(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-518246(P2021-518246A)
(43)【公表日】2021年8月2日
(54)【発明の名称】被検者の呼吸イベントを検出するための方法及びシステム並びに呼吸イベントを検出するためのモデルを形成するための方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/08 20060101AFI20210705BHJP
A61B 5/113 20060101ALI20210705BHJP
A61B 5/053 20210101ALI20210705BHJP
【FI】
A61B5/08
A61B5/113
A61B5/05 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2021-500335(P2021-500335)
(86)(22)【出願日】2019年3月13日
(85)【翻訳文提出日】2020年11月16日
(86)【国際出願番号】EP2019056222
(87)【国際公開番号】WO2019179836
(87)【国際公開日】20190926
(31)【優先権主張番号】18162591.4
(32)【優先日】2018年3月19日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520361324
【氏名又は名称】オネラ・テクノロジーズ・ビー・ブイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グロエネンダル、ウィレミン
(72)【発明者】
【氏名】デシュリベール、ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ルイシンク、ジョエリ
(72)【発明者】
【氏名】バン・スティーンキステ、トム
【テーマコード(参考)】
4C038
4C127
【Fターム(参考)】
4C038SS09
4C038ST04
4C038SV00
4C038SV01
4C038SV03
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4C127AA06
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4C127KK03
(57)【要約】
被検者の呼吸イベントを検出するための方法は、被検者から呼吸動作に依存する生体インピーダンス測定信号(S2)を受信し、生体インピーダンス測定信号(S2)の少なくとも1つの時系列を抽出し(306)、抽出された各時系列について、生体インピーダンス測定信号(S2)を、呼吸イベントの発生の予測のセットを形成するために、機械学習モデルの集合内の複数の機械学習モデルのそれぞれと比較し(308)、各予測は、生体インピーダンス測定信号(S2)を1つの機械学習モデルと比較することに基づいており、各モデルは、生体インピーダンス測定信号(S2)の時系列の特徴を呼吸イベントの存在と相互に関連付けられ、各モデルは、トレーニング時系列のユニークなデータセットでトレーニングされ、予測のセットに基づいて、抽出された時系列で呼吸イベントが発生したかどうかを決定すること(310)を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の呼吸イベントを検出するための方法であって、
前記被検者から生体インピーダンス測定信号(S2)を受信し、前記生体インピーダンス測定信号(S2)は、前記被検者の呼吸動作に依存し、
前記生体インピーダンス測定信号(S2)の少なくとも1つの時系列を抽出し(306)、
前記抽出された時系列のそれぞれについて、
前記生体インピーダンス測定信号(S2)を、呼吸イベントの発生の予測のセットを形成するために、機械学習モデルの集合内の複数の機械学習モデルのそれぞれと比較し(308)、前記セット内の各予測は、前記生体インピーダンス測定信号(S2)を1つの機械学習モデルと比較することに基づいており、各モデルは、生体インピーダンス測定信号(S2)の時系列の特徴を、前記生体インピーダンス測定信号(S2)の前記時系列における呼吸イベントの存在と相互に関連付けられ、各モデルは、トレーニング時系列のユニークなデータセットでトレーニングされ、
予測の前記セットに基づいて、前記抽出された時系列で呼吸イベントが発生したかどうかを決定すること(310)、
を含む。
【請求項2】
前記生体インピーダンス測定信号(S2)は、トレーニング時系列の前記ユニークなデータセットを分析する長・短期記憶(LSTM)セルを備えたニューラルネットワークにより形成された機械学習モデルの集合内の複数の機械学習モデルのそれぞれと比較する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生体インピーダンス測定信号(S2)は、異なるデータセット間で再利用され呼吸イベントを含むポジティブ時系列と、呼吸イベントを含まないネガティブ時系列であって、少なくとも複数の前記ネガティブ時系列は、異なるデータセット間で互いに素であるものと組合せるために、取得されたトレーニング時系列のバランスのとれたブートストラップにより形成されているユニークなデータセットで各モデルをトレーニングすることにより形成された機械学習モデルの集合内の複数の機械学習モデルのそれぞれと比較される、
請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
トレーニング時系列の前記データセットは、呼吸イベントが検出された前記被検者から取得された、
前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
追加の測定信号(S3)を受信し、
前記追加の測定信号(S3)の少なくとも1つの時系列を抽出し、前記追加の測定信号(S3)の前記少なくとも1つの時系列は、前記生体インピーダンス測定信号(S2)の前記少なくとも1つの時系列との同時期間に対応し、
前記抽出された時系列のそれぞれについて、
呼吸イベントの発生の予測の前記セットに含まれる予測を形成するように、前記生体インピーダンス測定信号(S2)及び前記追加の測定信号(S3)を、機械学習モデルの集合内の複数の機械学習モデルのそれぞれと比較すること、
をさらに含む前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記受信された生体インピーダンス測定信号(S2)を前処理すること(304)、
をさらに含む、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記生体インピーダンス測定信号(S2)の少なくとも1つの時系列の前記抽出は、前記生体インピーダンス測定信号(S2)の複数の連続する時系列を抽出することを含む、
前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
呼吸イベントが発生したという決定がされたいくつかの時系列を、前記生体インピーダンス測定信号(S2)の関連する継続時間と比較することに基づいて、前記被検者の呼吸状態の指標を決定すること、
をさらに含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記生体インピーダンス測定信号(S2)を異なる呼吸イベントの発生についての予測の複数のセットを決定する複数の機械学習モデルのそれぞれと前記比較し、呼吸イベントが発生したかどうかの前記決定は、予測の各セットについて実行され、前記方法は、呼吸イベントの発生の予測を出力することをさらに含み、前記出力は、中枢性睡眠時無呼吸、閉塞性睡眠時無呼吸及び低呼吸を含む呼吸イベントを区別する、
前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
被検者の呼吸イベントを検出するためのモデルを形成するための方法であって、
1以上の被検者から生体インピーダンス測定信号(S2)を受信し、前記生体インピーダンス測定信号(S2)は、前記被検者の呼吸動作に依存し、
前記生体インピーダンス測定信号(S2)の複数のトレーニング時系列を抽出し(210)、
呼吸イベントの発生の情報を受信し、その情報は、呼吸イベントを表すポジティブ時系列又は呼吸イベントを表さないネガティブ時系列として前記トレーニング時系列を分類するように、前記複数のトレーニング時系列と同期させ、
機械学習モデルの集合を形成するように、複数の機械学習モデルを決定し(214)、各モデルは、生体インピーダンス測定信号(S2)の時系列の特徴を、前記生体インピーダンス測定信号(S2)の前記時系列における呼吸イベントの存在と相互に関連付けられ、各モデルは、前記複数のトレーニング時系列のユニークなデータセットでトレーニングされること、
を含む。
【請求項11】
前記複数の機械学習モデルの前記決定は、トレーニング時系列の特徴と前記トレーニング時系列における呼吸イベントの存在との相関を抽出するために、長・短期記憶(LSTM)セルを備えたニューラルネットワークを使用することを含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記複数の機械学習モデルをトレーニングするために使用されるユニークなデータセットを形成すること(212)をさらに含み、ユニークなデータセットの前記形成は、異なるデータセット間で再利用され呼吸イベントを含むポジティブ時系列と、呼吸イベントを含まないネガティブ時系列であって、少なくとも複数の前記ネガティブ時系列は、異なるデータセット間で互いに素であるものと組合せるために、取得されたトレーニング時系列のバランスのとれたブートストラップをすることを含む、
請求項10又は請求項11に記載の方法。
【請求項13】
検査下の被検者の呼吸イベントを検出するためのシステム(100)であって、
前記被検者から生体インピーダンス測定信号(S2)を取得するための生体インピーダンス測定センサ(110)であって、前記生体インピーダンス測定信号(S2)が前記被検者の呼吸動作に依存するものと、
前記生体インピーダンス測定信号(S2)を受信し、
前記生体インピーダンス測定信号(S2)の少なくとも1つの時系列を抽出し、
前記抽出された時系列のそれぞれについて、
前記生体インピーダンス測定信号(S2)を、呼吸イベントの発生の予測のセットを形成するために、機械学習モデルの集合内の複数の機械学習モデルのそれぞれと比較し、前記セット内の各予測は、前記生体インピーダンス測定信号(S2)を1つの機械学習モデルと比較することに基づいており、各モデルは、生体インピーダンス測定信号(S2)の時系列の特徴を、前記生体インピーダンス測定信号(S2)の前記時系列における呼吸イベントの存在と相互に関連付けられ、各モデルは、トレーニング時系列のユニークなデータセットでトレーニングされ、
予測の前記セットに基づいて、前記抽出された時系列で呼吸イベントが発生したかどうかを決定する、
ように構成された処理ユニット(120)と、
を備える。
【請求項14】
ハウジングをさらに備え、前記生体インピーダンス測定センサ(110)及び前記処理ユニット(120)は、前記ハウジング内に配置される、
請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
ハウジングをさらに備え、前記生体インピーダンス測定センサ(110)は、前記ハウジング内に配置され、前記システムは、前記ハウジング内に配置された通信ユニット(140)をさらに備え、前記通信ユニット(140)は、前記生体インピーダンス測定信号(S2)を前記処理ユニット(120)に送信するように構成される、
請求項13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の概念は、被検者の呼吸イベントを検出するための方法及びシステムに関する。また、本発明の概念は、呼吸イベントを検出するためのモデルを形成するためのトレーニング方法に関する。特に、本発明の概念は、生体インピーダンス測定信号に基づく呼吸イベントの検出に関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠時無呼吸は、最も一般的な睡眠関連障害の1つである。睡眠時無呼吸の多くの症例は、患者が自分の状態に気付くことは滅多にないため、診断されていない。しかし、睡眠時無呼吸の結果は、血圧の上昇、脳卒中及び心不整脈から重大な心不全に至るまで、非常に深刻である。
【0003】
睡眠時無呼吸を診断するためのゴールドスタンダードは、専用の睡眠検査室での終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)である。それでも、PSGテストは高価であり、テストの利用可能性は限られている。在宅検査装置を使用した患者の大規模なスクリーニングにより、最も重篤な患者は早期の診断を受けることができ、一方、無呼吸の疑いのない患者は、正しい診断を探し続ける可能性がある。
【0004】
生体インピーダンス信号は、被検者の健康状態を監視するために使用することへの関心が高まっている。生体インピーダンス信号は、例えば、被検者の呼吸により変化することがあり、したがって、生体インピーダンス信号は、被検者の呼吸監視に利用することができる。これは、例えば睡眠監視用途に利用することができる。
【0005】
生体インピーダンス測定は、生体インピーダンス測定が行われる被検者に最小限の又は少なくとも低い不自由を生じさせる比較的単純な機器で実行することができる。したがって、生体インピーダンス測定の使用は、例えば、睡眠時無呼吸のスクリーニングにおいて、呼吸の監視、分析又は評価のあらゆるタイプにおける興味深い選択肢を示している。
【0006】
WO2004/112606には、1以上の生体インピーダンス信号を取得するための手段であって、好ましくは、胸部を横断して経胸腔測定結果を提供するもの、及び、頚領域を横断して経頚部測定結果を提供するものと、心臓活動又は呼吸努力によるものとみなすことができる生体インピーダンス信号の成分を計算するための手段と、閉塞性無呼吸及び中枢性無呼吸に関連する診断手法を生成するために呼吸努力生体インピーダンス信号から測定結果を得るための手段と、心臓の血行力学的パラメータにおける睡眠呼吸障害の影響の診断手法を提供することができる心臓の生体インピーダンス信号から測定結果を得るための手段とを含む装置が開示されている。
【0007】
無呼吸イベントが検出される可能性があることが示されているが、その装置は、2つの別個の生体インピーダンス測定結果を利用し、これは、患者の胸部を横断して、かつ首領域を横断して検出することになるだろう。したがって、生体インピーダンス測定信号をどのように取得するかについて非常に具体的な要件を設定することなく、呼吸イベントを検出する信頼できる方法を有することが依然として望ましいであろう。
【発明の概要】
【0008】
本発明の概念の目的は、生体インピーダンス信号を使用して呼吸監視を改善することである。本発明の概念の特定の目的は、呼吸イベントの信頼できる検出を提供することである。
【0009】
本発明の概念のこの目的及び他の目的は、独立請求項で定義されるように、本発明により、少なくとも部分的に満たされる。好ましい実施形態は、従属請求項に提示されている。
【0010】
第1の態様によれば、被検者の呼吸イベントを検出するための方法が提供され、前述の方法は、被検者から生体インピーダンス測定信号を受信し、前述の生体インピーダンス測定信号は、被検者の呼吸動作に依存し、生体インピーダンス測定信号の少なくとも1つの時系列を抽出し、抽出された時系列のそれぞれについて、生体インピーダンス測定信号を、呼吸イベントの発生の予測のセットを形成するために、機械学習モデルの集合内の複数の機械学習モデルのそれぞれと比較し、セット内の各予測は、生体インピーダンス測定信号を1つの機械学習モデルと比較することに基づいており、各モデルは、生体インピーダンス測定信号の時系列の特徴を、生体インピーダンス測定信号の時系列における呼吸イベントの存在と相互に関連付けられ、各モデルは、トレーニング時系列のユニークなデータセットでトレーニングされ、予測のセットに基づいて、抽出された時系列で呼吸イベントが発生したかどうかを決定すること、を含む。
【0011】
生体インピーダンス測定信号は、呼吸イベントを示すと思われる、人が設計した特徴を抽出するために処理される必要はない。このような人が設計した特徴は、呼吸イベントの重要なマーカーを見逃す可能性がある。一方、本発明の概念によれば、生体インピーダンス測定信号は、呼吸イベントが発生したかどうかを判断するために機械学習モデルと比較される。機械学習モデルは、モデルのトレーニングにおいて、呼吸イベントに関連付けられた生体インピーダンス測定信号の特徴を識別し、機械学習モデルを使用することで、呼吸イベントを検出するための生体インピーダンス測定信号の情報を充分に活用できるようにすることができる。
【0012】
機械学習モデルの集合内の複数の機械学習モデルを使用することにより、呼吸イベントを非常に堅実な方法で検出することができる。複数の機械学習モデルが呼吸イベントの検出に寄与し、呼吸イベントの検出が複数のモデルからの合計スコアに基づくことができるように、複数の機械学習モデルは、予測のセットの判断を可能にする。したがって、呼吸イベントの検出は、単一の機械学習モデルに基づく結果に対する感度が低くなる。
【0013】
ユニークなデータセットでトレーニングされるモデルにより、モデルは、生体インピーダンス測定信号の特徴と呼吸イベントの間の様々な相関関係を識別できる。これはさらに、呼吸イベントの検出が堅実であり、呼吸イベントが確実に検出される可能性があることに寄与する。
【0014】
本発明の概念は、呼吸イベントの堅実な検出のための生体インピーダンス測定信号の使用を可能にする。生体インピーダンス測定は、比較的単純な機器を使用して実行することができ、これは、検査される被検者に全く不便を引き起こさないか、わずかな不便を引き起こすかもしれない。これは、被検者が寝ている間に質の高い測定が実行されるように、呼吸イベントを検出するための信号の取得が被検者の睡眠に影響を与えないことを意味する。さらに、複数の機械学習モデルを使用することで、比較的単純な生体インピーダンス測定が行われても、呼吸イベントの堅実な検出を可能にする。
【0015】
被検者の呼吸動作に依存する生体インピーダンス測定信号は、例えば、被検者の胸部の上又は胸部を横断する生体インピーダンスを測定するように取得されてもよい。被検者の胸部の上に配置された電極に基づいて生体インピーダンス測定を行う場合、呼吸努力に関連して生体インピーダンスが変化するように、胸部の拡張により電極間の電流経路が変化する可能性がある。また、空気は細胞組織とはインピーダンスが異なる。肺に存在する空気の量は、呼吸サイクル中に変化するため、生体インピーダンスも呼吸気流に関連して変化する。
【0016】
但し、被検者の呼吸動作に依存する生体インピーダンス測定信号は、例えば、被検者の首の部分に関連するなど、被検者の肺又は気道の任意に関連する生体インピーダンスを測定するための電極を配置するなど、他の方法で取得してもよいことを理解されたい。
【0017】
呼吸イベントは、被検者の(一時的な)異常な呼吸に関連する任意のイベントでもよい。これには、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)、中枢性無呼吸(CA)、閉塞性低呼吸、中枢性低呼吸、及び、これらの組合せなど、無呼吸及び低呼吸が含まれてもよい。呼吸イベントの検出は、呼吸イベントのタイプを分類してもよいし、代わりに、呼吸イベントを分類せずに、任意の呼吸イベントが発生したことを単に示してもよい。
【0018】
ここで使用される用語「ユニークなデータセット」は、トレーニング時系列の同一のデータセットでトレーニングされていない2つのモデルとして解釈されたい。2つのモデルのトレーニングで使用される2つのデータセットは、特定のトレーニング時系列が両方のデータセットに存在する可能性があるように、1以上のトレーニング時系列を共有してもよい。但し、各データセットには、他のデータセットに存在しないトレーニング時系列も含まれる。また、各モデルは、別のモデルがトレーニングされる任意のデータセットと同一ではないデータセットでトレーニングされるように、2つより多いモデルが「複数のユニークなデータセット」でトレーニングされてもよいことも理解されたい。
【0019】
一実施形態によれば、生体インピーダンス測定信号は、トレーニング時系列のユニークなデータセットを分析する長・短期記憶(LSTM)セルを備えるニューラルネットワークにより形成された機械学習モデルの集合内の複数の機械学習モデルのそれぞれと比較される。
【0020】
LSTMセルを使用により、機械学習モデルがトレーニング時系列における時間的側面をモデル化できることにより、機械学習モデルは、呼吸イベントを検出するために、関連する時間的特徴及び相互作用を抽出できる。特に、LSTMセルは、時間的情報を抽出して使用するための強力なツールを提供する。
【0021】
一実施形態によれば、生体インピーダンス測定信号は、異なるデータセット間で再利用され呼吸イベントを含むポジティブ時系列と、呼吸イベントを含まないネガティブ時系列であって、少なくとも複数のネガティブ時系列は、異なるデータセット間で互いに素(dis-joint)であるものと組合せるために、取得されたトレーニング時系列のバランスのとれたブートストラップにより形成されているユニークなデータセットで各モデルをトレーニングすることにより形成された機械学習モデルの集合内の複数の機械学習モデルのそれぞれと比較される。
【0022】
呼吸イベントに対応しない時系列は、呼吸イベントに対応する時系列よりもはるかに一般的であることが本発明の見識である。しかしながら、ポジティブトレーニング時系列(呼吸イベントが発生する)とネガティブトレーニング時系列(呼吸イベントが発生しない)の間のこのようなアンバランスは、トレーニング時系列に基づく機械学習モデルの品質に大きな影響を与える可能性がある。
【0023】
データセットのバランスをとる単純なオプションは、ダウンサンプリングと呼ばれ、ネガティブトレーニング時系列をサブサンプリングして、ポジティブとネガティブのトレーニング時系列を同じ量にすることである。しかしながら、これは大量の情報の損失を招く。もう1つのオプションは、アップサンプリングとして知られ、ポジティブトレーニング時系列をオーバーサンプリングして、ポジティブとネガティブのトレーニング時系列を同じ量にすることである。しかしながら、結果として、同じポジティブトレーニング時系列の過剰な表示がされることになる。これは、これらの特定のポジティブトレーニング時系列の過剰適合をすぐに招き、オーバーサンプリングされたデータセットでトレーニングされたモデルの見えないデータへの一般化が大幅に制限される可能性がある。
【0024】
取得されたトレーニング時系列のバランスのとれたブートストラップを使用することにより、トレーニング時系列がユニークなデータセットに分割され、各データセットが、ポジティブとネガティブのトレーニング時系列の間で、充分にバランスがとれるようにすることができる。ポジティブ時系列は、各データセットがいくつかのポジティブ時系列を含むように、異なるデータセット間で再利用することができるが、ネガティブ時系列は、別個のデータセットに配置されることができる。このように、各データセットは、ポジティブとネガティブのトレーニング時系列の間で良いバランスをとることができ、モデルの作成において情報が破棄されない。
【0025】
ネガティブ時系列、即ち、全てのネガティブ時系列は、異なるデータセット間で互いに素であってもよい。これは、特定のネガティブ時系列がデータセットで1度だけ使用されることを意味する。これは、バランスのとれたブートストラップを実現するための好ましい方法である可能性がある。
【0026】
しかしながら、異なるデータセット間でいくつかのネガティブ時系列を再利用しても、形成される機械学習モデルの全体的な結果にほとんど影響を与えない可能性があることが認識されている。したがって、異なるデータセット間でいくつかの(例えば、少しの)ネガティブ時系列を再利用することができる。そのような場合、複数のネガティブ時系列は、異なるデータセット間で互いに素でもよく、一方、1以上のネガティブ時系列は、2つ以上のデータセットで再利用されてもよい。
【0027】
機械学習モデルの集合内の複数の機械学習モデルのそれぞれは、バランスのとれたブートストラップにより定義されたユニークなデータセットで各モデルをトレーニングすることにより形成されるため、バランスのとれた方法で全てのトレーニングデータを考慮しながら機械学習モデルを形成できる。これは、機械学習モデルが充分にトレーニングされ、呼吸イベントの検出を堅実な方法で実行できるようになることを容易にする。
【0028】
一実施形態によれば、トレーニング時系列のデータセットは、呼吸イベントが検出された被検者から取得されている。
【0029】
呼吸イベントの検出が後で行われる同じ被検者でモデルをトレーニングすることにより、方法を特徴付けることができる。これは、機械学習モデルが、検査下の被検者の呼吸イベントを検出する態勢が非常によく整っている可能性があることを示す。
【0030】
特徴付けられたモデルは、被検者の長期モニタリングにおいて、例えば、長期間にわたる被検者のフォローアップのために、有利に使用されることができる。
【0031】
しかしながら、機械学習モデルは、呼吸イベントの検出が後で行われる被検者のトレーニング時系列を含まないか、又は、単に含むだけではない、一般的なトレーニング時系列でトレーニングされてもよいことを理解されたい。例えば、機械学習モデルは、多数の様々な患者から取得した大量のトレーニング時系列でトレーニングされてもよい。これにより、機械学習モデルを堅実にし、任意の被検者の呼吸イベントを一般的に検出できるようになる可能性がある。したがって、機械学習モデルは、機械学習モデルのトレーニングに関与したことのない被検者の呼吸イベントの検出に直接使用することができる。したがって、機械学習モデルは、新しい患者の呼吸イベントの検出に、例えば、睡眠時無呼吸の診断に、すばやく使用することができる。
【0032】
一実施形態によれば、この方法は、追加の測定信号を受信し、追加の測定信号の少なくとも1つの時系列を抽出し、追加の測定信号の少なくとも1つの時系列は、生体インピーダンス測定信号の少なくとも1つの時系列との同時期間に対応し、抽出された時系列のそれぞれについて、呼吸イベントの発生の予測のセットに含まれる予測を形成するように、生体インピーダンス測定信号及び追加の測定信号を、機械学習モデルの集合内の複数の機械学習モデルのそれぞれと比較することをさらに含む。
【0033】
これは、この方法が、少なくとも1つの追加の測定で、生体インピーダンス測定信号を使用した呼吸イベントの検出を補完する可能性があることを意味する。追加の測定信号は、被検者の特性の測定でもよい。測定信号は、バイタルサインに直接的又は間接的に関連している可能性があり、呼吸イベントの検出に使用できる追加情報を提供する可能性がある。
【0034】
一部の機械学習モデルは、生体インピーダンス測定信号のみに基づいて予測を形成し、一部の機械学習モデルは、追加の測定信号のみで予測を形成するように、追加の測定信号は、機械学習モデルの集合内の複数の機械学習モデルと個別に比較してもよい。さらに又は代わりに、機械学習モデルは、生体インピーダンス測定信号、及び、追加の測定信号の両方に基づいて予測を形成してもよい。
【0035】
追加の測定信号を使用すると、被検者からさらに情報が取得されるため、呼吸イベントの検出が向上する可能性がある。したがって、追加の測定信号を使用して、呼吸イベントの検出をさらに堅実な方法で実行することができる。但し、呼吸イベントの検出を可能にするために追加の測定信号は必要ないことを理解されたい。
【0036】
追加の測定信号は、直接的又は間接的に指標を提供する、例えば、被検者の体温、被検者の心拍数若しくは脈拍、被検者の呼吸数、又は、被検者の血圧など、任意のタイプの測定値にしてもよい。追加の測定信号は、バイタルサインの直接測定が備えられてもよく、例えば、温度信号、心電図(ECG)信号、又は、フォトプレチスモグラフィー(PPG)信号でもよい。但し、追加の測定信号は、代わりに、動きが心臓又は肺の活動を表すことができるので、バイタルサインの情報を間接的に提供するように、身体部分(胸部など)の動きを示すことができる、加速度計信号でもよい。
【0037】
この方法は、複数(少なくとも2つ)の追加の測定信号を受信することを含めてもよく、これは、呼吸イベントの堅実な検出に寄与することができる。
【0038】
一実施形態によれば、この方法は、受信された生体インピーダンス測定信号を前処理することをさらに含む。
【0039】
受信された生体インピーダンス測定信号の前処理は、生体インピーダンス測定信号がクリーンであり、かつ、生体インピーダンス測定信号が呼吸信号を表すことを確かにしてもよい。したがって、受信された生体インピーダンス測定信号の前処理は、呼吸イベントの検出のための適切な入力を提供してもよい。受信された生体インピーダンス測定信号の前処理は、生体インピーダンス測定信号を被検者の呼吸を表す信号に変換したものとみなしてもよい。
【0040】
受信された生体インピーダンス測定信号の前処理は、取得した生体インピーダンス測定信号のサブサンプリングを含めてもよい。
【0041】
受信された生体インピーダンス測定信号の前処理には、複素数値信号の大きさの抽出が含まれてもよい。
【0042】
受信された生体インピーダンス測定信号の前処理は、信号のフィルタリングを含めてもよく、例えば、呼吸情報を抽出するための信号のローパスフィルタリングである。ローパスフィルタは、バターワースフィルタ、又は、別のゼロ位相シフトを有するフィルタでもよい。
【0043】
受信された生体インピーダンス測定信号の前処理には、信号からモーションアーチファクトを除去することが含まれてもよい。
【0044】
上記の前処理作業の1以上を実行してもよい。生体インピーダンス測定信号の前処理は、少なくとも部分的にノイズを除去してもよいし、呼吸に関連する生体インピーダンス測定信号における情報を強調してもよい。
【0045】
一実施形態によれば、生体インピーダンス測定信号の少なくとも1つの時系列の抽出は、生体インピーダンス測定信号の複数の連続する時系列を抽出することを含む。
【0046】
呼吸イベントの検出は、好ましくは、比較的長期間に渡り実行されてもよい。これにより、例えば呼吸イベントの発生頻度を検出することにより、被検者の状態の分析を可能にしてもよい。
【0047】
したがって、受信された生体インピーダンス測定信号は、長期間に渡り延長してもよく、複数の連続する時系列を、受信された生体インピーダンス測定信号から抽出してもよい。
【0048】
生体インピーダンス測定信号の各時系列は、呼吸イベントが時系列内で発生したかどうかを判断するために別々に分析されてもよい。
【0049】
時系列は、部分的に重複してもよい。一連の重複する時系列内の少なくとも1つの時系列は、呼吸イベントの継続時間の大部分を含めてもよいため、これは、呼吸イベントの検出を向上することができる。
【0050】
別の実施形態では、時系列は重複していない。これは、呼吸イベントを検出するプロセスがより少ない時間及びコンピュータリソースを要求してもよいように、(重複する時系列と比較して)時系列の数が少なくてもよいことを意味する。
【0051】
一実施形態によれば、この方法は、呼吸イベントが発生したという決定がされたいくつかの時系列を、生体インピーダンス測定信号の関連する継続時間と比較することに基づいて、被検者の呼吸状態の指標を決定することをさらに含む。
【0052】
この方法は、この方法に基づく呼吸状態の指標が他の方法で得られた指標と比較することができるように、例えば、標準化された方法論に従って指標を決定してもよい。例えば、この方法は、呼吸イベントの数を総睡眠時間で割ることで決定できる無呼吸低呼吸指数(AHI)を決定することを含めてもよい。
【0053】
したがって、この方法がAHI指標を決定することである場合、被検者の睡眠時間に対応する関連する継続時間を決定してもよい。したがって、被検者が眠りに落ちる前の時間を含む、又は、被検者が目が覚めている時間を含む継続時間に渡り、受信された生体インピーダンス信号が延長される場合、そのような時間は、削除されてもよいし、生体インピーダンス測定信号の関連する継続時間の一部でなくてもよい。
【0054】
一実施形態によれば、生体インピーダンス測定信号を異なる呼吸イベントの発生についての予測の複数のセットを決定する複数の機械学習モデルのそれぞれと比較し、呼吸イベントが発生したかどうかの前記決定は、予測の各セットについて実行され、前記方法は、呼吸イベントの発生の予測を出力することをさらに含み、前記出力は、中枢性睡眠時無呼吸、閉塞性睡眠時無呼吸及び低呼吸を含む呼吸イベントを区別する。
【0055】
異なるタイプの呼吸イベントを区別することにより、発生する呼吸イベントのタイプを分析で考慮に入れることができるため、被検者の状態のより詳細な分析が可能になる。
【0056】
各モデルは、様々なタイプのイベントを区別できるようにトレーニングしてもよい。異なる呼吸イベントを検出するためのモデルのトレーニングには、各タイプの呼吸イベントについてのポジティブ時系列とネガティブ時系列を組合せたユニークなデータセットでトレーニングされるモデルにより、バランスのとれたブートストラップが含まれてもよく、少なくとも複数のネガティブ時系列は、異なるデータセット間で互いに素であり、ポジティブ時系列は、異なるデータセット間で再利用されてもよい。
【0057】
第2の態様によれば、被検者の呼吸イベントを検出するためのモデルを形成するための方法が提供され、前記方法は、1以上の被検者から生体インピーダンス測定信号を受信し、前記生体インピーダンス測定信号は、被検者の呼吸動作に依存し、生体インピーダンス測定信号の複数のトレーニング時系列を抽出し、呼吸イベントの発生の情報を受信し、この情報は、呼吸イベントを表すポジティブ時系列又は呼吸イベントを表さないネガティブ時系列として前記トレーニング時系列を分類するように、複数のトレーニング時系列と同期させ、機械学習モデルの集合を形成するように、複数の機械学習モデルを決定し、各モデルは、生体インピーダンス測定信号の時系列の特徴を、生体インピーダンス測定信号の時系列における呼吸イベントの存在と相互に関連付けられ、各モデルは、複数のトレーニング時系列のユニークなデータセットでトレーニングされること、を含む。
【0058】
この第2の態様の効果及び特徴は、第1の態様に関連して上記で説明したものと概ね類似する。第1の態様に関連して言及された実施形態は、第2の態様と概ね互換性がある。
【0059】
機械学習モデルの集合を形成するための複数の機械学習モデルのトレーニングは、トレーニングされた複数の機械学習モデルに基づいて非常に堅実な方法で呼吸イベントを検出することを可能にすることができる。
【0060】
ユニークなデータセットでトレーニングされるモデルのおかげで、モデルは、生体インピーダンス測定信号の特徴と呼吸イベントの間の様々な相関関係を識別できる。これは、呼吸イベントの検出が堅実であり、呼吸イベントが確実に検出される可能性があることにさらに寄与する。
【0061】
呼吸イベントの発生の情報は、別の信号の取得に基づいて受信してもよく、そこから呼吸イベントを非常に確実に検出することができる。他の信号は、他の信号における呼吸イベントの識別が生体インピーダンス測定信号の時系列に関連することができるように、受信された生体インピーダンス測定信号の取得と同期して取得してもよい。例えば、呼吸イベントの発生の受信された情報は、PSGシステムから供給されてもよい。
【0062】
別の実施形態では、呼吸イベントの発生の情報は、手動のアノテーションから受信してもよく、呼吸イベントを含む生体インピーダンス測定信号の時系列は、手動入力に基づいてタグ付けされてもよい。
【0063】
一実施形態によれば、複数の機械学習モデルの決定は、トレーニング時系列の特徴とトレーニング時系列における呼吸イベントの存在との相関を抽出するために、長・短期記憶(LSTM)セルを備えたニューラルネットワークを使用することを含む。
【0064】
LSTMセルを使用により、機械学習モデルがトレーニング時系列における時間的側面をモデル化できることにより、機械学習モデルは、呼吸イベントを検出するために、関連する時間的特徴及び相互作用を抽出できる。特に、LSTMセルは、時間的情報を抽出して使用するための強力なツールを提供する。
【0065】
一実施形態によれば、この方法は、複数の機械学習モデルをトレーニングするために使用されるユニークなデータセットを形成することをさらに含み、ユニークなデータセットの形成は、異なるデータセット間で再利用され呼吸イベントを含むポジティブ時系列と、呼吸イベントを含まないネガティブ時系列であって、少なくとも複数のネガティブ時系列は、異なるデータセット間で互いに素であるものと組合せるために、取得されたトレーニング時系列のバランスのとれたブートストラップをすることを含む。
【0066】
取得されたトレーニング時系列のバランスのとれたブートストラップを使用することにより、トレーニング時系列がユニークなデータセットに分割され、各データセットが、ポジティブとネガティブのトレーニング時系列の間で、充分にバランスがとれるようにすることができる。ポジティブ時系列は、各データセットがいくつかのポジティブ時系列を含むように、異なるデータセット間で再利用することができるが、ネガティブ時系列は、別個のデータセットに配置されることができる。このように、各データセットは、ポジティブとネガティブのトレーニング時系列の間で良いバランスをとることができ、モデルの作成において情報が破棄されない。
【0067】
したがって、機械学習モデルの集合内の複数の機械学習モデルのそれぞれは、バランスのとれたブートストラップにより定義されたユニークなデータセットで各モデルをトレーニングすることにより形成されるため、バランスのとれた方法で全てのトレーニングデータを考慮しながら機械学習モデルを形成できる。これは、機械学習モデルが充分にトレーニングされ、呼吸イベントの検出を堅実な方法で実行できるようになることを容易にする。
【0068】
第3の態様によれば、検査下の被検者の呼吸イベントを検出するためのシステムが提供され、前記システムは、被検者から生体インピーダンス測定信号を取得するための生体インピーダンス測定センサであって、前記生体インピーダンス測定信号が被検者の呼吸動作に依存するものと、生体インピーダンス測定信号を受信し、生体インピーダンス測定信号の少なくとも1つの時系列を抽出し、抽出された時系列のそれぞれについて、生体インピーダンス測定信号を、呼吸イベントの発生の予測のセットを形成するために、機械学習モデルの集合内の複数の機械学習モデルのそれぞれと比較し、セット内の各予測は、生体インピーダンス測定信号を1つの機械学習モデルと比較することに基づいており、各モデルは、生体インピーダンス測定信号の時系列の特徴を、生体インピーダンス測定信号の時系列における呼吸イベントの存在と相互に関連付けられ、各モデルは、トレーニング時系列のユニークなデータセットでトレーニングされ、予測のセットに基づいて、抽出された時系列で呼吸イベントが発生したかどうかを決定する、ように構成された処理ユニットとを備える。
【0069】
この第3の態様の効果及び特徴は、第1及び第2の態様に関連して上記で説明したものと概ね類似する。第1及び第2の態様に関連して言及された実施形態は、第3の態様と概ね互換性がある。
【0070】
したがって、システムは、信頼性が高く堅実な方法で被検者の呼吸イベントを検出するために、被検者から測定信号を取得するための、生体インピーダンス測定センサを含む比較的単純な機器を備えてもよい。
【0071】
システムは、取得された生体インピーダンス測定信号において呼吸イベントが発生しているかどうかをシステムが決定できるように、取得された生体インピーダンス測定信号を処理するための処理ユニットをさらに備えてもよい。
【0072】
生体インピーダンス測定センサは、生体インピーダンス測定信号の取得を容易にするために、被検者に関連して配置されるように構成されてもよい。これに関して、生体インピーダンス測定センサは、被検者の皮膚と接触して生体インピーダンス測定センサを配置するために、被検者の身体部分に取り付けられるユニット内に配置されてもよい。例えば、生体インピーダンス測定センサは、被検者の皮膚に取り付けるためのパッチ、又は、被検者の胸部等の身体部分の周りにストラップで固定するためのベルトに配置してもよい。
【0073】
一実施形態によれば、システムは、生体インピーダンス測定センサ及び処理ユニットがハウジング内に配置されるハウジングをさらに備える。
【0074】
これは、システムが、システムの小さい形状要素を与える単一の物理ユニットに組み込まれてもよいことを意味する。また、単一のハウジング内のシステムの全ての部分は、システムを使用する前にユーザによるシステムのセットアップが必要ないように、相互に関連してセットアップしてもよい。
【0075】
別の実施形態によれば、システムは、ハウジングをさらに備え、生体インピーダンス測定センサは、ハウジング内に配置され、システムは、ハウジング内に配置された通信ユニットをさらに備え、通信ユニットは、生体インピーダンス測定信号を処理ユニット送信するように構成される。
【0076】
したがって、システムは、複数の物理ユニットを備えてもよい。処理ユニットは、被検者により、取り付けられ、又は、着用することができるこれらのユニットのうちの1つに配置してもよい。処理ユニットは、ベッドフレームに取り付けるなど、測定セッティングに密接に関連して取り付けるように配置することができ、又は、ベッドスタンドの上など、近くに位置するように単に配置することができる中央ユニットに配置してもよい。
【0077】
生体インピーダンス測定信号の処理ユニットへの通信は、有線又は無線の通信を介して実行することができる。
【0078】
通信ユニットは、例えば遠隔通信又はコンピュータネットワークを介して、リモート位置に配置することができる処理ユニットに、生体インピーダンス測定信号を通信するように構成されてもよいことも認識されたい。したがって、処理ユニットは「クラウド内」に配置することさえできる。
【0079】
別の実施形態によれば、システムは、生体インピーダンス測定結果を記憶するためのストレージユニットをさらに備えてもよい。したがって、システムは、被検者から生体インピーダンス測定信号を取得するように構成されてもよいし、生体インピーダンス測定結果をストレージユニットに記憶してもよい。それから、生体インピーダンス測定結果は、生体インピーダンス測定結果を処理するために、その後に処理ユニットに転送されてもよい。
【0080】
ストレージユニットは、生体インピーダンス測定センサと共に、共通のハウジングに配置してもよい。したがって、生体インピーダンス測定結果は、生体インピーダンス測定センサが配置されるハウジングに記憶されてもよい。ハウジングは、生体インピーダンス測定結果を通信するための任意の通信ユニットを必ずしも備える必要はなく、これは、ハウジングが非常にコンパクトできることを意味することがあり、かつ、被検者により着用されるユニットのコストを抑えることができることを意味することもある。
【0081】
ある期間で、例えば被検者の夜の睡眠中に、生体インピーダンス測定結果が取得された場合、例えば、ストレージユニットを外部処理ユニットに物理的に接続することにより、ストレージユニットにある生体インピーダンス測定結果が処理ユニットに転送されてもよい。
【0082】
したがって、生体インピーダンス測定結果の処理は、必ずしもリアルタイムで実行される必要はないことも認識されたい。むしろ、生体インピーダンス測定結果を記憶することができ、ある期間に渡り取得された生体インピーダンス測定信号の後処理を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
上記のこと、並びに、本発明の概念の、追加の目的、特徴、及び、利点は、添付の図面を参照して、以下の例示的かつ限定されない詳細な説明を通じてよりよく理解される。図面では、特に明記しない限り、同様の参照番号は同様の要素に使用される。
【0084】
【
図1】
図1は、一実施形態による呼吸モニタリングのためのシステムの概略図である。
【
図2】
図2は、呼吸イベントを検出するための複数の機械学習モデルを生成するためのトレーニングフェーズ方法の概略フローチャートである。
【
図3】
図3は、呼吸イベントを検出するための展開フェーズ方法の概略フローチャートである。
【
図4a】
図4aは、バランスのとれたデータセットを生成するためのバランスのとれたブートストラップ方法の概略図である。
【
図4b】
図4bは、バランスのとれたデータセットを生成するためのバランスのとれたブートストラップ方法の概略図である。
【
図4c】
図4cは、バランスのとれたデータセットを生成するためのバランスのとれたブートストラップ方法の概略図である。
【
図5】
図5は、長・短期記憶(LSTM)セルのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0085】
図1は、被検者の呼吸モニタリングのためのシステム100を図示している。システム100は、被検者に適用される電流信号S1を生成するように構成されてもよく、被検者の生体インピーダンスの情報を供給する生体インピーダンス測定信号S2を取得するための生体インピーダンス測定センサ110を備えてもよく、これは、被検者の呼吸を分析するためにさらに処理してもよい。生体インピーダンス測定信号S2は、信号を分析するために、生体インピーダンス測定信号S2を処理することができる処理ユニット120に供給してもよい。
【0086】
図1に示すように、システム100は、電流信号注入モジュール112を備えてもよい。電流信号注入モジュール112は、被検者に適用される電流信号S1を生成し、出力するように構成されてもよい。電流信号注入モジュール112は、電流信号S1を生成するための電流源を備えてもよい。電流信号注入モジュール112は、AC電流信号を出力するように構成されてもよい。
【0087】
システム100は、生体インピーダンス測定センサ110をさらに備えてもよい。生体インピーダンス測定センサ110は、被検者に印加された電流信号S1により発生した電圧を表す電圧入力信号を受信するように構成されてもよい。生体インピーダンス測定センサ110は、受信された電圧入力信号から生体インピーダンス測定信号S2を抽出するように構成されてもよい。
【0088】
生体インピーダンス測定センサ110は、被検者の皮膚と接触するように配置することができる2以上の電極114を備えてもよい。電極114は、電流信号S1を受信し、被検者の細胞組織を通して電流信号を供給するための電流信号注入モジュール112に接続されてもよい。また、電極114は、生体インピーダンス測定信号S2を取得するために使用することができる電圧入力信号を供給するために、生体インピーダンス測定センサ110に接続されてもよい。
【0089】
電極114は、バイポーラ配置で配置されてもよく、同じ電極114が、電流信号S1を被検者に供給するために、かつ、電圧入力信号を取得するために使用される。但し、電極114は、代わりに、4電極配置に配置されてもよく、2つの電極が、電流信号S1を被検者に供給するために使用され、他の2つの電極が、電圧入力信号を取得するために使用される。
【0090】
2つ(又は4つ)より多い電極114が提供されてもよく、これにより、最高品質の生体インピーダンス測定信号S2を供給する電極114を選択できるように、測定に使用する電極114の選択ができてもよい。使用される電極114の選択は、システム100のセットアップで実行されてもよいし、例えば、生体インピーダンス信号を取得するための条件が変化した場合など、信号取得中に動的に変更されてもよい。
【0091】
電極114を備えた生体インピーダンス測定センサ110は、被検者の胸部領域に取り付けられるように構成されてもよい。生体インピーダンス測定センサ110は、被検者の胸部領域に配置されるように構成されたキャリア116上に配置されてもよく、電極114が被検者の皮膚と接触して配置できるように、電極114は、キャリア116上に露出されるように実装されてもよい。
【0092】
キャリア116は、例えば、接着パッチ、被検者により着用される布地/衣服、又は、被検者の胴の周りに取り付けられるように構成することができるベルトを備えてもよい。
【0093】
被検者の胸部の上に配置された電極114に基づいて生体インピーダンス測定を行う場合、呼吸努力に関連して生体インピーダンスが変化するように、胸部の拡張により電極114間の電流経路が変化する可能性がある。また、空気は細胞組織とはインピーダンスが異なる。肺に存在する空気の量は、呼吸サイクル中に変化するため、生体インピーダンスも呼吸気流に関連して変化する。したがって、生体インピーダンス測定センサ110は、被検者の呼吸活動の情報を保持する生体インピーダンス信号S2を取得するために構成されてもよい。
【0094】
処理ユニット120は、生体インピーダンス測定センサ110から生体インピーダンス測定信号S2を受信するように構成されてもよい。処理ユニット120は、呼吸イベントの発生を検出するために生体インピーダンス測定信号S2を処理するように構成されてもよい。
【0095】
処理ユニット120は、ハードウェアで、又は、ソフトウェアとハードウェアの任意の組合せとして実装してもよい。処理ユニット120は、例えば、汎用コンピュータで実行されるソフトウェアとして実装してもよい。したがって、システム100は、処理ユニット120の機能を実装するために1以上のコンピュータプログラムの命令を実行することができる中央処理装置(CPU)などの1以上の物理プロセッサを備えてもよい。したがって、システム120は、例えば処理ユニット120内の別々のスレッドとして、複数の機能を提供できる単一の処理ユニットを備えてもよい。
【0096】
代わりに、処理ユニット120は、例えば組み込みシステムに配置されたファームウェアとして、又は、特定用途向け集積回路(ASIC)、若しくは、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などの特別に設計された処理ユニットとして、実装されてもよい。
【0097】
システム100は、少なくとも1つの追加の測定センサ130をさらに備えてもよい。追加の測定センサ130は、例えば、被検者の体温、被検者の心拍数若しくは脈拍、被検者の呼吸数、又は、被検者の血圧を測定するように構成されてもよい。追加の測定センサ130は、例えば、被検者の皮膚に取り付けられる温度センサ、ECGを検出するための電極を備える心電図(ECG)センサ、PPGを検出するための光源及び光センサを備えるフォトプレチスモグラフ(PPG)センサ、又は、心臓又は肺の活動を表すことができる身体部分(胸部など)の動きを検出するように構成することができる加速度計でもよい。
【0098】
追加の測定信号S3は、追加の測定センサ130により取得することができる。追加の測定信号S3は、呼吸イベントの発生を検出するための生体インピーダンス測定信号S2と組合せて、処理ユニット120により使用されてもよい。
【0099】
システム100は、生体インピーダンス測定センサ110、処理ユニット120、及び、少なくとも1つの追加の測定センサ130が中に配置できる1以上のハウジングを備えてもよい。ハウジングは、センサ110,130と処理ユニット120との間の通信を可能にするためにワイヤにより接続されてもよい。代わりに、1以上のセンサ110,130及び処理ユニット120は、無線通信のためにセットアップされてもよい。したがって、システム100は、例えば、システム100の全てのパーツが互いに通信するように既にセットアップされた単一のパッケージで、使用する準備がされて納品されてもよい。
【0100】
処理ユニット120は、キャリア116上のハウジング内に配置されてもよい。少なくとも1つの追加の測定センサ130も、同じキャリア116上に配置されてもよい。
【0101】
但し、代替の実施形態では、処理ユニット120は、キャリア116から分離することができる中央ハウジングに配置されてもよい。中央ハウジングは、測定セッティング内に、例えばベッドスタンドに、実装され、又は、配置されるように構成されてもよい。中央ハウジングは、システム100により取得された測定結果及び分析結果がユーザに表示することができるように、ディスプレイを備えてもよい。
【0102】
システム100は、キャリア116内又は中央ハウジング内に配置された通信ユニット140をさらに備えてもよい。通信ユニット140は、遠隔通信又はコンピュータネットワークを介した通信用に構成されてもよい。これは、システム100により取得された信号S2,S3が、リモート位置に配置できる処理ユニット120に通信できることを意味する。したがって、処理ユニット120は、「クラウド内」に配置することさえできる。
【0103】
システム100は、生体インピーダンス測定結果及び追加の測定結果を記憶することができるストレージユニットをさらに備えてもよい。したがって、取得された生体インピーダンス測定結果及び追加の測定結果は、ある期間に渡り取得することができ、その期間中に取得された測定結果は、システム100内、例えば、キャリア116上のハウジング内に配置できるストレージユニット内、に記憶することができる。
【0104】
生体インピーダンス測定結果及び追加の測定結果は、測定結果が取得された後いつでも、測定結果の後処理のために、ストレージユニットから処理ユニットに転送することができる。これは、ストレージユニットを、処理ユニット、又は、測定結果を処理ユニットに転送できる中間ユニットに物理的に接続することにより、測定結果がストレージユニットから転送することができるので、システム100が必ずしも通信ユニットを備えてはいないことを意味する。
【0105】
生体インピーダンス測定結果及び追加の測定結果は、別々に取得してもよいし、別々のストレージユニットに記憶されてもよい。次に、生体インピーダンス測定結果及び追加の測定結果は、測定結果の後処理中の時間内で同期されてもよい。
【0106】
システム100は、被検者の家庭環境でシステム100の使用を可能にできる、比較的単純で安価な機器を備える。これは、システム100が、限られた可用性で、患者の自宅で使用することができ、患者が検査室で時間を費やす必要がないため、睡眠障害を分析するときに複数の夜に渡りデータを取得するなど、システム100が長期間に渡りデータを取得するために使用できることを意味する。したがって、被検者について大量のデータを収集することができ、これにより、被検者の状態のより良い分析を容易することができる。
【0107】
処理ユニット120は、生体インピーダンス測定信号S2の少なくとも1つの時系列を抽出するように構成されてもよい。生体インピーダンス測定信号S2は、一連の時系列に分割することができ、そこでは、連続する時系列は、もしかすると重複している可能性がある。時系列内で呼吸イベントが発生しているかどうかを決定するために、時系列を分析することができる。複数の時系列を分析することにより、呼吸イベントの頻度を決定し、その頻度に基づいて被検者の状態を分析することが可能になることがある。
【0108】
時系列の継続時間は、例えば、10−180秒の範囲内になるように選択することができる。一実施形態によれば、継続時間は、20−60秒の範囲内になるように選択することができる。さらに別の実施形態によれば、継続時間は30秒になるように選択することができる。時系列の継続時間は、呼吸イベントの継続時間をカバーするのに十分長く設定することができるが、呼吸イベントの相対的効果が時系列内に隠される可能性があるほど長すぎないようにする。
【0109】
処理ユニット120は、1以上の追加の測定信号S3の少なくとも1つの時系列を抽出するようにさらに構成されてもよい。
【0110】
生体インピーダンス測定信号S2の抽出された時系列及び/又は1以上の追加の測定信号S3の抽出された時系列は、抽出された時系列における呼吸イベントの発生の予測のセットを形成するために、機械学習モデルの集合内の複数の機械学習モデルと比較されることができる。したがって、処理ユニット120は、抽出された時系列を記憶された複数の機械学習モデルと比較するために、処理ユニット120に関連付けられたメモリに記憶することができるなどの機械学習モデルの集合にアクセスすることができる。
【0111】
複数の機械学習モデルは、生体インピーダンス測定信号S2の時系列の特徴及び/又は1以上の追加の測定信号S3の時系列の特徴を、呼吸イベントの存在と相互に関連付けられるように構成することができる。各モデルが呼吸イベントを識別することの個別にトレーニングされた方法を提供するように、各モデルは、トレーニング時系列のユニークなデータセットでトレーニングされることが可能である。
【0112】
抽出された時系列の処理は、予測のセットに基づいて、抽出された時系列で呼吸イベントが発生しているかどうかを決定することをさらに含む。複数の機械学習モデルを使用することで、被検者において比較的単純な測定結果を使用しながら、呼吸イベントの検出は堅実である。
【0113】
ここで、
図2を参照して、複数の機械学習モデルを生成するためのトレーニングフェーズ方法について説明する。
【0114】
トレーニングフェーズの方法は、被検者からデータを収集202することを含めてもよい。データの収集は、生体インピーダンス測定信号S2、及び、場合により、1以上の追加の測定信号S3の取得を含めてもよい。生体インピーダンス測定信号S2及び1以上の追加の測定信号S3の取得と同時に、呼吸イベントの信頼できる指標を提供できる参照信号が取得される。例えば、PSG信号が取得でき、これは、複雑で高価なハードウェアが必要になることがあるが、呼吸イベントの信頼できる検出を提供できる。
【0115】
参照信号は、呼吸イベントを示すために参照信号に注釈を付ける(annotating)204ために分析することができる。参照信号の分析は、参照信号の自動分析のための信頼できる技術を使用して実行することができる。代わりに、参照信号の分析は、米国睡眠医学会(AASM)ガイドラインなどの公式ガイドラインを使用したPSGデータの手動のアノテーションなど、手動のアノテーションにより実行することができる。
【0116】
参照信号のアノテーションは、呼吸イベントが発生した時点の指標を提供することができる。各呼吸イベントは、閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)、中枢性無呼吸(CA)、閉塞性低呼吸、及び、中枢性低呼吸、並びに、これらの組合せなどの無呼吸及び低呼吸などの呼吸イベントのタイプに基づいてさらに分類してもよい。
【0117】
取得された信号、即ち、生体インピーダンス測定信号S2、1以上の追加の測定信号S3、及び、参照信号は、参照信号のアノテーションが生体インピーダンス測定信号S2及び1以上の追加の測定信号S3内の情報に正しく適用されることができることを確実にするために時間同期206がされてもよい。時間同期は、参照信号のアノテーションの前又は後に実行することができる。
【0118】
取得された信号のうちの1以上、即ち、生体インピーダンス測定信号S2、1以上の追加の測定信号S3、及び、参照信号は、さらに前処理208されてもよい。信号の前処理は、心臓活動などの他のソースに関連する情報が含まれることがある信号内のノイズ除去及び関連する呼吸情報の抽出に使用してもよい。
【0119】
次に、生体インピーダンス測定信号S2及び1以上の追加の測定信号S3は、一連の時系列(又はエポック)に分割210してもよい。エポックは、重複している可能性がある。
【0120】
各エポックは、参照信号のアノテーションに基づいて、ラベル付けしてもよく、それは、各エポックについて、呼吸イベントが発生しているかどうかの指標があるようになり、例えば、「0」は呼吸イベントが発生していないことを示し、「1」は呼吸イベントが発生していることを示す。ラベリングは、通常、発生する任意の呼吸イベントに対して実行されてもよいし、又は、複数のタイプの呼吸イベントに対して複数のラベル(0/1)が設定できるように、各タイプの呼吸イベントに対して実行されてもよい。
【0121】
エポックは、機械学習モデルをトレーニングするためのトレーニング時系列として使用される。しかしながら、収集されたデータセットには、ポジティブエポック(呼吸イベントが発生)よりもはるかに多くのネガティブエポック(呼吸イベントが発生していない)が含まれるというアンバランスがある。
【0122】
エポックは、バランスのとれたブートストラップを通じてアンバランスに対処するために、複数のトレーニングデータセットに配置212される。ポジティブエポックは異なるデータセット間で再利用されるが、少なくとも複数のネガティブエポックは異なるデータセット間で互いに素である。このようにして、全てのエポックを使用でき、一方、各データセットについて、ポジティブエポックとネガティブエポックの良いバランスがとれる。
【0123】
次に、複数のトレーニングデータセットは、複数の機械学習モデルを計算214するために使用される。各モデルは、複数のデータセットのうちの1つを使用してトレーニングできる。
【0124】
一実施形態によれば、長・短期記憶(LSTM)セルは、呼吸イベントの検出をモデル化するために使用することができる。これは、時間情報を抽出して使用するための強力なツールを提供する。但し、ゲート付き回帰ユニット(GRU)、又は、リカレントニューラルネットワーク(RNN)に基づく別のスキームなど、他のモデリングスキームを使用することもできる。
【0125】
各モデルは、呼吸イベントの発生の予測を生成するようにトレーニングすることができる。複数の機械学習モデルは、個々のモデルの予測を、単一のスコア(例えば、確率の平均)を出力できる集合モデルに平均化するために、さらに使用されてもよい。
【0126】
最後に、トレーニングフェーズ方法は、機械学習モデルの合計スコアが決定閾値を上回っているか又は下回っているかに基づいて、呼吸イベントが発生しているどうかの決定を可能にするための予測のセットに基づいて、決定閾値を特定216することを含めてもよい。
【0127】
ここで、
図3を参照して、呼吸イベントの検出において複数の機械学習モデルを使用するための展開フェーズ方法を説明する。
【0128】
展開フェーズでは、呼吸イベントの検出は、生体インピーダンス測定信号S2のみ、場合により1以上の追加の測定信号S3と組合せに基づいて、行われる。システム100は、生体インピーダンス測定信号S2に基づいて、場合により1以上の追加の測定信号S3と組合せて、呼吸イベントを検出するために、トレーニングされているので、参照信号はもはや必要ない。
【0129】
したがって、この方法は、生体インピーダンス測定信号S2の取得により、場合により1以上の追加の測定信号S3と組合せて、検査下の被検者からのデータを収集302することを含む。
【0130】
この方法は、生体インピーダンス測定信号S2及び1以上の追加の測定信号S3の前処理304をさらに含めてもよい。トレーニングフェーズ方法と同様に、信号の前処理は、ノイズ除去及び信号内の関連する呼吸情報の抽出に使用できる。
【0131】
次に、生体インピーダンス測定信号S2及び1以上の追加の測定信号S3は、一連の時系列(又は、エポック)に分割306することができる。エポックは、重複している可能性がある。
【0132】
次に、エポック内で呼吸イベントが発生しているかどうかを判断するために、各エポックを分析することができる。分析は、上記の説明に従って生成されるように、集約された機械学習モデルを使用してエポックを評価308することを含みてもよい。したがって、エポックは、エポック内の呼吸イベントの発生の予測のセットを決定するために、複数の機械学習モデルの各モデルと比較してもよい。予測のセットは、呼吸イベントが発生する確率のための単一の結合されたスコアに集約されてもよい。
【0133】
次に、エポック内で呼吸イベントが発生したかどうかの決定310を行うことができる。決定は、機械学習モデルにより取得された合計スコアが設定された閾値を超えるかどうかの決定に基づいてもよい。
【0134】
ここで、説明のために、機械学習モデルのトレーニングと使用の具体例について説明する。
【0135】
トレーニングされたシステム100は、生体インピーダンス(BioZ)、エレクトロカーディオグラフ(ECG)及び加速度の3つのタイプの信号を記録するように構成される。生体インピーダンスは1024Hzで測定され、ECGは512Hzで測定され、3つの別々の要素で構成される加速度は32Hzで測定される。
【0136】
トレーニングフェーズでは、これらの信号は、200Hzで記録されたPSGデバイスからの信号と結合される。しかしながら、信号のサンプリング周波数が正確でないため、しばらくすると大幅な周波数シフトが見られる。さらに、システム100及びPSGデバイスが患者に取り付けられている場合、それらは同時に作動されない可能性がある。したがって、両方のデバイスの正確なタイムアライメントが必要になることがある。
【0137】
システム100とPSGデバイスの信号を時間内で整列させるために、ECG信号は、両方のデバイスで利用可能であるように使用される。但し、タイムアラインメントは、他の情報に基づいている可能性があることを認識されたい。
【0138】
トレーニングフェーズでは、睡眠時無呼吸の疑いのある患者など、呼吸イベントに苦しむ被検者からのデータが、PSGデバイスとシステム100を同時に使用して収集される。次に、機械学習アルゴリズムは、両方のタイプのデータを使用してトレーニングされる。
【0139】
展開フェーズでは、新しい、見えない被検者のデータにおける睡眠時無呼吸の発生を予測するために、これらの機械学習モデルが使用され、データは、システム100のみを使用して記録される。
【0140】
生体インピーダンス測定信号S2の前処理は、生の生体インピーダンス入力信号を、関連情報を含むエポックに変換することができる。したがって、複素数値の生体インピーダンス測定信号は、呼吸信号に変換することができる。
【0141】
前処理は、生の生体インピーダンス測定信号が5Hzのサンプリング周波数にサブサンプリングされ、その後、複素数値の生体インピーダンス信号の大きさが抽出されることを含めることができる。但し、特徴は、生体インピーダンス信号から別の方法で抽出されてもよい。例えば、複素数値の生体インピーダンス信号の実数部だけを抽出してもよい。
【0142】
呼吸情報を抽出するために、生体インピーダンス測定信号、この場合は生体インピーダンスの大きさ(又は、生体インピーダンスの実数値)は、信号の前処理で、ローパスバターワースフィルタなどのフィルタを通過してもよい。バターワースフィルタは、被検者の呼吸に関連する生体インピーダンス測定信号S2内の情報が、心臓活動情報などの生体インピーダンス測定信号S2内の他の情報から堅実な方法で抽出されることを確実にすることができる。
【0143】
バターワースフィルタは、カットオフ周波数が0.7Hzの4次バターワースフィルタでよいが、他の設定を使用してもよいことを認識されたい。
【0144】
前処理は、フィルタリングされた信号に移動平均フィルタを適用することによりフィルタリングされた信号からモーションアーチファクトを除去し、移動平均フィルタを適用して得られた信号をオリジナルのフィルタリングされた信号から差し引くことをさらに含めてもよい。移動平均フィルタは、例えば4秒の幅を有してもよい。
【0145】
信号の前処理後、オリジナルの信号における呼吸関連の生体インピーダンス変化の推定値が残る。
【0146】
全長の呼吸信号は、互いに1秒のストライドで30秒のエポックに変換でき、つまり、2つの連続するエポックの間に大きな重複がある(信号の1秒だけが異なる)。
【0147】
各エポックの値は、〔−1;1〕の範囲で個別に標準化できる。これにより、機械学習モデルのモデリング能力を向上できる。
【0148】
トレーニングフェーズ中に、システム100と共にPSGデバイスから同時の測定結果が収集される。PSGデバイスからのデータは、トレーニングされた看護師により無呼吸低呼吸アノテーションを作成するために使用できる。システム100内で抽出された呼吸情報の各エポックについて、看護師のPSGアノテーションに基づいてアノテーションが追加される。エポックの終わりに、看護師が無呼吸又は低呼吸イベントに注釈を付けた場合、そのエポックは無呼吸エポックとラベル付けされる。上記のように、様々な呼吸イベントを区別することができる。但し、他の実施形態では、OSA、CA又は低呼吸は区別されない。
【0149】
前処理により生成されたエポックは、通常、無呼吸ネガティブエポックの大多数(95%)と無呼吸ポジティブエポックの少数(5%)で構成され、アンバランスなデータセットに至る。モデリングフェーズでの機械学習モデルは、クラスのアンバランスに敏感にできるため、データバランシングは、データセットを適切にモデル化できるようにする上で有利である。
【0150】
トレーニングフェーズでは、バランスのとれたブートストラップ法が使用される。
図4a−cに図示されるように、バランスのとれたブートストラップ法では、
図4aに図示される大きいアンバランスなデータセット400は、いくつかの小さいバランスのとれたデータセット404a−gに分割される。
【0151】
まず、
図4bに図示するように、アンバランスなデータセット400の多数派クラス(
図4a−cの白い領域で示される)は、少数派クラス(
図4a−cのハッチングされた領域で示される)に等しいサイズのサブセット402a−gに分割される。次に、少数派クラスのエポックが多数派クラスの異なるセットに追加され、
図4cに図示するように、複数のバランスのとれたデータセット404a−gが導かれる。各データセットは、少数派クラスからの全てのエポックと、多数派クラスからの互いに素なエポックのセットを含むことができる。これらのデータセット404a−gのそれぞれは、直ぐに、個別のモデルを構築するために使用できる。
【0152】
少数派クラスからの全てのエポックが、バランスのとれたデータセットのそれぞれで使用されるとは限らないことを理解されたい。無呼吸ポジティブエポックは、いくつかのデータセット404a−gで再利用される可能性があるが、必ずしも全てのデータセット404a−gで再利用されるとは限らない。また、必ずしも全ての多数派エポックが単一のデータセットで使用されるとは限らない。むしろ、多数派クラスからのエポックのセットが完全に互いに素にならないように、1以上の多数派エポックをデータセット404a−gで再利用してもよい。
【0153】
バランスのとれたブートストラップ手順で生成されたデータセット404a−gのそれぞれは、個別にモデル化される。モデル化されるデータは多くの時間情報を含むため、これらに使用できるLSTMセルを備えるニューラルネットワークは、時間情報を抽出して使用するための強力なツールである。
【0154】
LSTMセルの実施形態のフローチャートが
図5に示され、対応する式は以下により与えられる。
【0156】
ここで、xは入力シーケンスを表し、hは隠れシーケンスを表し、tはシーケンス内の時点を表し、cはセルベクトルを表し、i、f、oは、それぞれ、入力ゲート、忘却ゲート、出力ゲートを表し、σ演算子はロジスティックシグモイド関数であり、b項はバイアス項であり、行列Wは2つのエンティティ間の重み行列である。
【0157】
LSTMセルは、時間を介して関連する特徴データを自動的に抽出してもよい。
【0158】
この例では、使用されるネットワークアーキテクチャは、50のベースLSTMセルを備え、ドロップアウト確率0.2のドロップアウトレイヤがそれに続く。ドロップアウトレイヤを追加すると、見えないデータに対するモデルのより強力な一般化を可能にする。ドロップアウトレイヤの後に、10の通常の密なノードが追加され、ドロップアウト確率0.2の別のドロップアウトレイヤがそれに続く。最後に、単一の密なニューラルネットワークノードが、エポックを分類するためのシグモイド活性化関数で追加される。
【0159】
ネットワークは、adadeltaオプティマイザーを使用して最適化されたバイナリクロスエントロピー損失関数を使用して、16のポジティブエポックと16のネガティブエポックで構成される32のエポックのミニバッチでトレーニングされてもよい。勾配クリッピングは、100の値に適用される。
【0160】
バランスのとれたブートストラップ手順により、トレーニング対象のモデル用にいくつかの異なるデータセットが作成される。モデリング段階では、これらのモデルのそれぞれが個別にトレーニングされる。新しいエポックをテストするために、これらのモデルのいずれかでテストしてもよい。但し、モデルのランダムな違いとトレーニングデータセットの違いにより、これらのモデルは、予測がわずかに異なる。これらの予測は確率を表すため、出力の平均確率を得るために、これらの予測の平均をとることができる。全てのモデルから集約された出力は、そのエポックの無呼吸の真の確率のより堅実な推定を供給する。
【0161】
この集約された推定は、呼吸イベントを検出するための用途の特定のニーズに対してさらに微調整できる。
【0162】
例えば、エポックは、無呼吸の確率が0.5より大きいかどうかを決定することにより、無呼吸イベントを含むものとして決定されてもよい。但し、偽ネガティブを示すことは偽ポジティブを示すことよりも悪い可能性があるため、この決定閾値を調整することも有益な場合がある。したがって、範囲[0;1]で決定閾値を変更することにより、決定閾値を調整してもよい。そのような調整に基づいて、結果として生じる感度スコア及び特異性スコアが演算処理されてもよい。それから、最も有益な決定閾値(最大の感度及び特異性)を最終決定閾値tとして選択できる。
【0163】
患者の無呼吸/低呼吸の重症度を測定するために、無呼吸低呼吸指数(AHI)は、公式のAASMガイドラインに従って、呼吸イベントの数を総睡眠時間で割ったものとして演算処理される。各エポックは、1秒で次々に終了するので、この方法は、信号の各秒の睡眠時無呼吸の確率の予測を供給することができる。確率がtより大きい場合、信号の特定の秒に呼吸イベントのフラグが立てられる。それから、これらの生成されたアノテーションは、AHIを演算処理するために使用される。このAHIスコアを使用して、患者は、正常な呼吸、軽度の睡眠時無呼吸、中等度の睡眠時無呼吸、又は、重度の睡眠時無呼吸に分類することができる。
【0164】
上記において、本発明の概念は、限られた数の例を参照して主に説明してきた。但し、当業者により容易に理解されるように、上記で開示されたもの以外の例は、添付の特許請求の範囲により定義されるように、本発明の概念の範囲内で等しく可能である。
【国際調査報告】