(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-518528(P2021-518528A)
(43)【公表日】2021年8月2日
(54)【発明の名称】センサーの較正
(51)【国際特許分類】
G01D 18/00 20060101AFI20210705BHJP
G08C 25/00 20060101ALI20210705BHJP
【FI】
G01D18/00
G08C25/00 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-548943(P2020-548943)
(86)(22)【出願日】2019年3月22日
(85)【翻訳文提出日】2020年9月25日
(86)【国際出願番号】FI2019050242
(87)【国際公開番号】WO2019180325
(87)【国際公開日】20190926
(31)【優先権主張番号】20185271
(32)【優先日】2018年3月22日
(33)【優先権主張国】FI
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】518204774
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ヘルシンキ
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【弁理士】
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】タコマ サス
(72)【発明者】
【氏名】ペタヤ トゥーッカ
(72)【発明者】
【氏名】クルマラ マルック
(72)【発明者】
【氏名】クヤンスー ヨニ
【テーマコード(参考)】
2F073
2F076
【Fターム(参考)】
2F073AA01
2F073AA02
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2F076AA07
(57)【要約】
変化する動作環境において第1のセンサーを較正する方法及び装置が開示される。前記第1のセンサーからセンサーデータを受信すると共に、既知の較正用センサーからセンサー値を受信する。前記第1のセンサーのためにセンサー固有のモデルを保持する。ドリフト及びエラーを推定すると共に、既知の較正用センサーとのセンサー値の差と、較正の必要性を検出する。前記差を用いて、前記センサーデータのための補正係数又は補正モデルを推定すると共に、これを用いて前記第1のセンサーを較正する。補正係数又は補正モデルはセンサー固有のモデルから導かれる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変化する動作環境において第1のセンサーを、較正処理によって較正する方法であって、前記較正処理は、
前記第1のセンサーからセンサーデータを受信することと;
既知の較正用センサーからセンサー値を受信することと;
前記第1のセンサーのためにセンサー固有のモデルを保持することと;
ドリフト及びエラーを推定することにより、較正の必要性を検出すること、但し前記検出することは、前記既知の較正用センサーとのセンサー値の差を考慮に入れることを含む、前記検出することと;
前記差を用いて、前記センサーデータのための補正係数又は補正モデルを推定すると共に、前記推定した補正係数又は補正モデルを用いて前記第1のセンサーを較正することと;
を含み、ここで前記補正係数又は前記補正モデルは、前記センサー固有のモデルから導かれる、方法。
【請求項2】
前記較正用センサーは、1つ又は複数の較正されたセンサーにより提供されるセンサーデータのモデルに基づく仮想センサーである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
センサーネットワークから受信した、決定された時空間データを使って、長期間のセンサーの観察に基づいて、仮想センサーデータが開発される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
複数の異なるセンサーが階層的にランク付けされ、前記第1のセンサーの較正に階層モデルが使われ、前記較正用センサーは前記階層モデルにおいて高次にランク付けされる、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記第1のセンサーは所与の系を測定するように構成され;
前記第1のセンサーが測定するように構成された前記系の1つ又は複数の性質が空間モデルに保持され;
前記第1のセンサーとは別に実行される測定であって、別の条件の下で行われる測定を使って、前記第1のセンサーの導かれた較正を実行するために、前記空間モデルが階層的に使用される、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記空間モデルが複数の大気質パラメータを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記空間モデルは、追加のデータソース又はデータ同化のための、局所的大気質モデルに結合される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
複数のセンサーが、互いに交信するセンサーのグループを形成する、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
検知能力の正確さを向上させるために、1つのノードの中や複数のノードの間で複数層の較正が実行される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記センサーネットワークは、動き回るセンサーを含み、該動き回るセンサーは、一つ又は複数の基準観測サイトから固定的センサーネットワークに較正を伝えるように構成される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記、較正の必要性を検出することは、センサー固有のモデルを考慮に入れることを含む、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記、較正の必要性を検出することは、前記センサーの前記動作環境を考慮に入れることを含む、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記、較正の必要性を検出することは、前記第1のセンサーのセンサープロファイルを考慮に入れることを含む、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記、較正の必要性を検出することは、前記第1のセンサーのセンサー固有のドリフトプロファイルを考慮に入れることを含む、請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記、較正の必要性を検出することは、センサー固有のエラープロファイルを考慮に入れることを含む、請求項1から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記較正用センサーは、リモートコントローラにより制御される、請求項1から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
総合観察から代理変数が取り入れられ、複数のセンサーによるネットワークを介して拡張される、請求項1から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
較正されたセンサーが強化仮想センサーに拡張され、前記強化仮想センサーは、環境の性質を、少なくとも前記第1のセンサーのハードウェアの仕様を超えて検出するように構成される、請求項1から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
セルラネットワークにおいて分散サービスを実装するシステムであって、請求項1から18のいずれかに記載の方法を遂行するエッジコンピューティングを含む、システム。
【請求項20】
変化する動作環境において第1のセンサーを較正する装置であって、
前記第1のセンサーからセンサーデータを受信する手段と;
既知の較正用センサーからセンサー値を受信する手段と;
前記第1のセンサーのためにセンサー固有のモデルを保持する手段と;
ドリフト及びエラーを推定することにより、較正の必要性を検出する手段、但し前記検出することは、前記既知の較正用センサーとのセンサー値の差を考慮に入れることを含む、前記検出する手段と;
前記差を用いて、前記センサーデータのための補正係数又は補正モデルを推定することにより、前記第1のセンサーを較正する手段と;
を備え、前記補正係数又は前記補正モデルは、前記センサー固有のモデルから導かれる、装置。
【請求項21】
請求項1から18のいずれかに記載の方法を遂行するように構成される、請求項20に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的にセンサーの較正に関する。
【背景技術】
【0002】
このセクションは、有用な背景情報を説明するが、ここで説明されている技術が技術水準を示していることを認めている訳ではないことに注意されたい。
【0003】
センサーは通常、対象物について測定した性質に基づいて、また所定のふるまいに基づいて、所定の出力を生成する。簡単な例として、温度センサーは、所定の温度範囲において、電気抵抗を線形に変化させうる。サーミスタのふるまいは、通常、傾きとオフセットでモデル化されうる。すなわち、直線の方程式を使ってモデル化されうる。
【0004】
一酸化炭素センサーや放射線量センサーのようないくつかのセンサーは、測定値の総計を計算したり、ある時間に亘って測定した性質の濃度を積分したりするように構成される。時には、測定した性質と出力との間の関係は非線形であることもある。センサーによっては、普通のサーミスタよりも、利得の点で、安定性が低いものもある。センサーによっては、内部でフィルタリングを行うものもある。例えば、干渉を除去するためのバンドパスフィルターやハイパスフィルターが入っているセンサーがあり、生の測定値の一部はセンサー内で失われてしまう。
【0005】
センサーは通常、標準化された方法で、様々な条件に晒されて、較正される。そして、センサーの挙動が望んだ通りになるように、センサーの動作が調整され、較正される。センサーがデジタル回路を有する場合、較正はデジタル的に簡単に行うことができることがあり、測定した性質の関数として所望の出力が得られるように設定される適切な伝達関数を形成することにより行うことができることがある。このようなデジタル較正は、分散された形で行われることもできる。すなわち、センサー以外の要素で、例えばセンサーの出力を受ける処理要素によって、センサー値のデジタル的な修正を行うことで、行われることもできる。
【0006】
アナログセンサーの場合、較正は例えば、センサーに直列に接続される抵抗を増やしたり減らしたり、アンプの出力を増幅したりすることで、行うことができる。アンプの出力の増幅は、アンプのトランジスタのバイアスを調整することで、行うことができる。しかし、このような標準化された較正には、較正ステーションにセンサーを集めたり、標準化較正ステーションをセンサーの所まで運んだりする必要が生じる。
【0007】
本発明の目的は、センサーの較正を簡素化することである。本発明の別の目的は、センサーの較正を従来よりも頻繁に行うことを可能にすることである。本発明の別の目的は、既存の技術の代替となる技術を提供することである。
【発明の概要】
【0008】
第1の例示的側面によると、較正プロセスにおいて第1のセンサーを較正する方法が提供される。この方法は、
前記第1のセンサーからセンサーデータを受信することと;
既知の較正用センサーからセンサー値を受信すること、及び、前記第1のセンサーのセンサー固有のモデルを保持すること、の少なくとも1つを行うことと;
ドリフト及びエラーを推定することにより、較正の必要性を検出すること、但し前記検出することは、前記既知の較正用センサーとのセンサー値の差を考慮に入れることを含む、前記検出することと;
前記差を用いて、前記センサーデータのための補正係数又は補正モデルを推定することにより、前記センサーを較正することと;
を含む。
前記補正係数又は前記補正モデルは、前記センサー固有のモデルから導かれる。
前記、較正の必要性を検出することは、前記センサーの動作環境、センサープロファイル、センサー固有のドリフトプロファイル、センサー固有のエラープロファイルの少なくとも1つを考慮に入れることを含んでもよい。
【0009】
前記方法は更に、複数の異なるセンサーが階層的にランク付けされ、前記第1のセンサーの前記較正に階層モデルが使われることを含む。ここで、前記較正用センサーは前記階層モデルにおいて高次にランク付けされる。
【0010】
前記方法は更に、次のことを含む。
前記第1のセンサーは所与の系を測定するように構成され、前記第1のセンサーが測定するように構成された前記系の1つ又は複数の性質が空間モデルに保持される。
前記第1のセンサーとは別に実行される測定であって、別の条件の下で行われる測定を使って、前記第1のセンサーの導かれた較正を実行するために、前記空間モデルが階層的に使用される。
【0011】
前記方法は更に、前記空間モデルが複数の大気質パラメータを組み込むことを含む。前記空間モデルは、追加のデータソース又はデータ同化のための、局所的大気質モデルに結合されてもよい。
【0012】
前記方法は更に、複数のセンサーが、互いに交信するセンサーのグループを形成することを含む。検知能力の正確さを向上させるために、1つのノードの中や、複数のノードの間で、複数層(例えば2層)の較正が実行されてもよい。センサーネットワークは、動き回るセンサーを含んでもよい。そのようなセンサーは、一つ又は複数の基準観測サイトから固定的センサーネットワークに較正を伝えるように構成されてもよい。
【0013】
前記較正用センサーはモバイルセンサーであってもよい。
【0014】
前記較正用センサーは、リモートコントローラによって制御されてもよい。前記リモートコントローラはサーバコンピュータであってもよい。別の形態では、前記リモートコントローラは分散型機能として実装されてもよい。前記分散型機能は、クラウドコンピューティングによって実装されてもよい。前記リモートコントローラは、コンピュータネットワークの端部に位置するエッジサーバにより実装されてもよい。
【0015】
前記リモートコントローラは、複数のセンサーのランタイムキャリブレーションを実行してもよい。
【0016】
前記較正用センサーは、較正されたセンサーにより提供されるセンサーデータのモデルに基づく、仮想センサーであってもよい。前記仮想センサーデータは、長期間のセンサーの観察に基づいて開発されてもよい。その際、センサーネットワークから受信した、決定された時空間データを使って開発されてもよい。
【0017】
前記方法は更に、総合観察(comprehensive observation)から代理変数(proxy variable)が取り入れられ、センサーのネットワークを介して拡張されることを含んでもよい。
【0018】
例えば、SO
2について、太陽放射及び粒子状物質が、気相の硫酸の濃度のデータをもたらすことがある。人工知能やデータマイニングの技術を用いて、新たしいプロキシ(代理物・代用物)が開発されてもよい。
【0019】
前記方法は更に、較正されたセンサーが強化仮想センサー(augmented virtual sensor)に強化されてもよい。強化仮想センサーは、環境の性質を、使用された少なくとも第1のセンサーのハードウェアの仕様を超えて検出するように構成される。
【0020】
較正されたセンサーを強化仮想センサーへと強化することは、較正モデルを使用してもよい。強化仮想センサーは更に、環境モデルを使用してもよい。前記環境モデルは、前記リモートコントローラによって生成されてもよい。
【0021】
第2の例示的側面によると、セルラネットワークに分散型サービスを実装するシステムが提供される。このシステムは、
リモートコントローラと;
前記リモートコントローラに交信可能に接続される複数のセンサーと;
を備え、前記リモートコントローラ及び前記複数のセンサーは、前記第1の例示的側面に従う方法を遂行するように構成される。
【0022】
第3の例示的側面によると、コンピュータプログラムが提供される、このコンピュータプログラムは、実行されると、装置に少なくとも、前記第1の例示的側面に従う方法を遂行させるように構成されるコンピュータ実行可能なプログラム命令を備える。
【0023】
前記コンピュータプログラムは記憶媒体に格納されてもよい。前記記憶媒体は非揮発性記憶媒体であってもよい。
【0024】
第4の例示的側面によると、第1のセンサーを較正する装置が提供される。この装置は、
前記第1のセンサーからセンサーデータを受信する手段と;
既知の較正用センサーからセンサー値を受信すること、及び、前記第1のセンサーのセンサー固有のモデルを保持すること、の少なくとも1つを行う手段と;
ドリフト及びエラーを推定することにより、較正の必要性を検出する手段、但し前記検出することは、前記既知の較正用センサーとのセンサー値の差を考慮に入れることを含む、前記検出する手段と;
前記差を用いて、前記センサーデータのための補正係数又は補正モデルを推定することにより、前記センサーを較正する手段と;
を備える。
【0025】
前記補正係数又は前記補正モデルは、前記センサー固有のモデルから導かれる。
前記、較正の必要性を検出する手段は、前記センサーの動作環境、センサープロファイル、センサー固有のドリフトプロファイル、センサー固有のエラープロファイルの少なくとも1つを考慮に入れて、較正の必要性を検出してもよい。
【0026】
上記の記憶媒体は、データディスク、光記憶装置、磁気記憶装置、光磁気記憶装置のような、デジタルデータ記憶装置を含んでもよい。前記記憶媒体は、実質的に記憶機能以外の機能を有さずにバイスに搭載されてもよい。また前記記憶媒体は、他の機能を有するデバイスの一部として形成されてもよく、非限定的な例として、コンピュータやチップセット、電子機器のサブアセンブリのような機器のメモリであってもよい。
【0027】
本発明の様々な側面や実施形態を示したが、これらは発明の範囲を限定するために提示されたものではない。これらの実施形態は、本発明の実施にあたり使用され得る特定の態様やステップを説明するために用いられたに過ぎない。いくつかの実施形態は、本発明の特定の例示的側面を使ってのみ説明されるかもしれない。いくつかの実施形態は他の実施形態にも適用可能であることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明のいくつかの実施形態が、以下の添付図面を参照して説明される。
【
図1】本発明のある実施形態に従うシステムの概略図である。
【
図2】ある例示的実施形態に従う処理のフローチャートである。
【
図4】本発明のある実施形態に従う主要な信号伝達を図示する。
【
図5】本発明の別の実施形態に従う主要な信号伝達を図示する。
【0029】
以下の説明において、同じような符号は同じような要素又はステップを示す。
【0030】
図1は、本発明のある実施形態に従うシステム100の概略図である。システム100は、変化する動作環境において、第1のセンサー110を有する。第1のセンサー110は、既知の較正パラメータにより定義されるセンサープロファイルを有する。センサープロファイルには、個別のセンサープロファイル識別子が関連付けられる。
【0031】
システム100は更に、較正用センサー120を有する。較正用センサー120は、実存のセンサーであってもよいが、仮想センサーであってもよい。較正用センサー120は、既知の較正パラメータにより定義されるセンサープロファイルを有する。このセンサープロファイルにも、個別のセンサープロファイル識別子が関連付けられる。
【0032】
システムの100に備えられる複数のセンサーは互いに通信することができ、またはセンサーネットワークを構成することができる。この様子が、第1のセンサー110と較正用センサー120との間の矢印で図示されている。このような通信は、第1のセンサー110が較正条件を検出するために使用されることができる。この較正条件は、例えば、近くの他のセンサー(例えば較正用センサー120)の測定値との測定差が所定の閾値より上である、等であってもよい。
【0033】
実施形態によっては、較正用センサー120及び第1のセンサー110は、いずれも互いに、第1のセンサーと較正用センサーの役割を果たしてもよい。実施形態によっては、較正用センサーは第1のセンサーより階層的に上にあってもよい。例えば、較正用センサー120は第1のセンサーより高い正確性を有してもよい。または、較正用センサー120は、第1のセンサー110より最近較正されたセンセーであってもよく、及び/又は、第1のセンサー110よりも頻繁に較正されるセンサーであってもよい。
【0034】
図1において、第1のセンサー110及び較正用センサー120は、処理要素(例えばエッジモジュール130)と共に、交信可能に描かれている。実施形態によっては、エッジモジュール130は、セルラネットワークや公衆陸上移動ネットワークの基地局と同一の場所に配置されている。エッジモジュールは、第1のセンサー110の較正を制御するように動作してもよい。この較正は、第1のセンサー110から受信したセンサーデータ及びテレメトリーと、較正用センサー120から受信した測定データ又は較正についてのより一般的なデータとを用いて行われてもよい。較正用センサー120は、第1のセンサー110から直接受信したデータを用いると共に、較正用センサー120内の観測又は較正用センサー120の場所における観測に基づいて、較正に関するデータを作成していてもよい。
【0035】
エッジモジュール130は、バックエンド140と交信可能に接続していてもよい。バックエンド140は、例えば、クラウド較正モジュールや1つ又は複数のサーバコンピュータによって実装されてもよい。エッジモジュール130は、バックエンド140に、センサーデータとテレメトリーの集合体を提供する。この集合体は、第1のセンサー110による測定結果と較正用センサー120による測定結果とを含む。
【0036】
実施形態によっては、バックエンド140は、受信した全てのセンサー測定結果及びセンサープロファイルに基づいて、センサーデータマップを作成し、これを更新し、保持する。センサーデータマップは例えば、ローカルまたは分散したデータベースに保持されてもよい。実施形態によっては、センサーマップは、システム100の様々なセンサーの場所又は相対位置を含んでもよい。センサープロファイル識別子は、特定のセンサープロファイルを各センサーに関連付けるために使用されてもよい。
【0037】
センサーマップが計算されると(又はセンサーマップが更新されると)、バックエンド140はエッジモジュール130に、第1のセンサー110のためのローカライズされたモデル又はマップとセンサープロファイルとを提供する。エッジモジュール130は続いて、第1のセンサー110のための部分的なセンサーデータモデル又は物理的モデルマップを計算又は更新する。そして、更新プロセスの一部として、第1のセンサー110へ、(新しい、又は更新された、)較正データを発行する。
【0038】
ある実施形態において、第1のセンサー110からのデータ及びテレメトリーは、ステップ310で受信され、ステップ320で、較正用センサー120からの較正参照データと比較される。この比較において、第1のセンサー110の動作環境、センサープロファイル、ドリフトプロファイル、エラープロファイルの1つ又は複数が考慮に入れられる。比較の結果、不当なデータを発見するに至った場合は(ステップ380)、ステップ390において、その不当なデータが分析される。不当なデータが見つからない限り、処理はステップ330に進み、第1のセンサーの正確さを向上させるモデルに基づいて、第1のセンサーのデータが補強される。ここで再び不当なデータが見つかる場合があり、その場合はステップ380へと進む。そうでなければ、ステップ360に進んで新しい較正構成が形成されるか、ステップ340に進んで処理が進む。
【0039】
ステップ360においては、新しい較正構成が第1のセンサーの正確性を改善させるかどうかの分析も行われる。もし改善させるのであれば、ステップ370において当該較正構成が確定され、補正パラメータが形成される。この補正パラメータには、第1のセンサーの物理的位置が含まれる。もし改善させないのであれば、ステップ340において、第1のセンサーの正確性を最適化するためにパラメータ値が分析され、第1のセンサーの正確性を改善すると期待される較正構成が検索される。そのような較正構成が見つかれば、処理はステップ370に進み、見つからなければ、改善は不可能とみなされる(ステップ350)。
【0040】
第1のセンサー110のための新しい構成の形成や、補正モデルの実装は、データが集められるエッジモジュール130で行われてもよい。
【0041】
仮想センサーとの語句は、現実のセンサーを模倣する、コンピュータにより形成されるセンサーを表す。仮想センサーの形成は、様々なセンサーにより生成されたデータに基づいて行われ、また、環境・動作環境の知識や、モデル化されたセンサーの振る舞いに基づいて行われることができる。更に、他の同様のシステムを学習する人工知能や、システム100自身の過去の処理にも基づいて、行われることができる。例えば、屋外の温度測定を例に取ると、比較的近い場所にある2つのセンサーは、通常同じような値を生成するが、片方が特に冷やされたり温められたりする作用を受けたときはそうではない。例えば、片方だけが雨に打たれたり、太陽の光を吸収する厚い雲の隙間にあたったりする場合である。
【0042】
しかし通常は、2つのセンサーの温度は互いに補完可能である。例えば風速や風向のような他のパラメータと、周囲の他のセンサーの温度変化の知識や通常の温度変化の時間発展の知識とを用いて、温度分布がどのように進むかを推定することは、比較的容易である。複数の性質の間の相関や潜在的因果関係を決定して新しいクロスパラメータモデルを形成するために、人工知能を使うことができる。これは、補強されたセンサーデータを形成し、センサーの実際の能力を超えた特性を示すために使用することができてもよい。補強されたセンサーは、
図4を参照してより詳細に説明される。
【0043】
もし物理センサーが、較正されたセンサーの近くにいる場合、又は(ある物理的距離に)近づいた場合、当該物理センサーからのデータ値は、その領域について現在利用可能な時空間データ及びセンサーデバイスプロファイルと共に、利用されうる。
【0044】
図3に例示される実施形態の一例では、較正されるセンサーと較正用物理センサーとの間のある物理的距離の中で利用可能なデータがない場合、システム100は、第1のセンサー110の位置に、仮想的な較正用センサーを形成する。較正用センサー120のデータ値は、高品質の時空間マップと、過去に当該領域に存在した物理センサーのデータとに基づいて、推定または外挿される。
【0045】
図4は、センサーのハードウェア的な検知能力をソフトウェアによって拡張することが可能な処理を描いたものである。例えば、汚染物質のような性質や環境の性質を検出することが、センサーデバイスのハードウェア的な仕様を超えるものであっても、時空間モデル及びセンサーモデルが、これらを検出するために利用されうる。ステップ430において、処理は、センサーのハードウェア的な能力を超える性質やパラメータを検出するために、時空間モデルに基づいて、センサーを分析する。この分析で、ハードウェア的な能力を超える検出が無理なことが解れば、ステップ480に進み、そしてステップ390で無効なデータが分析される。
【0046】
もし、以前の較正の実行により、新しい、補強されたセンサー構成が確立されていれば、ステップ460において、新しい較正が第1のセンサー110の精度を改善させたかが分析され、補強された第1のセンサーのグラウンドトゥルース(Ground Truth)が推定される。分析の結果がNoである場合、処理はステップ440に進む。Yesである場合、処理はステップ470に進み、新しい、補強されたセンサー構成に基づいて、較正構成及び補正パラメータが確定される。ステップ440では、第1のセンサーのデータや環境モデルに基づいて、新しい汚染物質のような新しい性質を検出するように第1のセンサーが補強され、補強されたセンサーのためのグラウンドトゥルース及び較正が推定される。ステップ440において、第1のセンサー構成に改善が可能であることが解った場合、処理はステップ470に進んで、推定されたグラウンドトゥルース及び較正が採用され、改善が可能でなければステップ450に進む。
【0047】
実施形態によっては、グラウンドトゥルースは、ハードウェア仕様を超えた性質を検出するために使用される相関を特定するために使用される、より正確な較正用センサー120のデータに基づく。センサー補強モデルは、実験室環境で作られてもよい。しかし、代替的に又は追加的に、システム100は、そのようなモデルを、物理的な較正用センサー120のグラウンドトゥルースデータに基づいて、ランタイムで生成してもよい。そして、補強されたセンサー構成が、物理センサーに実装され、確立されてもよい。処理は、利用可能なグラウンドトゥルースデータに基づいて、新しい補強されたセンサー構成の振る舞いを評価してもよい。
【0048】
より高次のレベルに戻り、
図2を参照する。
図2には、第1のセンサーを較正する例示的実施形態に従う較正処理に従うフローチャートが示されている。処理は、リモートコントローラによって実行されてもよい。つまり、エッジモジュール130やクラウド較正モジュール140のような、1つ又は複数の要素によって,実行されてもよい。
【0049】
この処理は、第1のセンサーからセンサーデータを受信すること(210)と;
既知の較正用センサーからセンサー値を受信すること、及び、前記第1のセンサーのセンサー固有のモデルを保持すること、の少なくとも1つを行うことと;
ドリフト及びエラーを推定すると共に、既知の較正用センサーとのセンサー値の差を考慮に入れて、較正の必要性を検出すること(220)と;
前記差を用いて、前記センサーデータのための補正係数又は補正モデルを推定することにより、前記センサーを較正すること(230)と;
を含む。ここで前記補正係数又は前記補正モデルは、前記センサー固有のモデルから導かれる。また、前記検出することは、前記センサーの動作環境、センサープロファイル、センサー固有のドリフトプロファイル、センサー固有のエラープロファイルの少なくとも1つも考慮に入れる。
【0050】
実施形態によっては、複数の異なるセンサーが階層的にランク付けされ、前記第1のセンサーの前記較正に階層モデルが使われる。ここで、前記較正用センサーは前記階層モデルにおいて高次にランク付けされる。
【0051】
実施形態によっては、前記方法は更に次のことを含む。
前記第1のセンサーは所与の系を測定するように構成され、前記第1のセンサーが測定するように構成された前記系の1つ又は複数の性質が空間モデルに保持される。
前記第1のセンサーとは別に実行される測定であって、別の条件の下で行われる測定を使って、前記第1のセンサーの導かれた較正を実行するために、前記空間モデルが階層的に使用される。
【0052】
実施形態によっては、前記空間モデルは、複数の大気質パラメータを有してもよい。前記空間モデルは、追加のデータソース又はデータ同化のための、局所的大気質モデルに結合されてもよい。
【0053】
実施形態によっては、複数のセンサーが、互いに交信するセンサーのグループを形成する。検知能力の正確さを向上させるために、1つのノードの中や、複数のノードの間で、複数層の較正が実行されてもよい。センサーネットワークは、動き回るセンサーを含んでもよい。そのようなセンサーは、一つ又は複数の基準観測サイトから固定的センサーネットワークに較正を伝えるように構成されてもよい。
【0054】
実施形態によっては、較正用センサーは移動センサーであり、例えばポータブルセンサーや、車載センサー、ドローンで運ばれるように構成されるセンサーである。
【0055】
実施形態によっては、前記第1のセンサーは移動センサーであり、例えばポータブルセンサーや、車載センサー、ドローンで運ばれるように構成されるセンサーである。
【0056】
実施形態によっては、前記較正用センサーはリモートコントローラにより制御される。前記リモートコントローラはサーバコンピュータであってもよい。追加的に又は代替的に、前記リモートコントローラは分散型機能を有してもよい。前記分散型機能は、クラウドコンピューティングによって実装されてもよい。前記リモートコントローラは、コンピュータネットワークの端部に位置するエッジサーバにより実装されてもよい。
【0057】
前記リモートコントローラは、複数のセンサーのランタイムキャリブレーションを実行してもよい。
【0058】
実施形態によっては、前記較正用センサーは、較正されたセンサーにより提供されるセンサーデータのモデルに基づく、仮想センサーであってもよい。前記仮想センサーデータは、長期間のセンサーの観察に基づいて開発されてもよい。その際、センサーネットワークから受信した、決定された時空間データを使って開発されてもよい。
【0059】
前記仮想センサーは、例えば人工知能によって、自動的に形成されてもよい。それによって、(前記第1のセンサーを較正するために、)較正用センサーが前記仮想センサーを使って形成されたり改善されたりしてもよい。代替的に、前記仮想センサーは、使用される現実のセンサーの選択に基づいて、又は現実のセンサーと共に適用するパラメータ化に基づいて、少なくとも一部はマニュアルで形成されてもよい。
【0060】
実施形態によっては、総合観察から代理変数が取り入れられ、センサーのネットワークを介して拡張される。
【0061】
例えば、SO
2について、太陽放射及び粒子状物質が、気相の硫酸の濃度のデータをもたらすことがある。人工知能やデータマイニングの技術を用いて、新たしいプロキシ(代理物・代用物)が開発されてもよい。
【0062】
実施形態によっては、較正されたセンサーが強化仮想センサー(augmented virtual sensor)に強化されてもよい。強化仮想センサーは、環境の性質を、使用された少なくとも第1のセンサーのハードウェアの仕様を超えて検出するように構成される。較正されたセンサーを強化仮想センサーへと強化することは、較正モデルを使用してもよい。強化仮想センサーは更に、環境モデルを使用してもよい。前記環境モデルは、前記リモートコントローラによって生成されてもよい。
【0063】
図5は、測定した性質の間の相関を分析する更なる例を示している。この相関は、弱い相関である可能性がある。この方法は、十分なデータが利用可能であるならば、性質の数が幾つであっても一般化して適用することが可能であろう。元のハードウェア仕様を超えた、性質の予測を行うために、最先端の機械学習技術が利用可能である。あるセンサーが、性質Aを測定する(510)。この測定結果Aと、他のセンサーによる測定結果Bとの間の相関が、利用可能なデータに基づいて分析される(520)。また、ある性質に基づいて、別の性質の存在を予測するモデルが構築される(520)。相関が見つかれば、ある性質に基づいて別の性質を予測するモデルが生成される(530)。相関が見つからなければ、処理は終了する。相関が存在しそうであるが、統計的に十分ではない場合も、処理は終了する(550)。モデルが生成された場合は、ステップ530の中で、このモデルを有効化することが試みられる。利用可能なデータに基づいてモデルが有効化された場合は、処理はステップ540に進み、このモデルが採用される。有効化されない場合はこのモデルは採用されない(560)。
【0064】
実施形態によっては、ある自然系のモデルは、他の自然系に適合させられるべく、パラメータ化される。例えば、ある都市又は国の汚染ガスモデルが、他の都市又は国に借用されてもよい。
【0065】
上記のシステムで実行される処理は分散処理されることができる。例えば、リモート要素や上記リモートコントローラのような要素が大きなデータセットの処理を行い、センサー信号の取得や、必要なローカル処理だけが、センサーで行われてもよい。代替的に、実装形態に応じて、他の方法で処理が分散されてもよい。例えば、仮想ネットワーク要素が処理を実行してもよい。
【0066】
実施形態によっては、第1のセンサーの較正は動的に適応されてもよい。この適応は、例えば、基本的なセンサーのパラメータや位置、向きを変化させることにより実装されてもよい。追加的に又は代替的に、この適応は、補正係数又は補正モデルが導出されるモデルを適応させることにより実装されてもよい。
【0067】
様々な実施形態を紹介してきた。「有する」や「備える」「含む」といった語句は、オープンエンドに解されるべきものであり、その他の要素の存在を排除するものではない。
【0068】
以上の説明により、本発明の特定の実装および 実施形態の非限定例を用いて、発明者によって現在考えられている、本発明を実施するための最良の形態の完全かつ有益な説明を提供した。しかしながら、当業者には明らかであるように、上述の実施形態の詳細は本発明を限定するものではなく、本発明の特徴から逸脱することなく同等の手段又は様々な実施形態の組み合わせを用いて、他の実施形態に実装することができる。
【0069】
さらに、以上に開示した本発明の実施形態の特徴は、対応する他の特徴を用いることなく用いられてもよい。然るに、以上の説明は、本発明の原理を説明するための例に過ぎず、それを限定するものではないと捉えるべきである。よって、本発明の範囲は添付の特許請求のみによって制限されるものである。
【国際調査報告】