(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-516414(P2021-516414A)
(43)【公表日】2021年7月1日
(54)【発明の名称】リチウム二次電池負極活物質添加剤用の炭素質材料
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20210604BHJP
C01B 32/00 20170101ALI20210604BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
C01B32/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-518403(P2020-518403)
(86)(22)【出願日】2019年11月13日
(85)【翻訳文提出日】2020年3月30日
(86)【国際出願番号】KR2019015425
(87)【国際公開番号】WO2020166792
(87)【国際公開日】20200820
(31)【優先権主張番号】10-2019-0017950
(32)【優先日】2019年2月15日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】516208307
【氏名又は名称】エキョンペトロケミカル シーオー.,エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】AEKYUNGPETROCHEMICAL CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】特許業務法人ナガトアンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】リー, ジャン ホ
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ビョン モク
(72)【発明者】
【氏名】チョ, サン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】リー, ドン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン, スー ビン
【テーマコード(参考)】
4G146
5H050
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AB01
4G146AB05
4G146AC02A
4G146AC02B
4G146AC07A
4G146AC07B
4G146AC13A
4G146AC13B
4G146AC14A
4G146AC14B
4G146AD23
4G146AD25
4G146BA13
4G146BA15
4G146BC03
4G146CB02
4G146CB10
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA12
5H050BA17
5H050CB08
5H050DA10
5H050EA08
5H050GA02
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA07
(57)【要約】
リチウム二次電池負極活物質添加剤用の炭素質材料に関し、D
v50が6μm以下であり、D
n50が1μm以下である、リチウム二次電池負極活物質添加剤用の炭素質材料を提供することができる。
本発明の一態様のリチウム二次電池負極活物質添加剤用の炭素質材料によると、これを採用した負極に速い速度でリチウムイオンを吸蔵および脱離させることができることから、これを含むリチウム二次電池の出力特性が向上し、充放電の繰り返しによっても容量の低下が少ないため、優れた寿命特性を有することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Dv50が6μm以下であり、Dn50が1μm以下である、リチウム二次電池負極活物質添加剤用の炭素質材料。
(前記Dv50は、レーザ散乱法による粒度分布測定で、小さい粒径から累積体積が50%になったときの粒径を意味し、前記Dn50は、レーザ散乱法による粒度分布測定で、小さい粒径から累積粒子個数が50%になったときの粒径を意味する。)
【請求項2】
前記炭素質材料は、Dv10が2.2μm以下であり、Dn10が0.6μm以下である、請求項1に記載のリチウム二次電池負極活物質添加剤用の炭素質材料。
(前記Dv10は、レーザ散乱法による粒度分布測定で、小さい粒径から累積体積が10%になったときの粒径を意味し、前記Dn10は、レーザ散乱法による粒度分布測定で、小さい粒径から累積粒子個数が10%になったときの粒径を意味する。)
【請求項3】
前記炭素質材料は、Dv90が11μm以下であり、Dn90が3μm以下である、請求項1に記載のリチウム二次電池負極活物質添加剤用の炭素質材料。
(前記Dv90は、レーザ散乱法による粒度分布測定で、小さい粒径から累積体積が90%になったときの粒径を意味し、前記Dn90は、レーザ散乱法による粒度分布測定で、小さい粒径から累積粒子個数が90%になったときの粒径を意味する。)
【請求項4】
前記炭素質材料は、BET比表面積が3m2/g以上10m2/g以下である、請求項1に記載のリチウム二次電池負極活物質添加剤用の炭素質材料。
【請求項5】
前記炭素質材料は、X線回折法によって求められる(002)平均層面間隔(d(002))が3.4Å以上4.0Å以下である、請求項1に記載のリチウム二次電池負極活物質添加剤用の炭素質材料。
【請求項6】
前記炭素質材料は、C軸方向の結晶子径Lc(002)が0.8nm以上2nm以下である、請求項1に記載のリチウム二次電池負極活物質添加剤用の炭素質材料。
【請求項7】
前記炭素質材料は、炭素系負極活物質に添加され、前記炭素質材料の添加量が、前記炭素系負極活物質および炭素質材料の総量100重量%に対して5重量%以下になるように添加される、請求項1に記載のリチウム二次電池負極活物質添加剤用の炭素質材料。
【請求項8】
前記炭素質材料は、ポリオール100重量部に対して、イソシアネートが150重量部以上240重量部以下含まれるポリウレタン樹脂を不活性気体雰囲気下で熱処理して炭素化した炭化物を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池負極活物質添加剤用の炭素質材料。
【請求項9】
前記ポリオールは、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールポリオール、ポリ尿素分散(Polyharnstoff Dispersion(PHD))ポリオール、アミン変性ポリオール、マンニッヒポリオールおよびこれらの混合物から選択されるいずれか一つまたは二つ以上である、請求項8に記載のリチウム二次電池負極活物質添加剤用の炭素質材料。
【請求項10】
前記イソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4´‐ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、ポリエチレンポリフェニルイソシアネート、トルエンジイソシアネート(TDI)、2,2´‐ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2´‐MDI)、2,4´‐ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4´‐MDI)、4,4´‐ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4´‐MDI、monomeric MDI)、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(polymeric MDI)、オルトトルイジンジイソシアネート(TODI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、リジンジイソシアネート(LDI)およびトリフェニルメタントリイソシアネート(TPTI)から選択されるいずれか一つまたは二つ以上である、請求項8に記載のリチウム二次電池負極活物質添加剤用の炭素質材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池に関し、より詳細には、リチウム二次電池負極活物質添加剤用の炭素質材料に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、電気自動車の商用化のために、航続距離を増加させるための電池の高容量化に関する研究が活発に行われている。
【0003】
リチウム二次電池の負極活物質としてよく使用されている黒鉛の場合、低い理論容量を有するため航続距離を増加させるには限界があり、Si系負極活物質など、新たな高容量負極活物質を適用しようとする試みが活発に行われている。
【0004】
しかし、かかる研究は、まだ商用化されるには十分でなく、商用化まで多くの時間がかかる状況である。
【0005】
そのため、電気自動車の商用化を早めるために、他の方法として、航続距離を増加させる代わりに充放電速度を向上させる方向への接近が考えられる。
【0006】
充放電速度を向上させるためには、リチウム二次電池の負極に速い速度でリチウムイオンを吸蔵および脱離させる必要があるが、黒鉛の場合、大電流の入力特性の実現が困難で急速充放電が難しく、寿命特性が良好でないという問題がある。
【0007】
したがって、優れた出力特性を有することで急速充放電が可能で、且つ優れた寿命特性を実現できる新たな負極関連素材に関する開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一態様は、出力特性が向上し、優れた寿命特性を実現できるリチウム二次電池負極活物質添加剤用の炭素質材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、D
v50が6μm以下であり、D
n50が1μm以下である、リチウム二次電池負極活物質添加剤用の炭素質材料を提供する。
【0010】
前記D
v50は、レーザ散乱法による粒度分布測定で、小さい粒径から累積体積が50%になったときの粒径を意味し、前記D
n50は、レーザ散乱法による粒度分布測定で、小さい粒径から累積粒子個数が50%になったときの粒径を意味する。
【0011】
前記炭素質材料は、D
v10が2.2μm以下であり、D
n10が0.6μm以下であってもよい。
【0012】
前記D
v10は、レーザ散乱法による粒度分布測定で、小さい粒径から累積体積が10%になったときの粒径を意味し、前記D
n10は、レーザ散乱法による粒度分布測定で、小さい粒径から累積粒子個数が10%になったときの粒径を意味する。
【0013】
前記炭素質材料は、D
v90が11μm以下であり、D
n90が3μm以下であってもよい。
【0014】
前記D
v90は、レーザ散乱法による粒度分布測定で、小さい粒径から累積体積が90%になったときの粒径を意味し、前記D
n90は、レーザ散乱法による粒度分布測定で、小さい粒径から累積粒子個数が90%になったときの粒径を意味する。
【0015】
前記炭素質材料は、BET比表面積が3m
2/g以上10m
2/g以下であってもよい。
【0016】
前記炭素質材料は、X線回折法によって求められる(002)平均層面間隔(d(002))が3.4Å以上4.0Å以下であってもよい。
【0017】
前記炭素質材料は、C軸方向の結晶子径Lc(002)が0.8nm以上2nm以下であってもよい。
【0018】
前記炭素質材料は、炭素系負極活物質に添加され、前記炭素質材料の添加量が、前記炭素系負極活物質および炭素質材料の総量100重量%に対して5重量%以下になるように添加されてもよい。
【0019】
前記炭素質材料は、ポリオール100重量部に対して、イソシアネートが150重量部以上240重量部以下含まれるポリウレタン樹脂を不活性気体雰囲気下で熱処理して炭素化した炭化物を含んでもよい。
【0020】
前記ポリオールは、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールポリオール、ポリ尿素分散(Polyharnstoff Dispersion(PHD))ポリオール、アミン変性ポリオール、マンニッヒポリオールおよびこれらの混合物から選択されるいずれか一つまたは二つ以上であってもよい。
【0021】
前記イソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4´‐ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、ポリエチレンポリフェニルイソシアネート、トルエンジイソシアネート(TDI)、2,2´‐ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2´‐MDI)、2,4´‐ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4´‐MDI)、4,4´‐ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4´‐MDI、monomeric MDI)、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(polymeric MDI)、オルトトルイジンジイソシアネート(TODI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、リジンジイソシアネート(LDI)およびトリフェニルメタントリイソシアネート(TPTI)から選択されるいずれか一つまたは二つ以上であってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様のリチウム二次電池負極活物質添加剤用の炭素質材料によると、これを採用した負極に速い速度でリチウムイオンを吸蔵および脱離させることができることから、これを含むリチウム二次電池の出力特性が向上し、充放電の繰り返しによっても容量の低下が少ないため、優れた寿命特性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実験例による出力特性の評価データである。
【
図2】本発明の実験例による出力特性の評価データである。
【
図3】本発明の実験例による寿命特性の評価データである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
他の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術および科学的用語を含む)は、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が共通して理解し得る意味で使用され得る。明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とした時に、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。また単数型は、文章で特に断らない限り、複数型をも含む。
【0025】
本発明の一態様は、リチウム二次電池の負極活物質に添加剤として含まれる場合、高率でリチウム二次電池の優れた出力特性が実現され、且つ優れた寿命特性が維持され得るリチウム二次電池の負極活物質添加剤用の炭素質材料を提供する。
【0026】
かかる本発明の一態様のリチウム二次電池負極活物質添加剤用の炭素質材料によると、これを採用した負極に速い速度でリチウムイオンを吸蔵および脱離させることができ、これを含むリチウム二次電池の出力特性が向上し、充放電の繰り返しによっても容量の低下が少ないため、優れた寿命特性を有することができる。
【0027】
具体的には、本発明の一態様は、D
v50が6μm以下であり、D
n50が1μm以下である、リチウム二次電池負極活物質添加剤用の炭素質材料を提供する。
【0028】
前記D
v50は、レーザ散乱法による粒度分布測定で、小さい粒径から累積体積が50%になったときの粒径を意味し、前記D
n50は、レーザ散乱法による粒度分布測定で、小さい粒径から累積粒子個数が50%になったときの粒径を意味する。
【0029】
本発明の一態様のリチウム二次電池負極活物質添加剤用の炭素質材料は、平均粒径が小さい微粉であることから、メイン活物質間の空隙に位置することができ、これによって負極の体積を増加させないため、エネルギー密度の低下を引き起こさない。これと同時に、優れた出力特性および寿命特性の実現が可能である。
【0030】
具体的には、レーザ散乱法によって測定されたD
v50が6μm以下であり、D
n50が1μm以下である場合、全体的に微粉であり、且つ1μm以下の粒径を有する粒子個数が50%以上になることで、より容易に添加剤がメイン活物質間の空隙の間に位置し、上述の効果を実現することができる。
【0031】
また、本発明の一態様のリチウム二次電池負極活物質添加剤用の炭素質材料は、平均粒径が小さい微粉であることから、メイン活物質間の空隙の間に位置することができ、これによって同重量を添加したときに、重量に対する粒子の個数が増加され得、低い含量を添加してもエネルギー密度が低下することなく、優れた出力特性および寿命特性を実現することができる。
【0032】
ここで、D
v50およびD
n50は、製造された炭素質材料に対して、KS A ISO 13320‐1規格に準じて試料を採取し、Malvern社製のMastersizer3000を用いて粒度分布を測定することができる。具体的には、エタノ−ルを溶媒とし、必要な場合、超音波分散機を使用して分散した後、体積密度と数密度を測定することができる。
【0033】
また、本発明の一態様の微粉の炭素質材料添加剤を負極活物質添加剤として含む場合、少量添加だけでもリチウム二次電池の出力特性および寿命特性を実現することができる。
【0034】
例えば、本発明の一態様の炭素質材料は、炭素系負極活物質に添加され、前記炭素質材料の添加量が、前記炭素系負極活物質および炭素質材料の総量100重量%に対して5重量%以下と少量添加される場合、エネルギー密度が低下することなく、リチウム二次電池の出力特性および寿命特性が向上することができる。
【0035】
また、メイン活物質に比べ少量のみ添加されることから、活物質の比表面積の増加によるスラリー製造時の不都合がなく、メイン活物質の伝導経路妨害現象が非常に抑制され得る。
【0036】
より具体的には、1重量%以上5重量%以下、または2重量%以上4重量%以下に添加され得る。ただし、本発明は、必ずしもこれに制限されない。
【0037】
また、本発明の一態様において、メイン活物質は、天然黒鉛、人造黒鉛などの炭素系負極活物質であってもよく、Si、SiCなどのシリコン系負極活物質であってもよく、特に制限されない。本発明では、球状天然黒鉛に添加剤として添加する場合、出力特性および寿命特性が向上することを確認した。
【0038】
また、D
v50は、より具体的には、4μm以下であってもよく、D
n50は、0.5μm以下であってもよいが、この場合、優れた出力特性および寿命特性が実現されることが後述する実施例から確認された。
【0039】
また、D
v50は1μm以上であってもよく、D
n50は0.3μm以上であってもよいが、これに限定されない。
【0040】
本発明の一態様のリチウム二次電池負極活物質添加剤用の炭素質材料は、D
v10が2.2μm以下であり、D
n10が0.6μm以下であってもよい。
【0041】
前記D
v10は、レーザ散乱法による粒度分布測定で、小さい粒径から累積体積が10%になったときの粒径を意味し、前記D
n10は、レーザ散乱法による粒度分布測定で、小さい粒径から累積粒子個数が10%になったときの粒径を意味する。
【0042】
後述する実施例から確認されるように、本発明の一態様のリチウム二次電池負極活物質添加剤用の炭素質材料のD
v10およびD
n10が上述の範囲を満たす場合、優れた出力特性および寿命特性を実現することができる。
【0043】
より具体的には、D
v10は1.5μm以下であってもよく、D
n10は0.3μm以下であってもよいが、本発明は、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0044】
また、D
v10は0.5μm以上であってもよく、D
n10は0.2μm以上であってもよいが、これに限定されない。
【0045】
本発明の一態様のリチウム二次電池負極活物質添加剤用の炭素質材料は、D
v90が11μm以下であり、D
n90が3μm以下であってもよい。
【0046】
前記D
v90は、レーザ散乱法による粒度分布測定で、小さい粒径から累積体積が90%になったときの粒径を意味し、前記D
n90は、レーザ散乱法による粒度分布測定で、小さい粒径から累積粒子個数が90%になったときの粒径を意味する。
【0047】
後述する実施例から確認されるように、本発明の一態様のリチウム二次電池負極活物質添加剤用の炭素質材料のD
v90およびD
n90が上述の範囲を満たす場合、優れた出力特性および寿命特性を実現することができる。
【0048】
より具体的には、D
v90は6μm以下であってもよく、D
n90は2μm以下であってもよいが、本発明は、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0049】
また、D
v90は4μm以上であってもよく、D
n90は1.5μm以上であってもよいが、これに限定されない。
【0050】
本発明の一態様のリチウム二次電池負極活物質添加剤用の炭素質材料のBET比表面積は、3m
2/g以上10m
2/g以下であってもよく、より具体的には、4m
2/g以上10m
2/g以下であってもよい。かかる範囲を満たす場合、電解液との副反応が少ないことから、初期の不可逆容量の増加による容量の低下を防止することができ、リチウム二次電池の優れた出力特性および寿命特性を実現できるため好ましいが、本発明は必ずしもこれに制限されない。
【0051】
本発明の一態様のリチウム二次電池負極活物質添加剤用の炭素質材料は、X線回折法によって求められる(002)平均層面間隔(d(002))が、3.4Å以上4.0Å以下であってもよく、より具体的には3.6Å以上3.8Å以下であってもよい。かかる範囲であるときに、優れた出力特性および寿命特性を実現できるため好ましいが、本発明は必ずしもこれに制限されない。
【0052】
本発明の一態様において、(002)平均層面間隔は、CuのKa線波長が0.15406nm、測定範囲2.5〜80゜、測定速度5゜/minの条件でX線回折法により測定した2θ値のグラフを得て、グラフのピーク位置を積分法で求め、ブラッグ(Bragg)公式によってd(002)(d(002)=λ/2sinθ)を計算し、測定することができる。
【0053】
本発明の一態様のリチウム二次電池負極活物質添加剤用の炭素質材料は、C軸方向の結晶子径Lc(002)が、0.8nm以上2nm以下であってもよく、より具体的には0.9nm以上1.1nm以下であってもよい。かかる範囲であるときに、優れた出力特性および寿命特性を実現できるため好ましいが、本発明は、必ずしもこれに制限されない。
【0054】
本発明の一態様において、C軸方向の結晶子径Lc(002)は、以下の条件で、シェラー(Scherrer)の式によって計算することができる。
【0055】
‐Lc(002)=Kλ/βcosθ
‐K=Scherrer定数(0.9)
‐β=半値幅(FWHM、Full Width at Half Maximum)
‐λ=X線波長値0.154056nm
‐θ=回折角
【0056】
以下、上述の本発明の一態様のリチウム二次電池負極活物質添加剤用の炭素質材料の製造方法について説明する。ただし、これは一例示であって、本発明の炭素質材料の製造方法は、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0057】
本発明の一態様のリチウム二次電池負極活物質添加剤用の炭素質材料は、ポリオール100重量部に対して、イソシアネートが150重量部以上240重量部以下含まれるポリウレタン樹脂を不活性気体雰囲気下で熱処理して炭素化した後、上述の粒度範囲を満たすように炭化物を粉砕することで製造され得る。
【0058】
かかる製造工程により、リチウム二次電池負極活物質の添加剤として使用されたときに、優れた出力特性および寿命特性の実現が可能な比表面積を有し、メソポアが発達していない表面が形成されて空気中の水分吸着が防止され、電極乾燥工程において水分の除去が容易で、リチウム二次電池の初期効率、出力特性および寿命特性を著しく向上させることができる炭素質材料を製造することができる。
【0059】
ポリオールは、ポリウレタン樹脂の製造に使用される通常のものであり、特に限定されないが、具体的には、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールポリオール、ポリ尿素分散(Polyharnstoff Dispersion(PHD))ポリオール、アミン変性ポリオール、マンニッヒポリオールおよびこれらの混合物から選択されるいずれか一つまたは二つ以上であってもよく、より具体的には、ポリエステルポリオール、アミン変性ポリオール、マンニッヒポリオールまたはこれらの混合物であってもよい。
【0060】
ポリオールの数平均分子量(M
n)は、300以上3000以下であってもよく、より具体的には400以上1500以下であってもよい。かかる範囲を満たす場合、重合されたポリウレタン樹脂の熱安定性が向上することができ、炭化工程において溶融発生が抑制され得るため好ましいが、必ずしもこれに制限されない。
【0061】
ポリオールの水酸基の数は1.5個以上6.0個以下であってもよく、より具体的には2.0個以上4.0個以下であってもよい。また、ポリオールの中に存在する水酸基の含量は3重量%以上15重量%以下であってもよい。かかる範囲を満たす場合、好ましい範囲の比表面積および表面特性を有する炭素質材料が製造され得るため好ましいが、必ずしもこれに制限されない。
【0062】
前記ポリオールと反応するイソシアネートは、ポリウレタン樹脂の製造に使用される通常のものであって、特に限定されないが、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4´‐ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、ポリエチレンポリフェニルイソシアネート、トルエンジイソシアネート(TDI)、2,2´‐ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2´‐MDI)、2,4´‐ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4´‐MDI)、4,4´‐ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4´‐MDI、monomeric MDI)、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(polymeric MDI)、オルトトルイジンジイソシアネート(TODI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、リジンジイソシアネート(LDI)およびトリフェニルメタントリイソシアネート(TPTI)から選択されるいずれか一つまたは二つ以上であってもよい。より具体的には、4,4´‐ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4´‐MDI、monomeric MDI)、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(polymeric MDI)またはポリエチレンポリフェニルイソシアネートであってもよい。
【0063】
ポリオールとイソシアネートの混合比率は、前記ポリオール100重量部に対して、前記イソシアネートが150重量部以上240重量部以下であってもよい。かかる範囲を満たす場合、重合されたポリウレタン樹脂の熱安定性が向上することができ、炭化工程において溶融の発生が抑制され得るため好ましいが、必ずしもこれに制限されない。
【0064】
また、前記ポリウレタン樹脂を製造するために、ポリオールとイソシアネートの反応を誘導するために触媒を添加することができる。前記触媒は、ペンタメチルジエチレントリアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ビス‐(2‐ジメチルアミノエチル)エーテル、トリエチレンジアミンカリウムオクトエート(octoate)、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、酢酸カリウムまたはこれらの混合物から選択されるいずれか一つまたは二つ以上を使用することができ、前記触媒の含量は、ポリオールに対して、0.1重量部以上5重量部以下添加することができる。
【0065】
また、ポリウレタン樹脂の粉砕を容易にするために、水、CO
2などの発泡剤を含むことができ、ポリウレタン樹脂の品質向上のために、整泡剤をさらに含んでもよい。
【0066】
また、ポリウレタン樹脂の熱安定性の向上のために、TCPP(トリス(2‐クロロプロピル)リン酸塩)、TCEP(トリス(2‐クロロエチル)リン酸塩)、TEP(リン酸トリエチル)およびTMP(リン酸トリメチル)などの難燃剤をさらに添加してもよい。
【0067】
前記ポリオールおよびイソシアネートの混合比率は、触媒、整泡剤、発泡剤、難燃剤など、添加剤の含量に応じて変動され得るため、前記範囲に限定されるものではない。
【0068】
製造されたポリウレタン樹脂に対する炭素化は、不活性気体雰囲気下で、例えば、700℃以上1500℃以下の温度で熱処理することで行われ得る。
【0069】
不活性気体は、ヘリウム、窒素、アルゴン、またはこれらの混合ガスであってもよいが、これに限定されない。
【0070】
ここで、熱伝逹距離と炭化程度を調節するために、熱処理の前にポリウレタン樹脂を粉砕することができる。
【0071】
かかる粉砕として、バルク状態のポリウレタン樹脂の粉砕ステップを経る場合には、機械的粉砕方法としてクラッシャ(crusher)により行われ得、単一ステップの粉砕で行われてもよく、ステップを分けて多ステップで行われてもよい。本発明において熱処理の前の粉砕方法は、特に限定されない。
【0072】
また、前記炭素化ステップは、予備炭素化ステップと、本炭素化ステップとを含んで行われてもよく、予備炭素化ステップは、600℃以上1000℃以下の温度で、30分以上120分以下の時間の間に熱処理し、本炭素化ステップは、1000℃以上1400℃以下の温度で、30分以上120分以下の時間の間に熱処理して行われ得る。また、予備炭素化ステップおよび本炭素化ステップは、順に行われることが好ましい。
【0073】
一方、予備炭素化ステップと本炭素化ステップとの間に、添加剤として適するサイズに粉砕する微粉砕ステップが行われてもよい。
【0074】
前記微粉砕ステップは、機械的粉砕方法を使用する通常の粉砕機を使用して粉砕することができ、例えば、ボールミル、ピンミル、ロータミルおよびゼットミルなど、様々な粉砕装置を使用して行われ得る。
【0075】
また、本微粉砕ステップにおいて、上述の本発明の一態様のリチウム二次電池負極活物質添加剤用の炭素質材料の粒度分布を有するように調節され得る。
【0076】
以下、本発明の好ましい実施例および比較例について記載する。しかし、下記の実施例は、本発明の好ましい一実施例であって、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0077】
<評価試験項目>
1)粒度分布分析
製造された炭素質材料に対して、KS A ISO 13320‐1規格に準じて試料を採取し、Malvern社製のMastersizer3000を用いて粒度分布を測定した。エタノ−ルを溶媒とし、必要な場合、超音波分散機を使用して分散した後、体積密度と数密度を測定した。
【0078】
2)XRD分析
X線回折法により測定した2θ値のグラフを得て、グラフのピーク位置を積分法で求め、ブラッグ(Bragg)公式によってd(002)(d(002)=λ/2sinθ)を計算した。CuのKa線波長は、0.15406nmとした。この際、測定範囲は2.5〜80゜までであり、測定速度は5゜/minとした。
【0079】
シェラー(Scherrer)の式によって粒子のC軸方向の結晶子厚さLc(002)を計算した。
‐Lc(002)=Kλ/βcosθ
‐K=Scherrer定数(0.9)
‐β=半値幅(FWHM、Full Width at Half Maximum)
‐λ=X線波長値0.154056nm
‐θ=回折角
【0080】
3)比表面積の測定
KS A 0094およびKS L ISO 18757規格に準じて試料を採取し、前処理装置により300℃で3時間脱ガス処理を行った後、Micromeritics社製のASAP2020装置により窒素ガス気体吸着BET法による圧力区間(P/P0)0.05〜0.3で試料の比表面積を測定した。
【0081】
4)測定セルの製造方法および充放電特性の評価
測定セルは、コイン型半電池として、ピッチがコーティングされた球状天然黒鉛(平均粒径:12μm)および本発明の炭素材を下記表2の重量比で混合した負極活物質混合物とバインダー(カルボキシメチルセルロース:スチレン‐ブタジエンゴム=50:50)を97:3の比率で製造した電極と、対電極としてリチウム金属箔を使用しており、セパレータを挟んで有機電解液としてEC/EMC/DMCが1:1:1の比率で混合されており、1MのLiPF
6が溶解された電解液を含浸し、2016typeコインセルとして製造した。
【0082】
初期充放電容量は、下記のとおり測定した。
【0083】
充電は、0.1Cレートで0.005Vまで定電流で炭素電極にリチウムイオンを挿入し、0.005Vから定電圧でリチウムイオンの挿入を行い、0.01Cレートに相当する電流になったときにリチウムイオンの挿入を終了した。放電は、0.1Cレートで定電流法で終止電圧を1.5Vとし、リチウムイオンを炭素電極から脱離した。
【0084】
このときに供給した電気量を電極の負極活物質の重量で除した値を負極活物質の比容量(mAh/g、放電時の放電比容量、充電時の充電比容量)とした。この際、最初の放電比容量を初期容量とし、初期効率は、最初の充電比容量に対する初期放電比容量をパーセント(%)で計算した。
【0085】
5)寿命特性の評価
寿命特性の評価は、前記内容のとおり、定電流‐定電圧法(CCCV)によって常温で行い、初期0.1Cレートで3サイクル充放電を行った後、充電は0.2Cレートで、放電は0.5Cレートで50サイクルまで行った。性能指標は、常温放電比容量の容量維持率(CRR)で示し、これは、最初の放電比容量に対する各サイクルでの放電比容量をパーセント(%)で計算した。
【0086】
6)常温高率放電特性の評価
常温高率放電特性の評価は、25℃でリチウムイオンの放電時の出力特性を測定したものであり、初期0.1Cレートで3サイクル充放電を行った後、0.2Cレートで1サイクル充放電を行い、以降、放電(リチウムイオン脱離)Cレートのみ1〜5Cまで段階的に増加させた。
【0087】
[実施例1〜実施例3および比較例1]
酸基を7重量%含むポリオール(AKP SSP‐104)100gと4,4´‐MDI195gを4000rpmの速度で10秒間撹拌し硬化されたポリウレタン樹脂を製造した。
【0088】
前記ポリウレタン樹脂は、破砕機を用いて粒径が0.1〜2mmになるように粉砕した後、粉砕物を窒素ガス雰囲気下で700℃まで昇温させ、700℃で1時間維持し予備炭素化を実施して、炭化収率38%のリチウム二次電池負極活物質前駆体を得た。
【0089】
得られた負極活物質前駆体は、ゼットミルを使用して微粉砕し、実施例1〜実施例3および比較例1で微粉砕される大きさを異なるように調節した。
【0090】
微粉砕された負極活物質前駆体は、セラミック材質のルツボに入れて、窒素ガス雰囲気下で5℃/minの昇温速度で1200℃まで昇温させ、1200℃で1時間維持して炭素化工程を経ることで、リチウム二次電池用負極活物質の添加剤として使用可能な炭素材を製造した。
【0091】
実施例1〜3および比較例1で製造された炭素材に対する体積密度基準の粒度分布、数密度基準の粒度分布、BET比表面積、d(002)、およびLc(002)の値を表1にまとめた。
【0093】
以降、下記表2のような負極活物質を採択する電極を使用して、上述のとおり、2016タイプコインセルを製造した。
【0095】
[実験例1]
前記製造されたコインセルに対して、上述の評価方法によって常温での出力特性を評価し、その結果を
図1、
図2および表3にまとめた。
【0099】
[実験例2]
前記製造されたコインセルに対して、上述の評価方法によって寿命特性を評価し、その結果を
図3に示した。
【国際調査報告】