特表2021-517915(P2021-517915A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-517915チーグラー・ナッタ触媒の工業的製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-517915(P2021-517915A)
(43)【公表日】2021年7月29日
(54)【発明の名称】チーグラー・ナッタ触媒の工業的製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/654 20060101AFI20210702BHJP
【FI】
   C08F4/654
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2020-526300(P2020-526300)
(86)(22)【出願日】2019年7月1日
(85)【翻訳文提出日】2020年4月28日
(86)【国際出願番号】CN2019094227
(87)【国際公開番号】WO2020237772
(87)【国際公開日】20201203
(31)【優先権主張番号】201910451199.2
(32)【優先日】2019年5月28日
(33)【優先権主張国】CN
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520150636
【氏名又は名称】国家能源集▲団▼▲寧▼夏煤▲業▼有限責任公司
【氏名又は名称原語表記】CHINA ENERGY GROUP NINGXIA COAL INDUSTRY CO., LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】511096558
【氏名又は名称】中国科学院化学研究所
【氏名又は名称原語表記】INSTITUTE OF CHEMISTRY, CHINESE ACADEMY OF SCIENCES
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】焦 洪▲橋▼
(72)【発明者】
【氏名】李 化毅
(72)【発明者】
【氏名】邵 俊杰
(72)【発明者】
【氏名】袁 ▲ウェイ▼
(72)【発明者】
【氏名】胡 友良
(72)【発明者】
【氏名】黄 河
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲倩▼
(72)【発明者】
【氏名】王 林
【テーマコード(参考)】
4J128
【Fターム(参考)】
4J128AA01
4J128AB01
4J128AC05
4J128BA00A
4J128BA01B
4J128BB00A
4J128BB01B
4J128BC15B
4J128CA16A
4J128CB23A
4J128CB44A
4J128CB93C
4J128EA01
4J128EB04
4J128EC01
4J128FA01
4J128FA09
4J128GB07
(57)【要約】
本発明は、触媒製造の技術分野に関し、チーグラー・ナッタ触媒の製造方法を開示し、不活性溶剤の存在で、ハロゲン化マグネシウム、アルコール類及び電子供与体を第1接触反応させてハロゲン化マグネシウムアルコール付加物を得て、第1冷却を行うステップと、ハロゲン化チタンを第2冷却するステップと、冷却後のハロゲン化チタン、冷却後のハロゲン化マグネシウムアルコール付加物含有生成物及び電子供与体を第2接触反応させるステップと、第2接触反応の生成物をろ過して、チーグラー・ナッタ触媒を得るステップと、チーグラー・ナッタ触媒及び加熱後のハロゲン化チタンを第3接触反応させるステップと、を含む。
該方法は、周期が短く、効率が高いなどの利点を有し、工業的生産に適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性溶剤の存在で、ハロゲン化マグネシウム、アルコール類及び第1電子供与体を第1接触反応させて、ハロゲン化マグネシウムアルコール付加物を得るステップ(1)と、
ステップ(1)で得られたハロゲン化マグネシウムアルコール付加物含有生成物を第1冷却し、冷却後のハロゲン化マグネシウムアルコール付加物含有生成物を得るステップ(2)と、
ハロゲン化チタンを第2冷却し、冷却後のハロゲン化チタンを得るステップ(3)と、
前記冷却後のハロゲン化チタン、冷却後のハロゲン化マグネシウムアルコール付加物含有生成物及び第2電子供与体を第2接触反応させるステップ(4)と、
前記第2接触反応の生成物をろ過して、チーグラー・ナッタ触媒を得るステップ(5)と、を含む、
ことを特徴とするチーグラー・ナッタ触媒の工業的製造方法。
【請求項2】
ハロゲン化チタンを第1加熱し、加熱後のハロゲン化チタンを得て、前記ステップ(5)のチーグラー・ナッタ触媒及び前記加熱後のハロゲン化チタンを第3接触反応させるステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記チーグラー・ナッタ触媒を洗浄するステップをさらに含み、
好ましくは、前記チーグラー・ナッタ触媒をスクリーニングするステップをさらに含み、
好ましくは、前記チーグラー・ナッタ触媒を包装するステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
溶剤を第2加熱し、加熱後の溶剤を得るステップをさらに含み、
前記加熱後の溶剤を用いてステップ(5)のチーグラー・ナッタ触媒を洗浄し、
前記溶剤は、ペンタン、ヘキサン又はヘプタンである、
ことを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
それぞれの前記ステップは、不活性ガスの保護下で行われ、
好ましくは、前記各原料の含水量が10ppm未満である、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ハロゲン化マグネシウムの一般式は、MgR12であり、式中、R1、R2は、同一又は異なるハロゲンであり、
好ましくは、前記ハロゲン化マグネシウムは、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム又はヨウ化マグネシウムであり、
好ましくは、前記アルコール類は、一価アルコール又はポリオールのうちの1種又は複数種であり、
好ましくは、前記第1電子供与体及び前記第2電子供与体は、それぞれフェノール類、ケトン類、アルデヒド類、カルボン酸、有機又は無機酸エステル、エーテル、エーテルエステル及びアルキルシロキサン類化合物のうちの1種又は複数種であり、
好ましくは、前記不活性溶剤は、アルカン、芳香族炭化水素及びその置換体のうちの1種又は複数種である、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
ステップ(1)では、
前記ハロゲン化マグネシウムと、アルコール類と、第1電子供与体とのモル比は1:10:0.1〜10:1:5であり、好ましくは1:5:0.1〜5:1:3であり、
前記アルコール類と不活性溶剤との体積比は1:10〜10:1であり、好ましくは1:5〜5:1である、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記第1接触反応の温度T1は50℃〜180℃であり、好ましくは80℃〜150℃であり、
前記第1接触反応の時間t1は0.5h〜5hであり、好ましくは1h〜3hである、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記第1冷却の温度T2は−50℃〜10℃であり、好ましくは−30℃〜0℃であり、
好ましくは、前記第2冷却の温度T3は−50℃〜10℃であり、好ましくは−30℃〜0℃である、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記ハロゲン化チタンの一般式は、TiR3k4lであり、式中、R3はハロゲン、R4はC1〜C5のアルコキシ基、lは0〜3の整数であり、且つk+l=4であり、
好ましくは、前記ハロゲン化チタンは、四塩化チタン、四臭化チタン又は四ヨウ化チタンである、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
ステップ(4)では、
前記冷却後のハロゲン化チタンと冷却後のハロゲン化マグネシウムアルコール付加物含有生成物との体積比は、10:1〜1:2であり、好ましくは5:1〜1:1であり、
前記第2電子供与体とハロゲン化マグネシウムアルコール付加物とのモル比は、1:20〜1:1であり、好ましくは1:10〜1:2である、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記第2接触反応の温度T4は50℃〜200℃であり、好ましくは80℃〜160℃であり、前記第2接触反応の時間t2は0.5h〜10hであり、好ましくは1h〜5hである、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記第1加熱の温度T5は50℃〜200℃であり、好ましくは80℃〜160℃である、ことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項14】
前記第3接触反応の温度T6は50℃〜200℃であり、好ましくは80℃〜160℃であり、前記第3接触反応の時間t3は0.5h〜10hであり、好ましくは1h〜5hである、
ことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項15】
前記第2加熱の温度T7は30℃〜65℃であり、好ましくは40℃〜60℃である、ことを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒製造の技術分野に関し、具体的には、チーグラー・ナッタ触媒の工業的製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チーグラー・ナッタ触媒の出現以来、オレフィン重合触媒の関連技術は大きな進歩を遂げており、特に内部電子供与体及び担体の製造において多くの革新がなされてきた。例えば、CN102212153Aは、マレイン酸ジエステルを含むオレフィン重合触媒の固体成分及びその製造方法を開示しており、CN102212154Aは、オレフィン重合触媒の固体成分及びその製造方法を開示しており、具体的には、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジエステル化合物又は1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエステル化合物を内部電子供与体の触媒成分とした製造方法を開示しており、CN102432705Aは、オレフィン重合触媒の固体成分及びその製造方法を開示しており、具体的には、水素化フルオレンジエーテルを内部電子供与体の触媒成分とした製造方法を開示しており、CN108264589Aは、ポリプロピレン触媒成分及びその製造方法、ポリプロピレン触媒を開示しており、具体的には、2,2’−ビフェノールエステル系化合物、2,2’−ジヒドロカルビル−1,3−ジメチルエーテル系化合物を内部電子供与体とした触媒を開示しており、CN103030718Aは、オレフィン重合固体触媒用の担体の製造方法を開示しており、そのステップは、主に、まず、ハロゲン又はハロゲン化合物を一部のアルコール類化合物に溶解し、次に一部の金属マグネシウムを添加して加熱し、攪拌して混合し、その後、アルコール類化合物及び金属マグネシウムを追加し、最後に、チタンのハロゲン化物を加えて反応させることである。
【0003】
チーグラー・ナッタ触媒の製造分野で多くの研究が行われているが、触媒の工業的製造プロセスは依然として非常に複雑で時間がかかり、触媒の生産効率を向上させるためにいくつかの革新や改善が必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】CN102212153A
【特許文献2】CN102212154A
【特許文献3】CN102432705A
【特許文献4】CN108264589A
【特許文献5】CN103030718A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、製造周期が長く、効率が低いなどの従来技術の問題を解決するために、周期が短く、効率が高いなどの利点を有するチーグラー・ナッタ触媒の工業的製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成させるために、本発明は、チーグラー・ナッタ触媒の工業的製造方法を提供し、該方法は、
不活性溶剤の存在で、ハロゲン化マグネシウム、アルコール類及び第1電子供与体を第1接触反応させて、ハロゲン化マグネシウムアルコール付加物を得るステップ(1)と、
ステップ(1)で得られたハロゲン化マグネシウムアルコール付加物含有生成物を第1冷却し、冷却後のハロゲン化マグネシウムアルコール付加物含有生成物を得るステップ(2)と、
ハロゲン化チタンを第2冷却し、冷却後のハロゲン化チタンを得るステップ(3)と、
前記冷却後のハロゲン化チタン、冷却後のハロゲン化マグネシウムアルコール付加物含有生成物及び第2電子供与体を第2接触反応させるステップ(4)と、
前記第2接触反応の生成物をろ過して、チーグラー・ナッタ触媒を得るステップ(5)と、を含む。
【0007】
好ましくは、前記方法は、ハロゲン化チタンを第1加熱し、加熱後のハロゲン化チタンを得て、前記ステップ(5)のチーグラー・ナッタ触媒及び前記加熱後のハロゲン化チタンを第3接触反応させるステップをさらに含む。
【0008】
好ましくは、前記方法は、前記チーグラー・ナッタ触媒を洗浄するステップをさらに含む。
【0009】
好ましくは、前記方法は、前記チーグラー・ナッタ触媒をスクリーニングするステップをさらに含む。
【0010】
好ましくは、前記方法は、前記チーグラー・ナッタ触媒を包装するステップをさらに含む。
【0011】
好ましくは、前記方法は、溶剤を第2加熱し、加熱後の溶剤を得るステップをさらに含み、前記加熱後の溶剤を用いてステップ(5)のチーグラー・ナッタ触媒を洗浄し、前記溶剤は、ペンタン、ヘキサン又はヘプタンである。
【0012】
好ましくは、それぞれのステップは、不活性ガスの保護下で行われる。
【0013】
好ましくは、前記各原料の含水量が10ppm未満である。
【0014】
好ましくは、前記ハロゲン化マグネシウムの一般式は、MgR12であり、式中、R1、R2は、同一又は異なるハロゲンである。
【0015】
好ましくは、前記ハロゲン化マグネシウムは、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム又はヨウ化マグネシウムである。
【0016】
好ましくは、前記アルコール類は、一価アルコール又はポリオールのうちの1種又は複数種である。
【0017】
好ましくは、前記第1電子供与体及び前記第2電子供与体は、それぞれフェノール類、ケトン類、アルデヒド類、カルボン酸、有機又は無機酸エステル、エーテル、エーテルエステル及びアルキルシロキサン類化合物のうちの1種又は複数種である。
【0018】
好ましくは、前記第1電子供与体及び前記第2電子供与体は同じである。
【0019】
好ましくは、前記不活性溶剤は、アルカン、芳香族炭化水素及びその置換体のうちの1種又は複数種である。
【0020】
好ましくは、ステップ(1)では、前記ハロゲン化マグネシウムと、アルコール類と、第1電子供与体とのモル比は1:10:0.1〜10:1:5であり、より好ましくは1:5:0.1〜5:1:3であり、前記アルコール類と不活性溶剤との体積比は1:10〜10:1であり、より好ましくは1:5〜5:1である。
【0021】
好ましくは、前記第1接触反応の温度T1は50℃〜180℃であり、より好ましくは80℃〜150℃であり、前記第1接触反応の時間t1は0.5h〜5hであり、より好ましくは1h〜3hである。
【0022】
好ましくは、前記第1冷却の温度T2は−50℃〜10℃であり、より好ましくは−30℃〜0℃である。
【0023】
好ましくは、前記第2冷却の温度T3は−50℃〜10℃であり、より好ましくは−30℃〜0℃である。
【0024】
好ましくは、前記ハロゲン化チタンの一般式は、TiR3k4lであり、式中、R3はハロゲン、R4はC1〜C5のアルコキシ基、lは0〜3の整数であり、且つk+l=4である。
【0025】
好ましくは、前記ハロゲン化チタンは、四塩化チタン、四臭化チタン又は四ヨウ化チタンである。
【0026】
好ましくは、ステップ(4)では、前記冷却後のハロゲン化チタンと冷却後のハロゲン化マグネシウムアルコール付加物含有生成物との体積比は10:1〜1:2であり、より好ましくは5:1〜1:1であり、前記第2電子供与体とハロゲン化マグネシウムアルコール付加物とのモル比は1:20〜1:1であり、より好ましくは1:10〜1:2である。
【0027】
好ましくは、前記第2接触反応の温度T4は50℃〜200℃であり、より好ましくは80℃〜160℃であり、前記第2接触反応の時間t2は0.5h〜10hであり、より好ましくは1h〜5hである。
【0028】
好ましくは、前記第1加熱の温度T5は50℃〜200℃であり、より好ましくは80℃〜160℃である。
【0029】
好ましくは、前記第3接触反応の温度T6は50℃〜200℃であり、より好ましくは80℃〜160℃であり、前記第3接触反応の時間t3は0.5h〜10hであり、より好ましくは1h〜5hである。
【0030】
好ましくは、前記第2加熱の温度T7は30℃〜65℃であり、好ましくは40℃〜60℃である。
【発明の効果】
【0031】
本発明では、独立した予冷、予熱操作により原料を操作温度となるまで熱交換しておくことにより、昇温・降温のための待ち時間を効果的に減少させ、また、触媒のろ過プロセスを個別の触媒フィルタにて行うことで、触媒担持釜の利用率を高め、本発明は、触媒の工業的製造に用いられると、生産周期が短く、生産効率が高いなどの利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書で開示される範囲の端点及び任意の値は、この精確な範囲又は値に限定されず、これらの範囲又は値は、これらの範囲又は値に近い値を含むと理解されるべきである。数値範囲の場合、各範囲の端点値同士、各範囲の端点値と個々の値、及び個々の値同士は、互いに組み合わせられて1つ以上の新しい数値範囲となることができ、これら数値の範囲は、本明細書に具体的に開示されていると見なされるべきである。
【0033】
本発明の目的を達成させるために、本発明は、チーグラー・ナッタ触媒の工業的製造方法を提供し、該方法は、
不活性溶剤の存在で、ハロゲン化マグネシウム、アルコール類及び第1電子供与体を第1接触反応させて、ハロゲン化マグネシウムアルコール付加物を得るステップ(1)と、
ステップ(1)で得られたハロゲン化マグネシウムアルコール付加物含有生成物を第1冷却し、冷却後のハロゲン化マグネシウムアルコール付加物含有生成物を得るステップ(2)と、
ハロゲン化チタンを第2冷却し、冷却後のハロゲン化チタンを得るステップ(3)と、
前記冷却後のハロゲン化チタン、冷却後のハロゲン化マグネシウムアルコール付加物含有生成物及び第2電子供与体を第2接触反応させるステップ(4)と、
前記第2接触反応の生成物をろ過して、チーグラー・ナッタ触媒を得るステップ(5)と、を含む。
【0034】
本発明では、原料を操作温度となるまで熱交換しておくことにより、昇温・降温のための待ち時間を効果的に減少させ、また、触媒のろ過プロセスを個別の触媒フィルタにて行うことで、触媒担持釜の利用率を高め、それによって、生産周期を短縮させ、生産効率を向上させる。
【0035】
本発明の方法では、生産周期をさらに短縮させるために、ステップ(1)で得られたハロゲン化マグネシウムアルコール付加物含有生成物を個別の貯蔵タンクに移して、次の冷却ステップを行うことができる。
【0036】
本発明の方法では、生産周期をさらに短縮させるために、上記ステップ(2)の冷却を行いながら、ハロゲン化チタンを冷却するステップであるステップ(3)を行う。
【0037】
反応材料を取り出して個別に冷却すること、及び反応対象材料を同時に冷却することにより、触媒の生産周期をさらに短縮させる。
【0038】
本発明の方法では、ステップ(4)の反応装置については、特に限定がなく、本分野に一般的に使用される各種の触媒生産装置であってもよく、本発明の特定実施形態では、触媒担持釜を用いてチーグラー・ナッタ触媒を製造する。
【0039】
好ましくは、前記方法は、ハロゲン化チタンを第1加熱し、加熱後のハロゲン化チタンを得て、前記ステップ(5)でのチーグラー・ナッタ触媒と前記加熱後のハロゲン化チタンを第3接触反応させるステップをさらに含む。このようなステップによって生産周期をさらに短縮させ、製造されるチーグラー・ナッタ触媒の性能を確保することができる。
【0040】
好ましくは、前記方法は、前記チーグラー・ナッタ触媒を洗浄するステップをさらに含む。具体的には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの溶剤を用いて、製造されたチーグラー・ナッタ触媒を洗浄することができ、洗浄回数については、特に限定がなく、2〜8回としてもよく、必要に応じて調整してもよい。
【0041】
上記ステップは、洗浄後のチーグラー・ナッタ触媒を乾燥するステップをさらに含んでもよい。
【0042】
上記乾燥の方式については、特に限定がなく、乾燥釜にて実施することができ、具体的には、例えば、洗浄後の触媒固体粒子を乾燥釜に輸送し、真空乾燥させる。
【0043】
乾燥の温度は、例えば、50℃〜200℃であってもよく、好ましくは60℃〜90℃である。
【0044】
好ましくは、前記方法は、前記チーグラー・ナッタ触媒をスクリーニングするステップをさらに含む。具体的には、製造されたチーグラー・ナッタ触媒をスクリーニング装置で分級して選別することができる。
【0045】
上記スクリーニング装置は、例えば、振動篩、固定篩、ローラー篩、円筒篩や弧状篩のうちの1種又は複数種の装置の組み合わせであってもよく、本発明の特定形態では、振動篩が使用される。
【0046】
好ましくは、前記方法は、前記チーグラー・ナッタ触媒を包装するステップをさらに含む。具体的には、選別された合格品を触媒混合タンクに導入して、複数の釜における触媒をブレンドした後、直接包装するか、又はホワイトオイルと均一に混合して包装する。
【0047】
本発明の方法では、好ましくは、それぞれのステップは、不活性ガスの保護下で行われる。
【0048】
本発明の方法では、好ましくは、前記各原料の含水量が10ppm未満である。
【0049】
本発明の方法では、好ましくは、ステップ(1)では、前記ハロゲン化マグネシウムと、アルコール類と、第1電子供与体とのモル比は1:10:0.1〜10:1:5であり、前記アルコール類と不活性溶剤との体積比は1:10〜10:1であり、より好ましくは、ステップ(1)では、前記ハロゲン化マグネシウムと、アルコール類と、第1電子供与体とのモル比は1:5:0.1〜5:1:3であり、前記アルコール類と不活性溶剤との体積比は1:5〜5:1である。
【0050】
本発明の方法では、好ましくは、前記第1接触反応の温度T1は50℃〜180℃であり、前記第1接触反応の時間t1は0.5h〜5hであり、より好ましくは、前記第1接触反応の温度T1は80℃〜150℃であり、前記第1接触反応の時間t1は1h〜3hである。
【0051】
本発明の方法では、好ましくは、前記ハロゲン化マグネシウムの一般式はMgR12であり、式中、R1、R2は同一又は異なるハロゲンである。上記ハロゲン化マグネシウムには、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウムなどが含まれるが、これらに制限されず、且つハロゲン化マグネシウムは、一般式MgR12を有する上記化合物のうちの1種又は複数種の混合物であってもよく、より好ましくは、前記ハロゲン化マグネシウムは、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム又はヨウ化マグネシウムであり、本発明の一特定実施形態では、塩化マグネシウムが使用される。
【0052】
本発明の方法では、好ましくは、前記アルコール類は、一価アルコール、ポリオール又はこれらの混合物である。上記一価アルコールについては、特に限定がなく、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、ネオペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、ネオヘキサノール、ヘプタノール、イソヘプタノール、ネオヘプタノール、オクタノール、イソオクタノール、ネオオクタノール、ノナノール又はイソノナノールであってもよく、さらに好ましくは、前記一価アルコールは、エタノール、t−ブタノール、ヘプタノール又はイソオクタノールであり、より好ましくは、前記一価アルコールはイソオクタノールである。
【0053】
本発明の方法では、好ましくは、前記第1電子供与体及び前記第2電子供与体は、それぞれフェノール類、ケトン類、アルデヒド類、カルボン酸、有機又は無機酸エステル、モノエーテル、ジエーテル、エーテルエステル及びアルキルシロキサン類化合物のうちの1種又は複数種であり、より好ましくは、前記電子供与体は、ポリカルボン酸エステル又はジエーテルである。
【0054】
本発明の方法では、好ましくは、前記第1電子供与体及び前記第2電子供与体は同じである。
【0055】
本発明の方法では、好ましくは、前記ポリカルボン酸エステルは、芳香族ポリカルボン酸エステルであり、より好ましくは、前記ポリカルボン酸エステルは、芳香族ポリカルボン酸モノエステル又は芳香族ポリカルボン酸ジエステルである。
【0056】
上記芳香族カルボン酸ジエステルについては、特に限定がなく、例えば、フタル酸ジエステル又はテレフタル酸ジエステルであってもよく、その中でも、フタル酸ジエステルは、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸n−プロピル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸メチルエチル、フタル酸メチルイソプロピル、フタル酸メチルn−プロピル、フタル酸エチルn−ブチル、フタル酸エチルイソブチル、フタル酸ジ−n−ペンチル、フタル酸ジイソペンチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジ−n−ヘプチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸(2,2−ジメチルヘキシル)ジエステル、フタル酸(2−エチルヘキシル)ジエステル、フタル酸ジ−n−ノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸(2,2−ジメチルヘプチル)ジエステル、フタル酸n−ブチルイソヘキシル、フタル酸n−ブチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ペンチルn−ヘキシル、フタル酸n−ペンチルイソノニル、フタル酸イソペンチルn−デシル、フタル酸n−ペンチルウンデシル、フタル酸イソペンチルイソヘキシル、フタル酸n−ヘキシル(2−メチルヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ヘキシル(イソノニル)、フタル酸n−ヘキシル(n−デシル)、フタル酸n−ヘプチル(2−エチルヘキシル)、フタル酸n−ヘプチル(イソノニル)、フタル酸n−ヘプチルネオノニル及びフタル酸2−エチルヘキシル(イソノニル)のうちの1種又は複数種を混合して使用することができ、上記テレフタル酸ジエステルについては、特に限定がなく、例えば、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジn−プロピル、テレフタル酸ジイソプロピル、テレフタル酸ジ−n−ブチル、テレフタル酸ジ−n−ブチル、テレフタル酸ジイソブチル、テレフタル酸エチルメチル、テレフタル酸メチルイソプロピル、テレフタル酸エチル(n−プロピル)、テレフタル酸エチル(n−ブチル)、テレフタル酸エチル(イソブチル)、テレフタル酸ジ−n−ペンチル、テレフタル酸ジイソペンチル、テレフタル酸ジヘキシル、テレフタル酸ジ−n−ヘプチル、テレフタル酸ジ−n−オクチル、テレフタル酸ジイソオクチル、テレフタル酸ジ(2,2−ジメチルヘキシル)、テレフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、テレフタル酸ジ−n−ノニル、テレフタル酸ジイソノニル、テレフタル酸イソデシル、テレフタル酸ジ(2,2−ジメチルエチルヘプチル)、テレフタル酸n−ブチルイソヘキシル、テレフタル酸n−ペンチルn−ヘキシル、テレフタル酸n−ペンチルイソヘキシル、テレフタル酸イソペンチル(ヘプチル)、テレフタル酸n−ペンチル(2−エチルヘキシル)、テレフタル酸n−ペンチル(イソノニル)、テレフタル酸イソペンチル(n−デシル)、テレフタル酸n−ペンチルウンデシル、テレフタル酸イソペンチルイソヘキシル、テレフタル酸n−ヘキシル(2−エチルヘキシル)、テレフタル酸n−ヘキシル(イソノニル)、テレフタル酸n−ヘキシル(n−デシル)、テレフタル酸n−ヘプチル(2−エチルヘキシル)、テレフタル酸n−ヘプチル(イソノニル)、テレフタル酸n−ヘプチル(ネオデシル)及びテレフタル酸2−エチルヘキシル(イソノニル)のうちの1種又は複数種を混合して使用することができ、好ましくは、前記芳香族カルボン酸ジエステルは、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジイソデシル、テレフタル酸ジ−n−ブチル、テレフタル酸ジイソブチル、テレフタル酸ジ−n−オクチル、テレフタル酸ジイソオクチル及びテレフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)のうちの1種又は複数種を混合して使用する。
【0057】
上記ジエーテル類については、特に限定がなく、例えば、ジメチルエーテル、エチルジエーテル、メチルエチルジエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチルエーテル、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパンなどを含むアルキルジエーテル類であってもよく;
ジメチルフェニルエーテル、エチルフェニルジエーテル、n−プロピルフェニルジエーテル、イソプロピルフェニルジエーテル、n−ブチルフェニルジエーテル、イソブチルフェニルジエーテル、トリフェニルジエーテル、9,9−ジ(メトキシメチル)フルオレン、2−メトキシメチルベンゾフラン又はビスフェノールジエーテルなどを含むアリールジエーテル類であってもよい。
【0058】
上記アルキルシロキサン類については、特に限定がなく、例えば、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジn−ブチルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルtert−ブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、2−エチルピペリジニル−2−tert−ブチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロペンチルシクロヘキシルジメトキシシラン又はイソブチルイソプロピルジメトキシシランなどであってもよい。
【0059】
本発明の方法では、好ましくは、前記不活性溶剤は、アルカン、芳香族炭化水素及びその置換体のうちの1種又は複数種である。
【0060】
上記アルカンについては、特に限定がなく、例えば、n−ヘキサン、イソヘキサン、ネオヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、イソヘプタン、ネオヘプタン、シクロヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、ネオオクタン、シクロオクタン、n−ノナン、イソノナン、ネオノナン、シクロノナン、n−デカン、イソデカン、ネオデカン又はシクロデカンなどであってもよく、上記芳香族炭化水素は、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼンなどであってもよく、好ましくは、前記アルカンは、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、トルエン又はキシレンである。
【0061】
本発明の方法では、好ましくは、前記第1冷却の温度T2は−50℃〜10℃であり、より好ましくは、前記第1冷却の温度T2は−30℃〜0℃である。
【0062】
本発明の方法では、好ましくは、前記第2冷却の温度T3は−50℃〜10℃であり、より好ましくは、前記第2冷却の温度T3は−30℃〜0℃である。
【0063】
本発明の方法では、好ましくは、前記ハロゲン化チタンの一般式はTiR3k4lであり、式中、R3はハロゲンであり、R4はC1〜C5のアルコキシ基であり、lは0〜3の整数であり、且つk+l=4である。具体的には、例えば、lは0、1、2又は3であってもよく、Kは1、2、3又は4であってもよく、ハロゲン化チタンは、四塩化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタン、メトキシ三塩化チタン、エトキシ三塩化チタン、プロポキシ三塩化チタン、n−ブトキシ三塩化チタン、ジメトキシ二塩化チタン、ジエトキシ二塩化チタン、ジプロポキシ二塩化チタン、ジn−ブトキシ二塩化チタン、トリメトキシ塩化チタン、トリエトキシ塩化チタン、トリプロポキシ塩化チタン及びトリn−ブトキシ塩化チタンのうちの1種又は複数種であってもよく、より好ましくは、前記ハロゲン化チタンは四塩化チタン、四臭化チタン又は四ヨウ化チタンであり、本発明の一特定実施形態では、四塩化チタンが使用される。
【0064】
本発明の方法では、ステップ(4)では、好ましくは、前記冷却後のハロゲン化チタンと冷却後のハロゲン化マグネシウムアルコール付加物含有生成物との体積比は10:1〜1:2であり、前記第2電子供与体とハロゲン化マグネシウムアルコール付加物とのモル比は1:20〜1:1であり、より好ましくは、前記冷却後のハロゲン化チタンと冷却後のハロゲン化マグネシウムアルコール付加物含有生成物との体積比は5:1〜1:1であり、前記第2電子供与体とハロゲン化マグネシウムアルコール付加物とのモル比は1:10〜1:2である。
【0065】
上記ステップ(4)の反応材料の添加方式については、特に限定がなく、同時に添加してもよく、各反応材料を順次添加してもよい。
【0066】
製造されるチーグラー・ナッタ触媒の性能をさらに確保するために、上記冷却後のハロゲン化マグネシウムアルコール付加物含有生成物の添加時間が限定され、好ましくは、冷却後のハロゲン化マグネシウムアルコール付加物含有生成物の添加時間は0.2h〜5hであり、より好ましくは、冷却後のハロゲン化マグネシウムアルコール付加物含有生成物の添加時間は0.5h〜2hである。
【0067】
本発明の方法では、好ましくは、前記第2接触反応の温度T4は50℃〜200℃であり、前記第2接触反応の時間t2は0.5h〜10hであり、より好ましくは、前記第2接触反応の温度T4は80℃〜160℃であり、前記第2接触反応の時間t2は1h〜5hである。
【0068】
本発明の方法では、好ましくは前記第1加熱の温度T5は50℃〜200℃であり、より好ましくは前記第1加熱の温度T5は80℃〜160℃である。
【0069】
本発明の方法では、好ましくは、前記第3接触反応の温度T6は50℃〜200℃であり、前記第3接触反応の時間t3は0.5h〜10hであり、より好ましくは、前記第3接触反応の温度T6は80℃〜160℃であり、前記第3接触反応の時間t3は1h〜5hである。
【0070】
本発明の方法では、好ましくは前記第2加熱の温度T7は30℃〜65℃であり、より好ましくは前記第2加熱の温度T7は40℃〜60℃である。
【0071】
上記ステップには、加熱前の溶剤を乾燥処理するステップをさらに含んでもよい。乾燥処理のステップについては、特に限定がなく、本分野に通常使用される方法を用いればよい。
【0072】
以下、実施例にて本発明を詳細に説明する。
【0073】
以下の実施例及び比較例では、特に断らない限り、使用される材料はすべて市販品として入手し、特に断らない限り、使用される方法は本分野の常法であり、式中、
(1)触媒成分の含有量は、紫外分光光度計で測定され、単位がwt%である。
(2)内部電子供与体の含有量は、ガスクロマトグラフィー(GC)で測定される。
(3)プロピレンポリマーのアイソタクチックインデックス(II)は、ヘプタン抽出法で測定される。
【0074】
実施例1
(1)塩化マグネシウム50kg、イソオクタノール300L、フタル酸ジイソブチル20kg、n−デカン400Lを、窒素ガスで置換された反応釜に投入して、110℃で3h反応させ、塩化マグネシウムアルコール付加物を生成した。
(2)得られた塩化マグネシウムアルコール付加物含有生成物をろ過した後、アルコール付加物貯蔵タンクに導入して、アルコール付加物貯蔵タンクを−20℃に冷却(1h)し、それと同時に、四塩化チタン貯蔵タンク1を−20℃に冷却した(1h)。
(3)冷却後の四塩化チタン500Lを触媒担持釜に投入した。
(4)冷却後の塩化マグネシウムアルコール付加物含有生成物150Lを触媒担持釜に緩やかに加え(0.5h)、添加終了後、触媒担持釜を昇温しながら、フタル酸ジイソブチル5kgを加え、135℃に昇温(2h)して3h反応させ、それと同時に、四塩化チタン貯蔵タンク2を135℃に加熱した(1h)。
(5)触媒担持釜における材料をフィルタに送り、ろ過して(1h)固体粒子を得た。
(6)加熱後の四塩化チタン500Lをフィルタに送り、固体粒子を付帯して触媒担持釜に入れ、135℃で2h反応させ、それと同時に、乾燥ヘキサン貯蔵タンクを加熱した(温度60℃、0.5h)。
(7)反応終了後、触媒担持釜における材料をフィルタに送り、ろ過(1h)した後、加熱後のヘキサンで6回洗浄した(1h)。
(8)洗浄後の触媒固体粒子を乾燥釜に送り、真空乾燥させた(4h)。
(9)乾燥後の触媒を分級(1h)して包装した。
触媒は、チタン:2.35wt%、マグネシウム:17.2wt%、内部電子供与体:9.2wt%を含有することが測定された。
重合反応
機械撹拌装置及び温度制御装置を備えた5Lステンレス高圧反応釜にてプロピレン液相のバルク重合を行った。釜を加熱して真空吸引し、空気と水蒸気を除去した後、窒素ガスを導入して、3回繰り返し、トリエチルアルミニウム6mmol、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン0.2mmol及び上記実施例1で製造された触媒20mgを加え、撹拌しながら水素ガス1NL及び液体プロピレン1200gを加えて、70℃に昇温し、重合反応を開始させた。1時間反応後、未反応ガスを排出して、ポリプロピレン粉末を得た。
測定したところ、触媒活性は37500gPP/gCat、重合体のかさ密度は0.45g/cm3、アイソタクチシティは98.2%であった。
【0075】
比較例1
(1)塩化マグネシウム50kg、イソオクタノール300L、フタル酸ジイソブチル20kg、n−デカン400Lを、窒素ガスで置換された反応釜に投入して、110℃で3h反応させ、塩化マグネシウムアルコール付加物を生成した。
(2)得られた塩化マグネシウムアルコール付加物含有生成物をろ過した後、アルコール付加物貯蔵タンクに導入して、アルコール付加物貯蔵タンクを25℃に降温した(1h)。
(3)四塩化チタン500Lを触媒担持釜に投入して、−20℃に降温した(1h)。
(4)塩化マグネシウムアルコール付加物含有生成物150Lを触媒担持釜に緩やかに加え(0.5h)、添加終了後、触媒担持釜を昇温しながら、フタル酸ジイソブチル5kgを加え、135℃に昇温(2h)して、3h反応させた。
(5)触媒担持釜における材料をフィルタに送り、ろ過(1h)して固体粒子を得た。
(6)四塩化チタン500Lをフィルタに送り、固体粒子を付帯して触媒担持釜に入れ、135℃に昇温(1h)して、2h反応させた。
(7)反応終了後、触媒担持釜における材料をフィルタに送り、ろ過(1h)した後、ヘキサンで6回洗浄した(1.5h)。
(8)洗浄後の触媒固体粒子を乾燥釜に送り、真空乾燥させた(4h)。
(9)乾燥後の触媒を分級(1h)して包装した。
触媒は、チタン:2.30wt%、マグネシウム:17.4wt%、内部電子供与体:9.0wt%を含有することが測定された。
実施例1と同じ重合条件を用いたところ、触媒活性は37000gPP/gCat、重合体のかさ密度は0.45g/cm3、アイソタクチシティは98.3%であることが測定された。
触媒を生産するプロセスの各ステップに必要な時間を、下記表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
実施例1及び比較例1で製造された触媒の組成及び性能はほぼ同様であり、各バッチの触媒を生産するためにかかる時間については、上記表1から分かるように、同じ触媒を生産する場合、比較例1では、22hが必要である一方、実施例1では、19.5hだけで十分であり、前者よりも2.5h節約し、連続生産には、アルコール付加物の製造、触媒の洗浄、乾燥、スクリーニングなどの工程は、触媒担持と同時に実施できるため、実際の生産時間は、以下のとおりであった。
実施例1 19.5−3−1−2−4−1=8.5(h)
比較例1 22−3−1−1.5−4−1=11.5(h)
実施例1の実際の生産周期がより短くなり、生産効率が大幅に向上した。
【0078】
実施例2
ステップ(2)の塩化マグネシウムアルコール付加物含有生成物の貯蔵タンク及び四塩化チタン貯蔵タンク1を−30℃に冷却(1.5h)し、ステップ(4)の反応温度を80℃とし(1h)、これに対応して、ステップ(5)及びステップ(7)のろ過時間を2h、ステップ(7)の洗浄時間を2hに増やす以外、その他の条件は実施例1と同様であった。
触媒は、チタン:2.28wt%、マグネシウム:17.5wt%、内部電子供与体:9.3wt%を含有することが測定された。
実施例1と同じ重合条件を用いたところ、触媒活性は36600gPP/gCat、重合体のかさ密度は0.47g/cm3、アイソタクチシティは98.4%であることが測定された。
【0079】
比較例2
ステップ(3)の触媒担持釜を−30℃に降温(1.5h)し、ステップ(4)の反応温度を80℃とし(1h)、これに対応して、ステップ(5)及びステップ(7)のろ過時間を2h、ステップ(7)の洗浄時間を3hに増やす以外、その他の条件は実施例1と同様であった。
触媒は、チタン:2.31wt%、マグネシウム:17.3wt%、内部電子供与体:9.2wt%を含有することが測定された。
実施例1と同じ重合条件を用いたところ、触媒活性は36200gPP/gCat、重合体のかさ密度は0.47g/cm3、アイソタクチシティは98.4%であることが測定された。
実施例2及び比較例2で製造された触媒の組成及び性能はほぼ同様であり、同じ触媒を生産する場合、比較例2では、24hが必要である一方、実施例2では、22hだけで十分であり、前者よりも3h節約し、連続生産には、アルコール付加物の製造、触媒の洗浄、乾燥、スクリーニングなどの工程は、触媒担持と同時に実施できるため、実際の生産時間は、以下のとおりであった。
実施例2 22−3−1.5−4−4−1=8.5(h)
比較例2 24−3−1−3−4−1=12(h)
実施例2の実際の生産周期がより短くなり、生産効率が大幅に向上した。
【0080】
比較例3
ステップ(1)ではフタル酸ジイソブチルを添加しない以外、その他の条件は実施例1と同様であった。
触媒は、チタン:2.26wt%、マグネシウム:18.4wt%、内部電子供与体:5.8wt%を含有することが測定された。
実施例1と同じ重合条件を用いたところ、触媒活性は24500gPP/gCat、重合体のかさ密度は0.41g/cm3、アイソタクチシティは92.1%であることが測定された。
【0081】
比較例4
ステップ(4)では、ハロゲン化マグネシウムアルコール付加物を一括して添加する以外、その他の条件は実施例1と同様であった。
触媒は、チタン含有量:2.51wt%、マグネシウム:17.1wt%、内部電子供与体:9.5wt%を含有することが測定された。
実施例1と同じ重合条件を用いたところ、触媒活性は29200gPP/gCat、重合体のかさ密度は0.38g/cm3、アイソタクチシティは96.2%であることが測定された。
【0082】
比較例5
ステップ(1)ではフタル酸ジイソブチルを添加せず、ステップ(4)ではフタル酸ジイソブチルの添加量を25kgにした以外、その他の条件は、実施例1と同様であった。
触媒は、チタン:2.31wt%、マグネシウム:18.5wt%、内部電子供与体:5.2wt%を含有することが測定された。
実施例1と同じ重合条件を用いたところ、触媒活性は23600gPP/gCat、重合体のかさ密度は0.41g/cm3、アイソタクチシティは92.3%であることが測定された。
【0083】
以上は、本発明の好適実施形態を詳細に説明したが、本発明はそれに制限されない。本発明の技術的構想を逸脱しない限り、本発明の技術案に対して、各技術的特徴をほかの任意の適切な方式で組み合わせるなど、複数種の簡単な変形を行うことができ、これら簡単な変形及び組み合わせは、同様に本発明で開示された内容とみなされるべきであり、本発明の特許範囲に属する。
【手続補正書】
【提出日】2020年4月28日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性溶剤の存在で、ハロゲン化マグネシウム、アルコール類及び第1電子供与体を第1接触反応させて、ハロゲン化マグネシウムアルコール付加物を得るステップ(1)と、
ステップ(1)で得られたハロゲン化マグネシウムアルコール付加物含有生成物を第1冷却し、冷却後のハロゲン化マグネシウムアルコール付加物含有生成物を得るステップ(2)と、
ハロゲン化チタンを第2冷却し、冷却後のハロゲン化チタンを得るステップ(3)と、
前記冷却後のハロゲン化チタン、冷却後のハロゲン化マグネシウムアルコール付加物含有生成物及び第2電子供与体を第2接触反応させるステップ(4)と、
前記第2接触反応の生成物をろ過して、チーグラー・ナッタ触媒を得るステップ(5)と、を含む、
ことを特徴とするチーグラー・ナッタ触媒の工業的製造方法。
【請求項2】
ハロゲン化チタンを第1加熱し、加熱後のハロゲン化チタンを得て、前記ステップ(5)のチーグラー・ナッタ触媒及び前記加熱後のハロゲン化チタンを第3接触反応させるステップをさらに含み、
前記第1電子供与体及び前記第2電子供与体は、それぞれフェノール類、ケトン類、アルデヒド類、カルボン酸、有機又は無機酸エステル、エーテル、エーテルエステル及びアルキルシロキサン類化合物のうちの1種又は複数種である、
とを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記チーグラー・ナッタ触媒を洗浄するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記チーグラー・ナッタ触媒をスクリーニングするステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記チーグラー・ナッタ触媒を包装するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】
溶剤を第2加熱し、加熱後の溶剤を得るステップをさらに含み、
前記加熱後の溶剤を用いてステップ(5)のチーグラー・ナッタ触媒を洗浄し、
前記溶剤は、ペンタン、ヘキサン又はヘプタンである、
ことを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項7】
それぞれの前記ステップは、不活性ガスの保護下で行われる、ことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記各原料の含水量が10ppm未満である、ことを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記ハロゲン化マグネシウムの一般式は、MgR12であり、式中、R1、R2は、同一又は異なるハロゲンである、ことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記ハロゲン化マグネシウムは、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム又はヨウ化マグネシウムである、ことを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記アルコール類は、一価アルコール又はポリオールのうちの1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項12】
前記不活性溶剤は、アルカン、芳香族炭化水素及びその置換体のうちの1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項13】
ステップ(1)では、
前記ハロゲン化マグネシウムと、アルコール類と、第1電子供与体とのモル比は1:10:0.1〜10:1:5であり
記アルコール類と不活性溶剤との体積比は1:10〜10:1である、
とを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
ステップ(1)では、
前記ハロゲン化マグネシウムと、アルコール類と、第1電子供与体とのモル比は1:5:0.1〜5:1:3であり、
前記アルコール類と不活性溶剤との体積比は1:5〜5:1である、
ことを特徴とする請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記第1接触反応の温度T1は50℃〜180℃であり、前記第1接触反応の時間t1は0.5h〜5hである、ことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
前記第1接触反応の温度T1は80℃〜150℃であり、前記第1接触反応の時間t1は1h〜3hである、ことを特徴とする請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記第1冷却の温度T2は−50℃〜10℃である、ことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項18】
前記第1冷却の温度T2は−30℃〜0℃である、ことを特徴とする請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
前記第2冷却の温度T3は−50℃〜10℃である、ことを特徴とする請求項17に記載の製造方法。
【請求項20】
前記第2冷却の温度T3は−30℃〜0℃である、ことを特徴とする請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
前記ハロゲン化チタンの一般式は、TiR3k4lであり、式中、R3はハロゲン、R4はC1〜C5のアルコキシ基、lは0〜3の整数であり、且つk+l=4である、ことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項22】
前記ハロゲン化チタンは、四塩化チタン、四臭化チタン又は四ヨウ化チタンである、ことを特徴とする請求項21に記載の製造方法。
【請求項23】
ステップ(4)では、
前記冷却後のハロゲン化チタンと冷却後のハロゲン化マグネシウムアルコール付加物含有生成物との体積比は、10:1〜1:2であり
記第2電子供与体とハロゲン化マグネシウムアルコール付加物とのモル比は、1:20〜1:1である、
とを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項24】
ステップ(4)では、
前記冷却後のハロゲン化チタンと冷却後のハロゲン化マグネシウムアルコール付加物含有生成物との体積比は、5:1〜1:1であり、
前記第2電子供与体とハロゲン化マグネシウムアルコール付加物とのモル比は、1:10〜1:2である、
ことを特徴とする請求項23に記載の製造方法。
【請求項25】
前記第2接触反応の温度T4は50℃〜200℃であり、前記第2接触反応の時間t2は0.5h〜10hである、ことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項26】
前記第2接触反応の温度T4は80℃〜160℃であり、前記第2接触反応の時間t2は1h〜5hである、ことを特徴とする請求項25に記載の製造方法。
【請求項27】
前記第1加熱の温度T5は50℃〜200℃である、ことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項28】
前記第1加熱の温度T5は80℃〜160℃である、ことを特徴とする請求項27に記載の製造方法。
【請求項29】
前記第3接触反応の温度T6は50℃〜200℃であり、前記第3接触反応の時間t3は0.5h〜10hである、ことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項30】
前記第3接触反応の温度T6は80℃〜160℃であり、前記第3接触反応の時間t3は1h〜5hである、ことを特徴とする請求項29に記載の製造方法。
【請求項31】
前記第2加熱の温度T7は30℃〜65℃である、ことを特徴とする請求項に記載の製造方法。
【請求項32】
前記第2加熱の温度T7は40℃〜60℃である、ことを特徴とする請求項31に記載の製造方法。
【国際調査報告】