RTなし」)時および14グレイ放射線照射後でのヒト3D皮膚モデルからの細胞抽出物の核画分におけるデルマプラゾール(1〜2%)によるNrf2の誘導を示すタンパク質発現データを提供する。ヒストンH3のタンパク質レベルが負荷対照として示され、抗Nrf2ウサギモノクローナル抗体(Abcam;ab62352、1:250)と、ヒストンH3に対するウサギポリクローナル(Abcam;ab1791;1:3000)とが使用される。図4は、ベースライン(「RTなし」)時および14グレイ放射線照射後でのヒト3D皮膚モデルからの全細胞抽出物におけるデルマプラゾール(1〜5%)によるHO1の誘導を示すタンパク質発現データを明らかにする。GAPDHのタンパク質レベルを負荷対照として使用した。
【0109】
放射線照射(14グレイ)を受けたヒト3D皮膚組織におけるデルマプラゾールによるERK1/2の活性化/リン酸化(pERK1/2)を明らかにするタンパク質発現データが、負荷対照としてのGAPDHのタンパク質レベルとともに図5に示される。14グレイ放射線照射後でのヒト3D皮膚モデル(EpiDermFT;MatTekCorporation)におけるデルマプラゾールによるNrf2およびHO1の誘導を明らかにする遺伝子発現データが図6において提供される。
【0110】
(実施例2)
外用エソメプラゾールは放射線誘発の皮膚炎症および線維症を緩和する
デルマプラゾールは、外観、色および臭気において一貫している均質な製造物である:デルマプラゾールのざらつき、色および臭気の経時的な発明者らの研究は、この製造物が、比較的安定した臭気と、濃度、温度および時間とともに暗い茶色に向かって強度を増大させる低い薬物濃度(0.01%〜2%)での薄茶色とを伴う均質な外観を有することを示す。貯蔵条件を室温から4℃に弱めること、容器をきつく閉じて保つこと、または酸化防止剤(0.1%のメタ重亜硫酸ナトリウム)を加えることが、製造物の当初の色を維持することを助けたので(データは示されず)、製造物の色における増大した強度は、部分的には酸化のためである。しかしながら、より高い薬物濃度(5%w/w超)を含有するデルマプラゾールは、より低い濃度の活性な薬物(0.01%〜4%w/w)を含有するデルマプラゾールよりも比較的それほど安定でないことが一貫して認められ、最大濃度(5%〜20%)では、暗い茶色または紫色に向かう急速な色変化が、室温で貯蔵したとき、または室内空気にさらされたときに示された。化学的安定性のこの明らかな欠如は、標的遺伝子の発現を調節できないことを含む生物学的活性の欠如と一致していた。デルマプラゾールのこれらの化学的特性および生物学的特性により、本発明者らの下流側の研究のほとんどが、関わる生物学的標的における安定性および再現性がより大きいことが見出されるより低い薬物濃度(1〜2%)に集中するようにさせられた。
【0111】
デルマプラゾールの物理化学的安定性:LC−MS研究は、クリームから回収されるエソメプラゾール分子の濃度がデルマプラゾール配合物の濃度に比例していることを示し、デルマプラゾールの最低濃度(すなわち、0.01%)は、エソメプラゾール分子の回収が最低であることと相関した(表1)。
【0112】
【表1】
【0113】
表1:LC−MSによるデルマプラゾールクリームからのエソメプラゾール濃度の測定。デルマプラゾールクリームから回収される平均エソメプラゾール濃度を、エソメプラゾール粉末を使用して作成される標準曲線から計算した。示されるデータは、二連の実験からのものである(平均±STD)。
【0114】
予想されるように、ビヒクル対照はエソメプラゾール分子の存在を示さなかった。加えて、クロマトグラムデータは、1か月の貯蔵の後(32日目)でのクリームにおけるエソメプラゾールについてのピーク強度および取得時間のシグナチャーが、新しく調製されたデルマプラゾールクリーム(0日目)のシグナチャー、およびクリームに配合されなかったエソメプラゾール粉末のシグナチャーとよく相関することを示した(図21)。一方、原子間力顕微鏡法での走査データからは、担体として使用されるクリーム基剤に十分に混和されるデルマプラゾールは、クリーム基剤単独と比較して、より硬く、それでいて、それほど接着性がないミセル様製造物を形成することが示された(図22)。
【0115】
デルマプラゾールの保持および透過性:本発明者らの薬物透過性研究は、デルマプラゾールの様々な濃度が、変わりやすい皮膚保持特性、同様にまた、真皮膜を介した透過性を時間の経過にわたって維持することを示した。より具体的には、Franz拡散セルの受容側区画における薬物濃度の測定から、非常に低いデルマプラゾール濃度(0.01%〜1%)は、ベースラインと比較して、経時的な受容側チャンバー内の薬物の濃度における感知できる増大を示さず、一方、非常に高いデルマプラゾール濃度(10%〜20%)は、時間とともに放出される薬物の量における著しい増大を示したことが明らかにされた(図15)。
【0116】
3Dヒト皮膚モデルにおけるデルマプラゾールによるNrf2−HO1経路の誘導:電離放射線にさらされた3D全層ヒト皮膚に対する24時間にわたるデルマプラゾールの外用塗布は、組織の真皮層におけるNrf2およびHO1の遺伝子発現(図8)およびタンパク質発現(図9)の堅固な誘導をもたらした。本発明者らの細胞内分画研究はまた、細胞の細胞質に生理学的に区画化されるNrf2が核内に移行することを示す(図9;上段パネル)。Nrf2の核移行についての可能な機構の1つがデルマプラゾールによるKeap1の阻害であるが、Keap1発現における検出可能な変化がデルマプラゾール処理時に認められなかった(図23)。興味深いことに、HO1の発現が放射線非照射のヒト皮膚において有意に誘導され(図10)、このことは、主要な抗酸化酵素HO1が、放射線および酸化ストレス応答にさらされたにもかかわらず、デルマプラゾールによってアップレギュレーションされ得ることを示唆した。
【0117】
放射線誘発皮膚炎を抑制することにおけるデルマプラゾールの効力:放射線誘発皮膚炎のマウスモデルからのデジタル写真データは、デルマプラゾールによる動物の処置が、放射線照射皮膚の肉眼的外観を16日目までに改善することにおける実質的効果を有しており、放射線照射部位での創傷の完全またはほぼ完全な治癒を30日目での研究の終了までに予防的デルマプラゾール群のどちらにおいても動物の60%超でもたらしたことを明らかにした(図11)。興味深いことに、総量の電離放射線にさらされた後でのデルマプラゾールの治療的投与もまた、創傷部の有意な閉鎖と、予防的経過でデルマプラゾールにより処置される動物の皮膚外観に匹敵する皮膚外観とをもたらした(図11)。一方、放射線照射部位をビヒクルクリームにより保湿することによってもまた、皮膚の外観が改善された。しかしながら、1%ヒドロコルチゾンによる処置は、創傷の治癒に対する効果がこのモデルにおける動物の90%において何らなく、結果として、コルチコステロイド群における動物は放射線照射後の16日および30日の両方で重度の皮膚壊死を有した(図11)。処置群を知らなかった委員会認定の皮膚科医により、皮膚炎の程度が、CTCAE規準(バージョン4.0)を使用して評価され、スコアづけされている。評価は、予防的または治療的に投与されたかにかかわらず、デルマプラゾールによる処置が皮膚炎の程度を16日目までに有意に低下させ、皮膚の外観を30日目までに正常化していることを示す(図24)。強皮症モデルにより、類似する結果が示される(図25)。
【0118】
デルマプラゾールは皮膚炎症を軽減する:組織学的証拠および遺伝子的証拠:デルマプラゾール処置時の皮膚外観における肉眼的改善と一致して、放射線照射部位から得られる皮膚組織のH&E染色により、デルマプラゾールによる予防的処置または治療的処置が表皮肥厚を16日目および30日目において軽減することが確認された(図12)。加えて、潰瘍形成、壊死、不全角化/痂皮および全体的炎症の組織学的スコアが、デルマプラゾール処置によって有意に低下した。これらのパラメーターのそれぞれについての計算された平均スコアは、予防的経過で投与される1%デルマプラゾールがステロイド対照との比較で16日目において潰瘍形成を15%低下させ、壊死を18%低下させ、不全角化症/痂皮を2分の1に低下させ、炎症を2分の1に低下させ、表皮肥厚を約6分の1に低下させたことを示した。勇気づけるように、この傾向が処置期間を通して継続し、30日目においてこれらをそれぞれ、2分の1に低下させ、5分の1に低下させ、88%低下させ、86%低下させ、86%低下させた(図S2)。同様に、2%の予防的デルマプラゾールはこれらのスコアをそれぞれ、30日目におけるステロイド対照との比較で、1.5分の1に低下させ、6.5分の1に低下させ、88%低下させ、1.3分の1に低下させ、100%低下させ、一方、2%の治療的デルマプラゾールはこれらの組織学的スコアをそれぞれ、1.3分の1に低下させ、4分の1に低下させ、70%低下させ、100%低下させ、80%低下させた。加えて、汎白血球マーカーCD11bおよびマクロファージ特異的マーカーF4/80についてのパラフィン包埋皮膚組織の免疫組織化学染色では、デルマプラゾールが傷害部位内へのこれらの細胞の動員を低下させることが示された(図26)。興味深いことに、デルマプラゾールは、類似する効力を強皮症モデルにおいて示した(図14Aおよび図14B)。
【0119】
加えて、炎症のマーカーをプローブ探査する遺伝子発現研究では、デルマプラゾール処置が、TNFα、IL1β、NFkB、TLR4、IL6、ICAM1、VCAM1およびiNOSを含む古典的な炎症促進性サイトカインの多くのmRNA発現を有意にダウンレギュレーションすることが確認された(図17A図17H)。
【0120】
デルマプラゾールは皮膚線維症を軽減する:免疫組織化学的証拠&遺伝子的証拠:放射線皮膚炎モデルから外植された皮膚組織におけるコラーゲンのマッソントリクローム染色は、デルマプラゾールによる処置が16日目および30日目でのコラーゲン蓄積をビヒクル対照またはコルチコステロイド対照との比較で顕著に低下させることを示し(図13)、このことは、線維化変化の阻害がデルマプラゾール処置のときにはより大きいことを示していた。トリクローム染色スコアは、線維化変化の程度がデルマプラゾール処置群では有意により低いことを示していた(図18)。同様に、皮膚線維症の程度が強皮症モデルにおいて低下した(図14B)。
【0121】
線維化促進マーカーについての遺伝子発現研究でもまた、デルマプラゾールが、TGFβ、DDAH1、コラーゲン1、コラーゲン3、コラーゲン5およびフィブロネクチンの発現を有意にダウンレギュレーションすることが確認された(図19A図19F)。
【0122】
デルマプラゾールはHO1の発現を皮膚炎モデルにおいて一時的にアップレギュレーションする:予想されるように、予防的過程または治療的過程での低用量または高用量のデルマプラゾールによるマウスの処置は、HO1の遺伝子発現を疾患ピーク(すなわち、16日目)において有意にアップレギュレーションした。このことが、主要な酸化促進酵素のNOX2およびNOX4の比較的低い発現によって反映された(図20A図20F)。しかしながら、抗酸化防御機構のこのアップレギュレーションは一時的であり、動物が電離放射線の影響から回復した後(すなわち、30日目)では鎮静化した。しかしながら、興味深いことに、放射線皮膚炎を30日目までに依然として表す動物(例えば、ステロイド群)は、HO1、すなわち、細胞ストレスによって誘発されることが知られている細胞保護分子(Choi、1996)の上昇したレベルをこの時点で有した(図20A図20F)。増大した細胞ストレスの表現型と一致しているのが、30日目まででのステロイド処置群におけるNOX2およびNOX4の非常に高いレベルである(図20A図20F)。まとめると、これらのデータセットにより、ステロイド群における動物はそれでもなお、部分的には高まった抗酸化防御機構を介して放射線誘発の酸化的負荷に対処し続けたことが示唆される。
【0123】
ある特定の実施形態の意義
【0124】
本開示は、PPIを放射線誘発合併症または化学放射線療法誘発合併症のために転用することを包含する。それに従って、エソメプラゾールを、真皮内に浸透し、皮膚を、潰瘍形成、壊死、炎症および線維症を含めて化学療法(ブレオマイシン)または電離放射線の有害な影響から保護することができ(図11図12図14図16図13図14図18図25および図26)、その結果、創傷部のほぼ完全な閉鎖をデルマプラゾール処置動物のほとんどにおいてもたらすことができる外用製造物に再配合した。予想外のことに、体毛もまた、皮膚の放射線非照射かつ未処置の領域と比較して、外観が灰色がかったにもかかわらず、デルマプラゾール処置動物では再び生長した(図11)。特筆すべきことに、デルマプラゾールの比較的低い濃度(1〜5%)は、配合されたより高い濃度(10〜20%)よりも安定であり、かつ、生物学的に活性であることが見出された。この現象はおそらくは、配合物におけるより高いエソメプラゾール含有量が空気酸化にさらされたためである。このことは、この化合物の化学構造におけるスルホキシド部分の存在と相まって、周囲温度での化合物の長期安定性についての問題となり得る。
【0125】
デルマプラゾールはエソメプラゾールの生物学的活性を保持する:エソメプラゾール粉末をLipoderm(登録商標)系クリームに配合することにより、エソメプラゾールの生物学的活性を保持する外用製造物、すなわち、デルマプラゾールを製造した。エソメプラゾール、すなわち、オメプラゾールのS−エナンチオマーは、胃食道逆流の処置のために広く使用されるPPIである。PPIの抗酸化作用は、ROSの直接的な除去および枯渇した内因性抗酸化物質の回復のためである(Biswas他、2003;Simon他、2006)。PPIの抗炎症作用は部分的には、古典的な炎症促進性分子のダウンレギュレーションおよび好中球の損なわれた遊走に起因している(Ghebremariam他、2015;Yoshida他、2000;Handa他、2006)。より近年では、PPIの抗線維化作用が、HO1のアップレギュレーション、細胞外マトリックス成分のダウンレギュレーション、および線維芽細胞増殖の直接的な阻害に起因していることが示される(Ghebremariam他、2015)。興味深いことに、PPIのこれらの胃外作用のすべてが、他の制酸剤(例えば、ヒスタミンH2受容体アンタゴニストなど)により再現できなかった(Ghebremariam他、2015;Yoshida他、2000;Ghebre他、2016)。したがって、胃外標的に対するPPIの作用はおそらくは、ベンゾイミダゾール部分がその構造において存在することに起因している。ベンゾイミダゾール骨格は特権的足場であると見なされ、様々なベンゾイミダゾール骨格が、100種類の最も売れている薬物の約25%についての基礎を形成している(Khokra他、2011)。本研究では、デルマプラゾールは、その配合されなかったアナログであるエソメプラゾールにも備わっている抗酸化作用、抗炎症作用および抗線維化作用を維持した。加えて、デルマプラゾールは耐容性が良好であり、体重、または心臓、肺、腎臓および肝臓の重量に対する有害な影響を何ら有していなかった(図27)。
【0126】
デルマプラゾールはDDAH−iNOS経路をエクスビボおよびインビボで真皮組織においてダウンレギュレーションする:最近の研究では、DDAH(あらゆる有核哺乳動物細胞によって発現される酵素)が炎症促進活性および線維化促進活性を支援していることが示されている。例えば、Pullamsetti他(Pullamsetti他、2011)は、ヒトDDAHを遺伝的に過剰発現するマウスモデルを使用し、このトランスジェニックマウスを化学療法薬物のブレオマイシンにさらすと、コラーゲンがより多く蓄積することを含めて、線維化応答が悪化し、一方、小分子によるDDAH阻害は線維化変化を抑制することを示した。同様に、他の研究では、線維芽細胞の増大した増殖および線維化組織の増強された再構築に関連するNOS経路の病理生物学的役割が指摘されている(Dooley他、2012)。最近発表されたデータは、PPIがDDAHおよびiNOSの両方を調節することを明らかにし(Ghebremariam他、2013;Ghebremariam他、2015)、ブレオマイシン誘発肺傷害のマウスモデルにおけるエソメプラゾールの全身投与は肺炎症および線維症を抑制することを明らかにする(Ghebremariam他、2015)。同様に、本データは、DDAHおよびiNOSの両方の発現が電離放射線によってアップレギュレーションされ、デルマプラゾールが真皮組織におけるそれらの発現を有意にダウンレギュレーションすることを示す(図17A図17Hおよび図19A図19F)。その一方で、電離放射線にさらされた後で血管内皮細胞によって典型的に発現される重要な生物学的分子(例えば、VCAM1、ICAM1)、ならびに免疫細胞によって典型的に発現される重要な生物学的分子(例えば、TLR4)の大幅なアップレギュレーションは、このモデルにおける放射線皮膚炎は血管障害および免疫機能障害を伴い得ることを示している。注目すべきことに、デルマプラゾールはこれらの分子の発現を都合良く調節した(図17A図17H)。
【0127】
エソメプラゾールおよび他のプロトンポンプ阻害剤は腫瘍細胞を化学感作する:皮膚炎に罹患したがん患者におけるデルマプラゾールの使用では、PPIの同時使用が、部分的には腫瘍を抗がん処置から保護することによってではあるが、化学放射線療法の抗腫瘍作用を損なうかどうかという問題が提起される。この懸念の一部が、文献において入手可能な既存のインビトロデータおよびインビボデータから対処され得る。例えば、Luciani他(2004)は、PPIのオメプラゾールおよびエソメプラゾールによる前処理が行われたときの28種の化学療法抵抗性ヒトがん細胞株の感受性を評価した。Luciani他は、メラノーマ、結腸がん、乳がんおよび卵巣がんに由来する細胞株をこれらのPPIにより前処理すると、PPI前処理がない対照と比較した場合、シスプラチン、ビンブラスチンおよび5−フルオロウラシルの化学療法剤についての半最大阻害濃度(IC50)値が何桁か低下することを見出した。加えて、彼らのインビボ研究では、移植腫瘍のPPIによる前処理がシスプラチンに対する腫瘍細胞の感受性を増大させ、その結果、腫瘍重量における有意な減少をもたらすことが明らかにされた。同様に、マウス、ネコおよびイヌにおけるいくつかの他の研究では、PPIによる前処理を行ったときの抗がん薬物に対する腫瘍細胞の感受性が大きくなることが明らかにされている(Ouar他、2003;Spugnini他、2011;Patel他、2013;Huang他、2013;Ferrari他、2013;Lindner他、2014;Goh他、2014)。しかしながら、本開示の方法の具体的な実施形態において、PPIはがん細胞の化学感作のためには利用されない。代替となる実施形態において、外用形態でのPPIががん細胞の化学感作のために利用される。
【0128】
したがって、特にメラノーマ細胞株および乳がん細胞株(これらは例としてのみである)に対するエソメプラゾールの作用は、これらの腫瘍を有する患者におけるデルマプラゾールによる皮膚炎の処置が、腫瘍細胞の増殖を阻害すること、および、根底にある腫瘍に対する抗がん治療の効力を増大させることを同時にもたらし得ること、このことは最終的には、デルマプラゾールを服用しているこれらの患者に処方される総化学放射線量を減らすことにつながり得ることを示している。この可能性に対するさらなる裏付けが、一部のメラノーマ細胞が、血管系に付着するために(Eibl他、2004)、VCAM1、すなわち、デルマプラゾールによって有意にダウンレギュレーションされる分子に依存し得るという観察結果(図17A図17H)からもたらされる。
【0129】
プロトンポンプ阻害剤はがん患者における生存を延長させる:前臨床モデルにおけるPPI処置時の化学療法薬物に対する固形腫瘍由来がん細胞の増大した感受性と一致して、臨床研究でもまた、PPIが、生存の延長を含む有益な成果に関連することが報告される。頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)の596名の患者の後向きコホートにおいて、Papagerakis他(2014)は、PPIを服用する患者は、従来の処置を受けている患者と比較して、有意により長い全生存期間を有することを見出した。同様に、他の研究でもまた、標準的ながん治療をPPIにより補うことが、増大した無増悪生存期間および全生存期間と関連することが見出された(Wang他、2017)。現在、PPIをがんにおける補助剤として評価する臨床試験が完了しているか、または進行中である(例えば、NCT01069081)。HNSCC処置の主要な課題の1つが標準治療に対して抵抗性であり、かつ、不良な全生存期間であることを考えると、容易に入手可能であり、かつ、耐容性が良好である薬物、例えば、PPIなどは、ある特定の実施形態においては有用である。加えて、デルマプラゾールなどの外用PPIは、具体的な実施形態においては、粘膜炎を含む化学放射線療法の一般的な有害作用を軽減し、生活の質および量をもしかすると改善するように、臨床的有用性をHNSCCにおいて有する。
【0130】
結論として、デルマプラゾール、すなわち、外用配合されたPPIのエソメプラゾールは、化学療法または電離放射線によって誘発される炎症および瘢痕形成を皮膚炎症および線維症の前臨床モデルにおいて肉眼的および微視的に軽減することができる。具体的な実施形態における放射線皮膚炎モデルでのデルマプラゾールの抗炎症作用および抗線維化作用は、内因性の抗酸化防御機構の早期誘導、ならびに炎症促進性機構および線維化促進機構のダウンレギュレーションのためである。デルマプラゾールにより調節される重要な分子経路のいくつかは、HO1−Nrf2、DDAH−iNOS、およびコラーゲンを含む。デルマプラゾールによるHO1分子およびNrf2分子の早期誘導が、化学療法または電離放射線によって引き起こされる酸化ストレスにおける初期急増に対処するように皮膚組織を準備するために予想される。続いて、炎症促進性サイトカインおよび線維化促進サイトカインを含めて、ROS、スーパーオキシドおよびヒドロキシルラジカルの下流側標的が厳しく調節される。皮膚組織の炎症および線維症に対するデルマプラゾールの顕著な効力、同様にまた、PPIの抗腫瘍活性は、ある特定の実施形態においては、がん治療誘発の炎症を軽減するために、一方で、根底にある腫瘍を化学/放射線感作するためにデルマプラゾールを有用にしている。他の実施形態において、デルマプラゾールは、炎症性および/または線維化の様々な様相によって特徴づけられる他の皮膚状態において、例えば、強皮症、アトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎およびリウマチ性疾患などにおいて有用である。特に、古典的な炎症促進性分子(例えば、TNFαなど)、自然免疫シグナル伝達(例えば、TLR4など)、および細胞外マトリックス(ECM)の成分(例えば、コラーゲンおよびフィブロネクチンなど)に対するデルマプラゾールの大きな作用(図17A図17H図18図19A図19F)は、特定の実施形態においては、放射線誘発の不都合を超えて、結合組織の疾患に至る配合物の効力を示している。
【0131】
材料および方法の例
【0132】
エソメプラゾールの配合:エソメプラゾールを放射線誘発の炎症および線維症の皮膚状態における潜在的適用のための外用製造物に開発するために、本発明者らはエソメプラゾール粉末をクリームに調合した。簡単に記載すると、エソメプラゾール粉末(98.5%超の純度)を重量測定し、乳鉢に入れた。表皮浸透を可能にするために、粉末をプロピレングリコールにより湿らせ、Lipoderm(60%)/バニシングクリーム(40%)経皮基剤と混合した。最後に、製造物(すなわち、デルマプラゾール)を、ざらつきを最小限に抑えるために軟膏ミルに通し、小さい容器に分配した。このプロトコルを使用して、本発明者らは、ビヒクルクリーム(クリーム基剤のみ)を含む配合物、ならびに、デルマプラゾールを0.01%、0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、10%および20%で含む種々の配合物を作製した。配合物の臭気、外観および色を、1日目、15日目および30日目に評価した。臭気を、欧州薬局方に記載されるように、すなわち、1.5グラムのクリームを60mmの時計皿に広げ、クリームのにおいを15分後にかぐことによって測定した。外観および色はどのような変化についてであっても1日目を参照した。薬物含有量を、下記で記載されるように液体クロマトグラフィー−質量分析法(LC−MS)を使用して定量化した。
【0133】
デルマプラゾールの物理化学的安定性を特徴づけること:LC−MSおよび原子間力顕微鏡法(AFM)を使用して、デルマプラゾールを特徴づけた。LC−MS研究のために、エソメプラゾール含有量をクリームのみの対照の存在下でクリームにおいて測定した。簡単に記載すると、200μlの水/メタノール(v/v、1:1)を10mgのクリームに加えた。10%および20%のデルマプラゾールについては、250μlの水/メタノール(v/v、1:4)を10mgのクリームに加えた。得られた混合物を5分間ボルテックスした。内部標準(IS)を含む氷冷メタノール(150μl)を、プラセボ、0.01%クリームおよび0.1%クリームからの得られた混合物の50μlに加え、また、1%クリームからの混合物の25μlに加え、続いて遠心分離を15000gで15分間行った。上記から得られる10%クリームおよび20%クリームからの混合物をメタノールにより16倍および32倍それぞれさらに希釈した。ISを含む氷冷メタノール(150μl)を、10%クリームおよび20%クリームからの希釈された混合物の50μlに加え、続いて遠心分離を15000gで15分間行った。プラセボ、0.01%クリーム、0.1%クリームからの上清を直接、分析のためにサンプルバイアルに移した。1%クリーム、10%クリームおよび20%クリームからの上清を、ISを含むメタノールで100倍さらに希釈した。5分の遠心分離の後、上清を分析のためにサンプルバイアルに移した。
【0134】
調製されたサンプル(それぞれ5μl)を分析のためにHPLC−MS/MS(Agilent Technologies、6490 QQQ Santa Clara、CA)に注入した。エソメプラゾールの分離を、50×2.1mm(Agilent ZORBAX SB−Aq)カラムを備える1290 Infinity LC System(Agilent Technologies、Santa Clara、CA)を使用して達成した。カラム温度を40℃で維持した。流速は0.3mL/分であり、8分でのグラジエントを実施した。グラジエントを、90%の緩衝液A(0.1%のギ酸を含むH2O)から始めて50%の緩衝液B(0.1%のギ酸を含むCH3CN)までを0分から6分まで実施し、50%の緩衝液Bを0.5分間保ち、50%の緩衝液Bから90%の緩衝液Aまでを6.5分から7分まで実施し、90%の緩衝液Aを7分から8分まで保って、カラムを再平衡化した。LC−MS/MSを多重反応モニタリング(MRM)モードとともにエレクトロスプレーイオン化(ESI)によるポジティブモードで操作した。超高純度窒素を乾燥用ガスおよび衝突ガスとして加えた。デルマプラゾールおよびエソメプラゾールIS対照についてのプリカーサ−・トウ・プロダクション・トランジション(precursor to production transition)は下記の通りであった:EL20については、m/z 346.1>198.1;ISについては、m/z 244.1>185.3。質量クロマトグラムおよび質量スペクトルをMassHunter Workstationデータ取得ソフトウェア(Agilent、Santa Clara、CA)によって取得し、データを三連四重極(QQQ)によって分析した。
【0135】
定量分析ソフトウェア(Agilent、Santa Clara、CA)。抽出イオンクロマトグラムピーク積分を、定量分析ソフトウェアに含まれるagile2インテグレーターによって行った。その一方で、デルマプラゾールのトポグラフィー、硬さおよび接着を、クリームを顕微鏡用スライドに広げ、超高解像度材料科学顕微鏡のMultiMode Atomic Force Microscope(Bruker Corporation、Billerica、MA)を使用する検査を行うことによって調べた。
【0136】
薬物透過研究:デルマプラゾール配合物からのエソメプラゾールのエクスビボ放出を、腹部領域から切除されるマウス皮膚を使用して調べた。簡単に記載すると、C57マウスをCO2吸入および胸郭の両側開口によって安楽死させ、その後、体毛を腹部領域から除いた。続いて、一片の腹部皮膚を切除し、下にある筋膜を、外科用はさみを使用して分離した。皮膚の完全性が維持されていること、および残存の脂肪組織および皮下組織がすべて除かれていることを目視により確認した。調製された皮をアルミホイルで包み、使用まで−80℃で貯蔵した。エクスビボ皮膚浸透研究を、Franz拡散セル(PermeGear、Hellertown、PA)を使用して実施した(Ng他、2010)。簡単に記載すると、切除した皮膚をセルの供与側区画と受容側区画との間に取り付け、これにより、0.64cmの面積を5mLのシンク体積にさらした。受容側区画は、シンク状態を維持するための拡散媒体としてのリン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)を含有し、その温度を37±0.5℃で維持した。調製された配合物(それぞれ40mg)を、綿棒を使用して供与側区画における皮膚に塗布し、均一に広げた。1時間毎に、20μLのサンプルを拡散セルのサンプル採取ポートから取り出し、等量のPBSを加えて、一定の総容量を維持した。エソメプラゾールの受容側チャンバー内への放出を、分光光度計を使用して経時的に測定した。
【0137】
エクスビボ研究:3Dヒト皮膚モデル:本研究のために、3次元(3D)ヒト皮膚モデル(EpiDermFT、MatTek Corporation、Ashland、MA)を供給者の推奨法に従って組織培養システムで培養した。簡単に記載すると、EpiDermFTは、表面積が1.0cmである機能的かつ代謝的に活性な再構成された皮膚をそれぞれのインサートが含有する単ウエル組織培養プレート用のインサートとして供給された(von Neubeck他、2012)。受け取ると、EpiDermFTを、37℃、5%COで24時間、EFT培地において平衡化した。実験を通して、EpiDermFTは、組織の真皮側が組織培養培地と接触し、表皮角質層側が空気にさらされる気液界面で6ウエル培養プレートにおいて維持された。24時間のインキュベーションの後、培養物には新鮮な培地を補充し、続いて、皮膚を、RS−2000 Biological Systemを使用して14グレイ(Gy)の電離(X線)放射線に、30cmの線源・皮膚距離で、かつ、1.2Gy/分(160kV)の割合でさらした。次に、組織を同じ培養培地においてさらに1時間インキュベーションし、その後、ビヒクルクリーム(陰性対照)、デルマプラゾール(1%〜20%)、または1%ヒドロコルチゾン(陽性対照)を先端表面に塗布した。24時間の外用処置の後、組織をホモジネートし、総RNAを、Direct−zol RNA Miniprep Kit(Zymo Research、Irvine、CA)を使用して単離した。続いて、RNAの濃度および品質を確認し、1μgの総RNAを、High Capacity RNA−to−cDNAキット(Applied Biosystems、Foster City、CA)を使用して逆転写した。得られたcDNAを定量的RT−PCRによる遺伝子発現研究のために使用した。定量的RT−PCR(qRT−PCR)を、下記で記載されるように、在庫の“best coverage”プライマー/プローブセット(ThermoFisher Scientific、Waltham、MA)を使用する標準的なTaqMan遺伝子発現アッセイを使用して行った。
【0138】
インビボ研究:放射線誘発皮膚炎のマウスモデル:30日間の試験を、放射線誘発皮膚炎を軽減することにおけるデルマプラゾールの効力を評価するためにC57BL/6Jマウス(Jackson Laboratories、Bar Harbor、ME)を使用して実施した。実験は、放射線を受けない1つの群(第1群)と、X線源からの放射線を受ける5つの群(第2群〜第6群)とからなった(表2)。
【0139】
【表2】
【0140】
表2:30日マウスモデルにおける電離放射線(IR)誘発皮膚炎の実験設計。群は脇腹が対照またはIRにさらされ、ビヒクルクリーム、低濃度(1%)または高濃度(2%)のデルマプラゾール(DERM)クリームを予防的経過または治療的経過で受けた。コルチコステロイドのヒドロコルチゾン(1%)が処置対照として含められた。N=動物数。Gy=グレイ単位での放射線量
【0141】
最初に、すべての動物を、電気シェーバーと脱毛クリームとを使用して脇腹領域から脱毛することによって実験のために準備した。剃毛手順からの皮膚刺激がないことを無作為化前に目視により確認した。24時間後、放射線を第2群〜第6群において動物の脇腹における事前に定められた領域(2×2cm)に送達した。皮膚炎を誘発するために、動物を、深い麻酔が達成されるまで、酸素中の4%イソフルランを使用して麻酔した。続いて、動物を、身体の残り部分を保護し、かつ、脇腹を、上記で記載される同じ設定を使用して研究の0日目および7日目に2回の15Gyとして分割される30Gyの総放射線量にさらすために鉛シールド(Braintree Scientific、Braintree、MA)のもとに置いた。デルマプラゾールを予防的経過(1日目から30日目までの処置スケジュール)および治療的経過(10日目から30日目までの処置スケジュール)で評価した。予防的経過については、デルマプラゾールの低用量(1%、第2群)および高用量(2%、第3群)を評価した。治療的経過(第4群)については、高用量のみを評価した。同様に、偽処置群(第1群)およびビヒクル群(第5群)を研究の0日目から開始して、活性薬物を含有しないプラセボクリームにより処置した。陽性の治療対照として、1%ヒドロコルチゾン(第6群)を0日目から開始して塗布した。放射線照射の日に、外用処置を1時間後に施した。すべての動物を安楽死まで1日に1回、処置した。
【0142】
皮膚炎の重症度をモニターするために、デジタル写真を、ベースライン、16日目(傷害のピークに達する予想された時間)および30日目(研究完了)において同じ設定で取り込んだ(Canon PowerShot ELPH 180)。写真は、下記の有害事象共通用語規準(CTCAE;バージョン4.0)(79)を使用して委員会認定の皮膚科医によって盲検法により評価され、スコア化された:0=正常な皮膚外観;1=軽度の紅斑;2=中等度から重度の紅斑;3=放射線照射領域の25%〜50%の落屑;4=50%を超える放射線照射領域の落屑;5=臨床的に明白な潰瘍。16日目において、外用処置した約3時間後に、群あたり5匹の動物(偽処置群を除く)を安楽死させ、皮膚サンプルを下にある筋肉組織と一緒に、遺伝子発現研究および組織病理学的研究のために放射線照射領域から採取した。同様に、すべての残る動物を研究の30日目に安楽死させた。一貫性については、動物の放射線照射皮膚を垂直切開によって2つの部分に分け、右側を組織病理学的研究のために使用し、左側を遺伝子発現研究およびタンパク質発現研究のために使用した。後者の研究のために、RNAと、タンパク質とを、NucleoSpin RNA/タンパク質キット(Macherey−Nagel、Bethlehem、PA)を製造者の推奨法に従って使用して同じサンプルから単離した。
【0143】
遺伝子発現研究:遺伝子発現研究のために、cDNAを上記で記載されるように作製し、qRT−PCRのために使用して、下記の遺伝子を含む、酸化ストレス、炎症および/または線維症において著しい役割を果たしていることが報告される遺伝子のmRNA発現に対するデルマプラゾールの影響を比較した:Nrf2、HO1、NADPHオキシダーゼ2(NOX2)、NOX4、iNOS、DDAH1、TNFα、NFκB、TGFβ、toll様受容体4(TLR4)、インターロイキン1ベータ(IL1β)、インターロイキン6(IL6)、細胞間接着分子1(ICAM1)、血管細胞接着分子1(VCAM1)、コラーゲン(1、3、5)およびフィブロネクチン。リボソームRNA 18S(18S rRNA)をこのアッセイのための内部対照として使用した。定量的RT−PCRを、10μLのTaqManユニバーサルPCRマスターミックス(2X)、プライマーおよびMGBプローブミックスを含有する1μLのTaqManアッセイ(20X)、3μLのcDNA、ならびに6μLの水を含有する20μLの最終体積で96ウエルプレートにおいて行った。反応を以下の条件のもとで行った:50℃で2分間のインキュベーション;95℃で10分間の変性、続いて95℃で15秒間の変性、そして、60℃で1分間のアニーリングおよび伸長を合計で40サイクルにわたって。操作を、CFXリアルタイムPCRシステム(Bio−Rad)を使用して行い、データを、CFX Maestroソフトウェアを使用して分析した。データが、18Sに対して正規化した後の偽処置対照に対する相対的遺伝子発現として示される。
【0144】
タンパク質発現研究:細胞質タンパク質と、核タンパク質とを、NE−PER核・細胞質抽出試薬キット(ThermoFisher Scientific)を使用して3Dヒト皮膚から分離した。タンパク質濃度を、Pierce(商標)BCAタンパク質アッセイキット(ThermoFisher Scientific)を使用して定量化し、30μgのそれぞれのタンパク質をウエスタンブロット分析のために負荷した。核タンパク質Nrf2(ウサギ抗Nrf2;Abcam ab62352;1:250)および細胞質タンパク質HO1(ウサギ抗HO1;Enzo Life Sciences BML−HC3001;1:500)の発現に対するデルマプラゾールの影響を、ビヒクル対照およびコルチコステロイド対照との比較で評価した。ヒストンH3(ウサギ抗H3;Abcam ab1791;1:3000)を核タンパク質発現についての内部対照として使用し、GAPDH(マウス抗GAPDH;ThermoFisher MA5−157381:5000)を細胞質タンパク質発現についての対照として使用した。動物組織サンプルについては、総タンパク質を上記で記載されるようにNucleoSpin RNA/タンパク質キットを使用して単離した。
【0145】
組織病理学的研究:この研究のために、放射線照射皮膚の右側からの生検物を10%中性緩衝ホルマリンにおいて固定処理し、免疫組織化学のためのスライドに処理した。固定処理された組織をパラフィン包埋し、4μmの厚さで切片化した。一組のスライドを、炎症および全体的な組織構造を評価するためにH&Eにより染色し、別の一組を、コラーゲン沈着の程度および線維化変化を調べるためにマッソントリクロームにより染色した。さらに二組のスライドを、炎症性細胞マーカーのCD11b(骨髄性白血球;Abcam ab133357;1:1000)およびF4/80(マクロファージ;Cell Signaling 70076S;1:250)について染色するために使用した。H&E染色スライドおよびトリクローム染色スライドを顕微鏡で調べ、炎症および線維症の程度についてそれぞれ段階づけた。委員会認定の皮膚病理学者が、表皮肥厚、ろ胞萎縮/肥大、炎症、コラーゲン肥厚、潰瘍、壊死、および不全角化/痂皮についての5段階スケールに基づいて盲検法様式で組織をスコア化した。これらのパラメーターのそれぞれについて、スコアは次のように定義された:0=正常な皮膚;1=最小限に検出可能;2=軽度;3=中程度;4=顕著;5=重度。
【0146】
強皮症のマウスモデル:上記の研究を補足するために、デルマプラゾールの効力を強皮症(コラーゲン蓄積によって特徴づけられる疾患)のマウスモデルにおいて評価した。このために、ブレオマイシン誘発の皮膚線維症の確立されたマウスモデル(54、55)を使用し、この場合、B.10.A.マウス(Jackson Laboratories)(n=4/群)が硫酸ブレオマイシン(3.3mg/kg/日)の皮下注射を研究の最初の4週間にわたって受けた。研究の21日目から開始して、動物には、アクアフォー、コルチコステロイド(0.1%モメタゾンフロエート)またはデルマプラゾール(1%または2%)による外用処置(1回/日)が剖検まで行われた。創傷部位の写真画像を比較のために撮った。加えて、皮膚組織を顕微鏡スライドに載せ、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)、ならびにマッソントリクロームについて染色した。
【0147】
統計学的分析:
【0148】
研究群あたりの動物の数を、power and sample size calculation(PS、バンダービルト大学)を使用して計算した。パラメトリックデータおよびノンパラメトリックデータの両方を、別途示される場合を除き、一元配置ANOVA(GraphPadプリズム;La Jolla、CA)によって分析した。多数のグループを、ANOVA、続いてボンフェローニ事後検定を使用して比較し、2つの群の間における差を、対応のないt検定を使用して比較した。すべてのデータが、別途示される場合を除き、平均±SEMとして表される。差は、pの値が0.05未満(p<0.05)であるとき、統計学的に有意であると見なされる。
【0149】
文献
Biswas, K., U. Bandyopadhyay, I. Chattopadhyay, A. Varadaraj, E. Ali, R. K. Banerjee, A novel antioxidant and antiapoptotic role of omeprazole to block gastric ulcer through scavenging of hydroxyl radical. J Biol Chem. 278, 10993-1001 (2003).
Bostrom, A., H. Lindman, C. Swartling, B. Berne, J. Bergh, Potent corticosteroid cream (mometasone furoate) significantly reduces acute radiation dermatitis: results from a double-blind, randomized study. Radiother Oncol. 59, 257-65 (2001).
Brach, M. A., H. J. Gruss, T. Kaisho, Y. Asano, T. Hirano, F. Herrmann, Ionizing radiation induces expression of interleukin 6 by human fibroblasts involving activation of nuclear factor-kappa B. J Biol Chem. 268, 8466-72 (1993).
Brown K. R., E. Rzucidlo, Acute and chronic radiation injury. J Vasc Surg. 53, 15S-21S (2011).
Campbell, I. R., M. H. Illingworth, Can patients wash during radiotherapy to the breast or chest wall? A randomized controlled trial. Clin Oncol (R Coll Radiol). 4, 78-82 (1992).
Chan, R. J., J. Webster, B. Chung, L. Marquart, M. Ahmed, S. Garantziotis, Prevention and treatment of acute radiation-induced skin reactions: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. BMC Cancer. 14, 53 (2014).
Chen, A. P., A. Setser, M. J. Anadkat, J. Cotliar, E. A. Olsen, B. C. Garden, M. E. Lacouture, Grading dermatologic adverse events of cancer treatments: the Common Terminology Criteria for Adverse Events Version 4.0. J Am Acad Dermatol. 67, 1025-39 (2012).
Chen, Y. P., N. M. Tsang, C. K. Tseng, S. Y. Lin, Causes of interruption of radiotherapy in nasopharyngeal carcinoma patients in Taiwan. Jpn J Clin Oncol. 30, 230-4 (2000).
Coondoo, A., M. Phiske, S. Verma, K. Lahiri, Side-effects of topical steroids: A long overdue revisit. Indian Dermatol Online J. 5, 416-25 (2014).
Cox, J. D., J. Stetz, T. F. Pajak, Toxicity criteria of the Radiation Therapy Oncology Group (RTOG) and the European Organization for Research and Treatment of Cancer (EORTC). Int J Radiat Oncol Biol Phys. 31, 1341-6 (1995).
Dooley, A., K. R. Bruckdorfer, D. J. Abraham, Modulation of fibrosis in systemic sclerosis by nitric oxide and antioxidants. Cardiol Res Pract. 2012, 521958 (2012).
Eibl, R. H., M. Benoit, Molecular resolution of cell adhesion forces. IEE Proc Nanobiotechnol. 151, 128-32 (2004).
Elliott, E. A., J. R. Wright, R. S. Swann, F. Nguyen-Tan, C. Takita, M. K. Bucci, A. S. Garden, H. Kim, E. B. Hug, J. Ryu, M. Greenberg, J. P. Saxton, K. Ang, L. Berk, T. Radiation Therapy Oncology Group, Phase III Trial of an emulsion containing trolamine for the prevention of radiation dermatitis in patients with advanced squamous cell carcinoma of the head and neck: results of Radiation Therapy Oncology Group Trial 99-13. J Clin Oncol. 24, 2092-7 (2006).
Ferrari, S., F. Perut, F. Fagioli, A. Brach Del Prever, C. Meazza, A. Parafioriti, P. Picci, M. Gambarotti, S. Avnet, N. Baldini, S. Fais, Proton pump inhibitor chemosensitization in human osteosarcoma: from the bench to the patients' bed. J Transl Med. 11, 268 (2013).
Gamulin, M., V. Garaj-Vrhovac, N. Kopjar, Evaluation of DNA damage in radiotherapy-treated cancer patients using the alkaline comet assay. Coll Antropol. 31, 837-45 (2007).
Ghebre Y. T., G. Raghu, Idiopathic Pulmonary Fibrosis: Novel Concepts of Proton Pump Inhibitors as Antifibrotic Drugs. Am J Respir Crit Care Med. 193, 1345-52 (2016).
Ghebremariam, Y. T., J. P. Cooke, W. Gerhart, C. Griego, J. B. Brower, M. Doyle-Eisele, B. C. Moeller, Q. Zhou, L. Ho, J. de Andrade, G. Raghu, L. Peterson, A. Rivera, G. D. Rosen, Pleiotropic effect of the proton pump inhibitor esomeprazole leading to suppression of lung inflammation and fibrosis. J Transl Med. 13, 249 (2015).
Ghebremariam, Y. T., P. LePendu, J. C. Lee, D. A. Erlanson, A. Slaviero, N. H. Shah, J. Leiper, J. P. Cooke, Unexpected effect of proton pump inhibitors: elevation of the cardiovascular risk factor asymmetric dimethylarginine. Circulation. 128, 845-53 (2013).
Glees, J. P., H. Mameghan-Zadeh, C. G. Sparkes, Effectiveness of topical steroids in the control of radiation dermatitis: a randomised trial using 1% hydrocortisone cream and 0.05% clobetasone butyrate (Eumovate). Clin Radiol. 30, 397-403 (1979).
Goh, W., I. Sleptsova-Freidrich, N. Petrovic, Use of proton pump inhibitors as adjunct treatment for triple-negative breast cancers. An introductory study. J Pharm Sci. 17, 439-46 (2014).
Halnan, K. E., The effect of corticosteroids on the radiation skin reaction. A random trial to assess the value of local application of prednisolone and neomycin ointment after x-ray treatment of basal cell carcinoma. Br J Radiol. 35, 403-8 (1962).
Handa, O., N. Yoshida, N. Fujita, Y. Tanaka, M. Ueda, T. Takagi, S. Kokura, Y. Naito, T. Okanoue, T. Yoshikawa, Molecular mechanisms involved in anti-inflammatory effects of proton pump inhibitors. Inflamm Res. 55, 476-80 (2006).
Ho, A. Y., M. Olm-Shipman, Z. Zhang, C. T. Siu, M. Wilgucki, A. Phung, B. B. Arnold, M. Porinchak, M. Lacouture, B. McCormick, S. N. Powell, D. Y. Gelblum, A Randomized Trial of Mometasone Furoate 0.1% to Reduce High-Grade Acute Radiation Dermatitis in Breast Cancer Patients Receiving Postmastectomy Radiation. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 101, 325-333 (2018).
Huang, S., M. Chen, X. Ding, X. Zhang, X. Zou, Proton pump inhibitor selectively suppresses proliferation and restores the chemosensitivity of gastric cancer cells by inhibiting STAT3 signaling pathway. Int Immunopharmacol. 17, 585-92 (2013).
Khokra SL, Choudhary D, Benzimidazole An Important Scaffold In Drug Discovery. Asian Journal of Biochemical and Pharmaceutical Research. 1, 476-486 (2011).
Lindner, K., C. Borchardt, M. Schopp, A. Burgers, C. Stock, D. J. Hussey, J. Haier, R. Hummel, Proton pump inhibitors (PPIs) impact on tumour cell survival, metastatic potential and chemotherapy resistance, and affect expression of resistance-relevant miRNAs in esophageal cancer. J Exp Clin Cancer Res. 33, 73 (2014).
Lomax, M. E., L. K. Folkes, P. O'Neill, Biological consequences of radiation-induced DNA damage: relevance to radiotherapy. Clin Oncol (R Coll Radiol). 25, 578-85 (2013).
Lopez, E., R. Guerrero, M. I. Nunez, R. del Moral, M. Villalobos, J. Martinez-Galan, M. T. Valenzuela, J. A. Munoz-Gamez, F. J. Oliver, D. Martin-Oliva, J. M. Ruiz de Almodovar, Early and late skin reactions to radiotherapy for breast cancer and their correlation with radiation-induced DNA damage in lymphocytes. Breast Cancer Res. 7, R690-8 (2005).
Luciani, F., M. Spada, A. De Milito, A. Molinari, L. Rivoltini, A. Montinaro, M. Marra, L. Lugini, M. Logozzi, F. Lozupone, C. Federici, E. Iessi, G. Parmiani, G. Arancia, F. Belardelli, S. Fais, Effect of proton pump inhibitor pretreatment on resistance of solid tumors to cytotoxic drugs. J Natl Cancer Inst. 96, 1702-13 (2004).
Macmillan, M. S., M. Wells, S. MacBride, G. M. Raab, A. Munro, H. MacDougall, Randomized comparison of dry dressings versus hydrogel in management of radiation-induced moist desquamation. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 68, 864-72 (2007).
Mendelsohn, F. A., C. M. Divino, E. D. Reis, M. D. Kerstein, Wound care after radiation therapy. Adv Skin Wound Care. 15, 216-24 (2002).
McCloskey, S. A., W. Jaggernauth, N. R. Rigual, W. L. Hicks, Jr., S. R. Popat, M. Sullivan, T. L. Mashtare, Jr., M. K. Khan, T. R. Loree, A. K. Singh, Radiation treatment interruptions greater than one week and low hemoglobin levels (12 g/dL) are predictors of local regional failure after definitive concurrent chemotherapy and intensity-modulated radiation therapy for squamous cell carcinoma of the head and neck. Am J Clin Oncol. 32, 587-91 (2009).
Miller, R. C., D. J. Schwartz, J. A. Sloan, P. C. Griffin, R. L. Deming, J. C. Anders, T. J. Stoffel, R. E. Haselow, P. L. Schaefer, J. D. Bearden, 3rd, P. J. Atherton, C. L. Loprinzi, J. A. Martenson, Mometasone furoate effect on acute skin toxicity in breast cancer patients receiving radiotherapy: a phase III double-blind, randomized trial from the North Central Cancer Treatment Group N06C4. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 79, 1460-6 (2011).
Mukherjee, D., P. J. Coates, S. A. Lorimore, E. G. Wright, Responses to ionizing radiation mediated by inflammatory mechanisms. J Pathol. 232, 289-99 (2014).
Muller K., V. Meineke, Radiation-induced alterations in cytokine production by skin cells. Exp Hematol. 35, 96-104 (2007).
Ng, S. F., J. J. Rouse, F. D. Sanderson, V. Meidan, G. M. Eccleston, Validation of a static Franz diffusion cell system for in vitro permeation studies. AAPS PharmSciTech. 11, 1432-41 (2010).
Okunieff, P., J. Xu, D. Hu, W. Liu, L. Zhang, G. Morrow, A. Pentland, J. L. Ryan, I. Ding, Curcumin protects against radiation-induced acute and chronic cutaneous toxicity in mice and decreases mRNA expression of inflammatory and fibrogenic cytokines. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 65, 890-8 (2006).
Omidvari, S., H. Saboori, M. Mohammadianpanah, A. Mosalaei, N. Ahmadloo, M. A. Mosleh-Shirazi, F. Jowkar, S. Namaz, Topical betamethasone for prevention of radiation dermatitis. Indian J Dermatol Venereol Leprol. 73, 209 (2007).
Ouar, Z., M. Bens, C. Vignes, M. Paulais, C. Pringel, J. Fleury, F. Cluzeaud, R. Lacave, A. Vandewalle, Inhibitors of vacuolar H+-ATPase impair the preferential accumulation of daunomycin in lysosomes and reverse the resistance to anthracyclines in drug-resistant renal epithelial cells. Biochem J. 370, 185-93 (2003).
Papagerakis, S., E. Bellile, L. A. Peterson, M. Pliakas, K. Balaskas, S. Selman, D. Hanauer, J. M. Taylor, S. Duffy, G. Wolf, Proton pump inhibitors and histamine 2 blockers are associated with improved overall survival in patients with head and neck squamous carcinoma. Cancer Prev Res (Phila). 7, 1258-69 (2014).
Patel, K. J., C. Lee, Q. Tan, I. F. Tannock, Use of the proton pump inhibitor pantoprazole to modify the distribution and activity of doxorubicin: a potential strategy to improve the therapy of solid tumors. Clin Cancer Res. 19, 6766-76 (2013).
Pullamsetti, S. S., R. Savai, R. Dumitrascu, B. K. Dahal, J. Wilhelm, M. Konigshoff, D. Zakrzewicz, H. A. Ghofrani, N. Weissmann, O. Eickelberg, A. Guenther, J. Leiper, W. Seeger, F. Grimminger, R. T. Schermuly, The role of dimethylarginine dimethylaminohydrolase in idiopathic pulmonary fibrosis. Sci Transl Med. 3, 87ra53 (2011).
Putora, P.M., M. Schmuecking, D. Aebersold, L. Plasswilm, Compensability index for compensation radiotherapy after treatment interruptions. Radiat Oncol. 7, 208 (2012).
Richardson, J., J. E. Smith, M. McIntyre, R. Thomas, K. Pilkington, Aloe vera for preventing radiation-induced skin reactions: a systematic literature review. Clin Oncol (R Coll Radiol). 17, 478-84 (2005).
Roy, I., A. Fortin, M. Larochelle, The impact of skin washing with water and soap during breast irradiation: a randomized study. Radiother Oncol. 58, 333-9 (2001).
Schmuth, M., M. A. Wimmer, S. Hofer, A. Sztankay, G. Weinlich, D. M. Linder, P. M. Elias, P. O. Fritsch, E. Fritsch, Topical corticosteroid therapy for acute radiation dermatitis: a prospective, randomized, double-blind study. Br J Dermatol. 146, 983-91 (2002).
Simon, W. A., E. Sturm, H. J. Hartmann, U. Weser, Hydroxyl radical scavenging reactivity of proton pump inhibitors. Biochem Pharmacol. 71, 1337-41 (2006).
Sitton, E., Early and late radiation-induced skin alterations. Part II: Nursing care of irradiated skin. Oncol Nurs Forum. 19, 907-12 (1992).
Spugnini, E. P., A. Baldi, S. Buglioni, F. Carocci, G. M. de Bazzichini, G. Betti, I. Pantaleo, F. Menicagli, G. Citro, S. Fais, Lansoprazole as a rescue agent in chemoresistant tumors: a phase I/II study in companion animals with spontaneously occurring tumors. J Transl Med. 9, 221 (2011).
Trotti, A., R. Byhardt, J. Stetz, C. Gwede, B. Corn, K. Fu, L. Gunderson, B. McCormick, M. Morrisintegral, T. Rich, W. Shipley, W. Curran, Common toxicity criteria: version 2.0. an improved reference for grading the acute effects of cancer treatment: impact on radiotherapy. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 47, 13-47 (2000).
Ulff, E., M. Maroti, J. Serup, U. Falkmer, A potent steroid cream is superior to emollients in reducing acute radiation dermatitis in breast cancer patients treated with adjuvant radiotherapy. A randomised study of betamethasone versus two moisturizing creams. Radiother Oncol. 108, 287-92 (2013).
U.S. DEPARTMENT OF HEALTH AND HUMAN SERVICES. Common Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE) Version 4.0. National Cancer Institute, (2009).
von Neubeck, C., H. Shankaran, N. J. Karin, P. M. Kauer, W. B. Chrisler, X. Wang, R. J. Robinson, K. M. Waters, S. C. Tilton, M. B. Sowa, Cell type-dependent gene transcription profile in a three-dimensional human skin tissue model exposed to low doses of ionizing radiation: implications for medical exposures. Environ Mol Mutagen. 53, 247-59 (2012).
Wells, M., M. Macmillan, G. Raab, S. MacBride, N. Bell, K. MacKinnon, H. MacDougall, L. Samuel, A. Munro, Does aqueous or sucralfate cream affect the severity of erythematous radiation skin reactions? A randomised controlled trial. Radiother Oncol. 73, 153-62 (2004).
Yoshida, N., T. Yoshikawa, Y. Tanaka, N. Fujita, K. Kassai, Y. Naito, M. Kondo, A new mechanism for anti-inflammatory actions of proton pump inhibitors--inhibitory effects on neutrophil-endothelial cell interactions. Aliment Pharmacol Ther. 14 Suppl 1, 74-81 (2000).
Wang, X., C. Liu, J. Wang, Y. Fan, Z. Wang, Y. Wang, Proton pump inhibitors increase the chemosensitivity of patients with advanced colorectal cancer. Oncotarget. 8, 58801-58808 (2017).
【0150】
本開示およびその利点が詳しく説明されているが、様々な変化、置換および変更が、添付された請求項によって規定されるような設計の精神および範囲から逸脱することなく本明細書中において行われ得ることを理解しなければならない。そのうえ、本出願の範囲は、本明細書に記載されるプロセス、装置、製造、組成物、手段、方法および工程の特定の実施形態に限定されることは意図されない。当業者は本開示から容易に理解するであろうように、本明細書中に記載される対応する実施形態と実質的に同じ機能を果たす、または本明細書中に記載される対応する実施形態と実質的に同じ結果を達成するプロセス、装置、製造、組成物、手段、方法または工程は、現在存在するものであろうと、または後に開発されることなるものであろうと、本開示に従って利用される場合がある。したがって、添付された請求項は、そのようなプロセス、装置、製造、組成物、手段、方法または工程をその範囲内に含むことが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16A
図16B
図17A
図17B
図17C
図17D
図17E
図17F
図17G
図17H
図18
図19A
図19B
図19C
図19D
図19E
図19F
図20A
図20B
図20C
図20D
図20E
図20F
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
【手続補正書】
【提出日】2020年10月28日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がん治療により誘発される組織炎症、皮膚炎、瘢痕形成、皮膚線維症、皮膚の移植片対宿主病、強皮症、混合性結合組織病(MCTD)、関節リウマチ(RA)、狼瘡、多発性筋炎、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、レイノー病、口腔粘膜炎;非口腔粘膜炎;直腸炎、腸炎、大腸炎、食道炎、尿路炎症、あらゆる種類の火傷、凍傷または寒冷傷害、化学物質誘発皮膚炎、植皮、移植組織、形成手術または美容手術、あらゆる種類または原因の瘢痕形成、ケロイド;塩素ざ瘡;ざ瘡;しわ皮膚;老化皮膚;皮膚の酸化ストレス;日焼け;光損傷;皮膚バリア保護;皮膚バリア光保護;皮膚がん;乾癬;白斑;アレルギー性皮膚炎;アトピー性皮膚炎;あらゆる種類または原因の炎症性皮膚状態;創傷治癒;放射線誘発の皮膚炎症;線維症;過角化症;かゆみ;ならびに/あるいはアフタ性潰瘍を個体において処置または予防する方法であって、前記個体に有効量の1つまたは複数のプロトンポンプ阻害剤を投与する工程を含む、方法。
【請求項2】
前記がん治療が、化学療法、放射線、手術、1つまたは複数のホルモン剤、1つまたは複数のチロシンキナーゼ阻害剤、1つまたは複数のモノクローナル抗体、1つまたは複数の免疫チェックポイント阻害剤、あるいはそれらの組合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記投与することが全身的または局所的に行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記プロトンポンプ阻害剤が単独で、あるいは1つまたは複数の他の薬剤との組合わせで配合される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記1つまたは複数の他の薬剤が、1つまたは複数のがん薬物、1つまたは複数のコルチコステロイド、1つまたは複数の抗生物質、亜鉛、アミホスチン、シルバーリーフナイロン包帯材、1つまたは複数の疼痛緩和剤、あるいはそれらの組合わせを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記プロトンポンプ阻害剤が局所投与のために配合される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記プロトンポンプ阻害剤が外用投与のために配合される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記プロトンポンプ阻害剤が消化管外への投与のために配合される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記プロトンポンプ阻害剤が胃のためではない投与のために配合される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記局所投与が、肺、粘膜、皮膚、直腸、腸、食道および/または血管に対してである、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記1つまたは複数のプロトンポンプ阻害剤が、液剤、トローチ、坐剤、クリーム、固形剤、錠剤、丸剤、エアロゾル剤、ゲル剤、フィルム剤、発泡剤、軟膏、ペースト、クリーム、ゲル剤、粉末剤、滴剤、懸濁物、またはそれらの組合わせとして配合される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記1つまたは複数のプロトンポンプ阻害剤が、化学療法、放射線療法または両方を施す前に、化学療法、放射線療法または両方を施している期間中に、ならびに/あるいは化学療法、放射線療法または両方を施した後で投与される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
プロトンポンプ阻害剤が、オメプラゾール、ランソプラゾール、デクスランソプラゾール、エソメプラゾール、パントプラゾール、ラベプラゾール、イラプラゾール、またはそれらの組合わせである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記化学療法が、ブレオマイシン、カルボプラチン、シスプラチン、ドキソルビシン、エトポシド、マイトマイシン、セツキシマブ、ゲムシタビン、カペシタビン、5−フルオロウラシル、パクリタキセル、またはそれらの組合わせである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
化学療法、放射線または両方を施す工程をさらに含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
プロトンポンプ阻害剤の濃度が1%〜100%w/wの範囲である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
プロトンポンプ阻害剤の濃度が20%w/w以下である、請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記個体が、化学療法誘発および/または放射線療法誘発の組織炎症、皮膚炎、瘢痕形成および/または皮膚線維症を有するか、あるいはその危険性があり、かつ、前記プロトンポンプ阻害剤が、外用配合されるエソメプラゾールである、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】