(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-517972(P2021-517972A)
(43)【公表日】2021年7月29日
(54)【発明の名称】新規の免疫グロブリンEのエピトープ、それと結合する抗体および前記抗体を含む試料のうち免疫グロブリンEを分析するためのキット
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20210702BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20210702BHJP
C07K 16/42 20060101ALI20210702BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20210702BHJP
C07K 7/08 20060101ALI20210702BHJP
【FI】
G01N33/53 N
G01N33/53 Q
G01N33/543 521
C07K16/42ZNA
C07K16/00
C07K7/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2021-503687(P2021-503687)
(86)(22)【出願日】2019年4月5日
(85)【翻訳文提出日】2020年10月6日
(86)【国際出願番号】KR2019004104
(87)【国際公開番号】WO2019194656
(87)【国際公開日】20191010
(31)【優先権主張番号】10-2018-0040605
(32)【優先日】2018年4月6日
(33)【優先権主張国】KR
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ
(71)【出願人】
【識別番号】520170911
【氏名又は名称】エスエルエスバイオ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】ギム ボンフィ
(72)【発明者】
【氏名】バク ウンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ハギョン
(72)【発明者】
【氏名】ホン グァンウォン
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA11
4H045AA30
4H045AA40
4H045BA10
4H045BA16
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA86
4H045EA50
4H045FA71
(57)【要約】
新規の免疫グロブリンE(Immunoglobulin E:IgE)のエピトープ(epitope)である配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチドと、前記ペプチドに結合する抗免疫グロブリンE抗体に関し、前記ペプチドおよび抗体をアレルギー疾患の診断または治療剤の研究等に活用することができる。また、前記抗体を含む試料のうち免疫グロブリンEを分析するためのキットおよび前記キットを用いたアレルギー疾患の診断方法に関し、韓国人において発生頻度の高い代表的な吸入性、食物アレルギーの有無を定性分析することが可能であり、採血後に短時間内にアレルギーを診断することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫グロブリンE(Immunoglobulin E:IgE)のエピトープ(epitope)である配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載のペプチドに結合する抗免疫グロブリンE抗体。
【請求項3】
請求項2に記載の抗体を含む試料のうち免疫グロブリンEを分析するためのキット。
【請求項4】
担体または希釈剤をさらに含むものである、請求項3に記載のキット。
【請求項5】
前記試料は、個体をアレルゲンと接触させた後、個体から分離した生物学的試料である、請求項3に記載のキット。
【請求項6】
前記試料は、接触後10分〜40分に分離したものである、請求項5に記載のキット。
【請求項7】
前記キットは、アレルゲンおよび前記抗体がコーティングされたメンブレンを含むものである、請求項3に記載のキット。
【請求項8】
前記アレルゲンは、チリダニ、ホソムギ、オーク、ヨモギ、カナムグラ、ニンニク、豚肉、マグロ、かび、犬、ゴマ、ピーナッツ、牛肉、ハルガヤ、エビ、りんご、猫、ハンノキ、シラカンバ、大豆、クルミ、マダラ、カモガヤ、牛乳、桃、ジャガイモ、ブタクサ、卵白、小麦、カニ、麦、ヨシ、ゴキブリ、ソバおよびイエダニよりなる群から選ばれるいずれか1つ以上である、請求項7に記載のキット。
【請求項9】
前記メンブレンは、ニトロセルロース、ナイロン、ポリフルオリン化ビニリデン(PVDF)、ガラスおよびプラスチックよりなる群から選ばれるものである、請求項7に記載のキット。
【請求項10】
前記キットは、免疫クロマトグラフィー分析用である、請求項3に記載のキット。
【請求項11】
請求項3に記載のキットと、検体滴下部と、を含むアレルギーの診断または予後予測用デバイス。
【請求項12】
個体の血液を採取して検体希釈液に混合する段階と、
前記希釈液を検体滴下部に滴下(drop)して反応させる段階と、を含むアレルギー疾患の診断方法。
【請求項13】
前記反応は、10〜40分間行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記血液の体積は、0.5ml〜2mlである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記血液は、血しょうまたは血清である、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記血しょうまたは血清の体積は、0.1ml〜1mlである、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
新規の免疫グロブリンEのエピトープ、それと結合する抗体および前記抗体を含む試料のうち免疫グロブリンEを分析するためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
生物体が或る外来性物質と接することになると、抗原−抗体反応により生体内に急激かつ過敏な変化が起こるが、これをアレルギー(allergy)といい、これを起こす外来性物質をアレルゲン(allergen)という。様々なタイプのアレルギー反応のうち免疫グロブリンE(immunoglobulin E;IgE)が関与するアレルギーを1型アレルギーという。
【0003】
1型アレルギーは、マスト細胞(mast cell)や好塩基球(basophil)の表面に付いている免疫グロブリン(immunoglobulin)にアレルゲンが付くと、マスト細胞や好塩基球が刺激されて過敏反応を起こす化合物を放出することによって起こる。一般的に、アレルギー症状は、喘息(astma)、湿疹(eczema)、じんましん(hives)、皮膚炎(dermatitis)、鼻炎(rhinitis)等を含む。
【0004】
全体IgE抗体およびアレルゲン特異的IgE抗体は、アレルギーがある個人の血液で増加しうるので、血清中総IgE濃度あるいはアレルゲン特異的IgE濃度の測定は、典型的なアレルギー反応による症状とアレルギーと類似した疾病を区分するのに有用な検査として使用されている。一般的に、出生時の臍帯血内総IgE抗体の濃度は、1IU/ml(2.4ng=1IU)程度であり、年を取るにつれて次第に増加して、成人の場合、たいてい83.3IU/ml(200ng/ml)以下に維持される。
【0005】
特異的なアレルギー抗原の識別は、疾病を追跡するための情報を提供し、アレルギー抗原は、ダニ、花粉、動物の上皮細胞と多様な食物を含む。血清中のIgE抗体の測定がアレルギー患者の治療に有用な臨床情報を提供することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一態様は、免疫グロブリンE(Immunoglobulin E:IgE)のエピトープ(epitope)である配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチドを提供する。
【0007】
他の態様は、前記ペプチドに結合する抗免疫グロブリンE抗体を提供する。
【0008】
さらに他の態様は、前記抗体を含む試料のうち免疫グロブリンEを分析するためのキットを提供する。
【0009】
さらに他の態様は、前記キットと、検体滴下部とを含むアレルギーの診断または予後予測用デバイスを提供する。
【0010】
他の態様は、個体の血液を採取して検体希釈液に混合する段階、前記希釈液を検体滴下部に滴下(drop)して反応させる段階とを含むアレルギー疾患の診断方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様は、免疫グロブリンE(Immunoglobulin E:IgE)のエピトープ(epitope)である配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチドを提供する。
【0012】
前記エピトープは、免疫原性を増加させる物質または担体(carrier)と接合されたものであり得、前記免疫原性を増加させる物質または担体は、例えば、KLH(Keyhole Limpet Hemocyanin)であり得る。
【0013】
前記ペプチドは、免疫グロブリンEのアミノ酸配列の一部のアミノ酸配列からなり得、免疫グロブリンEのエピトープ、すなわち抗体の結合部位として用いられる。前記ペプチドは、前記抗免疫グロブリンEと結合時にその結合力に優れている。
【0014】
前記免疫グロブリンEのエピトープのアミノ酸配列は、12個〜15個のアミノ酸配列からなるペプチドであり得、より具体的に、配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチドであり得る。
【0015】
前記用語「ペプチド(Peptide)」は、アミド結合またはペプチド結合で連結された2つ以上のアミノ酸からなるポリマーを意味する。前記ポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列からなり得る。前記配列番号3のアミノ酸配列とそれぞれ約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約92%以上、約95%以上、約97%以上、約98%以上、または約99%以上の配列相同性を有するペプチドを含むことができる。
【0016】
また、さらに良好な化学的安定性、強化された薬理特性(半減期、吸収性、力価、効能等)、変更された特異性(例えば、広範囲な生物学的活性スペクトル)、減少した抗原性を獲得するために、前記ペプチドのN−またはC−末端に保護基が結合されていてもよい。前記保護基は、アセチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、ホルミル基、パルミトイル基、ミリスチル基、ステアリル基またはポリエチレングリコール(PEG)であり得るが、ペプチドの改質、特にペプチドの安定性を増進させることができる成分であれば、制限されることなく含まれ得る。
【0017】
前記用語「安定性」は、生体内タンパク質分解酵素の攻撃から前記ペプチドを保護するインビボ(in vivo)安定性だけでなく、貯蔵安定性(例えば、常温貯蔵安定性)をも意味するものであり得る。
【0018】
なお、前記ペプチドは、標的化配列、タグ(tag)、標識された残基のための特定目的で製造されたアミノ酸配列をも追加的に含むことができる。
【0019】
前記用語「相同性(Homology)」は、野生型アミノ酸配列との類似性の程度を示すためのものであって、このような相同性の比較は、当業界において広く知られた比較プログラムを用いて行うことができ、2つ以上の配列間相同性を百分率(%)で計算することができる。
【0020】
前記ペプチドは、天然に由来するものであってもよく、当該分野において広く公知となった多様なペプチド合成方法で獲得することができる。一例として、ポリヌクレオチド組換えとタンパク質発現システムを用いて製造したり、ペプチド合成のような化学的合成を通じて試験管内で合成する方法および無細胞タンパク質合成法等で製造することができる。また、一例として、前記ペプチドは、ポリペプチド、植物由来組織や細胞の抽出物、微生物(例えば細菌類または真菌類、そして特に酵母)の培養により得られた生産物であってもよく、具体的には、免疫グロブリンEに由来するものであってもよく、より具体的に、免疫グロブリンEのアミノ酸配列の一部であってもよい。
【0021】
また、一態様は、前記エピトープをコードする遺伝子を提供し、前記遺伝子は、配列番号3のアミノ酸配列からなるペプチドをコードする。
【0022】
また、一態様は、前記エピトープをコードする遺伝子を含むベクターを提供する。
【0023】
前記ベクターは、宿主に導入されて宿主が前記遺伝子を発現させるのに使用され得、これによって、前記ペプチドを製造するのに使用され得る。また、前記ベクターは、当該分野において公知となった発現ベクターに前記遺伝子が導入されたものであり得る。
【0024】
前記ベクターは、プロモーター、信号配列をコードするヌクレオチド配列と発現調節配列が連結されたベクターであり得、前記ベクターは、ベクターが導入された宿主の選別のために抗生剤抵抗性マーカーを含むことができ、これは、ベクターに内在したものであるか、外部から導入されたものであり得る。
【0025】
他の態様は、前記ペプチドに結合する抗免疫グロブリンE抗体を提供する。
【0026】
前記抗体は、前記ペプチドをエピトープと認識して当該部分に結合することができて、免疫グロブリンEに特異的に結合することができる。前記抗体は、前記ペプチドとの結合力に優れていると共に、免疫グロブリンEとの結合力も優れている。前記抗体は、公知の抗体製造方法で製造され得、具体的には、多クローン抗体または単クローン抗体を生成する細胞等から製造され得る。
【0027】
さらに他の態様は、個体に試料を接触させた後、10分〜40分以内にアレルゲン(allergen)特異免疫グロブリンE(Immunoglobulin E、IgE)の定性分析が可能なアレルギー疾患の診断または予後分析用キットであって、前記抗体を含むキットを提供する。
【0028】
前記キットは、アレルゲンおよび前記抗体がコーティングされたメンブレンを含むことができる。具体的に、前記アレルゲンは、韓国人において発生頻度の高い代表的な吸入性または食物アレルギーであり得る。例えば、チリダニ、ホソムギ、オーク、ヨモギ、カナムグラ、ニンニク、豚肉、マグロ、かび、犬、ゴマ、ピーナッツ、牛肉、ハルガヤ、エビ、りんご、猫、ハンノキ、シラカンバ、大豆、クルミ、マダラ、カモガヤ、牛乳、桃、ジャガイモ、ブタクサ、卵白、小麦、カニ、麦、ヨシ、ゴキブリ、ソバまたはイエダニ等であり得る。前記抗体は、前述した通りである。
【0029】
前記メンブレンは、マーカーを含むことができる素材であり得、例えば、ニトロセルロース、ナイロン、ポリフルオリン化ビニリデン(PVDF)、ガラスまたはプラスチック等であり得る。
【0030】
また、一具体例によるキットは、免疫クロマトグラフィー分析用であり得る。具体的に、前記キットは、免疫クロマトグラフィー法を原理として検査線部位にそれぞれのアレルゲンを固定(Immobilization)させたニトロセルロースメンブレン上にヒト血清または血しょうを展開させてアレルゲンに対する特定IgE抗体の存在有無を検査するものであり得る。
【0031】
前記用語「免疫クロマトグラフィー法(Immunochromatographic Assay;ICA)」とは、免疫化学(Immuno−chemistry)と薄層クロマトグラフィー(thin−layer chromatography)技術を応用した検査方法であって、抗原(antigen)に対する抗体(antibody)の特異的な反応性、コロイダルゴールドの発色特性および流動性、多孔性ニトロセルロースメンブレン上での毛細管力(capillary force)による検体および分子の移動を応用したものである。
【0032】
すなわち、一具体例によるキットは、アレルゲンに対する特定IgE抗体が含まれた検体と抗IgEゴールドコンジュゲートを先に反応させた後、検査線部位には、アレルゲンを固定(immobilization)し、対照線部位には、マウスIgGを固定させた多孔性ニトロセルロースメンブレン上で検体を展開させる。メンブレンに沿って移動する抗原(検体)−抗IgE抗体ゴールド複合体のうちメンブレン上に固定させたそれぞれのアレルゲンに対する特定IgE抗体が検体内に存在する場合、ゴールド抗原−抗体複合体は、それぞれのアレルゲンが固定された部位を通過することになるので、該当位置で赤紫色バンドを形成し、また、対照線部位では、ヤギ抗マウスIgGゴールドコンジュゲートがマウスIgGと抗原−抗体反応により捕獲されるので、対照線は常に発色されるように構成され得る。
【0033】
さらに他の態様は、前記キットと、検体滴下部とを含むアレルギーの診断または予後予測用デバイスを提供する。前記キットの具体的な内容は、前述した通りである。
【0034】
前記検体滴下部は、展開溶液が含まれるものであり得、前記展開溶液は、例えば、ウシ血清アルブミン、ヤギ血清、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ポリソルベート20、アジ化ナトリウム、3次蒸留水、プロクリン300、トリアミノメタンまたはその混合溶液であり得る。
【0035】
さらに他の態様は、個体の血液を採取して検体希釈液に混合する段階と、前記希釈液を検体滴下部に滴下(drop)して10〜40分間反応させる段階とを含むアレルギー疾患の診断方法を提供する。
【0036】
一具体例による方法は、個体の血液を採取して検体希釈液に混合する段階を含む。前記血液は、公知の方法で採取することができ、希釈液に混合する血液の体積は、0.5ml〜2mlであり得る。例えば、0.5ml〜1.8ml、0.5ml〜1.5ml、0.7ml〜2ml、0.7ml〜1.5ml、0.8ml〜1.4ml、または1ml〜1.5mlであり得る。この際、血液の体積が前記範囲未満である場合、抗原−抗体反応が十分に起こらないので、診断の正確度が落ちることがあるという問題点がある。前記検体希釈液は、検体を2倍〜64倍希釈したものであり得、例えば、2倍、4倍、8倍、16倍、32倍または64倍に希釈したものであり得る。
【0037】
一具体例による方法は、前記血液は、血しょうまたは血清であり得る。前記検体希釈液に血しょうまたは血清を混合する場合、前記血しょうまたは血清の体積は、0.1ml〜1mlであり得る。例えば、0.1ml〜1ml、0.1ml〜0.9ml、0.1ml〜0.8ml、0.2ml〜1ml、または0.2ml〜0.8mlであり得る。この際、血しょうまたは血清の体積が前記範囲未満である場合、抗原−抗体反応が十分に起こらないので、診断の正確度が落ちることがあるという問題点がある。
【0038】
一具体例による方法は、前記希釈液を検体滴下部に滴下して10〜40分間反応させる段階を含む。具体的に、前記希釈液をスポイトを用いて検体滴下部に1〜5滴滴下(drop)することができ、例えば、1〜5滴、1〜4滴、2〜5滴、または2〜4滴滴下することができる。以後、10〜40分間反応させるが、例えば、10〜40分、10〜35分、10〜30分、15〜40分、15〜35分、または15〜30分間反応させることができる。この際、反応時間が前記範囲未満である場合、検体希釈液が検体滴下部のIgEと十分に反応できないという問題点がある。
【0039】
一具体例による方法は、前記反応が完了したデバイスに結果確認用カードを用いて各アレルゲン特異抗体の有無を確認する段階を追加で含むことができる。
【発明の効果】
【0040】
一態様によるペプチドおよび抗体は、免疫グロブリンEのエピトープとして免疫学、アレルギー等の診断または治療剤の研究等に活用され得る。また、前記抗体を含むキットは、韓国人において発生頻度の高い代表的な吸入性、食物アレルギーの有無を定性分析することが可能であり、採血後に短時間内に肉眼で結果の確認が可能である。また、検査に必要な検体量の最小化が可能なので、採血が難しい小児にも適用が可能であるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】
図1は、一態様によるキットの反応模式図である。
【
図2】
図2は、一具体例によるデバイスの製造工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかしながら、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、下記の実施例により本発明の内容が限定されるものではない。
【0043】
[実施例]
実施例1.新規免疫グロブリンEエピトープの確認
(1)多クローン抗体の製造および力価の確認
抗原(IgE pep−40)100μlと同量のコンプリートアジュバント(Complete adjuvant)を混合して抗原乳化液を作った後、6週齢の雌マウス(BALB/C)の皮下に投与して免疫反応を誘導した。1次投与後、2週間隔で同じ抗原100μlと同量のインコンプリートアジュバント(Incomplete adjuvant)を用いて前記マウスの皮下に投与した(表1)。
【0045】
抗原の投与を3回進めた後、前記マウスの尾静脈から血清(serum)を少量採血してELISA testを通じて血清内多クローン抗体の力価を確認した。具体的に、抗原(IgE pep−40)2μg/mlをwell当たり100μlずつ4℃で18時間の間反応させた後、コーティングした。翌日、ブロッキングバッファー(blocking buffer)を用いて室温で1時間の間反応(blocking)させた。以後、マウスの血液から得られた血清を使用して倍率に合うように希釈してウェルに100μlを分注した後、1時間の間室温で反応させた。反応が完了したプレートは、PBSTを使用して洗浄した後、HRPがコンジュゲーション(conjugation)されているGoat anti−mouse IgG−HRPを1:2000の割合で希釈してウェルに100μlを分注し、室温で1時間の間反応させた。以後、PBSTを使用して洗浄し、TMB溶液を分注して15分間反応させた後、反応停止液を使用して反応を終結した。450/620nmで吸光度の値を測定して血清中の力価(titer)を確認した(表2)。
【0047】
(2)ハイブリドーマ細胞の製造
抗体力価の確認実験を通じて確認されたマウスの血清中の力価を基準として高い力価を有する抗体が生成されたことを確認し、前記マウスのリンパ球を分離して細胞融合を実施した。免疫反応が誘導されたマウスの脾臓を損傷なしに摘出してDMEM(Dulbecco/Vogt modified Eagle’s minimal essential medium)培地で洗浄し、リンパ球を分離して、60mmディッシュ(dish)にDMEM培地を加えて単一細胞に分離させた。以後、RBC溶解バッファー(lysis buffer)を使用してリンパ球に混ざっている赤血球を除去した後、DMEM培地で洗浄し、準備された骨髄腫細胞(Myeloma cell、SP2/0 Ag 14−ATCC #CRL−1581)とリンパ球を細胞数対比1:5で混合した。その後、前記混合された細胞にPEG1500 1.7mlを添加して細胞融合を誘導し、96ウェルプレートにウェル当たり200μlずつ細胞を分注した後、CO2インキュベーター(incubator)で培養した。細胞融合2日後、各ウェル当たり50%をHAT培地(hypoxanthine−aminopterin thymidine medium)に交替し、12日後、コロニー(colony)を確認して、IgE pep−40タンパク質ペプチド(ELISA確認用抗原)との反応の有無を上記のELISA(Abs.450nm)方式で進めて決定した。前記ELISA結果のうち、O.D値を基準として1.0以上である場合、陽性(positive)と選定して単クローン細胞を選別した。
【0048】
(3)単クローン抗体を生産するハイブリドーマ細胞株の選別
製造した融合細胞群のうちIgE pep−40にのみ特異的に反応する細胞を選別し、抗体の生成の有無を確認するために、酵素免疫方法を用いてスクリーニングした。細胞融合後12日目に培地を交換し、交換した培地を1次抗体としてELISA試験を行った。ELISA試験後、当該抗原に陽性を示すウェルを選択して24ウェルに移して培養した。24ウェルで培養したハイブリドーマ細胞株を同じ方法でさらにELISA試験を行って抗体力価を確認した。24ウェルで成長させた融合細胞の吸光度(O.D値)をELISAで確認し、吸光度が1を超える融合細胞のみを選択して6ウェル培養フラスコに移して培養し、遠心分離した後、上澄み液を集めて、ELISA確認して、3次スクリーニングを行った。3次スクリーニングに基づいて選択された融合細胞をさらに75T/C培養フラスコに移して培養し、ELISAで吸光度を確認して、吸光度が1を超える融合細胞のみを選択した。
【0049】
(4)IgE pep−40タンパク質に対する単クローン抗体のエピトープ分析(epitope mapping)
抗体の生産に使用したペプチドを使用してエピトープマッピング(epitope mapping)を実施した。マッピングに使用されたペプチドは、従来抗原の生産に使用されたIgE pep−40タンパク質の一部である12、13、15個のアミノ酸配列を有するペプチドを使用した(表3)。
【0050】
そのうちPep−6ペプチドと結合する抗体を発見し、Pep−6は、従来知られていない新規抗原(IgE pep−40)の結合部位(epitope)であると判断した。
【0052】
実施例2.アレルギー疾患の診断または予後分析用キットの製造
(1)アレルゲンの分離
下記表4に示した原材料をTSM Allergen Sourceが浸る程度にEtherを入れた後、よく撹拌しながら常温で5分間インキュベーション(incubation)させた。
【0054】
その後、Etherを用心深く注ぎ出し、さらにfresh etherを入れて、前記過程を3回繰り返して脱脂(Defatting)させて、それぞれのサンプルを準備した。以後、i)前記それぞれのサンプルをPBS(pH8.0)と1:5(v/v)の割合で混合した後、氷上でPolytron Homogenizerを用いて抽出し、4℃で24時間の間インキュベーションさせるか、またはii)前記サンプルに5倍体積のCOCA’s solutionを添加した後、4℃で24時間の間回転しつつインキュベーションさせた。
【0055】
その後、4℃、15,000rpmで30分間遠心分離して、その上澄み液を分離した後、ワットマン紙(whatman paper)を用いて濾過した。以後、前記サンプルを0.1xPBS(pH7.5)を用いて24〜48時間の間透析させた。透析させたサンプルをその状態で冷蔵室で大気乾燥(air dry)させながら、体積が1/10程度に減少するまで乾燥した。4℃、15,000rpmで1時間の間遠心分離した後、45μmのSyringe Filterを用いて濾過した。以後、Bradford assayを用いてタンパク質を定量し、凍結乾燥させた。
【0056】
(2)Pep−6に結合する抗体の製造
1)抗体の力価の確認
前記Pep−6ペプチドと結合する抗体を発見し、これを用いた単クローン抗体細胞株の確立後、細胞培養液を用いて抗体の力価の確認試験を実施した。この際、Pep−6のキャリアとしてKLHタンパク質を使用した。
【0058】
その結果、前記表5のような結果を確認することができ、8−7_100cell、140−13_500cell、302−2_100cellがKLHには結合せず、組換えIgE whole proteinには結合力を有し、pep−6−KLHに高い結合力を有することを確認することができた。
【0059】
2)既販売抗体との性能比較
前記抗体の力価の確認においてPep−6−KLHに結合力が高かった8−7_100cell、140−13_500cell、302−2_100cellを既販売されている抗IgE抗体との性能比較試験を進めた(表6)。
【0061】
その結果、前記表6に示されたように、抗体3種(8−7_100cell、140−13_500cell、302−2_100cell)は、既販売されている抗体と異なる結合部位を有する抗体であるが、組換えIgEに対する結合力は類似した程度であることが分かり、前記抗体3種(8−7_100cell、140−13_500cell、302−2_100cell)をキットの製造に使用することができると判断された。
【0062】
3)選別された抗体のnative IgEに対する結合力の確認
キットの製造に使用された抗体の選別基準は、組換えIgEに対する結合力が販売製品と類似した3種の抗体(8−7_100cell、140−13_500cell、302−2_100cell)を選定した。また、3種の抗体が血液内存在するnative IgEに対する結合力の程度を確認するために、下記の方法でELISA試験を通じて確認した。
【0063】
販売されているhuman IgEに対する抗体2μg/mlをwell当たり100μlずつ4℃で18時間の間反応させてコーティングした。翌日、ブロッキングバッファー(blocking buffer)を用いて室温で1時間の間反応(blocking)させた。ブロッキングが進行される間、商用化しているbiotinylation kitの使用説明によって選別した3種の抗体をbiotinylationした。以後、組換えIgEタンパク質とアレルギーがあるものと判定された患者の血清を各ウェルに10μlを分注した後、1時間の間室温で反応させた。反応が完了したプレートは、PBSTを使用して洗浄した後、HRPがコンジュゲーション(conjugation)されているstreptavidinを1:5000の割合で希釈してウェルに100μlを分注し、室温で1時間の間反応させた。以後、PBSTを使用して洗浄し、TMB溶液を分注して15分間反応させた後、反応停止液を使用して反応を終結した。450/620nmで吸光度の値を測定して選別した抗体の組換えIgE、native IgEに結合程度を確認した。
【0065】
試験結果、前記表7に示されたように、選別した抗体3種は、組換えIgE、native IgEに結合したことを確認することができ、抗体3種全部をキットの製造に使用することができると判断された。
【0066】
(3)ゴールド接合体の準備
塩化金酸と還元剤を使用して直径40〜60nmのコロイド性金粒子を製造した。コロイド性金粒子を520nmでOD値が1.0±1.0になるように3次蒸留水を添加する。ゴールド溶液1mlに実施例1−2で準備した単クローンanti−Human IgE抗体5μg〜15μgを添加した後、室温で1時間の間振とう反応させた。反応が完了した金粒子を洗浄し、吸光度計を用いて520nmで測定して定量した後、濃度がOD値5.0±1.0になるように希釈し、保存剤を添加した。
【0067】
(4)キットおよびデバイスの製作
ホウ酸塩緩衝液を使用して実施例1−(1)で準備したアレルゲン抗原は、5mg/mlでそれぞれ希釈し、anti−mouse IgGは、2mg/mlで希釈して、自動定量分注器を使用して検査線および対照線位置にそれぞれ分注してメンブレンをコーティングした。以後、前記コーティングされたメンブレンを確認検査台に載置し、各コーティング液が正常に分注されたか否かを全量肉眼で検査した。正常に分注されたメンブレンを1時間以上37±2℃で恒温乾燥した後、組立前まで密封して、除湿された状態で保管した。
【0068】
前記実施例1−(3)で製造したゴールド接合体を安定剤と混合してガラス繊維に均質に吸収させた。この際、ガラス繊維1.1cmx0.4cm当たり19.63μlを使用するので、1つのデバイスには、単クローンanti−Human IgE抗体ゴールド接合体が14.59±1.06μg原液基準質量で添加される。37±2℃で1時間乾燥したガラス繊維を組立前まで密封して、除湿状態で保管した。
【0069】
上記でコーティングしたメンブレンの下端に接合体パッドと検体パッドを順次に重畳するようにして付着し、上端には吸収パッドを付着した。専用切削器を使用して(45±5.2)mmx(4.4±1.5)mmの規格で切断し、デバイス組立前まで防湿包装して保管した。以後、切断したストリップを下部プラスチックデバイスの上に載置した後、上部プラスチックデバイスを覆い、乾燥したシリカゲルと共に銀箔布に入れて密封包装した。
【0070】
[実験例]
検出限界の確認
前記実施例2で製作したキットの検出限界を確認するために、immuno−CAP検査で陽性(3.5IU/ml以上)判定を受けた検体を原液、2倍、4倍、8倍、16倍、32倍希釈した後、各アレルゲンに対する検体を3回繰り返して標準試験法によって試験を行い、判定基準によって判定し、その結果を下記表8に示した。
【0072】
その結果、表8に示されたように、各アレルゲン別に複数の検体を5段階で希釈して希釈検体当たり3回繰り返し試験を行い、試験3回の全部で陽性判定された検体としてImmuno−Cap定量値が最低値を示す値を各アレルゲンの検出限界に設定した。すなわち、一具体例によるキットの検出限界は、定量値2〜8ngの範囲以上で陽性と判定したが、1.68〜8.39ngの検体を全部陽性と判定しなかったため、EIA classを基準として定量値8.4ng以上を検出限界に設定した。
【0073】
精密度および正確度の確認
前記実施例2で製作したキットの(1)試験者間、(2)試験日間、(3)試験(Lot)間、(4)同一試験日、試験場所間のアレルゲンに対する正確度を判定するために、標準試験法によってテストした。アレルゲンに対する陰性標準物質および陽性標準物質をそれぞれ準備して、下記の試験方法でテストを進め、その結果を下記表9に示した。
【0074】
(1)試験者間
前記実施例2で製作したキットに対して3人のそれぞれ異なる試験者がそれぞれ陰性標準物質および陽性標準物質を使用して試験を行い、その結果を分析した。
(2)試験日間
前記実施例2で製作したキットに対して1人の試験者がそれぞれ陰性標準物質および陽性標準物質を使用して1日間隔で合計5日間試験を行い、その結果を分析した。
(3)試験(Lot)間
前記実施例2で製作したキット3つに対して1人の試験者がそれぞれ陰性標準物質および陽性標準物質を使用して試験を行い、その結果を分析した。
(4)同一試験日(試験場所)間
前記実施例2で製作したキットに対し1人の試験者がそれぞれ異なる3か所の場所(実験室、QC室等)で陰性標準物質および陽性標準物質を使用して試験を行い、その結果を分析した。
【0076】
その結果、表9に示されたように、実施例2のデバイスは、同一人、試験者、試験日、Lot間および試験場所間に関係なく、陰性標準物質を用いた試験では陰性、陽性標準物質を用いた試験では陽性であって、同じ試験結果が示されることを確認することができた。
【0077】
特異度の確認
偽陽性/偽陰性の有無の確認
検体内に存在する物質による干渉効果を測定するために、陰性標準物質および陽性標準物質に下記表10の物質を添加して偽陽性(false positive)および偽陰性(false negative)の有無を試験し、その結果を下記表11に示した。
【0080】
この際、偽陽性とは、干渉物質により陰性標準物質が陽性と判明されることを意味し、偽陰性とは、干渉物質が含まれている陽性標準物質が干渉物質の影響によって陰性と判定されることを意味する。
【0081】
その結果、表11に示されたように、本発明によるキットは、干渉物質8種に対する影響がいずれもないことを確認することができた。
【0082】
交差反応の有無の確認
また、検査過程で使用される抗体と検体内に存在可能な免疫グロブリン亜種の非特異的な結合による交差反応の有無を確認するために、陰性標準物質にIgA、IgM、IgG、およびIgDをそれぞれ3mg/ml添加して、標準試験法によって試験を行い、判定基準によって判定した。
【0083】
その結果、IgA、IgM、IgG、およびIgDを添加した陰性標準物質は、いずれも、陰性と示されて、干渉反応がないことを確認することができた。
【0084】
既販売製品とのユニキャップ検査比較
実施例1−2によって製造および選別された抗体3種のうち8−7_100 cellを用いて実施例2によってアレルギーkitを製造して、既販売中のキット(LG、Alloscan)とアレルゲン39種のうち発生頻度数の高いアレルゲン13種(ヤケヒョウヒダニ(DP)、コナヒョウヒダニ(DF)、猫、イエダニ、犬、シラカンバ、alternaria、桃、りんご、ホソムギ、ハルガヤ、カモガヤ、オオアワガエリ、オーク、卵白、ジャガイモ)に対する一致率確認試験を進めた。試験は、13種に対して1つ以上のアレルゲンに対して陽性を示す160検体を使用し、不一致を示す検体は、第3の検査法であり且つアレルギー検査において標準試験法と見なされるユニキャップ検査を進めて結果を判定した。既販売製品キットを用いた試験とユニキャップ検査は、受託機関に依頼して実施し、自社開発したキットは、2人の検査員が検査する形態で自主的に実施した(表12)。
【0086】
その結果、表12に示されたように、160個の検体のうち52個の検体において不一致が示され、不一致が示された検査においてユニキャップ試験結果、自社開発した抗体を用いたキットとの一致は36個の検体であり、既販売中のキットを用いた検査と一致する検体は16個であった。
【0087】
上記の結果は、実施例2による抗体を用いたアレルギー検査キットが、抗体の非特異反応あるいはアレルゲンとの結合力に優れていて、一致率が高いことを意味することが分かった。
【0088】
前述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で容易に変形可能であることを理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、すべての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。
【国際調査報告】