(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-518271(P2021-518271A)
(43)【公表日】2021年8月2日
(54)【発明の名称】溶融物を充填するための鋳型を製造する方法および鋳型
(51)【国際特許分類】
B22C 9/02 20060101AFI20210705BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20210705BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20210705BHJP
【FI】
B22C9/02 101Z
B33Y10/00
B33Y80/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2021-500344(P2021-500344)
(86)(22)【出願日】2019年3月20日
(85)【翻訳文提出日】2020年11月6日
(86)【国際出願番号】EP2019056987
(87)【国際公開番号】WO2019180095
(87)【国際公開日】20190926
(31)【優先権主張番号】102018106725.9
(32)【優先日】2018年3月21日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102018115087.3
(32)【優先日】2018年6月22日
(33)【優先権主張国】DE
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520364646
【氏名又は名称】シューベルト アンド サルツァー ファインタス ローベンシュタイン ゲーエムベーハー
(71)【出願人】
【識別番号】519070161
【氏名又は名称】リソッツ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホーマ ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】スピッツバート マンフレッド
(72)【発明者】
【氏名】レイチャートシダー ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー ピーター
(72)【発明者】
【氏名】カワラス バートラム
(72)【発明者】
【氏名】ラーブ アーミン
(72)【発明者】
【氏名】ライヒェンバッハ ホルガー
(57)【要約】
【課題】溶融物を充填するためのシェル(17)、および/または、鋳造部品に空洞を形成するためのコア(16)を含む鋳型(6)を製造する方法が提供される。
【解決手段】鋳型(6)は、耐火性およびガス透過性材料製の壁(8)を含み、ジェネレーティブ製造法によって製造され、鋳型(6)の壁(8)は、鋳型(6)用に特別に設計された支持構造(9)を含んで形成され、開いた空洞(15)および/または、閉じた空洞(12)によって形成され、および/または、異なる壁厚(W)を有することによって、鋳造圧力とはほぼ無関係に、寸法的に安定した状態で鋳型(6)を支持し、狙い通りに、溶融物の熱エネルギーを遮断するか、または、溶融物から熱エネルギーを放散させる。
【代表図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融物を充填するためのシェル(17)、および/または、鋳造部品に空洞を形成するためのコア(16)を含む鋳型(6)を製造する方法であって、
前記鋳型(6)は、耐火性およびガス透過性材料製の壁(8)を含み、前記鋳型(6)は、ジェネレーティブ製造法によって構築され、
前記鋳型(6)の前記壁(8)は、前記鋳型(6)用に特別に設計された支持構造(9)を含んで形成され、開いた空洞(15)および/または、閉じた空洞(12)によって形成され、および/または、異なる壁厚(W)を有し、
前記鋳型(6)の前記壁(8)は、鋳造圧力とは無関係に、寸法的に安定した状態で前記鋳型(6)を支持し、前記溶融物の熱エネルギーを遮断するか、または、前記溶融物から熱エネルギーを放散させる、
方法。
【請求項2】
前記ジェネレーティブ製造法としては、前記鋳型(6)を層ごとに構築する3Dプリンティング法が用いられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ジェネレーティブ製造法は、スラリーをベースとした、ダイレクトインクジェット方式(DIW)のようなDLP(digital light processing)技術を用いるか、または、積層スラリー造形法(LSD)またはLISによる鋳込み成形技術を用いる光造形法として実行される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記支持構造(9)は、結果として生じる鋳造物に面していない前記鋳型(6)の外側に配置される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記支持構造(9)は、結果として生じる鋳造物に面する内側から、結果として生じる前記鋳造物に面しない前記鋳型(6)の外側に向けて、粗度が高くなるように、開いたおよび/または閉じた空洞が大きくなるように、設計される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
複数の同じまたは異なる前記鋳型(6)は、湯口系(1)にブドウ状に接続されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記鋳型(6)の前記壁(8)の内側は、低粗度(Rz<100μm)の表面構造を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記鋳型(6)は、精密鋳造法用に製造される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記鋳型(6)は、単結晶鋳造に用いられる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記支持構造(9)の形状は、鋳造作業中に予想される機械的および/または熱的負荷に関して最適化されるよう設計される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
溶融物を充填するためのシェル(17)、および/または、鋳造部品に空洞を形成するためのコアを含む鋳型(6)であって、
耐火性およびガス透過性材料製の壁(8)を含み、前記鋳型は、ジェネレーティブ製造法によって構築され、
前記鋳型(6)の壁(8)は、前記鋳型(6)用に特別に設計された支持構造(9)を含み、開いた空洞(15)および/または、閉じた空洞(12)によって形成され、および/または、異なる壁厚(W)を有することによって、
鋳造圧力とは無関係に、寸法的に安定した状態で前記鋳型(6)を支持し、狙い通りに前記溶融物の熱エネルギーを遮断するか、または、前記溶融物から熱エネルギーを放散させる、鋳型(6)。
【請求項12】
前記鋳型(6)は、精密鋳型である、請求項11に記載の鋳型。
【請求項13】
前記鋳型(6)は、結果として生じる鋳造部品に面した内側と、結果として生じる鋳造部品に面していない外側とを含み、
前記鋳型(6)の前記内側には、鋳造される鋳造部品のネガ型が形成され、前記鋳型(6)の前記外側には、支持構造(9)が配置される、請求項11および12のいずれかに記載の鋳型。
【請求項14】
複数の同じまたは異なる前記鋳型(6)が、湯口系(1)にブドウ状に接続されている、請求項11〜13のいずれか1項に記載の鋳型。
【請求項15】
前記鋳型(6)は、3Dプリンティングによって層ごとに構築される、請求項11〜14のいずれか1項に記載の鋳型。
【請求項16】
前記支持構造(9)は、前記鋳型(6)の内側から外側に向けて粗度が高くなるよう設計され、前記鋳型(6)の前記内側から前記外側に向けて次第に大きくなる空洞(12、15)を有する、請求項11〜15のいずれか1項に記載の鋳型。
【請求項17】
前記空洞(12、15)は、丸い、および/または、角張っており、孔形状、ハニカム形状、または、立方形である、請求項11〜16のいずれか1項に記載の鋳型。
【請求項18】
前記支持構造(9)は、前記鋳型(6)の内側から外側に向かって薄くなる壁厚(W)を含むよう形成される、請求項11〜17のいずれか1項に記載の鋳型。
【請求項19】
前記鋳型(6)の内側は、低粗度(Rz<100μm)の表面構造を有する、請求項11〜18のいずれか1項に記載の鋳型。
【請求項20】
前記支持構造(9)、および/または、前記支持構造(9)の支持壁(13)の前記壁厚(W)は、0.1mm〜75mmである、請求項11〜19のいずれか1項に記載の鋳型。
【請求項21】
前記鋳型(6)は、単結晶鋳型である、請求項11〜20のいずれか1項に記載の鋳型。
【請求項22】
前記鋳型(6)は、スラリーをベースとしたジェネレーティブ製造法によって製造される、請求項11〜21のいずれか1項に記載の鋳型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鋳型、特に、溶融物を充填するためのシェル、および/または、鋳造部品に空洞を製造するためのコア、の製造方法およびこの製造方法に対応する鋳型に関する。この鋳型は耐火性およびガス透過性材料製の壁を含む。この鋳型はジェネレーティブ製造法で形成される。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、金属鋳造、または、精密部品の精密鋳造のための鋳型を開示している。鋳型の実態部分は、焼結前であるかまたは焼結された状態にあり、ジェネレーティブラピッドプロトタイピング法によって製造される多孔質セラミックスからなる。金型コアに対応する構造、または、周囲を金属が流れるようになる構造は、ジェネレーティブラピッドプロトタイピング法によって製造される。鋳型の外形もラピッドプロトタイピング法によって製造され得る。例えば、冷却用ダクトが設けられるか、ライザーが形成されるか、または、冷却用ダクトとして機能する外部リブが鋳型に、または、鋳型の外側に配置される。さらに、キャビティに面していない側に配置された支持リブが設けられてもよいことが記載されている。圧力に耐えるため、鋳型は、固定されていないセラミックスが充填されて裏打ちされている。この充填により、ジェネレーティブラピッドプロトタイピング法によって製造された比較的薄い鋳型に、鋳造に必要な機械的安定性が与えられる。あるいは、鋳造中の圧力に耐えることができるよう、鋳型が挿入されるシェルが設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】ドイツ特許第103 17 473号
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、この場合、固定されていないセラミックスを充填することによって鋳型を十分支持できるように、充填物を受けるために鋳型を容器に収容しなければならないことが不都合である。これは、手作業が伴うとともに材料を追加する必要があるので、時間もコストもかかってしまう方法である。シェルを含む実施形態にも同じことが当てはまる。さらに、充填物およびシェルは、鋳型をさらに断熱するので、鋳造したばかりの鋳造物からの放熱を行うことができない。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、ほぼ自動的に製造できる鋳型の製造方法、および、それによって製造された鋳型を提供することである。この方法により、さらなる手段を講じなくとも鋳型自体が鋳造時の圧力に耐えることができ、その結果、コスト効率よく素早く製造でき、鋳造中に生じる熱を、狙い通りに、すなわち、鋳造物の個別の領域の所望の冷却時間に応じて放散できるので、鋳造物の品質を向上させることができる。
【0006】
上記課題は、独立請求項に記載の方法および鋳型によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による鋳型、特に、溶融物が充填されるシェル、および/または、鋳造部品に空洞を製造するためのコアを製造する方法によれば、例えばセラミックなどの耐火性およびガス透過性材料製の壁が形成される。鋳型は、ジェネレーティブ製造法によって構築される。この種のジェネレーティブ製造法とは、例えば、層ごとに液体材料が塗布され、連続的に硬化される3Dプリンティング法である。本発明によれば、鋳型の壁は、鋳型用に特別に設計された支持構造を含んで形成され、開いたおよび/または閉じた空洞によって形成され、および/または、異なる壁厚を有し、この隔壁の壁は、鋳造圧力とはほぼ無関係に、寸法的に安定した状態で鋳型を支持し、狙い通りに、溶融物の熱エネルギーを遮断するか、または、溶融物の熱エネルギーを放散させる。また、この支持構造は、鋳型の壁と好ましくは一体的に結合しているので、高精密な鋳造部品を鋳造するのに適した安定した鋳型を形成することができる。また、本発明の製造方法により、鋳型をほぼ自動的に製造することが可能となる。材料が鋳型に鋳造される直前まで自動で行われる。鋳造圧力に耐え得るよう、鋳型自体がすでに十分安定しているので、空洞を砂や他の材料で充填するなどのさらなる支持手段は不要である。この支持構造により、鋳造中に生じる溶融物の熱を狙い通りに保持または放散できるので、最適に冷却された鋳造物が得られる。
【0008】
本発明によれば、鋳型、特に、金属工業用の精密鋳造のための鋳型が提供される。複数の鋳型が形成されるが、これらの鋳型が素早く自動的に形成されるとき、特に経済的である。型全体、または、その一部のみが支持構造を備えて製造されてよい。コアを有さない単純な型、または、一以上のコアを含む、より複雑な型(コアシェル型)を製造できる。
【0009】
通常はインベストメント鋳造法を用いる従来の精密鋳造法と比べ、本発明による方法は、実質的により経済的である。従来のインベストメント鋳造法では、1つの蝋型がまず形成され、さらなる蝋型に接続されて鋳造ユニットが形成される。この蝋でできた鋳造ユニットは、液体セラミックに浸され、研磨される。この工程は、十分な厚みを有し、安定したシェル型が形成されるまで複数回繰り返される。その後、シェル型から蝋を溶かし出し、シェル型を焼成する。
その後に限って、一部の鋳造を継続することができる。
【0010】
それに対し、本発明の方法では、シェル型を得るために、蝋でできた鋳造ユニットの組み立て、浸漬および研磨ばかりでなく、蝋型の形成も不要である。むしろ、本発明の方法では、シェル型は、ジェネレーティブ製造法によって直接形成される。このように、鋳型のみ、または、湯口系を伴う個々の鋳型、および、湯口系に接続されるさらなる鋳型が形成される。予想される鋳造圧力に耐え得る壁厚を実現すべく、要求に従い、ある程度安定してキャビティを支持して安定させることができる支持構造が設けられる。この支持構造の構造的特徴により、支持構造は、より高い鋳造圧力が予想される領域ではより安定し、鋳造圧力が低くなるとされる領域ではより単純で安定度を重視しないような設計が可能である。ジェネレーティブ法による材料使用量および材料使用量に基づく製造時間は、製造される壁および支持構造の量にある程度左右されるため、材料の使用は、狙い通りに現在の必要条件を満たすことができるので、非常に経済的に鋳型を製造することができる。さらに、できたばかりの鋳造物の冷却は、支持構造によって影響され得る。空洞、特に閉鎖した空洞が多いほど、鋳造物をより長い時間断熱し、かつ、支持構造の材料が多いほど、放熱をより加速することができる。このように、例えば、均一に冷却する構成部品を形成することができるか、または、鋳造物の個別の領域をより長い時間温め続けることができる。したがって、ストレスおよび引け巣のない鋳造物を製造することができる。開放構造は、放熱を促進する。空気を吹き出す冷却ダクトも考えられる。特に、冷却ダクトの実施形態では、従来の製造に比べて本発明は高い自由度を有する。
【0011】
裏打ちされた型を焼成するために用いられるエネルギー量は、支持構造を含む型より何倍も大きくなるため、特許文献1に記載された裏打ちされた型に比べ、本発明はさらに有利である。このことは、連続生産においては、何よりもまずスループットタイムおよび生産コストに影響を及ぼす。
【0012】
鋳型が層ごとに構築される3Dプリンティング法は、ジェネレーティブ製造法としては特に有利である。特に精密な鋳型を製造するために、個別の層ができるだけ途切れずに互いへと遷移することによって、均一な構造が可能になると有利である。このことは、特に、キャビティに面した鋳型の内側周辺において有利である。
【0013】
本発明の1つの好適な実施形態によれば、ジェネレーティブ製造法は、スラリーをベースとした、特に、ダイレクトインクジェット方式(DIW)のようなDLP(digital light processing)技術を用いるか、または、例えば、積層スラリー造形法(LSD)またはLISによる鋳込み成形技術を用いる光造形法として実行される。したがって、鋳型は、特に、低粗度および十分な速度で、高品質に製造され得る。
【0014】
支持構造がさらなる鋳造物またはキャビティに面していない鋳型の外側に配置されている場合、その内部で続いて鋳造部品が鋳造されるキャビティは、本発明による支持構造の影響は受けない。本発明による製造方法は、鋳造部品の設計に基本的に影響を与えないので、広く用いられることができる。支持構造は、製造される鋳造部品に基づくものであり、鋳造部品を支持構造に適合させる必要はない。
【0015】
本発明の1つの好適な実施形態によれば、支持構造が、結果として生じる鋳造物に面した内側から、結果として生じる鋳造物に面していない鋳型の外側へと支持構造の粗度がより高くなるように設計されていれば、支持構造の材料を最低限にするのに最適である。支持構造の粗度をより高くする実施形態は、特に、内側から外側に向かってより大きくなる、開いたおよび/または閉じた空洞によって実現し得る。小さな空洞がキャビティの近くに設けられる一方、大きな空洞はキャビティからの距離が増えると有利である。したがって、支持構造に大量の材料を用いる必要なしに、最適な支持効果が得られる。さらに、この設計により、狙い通りに放熱効果を実現できる。
【0016】
複数の同じまたは異なる鋳型がブドウ状に湯口系に接続されている場合、従来のインベストメント鋳造法と同様に、1回の鋳造において複数の部分が製造されるブドウ状鋳造ユニットが得られる。これは、複数の鋳造部分を経済的に製造する方法でもある。
【0017】
鋳型の壁の内側に非常に低粗度を有する表面構造が形成される場合、特になめらかな鋳造部分が確実に製造され得る。この非常な低粗度R
zは、好ましくは、100μm未満であり、鋳造部分の好適な表面品質を実現するのに一般的に十分である。
【0018】
本発明による方法は、精密鋳造法にとりわけ有利に適している。精密鋳造法は、工業的に広く用いられ、比較的多数の個別の鋳造部品を短期間で製造するので、鋳型を特に経済的に製造して利用することができる。さらに、これらの工業的に製造された精密鋳造物は、価格に非常に敏感であるため、本発明の方法によって費用効果の高い精密鋳造物を製造すべきである。
【0019】
有利にも、鋳型が単結晶鋳造に用いられる場合、例えば、タービンブレードを非常に効率的に製造することができる。
【0020】
好ましくは、支持構造は、鋳造作業中に予想される機械的およびまたは熱的負荷に関して最適化される形状を有する。したがって、鋳造される鋳造物の壁厚または空洞にもよるが、例えば、金属の均一な固化を実現し得る。リブなどの個々の部分に必要な壁厚、配置、および、サイズが計算され、必要条件に適合される。
【0021】
本発明による鋳型、特に、溶融物が充填されるシェル、および/または、鋳造部品に空洞を形成するためのコアを含む鋳型は、耐火性およびガス透過性材料、特にセラミックで形成された壁を有し、ジェネレーティブ製造法によって構築される。本発明によれば、鋳型の壁は、当該鋳型用に特別に設計され、開いたおよび/または閉じた空洞によって形成され、および/または、異なる壁厚を有する支持構造を含む。この支持構造は、鋳造圧力とはほぼ無関係に、寸法的に安定した状態で鋳型を支持し、狙い通りに、溶融物の熱エネルギーを遮断するか、または、溶融物の熱エネルギーを放散させる。この支持構造により、鋳型全体またはその一部を形成することができる。コアを有さない単純な型、または、一以上のコアを有するより複雑な型(コアシェル型)を製造できる。
【0022】
支持構造によって、高精密な部分を鋳造できる鋳型を製造することができる。支持構造は、溶融物が充填される鋳型が変形しないように支持するための設計がなされているので、溶融物の鋳造圧力によって鋳型の形状が変化することはない。したがって、本発明による鋳型を用いれば、高精度な鋳型および、その結果としての、高精度な鋳造部品の製造が可能になる。
【0023】
支持構造により、溶融物の熱エネルギーを遮断するか、または、溶融物の熱エネルギーを放散させる方法が影響され得る。高精密な部品にとって、溶融物の熱エネルギーを狙い通りに放散させることは重要である。熱が可能な限り長く保持されると有利である領域があり得る。他方、熱が可能な限り素早く放散されることが有利である領域があるであろう。特に、個別の鋳型用に特別に設計されている支持構造を適切に配置することにより、溶融物の熱の保持または放散を高度に狙い通りに実現し得る。従って、本発明の鋳型は、精密部品の製造を可能にするだけでなく、むしろ、精密で完璧な鋳造部品を製造するために、放熱にも技術的に優れた影響を及ぼす。
【0024】
鋳型は、好ましくは、精密鋳型である。高度に精密な部品の製造は、工業的な精密鋳造に特に必要である。本発明による鋳型の上記利点により、鋳型は、精密鋳造法において特に有利に用いられ得る。
【0025】
鋳型が、結果として生じる鋳造部品に面した内側と、結果として生じる鋳造部品に面していない外側とを有し、鋳造される部品のネガ型が鋳型の内側にキャビティとして形成され、支持構造が外側、すなわち、キャビティに面していない鋳型の壁側に配置される場合、鋳型の支持構造の構成から独立した部分を可能とする鋳型が形成され得る。ひとたび支持構造が鋳型の内側、すなわち、鋳型のキャビティ領域でなく外側に配置されると、支持構造は、キャビティとは独立して配置され得る。したがって、設計の自由度が特に高くなり、これによって、支持構造は、狙い通りの熱伝導を最適化するだけでなく、鋳造圧力に対して鋳型を最適に支持することが可能になる。
【0026】
複数の同じまたは異なる鋳型がブドウ状に湯口系に接続されている場合、複数の部分が同時に鋳造され得る。
【0027】
3Dプリンティングによって鋳型が層ごとに構築されれば特に有利である。その結果、鋳型の設計自由度が特に高まる。したがって、支持構造のアンダーカットが容易に形成できる。支持構造、または、熱を保持または放散するための構造は、それぞれの鋳型に対して個別かつ特に効率的であるよう構成されてよい。
【0028】
好ましくは、支持構造は、鋳型の内側から外側に向けて粗度が高くなるよう設計される。これは、特に、鋳型の内側から外側に向けて空洞が次第に大きくなることを意味する。小さな空洞または大量の材料は、キャビティ領域の支持および熱伝導に有利に働き得る一方、キャビティから離れて支持構造がほとんど形成されず、その結果、大きな空洞が設けられても、一般的に十分である。これは、壁厚を減少させて、支持構造の壁が、キャビティの近くではより厚く、キャビティから離れるにしたがって薄くするというだけではなくて、支持構造自体の好適な配置によるものであり得る。
【0029】
空洞が必要に応じて丸く、および/または、角張るよう設計されればとりわけ有利である。ジェネレーティブ製造法による設計自由度は、非常に高い。例えば、支持構造の安定度を特に高めるために、空洞は、丸くなるよう設計されてよい。例えば、角張った空洞の設計は、支持構造の設計が単純であることが望まれる場合に有利であり得る。空洞は、特に孔状、すなわち、球状、または、不規則な形状、ハニカム形状、および/または、矩形に設計され得る。支持力または熱伝導率の必要条件に応じて、このような形状が特に有利であることを証明でき得る。他の形状の空洞ももちろん可能であり、対応する鋳型にとって有利であり得る。
【0030】
支持構造が鋳型の内側から外側に向かって薄くなるよう形成された壁厚を含んでいればしばしば有利である。壁厚が薄いと一般的より素早く製造できるので、このような設計自由度により、費用対効果のさらに高い鋳型を製造でき得る。
【0031】
鋳型の内側の表面構造が非常に低粗度を有する場合、鋳造部品を鋳造することができ、この鋳造部分は非常になめらかで精密な表面を有する。非常に低粗度とは、100μm未満の粗度R
Zである。
【0032】
鋳型、すなわち、支持構造を含む全体の壁または支持構造の個別の支持壁の壁厚は、0.1mm〜75mmであり得る。特に、支持壁の個別の壁厚は、数ミリメートルであってもよいが、例えば、0.1mmなど非常に薄く設計されてよい。支持構造を含む鋳型の全体の壁構造は、鋳造される部分の大きさにもよるが、数ミリメートルから75mmまでであってよい。特に、湯口系への接続を形成するのに適した壁厚とするには、より厚くする必要がある。
【0033】
本発明の1つの好適な実施形態によれば、鋳型は、単結晶鋳造用の単結晶鋳型である。したがって、例えば、タービンブレードなどを非常に効率的に製造できる。
【0034】
鋳型は、好ましくは、スラリーベースのジェネレーティブ製造法によって製造される。したがって、鋳型は、特に、低粗度かつ十分な速度で高品質に製造され得る。
【0035】
本発明のさらなる利点は、以下の例示的な実施形態で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図4】ハニカム形状の支持構造を含む壁の詳細を示す。
【
図5】円形の空洞を含む支持構造を含む壁の詳細を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に示された選択的な実施形態の説明において、構成および/または動作モードが同一、または、少なくとも同等である特徴に対しては同じ参照符号が用いられる。特徴の詳細が再び詳細に説明されない限り、それらの設計および/または動作モードは、上記特徴の設計および/または動作モードに対応する。
【0038】
図1は、湯口系1の概要を示す断面図である。湯口系1は、湯口3に開口している受け口2を有する。湯口3からは複数の注入口4が延びて個別の鋳型6のキャビティ5に通じている。受け口2に注がれた溶融物は、湯口3を流れ、注入口4を介してキャビティ5へと流れ込む。ここで、溶融物は、凝固し、キャビティ5の形状になる鋳造部品を形成する。
【0039】
湯口系1と鋳型6との組み合わせは、シェル型7と称される。従来では、このシェル型7は、液体セラミック浸漬させてから複数回研磨した蝋型によって製造された。その後、この未焼成のシェル型7を乾燥して焼成することによって、溶融物を充填するのに適した固体シェル型7が形成された。
【0040】
本発明によれば、鋳型6は、例えば、3Dプリンティングなどのジェネレーティブ製造法で製造された支持構造9を含む壁8を含む。
図1では、支持構造9は、ハニカム形状のクロスハッチングで輪郭を示されている。この場合、支持構造9は、鋳型6だけでなく、受け口2、湯口3、および、注入口4を含む湯口系1にわたり延びている。あるいは、受け口2、および/または、湯口3は、このようなハニカム構造または支持構造9を有して製造されるのではなく、従来または他の単純な方法で製造されていてもよい。
【0041】
シェル型7は、複数の、この場合は6つの鋳型6が湯口系1にブドウ状に配列されるよう設計されている。したがって、一回の鋳造で6つの鋳造部品が6つのキャビティ5内で同時に鋳造されることが可能である。
【0042】
壁8のそれぞれは、内側10と外側11とを有する。内側10がキャビティ5の内部を向くと同時に、外側11がシェル型7の外側を形成している。支持構造9を含む壁8の異なる構造は、
図2〜6に詳細Aとして拡大して示されている。
【0043】
図2は、閉じた空洞12が配列されている支持構造9を含む鋳型6の壁8の詳細Aを示す。支持構造9は、複数の支持壁13を含むよう設計されている。支持壁13は、四角い断面を有する、異なる大きさの空洞12を形成する。内側10に近い空洞12は、壁8の外側11領域の空洞12より小さくなるよう設計されている。
【0044】
支持壁13は、内側10に対して斜めに延びるので、四角い空洞12は、内側10または外側11にひし形の尖った部分を向けている。したがって支持壁13の特に良好な支持効果が、鋳型6の壁8に対して発揮される。支持構造9は、外側11に向けてギザギザに開いた空洞を形成する一方で、内側10周辺の内壁14によって平坦に閉じられている。その後、内壁14は、キャビティ5において鋳造された部分の表面となる。したがって、その部分の表面をできるだけなめらかにするためには、内壁14が非常に粗度の低い表面構造をなすことが重要である。したがって、内側10または内壁14は、100μm未満の粗度で形成されることが好ましい。さらに、ジェネレーティブ製造法、特に3Dプリンティングによって壁8を層ごとに構築する場合、段差がないかまたはわずかな段差、および、溝のパターンが形成されることが観察される予定である。段差および溝のパターンは、鋳造部品の品質を低下させ得る。
【0045】
図3は、鋳型6の壁9の詳細Aの一実施形態を示す。この場合、壁8の支持構造9は、矩形の断面を有する空洞12および15によって形成される。空洞の大部分は、閉じた空洞12である。1つの開いた空洞15も形成される。閉じた空洞12と開いた空洞15との組み合わせによって、鋳型6の壁8を支持できるだけでなく、狙い通りの放熱または蓄熱も可能である。支持構造9は、できるだけ素早い放熱を保証するのに好適である。しかしながら、閉じた空洞12は、開いた空洞15よりも断熱材として機能するので、適切な設計によって、特に閉じた空洞によって、放熱の速度が遅くなる。
【0046】
さらに、
図3の例示的実施形態では、支持壁13は、異なる壁厚Wを有することが明らかである。内側10近くの支持壁13は、内側10から離れた外側11近くの支持壁13より大きい壁厚Wを有する。
図3では、線の太さを変えることによってこれを示している。異なる壁厚Wにより、支持構造9は、高度に狙い通りに、所望の支持効果および所望の放熱に調整されることが可能である。支持壁13の壁厚Wは、好ましくは0.1mmから数ミリメートル、例えば、5mmまたは6mmまで変更できる。壁8全体の厚さは、数ミリメートル、例えば、75mmまでであってよい。壁8が非常に強いと有利であり、特に、壁8が特別に強力な支持効果をもたらすか、または、かなり長時間キャビティ5内に熱が保持されれば有利である。
【0047】
図4は、
図1の支持構造9の設計の詳細Aのさらなる可能なデザインの1つを示す。この場合、支持構造9は、ハニカム形状の空洞12および15を含む。閉じた空洞12に加えて、開いた空洞15も示されている。開いた空洞15は、外側11を向いている。内側10の内壁14において、ハニカム形状の空洞12は、内壁14によって閉じられているので、内側10の表面は平滑になり、鋳造部品の適切な表面を得ることができる。ハニカム形状の支持構造9は、特に安定しており、かつ、3Dプリンティング法によって簡単に製造されることができる。
【0048】
図5は、支持構造9の詳細Aを示すさらなる実施形態である。ここでは、空洞12は、円形の断面を有する。空洞12は、球形または円柱形に設計され得る。円形の空洞12の間にある支持壁13の厚さは不規則である。円形の空洞12の直径は、内側10から外側11に向かって大きくなる。この配置はもちろん異なってもよい。つまり、内側10周辺の空洞12が外側11周辺の空洞より大きくてもよい。このことは、残りの例示的実施形態すべてに当てはまる。
【0049】
内側10は、内壁14によって閉じられている。内壁14は、特に低い粗度を有し得る。このことは、支持壁13には必要ない。この場合、特に、支持構造9全体の製造をより素早く簡単に行いたい場合、適切なより高い粗度が選択されてよい。
【0050】
図6は、好適な支持構造9の詳細Aを示すさらなる実施形態である。支持構造9は、内壁14から外側11に向かってリブ状に突き出した支持壁13を有する。この例示的実施形態では、支持壁13の壁厚Wが次第に減少してくさび形の断面を有するよう設計されている。これによって放熱が促進される。安定性を向上させるため、開いた空洞15だけでなく閉じた空洞12も設けられてよい。この場合に示される閉じた空洞12は、角が丸みをおびた台形の断面を有している。これは、支持構造9の安定性を向上させ、強度または放熱の必要条件に応じて、支持構造9が大きく自由に設計可能であることを証明する。
【0051】
図7は、本発明による一実施形態を示し、鋳型6は、キャビティ5への注入口4を有する。キャビティ5内にはコア16が形成されている。図に示すように、コア16は、鋳型6と一体化されてよい、すなわち、鋳型6のシェル17と一体に形成されてよい。単一の部品として製造されてもよいが、鋳型6のシェル17に接続されてもよい。本発明によれば、シェル17またはコア16を形成してもよいし、コア16およびシェル17の両方を形成してもよい。
【0052】
本発明は、これまで示しかつ記載した例示的実施形態に限定されない。
請求項の範囲内の変更が可能であり、異なる例示的実施形態に示されている特徴の組み合わせも可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 湯口系
2 受け口
3 湯口
4 注入口
5 キャビティ
6 鋳型
7 シェル型
8 壁
9 支持構造
10 内側
11 外側
12 空洞
13 支持壁
14 内壁
15 空洞
16 コア
17 シェル
A 詳細
W 壁厚
【国際調査報告】