(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-517502(P2021-517502A)
(43)【公表日】2021年7月26日
(54)【発明の名称】感覚刺激装置
(51)【国際特許分類】
A61N 2/04 20060101AFI20210625BHJP
A61N 1/40 20060101ALI20210625BHJP
【FI】
A61N2/04
A61N1/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】76
(21)【出願番号】特願2020-572580(P2020-572580)
(86)(22)【出願日】2019年3月12日
(85)【翻訳文提出日】2020年11月10日
(86)【国際出願番号】AU2019050219
(87)【国際公開番号】WO2019173866
(87)【国際公開日】20190919
(31)【優先権主張番号】2018900824
(32)【優先日】2018年3月13日
(33)【優先権主張国】AU
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】520352665
【氏名又は名称】オーグメンテッド バイオニクス ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】アグニホトリ,ヴィラジ
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラシェックハライアー,マハンザシャイアー ガンジーナプラ
(72)【発明者】
【氏名】モバシュシェール,アハメド トアハ
(72)【発明者】
【氏名】アボッシュ,アミン
(72)【発明者】
【氏名】ジャボーア,ニコラス
【テーマコード(参考)】
4C053
4C106
【Fターム(参考)】
4C053LL12
4C106AA03
4C106BB21
4C106CC01
4C106CC16
4C106FF01
4C106FF12
(57)【要約】
対象に感覚刺激を提供するための装置であって、装置は、刺激入力を示す入力信号を取得する入力部と、信号発生器と、少なくとも1つのコイルを含むコイルシステムと、ソフトウェア命令に従って動作する電気制御装置とを含む。使用において、制御装置は、入力部から入力信号を受信し、入力信号の分析を実行し、分析の結果を使用して、信号発生器に刺激信号を生成させ、刺激信号は、コイルシステムに印加され、それによって、対象のターゲット領域に刺激電磁場を生成し、刺激電磁場は、感覚ニューロンを選択的に活性化し、それによって、刺激入力に従って対象を刺激するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象に感覚刺激を提供するための装置であって、
(a)刺激入力を示す入力信号を取得する入力部と、
(b)信号発生器と、
(c)少なくとも1つのコイルを含むコイルシステムと、
(d)ソフトウェア命令に従って動作する電気制御装置と、
を備え、前記電気制御装置は、
(i)前記入力部から前記入力信号を受信し、
(ii)前記入力信号の分析を実行し、
(iii)前記分析の結果を使用して前記信号発生器に刺激信号を発生させ、前記刺激信号は前記コイルシステムに印加されて前記対象のターゲット領域に刺激電磁場を発生させ、前記刺激電磁場は前記刺激入力に従って感覚ニューロンを選択的に活性化して前記対象を刺激するように構成される、装置。
【請求項2】
前記入力部は、
(a)前記刺激入力を感知する入力センサと、
(b)遠隔装置から前記入力信号を受信する無線トランシーバと、
を備える請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記入力センサは、マイクロフォンおよび撮像デバイスのうちの少なくとも1つを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記刺激入力は可聴であり、前記感覚ニューロンはスパイラル神経節ニューロンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記刺激入力は視覚的であり、前記感覚ニューロンは、
(a)網膜神経節ニューロン、
(b)視神経、
(c)外側膝状核、および
(d)視覚野、
の少なくとも1つである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記刺激電磁場は、前記ターゲット領域の外側の前記刺激電磁場の大きさを最小化するように生成される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記刺激電磁場は、
(a)複数の電磁場の重ね合わせ、
(b)少なくとも1つの不均一電磁場、および
(c)一連の電磁場、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記コイルシステムは、
(a)少なくとも2つのコイル、
(b)少なくとも3つのコイル、
(c)少なくとも4つのコイル、
(d)10個未満のコイル、
(e)8個未満のコイル、並びに
(f)少なくとも1個の一次コイルおよび少なくとも1個の二次コイル、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記コイルシステムは、複数のコイルのそれぞれからの電磁場を前記ターゲット領域上に焦点を合わせるように配置されたコイル形状を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記複数のコイルのうちの異なるものは、前記ターゲット領域の異なる部分に焦点を合わせられる、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記コイルシステムは、軸の周囲に円周方向に間隔をあけて配置された複数のコイルを含み、前記軸は前記ターゲット領域に位置し、前記コイルの端部が前記ターゲット領域と対向するよう前記コイルが前記軸に対して角度を有して配置されている、請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記コイルシステムは、前記軸の位置に設けられた少なくとも1つのコイルを含む、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記コイルシステムは、
(a)円錐テーパーコイル、
(b)デュアルローブコイル、
(c)バタフライコイル、
(d)フラットコイル、
(e)スパイラルコイル、
(f)ヘリカルコイル、
(g)多層ヘリカルコイル、および
(h)コアに巻かれたコイル、
のうちの少なくともいずれか1つである、少なくとも1つのコイルを含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
少なくとも1つのコイルの少なくとも1つの巻線は、
(a)(i)0.2mm以上、
(ii)0.5mm以上、
(iii)1mm以上、
(iv)5mm以上、
(v)10mm以上、
(vi)1.5mm未満、
(vii)10mm未満、
(viii)15ミリメートル未満、および
(ix)20ミリメートル未満、
のうちの少なくとも1つの内半径、並びに、
(b)(i)5mm以上、
(ii)8mm以上、
(iii)10mm以上、
(iv)20mm以上、
(v)30mm以上、
(vi)50mm未満、および
(vii)60mm未満、のうちの少なくともひとつの外半径、
のうちの少なくとも1つを有する、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記コイルシステムは、前記ターゲット領域内に電場を生成するように構成された少なくとも1つの軸方向のコイルを含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記軸方向のコイルは、コイル形状の軸に沿って延在する複数の導体を含み、前記コイル形状は、
(a)円錐、
(b)半球、
(c)凹状の半球、
(d)凸状の半球、および
(e)円筒、
のうちの少なくとも1つの形状を有する、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
少なくとも1つのコイルは、
(a)(i)0.001mm2以上、
(ii)0.01mm2以上、
(iii)0.1mm2以上、
(iv)1mm2以上、
(v)5mm2以上、
(vi)10mm2以上、
(vii)20mm2未満、および
(viii)15mm2未満、のうちの少なくとも1つの断面積を有する、
(b)(i)円形、および
(ii)長方形、のうちの少なくとも1つの断面形状を有する、並びに、
(c)(i)ワイヤ、
(ii)銅線、および
(iii)編組線、で作製された、
うちの少なくとも1つの導体から巻かれている、請求項1〜16のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
前記コイルは、
(a)空心、
(b)軟磁性複合コア、
(c)絶縁磁心、
(d)積層コア、
(e)高透磁率磁心、および
(f)金属コア、のうちの少なくとも1つのコアの周りに巻かれている、請求項1〜17のいずれか1項に記載の装置。
【請求項19】
前記コアは、
(a)(i)0.2mm以上、
(ii)0.5mm以上、
(iii)1mm以上、
(iv)5mm以上、
(v)10mm以上、
(vi)1.5mm未満、
(vii)10mm未満、
(viii)15mm未満、および
(ix)20mm未満、のうちの少なくとも1つの半径、並びに、
(b)(i)0.5mm以上、
(ii)5mm以上、
(iii)10mm以上、
(iv)15mm以上、
(v)約20mm〜30mm、および
(vi)40mm未満、のうちの少なくとも1つの長さ、
のうちの少なくとも1つを有する請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記コアは、前記対象に最も近い前記コアの端部に近接して内向きに先細になっている、請求項18または19に記載の装置。
【請求項21】
前記装置は、漂遊磁界を減少させるために前記コイルシステムに隣接して配置された少なくとも1つのシールドを含む、請求項1〜20のいずれか1項に記載の装置。
【請求項22】
前記少なくとも1つのシールドは、
(a)反磁性シールド、
(b)導電性シールド、
(c)各コイルに隣接して配置されたシールド、並びに、
(d)各コイルに隣接して配置されたシールドであって、各シールドは、
(i)0.2mm以上、
(ii)0.5mm以上、
(iii)約1mm、および
(iv)1.5mm未満、のうちの少なくとも1つの半径を有する開口部を含むシールド、
を含む請求項20に記載の装置。
【請求項23】
前記装置は、ユーザによって装着されるように構成されたハウジングを含む、請求項1〜22のいずれか1項に記載の装置。
【請求項24】
前記ハウジングは、
(a)前記コイルシステムを収容する第1のコイルシステムハウジングと、
(b)信号処理コンポーネントを収容する第2の処理コンポーネントハウジングと、
を含む請求項23に記載の装置。
【請求項25】
前記装置は、前記入力センサ信号を少なくとも部分的に処理する信号プロセッサを含む、請求項1〜24のいずれか1項に記載の装置。
【請求項26】
前記信号発生器は、
(a)前記電気制御装置からの信号に従って制御された駆動信号を生成するドライバ回路と、
(b)前記駆動信号を用いて前記刺激信号を生成する各コイルのためのトリガ回路と、
を含む請求項1〜25のいずれか1項に記載の装置。
【請求項27】
前記信号発生器は、前記トリガ回路が使用するための電荷を保存する高電圧容量性保存部を含む電源を含む、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
前記信号発生器は、エネルギー回収回路を含む、請求項26または27に記載の装置。
【請求項29】
前記装置は、前記コイルを冷却する冷却システムを含む、請求項1〜28のいずれか1項に記載の装置。
【請求項30】
前記装置は、前記対象の反応を測定する反応センサを含み、
前記電気制御装置は、
(a)前記少なくとも1つの刺激信号を生成するステップと、
(b)前記コイルアレイ内のコイルの位置を制御するステップと、
のうちの少なくとも1つに、前記反応センサからの反応信号を使用する、請求項1〜29のいずれか1項に記載の装置。
【請求項31】
前記反応センサは、電気インピーダンス断層撮影センサを含む、請求項30に記載の装置。
【請求項32】
前記電気インピーダンス断層撮影センサは、
(a)前記ターゲット領域に近接する前記対象の組織と接触する複数の電極と、
(b)前記複数の電極のうちのいくつかに交流信号を印加する信号発生器と、
(c)前記複数の電極のうちの他の電極上の電気信号を測定する信号センサと、
(d)測定された信号に従って前記ターゲット領域のマップを生成するように構成された一つ以上のインピーダンス処理装置と、
を含む請求項31に記載の装置。
【請求項33】
前記マップは、
(a)前記少なくとも1つのコイルの位置決め、および
(b)前記少なくとも1つのコイルに印加される刺激信号の制御、
のうちの少なくとも1つに使用される、請求項32に記載の装置。
【請求項34】
前記コイルシステムは、
(a)前記コイルアレイによって生成された漂遊磁界を受信するように構成された受信コイルと、
(b)前記受信コイルによって生成された電流を用いてバッテリを充電するために使用される充電システムと、
を含む、請求項1〜33のいずれか1項に記載の装置。
【請求項35】
前記コイルシステムは、前記受信コイルを調整する同調回路を含む、請求項34に記載の装置。
【請求項36】
前記コイルシステムは、前記電気制御装置と通信して前記少なくとも1つの刺激信号に従って前記同調回路を制御する同調回路制御装置を含む、請求項35に記載の装置。
【請求項37】
前記電気制御装置は、前記コイルシステム内の複数のコイルの各々についてそれぞれの刺激信号を生成する、請求項1〜36のいずれか1項に記載の装置。
【請求項38】
前記装置は、前記対象に感覚刺激を提供するための出力部を含む、請求項1〜37のいずれか1項に記載の装置。
【請求項39】
前記刺激入力は可聴であり、前記出力部は、前記対象に聴覚刺激を提供するためのスピーカを含む、請求項38に記載の装置。
【請求項40】
前記電気制御装置は、
(a)前記入力センサ信号を分析して一つ以上の特徴を決定し、
(b)前記特徴を用いて一つ以上の刺激信号を生成する、
請求項1〜39のいずれか1項に記載の装置。
【請求項41】
可聴な感覚入力のために、前記特徴は、
(a)異なる周波数における音響信号の電力に関する特徴、
(b)異なる周波数における音響信号の電力変化に関する特徴、
(c)異なる周波数における音響信号の電力変化率に関する特徴、
(d)時間領域の特徴、
(e)スペクトルの特徴、
(f)ケプストラムの特徴、
(g)ウェーブレットの特徴、
(h)周波数係数、
(i)メル周波数ケプストラム係数(MFCC)、
(j)ガンマトン周波数ケプストラム係数(GFCC)、
(k)GFCCデルタ、および
(l)GFCCダブルデルタ、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項40に記載の装置。
【請求項42】
前記電気制御装置は、前記特徴と、少なくとも1つの計算モデルとを用いて前記一つ以上の刺激信号を生成し、前記計算モデルは、前記特徴と異なる刺激信号との間の関係を具体化する、請求項40または41に記載の装置。
【請求項43】
前記少なくとも1つの計算モデルは、
(a)基準対象について、異なる特徴を用いて生成された基準刺激信号に応じて測定された基準反応、
(b)前記対象について、異なる特徴を用いて生成された基準刺激信号に応じて測定された基準反応、および、
(c)前記対象の3Dスキャンから得られた前記対象の少なくとも前記ターゲット領域のモデル、
のうちの少なくとも1つを用いて導出される、請求項42に記載の装置。
【請求項44】
前記少なくとも1つの計算モデルは、前記基準反応および基準刺激信号に機械学習を適用することによって導出される、請求項42または43に記載の装置。
【請求項45】
対象に感覚刺激を提供する方法であって、
(a)刺激入力を示す入力信号を取得するために入力部を使用するステップと、
(b)(i)前記入力部から前記入力信号を受信し、
(ii)前記入力信号の分析を実行し、
(iii)前記分析の結果を使用して信号発生器に刺激信号を発生させ、前記刺激信号はコイルシステムに印加されて前記対象のターゲット領域に刺激電磁場を発生させ、前記刺激電磁場は前記刺激入力に従って感覚ニューロンを選択的に活性化して前記対象を刺激するように構成される、
ソフトウェア命令に従って動作する電気制御装置を使用するステップと、
を含む方法。
【請求項46】
ニューロモデュレーションを実行するための装置であって、
(a)信号発生器と、
(b)少なくとも1つの軸方向コイルを含むコイルシステムと、
(c)ソフトウェア命令に従って動作する電気制御装置と、
を備え、前記電気制御装置は、
(i)実行されるニューロモデュレーションを決定し、
(ii)前記信号発生器に変調信号を発生させ、前記変調信号は前記コイルシステムに印加されて対象のターゲット領域に変調電磁場を発生させ、前記変調電磁場は前記ニューロモデュレーションを実行するように構成される、装置。
【請求項47】
前記軸方向コイルは、コイル形状の軸に沿って延在する複数の導体を含み、
前記コイル形状は、
(a)円錐、
(b)半球、
(c)凹状の半球、
(d)凸状の半球、および
(e)円筒、
のうちの少なくとも1つの形状を有する、請求項46に記載の装置。
【請求項48】
前記電気制御装置は、
(a)入力部を介して受信される入力信号、および
(b)センサから受信されるセンサ信号
のうちの少なくとも1つに従って、実行される前記ニューロモデュレーションを決定するように構成される、請求項46または47に記載の装置。
【請求項49】
前記入力部は、無線トランシーバモジュールを含む、請求項48に記載の装置。
【請求項50】
前記電気制御装置は、メモリに記憶された複数の定義された変調シーケンスのうちの1つを選択するように構成される、請求項46〜49のいずれか1項に記載の装置。
【請求項51】
前記コイルシステムは、
(a)2つ以上のコイル、
(b)3つ以上のコイル、
(c)4つ以上のコイル、
(d)10個未満のコイル、
(e)8個未満のコイル、並びに、
(f)1つ以上の一次コイルおよび1つ以上の二次コイル、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項46〜50のいずれか1項に記載の装置。
【請求項52】
前記コイルシステムは、複数のコイルのそれぞれからの電磁場を前記ターゲット領域上に焦点を合わせるように配置されたコイル形状を有する、請求項46〜51のいずれか1項に記載の装置。
【請求項53】
前記複数のコイルのうちの異なるものは、前記ターゲット領域の異なる部分に焦点が合わされる、請求項52に記載の装置。
【請求項54】
前記コイルシステムは、軸の周囲に円周方向に間隔をあけて配置された複数のコイルを含み、前記軸は前記ターゲット領域に位置し、前記コイルの端部が前記ターゲット領域と対向するよう前記コイルが前記軸に対して角度を有して配置されている、請求項46〜53のいずれか1項に記載の装置。
【請求項55】
前記コイルシステムは、前記軸の位置に設けられた少なくとも1つのコイルを含む、請求項54に記載の装置。
【請求項56】
少なくとも1つのコイルは、
(a)(i)0.001mm2以上、
(ii)0.01mm2以上、
(iii)0.1mm2以上、
(iv)1mm2以上、
(v)5mm2以上、
(vi)10mm2以上、
(vii)20mm2未満、および
(viii)15mm2未満、のうちの少なくとも1つの断面積を有する、
(b)(i)円形、および
(ii)長方形、のうちの少なくとも1つの断面形状を有する、並びに、
(c)(i)ワイヤ、
(ii)銅線、および
(iii)編組線、で作製された、
うちの少なくとも1つの導体から巻かれている、請求項46〜55のいずれか1項に記載の装置。
【請求項57】
前記コイルは、
(a)空心、
(b)軟磁性複合コア、
(c)絶縁磁心、
(d)積層コア、
(e)高透磁率磁心、および
(f)金属コア、のうちの少なくとも1つのコアの周りに巻かれている、請求項46〜56のいずれか1項に記載の装置。
【請求項58】
前記コアは、
(a)(i)0.2mm以上、
(ii)0.5mm以上、
(iii)1mm以上、
(iv)5mm以上、
(v)10mm以上、
(vi)1.5mm未満、
(vii)10mm未満、
(viii)15mm未満、および
(ix)20mm未満、のうちの少なくとも1つの半径、並びに、
(b)(i)0.5mm以上、
(ii)5mm以上、
(iii)10mm以上、
(iv)15mm以上、
(v)約20mm〜30mm、および
(vi)40mm未満、のうちの少なくとも1つの長さ、
のうちの少なくとも1つを有する請求項57に記載の装置。
【請求項59】
前記装置は、漂遊磁界を減少させるために前記コイルシステムに隣接して配置された少なくとも1つのシールドを含む、請求項46〜58のいずれか1項に記載の装置。
【請求項60】
前記少なくとも1つのシールドは、
(a)反磁性シールド、
(b)導電性シールド、
(c)各コイルに隣接して配置されたシールド、並びに、
(d)各コイルに隣接して配置されたシールドであって、各シールドは、
(i)0.2mm以上、
(ii)0.5mm以上、
(iii)約1mm、および
(iv)1.5mm未満、のうちの少なくとも1つの半径を有する開口部を含むシールド、
を含む請求項59に記載の装置。
【請求項61】
前記装置は、ユーザによって装着されるように構成されたハウジングを含む、請求項46〜60のいずれか1項に記載の装置。
【請求項62】
前記ハウジングは、
前記コイルシステムを収容する第1のコイルシステムハウジングと、
信号処理コンポーネントを収容する第2の処理コンポーネントハウジングと、
を含む請求項61に記載の装置。
【請求項63】
前記装置は、前記入力センサ信号を少なくとも部分的に処理する信号プロセッサを含む、請求項46〜62のいずれか1項に記載の装置。
【請求項64】
前記信号発生器は、
前記電気制御装置からの信号に従って制御された駆動信号を生成するドライバ回路と、
前記駆動信号を用いて前記刺激信号を生成する各コイルのためのトリガ回路と、
を含む請求項46〜63のいずれか1項に記載の装置。
【請求項65】
前記信号発生器は、前記トリガ回路が使用するための電荷を保存する高電圧容量性保存部を含む電源を含む、請求項64に記載の装置。
【請求項66】
前記信号発生器は、エネルギー回収回路を含む、請求項64または65に記載の装置。
【請求項67】
前記装置は、前記コイルを冷却する冷却システムを含む、請求項46〜66のいずれか1項に記載の装置。
【請求項68】
前記装置は、前記対象の反応を測定する反応センサを含み、
前記電気制御装置は、
(a)前記少なくとも1つの刺激信号を生成するステップと、
(b)前記コイルアレイ内のコイルの位置を制御するステップと、
のうちの少なくとも1つに、前記反応センサからの反応信号を使用する、請求項46〜67のいずれか1項に記載の装置。
【請求項69】
前記反応センサは、電気インピーダンス断層撮影センサを含む、請求項68に記載の装置。
【請求項70】
前記電気インピーダンス断層撮影センサは、
(a)前記ターゲット領域に近接する前記対象の組織と接触する複数の電極と、
(b)前記複数の電極のうちのいくつかに交流信号を印加する信号発生器と、
(c)前記複数の電極のうちの他の電極上の信号を感知する信号センサと、
(d)前記信号センサからの信号に従って前記ターゲット領域のマップを生成するように構成された一つ以上のインピーダンス処理装置と、
を含む請求項69に記載の装置。
【請求項71】
前記マップは、
(a)前記少なくとも1つのコイルの位置決め、および
(b)前記少なくとも1つのコイルに印加される信号の制御、
のうちの少なくとも1つに使用される、請求項70に記載の装置。
【請求項72】
前記コイルシステムは、
(a)前記コイルアレイによって生成された漂遊磁界を受信するように構成された受信コイルと、
(b)前記受信コイルによって生成された電流を用いてバッテリを充電するために使用される充電システムと、
を含む、請求項46〜71のいずれか1項に記載の装置。
【請求項73】
前記コイルシステムは、前記受信コイルを調整する同調回路を含む、請求項72に記載の装置。
【請求項74】
前記コイルシステムは、前記電気制御装置と通信して前記少なくとも1つの刺激信号に従って前記同調回路を制御する同調回路制御装置を含む、請求項73に記載の装置。
【請求項75】
前記電気制御装置は、前記コイルシステム内の複数のコイルの各々についてそれぞれの刺激信号を生成する、請求項46〜74のいずれか1項に記載の装置。
【請求項76】
前記変調電磁場は、前記対象の前記ターゲット領域に、
(a)治療的刺激、および
(b)治療的阻害
のうちの少なくとも1つを提供するように構成される、請求項46〜75のいずれか1項に記載の装置。
【請求項77】
前記ニューロモデュレーションは、パーキンソン病を治療するために構成され、
前記ターゲット領域は、
(a)前記対象の視床下核と、
(b)前記対象の淡蒼球内節と、
(c)前記対象の腹側中間核と、
(d)対象の脚橋核と、
を含む、請求項46〜75のいずれか1項に記載の装置。
【請求項78】
前記ニューロモデュレーションは、本態性振戦のための治療を提供するように構成され、前記ターゲット領域は前記対象の腹側中間核を含む、前記46〜75のいずれか1項に記載の装置。
【請求項79】
前記ニューロモデュレーションは、前記ターゲット領域が前記対象の淡蒼球内節である、ジストニアの治療を提供するように構成される、請求項46〜75のいずれか1項に記載の装置。
【請求項80】
前記ニューロモデュレーションは、強迫性障害の治療を提供するように構成され、
前記ターゲット領域は、
(a)前記対象の腹側被膜/腹側線条体、
(b)前記対象の側坐核、および
(c)前記対象の視床下核、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項46〜75のいずれか1項に記載の装置。
【請求項81】
前記ニューロモデュレーションは、疼痛治療を提供するように構成され、
前記ターゲット領域は、前記対象の一次運動野である、
請求項46〜75のいずれか1項に記載の装置。
【請求項82】
前記ニューロモデュレーションは、てんかん治療を提供するように構成され、
前記ターゲット領域は、前記対象の内部カプセルおよび視床の領域を含む、
請求項46〜75のいずれか1項に記載の装置。
【請求項83】
前記ターゲット領域は、前記対象の脊髄を含み、
前記ニューロモデュレーションは、
(a)難治性慢性疼痛、
(b)脊髄損傷、
(c)フェイルバック症候群、
(d)複合性局所疼痛症候群、
(e)狭心症、
(f)虚血性四肢痛、
(g)腹痛、
(h)難治性の疼痛状態、および
(i)過活動膀胱症候群、
の少なくとも1つに対する治療を提供するように構成される、前記46〜75のいずれか1項に記載の装置。
【請求項84】
ニューロモデュレーションを実行するための方法であって、
ソフトウェア命令に従って動作する電気制御装置を使用して、
(a)実行される前記ニューロモデュレーションを決定し、
(b)信号発生器に変調信号を生成させ、前記変調信号は対象のターゲット領域内に変調電磁場を生成するように構成された少なくとも1つの軸方向コイルを含むコイルシステムに印加され、前記変調電磁場は前記ニューロモデュレーションを実行するように構成される、
ステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、聴覚刺激または視覚刺激といった感覚刺激を対象に提供するための方法および装置に関する。この方法および装置は、1つの特定の例において、感覚ニューロンを選択的に活性化するために刺激電磁場を生成することによって感覚刺激を提供する。
【背景技術】
【0002】
本明細書における、従前の刊行物(またはそれから派生した情報)への、または既知の主題への言及は、従前の刊行物(またはそれから派生した情報)または既知の主題が本明細書が関係する活動分野における共通の一般的知識の一部を形成することを、承認、許可、または任意の形態の示唆として解釈されるものではなく、また、されるべきではない。
【0003】
ニューロモデュレーションは、現代医学において複数の用途を有する。広く知られている用途の中には、補綴、すなわち、正常な機能が損なわれた知覚、運動または認知神経機能を改善する装置、神経機構を通して疾患状態における身体の器官を調節する装置、および、末梢および中枢神経系における神経機能の研究が含まれる。これらのニューロモデュレーション技術は、ニューロンを通過するイオンの流れに影響を与え、神経における活動ポテンシャルの発火を刺激するか、または遮断する。伝統的に、ニューロモデュレーションのための主な技術は、ニューロンを横切る電位または電圧勾配を誘導する直流の使用であった。この電位勾配は、一旦十分になると、意図される効果に応じて、ニューロンが活動ポテンシャルを開始または抑制することを可能にする。この技術は、最初の人工内耳によって成功裏に実証された。別のニューロモデュレーション方法論は、磁気刺激の使用であった。経頭蓋磁気刺激装置のような装置は磁気パルスを使用して、ニューロンを横切る電場を誘導し、これは、変調に必要な電位勾配をもたらす。他のニューロモデュレーション技術は、光遺伝学、熱、音響/機械、および化学的ニューロモデュレーションを含む。
【0004】
世界保健機関は、世界中に約4億6,600万人の人々が障害性難聴に苦しんでいると推定している。さらに、聴覚装置の現在の生産は、この世界的なニーズの10%しか満たさない。難聴患者には、難聴の種類や程度によって異なる装置が処方される。難聴患者の聴力を可能にするために現在市販されている4つのタイプの装置がある。これらには、補聴器、骨導補聴器、中耳注入、人工内耳などがある。これらは、重度から非常に重度の感音難聴に苦しむ患者に処方される。
【0005】
これに関して、聴覚システムは、外耳または耳介が音を外耳道に送る3つの部分から構成される。音響振動は次に、中耳の鼓膜上に向かい、小骨と呼ばれる3つの小さな骨を通して増幅される。次いで、小骨は、内耳に配置された蝸牛に振動を伝達する。蝸牛は、カタツムリの殻に似たスパイラル臓器である。蝸牛の内部は皮質の器官であり、有毛細胞を含んでいる。これらの有毛細胞は、音の振動を感知し、それらに付着したスパイラル神経節ニューロンに伝達される活動ポテンシャルに変換する。スパイラル神経節細胞はそのとき束状になって聴神経を形成する。
【0006】
中耳に問題がある場合、患者は伝音難聴に苦しむ。内耳またはその後の脳内の聴覚処理経路に問題がある場合、患者は感音難聴に苦しむ。
【0007】
人工内耳は、患者の有毛細胞が機能していないが、スパイラル神経節ニューロンがまだ機能している場合に処方される。この場合、人工内耳は、蝸牛の内側に配置され、スパイラル神経節ニューロンを脱分極させて一連の活動ポテンシャルまたはスパイクをもたらす電流を注入する。これらのスパイクは脳に運ばれ、聴覚情報として処理される。
【0008】
「Cochlear Implants: System Design, Integration, and Evaluation」(Fan-Gang Zeng, Senior Member, IEEE, Stephen Rebscher, William Harrison, Xiaoan Sun, Haihong FengによるIEEE Reviews In Biomedical Engineering, VOL. 1, 2008)に記載されているように、人工内耳システムは、複数の部品に分解することができる。第1に、フックとバッテリーケースとともに耳の後ろに配置された外部プロセッサは、環境から音を拾うためにマイクロフォンを使用する。これらの音波は、アナログ信号からデジタル信号に変換され、その後処理されて高周波(RF)信号に符号化される。このRF信号は、ヘッドピース内のアンテナに送られる。耳の後ろの皮膚の下に配置される内部レシーバに引き付けられる磁石によって、ヘッドピースは、適所に保持される。密閉された刺激装置は、能動電子回路を含む。能動電子回路は、RF信号から電力を引き出し、それをデコードし、それを電流に変換し、それらを、蝸牛に通じるワイヤに沿って送る。次いで、ワイヤの端部および蝸牛の内側の電極は、送られた電気信号に従って聴覚神経を刺激する。
【0009】
人工内耳は、医師が耳の後ろを切開し、頭蓋の側頭骨の内側にドリルで穴をあけ、頭蓋の下に内部受信機を入れ、蝸牛の内側に電極を入れる侵襲性の高い手術が必要である。この手術は患者に感染、顔面麻痺、回転性めまい、味覚消失、耳鳴、挿入外傷、および麻酔に関連する他のリスクのような複数のリスクを与える。さらに、その手術は、残存聴力を破壊し、このことは、患者の聴力が手術後に悪化するか、少なくとも何らかの解決を失う危険性があることを意味する。このことの更なる結果は、手術が可逆的でないことであり、これは、一時的な聴力喪失の場合のような一時的な使用ができないこと、または、例えば仮想現実適用または同様のものにおける使用のために、デバイスとの直接的なインターフェースを可能にするための使用ができないことを意味する。
【0010】
経頭蓋磁気刺激(TMS)は、抗うつ療法に使用される。経頭蓋磁気刺激はまた、脳の様々な領域の機能性のマッピング、耳鳴の治療、パーキンソン病、アルツハイマー病の治療、また、最近では網膜ニューロンを刺激するために使用されている。
【0011】
J. Y. Shin、J.-H. A の「Electrodeless, Non-Invasive Stimulation of Retinal Neurons Using Time-Varying Magnetic Fields」(IEEE Sensors Journal, vol.16, no.24, pp.88832-8840,2016)には、時間的に変化する磁場を使用することによる外科的に非侵襲的な網膜刺激方法が記載されている。網膜刺激は、時間的に変化する磁場を用いて網膜神経節細胞上に渦電流を誘導することによって達成される。刺激装置は、電圧源、電圧ブースター、トリガ回路、ドライバ回路、蓄積キャパシターバンク、および刺激コイルを使用して開発される。
【0012】
米国特許出願公開第20070260107号明細書には、脳または脊髄との所定の位置における定位経頭蓋磁気刺激(sTMS)のためのシステムが記載されており、アレイ中の選択されたコイルが同時にパルス化される特定の構成に配置された電磁石のアレイを組み込む。機能的MRIまたは他の画像技術によって実証された病巣の活性化は、罹患した神経領域の位置を特定するために使用することができる。指定されたターゲットの位置を決定するために、撮像技術を利用することもできる。
【0013】
米国特許出願公開第20080046053号明細書には、生物学的組織において集束電流を生成するための装置が記載されている。この装置は、組織の領域を横切って電場を発生させることができる電源と、その電場に対して組織の誘電率を変化させ、それによって変位電流を発生させるための手段とを含む。誘電率を変更する手段は、化学源、光源、機械源、熱源、または電磁源であってもよい。
【0014】
米国特許出願公開第US2009/0156884号明細書には、経頭蓋磁気刺激(TMS)を用いた特定の神経学的および精神医学的疾患の治療には、特定のパルスパラメータを用いて特定の神経解剖学的構造を標的とする必要があることが記載されている。本明細書には、TMS電磁石とターゲットとの間の非ターゲット領域への影響を最小限に抑えながら、脳深部のターゲット領域を選択的に刺激するようにTMS電磁石を位置決めして電力供給する方法が記載されている。これらの構成の使用は、物理的な、空間的なおよび/または時間的な加重の組み合わせを含み得る。時間的な加重を達成するための具体的なアプローチを詳述する。
【0015】
米国特許第8,972,004号明細書には、電力源と、透磁性トロイダルコアと、コアの周りに巻かれたコイルとを備える、標的組織へのエネルギーの送達による病状の非侵襲的治療のための装置およびシステムが記載されている。コイルおよびコアは、連続的な電気的な導電性媒体に埋め込まれる。導電性媒体は、任意の角度で配置された患者のターゲット身体の表面の輪郭に一致する形状を有するように適合されている。導電性媒体はいくつかの開示された方法のいずれかによってその表面に適用され、コイルが患者内に電流および/または電場を誘導し、それによって、患者内の組織および/または1つ以上の神経線維を刺激するように、電荷のパルスを電源がコイルに供給する。本発明は、長い神経に平行に配置することができる効果の細長い電場を形成する。一実施形態において、装置は互いに隣接して位置する2つのトロイダルコアを備える。
【0016】
米国特許出願公開第2011/0029044号明細書には、哺乳動物に物理的に接触することなく哺乳動物の特性を感知するように構成されたセンサデバイスを含むシステムが記載されている。システムはまた、感知された哺乳動物の特性を示す信号を生成するように構成された信号発生器を含む。このシステムは、さらに、感知された哺乳動物の特性を示す信号に応じて、哺乳動物の神経系成分を調節するように動作可能な刺激を出力するように構成されたニューロモデュレーション装置を記載する。
【0017】
米国特許出願公開第2013/0245486号明細書には、患者の頸部内に位置する迷走神経の可能性がある神経を非侵襲的に電気的に刺激することにより、片頭痛のような病状を治療する装置および方法が記載されている。好ましい実施形態は、患者が自分の状態を自己治療することを可能にする。開示された方法は、装置が首に正しく配置されていること、および刺激の振幅および他のパラメータが実際に治療波形で迷走神経を刺激することを保証する。これらの方法は、患者の喉頭の特性、瞳孔直径、眼内の血流、皮膚電位および/または心拍変動を測定することを含む。
【0018】
TMSにおける主要な課題は、コイルデザインであり、特に、頭皮に隣接する脳などの他の領域での刺激を最小限に抑えつつ、より深い神経組織を適切に刺激できるコイルを作り出すことである。この課題は、磁場がコイルから離れた距離の二乗に反比例するといった電磁場を支配する非常に物理的な法則によってもたらされる。TMSコイルのいくつかの一般的な設計は、円形コイル、8の字形コイル、Cコアコイル、クラウンコイル、およびHコイルを含む。コイル設計の適合性は、用途によって異なる。表面レベルの皮質刺激のために、円形および8の字形コイルが使用され、後者はより良好な焦点性を提供する。脳深部刺激(DBS)プロトコルでは、Cコア、クラウン、およびHコイルのような、より大きなコイル設計が使用される。Cコアコイルはまた、それらの中に高透磁率鉄心を含み、これは、次に、領域を強化し、加熱を低減し、頭皮刺激を最小限にする。
【発明の概要】
【0019】
広範な一形態において、本発明の一態様は、対象に感覚刺激を提供するための装置を提供することを目的とし、前記装置は、刺激入力を示す入力信号を取得する入力部と、信号発生器と、少なくとも1つのコイルを含むコイルシステムと、ソフトウェア命令に従って動作する電気制御装置と、を備え、前記電気制御装置は、前記入力部から前記入力信号を受信し、前記入力信号の分析を実行し、前記分析の結果を使用して、前記信号発生器に刺激信号を発生させ、前記刺激信号は前記コイルシステムに印加されて前記対象のターゲット領域に刺激電磁場を発生させ、前記刺激電磁場は前記刺激入力に従って感覚ニューロンを選択的に活性化して前記対象を刺激するように構成される。
【0020】
一実施形態において、前記入力部は、前記刺激入力を感知する入力センサと、遠隔装置から前記入力信号を受信する無線トランシーバとを含む。
【0021】
一実施形態において、前記入力センサは、マイクロフォンおよび撮像デバイスのうちの少なくとも1つを含む。
【0022】
一実施形態において、前記刺激入力は可聴であり、前記感覚ニューロンはスパイラル神経節ニューロンである。
【0023】
一実施形態において、前記刺激入力は視覚的であり、前記感覚ニューロンは、網膜神経節ニューロン、視神経、外側膝状核、および視覚野、の少なくとも1つである。
【0024】
一実施形態において、前記刺激電磁場は、前記ターゲット領域の外側の前記刺激電磁場の大きさを最小化するように生成される。
【0025】
一実施形態において、前記刺激電磁場は、複数の電磁場の重ね合わせ、少なくとも1つの不均一電磁場、および一連の電磁場、のうちの少なくとも1つを含む。
【0026】
一実施形態において、前記コイルシステムは、少なくとも2つのコイル、少なくとも3つのコイル、少なくとも4つのコイル、10個未満のコイル、8個未満のコイル、並びに少なくとも1つの一次コイルおよび少なくとも1つの二次コイル、のうちの少なくとも1つを含む。
【0027】
一実施形態において、前記コイルシステムは、複数のコイルのそれぞれからの電磁場をターゲット領域上に焦点を合わせるように配置されたコイル形状を有する。
【0028】
一実施形態において、複数のコイルのうちの異なるものは、前記ターゲット領域の異なる部分に焦点が合わされる。
【0029】
一実施形態において、前記コイルシステムは、軸の周囲に円周方向に間隔をあけて配置された複数のコイルを含み、前記軸は前記ターゲット領域に位置し、前記コイルの端部が前記ターゲット領域と対向するよう前記コイルが前記軸に対して角度を有して配置されている。
【0030】
一実施形態において、前記コイルシステムは、前記軸に位置する少なくとも1つのコイルを含む。
【0031】
一実施形態において、前記コイルシステムは、円錐テーパーコイル、デュアルローブコイル、バタフライコイル、フラットコイル、スパイラルコイル、ヘリカルコイル、多層ヘリカルコイル、および、コアに巻かれたコイル、のうちの少なくともいずれか1つである、少なくとも1つのコイルを含む。
【0032】
一実施形態において、少なくとも1つのコイルの少なくとも1つの巻線は、0.2mm以上、0.5mm以上、1mm以上、5mm以上、10mm以上、1.5mm未満、10mm未満、15mm未満、および20mm未満のうちの少なくとも1つの内半径、並びに、5mm以上、8mm以上、10mm以上、20mm以上、30mm以上、50mm未満、および60mm未満、のうちの少なくとも1つの外半径、のうちの少なくとも1つを有する。
【0033】
一実施形態において、前記コイルシステムは、前記ターゲット領域内に電場を生成するように構成された少なくとも1つの軸方向のコイルを含む。
【0034】
一実施形態において、前記軸方向のコイルは、コイル形状の軸に沿って延在する複数の導体を含み、前記コイル形状は、円錐、半球、凹状の半球、凸状の半球、および円筒、のうちの少なくとも1つの形状を有する。
【0035】
一実施形態において、少なくとも1つのコイルは、0.001mm
2以上、0.01mm
2、0.1mm
2以上、1mm
2以上、5mm
2以上、10mm
2以上、20mm
2未満、および15mm
2未満、の少なくとも1つの断面積を有する、円形および長方形の少なくとも1つの断面形状を有する、並びに、ワイヤ、銅線、および編組線で作製された、うちの少なくとも1つの導体から巻かれている。
【0036】
一実施形態において、前記コイルは、空芯、軟磁性複合コア、絶縁磁心、積層コア、高透磁率磁心、および金属コアのうちの少なくとも1つのコアの周りに巻かれる。
【0037】
一実施形態において、前記コアは、0.2mm以上、0.5mm以上、1mm以上、5mm以上、10mm以上、1.5mm未満、10mm未満、15mm未満、および20mm未満のうちの少なくとも1つの半径、並びに、0.5mm以上、5mm以上、10mm以上、15mm以上、約20mm〜30mm、および40mm未満、のうちの少なくとも1つの長さ、のうちの少なくとも1つを有する。
【0038】
一実施形態において、前記コアは、前記対象に最も近い前記コアの端部に近接して内向きに先細になっている。
【0039】
一実施形態において、前記装置は、漂遊磁界を減少させるために前記コイルシステムに隣接して配置された少なくとも1つのシールドを含む。
【0040】
一実施形態において、前記少なくとも1つのシールドは、反磁性シールド、導電性シールド、各コイルに隣接して配置されたシールド、並びに、各コイルに隣接して配置されたシールドであって、各シールドは0.2mm以上、0.5mm以上、約1mm、および1.5mm未満、のうちの少なくとも1つの半径を有する開口部を含むシールド、を含む。
【0041】
一実施形態において、前記装置は、ユーザによって装着されるように構成されたハウジングを含む。
【0042】
一実施形態において、前記ハウジングは、前記コイルシステムを収容する第1のコイルシステムハウジングと、信号処理コンポーネントを収容する第2の処理コンポーネントハウジングとを含む。
【0043】
一実施形態において、前記装置は、前記入力センサ信号を少なくとも部分的に処理する信号プロセッサを含む。
【0044】
一実施形態において、前記信号発生器は、前記電気制御装置からの信号に従って制御された駆動信号を発生するドライバ回路と、前記駆動信号を用いて前記刺激信号を生成する各コイルのためのトリガ回路とを含む。
【0045】
一実施形態において、前記信号発生器は、前記トリガ回路が使用するための電荷を保存する高電圧容量性保存部を含む電源を含む。
【0046】
一実施形態において、前記信号発生器は、エネルギー回収回路を含む。
【0047】
一実施形態において、前記装置は、前記コイルを冷却する冷却システムを含む。
【0048】
一実施形態において、前記装置は、前記対象の反応を測定する反応センサを含み、前記電気制御装置は、前記少なくとも1つの刺激信号を生成するステップと、前記コイルアレイ内のコイルの位置を制御するステップと、のうちの少なくとも1つに、前記反応センサからの反応信号を使用する。
【0049】
一実施形態において、前記反応センサは、電気インピーダンス断層撮影センサを含む。
【0050】
一実施形態において、前記電気インピーダンス断層撮影センサは、前記ターゲット領域に近接する前記対象の組織と接触する複数の電極と、前記複数の電極のうちのいくつかに交流信号を印加する信号発生器と、前記複数の電極のうちの他の電極上の電気信号を測定する信号センサと、測定された信号に従って前記ターゲット領域のマップを生成するように構成された一つ以上のインピーダンス処理装置とを含む。
【0051】
一実施形態において、前記マップは、前記少なくとも1つのコイルの位置決め、および前記少なくとも1つのコイルに印加される刺激信号の制御、のうちの少なくとも1つに使用される。
【0052】
一実施形態において、前記コイルシステムは、前記コイルアレイによって生成された漂遊磁界を受信するように構成された受信コイルと、前記受信コイルによって生成された電流を用いてバッテリを充電するために使用される充電システムとを含む。
【0053】
一実施形態において、前記コイルシステムは、前記受信コイルを調整する同調回路を含む。
【0054】
一実施形態において、前記コイルシステムは、前記電気制御装置と通信して前記少なくとも1つの刺激信号に従って前記同調回路を制御する同調回路制御装置を含む。
【0055】
一実施形態において、前記電気制御装置は、前記コイルシステム内の複数のコイルの各々についてそれぞれの刺激信号を生成する。
【0056】
一実施形態において、前記装置は、前記対象に感覚刺激を提供するための出力部を含む。
【0057】
一実施形態において、前記刺激入力は可聴であり、前記出力部は、前記対象に聴覚刺激を提供するためのスピーカを含む。
【0058】
一実施形態において、前記電気制御装置は、前記入力センサ信号を分析して一つ以上の特徴を決定し、前記特徴を用いて一つ以上の刺激信号を生成する。
【0059】
一実施形態において、可聴な感覚入力のために、前記特徴は、異なる周波数における音響信号の電力に関する特徴、異なる周波数における音響信号の電力変化に関する特徴、異なる周波数における音響信号の電力変化率に関する特徴、時間領域の特徴、スペクトルの特徴、ケプストラムの特徴、ウェーブレットの特徴、周波数係数、メル周波数ケプストラム係数(MFCC)、ガンマトン周波数ケプストラム係数(GFCC)、GFCCデルタ、GFCCダブルデルタ、のうちの少なくとも1つを含む。
【0060】
一実施形態において、前記電気制御装置は、前記特徴と一つ以上の計算モデルとを用いて前記一つ以上の刺激信号を生成し、前記計算モデルは、前記特徴と異なる刺激信号との間の関係を具体化する。
【0061】
一実施形態において、前記少なくとも1つの計算モデルは、基準対象について、異なる特徴を用いて生成された基準刺激信号に応じて測定された基準反応、前記対象について、異なる特徴を用いて生成された基準刺激信号に応じて測定された基準反応、および、前記対象の3Dスキャンから得られた前記対象の少なくとも前記ターゲット領域のモデル、のうちの少なくとも1つを用いて導出される。
【0062】
一実施形態において、前記少なくとも1つの計算モデルは、前記基準反応および基準刺激信号に機械学習を適用することによって導出される。
【0063】
広範な一形態において、本発明の一態様は、対象に感覚刺激を提供するための方法を提供することを目的とし、前記方法は、刺激入力を示す入力信号を取得するために入力部を使用するステップと、前記入力部から前記入力信号を受信し、前記入力信号の分析を実行し、前記分析の結果を使用して信号発生器に刺激信号を発生させ、前記刺激信号はコイルシステムに印加されて前記対象のターゲット領域に刺激電磁場を発生させ、前記刺激電磁場は前記刺激入力に従って感覚ニューロンを選択的に活性化して前記対象を刺激するように構成される、ソフトウェア命令に従って動作する電気制御装置を使用するステップと、を含む。
【0064】
広範な一形態において、本発明の一態様は、ニューロモデュレーションを実行するための装置を提供することを目的とし、前記装置は、信号発生器と、少なくとも1つの軸方向コイルを含むコイルシステムと、ソフトウェア命令に従って動作する電気制御装置とを備え、前記電気制御装置は、実行されるニューロモデュレーションを決定し、前記信号発生器に変調信号を発生させ、前記変調信号は前記コイルシステムに印加されて対象のターゲット領域に変調電磁場を発生させ、前記変調電磁場は前記ニューロモデュレーションを実行するように構成される。
【0065】
一実施形態において、前記軸方向コイルは、コイル形状の軸に沿って延在する複数の導体を含み、前記コイル形状は、円錐、半球、凹状の半球、凸状の半球、および円筒のうちの少なくとも1つの形状を有する。
【0066】
一実施形態において、前記電気制御装置は、入力部を介して受信される入力信号、およびセンサから受信されるセンサ信号のうちの少なくとも1つに従って、実行される前記ニューロモデュレーションを決定するように構成される。
【0067】
一実施形態において、前記入力部は、無線トランシーバモジュールを含む。
【0068】
一実施形態において、前記電気制御装置は、メモリに記憶された複数の定義された変調シーケンスのうちの1つを選択するように構成される。
【0069】
一実施形態において、前記コイルシステムは、2つ以上のコイル、3つ以上のコイル、4つ以上のコイル、10個未満のコイル、8個未満のコイル、並びに、1つ以上の一次コイルおよび1つ以上の二次コイル、のうちの少なくとも1つを含む。
【0070】
一実施形態において、前記コイルシステムは、複数のコイルのそれぞれからの電磁場を前記ターゲット領域上に焦点を合わせるように配置されたコイル形状を有する。
【0071】
一実施形態において、前記複数のコイルのうちの異なるものは、前記ターゲット領域の異なる部分に焦点が合わされる。
【0072】
一実施形態において、前記コイルシステムは、軸の周囲に円周方向に間隔をあけて配置された複数のコイルを含み、前記軸は前記ターゲット領域に位置し、前記コイルの端部が前記ターゲット領域と対向するよう前記コイルが前記軸に対して角度を有して配置されている。
【0073】
一実施形態において、前記コイルシステムは、前記軸に位置する少なくとも1つのコイルを含む。
【0074】
一実施形態において、少なくとも1つのコイルは、0.001mm
2以上、0.01mm
2以上、0.1mm
2以上、1mm
2以上、5mm
2以上、10mm
2以上、20mm
2未満、および、15mm
2未満のうちの少なくとも1つの断面積を有する、円形、および長方形のうちの少なくとも1つの断面形状を有する、並びに、ワイヤ、銅線、および編組線で作製された、うちの少なくとも1つの導体から巻かれている。
【0075】
一実施形態において、前記コイルは、空芯、軟磁性複合コア、絶縁磁心、積層コア、高透磁率磁心、および金属コア、のうちの少なくとも1つコアの周りに巻かれている。
【0076】
一実施形態において、前記コアは、0.2mm以上、0.5mm以上、1mm以上、5mm以上、10mm以上、1.5mm未満、10mm未満、15mm未満、および20mm未満、のうちの少なくとも1つの半径、並びに、0.5mm以上、5mm以上、10mm以上、15mm以上、約20mm〜30mm、および40mm未満のうちの少なくとも1つの長さ、のうちの少なくとも1つを有する。
【0077】
一実施形態において、前記装置は、漂遊磁界を減少させるためにコイルシステムに隣接して配置された少なくとも1つのシールドを含む。
【0078】
一実施形態において、前記少なくとも1つのシールドは、反磁性シールド、導電性シールド、各コイルに隣接して配置されたシールド、並びに、各コイルに隣接して配置されたシールドであって、各シールドは、0.2mm以上、0.5mm以上、約1mm、および1.5mm未満、のうちの少なくとも1つの半径を有する開口部を含むシールド、を含む。
【0079】
一実施形態において、前記装置は、ユーザによって装着されるように構成されたハウジングを含む。
【0080】
一実施形態において、前記ハウジングは、前記コイルシステムを収容する第1のコイルシステムハウジングと、信号処理コンポーネントを収容する第2の処理コンポーネントハウジングと、を含む。
【0081】
一実施形態において、前記装置は、前記入力センサ信号を少なくとも部分的に処理する信号プロセッサを含む。
【0082】
一実施形態において、前記信号発生器は、前記電気制御装置からの信号に従って制御された駆動信号を発生するドライバ回路と、前記駆動信号を用いて前記刺激信号を生成する各コイルのためのトリガ回路とを含む。
【0083】
一実施形態において、前記信号発生器は、前記トリガ回路が使用するための電荷を保存する高電圧容量性保存部を含む電源を含む。
【0084】
一実施形態において、前記信号発生器は、エネルギー回収回路を含む。
【0085】
一実施形態において、前記装置は、前記コイルを冷却する冷却システムを含む。
【0086】
一実施形態において、前記装置は、前記対象の反応を測定する反応センサを含み、前記電気制御装置は、前記少なくとも1つの刺激信号を生成するステップと、前記コイルアレイ内のコイルの位置を制御するステップと、のうちの少なくとも1つに、前記反応センサからの反応信号を使用する。
【0087】
一実施形態において、前記反応センサは、電気インピーダンス断層撮影センサを含む。
【0088】
一実施形態において、前記電気インピーダンス断層撮影センサは、前記ターゲット領域に近接する前記対象の組織と接触する複数の電極と、前記複数の電極のうちのいくつかに交流信号を印加する信号発生器と、複数の電極のうちの他の電極上の信号を感知する信号センサと、前記信号センサからの信号に従って前記ターゲット領域のマップを生成するように構成された一つ以上のインピーダンス処理装置と、を含む。
【0089】
一実施形態において、前記マップは、前記少なくとも1つのコイルの位置決め、および前記少なくとも1つのコイルに印加される信号の制御、のうちの少なくとも1つに使用される。
【0090】
一実施形態において、前記コイルシステムは、前記コイルアレイによって生成された漂遊磁界を受信するように構成された受信コイルと、前記受信コイルによって生成された電流を用いてバッテリを充電するために使用される充電システムと、を含む。
【0091】
一実施形態において、前記コイルシステムは、前記受信コイルを調整する同調回路を含む。
【0092】
一実施形態において、前記コイルシステムは、前記電気制御装置と通信して前記少なくとも1つの刺激信号に従って前記同調回路を制御する同調回路制御装置を含む。
【0093】
一実施形態において、前記電気制御装置は、前記コイルシステム内の複数のコイルの各々についてそれぞれの刺激信号を生成する。
【0094】
一実施形態において、前記変調電磁場は、前記対象のターゲット領域に、治療的刺激、および治療的阻害のうちの少なくとも1つを提供するように構成される。
【0095】
一実施形態において、前記ニューロモデュレーションは、パーキンソン病を治療するために構成され、前記ターゲット領域は、前記対象の視床下核と、前記対象の淡蒼球内節と、前記対象の腹側中間核と、前記対象の脚橋核と、を含む。
【0096】
一実施形態において、前記ニューロモデュレーションは、本態性振戦のための治療を提供するように構成され、前記ターゲット領域は、前記対象の腹側中間核を含む。
【0097】
一実施形態において、ニューロモデュレーションは、前記ターゲット領域が前記対象の淡蒼球内節である、ジストニアに対する治療を提供するように構成される。
【0098】
一実施形態において、前記ニューロモデュレーションは、強迫性障害の治療を提供するように構成され、前記ターゲット領域は、前記対象の腹側被膜/腹側線条体、前記対象の側坐核、および前記対象の視床下核、のうちの少なくとも1つを含む。
【0099】
一実施形態において、ニューロモデュレーションは、疼痛治療を提供するように構成され、前記ターゲット領域は、前記対象の一次運動野である。
【0100】
一実施形態において、ニューロモデュレーションは、てんかん治療を提供するように構成され、前記ターゲット領域は、前記対象の内部カプセルおよび視床の領域を含む。
【0101】
一実施形態において、前記ターゲット領域は、前記対象の脊髄を含み、前記ニューロモデュレーションは、難治性慢性疼痛、脊髄損傷、フェイルバック症候群、複合性局所疼痛症候群、狭心症、虚血性四肢痛、腹痛、難治性の疼痛状態、および過活動膀胱症候群、の少なくとも1つに対する治療を提供するように構成される。
【0102】
広範な一形態において、本発明の一態様は、ニューロモデュレーションを実行するための方法を提供することを目的とし、前記方法は、ソフトウェア命令に従って動作する電気制御装置を使用して、実行される前記ニューロモデュレーションを決定し、信号発生器に変調信号を生成させ、前記変調信号は対象のターゲット領域に変調電磁場を生成するように構成された少なくとも1つの軸方向コイルを含むコイルシステムに印加され、前記変調電磁場は前記ニューロモデュレーションを実行するように構成される、ステップを含む。
【0103】
本発明の広範な形態およびそれらのそれぞれの特徴は、関連しておよび/または独立して使用されることができ、別個の広範な形態への言及は限定することを意図しないことが理解される。さらに、本方法の特徴は、システムまたは装置を使用して実行することができ、システムまたは装置の特徴は、本方法を使用して実施することができることが理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0104】
本発明の様々な例および実施形態を、添付の図面を参照して以下に説明する。
【0105】
【
図1】
図1は、対象に感覚刺激を提供するための装置の一例の概略図である。
【0106】
【
図2】
図2は、対象に感覚刺激を提供するための方法の一例のフローチャートである。
【0107】
【
図3】
図3は、対象に感覚刺激を提供するための装置の特定の例の概略図である。
【0108】
【
図4A】
図4Aは、可聴感覚刺激を提供するための装置の物理的構成の一例の概略図である。
【0109】
【
図4B】
図4Bは、可聴感覚刺激を提供するための装置の物理的構成のさらなる例の概略図である。
【0110】
【
図5A】
図5Aは、視覚的感覚刺激を提供するための装置の物理的構成の一例の概略図である。
【0111】
【
図5B】
図5Bは、対象に視覚刺激を提供するための装置の物理的構成の第2の例の概略図である。
【0112】
【
図6】
図6は、対象に感覚刺激を提供するための方法の特定の例のフローチャートである。
【0113】
【
図7】
図7は、モデルを生成する方法の一例のフローチャートである。
【0114】
【
図8A】
図8Aは、コイルによって生成される照射野に対する反磁性シールドの影響を示す概略的なポジティブおよびネガティブ画像である。
【
図8B】
図8Bは、コイルによって生成される照射野に対する反磁性シールドの影響を示す概略的なポジティブおよびネガティブ画像である。
【0115】
【
図9A】
図9Aは、一例のコイルシステム構成の概略図である。
【0116】
【
図9B】
図9Bは、
図9Aのコイルシステムを用いて対象に発生させた電場を示す概略図である。
【
図9C】
図9Cは、
図9Aのコイルシステムを用いて対象に発生させた電場を示す概略図である。
【0117】
【0118】
【
図10B】
図10Bは、
図10Aのコイルシステムによって生成される電磁場を示す概略的なポジティブおよびネガティブ画像である。
【
図10C】
図10Cは、
図10Aのコイルシステムによって生成される電磁場を示す概略的なポジティブおよびネガティブ画像である。
【0119】
【
図11A】
図11Aは、コイルシステム構成のさらなる例、および結果として生じる電磁場の模式的なポジティブ画像およびネガティブ画像である。
【
図11B】
図11Bは、コイルシステム構成のさらなる例、および結果として生じる電磁場の模式的なポジティブ画像およびネガティブ画像である。
【0120】
【0121】
【
図12A】
図12Aは、コイルシステム構成のさらなる例、および結果として生じる電磁場の模式的なポジティブおよびネガティブ画像である。
【
図12B】
図12Bは、コイルシステム構成のさらなる例、および結果として生じる電磁場の模式的なポジティブおよびネガティブ画像である。
【0122】
【
図13A】
図13Aは、例示的な円錐軸方向コイルによって生成される電磁場の例を示す模式図である。
【
図13B】
図13Bは、例示的な円錐軸方向コイルによって生成される電磁場の例を示す模式図である。
【
図13C】
図13Cは、例示的な円錐軸方向コイルによって生成される電磁場の例を示す模式図である。
【0123】
【
図13D】
図13Dは、複数の円錐軸方向のコイルを含むコイルアレイによって生成される電磁場の例を示す模式図である。
【
図13E】
図13Eは、複数の円錐軸方向のコイルを含むコイルアレイによって生成される電磁場の例を示す模式図である。
【0124】
【
図13F】
図13Fは、円錐軸方向のコイルのさらなる例によって生成される電磁場の一例を示す模式図である。
【0125】
【
図14A】
図14Aは、例示的な凹曲軸方向のコイルによって生成される電磁場の例を示す模式図である。
【
図14B】
図14Bは、例示的な凹曲軸方向のコイルによって生成される電磁場の例を示す模式図である。
【0126】
【
図15】
図15は、例示的な凸曲軸方向のコイルによって生成される電磁場の一例を示す模式図である。
【0127】
【
図16A】
図16Aは、高透磁率コアを用いる例示的な円筒状軸方向コイルによって生成される電磁場の例を示す模式図である。
【
図16B】
図16Bは、高透磁率コアを用いる例示的な円筒状軸方向コイルによって生成される電磁場の例を示す模式図である。
【0128】
【
図16C】
図16Cは、高透磁率コアを用いない例示的な円筒状軸方向コイルによって生成される電磁場の例を示す模式図である。
【
図16D】
図16Dは、高透磁率コアを用いない例示的な円筒状軸方向コイルによって生成される電磁場の例を示す模式図である。
【0129】
【
図16E】
図16Eは、高透磁率コアを用いない例示的な円錐形軸方向コイルによって生成される電磁場の例を示す模式図である。
【
図16F】
図16Fは、高透磁率コアを用いない例示的な円錐形軸方向コイルによって生成される電磁場の例を示す模式図である。
【0130】
【
図17A】
図17Aは、円筒状の軸方向コイルを含むコイルアレイの一例によって、蝸牛に発生する電磁場の一例を示す概略図である。
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【
図19B】
図19Bは、漂遊磁界リカバリーシステムを組み込んだ、対象に感覚刺激を提供するための装置の特定の例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0139】
次に、
図1を参照して、対象に感覚刺激を与えるための装置の一例を説明する。
【0140】
本例において、本装置は、刺激入力を示す入力信号を取得する入力部101を含む。入力部の性質は、好ましい実装形態に応じて変わり、多種多様な異なる入力部を使用することができる。一例として、入力部は、刺激入力を感知するように動作するセンサの形態であり、例えば、マイクロフォンまたはイメージングデバイスを使用して、可聴または視覚刺激入力を捕捉する。あるいは、入力部は、以下でより詳細に説明するように、携帯電話などといった遠隔装置から入力信号を受信するトランシーバとすることができる。
【0141】
本装置は、1つ以上のコイル111を含んでいるコイルシステムに結合された信号発生器107を含む。信号発生器の性質は、好ましい実装形態に応じて変わるが、一例において、信号発生器は、コイルに印加される変化する電流信号を発生するように構成された電流源である。これは、増幅器または同様のものを含むことができ、または、以下により詳細に説明するように、コイルを通して放電することができる容量性保存を含むことができる。コイルシステムの構成は、提供されるべき感覚刺激に応じて変化するが、一般的にこれは、任意で、それぞれのコア上に提供される、スパイラル、複数層ヘリカルコイルなどといった複数のコイルを含み、さらなる例は以下でより詳細に説明される。
【0142】
本装置は、さらに、一般的にメモリ等に記憶されたソフトウェア命令に従って動作し、入力部101から入力信号を受信し、生成された信号を制御するように動作する電気制御装置103を含む。
【0143】
電気制御装置の性質は、好適な実装形態に応じて変化するが、一例として、電気制御装置は、入力部から受信した入力信号を処理し、入力信号を分析し、信号発生器を制御することができる集積回路または同様のものである。しかしながら、制御装置は、マイクロプロセッサ、マイクロチッププロセッサ、論理ゲート構成、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)といった実装論理に任意で関連付けられるファームウェア、または任意の他の電子デバイス、システムまたは構成といった任意の電子処理デバイスであってもよいことも理解されるのであろう。
【0144】
次に、
図2を参照して、
図1の装置の動作例を説明する。
【0145】
本例において、ステップ200では、入力信号は、知覚入力を感知することによって、またはコンピュータシステム、携帯電話等といった遠隔装置から知覚入力を示す信号を受信することによって、入力部101によって得られる。
【0146】
ステップ210で、制御装置103は、入力信号を分析して、コイルシステムによって生成される必要がある場(複数可)を確認する。実行される分析の性質は、好ましい実装形態に応じて変化するが、一般的にこれは異なる周波数における信号の電力に関する特徴のような、信号中の特定の特徴を識別することを含み、これらは次に、ステップ220において、信号発生器を制御するために直接的または間接的に使用され、それによって、信号に一つ以上の刺激信号を生成させる。
【0147】
次にステップ230で、刺激信号がコイルシステムに印加され、コイルシステムに刺激電磁場を発生させる。この点に関して、刺激電磁場は、対象のターゲット領域において発生され、それがターゲット領域において感覚ニューロンを活性化するのに十分なほど強力であり、それによって刺激入力に応じて対象を刺激する。
【0148】
さらに、コイルシステムによって生成される磁場に対する適切な制御は、感覚ニューロンの個々のグループを標的とするための刺激磁場の局在化を可能にし、次いで、異なる反応が得られることを可能にする。例えば、これは、蝸牛と同様の方法で、人工内耳の異なるニューロンを刺激するために使用することができ、それによって、異なる可聴刺激を再生することができる。
【0149】
従って、上記のアプローチは、対象のターゲット領域において必要とされる強度の刺激場を使用して、感覚ニューロンを非侵襲的に刺激するために電磁場を使用する。
【0150】
この点に関して、コイルによって生成される磁場は、ビオ・サバールの法則によって与えられる:
【数1】
【0151】
ここでBは、電流Iを運ぶコイルによって生成される磁束密度であり、μは、物体の透磁率であり、Rは、電線から磁場が計算される点までの変位ベクトルである。
【0152】
電流は、コイル内に誘導され、コイルは、標的とされている組織の上方に配置され、磁場の変化をもたらす。その後、変化する磁場は、ファラデーの法則で与えられる電場をつくる:
【数2】
【0153】
組み合わせると、2つの方程式は、次のようになる:
【数3】
【0154】
ここで、Hは、磁場強度である。磁場は、磁気ベクトルポテンシャルを用いて計算することもできる:
【数4】
【0155】
ここで、Aは磁気ベクトルポテンシャルである。式は次のようになる:
【数5】
【0156】
ここで、
【数6】
は、静電ポテンシャルであり、ラプラス方程式
【数7】
を満たす。
【0157】
誘導電界は、2つの部分に分割することができる。
【数8】
および
【数9】
である。
第1の式は、コイルによって誘導される磁場であり、第2の式は、組織界面における電荷の蓄積による磁場である。
【0158】
ニューロンは、一般的にイオンチャンネルと呼ばれる埋め込まれたタンパク質構造をその中に含有する脂質二重層膜を含有する。これらのイオンチャンネルは、細胞内環境(細胞質)を細胞外環境に接続するゲートウェイとして作用する。これら2つの環境は、Na
+、K
+、Ca
2+、Cl
−や他の有機イオンのような多くの荷電イオン種を含有しており、その濃度は、イオンの種類や細胞内外での存在に応じて変化する。これらの異なる濃度に起因して、細胞外液と細胞質との間に、結果として生じる電位差が存在する。一般的に、脂質二重層の細胞外側に正電荷が蓄積し、その細胞質側に負電荷が蓄積する。これにより両側間に電位差が生じ、細胞質は、細胞外液より60〜70mV程度低い。これらのイオン濃度と電位差は、ニューロンが受動的、すなわち静止状態にある場合のものであり、この電位差を平衡電位と呼ぶ。イオンXのこの平衡電位は、ネルンスト方程式によって与えられる。
【数10】
【0159】
ここで、Rは、気体定数であり、Tは、ケルビンで与えられる温度であり、zは、イオンの価数であり、Fは、ファラデー定数であり、
【数11】
および
【数12】
は、それぞれ細胞の外部および内部のイオンの濃度である。
【0160】
ネルンスト方程式からの表現は、一つのタイプのイオン種による膜電位への寄与のみを提供する。組み合わせるとき、多種多様なイオン種によるポテンシャルは、ゴールドマン方程式によって与えられる。
【数13】
【0161】
ここで、
【数14】
は、速度cm/sの単位であり、そのイオンに対する膜の透過性を示す。
【0162】
イオンチャネルは、電圧、機械的力、光、および特定の有機分子のような多種多様なトリガーのために開閉することができ、それらの開閉は、活動ポテンシャルと呼ばれる神経伝達の基本信号を含む。例えば、巨大イカ軸索の閾値は−70mVの静止電位の正の側にあり、すなわち、0mVに向かって移動する必要がある。
【0163】
いったん閾値に達すると、ナトリウムチャンネルが開き、ニューロンのさらなる脱分極を導く。これは、膜電位における急激な上昇を結果として起こす。これは、カリウムチャンネルが開くことを誘発し、細胞質中により多くのカリウムイオンが存在するため、カリウムイオンの流出が存在し、これは、細胞を再び分極させる。ナトリウムチャンネルとカリウムチャンネルの閉鎖の間には遅れがあり、その結果、細胞は過分極し、すなわち−70mV未満になる。その後、イオンポンプを介して静止膜電位に戻る。イオンチャンネル開閉のこのカスケードは、活動ポテンシャルと呼ばれる膜電位の独特の波形をもたらす。
【0164】
神経刺激の場合、刺激方法は、活動ポテンシャルを誘発することを目的とする。電気的および電磁的刺激の場合、ニューロン組織の活性化は、ニューロンとそれを取り囲む電場との間の相互作用による。神経線維を横切る電場は、脂質二重層を横切るさらなる電荷の蓄積を引き起こす。これは、電位差につながり、一旦、閾値に達すると、活動ポテンシャルの開始につながる。電流ベースの刺激の場合、刺激電流による膜を横切るこの電圧変化は、以下の式によって与えられる:
【数15】
【0165】
ここで、Vは、電圧、I
ionは、適切な膜モデルから計算できるイオン電流、I
stimulus−は、活性化電流、Cmは、膜静電容量である。電場に関して、ニューロン構造は、ホジキン・ハクスレーモデルによってモデル化でき、それらの反応は、ケーブル方程式によって研究できる。
【数16】
【0166】
ここで、
【数17】
は、誘導電場の軸方向成分であり、
Vは、膜貫通電圧であり、
【数18】
は、ケーブルの空間定数であり、
【数19】
は、その時間定数である。
【0167】
しかしながら、この方程式は、イオンチャンネルダイナミクスを考慮に入れていない。そのために、この式は以下のように変更することができる。
【数20】
【0168】
ここで
【数21】
であるとき、aは、軸索半径であり、g
xは、イオンXに対するイオンチャンネルの伝導力である。
【0169】
神経方程式において、A(ベクトルポテンシャル)の値は、適切に構成されたコイルシステムを使用することによって最大化される。
【0170】
したがって、例えば、可聴である知覚入力の場合、蝸牛の体液が高度に分散性であるため、蝸牛の内側では、電場は高くない。この分散は、それらの高い導電率のために起こる。その結果、人工内耳に類似した機構内で、聴覚神経線維を刺激することができる電流が蝸牛内に存在するが、電流源は、外科手術によって蝸牛内に配置された電極によって注入される電流の代わりに、体外から発生する電磁場を変化させることになる。
【0171】
従って、上述の装置は、対象のターゲット領域に刺激電磁場を発生させるためにコイルシステムを利用することによって作動する。この場は、感覚ニューロンを選択的に活性化し、それによって刺激入力に従って対象を刺激する。コイルシステムを対象の外部に設けることができるため、これにより、インプラントされた装置を必要とせずに対象の感覚刺激が可能になる。これは、一時的な使用を可能にすること、残留感覚知覚を損なうことを回避することなどを含み、インプラントされた装置に関連する欠点のいくつかを回避する。
【0172】
本技術は、網膜神経節ニューロン、視神経、外側膝状核または視覚野を刺激することにより視覚感覚入力を生成することを含み、広範囲の異なる応用において使用することができる。同様に、可聴である知覚入力は、スパイラル神経節ニューロンを刺激することによって達成することができる。嗅球のニューロンを適切に刺激して嗅覚異常(嗅覚障害)のある対象の嗅覚を誘発すること、味覚経路のニューロンを刺激して味覚を誘発すること、平衡関連疾患を経験している人の前庭ニューロンを刺激することによっても同様の嗅覚刺激を発生させることができた。本装置は、触覚を誘発するために体性感覚皮質上で使用することもできる。
【0173】
以下により詳細に記載されるように、装置は、より一般的に神経刺激を提供するように適合され得、そして感覚刺激に限定されないこともまた理解される。
【0174】
ここで、いくつかのさらなる特徴を説明する。
【0175】
前述したように、入力部は、聴覚または視覚刺激入力を感知するマイクまたは撮像装置などの入力センサを含むことができ、味覚、臭いまたはタッチ入力を感知するために他の適切なセンサが使用される。
【0176】
代わりとして、スマートフォン、コンピュータシステムなどといった遠隔装置から入力信号を受信する、Wi−FiまたはBluetoothトランシーバといったワイヤレストランシーバを提供することができる。これを使用すると、ノイズの多い環境で音を検出したり、環境ノイズを迂回したり、ユーザがリモートデバイスから直接音信号を受信できるようにする試みに関連する問題を回避できる。これは、対象が電話会話に参加したり、音楽を聴いたりすることを可能にするために、可聴である背景で使用することができる。同様の技術は例えば、プレゼンテーション、仮想現実供給等といったコンピュータコンテンツに基づく直接的な視覚刺激を可能にするために、他の感覚入力にも使用することができる。
【0177】
一般的に、コイルシステムは、刺激電磁場を最適化するために、また、好ましくはターゲット領域内の磁場強度を最大化しつつ、ターゲット領域外の刺激電磁場の大きさが最小化されるように浮遊磁場を最小化するために構成される。これが達成される方法は、好ましい実装に応じて変化するが、これは一般的に少なくとも2つのコイル、少なくとも3つのコイル、少なくとも4つのコイル、および任意で10個未満または8個未満のコイルを含み、任意で一つ以上の一次コイルおよび一つ以上の二次コイルを含むコイルシステムを使用することを含む。しかし、これは必須ではなく、任意の数のコイルを使用することができることが理解されよう。
【0178】
複数のコイルの使用は、刺激電磁場が複数の電磁場の重ね合わせを使用して生成されることを可能にし、複数の電磁場の各々は、それぞれのコイル、または所与のコイル内のそれぞれの巻線を使用して生成される。場の重ね合わせを使用することは、それぞれの個々の場が、より低い大きさを有することを可能にし、十分に強い刺激電磁場により、場が重なり合い、建設的に干渉するターゲット領域においてのみ生成されるので、特に有利である。しかしながら、不均一な電磁場を生成する、および/または一連の電磁場を生成するなどといった、場生成のための他の技術を使用することができる。後者の場合、場は、急速な配列で発生させることができ、そのため、ターゲット領域の電場は、さらなる場が印加される前に完全には減衰せず、電場は、結合して必要な活性化ポテンシャルを発生させる。
【0179】
本コイルシステムはさらに、ターゲット領域上の各コイルからの電磁場を焦点を合わせるように配置されたコイル形状を有する。これは、一般的にターゲット領域に位置する軸の周りに円周方向に間隔を置いて配置された複数のコイルを設けることを含み、コイルの端部がターゲット領域に対向するように、コイルが軸に対して一つの角度で配置される。さらに中心コイルを軸の位置に設けることもできる。この構成は、ターゲット領域の方向および深さにおける刺激電磁場の強度を最大化する。しかしながら、追加的におよび/または代替的に、複数のコイルのうちの異なるコイルをターゲット領域の異なる部分に焦点を合わせることができ、どのコイルが起動されるかに応じて異なる感覚反応をトリガすることができることも理解されるのであろう。
【0180】
一例において、コイルがハウジングに移動可能に取り付けられ、コイル位置を動的に制御することを可能にし、これにより、例えば着用者に対するウェアラブルデバイスの動きを弱めるために、場がターゲット領域に集中することを確実にすることができる。さらに、および/または代替として、コイルの位置および向きを含む物理的構成は、一般的にコイルが対象のターゲット領域に正確に焦点を合わされた刺激電磁場を生成することを確実にするために、対象の3Dスキャン、インピーダンス断層撮影マッピングなどに基づいて決定される。
【0181】
電磁場の強度および焦点は、形状、巻線数、およびワイヤ直径を含む、個々の各コイルの幾何学的形状にも依存する。
【0182】
コイルは、一般的にコアに巻かれたスパイラルの多層ヘリカルコイルを含むが、コイルシステムの特定の構成およびターゲット領域の位置に応じて、異なる構成のコイルを使用することができる。例えば、コイルは、背中合わせの先細りコイル、8つのコイルの図形、バタフライコイル、フラットコイル、スパイラルコイル、ヘリカルコイル、多層ヘリカルコイルなどといった、二重ローブコイルを含む円錐形コイルを先細りさせたコイルを含むことができる。コイルは、空芯、軟鉄または磁性複合コア、金属コア、絶縁または積層コア、高透磁率(一般的に10000H/m以上)等といったコアに巻くことができる。コアは、結果として生じる電磁場に焦点を当てるおよび/または強化するように作用することができ、強固に焦点を当てる場を生成するために、通常、少なくとも0.2mm、少なくとも0.5mm、約1mmおよび1.5mm未満、ならびに少なくとも0.5mm、少なくとも5mm、少なくとも10mm、少なくとも15mm、約20〜30mmおよび40mm未満の長さを有する。
【0183】
一例において、少なくとも1つのコイルの少なくとも1つの巻線は、少なくとも0.2mm、少なくとも0.5mm、少なくとも1mm、少なくとも5mm、少なくとも10mm、一般的には1.5mm未満、10mm未満、15mm未満、および20mm未満である内半径を有する。同様に、コイルは、一般的に少なくとも5mm、少なくとも8mm、少なくとも10mm、少なくとも20mm、少なくとも300mm、50mm未満、および一般的には60mm未満の外側半径を有する。これらの寸法は、全体的なコイル寸法が過度に大きくなり、結果として生じるコイルシステムを使用する観点から非実用的になるのを避け、一方で、所要の電界強度を提供するのに適していることが分かった。
【0184】
別の例において、本コイルシステムが少なくとも1つの軸方向コイルを含む。軸方向コイルは、一般的にコイル形状の軸線に沿って延在する複数の導体を含み、その軸線に少なくとも部分的に非平行な方向に延在する戻り経路を有し、その結果、コイルは、ターゲット領域内に電場を生成する。具体的には、この配置のコイルの場合、生成される主な場は、コイル軸と一直線に並んだコイルから外向きに延びる電場であり、これはターゲット領域において、より焦点を合わされるおよび/またはより高い強度の磁場を生成するのを助けることができる。従って、ターゲット領域と整列した軸を有するコイルを位置決めすることによって、これを用いてターゲット領域内に電場を作ることができる。
【0185】
コイル軸方向コイルは、一般的にコイル幾何学形状の軸線に沿って延在する複数の導体を含み、コイル幾何学形状は、円錐、半球、凹状半球、凸面半球または円筒である形状を有し、例は、以下により詳細に説明される。
【0186】
コイルは、少なくとも0.001mm
2、少なくとも0.01mm
2、少なくとも0.1mm
2、少なくとも1mm
2、少なくとも5mm
2、少なくとも10mm
2、約0.05mm
2、20mm
2未満、および15mm
2未満の少なくとも1つの断面積を有する導線から巻き取られる。それ自体の導体の断面積は、電界強度にほとんど影響を及ぼさないが、より小さな断面積の導体を使用すると、巻線の数が多くなり、結果として生じる電磁場の強度が増大する可能性がある。しかしながら、導体が必要な電流を流すことができるようにすることで、これをバランスさせる必要がある。加えて、導体は、円形または矩形形状を有することができ、後者は、所与の巻線構成に対して導体密度を最大化するのを補助することができる。導体は、ワイヤ、銅ワイヤ、編組リッツワイヤ等といった編組ワイヤから作ることができる。
【0187】
さらなる例において、コアは、対象に最も近いコアの端部のほぼ内側に向かって先細りすることができ、これは生成された電磁場をさらに焦点を合わせるのを助けることができ、次いで、漂遊磁界を最小限に抑えるのを助けることができる。さらなる集束は、コイルシステムに隣接して配置された反磁性材料または導電材料から形成されたシールドの使用を通して得ることができる。シールドは、単一のシールドを含むことができるが、より一般的にアレイ内の各コイルに対してそれぞれのシールドを含み、シールドは、各コイルに隣接して配置され、少なくとも0.2mm、少なくとも0.5mm、約1mmおよび1.5mm未満の半径を有する開口部を含む。シールドはまた、外部の漂遊磁界を減少させるために使用され得、これは、装置の有用性を補助し得る。
【0188】
さらなる例において、漂遊磁界は、電界からエネルギーを回収することによって減衰させることができ、この電界は次に、例えばバッテリを充電することによって、装置に少なくとも部分的に電力を供給するために使用することができる。この例において、システムは、コイルアレイによって生成された漂遊磁界を受信するように構成された受信コイルと、受信コイルによって生成された電流を使用してバッテリを充電するために使用される充電システムとをさらに含む。
【0189】
受信コイルが漂遊磁界からエネルギーを除去する能力は、受信コイルのインピーダンスおよびコイルアレイによって生成される場の周波数に依存するだろう。したがって、一例において、本システムは、受信コイルを調整し、それによって、漂遊磁界からのエネルギーの回復を最適化する同調回路を含む。1つの好ましい構成において、本システムは、電気制御装置と通信する同調回路制御装置を含む。この例において、同調回路制御装置は、少なくとも1つの刺激信号に従って同調回路を制御し、その結果、受信コイルおよび関連する回路は、コイルアレイによって現在生成されている場に対して最適化される。
【0190】
上述の構成は、十分に強いおよび焦点を合わせた電磁場を生成するが、物理的な観点からは過度に大きくないコイルをもたらし、これらを対象が着用されるハウジング内に快適に収容することを可能にすることが見出された。
【0191】
本装置は、一般的にユーザによって着用されるように構成されたハウジングをさらに含む。一例において、ハウジングは、コイルシステムを収容する第1のコイルシステムハウジングと、制御装置といった信号処理構成要素と、充電式または交換式バッテリといった電源とを収容する第2の処理構成要素ハウジングとを含む2つの部分で形成される。
【0192】
ハウジングは、一般的に水または他の汚染物質の侵入を防ぐために密封され、快適さのために対象に適合するように構成されてもよい。例えば、刺激可聴反応のためのシステムの場合、ハウジングは、一対のヘッドホンと同様のフォームファクタを有することができ、耳に快適に装着するためのクッションを含むことができ、耳に装置をしっかりと位置決めするために、ストラップ、ヘッドバンド、および/または両面接着テープといった固定手段を含むことができる。
【0193】
本システムはまた、例えばフィルタリング等を実行するために、入力信号を少なくとも部分的に処理するデジタル信号プロセッサ(DSP)を含むことができ、これは、後続のダウンストリーム処理を低減するのに役立つことができる。
【0194】
コイルによって誘導される電磁場は、ニューロンの刺激に直接関与する。電磁パルスは、頭蓋骨を通過しなければならないため、これはコイルから出る強力な電磁場に対する必要条件を作り出す。従って、一例において、信号発生器は、制御装置からの信号に従って制御された駆動信号を発生する駆動回路と、駆動信号を用いて刺激信号を発生する各コイルのためのトリガ回路とを含む。トリガ回路は、大電流がトリガ回路によってコイルに放電されることができるように、電荷を保存する高電圧容量性保存部に結合することができる。一例において、容量性ストレージは、2kVまで充電することができ、任意で7.5kVまでの電圧定格を有する。この高電圧の結果として、コイルを流れる電流は、数ミリ秒以内に最大8000Aに達することができ、それによって、高強度の電磁場を発生させることができるが、コイルの設計によっては、より低い電流を使用することができることが理解されるのであろう。
【0195】
本装置は、コイルを通る放電に続いて迅速な再充電を可能にするエネルギ回収回路を含むことができる。電力供給回路は、コンデンサバンクのコイル内への放電を可能にするためのスイッチとして実行するMOSFETs、サイリスタおよびIGBTのような電力電子部品を含むことができ、100ms未満で最大500Jのエネルギーを伝達することができる。本装置はまた、刺激信号パルスの形状を可能にする回路を含むことができる。
【0196】
一例において、信号発生器は、コイルを冷却する冷却システムを含む。冷却システムは、任意の適切な形態とすることができ、コイルから熱を伝導する放射フィンなどといった受動冷却システムを含むことができ、および/またはコイルに隣接して設けられた冷却パイプを通して熱伝達媒体を循環させる液体ベースの冷却システムを含むことができる。
【0197】
本装置は、対象における反応を測定する反応センサを含むことができ、制御装置は、反応センサからの反応信号に従って、刺激信号を生成するか、またはコイルの位置を制御する。したがって、本センサは、刺激信号を動的に調節すること、またはアレイ内のコイルの位置を調節するためにアクチュエータを制御することを含んでいるシステムの動作を改善するのを助けるフィードバックを提供するために使用することができる。反応センサの性質は、好ましい実装に応じて変化することができ、結果として生じる電場または電磁場を感知するためのセンサ、ニューロン反応を感知するセンサ、例えば刺激入力に対する反応を確認するためのユーザ入力コマンドを受信するセンサなどを含むことができる。
【0198】
一例において、反応センサは、ターゲット領域内またはその周囲の組織インピーダンスを測定する電気インピーダンス断層撮影センサを含む。一例において、インピーダンス断層撮影センサは、ターゲット領域に近接する対象の組織と接触する複数の電極と、複数の電極のうちのいくつかに交流信号を印加する信号発生器とを含む。信号センサは、複数の電極のうちの他の電極上の電気信号を測定するために使用され、一つ以上のインピーダンス処理装置は、測定された信号に従ってターゲット領域のマップを生成するように構成されたものを分析するために提供される。このようなインピーダンスマップの生成は、従来技術として知られており、したがって、詳細には説明しない。いずれにせよ、一旦、作成されると、マップは、少なくとも一つのコイルを位置決めするために、および/または少なくとも一つのコイルに印加される刺激信号を制御するために使用され得、それによって、システムの動作を最適化する。
【0199】
同じ刺激信号を各コイルに印加することができるが、より一般的に制御装置は、複数のコイルの各々に対してそれぞれの刺激信号を生成し、それによって、重ね合わされた場に対する追加の制御を提供し、感覚ニューロンの活性化に対するより洗練された制御を可能にし、次いで、感覚刺激の質を改善する。具体的にこれは、各コイルに印加される刺激信号の大きさ、周波数、および/または位相を調整することを含むことができ、結果として生じる刺激電磁場のパラメータを調整することを可能にする。特に、これは結果として生じる刺激の場のための異なる焦点を調節するために使用され得、これは次に、蝸牛内の異なるニューロンが活性化されることを可能にし、次に、異なる可聴反応が誘導されることを可能にする。同様のアプローチは、他の刺激入力に対しても使用され得ることが理解されるであろう。
【0200】
さらに、装置は、対象に感覚刺激を提供するための出力を含むことができる。例えば、可聴刺激入力の場合、出力は、スピーカを含むことができ、ユーザに音を再生することができる。これは、刺激装置プロセスの有効性、および感覚入力を正確に知覚する対象の能力を増加させることができる任意の残留感覚能力を利用するために実行することができる。
【0201】
制御装置が信号発生器を制御する方法は、好ましい実装に応じて変わるであろう。一般的には、制御装置が入力信号を分析して、一つ以上の特徴を決定し、次いで、これらの特徴は、信号発生器を制御し、刺激信号を生成するために使用される。
【0202】
この特徴は、選択された特徴に応じて、既知の技術を使用して抽出することができる。一例において、特徴は、異なる周波数における音響信号のパワーに関連する特徴、異なる周波数における音響信号のパワーの変化に関連する特徴、異なる周波数における音響信号のパワーの変化率に関連する特徴、時間領域特徴、スペクトル特徴、ケプストラム特徴、ウェーブレット特徴、周波数係数、メル周波数ケプストラム係数(MFCC)およびガンマトーン周波数ケプストラム係数(GFCC)、GFCCデルタおよびGFCCダブルデルタ特徴のうちの任意の一つ以上の特徴を含むことができる。しかしながら、他の技術と同様に、他の特徴を使用することができることが理解されるであろう。
【0203】
また他の信号の前処理は、音響信号をスケーリングによって前処理するために、例えば、特徴を強調または非強調するために、または、例えば、信号をノイズ特徴に調整するためにホワイトノイズを追加することによって、実行可能であることが理解されよう。
【0204】
また異なる特徴および関連する処理は、他の刺激入力のために使用され得ることも理解されるであろう。例えば、視覚刺激の場合において、Perona−Malik拡散といった異方性拡散技術を用いて、画像コンテンツの重要な部分に影響を与えることなく画像ノイズを減少させることができるだろう。隠れマルコフモデルは、多変量信号を添加したサブセットに分離するために使用することができ、点広がり関数、適応フィルタリング、線形フィルタリングなどを使用する画像回復も使用することができる。さらに、ニューラルネットワーク、画素化、主成分分析、自己組織化マップ、およびウェーブレット分析も使用することができる。
【0205】
画像に埋め込まれた信号の検出処理のために、パターン認識は、変換方法、特徴相関、整合フィルタリング等を用いて実行され得る。人間の視覚予測圧縮のための画像を効率的に表現するために、直交分解とフーリエ表現を用いることができた。エッジ抽出といった他の符号化技術、およびオブジェクト認識のためのパターン特徴コードは、空間構造のために使用されることができる。更に、視覚システムは、翻訳、サイズ変動および回転のために、不変性コード、円形調和分解、対数極座標法等のといった特徴を用いることができる。
【0206】
一例において、制御装置は、特徴および少なくとも1つの計算モデルを使用して、一つ以上の刺激信号を生成する。この場合、計算モデルは、特徴と異なる刺激信号との間の関係を具体化し、様々な方法で導出することができる。例えば、本システムは、異なる特徴を使用して生成された参照刺激信号に反応して、一つ以上の参照とする対象、または対象について測定された参照反応を検査することができる。さらに、および/または代替として、本システムは、対象の3Dスキャンから得られた対象の少なくともターゲット領域のモデルを検査することができ、それによって、対象のターゲット領域内の刺激場の正確なターゲットを可能にする。
【0207】
したがって、一例において、参照反応が参照刺激信号に反応して、複数の対象および/または現在の対象から収集され、これらは異なる特徴と相関することが理解されるであろう。これは、異なる刺激信号の効果が理解されることを可能にし、その結果、異なる刺激信号が異なる入力信号に基づいて適用され得、それによって、所与の刺激入力について、必要とされる感覚反応が対象内で誘導されることを可能にする。1つの特定の例において、ベースモデルは、一般的な母集団の反応に基づいて確立することができ、次いで、これは例えば、検査の結果、ならびに対象からのフィードバックを考慮に入れて、対象ごとにカスタマイズされ、そして、結果として得られる場は、特定の対象に対して最適化される。
【0208】
モデルの導出は、適切な統計解析を用いて手動で行うことができるが、実際には機械学習アルゴリズムを用いてモデルを導出する。特に、これは一般的に異なる刺激信号について得られた基準反応を利用することによって実行され、これは計算モデルを訓練するために使用され、その結果、モデルは所望の刺激反応を生成するために使用されるべき刺激信号を反映する。実行されるモデルおよびトレーニングの性質は、任意の適切な形態であり得、任意の一つ以上の決定木学習、ランダムフォレスト、ロジスティック回帰、関連付けまたは学習、人工ニューロンネットワーク、深い学習、誘導論理プログラミング、サポートベクトルマシン、クラスタリング、ベイズネットワーク、強化学習、表現学習、類似性および距離学習、遺伝的アルゴリズム、ルールベースの機械学習分類子システムなどを含み得る。このようなスキームは既知のため、これらについてはこれ以上詳細には説明しない。
【0209】
前述したように、上記の構成は、対象への感覚刺激の提供を参照して説明されてきたが、本装置は、ニューロモデュレーションをより広範に提供するために使用され得る。この点に関して、ニューロモデュレーションを提供する能力は、ターゲット領域において、より焦点を合わせた、および/またはより高い強度の場を生成し得る軸コイルを使用するとき、強化される。
【0210】
本例において、本装置は、再び、信号発生器と、少なくとも1つの軸方向コイルを含むコイルシステムとを含むことができ、これは一般的にコイル形状の軸に沿って延在する複数の導体を含み、任意で、円錐、半球、凹状半球、凸面半球、円柱などの形状のコイル形状を有する。ニューロモデュレーションが実行されることを決定し、次いで、信号発生器に変調信号を生成させ、その変調信号がコイルシステムに印加されて、それによって、対象のターゲット領域内に変調電磁場を生成し、その変調電磁場が、ニューロモデュレーションを実行するように構成される電気制御装置を提供することができる。
【0211】
したがって、この例において、本装置は、刺激入力を示す入力信号を取得する入力部を必ずしも必要とせず、そうでなくても、
図1に関して上述した装置とほぼ同様であり、
図2のステップ200および210に関して上述したように、入力信号を受信し、分析する必要がないにもかかわらず、ほぼ同様に動作することが理解されよう。
【0212】
代わりに、実行されるべきニューロモデュレーションは、他の方法で決定することができる。例えば、ワイヤレストランシーバモジュールといった入力部は、コンピュータシステム、スマートフォン等といった遠隔処理デバイスによってニューロモデュレーションを実行されることを可能にするために、使用される。別の例において、これは、センサから受信したセンサ信号、またはユーザインターフェースを介して提供されたユーザ入力に基づいて実行され得、感知されたパラメータまたはユーザ入力がニューロモデュレーションを起こすことを可能にする。一つの特定の例において、制御装置は、例えば、感知されたパラメータに基づいて、記憶に格納された複数の定義された変調配列のうちの一つを選択するように構成することができ、デバイスが異なる配列でプログラムされることを可能にし、必要に応じて適切な配列が選択される。
【0213】
本装置は、前述したものと同様の特徴を含むことができる。例えば、本装置は、コイルアレイ内に複数のコイルを使用することができ、コイルシステムは、複数のコイルのそれぞれからの電磁場をターゲット領域および/またはターゲット領域の異なる部分に焦点を合わせるように配置されたコイル形状を含む。
【0214】
本コイルシステムは、軸の周囲に円周方向に間隔をあけて配置された複数のコイルを含むことができ、軸はターゲット領域に位置し、コイルの端部がターゲット領域と対向するようコイルが軸に対して角度を有して配置されており、任意で、軸の位置に設けられた1つのコイルを含む。
【0215】
コイルは、様々な異なる断面積を有する導体から巻くことができ、ワイヤ、銅線、編組線などから作ることができる。コイルは、空芯、軟磁性複合コア、絶縁磁心、積層コア、高透磁率磁心、金属コアまたはその他のコアといったコアの周りに巻くことができる。
【0216】
本装置は、漂遊磁界を減少させるためにコイルシステムに隣接して配置された少なくとも1つのシールドを含むことができ、および/または漂遊磁界からエネルギーを回収するためのエネルギー回収システムを含むことができる。
【0217】
本装置は、ユーザによって装着されるために構成されたハウジングを含んでよい。
【0218】
本装置は、制御装置からの信号に従って制御された駆動信号を生成する駆動回路と、駆動信号を用いて刺激信号を生成する各コイルのためのトリガ回路とを有する信号発生器を含むことができる。信号発生器は、トリガ回路が使用するための電荷を蓄える高電圧容量性蓄電部を含む電源を含むことができ、エネルギー回収回路が任意で設けられる。
【0219】
本システムは、コイルを冷却する冷却システムを含んでもよい。
【0220】
本装置はまた、インピーダンス断層撮影センサといった応答センサを含むことができ、この応答センサは、対象における応答を測定し、これを使用して、刺激信号、および/または、コイルアレイ内のコイルの位置を制御することを可能にする。これは、上述したことと同様の方法で動作することができることが理解されるであろう。
【0221】
こういった装置は、治療的刺激および/または治療的阻害を含む、一連の異なる神経調節を提供するために使用され得る。
【0222】
例えば、本装置は、パーキンソン病を治療するために構成することができ、この場合、ターゲット領域は、一般的に対象の視床下核、対象の淡蒼球内節、対象の腹側中間核または対象の脚橋核を含む。
【0223】
本態性振戦に対する治療を提供する場合、ターゲット領域は、一般的に対象の腹側中間核を含むが、ジストニアに対する治療を提供することは、対象の淡蒼球内節を刺激することを含むことができる。
【0224】
強迫性障害の治療を提供するために、ターゲット領域は、一般的に対象の腹側被膜/腹側線条体、対象の側坐核または対象の視床下核を含む。
【0225】
疼痛治療を提供するためにターゲット領域は、対象の一次運動野であるが、てんかん治療のためのターゲット領域は、対象の内包および視床の領域を含む。
【0226】
代わりに、ターゲット領域は、神経調節が治療抵抗性慢性疼痛、脊髄損傷、破損した背部症候群、複雑局所疼痛症候群、狭心症、虚血性四肢痛、腹痛、難治性疼痛状態または過活動膀胱症候群をもたらすように構成される対象の脊髄を、含むことができる。
【0227】
追加の、および/または代わりの他の治療が提供されてもよいことも理解されるだろう。
【0228】
次に、
図3〜
図5Bを参照して、装置の物理的構成のより詳細な例を説明し、最初に、
図3を参照して、機能の構成要素について説明する。
【0229】
本実施例において、機能の構成要素は、一般的にマイクロフォン、ビデオカメラなどといった入力部301を含む。入力部301は、一般的に入力信号のデジタル化、周波数フィルタリングの実行といった特定の信号処理動作を実行するために構成された集積回路であるデジタル信号プロセッサ(DSP)302に結合される。次に、処理された信号は、マイクロプロセッサなどといった電子処理装置である制御装置303に出力される。制御装置303は、一般的に制御装置303による実行のためのソフトウェア命令を保存するメモリ312に結合され、制御装置303が信号を処理し、システムの動作を制御することを可能にする。
【0230】
本装置はさらに、バッテリ313または無線電源といった電源に結合された電源回路304を含み、電力をデジタル信号プロセッサ302、制御装置303、ドライバ回路307、および電圧ブースター305に分配することができる。バッテリ313は、誘導性または他の充電システムに結合することができ、必要に応じてバッテリを充電することができる。電圧ブースター305は、キャパシタ306に結合され、このキャパシタは、電荷を蓄電するように動作し、これをトリガ回路308によって使用して、コイルシステム311に印加される電流を生成することができる。
【0231】
対象の脳内の電場を測定することによって、対象の応答信号を測定するセンサ309が設けられ、結果として生じる応答信号は、制御装置303に戻される前に信号プロセッサ310によって処理され、それにより、システムの動作を調整して性能を最適化することができるようにフィードバックを提供する。
【0232】
制御装置303は、信号プロセッサ302、310を制御し、駆動制御信号をドライバ307に送り、これにより、トリガ回路308が選択的に起動され、刺激信号がコイルに印加される。
【0233】
本装置は、それぞれの感覚器官に印加される刺激を生成するために、スピーカ(図示せず)といった増幅器および出力口をさらに含むことができ、任意の残留感覚が可能な範囲で利用されることを可能にする。したがって、可聴刺激装置の場合、受信した可聴信号の増幅版を対象の耳に印加することができ、その結果、対象は、その残留聴覚およびその感覚神経の直接刺激の両方に基づいて可聴感覚応答を知覚する。
【0234】
ここで、可聴感覚刺激のための物理的構成の一実施例を、
図4Aおよび
図4Bを参照して説明する。
【0235】
本例において、本装置は、コイルシステム311および入力部301を収容する第1のハウジング421を含む。第1のハウジング421は、一般的にはユーザが着用することができる一対のヘッドホンまたは同様のものである形状因子である。制御装置、信号発生器などを含む電気部品を収容する第2のハウジング422が設けられている。第2のハウジング422内の構成要素は、リード423を介してコイルシステム内のコイル311に電気的に結合される。本構成は、制御エレクトロニクスがコイルを遠隔に保持し、それにより、コイルおよび処理エレクトロニクスによって生成される熱および電磁場による干渉を回避することが理解されるであろう。使用中に、装置は外耳431上に配置されることができ、外耳道432、中耳433、および蝸牛434は、図に示したように設けられ、その結果、コイルは、生成された刺激照射野を、蝸牛内のスパイラル神経節神経に向けることができる。
【0236】
代替例において、第2のハウジング422は、
図4Bの配置に示されるように、外部耳の後ろに適合するように成形される。
【0237】
視覚刺激を提供するためのシステムの一例は、
図5Aおよび
図5Bに示されている。
【0238】
本例において、本システムは、一対のメガネに似た形状因子を有するフレーム524上に取り付けられたカメラ501の形状の入力部を含む。第1のコイルシステムハウジング521は、眼の前方においてフレーム524から下方に突出することができ、それにより、網膜神経節神経535が刺激されることを可能にする。ここでも、処理用エレクトロニクスは、リード523を介して接続された第2の別々のハウジング522内に取り付けることができ、または
図5Bに示すように、メガネのフレーム内に一体化することができる。
【0239】
ここで、
図6を参照して、本装置を制御するための例示的なプロセスをより詳細に説明する。
【0240】
本例において、ステップ600で、入力信号が得られる。入力信号は、入力部301から取得され、処理のために信号プロセッサ302および制御装置303に渡される。特に信号プロセッサ302は、一般的には例えば、デジタル化およびフィルタリングを実行し、任意で、ステップ610で信号のスペクトル電力特徴を決定するために、信号の前処理を実行するであろう。任意の適切な特徴を使用することができるが、一例において、オーディオ信号処理、特に人間の音声分析において広く知られているMFCC特徴が使用される。しかしながら、他の信号処理技術および特徴が、視覚刺激といった他の種類の刺激に使用され得ることが理解されるであろう。
【0241】
特徴を生成するプロセスは通常、フィルタバンクを使用して、信号の周波数スペクトルを、必要に応じて調整され得る複数の重複バンドに分割し、次いで、各フィルタバンドに対する高速フーリエ変換(FFT)振幅の加重和に基づいて対数エネルギーを計算することを含む。ケプストラム係数を計算する最終段階として、離散コサイン変換(DCT)を対数エネルギーの配列に適用し、それによりフィルタの数に等しい複数のケプストラム係数を得る。DCTは、低次のDCT係数に埋め込まれているスペクトルに関する最も重要な情報をもたらす標準的な直交変換技術である。注意すべきことであるが、DCT係数は、スペクトル全体にわたるエネルギー変動を捕捉する。例えば、第1のDCT係数は、全ての対数エネルギーの和である。離散ハートレイまたはヒルベルト変換といった他の変換を使用することができ、DCTへの言及は、限定を意図するものではないことを理解されたい。
【0242】
ステップ620において、制御装置303は、メモリ312に格納された計算モデルに特徴を適用し、モデルの出力は、ステップ630において駆動制御信号を決定するために使用され、駆動制御信号は、次にステップ640において駆動信号を生成するドライバ回路307に転送される。駆動信号は、トリガ回路308を起動するために使用され、次いで、ステップ650で刺激信号を生成するためにキャパシタ306を放電する。刺激信号は、一般的には定義された位相、周波数、および大きさを有し、これらはコイルに印加され、それによって必要な刺激電磁場を生成し、特に、対象において必要な刺激応答を生成するように磁場の焦点を制御することを可能にする。応答信号は、ステップ660で応答センサ309によって測定され、次いで、これは制御装置303に転送され、制御装置303が、ステップ670で様々な設定の動的調整を実行することを可能にし、例えば、不十分な刺激が得られた場合に生成される信号の大きさを制御するか、または例えば、対象上のコイルシステムのハウジングの物理的位置の変化に適応するように、照射野の焦点を調整する。
【0243】
上述したアプローチにおいて、入力信号特徴のそれぞれの組が与えられた場合、生成されるべき刺激信号を決定するために、一つ以上の計算モデルが使用される。次に、このようなモデルを生成するプロセスの一例を、
図7を参照して説明する。
【0244】
本例において、参照刺激信号は、ステップ700で異なる特徴に基づいて生成され、これらはステップ710で基準となる対象に適用される。ステップ720で、基準の応答が決定され、応答センサを使用してこれらを測定するか、および/または対象に問い合わせることによって、被験者が知覚する感覚応答を理解する。
【0245】
ステップ730で、モデルが選択され、ステップ740で、特徴、印加された信号、および応答に基づいて、モデルが学習される。本モデルは、それぞれの特徴を有する入力部に対応する所望の刺激応答をもたらす特徴と刺激信号との間の関係を決定するために使用される。これは、刺激信号が、入力信号から導出された1つ以上の特徴に基づいて生成されることを可能にする。実行されるモデルおよびトレーニングの性質は、任意の適切な形態であってよく、決定ツリー学習、ランダムフォレスト、ロジスティック回帰、関連付け規則学習、人工ニューラルネットワーク、ディープラーニング、誘導論理プログラミング、サポートベクトルマシン、クラスタリング、ベイズネットワーク、強化学習、表現学習、類似性および距離学習、遺伝的アルゴリズム、規則ベースのマシン学習、学習分類システムなどのうちの任意の一つ以上を含むことができる。このようなスキームは既知であるため、これらについてはこれ以上詳細に説明しない。
【0246】
単にモデルを生成することに加えて、本プロセスは一般的には学習されたモデルの識別性能を評価するために、ステップ750で、モデルをテストすることを含む。このようなテストは、一般的にはモデルの偏りを回避するために、基準データのサブセット、および特にモデルを学習するために、使用されるモデルに異なる基準の応答を使用して実行される。本テストは、計算モデルが十分な精度を提供することを保証するために使用される。
【0247】
モデルが精度要求を満たす場合、モデルは、刺激信号を生成する際に使用され得ることが理解されるであろう。そうでなければ、本プロセスはステップ730に戻り、異なる特徴および/またはモデルが選択されることを可能にし、次いで、必要とされる識別能力が得られるまで、学習およびテストが必要に応じて繰り返される。
【0248】
前述したように、コイルシステムはまた、一般的に高導電性金属のシートで覆われ、アレイ内のコイルのワイヤ部品の近くにあるため、頭部内の他のニューロンが刺激されないようにシールドする。シールドは、アレイ全体の縁、または各コイルの周囲のいずれかとすることができる。
【0249】
図8Aおよび
図8Bは、コイル811.1上の超伝導体シート811.2の形態のシールドの反磁性効果を示し、これは、コイルから発する磁界がシールド811.2の開口部にどのように焦点を合わせるかを示す。これは、次に、対象内に、より焦点を合わさった照射野をもたらし、特に、異なるコイルからの照射野が関連するセンサ神経に向けて高度に標的化されることを可能にする。シールドは、超伝導体、反磁性材料などから作ることができ、一例として、ビスマスなどから作られる。
【0250】
蝸牛に刺激電磁場を生成するための第1の例のコイルシステム構成は、
図9Aに示されている。
【0251】
本例において、コイルシステムは、単一の軸方向コイル911.1を含む5つのコアに巻かれたコイルおよび4つの円周方向に間隔をあけたコイル911.2を含み、それぞれが、蝸牛に面している。非コア巻き表面コイル911.3は、コアに巻かれたコイルの外周の周りで頭蓋骨に対して提供される。本設計は、
図9Bおよび9Cに示されるように、蝸牛神経における適切なレベルの刺激(刺激のための約5V/mのピーク電場)をもたらし、これは、蝸牛神経のシミュレートされた横断面に示される。
【0252】
しかしながら、本設計は、皮質においても有意な周辺野をもたらす。皮質における場のピーク値は、約25V/mであり、これは一般的には100〜150V/mを必要とする皮質ニューロンにおいて活動ポテンシャルを開始するのに十分ではないが、漂遊磁界の減少が、なお好ましい。
【0254】
本コイル配置は、強磁性コアと共にスパイラルへリックス巻きを有し、単一の軸方向コイル1011.1を含む5つのコイルシステムおよびそれぞれが蝸牛に面する4つの円周方向に間隔をあけたコイル1011.2を使用する。
図10Bおよび
図10Cに示すように、本コイルの幾何学的形状のために周辺領域にも高磁場があり、これは理想的ではない。
【0255】
図11Aおよび
図11Bは、有限要素計算シミュレーションに基づく3つのコイルの理想的な位置決めを示す。
【0256】
3つのコイル1111は、互いに60度の角度で配置され、上部のより明るい部分は、同じXY平面上にある2つのコイルによって表され、蝸牛は、白い四角1134によって強調されている。それぞれのコイルは、0.25mmの小さな直径を有するワイヤ巻線から形成され、スパイラル構成で巻き付けられ、ヘリカル構成上に延在され、多層ヘリカルコイルを形成する。コイルの中心は、直径1mmの高透磁率材料を持つコアである。
【0257】
観察され得るように、誘導された電場は、蝸牛の周りで最も高い。これは、表面場が頭部の内部のより深いレベルで、それらよりも高い従来のTMSコイルの欠点を克服する。この集束は、それぞれのコイルからの電磁場の重畳により可能である。
【0258】
図11Cおよび
図11Dは、
図11Aおよび
図11Bのコイル配置により、蝸牛に誘導される電流レベルを示す。これらの図は、蝸牛の横断面を頂部から見たものであり、J分布の最大における蝸牛の電流レベルは、螺旋神経節神経に活動ポテンシャルを誘発するのに十分であり、したがって聴覚につながることを示している。
【0259】
焦点の変化は、アレイ内の1つ以上のコイルにおける電流の位相、振幅、または周波数を制御することによって達成されることができ、それによって、蝸牛内の異なる神経が刺激されることを可能にし、したがって、異なる刺激応答が達成されることを可能にする。
【0260】
視覚刺激を送達する際に使用するためのさらなる例示的な配置は、
図12Aおよび12Bに示される。
【0261】
本実施例において、コイル配置は、単一の中央一次コイル1211.1および一次コイル1211.1の周りに円周方向に間隔をあけて配置された複数のより小さい二次コイル1211.2を使用して、網膜神経節細胞1234を刺激するための照射野を生成する。
【0262】
上述したように、一例において、一つ以上の軸方向コイルを使用することができる。この点に関し、軸方向コイルは、上述したより伝統的なヘリカルコイル構成によって生成される磁界の代わりに、コイルから電場を生成して焦点を合わせるように設計される。前の設計と同様に、それは、活動ポテンシャルを導く電場であり、したがって、電場の直接生成は、状況によって、より効果的であり得る。
【0263】
この点で、深部脳ターゲット領域については、ヘリカルコイルが主に、空気とほぼ同じである生物学的組織の比透磁率、および接触している2つの媒体の表面間の相互作用における磁界の垂直成分が同じままであることに起因して、より効果的であり得ることに留意されたい。その結果、一般的に磁界の減衰が少なくなり、深部脳ターゲットにおいてより高い誘導電場もたらされる。対照的に、電場は、異なる誘電特徴を有する2つの表面の境界を通過するにつれて、電場の法線成分が変化することにより、より速く減衰する傾向がある。
【0264】
したがって、ヘリカルコイルおよび軸方向コイルは、異なる目的のために交換できるように使用されてもよいことが理解されるだろう。例えば、軸方向コイルは、浅いターゲット領域を刺激するために、より効果的であり、一方、ヘリカルコイルは、深いターゲット領域を刺激するために、より効果的である。
【0265】
軸方向コイルに関する限り、コイルは、コイル形状の軸に沿って、またはそれに隣接して通過するコイル巻線から形成された複数の導体を含み、巻線は、軸に沿って延在する電流要素を最大にし、戻り経路を軸から離れるように逸らすために、コイル形状の周囲を通って延在する。
【0266】
電場を支配する基本方程式は電場であり、次式で与えられる:
【数22】
【0267】
前述の分析と併せて考察すると、これは次のようになる:
【数23】
【0268】
ここで、
【数24】
は、コイル巻線の長さ要素であり、
【数25】
は、電場の測定点からのこの要素の距離である。
【0269】
したがって、軸方向コイルは、コイルの軸に沿った
【数26】
要素の最大化を可能にし、これは、軸方向に強い電場を生成する。ループを完了するために戻る巻線の部分は、それらからの負の成分
【数27】
の集束性および低減を最適化するように配置される。
【0270】
本コイル設計は、ヘリカルコイルによって生成される磁場にその分布において類似する電場を生成する。従って、刺激電場を集中させることが最適な設計である。また、本装置の一実施形態が、ヘリカル巻線を有するコイル(暫定として言及された全ての構成)と、軸方向巻線を有するコイルとの組み合わせを利用することも可能である。
【0271】
シミュレーションは、1mm
2より小さい領域上の焦点を示した。このコイル設計は、皮質領域、迷走神経、脊髄、網膜、およびおそらく蝸牛のような深すぎないターゲットに対して非常に効果的であろう。
【0273】
例えば、
図13A〜
図13Fは、円錐形状の構成を有する軸方向コイルが円錐先端部から補正されたターゲット領域内に有意な電界を生成することができ、一方、磁界の大きさは、コイルの後方で小さくなり、漂遊磁界の減少を導く。さらに、7つの円錐コイルを含むコイルアレイは、
図13Dおよび
図13Eに示されるように、知覚活動ポテンシャルが誘導されることを可能にするのに十分な電場を、蝸牛内に生成することができる。
【0274】
凸状および凹状の半球状コイルは、
図14Aおよび
図14Bおよび
図15にそれぞれ示されており、これらは、漂遊磁界を最小限に抑えながら、再び適切な電場を発生させる。
【0276】
円筒形ヘリカルコイルを利用するコイルアレイの具体例が、
図17A〜
図17Dに示されている。本実施例において、コイル配置は、単一の中央の一次円筒軸方向コイル1711.1および一次コイル1711.1の周囲に円周方向に間隔をあけて配置された多数のより小さな二次円筒軸方向コイル1711.2を使用して、蝸牛1734を刺激するための照射野を生成する。本実施例において、各コイルは、蝸牛に面し、その結果として発生した電磁場は、蝸牛内に結果として生じる磁場強度によって示されるように、蝸牛に焦点を合わせる。同様の構成は、軸方向コイルを用いて実施することができることが理解されるであろう。
【0277】
上述したコイル構成は、患者が装着するために適したハウジングの構成に容易に組み込むことができるため、特に有用であり、本実施例を、
図18A〜
図18Cを参照して以下により詳細に説明する。
【0278】
本例において、本システムは、ヘッドバンド1826によって支持された2つの第1のハウジング1821を含むヘッドセット1820を含む。第1のハウジングは、正面ローブ1821.1および後方ローブ1821.2を含み、それらは対象の耳Eの前および後ろに座し、正面ローブ1821.1は、一次コイル1711.1を組み込み、後方ローブ1821.2は、二次コイル1711.2を組み込む。
【0279】
制御装置、信号発生器などを含む電気部品を収容する第2のハウジング1822が設けられる。第2のハウジング1822は、コイル1711を制御システムに電気的に結合するために、ヘッドセット1820から延びるリード線1823に接続するポートを含む。第2のハウジング1822は、ベルト1825に結合され、これを使用者の腰の周りに装着することを可能にする。
【0280】
前述したように、一実施例において、システムは、刺激コイルアレイに近い漂遊磁界を生成することができ、これは無線充電機構を使用して充電することができ、ここで、
図19Aおよび
図19Bを参照してより詳細に説明する。
【0281】
本例において、システムは、制御装置1916と通信するコイルアレイ1911を含み、コイルアレイ1911を介して印加される刺激信号の周波数を制御する。これは、第1の通信モジュール1917に結合され、次に、第2の通信モジュール1918を介して同調システム1919と通信し、同調システムに、コイルアレイ1911によって生成される照射野の周波数に関する情報を提供することを可能にする。同調システム1919は、受信コイル1914に結合され、受信コイル1914のインピーダンスを同調させ、それにより、漂遊磁界から可能な限り多くのエネルギーを吸収することを可能にする。
【0282】
したがって、本構成は、強く結合された磁気無線充電機構を使用して、刺激コイルの表面領域に生成された磁場によりシステムを充電しなおす。本シナリオにおいて、送信コイルは、高電流TMS刺激コイルアレイ1911であり、受信コイル1914は、一次コイルと人間の頭部との間に配置される。受信コイルは、120〜140kHzの共振周波数で動作するだろう。インダクタ−コンデンサのタンク回路を利用して、周波数を同調させ、結合係数を増加させる。一次コイルによって生成された磁場は、受信コイルによって捕捉され、次いで整流され、歪みをフィルタリングし、安定化してから、バッテリを充電する。
【0283】
本例において、刺激コイルアレイの表面近くで発生した浮遊磁場は、誘導充電受信コイルにより捕捉され、誘導充電受信コイルは次いで、バッテリ内にエネルギーを充電する前に、整流され、電力回路内でフィルタリングされる。光学的な位置センサまたは容量性の位置センサといった位置および運動センサは、コイルシステムの位置の変化を継続的に監視し、移動が生じた場合に必要な位置に戻るように導入される。
【0284】
意図された元の位置からコイル変位する場合に望ましくない刺激を避けるために、制御装置は、コイルを元の位置に戻すまで、コイルシステムを一時的に停止する。
【0285】
上述したように、応答センサを設けて、誘発された活動ポテンシャルに関するフィードバックを決定することができる。一例において、これは、様々な生体組織の導電率の差を示すマップを生成するインピーダンス断層撮影装置を使用して達成される。これは、電極を通して一つ以上の周波数の交流を印加することによって達成され、いくつかの他の電極は対象内に誘導された結果として生じる電流または電圧を測定する。これは、等電位のマップがターゲット領域の3Dマップを作成するために使用されることを可能にする。本システムは、マップ内のターゲット組織の位置の変化を測定することができるため、装置の様々な実施形態の正確な位置決めを可能にすることができる。本フィードバックは、偏差が高すぎる場合には起動前に装置を再配置するために使用することができ、また、小さな偏差の場合には、ターゲット領域上の磁界の焦点を再度合わせるであろうコイルから出る電磁場の量を変化させることができる。
【0286】
充電システムおよび応答センサシステムを含む制御システムの一例を
図19Bに示す。
【0287】
本例において、本システムは、マイクロフォン、ビデオカメラなどといった入力部1901を含む。入力部1901は、入力信号のデジタル化、周波数フィルタリングなどといった特定の信号処理操作を実行するように構成された一般的な集積回路であるデジタルシグナルプロセッサ1902に連結されている。次に、処理された信号は、マイクロプロセッサなどといった電子処理装置である制御装置1903に出力される。制御装置1903は、一般的には制御装置1903による実行のためのソフトウェア命令を保存するメモリ1912に結合され、制御装置1903が信号を処理し、システムの動作を制御することを可能にする。
【0288】
本装置はさらに、バッテリ1913またはワイヤレス電源といった電源に結合された電源回路1904を含み、電力をデジタル信号プロセッサ1902、制御装置1903、ドライバ回路1907、および電圧ブースター1905に分配することができる。バッテリ1913は、誘導性または他の充電システムに結合されることができ、必要に応じてバッテリを充電することを可能にする。その上、電力回路1904は、受信コイル1914に結合され、回収されたエネルギーを使用してバッテリを再充電することを可能にする。
図19Aに記載されるように、同調回路(図示せず)が設けられ、受信コイルを上述されるように同調させることが可能になるであろう。電圧ブースター1905は、電荷を蓄積するように動作するキャパシタ1906に結合され、コイルシステム1911に印加される電流を生成するために、これをトリガ回路1908によって使用することを可能にする。
【0289】
対象の脳内の電界を測定することにより、対象の応答信号を測定するインピーダンス断層撮影センサ1909が提供され、結果として得られる応答信号は、制御装置1903に戻される前に信号プロセッサ1910によって処理され、それによってシステムの動作を調整して性能を最適化することができるようにフィードバックを提供する。加えて、位置および制御システム1915を使用して、コイルアレイ内のコイルの位置決めを調整し、および/または生成された照射野の制御をさらに精緻化することができる。
【0290】
制御装置1903は、信号プロセッサ1902、1910を制御し、駆動制御信号をドライバ1907に送り、次に、トリガ回路1908を選択的に作動させ、刺激信号をコイルに印加させる。
【0291】
本装置は、それぞれの感覚器官に印加される刺激を生成するために、増幅器およびスピーカ(図示せず)といった出力口をさらに含むことができ、任意の残留感覚が可能な範囲で利用されることを可能にする。したがって、可聴刺激装置の場合、受信した可聴信号の増幅バージョンを対象の耳に印加することができ、その結果、対象は、その残留聴覚およびその感覚神経の直接刺激の両方に基づいて可聴感覚応答を知覚する。
【0292】
従って、上述したシステムは、聴覚、視覚、嗅覚、味覚、触覚、またはバランスの喪失といった感覚障害の場合に、身体の自然な感覚機構を迂回する目的で、電磁パルスを用いた感覚神経の非侵襲的刺激を提供する。
【0293】
人工内耳は、通常、人工内耳のスパイラルに沿って配置された複数の電極を含む。それぞれの電極は、特定の可聴周波数範囲をターゲットとする。これは、20000Hzでの聴覚情報がスパイラルの基部で符号化され、20Hzの聴覚情報がスパイラルの先端で符号化される、蝸牛のトノトピックのマッピングに関する。人工内耳の電極は、人間の声に最も関連する周波数範囲をターゲットとするように配置されており、これにより、ユーザのための発話をより良く理解することができる。蝸牛の流体は、導電性であるため、電極は、一度に1つずつ活性化される。上記のシステムは、アレイ内の複数のコイルを使用して、異なる時間に人工内耳の異なる位置をターゲットとする照射野を生成し、それによって同様の応答を生成する同様の戦略を、利用する。本システムは、外耳の側方(隣接)に配置されたコイルシステムを含む。アレイ内の各コイルは、コイルの幾何学的形状に対する所与の空間的制約に対して最大量の電磁場を生成するように設計された各コイルを用いて、蝸牛に焦点を合わせる。これは、蝸牛内に電極の存在を必要としないが、人工内耳によって達成されるのと同様の方法で、異なる神経が刺激されることを可能にするために、ピーク電界強度の焦点が可動であることを用いて重ね合わされた電界が蝸牛内に生成されることを、可能にする。
【0294】
したがって、上述の構成は、非侵襲性の聴覚装置を提供するために使用することができる。しかしながら、本技術は、全体的な非侵襲性知覚の補綴物としてより広く適用できることも理解されるであろう。例えば、網膜ニューロン、即ち網膜神経節細胞の非侵襲的刺激にも同じ装置全体を使用することができ、これは、網膜ニューロンの周辺部における原因による視力喪失を有する人々および他の哺乳動物が再び見ることを可能にするだろう。同様に、これは、触覚、嗅覚、および味覚を含む他の感覚を刺激するために使用されることができる。
【0295】
人工器官に加えて、本装置は例えば、仮想現実における追加の知覚体験を提供するために、拡張された仮想現実体験および仮想現実体験のために使用することもできる。したがって、入力部は、マイクロフォン、カメラ、Bluetooth、wi−fi、弁別器と結合された無線遠隔測定システム、または嗅覚および味覚のための電子化学センサを含むことができる。
【0296】
また、上述したように、本システムは、対象のターゲット領域内に電磁場を生成することができるため、本システムはより広く神経調節に使用することができ、この実施例を以下に説明する。
【0297】
アメリカ食品医薬品局(FDA)は、いくつかの病態に対して神経刺激療法を承認しているが、これは深部脳刺激、運動野、脊髄および迷走神経を介して脳を刺激することにより治療される可能性がある。
【0298】
深部脳刺激技術は、医学的に難治性のパーキンソン病、本態性振戦、ジストニアおよび強迫性障害(OCD)の治療方法としてFDAに承認されている。その他の病態について、トゥレット症候群、治療抵抗性うつ病、慢性疼痛、アルコールおよび薬物依存症、群発頭痛およびアルツハイマー病を含む病気が、研究段階にある。
【0299】
深部脳刺激について、FDAが承認した神経刺激療法に関連する有害事象がいくつかある。これらには歩行障害の悪化、構音障害、嚥下障害、神経精神症状および認知症状(感覚運動、連合、辺縁系の機能に近い)、医学的に難治性の精神疾患および進行性の神経変性疾患が含まれるが、これらに限定されるものではない。これらの疾患には、しばしば重度のうつ病や認知障害などの併存疾患がある。
【0300】
パーキンソン病(PD)は、黒質緻密部のドーパミン細胞の消失によって引き起こされる振戦、固縮、無動および動作緩慢の主症状として特徴づけられる。PDは、特に、α−シヌクレイン、パーキン、UCHL1、DJ1、PINK1、およびLRRK2遺伝子の突然変異による病因であると考えられている。DJ1およびPINK1は、酸化ストレスに対する応答に関与するミトコンドリア蛋白質を発現し、プロテアソーム機能に影響を及ぼし、環境誘導性PDの発症に関連する毒素も、前述のミトコンドリア機能に影響を及ぼし、PDの病因発生に寄与する因子に共通性があることを示している。
【0301】
PDの治療は、個々の患者に合わせて行う。現在、PDに対する最適な薬物療法はレボドパであり、これはドーパミンの天然前駆体であり、血液脳関門を通過するために経口摂取可能である。レボドパ療法は、「ウェアリングオフ」効果、レボドパ誘発性ジスキネジアおよび他の運動合併症などの重大な有害作用につながる可能性がある。
【0302】
その他のPD薬理学的治療薬には、カテコール−o−メチル−トランスフェラーゼ阻害薬、ドーパミン作用薬および非ドーパミン作用性療法があり、レボドパと併用されることもあれば、互いに併用されることもある。深部脳刺激術(DBS)に焦点を当てた脳神経外科治療もまた、任意の治療法であるが、介入の手術的な性質のため、有意に侵襲性が高い。
【0303】
PDに対するDBS療法の適応には、運動変動、ジスキネジア、投薬不応性振戦および医療不耐性がある。ドーパミン薬物療法によく反応する症状は、安静時振戦、硬直、上肢の運動緩慢および歩行の運動緩慢の構成要素といった、DBS療法の有効なターゲットでもある。しかしながら、一部の症状は、DBSによって悪化するが、これらには歩行の凝固(FOG)、構音障害および嚥下障害が含まれる。
【0304】
したがって、DBS療法の理想的なPD候補は、統一パーキンソン病評価尺度で評価したL−dopa応答性を示すが、ドーパミン非応答性振戦も示す。脳刺激装置DBSのPDターゲットは、高頻度(130Hz)におけるサブハラミック核(STN)であり、これはPDのすべての主症状を改善するが、特定の認知機能の低下(すなわち、言語流動性、学習および記憶)と関連する;高頻度(130Hz)における淡蒼球内節(GPi)であり、これはSTN刺激装置のより大きな認知低下なしに、PDの主症状すべてを改善することが示された。最後に、腹外側中間(VIM)は、PDの振戦症状を治療するためにDBSを用いて刺激することができるが、前述のように、FOG症状はDBS療法により悪化するが、刺激周波数を60Hzに下げるとPD患者のFOGエピソードが少なくなっている。脚橋核もDBSの有効な代替標的であることが実証されており、このDBSターゲットを用いてFOGエピソードの減少が観察されている。
【0305】
本態性振戦は、活動性振戦の最も根本的な原因の1つであり、これは、能動的に動いている間に身体部分の動きを制御することができないこととして、表現的に現れる。本態性振戦に起因する振戦は通常、軽度で長期間安定しているが、時間の経過とともに徐々に悪化することがある。本態性振戦の病因は、十分に解明されていないが、本態性振戦の患者の約50%に、家族にも振戦があるという強い遺伝的要素があると考えられている。
【0306】
本態性振戦の治療は、振戦症状の重症度に依存する。治療を行わずに医師の診察を受ける軽症型から、医療介入を必要とする重症型まで様々である。さらに、ストレスおよびカフェインは、振戦の影響を悪化させることがあり、回避されるべきである。
【0307】
通常、本態性振戦に適用される医療介入にはβ−遮断薬(血圧をコントロールするため)、抗痙攣薬があり、薬物治療が効果的でない場合、脳神経外科的経路が通常、DBSの形態において、取られる。
【0308】
本態性振戦を治療するためのDBS療法の候補者は、生活の質に重大な影響を及ぼす行動、姿勢、または安静時振戦を伴う患者に限定すべきである。DBS介入の最適な神経ターゲットは、VIMであるが、腹側尾側(体性感覚性視床)と呼ばれるVIM後方の視床核への電流の放散により、構音障害知覚障害の発達を伴う有害事象が観察されている。本発明の装置の一実施形態は、本質的な振戦を有する患者に治療を提供するためにVIMをターゲットとする。この神経症を刺激するためのrTMSの使用は、tDCSで遭遇する尾側腹側への放散を回避する。
【0309】
ジストニアは、不随意の持続的な筋収縮と反復的なねじれ運動を明白に示し、それが長期間に渡って、異常な姿勢をもたらす。ジストニアは、焦点、分節性、多病巣性、および半ジストニアに分類される。ジストニアの病因は、パーキンソン病や多発性硬化症といった疾患の特発性(原発性)、遺伝性(続発性)および外傷/二次的効果などに分類される。
【0310】
ジストニアの治療は、ジストニアの分類によって異なるが、全身性ジストニアはドーパミンおよび抗コリン薬を含む神経系をターゲットとする薬物を用いて薬理学的に治療できる。ジストニアは、筋肉の選択的な神経麻痺によっても外科的に治療されるが、一定していない有効性を有する。四肢ジストニアに対しては知覚訓練や四肢固定術と同様に筋力強化やストレッチなどの理学療法が試みられているが、現在のところ有効性は証明されていない。多くの神経疾患に対する有効な治療法は、ボツリヌス菌由来のボツリヌス毒素の使用であり、これは神経筋接合部へのアセチルコリンの放出を阻害する。ボツリヌス毒素はジストニア筋に注射すると筋攣縮を減少させ、全身性の副作用はない。ボツリヌスは、子宮頸部ジストニア、眼瞼痙攣、痙攣性発声障害、口下顎ジストニア、および四肢ジストニアを含む多くの分類のジストニアに対して選択される治療であり、患者の70人〜90%に長期的な有効性をもたらす。
【0311】
DBSは、ジストニアの新規治療法として提唱されており、GPiが選択のターゲットとなっている。ジストピアの治療に対するGPi神経刺激の有効性が評価されている。光学的追跡は、GPiのすぐ腹側に位置しており、電極が正しい深さに挿入されなければ視覚欠損につながる可能性があるにもかかわらず、FDAはHDE経路を介して2003年にジストピアの治療のためにGPi−DBSを承認した。
【0312】
強迫性障害(OCD)は、不安を軽減するために必要であると患者によって知覚される反復行動または儀式(強迫)を伴う侵入性不安生成思考(強迫)として説明することができる。OCDは、複雑で多因子性の病因であると思われる。神経画像研究により、基底核視床皮質(BGTC)経路の神経病理学、より具体的には前頭前野および辺縁系BGTC経路における神経病理学が実証されている。
【0313】
OCDは通常、セロトニン再取り込み阻害薬(SRI)を用いて薬理学的に治療されるが、これは成体では大部分の有効性が示されており、小児では中等度の有効性が示されている。SRIの投薬を行っても、ほとんどの治療反応者は、残存症状を経験し、再発する可能性が高い。認知行動療法(CBT)は、心理的治療の一形態としても用いられ、薬物療法よりも優れていることが示されている。興味深いことに、DBSは、OCDの症状の管理に有望であり、双方のDBSが最も高い有効性を示した。
【0314】
OCDの神経刺激性DBSのターゲットは、気分変化に関連する腹側被膜/腹側線条体(VC/VS)であり、HDE経路を介して2003年にFDAにより承認された;側坐核(NAc);STN;および下方視床脚である。
【0315】
運動野刺激(MCS)は、疼痛症状の患者を軽減する。MCSを用いて一次運動野を刺激することにより、個体は慢性疼痛を軽減した。興味深いことに、一次運動野の前方に位置する体性感覚野のMCSは、個々の経験した疼痛を増加させることが観察された。MCSは、医学的に難治性の疼痛を有する患者の疼痛緩和に有効な治療法であることが実証されており、神経障害性顔面痛および脳卒中後の疼痛に対する疼痛の有意な減少が実証されている(患者の84%が40%を超える疼痛症状の減少を経験した)。
【0316】
てんかんは、定期的に起こるけいれん(部分発作または全身発作)を引き起こす神経疾患であり、数秒間にわたって目を剥く人から、無力なけいれんや意識消失を起こす人まで、さまざまな形で現れる。患者の最大30%が、抗てんかん薬に反応しない治療抵抗性の発作を起こす。
【0317】
このような患者において、脳神経外科的介入のみが発作の活動を軽減または除去することができる。この手術は、問題のある脳領域の除去を含み、明らかに侵襲性が高い。DBSは、可逆的であり、発作の頻度を有意に減少させることが実証されているため、脳神経外科手術の代替療法として提案されている。てんかんを治療し、発作エピソードの回数を減少させるDBSの神経刺激ターゲットは、視床の内包および領域である。
【0318】
2013年、NeuroPace RNSシステムは、医学的に難治性のてんかんの治療法としてFDAにより承認された。この治療は、最初は、対照と比較して発作を37.9%減少させ、6年では66%減少させた。患者は、QOLおよび認知機能の改善も経験したが、作用機構は、まだ文献によって解明されていない。本発明の装置の一実施形態はてんかん患者における発作の数を減少させるために、内包および視床の領域をターゲットとする。
【0319】
脊髄刺激(SCS)は、難治性慢性疼痛の代替療法として使用され、脊髄損傷の効果に対応することに役立つ可能性がある。脊髄損傷に対するSCSの適用は、失敗した背部手術症候群、複合性局所疼痛症候群、狭心症、虚血性四肢痛、腹痛である。文献レビューでは、SCSは様々な難治性疼痛状態に対して安全かつ有効な治療法であり、慢性疼痛が68%減少し、24ヵ月間にわたり持続的な疼痛緩和が得られると結論付けている。
【0320】
脊髄損傷(Spinal cord injury:SCI)は、脊髄のあらゆる部分、または脊柱管の末端にある神経の損傷である。SCIは多くの場合、損傷部位の下の強度、感覚および他の身体機能の永久的な変化を引き起こす。SCIの重症度は、完全、すなわち、全ての感覚の喪失および損傷下の動きを制御する能力の喪失、または不完全に分類され、四肢麻痺、すなわち、腕、手、体幹、脚および骨盤器官が損傷により影響を受ける四肢麻痺、または麻痺が体幹、脚および骨盤器官の全てまたは一部に影響を及ぼす麻痺のいずれかにつながりうる。
【0321】
SCS治療を受ける患者は、随意運動を取り戻すことができる。ある事例研究は、SCSと強力な身体訓練の併用療法により、(バランス補助のみを用いて)ほぼ5分間の全重量を達成できることを示した。さらなる訓練および校正の後、患者は、刺激の間、脚の運動のいくらかの制御を取り戻すことができた。別の事例研究は、第6脊髄セグメントでの脊髄損傷を伴う下半身不随の患者を含んだ。SCSインプラントと強力な物理的療法後、患者は下肢運動の何らかの特定タスクの随意制御を取り戻すことができた。
【0322】
ある研究は、脊髄損傷を受けた個人において、ターゲットとしたSCSが歩行の随意制御を可能にすることに成功したことを、実証した。インプラントパルス発生器により、腰仙髄後根の選択的な時空間の刺激は、地上歩行中の麻痺筋の再確立された適応制御を導いた。自発運動能力は、リハビリテーション中にさらに改善し、数カ月後、参加者は刺激なしで以前に麻痺した筋肉に対する随意制御を回復し、時空間の刺激中に環境上の設定の中で歩行または自転車に乗ることができた。
【0323】
過活動膀胱症候群(OBS)は、骨盤底筋の不随意収縮および尿道括約筋の応力緩和を明白に示し、不随意排尿に至る。OBSの治療は通常、薬理または手術であるが、手術経路の方針は、非常に危険である。S3孔の神経刺激は、適切な治療法であることが観察されているが、インプラントから生じる合併症は、抑止として作用する。S3孔SCSインプラントの代わりに、経皮的脛骨神経刺激(PTNS)がある。PTNSは、神経根S4を利用し、足関節よりやや上の脛骨神経に皮膚に近い位置に埋め込む。インプラントは、脊髄神経L4〜S3を刺激するように作用する。磁気神経刺激も使用されるが、PTNS経路では使用されない。記載された特許は、PTNS部位を介する磁気刺激を利用する(pw 200us @20Hz、30分間、週1回)。
【0324】
迷走神経刺激(VNS)は、てんかんや治療抵抗性うつ病の治療に使用できるが、VNSの他の適応も研究中である。
【0325】
てんかんの場合、本装置は、一般的に30秒のオンおよび5分のオフの、規則的なオンおよびオフ刺激間隔を提供するようにプログラムされる。これは、正確な作用機構についてはいまだ議論の余地があるものの、てんかん発作の発症に関与する領域で血流や代謝を増加させることで作用すると考えられている。2002年現在、てんかんを治療するために約16,000のVNSインプラントが存在している。
【0326】
治療抵抗性うつ病に対しては、現在の治療は神経外科的性質を有しており、したがって侵襲性が高い。VNSの低侵襲性は、医学界で多くの注目を集めているが、治療抵抗性うつ病を治療するためのVNSの有効性はまだ議論中である。
【0327】
迷走神経は、乳様突起骨先端部および乳様突起骨先端付近で、首を介して、胸鎖乳突筋と気管の間で成功裏に刺激されている。最も効果的な刺激は、SHAFIKと同僚によって行われ、40Hz周波数で175J/パルス(10時間点灯、10時間消灯、オンライン20分、オフライン60分、対象あたり5回)を使用し、この刺激パラダイムが最も長い効果を示した。
【0328】
迷走神経の近くにあるのは、横隔神経である。迷走神経刺激は、多くの場合、横隔神経を共刺激するので、例えば、JP2008/081479A(YOSHIHOTO)に記載されているように、横隔神経の共刺激を最小限に抑えるために、正確な位置決め/波形を操作することができる。
【0329】
VNSは、術後イレウス、アルツハイマー病におけるTNA−a機能不全、および他のあらゆる炎症関連疾患(VNSにより調節され得る)を含む、治療法として有効であり得ることを示す多くの他の適応がある。したがって、VNSの実用性は迷走神経に直接関係する病態に限らず、様々な全身状態の治療法として使用可能である。
【0330】
術後イレウス、または小腸の炎症は、手術や他の侵襲的治療に極めて敏感である。磁気刺激による迷走神経をターゲットとした抗炎症薬を用いた非侵襲的治療が最良である。
【0331】
アルツハイマー病(AD)は、神経変性疾患であり、パーキンソン病の発達の一般的な前駆体である。ベータアミロイドの蓄積、細胞内神経原線維変化、神経細胞死およびシナプスの消失を特徴とする。多因子性の原因論としてのADは、併用療法が必要とする最適な経路である可能性を、示唆している。ADの病態生理学的サイクルの大きな提案は、ベータ−アミロイド蛋白質を生じ、タウ蛋白質の除去を減少させ、その結果サイトカイン分泌およびさらなる炎症を生じ、ADの進行を悪化させる慢性炎症である。この炎症は、サイトカインであるインターロイキン−1(IL−1)および腫瘍壊死因子アルファ(TNF−a)のミクログリア分泌によって媒介される。迷走神経刺激は、AD患者の認知効果を改善する一方で、病態生理学的プロファイルも改善するが、これらの効果の作用機構は、未だ解明されていない。
【0332】
術後認知機能低下(POGD)は、手術の外傷後の手術媒介性の炎症によって引き起こされると考えられており、短期から永続的である可能性がある。POGDを治療するための既知の治療法はないが、迷走神経は、磁気刺激に対する適切な抗炎症ターゲットである可能性があり、電気VNSのために別の手術を行うことから更なる炎症を防止するために非侵襲的治療が最適であると仮定される。
【0333】
関節リウマチ−は、遺伝子から外傷、様々な病態まで、複数の病因を有する疾患である。関節の炎症を特徴とし、通常は、理学療法および運動のいずれか、または根本にある炎症を管理するために他の薬物と併用して使用される疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDS)によって治療される。DMARDSは、神経刺激と同じ経路、同様の迷走神経によるTNFaを介した炎症を利用する。DMARDSには副作用があり、通常は軽度であるが、重症の場合は、きわめて重大である。手術がさらなる炎症を誘発し、病状を悪化させる可能性があるため、RAを非外科的治療経路を用いて治療することが、最適である。
【0334】
喘息または慢性肥満性肺疾患(COPD)は、肺の慢性炎症を定義する包括的な用語であり、通常、肺における自己免疫応答または環境/病態のいずれかによって引き起こされる。COPDに対する治療法はないが、コルチコステロイドや迷走神経の神経刺激など、炎症症状を管理する方法は、いくつかある。磁気神経刺激は、伝統的な治療の適切な代替治療であり得る。
【0335】
胆汁分泌を担うオディ括約筋も、神経刺激を用いて調節し、胆汁の産生と分泌を誘導することができる。
【0336】
世界保健機関(WHO)によれば、13億人の人々が何らかの形態の視覚障害をもって生活している。このうち3600万人は、法律的に盲目である。失明については、症例の大半(51%)が白内障であり、その他の原因としては緑内障、加齢黄斑変性症(AMD)、糖尿病性網膜症、網膜色素変性症(RP)が挙げられる。AMDやRPでは光受容体が変性しており、糖尿病網膜症や緑内障は網膜神経節細胞に影響を及ぼす。病気の部位によって、視力を回復させるために電気刺激を与えるインプラントの部位が、異なる。
【0337】
異なる種類の視覚補綴物は、網膜上、網膜下、脈絡膜上、視神経、LGN、および皮質インプラントを含む。
【0338】
現在の網膜上補綴物は、光画像を捕捉するカメラと、画像を電気刺激のパターンに変換するプロセッサと、網膜の内側表面上に位置し、内側網膜内の残りの細胞を刺激する電極アレイとを含む3つの構成要素からなる。
【0339】
Humayunらは、網膜上のインプラントのパイオニアであった。患者に埋め込まれた最初の網膜上膜装置は、Second Sight Medical Productsによって開発されたArgus Iであり、16個の白金電極から構成された。次世代デバイスArgus IIは、60個の電極を有し、欧州での実用化に向けてCEマークを取得している。
【0340】
網膜下インプラントは、主に網膜の内顆粒層をターゲットとする。これらは、網膜の下に挿入されるため、脈絡膜と網膜の間に維持され、網膜剥離のリスクとともにインプラントの安定性を高める。2001年に、最初に注入された網膜下装置は、Optobionics、Inc.によって開発された。装置は、光を電気刺激に直接変換する直径2mmの自律アレイに配置された5000個のフォトダイオードからなっていた。
【0341】
脈絡膜貫通インプラントは、外側の部分から網膜を刺激する。このアプローチは、網膜剥離または脈絡膜出血のリスクを除去した、より容易な移植を提供する。バイオニックビジョンオーストラリアが主導するオーストラリアの取り組みでは、網膜を強膜の外側から刺激することによって皮質の活動を引き起こす脈絡膜上インプラントが開発されている。この戦略は、単極および双極のような異なる刺激装置構成において効率的であった。
【0342】
視神経は、非常に小さな領域で視野全体の情報を伝えるため、電気刺激の潜在的なターゲットでもある。しかし、直径2mmに含まれる軸索が100万個以上あるため、刺激装置を集中させることは、より困難である。視神経補綴物は、視神経の周りに配置された4接触カフ電極を介して異なるホスフェンを誘発することが示されており、このカフ電極は、位相当たりのパルスの振幅、持続時間、周波数、および数を変化させた二相電気パルスを放出する。
【0343】
外側膝状核(LGN)はまた、視覚的補綴物のための潜在的な部位である。これは網膜よりも大きい領域上での比較的単純な細胞分離の利点を有し、これはより高い解像度でターゲット領域への画像処理の適応を可能にする。敏捷なサルにおけるLGN刺激装置は、視覚的知覚の確認された誘発とその空間的局在を示している。
【0344】
緑内障、視神経症の場合、変性した網膜ニューロンを刺激することは不可能である。この場合、脳刺激が視覚補綴の唯一の利用可能な戦略である。Dobelleらは、機能的な皮質補綴物を提供した最初の1人であった。それらのインプラントは、視覚皮質の表面上に配置され、1人の患者は、20/1200の視力に達することができる64個の電極を有した。
【0345】
電極が皮質を貫通する場合、必要とされる刺激閾値は、視覚皮質の表在性刺激の場合よりも2〜3倍低い。Utah電極アレイは例えば、鋭い柱の先端に100個の電極を有する装置である。非ヒト霊長類におけるこの機器の最初の機能的な実験は、一般的にはニューロン記録のために使用され、電気的に誘発されたホスフェンの知覚を確認した。
【0346】
したがって、上記から、説明された装置は、提供する際に使用され得ることが理解されるであろう。
【0347】
以下の本明細書および特許請求の範囲全体を通して、文脈上別段の要求がない限り、「備える(comprise)」という語および「備える(comprises)」または「備える(comprising)」などの変動は記載された整数または整数または工程のグループの包含を意味するが、他の整数または整数のグループを排除するものではないと理解されるのであろう。本明細書で使用される場合、および別段の記載がない限り、「およそ(approximately)」および「およそ(about)」という語は±20%を意味する。
【0348】
当業者であれば、多数の変形および修正が明らかになることを理解するであろう。当業者に明らかになるこのような全ての変形および修正は、前に広く説明された本発明の精神および範囲内に入ると考えられるべきである。
【国際調査報告】