特表2021-517260(P2021-517260A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-517260マルチカラーエレクトロクロミック構造、その製造方法及び応用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-517260(P2021-517260A)
(43)【公表日】2021年7月15日
(54)【発明の名称】マルチカラーエレクトロクロミック構造、その製造方法及び応用
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/157 20060101AFI20210618BHJP
   G02F 1/155 20060101ALI20210618BHJP
   G02F 1/1524 20190101ALI20210618BHJP
【FI】
   G02F1/157
   G02F1/155
   G02F1/1524
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2020-512731(P2020-512731)
(86)(22)【出願日】2019年3月6日
(85)【翻訳文提出日】2020年3月2日
(86)【国際出願番号】CN2019077096
(87)【国際公開番号】WO2020172901
(87)【国際公開日】20200903
(31)【優先権主張番号】201910146293.7
(32)【優先日】2019年2月27日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】516082763
【氏名又は名称】中国科学院蘇州納米技術与納米▲ファン▼生研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】趙 志剛
(72)【発明者】
【氏名】王 振
(72)【発明者】
【氏名】叢 杉
【テーマコード(参考)】
2K101
【Fターム(参考)】
2K101AA22
2K101DA01
2K101DB04
2K101DB08
2K101DC15
2K101DC53
2K101DC54
2K101EA11
2K101EB13
2K101EB17
2K101ED52
2K101EE02
2K101EG05
2K101EH02
2K101EH03
2K101EJ15
2K101EK35
2K101EL11
(57)【要約】
本願は、マルチカラーエレクトロクロミック構造を開示し、この構造は、作用電極、電解質及び対電極を備え、前記電解質は、作用電極と対電極の間に分布し、前記作用電極は、エレクトロクロミック層を備え、前記エレクトロクロミック層は、互いに対向し且つ平行に設けられる第1反射面及び第2反射面を備え、前記第1反射面と第2反射面の間には、誘電体層が設けられ、前記第1反射面、第2反射面及び誘電体層により光学キャビティが構成され、前記誘電体層は、主にエレクトロクロミック材料から構成される。本願に係るマルチカラーエレクトロクロミック構造は、構造色とエレクトロクロミックを融合し、豊富な色変化を表現させ、且つ構造がシンプルであり、製造されやすく、コストが低く、応用の将来性が期待できる。本願は、前記マルチカラーエレクトロクロミック構造の製造方法、制御方法、及び前記マルチカラーエレクトロクロミック構造を備えるエレクトロクロミックデバイス、画像表示機器などをさらに開示する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作用電極、電解質及び対電極を備え、前記電解質は、作用電極と対電極の間に分布し、前記作用電極は、エレクトロクロミック層を備えるマルチカラーエレクトロクロミック構造であって、
前記エレクトロクロミック層は、互いに対向し且つ平行に設けられる第1反射面及び第2反射面を備え、前記第1反射面と第2反射面の間には、誘電体層が設けられ、前記第1反射面、第2反射面及び誘電体層により光学キャビティが構成され、且つ入射光が前記光学キャビティに入射されるとき、前記第1反射面で形成される反射光と前記第2反射面で形成される反射光の位相シフトが
【数1】
であり、dは、前記誘電体層の厚さであり、
【数2】
は、前記誘電体層の屈折率であり、λは、前記入射光の波長であり、
【数3】
は、第1反射面を透過するときの前記入射光の屈折角である、
ことを特徴とするマルチカラーエレクトロクロミック構造。
【請求項2】
前記第1反射面は、誘電体層の第1表面であり、前記第2反射面は、誘電体層の第2表面と金属層とが結合される界面であり、前記第1表面及び第2表面は、対向して設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載のマルチカラーエレクトロクロミック構造。
【請求項3】
前記誘電体層の第1表面上の媒体材料の屈折率を
【数4】
として定義すれば、前記第1反射面の反射係数は
【数5】
であり、ここで、
【数6】
は、入射光の入射角であり、及び/又は、
前記誘電体層の第2表面上の媒体材料の屈折率を
【数7】
として定義すれば、前記第2反射面の反射係数は
【数8】
であり、ここで、
【数9】
は、第2反射面を透過するときの入射光の屈折角である、
ことを特徴とする請求項2に記載のマルチカラーエレクトロクロミック構造。
【請求項4】
前記エレクトロクロミック層の反射係数は、
【数10】

反射率は、
【数11】
として表される、
ことを特徴とする請求項3に記載のマルチカラーエレクトロクロミック構造。
【請求項5】
前記エレクトロクロミック層は、1つの金属反射層及び少なくとも1つの誘電体層を備え、前記誘電体層は、主にエレクトロクロミック材料から構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載のマルチカラーエレクトロクロミック構造。
【請求項6】
前記エレクトロクロミック材料は、遷移金属酸化物を含み、前記遷移金属酸化物として、WO、NiO、TiO、Nb、Fe、Co又はMoOが含まれる
ことを特徴とする請求項5に記載のマルチカラーエレクトロクロミック構造。
【請求項7】
前記誘電体層は、前記電解質に接触し、及び/又は、前記誘電体層の厚さは、50〜2000nmである、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のマルチカラーエレクトロクロミック構造。
【請求項8】
前記金属反射層の厚さは、50〜3000nmであり、及び/又は、前記金属反射層の材質は、金、銀、銅、タングステン又はチタンを含む不活性金属から選ばれ、及び/又は、前記金属反射層は、前記エレクトロクロミック層の集電体でもある、
ことを特徴とする請求項5に記載のマルチカラーエレクトロクロミック構造。
【請求項9】
誘電体層上に金属フィルムを追加してマルチカラーフィルムの色を最適化させることができ、
前記金属は、Ag、Al、Cu、Niなどであってもよく、前記金属層の厚さは、0.1〜30nmである、
ことを特徴とする請求項5に記載のマルチカラーエレクトロクロミック構造。
【請求項10】
誘電体層上に半導体材料を追加してマルチカラーフィルムの色を最適化させることができ、
前記半導体は、Al、SiO、ZnS、MgF、SiNなどであってもよく、前記半導体の厚さは、0.1〜100nmである、
ことを特徴とする請求項5に記載のマルチカラーエレクトロクロミック構造。
【請求項11】
前記対電極は、前記電解質に接触するイオン貯蔵層を有する透明導電性電極を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のマルチカラーエレクトロクロミック構造。
【請求項12】
前記作用電極は、基板をさらに備え、前記エレクトロクロミック層は、前記基板上に設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載のマルチカラーエレクトロクロミック構造。
【請求項13】
前記基板の材質は、ガラス、有機ガラス、プラスチック板、木材板又は金属を含む、
ことを特徴とする請求項12に記載のマルチカラーエレクトロクロミック構造。
【請求項14】
前記電解質は、液体電解質、ゲル電解質又は固体電解質を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のマルチカラーエレクトロクロミック構造。
【請求項15】
前記マルチカラーエレクトロクロミック構造の作動電圧が、−4V〜4Vである、
ことを特徴とする請求項1に記載のマルチカラーエレクトロクロミック構造。
【請求項16】
請求項1−15のいずれか1項に記載のマルチカラーエレクトロクロミック構造の製造方法であって、
金属反射層及び誘電体層を作製して、作用電極を形成することと、
作用電極、電解質、対電極を組み立ててマルチカラーエレクトロクロミック構造を形成することと、を含む、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項17】
マグネトロンスパッタリング、電子ビーム蒸着、熱蒸着、電気化学的堆積の少なくともいずれか1種の方式で、前記金属反射層、誘電体層を作製する、
ことを特徴とする請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
請求項1−15のいずれか1項に記載のマルチカラーエレクトロクロミック構造の制御方法であって、
作用電極、対電極を電源に接続して、作動回路を形成することと、
作用電極と対電極の間の電位差を調整し、少なくとも誘電体層のエレクトロクロミック材料の屈折率を変えることにより、前記マルチカラーエレクトロクロミック構造の色を制御することと、を含む、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項19】
請求項1−15のいずれか1項に記載のマルチカラーエレクトロクロミック構造を備えるエレクトロクロミックデバイス。
【請求項20】
請求項1−15のいずれか1項に記載のマルチカラーエレクトロクロミック構造又は請求項14に記載のエレクトロクロミックデバイスを備える画像表示機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、エレクトロクロミックデバイスに関し、具体的には、マルチカラーエレクトロクロミック構造、その製造方法及び応用に関し、光電技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロクロミックは、エレクトロクロミック材料の電子構造及び光学的特性(反射率、透過率、吸収率など)が印加電界又は電流の作用下で安定的かつ可逆的に変化する現象であり、外観から見ると色や透明度が可逆的に変化する。エレクトロクロミック材料で製造されるエレクトロクロミックデバイスは、スマートウィンドウ、ディスプレイ、画像形成機器などに幅広く利用されている。従来のエレクトロクロミックは、透過型エレクトロクロミックデバイス及び反射型エレクトロクロミックデバイスの2つのモデルに分けられるが、エレクトロクロミックデバイスの色が、エレクトロクロミック自体の電子構造及び光学的特性だけにより決まる。有機分子又は有機重合体エレクトロクロミック材料に比べて、無機エレクトロクロミック材料は、より優れているサイクル安定性、優れた熱安定性、化学的安定性及びより長い耐用年数を示すものの、これらの色調が非常に単一である。これは、以下の2つの点から理解できる。(1)無機エレクトロクロミック材料の変色状態が単一であり、たとえば、ほとんどの無機エレクトロクロミック材料は、色が透明状態と青色状態の間でしか変換できない。(2)無機エレクトロクロミック材料では、色を微細に調色することができず、たとえば、三原色のうちの1つである青色は、色調の違いによって、さらにアジュール、水色、シーブルー、ピーコックブルー、濃紺などに分けられる。しかしながら、従来のエレクトロクロミック材料、たとえば、酸化タングステン材料は、青色の明るさだけを変化させ、青色の色調を変えることができない。
【0003】
したがって、無機エレクトロクロミックによるマルチカラーの調色は、従来から、無機エレクトロクロミックディスプレイ、画像形成機器の応用の拡大を制限する難問である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願の主な目的は、従来技術の欠陥を解決するために、マルチカラーエレクトロクロミック構造、その製造方法及び応用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述発明目的を達成させるために、本願が採用する技術案は、以下を含む。
【0006】
本願の実施例は、マルチカラーエレクトロクロミック構造を提供し、該マルチカラーエレクトロクロミック構造は、作用電極、電解質及び対電極を備え、前記電解質は、作用電極と対電極の間に分布し、前記作用電極は、エレクトロクロミック層を備え、前記エレクトロクロミック層は、互いに対向し且つ平行に設けられる第1反射面及び第2反射面を備え、前記第1反射面と第2反射面の間には、誘電体層が設けられ、前記第1反射面、第2反射面及び誘電体層により光学キャビティが構成され、且つ入射光が前記光学キャビティに入射されるとき、前記第1反射面で形成される反射光と前記第2反射面で形成される反射光の位相シフトが
【数1】
であり、dは、前記誘電体層の厚さであり、
【数2】
は、前記誘電体層の屈折率であり、λは、前記入射光の波長であり、
【数3】
は、第1反射面を透過するときの前記入射光の屈折角である。
【0007】
いくつかの実施態様では、前記第1反射面は、誘電体層の第1表面であり、前記第2反射面は、誘電体層の第2表面と金属層とが結合される界面であり、前記第1表面及び第2表面は、対向して設けられる。
【0008】
いくつかの実施態様では、前記エレクトロクロミック層は、1つの金属反射層及び少なくとも1つの誘電体層を備え、前記誘電体層は、主にエレクトロクロミック材料、特に無機エレクトロクロミック材料から構成される。
【0009】
いくつかの実施態様では、前記金属反射層は、前記エレクトロクロミック層の集電体でもある。
【0010】
本願の実施例は、さらに前記マルチカラーエレクトロクロミック構造の製造方法を提供し、この製造方法は、
金属反射層及び誘電体層を作製して、作用電極を形成することと、
作用電極、電解質、対電極を組み立ててマルチカラーエレクトロクロミック構造を形成することと、を含む。
【0011】
本願の実施例は、さらに前記マルチカラーエレクトロクロミック構造の制御方法を提供し、この制御方法は、
作用電極、対電極を電源に接続して、作動回路を形成することと、
作用電極と対電極の間の電位差を調整し、少なくとも誘電体層のエレクトロクロミック材料の屈折率を変えることにより、前記マルチカラーエレクトロクロミック構造の色を制御することと、を含む。
【0012】
本願の実施例は、前記マルチカラーエレクトロクロミック構造の用途、たとえば、エレクトロクロミックデバイス、画像表示機器の作製における応用をさらに提供する。
【発明の効果】
【0013】
従来技術に比べて、本願の実施例は、エレクトロクロミック層における金属反射層の材質、誘電体層の材質及び/又は厚さを調整することで、豊富な構造色を得ることができ、また、エレクトロクロミック層へ電圧を印加して、イオンをエレクトロクロミック材料に対して脱嵌させ、エレクトロクロミック材料の屈折率変化を引き起こし、さらに誘電体層の光学パラメータを変え、最終的にエレクトロクロミック層の色を変え、このようにして、構造色とエレクトロクロミックを融合することにより色変化が豊富なマルチカラーエレクトロクロミック構造を構成することができ、さらに、製造プロセスがシンプルであり、コストが低く、大規模な生産及び応用に適しており、光電技術分野において応用の将来性が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本願の代表的な一実施態様によるマルチカラーエレクトロクロミック構造の模式図である。
図2図1におけるエレクトロクロミック層の構造模式図である。
図3】本願の実施例1におけるマルチカラーエレクトロクロミックデバイスのエレクトロクロミック層の構造模式図である。
図4】本願の実施例1における、異なる酸化タングステンの厚さでのマルチカラーエレクトロクロミックデバイスのエレクトロクロミック電極の写真である。
図5】本願の実施例1における、オリジナルな色がピンクの作用電極の各電圧での写真である。
図6】本願の実施例1における、オリジナルな色がピンクの作用電極のサイクル安定性をテストした図である。
図7】本願の実施例1における、オリジナルな色が青色の作用電極の各電圧での写真である。
図8】本願の実施例1における、オリジナルな色が青色の作用電極のサイクル安定性をテストした図である。
図9】本願の実施例2におけるマルチカラーエレクトロクロミックデバイスのエレクトロクロミック層の構造模式図である。
図10】本願の実施例2における、異なる酸化タングステンの厚さでのマルチカラーエレクトロクロミックデバイスのエレクトロクロミック電極の写真である。
図11】本願の実施例3におけるマルチカラーエレクトロクロミックデバイスのエレクトロクロミック層の構造模式図である。
図12】本願の実施例3における、異なる酸化ニッケルの厚さでのマルチカラーエレクトロクロミックデバイスのエレクトロクロミック電極の写真である。
図13】本願の実施例4におけるマルチカラーエレクトロクロミックデバイスのエレクトロクロミック層の構造模式図である。
図14】本願の実施例4における、酸化タングステンの厚さがさまざまであり且つ銀最適化層を有する場合のマルチカラーエレクトロクロミックデバイスのエレクトロクロミック電極の各電圧での写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本願の実施例又は従来技術における技術案をより明瞭に説明するために、以下、実施例又は従来技術の説明に必要な図面を簡単に説明するが、明らかなように、以下の説明における図面は、本願に記載の一部の実施例に過ぎず、当業者であれば、創造的な努力を必要とせずに、これら図面に基づいてほかの図面を取得し得る。
【0016】
また、なお、本明細書では、たとえば、第1及び第2などのような関係用語は、1つのエンティティ又は操作を別のエンティティ又は操作から区別するために過ぎず、必ずしもこれらエンティティ又は操作の間にこのような実際な関係又は順番が存在することを要求又は示唆するわけではない。さらに、用語「備える」、「含む」又はほかの任意の変体は、非排他的な包含をカバーすることを意図し、このため、一連の要素を含むプロセス、方法、物品又は機器は、これら要素だけでなく、明確に挙げられていないほかの要素を含むか、又はこのようなプロセス、方法、物品又は機器に固有の要素を含む。さらなる制限がない限り、句「……を備える」により限定される要素は、前記要素を含むプロセス、方法、物品又は機器には、別の同じ要素が存在する場合を排除しない。
【0017】
本願の実施例の一局面は、マルチカラーエレクトロクロミック構造を提供し、このマルチカラーエレクトロクロミック構造は、作用電極、電解質及び対電極を備え、前記電解質は、作用電極と対電極の間に分布し、前記作用電極は、エレクトロクロミック層を備え、前記エレクトロクロミック層は、互いに対向し且つ平行に設けられる第1反射面及び第2反射面を備え、前記第1反射面と第2反射面の間には、誘電体層が設けられ、前記第1反射面、第2反射面及び誘電体層により光学キャビティが構成され、且つ入射光が前記光学キャビティに入射されるとき、前記第1反射面で形成される反射光と前記第2反射面で形成される反射光の位相シフトが
【数4】
であり、dは、前記誘電体層の厚さであり、
【数5】
は、前記誘電体層の屈折率であり、λは、前記入射光の波長であり、
【数6】
は、第1反射面を透過するときの前記入射光の屈折角である。
【0018】
さらに、前記第1反射面は、誘電体層の第1表面であり、前記第2反射面は、誘電体層の第2表面と金属層とが結合される界面であり、前記第1表面及び第2表面は、対向して設けられる。
【0019】
さらに、本願に係るマルチカラーエレクトロクロミック構造が作動するときに、入射光が誘電体層の第1表面(即ち、第1反射面)で形成する反射光と、前記誘電体層を透過した入射光が金属層表面(即ち、第2反射面)で形成する反射光とが、干渉して重畳する。
【0020】
さらに、前記誘電体層の第1表面上の媒体材料の屈折率を
【数7】
として定義すれば、前記第1反射面の反射係数は
【数8】
であり、ここで、
【数9】
は、入射光の入射角である。
【0021】
さらに、前記誘電体層の第2表面上の媒体材料の屈折率を
【数10】
として定義すれば、前記第2反射面の反射係数は、
【数11】
であり、ここで、
【数12】
は、第2反射面を透過するときの入射光の屈折角である。
【0022】
さらに、前記エレクトロクロミック層の反射係数は、
【数13】

反射率は、
【数14】
として表される。
【0023】
さらに、前記エレクトロクロミック層は、1つの金属反射層、及び少なくとも1つの誘電体層を備え、前記誘電体層は、主にエレクトロクロミック材料から構成される。
【0024】
図1には、本願の代表的な一実施態様におけるマルチカラーエレクトロクロミック構造が示されており、該マルチカラーエレクトロクロミック構造は、作用電極1、対電極3及び電解質層2を備え、電解質層2は、作用電極1と対電極3の間に設けられる。
【0025】
前記電解質層2として、適切な水相電解液、有機相電解液又はゲル電解質が使用可能であり、たとえば、LiCl、AlCl、HCl、HSO水溶液、LiClOのプロピレンカーボネート電解液などが挙げられるが、これらに制限されない。
【0026】
さらに、図2に示されるように、前記作用電極1は、エレクトロクロミック層を備え、前記エレクトロクロミック層は、金属反射層11及び誘電体層12を備え、前記誘電体層12は、エレクトロクロミック材料から構成される。
【0027】
前記のとおり、金属反射層、誘電体層の材質及び誘電体層の厚さなどを調整することにより、エレクトロクロミック層の構造色を変えることができる。さらに、エレクトロクロミック材料に印加される電圧、電流などを調整することによって、誘電体層の色を変えることもできる。
【0028】
前記エレクトロクロミック材料は、無機エレクトロクロミック材料又は有機エレクトロクロミック材料であってもよいが、好ましくは、前者である。
【0029】
本願の実施例に使用され得る無機エレクトロクロミック材料は、たとえば、WO、NiO、TiO、Nb、Fe、Co又はMoOなどから選ばれる遷移金属酸化物を含んでもよいが、これらに制限されず、たとえば、プルシアンブルーなども利用できる。
【0030】
前記誘電体層には、薄い金属層又は半導体層を追加して快適化させることもでき、金属の場合は、Ag、Al、Cu、Niなどが含まれるが、これらに制限されず、半導体の場合は、Al、SiO、ZnS、MgF、SiNなどが含まれるが、これらに制限されない。
【0031】
いくつかの実施態様では、前記誘電体層は、前記電解質に接触する。
【0032】
いくつかの実施態様では、前記マルチカラーエレクトロクロミック構造の彩度をより高くするために、前記誘電体層の厚さは、好ましくは50〜2000nmである。
【0033】
いくつかの実施態様では、前記金属反射層の厚さは、任意であってもよく、たとえば、好ましくは、20nm以上、特に好ましくは、50〜3000nmである。
【0034】
いくつかの実施態様では、前記金属反射層の材質は、たとえば金、銀、銅、タングステン、チタン又はこれらの合金などの不活性金属から選ばれてもよいが、これらに制限されない。
【0035】
いくつかの好適実施態様では、前記金属反射層は、前記エレクトロクロミック層の集電体としても機能する。
【0036】
いくつかの実施態様では、前記対電極は、イオン貯蔵層を有する透明導電性電極を備え、たとえばNiO、Fe、TiOなどから選ばれるが、これらに制限されない。前記イオン貯蔵層は、前記電解質に接触する。
【0037】
いくつかの実施態様では、図2に示されるように、前記作用電極は、基板10をさらに備えてもよく、前記エレクトロクロミック層は、前記基板上に設けられる。
【0038】
前記基板の材質は、無機又は有機材質であってもよく、たとえば、ガラス、有機ガラス、プラスチック板、木材板又は金属などを含むが、これらに制限されない。
【0039】
いくつかの実施態様では、前記電解質は、液体電解質、ゲル電解質又は固体電解質を含む。
【0040】
いくつかの特定の実施態様では、前記マルチカラーエレクトロクロミック構造の作動電圧が、−4V〜+4Vであり、勿論、それに制限されない。
【0041】
本願の実施例の別の局面による前記マルチカラーエレクトロクロミック構造の製造方法は、
金属反射層及び誘電体層を作製して、作用電極を形成することと、
作用電極、電解質、対電極を組み立ててマルチカラーエレクトロクロミック構造を形成することと、を含む。
【0042】
いくつかの実施態様では、マグネトロンスパッタリング、電子ビーム蒸着、熱蒸着、電気化学的堆積の少なくともいずれか1種の方式で、前記的金属反射層、誘電体層を作製する。
【0043】
より具体的には、マグネトロンスパッタリング、電子ビーム蒸着、熱蒸着、電気化学的堆積などの方式で、誘電体層を製造できる。
【0044】
より具体的には、マグネトロンスパッタリング、電子ビーム蒸着、熱蒸着などの方式で、金属反射層を製造できる。
【0045】
いくつかの実施態様では、液体電解液を封入するか又はゲル電解質を緊密にプレスして電解質層を形成し、作用電極と対電極の間に結合する。
【0046】
さらに、金属反射層及び誘電体層は、順次基板上に形成されてもよい。
【0047】
本願の実施例の別の態様によるマルチカラーエレクトロクロミック構造の制御方法は、
作用電極、対電極を電源に接続して、作動回路を形成することと、
作用電極と対電極の間の電位差を調整し、少なくとも誘電体層のエレクトロクロミック材料の屈折率を変えることにより、前記マルチカラーエレクトロクロミック構造の色を制御することと、を含む。この制御プロセスは、動的としてもよい。
【0048】
いくつかの実施態様では、金属反射層の材質及び/又は誘電体層の厚さ及び/又は材質を調整することによって、前記マルチカラーエレクトロクロミック構造の色を調整してもよい。
【0049】
本願の実施例の別の局面は、前記マルチカラーエレクトロクロミック構造を備えるエレクトロクロミックデバイスを提供する。前記エレクトロクロミックデバイスは、付属するパッケージ構造、コントロールモジュール、電源モジュールなどのユニットをさらに備え、これら付属するユニットは、一般的な方式で、前記マルチカラーエレクトロクロミック構造に結合される。
【0050】
本願の実施例の別の局面は、前記マルチカラーエレクトロクロミック構造又は前記エレクトロクロミックデバイスを備える画像表示機器を提供し、この画像表示機器は、表示画面、画像形成機器などであってもよく、これらに制限されない。
【0051】
本願の実施例の別の局面は、前記マルチカラーエレクトロクロミック構造、前記エレクトロクロミックデバイス又は前記画像表示機器を備える装置を提供し、たとえば、ハウス、交通工具などのドアや窓又は外周壁構造、屋外看板などが挙げられるが、これらに制限されない。
【0052】
本願の実施例によるマルチカラーエレクトロクロミック構造は、色が単一であるという従来の無機エレクトロクロミックデバイスの欠点を解決し、カラフルな構造色とエレクトロクロミックを融合して、エレクトロクロミックデバイスによる調色を豊富にし、マルチカラーを動的に制御することを実現する。エレクトロクロミック層は、主に金属反射層及び誘電体層から構成され、誘電体層は、エレクトロクロミック材料から構成される。前記エレクトロクロミック層は、金属層材料、誘電体層材料、誘電体層の厚さなどを調節することで、豊富な構造色を得ることができる。また、前記エレクトロクロミック層を作用電極として、電圧を印加することで、電解質層におけるイオンをエレクトロクロミック材料に対して脱嵌させ、エレクトロクロミック材料の屈折率変化を引き起こし、誘電体層の光学パラメータを変え、最終的に色を変える。本願の実施例では、マルチカラーエレクトロクロミック構造は、構造色とエレクトロクロミックを融合することによって、エレクトロクロミック材料、特に無機エレクトロクロミック材料による豊富な色変化を達成させる。また、本願の実施例によるマルチカラーエレクトロクロミック構造では、金属反射層がエレクトロクロミック層の集電体としても機能できるため、前記マルチカラーエレクトロクロミック構造が簡素化され、コストが低下し、且つデバイスがより軽量化、薄型化及びコンパクト化する。
【0053】
以下、いくつかの実施例にて、図面を参照しながら、本願の技術案をさらに詳細に説明する。しかしながら、説明される実施例は、本願を説明するために過ぎず、本願の範囲を制限するものではない。
【0054】
(実施例1)
本実施例1で開示されるマルチカラーエレクトロクロミックデバイスは、作用電極、電解質層及び対電極を備え、電解質層は、作用電極と対電極の間に設けられる。
図3に示されるように、該作用電極は、基板上に設けられるエレクトロクロミック層を備え、該エレクトロクロミック層は、金属反射層及び誘電体層を備え、金属反射層は、タングステンで形成され、誘電体層は、酸化タングステンで形成される。基板は、PETプラスチック板などとしてもよい。
該作用電極の製造方法は、以下のとおりである。きれいなPETプラスチック板上に、まず、マグネトロンスパッタリングにより、好ましくはスパッタリング厚さが約300nmのタングステン膜をスパッタリングする。次に、マグネトロンスパッタリングにより、タングステン膜上に、好ましくは厚さ150nm〜400nmの酸化タングステン層をスパッタリングする。
勿論、前述タングステン膜は、電子ビーム蒸着、熱蒸着など、当該分野において公知の方式で製造されてもよい。前述酸化タングステン層は、電子ビーム蒸着、熱蒸着、電気化学的堆積など、当該分野に公知の方式で製造されてもよい。
図4に示されるように、酸化タングステン層の厚さをさまざまに制御することにより、異なる色のエレクトロクロミック層を得て、カラー膜状にすることができる。
上記で製造されたカラー膜をエレクトロクロミック層として、一層の対電極層、たとえばNiO対電極層を製造し、LiClO4−PC電解液をパッケージした後、リード線を引き出して、マルチカラーエレクトロクロミックデバイスを製造した。電圧が印加されることにより、得られたカラーエレクトロクロミックデバイスの色をさらに調色することができる。
図5図6は、本実施例1における、オリジナルな色がピンクの作用電極の、オープンシステムの各電圧での反射率変調図、及びそのうちの3つの電圧での色の写真を示している。オープンシステムテストには、Pt糸は、対電極として、Ag/AgClは、参照電極として使用される。膜の色が赤色から黄色、さらに黄色から緑色に調色されることが認められた。
図7図8は、本実施例1におけるオリジナルな色が青色のエレクトロクロミック電極の、オープンシステムの各電圧での反射率変調図、及びそのうちの5つの電圧での色の写真を示している。オープンシステムテストには、Pt糸は、対電極として、Ag/AgClは、参照電極として用いられる。膜の色が異なる青色の間で変化できることが認められた。
【0055】
(実施例2)
本実施例2で開示されるマルチカラーエレクトロクロミックデバイスは、作用電極、電解質層及び対電極を備え、電解質層は、作用電極と対電極の間に設けられる。
図9に示されるように、該作用電極は、基板上に設けられるエレクトロクロミック層を備え、該エレクトロクロミック層は、金属反射層及び誘電体層を備え、金属反射層は、銅で形成され、誘電体層は、酸化タングステンで形成される。基板は、PETプラスチック板などとしてもよい。
該作用電極の製造方法は、以下のとおりである。きれいなPETプラスチック板上に、まず、マグネトロンスパッタリングにより、好ましくはスパッタリング厚さが約100nmの銅膜をスパッタリングする。次に、マグネトロンスパッタリングにより、タングステン膜上に、好ましくは厚さ150nm〜400nmの酸化タングステン層をスパッタリングする。
勿論、前述銅膜は、電子ビーム蒸着、熱蒸着など、当該分野において公知の方式で製造されてもよい。前述酸化タングステン層は、電子ビーム蒸着、熱蒸着、電気化学的堆積など、当該分野に公知の方式で製造されてもよい。
図10に示されるように、酸化タングステン層の厚さをさまざまに制御することによって、異なる色のエレクトロクロミック層を得て、カラー膜状にすることができる。
【0056】
(実施例3)
本実施例3で開示されるマルチカラーエレクトロクロミックデバイスは、作用電極、電解質層及び対電極を備え、電解質層は、作用電極と対電極の間に設けられる。
図11に示されるように、該作用電極は、基板上に設けられるエレクトロクロミック層を備え、該エレクトロクロミック層は、金属反射層及び誘電体層を備え、金属反射層は、銀で形成され、誘電体層は、酸化ニッケルで形成される。基板は、PETプラスチック板などとしてもよい。
該作用電極の製造方法は、以下のとおりである。きれいなPETプラスチック板上に、まず、マグネトロンスパッタリングにより、好ましくはパッタリング厚さが約200nmの銀膜をスパッタリングする。次に、マグネトロンスパッタリングにより、タングステン膜上に、好ましくは厚さ50nm〜300nmの酸化ニッケル層をスパッタリングする。
勿論、前述銀膜は、電子ビーム蒸着、熱蒸着など、当該分野において公知の方式で製造されてもよい。前述酸化ニッケル層は、電子ビーム蒸着、熱蒸着、電気化学的堆積など、当該分野において公知の方式で製造されてもよい。
図12に示されるように、酸化ニッケル層の厚さをさまざまに制御することによって、異なる色のエレクトロクロミック層を得て、カラー膜状にすることができる。
【0057】
(実施例4)
本実施例4で開示されるマルチカラーエレクトロクロミックデバイスは、作用電極、電解質層及び対電極を備え、電解質層は、作用電極と対電極の間に設けられる。
図13に示されるように、該作用電極は、基板上に設けられるエレクトロクロミック層を備え、該エレクトロクロミック層は、金属反射層、誘電体層及び最適化層を備え、金属反射層は、タングステンで形成され、誘電体層は、酸化タングステンで形成され、最適化層は、銀から構成される。基板は、PETプラスチック板などとしてもよい。
該作用電極の製造方法は、以下のとおりである。きれいなPETプラスチック板上に、まず、マグネトロンスパッタリングにより、好ましくはスパッタリング厚さが約100nmのタングステン膜をスパッタリングする。次に、マグネトロンスパッタリングにより、タングステン膜上に、好ましくは厚さ150nm〜400nmの酸化タングステン層をスパッタリングする。次に、マグネトロンスパッタリングにより、酸化タングステン層上に、好ましくは厚さ1nm〜15nmの銀層をパッタリングする。
勿論、前述的タングステン膜は、電子ビーム蒸着、熱蒸着など、当該分野において公知の方式で製造されてもよい。前述酸化タングステン層は、電子ビーム蒸着、熱蒸着、電気化学的堆積など、当該分野に公知の方式で製造されてもよい。前述銀層は、電子ビーム蒸着、熱蒸着、電気化学的堆積など、当該分野に公知の方式で製造されてもよい。
図14に示されるように、銀層の厚さをさまざまに制御することによって、実施例1に比べて、薄膜の色をさらに最適化させ、図14は、Ag最適化層を追加した、異なる酸化タングステンの厚さを有するサンプルの各電圧での色の表示である。
【0058】
なお、本願の発明者は、前述実施例における対応する材料を本明細書に記載のほかのエレクトロクロミック材料、金属反射材料、基板材料などに代えて試験を行ったところ、得られたマルチカラーエレクトロクロミック構造及びデバイスのいずれも類似した利点を有することを見出した。
【0059】
本願の実施例によるマルチカラーエレクトロクロミック構造は、構造色とエレクトロクロミックを融合し、豊富な色変化を示すことができ、マルチカラーエレクトロクロミックの応用のために強固な基盤を築き、将来性が期待できる。
【0060】
なお、上記実施例は、本願の技術的構想及び特徴を説明するために過ぎず、当業者が本願の内容を把握して本願を実施できるようにすることを目的とし、本願の特許範囲を制限するものではない。本願の趣旨に基づいて行われる同等変化又は修飾であれば、本願の特許範囲に含まれる。
【0061】
(付記)
(付記1)
作用電極、電解質及び対電極を備え、前記電解質は、作用電極と対電極の間に分布し、前記作用電極は、エレクトロクロミック層を備えるマルチカラーエレクトロクロミック構造であって、
前記エレクトロクロミック層は、互いに対向し且つ平行に設けられる第1反射面及び第2反射面を備え、前記第1反射面と第2反射面の間には、誘電体層が設けられ、前記第1反射面、第2反射面及び誘電体層により光学キャビティが構成され、且つ入射光が前記光学キャビティに入射されるとき、前記第1反射面で形成される反射光と前記第2反射面で形成される反射光の位相シフトが
【数15】
であり、dは、前記誘電体層の厚さであり、
【数16】
は、前記誘電体層の屈折率であり、λは、前記入射光の波長であり、
【数17】
は、第1反射面を透過するときの前記入射光の屈折角である、
ことを特徴とするマルチカラーエレクトロクロミック構造。
【0062】
(付記2)
前記第1反射面は、誘電体層の第1表面であり、前記第2反射面は、誘電体層の第2表面と金属層とが結合される界面であり、前記第1表面及び第2表面は、対向して設けられる、
ことを特徴とする付記1に記載のマルチカラーエレクトロクロミック構造。
【0063】
(付記3)
前記誘電体層の第1表面上の媒体材料の屈折率を
【数18】
として定義すれば、前記第1反射面の反射係数は
【数19】
であり、ここで、
【数20】
は、入射光の入射角であり、及び/又は、
前記誘電体層の第2表面上の媒体材料の屈折率を
【数21】
として定義すれば、前記第2反射面の反射係数は
【数22】
であり、ここで、
【数23】
は、第2反射面を透過するときの入射光の屈折角である、
ことを特徴とする付記2に記載のマルチカラーエレクトロクロミック構造。
【0064】
(付記4)
前記エレクトロクロミック層の反射係数は、
【数24】

反射率は、
【数25】
として表される、
ことを特徴とする付記3に記載のマルチカラーエレクトロクロミック構造。
【0065】
(付記5)
前記エレクトロクロミック層は、1つの金属反射層及び少なくとも1つの誘電体層を備え、前記誘電体層は、主にエレクトロクロミック材料から構成される、
ことを特徴とする付記1に記載のマルチカラーエレクトロクロミック構造。
【0066】
(付記6)
前記エレクトロクロミック材料は、遷移金属酸化物を含み、前記遷移金属酸化物として、WO、NiO、TiO、Nb、Fe、Co又はMoOが含まれる
ことを特徴とする付記5に記載のマルチカラーエレクトロクロミック構造。
【0067】
(付記7)
前記誘電体層は、前記電解質に接触し、及び/又は、前記誘電体層の厚さは、50〜2000nmである、
ことを特徴とする付記1又は2に記載のマルチカラーエレクトロクロミック構造。
【0068】
(付記8)
前記金属反射層の厚さは、50〜3000nmであり、及び/又は、前記金属反射層の材質は、金、銀、銅、タングステン又はチタンを含む不活性金属から選ばれ、及び/又は、前記金属反射層は、前記エレクトロクロミック層の集電体でもある、
ことを特徴とする付記5に記載のマルチカラーエレクトロクロミック構造。
【0069】
(付記9)
誘電体層上に金属フィルムを追加してマルチカラーフィルムの色を最適化させることができ、
前記金属は、Ag、Al、Cu、Niなどであってもよく、前記金属層の厚さは、0.1〜30nmである、
ことを特徴とする付記5に記載のマルチカラーエレクトロクロミック構造。
【0070】
(付記10)
誘電体層上に半導体材料を追加してマルチカラーフィルムの色を最適化させることができ、
前記半導体は、Al、SiO、ZnS、MgF、SiNなどであってもよく、前記半導体の厚さは、0.1〜100nmである、
ことを特徴とする付記5に記載のマルチカラーエレクトロクロミック構造。
【0071】
(付記11)
前記対電極は、前記電解質に接触するイオン貯蔵層を有する透明導電性電極を備える、
ことを特徴とする付記1に記載のマルチカラーエレクトロクロミック構造。
【0072】
(付記12)
前記作用電極は、基板をさらに備え、前記エレクトロクロミック層は、前記基板上に設けられる、
ことを特徴とする付記1に記載のマルチカラーエレクトロクロミック構造。
【0073】
(付記13)
前記基板の材質は、ガラス、有機ガラス、プラスチック板、木材板又は金属を含む、
ことを特徴とする付記12に記載のマルチカラーエレクトロクロミック構造。
【0074】
(付記14)
前記電解質は、液体電解質、ゲル電解質又は固体電解質を含む、
ことを特徴とする付記1に記載のマルチカラーエレクトロクロミック構造。
【0075】
(付記15)
前記マルチカラーエレクトロクロミック構造の作動電圧が、−4V〜4Vである、
ことを特徴とする付記1に記載のマルチカラーエレクトロクロミック構造。
【0076】
(付記16)
付記1−15のいずれか1つに記載のマルチカラーエレクトロクロミック構造の製造方法であって、
金属反射層及び誘電体層を作製して、作用電極を形成することと、
作用電極、電解質、対電極を組み立ててマルチカラーエレクトロクロミック構造を形成することと、を含む、
ことを特徴とする製造方法。
【0077】
(付記17)
マグネトロンスパッタリング、電子ビーム蒸着、熱蒸着、電気化学的堆積の少なくともいずれか1種の方式で、前記金属反射層、誘電体層を作製する、
ことを特徴とする付記16に記載の製造方法。
【0078】
(付記18)
付記1−15のいずれか1つに記載のマルチカラーエレクトロクロミック構造の制御方法であって、
作用電極、対電極を電源に接続して、作動回路を形成することと、
作用電極と対電極の間の電位差を調整し、少なくとも誘電体層のエレクトロクロミック材料の屈折率を変えることにより、前記マルチカラーエレクトロクロミック構造の色を制御することと、を含む、
ことを特徴とする制御方法。
【0079】
(付記19)
付記1−15のいずれか1つに記載のマルチカラーエレクトロクロミック構造を備えるエレクトロクロミックデバイス。
【0080】
(付記20)
付記1−15のいずれか1つに記載のマルチカラーエレクトロクロミック構造又は付記14に記載のエレクトロクロミックデバイスを備える画像表示機器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】