(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-518179(P2021-518179A)
(43)【公表日】2021年8月2日
(54)【発明の名称】触覚血圧イメージャ
(51)【国際特許分類】
A61B 5/022 20060101AFI20210705BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20210705BHJP
【FI】
A61B5/022 400M
A61B5/022 100B
A61B5/022 400F
A61B5/02 310P
A61B5/02 310M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-549066(P2020-549066)
(86)(22)【出願日】2019年3月29日
(85)【翻訳文提出日】2020年10月29日
(86)【国際出願番号】US2019025011
(87)【国際公開番号】WO2019195120
(87)【国際公開日】20191010
(31)【優先権主張番号】62/652,180
(32)【優先日】2018年4月3日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/684,726
(32)【優先日】2018年6月13日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】319009901
【氏名又は名称】トラスティーズ オブ タフツ カレッジ
(71)【出願人】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】スリニヴァサン,マンダヤム・エー
(72)【発明者】
【氏名】タニカチャラム,モハン
(72)【発明者】
【氏名】アデルソン,エドワード・ハワード
(72)【発明者】
【氏名】ビスワス,アビジット
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA08
4C017AA09
4C017AB02
4C017AC03
4C017BC20
4C017EE01
4C017FF05
4C017FF17
(57)【要約】
方法は、血圧を連続して非侵襲的に直接測定することを対象とし、血流調節バルーン及びセンサアレイを有する較正測定装置を提供することを含む。本方法は、センサアレイを、軟部組織に隣接することによって動脈に接続された皮膚部分の表面に非侵襲的に配置することと、血流調節バルーンを調節された量の圧力で膨張させることとをさらに含む。血流調節バルーンの膨張に反応して、動脈の形状及び力の変化が、心拍サイクル中に、センサアレイを介して検出される。変化は、動脈からの、又は隣接する軟部組織内の時空間信号に対応する。時空間信号は、血圧パラメータを決定するために、コントローラを介して、測定及び処理される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血圧を連続して非侵襲的に直接測定するための方法であって、
血流調節バルーンとセンサアレイとを有する較正測定装置を提供することと、
前記センサアレイを、軟部組織に隣接することによって動脈に接続された表面皮膚部分に非侵襲的に配置することと、
前記血流調節バルーンを調節された量の圧力で膨張させることと、
前記血流調節バルーンの前記膨張に反応して、前記センサアレイを介して、前記動脈からの、又は前記隣接する軟部組織内の時空間信号に対応する、心拍サイクル中の動脈のサイズ及び形状の変化を検出することと、
コントローラを介して、血圧パラメータを決定するために前記時空間信号を測定及び処理することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記センサアレイを介して前記動脈のサイズ及び形状の変化を検出することが、前記皮膚表面部分の変形又は前記皮膚表面部分内及び前記皮膚表面部分上の力のうちの少なくとも1つを決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記変形又は前記力のうちの少なくとも1つを、前記センサアレイに含まれる触覚センサのアレイを用いて測定することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記変形又は前記力のうちの少なくとも1つを、光学系を用いて測定することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記変形又は前記力のうちの少なくとも1つを、前記センサアレイに含まれるレトログラフィックセンサを用いて測定することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記動脈のサイズ及び形状の前記変化を皮膚表面の高さの変化に基づいて決定することをさらに含み、前記センサアレイが前記皮膚表面と直接接触している、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記コントローラを介して、収縮期血圧及び拡張期血圧を推測するために2つ以上の位置及び時刻における前記皮膚表面の高さを比較することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記動脈のサイズ及び形状の前記変化を前記動脈の超音波に基づいて決定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記血流調節バルーンを前記表面皮膚部分と直接接触させて配置することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記較正測定装置にストラップ、ストラップ調節バルーン及びストラップ力センサを設けることと、
前記ストラップを前記動脈を含む肢上に、前記ストラップ調節バルーン及び前記ストラップ力センサが前記表面皮膚部分の異なる領域と接触するように配置することと、
前記表面皮膚部分と前記ストラップとの間に加えられる前記力を変更するために前記ストラップ調節バルーンを膨張させることによって前記較正測定装置を微調整することと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
血圧を連続して非侵襲的に直接測定するための較正測定装置であって、
ストラップと、
前記ストラップの内面に結合された血流調節バルーンであって、調節された量の圧力により、動脈からの時空間信号が、静脈及びリンパの循環又は前記動脈を含む肢の他の動脈の流れを損なわずに分離される膨張状態を有する、血流調節バルーンと、
血圧を非侵襲的に監視するために前記血流調節バルーンの内面に取り付けられるセンサアレイであって、心拍サイクル中に、前記血流調節バルーンが前記膨張状態にあるときに、前記動脈からの時空間信号に対応する、前記動脈のサイズ及び形状の変化を検出する、センサアレイと
を含む、較正測定装置。
【請求項12】
前記ストラップが取り外し可能に取り付けられている、請求項11に記載の較正測定装置。
【請求項13】
前記ストラップに取り付けられた剛性支持体をさらに含み、前記血流調節バルーンが前記剛性支持体上に取り付けられている、請求項11に記載の較正測定装置。
【請求項14】
前記血流調節バルーンと異なる領域で前記ストラップの前記内面に結合されたストラップ調節バルーンをさらに含み、前記ストラップ調節バルーンが前記肢の皮膚表面と前記ストラップとの間に加えられる力が微調整される膨張状態を有する、請求項11に記載の較正測定装置。
【請求項15】
前記血流調節バルーン及び前記ストラップ調節バルーンと異なる領域で前記ストラップの前記内面に結合されたストラップ力センサをさらに含み、前記ストラップ力センサが、前記血流調節バルーン及び前記ストラップ調節バルーンの少なくとも1つが前記それぞれの膨張状態にあるときに、前記肢の皮膚表面と前記ストラップとの間に加えられた前記力を検出する、請求項12に記載の較正測定装置。
【請求項16】
前記センサアレイが触覚センサのアレイを含む、請求項11に記載の較正測定装置。
【請求項17】
前記センサアレイが、1つ以上の抵抗素子、圧電素子、又は容量性素子を含む、請求項11に記載の較正測定装置。
【請求項18】
動脈の血圧を連続して非侵襲的に直接測定するための方法であって、
肢上に取り付けるためのストラップを有する較正測定装置を提供することであって、前記ストラップがその内面に血流調節バルーン、ストラップ調節バルーン、及びストラップ力センサを搭載しており、前記血流調節バルーンがその内面にセンサアレイを搭載していることと、
前記ストラップを肢上に、前記センサアレイが動脈上の皮膚表面と非侵襲的に接触するように配置することと、
前記血流調節バルーンを、静脈及びリンパの循環又は前記動脈を含む前記肢の他の動脈の流れを損なわずに調節された量の圧力で膨張させることと、
前記血流調節バルーンの膨張に反応して、前記センサアレイを介して、前記動脈からの時空間信号に対応する、心拍サイクル中の前記動脈のサイズ及び形状の変化を検出することと、
前記ストラップと前記肢の前記皮膚表面との間に張力を加えるために前記ストラップ調節バルーンを調節された量の圧力で膨張させることと、
前記センサアレイ及び前記ストラップ力センサによる検出に基づき、前記時空間信号の検出を増強するために前記血流調節バルーン又は前記ストラップ調節バルーンの少なくとも1つによって加えられる圧力を微調整することと、
コントローラを介して、血圧パラメータを決定するために前記時空間信号を測定及び処理することと
を含む、方法。
【請求項19】
前記動脈のサイズ及び形状の前記変化の前記検出が、前記皮膚表面の変形又は前記皮膚表面内及び前記皮膚表面上の力のうちの少なくとも1つを測定することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
超音波に基づいて前記動脈のサイズ及び形状の前記変化並びに前記動脈に隣接する軟部組織の変化を決定することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府支援
本発明は、国立衛生研究所(NIH)から受けた助成金第1 U01 EB018823001A1号の下での政府の支援を得てなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年6月13日に出願された米国仮特許出願第62/684726号、及び2018年4月3日に出願された米国仮特許出願第62/652180号の優先権を主張し、各出願は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0003】
本発明は、一般的に、動脈圧の非侵襲的推定及び連続監視に関し、より具体的には、動脈圧を直接測定及び監視するための皮膚表面の変位及び力の使用に関する。
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様によれば、方法は、血圧を連続して非侵襲的に直接測定することを対象とし、血流調節バルーン及びセンサアレイを有する較正測定装置を提供することを含む。本方法は、センサアレイを、軟部組織に隣接することによって動脈に接続された皮膚部分の表面に非侵襲的に配置することと、血流調節バルーンを調節された量の圧力で膨張させることとをさらに含む。血流調節バルーンの膨張又は収縮に反応して、動脈のサイズ及び形状と、動脈が周囲組織に加える力とに変化が起こる。ゆえに、心拍サイクル中に、センサアレイを介して検出される皮膚とセンサアレイとの間の接触に変化が起こる。動脈の形状及び動脈の力の変化は、動脈からの時空間信号に対応する。時空間信号は、血圧パラメータを決定するために、プロセッサを介して、測定及び処理される。
【0005】
本開示の別の態様によれば、較正測定装置は、血圧を連続して非侵襲的に直接測定することを対象とする。本較正測定装置は、ストラップと、ストラップに結合された血流調節バルーンであって、調節された量の圧力により、動脈からの時空間信号が、静脈及びリンパの循環又は肢の他の動脈の流れを損なわずに分離される膨張状態を有する血流調節バルーンとを含む。本較正測定装置は、血圧を非侵襲的に直接測定及び監視するために血流調節バルーンの表面にセンサアレイをさらに含む。センサアレイは、心拍サイクル中に、血流調節バルーンが膨張状態にあるときに動脈の形状及び力の変化を検出する。変化は動脈からの時空間信号に対応する。
【0006】
場合により、本開示の上記の態様では、センサアレイは、血流調節バルーンの外面に取り付けられた塗装面、構造化光又は光学マーカを有するゲル膜に基づいて実装される。しかしながら、本開示の別の例示的な態様では、センサアレイは塗装面に基づいて実装され、光学マーカ又は構造化光パターンが血流調節バルーンの材料の内面又は外面にある。さらに、本開示の別の例示的な態様では、センサアレイは、皮膚表面に直接投影された光学マーカ又は構造化光パターンに基づいて実装される。
【0007】
本開示の別の例示的な態様によれば、センサアレイが、塗装面及び着色光を有するゲル膜の助けを借りた測光ステレオによる変形感知に基づいて実装される。場合により、別の例示的な態様は、個別の力センサ又は変位センサに基づいて実装されたセンサアレイを対象とする。具体的には、センサアレイは、抵抗素子、圧電素子、又は容量性素子などの個別の力センサ又は変形センサを組み立てることによって実装される。
【0008】
場合により、本開示の上記の態様の1つ以上では、ゲル膜が血流調節バルーンの外面に取り付けられる。しかしながら、本開示の別の例示的な態様では、ゲル膜は、血流調節バルーンの材料の内面又は外面の塗装面又は構造化光パターンで置き換えられる。
【0009】
さらに別の代替の例示的な実施態様によれば、センサが機械的な台に結合され、(例えば卓上型装置において)取付力を変化させるために使用される。この実施態様では、血流調節バルーンを使用する代わりに、取付力は、力センサ及び/又は変位センサと結合された機械的な台の助けを借りて調整される。
【0010】
接触状態をさらに調節するために、血流調節バルーンは、(1)(ゲル膜あり又はなしの)対象物との接触部分にかかる力の空間平均値の直接的尺度を提供する圧力センサ、(2)接触状態を能動的に変更する(形状変化や力の変化)ために使用されるエアポンプ、並びに(3)接触状態及び接触状態の経時的変化に対するある程度の調節を、特に圧力センサからのフィードバックとともに提供するコントローラと一緒に付加される。血流調節バルーンを充填する空気以外のゲルその他の流体が、それぞれの測定タスクに基づいて任意で考慮されてもよい。
【0011】
本開示のさらに別の態様によれば、方法は、動脈内の血圧を連続して非侵襲的に直接測定することを対象とする。本方法は、肢上に取り付けるためのストラップを有する較正測定装置を提供することであって、ストラップがその内面に血流調節バルーン、ストラップ調節バルーン、及びストラップ力センサを搭載していること、を含む。血流調節バルーンは、その内面にセンサアレイを搭載している。本方法は、ストラップを肢上に、センサアレイが動脈上の皮膚表面と非侵襲的に接触するように配置することと、血流調節バルーンを、静脈及びリンパの循環又は肢の他の動脈の流れを損なわずに調節された量の圧力で膨張させることとをさらに含む。本方法は、血流調節バルーンの膨張に反応して、センサアレイを介して、動脈からの時空間信号に対応する、心拍サイクル中の動脈の形状及び力の変化を検出することをさらに含む。ストラップ調節バルーンは、ストラップと皮膚表面との間に力を加えるために調節された量の圧力で膨らまされる。センサアレイ及びストラップ力センサによる検出に基づき、動脈からの時空間信号の検出を増強するために、血流調節バルーン又はストラップ調節バルーンの少なくとも1つによって微調整圧力が加えられる。時空間信号は、血圧パラメータを決定するために、プロセッサを介して、測定及び処理される。
【0012】
本開示のその他の態様は、以下にその簡単な説明が示される図面を参照してなされる様々な実施態様の詳細な説明を考察すれば、当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】本開示の一実施態様による、較正測定装置の構成要素を示す断面図である。
【
図3A】生の空間情報、処理された空間情報、及び高さ画像を含む、時空間信号及び血圧マーカに関連したデータの第1の部分を示す図である。
【
図3B】様々な信号のプロットを含む、
図3Aの時空間信号及び血圧マーカに関連したデータの第2の部分を示す図である。
【
図3C】グループマーカのプロットを含む、
図3Aの時空間信号及び血圧マーカに関連したデータの第3の部分を示す図である。
【
図3D】様々な信号の値を含む、
図3Aの時空間信号及び血圧マーカに関連したデータの第4の部分を示す図である。
【
図4A】本開示の別の実施態様による、カメラを含む較正測定装置の構成要素を示す断面図である。
【
図4B】発光ダイオード(LED)調節器を有する
図4Aの較正測定装置のカメラセットアップを示す図である。
【
図5A】本開示の別の実施態様による、光学マーカを含む較正測定装置の構成要素を示す断面図である。
【
図6A】本開示の別の実施態様による、圧電センサを含む較正測定装置の構成要素を示す断面図である。
【
図6B】バルーンの下面に取り付けられた
図5Aの較正測定装置の圧電センサを示す斜視図である。
【
図6C】手首に取り付けられた
図5Aの較正測定装置を示す斜視図である。
【
図7A】ウサギモデルを用いた動物実験を示す斜視図である。
【
図7B】ブタモデルの実験用セットアップを示す拡大斜視図である。
【
図7C】
図7Bの実験用セットアップの全体図を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明には様々な改変形態及び代替形態の余地があるが、図面には例として特定の実施態様が示されており、それらを本明細書で詳細に説明する。しかしながら、本発明は開示の特定の形態に限定されることを意図されるものではないことを理解されたい。そうではなく、本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨及び範囲内に入るすべての改変形態、均等物、及び代替形態を範囲に含むものである。
【0015】
本開示は、一般的に、動脈内血圧(BP)を経時的に推定及び連続監視するための新規の手法、いくつかの方法、及び関連機器構成を対象とする。開示の方法に基づき、収縮期血圧(SBP)、平均動脈圧(MAP)、及び拡張期血圧(DBP)のための直接測定が行われる。より一般的には血圧イメージャ(BPI)とも呼ばれる、触覚血圧イメージャ(TBPI)が、経時的に、血圧の呼吸性変動を含む、SBP、MAP、及びDBPの心拍間の変動性を測定するために使用される。これに基づき、TBPIは、白衣高血圧、仮面高血圧、並びに睡眠中及び早朝血圧上昇中の夜間降圧度の減少及びその他の異常なパターンなどの、異常な血圧パターンを特定することができる。TBPIは、処置有効性の正確な評価及び治療法のより適切な個別化を容易にし、患者の血圧を下げるのに必要とされる、喫煙及びストレスを低減するためなどの、生活様式の動機付けをさらに特定する。TBPIは、心拍数(HR)、よってHR変動性を、また経時的な異常な心臓リズムを連続して追跡する。BPIは、呼吸数(RR)及び異常な呼吸パターンも連続して追跡する。TBPIは、心拍間の血圧をさらに追跡し、侵襲的な動脈内血圧監視の非侵襲的な代替手段である。
【0016】
図1を参照して、概略図に、血圧の変化が血管壁100の、よって皮膚表面102の曲率をどのように変化させるかを示す。血圧は、動脈のサイズ及び形状(例えば直径104)との直接的な関係を有し、動脈のサイズ及び形状は、力センサアレイ又は変形センサアレイ108の接触面106の変形及び接触面106にかかる力の空間分布を決定する。センサアレイ108は、特に手首の橈骨動脈などの表在動脈110の位置で、皮膚表面102と接触する。動脈110内部の血圧のダイナミクスが接触面プロファイルにおける時空間ダイナミクスを生じさせる。この基本原理は、血圧を連続して推定及び追跡するために使用される。
【0017】
センサアレイ108が表在血管110上の皮膚表面102の上に取り付けられ、押し付けられた場合、センサアレイ108は、空間及び時間にわたる動脈断面の変動を取り込む。血圧は、動脈断面の形状及びサイズとの直接的な関係を有し、動脈断面の形状及びサイズは、皮膚表面102とセンサアレイ108との中間の接触面プロファイル(変形及び力の空間分布)を決定する。よって、血管内部の血圧のダイナミクスが、非侵襲的に測定できる接触面プロファイルにおける時空間ダイナミクスを生じさせる。
【0018】
図2を参照すると、TBPIは、(1)力感知抵抗器(SFR)である、ストラップ力センサ(SFS)202、(2)ストラップ200の締め付け調整のためのストラップ調節バルーン204、及び(3)剛性支持体207に取り付けられた、取付力調整バルーン(MFAB)とも呼ばれる血流調節バルーン206を含む柔軟なストラップ201を含む例示的な較正測定装置200の形態である。時空間的接触状態を取り込むために血流調節バルーン206と皮膚表面210との間にセンサアレイ208が介在している。血流調節バルーン206はエアポンプ212によって作動され、エアポンプ212に接続された空気圧センサ214が血流調節バルーン206のためのセンサとして働く。
【0019】
場合により、装置200は、ストラップ力センサ202及び/又はセンサアレイ208からの信号を受け取るように構成された(プロセッサ及びメモリデバイスを備えた)コントローラ217を含む。コントローラ217は、さらに場合により、血圧の推定及び監視を含めて、信号を処理して血圧のパラメータを決定するように構成される。コントローラ217は、装置200と一体化され、例えば、ストラップ201に取り付けられるか若しくはストラップ201内に配置されるか、又は、装置200から分離した構成要素であり、例えば、装置200に通信可能に結合された外部装置(コンピュータなど)である。
【0020】
別の任意選択の構成によれば、装置200は、血圧の監視と関連付けられた様々なパラメータを表示するためのディスプレイ219を含む。ディスプレイ219は、場合により、装置200に取り付けられるか、又は装置200と一体化される。
【0021】
別の任意選択の構成によれば、装置200は、ユーザの携帯電話などの外部装置221に通信可能に結合される。ユーザは、携帯電話221上のアプリケーションを使用して、例えば、ストラップ調節バルーン204及び/又は血流調節バルーン206の膨張の調節、監視される動脈のパラメータの受信などを含む、装置200と関連付けられた1つ以上のタスクを行う。
【0022】
血流調節バルーン206は、基準空気圧(30〜40mmHgなど)に初期設定される。次いで、血流調節バルーン206及びセンサアレイ208は、血流調節バルーン206が下の動脈216内の血流を調節する間に、センサアレイ208がセンサアレイ208の中央領域で脈動(心周期にわたる血圧の変動によって生じる時空間的接触状態の変動)を取り込むように、センサアレイ208が動脈216の上をほぼ中心とするように末梢動脈216(手首の橈骨動脈など)の上に配置される。
【0023】
続いて、ストラップ調節バルーン204は、ストラップ力センサ202からの読み取り値が特定の値に到達するようなレベルまで膨らまされる。センサアレイ208から得られた空間情報に基づき、優勢な脈動領域がロックされる。優勢な脈動領域は、血流調節バルーン206及びストラップ力センサ202が最適な所定の値に調整されたときに、時間的ダイナミクスが特定の閾値を上回る領域である。ストラップ調節バルーン204及びストラップ力センサ202は主に、センサアレイ208と皮膚表面210との最適な接触を確実にするように較正測定装置200の取り付けを微調整し、被験者間で較正測定装置200の取り付けを標準化するために使用される。ストラップ力センサ202及びストラップ調節バルーン204から得られた信号は、血圧の推定及び監視に使用される。
【0024】
較正測定装置200の1つの有益な固有の態様が、標的とされる動脈216上の主要な測定及び操作領域の、ストラップ201下の残りの領域からの効果的な分離である。この分離の達成により、肢の全周にカフを巻く必要がなくなる。較正測定装置200の固有の設計により、静脈及びリンパの循環又は肢の他の動脈の流れを損なわずに肢上で較正測定装置200を連続使用することが可能になる。センサアレイ208は、血流調節バルーン206と皮膚表面210との間に位置決めされ、血流調節バルーン206が血圧推定段階で膨張及び収縮する際の時空間的接触状態を取り込み、続いて、血圧監視段階で公称圧力を維持する。
【0025】
図3A〜
図3Dを参照すると、データは推定時空間信号及び血圧マーカを示している。TBPI取り付けが標準化された後、TBPI(較正測定装置200など)は、ユーザのDBP、MAP、及びSBPを推定することによって較正される。これは、TBPI自体を使用して達成される。較正プロセスは、MFABの圧力の段階的な増加及び減少を含み、これは圧力掃引と呼ばれる。立ち上がり掃引では、MFABの空気圧が、低い値(〜30mmHg)から従来の血圧測定の標準速度(2〜4mmHg/秒)で段階的に増加する。立ち上がり掃引は、エアポンプが飽和状態(〜270mmHg)になるか、又は測定信号の脈動の振幅が、ある公称値(180mmHgなど)に到達するという条件で、特定の閾値を下回って減衰するまで続く。次いで、立ち下がり掃引では、空気圧は減少して低圧(〜30mmHg)に戻る。これにより、1回の完全な掃引につき2回の血圧の較正及び推定が可能になる。
【0026】
較正時間を短縮するために、立ち上がり半掃引又は立ち下がり半掃引のどちらかを速くすることができ、較正は遅い方の半分で行われる。掃引からの血圧の推定では、「MFAB圧」と呼ばれるMFABの(心周期にわたって平均された)平均圧が、血圧推定のための主要な測定として考察される。下にあるセンサアレイからの時空間信号の異なる特徴が、SBP推定又はMAP推定又はDBP推定のマーカとして考察される。マーカが特定の閾値に到達するMFAB圧が、SBP又はMAP又はDBPにマップされる。血圧推定方法で使用されるマーカは2つのグループに分類される。グループ1のマーカは、皮膚とセンサアレイとの間の接触領域内での心周期にわたる脈動の空間的一致/不一致である。グループ2のマーカは、空間にわたって平均された脈動の振幅である。グループ1とグループ2の両方からのマーカが、任意の半掃引にわたって同時に推定される。最終的な血圧推定の正確さ及びロバスト性を改善するために複数のマーカに基づく血圧推定が組み合わされる。
【0027】
グループ1のマーカを参照すると、ロックされた脈動領域からの空間情報は、心臓又は血管内の血流の方向(
図1のY軸など)に関連して近位領域と遠位領域とに分割される。セグメント化の後、脈動の平均高さが近位部分と遠位部分とについて個々に計算される。これら2つの時間信号は事実上、近位圧力波と遠位圧力波とを表す。過去の心周期にわたるこれらの高さの高域フィルタリング及び正規化の後、これらの近位領域と遠位領域との間の類似点及び相違点が血圧マーカとして考察される。これらの血圧マーカの推定が、TBPIの有益な固有の適用である。グループ1のマーカは、基本的に圧力波の空間情報に依存する。近位圧力波と遠位圧力波との間の類似点を定量的に測定するために、近位圧力波と遠位圧力波とのドット積が、最近の心周期の期間にわたって計算され、リアルタイムで推定される。マーカは、選択されたドット積(SDP)と呼ばれる。SDPは類似点の定量的尺度であるが、選択されたクロス積(SCP)は、正規化された近位圧力波対遠位圧力波のリサージュプロットの下の面積として図式的に表される相違点の1つの尺度である。
【0028】
相違点を定量的に測定する別の手法が、正規化された近位圧力波と遠位圧力波との選択された瞬時差分(SID)信号を計算し、次いで、1心周期にわたるSIDの高さを血圧マーカとみなすことである。SIDはまた、動脈内の血流が崩壊し始めるときの動脈内の血流の乱れに起因する高調波を取り込むために、異なる帯域フィルタにも通される。これらの信号は、SF1、SF2などと呼ばれ、対応する血圧マーカがSIDと同様に計算される(
図2参照)。
【0029】
グループ2のマーカを参照すると、このグループの最初のマーカは、画像の平均高さ(IAH)と呼ばれ、高域フィルタ及び振幅推定器を通される、空間にわたって平均されたセンサアレイから得られた変形又は力の情報を提供する。振幅推定は、最近の心周期の期間にわたって行われる。グループ2のマーカは、圧力波の空間情報に根本的には依存しない。しかしながら、これらのマーカは優勢な脈動領域から導出されるので、マーカはセンサアレイから得られる空間情報を使用する。グループ2のマーカが最大値に到達するMFAB圧がMAPにマップされる。マーカが(1つ又は複数の)特定の閾値を上回ったままである空気圧範囲は、SBPとDBPとの差である動脈内パルス圧(PP)を示す。よって、立ち下がり半掃引に注目して、マーカが特定の「第1の立ち下がり」閾値を横切るMFAB圧がSBPにマップされる。最大値に到達した後、マーカは別の「第2の立ち下がり」閾値を再度横切り、対応するMFAB圧がDBPにマップされる。
【0030】
グループ2のマーカはまた、高域フィルタ及び振幅推定器を通されたMFAB圧信号から直接得られる。半掃引にわたって、これらのマーカのいずれかが最大値に到達する平均の、又は低域フィルタリングされたMFAB圧がMAPにマップされる。マーカが(1つ又は複数の)特定の閾値を上回ったままである平均MFAB圧の範囲は、動脈内PPを示す。よって、立ち下がり半掃引に注目して、マーカが特定の第1の立ち下がり閾値を横切る平均MFAB圧がSBPにマップされる。最大値に到達した後、マーカは同じか又は異なる第2の立ち下がり閾値を再度横切り、これに対応する平均MFAB圧がDBPにマップされる。グループ2のマーカは高域フィルタリングされたMFAB圧から導出され、TBPIではMFAB圧信号が、従来の血圧カフの場合のように肢の全周囲をカバーする皮膚領域ではなく、軟部組織によって動脈に接続された分離された皮膚部分領域から得られることを除いては、標準的な振動測定法のマーカと同様である。
【0031】
血圧は、TBPIを使用して連続して追跡される。TBPIの較正が完了した後、MFABの圧力が増加して、取り込まれた信号の脈動が特定の振幅又は信号対雑音比(SNR)に到達するようなレベルに戻る。この条件の下で、IAHが2点にわたって較正され、較正法から得られるように最大値がSBPにマップされ、最小値がDBPにマップされる。この2点較正は、動作点上の血圧の小変動を特定するのに十分である。動作点が閾値を上回ってシフトする場合、これは、血圧の大きな変化によって、又は線形較正を大部分無効にするアーチファクトに基づいて引き起こされる可能性があり、再較正が行われる。IAHの代わりに、MFABからの圧力信号も較正され、連続監視に使用される。しかしながら、IAHは、動き及び材料緩和に関連したアーチファクトに対してより低い感受性を示す。
【0032】
図4A及び
図4Bを参照すると、TBPIは、センサアレイ308が、カメラ303によって取り込まれた測光ステレオ効果の助けを借りた変形感知に基づいて実装される別の例示的な較正測定装置300の形態である。装置300は、透明な剛性支持体(ガラスなど)307上に支持された柔軟なストラップ301と、ストラップ力センサ302と、ストラップ調節バルーン304と、血流調節バルーン306とを含む。この実施態様では、センサ表面309が皮膚表面310と接触し、皮膚表面310は、鏡面反射層311を作り出す、ブロンズ粉などの顔料を塗布されている。透明な軟らかいシリコーンエラストマー(ゲルなど)が反射層311の基板として使用される。ゲルは、ゲルの反射面が皮膚表面310に密に接触したままであるようにガラス支持体307によって支持される。カメラ303は、ガラス支持体307の上方のフレーム315上に垂直に取り付けられる。
【0033】
図1に示されるように、ZX平面に沿った血管110の曲率はP
inと周囲圧力P
outとの差とともに変化する。したがって、この実施態様における主要な測定は、接触面309のZX平面曲率、及びY軸、すなわち血管の長手方向軸に沿ったその変動である。よって、高指向性(〜15°のビーム角度)の赤及び緑のLED317、319の2つのアレイがY軸に沿って配置される。全カメラアセンブリ321が、周囲光から光学的に絶縁される。カメラ303が光インターフェースからLED317、319の直接反射を取り込むのを回避するために、LED317、319は低グレージング角に配置される。
【0034】
図4Cを参照すると、較正測定装置300の卓上型321は、5又は6自由度ポジショナ及び調整可能な背部支持体323をボールソケット型継ぎ手325とともに含む。背部支持体は、ファントム動脈又は動物の体部位又は人間の手首を支持することができる。あらゆる場合に、システムは少なくとも1つの取付力又は取付圧(MPF)センサを有する。卓上型実験では、MPF感知が、6自由度力センサ又は力感知抵抗器(FSR)を用いて行われる。卓上型321は、後述する装着型部品327などのTBPIの型をさらに有する。
【0035】
図4Dを参照すると、較正測定装置300の装着型329は、機械視覚カメラ331と、力感知抵抗器FSRからのリード線333と、透明なストラップ336に包まれたガラス支持体335とを含む。透明なストラップ336の内側には赤いLEDアレイ337があり、エアポンプで作動されるバルーン339が主要なMPFセンサと接続されている。装着型329には、独立して調整可能な赤及び緑のLED調節器341、343、並びにビデオ画像を取り込むためのUSB3.0カメラ345がさらに含まれる。
【0036】
図5Aを参照すると、TBPIは、センサアレイ408が、皮膚表面410と接触する408の内面又は外面の(又は、例えば、直接皮膚表面210上の)投影された光パターン(ストライプなど)又は光学マーカ(ドットや穴など)を用いた構造化光に基づいて実装される別の例示的な較正測定装置400の形態である。これらのパターン又はマーカの動きは、
図5Aに示されるのと異なる位置及び向きにも配置され得るカメラ403によって取り込まれる。上記の実施態様と同様であるが、必ずしも同一ではないこの実施態様では、センサアレイ408は、(センサアレイ408の外面である)感知面409上又はセンサアレイ408の内面上(又は、例えば、直接皮膚表面210上)の光学パターン又はマーカの三角測量に基づいて実装される。皮膚表面410と接触する表面上又は直接皮膚表面210上のパターン又はマーカの画像を取り込むように適切に配置されたカメラからのデータに基づき、Z軸に沿った変形がXY平面内のマーカの動きから取り込まれる。よって、ZX平面の曲率の変化は、カメラ403が見た、X軸のマーカの動きを通して感知される。較正測定装置400は場合により、本開示に記載されるその他の例示的な較正測定装置のいずれかの1つ以上の構成要素を含む。
図5B及び
図5Cをさらに参照すると、卓上型421及び装着型429は、プロジェクタ440及び機械視覚カメラ441を含む。
【0037】
図6Aを参照すると、TBPIは、センサアレイ508が個別の力センサ又は変位センサ550に基づいて実装される別の例示的な較正測定装置500の形態である。具体的には、センサアレイ508は、抵抗素子、圧電素子、又は容量性素子550などの個別の力センサ又は変形センサ550を組み立てることによって実装される。較正測定装置500は、記載のその他の例示的な較正測定装置の1つ以上と同様であるが、必ずしも同一ではない。例えば、較正測定装置500は、剛性支持体507上に支持された柔軟なストラップ501と、ストラップ力センサ502と、ストラップ調節バルーン504と、血流調節バルーン506とを含む。
図6Bをさらに参照すると、センサ550は、血流調節バルーン506の下面に取り付けられている。
図6Cをさらに参照すると、較正測定装置500は手首551に取り付けられている。
【0038】
場合により、上記の個別のセンサを、両面に電極として働く銀インクが塗布された、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などの圧電ポリマーの薄膜で製作することもできる。電極は、皮膚とセンサとの間の電気伝導を回避するために絶縁材料でさらに覆われる。感知素子の厚さは、皮膚との良好な機械的結合を達成するために十分な薄さに保たれる。最も単純な構成では、ただ2つの感知素子が使用され、一方は近位脈動の検出のためのものであり、他方は遠位脈動のためのものである。必要に応じてより複雑なマーカを抽出するために素子の数を増やすことができる。センサからの信号は、シグナルコンディショナを通され、TBPIプロセッサに送られる。圧電フィルムセンサからのこれら2つの近位信号及び遠位信号を、BP推定のための上記のIAHと同等に処理することができる。
【0039】
図7A〜
図7Cを参照すると、実験用セットアップ600は、ウサギモデル(
図7A)並びにブタモデル(
図7B及び
図7C)の動物実験を示している。セットアップ600は、麻酔装置660と、背部支持体662と、動脈にアクセスするカテーテル664と、薬物及び生理食塩水点滴666とを含む。セットアップ600は、(例えばFISO製の)光ファイバ圧力センサの先端に接続された光ファイバ668と、6自由度ポジショナの高さ調整コントロール670と、TBPIの一種672と、位置ロック674と、(例えばATI製の)6自由度力センサ676とをさらに含む。セットアップ600はまた、麻酔ブタ678と、麻酔ウサギ680と、ICU Medical製のTPS682と、動物実験用のポジショナに付加された6自由度(Zrot)684も含む。
【0040】
代替の例示的な実施態様によれば、センサアレイは、動脈壁の動きを直接測定する。例えば、この実施態様では、センサアレイの超音波感知素子が、皮膚表面に対するその圧痕ではなく、標的とされる血管の曲率を直接測定する。この実施態様は場合により、開示の較正測定装置のいずれかの1つ以上の構成要素を、センサアレイ上に少なくとも1つの超音波感知素子を有するという変更を伴って含む。
【0041】
別の代替の例示的な実施態様によれば、センサが機械的な台に結合され、(例えば卓上型装置において)取付力を変化させるために使用される。この実施態様では、血流調節バルーンを使用する代わりに、取付力は、力センサ及び/又は変位センサと結合された機械的な台の助けを借りて調整される。
【0042】
よって、開示の実施態様によれば、BPIにおける皮膚の空間機械的状態が、上記のセンサアレイなどのセンサアレイによって測定される。センサアレイは、例えば、上記のような光学センサ(測光ステレオ又は構造化光など)を含む。他の例では、光学センサの代わりに、又は光学センサに加えて、超音波イメージング及び/又は触覚センサアレイが使用される。センサアレイは動脈の上方に位置決めされ、橈骨動脈が動脈の一例である。
【0043】
皮膚圧の変化は力センサと結合された外部装置を用いて加えられる。上記のセンサアレイが力センサの一部の例であるが、外部装置は血流調節バルーンを含む。皮膚圧が変化するに従って接触力及び/又は形状の時空間的変動が記録される。収縮期圧及び拡張期圧に対応する特徴的な時空間信号が決定される。特徴的な時空間信号の例には、上記のような上流側と下流側との間の対比又は最大脈動が含まれる。特徴的な時空間信号の決定された値は測定装置を較正するために使用され、較正は、連続した時空間信号を分析することにより血圧を連続して推定するために使用される。連続監視の改善には、振動測定法のための光学センサが有益な結果を提供する。
【0044】
本開示の1つの例示的な利点によれば、開示の動脈内血圧を監視するための装置及び方法は、標的動脈を閉塞すると同時に、リンパ管、静脈及びその他の動脈を閉塞し、よって、肢(腕など)の血液循環を遮断するために必要とされる侵襲的な肢を包囲する血圧測定用カフ及び高圧を不要にする。例えば、開示のBPIの較正段階中に、橈骨動脈は血流調節バルーンによって閉塞され得るが、尺骨動脈、静脈、及びリンパ管による血液循環は損なわれないままである。
【0045】
本開示の別の例示的な利点によれば、開示の動脈内血圧を監視するための装置及び方法は、皮膚形状に対する血圧の直接観測に基づいて瞬間的な血圧対時間のトレースを連続して提供する。この連続したトレースは、独立した検証も科学的な批判も行うことができない間接的な経験的相関又は商標登録された専売のアルゴリズムから導出されたモデルに依拠せずに得られる。
【0046】
本開示のさらに別の例示的な利点によれば、開示の動脈内血圧を監視するための装置及び方法は、心拍ごとの連続した血圧対時間のトレースからのSBP、MAP、及び/又はDBPの直接導出を容易にする。さらなる利点は、開示の装置及び方法が、血圧のより正確な尺度及び心拍間の血圧変動性に関する有益な情報を提供するために、複数の心拍及び呼吸サイクルにわたって血圧を測定することである。さらに別の利点は、開示の装置及び方法が、心拍数、心臓リズム、呼吸数、呼吸パターン及び無呼吸などの臨床的関心対象の追加データを提供することである。
【0047】
本開示のさらなる利点によれば、動脈内血圧を監視するための装置は、既存の携帯電話と一体化された装着型装置である。高血圧のオンライン/遠隔管理のために低帯域幅のセルラー接続を介して装置と携帯電話との間で瞬時にデータが転送される。
【0048】
本開示のさらなる利点によれば、開示の動脈内血圧を監視するための装置及び方法は、白衣高血圧、仮面高血圧、睡眠中及び早朝血圧上昇中の夜間降圧度の減少又は血圧の増加を含む、異常な血圧パターンを特定する連続した携帯型の血圧監視を提供する。この監視はさらに、処置有効性の正確な評価及び治療法の個別化の改善を提供し、患者の血圧を下げるために必要とされる(喫煙及びストレスを低減するなど)生活様式の動機付けを特定し、患者とともに検討すべき、患者が処置を順守するのを支援するグラフィカルなフィードバックを提供する。
【0049】
本開示のその他の利点によれば、開示の装置及び方法は、侵襲的な(動脈内カテーテルを使用した)監視の代替手段として急性期の病院設定で使用するための血圧の24時間信頼できる心拍間の監視を提供する。加えて、他の利点には、BPIが場合により既製の部品から任意で構築されることに基づく、価格的な手頃さ、及びBPIが場合により電池式であることに基づく、追加電源が不要であることも含まれる。
【0050】
開示の装置及び方法はさらに、例えば、採血又はカテーテル挿入を含む、他の目的にも有用である。例えば、そのような例示的な目的のための装置は、柔軟なストラップ、ストラップ力センサ、ストラップ調節バルーン、及び/又は血流調節バルーンを含む。場合により、上記のような光学センサ又はその他の皮膚表面感知素子が、較正測定装置の性能を増強及び改善するために使用される。場合により、さらに、柔軟なストラップ、感知手段(光学、超音波、静電容量に基づく触覚アレイなど)、較正法、及び血圧監視の特定の組み合わせが、動脈位置(橈骨、上腕など)、目的(健康状態の監視、スクリーニング、救急医療など)、及び設定(病院、家庭、装着型など)に応じて最適に実装される。
【0051】
本発明を、1つ以上の特定の実施態様を参照して説明したが、当業者は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく本発明に多くの変更が加えられ得ることを認めるであろう。これらの実施態様及びその自明の変形形態の各々が、本発明の趣旨及び範囲内に入るものとして企図されている。また、本発明の態様によるさらなる実施態様が本明細書に記載される実施態様のいずれかからの任意の数の特徴を組み合わせ得ることも企図されている。
【国際調査報告】