特表2021-518426(P2021-518426A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-518426感染症及び関連炎症プロセスの処置のための細菌結合ペプチド
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-518426(P2021-518426A)
(43)【公表日】2021年8月2日
(54)【発明の名称】感染症及び関連炎症プロセスの処置のための細菌結合ペプチド
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/08 20190101AFI20210705BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20210705BHJP
   A61K 31/407 20060101ALI20210705BHJP
   A61K 31/201 20060101ALI20210705BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20210705BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20210705BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20210705BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20210705BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20210705BHJP
   A61K 47/56 20170101ALI20210705BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20210705BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20210705BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20210705BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20210705BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20210705BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20210705BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210705BHJP
   C07K 7/06 20060101ALI20210705BHJP
   C12M 1/26 20060101ALI20210705BHJP
   A61M 1/36 20060101ALN20210705BHJP
【FI】
   A61K38/08ZNA
   A61K45/00
   A61K31/407
   A61K31/201
   A61K9/20
   A61K9/48
   A61K9/16
   A61K9/08
   A61K9/10
   A61K47/56
   A61P31/00
   A61P29/00
   A61P31/04
   A61P31/10
   A61P31/12
   A61P33/00
   A61P43/00 111
   A61P43/00 121
   C07K7/06
   C12M1/26
   A61M1/36 161
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】48
(21)【出願番号】特願2020-572616(P2020-572616)
(86)(22)【出願日】2019年3月13日
(85)【翻訳文提出日】2020年11月11日
(86)【国際出願番号】EP2019056315
(87)【国際公開番号】WO2019175261
(87)【国際公開日】20190919
(31)【優先権主張番号】18382164.4
(32)【優先日】2018年3月13日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】513295630
【氏名又は名称】ホスピタル クリニック デ バルセロナ
(71)【出願人】
【識別番号】520355404
【氏名又は名称】セプシア セラピューティクス, エセ.エレ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロサノ ソト フランシスコ
(72)【発明者】
【氏名】マルチネス フロレンサ マリオ
【テーマコード(参考)】
4B029
4C076
4C077
4C084
4C086
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029BB02
4B029CC04
4B029HA10
4C076AA11
4C076AA17
4C076AA22
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076AA95
4C076CC04
4C076CC31
4C076CC32
4C076CC34
4C076CC35
4C076CC41
4C076EE01
4C076EE02
4C076EE30
4C076EE59
4C076FF04
4C077AA07
4C077BB03
4C077MM03
4C077NN14
4C077PP02
4C077PP04
4C077PP07
4C077PP08
4C077PP09
4C077PP10
4C077PP15
4C077PP24
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA18
4C084BA23
4C084BA42
4C084CA59
4C084MA16
4C084MA17
4C084MA22
4C084MA23
4C084MA34
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA41
4C084NA05
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZB111
4C084ZB321
4C084ZB331
4C084ZB351
4C084ZB371
4C084ZC412
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086CC08
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA17
4C086MA22
4C086MA23
4C086MA34
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086NA05
4C086ZB35
4C086ZC41
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA21
4C206JA26
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA36
4C206MA37
4C206MA42
4C206MA43
4C206MA54
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA61
4C206NA05
4C206ZB35
4C206ZC20
4C206ZC75
4H045AA30
4H045BA16
4H045BA56
4H045EA29
4H045FA20
(57)【要約】
本発明は、医薬の分野に関し、配列番号3及び/又は配列番号1及び/又は配列番号2を含む、或いはそれのみからなる1つ以上の単離アミノ酸配列を含む医薬組成物、1つ以上の上述のアミノ酸配列を含むキット及びコンジュゲートを提供する。さらに、本発明は、薬剤としての、特に感染症、又は感染症に関連した炎症状態、又は感染病原体に由来する産物の存在に関連した炎症性疾患の治療における本発明の医薬品組成物、キット及びコンジュゲートの使用に関する。本発明はまた、水溶液から少なくとも1つの成分を選択的に結合及び分離するための装置であって、上述の1つ以上のアミノ酸配列を含む、装置を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号3及び/又は配列番号1及び/又は配列番号2の単離アミノ酸配列の1つ以上、又はその誘導体を含む医薬組成物。
【請求項2】
前記医薬組成物が、固体組成物、好ましくは錠剤、丸剤、カプセル剤若しくは顆粒の形態であるか、又は液体組成物、好ましくは溶液、懸濁液若しくはエマルションの形態である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記医薬組成物が、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤を更に含む、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
配列番号3及び/又は配列番号1及び/又は配列番号2の単離アミノ酸配列の1つ以上、又はその誘導体を含むコンジュゲート。
【請求項5】
配列番号3及び/又は配列番号1及び/又は配列番号2の前記アミノ酸配列の1つ以上、又はその誘導体が、可溶性ポリマー等のポリマー、又は好ましくは不溶性ポリマーに複合化されている、請求項4に記載のコンジュゲート。
【請求項6】
配列番号3及び/又は配列番号1及び/又は配列番号2の前記単離アミノ酸配列の1つ以上、又はその誘導体と、抗生物質とを含み、好ましくはデヒドロペプチダーゼ阻害剤又はβ−ラクタマーゼ阻害剤を更に含むパーツのキット。
【請求項7】
前記抗生物質がイミペネムであり、及び/又は前記デヒドロペプチダーゼ阻害剤若しくはβ−ラクタマーゼ阻害剤がシラスタチンである、請求項6に記載のパーツのキット。
【請求項8】
薬剤として使用される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の医薬組成物、請求項4若しくは5に記載のコンジュゲート、又は請求項6若しくは7に記載のパーツのキット。
【請求項9】
感染症、又は感染症に関連した炎症状態、又は感染病原体に由来する産物の存在に関連した炎症性疾患のヒトを含む哺乳類及び/又は非哺乳類における処置の治療法及び/又は予防法に使用される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の医薬組成物、請求項4若しくは5に記載のコンジュゲート、又は請求項6若しくは7に記載のパーツのキット。
【請求項10】
前記感染症が、微生物感染、好ましくは菌血症であり、及び/又は前記炎症状態が、全身性炎症反応症候群又は敗血症であり、及び/又は前記感染病原体が、細菌、真菌、ウイルス、寄生虫、及びそれらの組合せからなる群より選択される、請求項9に記載の使用のための医薬組成物、コンジュゲート、又はパーツのキット。
【請求項11】
水溶液から少なくとも1つの成分を選択的に結合及び分離するための装置であって、該装置が、配列番号3及び/又は配列番号1及び/又は配列番号2のアミノ酸配列の1つ以上、又はその誘導体を含み、好ましくは前記装置が配列番号3、配列番号1及び配列番号2のアミノ酸配列を含む、装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つの成分が、好ましくはLPS、LTA及びPGNからなる群より選択される、グラム−細菌及び/又はグラム+細菌の表面構造の化学成分である、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
水溶液から少なくとも1つの成分を除去する方法であって、
前記少なくとも1つの成分を含有する可能性がある水溶液を準備することと、
前記装置に含まれる1つ以上の前記アミノ酸配列への前記少なくとも1つの成分の結合をもたらす条件下で、前記水溶液を請求項11又は12に記載の装置に通して、前記水溶液から前記少なくとも1つの成分を除去することと、
を含む、方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの成分が、好ましくはLPS、LTA及びPGNからなる群より選択される、グラム−細菌及び/又はグラム+細菌の表面構造の化学成分である、及び/又は前記水溶液が、哺乳類、好ましくはヒト、及び/又は非哺乳類等の動物に由来する体液、好ましくは血液、血漿、血清若しくは他の適切な血液画分である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、哺乳類、好ましくはヒト、及び/又は非哺乳類等の動物に由来する体液、好ましくは血液、血漿、血清又は他の適切な血液画分から、LPS、LTA及び/又はPGN等のグラム−細菌及び/又はグラム+細菌の表面構造の少なくとも1つの化学成分の体外除去のためである、請求項13又は14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の分野に、特に感染症及びそれに関連する炎症状態の治療的及び/又は予防的処置に有用であるスカベンジャー様ヒトCD6リンパ球受容体の細菌結合ペプチド、並びに該ペプチドを含む装置に関する。
【背景技術】
【0002】
敗血症は、感染病原体、最も一般的には細菌であるが、同様に真菌、ウイルス又は寄生虫に対する宿主反応によって引き起こされる生命を脅かす状態である。敗血症は、感染によって引き起こされる調節不全の全身性炎症反応症候群(SIRS)とみなされ、重篤で持続的な炎症促進性状態を招く。免疫系がかかる反応を制御することができないために、多臓器機能不全(MOD)及び心血管虚脱(敗血症性ショック)となり、解決されないと、死に至る可能性がある(非特許文献1)。かかる機能不全性宿主炎症反応は、病原体関連分子パターン(PAMP)と称される微生物細胞壁上に存在する保存構造によって誘発される。PAMPは、微生物生理機能にとって必須化合物であり、それらの中には、グラム陰性(G−)菌由来のLPS、グラム陽性(G+)菌由来のリポテイコ酸(LTA)及びペプチドグリカン(PGN)、真菌由来のβ−グルカン及びマンナン、又はウイルス由来の一本鎖/二本鎖核酸がある(非特許文献2)。
【0003】
敗血症は、多くの原因に起因し得るが、通常は、自然発症した、又は外傷、手術、火傷の結果として、若しくは癌若しくはAIDS等の衰弱性状態により誘導される診断未確定及び/又は無処置の局部的感染(例えば、肺炎又は腹膜炎)によって誘発される。敗血症は通常、振戦、発熱、血圧低下(敗血症性ショック)、呼吸促迫、高心拍数、及び皮膚病変から始まる。敗血症は、数時間のうちに、血管での自然凝固、重症低血圧、多臓器不全、ショック、壊疸及び最終的には死を引き起こし得る。
【0004】
PAMPの検出は、免疫細胞上に存在する、生殖系列によりコードされ、クローン選択されず、非多型であるパターン認識受容体(PRR)によって達成される。PRRは、種々の構造タンパク質及び機能タンパク質受容体ファミリー(例えば、Toll様受容体、スカベンジャー受容体又はC型レクチン)に属し、病原体検出だけでなく、自然免疫反応及び適応免疫反応の会合及び調節にも寄与する(非特許文献3)。
【0005】
スカベンジャー受容体システインリッチスーパーファミリー(SRCR−SF)は、90〜110アミノ酸長のシステインリッチ球状ドメインの1回又は数回の反復の存在を特徴とするタンパク質受容体の古来より高度に保存された群である(非特許文献4)。哺乳類では、SRCR−SFの成員は、造血及び非造血由来細胞によって発現され、そこで、多重機能を示す。SRCR−SFの成員全てに関して統一した役割は見られないが、それらの幾つかが、PRRとして機能する。かかる群として、マクロファージ(SR−AI、MARCO、CD163及びSpα)、上皮(SCARA5、DMBT1、及びS5D−SRCRB)、又はリンパ球(CD5及びCD6)受容体が挙げられる(非特許文献5)。
【0006】
今日でも、敗血症、重症敗血症及び敗血症性ショックは、人口の高齢化の結果としての予測発生率の増加及び莫大な社会経済的負担、侵襲的医療処置の増加、多剤耐性(MDR)細菌の出現、並びに慢性疾患の有病率の増加を伴って、依然として臨床ニーズが満たされないままである(非特許文献6)。敗血症及び敗血症性ショックの全死亡率は、対症療法及び強力な広域スペクトル抗生物質の利用能の飛躍的な進歩にも関わらず、依然として高いままである(それぞれ、35%及び60%)。
【0007】
抗生物質は、敗血症の処置の欠かせない部分を構成するものであるが、特にMDR細菌の増加を考慮すると、重症敗血症及び敗血症性ショックと関係するMODに伴う死亡率を実質的に低減するにはおそらく不十分である。そのため、抗生物質及び対症療法の代替となる又はこれらを補完する、費用対効果の高い生物学的処置及び/又は医療用装置に関する緊急の革新的な開発が必要である。
【0008】
抗生物質に対する補助的療法/代替療法には、先天的防御機構の増強及び/又は敗血症の死亡率に関連する免疫細胞機能障害の逆転に取り組む宿主標的アプローチが含まれる(非特許文献1)。内因性宿主免疫成分による病原性微生物因子の中和は、かかるアプローチの1つである。この点で、スカベンジャー受容体システインリッチスーパーファミリー(SRCR−SF)の成員の幾つかは、グラム陰性(リポ多糖(LPS))又はグラム陽性(リポテイコ酸(LTA)、及びペプチドグリカン(PGN))の両方の細菌に由来するPAMPと相互作用する(非特許文献5)。
【0009】
細菌性PAMP結合特性を示すSRCR−SFのプロトタイプの成員は、SAG(Salivary Agglutinin)又はgp340としても知られるDMBT−1(Deleted in Malignant Brain Tumors-1)である(非特許文献7、非特許文献8)。DMBT−1/SAGは、14個のSRCR、1個の透明帯、及び2個のC1r/C1s Uegf Bmp1のドメインを含む可溶性糖タンパク質である。DMBT−1/SAGの細菌結合特性は、そのSRCRドメイン内で11−merのコンセンサスペプチド配列(DMBT−1/SAG.pbs1、GRVEVLYRGSW)に正確にマッピングされており、そのうち14個中13個に存在する9−merモチーフ(VEVLxxxxW)が同定された(非特許文献9)。
【0010】
細菌結合特性を有する他のSRCR−SFの成員としては、MARCO(非特許文献10)及びCD163(非特許文献11)についての細菌結合領域のみが機能的にマッピングされていた場合であっても、クラスAマクロファージスカベンジャー受容体I型(非特許文献12)、コラーゲン質構造を持つマクロファージ受容体(MARCO)(非特許文献10)、可溶性タンパク質α(Spα)(非特許文献13)、CD6(非特許文献14)、CD163(非特許文献11)、スカベンジャー受容体クラスAメンバー5(非特許文献15)、及び5つのドメインを持つ可溶性スカベンジャー受容体システインリッチグループBメンバー(非特許文献16、非特許文献17)が挙げられる。
【0011】
CD6は、SRCR−SFの別のリンパ球性の成員であるCD5に非常に相同的なリンパ球表面受容体である。これらの受容体はともに、共通の祖先遺伝子からの複製によって得られると考えられ(非特許文献18)、主にT細胞、及び自然抗体の産生に関与するB1a細胞サブセットによって発現される。CD6及びCD5は、3つのタンデムSRCRドメイン及びシグナル伝達に適した細胞質側末端(cytoplasmic tail)によって構成される類似した細胞外領域を共有する。実際に、CD6及びCD5は、T細胞受容体(TCR)複合体に物理的に結合され(非特許文献19)、T細胞発達及び活性化プロセスを調節するのにふさわしい役割を果たす(非特許文献20、非特許文献21)。LPS、LTA又はPGN等の細菌性PAMPへのrshCD6の結合は、同じPAMPに対するCD14の結合親和性と同様に、nM範囲のK親和性により生じる(非特許文献22、非特許文献23)。さらに、rshCD6は、LPS又はLTA/PGNによって誘発される炎症性サイトカイン(IL−1β、IL−6、TNF−α)の放出を下方調節する(非特許文献24)。
【0012】
ヒトCD6の組換え可溶性形態(rshCD6)の予防的注入は、G+細菌及びG−細菌のエンドトキシン(それぞれ、LTA+PGN、及びLPS)、MDR表現型(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、コリスチン耐性アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii))とは関係なく生きている細菌全体(黄色ブドウ球菌、アシネトバクター・バウマンニ)、並びに腹膜炎の単一微生物及び多微生物モデルによって誘導される敗血症性ショックのマウスモデルにおいて、死亡率及び炎症促進性サイトカイン(IL−1β、IL−6及びTNF−α)の血清レベルを著しく低減させる(非特許文献25、非特許文献24、非特許文献14)。
【0013】
特許文献1は、rshCD6の腹腔内(i.p.)投与により、マウスにおけるLPS誘導性敗血症性ショックによって引き起こされる致死効果が相殺されること、またCD6が、敗血症性ショック症候群及び感染症に関連した他の炎症性疾患の介入の治療可能性を有することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許第2143436号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Delano MJ and Ward PA, 2016, Sepsis-induced immune dysfunction: can immune therapies reduce mortality? J Clin Invest 126:23-31
【非特許文献2】Janeway CA and Medzhitov R, 2002, Innate immune recognition, Annu Rev Immunol 20:197-216
【非特許文献3】Palm NW and Medzhitov R, 2009, Pattern recognition receptors and control of adaptive immunity, Immunol Rev 227:221-33
【非特許文献4】Sarrias MR et al., 2004, The Scavenger Receptor Cysteine-Rich (SRCR) Domain: An Ancient and Highly Conserved Protein Module of the Innate Immune System, Crit Rev Immunol 24:1-38
【非特許文献5】Martinez VG et al., 2011, The conserved scavenger receptor cysteine-rich superfamily in therapy and diagnosis, Pharmacol Rev 63:967-1000
【非特許文献6】Okeke EB and Uzonna JE, 2016, In Search of a Cure for Sepsis: Taming the Monster in Critical Care Medicine, J Innate Immun 8:156-70
【非特許文献7】Ligtenberg AJM, et al., 2010, Deleted in malignant brain tumors-1 protein (DMBT1): a pattern recognition receptor with multiple binding sites, Int J Mol Sci 11:5212-33
【非特許文献8】Madsen J, et al., 2010, Gp-340/DMBT1 in mucosal innate immunity, Innate Immun 16:160-7
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【非特許文献16】Miro-Julia C, et al., 2011, Molecular and functional characterization of mouse S5D-SRCRB: a new group B member of the scavenger receptor cysteine-rich superfamily, J Immunol 186(4):2344-54
【非特許文献17】Bessa Pereira C, et al., 2016, The Scavenger Receptor SSc5D Physically Interacts with Bacteria through the SRCR-Containing N-Terminal Domain, Front Immunol 7:416
【非特許文献18】Lecomte O, et al., 1996, Molecular linkage of the mouse CD5 and CD6 genes, Immunogenetics 44:385-90
【非特許文献19】Gimferrer I, et al., 2004, Relevance of CD6-mediated interactions in T cell activation and proliferation, J Immunol 173:2262-70
【非特許文献20】Santos RF, et al., 2016, Tuning T Cell Activation: The Function of CD6 at the Immunological Synapse and in T Cell Responses, Curr Drug Targets 17:630-9
【非特許文献21】Soldevila G, et al., 2011, The immunomodulatory properties of the CD5 lymphocyte receptor in health and disease, Curr Opin Immunol 23:310-8
【非特許文献22】Dziarski R, et al., 1998, Binding of bacterial peptidoglycan to CD14, J Biol Chem 273:8680-90
【非特許文献23】Tobias PS, et al., 1995, Lipopolysaccharide binding protein-mediated complexation of lipopolysaccharide with soluble CD14, J Biol Chem 270:10482-8
【非特許文献24】Martinez-Florensa M, et al., 2014, Targeting of key pathogenic factors from gram-positive bacteria by the soluble ectodomain of the scavenger-like lymphocyte receptor CD6, J Infect Dis 209:1077-86
【非特許文献25】Martinez-Florensa M, et al., 2017, Effects of Human and Mouse Soluble Scavenger-Like CD6 Lymphocyte Receptor in a Lethal Model of Polymicrobial Sepsis, Antimicrob Agents Chemother 61:e01391-16
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、哺乳類組換えタンパク質の生産は、理想的には正しい折り畳み及び存在する場合には翻訳後修飾をタンパク質に与えなくてはならない、比較的複雑なプロセスである。該プロセスは、通常、哺乳類発現ベクターにおいて所望の遺伝子をクローニングすることと、哺乳類細胞系(例えば、CHO細胞)において組換え遺伝子を導入することと、クロマトグラフィー処理によってタンパク質を精製することとを含む。このプロセスには、生産効率が低い、及びコストが高い等の一定の制限がある。したがって、生産が容易であるためより安価で、敗血症等の感染症及びこれらの感染症に関連した炎症状態の予防及び治療に有効な化合物及び組成物を提供することが望ましいと思われる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本出願は、配列番号3及び/又は配列番号1及び/又は配列番号2を含む、或いはそれらのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体を開示する。
【0018】
本出願は、本発明のアミノ酸配列及び/又はペプチドを作製する方法を更に開示する。該方法は、固相ペプチド合成又は溶液中でのペプチド合成によって行われる。固相ペプチド合成は、
a)固相ペプチド合成工程と、
b)ポリマー支持体からペプチドを切断する工程と、
c)任意に、溶液中でペプチドをサイクリングする工程と、
d)保護基を除去する工程と、
を含むか、或いは、
i)固相ペプチド合成工程と、
ii)任意に、固相ペプチドのサイクリング工程と、
iii)ポリマー支持体からペプチドを切断し、同時に保護基を除去する工程と、
を含む。
【0019】
さらに、本出願は、本発明の1つ以上のアミノ酸配列を含む組成物を開示する。
【0020】
更なる実施の形態において、本出願は、本発明の組成物を、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とともに含む医薬組成物を開示する。
【0021】
更なる実施の形態において、本出願は、本発明のアミノ酸配列を含むコンジュゲート、好ましくは本発明の1つ以上のアミノ酸配列が担体、好ましくは不溶性担体、より好ましくは不溶性ポリマーに複合化されている(好ましくは共有結合している)コンジュゲートを開示する。
【0022】
更なる実施の形態において、本出願は、本発明の1つ以上のアミノ酸配列と、抗生物質、好ましくはイミペネムとを含むパーツのキット(kit-of-parts)を開示する。
【0023】
本出願は、さらに、薬剤として使用される、特に、感染症、又は感染症に関連した炎症状態、又は感染病原体に由来する産物の存在に関連した炎症性疾患のヒトを含む哺乳類における処置の治療法及び/又は予防法に使用される、本発明の1つ以上のアミノ酸配列、本発明の組成物、又は本発明のパーツのキットを提供する。
【0024】
さらに、水溶液から少なくとも1つの成分を選択的に結合及び分離するための装置であって、本発明の1つ以上のアミノ酸配列を含む、装置が提供される。
【0025】
また、本出願は、水溶液から少なくとも1つの成分を除去する方法であって、
前記少なくとも1つの成分を含有する可能性がある水溶液を準備することと、
前記装置に含まれる1つ以上の前記アミノ酸配列への前記少なくとも1つの成分の結合をもたらす条件下で、前記水溶液を本発明の装置に通して、前記水溶液から前記少なくとも1つの成分を除去することと、
を含む、方法を開示する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】CD6ペプチドの構造上の特徴及びアミノ酸保存を示す図である。(A)分析したCD5、CD6及びDMBT−1のペプチド及びタンパク質のアミノ酸配列、分子量(M.W.)及び等電点(PI)。(B)研究中のCD6ペプチドの相対位置を示すヒトCD6の細胞外領域の3次元表面表示(濃い灰色で着色)。(C)霊長類(ホモ・サピエンス(Homo sapiens)、アカゲザル(Macaca mulatta)、キタホオジロテナガザル(Nomascus Leucogenys)、チンパンジー(Pan troglodytes)、フィリピンメガネザル(Tarsius syrichta))、齧歯類(ハツカネズミ(Mus musculus)、ドブネズミ(Rattus norvegicus)、アナウサギ(Oryctolagus cuniculus)、ゴールデンハムスター(Mesocricetus auratus))、魚類(ポエキリオプシス・プロリフィカ(Poeciliopsis prolifica)、タイセイヨウサケ(Salmo salar))、ウシ(ボス・タウルス(Bos Taurus))、ブタ(イノシシ(Sus scrofa))、及び爬虫類(アメリカアリゲーター(Alligator mississippiensis))の種からの研究中のCD6由来ペプチドのアミノ酸配列アライメント。アミノ酸同一性を灰色で強調している。
図2】CD6由来ペプチドの細菌凝集特性を示す図である。漸増濃度(5μg/mL、50μg/mL及び200μg/mL)の指定のCD6(PD1、PD2及びPD3)、DMBT−1(pbs1;C+)及びCD5(PD2;C−)由来のペプチドを、TTCバッファー(50mM Tris(pH7.5)+150mM NaCl、0.1%Tween 20及び1mM Ca2+)中の生きた細菌細胞懸濁液(75×10CFU/mL)の入った96ウェルU底プレートにおいて室温で2時間インキュベートした。細菌凝集を、−、+/−、+、++又は+++として2名の独立した観察者によってスコアを付け、一致した意見を得た(consensed)。(A)グラム陰性(多剤耐性アシネトバクター・バウマンニ臨床分離株;エンテロバクター・クロアカエATCC 23355;大腸菌ATCC 25922;クレブシエラ・ニューモニエATCC 13883;リステリア・モノサイトゲネスATCC 19111;シュードモナス・エルギノーサATCC 27853)、及びグラム陽性(黄色ブドウ球菌ATCC 25923;メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)臨床分離株)の細菌株の指定のパネルを用いて得られた凝集結果の概要。(B)MRSA臨床分離株について得られた代表的な凝集結果。
図3】グラム−及びグラム+起源に由来する固定化PAMPへのビオチン標識CD6由来ペプチドの結合を示す図である。大腸菌O111:B4 LPS(A)又は黄色ブドウ球菌LTA(B)(PBS中それぞれ5μg/mL)で感作した96ウェルELISAプレートに、漸増濃度(5μg/mL〜20μg/mL)のビオチン標識CD6(PD1、PD2、PD3及びcons)、DMBT1(pbs1)、及びCD5(PD1)に由来するペプチドを添加した。4℃での一晩のインキュベーションに続いて、結合したペプチド又はタンパク質を、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)標識ストレプトアビジン及び3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)基質の添加によって発色させ、更にOD405nm〜620nmで読み取った。結果は、3回行ったうちの代表的な実験の1つによる2回の実験(duplicates)の平均±SDとして表される。統計学的分析を、2元配置分散分析(、P<0.05;**、P<0.01;***、P<0.001)により行った。
図4】LPS及びLTAのCD6由来のペプチド及びタンパク質との相互作用のK分析を示す図である。トリプトファン残基の蛍光発光によって決定されるLPS及びLTAへの研究中のペプチド及びタンパク質の結合に関する見かけのK値を示す。ペプチド/タンパク質(10μg/mL)を、PBS中のRe−LPS又はLTAの濃度を漸増させて、又は漸増させずに滴定した。ペプチドサンプル(Re−LPS又はLTAのいずれかの有無)及びブランクサンプル(Re−LPS又はLTAを単独で)を295nmで励起させ、発光スペクトルを300nm〜400nmで記録した。結果は、Re−LPS又はLTAのいずれかの存在及び不在下で、発光最大値(ペプチドでは353nm、rshCD6タンパク質では337nm)の波長におけるペプチド蛍光の変化(ΔF)で表される。結果は、3回の実験の平均±SDである。353nmでのペプチド蛍光変化をヒルの式に当てはめた。
図5】溶液中のCD6由来ペプチドの流体力学的サイズの解析を示す図である。PBS中のCD6(PD1、PD2、PD3及びPcons)及びDMBT−1/SAG(pbs1)由来のペプチド(10μg/mL)の流体力学的径の動的光散乱(DLS)分析を示す。y軸は、散乱光の相対強度を表し、x軸は、溶液中に存在する粒子の流体力学的径を表す。4回行ったうちの代表的な実験を1つ示す(左)。各ペプチドで得られた数値も示す(右)。
図6】マウス脾細胞によるin vitroでのLPS誘導性サイトカイン放出に対するCD6由来ペプチドの効果を示す図である。C57BL/6マウス(n=7)からの全脾臓細胞懸濁液(2×10)を、漸増濃度(0.5μg/mL、5μg/mL及び20μg/mL)のCD6由来ペプチド(PD1、PD2、PD3及びPcons)の存在又は不在下で、LPS(0.5μg/mL)で48時間に亘り、3回刺激した。培養上清中のサイトカインレベルをELISAによって決定し、結果を3回の実験の平均±SDとしてpg/mLで表した。生存率は、全ての実験条件で48時間において75%超であった。統計学的分析を、95%信頼区間で両側マンホイットニー検定を使用して行った(、P<0.05;**、P<0.01;***、P<0.001)。
図7】盲腸結紮穿孔(CLP)誘導性敗血症後のマウス生存に対するi.v.注入されたCD6由来ペプチドの比較治療効果を示す図である。(A、B)CLP誘導後+1時間において、生理食塩水(n=25)又は単回の6mg/kg用量の標識されていないCD6(PD1、n=8;PD2、n=16;PD3、n=15;Pcons、n=12)又はDMBT1(pbs1、n=13)に由来するペプチドをC57BL/6Jマウスにi.v.注入した。シャム群(n=3)を含んだ。いずれも場合も、平均パーセント生存を各群について経時的に分析し、ログランクt検定を用いて生理食塩水処置群と比較した(、P<0.05;**、P<0.01;**、P<0.001)。
図8】CLP誘導性敗血症後のマウス生存に対するCD6.PD3注入の用量依存性、時間依存性及び経路依存性の効果を示す図である。(A)CLP後+1時間において、生理食塩水(n=26)又は単回の漸増用量(3mg/kg、n=13;6mg/kg、n=15、及び12mg/kg、n=8)のCD6.PD3ペプチドをC57BL/6マウスにi.v.注入した。(B)CLP後の異なる時期(+1時間、n=5;+3時間、n=5;+6時間、n=6)に、生理食塩水(n=4)又は6mg/kgのCD6.PD3をC57BL/6マウスにi.v.注入した。(C)CLP後+1時間において、C57BL/6Jマウスにi.v.(n=11)又はi.p.(n=9)で6mg/kgのCD6.PD3ペプチド又は生理食塩水(n=9)を注入した。いずれも場合も、生存率の平均パーセントを経時的に分析し、ログランクt検定を用いて生理食塩水処置群と比較した(n.s.、有意ではない;、P<0.05;**、P<0.01;***、P<0.001)。
図9】CLP誘導性敗血症後のサイトカイン及び細菌負荷レベルに対するCD6.PD3注入の治療効果を示す図である。(A)CLP後+1時間において、生理食塩水(n=7)又はCD6.PD3ペプチド(6mg/kg;n=9)をC57BL/6Jマウスにi.v.注入し、その後、ELISAによって異なる時点(4時間及び20時間)でサイトカイン血漿濃度をモニタリングした。データを平均±SDで表す。(B)CLP誘導後20時間に、(A)と同じマウス群を血液及び脾臓の細菌負荷についてモニタリングした。データを、CFU/mg(脾臓)又はCFU/μL(血液)の平均±SDで表す。いずれも場合も、両側スチューデントt検定を使用して統計学的差異を評価した(、P<0.05)。
図10】CLP誘導性敗血症後のマウス生存に対するCD6.PD3+イミペネム/シラスタチンの併用投与の相加効果を示す図である。CLP後+1時間において、生理食塩水(n=36)、CD6.PD3(6mg/kg i.v.;n=25)、イミペネム/シラスタチン(I/C、50mg/kg/12時間 i.p.;n=9)又は後者2つの組合せ(I/C+PD3、n=11)をC57BL/6Jマウスに治療的に注入した。全ての場合において、平均パーセント生存を各群について経時的に分析し、ログランクt検定を用いてI/C+CD6.PD3群と比較した(**、P<0.02;***、P<0.002)。
図11】固定化されたCD6由来のペプチド及びタンパク質に対するエンドトキシン吸着アッセイを示す図である。異なるCD6由来ペプチド(PD2、PD3及びPcons)(A)又はタンパク質(rshCD5及びrshCD6)(B)でコーティングされたEupergit(商標)ビーズを、50UI/mLのエンドトキシン溶液とともに異なる期間(0分、30分、90分及び150分)インキュベートした。次いで、上清のカブトガニ血球抽出物活性化活性(LAL活性)を時間に沿ってモニタリングし、OD405nm〜620nmを示す。ヒト血清アルブミン(HSA)でコーティングしたビーズを陰性対照として使用した。独立して2回行った実験からの代表的な3回の実験を示す。95%信頼区間で対応のある両側T検定を用いて統計学的解析を行った(***、P<0.001)。
【発明を実施するための形態】
【0027】
アミノ酸配列及びペプチド
第1の態様において、本発明は、
CD6.PD1:GTVEVRLEASW(配列番号1);
CD6.PD2:GRVEMLEHGEW(配列番号2);及び、
CD6.PD3:GQVEVHFRGVW(配列番号3);
の1つ以上の配列(「本発明のアミノ酸配列」)又はその誘導体を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列を提供する。
【0028】
好ましくは、本発明は、
CD6.PD1:GTVEVRLEASW(配列番号1);
CD6.PD2:GRVEMLEHGEW(配列番号2);及び、
CD6.PD3:GQVEVHFRGVW(配列番号3);
の1つ以上のペプチド(「本発明のペプチド」)又はその誘導体を提供する。
【0029】
好ましい実施形態において、本発明は、GQVEVHFRGVW(配列番号3、CD6.PD3)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体を提供する。好ましい実施形態において、本発明はCD6.PD3ペプチド(GQVEVHFRGVW、配列番号3)、又はその誘導体を提供する。
【0030】
更なる実施形態において、本発明は、GTVEVRLEASW(配列番号1、CD6.PD1)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体を提供する。好ましい実施形態において、本発明はCD6.PD1ペプチド(GTVEVRLEASW、配列番号1)、又はその誘導体を提供する。
【0031】
更なる実施形態において、本発明は、GRVEMLEHGEW(配列番号2、CD6.PD2)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体を提供する。好ましい実施形態において、本発明はCD6.PD2ペプチド(GRVEMLEHGEW、配列番号2)、又はその誘導体を提供する。
【0032】
これらのペプチドは、ヒトCD6の細胞外SRCRドメインの保存された短い11−merペプチドマッピングである。CD6のエクトドメインは、3つのSRCRドメイン、介在配列及びストーク領域で構成されている。
【0033】
本発明は、ペプチドCD6.PD1(配列番号1)、CD6.PD2(配列番号2)及び/又はCD6.PD3(配列番号3)を含むアミノ酸配列を更に提供する。アミノ酸配列は線形であってもよく、又は環状であってもよい。好ましくは、アミノ酸配列は、ヒトCD6のエクトドメイン内に含まれる。好ましい実施形態において、アミノ酸配列は配列番号4内に含まれる。特定の実施形態において、線形又は環状のアミノ酸配列は、ペプチドCD6.PD1(配列番号1)、CD6.PD2(配列番号2)又はCD6.PD3(配列番号3)を含む12個〜17個の隣接するアミノ酸を含み、好ましくは配列番号4内に含まれる。好ましいアミノ酸配列の例としては、限定されるものではないが、CSGTVEVRLEASWEPAC(配列番号13)、SGTVEVRLEASWEPA(配列番号14)、SGTVEVRLEASWEP(配列番号15)、SGTVEVRLEASWE(配列番号16)、SGTVEVRLEASW(配列番号17)、GTVEVRLEASWEPA(配列番号18)、GTVEVRLEASWEP(配列番号19)、GTVEVRLEASWE(配列番号20)、CAGRVEMLEHGEWGSVC(配列番号21)、AGRVEMLEHGEWGSV(配列番号22)、AGRVEMLEHGEWGS(配列番号23)、AGRVEMLEHGEWG(配列番号24)、AGRVEMLEHGEW(配列番号25)、GRVEMLEHGEWGSV(配列番号26)、GRVEMLEHGEWGS(配列番号27)、GRVEMLEHGEWG(配列番号28)、CEGQVEVHFRGVWNTVC(配列番号29)、EGQVEVHFRGVWNTV(配列番号30)、EGQVEVHFRGVWNT(配列番号31)、EGQVEVHFRGVWN(配列番号32)、EGQVEVHFRGVW(配列番号33)、GQVEVHFRGVWNTV(配列番号34)、GQVEVHFRGVWNT(配列番号35)、GQVEVHFRGVWN(配列番号36)が挙げられる。
【0034】
本明細書で使用する場合、「本発明のアミノ酸配列又はペプチドの誘導体」という表現は、生物学的機能を果たすことが可能な本発明のアミノ酸配列又はペプチドの任意の誘導体、例えば、グラム陰性(G−)の細菌間に広く分布するPAMP(例えばLPS)及びグラム陽性(G+)の細菌間に広く分布するPAMP(例えばLTA)に結合することができる本発明のアミノ酸配列又はペプチドの任意の誘導体を含む。本発明のアミノ酸配列及びペプチドは、所与の配列の修飾を含み得る。かかる修飾は、当業者によく知られている。タンパク質分解に対する耐性が高いペプチドを生成するためのアミノ酸残基内のC原子からN原子への置換基の移動、及びその他の修飾が知られており、本発明の範囲に含まれる。例えば、安定性を高めるため、本発明のアミノ酸配列及びペプチド中の1つ以上のL−アミノ酸をD−アミノ酸に置き換えてもよい。例えば、本発明のペプチド及び/又はアミノ酸配列のN−アシル化及び/又はC−アミド化若しくはC−エステル化は、タンパク質分解に対する耐性を高める可能性がある。例えば、本発明の1つ以上のアミノ酸配列及び/又はペプチドの環化は、それらの安定性及び透過性を高める可能性がある。例えば、本発明のアミノ酸配列及び/又はペプチド中の1つ以上のアミノ酸は、それらの安定性を改善するために、N−アルキル化(一般にN−メチル化)されてもよい。例えば、本発明の1つ以上のアミノ酸配列及び/又はペプチドは、安定性を改善し及び/又は腎クリアランスを減少させるため、1つ以上の高分子(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、アルブミン)に複合化されてもよい。例えば、本発明のアミノ酸配列及びペプチドは、固相(例えば、ポリプロピレンビーズ)に更に共有結合するために、Cys残基でキャップされたN末端又はC末端を含んでもよい。
【0035】
配列番号4は、ヒトCD6の成熟(完全にプロセシングされた)可溶性アイソフォームに相当する。ヒトCD6受容体の配列は、受託番号P30203で同定されるものである(CD6_HUMAN、最終更新日2009年12月15日。UniProtKB/Swiss−Protデータベースのバージョン3)。この配列は、膜結合アイソフォームにおける受容体に相当する。CD6の可溶性アイソフォームがまた、タンパク質分解的切断によって生成されるかどうかは、完全にはまだ決定されていない。配列番号4は、膜貫通領域に先行するストーク領域における停止コドンの付加によって得られる。
【0036】
配列番号4
DQLNTSSAESELWEPGERLPVRLTNGSSSCSGTVEVRLEASWEPACGALWDSRAAEAVCRALGCGGAEAASQLAPPTPELPPPPAAGNTSVAANATLAGAPALLCSGAEWRLCEVVEHACRSDGRRARVTCAENRALRLVDGGGACAGRVEMLEHGEWGSVCDDTWDLEDAHVVCRQLGCGWAVQALPGLHFTPGRGPIHRDQVNCSGAEAYLWDCPGLPGQHYCGHKEDAGVVCSEHQSWRLTGGADRCEGQVEVHFRGVWNTVCDSEWYPSEAKVLCQSLGCGTAVERPKGLPHSLSGRMYYSCNGEELTLSNCSWRFNNSNLCSQSLAARVLCSASRSLHNLSTPEVPASVQTVTIESSVTVKIENKESR
【0037】
配列番号4は、配列番号5を含むヌクレオチド配列の転写及び翻訳によって生じる。
【0038】
配列番号5
gaccagctca acaccagcag tgcagagagt gagctctggg agccagggga gcggcttccg
gtccgtctga caaacgggag cagcagctgc agcgggacgg tggaggtgcg gctcgaggcg
tcctgggagc ccgcgtgcgg ggcgctctgg gacagccgcg ccgccgaggc cgtgtgccga
gcactgggct gcggcggggc ggaggccgcc tctcagctcg ccccgccgac ccctgagctg
ccgcccccgc ctgcagccgg gaacaccagc gtagcagcta atgccactct ggccggggcg
cccgccctcc tgtgcagcgg cgccgagtgg cggctctgcg aggtggtgga gcacgcgtgc
cgcagcgacg ggaggcgggc ccgtgtcacc tgtgcagaga accgcgcgct gcgcctggtg
gacggtggcg gcgcctgcgc cggccgcgtg gagatgctgg agcatggcga gtggggatca
gtgtgcgatg acacttggga cctggaggac gcccacgtgg tgtgcaggca actgggctgc
ggctgggcag tccaggccct gcccggcttg cacttcacgc ccggccgcgg gcctatccac
cgggaccagg tgaactgctc gggggccgaa gcttacctgt gggactgccc ggggctgcca
ggacagcact actgcggcca caaagaggac gcgggcgtgg tgtgctcaga gcaccagtcc
tggcgcctga cagggggcgc tgaccgctgc gaggggcagg tggaggtaca cttccgaggg
gtctggaaca cagtgtgtga cagtgagtgg tacccatcgg aggccaaggt gctctgccag
tccttgggct gtggaactgc ggttgagagg cccaaggggc tgccccactc cttgtccggc
aggatgtact actcatgcaa tggggaggag ctcaccctct ccaactgctc ctggcggttc
aacaactcca acctctgcag ccagtcgctg gcagccaggg tcctctgctc agcttcccgg
agtttgcaca atctgtccac tcccgaagtc cctgcaagtg ttcagacagt cactatagaa
tcttctgtga cagtgaaaat agagaacaag gaatctcggt ag
【0039】
CD6.PD1(本明細書では「PD1」又は「P1」とも称される)、CD6.PD2(本明細書では「PD2」又は「P2」とも称される)及びCD6.PD3(本明細書では「PD3」又は「P3」とも称される)は、グラム陰性(G−)の細菌間で広く分布しているPAMP(例えばLPS)及びグラム陽性(G+)の細菌間で広く分布しているPAMP(例えば、LTA)を結合することができる(例えば、図3を参照されたい)。それらはまた、高い細菌凝集特性を示す。特に、PD1及びPD2は、Re−LPS及びLTAに対する非常に高い親和性を示す(例えば、図4を参照されたい)。CD6.PD3は、多微生物敗血症を受けているマウスの生存を用量依存的及び時間依存的に改善する(図7図8及び図9を参照されたい)。抗生物質イミペネム/シラスタチンを組み合わせると、このペプチドは更に良好に作用し(例えば、図10を参照されたい)、敗血症マウスに対する相加的な生存効果を示す。
【0040】
本発明のアミノ酸配列及びペプチド、又はその誘導体(CD6.PD1、CD6.PD2及びCD6.PD3)を製造するために当該技術分野において一般的に使用される任意の方法を採用することができる。例えば、固相ペプチド合成(Albericio F and Kates SA, 2000, Solid-Phase Synthesis: A Practical Guide, CRC Press, ISBN 9780824703592)によってそれらを製造することができる。
【0041】
本発明の化合物(上述するように、アミノ酸配列及びペプチド、並びにその誘導体)、それらの立体異性体又はそれらの薬学的に許容可能な塩を、技術水準において知られている従来の方法に従って合成することができる。本発明の実施形態において、化合物は液相又は固相のペプチド合成法によって合成される。
【0042】
固相合成法は、例えば[Stewart J.M. and Young J.D., 1984, "Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd edition" Pierce Chemical Company, Rockford, Illinois、Bodanzsky M., and Bodanzsky A., 1984 "The practice of Peptide Synthesis" Springer Verlag, New Cork、Lloyd-Williams P., Albericio F. and Giralt E. (1997) "Chemical Approaches to the Synthesis of Peptides and Proteins" CRC, Boca Raton, FL, USA]に記載されている。液相合成法、及び液相合成法と固相合成法との組合せ、又は酵素合成は[Kullmann W. et al., J.Biol.Chem., 1980, 255, 8234-8238]に記載されている。
【0043】
本発明の実施形態において、本発明の化合物(上述するように、アミノ酸配列及びペプチド、並びにその誘導体)は、
a)固相ペプチド合成の工程と、
b)好ましくは酸処理によってポリマー支持体からペプチドを切断する工程と、
c)任意に、溶液中のペプチドをサイクリングする工程と、
d)必要に応じて、好ましくはトリフルオロ酢酸で保護基を除去する工程と、
を含むか、或いは
i)固相ペプチド合成の工程と、
ii)任意に、固相ペプチドサイクリングの工程と、
iii)ポリマー支持体からペプチドを切断し、必要に応じて、同時に好ましくはトリフルオロ酢酸で処理することにより保護基を除去する工程と、
を含む方法によって調製される。
【0044】
好ましくは、C末端は固体の支持体に結合され、このプロセスは固相で進められることから、N末端がフリーでC末端がポリマー支持体に結合しているアミノ酸上に、N末端が保護されておりC末端がフリーのアミノ酸を連結することと、N末端から保護基を除去することと、そして必要な回数だけこの順序を繰り返して標的ペプチド配列を得た後、最後に元のポリマー支持体から合成されたペプチドを切断することとを含む。アミノ酸側鎖の官能基は、合成を通して一時的に又は永続的に保護基で適切に保護されたままであり、ポリマー支持体からペプチドを切断するプロセスと同時に又はオルソゴナルに(orthogonally)脱保護することができる。
【0045】
或いは、固相合成を、ポリマー支持体上のペプチドフラグメント又は先にポリマー支持体に結合されているペプチドフラグメントを連結することにより、収束戦略によって行うことができる。収束合成戦略は、当業者に良く知られており、Tetrahedron 1993, 49, 11065-11133においてLloyd-Williams P. et al.が記載している。
【0046】
このプロセスは、当該技術分野で知られている標準的なプロセス及び条件を用いて、決まっていない(indistinct)順序で、N末端及びC末端を脱保護する及び/又はポリマーの支持体からペプチドを切断する追加の工程を含む場合があり、この後に、上記末端の官能基を修飾することができる。N末端及びC末端の任意の修飾は、式(I)のペプチドをポリマー支持体に固定したまま、又はポリマー支持体からペプチドが切断された後に行うことができる。
【0047】
「保護基」という用語は、有機官能基をブロックし、制御された条件下で除去することができる基を指す。保護基、それらの相対的な反応性、及びそれらが不活性のまま保たれる条件は、当業者に知られている。
【0048】
アミノ基に対する代表的な保護基の例は、とりわけ、酢酸アミド、安息香酸アミド、ピバリン酸アミド等のアミド;ベンジルオキシカルボニル(Cbz又はZ)、2−クロロベンジル(ClZ)、パラ−ニトロベンジルオキシカルボニル(pNZ)、tert−ブチルオキシカルボニル(Boc)、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル(Troc)、2−(トリメチルシリル)エトキシカルボニル(Teoc)、9−フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)又はアリルオキシカルボニル(Alloc)、トリチル(Trt)、メトキシトリチル(Mtt)、2,4−ジニトロフェニル(Dnp)、N−[1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキサ−1−イリデン)エチル](Dde)、1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソ−シクロヘキシリデン)−3−メチル−ブチル(ivDde)、1−(1−アダマンチル)−1−メチルエトキシ−カルボニル(Adpoc)であり、好ましくはBoc又はFmocである。
【0049】
カルボキシル基に対する代表的な保護基の例は、とりわけ、tert−ブチル(tBu)エステル、アリル(All)エステル、トリフェニルメチルエステル(トリチルエステル、Trt)、シクロヘキシル(cHx)エステル、ベンジル(Bzl)エステル、オルト−ニトロベンジルエステル、パラ−ニトロベンジルエステル、パラ−メトキシベンジルエステル、トリメチルシリルエチルエステル、2−フェニルイソプロピルエステル、フルオレニルメチル(Fm)エステル、4−(N−[1−(4,4−ジメチル−2,6−ジオキソシクロヘキシリデン)−3−メチルブチル]アミノ)ベンジル(Dmab)エステルであり、本発明の好ましい保護基は、All、tBu、cHex、Bzl及びTrtのエステルである。
【0050】
三官能性アミノ酸を、N末端及びC末端の保護基にオルソゴナルな一時的又は永続的な保護基を用いて合成プロセス中に保護することができる。上記のアミノ基保護基はリジン側鎖のアミノ基を保護するために使用され、トリプトファン側鎖は上記のアミノ基保護基のいずれかで保護することができ又は保護されなくてもよく、セリン及びスレオニンの側鎖はtert−ブチル(tBu)エステルで保護され、システイン側鎖はトリチル及びアセトアミドメチルからなる基より選択される保護基で保護され、アスパラギン側鎖はメトキシトリチル、トリチル及びキサンチルからなる群より選択される保護基で保護することができ又は保護されなくてもよい。本発明の好ましい三官能性アミノ酸保護基は、セリン側鎖及びスレオニン側鎖ではtBuエステルであり、リジン側鎖ではBocであり、システイン側鎖ではTrtであり、N末端の一時的な保護基としてはFmoc又はBocである。これら及び他の追加の保護基の例、それらの導入及び除去は、文献[Greene T.W. and Wuts P.G.M., (1999) "Protective groups in organic synthesis" John Wiley & Sons, New York、Atherton B. and Sheppard R.C. (1989) "Solid Phase Peptide Synthesis: A practical approach" IRL Oxford University Press]に記載されている。「保護基」という用語は、固相合成に使用されるポリマー支持体も含む。
【0051】
合成を部分的又は完全に固相で行う場合、ポリスチレン、ポリスチレン支持体にグラフトされたポリエチレングリコール等を本発明の方法で使用される固体支持体として言及することができ、非限定的な例として、p−メチルベンズヒドリルアミン(MBHA)樹脂[Matsueda G.R. et al., Peptides 1981, 2, 45-50]、2−クロロトリチル樹脂[Barlos K. et al. 1989 Tetrahedron Lett. 30:3943-3946、Barlos K. et al., 1989 Tetrahedron Lett. 30, 3947-3951]、TentaGel(商標)樹脂(Rapp Polymere GmbH)、ChemMatrix(商標)樹脂(Matrix Innovation, Inc)等があり、これらは5−(4−アミノメチル−3,5−ジメトキシフェノキシ)吉草酸(PAL)[Albericio F. et al., 1990, J. Org. Chem. 55, 3730-3743]、2−[4−アミノメチル−(2,4−ジメトキシフェニル)]フェノキシ酢酸(AM)[Rink H., 1987, Tetrahedron Lett. 28, 3787-3790]、Wang[Wang S.S., 1973, J. Am. Chem. Soc. 95, 1328-1333]等(半保護ペプチドを切断し、液相又は固相サイクリング中の脱保護工程により溶液中で環(cycle)を形成し、続いてペプチドを脱保護し、同時に切断することを可能にする)の不安定なリンカーを含んでもよく又は含まなくてもよい。
【0052】
組合せ
第2の態様において、本発明は、本発明の1つ以上のアミノ酸配列若しくはペプチド、又はその誘導体と、少なくとも1つの抗生物質とを含む組合せを提供する。好ましくは、抗生物質はβ−ラクタム系抗生物質、より好ましくはイミペネムである。好ましい実施形態において、組合せはデヒドロペプチダーゼ阻害剤又はβ−ラクタマーゼ阻害剤等の酵素阻害剤、より好ましくはシラスタチンを更に含む。更に好ましくは、組合せはイミペネム及びシラスタチンを含む。
【0053】
本発明の組合せにおいて他の抗生物質を使用することができる。他のβ−ラクタム系抗生物質の例は、メロペネム、エルタペネム、ドリペネム等のカルバペネム、アモキシシリン、アンピシリン、プロピシリン、オキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、ピペラシリン等のペニシリンである。他のクラスの抗生物質の例としては、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、ネチルマイシン、アミカシン等のアミノグリコシド;テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、リメサイクリン、メクロサイクリン、メタサイクリン、ミノサイクリン、ロリトテトラサイクリン等のテトラサイクリン、並びにフルメキン(Flubactin)、オキソリン酸(Uroxin)、ロソキサシン(Eradacil)、シプロフロキサシン(Zoxan、Ciprobay、Cipro、Ciproxin)、フレロキサシン(Megalone、Roquinol)、ロメフロキサシン(Maxaquin)、ナジフロキサシン(Acuatim、Nadoxin、Nadixa)、ノルフロキサシン(Lexinor、Noroxin、Quinabic、Janacin)、オフロキサシン(Floxin、Oxaldin、Tarivid)、ペフロキサシン(Peflacine)、ルフロキサシン(Uroflox)、バロフロキサシン(Baloxin)、グレパフロキサシン(Raxar)、レボフロキサシン(Cravit、Levaquin)、パズフロキサシン(Pasil、Pazucross)、スパルフロキサシン(Zagam)、テマフロキサシン(Omniflox)、クリナフロキサシン、ガチフロキサシン(Zigat、Tequin)(Zymar−opth.)、モキシフロキサシン(Avelox、Vigamox)、シタフロキサシン(Gracevit)、プルリフロキサシン(Quisnon)及びベシフロキサシン(Besivance)が挙げられ、好ましくはフルオロキノロンである。とりわけバンコマイシン、テイコプラニン若しくはテラバンシン等のグリコペプチド系抗生物質、又はエリスロマイシン、スピラマイシン、ロキシスロマイシン、クラリスロマイシン若しくはアジスロマイシン等のマクロライド系抗生物質も企図される。
【0054】
組合せはまた、クラブラン酸、スルバクタム、テビペネム、6−メチリデンペネム2、タゾバクタム、アビバクタム又はレレバクタム(relebactam)等の他のβ−ラクタマーゼ阻害剤を含むこともできる。
【0055】
β−ラクタム系抗生物質及びβ−ラクタマーゼ阻害剤の一般的な組合せは、例えば、アンピシリン/スルバクタム、アモキシシリン/クラブラン酸、又はピペラシリン/タゾバクタムである。
【0056】
好ましい実施形態において、本発明の組合せは、CD6.PD3(GQVEVHFRGVW、配列番号3)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体と、少なくとも1つの抗生物質、好ましくはイミペネムとを含み、また好ましくはデヒドロペプチダーゼ阻害剤又はβ−ラクタマーゼ阻害剤等の酵素阻害剤、より好ましくはシラスタチンも含む。
【0057】
別の実施形態において、本発明の組合せは、CD6.PD1(GTVEVRLEASW、配列番号1)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体と、少なくとも1つの抗生物質、好ましくはイミペネムとを含み、また好ましくはデヒドロペプチダーゼ阻害剤又はβ−ラクタマーゼ阻害剤等の酵素阻害剤、より好ましくはシラスタチンも含む。
【0058】
更なる実施形態において、本発明の組合せは、CD6.PD2(GRVEMLEHGEW、配列番号2)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体と、少なくとも1つの抗生物質、好ましくはイミペネムとを含み、また好ましくはデヒドロペプチダーゼ阻害剤又はβ−ラクタマーゼ阻害剤等の酵素阻害剤、より好ましくはシラスタチンも含む。
【0059】
更なる実施形態において、本発明の組合せは、CD6.PD2(GRVEMLEHGEW、配列番号2)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体と、CD6.PD1(GTVEVRLEASW、配列番号1)を含む或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体と、少なくとも1つの抗生物質、好ましくはイミペネムとを含み、また好ましくはデヒドロペプチダーゼ阻害剤又はβ−ラクタマーゼ阻害剤等の酵素阻害剤、より好ましくはシラスタチンも含む。
【0060】
更なる実施形態において、本発明の組合せは、CD6.PD3(GQVEVHFRGVW、配列番号3)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体と、CD6.PD1(GTVEVRLEASW、配列番号1)を含む或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体と、少なくとも1つの抗生物質、好ましくはイミペネムとを含み、また好ましくはデヒドロペプチダーゼ阻害剤又はβ−ラクタマーゼ阻害剤等の酵素阻害剤、より好ましくはシラスタチンも含む。
【0061】
更なる実施形態において、本発明の組合せは、CD6.PD3(GQVEVHFRGVW、配列番号3)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体と、CD6.PD2(GRVEMLEHGEW、配列番号2)を含む或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体と、少なくとも1つの抗生物質、好ましくはイミペネムとを含み、また好ましくはデヒドロペプチダーゼ阻害剤又はβ−ラクタマーゼ阻害剤等の酵素阻害剤、より好ましくはシラスタチンも含む。
【0062】
更なる実施形態において、本発明の組合せは、CD6.PD3(GQVEVHFRGVW、配列番号3)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体と、CD6.PD2(GRVEMLEHGEW、配列番号2)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体と、CD6.PD1(GTVEVRLEASW、配列番号1)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体と、少なくとも1つの抗生物質、好ましくはイミペネムとを含み、また好ましくはデヒドロペプチダーゼ阻害剤又はβ−ラクタマーゼ阻害剤等の酵素阻害剤、より好ましくはシラスタチンも含む。
【0063】
組成物
第3の態様では、本発明は、本発明の1つ以上のアミノ酸配列若しくはペプチド、又はその誘導体を含む組成物、好ましくは医薬組成物(「本発明の組成物」)を提供する。例えば、本発明の組成物、好ましくは、医薬組成物は、本発明の組合せを含み得る。
【0064】
好ましい実施形態において、本発明の組成物、好ましくは、医薬組成物は、CD6.PD3(GQVEVHFRGVW、配列番号3)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体を含む。
【0065】
別の実施形態において、本発明の組成物、好ましくは、医薬組成物は、CD6.PD1(GTVEVRLEASW、配列番号1)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体を含む。
【0066】
更なる実施形態において、本発明の組成物、好ましくは、医薬組成物は、CD6.PD2(GRVEMLEHGEW、配列番号2)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体を含む。
【0067】
更なる実施形態において、本発明の組成物、好ましくは、医薬組成物は、CD6.PD2(GRVEMLEHGEW、配列番号2)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体と、CD6.PD1(GTVEVRLEASW、配列番号1)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体とを含む。
【0068】
更なる実施形態において、本発明の組成物、好ましくは、医薬組成物は、CD6.PD3(GQVEVHFRGVW、配列番号3)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体と、CD6.PD1(GTVEVRLEASW、配列番号1)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体とを含む。
【0069】
更なる実施形態において、本発明の組成物、好ましくは、医薬組成物は、CD6.PD3(GQVEVHFRGVW、配列番号3)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体と、CD6.PD2(GRVEMLEHGEW、配列番号2)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体とを含む。
【0070】
更なる実施形態において、本発明の組成物、好ましくは、医薬組成物は、CD6.PD3(GQVEVHFRGVW、配列番号3)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体と、CD6.PD2(GRVEMLEHGEW、配列番号2)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体と、CD6.PD1(GTVEVRLEASW、配列番号1)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体とを含む。
【0071】
上述のように、好ましい実施形態において、本発明の組成物は医薬組成物である。したがって、本発明は、配列番号3及び/又は配列番号1及び/又は配列番号2の1つ以上の単離アミノ酸配列、又はその誘導体を含む、医薬組成物を提供する。
【0072】
当業者に知られているように、医薬組成物は、1つ以上の有効成分(例えば、本発明の1つ以上のアミノ酸配列又はペプチド)に加えて、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤を含み得る。さらに、本発明の医薬組成物は、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とともに本発明の組成物を含む。
【0073】
本明細書中で使用する場合、「薬学的に許容可能な担体」という表現は、医薬組成物、すなわち、患者への投与が可能な投薬形態の形成を可能にするための無毒性溶媒、分散剤、賦形剤、アジュバント、又は有効成分(複数の場合もある)と混合される他の材料を意味する。かかる担体の一例は、非経口投与に通常使用される薬学的に可溶な油である。
【0074】
「薬学的に許容可能な塩」という用語は、本明細書中で使用する場合、本発明の化合物の塩を医薬品調製物に使用することができることを意味する。しかしながら、他の塩が、本発明による化合物又はその薬学的に許容可能な塩の調製物において有用である場合もある。
【0075】
「担体」という用語は、有効成分(複数の場合もある)とともに投与される希釈剤又は賦形剤を指す。かかる医薬担体は、滅菌液体、例えば水及び石油、動物、植物又は合成起源のものを含む油、例えば落花生油、ダイズ油、鉱油、ゴマ油等であり得る。水、又は生理食塩水の水溶液並びにデキストロース及びグリセロールの水溶液が、特に注射液のために、担体として使用されることが好ましい。適切な医薬担体は、1995年にE.W. Martinによって「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載されている。
【0076】
「アジュバント」は、本明細書中で使用する場合、それ自体では薬理学的効果をほとんど又は全く有さないが、他の作用物質と(本質的に)同じ時間に、多くの場合(本質的に)同じ投与経路で(本質的に)同じ部位に付与されると(例えば、同じ筋肉への注射)、他の作用物質の有効性又は効力を高め得る物質である。より詳細には、免疫化の文脈において使用する場合、アジュバントは、それ自体ではいかなる特異的な抗原効果も有さずに、免疫系を刺激するか、又は免疫系を刺激する可能性があり、免疫化剤に対する反応を高め得る物質である。より具体的には、免疫原性アジュバントは、特異的な抗原剤(複数の場合もある)と組み合わせて使用すると、抗原特異的な免疫反応を加速するか、延長させるか、又は増強するように作用する物質として定義され得る。
【0077】
本発明の医薬組成物の所望の医薬投薬形態を製造するのに必要な担体及び補助物質は、他の要因の中でもとりわけ、選択される医薬投薬形態に依存する。本発明の医薬組成物の上記医薬投薬形態は、当業者が既知の従来法に従って製造される。
【0078】
医薬組成物の例としては、経口投与、局所投与、又は腹腔内、静脈内、筋肉内若しくは皮下投与としての非経口投与用の任意の固体(錠剤、丸剤、カプセル、顆粒等)又は液体(溶液、懸濁液又はエマルジョン)組成物が挙げられる。さらに、医薬組成物は、必要に応じて、安定剤、懸濁液、防腐剤、界面活性剤等を含有することができる。
【0079】
当業者は、特定の投与様式に応じて組成物を適応させることができる。本発明の組成物は、感染症若しくはそれに関連した炎症状態に対する他の治療剤、又はそれらの組合せを更に含んでもよい。
【0080】
パーツのキット
第3の態様では、本発明は、本発明の1つ以上のアミノ酸配列又はペプチド(又はその誘導体)と、少なくとも1つの抗生物質とを含む、或いはそれからなるパーツのキットを提供する。好ましくは、抗生物質はβ−ラクタム系抗生物質、より好ましくはイミペネムである(「本発明のパーツのキット」)。好ましい実施形態において、組合せはデヒドロペプチダーゼ阻害剤又はβ−ラクタマーゼ阻害剤等の酵素阻害剤、より好ましくはシラスタチンを更に含む。更により好ましくは、パーツのキットはイミペネム及びシラスタチンを含む。
【0081】
本発明のパーツのキットにおいて他の抗生物質を使用することができる。他のβ−ラクタム系抗生物質の例は、メロペネム、エルタペネム、ドリペネム等のカルバペネム、アモキシシリン、アンピシリン、プロピシリン、オキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、ピペラシリン等のペニシリンである。他のクラスの抗生物質の例としては、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、ネチルマイシン、アミカシン等のアミノグリコシド;テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、リメサイクリン、メクロサイクリン、メタサイクリン、ミノサイクリン、ロリトテトラサイクリン等のテトラサイクリン、並びにフルメキン(Flubactin)、オキソリン酸(Uroxin)、ロソキサシン(Eradacil)、シプロフロキサシン(Zoxan、Ciprobay、Cipro、Ciproxin)、フレロキサシン(Megalone、Roquinol)、ロメフロキサシン(Maxaquin)、ナジフロキサシン(Acuatim、Nadoxin、Nadixa)、ノルフロキサシン(Lexinor、Noroxin、Quinabic、Janacin)、オフロキサシン(Floxin、Oxaldin、Tarivid)、ペフロキサシン(Peflacine)、ルフロキサシン(Uroflox)、バロフロキサシン(Baloxin)、グレパフロキサシン(Raxar)、レボフロキサシン(Cravit、Levaquin)、パズフロキサシン(Pasil、Pazucross)、スパルフロキサシン(Zagam)、テマフロキサシン(Omniflox)、クリナフロキサシン、ガチフロキサシン(Zigat、Tequin)(Zymar−opth.)、モキシフロキサシン(Avelox、Vigamox)、シタフロキサシン(Gracevit)、プルリフロキサシン(Quisnon)及びベシフロキサシン(Besivance)が挙げられ、好ましくはフルオロキノロンである。とりわけバンコマイシン、テイコプラニン若しくはテラバンシン等のグリコペプチド系抗生物質、又はエリスロマイシン、スピラマイシン、ロキシスロマイシン、クラリスロマイシン若しくはアジスロマイシン等のマクロライド系抗生物質も企図される。
【0082】
パーツのキットはまた、クラブラン酸、スルバクタム、テビペネム、6−メチリデンペネム2、タゾバクタム、アビバクタム又はレレバクタム等の他のβ−ラクタマーゼ阻害剤を含むこともできる。
【0083】
β−ラクタム系抗生物質及びβ−ラクタマーゼ阻害剤の一般的な組合せは、例えば、アンピシリン/スルバクタム、アモキシシリン/クラブラン酸、又はピペラシリン/タゾバクタムである。
【0084】
パーツのキットはまた、本明細書中では、「複合製品」及び/又は「医薬製品」と称される場合があり、本出願の文脈において、例えば組成物中で必ずしも結合体(union)として存在するわけではなく、同時の、別々の又は順次的な適用又は投与に利用可能な2つ以上の構成成分を含む製品又は多成分系と定義される。したがって、パーツのキットの構成成分は、以下で詳細に記載するように、異なる容器中で物理的に分けられてもよい。
【0085】
多成分系を用いて、1つの容器に本発明の1つ以上のアミノ酸配列又はペプチドを保存し、別の容器に抗生物質(好ましくはイミペネム)を含み、また好ましくはデヒドロペプチダーゼ阻害剤又はβ−ラクタマーゼ阻害剤等の酵素阻害剤(好ましくはシラスタチン)も含むことができる。適切な時期に成分を混合することができる。或いは、構成成分を、別々に又は順次的に、すなわち、構成成分を必要とする対象への投与前に混合せずに使用してもよい。
【0086】
特に、かかるパーツのキットは、(a)本発明の1つ以上のアミノ酸配列又はペプチドを含む第1の容器と、(b)上述するように、抗生物質、好ましくはイミペネムを含み、また上述するように、好ましくはデヒドロペプチダーゼ阻害剤又はβ−ラクタマーゼ阻害剤等の酵素阻害剤、好ましくはシラスタチンも含む第2の容器とを備えてもよく、或いはそれらからなってもよい。
【0087】
本発明のパーツのキットは、対象(哺乳類、好ましくはヒト)に同時に、順次的に又は別々に投与され得る別々の実体として(例えば、別々の容器に含まれる)、上述するように、本発明の1つ以上のアミノ酸配列又はペプチドと、抗生物質、好ましくはイミペネム(上述するように、好ましくはデヒドロペプチダーゼ阻害剤又はβ−ラクタマーゼ阻害剤等の酵素阻害剤、好ましくはシラスタチンも含む)とを含む、或いはそれらからなってもよい。好ましい実施形態において、本発明のパーツのキットは、対象(哺乳類、好ましくはヒト、又は非哺乳類)に同時に、順次的に又は別々に投与され得る別々の実体として(例えば、別々の容器に含まれる)、上述するように、本発明の1つ以上のアミノ酸配列又はペプチドと、抗生物質、好ましくはイミペネム(上述するように、好ましくはデヒドロペプチダーゼ阻害剤又はβ−ラクタマーゼ阻害剤等の酵素阻害剤、好ましくはシラスタチンも含む)とを含む、或いはそれらのみからなる。別の実施形態において、容器は、容器間に障壁を有する単一の製造品へと組み合わせられる。この障壁を除去又は破壊することで、適切な時間での構成成分の混合が可能となる。
【0088】
したがって、本発明は、以下で定義するように、薬剤として、特に感染症、又は感染症に関連した炎症状態、又は感染病原体に由来する産物の存在に関連した炎症性疾患のヒトを含む哺乳類、及び/又は非哺乳類における処置の治療法及び/又は予防法において同時に、順次的に又は別々に使用される本発明のパーツのキットを提供する。
【0089】
例えば、哺乳類は齧歯類(ネズミ又はラット等)、霊長類(類人猿、サル又はキツネザル等)、イヌ、ネコ、ウサギ、及びウシ、ウマ又はブタ等の有蹄類であってもよい。好ましい実施形態において、哺乳類はヒトである。
【0090】
例えば、非哺乳類は、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ダチョウ、ハト、シチメンチョウ等である。
【0091】
本発明のパーツのキットは、
a)本発明の1つ以上のアミノ酸配列若しくはペプチド、若しくはその誘導体、又は、及び薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤を含む医薬組成物と、
b)上述するように、抗生物質、好ましくはイミペネムと、また上述するように、好ましくはデヒドロペプチダーゼ阻害剤又はβ−ラクタマーゼ阻害剤等の酵素阻害剤、好ましくはシラスタチンと、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物と、
を含んでもよく、或いはそれらからなってもよい。より好ましくは、医薬組成物はイミペネムを含み、更に好ましくはシラスタチンとともにイミペネムを含む。
【0092】
医薬組成物(a)及び医薬組成物(b)はともに、対象(哺乳類、好ましくはヒト、又は非哺乳類)に、同時に、順次的に又は別々に投与され得る別々の実体として(例えば、上述するように、別々の容器中の別々の液体又は固体組成物として)本発明のパーツのキット中に含まれることが好ましい。
【0093】
上で言及されるように、また以下に更に記載されるように、本発明の組合せ、組成物、医薬組成物及び/又はパーツのキットは、好ましくは、デヒドロペプチダーゼ阻害剤又はβ−ラクタマーゼ阻害剤等の酵素阻害剤、好ましくはシラスタチンを更に含み得る。デヒドロペプチダーゼ阻害剤又はβ−ラクタマーゼ阻害剤等の酵素阻害剤、好ましくは、シラスタチンは、好ましくはデヒドロペプチダーゼ阻害剤又はβ−ラクタマーゼ阻害剤等の酵素阻害剤、好ましくはシラスタチンと、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物の形態で、第3の容器に(第3の)別の実体として、本発明のパーツのキットに含まれ得る。好ましくは、デヒドロペプチダーゼ阻害剤又はβ−ラクタマーゼ阻害剤等の酵素阻害剤、好ましくは、シラスタチンは、上述するように、抗生物質、好ましくはイミペネムと同じ実体(同じ容器)に含まれる(例えば、イミペネム及びシラスタチンを含む組成物又は医薬組成物)。
【0094】
例えば、好ましくは別々の実体として本発明のパーツのキットに含まれる、本発明の1つ以上のアミノ酸配列若しくはペプチド、又はその誘導体(又は本発明の1つ以上のアミノ酸配列若しくはペプチド、若しくはその誘導体と、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)、及び上述するように、好ましくはデヒドロペプチダーゼ阻害剤又はβ−ラクタマーゼ阻害剤等の酵素阻害剤、好ましくはシラスタチンとともに、上述するように、抗生物質、好ましくはイミペネム(又は上述するように、好ましくはデヒドロペプチダーゼ阻害剤若しくはβ−ラクタマーゼ阻害剤等の酵素阻害剤、好ましくはシラスタチンとともに、上述するように、抗生物質、好ましくはイミペネムと、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)は、対象(哺乳類、好ましくはヒト)に同時に(同じ時に)投与されてもよい。
【0095】
或いは、好ましくは別々の実体として本発明のパーツのキットに含まれる、本発明の1つ以上のアミノ酸配列若しくはペプチド、又はその誘導体(又は本発明の1つ以上のアミノ酸配列若しくはペプチド、若しくはその誘導体と、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)、及び上述するように、好ましくはデヒドロペプチダーゼ阻害剤又はβ−ラクタマーゼ阻害剤等の酵素阻害剤、好ましくはシラスタチンとともに、上述するように、抗生物質、好ましくはイミペネム(又は上述するように、好ましくはデヒドロペプチダーゼ阻害剤若しくはβ−ラクタマーゼ阻害剤等の酵素阻害剤、好ましくはシラスタチンとともに、上述するように、抗生物質、好ましくはイミペネムと、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)は、対象(哺乳類、好ましくはヒト)に順次的に投与されてもよく、例えば、本発明の1つ以上のアミノ酸配列若しくはペプチド、又はその誘導体(又は本発明の1つ以上のアミノ酸配列若しくはペプチド、若しくはその誘導体と、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)が最初に投与され得て、その後、上述するように、好ましくはデヒドロペプチダーゼ阻害剤又はβ−ラクタマーゼ阻害剤等の酵素阻害剤、好ましくはシラスタチンとともに、上述するように、抗生物質、好ましくはイミペネム(又は上述するように、好ましくはデヒドロペプチダーゼ阻害剤若しくはβ−ラクタマーゼ阻害剤等の酵素阻害剤、好ましくはシラスタチンとともに、上述するように、抗生物質、好ましくはイミペネムと、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)が対象(哺乳類、好ましくはヒト)に投与される。
【0096】
上述するように、好ましくはデヒドロペプチダーゼ阻害剤又はβ−ラクタマーゼ阻害剤等の酵素阻害剤、好ましくはシラスタチンとともに、上述するように、抗生物質、好ましくはイミペネム(又は上述するように、好ましくはデヒドロペプチダーゼ阻害剤若しくはβ−ラクタマーゼ阻害剤等の酵素阻害剤、好ましくはシラスタチンとともに、上述するように、抗生物質、好ましくはイミペネムと、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)は、最初に対象(哺乳類、好ましくはヒト)に投与され、その後、本発明の1つ以上のアミノ酸配列若しくはペプチド、又はその誘導体(又は本発明の1つ以上のアミノ酸配列若しくはペプチド、若しくはその誘導体と、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)が対象に投与されることが好ましい。
【0097】
或いは、好ましくは別々の実体として本発明のパーツのキットに含まれる、本発明の1つ以上のアミノ酸配列若しくはペプチド、又はその誘導体(又は本発明の1つ以上のアミノ酸配列若しくはペプチド、若しくはその誘導体と、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)と、上述するように、好ましくはデヒドロペプチダーゼ阻害剤又はβ−ラクタマーゼ阻害剤等の酵素阻害剤、好ましくはシラスタチンとともに、上述するように、抗生物質、好ましくはイミペネム(又は上述するように、好ましくはデヒドロペプチダーゼ阻害剤若しくはβ−ラクタマーゼ阻害剤等の酵素阻害剤、好ましくはシラスタチンとともに、上述するように、抗生物質、好ましくはイミペネムと、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)は、別々に対象(哺乳類、好ましくはヒト)に投与され得る。例えば、対象(哺乳類、好ましくはヒト)は、上述するように、好ましくはデヒドロペプチダーゼ阻害剤又はβ−ラクタマーゼ阻害剤等の酵素阻害剤、好ましくはシラスタチンとともに、上述するように、抗生物質、好ましくはイミペネム(又は上述するように、好ましくはデヒドロペプチダーゼ阻害剤若しくはβ−ラクタマーゼ阻害剤等の酵素阻害剤、好ましくはシラスタチンとともに、上述するように、抗生物質、好ましくはイミペネムと、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)を既に摂取しており、本発明の1つ以上のアミノ酸配列若しくはペプチド、又はその誘導体(又は本発明の1つ以上のアミノ酸配列若しくはペプチド、若しくはその誘導体と、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)が、好ましくは単回用量で投与される。
【0098】
したがって、本発明のパーツのキットの構成成分は、以下に記載されるように、好ましくは感染症、又は感染症に関連した炎症状態、又は感染病原体に由来する産物の存在に関連した炎症性疾患の処置の治療法及び/又は予防法において、対象(ヒトを含む哺乳類)に同時に、順次的に又は別々に投与され得る。
【0099】
イミペネム
イミペネムは、カルバペネムクラスの抗生物質に属するβ−ラクタム抗生物質である。カルバペネムは、多くの多剤耐性G−細菌によって産生されるβ−ラクタマーゼ酵素に対して非常に耐性である。イミペネムは、様々なG+細菌及びG−細菌の細胞壁合成を阻害すること、したがって溶菌中に放出されるPAMPの量を低減することにより、抗菌薬として作用する。イミペネムは、幾つかの細菌によって産生されるβ−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ及びセファロスポリナーゼの両方)の存在下で非常に安定なままであり、ほとんどのβ−ラクタム抗生物質に対して耐性である幾つかのG−細菌由来のβ−ラクタマーゼの強力な阻害剤である。イミペネムに関するIUPAC系統名は、(5R,6S)−6−[(1R)−1−ヒドロキシエチル]−3−({2−[(イミノメチル)アミノ]エチル}チオ)−7−オキソ−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプタ−2−エン−2−カルボン酸であり、そのCAS登録番号は、74431−23−5であり、その化学式は、以下で式1において記載している:
【化1】
【0100】
以下で詳述するように、イミペネムは、一般的にシラスタチンとともに投与される。
【0101】
シラスタチン
シラスタチンは、抗生物質イミペネムのin vivoでの分解に関与する酵素であるヒトデヒドロペプチダーゼを阻害する化合物である。したがって、シラスタチンは、イミペネムとともに投与されて、デヒドロペプチダーゼによるその分解を抑え、それにより、身体中の循環時間、したがってその抗菌効果を延ばし得る。シラスタチン自体は、抗生物質活性を持たない。当業者が承知しているように、イミペネム単独は、有効な抗生物質であり、シラスタチンを伴わずに投与することができる。しかしながら、好ましくは、イミペネムは、好ましくはイミペネム:シラスタチンの比1:1でシラスタチンとともに投与される。
【0102】
本発明のアミノ酸配列、ペプチド(又はその誘導体)、組合せ、組成物、医薬組成物及びパーツのキットの効果
本発明の教示によれば、本発明の1つ以上のアミノ酸配列、ペプチド、若しくはその誘導体、組合せ、組成物、医薬組成物及び/又はパーツのキットの構成成分を、哺乳類、好ましくはヒトに投与することができる。或いは、本発明の1つ以上のアミノ酸配列、ペプチド、若しくはその誘導体、組合せ、組成物、医薬組成物及び/又はパーツのキットの構成成分を、非哺乳類、好ましくはニワトリ、アヒル、ガチョウ、ダチョウ、ハト及び/又はシチメンチョウに投与することができる。本発明の1つ以上のアミノ酸配列、ペプチド(又はその誘導体)、組合せ、組成物、医薬組成物及び/又はパーツのキットの構成成分の投与の目的は、予防的(これらの疾患の発症を回避するため)及び/又は治療的(これらの疾患が発症/導入された後に、これらの疾患を処置するため)であり得る。
【0103】
本発明の1つ以上のアミノ酸配列、ペプチド(又はその誘導体)、組合せ、組成物、医薬組成物及び/又はパーツのキットの構成成分は、薬学的に許容可能な形態で投与されることが理解される。当業者は、標準的な手順を使用して、適正な用量を確認し得る。炎症反応の低減が、処置した対象で見られるという意味で、用量は、(上述するように、デヒドロペプチダーゼ阻害剤又はβ−ラクタマーゼ阻害剤等の酵素阻害剤、好ましくはシラスタチンとともに又はそれを含まずに)、上述するように、抗生物質、好ましくはイミペネムを含む又は含まない、1つ以上のアミノ酸配列又はペプチド(又はその誘導体)の有効量とされることが理解される。
【0104】
本発明の1つ以上のアミノ酸配列又はペプチド(又はその誘導体)、好ましくはCD6.PD3又はその誘導体、及び抗生物質、好ましくはイミペネム(上述するように、好ましくはデヒドロペプチダーゼ阻害剤又はβ−ラクタマーゼ阻害剤等の酵素阻害剤、好ましくはシラスタチンとともに)の特異的な共投与(同時に、順次的に又は別々に)は、ヒトを含む哺乳類、及び/又はニワトリ、アヒル、ガチョウ、ダチョウ、ハト及び/又はシチメンチョウを含む非哺乳類において、特に、感染症、又は感染症に関連した炎症状態、又は感染病原体に由来する産物の存在に関連した炎症性疾患の治療及び/又は予防において、明らかに改善された相加的治療効果を提供する。
【0105】
処置の方法
更なる態様では、本発明の1つ以上のアミノ酸配列、ペプチド(又はその誘導体)、組合せ、組成物、医薬組成物及び/又はパーツのキットを、その変形形態のいずれかにおいて、薬剤として、好ましくはヒトを含む哺乳類及び/又はニワトリ、アヒル、ガチョウ、ダチョウ、ハト及び/又はシチメンチョウを含む非哺乳類における、感染症、又は感染症に関連した炎症状態、又は感染病原体に由来する産物の存在に関連した炎症性疾患の処置の治療法及び/又は予防法において使用することができる。したがって、本発明は、哺乳類及び/又は非哺乳類への、本発明の1つ以上のアミノ酸配列、ペプチド(又はその誘導体)、組合せ、組成物、医薬組成物及び/又はパーツのキットを投与することを含む、感染症、又は感染症と関連する炎症状態、又は感染病原体に由来する産物の存在に関連した炎症性疾患の処置の治療法及び/又は予防法を提供する。例えば、哺乳類は齧歯類(ネズミ又はラット等)、霊長類(類人猿、サル又はキツネザル等)、イヌ、ネコ、ウサギ、及びウシ、ウマ又はブタ等の有蹄類であってもよい。好ましい実施形態において、哺乳類はヒトである。例えば、非哺乳類は、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ダチョウ、ハト、シチメンチョウ等であってもよい。
【0106】
好ましくは、本発明は、GQVEVHFRGVW(CD6.PD3、配列番号3)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列若しくはその誘導体、又はGQVEVHFRGVW(CD6.PD3、配列番号3)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列若しくはその誘導体を含む上に定義される組合せ、組成物、医薬組成物及び/又はパーツのキットの、上述するように、哺乳類、好ましくはヒト及び/又は非哺乳類への投与を含む、感染症、又は感染症に関連した炎症状態、又は感染病原体に由来する産物の存在に関連した炎症性疾患の処置の治療法及び/又は予防法を提供する。
【0107】
例えば、本発明は、GTVEVRLEASW(CD6.PD1、配列番号1)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列若しくはその誘導体、又はGTVEVRLEASW(CD6.PD1、配列番号1)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列若しくはその誘導体を含む上に定義される組合せ、組成物、医薬組成物及び/又はパーツのキットの、上述するように、哺乳類、好ましくはヒト及び/又は非哺乳類への投与を含む、感染症、又は感染症に関連した炎症状態、又は感染病原体に由来する産物の存在に関連した炎症性疾患の処置の治療法及び/又は予防法を提供する。
【0108】
例えば、本発明は、GRVEMLEHGEW(CD6.PD2、配列番号2)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列若しくはその誘導体、又はGRVEMLEHGEW(CD6.PD2、配列番号2)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列若しくはその誘導体を含む上に定義される組合せ、組成物、医薬組成物及び/又はパーツのキットの、上述するように、哺乳類、好ましくはヒト及び/又は非哺乳類への投与を含む、感染症、又は感染症に関連した炎症状態、又は感染病原体に由来する産物の存在に関連した炎症性疾患の処置の治療法及び/又は予防法を提供する。
【0109】
例えば、本発明は、薬剤として同時に、順次に又は別々に使用される本発明のパーツのキットを提供する。特に本発明は、感染症、又は感染症に関連した炎症状態、又は感染病原体に由来する産物の存在に関連した炎症性疾患の、上述するようなヒトを含む哺乳類、及び/又は非哺乳類における処置の治療法及び/又は予防法において同時に、順次に又は別々に使用される本発明のパーツのキットを提供する。
【0110】
本発明の特定の実施形態において、感染症は、微生物感染である。より特定の実施形態において、微生物感染は、細菌感染(G+細菌又はG−細菌、非病原性又は病原性、好気性又は嫌気性のいずれか)、真菌感染、ウイルス感染、寄生虫感染、及びそれらの組合せ(多微生物感染)からなる群より選択される。
【0111】
別の特定の実施形態において、感染症は、菌血症である。本明細書中で使用する場合、「菌血症」という用語は、血流中の任意の微生物の存在を指す。特に、菌血症は、細菌血症(bacteremia)、真菌血症、ウイルス血症、寄生虫血症及びそれらの組合せからなる群より選択される。
【0112】
生存可能な微生物の存在は、感染症に関連した炎症状態のほとんどの事例で見られるのに対して、患者の20%〜30%が、いかなる供給源からも同定される微生物を有さないが、微生物に由来する産物を有する。したがって、別の実施形態において、炎症状態は、感染病原体に由来する産物に関連する。特に、感染病原体は、細菌(G+細菌又はG−細菌、非病原性又は病原性、好気性又は嫌気性のいずれか)、真菌、ウイルス、寄生虫、及び/又はそれらの組合せからなる群より選択される。
【0113】
敗血症は、全身性炎症反応症候群(SIRS)と呼ばれる全身反応の徴候を付随する感染の存在又は推定される存在として定義される。敗血症の定義に関して、"Severe sepsis and septic shock: review of the literature and emergency department management guidelines", H.B. Nguyen et al., Ann. Emergency Med. 2006, vol. 48, pp. 28-54という論文を参照する。敗血症は通常、細菌感染(G+細菌又はG−細菌のいずれか)によって引き起こされるが、他の病原体によっても引き起こされ得る。しかしながら、最も多くの場合、敗血症は、G+細菌感染及びG−細菌感染によって引き起こされる。しかしながら、敗血症に起因する損傷及び症状は、生きている細菌全体によって引き起こされるだけでなく、エンドトキシンとして知られる細菌細胞壁の構成成分によっても引き起こされる。エンドトキシン(例えば、LPS、LTA、PGN)は、G+細菌及びG−細菌の外膜に遍在する糖脂質である。エンドトキシンは、免疫系が侵入細菌を破壊すると放出される。放出されたエンドトキシンは、免疫細胞(単球、マクロファージ、顆粒球、リンパ球、並びに内皮細胞及び上皮細胞)に結合して、サイトカイン(例えば、TNF−α、IL−1β及びIL−6)及びケモカイン(例えば、IL−8)等の炎症の各種可溶性メディエーターの産生を誘発し、これらは、重症形態の敗血症の主要な原因となる。
【0114】
本発明の特定の実施形態において、炎症状態は、SIRS(全身性炎症反応症候群)である。別の特定の実施形態において、炎症状態は、敗血症である。SIRSは、(1)38℃を超えるか、又は36℃未満の体温、(2)90回の拍動/分を超える脈拍数、(3)20回の呼吸/分を超える呼吸数(又は32トール未満のPCO)及び(4)12000個/mmを超えるか、若しくは4000個/mm未満の白血球数、又は10%を超える未熟桿型のうちの2つ以上の存在として定義される。
【0115】
特定の実施形態において、敗血症は、多微生物敗血症である。多微生物敗血症は、多重感染病原体(例えば、細菌及び真菌;非病原性及び病原性;好気性及び嫌気性等)の同時発生に関与する複雑な全身感染と定義される。
【0116】
別の特定の実施形態において、炎症状態は、重症敗血症である。重症敗血症は、1つ以上の臓器不全を付随する敗血症と定義される。臓器不全は、急性肺損傷、凝固異常、血小板減少症、精神状態変化、腎不全、肝不全若しくは心不全、又は乳酸アシドーシスを伴う低灌流として定義することができる。
【0117】
別の特定の実施形態において、炎症状態は、敗血症性ショックである。敗血症性ショックは、敗血症及び難治性低血圧、すなわち、90mmHg未満の収縮期血圧、65mmHg未満の平均動脈圧、又は20ml/kg〜40ml/kgの晶質液負荷(challenge)に対して応答しない、ベースラインと比較して収縮期血圧における40mmHgの減少の存在として定義される。したがって、敗血症ショックは、事実上、重症敗血症の一形態である。最終的に、敗血症性ショックは、エンドトキシン誘導性敗血症性ショックであってもよい。
【0118】
感染の供給源は、身体全体にわたる多数の場所のいずれかであり得る。敗血症に至る可能性のある一般的な感染部位は、虫垂の炎症(虫垂炎)、憩室炎、腸管障害、腹腔の感染(腹膜炎)、及び胆嚢又は肝臓感染;脳又は脊髄の炎症又は感染(髄膜炎、脳炎);肺炎等の肺感染;創傷又は静脈内カテーテルでできた開口による皮膚感染、蜂巣炎(皮膚の結合組織の炎症);尿路感染、特に患者が尿を排出する導尿カテーテルを有する場合;歯科及び婦人科の検査又は処置;鈍傷又は穿通性外傷、手術及び心内膜炎症を含む。
【0119】
上述するように、ヒトを含む哺乳類及び/又は非哺乳類への、その変形形態のいずれかにおける本発明の1つ以上のアミノ酸配列、ペプチド(又はその誘導体)、組合せ、組成物、医薬組成物及び/又はパーツのキットの投与を、腹腔内(i.p.)及び/又は静脈内(i.v.)により行うことができる。
【0120】
上述するように、好ましくは、本発明の1つ以上のアミノ酸配列、ペプチド(又はその誘導体)、組成物及び/又は医薬組成物は、その変形形態のいずれかにおいて、ヒトを含む哺乳類及び/又は非哺乳類に次の通り投与される。単回用量の1つ以上のアミノ酸配列若しくはペプチド、好ましくはCD6.PD3、又はその誘導体(又は1つ以上のアミノ酸配列若しくはペプチド、好ましくはCD6.PD3、若しくはその誘導体と、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)を、任意に、(上述するように、好ましくはデヒドロペプチダーゼ阻害剤又はβ−ラクタマーゼ阻害剤等の酵素阻害剤、好ましくはシラスタチンとともに)抗生物質(好ましくはイミペネム)の処置の間に、できるだけ早期に、好ましくはi.v.で投与する。マウスにおける最適なペプチド用量は、3mg/kg〜15mg/kg、好ましくは6mg/kg〜12mg/kgである。当業者に理解され得るように、臨床アッセイでは、ヒトを含む他の哺乳類(及び非哺乳類)に最適なペプチド用量を確立しなければならない。
【0121】
別の好ましい実施形態において、本発明のパーツのキットの構成成分は次のとおり投与される。単回用量の1つ以上のアミノ酸配列若しくはペプチド、好ましくはCD6.PD3、又はその誘導体(又は、1つ以上のアミノ酸配列若しくはペプチド、好ましくはCD6.PD3、若しくはその誘導体と、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)を、できるだけ早期に、それを必要とする対象に、好ましくはi.v.で投与し、続いて、抗生物質、好ましくはイミペネム(又は抗生物質、好ましくはイミペネムと、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)(上述するように、好ましくはデヒドロペプチダーゼ阻害剤又はβ−ラクタマーゼ阻害剤等の酵素阻害剤、好ましくはシラスタチンとともに)を投与する。
【0122】
別の好ましい実施形態において、本発明のパーツのキットの構成成分は次のとおり投与される。最初に、抗生物質、好ましくはイミペネム(又は抗生物質、好ましくはイミペネムと、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)(上述するように、好ましくはデヒドロペプチダーゼ阻害剤又はβ−ラクタマーゼ阻害剤等の酵素阻害剤、好ましくはシラスタチンとともに)を、それを必要とする対象に投与する。続いて、単回用量の1つ以上のアミノ酸配列若しくはペプチド、好ましくはCD6.PD3、又はその誘導体(又は1つ以上のアミノ酸配列若しくはペプチド、好ましくはCD6.PD3、又はその誘導体と、薬学的に許容可能な担体、薬学的に許容可能な塩、アジュバント及び/又は適切な賦形剤とを含む医薬組成物)を、好ましくはi.v.で投与する。
【0123】
或いは、本発明の1つ以上のアミノ酸配列若しくはペプチド、又はその誘導体の単回用量を、上述するように、それを必要とする対象に投与するだけでなく、2回以上の用量、例えば2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回又はそれ以上の用量を、それを必要とする対象に投与してもよい。当業者に理解され得るように、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回又はそれ以上の用量を、抗生物質、好ましくはイミペネム(好ましくはデヒドロペプチダーゼ阻害剤又はβ−ラクタマーゼ阻害剤等の酵素阻害剤、好ましくはシラスタチンとともに)の投与の前、投与の間又は投与の後のいずれかで投与してもよい。さらに、1つ以上のアミノ酸配列若しくはペプチド、又はその誘導体は、抗生物質、好ましくはイミペネム(好ましくはデヒドロペプチダーゼ阻害剤又はβ−ラクタマーゼ阻害剤等の酵素阻害剤、好ましくはシラスタチンとともに)の投与の前、投与の間又は投与の後のいずれかで、投薬ではなく、連続灌流(好ましくは、i.v.で)として投与してもよい。
【0124】
当然のことながら、それを必要とする対象は、本発明の1つ以上のアミノ酸配列又はペプチド(又はその誘導体)、組合せ、組成物、医薬組成物及び/又はパーツのキットの構成成分が、その変形形態のいずれかにおいて、投与される場合に、他の抗生物質等の他の薬物の処置下にあってもよい。
【0125】
「治療上有効量」とは、いわゆる障害又は状態を処置する際に有効な化合物の量を意味する。
【0126】
「処置」又は「療法」という用語は、疾患を処置する予防法及び治癒法の両方を包含する。というのは、どちらも、健康の維持又は回復に関するためである。病毒、不快感又は不能の原因に関わらず、適切な作用物質の投与によるその緩和は、本出願の文脈において療法又は治療的使用と解釈されるべきである。
【0127】
そのため、本発明の1つ以上のアミノ酸配列又はペプチド(又はその誘導体)、組合せ、組成物、医薬組成物及び/又はパーツのキットは、治療的処置(疾患の臨床所見後)及び/又は予防的処置(疾患の臨床所見前)の方法において使用され得る。
【0128】
コンジュゲート
更なる実施形態において、本出願は、本発明の1つ以上のアミノ酸配列及び/又はペプチドを含むコンジュゲートを開示する。コンジュゲートは、好ましくは、本発明の1つ以上のアミノ酸配列及び/又はペプチドが、担体、好ましくはポリマー、例えば可溶性ポリマー又は好ましくは不溶性ポリマーに複合化されている(好ましくは共有結合されている)コンジュゲートである。
【0129】
「ペプチド−担体コンジュゲート」又は「コンジュゲート」は、アミノ酸配列及び/又はペプチドと担体とを組み合わせたハイブリッド構造体として定義される。担体への結び付きは、アミノ酸配列及び/又はペプチドのNH基若しくはCOOH基を介して、又はアミノ酸側鎖の他のいずれかの官能基によって行われ得る。担体は、可溶性ポリマーであってもよく、又はアミノ酸配列及び/又はペプチドが固体若しくはヒドロゲル材料の形態で固定化されている不溶性ポリマーであってもよい。
【0130】
1つ以上のアミノ酸配列又はペプチド(又はその誘導体)を担体に複合化する(又は固定する、又は付着させる、又は結合する、又は連結する、又は結び付ける、好ましくは共有結合する)ため、担体はこの目的で1つ以上の官能基を含むことが好ましい場合がある。それらの官能基の代表例は、ヒドロキシル基、アミノ基、アルデヒド基、カルボキシル基、チオール基、シラノール基、アミド基、エポキシ基、ハロゲン基、サクシニルイミド基及び酸無水物基である。
【0131】
好ましい実施形態において、本発明のコンジュゲートは、CD6.PD3(GQVEVHFRGVW、配列番号3)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体を含む。
【0132】
別の実施形態において、本発明のコンジュゲートは、CD6.PD1(GTVEVRLEASW、配列番号1)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体を含む。
【0133】
更なる実施形態において、本発明のコンジュゲートは、CD6.PD2(GRVEMLEHGEW、配列番号2)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体を含む。
【0134】
更なる実施形態において、本発明のコンジュゲートは、CD6.PD2(GRVEMLEHGEW、配列番号2)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体と、CD6.PD1(GTVEVRLEASW、配列番号1)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体とを含む。
【0135】
更なる実施形態において、本発明のコンジュゲートは、CD6.PD3(GQVEVHFRGVW、配列番号3)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体と、CD6.PD1(GTVEVRLEASW、配列番号1)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体とを含む。
【0136】
更なる実施形態において、本発明のコンジュゲートは、CD6.PD3(GQVEVHFRGVW、配列番号3)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体と、CD6.PD2(GRVEMLEHGEW、配列番号2)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体とを含む。
【0137】
更なる実施形態において、本発明のコンジュゲートは、CD6.PD3(GQVEVHFRGVW、配列番号3)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体と、CD6.PD2(GRVEMLEHGEW、配列番号2)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体と、CD6.PD1(GTVEVRLEASW、配列番号1)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体とを含む。
【0138】
本発明のコンジュゲートは、ペプチドCD6.PD1(配列番号1)、CD6.PD2(配列番号2)及び/又はCD6.PD3(配列番号3)を含む1つ以上のアミノ酸配列を更に含むことができる。アミノ酸配列は線形であってもよく、又は環状であってもよい。好ましくは、アミノ酸配列は、ヒトCD6のエクトドメイン内に含まれる。好ましい実施形態において、アミノ酸配列は配列番号4内に含まれる。特定の実施形態において、線形又は環状のアミノ酸配列は、ペプチドCD6.PD1(配列番号1)、CD6.PD2(配列番号2)又はCD6.PD3(配列番号3)を含む12個〜17個の隣接するアミノ酸を含み、好ましくは配列番号4内に含まれる。本発明の装置に含まれ得る好ましいアミノ酸配列の例としては、限定されるものではないが、CSGTVEVRLEASWEPAC(配列番号13)、SGTVEVRLEASWEPA(配列番号14)、SGTVEVRLEASWEP(配列番号15)、SGTVEVRLEASWE(配列番号16)、SGTVEVRLEASW(配列番号17)、GTVEVRLEASWEPA(配列番号18)、GTVEVRLEASWEP(配列番号19)、GTVEVRLEASWE(配列番号20)、CAGRVEMLEHGEWGSVC(配列番号21)、AGRVEMLEHGEWGSV(配列番号22)、AGRVEMLEHGEWGS(配列番号23)、AGRVEMLEHGEWG(配列番号24)、AGRVEMLEHGEW(配列番号25)、GRVEMLEHGEWGSV(配列番号26)、GRVEMLEHGEWGS(配列番号27)、GRVEMLEHGEWG(配列番号28)、CEGQVEVHFRGVWNTVC(配列番号29)、EGQVEVHFRGVWNTV(配列番号30)、EGQVEVHFRGVWNT(配列番号31)、EGQVEVHFRGVWN(配列番号32)、EGQVEVHFRGVW(配列番号33)、GQVEVHFRGVWNTV(配列番号34)、GQVEVHFRGVWNT(配列番号35)、GQVEVHFRGVWN(配列番号36)が挙げられる。
【0139】
コンジュゲートに含まれる本発明の1つ以上のアミノ酸配列及び/又はペプチドは、担体に複合化(好ましは共有結合)され得る。担体は、不溶性担体であってもよい。不溶性担体は固体支持体であってもよく、これらは、ガラスビーズ若しくはシリカゲル等の水不溶性無機担体;架橋ポリビニルアルコール、架橋ポリアクリレート、架橋ポリメタクリレート、架橋ポリアクリルアミド、架橋ポリカーボネート、架橋ポリスルホン、架橋ポリエーテルスルホン若しくは架橋ポリスチレン等の合成ポリマー、又は結晶セルロース、架橋セルロース、架橋アガロース若しくは架橋デキストラン等の多糖を含む有機担体、又は有機−有機担体及び有機−無機担体等の上述の化合物の組合せから得られる複合担体を含み得る。また、固体支持体は、磁気ビーズ等の金属支持体であってもよい。
【0140】
好ましくは、担体は、50μm〜300μmの粒径を有する多孔質マトリクスであってもよい。好ましくは、固体支持体は、N,N’−メチレン−ビス−(メタクリルアミド)、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、及びメタクリルアミドの共重合によって作られる、直径100μm〜250μmのマクロ多孔質ビーズであるEupergit(商標)である。
【0141】
好ましい実施形態において、ペプチドでコーティングされたEupergit(商標)ビーズのコンジュゲートは、pHバッファー中の本発明のペプチドの溶液で高分子ビーズを処理することによって得られる。好ましくは、ポリマービーズを、リン酸ナトリウムバッファー中、室温で発明のペプチドとインキュベートする。
【0142】
コンジュゲートに含まれる本発明の1つ以上のアミノ酸配列及び/又はペプチドは、アルブミン等の可溶性担体、又は例えばPEG、デキストラン、ポリシアル酸、ヒアルロン酸若しくはヒドロキシエチルデンプン等の可溶性ポリマーに複合化(好ましくは共有結合)され得る。
【0143】
本発明のコンジュゲートを、薬剤として、好ましくはヒトを含む哺乳類又は非哺乳類における、感染症、又は感染症に関連した炎症状態、又は感染病原体に由来する産物の存在に関連した炎症性疾患の処置の治療法及び/又は予防法において使用することができる。
【0144】
装置
本発明の更なる態様は、本発明の1つ以上のアミノ酸配列又はペプチドを含む「吸着剤」とも呼ぶことができる装置、好ましくは医療装置(「本発明の装置」)に関するものである。
【0145】
したがって、本発明の装置は、
CD6.PD1:GTVEVRLEASW(配列番号1);
CD6.PD2:GRVEMLEHGEW(配列番号2);及び/又は、
CD6.PD3:GQVEVHFRGVW(配列番号3);
の配列を含む、或いはそれのみからなる1つ以上のアミノ酸配列、又はその誘導体を含む。
【0146】
また、本発明の装置は、ペプチドCD6.PD1(配列番号1)、CD6.PD2(配列番号2)及び/又はCD6.PD3(配列番号3)を含む1つ以上のアミノ酸配列を含むことができる。アミノ酸配列は線形であってもよく、又は環状であってもよい。好ましくは、アミノ酸配列は、ヒトCD6のエクトドメイン内に含まれる。好ましい実施形態において、アミノ酸配列は配列番号4内に含まれる。本発明の装置に含まれ得る特定の実施形態において、線形又は環状のアミノ酸配列は、ペプチドCD6.PD1(配列番号1)、CD6.PD2(配列番号2)又はCD6.PD3(配列番号3)を含む12個〜17個の隣接するアミノ酸を含み、好ましくは配列番号4内に含まれる。好ましいアミノ酸配列の例としては、限定されるものではないが、CSGTVEVRLEASWEPAC(配列番号13)、SGTVEVRLEASWEPA(配列番号14)、SGTVEVRLEASWEP(配列番号15)、SGTVEVRLEASWE(配列番号16)、SGTVEVRLEASW(配列番号17)、GTVEVRLEASWEPA(配列番号18)、GTVEVRLEASWEP(配列番号19)、GTVEVRLEASWE(配列番号20)、CAGRVEMLEHGEWGSVC(配列番号21)、AGRVEMLEHGEWGSV(配列番号22)、AGRVEMLEHGEWGS(配列番号23)、AGRVEMLEHGEWG(配列番号24)、AGRVEMLEHGEW(配列番号25)、GRVEMLEHGEWGSV(配列番号26)、GRVEMLEHGEWGS(配列番号27)、GRVEMLEHGEWG(配列番号28)、CEGQVEVHFRGVWNTVC(配列番号29)、EGQVEVHFRGVWNTV(配列番号30)、EGQVEVHFRGVWNT(配列番号31)、EGQVEVHFRGVWN(配列番号32)、EGQVEVHFRGVW(配列番号33)、GQVEVHFRGVWNTV(配列番号34)、GQVEVHFRGVWNT(配列番号35)、GQVEVHFRGVWN(配列番号36)が挙げられる。
【0147】
好ましくは、本発明の装置は、GTVEVRLEASW(CD6.PD1、配列番号1)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体を含む。
【0148】
例えば、本発明の装置は、GRVEMLEHGEW(CD6.PD2、配列番号2)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体を含む。
【0149】
例えば、本発明の装置は、GQVEVHFRGVW(CD6.PD3、配列番号3)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体を含む。
【0150】
好ましい実施形態において、本発明の装置は、GTVEVRLEASW(CD6.PD1、配列番号1)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体と、GRVEMLEHGEW(CD6.PD2、配列番号2)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体とを含む。
【0151】
更なる実施形態において、本発明の装置は、GTVEVRLEASW(CD6.PD1、配列番号1)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体と、GQVEVHFRGVW(CD6.PD3、配列番号3)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体とを含む。
【0152】
更なる実施形態において、本発明の装置は、GRVEMLEHGEW(CD6.PD2、配列番号2)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体と、GQVEVHFRGVW(CD6.PD3、配列番号3)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体とを含む。
【0153】
更に好ましい実施形態において、本発明の装置は、GRVEMLEHGEW(CD6.PD2、配列番号2)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体と、GTVEVRLEASW(CD6.PD1、配列番号1)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体と、GQVEVHFRGVW(CD6.PD3、配列番号3)を含む、或いはそれのみからなるアミノ酸配列、又はその誘導体とを含む。
【0154】
本発明の装置は、本発明の1つ以上のアミノ酸配列及び/又はペプチドを含むコンジュゲートを含むことができる。コンジュゲートは、好ましくは、本発明の1つ以上のアミノ酸配列及び/又はペプチドが、担体、好ましくはポリマー、好ましくは不溶性ポリマーに複合化(好ましくは共有結合)されているコンジュゲートである。
【0155】
装置は、水溶液、好ましくは血液、血漿、血清又は他の適切な血液画分等の体液から少なくとも1つの成分を選択的に結合し、分離するのに適している。水溶液は、本発明の装置に選択的に結合し、それによって分離される少なくとも1つの成分を含む可能性がある。例えば、水溶液(血液、血漿、血清又は他の適切な血液画分等の体液であることが好ましい)中に含まれる可能性がある少なくとも1つの成分は、LPS、LTA及び/又はPGN等のエンドトキシン等のグラム−細菌及び/又はグラム+細菌の表面構造の1つ以上の化学成分である。
【0156】
細菌の表面構造の重要な化学成分は、以下の通りである(Medical Microbiology, 4th edition, Baron S, editor; Galveston (TX): University of Texas Medical Branch at Galveston; 1996より):
細胞壁ペプチドグリカン(PGN):G+細菌及びG−細菌はいずれも、特徴的な細胞形状を与え、細胞に機械的保護を提供する細胞壁ペプチドグリカンを持つ。ペプチドグリカンは、原核生物に特有であり、ムラミン酸及びグルコサミン(共にN−アセチル化されている)のグリカン骨格と、G+細菌(例えば黄色ブドウ球菌)では橋と高度に架橋されている、又はG−細菌(例えば大腸菌)では部分的に架橋されているペプチド鎖とからなる。架橋トランスペプチダーゼ酵素は、β−ラクタム系抗生物質の標的の一部である。
テイコ酸(TA):テイコ酸は、強い負電荷を持つポリオールリン酸ポリマーである。テイコ酸は、幾つかのG+細菌においてペプチドグリカンに共有結合されている。テイコ酸は抗原性が強いが、一般的にはG−細菌には存在しない。
リポテイコ酸(LTA):膜テイコ酸としてのリポテイコ酸は、両親媒性グリコリン酸(glycophosphates)と親油性糖脂質とのポリマーであり、細胞質膜に固定されている。リポテイコ酸は、抗原性で細胞傷害性であり、アドヘシン(例えば、化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes))である。
リポ多糖(LPS):G−細菌の外膜の主要な構成成分の1つは、リピドAアンカー、多糖コア及び炭水化物の鎖からなる複合体分子であるリポ多糖類(エンドトキシン)である。多糖鎖の糖は、血清学的特異性を付与する。
壁喪失型(Wall-Less Forms):細胞壁ペプチドグリカンのない2つの群の細菌は、表面膜構造を持つマイコプラズマ(Mycoplasma)種、及びペプチドグリカン構造を産生する能力を失ったG+細菌の細胞又はG−細菌の細胞のいずれかから生じるL型である。
【0157】
好ましくは、本発明の医療装置は、血液灌流中にエンドトキシン(例えば、LPS、LTA及び/又はPGN)等のG−細菌及び/又はG+細菌の表面構造の1つ以上の化学成分を体外除去するための医療装置等の血液吸着医療装置である。
【0158】
本発明の装置内に含まれる本発明の1つ以上のアミノ酸配列若しくはペプチド、又はその誘導体を、以下に記載するように、固体支持体上に固定することができる。固体支持体は、ガラスビーズ若しくはシリカゲル等の水不溶性の無機担体;架橋ポリビニルアルコール、架橋ポリアクリレート、架橋ポリメタクリレート、架橋ポリアクリルアミド、架橋ポリカーボネート、架橋ポリカーボネート、架橋ポリスルホン、架橋ポリエーテルスルホン若しくは架橋ポリスチレン等の合成ポリマー、又は結晶セルロース、架橋セルロース、架橋アガロース若しくは架橋デキストラン等の多糖を含む有機担体、又は有機−有機担体及び有機−無機担体等の上述の化合物の組合せから得られる複合担体であってもよい。また、固体支持体は、磁気ビーズ等の金属支持体であってもよい。
【0159】
固体支持体は、顆粒形態、ビーズ、繊維、繊維膜、フィルムの形態の又はゲルとしての多孔質マトリクスであってもよい。
【0160】
固体支持体は50μm〜300μmの粒径を有する多孔質マトリクスであってもよい。好ましくは、固体支持体は、N,N’−メチレン−ビス−(メタクリルアミド)、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、及びメタクリルアミドの共重合によって作られる、直径100μm〜250μmのマクロ多孔質ビーズであるEupergit(商標)である。
【0161】
固体支持体に1つ以上のアミノ酸配列又はペプチド(又はその誘導体)を固定する(又は付着させる、又は結合する、又は連結する)ため、固体支持体はこの目的で1つ以上の官能基を含むことが好ましい場合がある。それらの官能基の代表例は、ヒドロキシル基、アミノ基、アルデヒド基、カルボキシル基、チオール基、シラノール基、アミド基、エポキシ基、ハロゲン基、サクシニルイミド基及び酸無水物基である。
【0162】
本発明の医療装置は、少なくとも1つの成分を含む可能性のある水溶液から少なくとも1つの成分を効率的に結合し、分離することができる。例えば、本発明の装置は、装置の固体支持体上に固定された本発明の1つ以上のアミノ酸配列又はペプチド(又はその誘導体)に毒素が結合し得ることから、LPS、LTA及び/又はPGN等のエンドトキシン等の細菌(G+及び/又はG−)の表面構造の化学成分を捕捉することができる。好ましくは、本発明の装置は、水、全血、又は血漿、血清若しくは他の適切な血液画分等の体液から選択される水溶液中に存在する可能性があるLPS、LTA及び/又はPGN等のエンドトキシン等のG−細菌及び/又はG+細菌の表面構造の1つ以上の化学成分を捕捉することができる。これは、水、血液又は他の体液等の水溶液を装置に通すことによって達成される。臨床で使用する場合、装置を体外に適用することが好ましい。
【0163】
本発明は、上述するように、少なくとも1つの成分を含む可能性がある水溶液、好ましくは哺乳類及び/又は非哺乳類等の動物、好ましくはヒトを含む哺乳類に由来する、血液、血漿、血清又は他の適切な血液画分等の体液から、少なくとも1つの成分、好ましくはLPS、LTA及び/又はPGN等のエンドトキシン等のG−細菌及び/又はG+細菌の表面構造の1つ以上の化学成分を除去、好ましくは体外除去する方法を更に提供し、該方法は、
上記少なくとも1つの成分を含む可能性がある、水溶液、好ましくは哺乳類及び/又は非哺乳類等の動物、好ましくはヒトを含む哺乳類に由来する、血液、血漿、血清又は他の適切な血液画分等の体液を準備することと、
上記少なくとも1つの成分、好ましくはLPS、LTA及び/又はPGN等のエンドトキシン等のG−細菌及び/又はG+細菌の表面構造の1つ以上の化学成分を、医療装置の固体支持体に固定された1つ以上のアミノ酸配列若しくはペプチド、又はその誘導体に結合させて、水溶液から少なくとも1つの成分を除去する条件下で、水溶液、好ましくは哺乳類及び/又は非哺乳類等の動物、好ましくはヒトを含む哺乳類に由来する、血液、血漿、血清又は他の適切な血液画分等の体液を、本発明の医療装置に通すことと、
を含む。
【0164】
したがって、本発明の装置を、以下に記載されるように、水溶液、好ましくは哺乳類及び/又は非哺乳類等の動物、好ましくはヒトを含む哺乳類に由来する、血液、血漿、血清又は他の適切な血液画分等の体液から、少なくとも1つの成分、好ましくはLPS、LTA及び/又はPGN等のエンドトキシン等のG−細菌及び/又はG+細菌の表面構造の1つ以上の化学成分を除去、好ましくは体外除去する方法において使用することができる。
【0165】
例えば、哺乳類は齧歯類(ネズミ又はラット等)、霊長類(類人猿、サル又はキツネザル等)、イヌ、ネコ、ウサギ、及びウシ、ウマ又はブタ等の有蹄類であってもよい。好ましい実施形態において、哺乳類はヒトである。例えば、非哺乳類は、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ダチョウ、ハト、シチメンチョウ等である。
【0166】
したがって、本発明の装置を、薬剤として、好ましくはヒトを含む哺乳類、又は非哺乳類における、感染症、感染症に関連した炎症状態、又は感染病原体に由来する産物の存在に関連した炎症性疾患の処置の治療法及び/又は予防法において使用することができる。
【0167】
そのため、本発明は、水溶液、好ましくは動物、好ましくはヒトを含む哺乳類、又は非哺乳類に由来する、血液、血漿、血清又は他の適切な血液画分等の体液からの、少なくとも1つの成分、好ましくはLPS、LTA及び/又はPGN等のエンドトキシン等のG−細菌及び/又はG+細菌の表面構造の1つ以上の化学成分の体外除去のための、感染症、又は感染症に関連する炎症状態、又は感染病原体に由来する産物の存在に関連した炎症性疾患の処置の治療法及び/又は予防法を提供する。
【0168】
処置の治療法及び/又は予防法は、上記少なくとも1つの成分、好ましくはLPS、LTA及び/又はPGN等のエンドトキシン等のG−細菌及び/又はG+細菌の表面構造の1つ以上の化学成分を、医療装置の固体支持体に固定された1つ以上のアミノ酸配列若しくはペプチド、又はその誘導体に結合させて、水溶液から少なくとも1つの成分を除去する条件下で、少なくとも1つの成分を含む可能性がある水溶液、好ましくは動物、好ましくはヒトを含む哺乳類、又は非哺乳類に由来する、血液、血漿、血清又は他の適切な血液画分等の体液を、本発明の医療装置に通すことを含む。
【0169】
特定の実施形態において、感染症は微生物感染である。より特定の実施形態において、微生物感染は、細菌感染(G+細菌又はG−細菌、非病原性又は病原性、好気性又は嫌気性のいずれか)、真菌感染、ウイルス感染、寄生虫感染、及びそれらの組合せ(多微生物感染)からなる群より選択される。
【0170】
別の特定の実施形態において、感染症は、菌血症である。本明細書中で使用する場合、「菌血症」という用語は、血流中の任意の微生物の存在を指す。特に、菌血症は、細菌血症、真菌血症、ウイルス血症、寄生虫血症及びそれらの組合せからなる群より選択される。別の特定の実施形態において、炎症状態は、重症敗血症である。特定の実施形態において、敗血症は、多微生物敗血症である。本発明の特定の実施形態において、炎症状態は、SIRS(全身性炎症反応症候群)である。別の特定の実施形態において、炎症状態は、敗血症である。別の特定の実施形態において、炎症状態は、敗血症性ショックである。最終的に、敗血症性ショックは、エンドトキシン誘導性敗血症性ショックであってもよい。
【0171】
「処置」又は「療法」という用語は、疾患を処置する予防法及び治癒法の両方を包含する。というのは、どちらも、健康の維持又は回復に関するためである。病毒、不快感又は不能の原因に関わらず、適切な作用物質の投与によるその緩和は、本出願の文脈において療法又は治療的使用と解釈されるべきである。
【0172】
特許請求の範囲の記載中で、「を含む」という語句及びその変形は、他の技術的特徴、添加剤、構成成分又は工程を排除すると意図されない。さらに、「を含む」という用語はまた、「のみからなる」という用語も包含し得る。
【0173】
本明細書中で使用する場合、「約」という用語は、表示した値±その値の1%を意味するか、又は「約」という用語は、表示した値±その値の2%を意味するか、又は「約」という用語は、表示した値±その値の5%を意味するか、又は「約」という用語は、表示した値±その値の10%を意味するか、又は「約」という用語は、表示した値±その値の20%を意味するか、又は「約」という用語は、表示した値±その値の30%を意味し、好ましくは、「約」という用語は、正確に表示した値(±0%)を意味する。
【0174】
別記しない限り、本明細書中で使用する技術用語及び科学用語は全て、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書中に記載するものに類似するか、又はそれらと同等の方法及び材料を、本発明の実施に使用することができる。本発明の付加的な目的、利点及び特徴が本明細書を検討することで当業者に明らかとなるか、又は本発明の実施によって理解され得る。以下の実施例及び図面は実例として提示され、本発明を限定することを意図したものではない。
【実施例】
【0175】
材料及び方法
組換えタンパク質及びペプチドの産生及び精製
rshCD6タンパク質及びrshCD5タンパク質を、報告された方法(Sarrias MR, et al., 2004, Biochemical characterization of recombinant and circulating human Sp alpha. Tissue Antigens 63:335-44、非特許文献14)に従い、SURE CHO−M細胞株(商標)クローン(スイス国ジュネーブのSelexis SUREtechnology Platform(商標))及びPX'Therapeutics(フランス国グルノーブル)で開発されたサイズ排除クロマトグラフィープロトコルを用いて精製した。ヒト及びウシの血清アルブミン(それぞれHAS及びBSA)をSigma-Aldrich(ミズーリ州セントルイス)から購入した。
【0176】
ペプチド(CD6.PD1、GTVEVRLEASW(配列番号1);CD6.PD2、GRVEMLEHGEW(配列番号2)及びCD6.PD3、GQVEVHFRGVW(配列番号3);CD5.PD1、GQLEVYLKDGW(配列番号6);CD5.PD2、GVVEFYSGSLG(配列番号7);DMBT−1.pbs1、GRVEVLYRGSW(配列番号8);並びにペプチドCD6 Pcons(「Pcon」、「CD6 con」、「CD6.con」、「CD6 cons」、「PCons」又は「CD6.cons」とも称される、GRVEVLFRGSW(配列番号9)(純度80%超)はProteoGenix(フランス国シルティカイム)により固相ペプチド合成で製造され、希釈した(1:3)アセトニトリルを用いて5mg/mLでストックした。
【0177】
細菌凝集アッセイ
TTCバッファー(50mM Tris(pH7.5)+150mM NaCl、0.1%Tween 20及び1mM Ca2+)で希釈した5×10コロニー形成単位(CFU)/mLを、96U底ウェルマイクロタイタープレート(Biofil)において異なるペプチド濃度(0μg/mL〜200μg/mL)で混合した(1:1)(Bikker FJ, et al., 2002, Identification of the bacteria-binding peptide domain on salivary agglutinin (gp-340/DMBT1), a member of the scavenger receptor cysteine-rich superfamily, J Biol Chem 277:32109-15)。37℃で一晩インキュベーションした後、細菌凝集を光学顕微鏡法で検査し、2名の独立した観察者によって−(なし)から+++(最大)までスコアを付けた。
【0178】
細菌株
多剤耐性アシネトバクター・バウマンニ臨床分離株、エンテロバクター・クロアカエATCC 23355、大腸菌ATCC 25922、クレブシエラ・ニューモニエATCC 13883、リステリア・モノサイトゲネスATCC 19111、シュードモナス・エルギノーサATCC 27853、黄色ブドウ球菌ATCC 25923及びメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)臨床分離株は、ジョルディ・ビラ博士(バルセロナ病院クリニック微生物学部門)によって提供され、ブレインハートインフュージョン培地(Pronadisa)で培養されたリステリア・モノサイトゲネスを除き、Luria Bertoni又は5%ヒツジ血液(Becton Dikinson)を含む寒天において37℃で増殖させた。
【0179】
結合アッセイ
内部蛍光実験
異なるペプチド/タンパク質がLTA(Mr=14000、黄色ブドウ球菌由来)及び粗い(rough)LPS(Re−LPS、Mr=2500、サルモネラ・ミネソタ(Salmonella minnesota)血清型Re595由来)を結合する能力を調べるため、記載されるとおり(Coya JM, et al., 2015, Natural Anti-Infective Pulmonary Proteins: In Vivo Cooperative Action of Surfactant Protein SP-A and the Lung Antimicrobial Peptide SP-BN, J Immunol 195:1628-36)、5mm×5mmパス長の石英キュベットを使用して、サーモスタットキュベットホルダー(±0.1℃)を備えるAB2分光蛍光光度計で結合研究を行った。2−ケト−3−デオキシオクトウロン酸の定量によりRe−LPS濃度を評定した(Garcia-Verdugo I, et al., 2003, Effect of hydroxylation and N187-linked glycosylation on molecular and functional properties of recombinant human surfactant protein A, Biochemistry 42:9532-42)。ペプチド/タンパク質サンプル(10μg/mL)をリン酸バッファー生理食塩水(PBS)(pH7.2)中のLTA又はRe−LPSのいずれかの異なる量の原液で滴定し、295nmの励起でTrp蛍光発光スペクトルを記録した。蛍光強度の読み取り値を、ペプチド/タンパク質の添加により生じる希釈に対して補正した。LTA又はRe−PSに起因するペプチド/タンパク質を含まないサンプルのバックグラウンド強度を各記録から差し引いた。ペプチド/タンパク質−リガンド複合体の見かけ上の解離定数(K)は、LTA又はRe−LPSの添加量による353nmのペプチド蛍光変化のヒルの式に非線形最小二乗法を当てはめることによって得られた(Garcia-Verdugo I, et al., 2003, Effect of hydroxylation and N187-linked glycosylation on molecular and functional properties of recombinant human surfactant protein A, Biochemistry 42:9532-42):
ΔF/ΔFmax=[L]/([L]+K
(式中、ΔFは遊離ペプチドの強度に対する353nmでの蛍光強度の変化であり、Fmaxは飽和しているLTA又はRe−LPS濃度での蛍光強度の変化であり、[L]は遊離しているリガンドのモル濃度であり、nはヒル係数である)。
【0180】
固相結合アッセイ
96ウェルマイクロタイタープレート(デンマーク国ロスキレのNunc)をPBS中5μg/mLの精製されたLPS(大腸菌O111:B4、Sigma L2630)又はLTA(黄色ブドウ球菌、Sigma L2515)を用いて4℃で一晩コーティングした後、ブロッキング溶液(20mM Tris−HCl(pH7.4)+0.05%Tween20及び1%BSA)中で室温にて2時間インキュベートした。ビオチン標識ペプチド/タンパク質(2.5μg/mL〜20μg/mL)を加え、ブロッキング溶液中で4℃にて一晩インキュベートした。徹底的に洗浄した後、結合したペプチド/タンパク質を、室温で1時間セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識ストレプトアビジン(1:5000希釈;DAKO)の添加によって検出した。3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)液体基質(Sigma)を加えることにより発色させ、光学密度を405nm〜620nmで読み取った。
【0181】
動的光散乱(DLS)
ペプチドの流体力学的径(PBS中10μg/mL)を、記載されるとおりに(Saenz A, et al., 2010, Fluidizing effects of C-reactive protein on lung surfactant membranes: protective role of surfactant protein A, FASEB J 24:3662-73)、633nmのHeNeレーザーを搭載したMalvern Instruments(英国ウスターシャー)製のZetasizer Nano Sにおいて25℃で測定した。サンプルごとに4回のスキャンを記録し、サンプルを3回分析した。
【0182】
in vitro細胞培養
6週齢〜8週齢のC57BL/6マウス(Charles River)の脾臓を、細胞ストレーナーを通して濾過することによって脱凝集させ、赤血球溶解後、L−グルタミン(Lonza)+10%ウシ胎児血清(BioWest)、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン及び50μM 2−βメルカプトエタノール(Merck)を含むRPMI1640中に細胞を再懸濁した。ペプチドを漸増させて(0.5μg/mL〜20μg/mL)又はペプチドの不在下で、LPS(0.5μg/mL;大腸菌O111:B4)を含むU底96ウェルプレート(Biofil)において48時間(5%COの加湿雰囲気中37℃)に亘り細胞(2×10)を刺激した。培養上清を採取し、製造業者の指示(BD Biosciences OptEIAセット)に従い、ELISAによってマウスサイトカインを測定した。
【0183】
盲腸結紮穿孔(CLP)の手順
動物の処理は、バルセロナ大学の動物実験倫理委員会によって承認された。死亡率の高い(最初の48時間〜72時間以内の死亡率が90%以上)CLP誘導性敗血症性ショックを以前に報告されているとおりに(非特許文献25)8週齢〜10週齢のC57BL/6J雄性マウス(20g〜25g;Charles River)において誘導した。
【0184】
細菌負荷を評定するため、CLP処置マウスから血液及び脾臓のサンプルを収集し、ホモジナイズして、滅菌PBSで無菌的に希釈した。連続希釈液を、37℃で5%ヒツジ血液(Becton Dickinson)を含む寒天上に一晩プレーティングした。生存可能な細菌数を、CFU/mL(血液)又は1mg当たり(脾臓)として表した。
【0185】
Eupergit(商標)ビーズへのタンパク質/ペプチドの固定化
タンパク質又はペプチド(各2.5mg)を、先に記載されるプロトコル(Zimmermann M, et al., 1999, Endotoxin adsorbent based on immobilized human serum albumin. Clin Chem Lab Med 37:373-379)に従って、マクロ多孔性アクリルEUPERGIT(商標)ビーズ(0.2g、Roehm-Pharma GmbH、ドイツ)上にNH基を介して固定化した。室温でポリマービーズを撹拌しながら、リン酸ナトリウムバッファー100mM(pH8)中、本発明のペプチドの溶液とともに24時間インキュベーションすることによって、ペプチド又はタンパク質でコーティングしたEupergit(商標)ビーズを得る。インキュベーション後、ビーズを3M塩化ナトリウム(pH7.0)、30mMリン酸ナトリウムバッファー(pH4.0)、及び30mMリン酸ナトリウムバッファー(pH8.0)で3回洗浄した。最後に、ペプチド又はタンパク質でコーティングしたビーズに154mM塩化ナトリウム溶液(pH7.0)を加えた。
【0186】
エンドトキシンアッセイ
製造業者の指示に従い、カイネティック比濁(turbidimetric-kinetic)Limulus Amebocyte Lysate(LAL)キット−QCL(50U〜650U、Lonza)を用いてLPS検出を行った。タンパク質/ペプチドでコーティングされたEUPERGIT(商標)ビーズを、製造業者の指示に従って、室温で異なる期間(0分〜150分)、準備したエンドトキシン溶液(50UI/mL)と1:1(体積:体積)でインキュベートした。
【0187】
統計学的分析
生存アッセイを、GraphPad Prismソフトウェアを用いてログランクχ検定によって分析した。実験群間の差の有意性を、95%の信頼区間(CI)で対応のある両側T検定によって決定した。P<0.05の場合、P値を有意とみなした。統計学的分析(平均±SEM)を、95%のCIで両側マンホイットニー検定を用いて行った。
【0188】
結果
実施例1.CD6由来ペプチドの広範囲の細菌結合特性を裏付けるin vitro及びin vivoの証拠
CD6由来ペプチドによる細菌凝集の誘導
この研究で使用した、SRCRドメイン1〜SRCRドメイン3にマッピングされている研究したCD6由来ペプチド(それぞれCD6.PD1、CD6.PD2及びCD6.PD3)、及び他のペプチド(CD6.cons、DMBT1.pbs1、CD5.PD1、及びCD5.PD2)、及びタンパク質(rshCD6(DQLNTSSAESELWEPGERLPVRLTNGSSSCSGTVEVRLEASWEPACGALWDSRAAEAVCRALGCGGAEAASQLAPPTPELPPPPAAGNTSVAANATLAGAPALLCSGAEWRLCEVVEHACRSDGRRARVTCAENRALRLVDGGGACAGRVEMLEHGEWGSVCDDTWDLEDAHVVCRQLGCGWAVQALPGLHFTPGRGPIHRDQVNCSGAEAYLWDCPGLPGQHYCGHKEDAGAVCSEHQSWRLTGGADRCEGQVEVHFRGVWNTVCDSEWYPSEAKVLCQSLGCGTAVERPKGLPHSLSGRMYYSCNGEELTLSNCSWRFNNSNLCSQSLAARVLCSASRSLHNLSTPEVPASVQTVTIESSVTVKIENKESR、配列番号10)及びrshCD5(RLTRSNSKCQGQLEVYLKDGWHMVCSQSWGRSSKQWEDPSQASKVCQRLNCGVPLSLGPFLVTYTPQSSIICYGQLGSFSNCSHSRNDMCHSLGLTCLEPQKTTPPTTRPPPTTTPEPTAPPRLQLVAQSGGQHCAGVVEFYSGSLGGTISYEAQDKTQDLENFLCNNLQCGSFLKHLPETEAGRAQDPGEPREHQPLPIQWKIQNSSCTSLEHCFRKIKPQKSGRVLALLCSGFQPKVQSRLVGGSSICEGTVEVRQGAQWAALCDSSSARSSLRWEEVCREQQCGSVNSYRVLDAGDPTSRGLFCPHQKLSQCHELWERNSYCKKVFVTCQD、配列番号11))の配列及び生理化学的特性を図1Aに収集する。図1Bに示されるin silico構造解析は、全てのCD6ペプチドがCD6の表面でアクセス可能であり、CD6.PD1(及びCD6.PD3)はCD6.PD2の反対側に露出していることを示した。図1Cに示すように、異なる動物種間のCD6由来ペプチドのアミノ酸保存は、CD6.PD2及びCD6.PD3では比較的高く、CD6.PD1では低い。
【0189】
CD6由来ペプチドは、DMBT−1/SAGタンパク質について以前に報告された最小限の9−merコンセンサスモチーフ(VEVLxxxxW)に完全に一致するものはない。CD6由来ペプチドの機能性を細菌凝集アッセイで検討し、このアッセイでは、DMBT1.pbs1(DMBT−1.pbs1、又はpbs1とも称される)及びCD6.cons(CD6 cons、又はPConとも称される)のペプチドを陽性対照として使用した(非特許文献9)。CD5の第2のSRCRドメイン(細菌結合特性が報告されていない高相同性のリンパ球受容体)に存在する類似のペプチド配列(CD5.PD2)を陰性対照として使用した。図2A及び図2Bによって示すように、CD6.PD1及びCD6.PD3では異なるG+細菌懸濁液及びG−細菌懸濁液(MDR株を含む)の用量依存的な凝集が観察されたが、CD6.PD2では観察されなかった。
【0190】
CD6由来ペプチドは、親和性が異なるG−細菌及びG+細菌を構成するPAMPと直接相互作用する
LPS又はLTAによって吸着された固相へのビオチン標識CD6由来ペプチドの結合を、ELISAによって試験した。図3A及び図3Bによって示すように、全てのCD6由来のペプチドが、陽性対照として用いたDMBT1.pbs1及びCD6.consのペプチドと同様に、LPS及びLTAへの用量依存性の結合を示した。しかしながら、CD6.PD3ペプチドは、他の試験したペプチドと比較して、固定化されたLPS及びLTAの両方を結合する能力に優れていた。予想通り、CD5.PD1ペプチド及びrshCD5タンパク質では、有意な結合は認められなかった。これらの結果より、CD6由来ペプチドがLPS及びLTAへの結合特性を保持することが確認される。
【0191】
結合を更に検証し、測定するため、CD6由来ペプチド(CD6.PD1、CD6.PD2及びCD6.PD3)とLPS及びLTAとの相互作用の基礎となる親和性、並びに対応するK値をトリプトファン蛍光発光によって決定した。非特許文献9によって記載されるコンセンサス配列DMBT1.pbs1及びCD6.Pcons(Pcons又はPconとも称される、配列番号9、GRVEVLFRGSW)もこの実験に含めた。図4に要約されるように、全てのCD6由来ペプチドがLPS及びLTAの両方に対して高い親和性を示し、CD6.PD1及び/又はCD6.PD2の方がCD6.PD3と比較して高かった(PD1≧PD2>PD3)。CD6.PD1及びCD6.PD2のK値は、プロトタイプのDMBT1.pbs1及びCD6.consのペプチド又はrshCD6タンパク質自体よりも低い。まとめると、結合結果は、CD6由来ペプチドとG−及びG+の細菌株の必須細胞壁成分との直接的で実質的な相互作用を明白に裏付ける。
【0192】
CD6由来ペプチドの自己凝集特性がそれらの凝集特性に関係しているかどうかを知るため、溶液中のCD6由来ペプチドの流体力学的サイズをDLSで分析した。結果は、CD6由来ペプチドが、それらの自己凝集特性に応じて異なる流体力学的サイズの粒子を形成したことを示す(図5)。CD6.PD3粒子は、自己凝集を示す630±3nm及び5151±7nmの2つのピークを示した。同様の状況は、CD6.PD1(321±5nm及び1484±8nmの2つのピーク)、CD6.cons(1636±6nm及び5493±7nmの2つのピーク)、並びにDMBT1.pbs1(169±5nm及び617±4nmの2つのピーク)に当てはまる。対照的に、CD6.PD2は、他のCD6及びDMBT1に由来するペプチドと比較して、その低い細菌凝集特性と一致して、379±5nmを中心とする単一のピークを示した。
【0193】
次に、CD6由来ペプチドの主要な病原性細菌産物との相互作用の機能的関連性をex vivoで調査した。この目的のため、LPSに曝露されたマウス脾臓細胞によるサイトカイン放出に対する漸増濃度のCD6ペプチドの調節効果を試験した。図6によって示されるように、CD6.PD3及びCD6.consのペプチドのみが、炎症性IL−6及びIL−1βサイトカイン放出に対して用量依存性の阻害作用を示し、前者の場合、統計学的有意性に達した。同じCD6.PD3(ただしCD6.consではない)ペプチドは、抗炎症性サイトカインIL−10の統計学的に有意ではない用量依存性の放出の増加も誘導した。
【0194】
CLP誘発性敗血症性ショックにおけるCD6由来ペプチドのin vivo有効性
CD6由来ペプチドのin vivoの効果を、CLP誘導性敗血症性ショックを受けたマウスで試験した(Rittirsch D, et al., 2009, Immunodesign of experimental sepsis by cecal ligation and puncture, Nat Protoc 4:31-6)。この目的のため、CLP誘導の1時間後にC57BL/6マウスに単回静脈内(i.v.)用量(6mg/kg)の異なるペプチドを注入し、その後生存をモニタリングした。図7Aに示すように、CD6.PD2(12.5%、P<0.0005)及びCD6.PD3(36.36%、P<0.0001)を注入したマウス間で、生理食塩水処置群と比較して有意な生存の上昇が認められ、この事実は、DMBT−1.pbs1(23.07%、P<0.0025)及びCD6.cons(25%、P<0.0101)のペプチドを注入したマウスでも認められた(図7B)。CD6.PD1ペプチドでは、マウスの生存に対する有意な効果は認められなかった。
【0195】
敗血症性ショックに対するCD6.PD3のin vivo保護特性がCD6.PD1及びCD6.PD2よりも優れていたため、その時間依存性、用量依存性及び全身経路依存性の効果を探る追加実験を行った。図8A及び図8Bに示すように、CLP後の最大生存率は、6mg/kg又は12mg/kgの用量のCD6.PD3注入後(3mg/kgでの23.08%に対してそれぞれ37.5%及び40%)、及びCLP誘導後+1時間に得られた(+3時間での20%に対して40%)。CD6.PD3ペプチドを最適条件(CLP後+1時間に6mg/kg)で注入した場合、静脈内(i.v.)又は腹腔内(i.p.)の経路の間に有意差は認められなかった(図8C)。
【0196】
次に、最適なCD6.PD3ペプチド注入条件の血清サイトカインレベル及びCLP後の細菌負荷に対する効果を更にモニタリングした。この目的のため、CLP誘導性敗血症性ショックを受けるC57BL/6マウスを、生理食塩水又はCD6.PD3ペプチド(CLP後+1時間に6mg/kgの単回i.v.注入)で処置し、その後それぞれ4時間後及び20時間後に出血させて屠殺した。図9Aに示すように、CD6.PD3処置マウスは、生理食塩水処置群と比較して、CLP後20時間に炎症性サイトカインIL−1β、IL−6及びTNF−αの有意に低いレベル(P<0.05)を示した。同様に、同じCD6.PD3処置マウスは、生理食塩水対照群(図9B)と比較して、CLP後20時間で屠殺したとき、血液及び脾臓から単離されたCFUの低下も示した。これらの結果は、CD6.PD3ペプチドが敗血症性ショックの実験モデルにおいてrshCD6タンパク質に関して報告されている治療特性を保持することを示している(非特許文献25)。これは、CD6.PD3と広域スペクトル殺菌性抗生物質であるイミペネム/シラスタチン(I/C)とを同時に処置した敗血症マウスにも当てはまる。図10に示すように、CLP誘導性敗血症性ショック後+1時間のCD6.PD3(6mg/kg i.v.)とイミペネム/シラスタチン(50mg/kg/12時間 i.p.)との併用投与は、個別のCD6.PD3(30.8%;P=0.018)又はI/C(44.4%;P=0.0015)と比較して、マウス生存に対して統計学的に有意な相加/相乗効果をもたらした(90.9%)。
【0197】
考察
本実施例は、短い(長さ11−mer)CD6由来ドメイン内ペプチドが、天然CD6タンパク質のin vitro及びin vivoで細菌認識特性を保持していることを示している。かかる配列(CD6.PD1、CD6.PD2及びCD6.PD3)は、CD6の3つのSRCRドメインの表面アクセス可能部位にマッピングされ、DMBT−1/SAGタンパク質において同定された11−merコンセンサスペプチド(pbs1)に相同である(非特許文献9)。
【0198】
i)最小VEVLxxxxWコンセンサスモチーフを持つ幾つかのSRCR−SFの成員からの同様の相同配列は細菌に結合しない(非特許文献9)が、ii)どのCD6由来ペプチドも上述のコンセンサスモチーフに完全には一致せず、3つのCD6由来ペプチドは全て、Kが異なってもLPS及びLTAの両方と、並びに様々なin vitro及びin vivoでの機能特性(例えば、細菌凝集又はCLP誘導性死の防止)と相互作用する。
【0199】
CD6.PD3ペプチドは、他のCD6由来ペプチド(CD6.PD2ではP=0.04及びCD6.PD1ではP=0.0005)と比較して、CLP誘導性敗血症性ショックのマウスモデルにおいて治療目的でアッセイした場合に、in vivoの結果がより良好であった。また、CD6.PD3はプロトタイプのDMBT−1.pbs1ペプチド又はCD6.cons配列よりも優れているが、差は統計学的有意性に達しなかった(P=0.1)。もう1つの顕著な知見は、敗血症を経験した救急患者における第一選択治療とみなされるカルバペネムファミリーの成員であるイミペネム/シラスタチンと共投与した場合のCD6.PD3ペプチドのマウス生存効果に対する統計学的に有意な相加/相乗効果である(Verwaest C, 2000, Belgian Multicenter Study Group. Meropenem versus imipenem/cilastatin as empirical monotherapy for serious bacterial infections in the intensive care unit, Clin Microbiol Infect 6:294-302)。したがって、CD6.PD3はrshCD6の抗菌特性のほとんどを集めるため、後者に対する費用対効果が優れた代替手段、並びに抗生物質療法に対する優れた補助戦略を構成する。
【0200】
結論として、本知見は、短い(11−mer)ペプチド配列がCD6の細胞外領域全体の細菌結合特性を保持することができることを示し、現在利用可能な敗血症治療に代わる新たな選択肢を開発する費用対効果の高い機会を開く。敗血症応答の複雑な生理学は、短期及び長期の敗血症転帰を決定する様々な時間依存因子を多分野的に同時に研究する必要がある。
【0201】
実施例2.固相に共有結合したCD6由来ペプチドによる循環細菌毒素の吸着
結果
異なる期間に亘って、異なるCD6由来ペプチド(CD6.PD2、CD6.PD3及びCD6.cons)又はタンパク質(HSA(UniProtKB−P02768、MKWVTFISLLFLFSSAYSRGVFRRDAHKSEVAHRFKDLGEENFKALVLIAFAQYLQQCPFEDHVKLVNEVTEFAKTCVADESAENCDKSLHTLFGDKLCTVATLRETYGEMADCCAKQEPERNECFLQHKDDNPNLPRLVRPEVDVMCTAFHDNEETFLKKYLYEIARRHPYFYAPELLFFAKRYKAAFTECCQAADKAACLLPKLDELRDEGKASSAKQRLKCASLQKFGERAFKAWAVARLSQRFPKAEFAEVSKLVTDLTKVHTECCHGDLLECADDRADLAKYICENQDSISSKLKECCEKPLLEKSHCIAEVENDEMPADLPSLAADFVESKDVCKNYAEAKDVFLGMFLYEYARRHPDYSVVLLLRLAKTYETTLEKCCAAADPHECYAKVFDEFKPLVEEPQNLIKQNCELFEQLGEYKFQNALLVRYTKKVPQVSTPTLVEVSRNLGKVGSKCCKHPEAKRMPCAEDYLSVVLNQLCVLHEKTPVSDRVTKCCTESLVNRRPCFSALEVDETYVPKEFNAETFTFHADICTLSEKERQIKKQTALVELVKHKPKATKEQLKAVMDDFAAFVEKCCKADDKETCFAEEGKKLVAASQAALGL、配列番号12)、rshCD5、及びrshCD6)でコーティングしたEupergit(商標)ビーズとともに、エンドトキシン溶液(50UI/mL LPS)をインキュベートすることによって得られた結果を図11に示す。CD6.PD2、CD6.PD3及びrshCD6でコーティングされたビーズは、HSA及びrshCD5でコーティングされた対照と比較して、(LALアッセイで検出される)エンドトキシンレベルを低下させた。体外血液灌流のためのCD6由来ペプチドの使用は、ポリミキシンB固定化繊維血液浄化カラム等の既存の装置よりも利点があり(Esteban E, et al., 2013, Immunomodulation in sepsis: the role of endotoxin removal by polymyxin B-immobilized cartridge, Mediators Inflamm 2013:507539)、すなわち、i)報告されたLPS/ポリミキシンB相互作用の親和性(使用されるG−株に応じて、K100nM〜900nM)(McInerney MP, et al., 2016, Quantitation of Polymyxin-Lipopolysaccharide Interactions Using an Image-Based Fluorescent Probe, J Pharm Sci; 105:1006-10)は、CD6.PD1及びCD6.PD2よりも低く(それぞれK3.5±0.3nM、及び35±2nM)、またii)ポリミキシンBは、主にLPSに結合するが、CD6.PD1及びCD6.PD2もそれぞれK0.39±0.06nM及び0.31±0.04nMの親和性でLTAを結合する。したがって、CD6由来のペプチドは、敗血症の50%超に関わるG+感染の場合にも使用することができる(Martin GS, 2012, Sepsis, severe sepsis and septic shock: changes in incidence, pathogens and outcomes, Expert Rev Anti Infect Ther 10:701-6)。
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【配列表】
2021518426000001.app
【国際調査報告】