(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-517528(P2021-517528A)
(43)【公表日】2021年7月26日
(54)【発明の名称】灰を含む組成物
(51)【国際特許分類】
B28B 1/30 20060101AFI20210625BHJP
【FI】
B28B1/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-566328(P2020-566328)
(86)(22)【出願日】2018年12月17日
(85)【翻訳文提出日】2020年8月19日
(86)【国際出願番号】ES2018070807
(87)【国際公開番号】WO2019122478
(87)【国際公開日】20190627
(31)【優先権主張番号】U201731544
(32)【優先日】2017年12月19日
(33)【優先権主張国】ES
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520314881
【氏名又は名称】ナーボン,エセ.エレ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ナーボン プリエト,ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】サンチェス−ギタール ロペス−バレラ,フランシスコ ラモン
(72)【発明者】
【氏名】テルエル サイス,アントニオ
【テーマコード(参考)】
4G052
【Fターム(参考)】
4G052DA02
4G052DA08
4G052DB12
4G052DC06
(57)【要約】
本発明は、(i)クレイと、(ii)死亡した人、動物、または植物の火葬により生じた灰と、を含む組成物に関する。また、その目的は、上記組成物によって形成されるピースと当該ピースを獲得するユーザとの間に感情的結合を生じさせることである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)クレイと、
(b)死亡した対象の火葬により生じた灰と、
を含んでいる、組成物。
【請求項2】
上記クレイは、
ホワイトクレイ、石灰質土器ペースト、ドロマイト、フェルドスパー、カオリナイト、ハロイサイト、イライト、クロライト、バーミキュライト、モンモリロナイト、セピオライト−パリゴルスカイト、およびそれらの任意の組み合わせ;
を含むリストから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
上記クレイは、ホワイトクレイである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
上記灰は、直径0.25mm未満のサイズを有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
上記クレイの重量パーセンテージは、最終組成物に対して90%から95%までの範囲である、請求項1から4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
上記灰の重量パーセンテージは、最終組成物に対して5%から10%までの範囲である、請求項1から5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
上記灰は、人または動物に由来する、請求項1から6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
ベーキングされており、固体状であり、かつ、グレーズの外層をさらに含んでいる、請求項1から7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
上記グレーズの層は、以下のリストから、すなわち、
エポキシ樹脂、感光性樹脂、またはそれらの任意の組み合わせ;
の内から選択された樹脂である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の組成物を含んでいる、部材または像。
【請求項11】
請求項8または9に記載の組成物を含んでおり、かつ、サポート上に圧着されている、部材または像。
【請求項12】
上記部材または上記像は、3次元的である、請求項10または11に記載の部材または像。
【請求項13】
3次元の部材または像を得るための3Dプリンタ用のインクとしての、請求項1から7のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項14】
セラミックの部材または像としての、請求項1から9のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項15】
既にグレージングされた3次元の部材もしくは像、またはセラミックの像が、対応するサポート上に圧着される、請求項13または14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、(i)クレイと、(ii)死亡した人、動物、または植物の火葬により生じた灰と、を含む組成物に関する。また、その目的は、上記組成物によって形成されるピースと当該ピースを獲得するユーザとの間に感情的結合(emotional bond)を生じさせることである。
【0002】
〔本発明の背景〕
現在では、死亡した人およびペットへの記念(敬意)と思い出とを込めてデザインされた様々な製品が存在している。これらの製品は、伝統的には、死亡した最愛の者が有する毛髪、歯、および他のパーツ(部分)または組織を用いて製作されている。
【0003】
現在では、火葬(cremation)または焼却(incineration)は、最も常習的な死体の最終到達地点(final destinations)の1つであり、死体は、しばしば火葬場(crematorium)または火葬炉(cremation furnace)と呼ばれる場所で焼却される。火葬炉は、高温(約870℃から980℃)に達し得る工業用炉である。火葬炉には、身体の効率的な崩壊を保証するために特別な改良が施されている。灰は、当該崩壊のプロセスを経た結果である。火葬は、埋葬という慣習上で徐々に普及しつつある。また、灰は、大抵の場合、その最終的な形態(final destination)として、散乱した状態になる。そのため、灰は、以降の故人と遺族との間での直接的接触による感情的結合を構築することを不可能にする。
【0004】
〔発明の概要〕
本発明は、(i)少なくとも1つのクレイと、(ii)死亡した対象(人、動物、または植物)の火葬により生じた灰と、の混合物を含むことを特徴とする組成物を提供する。上記組成物の目的は、感情的物体(emotional object)または永久的な記念品(遺品)を製造することである。
【0005】
従って、本発明の第1の態様は、感情的組成物に関する。上記感情的組成物は、(a)クレイと、(b)死亡した対象の火葬により生じた灰と、を含んでいることによって、特徴付けられている。
【0006】
従来技術に記載された組成物の残余物(rest)と比較して、本発明に係る組成物の使用によって得られる利点は、(i)そのカスタマイズ性(customisability)、(ii)組成物と当該組成物から形成された物体との両方における均一な外観(圧縮によることを含む)、および、(iii)上記物体を着用または所有する人と上記対象との感情的結合を生じさせることである。
【0007】
別の好ましい実施形態において、上記感情的組成物は、上記クレイが、
ホワイトクレイ(白土)、石灰質土器ペースト、ドロマイト(苦灰石,白雲石)、フェルドスパー(長石)、カオリナイト(高陵石)、ハロイサイト、イライト、クロライト(緑泥石)、バーミキュライト(蛭石)、モンモリロナイト(モンモリロン石)、セピオライト(海泡石)−パリゴルスカイト、およびそれらの任意の組合せ;
を含むリストから選択されることによって、特徴付けられている。
【0008】
より好ましい実施形態において、上記感情的組成物は、ホワイトクレイであることによって、特徴付けられている。
【0009】
別の好ましい実施形態において、上記感情的組成物は、上記クレイの重量パーセンテージが、最終組成物に対して90%から95%までの範囲であることによって、特徴付けられている。
【0010】
別の好ましい実施形態において、上記感情的組成物は、上記灰の重量パーセンテージが、最終組成物に対して5%から10%までの範囲であることによって、特徴付けられている。
【0011】
別の好ましい実施形態では、上記感情的組成物がベーキング(焼成,加熱乾燥)されており、固体状であり、かつ、グレーズ(釉薬)の外層(c)をさらに含んでいることによって、特徴付けられている。上記グレーズの外層は、(i)セラミックの部材(element)もしくは像(フィギュア,構造物)(figure)、または、(ii)3Dプリントによって得られる3次元の像もしくは部材として、上記組成物を使用するために適している。上記グレーズは、上記ベーキングプロセスにおいて生じたポア(孔隙)を、当該グレーズによって塞ぐために添加される。これにより、(i)最終的なセラミック部材もしくは像、または、(ii)3Dプリントによって得られる3次元の像もしくは部材に対して、均一性および剛性を提供することができる。上記グレーズは、従来のオーブン中において800℃から900℃までの範囲の温度によって感情的組成物をベーキングした後に、従来のオーブン中において1000℃から1060℃までの範囲の温度による第2のベーキングが行われる前に添加される。
【0012】
上記組成物のさらに好ましい実施形態では、上記グレーズの外層は、好ましくは、以下のリストから、すなわち、
エポキシ樹脂、感光性樹脂、またはそれらの任意の組み合わせ;
の内から選択された樹脂(レジン)である。
【0013】
別の好ましい実施形態において、上記感情的組成物は、上記灰のサイズに対する上記クレイの粒子サイズ(粒径)が、構造内で大型のポアが発生することを防ぐサイズであることによって、特徴付けられている。これにより、セラミック物体の脆弱性を最小限に抑え、上記灰を含むセラミック物体の適切な圧縮を実現できる。その結果、当該セラミック物体の薄片化(lamination)または破壊を防ぐことができる。
【0014】
本発明の別の態様は、本発明の説明に係る組成物を含む部材または像に関する。
【0015】
本発明の別の態様は、グレーズの外層を含む組成物を含んでおり、かつ、サポート(支持体)上に取り付けられている部材または像に関する。上記グレーズの外層は、好ましくは、以下のリストから、すなわち、
エポキシ樹脂、感光性樹脂、またはそれらの任意の組み合わせ;
の内から選択される樹脂である。
【0016】
本発明の好ましい実施形態は、部材または像である。上記部材または上記像は、3次元的である。
【0017】
本発明の別の態様は、3次元の部材または像を得るための3Dプリンタ用のインクとしての、上記組成物の使用に関する。当該組成物の使用により、死亡した人、ペット、または生体の記念品としての役割を果たすことを目的とする物体が製造される。好ましくは、上記3次元の部材または像は、遺品である。
【0018】
本発明の別の態様は、セラミックの部材または像としての上記組成物の使用に関する。好ましくは、当該部材または像は、遺品である。
【0019】
より好ましい実施形態は、対応するサポート上に取り付けられている、既にグレージングされた(艶出しされた)(glazed)3次元の部材もしくは像またはセラミックの像の使用である。
【0020】
本発明において、「感情的組成物(情緒的組成物)」(emotional composition)とは、死体の火葬により生じた灰を少なくとも一定の割合で含む任意の組成物を意味すると理解される。
【0021】
本発明において、「対象」(subject)とは、ヒト、動物、または植物(vegetable)を意味すると理解される。
【0022】
本発明において、「灰」とは、死亡した人、死亡した動物(例:アニマルコンパニオンまたはペット)、または植物さえも火葬するプロセスにより生じた灰を意味すると理解される。
【0023】
好ましい実施形態において、灰は、火葬プロセスの最後に回収される。その後、直径0.25ミリメートル未満のサイズの灰を得るため、灰は、濾過され、ふるいにかけられる。これにより、その後の最終組成物の混合において、均一性が保証される。本実施形態は、3Dプリンタのインクとして用いられる最適な粒子サイズを有する本発明の組成物を得るために適している。これらの粒子サイズによれば、組成物が、4バールの圧力での3Dプリンタの加圧チャンバからの押出(押出成型)(extrusion)に対して最適化されるからである。
【0024】
本発明において、「クレイ(粘土)」(clay)とは、0.002ミリメートル未満の粒子サイズを有するフィロシリケートまたは任意の他の凝集ミネラル(凝集無機物,凝縮鉱物)(agglomerating mineral)の任意の粒子または断片(破片)を意味すると理解される。
【0025】
本発明において、「フィロシリケート(phyllosilicate)」とは、シリケート(ケイ酸塩)のサブクラスを意味すると理解される。シリケートのサブクラスは、非常に多様な環境において一般的であり、完全な基材剥離(perfect basal exfoliation)の存在から生じる葉状(leafy)(phyllon=leaf)または薄片状(flaky)の形質(habit)を共通の構成(特徴)として有するミネラルを含む。フィロシリケートは、空間の2方向において無限次元の四面体層が自身の構造中に存在することによって生じる。これらの化合物の化学式は、(Si
2O
52−)
nアニオンを常に含んでいる。
【0026】
明細書および特許請求の範囲の全体にわたって、「含む」(comprises)という文言およびその変形語は、他の技術的構成、付加物(添加物)(additives)、コンポーネント(成分)、またはステップを排除することを意図していない。当業者であれば、本発明の他の目的、利点、および構成は、部分的には説明から、また部分的には本発明の実施から生じるであろう。以下の例(実施例)および図面は、例示の目的で提供されており、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0027】
〔発明の好適な実施形態〕
以下、本発明の目的に関する好ましい実施形態について、詳細な説明を提示する。
【0028】
<3Dプリントおよびその後のグレージングによって得られた、クレイおよび灰から作製された像の調製>
調製のために、死亡した生体の遺骸の火葬により生じた灰が回収される。その後、0.25ミリメートルよりも大きな直径を有する灰の粒子を排除するために、灰は、濾過され、ふるいにかけられる。
【0029】
選択された粒子は、0.002ミリメートル未満の粒子サイズを有するクレイと混合され、その結果、均一な混合物が得られる。その後、当該混合物は、圧力システムを備えるコンテナの内部に導入される。当該コンテナは、内部に格納された物質に対して、4バールの超過圧力(overpressure)を印加する。
【0030】
当該コンテナは、上述の物質の混合物を、少なくとも1つの押出ノズルを備える3Dプリンタに供給するために、導入された超過圧力によって当該混合物を内部から排出する排出口を備える。
【0031】
当該プリンタのノズルは、所望の物体になるまで、外部の基材に、当該物質の混合物から成る複数の層を堆積させる。形成される所望の物体のデザインは、コンピュータファイルによってあらかじめ導入されている。本明細書に記載の好ましい実施形態では、連続する層は約1ミリメートルの厚みを有し、最終的に、選択されたデザインを有する剛体が得られる。
【0032】
プリントが完了したら、ピースを約8〜12時間乾燥させる。
【0033】
ピースが完全に乾燥すると、約15時間を要する第1のベーキングが行われる。この第1のベーキングにおいて到達する最高温度は、850℃である。
【0034】
その後、ピースは、ペイントブラシの補助により、当該ピースの表面全体をコーティングすることによってグレージングされる。そして、第2のベーキングが行われる。第2のベーキングにおいて、グレーズは、物体の表面上において溶解(溶融)する。このプロセスは、12時間を要し、最高温度は、1030℃に達する。
【0035】
最後に、既にグレージングされたピースが、対応するサポート上に取り付けられる。
【国際調査報告】