特表2021-518241(P2021-518241A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-518241(P2021-518241A)
(43)【公表日】2021年8月2日
(54)【発明の名称】補綴歯要素の形成方法及び形成装置
(51)【国際特許分類】
   A61C 13/08 20060101AFI20210705BHJP
   A61C 13/083 20060101ALI20210705BHJP
【FI】
   A61C13/08
   A61C13/083
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-572582(P2020-572582)
(86)(22)【出願日】2019年3月13日
(85)【翻訳文提出日】2020年9月14日
(86)【国際出願番号】AU2019050226
(87)【国際公開番号】WO2019173872
(87)【国際公開日】20190919
(31)【優先権主張番号】2018201914
(32)【優先日】2018年3月16日
(33)【優先権主張国】AU
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520355116
【氏名又は名称】ファン ジョン
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ファン ジョン
【テーマコード(参考)】
4C159
【Fターム(参考)】
4C159DD01
4C159GG04
4C159GG07
4C159HH03
4C159HH04
4C159HH43
4C159HH55
(57)【要約】
補綴歯要素(104)を形成する方法を開示し、この方法は、硬化したときに第一透光性を有する第一硬化性流体材料(101)を、雌型(110)のキャビティ(111)の底部に、第一レベル(113)まで堆積させる工程と、硬化したときに第一透光性よりも透光性が低い第二透光性を有する第二硬化性流体材料(102)を、キャビティ(111)中の第一材料(101)上に、第二レベル(114)まで堆積させる工程と、雄型(120)をキャビティ(111)中に挿入する工程であって、前記雄型の前記挿入によってキャビティ(111)内の第二材料(102)の少なくとも一部分を移動させる工程と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
補綴歯要素を形成する方法であって、
硬化したときに第一透光性を有する第一硬化性流体材料を、雌型のキャビティの底部に、第一レベルまで堆積させる工程と、
硬化したときに前記第一透光性よりも透光性の低い第二透光性を有する第二硬化性流体材料を、前記キャビティ内の前記第一硬化性流体材料の上に、第二レベルまで堆積させる工程と、
雄型を前記キャビティ中に挿入する工程であって、該雄型の挿入によって該キャビティ内の前記第二硬化性流体材料の少なくとも一部分を移動させる工程と、
を備える、補綴歯要素の形成方法。
【請求項2】
前記雄型は、少なくとも前記第二レベルより下に突出する深さまで挿入される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記雄型は、前記第一レベル及び前記第二レベルの両方より下に突出する深さまで挿入される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第一硬化性流体材料の少なくとも一部分は、前記雄型の挿入後に前記キャビティの前記底部に維持される、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記方法によって形成される前記補綴歯要素は、半透明グラデーションを有し、前記雌型の前記キャビティの前記底部に形成される第一端部における前記補綴歯要素の前記透光性は、前記補綴歯要素の対向端部及び/または内部領域における前記補綴歯要素の前記透光性よりも高い、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、補綴歯要素キャストを形成するために、前記第一硬化性流体材料及び前記第二硬化性流体材料を前記キャビティ内で少なくとも部分的に固化することを備える、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記第一硬化性流体材料及び前記第二硬化性流体材料を固化することは、前記第一硬化性流体材料及び前記第二硬化性流体材料を温度の変化に対して曝露することを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、前記補綴歯要素キャストを前記雌型及び前記雄型から取り外すことを備える、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記補綴歯要素キャストを硬化させて補綴歯要素を形成することを備える、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第一硬化性流体材料及び/または前記第二硬化性流体材料は、光硬化性であり、前記方法は、前記補綴歯要素キャストを光に曝露することによって前記補綴歯要素キャストを硬化させることを備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第一硬化性流体材料及び/または前記第二硬化性流体材料は、熱硬化性であり、前記方法は、前記補綴歯要素キャストを炉内で焼成することによって前記補綴歯要素キャストを硬化させることを備える、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記第一硬化性流体材料及び/または前記第二硬化性流体材料は、セラミック粉末及び結合剤を含む歯科用混合物である、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記セラミックは、ジルコニア、ジルコニア酸化物及び酸化アルミニウムのうちの少なくとも1つを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記結合剤は、前記セラミック粉末を合わせて結合する接着剤である、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記雌型の前記キャビティの内面は、歯面の印象である、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記歯面は、歯の形状のものである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記雌型の前記キャビティ内に1つ以上の追加の硬化性流体材料を堆積させることを備える、請求項1から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記第二硬化性流体材料を堆積させる前に、第三硬化性流体材料を前記雌型の前記キャビティ中の前記第一硬化性流体材料上に堆積させる工程を備え、前記第三硬化性流体材料は硬化したときに第三透光性を有し、前記第三透光性は前記第一透光性よりも透光性が低く、前記第二透光性よりも透光性が高い、請求項1から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
第三硬化性流体材料を前記雌型の前記キャビティ中の前記第二硬化性流体材料上に堆積させることを備え、前記第三硬化性流体材料は硬化したときに第三透光性を有し、前記第三透光性は前記第一透光性及び前記第二透光性の両方よりも透光性が低い、請求項1から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか1項に記載の方法によって形成される補綴歯要素。
【請求項21】
1つ以上の雌型及び1つ以上の雄型を使用して1つ以上の補綴歯要素を形成するための装置であって、
前記1つ以上の雌型のそれぞれのキャビティの底部に第一硬化性流体材料を堆積させ、そして前記キャビティ中の前記第一硬化性流体材料上に第二硬化性流体を堆積させる1つ以上の流体堆積装置と、
前記1つ以上の雄型を各キャビティ中に挿入して、前記キャビティ内で前記第二硬化性流体材料の少なくとも一部分を移動させるように構成される挿入機構と、
を備える、補綴歯要素の形成装置。
【請求項22】
前記装置は、前記第一硬化性流体材料を複数の前記雌型のキャビティ中に同時に堆積させるように適合され、前記第二硬化性流体材料を複数の前記雌型の前記キャビティ中に同時に堆積させるように適合される、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記挿入機構は、前記1つ以上の雄型を複数の前記雌型の前記キャビティ中に同時に挿入するように適合される、請求項21または22に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年3月16日に出願された豪州特許出願第2018201914号の優先権の利益を主張し、その開示は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
本開示は、歯科用補綴物などの補綴歯要素の形成方法及び形成装置に関する。
【背景技術】
【0003】
歯科用補綴物などの補綴歯要素は、人工歯構造物であり、この人工歯構造物は、例えば、う歯または他の破損によって、部分的に、または全体的に失われた歯を修復する、交換する、または複製するように設計される。補綴歯要素は、患者の顎、例えば、下顎骨(lower jaw bone)(下顎骨(mandible))または上顎骨(upper jaw bone)(上顎骨(maxilla))に、骨に少なくとも部分的に埋め込まれるマウントまたはルートなどのアンカーフィクスチャーを介して固定される。ルートは、人工歯根、または古い歯の部分であることができる。
【0004】
補綴歯要素が交換されるように設計されるいずれかの歯の形状だけでなく、隣接する歯の形状、患者の口の「咬合」、ならびに患者の歯の着色及び透光性に適合することが重要である。
【0005】
補綴歯要素は、典型的には、患者の歯、例えば、歯の下列または上列などの正確なモデルを取得することによって調製され、このモデルは、印象材を使用して鋳型を取ることによって印象採得される。このモデルをスキャンすることができ、歯科用補綴物のために適切な配置を決定する。続いて、固体の歯科用セラミックの本体、典型的には、ジルコニア材料のブロックを決定された配置に従って切削し、キャストに到達した後に、キャストを適切に着色し、焼結させて/硬化させて、補綴歯要素を得ることができる。代替の手法として、台座の上にさまざまな歯科用材料を手作業で彫刻して成層し、熟練した職人技を通じて適切な形状及び色及び/または透光性輪郭を構築することによって、補綴歯要素を調製する。
【0006】
本明細書に含まれている文書、行為、材料、デバイス、物品等のいかなる説明も、これらの内容の一部分または全てが先行技術の基礎の一部分を形成するということ、またはそれらが添付の「特許請求の範囲」のそれぞれの優先日より前に存在していたような本開示に関連する分野において共通の一般的な知識であったということを承認するものとしてみなされるべきではない。
【発明の概要】
【0007】
一態様に従い、本開示は、補綴歯要素を形成する方法を提供し、この方法は、
硬化したときに第一透光性を有する第一硬化性流体材料を、雌型のキャビティの底部に、第一レベルまで堆積させる工程と、
硬化したときに前記第一透光性よりも透光性の低い第二透光性を有する第二硬化性流体材料を、前記キャビティ内の前記第一硬化性流体材料の上に、第二レベルまで堆積させる工程と、
雄型を前記キャビティ中に挿入する工程であって、この雄型の挿入によって前記キャビティ内の前記第二硬化性流体材料の少なくとも一部分を移動させる工程と、
を備える。
【0008】
雄型は、少なくとも第二レベルより下に突出する深さに挿入されることができる。いくつかの実施形態では、雄型は、第一レベル及び第二レベルの両方より下に突出する深さに挿入されることができる。この挿入は、第二材料に加えて、第一材料の少なくとも一部分を移動させることができる。移動させることにより、第一及び第二流体材料の混合物を形成することができる。いくつかの実施形態では、第二材料の少なくとも一部分、及び任意選択で第一材料の一部分を雄型によって移動させるが、第一材料の一部分を依然としてキャビティの底部に維持することができる。
【0009】
この方法によって形成される補綴歯要素は、半透明グラデーションを有していてもよい。雌型のキャビティの底部に形成される第一端部における補綴歯要素の透光性は、補綴歯要素の対向端部及び/または内部領域における補綴歯要素の透光性よりも高くてもよい。半透明グラデーションは、ステップグラデーションまたは線形グラデーションであってもよい。半透明グラデーションは、補綴歯要素の対向端部及び/または内部領域よりも補綴歯要素の第一端部に向かって第一材料が多く位置していることによって、そして補綴歯要素の第一端部よりも補綴歯要素の対向端部及び/または内部領域に第二材料が多いことによって、引き起こされてもよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、第三硬化性流体材料及び/または第四硬化性材料などのような、1つ以上の追加の材料は、雌型のキャビティ内の、例えば、第一材料と第二材料との上に、または間に堆積することができる。追加の材料も、硬化したときに異なる透光性を有することができる。追加の材料の使用により、補綴歯要素全体に、より滑らかな半透明グラデーションを提供することができる。例えば、一実施形態では、この方法は、第二材料を堆積させる前に、雌型のキャビティ中の第一材料上に第三硬化性流体材料を堆積させる工程を備えてもよく、この第三材料は硬化したときに第三透光性を有し、この第三透光性は第一透光性よりも透光性が低く、第二透光性よりも透光性が高い。第二材料の堆積後、第三材料は、第一材料と第二材料との間に位置することができる。別の例として、一実施形態では、雌型のキャビティ中の第二材料上に第三硬化性流体材料を堆積させる工程を備えることができ、この第三材料は硬化したときに第三透光性を有し、この第三透光性は第一透光性及び第二透光性の両方よりも透光性が低い。
【0011】
雌型のキャビティの内面は、歯面の印象であってもよい。いくつかの実施形態では、この歯面は、天然の、または人工の歯の外面に対応することができる。雄型は、患者の顎の骨に少なくとも部分的に埋め込まれるマウントまたはルートなどのアンカーフィクスチャーの外面に対応する外面を有することができる。ルートは、インプラントポストもしくはアバットメントなどの人工歯根、または天然歯の部分であってもよい。
【0012】
一実施形態では、雌型は、雄型の挿入中に、過剰な第一及び/または第二硬化性材料がキャビティから漏出することを可能にするように構成される。あるいは、雌型は、雄型の挿入中に、完全にキャビティ内に第一及び第二硬化性材料を維持するように構成されてもよい。
【0013】
この方法は、雌型キャビティ内の第一及び第二流体材料を少なくとも部分的に固化して補綴歯要素キャストを形成する工程をさらに備えることができる。第一及び第二材料の固化は、第一及び第二材料(またはそれらの混合物)を一定期間大気条件に曝露することによって、及び/または温度などの環境条件を変更することによって、実行されることができる。
【0014】
この方法は、雌型及び雄型から補綴歯要素キャストを取り外す工程をさらに備えることができる。
【0015】
この方法は、例えば、雌型及び雄型からの補綴歯要素キャストを取り外した後に、このキャストを硬化させて、補綴歯要素を形成することをさらに備えることができる。
【0016】
好ましい実施形態では、第一及び/または第二硬化性流体材料は、セラミック粉末及び結合剤を含む歯科用混合物である。セラミック粉末は、ジルコニア、ジルコニア酸化物、または酸化アルミニウムを含むが、これらに限定されない、1つ以上の歯科用セラミック材料であることができる。結合剤は、典型的には、任意の接着剤であり、セラミック粉末を合わせて結合するために使用されることができる。例えば、天然ワックス類(パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、バーンズダールワックス、ミツロウ、カルナウバロウ、セレシンワックス、カカオバター、ゲイロウ)、合成ワックス類(ポリエチレンポリマー類、ポリオキシエチレンポリマー類)、ガム類、脂肪類(脂肪酸類、油類、エステル類)、天然または合成樹脂類(ダンマル、カウリ、ロジン、ポリスチレン、ジメタクリラートモノマー類)を含むが、これらに限定されない、1つ以上のワックス類を使用することができる。
【0017】
第一及び/または第二硬化性流体材料は、材料の色及び/または透光性を調整するために光学的改質剤及び顔料を追加で含むことができる。さらに、第一及び/または第二硬化性流体材料は、例えば、材料の強度または粘度を調整するために、フィラー粒子を含むことができる。例えば、硬化性流体材料は、金属酸化物粒子(酸化チタンまたは酸化アルミニウム)、シリカまたは石英を含むことができる。
【0018】
一実施形態では、第一及び/または第二硬化性流体材料は、光硬化性であってもよく、光に曝露されたときに固化する光活性化材料を含んでいてもよい。この方法は、補綴歯要素キャストを光に曝露することによってこのキャストを硬化させる工程を備えることができる。別の実施形態では、第一及び/または第二硬化性流体材料は、熱硬化性であってもよく、方法は、炉内などで焼成することによって補綴歯要素キャストを硬化させる工程を備えることができる。化学的に活性化される材料、または光、熱及び化学的に活性化される材料のうちの1つ以上の組み合わせを示す、硬化性材料も使用することができる。
【0019】
本開示の一態様では、前述の一態様に従う方法によって形成される補綴歯要素キャストが提供される。本開示の一態様では、前述の一態様に従う方法によって形成される補綴歯要素が提供される。
【0020】
本開示は、所望の形状及び透光性を有する補綴歯要素を形成するための比較的単純で効果的な方法を提示し、熟練した職人などによる手作業での補綴歯要素の形成についてのいかなる必要性をも低減、または排除することができる。さらに、この技法を工業的に適用することができ、例えば、単一の装置を使用して、複数の補綴歯要素を一度に形成することができる。
【0021】
本開示の一態様に従い、1つ以上の雌型、及び1つ以上の雄型を使用して1つ以上の補綴歯要素を形成するための装置が提供され、この装置は、
1つ以上の雌型のそれぞれのキャビティの底部に第一硬化性流体材料を堆積させ、そしてこのキャビティ中の第一材料上に第二硬化性流体材料を堆積させる1つ以上の流体堆積装置と、
雄型を各キャビティ中に挿入して、キャビティ内で第二材料の少なくとも一部分を移動させるように構成される挿入機構と、
を備える。
【0022】
この装置は、例えば、工業的または商業的規模で、先行する一態様による補綴歯要素を形成する方法を実施するために使用されることができる。
【0023】
一実施形態では、補綴歯要素を形成するための装置は、第一材料を複数の雌型のキャビティ中に同時に堆積させるように構成される、及び/または第二材料を複数の雌型のキャビティ中に同時に、または間断なく堆積させるように適合されることができる。
【0024】
一実施形態では、装置の挿入機構は、1つ以上の雄型を複数の雌型のキャビティ中に同時に、または間断なく挿入するように適合されることができる。したがって、複数の補綴歯要素を実質的に同時に形成する方法を提供することができる。
【0025】
この装置は、雌型のキャビティ内に1つ以上の追加の硬化性流体材料、例えば、第三またはそれ以上の硬化性流体材料を堆積させるように適合されることができる。
【0026】
本明細書を通じて、単語「comprise(含む)」、または「comprises(含む)」もしくは「comprising(含む)」などの変形は、既定された要素、整数またはステップ、または要素群、整数群またはステップ群を包含するが、いかなる他の要素、整数またはステップ、または要素群、整数群またはステップ群をも排除することを意味するものではないことが理解されよう。
【0027】
ここでは単なる例として実施形態を添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本開示の一実施形態による装置の断面図を示す。
図2a】本開示の一実施形態による、図1の装置を使用して、補綴歯要素を形成する方法において実行される工程を示す。
図2b】本開示の一実施形態による、図1の装置を使用して、補綴歯要素を形成する方法において実行される工程を示す。
図2c】本開示の一実施形態による、図1の装置を使用して、補綴歯要素を形成する方法において実行される工程を示す。
図3】本開示の一実施形態による、方法において形成される補綴歯要素の断面図を示す。
図4】本開示の一実施形態による、補綴歯要素を形成する方法において実行される工程のフローチャートを示す。
図5】本開示の一実施形態による装置の断面図を示す。
図6】本開示の一実施形態による装置の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
ここでは、本開示の実施形態による補綴歯要素を形成するための装置及び方法を説明する。
【0030】
一実施形態では、図1に示されるように、雌型110及び雄型120を含む装置を提供する。
【0031】
雌型110は、内面112によって画定されるキャビティ111を含む。内面112は、歯面の印象である、及び/または歯面の形状に対応することができる。内面112は、雌型110のキャビティ111内で成形することにより形成される補綴歯要素104が、歯面の形状に対応する形状を有する外面1044(例えば、図3を参照)によって形成されるようなものであることができる。歯面は、例えば、歯の外面であってもよい。
【0032】
雄型120は、外面121を含む。雄型120は、その外面121と、雌型110の内面112との間に空間を残しながら、雌型110のキャビティ111内に嵌合することができるように形作られ、均整がとれている。雄型120の外面121は、患者の顎の骨に少なくとも部分的に埋め込まれるマウントまたはルートなどのアンカーフィクスチャーの形状に対応する形状を有することができる。ルートは、インプラントポストもしくはアバットメントなどの人工歯根、または天然歯の部分であることができる。外面121は、雄型120と雌型110との間の間隙内に成形することによって形成される補綴歯要素104が、アンカーフィクスチャーの形状に対応する内面1045(例えば、図3を参照)によって形成されるようなものであってもよく、例えば、補綴歯要素をアンカーフィクスチャーに密嵌して取り付けてもよい。
【0033】
ここでは、図2aから図2c及び図4を参照して、雌型110及び雄型120を使用する、本開示の一実施形態による方法を説明する。
【0034】
図2a、及び図4のフローチャート200の項目201を参照すると、第一硬化性流体材料101は、雌型110のキャビティ111の底部に堆積する。第一材料101をキャビティ111内の第一レベル113まで充填する。第一材料101は、硬化したときに第一透光性を有するように構成される。第一材料101は、図2aでは水平線によって表されている。
【0035】
図2b、及び図4のフローチャート200の項目202を参照すると、第二硬化性流体材料102は、キャビティ中の第一材料101上に堆積する。第二材料をキャビティ111内の第一レベル113より上の第二レベル114まで充填する。第二材料102は、硬化したときに第二透光性を有するように構成され、第二透光性は、第一透光性よりも透光性が低い。第二材料102は、図2bでは垂直線によって表されている。
【0036】
図2c、及び図4のフローチャート200の項目203を参照すると、第一及び第二材料101、102が堆積しているキャビティ111中に雄型120を挿入する。雄型120の挿入により、キャビティ内の第二材料102の少なくとも一部分の移動を引き起こす。これに関して、雄型120は、少なくとも第二レベル114より下に突出する深さまで挿入される。それにもかかわらず、図2cに表されるように、雄型120は、第一及び第二レベル113、114の両方より下に突出する深さまで挿入されることができ、その場合、雄型の挿入によって、第二材料102の移動に加えて、第一材料101の少なくとも一部分が移動する。
【0037】
移動することにより、第一及び第二材料101、102の部分の混合物103を形成することができる。第一及び第二材料101、102の混合物103は、図2cにおいて交差した水平線及び垂直線によって表される。しかしながら、代替として、第一及び第二材料101、102は、混合されなくてもよい。とにかく、この手法は、キャビティの底部に第一材料101のみが保持される、または比較的高い割合で第一材料101を含む第一及び第二材料101、102の混合物が保持されるようにすることができる。
【0038】
第一及び第二材料の分布は、最終的に形成される補綴歯要素104内に実質的に保持されることができる。したがって、図3に示されるように、補綴歯要素104は、雌型キャビティ111の底部1111に形成された第一端部1041において、対向端部1042及び/または内部領域1043よりも高い透光性を有することができる。この半透明グラデーションは、ステップグラデーションまたは線形グラデーションであることができる。半透明グラデーションは、補綴歯要素104の対向端部1042及び/または内部領域1043よりも補綴歯要素104の第一端部1041に向かって第一材料が多く位置していることによって、そして補綴歯要素104の第一端部1041よりも補綴歯要素の対向端部1042及び/または内部領域1043に第二材料が多いことによって、引き起こされる。
【0039】
補綴歯要素104を形成するために、この方法は、雌型キャビティ内の第一及び第二流体材料101、102(または混合物103)を少なくとも部分的に固化して、補綴歯要素キャストを形成することをさらに備えることができる。第一及び第二材料の化学組成に応じて、第一及び第二材料の固化は、第一及び第二材料を大気条件下で長期間維持するだけで、及び/または温度などの環境条件を変更することで実行されることができる。少なくとも部分的に固化すると、キャストは、雌型及び雄型110及び120から取り外すことができ、キャストは、完全に硬化した補綴歯要素104を形成する硬化プロセスを受けることができる。
【0040】
硬化性流体材料101、102は、光硬化性であることができ、光に曝露されるときに固化する光活性化材料を含むことができる。したがって、この方法は、補綴歯要素キャストを光に曝露することによりこのキャストを硬化させる工程を備えることができる。しかしながら別の実施形態では、硬化性流体材料は、熱硬化性であってもよく、方法は、炉内などで焼成することによって補綴歯要素キャストを硬化させる工程を備えることができる。化学的に活性化される材料、または組み合わせ(光、熱及び化学的に活性化される材料)を示す硬化性材料も使用することができる。
【0041】
一実施形態では、鋳型は、図2cに矢印115によって表されるように、雄型120の挿入中に、過剰な第一及び/または第二材料101、102がキャビティ111から漏出することを可能にするように構成される。しかしながら、あるいは、鋳型110、120及び/または第一及び第二流体レベル113、114は、雄型120の挿入中に第一及び第二材料101、102がキャビティ111内に完全に維持されることができるように選択されることができる。
【0042】
第一及び/または第二材料101、102は、セラミック粉末及び結合剤を含む歯科用混合物であることができる。セラミック粉末は、ジルコニア、ジルコニア酸化物、または酸化アルミニウムを含むが、これらに限定されない、1つ以上の歯科用セラミック材料であることができる。結合剤は、典型的には、任意の接着剤であり、セラミック粉末を合わせて結合するために使用されることができる。例えば、天然ワックス類(パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、バーンズダールワックス、ミツロウ、カルナウバロウ、セレシンワックス、カカオバター、ゲイロウ)、合成ワックス類(ポリエチレンポリマー類、ポリオキシエチレンポリマー類)、ガム類、脂肪類(脂肪酸類、油類、エステル類)、天然または合成樹脂類(ダンマル、カウリ、ロジン、ポリスチレン、ジメタクリラートモノマー類)を含むが、これらに限定されない、1つ以上のワックス類を使用することができる。
【0043】
第一及び/または第二材料101、102は、流体材料の色及び/または透光性を調整するために光学的改質剤及び顔料を追加で含むことができる。さらに、第一及び/または第二材料101、102は、例えば、材料の強度または粘度を調整するために、フィラー粒子を含むことができる。例えば、第一及び/または第二材料101、102は、金属酸化物粒子(酸化チタンまたは酸化アルミニウム)、シリカまたは石英を含むことができる。第一及び/または第二材料101、102は、液体またはペーストであることができ、ニュートン特性または非ニュートン特性を有することができる。
【0044】
上記では、第一及び第二硬化性流体材料101、102のみを説明しているが、実際には、雄型の挿入後に所望の半透明グラデーションを補綴歯要素全体に達成する方式で、3つ以上の硬化性流体材料を使用して、一方を他方の上に堆積させることができる。追加の材料の使用は、例えば、補綴歯要素全体に、より滑らかな半透明グラデーションを提供することができる。
【0045】
上述の方法は、所望の形状及び透光性を有する補綴歯要素を形成するための比較的単純で効果的な方法を提示し、熟練した職人などによる手作業での補綴歯要素の形成についてのいかなる必要性をも低減または排除することができる。さらに、この技法を工業的に適用することができ、例えば、単一の装置を使用して、複数の補綴歯要素を実質的に同時に形成することができる。
【0046】
より詳細には、図5及び図6を参照してここで説明されるように、一実施形態では、1つ以上の雌型310、及び1つ以上の雄型320を使用して1つ以上の補綴歯要素を形成するための装置300を提供する。装置300は、それぞれの雌型310のキャビティ311の底部に第一硬化性流体材料301を堆積させ、キャビティ311内の第一材料301上に第二硬化性流体材料302を堆積させる、1つ以上の流体堆積装置330を含む。また、装置300は、1つ以上の雄型320を1つ以上の雌型310のキャビティ311中に挿入するように構成される挿入機構340を含む。
【0047】
図5に示されるように、1つ以上の流体堆積装置330は、キャビティ311内に材料301、302を堆積させるための複数のノズル331を含むオートピペットによって提供される。さらに、キャビティ311をそれぞれ備える複数の雌型310を材料315の単一の固体ブロック内に形成する。同じオートピペットは、第一及び第二材料301、302の両方を順次堆積させるように構成されることができる。あるいは、異なるオートピペット(または実際には完全に異なるタイプの流体堆積装置)を使用して、第一材料301の堆積後に第二材料302を堆積させることができる。
【0048】
図6に示されるように、挿入機構340は、キャビティ311内に実質的に同時に挿入されるように配置される複数の雄型320を含む。雄型320は、互いに結合され、線形アクチュエータ、ロボットアームまたはその他のものなどの作動機構を使用してキャビティ311内に移動する。
【0049】
装置300を使用して、第一材料301を雌型310のすべてのキャビティ311中に同時に、または間断なく堆積させることができた後に、第二材料302を雌型310のすべてのキャビティ311中に同時に、または間断なく堆積させることができる。さらに、挿入機構340は、雄型320をキャビティ311中に同時に、または間断なく挿入するように適合されることができる。この手法は、複数の補綴歯要素が実質的に同時に形成されることを可能にすることができる。
【0050】
多くの変形例及び/または修正は、本開示の広い一般的な範囲から逸脱することなく、上述した実施形態になされ得ることが当業者によって理解される。したがって、本実施形態は、あらゆる点で例示的であり、限定的ではないと見なすべきである。
図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】