特表2021-518375(P2021-518375A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-518375アベマシクリブの固相形態、その使用及び調製
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-518375(P2021-518375A)
(43)【公表日】2021年8月2日
(54)【発明の名称】アベマシクリブの固相形態、その使用及び調製
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/14 20060101AFI20210705BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20210705BHJP
   A61K 31/506 20060101ALN20210705BHJP
【FI】
   C07D401/14CSP
   A61P35/00
   A61K31/506
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-550086(P2020-550086)
(86)(22)【出願日】2019年4月4日
(85)【翻訳文提出日】2020年9月17日
(86)【国際出願番号】US2019025819
(87)【国際公開番号】WO2019195569
(87)【国際公開日】20191010
(31)【優先権主張番号】62/653,273
(32)【優先日】2018年4月5日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】ハミルトン、クリフトン
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA03
4C063BB09
4C063CC29
4C063DD12
4C063EE01
4C086AA03
4C086BC50
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA03
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、ABCの結晶質メタノール溶媒和物形態又は水和物形態、及びABCの水和物を可逆的に形成するABCの無水形態に関する。本発明はまた、前述のABCの溶媒和物形態、水和物形態、及び無水固相形態の調製に関する。更に、本発明は、本発明による前述の当該ABCの結晶質形態のうちの少なくとも1つを含む医薬組成物、及びそれを必要とする患者の治療のための、本発明による前述のABCの結晶質形態のうちの少なくとも1つの医薬的使用に関する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アベマシクリブの結晶質メタノール溶媒和物又は水和物である、化合物。
【請求項2】
前記アベマシクリブのメタノール溶媒和物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記アベマシクリブのメタノール溶媒和物が、形態Iのアベマシクリブの不定メタノール溶媒和物である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
CuKα線によって測定して、約10.0、17.7、21.8、及び26.1°2Θから選択される少なくとも2つ以上のX線粉末回折ピークを有する、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
斜方晶である、請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
単結晶パラメータとして、
a=8.3338(4)Å
b=10.5427(5)Å
c=17.6133(10)Å
α=100.953(2)°
β=97.285(2)°
γ=93.819(2)°
を有する、請求項3に記載の化合物。
【請求項7】
セル容積=1500.51(13)Åである、請求項3に記載の化合物。
【請求項8】
前記アベマシクリブの水和物が、アベマシクリブの水和物の形態IIIである、請求項2に記載の化合物。
【請求項9】
CuKα線によって測定して、約4.7、及び5.2°2Θから選択される少なくとも1つ又は2つのX線粉末回折ピークを有する、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
約40.5℃、84.1℃、124.5℃、138.5℃、及び172℃における熱事象から選択される1つ以上の熱事象を有する、請求項8に記載の化合物。
【請求項11】
無水アベマシクリブの結晶形態IIである、化合物。
【請求項12】
CuKα線によって測定して、5.1、6.2、及び16.8°2Θから選択される少なくとも2つ以上のX線粉末回折ピークを有する、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
約320℃において分解の開始が示されるTGAプロットを有する、請求項11に記載の化合物。
【請求項14】
約180〜182℃において熱事象を有する、請求項11に記載の化合物。
【請求項15】
アベマシクリブの不定メタノール溶媒和物の固相形態Iの調製プロセスであって、
(a)アベマシクリブを温メタノール中に溶解し、アベマシクリブ200mg/メタノールmLのメタノール溶液を形成することと、
(b)前記アベマシクリブのメタノール溶液を冷却し、前記アベマシクリブの不定メタノール溶媒和物の固相形態Iを得ることと、
を含む、プロセス。
【請求項16】
アベマシクリブの水和物の固相形態IIIの調製プロセスであって、
(a)無水アベマシクリブの形態IIを湿潤条件に供し、アベマシクリブの水和物の形態IIIを形成すること、
を含む、プロセス。
【請求項17】
無水アベマシクリブの固相形態IIの調製プロセスであって、
(a)アベマシクリブの不定メタノール溶媒和物の形態Iを、高温で約8時間以上にわたって真空乾燥し、無水アベマシクリブの固相形態IIを得ること、
を含む、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アベマシクリブ(ABC)の固相メタノール溶媒和物形態、水和物形態、及び無水形態、前述の形態の調製並びにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ABC、すなわちN−[5−[(4−エチル−1−ピペラジニル)メチル]−2−ピリジニル]−5−フルオロ−4−[4−フルオロ−2−メチル−1−(1−メチルエチル)−1H−ベンゾイミダゾール−6−イル]−2−ピリミジンアミン は、以下の式Iのものであり、
【化1】
進行性又は転移性乳癌の治療に有用な、CDK4及びCDK6に対して選択的なCDK阻害剤である。
【0003】
米国特許第7855211号及び米国特許出願公開第20170173013号には、ABC並びに2つの多形である形態I及びIIIの調製が開示されている。形態Iは、XRPDピーク4.51、5.89、8.98、11.2、12.57、13.09、15.93、16.31、17.01、18.58、18.82、20.86、21.9、23.12、23.53、26.71、及び26.85±0.2°2Θを有する。形態IIIは、XRPDピーク7.44、10.91、11.54、12.13、13.89、14.91、15.63、16.06、18.59、18.94、20.43、21.29、21.91、22.13、22.45、23.12、23.42、25.95、及び29.42を有する。国際公開第2017108781号には、ABCの形態IVは、6.0、6.8、7.5、10.4、12.0、13.4、13.9、15.3、15.6、16.3、18.2、18.5、19.2、19.9、21.0、22.2、22.7、25.0、26.1、27.1、28.2、及び31.7±0.2°ΘにおけるXRPDピークによって決定することができることが開示されている。ABCの形態IVは、123(±5)℃の開始温度及び133(±1)℃のピーク温度での1つの吸熱、174(±2)℃及び181(±2)℃の開始温度並びにそれぞれ176(±1)℃及び182(±1)℃のピーク温度での他の吸熱、並びに137(±5)℃の開始温度及び140(±2)℃のピーク温度での吸熱を有するものとして開示されている。
【0004】
参考文献のいずれにも、ABCの固相MeOH溶媒和物も水和物も開示されていない。参考文献のいずれにも、ABCの水溶媒和形態を可逆的に形成するABCの無水多形は開示されていない。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、ABCの結晶質メタノール溶媒和物形態又は水和物形態、及びABCの水和物を可逆的に形成するABCの無水形態に関する。本発明はまた、ABCの前述の溶媒和物形態、水和物形態、及び無水固相形態の調製に関する。更に、本発明は、本発明による前述の当該ABCの結晶質形態のうちの少なくとも1つを含む医薬組成物、及びそれを必要とする患者の治療のための、本発明による前述のABCの結晶質形態のうちの少なくとも1つの医薬的使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】部分的に脱溶媒和されたABCの不定メタノール溶媒和物の固相形態IのXRPDパターン(上段の破線プロット)、及びABCの不定メタノール溶媒和物の形態IについてのSCXRDデータから計算されたパターン(下段の実線プロット)である。
図2】SCXRDから識別されたABCの不定メタノール溶媒和物の結晶質形態Iの三次元構造である。
図3】ABCの不定メタノール溶媒和物の固相形態Iの結晶のPLMである。
図4】ABCの不定メタノール溶媒和物の固相形態IのDSCプロットである。
図5】ABCの不定メタノール溶媒和物の固相形態IのXRPDパターン(下段のプロット)と、無水ABCの形態IIのXRPDパターン(中段のプロット)と、ABCの水和物の形態IIIのXRPDパターン(上段のプロット)との比較である。
図6】無水ABCの固相形態IIのDSC及びTGAプロットである。
図7】無水ABCの形態IIの固相の動的蒸気吸着(DVS)プロットである。
図8】無水ABCの形態IIの固相の吸着等温プロットである。
図9】ABCの水和物の固相形態IIIのDSCプロットである。
【発明の詳細な説明】
【0007】
以下の説明は、当業者が様々な実施形態を作製及び使用することを可能にするために提示される。具体的なデバイス、技術、及び用途の説明は、例としてのみ提示される。本明細書に記載の実施例に対する様々な修正は、当業者には容易に明らかとなり、本明細書に記載の全般的原理は、様々な実施形態の趣旨及び範囲から逸脱することなく、他の実施例及び用途に適用することができる。したがって、様々な実施形態は、本明細書に記載の、示された実施例に限定することを意図するものではないが、特許請求の範囲と一致する範囲が与えられるものである。
【0008】
本明細書で使用するとき、用語ABCの「固相形態」は、結晶質形態又は多形形態、非晶質相、及び溶媒和物を包含する。
【0009】
用語「約」又は記号「〜」の使用は、その値又はパラメータ自体を包含し、説明する。例えば、「約x」は、「x」自体を包含し、説明する。用語「約」は、測定に関連して使用される場合、又は値、単位、定数、若しくは値の範囲を修飾するために使用される場合、±5%の変動を指す。
【0010】
固相形態に関する用語「実質的に」又は「実質的に含まない/純粋」は、その形態が、約30重量%未満、約20重量%未満、約15重量%未満、約10重量%未満、約5重量%未満、又は約1重量%未満の不純物を含有することを意味する。不純物には、例えば、結晶質固相形態のもの以外の他の多形形態、水及び溶媒が含まれることがある。
【0011】
用語「室温」は、15〜29℃、好ましくは20〜23℃の温度として定義される。
【0012】
本特許出願で使用するとき、用語「乾燥させる/乾燥させること/乾燥させた」は、45℃及び真空下で乾燥させる/乾燥させること/乾燥させたことを意味する。
【0013】
本明細書に列挙される全ての範囲は、端点を含む。「約」、「概ね」、及び「実質的に」などの用語は、ある絶対値ではないように、用語又は値を修飾するものとして解釈されるものである。これは、少なくとも、値を測定するために使用される所与の技術に関する、予想される実験誤差、技術誤差、及び装置誤差の程度を包含する。
【0014】
用語「医薬的に許容可能な」は、概ね非毒性であり、生物学的に望ましくないものではない、医薬組成物を調製するのに有用であるものを意味し、獣医学的使用及び/又はヒトの医薬的使用に許容可能であるものを包含する。
【0015】
用語「医薬組成物」は、活性成分(複数可)、担体を構成する医薬的に許容可能な賦形剤、及び、成分のうちの任意の2つ以上の組み合わせ、錯化、又は凝集を直接的若しくは間接的にもたらす任意の製造物を包含することを意図する。したがって、医薬組成物は、活性成分、活性成分分散体又は複合体、追加の活性成分(複数可)、及び医薬的に許容可能な賦形剤を混合することによって作製された、任意の組成物を包含する。
【0016】
実施形態
したがって、本発明の目的は、ABCの固相MeOH溶媒和物形態又は水和物形態、及びABCの水和物形態を可逆的に形成するABCの固相無水多形を提供することである。更に、本発明の目的は、このようなABCのMeOH溶媒和物形態又は水和物形態、及びABCの水和物形態を可逆的に形成するABCの無水多形、更に具体的にはABCのMeOH溶媒和物形態から調製されたものの調製プロセスを提供することである。本発明の更に別の目的は、ABCの医薬剤形を調剤するために、ABCのMeOH溶媒和物形態若しくはABCの水和物形態、又はABCの水和物形態を可逆的に形成するABCの無水多形、更に具体的にはABCのMeOH溶媒和物形態から調製されたものを使用することである。
【0017】
ABCを温メタノール(約50〜60℃の範囲、好ましくは約55℃)に溶解(約200mg/mL)し、次いで冷却(−10℃〜−5℃の範囲、好ましくは−5℃)し、ABCの不定メタノール溶媒和物の形態Iである白色粉末を沈殿させる。
【0018】
ABCの不定メタノール溶媒和物の形態Iを、高温(40〜60℃の範囲、好ましくは45℃)で8時間以上真空乾燥させ、ABCの無水物の形態IIを得る。
【0019】
ABCの無水物の形態IIを、湿潤環境(約>60%のRH、好ましくは80%のRHであり、約15〜40℃、好ましくは約25℃の温度)に入れ、ABCの水和物の形態IIIを得る。
【0020】
別の全般的な態様では、医薬組成物の調製に使用するための、本発明によるABCの固相形態の使用であって、より具体的には、組成物が、1つ以上の医薬的に許容可能な成分と一緒の溶液である、使用である。本発明によるABCの固相形態を含む医薬組成物は、国際公開第2017108781号によって調製することができ、その全容が参照により本明細書に組み込まれ、より具体的には、組成物は、微結晶セルロース102、微結晶セルロース101、ラクトース一水和物、クロスカルメロースナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、二酸化ケイ素を含み得る。医薬組成物の用量は、広範囲にわたって変更することができる。投与される最適用量及び投与レジメンは、当業者によって容易に決定され得、投与様式、調剤の強度、及び疾患病状の進行とともに変化する。加えて、患者の性別、年齢、体重、食事、身体活動、投与回数、及び付随疾患を含む、治療される患者に関連する因子により、用量及び/又はレジメンを調節する必要が生じる。例えば、本発明の医薬組成物の合計用量は、300mg又は400mg(150mg又は200mgを毎日2回)として、50mg、100mg、150mg、及び200mgの錠剤の用量を使用して、実施可能である。更に、本発明はまた、(1)ホルモン受容体(HR)陽性、ヒト表皮成長因子受容体2(HER2)陰性の進行性又は転移性乳癌を有する閉経後の女性の治療のための初期内視鏡ベース療法として、アロマターゼ阻害剤と組み合わせての治療方法、(2)内視鏡療法後の、疾患進行を伴う、ホルモン受容体(HR)陽性、ヒト表皮成長因子受容体2(HER2)陰性の進行性又は転移性乳癌を有する女性の治療のための、フルベストラントと組み合わせての治療方法、及び(3)転移状況において内視鏡療法後で化学療法前の、疾患進行を伴う、HR陽性、HER2陰性の進行性又は転移性乳癌を有する成人患者の治療のための単剤療法としての治療方法にも関する。
【0021】
以下の説明は、当業者が様々な実施形態を作製及び使用することを可能にするために提示される。具体的なデバイス、技術、及び用途の説明は、例としてのみ提示される。本明細書に記載の実施例に対する様々な修正は、当業者には容易に明らかとなり、本明細書に記載の全般的原理は、様々な実施形態の趣旨及び範囲から逸脱することなく、他の実施例及び用途に適用することができる。したがって、様々な実施形態は、本発明の例示であり、本発明は、本明細書に記載の、示された実施例に限定されることを意図するものではない。
【実施例】
【0022】
分析実験
分析−XRPD(X線粉末回折法)
回折図は、CuKα線(X=1.542Å)を使用して、実験室回折計、BRUKER D−8Advance回折計及びLynxeye超高速検出器を用いて得られる。
【0023】
ピーク値に対する相対的な強度は、試料調製、実装、並びにスペクトルを得るために使用される装置の分析手順及び設定を含む、いくつかの要因に応じて変化し得る。
【0024】
SCXRD(単結晶X線回折)は、ChemMatCARSのBeamline15−ID−BにおけるPILATUS3X CdTe1M検出器、又はCuKαINCOATEC Imus微細焦点源(λ=1.54178Å)を備えたBruker D8Venture PHOTON100CMOS回折計のいずれかを使用して得られる。
【0025】
分析−DSC(示差走査熱量測定)
DSC測定は、熱量計、TA Instruments Q2000及びRSC40で行われる。
【0026】
試料は、アルミニウムパン内で秤量される。検討は、加熱速度10℃/分で20〜400℃の温度範囲にて、50mL/分の流量の窒素でパージし行われた。
【0027】
分析−TGA(熱重量分析)
TGA測定値は、TA Q500装置を使用して記録される。試料は、アルミニウムパン内で秤量される。TGAの検討は、10.0℃/分の加熱速度で30〜350℃の温度範囲にわたって、60mL/分の流量で窒素でパージして行われる。
【0028】
分析−H NMR
H NMRの測定値は、DMSO−d6中でBruker300MHz Advance NMRスペクトル計を使用して記録される。
【0029】
分析−偏光顕微鏡法(PLM)
試料は、PAXcam3デジタル顕微鏡カメラを備えたOlympus BX53偏光顕微鏡を使用して分析される。
【0030】
I.ABCの不定メタノール溶媒和物の固相形態I
ABCの不定メタノール溶媒和物は、ABCを温メタノール(55℃)に溶解(約200mg/mL)し、次いで冷却(−5℃)して、白色粉末を沈殿させることによって製造される。得られた粉末は、まだ湿潤している間にXRPDにより試験される(図1、上段のパターン)。単結晶は、貧溶媒(好ましくは酢酸エチル)中にメタノールをゆっくりと蒸発させることによって、又は飽和溶液を50℃から0℃まで数時間の過程にわたって空気に曝露させずゆっくりと冷却することによって成長させ、溶媒和物の蒸発及び結晶格子の崩壊が予防される。単結晶X線回折(SCXRD)のデータは、100°Kで始まり、回折の質が改善されるとともに、脱溶媒和が防止される。単結晶について計算されたXRPDパターン(図1、下段のパターン)は、湿潤結晶のXRPDパターンと完全には一致しなかった。この理由は、SCXRDが収集される条件により、ABCの不定メタノール溶媒和物について計算されたXRPDピークが移動する単位結晶におけるわずかな変化をもたらすためである。単結晶は、約2.5〜3分子のメタノール、好ましくは約2.75分子のメタノールを有する、ABCの不定メタノール溶媒和物の形態I(図2)であると判断される。ABCの不定メタノール溶媒和物の形態Iは、不安定である。
【0031】
XRPDは、RDNの不定メタノール溶媒和物の固相形態Iに関し、2Θ及びピークに対する相対的な強度%値は表Iに示されている。
【表1】
【0032】
角度測定値は、±0.2°2Θである。ABCの不定メタノール溶媒和物の固相形態Iについてのピークを特定するキーには、10.0、17.7、21.8、及び26.1°2Θが含まれる。
【0033】
SCXRDによって決定された、不定メタノール溶媒和ABCの固相形態Iについての単結晶パラメータは、以下のとおりである。
a=8.3338(4)Å
b=10.5427(5)Å
c=17.6133(10)Å
α=100.953(2)°
β=97.285(2)°
γ=93.819(2)°
セル容積=1500.51(13)Å
【0034】
ABCの不定メタノール溶媒和物の形態Iの結晶は、PLM(図3)によって試験され、斜方晶であると判断される。
【0035】
ABCの不定メタノール溶媒和物の形態IのDSCプロット(図4)により、溶媒及び約184℃の溶融に関連する不明確な吸熱が示されている。
【0036】
II.無水ABCの固相形態II
無水ABCの固相形態IIは、高温(45℃)で約8時間以上にわたって、ABCの不定メタノール溶媒和物の形態Iを真空乾燥することによって調製される。
【0037】
XRPDは、不定メタノール溶媒和物ABCの形態I(図5、下段のパターン)から得られた無水ABCの固相形態II(図5、中段のパターン)を表し、2Θ及びピークに対する相対的な強度%値を、表IIに示す。
【表2】
【0038】
角度測定値は、±0.2°2Θである。固相形態IIの無水ABCについてのピークを特定するキーには、5.1、6.2、及び16.8°2Θが含まれる。
【0039】
固相形態IIの無水ABCについてのDSCプロット(図6)では、180℃から182℃までで融解し、TGAプロットは、分解の開始が約320℃あることを示している(図6)。固相形態IIの無水ABCのDVSプロット(図7)では、0〜90%の相対湿度(RH)で約8重量%のHOが吸収される。固相形態IIの無水ABCの吸着等温プロットでは、水吸着がほぼ直線的であることが示され、他方、脱着は主に30〜20%のRHで起こり、4%のHOがこの1ステップで失われる(図8)。
【0040】
III.ABCの水和物の固相形態III
ABCの水和物溶媒和物の固相形態IIIは、数百mgの無水ABCの形態IIを、40℃/75%RH又は25℃/97%RHで、1週間保管することによって製造される。図VII及び図VIIIにおける結果により、形態IIの無水ABCからABCの水和物の形態IIIへの変換は可逆的であり、20%のRHで脱着中の重量低下は約4%であり水の分子の減少と一致することが示されている。
【0041】
ABCの水和物の固相形態IIIのXRPDは、図5(上段のパターン)に表され、無水ABCの固相形態II(図5、中段のパターン)から得られる。2Θ及びABCの水和物の固相形態IIIのピークに対する相対的な強度%値を、表IIIに示す。
【表3】
【0042】
角度測定値は、±0.2°2Θである。ABCの水和物の固相形態IIIのピークを特定するキーには、約5.2°のピークが含まれ、これのみならず、キーはまた、4.7°2Θにおいて新たなピークも有する。
【0043】
ABCの水和物の形態IIIのDSCプロット(図9)には、172℃における融解の前の複数の吸熱(40.5℃、84.1℃、124.5℃、及び138.5℃)が示されている。
【0044】
上記の説明は、当業者が様々な実施形態を作製及び使用することを可能にするために提示される。具体的なデバイス、技術、及び用途の説明は、例としてのみ提示される。本明細書に記載の下文の実施例に対する様々な修正は、当業者には容易に明らかとなり、上記及び以下で、本明細書に記載の全般的原理は、本発明の範囲から逸脱することなく、他の実施例及び用途に適用することができる。したがって、様々な実施形態は、本明細書の下文に記載の実施例に限定されることを意図するものではない。
【0045】
本発明は、その特定の実施形態に関して説明されてきたが、ある特定の修正及び等価物が当業者には明らかとなり、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】