(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-516531(P2021-516531A)
(43)【公表日】2021年7月1日
(54)【発明の名称】パルス化電気機械制御
(51)【国際特許分類】
H02P 27/10 20060101AFI20210604BHJP
H02P 23/02 20060101ALI20210604BHJP
H02P 27/00 20060101ALI20210604BHJP
H02P 29/00 20160101ALI20210604BHJP
【FI】
H02P27/10
H02P23/02
H02P27/00
H02P29/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2020-548673(P2020-548673)
(86)(22)【出願日】2019年3月14日
(85)【翻訳文提出日】2020年10月7日
(86)【国際出願番号】US2019022185
(87)【国際公開番号】WO2019182846
(87)【国際公開日】20190926
(31)【優先権主張番号】62/644,912
(32)【優先日】2018年3月19日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/658,739
(32)【優先日】2018年4月17日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/810,861
(32)【優先日】2019年2月26日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520347203
【氏名又は名称】トゥラ イーテクノロジー,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】トリパティ,アディヤ エス.
【テーマコード(参考)】
5H501
5H505
【Fターム(参考)】
5H501AA20
5H501BB02
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5H501BB05
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5H505JJ17
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5H505JJ26
5H505KK06
(57)【要約】
機械のエネルギー変換効率を改善するための電気機械(例えば、電気モータ及び発電機)のパルス化制御を促進する種々の方法、コントローラ、及び電気機械システムが説明される。選択された動作条件下で、電気機械は断続的に駆動される(パルス化される)。パルス化動作は、電気機械の出力を、第1の出力レベルと、第1の出力レベルよりも低い第2の出力レベルとの間で交番させる。出力レベルは、電気機械、及び電気機械を含むシステムのうちの少なくとも1つが、パルス化動作の間には、電気機械が、電気機械を、所望の出力を送出するべく連続的な様態で駆動するために必要とされ得る第3の出力レベルで動作させられる際に有し得るよりも高いエネルギー変換効率を有するように選択される。実施形態によっては、第2の出力レベルは0トルクである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械を制御する方法であって、前記方法が、所望の出力を送出するために前記電気機械のパルス化動作を指示することを含み、前記電気機械の前記パルス化動作が前記電気機械の前記出力を、第1の出力レベルと、前記第1の出力レベルよりも低い第2の出力レベルとの間で交番させ、前記第1及び第2の出力レベルが、前記電気機械、及び前記電気機械を含むシステムのうちの少なくとも1つが、前記電気機械が、前記電気機械を、前記所望の出力を送出するべく連続的な様態で駆動するために必要とされ得る第3の出力レベルで動作させられる際に有し得るよりも高いエネルギー変換効率を前記パルス化動作の間に有するように選択される、方法。
【請求項2】
電力変換器が、前記電気機械の前記出力を制御するために用いられ、前記方法が、前記電力変換器を、前記電気機械の前記出力を前記第1の出力レベルと前記第2の出力レベルとの間で交番させるよう制御することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2の出力レベルが実質的に0トルクである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電気機械が少なくとも10回/秒の周波数でパルス化される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記電気機械が前記第1及び第2の出力レベルの間で少なくとも100回/秒交番する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
シグマデルタ変換器が、前記電気機械の前記パルス化を制御するために用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記シグマデルタ変換器が1次シグマデルタ変換器である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記シグマデルタ変換器が少なくとも3次シグマデルタ変換器である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記電気機械が現在の動作速度を有し、前記方法が、前記電気機械の前記現在の動作速度の変化に従って前記第1の出力レベルを変更することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
パルス幅変調コントローラが、前記電気機械の前記パルス化を制御するために用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の出力レベルが、前記電気機械の現在の動作速度における実質的に最も高いシステム又は電気機械エネルギー変換効率を有する電気機械出力レベルに対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記システムが、モータ/発電機として動作するように構成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記所望の出力の変化に従って前記パルス化のデューティサイクルを変更することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記電気機械が誘導機である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記誘導機が少なくとも3つの相を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記電気機械がスイッチトリラクタンス電気機械である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記電気機械が同期AC電気機械である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記電気機械が、
同期リラクタンス機、
永久磁石同期リラクタンス機、
ハイブリッド永久磁石同期リラクタンス機、
外部励磁AC同期機、及び
永久磁石同期機
からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記電気機械がブラシレスDC電気機械である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記電気機械が、
電気励磁DC電気機械、
永久磁石DC電気機械、
直巻DC電気機械、
分巻DC電気機械、
ブラシ付きDC電気機械、及び
複巻DC電気機械
からなる群から選択される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記電気機械が、
渦電流機械、
ACリニア機械、
AC及びDC機械転流式機械、及び
アキシャルフラックス機械
からなる群から選択される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
モータを、所望のトルクを送出するよう制御する方法であって、前記方法が、
所望のモータ出力が、エネルギー変換効率の高い出力レベルである、指定出力レベル未満であるかどうかを決定することと、
前記所望のモータ出力が前記指定出力レベル未満である時には、前記モータに、前記所望の出力を送出させるために、パルス化電力信号を用いて前記モータを駆動することであって、前記パルス化電力信号が、前記指定出力レベルに対応する第1の電力レベルと、実質的に0である第2の電力レベルとの間で交番し、前記モータが、前記パルス化電力信号によって駆動された時には、前記モータを、前記所望の出力を送出するべく連続的な様態で駆動するために必要とされ得る第3の電力レベルで動作している時よりも高いエネルギー変換効率を有し、前記第3の電力レベルが前記第1の電力レベルよりも低い、駆動することと、
前記所望のモータ出力が前記指定出力レベル以上である時には、前記モータを、前記所望のモータ出力を送出するよう駆動することと、
を含む方法。
【請求項23】
電力変換器が、前記電気機械の前記出力を制御するために用いられ、前記方法が、前記電力変換器を、前記電気機械の前記出力を前記第1の出力レベルと前記第2の出力レベルとの間で交番させるよう制御することをさらに含む、請求項1〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の出力レベルが実質的に0トルクである、請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記電気機械が前記第1及び第2の出力レベルの間で少なくとも100回/秒交番する、請求項1〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
シグマデルタ変換器が、前記電気機械の前記パルス化を制御するために用いられる、請求項1〜5及び11〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記シグマデルタ変換器が1次シグマデルタ変換器である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記シグマデルタ変換器が少なくとも3次シグマデルタ変換器である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
パルス幅変調コントローラが、前記電気機械の前記パルス化を制御するために用いられる、請求項1〜5及び11〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記第1の出力レベルが、エネルギー変換効率に少なくとも部分的に基づいて、並びに騒音、振動、及びハーシュネス(NVH)の考慮事項に少なくとも部分的に基づいて選択される、請求項1〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の出力レベルが、前記電気機械の現在の動作速度における実質的に最も高いシステム又は電気機械エネルギー変換効率を有する電気機械出力レベルに対応する、請求項1〜30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記電気機械が現在の動作速度を有し、前記方法が、前記電気機械の前記現在の動作速度の変化に従って前記第1の出力レベルを変更することをさらに含む、請求項1〜31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記電気機械が、モータ及び発電機のうちの少なくとも1つとして動作させられる、請求項1〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記電力変換器が、インバータ及び整流器のうちの少なくとも1つを含む、請求項1〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
ACモータを、所望のトルクを送出するよう制御する方法であって、前記方法が、前記ACモータを、所望のトルクを送出するよう駆動するための交番電力信号を前記ACモータに提供することを含み、前記交番電力信号が、第1の電力レベルと、実質的に0である第2の電力レベルとの間でパルス化され、前記ACモータが、前記第1の電力レベルで動作している時には、前記ACモータを、前記所望のトルクを送出するべく連続的な様態で駆動するために必要とされる第3の電力レベルで動作している時よりも高いエネルギー変換効率を有し、前記第3の電力レベルが前記第1の電力レベルよりも低い、方法。
【請求項36】
前記ACモータの前記速度が、前記交番電力信号の周波数を調整することによって制御される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記第1の電力レベルと前記第2の電力レベルとの間のスイッチングの位相が前記交番電力信号の位相と同期させられる、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記第1の電力レベルと前記第2の電力レベルとの間のスイッチングの位相が前記交番電力信号の位相と同期させられない、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
請求項1〜38のいずれか一項に記載の方法を遂行するように構成された機械コントローラ。
【請求項40】
システムであって、前記システムが、
電気機械と、
電力変換器と、
前記電力変換器に、所望の出力を送出するために、選択された動作範囲内で前記電気機械のパルス化動作を生じさせるよう指示するように構成された機械コントローラと、を備え、前記電気機械の前記パルス化動作が前記電気機械の前記出力を、第1の出力レベルと、前記第1の出力レベルよりも低い第2の出力レベルとの間で交番させ、前記第1及び第2の出力レベルが、前記システムが、前記電気機械の前記パルス化動作の間には、前記システムが、前記電気機械を、前記所望の出力を送出するために連続的な様態で駆動するために必要とされ得る第3の出力レベルで動作させられる際に有し得るよりも高いエネルギー変換効率を有するように選択される、システム。
【請求項41】
前記第2の出力レベルが実質的に0トルクである、請求項40に記載のシステム。
【請求項42】
前記機械コントローラが、前記電気機械の前記パルス化のタイミングを指示するパルスコントローラを含む、請求項40に記載のシステム。
【請求項43】
前記パルスコントローラが、前記第1の出力レベルのパルスの継続時間、タイミング、又は周波数のうちの少なくとも1つを動的に決定するために、シグマデルタ変換器を利用する、請求項42に記載のシステム。
【請求項44】
前記機械コントローラのパルス化動作を指示するように構成されたシグマデルタ変換器を備える電気機械コントローラ。
【請求項45】
前記シグマデルタ変換器が1次シグマデルタ変換器である、請求項43に記載のシステム。
【請求項46】
前記シグマデルタ変換器が少なくとも3次シグマデルタ変換器である、請求項43に記載のシステム。
【請求項47】
一連の第1の出力レベルのパルスの間の周期がパルスサイクル継続時間であり、前記パルスサイクル継続時間が前記電気機械の動作中に変化する、請求項43に記載のシステム。
【請求項48】
前記パルスサイクル継続時間が前記電気機械の回転速度に応じて変化する、請求項47に記載のシステム。
【請求項49】
前記シグマデルタ変換器が、前記電気機械の動作速度に応じて変化する可変クロックを利用する、請求項43に記載のシステム。
【請求項50】
前記パルスコントローラが、前記第1の出力レベルのパルスの継続時間を決定するために、パルス幅変調器を利用する、請求項42に記載のシステム。
【請求項51】
前記パルスコントローラが、前記電気機械に、少なくとも10回/秒の周波数でパルス化されるようにさせるように構成されている、請求項42に記載のシステム。
【請求項52】
前記電気機械が、モータ/発電機として動作するように構成されている、請求項40に記載のシステム。
【請求項53】
前記機械コントローラが、前記電気機械の動作速度の変化に従って前記第1の出力レベルを変更するように構成されている、請求項40に記載のシステム。
【請求項54】
前記電気機械が誘導機である、請求項40〜53のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項55】
前記誘導機が少なくとも3つの相を有する、請求項54に記載のシステム。
【請求項56】
前記電気機械がスイッチトリラクタンス電気機械である、請求項40〜53のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項57】
前記電気機械が同期AC電気機械である、請求項40〜53のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項58】
前記電気機械が、
同期リラクタンス機、
永久磁石同期リラクタンス機、
ハイブリッド永久磁石同期リラクタンス機、
外部励磁AC同期機、及び
永久磁石同期機
からなる群から選択される、請求項57に記載のシステム。
【請求項59】
前記電気機械がブラシレスDC電気機械である、請求項40〜53のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項60】
前記電気機械が、
電気励磁DC電気機械、
永久磁石DC電気機械、
直巻DC電気機械、
分巻DC電気機械、
ブラシ付きDC電気機械、及び
複巻DC電気機械
からなる群から選択される、請求項40〜53のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項61】
前記電気機械が、
渦電流機械、
ACリニア機械、
AC及びDC機械転流式機械、及び
アキシャルフラックス機械
からなる群から選択される、請求項40〜53のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項62】
前記機械コントローラが、前記電気機械の前記パルス化のタイミングを指示するパルスコントローラを含む、請求項40〜61のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項63】
前記第2の出力レベルが実質的に0トルクである、請求項40〜62のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項64】
前記パルスコントローラが、前記第1の出力レベルのパルスの継続時間、タイミング、又は周波数のうちの少なくとも1つを動的に決定するために、シグマデルタ変換器を利用する、請求項40〜49及び51〜63のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項65】
前記シグマデルタ変換器が1次シグマデルタ変換器である、請求項44又は64に記載のシステム又は電気機械コントローラ。
【請求項66】
前記シグマデルタ変換器が少なくとも3次シグマデルタ変換器である、請求項44又は64に記載のシステム又は電気機械コントローラ。
【請求項67】
一連の第1の出力レベルのパルスの間の周期がパルスサイクル継続時間であり、前記パルスサイクル継続時間が前記電気機械の動作中に変化する、請求項44及び64〜66のいずれか一項に記載のシステム又は電気機械コントローラ。
【請求項68】
前記パルスサイクル継続時間が前記電気機械の回転速度に応じて変化する、請求項67に記載のシステム又は電気機械コントローラ。
【請求項69】
前記シグマデルタ変換器が、前記電気機械の動作速度に応じて変化する可変クロックを利用する、請求項44及び64〜68のいずれか一項に記載のシステム又は電気機械コントローラ。
【請求項70】
前記電気機械が少なくとも時としてモータとして機能し、前記電力変換器がインバータを含む、請求項40〜69のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項71】
前記電気機械が少なくとも時として発電機として機能し、前記電力変換器が整流器を含む、請求項40〜70のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項72】
前記システムが、モータ/発電機として動作するように構成されている、請求項40〜71のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項73】
前記パルスコントローラが、前記電気機械に、前記第1及び第2の出力レベルを少なくとも100回/秒切り替えさせるように構成されている、請求項40〜72のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項74】
前記機械コントローラが、前記電気機械の動作速度の変化に従って前記第1の出力レベルを変更するように構成されている、請求項40〜73のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年3月19日に出願された、米国仮特許出願第62/644,912号、2018年4月17日に出願された、同第62/658,739号、及び2019年2月26日に出願された、同第62/810,861号の優先権を主張する。これらの各々はその全体が本明細書において参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
背景
本出願は概して電気機械制御に関する。より詳細には、電気機械をよりエネルギー効率の高い様態で動作させることを促進するために、選択された動作条件の間に電気機械の動作をパルス化する制御方式及びコントローラ設計が説明される。
【0003】
語句「電気機械」は、本明細書で使用するとき、電気モータ及び発電機の両方を意味するよう広義に解釈されることが意図される。電気モータ及び発電機は構造的に非常に似ている。電気機械がモータとして動作している際には、それは電気エネルギーを機械エネルギーに変換する。発電機として動作している際には、電気機械は機械エネルギーを電気エネルギーに変換する。
【0004】
電気モータ及び発電機は、非常に多種多様な適用物において、及び多種多様な動作条件下で用いられている。概して、多くの最新の電気機械は比較的高いエネルギー変換効率を有する。しかし、ほとんどの電気機械のエネルギー変換効率はそれらの動作負荷に基づいて著しく変化し得る。多くの適用物は、電気機械が多種多様な異なる動作負荷条件下で動作することを必要とし、これは、電気機械が、多くの場合、それが有する能力ほど効率的に動作しないことを意味する。この問題の性質が
図1に示されている。
図1は、異なる動作条件下における代表的なモータの効率を概略的に示すモータ効率マップ10である。より具体的には、本図は、モータのエネルギー変換効率をモータ速度(X軸)及び発生されるトルク(Y軸)の関数としてプロットしている。
【0005】
図1において見ることができるように、図示のモータは、概して、それが特定の速度範囲内で動作しており、規定の範囲内のトルクを発生している時に、最も効率が高い。図示された特定のモータについて、その動作範囲の最も効率の高い領域は、概ね4500〜6000RPMの範囲内にあり、約40〜70Nmの範囲内のトルク出力を有し、そのエネルギー変換効率がおよそ96%である、14とラベル付けされた動作領域である。領域14は本明細書において時として、単に、モータの最も効率の高い動作領域である、「スイートスポット」と呼ばれる。
【0006】
図1において見ることができるように、任意の特定のモータ速度において、最大効率曲線16によって概略的に示される、対応する最も効率の高い出力トルクが存在することになる。任意の所与のモータ速度について、モータの負荷が、最も効率の高い負荷よりも高いか、又は低いときには、モータの効率はいくらか降下する傾向を有する。いくつかの領域では、例えば、トルク出力が図示のモータにおいて約30Nm未満に落ちたときのように、モータの効率は比較的急速に降下する傾向を有する。
【0007】
モータがそのスイートスポット又はその付近でほぼ常時動作させられるよう、動作条件を制御することができるならば、モータのエネルギー変換効率は極めて優れたものになり得る。しかし、多くの適用物は、モータが、広範に変化するトルク要求、及び広範に変化するモータ速度を有する多種多様な負荷条件にわたって動作することを必要とする。想起しやすい1つのこのような適用物は、モータ速度が、車両が停止されている時の0と、ハイウェイ速度で走り回っている時の比較的高いRPMとの間で変化し得る、自動車及び他の車両若しくは移動性適用物である。トルク要求はまた、それらの速度のうちの任意のものにおいて、車両が加速若しくは減速しているのか、坂を上っているのか、下っているのか、比較的平坦な地面等の上を進んでいるのかどうか、車両の重量、及び多くの他の因子などの因子に基づいて広範に変化し得る。無論、他の適用物において用いられるモータも同様に多種多様な動作条件にさらされ得る。
【0008】
従来の電気機械のエネルギー変換効率は概ね良いが、エネルギー変換効率を動作条件のより広い範囲にわたってさらに改善するための努力が引き続き行われている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
概要
動作条件が保証するときに電気機械のエネルギー変換効率を改善するための電気機械(例えば、電気モータ及び発電機)のパルス化制御を促進する種々の方法、コントローラ、及び電気機械システムが説明される。より具体的には、選択された動作条件下で、電気機械は断続的に駆動される(パルス化される)。電気機械のパルス化動作は、電気機械の出力を、第1の出力レベルと、第1の出力レベルよりも低い第2の出力レベルとの間で交番させる。第1及び第2の出力レベルは、電気機械、及び電気機械を含むシステムのうちの少なくとも1つが、パルス化動作の間には、電気機械が、電気機械を、所望の出力を送出するべく連続的な様態で駆動するために必要とされ得る第3の出力レベルで動作させられる際に有し得るよりも高いエネルギー変換効率を有するように選択される。実施形態によっては、第2の出力レベルは0トルク(又は実質的に0トルク)である。
【0010】
実施形態によっては、電気機械は、所望の出力が所与のモータ速度のための指定出力レベル未満である時には、パルス化された様態で駆動され、所望のモータ出力が指定出力レベル以上である時には、連続的な様態で駆動される。
【0011】
実施形態によっては、電力変換器が、電気機械の出力を制御するために用いられる。適用物に依存して、電力変換器は、インバータ、整流器、又は他の適切な電力変換器の形態を取り得る。
【0012】
パルス化の周波数は任意の特定の適用物の要求とともに広範に変化し得る。例として、様々な実施形態では、電気機械は第1及び第2の出力レベルの間で少なくとも10、100、又は1000回/秒交番する。
【0013】
実施形態によっては、シグマデルタ変換器が、電気機械のパルス化を制御するために用いられる。多種多様な異なるシグマデルタ変換器アーキテクチャが用いられ得る。実施形態によっては、シグマデルタ変換器は1次シグマデルタ変換器である。他のものにおいては、3次シグマデルタ変換器が用いられる。さらに他のものにおいては、より高次のシグマデルタ変換器が用いられ得る。シグマデルタ変換器は、アルゴリズム的に、デジタル的に、アナログ構成要素を用いて、及び/又はハイブリッドアプローチを用いて実施され得る。
【0014】
他の実施形態では、パルス幅変調コントローラが、電気機械のパルス化を制御するために用いられる。
【0015】
実施形態によっては、第1の出力レベルは電気機械の現在の動作速度の変化に従って変化する。様々な実施形態では、第1の出力レベルは、電気機械の現在の動作速度における最も高いシステム又は電気機械エネルギー変換効率であるか、又はそれに近い電気機械出力レベルに対応し得る。実施形態によっては、パルス化のデューティサイクルは所望の出力の変化に従って変化する。
【0016】
機械コントローラ及び電気機械システムが、上述された機能性の全てを実施するために説明された。様々な実施形態において、システムは、モータ、発電機、又はモータ/発電機として動作するように構成され得る。
【0017】
様々な実施形態において、電気機械は、誘導機、スイッチトリラクタンス電気機械、同期AC電気機械、同期リラクタンス機、永久磁石同期リラクタンス機、ハイブリッド永久磁石同期リラクタンス機、外部励磁AC同期機、永久磁石同期機、ブラシレスDC電気機械、電気励磁DC電気機械、永久磁石DC電気機械、直巻DC電気機械、分巻DC電気機械、ブラシ付きDC電気機械、複巻DC電気機械、渦電流機械、ACリニア機械、AC若しくはDC機械転流式機械、又はアキシャルフラックス機械であり得る。
【0018】
図面の簡単な説明
本発明及びその利点は、以下の説明を添付の図面と併せて参照することによって最も深く理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、異なる動作条件下における代表的な電気モータのエネルギー変換効率を示す代表的なトルク/速度/効率のグラフである。
【
図2A】
図2Aは、電気機械のためのパルス化駆動信号を示すグラフである。
【
図2B】
図2Bは、連続的な三相AC駆動信号波形の概略図である。
【
図2C】
図2Cは、
図2Bの連続的な波形と同じ平均電力を表す50%のデューティサイクルを有するパルス化三相AC波形である。
【
図2D】
図2Dは、
図2Bの連続的な波形と同じ平均電力を表す50%のデューティサイクルを有するパルス化三相AC波形である。
【
図3】
図3は、説明される一実施形態に係る電気機械制御アーキテクチャを概略的に示す機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、別の実施形態に係るモータ制御方式を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、異なる動作条件下における代表的なインバータのエネルギー変換効率を示す代表的なトルク/速度/効率のグラフである。
【
図6】
図6は、代表的なインバータ/電気モータの組み合わせの総合エネルギー変換効率を示すグラフである。
【
図7】
図7は、別の実施形態に係るシグマデルタベースのパルス発生器を含むモータコントローラアーキテクチャを概略的に示す機能ブロック図である。
【
図8】
図8は、1次シグマデルタ変換器の概略機能ブロック図である。
【
図9A】
図9Aは、パルス化電力のための所望の電力立ち上がり及び立ち下がりを概略的に表すグラフである。
【
図9B】
図9Bは、従来のモータが、説明される様態でパルス化される際に見られ得る、実際の電力立ち上がり及び立ち下がりを概略的に表すグラフである。
【
図10】
図10は、FTP75駆動サイクルの間における自動車電気モータのシミュレートされた出力を表す駆動点の分布を示すトルク/速度/効率のグラフである。
【
図11】
図11は、一実施形態に係る、モータ/発電機オン/オフ立ち上がり及び立ち下がり時間を短縮するように構成された過渡制御回路を有する電気モータ/発電機の概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面において、同様の参照符号は時として、同様の構造要素を指定するために用いられる。また、図内の描写は概略的なものであり、原寸に比例していないことも理解されたい。
【0021】
詳細な説明
本開示は、概して、動作条件が保証するときには電気機械のエネルギー変換効率を改善するための、さもなければ連続的な様態で動作させられ得る電気機械(例えば、電気モータ及び発電機)のパルス化制御に関する。より具体的には、選択された動作条件下において、電気機械は、伝統的な連続的なモータ制御によって達成され得るよりも高いエネルギー効率で所望の平均トルクを送出するために、より効率の高いエネルギー変換動作レベルで断続的に駆動される(パルス化される)。
【0022】
機械転流式機械、電子転流式機械、外部転流式非同期機、及び外部転流式同期機を含む、多くの種類の電気機械は、伝統的に、機械が、所望のトルク出力を送出するためのモータとして用いられるときには、連続的な、ただし場合によっては変化する、駆動電流によって駆動される。駆動電流は、しばしば、モータへの電圧入力の役割を果たす電力変換器(例えば、インバータ)の出力電圧を制御することによって制御される。逆に、多くの種類の発電機の電力出力は、磁場の強度を制御することによって制御される − これは、例えば、励磁器によってロータコイルに供給される励磁電流を制御することによって達成され得る。(励磁器は、整流器又は他の好適な構成要素の部分であり得る)。機械の種類にかかわりなく、モータのための駆動電流、又は発電機によって出力される電流は連続的である傾向を有する。
【0023】
パルス化制御を用いることで、機械の出力は、(1)動作要求を満たし、その一方で、(2)全体的効率を改善するという仕方で、「トルク・オン」状態と「0(無)トルク」状態との間で、インテリジェントに、断続的に変調される。別の言い方をすれば、選択された動作条件下において、電気機械は、所望の出力を送出するために、より効率の高いエネルギー変換動作レベル(「トルク・オン」状態)で断続的に駆動される。パルス間の期間内において、機械は、理想的には、トルクを全く発生又は消費しない(「0トルク」状態)。これは、概念的に、電気機械を「オフ」にすることと考えることができる。実装形態によっては、これは、電気機械を実効的に「オフ」にすることによって、例えば、モータへの駆動電流又は発電機のための励磁電流を遮断することによって、達成することができる。しかし、他の実装形態では、電気機械は、「0トルク」状態の間に、電気機械によって発生されるトルクを0にさせるか、又は特定の機械のために実際的若しくは適切であり得るようにほぼ0にさせようと試みる仕方で制御され得る。実装形態によっては、電気機械と併せて用いられる任意の電力変換器が同様に「0トルク」期間の少なくとも部分にわたって実効的にオフにされ得る。
【0024】
背景において説明されたように、
図1は代表的なモータのエネルギー変換効率を示す。
図1に示されるマップは、2010トヨタ・プリウスにおいて用いられる内部永久磁石同期モータのための効率マップである。本マップは単なる例示にすぎないことを理解されたい。同様の効率マップをほぼ任意の電気機械のために生成することができる。ただし、マップの特性は、特徴付けられる機械とともに変化することになる。
【0025】
図1において見ることができるように、任意の特定のモータ速度において、最大効率曲線16によって概略的に示される、対応する最も効率の高い出力トルクが存在することになる。概念的観点から、所望のモータトルクが現在のモータ速度のための最も効率の高い出力トルクを下回る時には、モータをパルス化することによってモータの全体的効率を改善することができる。逆に、所望のモータトルクが最大効率曲線16以上である時には、モータは、所望のトルクを送出するために、従来の(連続的な/パルス化されない)様態で動作させられ得る。
【0026】
図2Aは、パルス化モータ動作の一例を示す。この特定の例では、所望のモータトルクは10Nmであるが、現在の動作モータ速度のための最も効率の高いトルク出力は50Nmである。概念的に、モータは、モータに、時間の20%にわたって50Nmのトルクを送出させ、その後、時間の残りの80%にわたって無(0)トルクを送出させることによって、10Nmの正味トルクを送出するよう駆動することができる。モータは、それが50Nmを送出している時には、それが10Nmを送出する時よりも高い効率で動作するため、モータの動作を上述の仕方でパルス化することによって、モータの全体的効率を改善することができる。
図2Aに示される例では、モータは5時間単位のうち1時間単位の期間にわたって50Nmのモータ出力(24とラベル付けされている)を生成し、その後、モータは、介在する4時間単位の間は0トルクを生成するよう制御される。
【0027】
所望のモータ出力が50Nmを超えない限り、所望のモータ出力は、理論上、単に、50Nmで動作しているモータのデューティサイクルを変更することによって満たすことができる。例えば、所望のモータ出力が20Nmに変化した場合には、50Nmで動作しているモータのデューティサイクルを40%に増大させることができ、所望のモータ出力が40Nmに変化した場合には、デューティサイクルは80%への増大であることができ、所望のモータ出力が5Nmに変化した場合には、デューティサイクルを10%に低下させることができる、などとなる。より一般的には、モータをパルス化することは、潜在的に、所望のモータトルクが最大効率曲線16未満に降下する時にはいつでも有利に用いることができる。
【0028】
実際に用いられる時間単位のスケールは、任意の特定のシステムのサイズ、性質及び設計の必要に基づいて広範に変化し得る。実際面において、モータが、指定されたデューティサイクルを達成するために、「トルク・オン」から「0トルク」状態へ比較的急速に切り替えられるときには、モータが実際にこれらの状態の間を行ったり来たり切り替えられているという事実は、動作上の観点からモータの性能を著しく劣化させ得ない。実施形態によっては、各オン/オフサイクルのための周期のスケールは、以下においてより詳細に説明されるように、例えば、20〜1000Hz、又は20〜100Hzの範囲内としての、100μsec〜0.10秒のオーダーのものになることが期待される(すなわち10〜10,000Hzの範囲内の周波数におけるパルス化)。
【0029】
パルスサイクルの0トルクの部分は、概念的には、モータを遮断することと見なされ得るだろう − ただし、多くの場合、モータはそれらの周期の間に実際に遮断していなくてもよく、又は「0トルク」期間の部分のみ遮断していてもよい。
【0030】
多くの電気機械は、交番電流を用いて動作するように設計されている。
図2B〜
図2Dは、モータとして − 例えば、三相誘導モータとして動作している電気機械に入力され得る連続交番電流とパルス化交番電流との相違を示すプロットである。各プロットにおいては、電流が縦軸上にプロットされ、時間が横軸に沿ってプロットされている。
【0031】
図2Bは、電気機械へ送出される従来の正弦波三相入力電流42a、42b、及び42cを示す。曲線42bによって表される相Bは、42aによって表される相より120度だけ先行する。曲線42cによって表される相Cは相Bより120度だけ先行する。正弦波周期はτである。三相入力電力42は連続的であり(パルス化されていない)、およそ50アンペアの指定された最大振幅を有する。50アンペアは単なる代表的な最大電流にすぎず、最大電流は任意の値を有し得ることを理解されたい。
【0032】
図2C及び
図2Dは、50%のデューティサイクル及びおよそ100アンペアのピーク振幅を各々有する、異なるパルス化三相電流44a、44b、及び44c、並びに46a、46b、及び46cの2つの例を示す。
図2Bにおいて見られるように、ベースの正弦波の周期はτである。しかし、今度は、正弦波はオン及びオフと変調される。よくあるように、モータ速度が同じであり、発生されるトルクが電流に実質的に比例すると仮定すると、
図2C及び
図2Dにおける送出電流は、
図2Bの連続的に印加される三相入力電流と同じ平均トルクを生み出す。パルス化電流44a〜c及び46a〜cの間の相違は、それらのそれぞれの電流パルスの継続時間、及び交互配置された「オフ」期間である。
図2Cでは、電流パルス44a〜cは、等しい長さの「オフ」期間を交互配置されている。各オン及びオフ期間の長さは2τである。
図2Dでは、電流パルス46a〜c及び交互配置された「オフ」期間は、この場合も先と同様に、等しい継続時間を有する。この場合には、継続時間はτ/2である。どちらの例でも、デューティサイクルは50%である。しかし、「オン」及び「オフ」時間分の継続時間が異なる。すなわち、パルス変調の周波数が異なる。パルス変調の周波数は、用いられる電気機械の種類、騒音及び振動の考慮事項、現在の動作ロータ速度、並びに他の因子に基づいて変化し得る。
【0033】
図2C〜
図2Dは、「オン」モータ駆動パルスが均等に離間されており、モータが定常状態の所望の出力レベルで動作させられる適用物を示す。このようなアプローチは多くの状況においてうまく機能するが、必要条件ではない。デューティサイクルは50%である必要はなく、所望の平均出力トルクに一致するよう調整することができる。また、オン/オフパルスの位相も、印加されるAC電力の位相と同期させられる必要はない。それゆえ、モータ駆動パルスの相対サイズ及び/又はタイミングは、それらが平均して所望の平均トルクを送出する限り、変更することができる。
【0034】
電力変換器及びシステム効率
多種多様な異なる電気機械が存在し、各機械はその独自の効率特性を有する。さらに、異なる動作速度において、電気機械は、
図1の大まかな見直しから明らかであるべきであるように、異なる効率曲線を有することになる。したがって、パルス化制御が効率向上をもたらすことができる動作領域は、特定の電気機械の特性及び現在の動作ロータ速度を含む因子に基づいて大幅に変化することになる。
【0035】
AC電気機械がバッテリ又は他のDC電力源/シンク(蓄積装置)と併せて用いられるときには、電力変換器(例えば、インバータ及び整流器)が、通例、DC及びAC電力の間を変換するために用いられることになる。例えば、バッテリ又はキャパシタなどのDC電源から受電された電力を、モータに印加されるAC入力電力に変換するために、インバータが用いられる。逆に、発電機として動作している電気機械から受電されたAC電力をDC出力電力に変換するために、整流器が用いられる。いくつかの電力変換器は、電気機械がモータとして機能しているのか、それとも発電機として機能しているのかに依存して、インバータ又は整流器のいずれかとして機能し得る。
【0036】
電力変換器のエネルギー変換効率は、また、通例、変換器の動作範囲にわたって変化することになる。例えば、
図5は、2010トヨタ・プリウスのインバータ(すなわち、
図1において示されるモータのためのインバータ)のためのインバータエネルギー変換効率マップであると理解される。図示のインバータのエネルギー変換効率は極めて良いが、その効率はまた、特定の領域内で顕著に − より低いトルク出力において、及びより低いモータ速度において最も著しく − 降下する。それゆえ、インバータ/電気モータの複合の部分であるモータの制御を最適化する際には、モータ単独のエネルギー変換効率とは対照的に、インバータ/電気モータシステム全体のエネルギー変換効率を考慮することが望ましい。同様に、整流器/発電機システムの部分である発電機の制御を最適化する際には、発電機単独のエネルギー変換効率とは対照的に、整流器/発電機システム全体のエネルギー変換効率を考慮することが望ましい。
【0037】
好ましくは、電気機械のパルス化制御は、パルス化の間にエネルギー変換に影響を及ぼす構成要素のうちのいずれか/全ての効率を説明するためにモデル化されることになる。例えば、AC電気モータのための電力がバッテリから引き出されるときには、最良のエネルギー変換効率を送出するモータ駆動信号を決定する際に、インバータ及びモータ効率に加えて、バッテリの電力送出効率、構成要素の間の配線損失、及び任意の他の損失因子を考慮することができる。
【0038】
概して、電力変換器/電気機械システムの全体的エネルギー変換効率は、変換器変換効率・掛ける・電気機械変換効率・掛ける・他の構成要素の送出効率の積の関数である。それゆえ、最大システムエネルギー変換効率を有するパルス化駆動信号のパラメータは、モータ自体のための最良のエネルギー変換効率をもたらし得るパラメータとは異なり得ることを理解されたい。
【0039】
図6は、複合型インバータ/AC電気モータのための代表的なエネルギー変換効率マップである。より具体的には、
図6は、Teslaインバータ/モータ推進システムの総合効率を示す。インバータ及び電気モータが協働するため、最良の全体的電気モータシステムエネルギー変換効率は、電気モータのエネルギー変換効率マップを単独で用いるのではなく、総合システムエネルギー変換効率マップに基づいてパルス電圧及び対応するデューティサイクルを選択することによって、最適化することができる。
【0040】
多くの場合、特定の電気機械システム(例えば、複合型電力変換器/電気機械、バッテリ/電力変換器/電気機械等)のためのエネルギー変換効率マップは電気機械自体のための効率マップよりも複雑になり得る。それゆえ、最大効率曲線の上方に局所的効率ピークが存在し得る。すなわち、所与のモータ速度において、そのモータ速度における動作のための「最大」可能効率の上方にある特定のトルク出力における動作が、最大効率曲線の上方にあるが、その特定のトルク出力の下方にある中間トルク出力の範囲よりも効率が高くなり得る、エネルギー変換効率マップの領域が存在し得る。1つのこのような領域が
図6において61と指定されている。エネルギー変換効率マップがこの種のトポグラフィを有するときには、局所的効率ピークにおけるパルス化動作が、それらの中間出力レベルにおける連続動作よりも効率が高くなり得ることを理解されたい。このような状況では、このような中間トルク出力を送出するために、モータを局所的効率ピークのレベルでパルス化することができる。
【0041】
パルス化システム制御
図3は、電気機械を上述の仕方で制御するために適した制御アーキテクチャを示す。本実施形態では、システム100は、機械コントローラ110と、パルスコントローラ(パルス発生器)120と、電源/シンク130と、電力コントローラ/変換器140と、電気機械160とを含む。パルスコントローラ120は、パルス化動作が要求されたときに、電気機械160のパルス化のタイミングを制御/指示する任務を負う。
図3に示される実施形態では、パルスコントローラは、その機能の説明を容易にするために、機械コントローラ110とは別個になった構成要素として示されている。しかし、様々な実施形態では、パルスコントローラは、機械コントローラ110の部分として、別個の構成要素として、電力コントローラ/変換器140の部分として、又は他の適切な形態で実施され得る。
【0042】
電気機械160がモータとして動作させられるときには、機械コントローラはモータコントローラとして機能し、電力コントローラ/変換器140は、電源130から受電された電力132を、モータ160を駆動するために適した形態に変換する任務を負う。逆に、機械160が発電機として動作させられるときには、機械コントローラ110は発電機コントローラとして機能し、電力コントローラ/変換器140は、発電機から受電された電力を、電力シンク130への送出のために適した形態に変換する。電源/シンクが電力を、電気機械によって必要とされる、又はそれによって出力される形態で直接供給又は受電することができる諸実施形態では、電力コントローラ140は、概念的に、所望のパルス化を促進するためにモータを単にオン及びオフにするスイッチ又は論理乗算器の形態を取ることができる。
【0043】
電源/シンク130は任意の好適な形態を取ることができる。実装形態によっては、電源/シンクはバッテリ又はキャパシタの形態を取り得る。他の実装形態では、供給源は、送電網(例えば、「壁面電源」)、太陽光発電システム、又は任意の他の利用可能な供給源であり得る。同様に、シンクは、電気負荷(電気的に動作させられる機械若しくは機器、建物、工場、住宅等など)、送電網、又は電力を使用若しくは蓄積する任意の他のシステムであり得る。
【0044】
電力コントローラ/変換器140もまた、多種多様な異なる形態を取ることができる。電源/シンク130がDC電源であり、電気機械160がACモータであるときには、電力コントローラ/変換器140はインバータの形態を取ることができる。逆に、電源/シンク130がDC電力シンクであり、電気機械160がAC発電機であるときには、電力コントローラ/変換器140は整流器の形態を取ることができる。電源/シンク130及び電気機械の両方がAC構成要素であるときには、電力コントローラ/変換器140は双方向性又は4象限電力変換器を含み得る。
【0045】
図3では、要求出力が113とラベル付けされ、電気機械によって送出されるか、又は受け取られるトルクが161とラベル付けされ、モータ/発電機速度が164とラベル付けされている。実施形態によっては、機械コントローラ110は、パルス化モータ制御が所望され、及び/又は適切である動作領域、並びに特定の動作条件のために適した特定のデューティサイクルを規定するパルス化動作マップの役割を果たす(例えば、ルックアップ表としての)データ構造115を含む。
【0046】
所望のデューティサイクルが決定されると、モータを駆動するために用いられるパルスの継続時間及び性質を多種多様な仕方で決定/生成することができる。以下においてより詳細に説明されるように、1つの比較的単純なアプローチは、パルス幅変調(pulse width modulation、PWM)コントローラをパルスコントローラ120として用いることである。
【0047】
図3では、論理乗算器123は、パルス化制御信号124・掛ける・機械コントローラ110によって出力された電力レベル信号119を乗算し、電力変換器制御信号128を作成するものとして示されている。論理乗算器123は説明の目的のために示されており、実際には、乗算器123の機能は、機械コントローラ110によって、電力変換器140によって、又は他の好適な仕方で達成することができることを理解されたい。例えば、実施形態によっては、機械コントローラ110は、電力変換器140の出力を、デューティサイクルの「オフ」位相の間は、単に0に、及びデューティサイクルの「オン」位相の間は、所望の動作出力レベル(例えば、現在の機械速度のための最も効率の高い出力レベル)に設定し得る。
【0048】
図4は、機械コントローラ110によって、電気機械160に、所望のトルクを効率的に送出させるために遂行され得る制御フローを示す。説明を簡単にするために、電気機械160がモータとして機能する一実施形態が説明される。この構成では、電源/シンク130は電源の役割を果たし、機械コントローラ110はモータコントローラとして機能する。
【0049】
最初に、モータコントローラ110は、ブロック171によって表されるように、現在要求されているモータ出力113、及び現在のモータ速度164などの任意の必要とされるモータ状態情報を受け取る。次に、モータコントローラ110は、決定ブロック172によって表されるように、要求出力がパルス化制御範囲内にあるかどうかを決定する。この決定は任意の所望の仕方で行うことができる。例として、実施形態によっては、パルス化制御が適切であるかどうかを決定するために、ルックアップ表115又は他の好適なデータ構造を用いることができる。実装形態によっては、単純なルックアップ表が、パルス化制御が様々なモータ速度のために適し得る最大トルクレベルを識別し得る。このような実装形態では、現在のモータ速度が、パルス化制御が現在の動作条件下において適切である最大トルクレベルを取得するために、ルックアップ表に対する指数として用いられ得る。次に、取得された最大トルク値を要求トルクと比較し、要求出力がパルス化制御範囲内にあるかどうかを決定することができる。
【0050】
他の実施形態では、ルックアップ表115は、現在の動作条件に基づくパルス化動作のための望ましいデューティサイクルなどの追加の情報を提供し得る。1つのこのような実装形態では、モータ速度及びトルク要求がルックアップ表のための指数として用いられ得、ルックアップ表内の各項目は所望のデューティサイクルを指示し、実際のトルク及び/又はモータ速度が、表内に示される指数値の間にあるときには、動作デューティサイクルを決定するために補間が用いられる。
【0051】
要求トルク/現在の動作条件が任意の理由のためにパルス化制御範囲の外部にある場合には、このとき、ブロック172から流れる「いいえ」の分岐によって表されるように、伝統的な(すなわち、連続的な/パルス化されない)モータ制御が用いられる。それゆえ、パルス化は用いられず、電力変換器140は、ブロック174によって表されるように、従来の仕方で、モータを、要求出力113を送出するよう駆動するために適したレベルで電力をモータ160へ送出するよう指示される。逆に、要求トルク/現在の動作条件がパルス化制御範囲内にある場合には、このとき、ブロック172から流れる「はい」の分岐によって表されるように、パルス化制御が利用される。このような実施形態では、モータコントローラ110は、電力変換器140に、電力を、パルス化された様態でモータへ送出するよう指示することになる。「オン」パルスの間に、電力変換器140は、 − 通例、(必ずしもそうとは限らないが)現在のモータ速度のための最大効率動作レベル又はその付近にあり得る好ましい出力レベルで − 電力を送出するように指示される。「オフ」パルスの間に、モータは、理想的には、0トルクを出力する。実施形態によっては、パルス化のタイミングは、以下においてより詳細に説明されるように、パルスコントローラ120によって制御される。
【0052】
パルス化動作を促進するために、モータコントローラ110は、現在のモータ速度におけるパルス化動作のための所望の出力レベル(ブロック175)、及び所望のデューティサイクル(ブロック176)を決定する(これは、好ましくは、現在のモータ速度におけるシステムの最大効率エネルギー変換出力レベル又はその付近にある − ただし、他のエネルギー効率の高いレベルを必要に応じて用いることもできる)。次に、モータコントローラ及びパルスコントローラは、電力変換器に、所望のデューティサイクルを指定電力レベルで実施するよう指示する(ブロック178)。概念的に、これは、電力がモータに供給される時間の割合が所望のデューティサイクルに対応し、電力レベルが好ましい出力レベルに対応するよう、電源を比較的高い周波数で実効的にオン及びオフにすることによって達成され得る。実施形態によっては、デューティサイクルの「オフ」部分は、電力コントローラ/変換器140に、モータを、0トルクを送出するよう駆動するよう指示することによって実施され得る。
【0053】
電力がパルス化される周波数は、好ましくは、機械コントローラ110又はパルスコントローラ120によって決定される。実施形態によっては、パルス化周波数をモータの全ての動作のために固定することができ、その一方で、他のものにおいては、それは、モータ速度、トルク要求等などの動作条件に基づいて変化し得る。例えば、実施形態によっては、パルス化周波数はルックアップ表の使用を通じて決定することができる。このような実施形態では、モータ速度、トルク要求等などの適切な指数を用いて現在のモータ動作条件のための適切なパルス化周波数を調べることができる。他の諸実施形態では、パルス化周波数は任意の所与の動作条件のために必ずしも固定されず、パルスコントローラ120によって規定されたように変化し得る。この種の変化は、後述されるとおりのパルスの決定においてシグマデルタ変換を用いるときに一般的である。いくつかの特定の実施形態では、パルス化周波数は、少なくとも、モータのいくつかの動作領域内において、モータ速度の関数として比例的に変化し得る。
【0054】
図4は、提供される機能性の明確な理解を促進するために、ステップのいくつかを順次に示しているが、ステップの多くは、実際には、組み合わせること、及び/又は順序を変更することができることを理解されたい。例えば、要求出力113及び現在の電気モータ速度164を指数として用いる多次元ルックアップ表115内の項目は、現在の動作のために適した好ましい出力レベル及びデューティサイクルの両方を指示し得る。
【0055】
実施形態によっては、ルックアップ表内に記憶された値(1(100%)のデューティサイクル又は他の好適なワイルドカードなど)を、パルス化が望ましくないことを指示するために任意選択的に用いることができる。無論、多種多様な他の規約及びデータ構造を、同じ情報を提供するために用いることができる。
【0056】
実施形態によっては、パルス化制御表を、全てのレベルにおける動作を規定するより大きな表内に組み込むことができ、これにより、従来の制御が所望されるのか、それともパルス化制御が所望されるのかにかかわらず、動作フローは同じになる。従来の制御は、単に、1のデューティサイクル、及び適切なモータ入力電力レベルによって規定され、パルス化制御は、より小さいデューティサイクル、及び好ましいモータ入力電力レベルの使用によって規定されることが望まれる。
【0057】
実施形態によっては、いくつかの動作領域では、たとえ、効率の改善が可能であるときであっても、他の考慮事項に基づいて、パルス化の使用を回避することが望ましいことがある。以下においてより詳細に説明されるように、これらの他の考慮事項は、因子、このような騒音及び振動、コントローラの実際のスイッチング能力等に基づき得る。
【0058】
本明細書において説明される機械コントローラは、マイクロプロセッサなどの処理ユニット上で実行されるソフトウェア若しくはファームウェアを用いること、プログラマブル論理を用いること、特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit、ASIC)を用いること、個別論理等を用いること、及び/又は上述のものの任意の組み合わせを用いることを含む、多種多様な異なる仕方で実施され得る。
【0059】
多くの状況では、既存の電気機械及び機械コントローラを、上述の恩恵を得るために容易にレトロフィットすることができることが注目に値する。例えば、多くの機械コントローラは、上述の制御における使用のために適した制御入力パラメータ(例えば、要求モータ出力及び現在のモータ速度)へのアクセスを元々有する処理ユニット上で実行されるソフトウェア又はファームウェアを用いて実施される。このような場合には、比較的単純なソフトウェア更新をインストールすることによって著しい効率改善を得ることが可能であり得る。
【0060】
パルス発生
以上において示唆されたように、所望のデューティサイクルが決定されると、モータを駆動するために用いられるパルスの継続時間及び性質を多種多様な仕方で決定/生成することができる。1つの比較的単純なアプローチは、パルス幅変調(PWM)コントローラをパルスコントローラ120として用いることである。
【0061】
パルス幅変調は、一般的に、AC電気モータ制御及びDCブラシレスモータ制御を含む、特定の種類のモータ制御において用いられるが、このようなパルス幅変調は制御方式において非常に異なる場所で用いられることに留意されたい。具体的には、AC誘導モータが(DC電力を提供する)バッテリによって給電されるときには、インバータが、DC電力からAC電力への変換を促進するために通例用いられる。一般的に、PWMコントローラ(図示せず)が、インバータによって発生されるAC信号の振幅を制御するためにインバータコントローラの部分として用いられる。インバータによって発生された連続的なAC電力は、その後、所望の周波数及び振幅で電気モータに供給される。PWMコントローラは、ブラシレスDCモータにおいて、モータに供給される連続信号の振幅を制御するために同様に用いられる。
【0062】
本明細書において利用されるパルス化電力は極めて異なる。具体的には、電力変換器140は、
図2A〜
図2Dを参照して上述されたように、電気機械160において高効率トルク出力(例えば、ピーク効率トルク)の生成と無トルクとを周期的にスイッチングするよう制御される。誘導モータでは、この結果、モータ巻線内の磁束は実効的に0に降下する。
【0063】
伝統的なパルス幅変調は多くの適用物において機能することになるが、潜在的な欠点は、パルス化が、モータ及び/又は電源がオン及びオフにされる際の望ましくない振動若しくは騒音を発生する可能性である。期間にわたる同じパルスサイクルでのモータの定常状態動作はこのような振動を特に発生しやすい。以下においてより詳細に説明されるいくつかを含む、このようなリスクを軽減するための方法が多数存在する。別のアプローチは、いくらかのディザを、指令されるパルスサイクルに加えることである。
【0064】
以上において示唆されたように、パルス化動作の間のサイクルごとの周期(又は逆にパルス化周波数)は、設計の必要、及び制御されるシステムの性質に基づいて数マイクロ秒〜10分の数秒以上の範囲で広範に変化し得る。種々の因子がサイクル周期の選定に影響を及ぼすことになる。これらは、モータの能力及び特性、スイッチングに関連付けられる過渡的効果、潜在的なNVH(騒音、振動、及びハーシュネス)の懸念、予想される動作負荷等などの因子を含む。概して、任意の特定の適用物のために選択されるパルス化周波数は、NVHの考慮事項、電気機械の必要とされる応答性、パルス化に関連付けられる効率損失等などの因子を含むトレードオフを伴うことになる。例えば、いくつかの自動車適用物では、20Hz〜1000Hzのオーダーのパルス化周波数がうまく機能すると考えられる。
【0065】
シグマデルタ制御
次に
図7を参照して、パルス発生器の別の実施形態が説明される。図示のアーキテクチャは、本実施形態では、シグマデルタ変換器190がパルス発生器120として用いられることを除いて、
図3に示されるアーキテクチャと同様である。シグマデルタ制御に精通した人々によって理解され得るように、シグマデルタ制御の特性は、それがノイズシェーピングを容易にし、アイドルトーンを低減/解消し、騒音をより高い周波数に押しやる傾向を有することである。騒音がランダム化され、及び/又は人間の知覚の限界を上回る周波数に広げられると、このような騒音及び/又は振動はいずれもモータのユーザにとって煩わしくないため、騒音はあまり心配でなくなる。したがって、自動車電気モータ適用物の状況下では、シグマデルタ制御の使用は、車両の乗員がパルス化モータ制御のゆえに騒音又は振動を知覚する可能性を低減する傾向を有する。
【0066】
多種多様な異なるシグマデルタ変換器がシグマデルタ変換器190として用いられ得、シグマデルタ変換器は種々の異なるフィードバック方式を利用し得る。例として、1次シグマデルタ変換がうまく機能する。1次シグマデルタ変換器を用いることの1つの特に望ましい特徴は、コントローラが本質的に安定していることである。1次シグマデルタ変換器がうまく機能するが、他の諸実施形態では、より高次のシグマデルタ変換器(例えば、1次シグマデルタ変換器よりも多数の積分器を利用するシグマデルタ変換器)が用いられ得ることを理解されたい。例えば、(例えば、リッチーアーキテクチャを用いる変換器としての)3次シグマデルタ変換器、又はより高次のシグマデルタ変換器が用いられ得る。
【0067】
概して、シグマデルタ変換器は、アルゴリズム的に、デジタル的に、アナログ構成要素を用いて、及び/又はハイブリッドアプローチを用いて実施され得る。例えば、様々な実施形態では、シグマデルタ変換器は、プロセッサ上で、FPGAなどのプログラマブル論理上で、ASICなどの回路機構内で、デジタル信号プロセッサ(digital signal processor、DSP)上で、アナログ、デジタル及び/又はハイブリッド構成要素を用いて、或いは任意の/或いはハードウェア及び/又はソフトウェアの他の好適な組み合わせを用いて実施され得る。様々な実施形態では、シグマデルタコントローラは、サンプルデータシグマデルタ、連続時間シグマデルタ、差動シグマデルタ、又は任意の他の好適なシグマデルタ実施方式を利用し得る。
【0068】
全体が本明細書において参照により組み込まれる、米国特許第8,099,224号及び米国特許出願公開第2018−0216551号が、多数の代表的なシグマデルタ変換器設計を記載している。それらに記載されている適用物は、異なる種類の動力装置を制御するためのものであるが、同様の種類の変換器が本出願のために用いられ得る。
【0069】
次に
図8を参照して、代表的な1次シグマデルタ変換器200が説明される。1次シグマデルタ変換器200は、差動増幅器201、積分器203、及びコンパレータ205を含む。差動増幅器201は入力信号209とフィードバック信号212との差を増幅し、積分器203に供給される差信号216を出力する。積分器203は差信号を積分し、コンパレータ205に供給される積分器出力信号217を出力する。コンパレータ205は1ビット量子化器の役割を果たし、入力信号209を表すパルス化(高/低)デジタル制御信号220を出力する。コンパレータ216から出力される1ビット制御信号220は、積分器203の出力を基準電圧と比較することによって発生される。出力は実効的に、シグマデルタ変換器のクロックの周波数で出力される1及び0の列である。低信号は電源からの0電力の要求として扱われ、高信号は、現在のモータ速度のための最も効率の高い(又は他の指定された)電力レベルの要求として扱われる。
【0070】
概して、高品質制御を確実にするために、シグマデルタ変換器のためのクロック信号226(及びそれゆえ、コンパレータ205の出力ストリーム)が、入力信号の良好な分解能及びオーバーサンプリングをもたらすべく、入力信号209の変化速度の予想周波数の何倍にもなる周波数を有することが望ましい。概して、入力信号(概して、運転者のトルク要求 − 例えば、アクセルペダル − に基づく)が5Hz未満の速度で変化する傾向を有する自動車型の適用物のためには、100kHz〜1MHz以上のオーダーのクロック周波数がうまく機能する。すなわち、コンパレータ205の出力は少なくとも100kHz〜1MHzの速度でサンプリングされる(ただし、様々な実施形態では、より高いサンプリング速度及びより低いサンプリング速度の両方が用いられ得る)。コンパレータ216に提供されるクロック信号226は任意の好適な発生源から到来し得る。例えば、実施形態によっては、クロック信号226は水晶発振器によって提供される。
【0071】
様々な実施形態では、コンパレータ205は、所望の制約をパルス化に強制するように構成され得る(これは、時として、本明細書において、機能的にインテリジェントなコンパレータを演じると言及される)。単純な一例では、高度のシグマデルタ制御に精通した人々によって理解され得るように、コンパレータは、最小及び/又は最大「オン」時間、最小(及び/又は最大)「オフ」時間等を規定するように制約され得る。このような制約は、パルス化が所望の周波数及び「オン」パルス長のパラメータ内で遂行されることを確実にするのに役立ち得る。他の諸実施形態では、より高度の制約がコンパレータによって課され得る。例えば、所望の場合には、パルスサイクルディザ223をコンパレータに加えることができる。
【0072】
実施形態によっては、入力信号209及びフィードバック信号212をアンチエイリアスフィルタリングすることが望ましい場合がある。アンチエイリアス機能性は、シグマデルタ制御回路の部分として提供することができるか、又はそれは、シグマデルタ制御回路に先んずるアンチエイリアスフィルタとして提供され得るか、又はそれは任意の他の好適な形態で提供され得る。いくつかの3次アナログ連続時間シグマデルタ制御回路では、最初の積分器がアンチエイリアス機能性を提供する。すなわち、それが実効的にローパスフィルタの役割を果たす。
【0073】
他の実施形態では、モータ速度に基づく可変クロックが固定クロックの代わりに用いられ得る。このような構成が、モータ速度に基づく可変クロックを用いる
図8のシグマデルタ変換器において概略的に示される。具体的には、クロック信号は、モータ速度とともに比例的に変化するように構成されている。モータが高速で動作している際の可変速度クロックの使用は、コンパレータの出力がモータ速度とより良好に同期させられることを確実にするという利点を有する。これは、結果的に、変換器の全体設計を単純にすることを助けることができる。クロックは、モータ速度の指示(例えば、タコメータ信号)によって駆動される位相同期ループ229を利用することによって、モータ速度と容易に同期させることができる。次に、逓倍器231が、所望のサンプリング速度を達成するべくモータ速度信号164を逓倍するために用いられ得る。モータ速度の逓倍は任意の特定のシステムの必要に基づいて広範に変化し得る。例として、適用物によっては、例えば、10,000倍としての、10〜1,000,000倍のオーダーの周波数逓倍が適切である。別の例では、1kHz〜数百キロヘルツのオーダーのシグマデルタクロック速度が多くの自動車適用物のために適していると考えられる。
【0074】
モータ速度ベースの可変クロックアプローチを用いることの課題は、モータが停止されているか、又は特定の低いモータ速度で動作している時には、それがあまりうまく機能しないことである。いくつかの異なる技法を、このような限界を緩和するために用いることができる。例として、モータが停止され、及び/又は指定されたアイドル閾値未満(例えば、600RPM未満)の速度を動作している時に、固定クロックを用いることができる。他の諸実施形態では、指定された開始及び停止ルーチンを有するか、或いは低速動作の間は異なる動作モードに切り替える、機能的にインテリジェントなコンパレータが用いられ得る。さらに他の諸実施形態では、非直線的RPMクロックがより低い速度における動作のために用いられ得る。
【0075】
シグマデルタ変換器200を構成することができるいくつかの仕方が存在する。(
図8に示される実施形態と同様の)一実施形態では、入力信号209は所望のモータデューティサイクルである。当該実施形態では、フィードバック信号212は、
図7からのパルス化制御信号124に対応する、パルス化デジタル制御信号220である。本実施形態では、パルス化制御信号220は所望のモータデューティサイクルを表す。
【0076】
別の実施形態(図示せず)では、入力信号209は、所望のトルク又は所望のトルク割合を表すと考えることができ、フィードバック信号はパルス化デジタル制御信号220の代わりにモータ161のトルク出力に基づくことができる。このような実施形態では、フィードバックが、電源及びモータを0と最も効率の高い(又は他の所望の)動作状態との間で行ったり来たりスイッチングすることに起因する任意の潜在的トルク損失又は非効率性を説明するため、フィードバックはパルス化制御信号220よりもモータの実際のトルク出力を良く表す。
【0077】
さらに他の諸実施形態では、フィードバック信号212は、パルス化制御信号220、及びモータ161のトルク出力のスケーリングされた組み合わせであり得る。より高次のシグマデルタ変換器が用いられるときには、パルス化制御信号、モータトルク出力、又はその両方をフィードバック源として用いて、所望の適応制御のための必要に応じて、異なってスケーリングされたフィードバックを異なる積分器に提供することができる。
【0078】
以上において示唆されたように、1次シグマデルタ変換器は(全てのシグマデルタ変換器と同様に)、騒音をより高い周波数に押しやるのに役立つ。しかし、1次シグマデルタ変換は、 − 不所望の騒音又は振動の発生源となり得る − アイドルトーンの発生を免れない。アイドルトーンを最小限に抑えるか、又は解消することを助ける1つの仕方は、ディザをシステムに加えることである。このようなディザはシステム内の数多くの場所において加えることができる。
図8に示される実施形態では、任意選択的な疑似ランダムディザ発生器223(破線で示されている)が任意選択的なディザ信号224を差動増幅器201への追加の入力として提供し得る。他の諸実施形態では、ディザは、代わりに、例えば、コンパレータ205への追加の入力として、シグマデルタ変換器200内の他の場所で導入されてもよい。より高次のシグマデルタ変換器はアイドルトーンの影響をより受けにくく、したがって、ディザをこのようなシステムに加える恩恵はあまりない。したがって、通例、ディザはこのようなシステムでは(それを用いることは可能であるが)用いられないであろう。
【0079】
上述された諸実施形態では、パルス幅変調及びシグマデルタ変換が、パルス化制御信号を発生するために用いられる。パルス幅変調及びシグマデルタ変換は、入力信号を表すために用いることができる2つの種類の変換器である。上述のシグマデルタ変換器のうちのいくつかは、オーバーサンプリングされた変換を呈し、様々な代替的な諸実施形態では、他のオーバーサンプリングされる変換器をシグマデルタ変換の代わりに用いることができる。さらに他の諸実施形態では、他の種類の変換器も同様に用いることができる。変換器は、様々なパルス高若しくはパルス密度変調方式、符号分割多元接続(code division multiple access、CDMA)指向変調を含む、多種多様な変調方式を採用し得るか、又はパルス発生器が適宜調整される限り、他の変調方式も、入力信号を表すために用いられ得ることを理解されたい。
【0080】
当業者によって理解され得るように、スイッチトリラクタンスモータは、同様のサイズの誘導モータと比べたときに比較的安価である強力なモータである。しかし、スイッチトリラクタンスモータは、それらのスイッチングのゆえに騒音が大きく、振動の影響を受やすい傾向を有し、これはそれらを多数の適用物における使用に適さないものにする。シグマデルタ変換の特徴は、騒音を成形し、騒音を人間にとってより煩わしさの少ない(又は煩わしくない)周波数へ押しやるその能力である。それゆえ、シグマデルタ又は他のノイズシェーピング変換技法を用いてスイッチトリラクタンスモータをパルス化された様態で制御することは、スイッチトリラクタンスモータの使用を、それらが現在使用されていない多数の適用物において実用的なものにする可能性を有する。
【0081】
移行の統御
モータの固有インダクタンスはオン及びオフのモータ状態の間の電流/電力階段を一時的に遅延させる/遅くすることができる。連続(非パルス化)動作の間は、これらの過渡的効果が全体的なモータ動作に及ぼす影響は比較的最小限にとどまる傾向を有する。しかし、本明細書において企図されるように高速パルス化が用いられるときには、過渡的効果はより大きな正味の影響を及ぼし得、したがって、モータ応答性に注目する、より強い動機付けがある。この課題の性質が
図9A〜
図9Bを参照して説明される。
【0082】
上述されたように、パルス化モータ制御の一般的目標は、モータを、モータ「オン」期間の間には、現在のモータ速度のためのその最も効率の高いレベルで動作させ(給電し)、モータ「オフ」期間の間には、電力を切断する(0トルクを提供する)ことである。それゆえ、理想的には、モータ電力の「オン」及び「オフ」状態の間の電力移行は離散的な階段になり得る。これが、50%のデューティサイクルにおけるパルス化モータ制御のための理想的な/所望のモータ駆動電力を示す
図9Aに概略的に示されている。
図9Aにおいて見られるように、「オン」パルス302と「オフ」期間304との間の移行は、理想的には、階段である。実際には、電力信号の立ち上がり及び立ち下がりを遅くする、モータ及び(用いられるときには)インバータの双方の誘導性の側面が存在する。特定のモータの実際の応答はモータの電気特性とともに広範に変化することになる。概して、モータの実際の入力電力は、指令されるモータ駆動電力の階段状変化に応じていくらか指数関数的に立ち上がり、立ち下がることになる。
図9Bに、立ち上がり及び立ち下がりの性質が概略的に示されている。同図において見られるように、電力信号が0から所望の「オン」電力レベルまで実際に立ち上がるために必要とされるランプアップ期間(立ち上がり時間)306、及び電力信号が「オン」電力レベルから0まで実際に立ち下がるために必要とされるランプダウン期間(立ち下がり時間)308が存在する。
【0083】
電力ランプアップ及びランプダウン期間の間、モータは駆動され続ける。しかし、それらの期間の間は、
図1を参照して容易に理解することができるように、モータの動作は、変化する様態で効率が低下する。概して、大部分の所与の動作速度について、モータ効率は、動作電力が最大効率線16から0に向かって降下するにつれて降下することになり、エネルギー変換効率は、電力レベルが0に接近するにつれて顕著に悪化する。それゆえ、電力ランプアップ及びランプダウン期間によって表されるパルスひずみは、上述のパルス化動作によって獲得することができる効率向上を損ねる。概して、パルス長に対する立ち上がり/立ち下がり時間の比が小さいほど、過渡的なスイッチング効果がパルス化の間におけるモータのエネルギー変換効率に及ぼす影響は小さい。
【0084】
図9Bに示される過渡的効果は、問題の性質を例示する目的のために示されており、必ずしも、任意の特定のモータの動作に関連付けられる立ち上がり/立ち下がり時間を反映しているわけではないことを理解されたい。パルス長に対する立ち上がり時間の比の相対的スケールは、利用可能な電源電圧、及び用いられるモータの特性(これは、主として、立ち上がり及び立ち下がり時間を規定する)、パルス化の周波数(これは、主として、用いられる制御方式によって規定される)、及びパルス幅(これは、制御方式及びモータ負荷によって規定される)に基づいて広範に変化し得る。パルス化がモータ応答と比べてゆっくりしている場合には、立ち上がり/立ち下がり時間はパルス幅のわずかな割合になり得、過渡的なスイッチング効果がモータ性能に及ぼす影響は最小限になり得る。逆に、パルス化が非常に高速であり、及び/又はモータ応答が遅い場合には、パルス幅に対する立ち上がり/立ち下がり時間の比は極めて大きくなり得、パルス幅を超えさえし得る。注意深く統御されなければ、スイッチングに関連付けられる過渡的な効率損失は、パルス化動作によって達成することができる理論的な向上を大幅に低減するか、又は解消しさえし得る。それゆえ、任意の特定の適用物のために適したパルス化周波数及び制御方式を決定する際には、パルス化動作に関連付けられる過渡的なスイッチング効果を考慮することが重要である。
【0085】
電力立ち上がり及び立ち下がり時間を改善するために、多数の技法を用いることができる。例えば、実施形態によっては、モータインダクタンスに基づく共振キャパシタが採用される。電力立ち上がり及び立ち下がり時間を100分の1以上(多くの場合、実質的にそれ以上)低減するために、共振キャパシタを用いることができ、それゆえ、それらは、パルス化動作に関連付けられる過渡的なスイッチング効果を大幅に低減することができる。したがって、パルス化制御を念頭に置いて設計されているか、又は電力パルスに対するモータの過渡応答を改善するよう変更されたモータは、既存のモータよりもパルス化動作からさらに大きく恩恵を受けることができることを理解されたい。
【0086】
他の諸実施形態では、「オン」及び「オフ」モータ状態の間のスイッチングに関連付けられる立ち上がり及び立ち下がり時間を大幅に低減するために、ブースト変換器及び/又はバックブースト変換器が用いられ得る。特定の例では、ブースト変換器が、ブーストキャパシタ(時として本明細書においてキックスタートキャパシタと呼ばれる)を、モータの入力電圧よりも高い電圧へ充電することができる。モータがパルスオンされるたびに、キックスタートキャパシタはより高い電圧をモータに印加し、これは立ち上がり時間を大幅に短縮することができる。
【0087】
同様に、バックブーストキャパシタを充電するために、バックブースト変換器を用いることができる。モータがパルスオフされるたびに、バックブーストキャパシタはモータ巻線の磁場からのエネルギーを蓄積することができ、これは、パルスの過渡的立ち下がり時間を大幅に短縮することができる。
【0088】
ブースト及びバックブーストキャパシタの電圧充電レベル及びキャパシタンスはそれぞれ、モータをパルスオン及びオフすることにそれぞれ関連付けられる過渡的立ち上がり/立ち下がり時間を短縮するよう、モータ並びにその誘導及び抵抗特性のために適切に選定される。好ましくは、ブースト及びバックブーストキャパシタのそれぞれのキャパシタンス及び充電電圧レベルはまた、過渡事象そのものに関連付けられる非効率性、並びにブースト及びバックブースト変換器の使用のゆえに生じ得る、任意の行き過ぎ量の効果を含む全ての側面を考慮して、パルス化の間における全体的なモータ効率を最大化するように選択される。ブースト及びバックブーストキャパシタが、過渡応答を改善するために用いられるため、それらはそれらのそれぞれの使用の合間の期間内に − 例えば、モータオフ期間中に − 各々機を見て再充電され得る。
【0089】
モータ「オフ」過渡事象の間の損失に特に関係する別の因子は、磁場内に蓄積されたエネルギーの散逸に関連する。概して、モータが動作している時はいつでも、モータ内に確立された電磁場が存在することになる。電磁場は、磁気中に蓄積された特定の量のエネルギーを包含する。モータが単純にオフにされた場合には、蓄積されたエネルギーは散逸することになり、これが、磁場中に存在するエネルギーの損失をもたらす。このようなエネルギー損失はいずれも全体的なシステム効率を低下させる。場のエネルギーのうちのいくらかは、モータを実効的にオフにするために、モータへの電流の供給を単純に切断するのではなく、「オフ」サイクルの間に0トルクを送出するようモータのオフ過渡事象を積極的に制御することによって回収することができる。これは、巻線から電力変換器140へ戻る/を通るいくらかの「逆」電流の流れを生じさせ、これにより、そのエネルギーのうちの少なくともいくらかを回収することができる。これは、失われるエネルギーが減り、これにより、システムの効率が改善されることを意味する。さらに、多くの適用物では、(単純に電力変換器をオフにすることとは対照的に)電力変換器140を、0トルクを送出するよう統御することは、より速い移行をもたらすことになる。
【0090】
同様に、発電機の「オフ」サイクルの間には、発電機から引き出される電力を、「オン」サイクルの間にモータ内にたまった蓄積エネルギーの取り込みを効率的に統御するために制御することができる。
【0091】
図11は、過渡制御回路機構343(共振回路、ブースト及びバックブースト回路、及び/又は他の過渡応答改善回路を一緒に、単独で、又は任意の適切な組み合わせで含み得る)を組み込んだ電力変換器/コントローラを示す。図示の実施形態では、機械コントローラ310が電力変換器/コントローラ340のパルス化制御を指示する − それが今度は電気機械160を制御する。過渡制御回路機構343は電力変換器340自体の内部に組み込まれている。他の諸実施形態では、過渡制御回路機構は、同じ機能性を達成するために、電力変換器340とモータ/発電機との間に配置された付加ユニットとして提供されるか、又はモータ/発電機自体の内部に組み込まれ得る(配置は示されていない)。
【0092】
モータの種類及び適用物
上述の説明から、上述のパルス化機械制御は、多種多様な異なる種類の電気モータ及び発電機のエネルギー変換効率を改善するために多種多様な異なる適用物において利用することができることが明らかであるはずである。これらはAC及びDCモータ/発電機の両方を含む。
【0093】
上述のパルス化の恩恵を受け得る数個の代表的な種類の電気機械としては、誘導機(Induction machine、IM)、スイッチトリラクタンス機(switched reluctance machine、SMR)、同期リラクタンス機(Synchronous Reluctance machine、SynRM)、永久磁石同期リラクタンス機(Permanent Magnet Synchronous Reluctance machine、PMaSynRM)、ハイブリッドPMaSynRM、外部励磁AC同期機(SyncAC)、永久磁石同期機(Permanent Magnet Synchronous machine、PMSM)、渦電流機械、ACリニア機械、AC及びDC機械転流式機械、アキシャルフラックスモータ等を含む、非同期及び同期AC電気機械の両方が挙げられる。代表的なDC電気機械としては、ブラシレス型、電気励磁型、永久磁石型、直巻型、分巻型、ブラシ付き型、複巻型、及び他のものが挙げられる。
【0094】
様々な種類の電気モータ及び発電機の構造、制御、及びエネルギー変換効率は大幅に異なるが、ほとんどの電気機械は或る範囲の動作条件にわたって動作するように設計されており、それらのエネルギー変換効率はその動作範囲にわたって − 多くの場合、大幅に − 変化することになる。概して、本明細書において説明される制御原理は、電気機械の動作範囲が、
図1に示される最大効率曲線の同等物の下方の領域を含む場合に、電気機械の効率を改善するために、任意の種類の電気機械に適用することができる。状況によっては、効率向上は、パルス化動作を念頭に置いて電気機械を設計することによって達成することができる。
【0095】
いくつかのモータ設計は、モータ磁束を発生するためにロータ及びステータの両方の上の巻線を利用し、その一方で、他のものは、モータ磁束に寄与するためにロータ又はステータのいずれかの上の永久磁石を用いる。永久磁石を組み込んだモータは0トルクにおいて磁束を有することになり、したがって、通例、回転している時にコア損失を有し、供給電圧を超える逆EMF(back EMF、BEMF)を生み出すことになる。このような適用物では、多くの場合、0トルクを維持するために「トルクオフ」期間の間に小さな電流をモータに提供することが望ましくなる。「無トルク」期間の間に電流を供給する必要性は、パルス化に関連付けられる全体的効率を低下させ、したがって、どの動作範囲がパルス化から恩恵を受けることができるのかを決定する際に考慮されなければならないことを理解されたい。動作領域によっては、トルクオフ期間の間におけるスイッチング及び電流供給に関連付けられる損失は、パルス化に関連付けられる効率向上を超え、これにより、パルス化動作が望ましい動作範囲を低減し得る(又は完全に無くし得る)。しかし、永久磁石を組み込んだ多くの電気機械は、パルス化の使用を通じて機械の全体的効率を改善することができる動作領域を有することになる。例えば、内部永久磁石同期モータ(Internal Permanent Magnet Synchronous Motor、IPMSM)については、パルス化動作のために最も適した動作領域は、弱め界磁が必要とされる閾値速度未満の(又はその付近の)動作速度であると予想される。
【0096】
現在、電気動力装置(例えば、電気モータ)を車両推進システムにおいて用いることへの関心が広がっている。車両推進のために用いられる電気モータは、一般的に、トラクションモータと呼ばれる。自動車空間内においては、近年、トラクションモータを、車両を駆動するために単独で、又は内燃エンジンと組み合わせて(ハイブリッド)利用するための多大な努力がなされてきた。今日では、非同期モータ及び三相誘導モータが自動車適用物において最も一般的に用いられている − それらはどちらも上述のパルス化モータ制御のための良い候補である。自動車適用物は、 − 低速高トルク要求から高速低トルク要求まで、及びその間の全ての − モータが動作することが予想される非常に広範囲の動作条件でよく知られている。ほとんどの駆動条件下において(すなわち、多くの駆動サイクルの大部分の間において)、モータは、それが現在のモータ速度において有する能力よりもはるかに小さいトルクを生み出すよう求められ − 実際に、ほとんどの駆動は、モータの要求出力が最大効率線16を下回る(多くの場合、大幅に下回る)領域内で生じる。
【0097】
図10において、典型的な駆動サイクルの低負荷の性質を見ることができる。同図は、市中走行サイクルのための連邦テスト法(Federal Test Procedure)(FTP−75)を実行するシミュレートされたトラクションモータ/発電機の電力/トルク出力を表す一連の駆動点をプロットしている。駆動点はトルク/速度/効率グラフ上にプロットされている。
図10において見ることができるように、駆動サイクルのかなりの部分は、最大効率曲線16と比べてより低いトルクを必要とする。それゆえ、典型的な駆動サイクルのかなりの部分は、上述のモータ制御アプローチから恩恵(及び多くの場合、多大な恩恵)を得ることができる動作領域内にある。
図10は、出力トルクが必要とされる駆動サイクルのそれらの部分のみを示している。駆動サイクルのいくつかの部分の最中に、電気機械が発電機の機能を果たす回生制動が用いられ得る。回生制動のうちの多くもまた、本明細書において説明されるパルス化制御から恩恵を受けることができる点において行われる。自動車適用物によっては、上述の制御アプローチを実施することによって、7%〜12%以上もの平均的な全体的効率向上が達成可能になると考えられる。効率が7〜12パーセント、より優れていることは、同じ充電で航続距離が7%〜12%、より長くなることにつながり、これは、走行距離不安症が技術の幅広い採用の大きな妨げとなっている自動車適用物の状況においては、大きな利点を有する。要求モータ出力の変動性がより少ない自律運転条件下においては、よりいっそう大きな効率改善が見られ得ることが期待される。
【0098】
自動車及び他の車両適用物においては、電気モータの動作範囲は非常に広くなり得る。これは、部分的には、ほとんどの全電気式車両適用において、電気モータが固定速度比をもって被動構成要素に結合されているという事実によるものである。これは、エンジンと被動構成要素との間の可変速度比を有する中間伝導装置を通例採用した、内燃エンジン動力式車両とは対照的である。
図1において見るかなり明瞭に見ることができるように、電気モータ動作の「スイートスポット」は、多くの場合、中間のモータ速度にある。所望のときには、モータに、時間のうちより多くにおいて、より効率の高い領域内で動作させるために、可変歯車機構を用いることができる。このような歯車機構は伝導装置によって容易に提供することができ、それゆえ、伝導装置を上述のパルス化モータ制御と併せて用いることには潜在的利点がある。伝導装置は歯車のセットを有し得るか、又は連続的に可変であり得るか、又は任意の他の好適な形態を有し得る。このような諸実施形態では、モータコントローラ又は他の好適な制御構成要素を、伝導装置の動作を所望の仕方で指示するように構成することができる。この場合も先と同様に、伝導装置の使用は多種多様な他の(非車両)関連適用物においても有利に採用され得る。
【0099】
自動車適用物が車両推進適用物の例として用いられたが、上述の制御アプローチは、トラック、カート、オートバイ、自転車、ドローン、及び他の飛行デバイスを含む他の種類の車両において、環境内で自律的に移動するロボット及び他のデバイスにおいて、その他において用いられる電気モータを含む他の推進関連適用物においても同等に有益であることを理解されたい。
【0100】
加熱、通気、及び空調(Heating, Ventilation and Air Conditioning、HVAC)適用物において用いられるモータは、パルス化制御から恩恵を受けることができる市場の別の良い例である。パルス化モータ制御がHVAC適用物のために良く適することに寄与するいくつかの因子が存在する。これらは以下の事実を含む:(a)今日、HVAC適用物において用いられているモータが、主に、永久磁石を包含しない誘導モータであること、(b)HVACモータの動作寿命の高い割合が、それらの高効率区域未満の動作領域内で費やされること、並びに(c)ファン又はポンプの慣性が、通例、モータ慣性を支配する − これは、パルス化に関連付けられる潜在的なNVH関連の影響をさらに軽減する傾向を有する。
【0101】
無論、モータは、それらがそれらの最適効率未満で動作させられる多種多様な他の適用物において用いられている。これは、広い動作範囲にわたって(例えば、多種多様な異なる負荷及び/又はモータ速度下において)動作することによるものであり得るか、或いはそれは、モータの使用がその適用物のために過大であること(又はさもなければ、専用に設計されていないこと)、又は種々の他の理由のうちの任意のものによるものであり得る。上述の制御アプローチは、これらの種類の適用物のうちの任意のものに有益となることができることが明らかであるはずである。
【0102】
高−低トルク変調
以上において説明された例のほとんどにおいて、パルス化は、トルクを、より高い(エネルギー効率の高い)トルク出力レベルと0トルク出力レベルとの間で変調することによって達成される。それが大抵のパルス化制御適用における好ましいアプローチであると考えられるが、高トルクと0トルクとの間で変調するのではなく、より高いトルク出力と、より低い非0トルク出力との間で変調することが好ましくなり得る状況(例えば、特定の機械/機械動作領域)が存在し得ると予想される。例えば、状況によっては、高/低パルス化はオン/オフパルス化よりも優れた騒音、振動、及びハーシュネス(NVH)特性を有し得、それゆえ、高/低パルス化によって、エネルギー変換効率とNVH特性との間の、オン/オフパルス化よりも望ましいトレードオフが達成され得るという状況が存在し得る。別の例では、いくつかのモータのいくつかの動作領域のために、高/低パルス化アプローチは、オン/オフパルス化よりも優れた全体的エネルギー変換効率をもたらし得る。0トルクを発生するために弱め界磁を必要とする永久磁石を組み込んだモータは、高−低トルク変調の使用の特に優れた候補である。
【0103】
パルス化モータオーバードライブ
大抵のモータは、指定された最大定格出力レベルを有する。概して、最大定格出力レベルは定常状態動作に基づくものであり、多くの場合、モータは、短い期間の間、悪影響を全く伴うことなく、より高い出力レベルで駆動され得る。実施形態によっては、選択された動作領域内において、モータの出力レベルは、「オン」レベルを定常状態動作のための最大定格連続出力レベルよりも高くして、パルス化され得る。モータによっては、いくつかの潜在的動作範囲内において、オーバードライブパルスを用いることのいくつかの潜在的利点がある。例えば、いくつかの特定の動作状況では、所与のモータ速度におけるモータ又はシステム(例えば、モータ及びインバータ)のエネルギー変換効率は、特定のオーバードライブ領域内において、「通常」動作領域内よりも高くなり得る。これは、より高いトルク又は電力におけるパルス化動作がよりいっそう効率的になり得ることを意味する。
【0104】
さらに、より効率の高い動作は、通例、より少ない加熱をもたらし、これは、潜在的に、よりいっそう高い正味トルク出力を促進する。それゆえ、伝統的に連続電力を用いて駆動されるモータ(誘導及び他のACモータ、ブラシレスDCモータ、スイッチトリラクタンスモータ等など)がパルス化動作を念頭に置いて設計される場合には、それらは、時として、より従来式の定常/連続駆動電力を用いて適切となり得るよりも高い正味トルク出力を、パルス化制御を用いて達成するよう最適化することができると考えられる。
【0105】
他のモータ最適化
モータの非効率性に寄与する種々の因子が存在する。1つの寄与因子は、回転する電圧及び電流ベクトルの間の角度の余弦である力率に関連する。理想的には、電圧及び電流は位相が合っている、又は力率1を有するべきである。しかし、多くの種類の電気モータ/発電機について、この理想は必ずしも、任意の所与の負荷及び速度のための最も高いシステム効率点を示すわけではない。本明細書において説明されるとおりのモータのパルス化制御が企図され、パルス化動作点を考慮して力率補正が最適化されたときには、実効力率が伝統的な連続モータ動作のものを上回るよう改善することが期待される。
【0106】
モータの非効率性に寄与する別の因子は、時として、抵抗又はI
2R損失と呼ばれる。抵抗損失はモータ巻線を加熱し、これが結果的に抵抗損失をさらに増大させる。なぜなら、巻線の抵抗率は概して温度とともに増大するからである。抵抗損失は非直線的である − 少なくとも電流の2乗とともに増大する。したがって、抵抗損失は、 − パルス化動作の間に用いられるレベルなどの − より高いモータ出力レベルにおいて、より大きな影響を全体的モータ効率に及ぼす傾向を有する。電気モータの設計のための経験則は、磁気損失が目標動作設定点において抵抗損失とおおよそ等しくなければならないことである。最も効率の高い動作点の下方のモータ動作点が概ね用いられないことになるため、本明細書において説明されるパルス化モータ制御方法を用いることは、適切なモータの設計又は選定に影響を及ぼし得る。換言すれば、モータは、実質的にその最も効率の高い動作点又はより高い負荷のいずれかにおいて駆動される。低負荷連続動作は電気モータの設計又は選択において考慮される必要がない − これは、この場合も先と同様に、システムの全体的効率をさらに改善することを助けることができる。
【0107】
モータの非効率性に寄与する別の因子は、時として、 − 磁束系の損失に関連する − 磁心損と呼ばれる。1つの損失機構は、ロータ及びステータ磁気要素の間を連結しない磁束線を指す、モータ巻線漏れリアクタンスである。別の磁心損機構は磁気鉄心内のヒステリシスに関連し、BH曲線においてしばしば表される。ここで、Bは磁束密度であり、Hは磁場強度である。それらは、いくつかのモータについては、ロータ又はステータ内に存在する鉄心である、場が貫通する材料の磁化によって関係付けられる。この場合も先と同様に、パルス化制御のために特別に設計されたモータを、パルス化モータ動作の間の磁心損を軽減するように最適化することができる。
【0108】
上述されたように、パルス化駆動の間におけるモータ「オン」状態とモータ「オフ」状態との間のスイッチングに関連付けられる過渡的スイッチング損失は、パルス化動作の間におけるモータの効率に影響を及ぼす別の因子である。上述されたように、これらの過渡的スイッチング損失を低減するための1つの仕方は、モータをパルスオン及びオフにすることに関連付けられるモータ駆動電流の立ち上がり及び立ち下がり時間を改善すること(短縮すること)である。過渡的スイッチング損失を統御することを助けるための別の仕方は、パルス化の周波数を統御することである。概して、スイッチング周波数が低いほど、過渡的スイッチング損失は小さくなる。しかし、ここで、より低い周波数のスイッチングは、時として、特定の適用物においては望ましくない、又は容認できないものになり得る騒音、振動、及びハーシュネス(NVH)を引き起こし得るという点で、トレードオフが存在する。それゆえ、任意の特定のモータのためのパルス化周波数は、好ましくは、モータ効率及びNVHの懸念の両方、及び/又はモータが意図された適用物に関連する要件を考慮して適切に選択される。これらの趣旨に沿って、シグマデルタ変換ベースのパルス化コントローラなどの、ノイズシェーピング能力を有するパルス化コントローラは、パルス化モータ制御に関連付けられるNVHの影響を軽減することに大いに役立つことができ、したがって、概してより低いスイッチング周波数の使用のサポートに役立つことができることに留意されたい。
【0109】
異なるモータのための適切なパルス化周波数は、モータの構造、動作環境、及び動作範囲に基づいて非常に異なり得ることを理解されたい。モータによっては、10〜50kHzのオーダーのスイッチング周波数が適切であり得 − それに対して、他のモータについては、例えば、10〜500Hzの範囲としての、はるかにより低いスイッチング周波数がより適切であり得る。さらに他の電気機械は、これらの範囲の間、又は上述の範囲のいずれかより上若しくは下のスイッチング周波数を有し得る。任意の特定のモータのための最も適切なパルス化周波数は、モータサイズ、オン/オフ過渡特性、NVHの考慮事項等を含む種々の因子に依存することになる。
【0110】
任意の特定のモータ速度のための所望の駆動点の選択はまた、スイッチング周波数にも影響を及ぼし得る。より具体的には、多くのモータは、比較的広い動作範囲にわたって比較的平坦な効率曲線を有する。概して、連続動作の最適効率点よりも若干低いトルクレベルにおけるパルス化動作は、時として、 − スイッチング損失の性質に依存して − パルス化動作の間におけるより高い全体的モータ効率をもたらし得る、若干より低い周波数におけるスイッチングを促進することができる。これは、任意の特定のモータ速度に関連付けられる所望のパルス化動作駆動点が、必ずしも、連続的なモータ動作のために最も効率が高くなり得るトルクレベルではないという点を強調する。むしろ、状況によっては、パルス化動作のための最大エネルギー効率点は、連続動作のための最大エネルギー効率点とは若干異なり得る。さらに、NVHの考慮事項及び/又は他の動作制御の考慮事項が、任意の特定のモータ速度のために適切と思われる駆動点に関する決定に影響を及ぼし得る。
【0111】
追加の実施形態
本発明の少数の実施形態のみが詳細に説明されたが、本発明は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく多くの他の形態で実施され得ることを理解されたい。様々な上述のパルスコントローラ及び他の制御要素は、異なる実施形態において多種多様な異なるアーキテクチャで実施され、グループ化され、構成され得る。例えば、実施形態によっては、パルスコントローラはモータコントローラ又はインバータコントローラ内に組み込まれ得るか、或いはそれは別個の構成要素として提供され得る。同様に、発電機のために、パルスコントローラは発電機コントローラ又は整流器コントローラ内に組み込まれ得、複合型モータ/発電機においては、パルスコントローラは複合型モータ/発電機コントローラ又は複合型インバータ/整流器コントローラ内に組み込まれ得る。実施形態によっては、上述の制御機能性は、 − 例えば、汎用プロセッサ及びマイクロプロセッサ、DSP等を含む、任意の好適な形態を取り得る − プロセッサ上で実行されるソフトウェア又はファームウェアにおいてアルゴリズム的に実施され得る。
【0112】
パルス発生器又は機械コントローラはより大きな制御システムの部分であり得る。例えば、車両の適用物においては、上述の制御は、車両制御に関連する種々の機能を遂行する、車両コントローラ、パワートレインコントローラ、ハイブリッドパワートレインコントローラ、又はECU(engine control unit(エンジン制御ユニット))等の部分であり得る。このような適用物では、車両又は他の関連コントローラ等は、必要とされる制御の全てを実行する単一のプロセッサの形態を取り得るか、或いはそれは、パワートレイン若しくは車両制御モジュールの部分として共同配置されているか、又は車両内の様々な場所に分布した複数のプロセッサを含み得る。プロセッサ又は制御ユニットのうちの任意のものによって遂行される特定の機能性は幅広く多様であり得る。
【0113】
本発明は、主として、モータ制御及び/又はインバータ/モータ制御の文脈で説明された。しかし、上述のアプローチは発電機及び/又は発電機/整流器の制御に同等に適用可能であることを理解されたい。それゆえ、モータ制御が説明される時にはいつでも、類似の技法を発電機制御に適用することができることを理解されたい。それゆえ、文脈が異なる解釈を必要としない限り、パルス化モータ制御、パルス化発電機制御、又はパルス化モータ/発電機制御の特徴の説明は、パルス化モータ制御、パルス化発電機制御、及び複合型モータ/発電機のパルス化制御に同等に当てはまることが理解されるべきである。
【0114】
種々の異なる制御方式をパルスコントローラ120内で実施することができる。概して、制御方式は、デジタル的に、アルゴリズム的に、アナログ構成要素を用いて、又はハイブリッドアプローチを用いて実施され得る。パルス発生器及び/又はモータコントローラは、プロセッサ上で、FPGA(field programmable gate array(フィールドプログラマブルゲートアレイ))などのプログラマブル論理上で、ASIC(application specific integrated circuit(特定用途向け集積回路))などの回路機構内で、デジタル信号プロセッサ(DSP)上で、アナログ構成要素、又は任意の他の好適なハードウェアの一部を用いて実行するコードとして実施され得る。実装形態によっては、上述の制御方式は、インバータコントローラ(及び/又は発電機及び/又は複合型インバータ/整流器コントローラの文脈においては、整流器コントローラ)内に組み込まれたデジタル信号プロセッサ(DSP)上で実行されるべきオブジェクトコード内に組み込まれ得る。
【0115】
最初の上述の諸実施形態のうちのいくつかにおいては、シグマデルタ制御が、パルス化制御信号を作成するために用いられる。シグマデルタ制御は、パルス化制御信号124を作成するための1つの特に優れた仕方であるが、他の実施形態では、種々の他の制御方式が、パルス化制御信号を作成するために用いられ得ることを理解されたい。
【0116】
用いられるパルス化の性質にかかわりなく、トルク変調は、好ましくは、意図される適用物にとって容認できないNVHが生み出されないような仕方で統御される。
【0117】
上述のパルス化モータ制御は多種多様な適用物において用いることができる。最大の効率向上は、通例、それらの最適動作効率付近で一貫して駆動されないモータ及び発電機において見られることになる。これの良い例は、広い動作範囲を有し、広範に変化する負荷条件下における使用のために意図されたモータ/発電機である。別の良い例は、日常的にアンダードライブ状態になっているモータである。例えば、システム設計者が、適用物のために実際に必要とされるよりも大きなモータを用いること − 例えば、与えられたタスクのためには、50hpモータが十二分に適切だろうというときに、100hpモータを用いること − は珍しくない。多くの場合、モータが大きいほど、低下した負荷において動作の効率が低下し得、このような状況において、パルス化制御は使用中のモータ効率を改善し得る。
【0118】
したがって、本実施形態群は、限定ではなく、例示と考えるべきであり、本発明は、本明細書において与えられている詳細に限定されず、添付の請求項の範囲及び同等物以内で変更され得る。
【国際調査報告】