特表2021-516760(P2021-516760A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-516760荷電粒子を使用して材料および物品を検出および/または識別する方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-516760(P2021-516760A)
(43)【公表日】2021年7月8日
(54)【発明の名称】荷電粒子を使用して材料および物品を検出および/または識別する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/10 20180101AFI20210611BHJP
   G01V 5/00 20060101ALI20210611BHJP
【FI】
   G01N23/10
   G01V5/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2020-546899(P2020-546899)
(86)(22)【出願日】2019年3月4日
(85)【翻訳文提出日】2020年10月28日
(86)【国際出願番号】EP2019055333
(87)【国際公開番号】WO2019166669
(87)【国際公開日】20190906
(31)【優先権主張番号】1803426.4
(32)【優先日】2018年3月2日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520338418
【氏名又は名称】ジースキャン オ―ユー
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】特許業務法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルガッツェ, アンツォーリ
(72)【発明者】
【氏名】キース, マディス
(72)【発明者】
【氏名】マッギー, マル
(72)【発明者】
【氏名】アボッツ, エギリス
(72)【発明者】
【氏名】アンバーヤハリ, ゴラムレッツァ
【テーマコード(参考)】
2G001
2G105
【Fターム(参考)】
2G001AA03
2G001AA08
2G001AA13
2G001BA11
2G001BA14
2G001CA03
2G001CA08
2G001DA01
2G001DA06
2G001DA09
2G001FA04
2G001HA14
2G001LA10
2G105AA01
2G105BB19
2G105CC02
2G105EE01
2G105HH04
(57)【要約】
関心体積内の材料または物品を検出および/または識別する方法は、a)入力ホドスコープによって、関心体積に入って来る荷電粒子を検出するステップと、b)出力ホドスコープによって、関心体積を出て行く荷電粒子を検出するステップと、c)関心体積を出て行く粒子を関心体積に入って来る粒子と関連付けて粒子の完全軌道の組を決定するステップと、d)粒子の完全軌道との偏向に基づいてフィルタリングを行うステップと、e)それぞれのボクセルを通過した、フィルタリングされた完全軌道に基づいて、完全軌道の数および/または全散乱角を表す体積密度マップを計算するステップと、f)関心体積内の材料または物品を体積密度マップから検出および/または識別するステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のボクセルを含む関心体積内の材料または物品を検出および/または識別する方法であって、
a)入力ホドスコープによって、前記関心体積に入って来る荷電粒子を検出するステップと、
b)出力ホドスコープによって、前記関心体積を出て行く荷電粒子を検出するステップと、
c)前記関心体積を出て行く粒子を前記関心体積に入って来る粒子と関連付けて前記粒子の完全軌道の組を決定するステップと、
d)完全軌道を持つ前記粒子の偏向に基づいてフィルタリングを行うステップと、
e)それぞれのボクセルを通過した、前記フィルタリングされた完全軌道に基づいて、完全軌道の数および/または全散乱角を表す体積密度マップを計算するステップと、
f)前記関心体積内の前記材料または物品を前記体積密度マップから検出および/または識別するステップとを含む方法。
【請求項2】
ステップd)で、フィルタリングが前記入力ホドスコープおよび/または前記出力ホドスコープ内の前記粒子の偏向角によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップd)で、フィルタリンが前記関心体積内の粒子の前記全散乱角に基づいて行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記体積密度マップが、前記フィルタリングされた完全軌道の逆投影を用いて計算される、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記関心体積内の前記材料または物品を検出するステップが、前記関心体積内の前記材料または物品の幾何学的特性を決定するステップを含む、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
フィルタリングパラメータの異なる組を用いて複数の体積密度マップを決定することを含む、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
f)前記関心体積内の前記材料に対応する関心領域を定義するステップと、
g)前記関心領域に関連する第1の分布関数を前記体積密度マップから生成するステップとをさらに含む、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
h)前記第1の分布関数の少なくとも1つの特徴を認識して前記関心体積内の前記材料を識別するステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
各粒子が、関連付けられた偏向角を前記ホドスコープ内に有し、
操作(c)および(d)および(e)において、完全軌道の前記組が、特定の偏向の範囲内の関連付けられた偏向角を有する完全軌道から構成される、請求項2、または請求項2に従属する場合の請求項4から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
偏向角の前記範囲を、前記電子とミューオンが少なくとも部分的に分離されるように選択するステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記電子および低運動量ミューオンが高運動量ミューオンから分離されるように偏向角の前記範囲を選択するステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
ホドスコープおよびVOI内の完全軌道の、一定の閾値未満の全偏向角が非偏向としてカウントされ、直進軌道として処理される、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
コンピューティングデバイスによって実行される場合に、請求項1から12のいずれかの方法を実施するためのプログラム。
【請求項14】
関心体積に隣接する入力ホドスコープであって、前記関心体積が複数のボクセルを含み、前記入力ホドスコープが前記関心体積に入って来る荷電粒子を検出するように構成されている、入力ホドスコープと、
前記関心体積と境界を接する出力ホドスコープであって、前記関心体積を出て行く荷電粒子を検出するように構成されている、出力ホドスコープと、
前記関心体積を出て行く粒子を前記関心体積に入って来る粒子と関連付けて、完全軌道を決定し、
前記完全軌道の偏向角に基づいてフィルタリングを行い、
それぞれのボクセルを通過した、前記フィルタリングされた完全軌道に基づいて、完全軌道の数および/または全散乱角を表す体積密度マップを計算し、
前記体積密度マップから前記関心体積内の材料または物品を検出および/または識別するように構成された前記入力および前記出力ホドスコープから検出データを受け取るように構成された、プロセッサとを含む、検出および/または識別アセンブリ。
【請求項15】
前記プロセッサが、前記入力および/または前記出力ホドスコープ内の前記粒子の前記偏向角に基づいて、および/または前記関心体積内の粒子の前記全散乱角に基づいてフィルタリングを行うように構成される、請求項14に記載のアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子を使用して、たとえば宇宙線トモグラフィに基づいて物品を検出および/または識別するシステム、デバイス、およびプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
保安および出入国管理の用途のために特殊な核材料を検出する宇宙線トモグラフィが、2000年代初頭に初めて提案された。トモグラフィイメージングにおいてのミューオン偏向の使用を提案した最初の論文は、BorozdinらのRadiographic imaging with cosmic−ray muons、Nature.(2003)、Vol.422.Iss 6929、277頁で、2003年に発表された。宇宙線ミューオントモグラフィでは、ミューオン偏向の効果およびその原子番号依存性を利用して、ミューオンの軌道に沿った面密度を測定し元素組成を決定する。
【0003】
その後、米国特許第7633062号に、クーロン散乱効果に基づいたミューオントモグラフィが開示された。さらなる進歩は、3つの検出器平面を使用することと、飛跡再構成などのために統計的最尤法/予想最大化法を適用することによって、入ってくる粒子の運動量を評価することとに関連していた。中程度および重い原子番号Z範囲(たとえば、鉄、タングステン、鉛、特殊核材料)の対象物を識別することが論じられた。
【0004】
2015年のBlanbiedらのNuclear Instruments and Methods in Physics Research A、784(2015)、352〜358頁に、宇宙線ミューオンおよび電子の偏向および阻止を用いて材料識別をどのようにして実現できるかについての記載がある。この方法は、軽い金属さらに低原子量材料から重い金属を区別すると述べられている。この方法では、最初に材料の種類、次にその材料の厚さを決定するために「阻止能」というパラメータを導入している。WO2016/025409もまた参照されたい。
【0005】
別の粒子検出方法および装置が、以下の特許文献:US2010/065745A1、US2008/315091A1、WO2015/057973A1、およびUS2015/325013A1に、ならびに以下の論文:IEEE Nuclear Science Symposium(2006)、Schultzら、「ML/EM Reconstruction Algorithm for Cosmic Ray Muon Tomography」、2574〜2577頁(XP031083881)、およびNuclear Instruments & Methods in Physics Research A(2004)、vol.519、Schultzら、「Image reconstruction and material Z discrimination via cosmic ray muon radiography」、687〜694頁(XP004492327)、およびIEEE Nuclear Science Symposium and Medical Imaging Conference(2014)、Mitraら、「A volume clearing algor
ithm for Muon Tomography」、1〜3頁(XP032880166)に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の諸態様は、関心体積内の材料および/または1つもしくは複数の物品を検出および/または識別するための別の手法、ならびに改善された方法および装置を提供しようとするものである。物品という用語は、人に運ばれる対象物を含む、すべての種類の対象物を含む。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、複数のボクセルを含む関心体積内の材料または物品を検出および/または識別する方法が提供され、この方法は、
a)入力ホドスコープによって、関心体積に入って来る荷電粒子を検出するステップと、
b)出力ホドスコープによって、関心体積を出て行く荷電粒子を検出するステップと、
c)関心体積を出て行く粒子を関心体積に入って来る粒子と関連付けて粒子の完全軌道の組を決定するステップと、
d)完全軌道を持つ粒子の偏向に基づいてフィルタリングを行うステップと、
e)それぞれのボクセルを通過した、フィルタリングされた完全軌道に基づいて、完全軌道の数および/または全散乱角を表す体積密度マップを計算するステップと、
f)関心体積内の材料または物品を体積密度マップから検出および/または識別するステップとを含む。
【0008】
フィルタリング手順とは、逆投影を使用して体積密度マップを生成するための準備ステップのことである。
【0009】
1つの好ましい方法では、ステップd)のフィルタリングは、ホドスコープの入力および/または出力の粒子の偏向角によって行われる。
【0010】
上記の好ましい方法の一代替形態として、またはステップd)に加えて、フィルタリングは、関心体積内の粒子の全散乱角に基づいて行われる。
【0011】
体積密度マップは、フィルタリングされた完全軌道の逆投影を用いて計算することができる。
【0012】
一般原則は、物理的に測定されたいずれのパラメータもカウント(軌道のカウント)すること、または物理的測定値(全散乱角)から、粒子が通過するすべてのボクセルの中に導き出されるいずれのパラメータもカウントすることである。再構成手順では、これらのパラメータを同様に処理する。
【0013】
測定点から入力点までの軌道を軌道ごとに同じ手順で逆投影することによって決定するだけの数の体積密度マップが得られ、このことは、測定されるパラメータが、ボクセル当たりの完全軌道の数またはボクセル当たりの全散乱角の合計であるかどうかに依存しない。各粒子は常に、VOIを通過するその軌道、およびVOI内の全散乱角についての情報を含み、したがって、一方または両方の物理パラメータを用いて体積密度マップを構成することができる。そのアルゴリズムによれば、各飛跡は、飛跡が通る各ボクセルに1カウントを与える。各飛跡はまた、飛跡が通る各ボクセルに全散乱角の値を与える。次に、各ボクセル内の軌道の数を合計すると、VOI全体にわたって粒子の物理吸収の差異を表す体積密度マップに到達する。並行してまた、各ボクセルの全散乱角をカウントし合計すると、またはボクセルごとの全散乱角の平均値を用いると(ただし別法として、他の散乱記述パラメータ、たとえば角度の中心値、合計などを用いることもできる)、VOI全体にわたって物理散乱過程の差異を表す体積密度マップに到達する。これら2つの体積密度マップは、任意のフィルタリング選択肢に対し、ホドスコープ内もしくはVOI内のフィルタリングまたは異なるフィルタリング選択肢の任意の組み合わせに対し構成することができる。このことは、測定から受け取られた2つの原則物理パラメータを持っていても、異なるフィルタリング条件によるもっと多くの体積密度マップを持ち得ることを意味する。
【0014】
任意のボクセル内のカウントされたデータは合計され、さらに操作することができ、たとえば平均値を用いることができる。その選択は、どのパラメータがトモグラフィ再構成に最もよく適しているかによって決まる。たとえば、全散乱角の合計ではなく平均散乱角を用いると、VOI内の不均一な飛跡分布が正規化され、したがって好ましいものになる。
【0015】
VOI内の全散乱角は2つの手順に用いることができることに留意されたい。すなわち、1)全散乱角はフィルタリングパラメータとして用いられ、その場合に散乱角は、体積密度マップを構成するためにどの特定の軌道が選ばれるかの選択に影響を及ぼし、2)別の態様では、全散乱角は、体積密度マップ自体を構成するためのパラメータとして用いられる。好ましくは、両方の手順が採用される。最初に、VOI内の全散乱角によってフィルタリングを行い、次に、フィルタリングされた軌道を用いて体積密度マップを構成する。
【0016】
関心体積内の材料または物品を検出することには、関心体積内の材料または物品の幾何学的特性を決定することが含まれる。
【0017】
好ましい方法では、複数の体積密度マップが、フィルタリングパラメータの異なる組を用いて決定される。こうすることは、この方法の識別力を改善するのに役立つ。
【0018】
この方法はさらに、
f)関心体積内の材料に対応する関心領域を定義するステップと、
g)関心領域に関連する第1の分布関数を体積密度マップから生成するステップとを含む。
【0019】
この方法はさらに、
h)第1の分布関数の少なくとも1つの特徴を認識して関心体積内の材料を識別するステップを含むことができる。
【0020】
各粒子は、関連付けられた偏向角をホドスコープ内に有し、操作(c)および(d)および(e)において、完全軌道の組は、特定の偏向の範囲内の関連付けられた偏向角を有する完全軌道から構成することができる。
【0021】
偏向角の範囲は、電子とミューオンが少なくとも部分的に分離されるようなものにすることができる。たとえば、この方法は、電子および低運動量ミューオンが高運動量ミューオンから分離されるように偏向角の範囲を選択することを含み得る。低運動量ミューオンは、500MeVまでのエネルギーを有し得る。
【0022】
好ましい実施態様では、ホドスコープおよびVOI内の完全軌道の、特定の閾値未満の全偏向角が非偏向としてカウントされ、直進軌道として処理される。
【0023】
本発明の第2の態様によれば、検出および/または識別アセンブリが提供され、このアセンブリは、
関心体積に隣接する入力ホドスコープであって、関心体積が複数のボクセルを含み、入力ホドスコープが関心体積に入って来る荷電粒子を検出するように構成されている、入力ホドスコープと、
関心体積と境界を接する出力ホドスコープであって、関心体積を出て行く荷電粒子を検出するように構成されている、出力ホドスコープと、
関心体積を出て行く粒子を関心体積に入って来る粒子と関連付けて、完全軌道を決定し、
完全軌道の偏向角に基づいてフィルタリングを行い、
それぞれのボクセルを通過した、フィルタリングされた完全軌道に基づいて、完全軌道の数および/または全散乱角を表す体積密度マップを計算し、
体積密度マップから関心体積内の材料または物品を検出および/または識別するように構成された入力および出力ホドスコープから検出データを受け取るように構成された、プロセッサとを含む。
【0024】
プロセッサは、入力ホドスコープおよび/または出力ホドスコープ内の粒子の偏向角に基づいて、および/または関心体積内の粒子の全散乱角に基づいてフィルタリングを行うように構成することができる。
【0025】
本発明の第3の態様によれば、前出の請求項の方法を、コンピューティングデバイスによって実行される場合に実施するためのプログラムが提供される。
【0026】
いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイスはデータを、遠隔接続を通じて、および/または電子記憶装置から受け取るように構成することができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、コンピュータプログラムは、検出器アセンブリによる放射の検出とは異なる位置で、および/または異なる時間に実行することができる。
【0028】
第1の態様の方法の、任意選択の機能を含むいずれの機能も、第2および第3の態様に用いることができる。
【0029】
本発明の第4の態様によれば、第3の態様によるコンピュータプログラムを内蔵するコンピュータ可読媒体が提供される。
【0030】
本明細書には、隠された対象物を、いくつかの実施形態では特に、主として低原子番号の他の一般的な材料中の軽い元素から構成されるものを、これだけには限らないが検出および識別する方法が記載されている。このような方法は、宇宙線荷電レプトントモグラフィをベースとすることができ、たとえば、乗客手荷物、スーツケース、バッグ、貨物、海上コンテナなどをスキャンするのに使用することができる。この方法はまた、場合によって人および動物をスキャンするのに使用することもできる。
【0031】
本発明の好ましい実施態様について、単なる例として添付の図面を参照して以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】水平および垂直ホドスコープを備え、識別されるべき対象物がVOIの中心に置かれている、本発明の一実施形態による検出装置の斜視図である。
図2】二層の位置感知検出器平面の配置図である。
図3】ホドスコープ内の偏向角の定義図である。
図4】ボクセル化VOIを通過する粒子の軌道と、α+βの散乱角の合計として定義されるVOI内の全散乱のパラメータを用いて逆投影の操作を行うこととを示す図である。
図5】ホドスコープ内の電子の平均偏向角のエネルギー依存性を示す図である(検出器板は2mmの全厚を有し、検出器板間の体積には空気が充填されている)。
図6】VOIを通る完全軌道に対するホドスコープ内の電子の角度分布を示す図である。
図7】VOIを通る完全軌道に対するホドスコープ内のミューオンの角度分布を示す図である。
図8】分光フィルタリングが適用された二重対象物の対象物再構成を示す図である(爆発材料、赤身の30×30x30cm3立方体の中心に置かれたRDXの立方体(10x10x10cm3))。
図9】分光フィルタリングおよび軌道偏向補正アルゴリズムが適用された二重対象物の対象物再構成を示す図である(爆発材料、赤身の30×30x30cm3立方体の中心に置かれたRDXの立方体(10x10x10cm3)。
図10】本発明の一実施形態による方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下で論じられる本発明のいくつかの実施形態は、コンピュータプロセッサを有するコンピュータシステムで実行することを可能にするための制御論理を有する、ファームウェアおよび/またはコンピュータ使用可能媒体に存在するコード(たとえば、ソフトウェアアルゴリズムまたはプログラム)として組み込まれてよいことを理解されたい。このようなコンピュータシステムは通常、コードを実行することにより出力を与えるように構成されたメモリ記憶装置を含み、このコードはその実行に応じてプロセッサを設定する。コードはファームウェアまたはソフトウェアとして構成することができ、個別コードモジュール、関数呼出し、手続き呼出し、またはオブジェクト指向プログラミング環境のオブジェクトなどのモジュールの組として編成することができる。モジュールを使用して実施される場合、コードは、単一のモジュール、または互いに協働して動作する複数のモジュールを含むことができる。
【0034】
<物理的原理>
二次宇宙線電子/陽電子は、主として原子殻内の電子と相互作用する。荷電粒子の阻止能(または代替的に使用される用語で、エネルギー損失)とは、原子内電子によるイオン化過程を通る連続的なエネルギー移動のランダムな過程のことである。電子ビームの群挙動は次のパラメータ、すなわち、阻止能、範囲、横方向および長手方向のストラグリングによって特性を示すことができる。これらの特性により、電子トモグラフィのために適用されるべき方法が決定する。
【0035】
電子ビームの場合、制動放射によるエネルギー損失が、約10MeVを超えるエネルギー範囲において重要になる(重い元素に対して)。
【0036】
eが小さいことにより、粒子の飛跡軌道の偏向はかなりのものである。しかし、5MeVより上の飛跡軌道が、いくつかの適用例では直線に近付けられ得ること、あるいは小さい偏向が考慮に入れられ得ることをモンテカルロシミュレーションで示すことができる。後方散乱は、電子の低いエネルギー(2〜3MeV未満)においては重要であるが、軽い元素から成る材料については5MeVを超えると無視できるようになる。
【0037】
ミューオン散乱はガウス分布に近付けることができる。
【0038】
<検出方法>
記載された方法の目的は主として、個人手荷物または貨物コンテナの例のような中程度のサイズの閉鎖体積(CV)内の低Z元素から成る材料を、これだけには限らないが識別することである。この方法は、材料中の荷電レプトンの減衰およびクーロン散乱に基づいた、宇宙線荷電レプトンのトモグラフィ測定に依拠する。人工供給源などの、他のタイプおよび供給源の荷電粒子を使用できるとはいえ、宇宙線粒子には、高エネルギースペクトルおよび自由に入手可能であるという利点がある。
【0039】
粒子のうちのある一定の部分がCV内で減衰し、ある一定の部分がCVを透過する(出て行く粒子)。ある一定の粒子の散乱分布がCV内に得られる。関心体積を出て行く荷電レプトンは、関心体積に入って来る、完全軌道の組を決定できる荷電レプトンと関連付けることができ、この完全軌道の組は、関心体積を出て行く荷電レプトンが関心体積を通過するときに取る軌道の組である。
【0040】
CVを含む関心体積(VOI)は、ボクセルと呼ばれる要素体積に分割される。本発明の実施形態では、対象物が、ミューオン成分および電子成分(たとえば、ホドスコープ内の偏向角に基づく二次レプトン線束の低運動量成分および高運動量成分)の分光測定フィルタリング(識別)に依拠するトモグラフィ対象物再構成法によって、関心体積(VOI)内で識別される。対象物再構成は、逆投影を使用することによって行われる。しかし、逆投影は、他のトモグラフィ再構成法に置き換えることもできる。分光測定識別により、低エネルギーレプトンからの高エネルギーレプトンの近似分離が可能になり、ホドスコープ内の角度偏向の分布に基づいてレプトン束がグループ分けされる。
【0041】
対象物の位置特定のために、VOIは要素体積(ボクセル)にさらに細分される。粒子の各飛跡は、投影飛跡を逆投影することによって、飛跡が通過するすべてのボクセルと関連付けられる。異なるスペクトル領域が別々に処理されて、複数の体積密度マップまたはその組み合わせが構成される。各ボクセルでは、そのボクセルを通過する完全軌道を有する粒子の飛跡数である、透過粒子の飛跡数がカウントされる。それによって、「衝突マップ」(体積密度マップ)を再構成してVOI内の対処物の位置を特定することができる。さらに、体積密度マップは、完全軌道のカウント、測定パラメータから導き出された全散乱またはパラメータ(たとえば、ボクセルごとの平均散乱角、中心散乱角など)の測定パラメータのいずれかをベースとすること、および参照することができる。
【0042】
任意選択の追加の方法が、対象物認識の検出感度を最適化するために、VOI内の軌道の偏向角によって軌道に追加のフィルタリング処理を導入して使用されることがある。軌道偏向補正と呼ばれるアルゴリズムを適用して、高運動量レプトンのホドスコープ内の偏向角の決定を補正し、精度を高めることができる。この方法の目的は、トモグラフィシステム全体にわたる完全軌道が、偏向角の検出精度に結び付けられた特定の偏差閾値を超えない場合に、飛跡を補正軌道の非偏向経路として割り当てることである。
【0043】
さらに、得られた分布関数は、材料と、ボクセル(特に、検出材料が置かれている関心領域内のもの)の体積を充填するその密度とに関連付けることができる。分布関数の1つまたは複数の特徴は、材料を識別するために認識され得る。たとえば、訓練データとしての統計的特徴量(得られたカウント率、散乱角およびこれらの分布関数など)は、教師あり機械学習アルゴリズム(一例として、判別関数としてKLDを用いた確率分布関数(PDF)ベースの分類)に供給することができる。訓練が行われると、自動システムは、VOI内に存在する対象物を分類できる状態になる。
【0044】
<トモグラフィについての説明>
図1は、図1に示された2つのXY位置感知ホドスコープ12、14および2つのXZ位置感知ホドスコープ16、18の形の、入力および出力検出器アセンブリをベースとする検出器10のトモグラフィ構成を示す。
【0045】
トモグラフィ検出器10は、2つの側面ホドスコープ16、18と結合された、上方ホドスコープ12および下方ホドスコープ14を含む。システムの2つの側面26、28は、スキャンされる対象物または物品52を挿入する、および取り出すために開いたままである。ホドスコープは関心体積50と境界を接する。
【0046】
検出器10のVOIの全体サイズは、たとえば1m×1m×2mとすることができるが、このサイズは当然ながら、スキャンされる品目のサイズに応じて変わり得る。この実施形態では、検出器10の外形寸法は1.4×1.4×2mである。
【0047】
本実施形態の検出構成では、各ホドスコープ12、14、16、18は3つの層で作られ、それぞれが、粒子飛跡に対してX、Y、Z座標を形成する直交検出平面を含む。したがって、4つのホドスコープそれぞれの3つの層は、この実施形態では12枚の検出パネルを形成する。これらの層は、二層または多層の位置感知検出器パネルを含み得る。たとえば、位置感知検出器パネルは、図2に示される互いに直交して配置された2つの層120、122をなす、1×1mm2の太さのプラスチックシンチレーションファイバによって構築することができる。
【0048】
12枚の検出パネルのそれぞれは、シンチレーション光を検出し光子をファイバ両端に配置された光センサまで移送する、1メートル当たりたとえば1000本のシンチレーションファイバにセグメント化される。ファイバのピッチは適宜に選択することができるが、通常は1mmである。
【0049】
一致モードデータ取得システムが使用される。
【0050】
<ホドスコープおよびVOI内の軌道の位置特定>
図3および図4は、粒子が検出器10を通過するときの粒子の偏向角を示す。入って来る粒子の軌道は図4の上部に示され、出て行く粒子の軌道は図4の下部に示されている。
【0051】
図4では、
A、B、C、D、E、F− 測定された粒子衝突座標
G− VOI内で偏向が起こらなければ衝突座標になるはずの、入って来る粒子の軌道の延長の想像上の座標
AB− 初期の入って来る軌道
BC− ホドスコープ内で偏向した軌道
θ− ホドスコープ内の偏向の偏向角
CD− VOIを通過する定義された軌道(標準定義)
DE− 出て行く軌道の定義
(α+β)の合計− VOI内の全散乱角(VOI内で起こるすべての散乱(偏向)の合計)
(α+β)− 軌道BCとDEの間の角度でもある
CG− 入って来る軌道の延長線
VOIの全散乱角は原理的に、別法として、軌道のBCとDEの間ではなく、たとえばACとDFの間、または近似線(たとえば、最小二乗近似)ABCとDEFの間と定義することもできる。
【0052】
実際の(おそらく軽く湾曲した)軌道は決して知られることがなく、また測定することができない。VOI内の構築された軌道は逆投影され、軌道が通過するすべてのボクセルについて、図示のように各ボクセルに全散乱角を関連付け、またはカウント数だけを関連付ける。この逆投影が、すべて異なる方向で入って来るすべての測定粒子に対して行われるならば、ほとんどのボクセルのカウント(または散乱角)が得られ、体積密度マップが構築される。
【0053】
関心体積50に入って来る、特に宇宙線の荷電レプトンが検出され、その軌道が、荷電レプトンが最初に通る位置感知ホドスコープによって決定され、このホドスコープは入力ホドスコープと考えることができる。
【0054】
検出器パネル内の2本の直交するシンチレーションファイバへの2つの衝突により、1つの(衝突)位置が定義される。外側の2つの検出器層1、2(図4の入力ホドスコープ)における衝突に基づいて、初期軌道ベクトルABを定義することができる。内側の2つの層2、3における衝突に基づいて、軌道ベクトルBCを定義することができ、2つのベクトルの偏向角を計算することができる。ベクトルBCはまた、VOIに入って来るレプトンの軌道とも考えられる。
【0055】
関心体積に入って来る荷電レプトンのものである初期の入って来る粒子の飛跡軌道、および出て行く粒子(関心体積を出て行く荷電レプトン)の飛跡軌道が決定される。
【0056】
以下の式が角度計算に用いられる。入力は、x、yおよびz座標を有する2つのベクトルである。ベクトルは、偏向がない場合に角度が0度になるように配置される。入力部は点A(xA,yA,zA)、点B(xB,yB,zB)および点C(xC,yC,zC)であり、角度は以下の式を用いて計算される。
【0057】
直線経路からの偏差は様々に定義できることに留意することが重要である。言い換えると、直線からの偏差を記述する任意のパラメータを用いることができる。
【0058】
VOI内の軌道は同様に計算される。しかし、この例では、入って来る軌道はベクトルBCとして定義され、VOIを出て行く軌道はベクトルDEとして定義される。内側の2つの層における衝突によるベクトルCDは、VOI内のレプトンの軌道と考えられる。
【0059】
しかし、別の構成では、VOI内の粒子の軌道をベクトルCGとして、またVOIを出て行く軌道をベクトルGEとして定義することもできる。高Z材料の場合、この軌道は対象物再構成の能力を改善するということがシミュレーションで示されている。
【0060】
別の構成では、VOI内の偏向角が、粒子の入って来る軌道と出て行く軌道のベクトル間の角度として定義される。言い換えると、VOI内の偏向角は、入力ホドスコープの内側の2つの検出層32、33における衝突による軌道と、出力ホドスコープの内側の2つの層4、5における衝突による軌道との間の角度になる。
【0061】
VOIを出て行く軌道(すなわち完全軌道)だけが、さらなるトモグラフィ対象物再構成に使用される。
【0062】
<トモグラフィ再構成>
低Z材料に対して十分な対象物再構成効率を達成するために、図4に示されたホドスコープの偏向角αによって宇宙線スペクトルを分割することができる。費用関数は、ホドスコープおよび/またはVOIの角度分布に基づいて定義され、それにより再構成VOIの感度が最大になる。言い換えると、対象物再構成のための偏向角閾値(下方および/または上方)の初期値が設定される。その目標は、核でのコロンビウム散乱があるレプトン束の部分を、減衰によって特性を示すことができる部分から分離すること、すなわち、減衰がVOI内の較正された透過率の変化によって決定されるように分離することである。
【0063】
言い換えると、対象物の再構成および識別の検出感度は、軌道または飛跡の、その軌道または飛跡の偏向角に応じた分光測定フィルタリングによって増大させることができる。特定の範囲の偏向角(レプトンの平均運動量に統計的に対応する)を有するレプトンの特定の群をフィルタリング除去することによって、減衰と散乱効果を分離することができる。小さい偏向(高運動量)角では、減衰効果は無視することができ、散乱効果が支配的である。大きく偏向された(低運動量)粒子では、減衰効果が支配的である。中間偏向角では、低運動量ミューオンと高運動量電子の混合粒子が一群になり得る。異なる群の分光測定フィルタリングを行うための、唯一の方法ではないが1つの有利な方法は、偏向角によるものであり、その理由は、偏向角がエネルギーおよび平均散乱角と相関関係があるからである。電子の運動エネルギーに対する偏向角依存性の図表が図5に示されている。この図表は、3つの検出器板が互いに10cmの間隔にあり、1つのプラスチックシンチレーション検出器板の全厚が2mmであるホドスコープの条件を示す。各検出器板の間の空間には空気が充填される。
【0064】
多くの場合で、重元素対象物が存在しないとき、高エネルギーミューロンは、対象物のボクセルとその周囲の体積との間の密度の差を減少させる。しかし、重く大きい対象物の場合には、低エネルギー粒子を計算から除外することが望ましい。逆に、低運動量粒子をフィルタリング除去することによって、「より鮮明な」散乱分布を得ることができる。したがって、対象物再構成および識別の検出感度は、軌道をそのホドスコープおよび/またはVOI内の偏向角に応じてフィルタリングするという追加の方法を用いることによって、増大させることができる。上述のように、ホドスコープ内および体積内の偏向角は、ベクトル代数と、ホドスコープによって記録された衝突の幾何学的情報とを用いて決定することができる。アルゴリズムが飛跡を自動的にソートおよびフィルタリングし、ホドスコープおよび/または体積による多重フィルタリングを適用することができる。
【0065】
物質中の荷電レプトンの範囲は、粒子の初期エネルギーによって決まる。特定の範囲の軌道をフィルタリングすることによって、密度が異なる対象物間の粒子の減衰の差を最大にすることができる。VOIを通過する粒子の入力ホドスコープ内の平均偏向角の関数としての電子およびミューロン束の角度分布が、図6および図7に示されている。フィルタリング選択性は、検出器空間分解能および検出器の厚さに依存する。
【0066】
偏向粒子の最適角度範囲を選択することによって、言い換えると、特定の範囲の偏向角(すなわち、ホドスコープ内および/またはVOI内の偏向角の特定の範囲)と関連する粒子だけを考慮することによって、対象物および周囲の対象物または物質の、密度もしくは散乱分布の差を最大にすることができる。
【0067】
フィルタリングは、入力ホドスコープにおいて、出力ホドスコープにおいて、または両方を合わせたものにおいて行うことができる。順次フィルタリングとは、ソートされた飛跡を入力ホドスコープによって最初にフィルタリングし、第1のフィルタリングステップを通過する飛跡が次に、VOIまたは出力ホドスコープ内で次のフィルタへ向けられることを意味し得る。フィルタリング条件には、上方および下方角度閾値どちらも、またはこれらの閾値の一方だけがあり得る。粒子イベントは、イベントが偏向またはフィルタリング閾値を満たす場合に保持される。順に、すべてのフィルタリングステップが、各個別のステップのすべての角度閾値を満足させなければならない。
【0068】
したがって、分光測定フィルタリングの手順は以下のように要約することができる。
(i)セクションの「ホドスコープおよびVOI内の軌道の位置特定」に定義された完全軌道と共に飛跡に対するホドスコープ内の偏向角を計算する。

(ii)ホドスコープ内の偏向分布を示すスペクトル分布を構築する。
(iii)コンピュータシミュレーションおよび/または実験データから得られる、検出システムの特定のスペクトル分布および分解能が与えられた、ミューロンおよび電子/陽電子のスペクトル分布を決定する。
(iv)対象物再構成のために偏向スペクトルの最適分割を実験的に決定する。
【0069】
<対象物位置特定および再構成>
低z材料中で飛跡を大きく変化させない電子、陽電子およびミューロンについての情報を用いて、体積内の対象物の位置を特定することが可能である。
【0070】
相互間の距離が固定された複数の平面にVOIを分割することによって、ビーム平面交点の座標を計算することが可能である。結果を有限値に抑制するために、体積は3次元格子の形に分割される。格子値は、ビーム平面交点座標を最も近い格子(すなわちボクセル)値に近付けるために用いられる。
【0071】
VOIを通過するレプトンスペクトルの低運動量部分の強度損失は、低運動量レプトン束のおおよそ指数関数的なエネルギー分布の故に決定することができる。
【0072】
強度の全損失は各ボクセルの減衰の合計になる。減衰係数は、主として原子内電子との相互作用による影響を受ける。したがって、全減衰のパラメータは、分光測定でフィルタリングされたデータを逆投影することによって、VOI内の物理的密度分布と関連付けることができる。
【0073】
散乱分布の変化は、ミューロン軌道の全経路長に比例する。全経路長を、ボクセルを通過する一組の線について、要素体積(ボクセル)を通る要素経路長dに分割すると、変化は、各単一ボクセル内で、散乱密度の合計(L.J.Schultzの「Cosmic ray muon radiography」、博士論文、Dept.Elect.Comput.Eng.、Portland State Univ.、Portland、OR、米国、2003年、に定義された用語)に等しくなることが示され得る。
【0074】
単一の完全軌道では、全散乱角は、各ボクセル内の散乱角の合計になる。
【0075】
それゆえに、全散乱角は、各ボクセル内で起きている散乱の合計になる。したがって、全散乱角のパラメータは、分光測定でフィルタリングされたデータを逆投影し、定義されたVOI内の完全軌道を用いることによって、散乱密度と関連付けることができる。VOI内のクーロン散乱密度変化を示す体積散乱分布を得ることができる。ボクセルごとの散乱角についての利用できる情報がないので、飛跡の軌道が通っているすべてのボクセル間で全散乱角を等しく分割することに頼らなければならない。VOIが、同様の原子番号を有する材料および要素からほとんど構成されているとすれば、散乱確率は単一の場所に集中しないものと仮定することができる。図4は、逆投影に使用するための構築近似軌道ベクトルCDの経路に沿って、全散乱角α+βの値が均等に分布している例示的な手法を示す。同じ規則が、透過(減衰)推定のための軌道カウント(密度)などの、任意の他の測定パラメータに基づく軌道再構成に当てはまる。
【0076】
各ボクセルは、逆投影に用いられるパラメータ値を収集するためのカウンタとして作用し、この場合パラメータ値は、特定のボクセルを通過する粒子の数を表す。これにより、選択されたパラメータの衝突マップ(たとえば、軌道密度マップまたは散乱密度マップ)が得られ、各ボクセルは、実際に通過した選択パラメータをカウントする。体積密度マップは、完全軌道(すなわち、出力ホドスコープ上の第1の出て行く検出器パネルに少なくとも到達する軌道)だけを考慮して計算されることに留意されたい。
【0077】
2D平面での対象物検出は、単一値が各ボクセルに割り当てられている入力スライス(ボクセル平面)で行われる。平均化(ノイズ除去)およびエッジ検出カーネルが採用され、すべてのボクセル平面に繰り返し適用されてきた。現在、このシステムではZ平面を用いて対象物を抽出するが、ボクセル平面のXとYの組み合わせを用いてセグメント化イメージを抽出することができる。
【0078】
対象物は、異なるフィルタリングパラメータを用いる場合、別々の方法で検出することができる。たとえば、ミューロンによって検出される対象物と、電子および低運動量ミューオンによって検出される対象物。最終二元対象物空間は、各分離実行の結果を合計する(重ね合わせる)ことによって作り出される。
【0079】
対象物ラベリングは、各個別の対象物に標識を割り当てるために行われる。1つの個別対象物がボクセルの組とみなされ、論理値が「偽」または0である背景に取り囲まれている論理値「真」または1を有する。同じボクセルの側面または縁部を共有する2つのボクセルは、同じ対象物についてカウントされる。対象物は、繰り返し拡張を用いてラベル付けされたが、対象物によって占められた空間を見つけるためにシード値が使用される。二元対象物ラベリングが、異なる連結成分ラベリング法を用いて行われ得る。
【0080】
位置特定後、各個別の対象物に、その位置に基づいたタグを割り当てるために対象物タグ付けが行われる。1つの個別対象物がボクセルの組とみなされ、論理値が「偽」または0である背景に取り囲まれている論理値「真」または1を有する。同じボクセルの側面または縁部を共有する2つのボクセルは、同じ対象物についてカウントされる。対象物の位置は、繰り返し拡張を用いてタグ付けされたが、対象物によって占められた空間を見つけるためにシード値が使用される。二元対象物の位置のタグ付けは、異なる連結成分ラベリングアルゴリズムを用いて行われ得る。
【0081】
論理体積を特定できると、システムは、対象物のコンテンツをヒストグラム(確率密度関数− PDFとも呼ばれる)として抽出する。ヒストグラムのビン幅(h)ならびに最小(amin)および最大(amax)範囲がユーザによって決定され、これらの値が同一に保持される場合には、直接のヒストグラム比較が可能になる。
【0082】
対象物は、異なるフィルタリングパラメータを用いて検出される。たとえば、対象物はミューロンによって検出することができ、あるいは電子および低運動量ミューオンによって検出することができる。最終二元対象物空間は、各分離実行の結果を合計する(重ね合わせる)ことによって作り出される。この最終二元対象物空間は、純粋な/複合の/合成の対象物を見つけるために使用される。
【0083】
対象物再構成および識別のために異なる逆投影パラメータを用いる多重並列計算は、上述のように、体積マップ分布における勾配をその特定の領域のVOIまたは対象物について最大にする、選択された異なるフィルタリング値および組み合わせを用いて実行することができる。このことは、同じ体積および同じスキャン内の異なる対象物が、異なるフィルタリング閾値を用いて再構成できることを意味する。さらに、対象物サイズ再構成のための1つのフィルタリング条件、および対象物認識(識別)のための他のフィルタリング条件を用いることが特に有利になり得る。対象物再構成では、より厳格なフィルタリングを用いることが有利になり得る。たとえば、対象物サイズおよび位置が決定されると、他のフィルタリング条件と共に粒子軌道を用いることができる。
【0084】
<逆投影においてVOIフィルタリングを使用すること>
これまで、ホドスコープにおけるフィルタリングについて説明してきた。分光測定角度フィルタリングの方法は、ホドスコープにおけるフィルタリングについて定義されたのと同様にVOIに適用することができる。このように、通過する材料および粒子の運動量に依存しないVOI内の全散乱の効果を利用することができる。
【0085】
ホドスコープ内で起きている粒子偏向とVOI内で起きている偏向を区別することができる。偏向位置に基づいて偏向は、ホドスコープフィルタリングまたはVOIフィルタリングとして定義することができる。ホドスコープ内で起きている偏向は固定環境内にあり、したがって、統計的に一定の分布になる。この偏向は、好ましい主要なフィルタリングツールである。VOI内で起きている偏向は統計的に一定ではないが、別のフィルタリングツールとして、ホドスコープフィルタリングと併せても併せなくても用いることができる。VOIのフィルタリングパラメータ(VOIフィルタリング)を定義する1つの方法は、入力ホドスコープのベクトルBC(図4)と、出力ホドスコープ上のベクトルまたはVOI内の散乱過程を示す任意の他のベクトルとの間の角度(たとえば、ベクトルBCとCDの間の角度)として定義するものである。
【0086】
VDM(体積密度マップ)の勾配、すなわちボクセル強度分布を増大させるためのVOIにおけるフィルタリングの効果は利点になる。再構成VOIの良好な水平断面イメージが、ホドスコープフィルタリング条件0〜0.6度、および0〜4度または0〜2度のVOI角度(ベクトルBCとCDの間の角度)によって得られる。フィルタリングパラメータは、ボクセル(ボクセル辺長1cm)ごとの散乱角の平均角度である。1つの例では、上部イメージおよび下部イメージで異なるフィルタリング条件において検出器空間分解能が1mmのセルロースブチレートでは、自然流動速度に対応する推定測定時間はおよそ10分である。
【0087】
別の例では、再構成立方体(30×30×30cm3)ウラニウムVOIの水平断面イメージが、ホドスコープフィルタリング条件0〜0.8度と、0〜3度および0〜60度のVOIフィルタリング(ベクトルBCとCDの間の角度)角度設定とによって得られる。フィルタリングパラメータは、検出器空間分解能が1mmのボクセルごとの散乱角の平均角度であり、自然流動速度に対応する推定測定時間はおよそ18分である。
【0088】
最適フィルタリング角度を選択することは、好ましくは、対象物再構成のためのデータ処理中に自動的に行われる。
【0089】
<完全軌道を評価することおよび軌道の偏向補正を適用することによって、最高運動量レプトンの部分を区別する精度を高めること>
3Dラインフィットを使って、高運動量レプトンについてのホドスコープ内の偏向角決定の精度を高めることができる。この方法の目的は、トモグラフィシステム全体にわたる完全軌道が適合直線からの特定の偏差閾値を超えない場合に、補正された軌道の非偏向直線経路として飛跡を割り当てることである。選択された閾値は、偏向角の検出精度と結び付けられる。
【0090】
物理的なホドスコープ検出器システムの精度が限られていることにより、多くの非偏向粒子飛跡がホドスコープ内で偏向されているように見える。高い確率でこのような飛跡が高運動量ミューオンによって生じることは統計的に明らかである。角度0〜0.6度の間の領域内のミューオンの大部分が、精度が1.0mmの検出器板をベースとするホドスコープに関して、拡大された偏向角で図示されている。
【0091】
軌道の偏向補正(TDC)のアルゴリズムを完全軌道に対して適用することによって、特定の閾値内の角度分布からの粒子束の一部が新しい群に分離される。1つのラインがすべての衝突を通してトモグラフィ手順において適合され、その距離は衝突位置とホドスコープ平面上の適合ライン位置との間で測定される。すべての距離が所与の閾値未満であるならば、線は非偏向とみなされる。
【0092】
対象物再構成における性能向上の効果は、ホドスコープ内で得られた測定スペクトル角度分布を補正し、補正されたものを、統計的により確度の高い結果に向けてトモグラフィシステム全体を通して軌道を評価することで、調整することによって実現され得る。これらの軌道を補正すると、VDMの変動性がボクセルごとの全散乱角の平均値に基づいて低減し、対象物再構成のための感度の増大が実現する。
【0093】
<分光測定フィルタリングおよびTDCアルゴリズムの適用による対象物再構成>
関連アルゴリズムの支援による再構成プロセスの手順は以下のように要約することができる。
宇宙線束の分光測定フィルタリングを適用することによって完全軌道のスペクトル領域を選択する。
選択肢の軌道偏向補正アルゴリズムを選択する/選択しない。
逆投影に用いられる測定パラメータ値を選ぶ(たとえば、完全軌道、平均散乱角または他の同様のパラメータをカウンティング)。
VOI内の飛跡軌道を選択する。
VOIのフィルタリングパラメータを選択する/選択しない。
VOI内の投影飛跡を投影飛跡軌道に基づいて逆投影する。
セグメント化の操作を、いくつかのパラメータ値のうちの1つを用いて、1つまたはいくつかのフィルタリングされた逆投影に対して別個に行う。
対象物をラベル付けまたはタグ付けする− 確立された検出対象物の論理体積を構成する。
選択する/選択しない− 別の対象物再構成からの論理体積を組み合わせ(重ね合わせ)、再構成された対象物を表す分離論理体積を割り当てる。
【0094】
この手順は、対象物再構成のために分光測定フィルタリングを選択すること、TDCを選択する/選択しないこと、およびVOI角度フィルタリングを選択する/選択しないことから開始して、論理体積および組み合わせ論理体積を生成する。
【0095】
説明した再構成方法の成果は、図8および図9に異なる条件で示されており、これらの図は、説明のために半分に切断された2つの立方体を示す− セクションの「トモグラフィについての説明」で記述されたトモグラフィによる、赤身(肉)から成る材料の内部の中心に置かれた寸法が10×10×10cm3の爆発物(タイプRDX)。ホドスコープ内の検出器板の推定空間分解能は1mmである。対象物再構成は、ホドスコープ角度スペクトルを3つの群(0〜0.6度、0.6〜1.2度、1.2〜90度)にフィルタリングして行われる。VOI内のフィルタリングは適用されなかった。多重再構成が、透過および全散乱角に対して行われた。得られたVDMは、セクションの「対象物位置特定および再構成」で記述された対象物再構成を行うために使用された。
【0096】
図8では、対象物再構成がTDCを用いずに行われ、図9ではTDCが適用された。推定リアルタイム測定持続時間、およそ18分。2つの対象物の比率は、TDCが適用されることでより正確に確立されると認めることができる。
【0097】
入力ホドスコープスペクトルフィルタリングは、低Z材料の効率的な対象物再構成のために重要であり、スペクトルフィルタリングが適用されなければ、水の立方体が検出されないままになる。しかし、高Z材料の場合は、同じサイズおよび形状を持つウラニウムの検出が露出され得る。
【0098】
上記の方法および装置の利点は、材料および物品が正確に識別され得ることである。特に、低Z元素から成る材料および物品が、限られた時間スケール内で検出され識別され得る。
【0099】
低Z材料を検出する際は、すべての努力が検出感度を高めることに注がれる。本発明の実施形態の利点には以下が含まれる。
吸収(減衰)効果および散乱効果に対する検出感度を高めるために、入って来る宇宙線束をフィルタリングおよび分離し、それによって再構成体積密度マップの勾配が増大すること。
体積密度マップを計算するために散乱パラメータを用いる場合、粒子の運動量に対する感受性があまりないこと。
対象物の位置特定および検出のために、体積密度マップに基づいてイメージを向上させるイメージ処理法を適用すること。
訓練されたデータおよび機械学習を用いることによって、検出された対象物を自動材料識別すること。
【0100】
検出のための従来のX線システムに対する利点には、以下が含まれる:高い透過力;遮蔽された対象物の内部を見ることができること(たとえば、鉛およびポリエチレンで遮蔽された核材料、またはタンクの水で遮蔽された麻薬);元素組成に対する感受性;人の存在下での使用に対し制限がないこと。
【0101】
説明した構成には、様々な修正を加えることができる。たとえば、別のホドスコープが、より高い推定空間分解能(0.1mmまで)の1つの検出器平面と共に使用されてよい。この検出器平面は、上述の検出器平面と同様に構成されるが、1層の長方形ファイバが、直径1mmの二層円形シンチレーションファイバと置き換えられる。パルス波形解析および専用トラッキングアルゴリズムを適用することによって、検出器平面の空間分解能を大幅に高めることができる。
【0102】
本方法および装置は、電子および/またはミューロン検出に関して、陽電子検出にも同様に適用可能である(すなわち、正電荷および負電荷と併せて)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2020年4月6日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子を使用して、たとえば宇宙線トモグラフィに基づいて物品を検出および/または識別するシステム、デバイス、およびプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
保安および出入国管理の用途のために特殊な核材料を検出する宇宙線トモグラフィが、2000年代初頭に初めて提案された。トモグラフィイメージングにおいてのミューオン偏向の使用を提案した最初の論文は、BorozdinらのRadiographic imaging with cosmic−ray muons、Nature.(2003)、Vol.422.Iss 6929、277頁で、2003年に発表された。宇宙線ミューオントモグラフィでは、ミューオン偏向の効果およびその原子番号依存性を利用して、ミューオンの軌道に沿った面密度を測定し元素組成を決定する。
【0003】
その後、米国特許第7633062号に、クーロン散乱効果に基づいたミューオントモグラフィが開示された。さらなる進歩は、3つの検出器平面を使用することと、飛跡再構成などのために統計的最尤法/予想最大化法を適用することによって、入ってくる粒子の運動量を評価することとに関連していた。中程度および重い原子番号Z範囲(たとえば、鉄、タングステン、鉛、特殊核材料)の対象物を識別することが論じられた。
【0004】
2015年のBlanbiedらのNuclear Instruments and Methods in Physics Research A、784(2015)、352〜358頁に、宇宙線ミューオンおよび電子の偏向および阻止を用いて材料識別をどのようにして実現できるかについての記載がある。この方法は、軽い金属さらに低原子量材料から重い金属を区別すると述べられている。この方法では、最初に材料の種類、次にその材料の厚さを決定するために「阻止能」というパラメータを導入している。WO2016/025409もまた参照されたい。
【0005】
別の粒子検出方法および装置が、以下の特許文献:US2010/065745A1、US2008/315091A1、WO2015/057973A1、およびUS2015/325013A1に、ならびに以下の論文:IEEE Nuclear Science Symposium(2006)、Schultzら、「ML/EM Reconstruction Algorithm for Cosmic Ray Muon Tomography」、2574〜2577頁(XP031083881)、およびNuclear Instruments & Methods in Physics Research A(2004)、vol.519、Schultzら、「Image reconstruction and material Z discrimination via cosmic ray muon radiography」、687〜694頁(XP004492327)、およびIEEE Nuclear Science Symposium and Medical Imaging Conference(2014)、Mitraら、「A volume clearing algorithm for Muon Tomography」、1〜3頁(XP032880166)に記載されている。
Pesente Sらの論文「First results on material identification and imaging with a large−volume muon tomography prototype.Nuclear instruments & method in physics research,section A,Elsevier BV North−Holland,NL,vol.604,no.3,11 June 2009(2009−06−11),pages 738−746,XP026129784,ISSN:0168−9002,DOI:10.1016/J.NIMA.2009.03.017」には、大体積ミューオントモグラフィ技法によるイメージングを用いる材料識別の方法が開示されている。この技法は、当該インタロゲーション体積に関連する散乱角に基づいたイベントの分析を含む。
WO2016/033564A1には、宇宙線粒子の入力および出力の検出器を使用して関心体積内の対象物を検出する方法が開示されている。対象物は、最近接点接近技法を使用して再構成される。
Richard Claude Hochの論文「Advances in Cosmic Ray Muon Tomography Reconstruction Algorithms」には、最近接接近の改善点が開示されており、期待値最大化アルゴリズムが宇宙線ミューオントモグラフィ再構成に使用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の諸態様は、関心体積内の材料および/または1つもしくは複数の物品を検出および/または識別するための別の手法、ならびに改善された方法および装置を提供しようとするものである。物品という用語は、人に運ばれる対象物を含む、すべての種類の対象物を含む。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、複数のボクセルを含む関心体積内の材料または物品を検出および/または識別する方法が提供され、この方法は、
a)入力ホドスコープによって、関心体積に入って来る荷電粒子を検出するステップと、
b)出力ホドスコープによって、関心体積を出て行く荷電粒子を検出するステップと、
c)関心体積を出て行く粒子を関心体積に入って来る粒子と関連付けて粒子の完全軌道の組を決定するステップと、
d)完全軌道を持つ粒子の、入力ホドスコープおよび/または出力ホドスコープ内の偏向に基づいてフィルタリングを行うステップと、
e)それぞれのボクセルを通過した、フィルタリングされた完全軌道の逆投影を用いることによって、完全軌道の数および/または全散乱角を表す体積密度マップを計算するステップと、
f)関心体積内の材料または物品を体積密度マップから検出および/または識別するステップとを含む。
【0008】
フィルタリング手順とは、逆投影を使用して体積密度マップを生成するための準備ステップのことである。
【0009】
1つの好ましい方法では、ステップd)のフィルタリングは、ホドスコープの入力および/または出力の粒子の偏向角によって行われる。
【0010】
上記の好ましい方法の一代替形態として、またはステップd)に加えて、フィルタリングは、関心体積内の粒子の全散乱角に基づいて行われる。
【0011】
体積密度マップは、フィルタリングされた完全軌道の逆投影を用いて計算することができる。
【0012】
一般原則は、物理的に測定されたいずれのパラメータもカウント(軌道のカウント)すること、または物理的測定値(全散乱角)から、粒子が通過するすべてのボクセルの中に導き出されるいずれのパラメータもカウントすることである。再構成手順では、これらのパラメータを同様に処理する。
【0013】
測定点から入力点までの軌道を軌道ごとに同じ手順で逆投影することによって決定するだけの数の体積密度マップが得られ、このことは、測定されるパラメータが、ボクセル当たりの完全軌道の数またはボクセル当たりの全散乱角の合計であるかどうかに依存しない。各粒子は常に、VOIを通過するその軌道、およびVOI内の全散乱角についての情報を含み、したがって、一方または両方の物理パラメータを用いて体積密度マップを構成することができる。そのアルゴリズムによれば、各飛跡は、飛跡が通る各ボクセルに1カウントを与える。各飛跡はまた、飛跡が通る各ボクセルに全散乱角の値を与える。次に、各ボクセル内の軌道の数を合計すると、VOI全体にわたって粒子の物理吸収の差異を表す体積密度マップに到達する。並行してまた、各ボクセルの全散乱角をカウントし合計すると、またはボクセルごとの全散乱角の平均値を用いると(ただし別法として、他の散乱記述パラメータ、たとえば角度の中心値、合計などを用いることもできる)、VOI全体にわたって物理散乱過程の差異を表す体積密度マップに到達する。これら2つの体積密度マップは、ホドスコープ内、および任意選択でVOI内のフィルタリングに対し構成することができる。このことは、測定から受け取られた2つの原則物理パラメータを持っていても、異なるフィルタリング条件によるもっと多くの体積密度マップを持ち得ることを意味する。
【0014】
任意のボクセル内のカウントされたデータは合計され、さらに操作することができ、たとえば平均値を用いることができる。その選択は、どのパラメータがトモグラフィ再構成に最もよく適しているかによって決まる。たとえば、全散乱角の合計ではなく平均散乱角を用いると、VOI内の不均一な飛跡分布が正規化され、したがって好ましいものになる。
【0015】
VOI内の全散乱角は2つの手順に用いることができることに留意されたい。すなわち、1)全散乱角はフィルタリングパラメータとして用いられ、その場合に散乱角は、体積密度マップを構成するためにどの特定の軌道が選ばれるかの選択に影響を及ぼし、2)別の態様では、全散乱角は、体積密度マップ自体を構成するためのパラメータとして用いられる。好ましくは、両方の手順が採用される。最初に、VOI内の全散乱角によってフィルタリングを行い、次に、フィルタリングされた軌道を用いて体積密度マップを構成する。
【0016】
関心体積内の材料または物品を検出することには、関心体積内の材料または物品の幾何学的特性を決定することが含まれる。
【0017】
好ましい方法では、複数の体積密度マップが、フィルタリングパラメータの異なる組を用いて決定される。こうすることは、この方法の識別力を改善するのに役立つ。
【0018】
この方法はさらに、
)関心体積内の材料に対応する関心領域を定義するステップと、
)関心領域に関連する第1の分布関数を体積密度マップから生成するステップとを含む。
【0019】
この方法はさらに、
)第1の分布関数の少なくとも1つの特徴を認識して関心体積内の材料を識別するステップを含むことができる。
【0020】
各粒子は、関連付けられた偏向角をホドスコープ内に有し、操作(c)および(d)および(e)において、完全軌道の組は、特定の偏向の範囲内の関連付けられた偏向角を有する完全軌道から構成することができる。
【0021】
偏向角の範囲は、電子とミューオンが少なくとも部分的に分離されるようなものにすることができる。たとえば、この方法は、電子および低運動量ミューオンが高運動量ミューオンから分離されるように偏向角の範囲を選択することを含み得る。低運動量ミューオンは、500MeVまでのエネルギーを有し得る。
【0022】
好ましい実施態様では、ホドスコープおよびVOI内の完全軌道の、特定の閾値未満の全偏向角が非偏向としてカウントされ、直進軌道として処理される。
【0023】
本発明の第2の態様によれば、検出および/または識別アセンブリが提供され、このアセンブリは、
関心体積に隣接する入力ホドスコープであって、関心体積が複数のボクセルを含み、入力ホドスコープが関心体積に入って来る荷電粒子を検出するように構成されている、入力ホドスコープと、
関心体積と境界を接する出力ホドスコープであって、関心体積を出て行く荷電粒子を検出するように構成されている、出力ホドスコープと、
関心体積を出て行く粒子を関心体積に入って来る粒子と関連付けて、入力ホドスコープおよび/または出力ホドスコープ内の完全軌道を決定し、
完全軌道の偏向角に基づいてフィルタリングを行い、
それぞれのボクセルを通過した、フィルタリングされた完全軌道の逆投影を用いることによって、完全軌道の数および/または散乱角を表す体積密度マップを計算し、
体積密度マップから関心体積内の材料または物品を検出および/または識別するように構成された入力および出力ホドスコープから検出データを受け取るように構成された、プロセッサとを含む。
【0024】
プロセッサは、入力ホドスコープおよび/または出力ホドスコープ内の粒子の偏向角に基づいて、および任意選択で、関心体積内の粒子の全散乱角に基づいてフィルタリングを行うように構成することができる。
【0025】
本発明の第3の態様によれば、第1の態様による方法を、コンピューティングデバイスによって実行される場合に実施するためのプログラムが提供される。
【0026】
いくつかの実施形態では、コンピューティングデバイスはデータを、遠隔接続を通じて、および/または電子記憶装置から受け取るように構成することができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、コンピュータプログラムは、検出器アセンブリによる放射の検出とは異なる位置で、および/または異なる時間に実行することができる。
【0028】
第1の態様の方法の、任意選択の機能を含むいずれの機能も、第2および第3の態様に用いることができる。
【0029】
本発明の第4の態様によれば、第3の態様によるコンピュータプログラムを内蔵するコンピュータ可読媒体が提供される。
【0030】
本明細書には、隠された対象物を、いくつかの実施形態では特に、主として低原子番号の他の一般的な材料中の軽い元素から構成されるものを、これだけには限らないが検出および識別する方法が記載されている。このような方法は、宇宙線荷電レプトントモグラフィをベースとすることができ、たとえば、乗客手荷物、スーツケース、バッグ、貨物、海上コンテナなどをスキャンするのに使用することができる。この方法はまた、場合によって人および動物をスキャンするのに使用することもできる。
【0031】
本発明の好ましい実施態様について、単なる例として添付の図面を参照して以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】水平および垂直ホドスコープを備え、識別されるべき対象物がVOIの中心に置かれている、本発明の一実施形態による検出装置の斜視図である。
図2】二層の位置感知検出器平面の配置図である。
図3】ホドスコープ内の偏向角の定義図である。
図4】ボクセル化VOIを通過する粒子の軌道と、α+βの散乱角の合計として定義されるVOI内の全散乱のパラメータを用いて逆投影の操作を行うこととを示す図である。
図5】ホドスコープ内の電子の平均偏向角のエネルギー依存性を示す図である(検出器板は2mmの全厚を有し、検出器板間の体積には空気が充填されている)。
図6】VOIを通る完全軌道に対するホドスコープ内の電子の角度分布を示す図である。
図7】VOIを通る完全軌道に対するホドスコープ内のミューオンの角度分布を示す図である。
図8】分光フィルタリングが適用された二重対象物の対象物再構成を示す図である(爆発材料、赤身の30×30x30cm3立方体の中心に置かれたRDXの立方体(10x10x10cm3))。
図9】分光フィルタリングおよび軌道偏向補正アルゴリズムが適用された二重対象物の対象物再構成を示す図である(爆発材料、赤身の30×30x30cm3立方体の中心に置かれたRDXの立方体(10x10x10cm3)。
図10】本発明の一実施形態による方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下で論じられる本発明のいくつかの実施形態は、コンピュータプロセッサを有するコンピュータシステムで実行することを可能にするための制御論理を有する、ファームウェアおよび/またはコンピュータ使用可能媒体に存在するコード(たとえば、ソフトウェアアルゴリズムまたはプログラム)として組み込まれてよいことを理解されたい。このようなコンピュータシステムは通常、コードを実行することにより出力を与えるように構成されたメモリ記憶装置を含み、このコードはその実行に応じてプロセッサを設定する。コードはファームウェアまたはソフトウェアとして構成することができ、個別コードモジュール、関数呼出し、手続き呼出し、またはオブジェクト指向プログラミング環境のオブジェクトなどのモジュールの組として編成することができる。モジュールを使用して実施される場合、コードは、単一のモジュール、または互いに協働して動作する複数のモジュールを含むことができる。
【0034】
<物理的原理>
二次宇宙線電子/陽電子は、主として原子殻内の電子と相互作用する。荷電粒子の阻止能(または代替的に使用される用語で、エネルギー損失)とは、原子内電子によるイオン化過程を通る連続的なエネルギー移動のランダムな過程のことである。電子ビームの群挙動は次のパラメータ、すなわち、阻止能、範囲、横方向および長手方向のストラグリングによって特性を示すことができる。これらの特性により、電子トモグラフィのために適用されるべき方法が決定する。
【0035】
電子ビームの場合、制動放射によるエネルギー損失が、約10MeVを超えるエネルギー範囲において重要になる(重い元素に対して)。
【0036】
eが小さいことにより、粒子の飛跡軌道の偏向はかなりのものである。しかし、5MeVより上の飛跡軌道が、いくつかの適用例では直線に近付けられ得ること、あるいは小さい偏向が考慮に入れられ得ることをモンテカルロシミュレーションで示すことができる。後方散乱は、電子の低いエネルギー(2〜3MeV未満)においては重要であるが、軽い元素から成る材料については5MeVを超えると無視できるようになる。
【0037】
ミューオン散乱はガウス分布に近付けることができる。
【0038】
<検出方法>
記載された方法の目的は主として、個人手荷物または貨物コンテナの例のような中程度のサイズの閉鎖体積(CV)内の低Z元素から成る材料を、これだけには限らないが識別することである。この方法は、材料中の荷電レプトンの減衰およびクーロン散乱に基づいた、宇宙線荷電レプトンのトモグラフィ測定に依拠する。人工供給源などの、他のタイプおよび供給源の荷電粒子を使用できるとはいえ、宇宙線粒子には、高エネルギースペクトルおよび自由に入手可能であるという利点がある。
【0039】
粒子のうちのある一定の部分がCV内で減衰し、ある一定の部分がCVを透過する(出て行く粒子)。ある一定の粒子の散乱分布がCV内に得られる。関心体積を出て行く荷電レプトンは、関心体積に入って来る、完全軌道の組を決定できる荷電レプトンと関連付けることができ、この完全軌道の組は、関心体積を出て行く荷電レプトンが関心体積を通過するときに取る軌道の組である。
【0040】
CVを含む関心体積(VOI)は、ボクセルと呼ばれる要素体積に分割される。本発明の実施形態では、対象物が、ミューオン成分および電子成分(たとえば、ホドスコープ内の偏向角に基づく二次レプトン線束の低運動量成分および高運動量成分)の分光測定フィルタリング(識別)に依拠するトモグラフィ対象物再構成法によって、関心体積(VOI)内で識別される。対象物再構成は、逆投影を使用することによって行われる。分光測定識別により、低エネルギーレプトンからの高エネルギーレプトンの近似分離が可能になり、ホドスコープ内の角度偏向の分布に基づいてレプトン束がグループ分けされる。
【0041】
対象物の位置特定のために、VOIは要素体積(ボクセル)にさらに細分される。粒子の各飛跡は、投影飛跡を逆投影することによって、飛跡が通過するすべてのボクセルと関連付けられる。異なるスペクトル領域が別々に処理されて、複数の体積密度マップまたはその組み合わせが構成される。各ボクセルでは、そのボクセルを通過する完全軌道を有する粒子の飛跡数である、透過粒子の飛跡数がカウントされる。それによって、「衝突マップ」(体積密度マップ)を再構成してVOI内の対処物の位置を特定することができる。さらに、体積密度マップは、完全軌道のカウント、測定パラメータから導き出された全散乱またはパラメータ(たとえば、ボクセルごとの平均散乱角、中心散乱角など)の測定パラメータのいずれかをベースとすること、および参照することができる。
【0042】
任意選択の追加の方法が、対象物認識の検出感度を最適化するために、VOI内の軌道の偏向角によって軌道に追加のフィルタリング処理を導入して使用されることがある。軌道偏向補正と呼ばれるアルゴリズムを適用して、高運動量レプトンのホドスコープ内の偏向角の決定を補正し、精度を高めることができる。この方法の目的は、トモグラフィシステム全体にわたる完全軌道が、偏向角の検出精度に結び付けられた特定の偏差閾値を超えない場合に、飛跡を補正軌道の非偏向経路として割り当てることである。
【0043】
さらに、得られた分布関数は、材料と、ボクセル(特に、検出材料が置かれている関心領域内のもの)の体積を充填するその密度とに関連付けることができる。分布関数の1つまたは複数の特徴は、材料を識別するために認識され得る。たとえば、訓練データとしての統計的特徴量(得られたカウント率、散乱角およびこれらの分布関数など)は、教師あり機械学習アルゴリズム(一例として、判別関数としてKLDを用いた確率分布関数(PDF)ベースの分類)に供給することができる。訓練が行われると、自動システムは、VOI内に存在する対象物を分類できる状態になる。
【0044】
<トモグラフィについての説明>
図1は、図1に示された2つのXY位置感知ホドスコープ12、14および2つのXZ位置感知ホドスコープ16、18の形の、入力および出力検出器アセンブリをベースとする検出器10のトモグラフィ構成を示す。
【0045】
トモグラフィ検出器10は、2つの側面ホドスコープ16、18と結合された、上方ホドスコープ12および下方ホドスコープ14を含む。システムの2つの側面26、28は、スキャンされる対象物または物品52を挿入する、および取り出すために開いたままである。ホドスコープは関心体積50と境界を接する。
【0046】
検出器10のVOIの全体サイズは、たとえば1m×1m×2mとすることができるが、このサイズは当然ながら、スキャンされる品目のサイズに応じて変わり得る。この実施形態では、検出器10の外形寸法は1.4×1.4×2mである。
【0047】
本実施形態の検出構成では、各ホドスコープ12、14、16、18は3つの層で作られ、それぞれが、粒子飛跡に対してX、Y、Z座標を形成する直交検出平面を含む。したがって、4つのホドスコープそれぞれの3つの層は、この実施形態では12枚の検出パネルを形成する。これらの層は、二層または多層の位置感知検出器パネルを含み得る。たとえば、位置感知検出器パネルは、図2に示される互いに直交して配置された2つの層120、122をなす、1×1mm2の太さのプラスチックシンチレーションファイバによって構築することができる。
【0048】
12枚の検出パネルのそれぞれは、シンチレーション光を検出し光子をファイバ両端に配置された光センサまで移送する、1メートル当たりたとえば1000本のシンチレーションファイバにセグメント化される。ファイバのピッチは適宜に選択することができるが、通常は1mmである。
【0049】
一致モードデータ取得システムが使用される。
【0050】
<ホドスコープおよびVOI内の軌道の位置特定>
図3および図4は、粒子が検出器10を通過するときの粒子の偏向角を示す。入って来る粒子の軌道は図4の上部に示され、出て行く粒子の軌道は図4の下部に示されている。
【0051】
図4では、
A、B、C、D、E、F− 測定された粒子衝突座標
G− VOI内で偏向が起こらなければ衝突座標になるはずの、入って来る粒子の軌道の延長の想像上の座標
AB− 初期の入って来る軌道
BC− ホドスコープ内で偏向した軌道
θ− ホドスコープ内の偏向の偏向角
CD− VOIを通過する定義された軌道(標準定義)
DE− 出て行く軌道の定義
(α+β)の合計− VOI内の全散乱角(VOI内で起こるすべての散乱(偏向)の合計)
(α+β)− 軌道BCとDEの間の角度でもある
CG− 入って来る軌道の延長線
VOIの全散乱角は原理的に、別法として、軌道のBCとDEの間ではなく、たとえばACとDFの間、または近似線(たとえば、最小二乗近似)ABCとDEFの間と定義することもできる。
【0052】
実際の(おそらく軽く湾曲した)軌道は決して知られることがなく、また測定することができない。VOI内の構築された軌道は逆投影され、軌道が通過するすべてのボクセルについて、図示のように各ボクセルに全散乱角を関連付け、またはカウント数だけを関連付ける。この逆投影が、すべて異なる方向で入って来るすべての測定粒子に対して行われるならば、ほとんどのボクセルのカウント(または散乱角)が得られ、体積密度マップが構築される。
【0053】
関心体積50に入って来る、特に宇宙線の荷電レプトンが検出され、その軌道が、荷電レプトンが最初に通る位置感知ホドスコープによって決定され、このホドスコープは入力ホドスコープと考えることができる。
【0054】
検出器パネル内の2本の直交するシンチレーションファイバへの2つの衝突により、1つの(衝突)位置が定義される。外側の2つの検出器層1、2(図4の入力ホドスコープ)における衝突に基づいて、初期軌道ベクトルABを定義することができる。内側の2つの層2、3における衝突に基づいて、軌道ベクトルBCを定義することができ、2つのベクトルの偏向角を計算することができる。ベクトルBCはまた、VOIに入って来るレプトンの軌道とも考えられる。
【0055】
関心体積に入って来る荷電レプトンのものである初期の入って来る粒子の飛跡軌道、および出て行く粒子(関心体積を出て行く荷電レプトン)の飛跡軌道が決定される。
【0056】
以下の式が角度計算に用いられる。入力は、x、yおよびz座標を有する2つのベクトルである。ベクトルは、偏向がない場合に角度が0度になるように配置される。入力部は点A(xA,yA,zA)、点B(xB,yB,zB)および点C(xC,yC,zC)であり、角度は以下の式を用いて計算される。
【0057】
直線経路からの偏差は様々に定義できることに留意することが重要である。言い換えると、直線からの偏差を記述する任意のパラメータを用いることができる。
【0058】
VOI内の軌道は同様に計算される。しかし、この例では、入って来る軌道はベクトルBCとして定義され、VOIを出て行く軌道はベクトルDEとして定義される。内側の2つの層における衝突によるベクトルCDは、VOI内のレプトンの軌道と考えられる。
【0059】
しかし、別の構成では、VOI内の粒子の軌道をベクトルCGとして定義することもできる。高Z材料の場合、この軌道は対象物再構成の能力を改善するということがシミュレーションで示されている。
【0060】
別の構成では、VOI内の偏向角が、粒子の入って来る軌道と出て行く軌道のベクトル間の角度として定義される。言い換えると、VOI内の偏向角は、入力ホドスコープの内側の2つの検出層2、3における衝突による軌道と、出力ホドスコープの内側の2つの層4、5における衝突による軌道との間の角度になる。
【0061】
VOIを出て行く軌道(すなわち完全軌道)だけが、さらなるトモグラフィ対象物再構成に使用される。
【0062】
<トモグラフィ再構成>
低Z材料に対して十分な対象物再構成効率を達成するために、図4に示されたホドスコープの偏向角θによって宇宙線スペクトルを分割することができる。費用関数は、ホドスコープの、および任意選択でVOIの角度分布に基づいて定義され、それにより再構成VOIの感度が最大になる。言い換えると、対象物再構成のための偏向角閾値(下方および/または上方)の初期値が設定される。その目標は、核でのコロンビウム散乱があるレプトン束の部分を、減衰によって特性を示すことができる部分から分離すること、すなわち、減衰がVOI内の較正された透過率の変化によって決定されるように分離することである。
【0063】
言い換えると、対象物の再構成および識別の検出感度は、軌道または飛跡の、その軌道または飛跡の偏向角に応じた分光測定フィルタリングによって増大させることができる。特定の範囲の偏向角(レプトンの平均運動量に統計的に対応する)を有するレプトンの特定の群をフィルタリング除去することによって、減衰と散乱効果を分離することができる。小さい偏向(高運動量)角では、減衰効果は無視することができ、散乱効果が支配的である。大きく偏向された(低運動量)粒子では、減衰効果が支配的である。中間偏向角では、低運動量ミューオンと高運動量電子の混合粒子が一群になり得る。異なる群の分光測定フィルタリングを行うための、唯一の方法ではないが1つの有利な方法は、偏向角によるものであり、その理由は、偏向角がエネルギーおよび平均散乱角と相関関係があるからである。電子の運動エネルギーに対する偏向角依存性の図表が図5に示されている。この図表は、3つの検出器板が互いに10cmの間隔にあり、1つのプラスチックシンチレーション検出器板の全厚が2mmであるホドスコープの条件を示す。各検出器板の間の空間には空気が充填される。
【0064】
多くの場合で、重元素対象物が存在しないとき、高エネルギーミューロンは、対象物のボクセルとその周囲の体積との間の密度の差を減少させる。しかし、重く大きい対象物の場合には、低エネルギー粒子を計算から除外することが望ましい。逆に、低運動量粒子をフィルタリング除去することによって、「より鮮明な」散乱分布を得ることができる。したがって、対象物再構成および識別の検出感度は、軌道をそのホドスコープ内、および任意選択でVOI内の偏向角に応じてフィルタリングするという追加の方法を用いることによって、増大させることができる。上述のように、ホドスコープ内および体積内の偏向角は、ベクトル代数と、ホドスコープによって記録された衝突の幾何学的情報とを用いて決定することができる。アルゴリズムが飛跡を自動的にソートおよびフィルタリングし、ホドスコープおよび任意選択で体積による多重フィルタリングを適用することができる。
【0065】
物質中の荷電レプトンの範囲は、粒子の初期エネルギーによって決まる。特定の範囲の軌道をフィルタリングすることによって、密度が異なる対象物間の粒子の減衰の差を最大にすることができる。VOIを通過する粒子の入力ホドスコープ内の平均偏向角の関数としての電子およびミューロン束の角度分布が、図6および図7に示されている。フィルタリング選択性は、検出器空間分解能および検出器の厚さに依存する。
【0066】
偏向粒子の最適角度範囲を選択することによって、言い換えると、特定の範囲の偏向角(すなわち、ホドスコープ内、および任意選択でVOI内の偏向角の特定の範囲)と関連する粒子だけを考慮することによって、対象物および周囲の対象物または物質の、密度もしくは散乱分布の差を最大にすることができる。
【0067】
フィルタリングは、入力ホドスコープにおいて、出力ホドスコープにおいて、または両方を合わせたものにおいて行うことができる。順次フィルタリングとは、ソートされた飛跡を入力ホドスコープによって最初にフィルタリングし、第1のフィルタリングステップを通過する飛跡が次に、VOIまたは出力ホドスコープ内で次のフィルタへ向けられることを意味し得る。フィルタリング条件には、上方および下方角度閾値どちらも、またはこれらの閾値の一方だけがあり得る。粒子イベントは、イベントが偏向またはフィルタリング閾値を満たす場合に保持される。順に、すべてのフィルタリングステップが、各個別のステップのすべての角度閾値を満足させなければならない。
【0068】
したがって、分光測定フィルタリングの手順は以下のように要約することができる。
(i)セクションの「ホドスコープおよびVOI内の軌道の位置特定」に定義された完全軌道と共に飛跡に対するホドスコープ内の偏向角を計算する。

(ii)ホドスコープ内の偏向分布を示すスペクトル分布を構築する。
(iii)コンピュータシミュレーションおよび/または実験データから得られる、検出システムの特定のスペクトル分布および分解能が与えられた、ミューロンおよび電子/陽電子のスペクトル分布を決定する。
(iv)対象物再構成のために偏向スペクトルの最適分割を実験的に決定する。
【0069】
<対象物位置特定および再構成>
低z材料中で飛跡を大きく変化させない電子、陽電子およびミューロンについての情報を用いて、体積内の対象物の位置を特定することが可能である。
【0070】
相互間の距離が固定された複数の平面にVOIを分割することによって、ビーム平面交点の座標を計算することが可能である。結果を有限値に抑制するために、体積は3次元格子の形に分割される。格子値は、ビーム平面交点座標を最も近い格子(すなわちボクセル)値に近付けるために用いられる。
【0071】
VOIを通過するレプトンスペクトルの低運動量部分の強度損失は、低運動量レプトン束のおおよそ指数関数的なエネルギー分布の故に決定することができる。
【0072】
強度の全損失は各ボクセルの減衰の合計になる。減衰係数は、主として原子内電子との相互作用による影響を受ける。したがって、全減衰のパラメータは、分光測定でフィルタリングされたデータを逆投影することによって、VOI内の物理的密度分布と関連付けることができる。
【0073】
散乱分布の変化は、ミューロン軌道の全経路長に比例する。全経路長を、ボクセルを通過する一組の線について、要素体積(ボクセル)を通る要素経路長dに分割すると、変化は、各単一ボクセル内で、散乱密度の合計(L.J.Schultzの「Cosmic ray muon radiography」、博士論文、Dept.Elect.Comput.Eng.、Portland State Univ.、Portland、OR、米国、2003年、に定義された用語)に等しくなることが示され得る。
【0074】
単一の完全軌道では、全散乱角は、各ボクセル内の散乱角の合計になる。
【0075】
それゆえに、全散乱角は、各ボクセル内で起きている散乱の合計になる。したがって、全散乱角のパラメータは、分光測定でフィルタリングされたデータを逆投影し、定義されたVOI内の完全軌道を用いることによって、散乱密度と関連付けることができる。VOI内のクーロン散乱密度変化を示す体積散乱分布を得ることができる。ボクセルごとの散乱角についての利用できる情報がないので、飛跡の軌道が通っているすべてのボクセル間で全散乱角を等しく分割することに頼らなければならない。VOIが、同様の原子番号を有する材料および要素からほとんど構成されているとすれば、散乱確率は単一の場所に集中しないものと仮定することができる。図4は、逆投影に使用するための構築近似軌道ベクトルCDの経路に沿って、全散乱角α+βの値が均等に分布している例示的な手法を示す。同じ規則が、透過(減衰)推定のための軌道カウント(密度)などの、任意の他の測定パラメータに基づく軌道再構成に当てはまる。
【0076】
各ボクセルは、逆投影に用いられるパラメータ値を収集するためのカウンタとして作用し、この場合パラメータ値は、特定のボクセルを通過する粒子の数を表す。これにより、選択されたパラメータの衝突マップ(たとえば、軌道密度マップまたは散乱密度マップ)が得られ、各ボクセルは、実際に通過した選択パラメータをカウントする。体積密度マップは、完全軌道(すなわち、出力ホドスコープ上の第1の出て行く検出器パネルに少なくとも到達する軌道)だけを考慮して計算されることに留意されたい。
【0077】
2D平面での対象物検出は、単一値が各ボクセルに割り当てられている入力スライス(ボクセル平面)で行われる。平均化(ノイズ除去)およびエッジ検出カーネルが採用され、すべてのボクセル平面に繰り返し適用されてきた。現在、このシステムではZ平面を用いて対象物を抽出するが、ボクセル平面のXとYの組み合わせを用いてセグメント化イメージを抽出することができる。
【0078】
対象物は、異なるフィルタリングパラメータを用いる場合、別々の方法で検出することができる。たとえば、ミューロンによって検出される対象物と、電子および低運動量ミューオンによって検出される対象物。最終二元対象物空間は、各分離実行の結果を合計する(重ね合わせる)ことによって作り出される。
【0079】
対象物ラベリングは、各個別の対象物に標識を割り当てるために行われる。1つの個別対象物がボクセルの組とみなされ、論理値が「偽」または0である背景に取り囲まれている論理値「真」または1を有する。同じボクセルの側面または縁部を共有する2つのボクセルは、同じ対象物についてカウントされる。対象物は、繰り返し拡張を用いてラベル付けされたが、対象物によって占められた空間を見つけるためにシード値が使用される。二元対象物ラベリングが、異なる連結成分ラベリング法を用いて行われ得る。
【0080】
位置特定後、各個別の対象物に、その位置に基づいたタグを割り当てるために対象物タグ付けが行われる。1つの個別対象物がボクセルの組とみなされ、論理値が「偽」または0である背景に取り囲まれている論理値「真」または1を有する。同じボクセルの側面または縁部を共有する2つのボクセルは、同じ対象物についてカウントされる。対象物の位置は、繰り返し拡張を用いてタグ付けされたが、対象物によって占められた空間を見つけるためにシード値が使用される。二元対象物の位置のタグ付けは、異なる連結成分ラベリングアルゴリズムを用いて行われ得る。
【0081】
論理体積を特定できると、システムは、対象物のコンテンツをヒストグラム(確率密度関数− PDFとも呼ばれる)として抽出する。ヒストグラムのビン幅(h)ならびに最小(amin)および最大(amax)範囲がユーザによって決定され、これらの値が同一に保持される場合には、直接のヒストグラム比較が可能になる。
【0082】
対象物は、異なるフィルタリングパラメータを用いて検出される。たとえば、対象物はミューロンによって検出することができ、あるいは電子および低運動量ミューオンによって検出することができる。最終二元対象物空間は、各分離実行の結果を合計する(重ね合わせる)ことによって作り出される。この最終二元対象物空間は、純粋な/複合の/合成の対象物を見つけるために使用される。
【0083】
対象物再構成および識別のために異なる逆投影パラメータを用いる多重並列計算は、上述のように、体積マップ分布における勾配をその特定の領域のVOIまたは対象物について最大にする、選択された異なるフィルタリング値および組み合わせを用いて実行することができる。このことは、同じ体積および同じスキャン内の異なる対象物が、異なるフィルタリング閾値を用いて再構成できることを意味する。さらに、対象物サイズ再構成のための1つのフィルタリング条件、および対象物認識(識別)のための他のフィルタリング条件を用いることが特に有利になり得る。対象物再構成では、より厳格なフィルタリングを用いることが有利になり得る。たとえば、対象物サイズおよび位置が決定されると、他のフィルタリング条件と共に粒子軌道を用いることができる。
【0084】
<逆投影においてVOIフィルタリングを使用すること>
これまで、ホドスコープにおけるフィルタリングについて説明してきた。分光測定角度フィルタリングの方法は、ホドスコープにおけるフィルタリングについて定義されたのと同様にVOIに適用することができる。このように、通過する材料および粒子の運動量に依存しないVOI内の全散乱の効果を利用することができる。
【0085】
ホドスコープ内で起きている粒子偏向とVOI内で起きている偏向を区別することができる。偏向位置に基づいて偏向は、ホドスコープフィルタリングまたはVOIフィルタリングとして定義することができる。ホドスコープ内で起きている偏向は固定環境内にあり、したがって、統計的に一定の分布になる。この偏向は、主要なフィルタリングツールである。VOI内で起きている偏向は統計的に一定ではないが、別のフィルタリングツールとして用いることができる。VOIのフィルタリングパラメータ(VOIフィルタリング)を定義する1つの方法は、入力ホドスコープのベクトルBC(図4)と、出力ホドスコープ上のベクトルまたはVOI内の散乱過程を示す任意の他のベクトルとの間の角度(たとえば、ベクトルBCとCDの間の角度)として定義するものである。
【0086】
VDM(体積密度マップ)の勾配、すなわちボクセル強度分布を増大させるためのVOIにおけるフィルタリングの効果は利点になる。再構成VOIの良好な水平断面イメージが、ホドスコープフィルタリング条件0〜0.6度、および0〜4度または0〜2度のVOI角度(ベクトルBCとCDの間の角度)によって得られる。フィルタリングパラメータは、ボクセル(ボクセル辺長1cm)ごとの散乱角の平均角度である。1つの例では、上部イメージおよび下部イメージで異なるフィルタリング条件において検出器空間分解能が1mmのセルロースブチレートでは、自然流動速度に対応する推定測定時間はおよそ10分である。
【0087】
別の例では、再構成立方体(30×30×30cm3)ウラニウムVOIの水平断面イメージが、ホドスコープフィルタリング条件0〜0.8度と、0〜3度および0〜60度のVOIフィルタリング(ベクトルBCとCDの間の角度)角度設定とによって得られる。フィルタリングパラメータは、検出器空間分解能が1mmのボクセルごとの散乱角の平均角度であり、自然流動速度に対応する推定測定時間はおよそ18分である。
【0088】
最適フィルタリング角度を選択することは、好ましくは、対象物再構成のためのデータ処理中に自動的に行われる。
【0089】
<完全軌道を評価することおよび軌道の偏向補正を適用することによって、最高運動量レプトンの部分を区別する精度を高めること>
3Dラインフィットを使って、高運動量レプトンについてのホドスコープ内の偏向角決定の精度を高めることができる。この方法の目的は、トモグラフィシステム全体にわたる完全軌道が適合直線からの特定の偏差閾値を超えない場合に、補正された軌道の非偏向直線経路として飛跡を割り当てることである。選択された閾値は、偏向角の検出精度と結び付けられる。
【0090】
物理的なホドスコープ検出器システムの精度が限られていることにより、多くの非偏向粒子飛跡がホドスコープ内で偏向されているように見える。高い確率でこのような飛跡が高運動量ミューオンによって生じることは統計的に明らかである。角度0〜0.6度の間の領域内のミューオンの大部分が、精度が1.0mmの検出器板をベースとするホドスコープに関して、拡大された偏向角で図示されている。
【0091】
軌道の偏向補正(TDC)のアルゴリズムを完全軌道に対して適用することによって、特定の閾値内の角度分布からの粒子束の一部が新しい群に分離される。1つのラインがすべての衝突を通してトモグラフィ手順において適合され、その距離は衝突位置とホドスコープ平面上の適合ライン位置との間で測定される。すべての距離が所与の閾値未満であるならば、線は非偏向とみなされる。
【0092】
対象物再構成における性能向上の効果は、ホドスコープ内で得られた測定スペクトル角度分布を補正し、補正されたものを、統計的により確度の高い結果に向けてトモグラフィシステム全体を通して軌道を評価することで、調整することによって実現され得る。これらの軌道を補正すると、VDMの変動性がボクセルごとの全散乱角の平均値に基づいて低減し、対象物再構成のための感度の増大が実現する。
【0093】
<分光測定フィルタリングおよびTDCアルゴリズムの適用による対象物再構成>
関連アルゴリズムの支援による再構成プロセスの手順は以下のように要約することができる。
宇宙線束の分光測定フィルタリングを適用することによって完全軌道のスペクトル領域を選択する。
選択肢の軌道偏向補正アルゴリズムを選択する/選択しない。
逆投影に用いられる測定パラメータ値を選ぶ(たとえば、完全軌道、平均散乱角または他の同様のパラメータをカウンティング)。
VOI内の飛跡軌道を選択する。
VOIのフィルタリングパラメータを選択する/選択しない。
VOI内の投影飛跡を投影飛跡軌道に基づいて逆投影する。
セグメント化の操作を、いくつかのパラメータ値のうちの1つを用いて、1つまたはいくつかのフィルタリングされた逆投影に対して別個に行う。
対象物をラベル付けまたはタグ付けする− 確立された検出対象物の論理体積を構成する。
選択する/選択しない− 別の対象物再構成からの論理体積を組み合わせ(重ね合わせ)、再構成された対象物を表す分離論理体積を割り当てる。
【0094】
この手順は、対象物再構成のために分光測定フィルタリングを選択すること、TDCを選択する/選択しないこと、およびVOI角度フィルタリングを選択する/選択しないことから開始して、論理体積および組み合わせ論理体積を生成する。
【0095】
説明した再構成方法の成果は、図8および図9に異なる条件で示されており、これらの図は、説明のために半分に切断された2つの立方体を示す− セクションの「トモグラフィについての説明」で記述されたトモグラフィによる、赤身(肉)から成る材料の内部の中心に置かれた寸法が10×10×10cm3の爆発物(タイプRDX)。ホドスコープ内の検出器板の推定空間分解能は1mmである。対象物再構成は、ホドスコープ角度スペクトルを3つの群(0〜0.6度、0.6〜1.2度、1.2〜90度)にフィルタリングして行われる。VOI内のフィルタリングは適用されなかった。多重再構成が、透過および全散乱角に対して行われた。得られたVDMは、セクションの「対象物位置特定および再構成」で記述された対象物再構成を行うために使用された。
【0096】
図8では、対象物再構成がTDCを用いずに行われ、図9ではTDCが適用された。推定リアルタイム測定持続時間、およそ18分。2つの対象物の比率は、TDCが適用されることでより正確に確立されると認めることができる。
【0097】
入力ホドスコープスペクトルフィルタリングは、低Z材料の効率的な対象物再構成のために重要であり、スペクトルフィルタリングが適用されなければ、水の立方体が検出されないままになる。しかし、高Z材料の場合は、同じサイズおよび形状を持つウラニウムの検出が露出され得る。
【0098】
上記の方法および装置の利点は、材料および物品が正確に識別され得ることである。特に、低Z元素から成る材料および物品が、限られた時間スケール内で検出され識別され得る。
【0099】
低Z材料を検出する際は、すべての努力が検出感度を高めることに注がれる。本発明の実施形態の利点には以下が含まれる。
吸収(減衰)効果および散乱効果に対する検出感度を高めるために、入って来る宇宙線束をフィルタリングおよび分離し、それによって再構成体積密度マップの勾配が増大すること。
体積密度マップを計算するために散乱パラメータを用いる場合、粒子の運動量に対する感受性があまりないこと。
対象物の位置特定および検出のために、体積密度マップに基づいてイメージを向上させるイメージ処理法を適用すること。
訓練されたデータおよび機械学習を用いることによって、検出された対象物を自動材料識別すること。
【0100】
検出のための従来のX線システムに対する利点には、以下が含まれる:高い透過力;遮蔽された対象物の内部を見ることができること(たとえば、鉛およびポリエチレンで遮蔽された核材料、またはタンクの水で遮蔽された麻薬);元素組成に対する感受性;人の存在下での使用に対し制限がないこと。
【0101】
説明した構成には、様々な修正を加えることができる。たとえば、別のホドスコープが、より高い推定空間分解能(0.1mmまで)の1つの検出器平面と共に使用されてよい。この検出器平面は、上述の検出器平面と同様に構成されるが、1層の長方形ファイバが、直径1mmの二層円形シンチレーションファイバと置き換えられる。パルス波形解析および専用トラッキングアルゴリズムを適用することによって、検出器平面の空間分解能を大幅に高めることができる。
【0102】
本方法および装置は、電子および/またはミューロン検出に関して、陽電子検出にも同様に適用可能である(すなわち、正電荷および負電荷と併せて)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のボクセルを含む関心体積内の材料または物品(52)を検出および/または識別する方法であって、
a)入力ホドスコープ(12、16)によって、前記関心体積に入って来る荷電粒子を検出するステップと、
b)出力ホドスコープ(14、18)によって、前記関心体積(50)を出て行く荷電粒子を検出するステップと、
c)前記関心体積を出て行く粒子を前記関心体積に入って来る粒子と関連付けて前記粒子の完全軌道の組を決定するステップと、
d)完全軌道を持つ前記粒子の、入力ホドスコープおよび/または出力ホドスコープ内の偏向に基づいてフィルタリングを行うステップと、
e)それぞれのボクセルを通過した、前記フィルタリングされた完全軌道の逆投影を用いることによって、完全軌道の数および/または散乱角を表す体積密度マップを計算するステップと、
f)前記関心体積内の前記材料または物品を前記体積密度マップから検出および/または識別するステップとを含む方法。
【請求項2】
ステップd)で、フィルタリングがまた、前記関心体積(50)の粒子の散乱角に基づいて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
フィルタリングパラメータの異なる組を用いて複数の体積密度マップを決定することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
体積密度マップ計算が異なる逆投影パラメータを用いて行われる、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
)前記関心体積(50)内の前記材料に対応する関心領域を定義するステップと、
)前記関心領域に関連する第1の分布関数を前記体積密度マップから生成するステップとをさらに含む、請求項1からのいずれかに記載の方法。
【請求項6】
)前記第1の分布関数の少なくとも1つの特徴を認識して前記関心体積(50)内の前記材料を識別するステップを含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
作(c)および(d)および(e)において、完全軌道の前記組が、特定の偏向の範囲内の関連付けられた偏向角を有する完全軌道から構成される、請求項からのいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記粒子がレプトンであり、前記方法が偏向角の前記範囲を、前記電子とミューオンが少なくとも部分的に分離されるように選択するステップを含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記電子および低運動量ミューオンが高運動量ミューオンから分離されるように偏向角の前記範囲を選択するステップを含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
ホドスコープ(12、14、16、18)および関心体積(50)内の完全軌道の、一定の閾値未満の全偏向角が非偏向としてカウントされ、直進軌道として処理される、請求項1からのいずれかに記載の方法。
【請求項11】
関心体積(50)に隣接する入力ホドスコープ(12、16)であって、前記関心体積が複数のボクセルを含み、前記入力ホドスコープが前記関心体積に入って来る荷電粒子を検出するように構成されている、入力ホドスコープと、
前記関心体積と境界を接する出力ホドスコープ(14、18)であって、前記関心体積を出て行く荷電粒子を検出するように構成されている、出力ホドスコープと、
前記関心体積を出て行く粒子を前記関心体積に入って来る粒子と関連付けて、前記入力ホドスコープおよび/または出力ホドスコープ内の完全軌道を決定し、
前記完全軌道の偏向角に基づいてフィルタリングを行い、
それぞれのボクセルを通過した、前記フィルタリングされた完全軌道の逆投影を用いることによって、完全軌道の数および/または散乱角を表す体積密度マップを計算し、
前記体積密度マップから前記関心体積内の材料または物品を検出および/または識別するように構成された前記入力および前記出力ホドスコープから検出データを受け取るように構成された、プロセッサとを含む、検出および/または識別アセンブリ(10)
【請求項12】
前記プロセッサが、前記入力および/または前記出力ホドスコープ内の前記粒子の前記偏向角に基づいて、および前記関心体積(50)内の粒子の前記全散乱角に基づいてフィルタリングを行うように構成される、請求項11に記載のアセンブリ。
【請求項13】
複数のボクセルを含む関心体積内の材料または物品(52)を検出および/または識別する方法であって、
a)入力ホドスコープ(12、16)によって、前記関心体積に入って来る荷電粒子を検出するステップと、
b)出力ホドスコープ(14、18)によって、前記関心体積(50)を出て行く荷電粒子を検出するステップと、
c)前記関心体積を出て行く粒子を前記関心体積に入って来る粒子と関連付けて前記粒子の完全軌道の組を決定するステップと、
d)完全軌道を持つ前記粒子の、入力ホドスコープおよび/または出力ホドスコープ内の偏向角に基づいてフィルタリングを行うステップと、
e)それぞれのボクセルを通過した、前記フィルタリングされた完全軌道の逆投影を用いることによって、完全軌道の数および/または散乱角を表す体積密度マップを計算するステップであって、体積密度マップ計算が逆投影パラメータを用いて行われるステップと、
f)前記関心体積内の前記材料または物品を前記体積密度マップから検出および/または識別するステップとを含む方法。
【請求項14】
複数のボクセルを含む関心体積内の材料または物品(52)を検出および/または識別する方法であって、
a)入力ホドスコープ(12、16)によって、前記関心体積に入って来る荷電粒子を検出するステップと、
b)出力ホドスコープ(14、18)によって、前記関心体積(50)を出て行く荷電粒子を検出するステップと、
c)前記関心体積を出て行く粒子を前記関心体積に入って来る粒子と関連付けて前記粒子の完全軌道の組を決定するステップと、
d)完全軌道を持つ前記粒子の、入力ホドスコープおよび/または出力ホドスコープ内の偏向角に基づいてフィルタリングを行うステップと、
e)それぞれのボクセルを通過した、前記フィルタリングされた完全軌道の逆投影を用いることによって、完全軌道の数および/または散乱角を表す体積密度マップを計算するステップと、
f)前記関心体積内の前記材料または物品を前記体積密度マップから検出および/または識別するステップとを含み、
操作cおよびdおよびeにおいて、完全軌道の前記組が、特定の偏向の範囲内の関連付けられた偏向角を有する完全軌道から構成され、また、前記粒子がレプトンであり、前記方法が偏向角の前記範囲を、前記電子とミューオンとが少なくとも部分的に分離されるように選択するステップを含む、方法。
【請求項15】
関心体積(50)に隣接する入力ホドスコープ(12、16)であって、前記関心体積が複数のボクセルを含み、前記入力ホドスコープが前記関心体積に入って来る荷電粒子を検出するように構成されている、入力ホドスコープと、
前記関心体積と境界を接する出力ホドスコープ(14、18)であって、前記関心体積を出て行く荷電粒子を検出するように構成されている、出力ホドスコープと、
前記関心体積を出て行く粒子を前記関心体積に入って来る粒子と関連付けて、前記入力ホドスコープおよび/または出力ホドスコープ内の完全軌道を決定し、
前記完全軌道の偏向角に基づいてフィルタリングを行い、
それぞれのボクセルを通過した、前記フィルタリングされた完全軌道の逆投影を用いることによって、完全軌道の数および/または散乱角を表す体積密度マップを、異なる逆投影パラメータを用いて計算し、
前記体積密度マップから前記関心体積内の材料または物品を検出および/または識別するように構成された前記入力および前記出力ホドスコープから検出データを受け取るように構成された、プロセッサとを含む、検出および/または識別アセンブリ(10)。
【請求項16】
関心体積(50)に隣接する入力ホドスコープ(12、16)であって、前記関心体積が複数のボクセルを含み、前記入力ホドスコープが前記関心体積に入って来るレプトンを検出するように構成されている、入力ホドスコープと、
前記関心体積と境界を接する出力ホドスコープ(14、18)であって、前記関心体積を出て行くレプトンを検出するように構成されている、出力ホドスコープと、
前記関心体積を出て行くレプトンを前記関心体積に入って来るレプトンと関連付けて、前記入力ホドスコープおよび/または出力ホドスコープ内の完全軌道を決定し、
前記完全軌道の偏向角に基づいてフィルタリングを行い、
それぞれのボクセルを通過した、前記フィルタリングされた完全軌道の逆投影を用いることによって、完全軌道の数および/または散乱角を表す体積密度マップを計算し、
前記体積密度マップから前記関心体積内の材料または物品を検出および/または識別するように構成された前記入力および前記出力ホドスコープから検出データを受け取るように構成された、プロセッサとを含み、
完全軌道の前記組が、特定の偏向の範囲内の関連付けられた偏向角を有する完全軌道から構成され、また前記方法が偏向角の前記範囲を、前記電子とミューオンが少なくとも部分的に分離されるように選択するステップを含む、検出および/または識別アセンブリ(10)。
【国際調査報告】