特表2021-518561(P2021-518561A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特表2021-518561ヘモグロビンの安定化方法およびそれを行うための試薬
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-518561(P2021-518561A)
(43)【公表日】2021年8月2日
(54)【発明の名称】ヘモグロビンの安定化方法およびそれを行うための試薬
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20210705BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20210705BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20210705BHJP
   A61J 1/05 20060101ALI20210705BHJP
【FI】
   G01N33/68
   G01N1/28 J
   G01N33/48 Z
   A61J1/05 310
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】116
(21)【出願番号】特願2020-551467(P2020-551467)
(86)(22)【出願日】2019年3月15日
(85)【翻訳文提出日】2020年11月13日
(86)【国際出願番号】US2019022598
(87)【国際公開番号】WO2019190787
(87)【国際公開日】20191003
(31)【優先権主張番号】62/648,874
(32)【優先日】2018年3月27日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/685,248
(32)【優先日】2018年6月14日
(33)【優先権主張国】US
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520362756
【氏名又は名称】イグザクト サイエンシーズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】フーリエ,キース ディー.
(72)【発明者】
【氏名】へネック,ジャクリーン ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ドマニコ,マイケル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ウェイズバーグ,ウィリアム ジー.
(72)【発明者】
【氏名】リドガード,グラハム ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ハーリングス,キャスリーン エス.
(72)【発明者】
【氏名】シンプソン,ダニエル ジェイ.
【テーマコード(参考)】
2G045
2G052
4C047
【Fターム(参考)】
2G045AA22
2G045BA11
2G045BB32
2G045CB04
2G045DA51
2G052AA28
2G052BA18
2G052BA19
4C047AA05
4C047CC28
(57)【要約】
ヘモグロビン安定化試薬を含む便再懸濁液が提供される。いくつかの実施形態では、ヘモグロビン安定化試薬は、オスモライト、多価カチオン、糖または多糖類、および任意選択で多価カチオン、プロトポルフィリン、またはHRP安定化成分、および任意選択で多価カチオンであってもよい。また、便サンプル中のヘモグロビンを溶液中で安定化させる方法、及び該溶液を含むサンプル収集装置も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)便サンプル、ならびに
(b)以下から選択される1つまたは複数のヘモグロビン安定化試薬を含む便再懸濁溶液
プロトポルフィリン、
多価カチオン、
糖類または多糖類、および任意選択で多価カチオン、
オスモライト、および
HRP安定化成分、および任意選択で多価カチオン
を含む、組成物。
【請求項2】
前記便サンプルがヘモグロビンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記便再懸濁溶液が、多価カチオンと複合体化したプロトポルフィリンIXを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記多価カチオンが、Cr3+またはCo3+である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記溶液が、pH6.5からpH7.4の範囲のpHを有する、請求項3または4に記載の組成物。
【請求項6】
前記多価カチオンがCr3+であり、前記溶液のpHがpH6.9からpH7.4の範囲である、請求項3から5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記多価カチオンがCo3+であり、前記溶液のpHがpH6.5からpH7.0の範囲である、請求項3から5のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記プロトポルフィリンIXが0.5μMから10μMの範囲の濃度である、請求項3から7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記溶液が、置換または未置換のポリガラクツロン酸および任意選択で多価カチオンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記置換または非置換のポリガラクツロン酸が、0.005%から0.5%の範囲の濃度である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記便サンプルが前記溶液中に懸濁されている、請求項1から10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記溶液が、トリス緩衝液、ウシ血清アルブミン、ポリソルベート20、アジ化ナトリウム、塩化ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸、およびゲンタマイシンをさらに含む、請求項1から11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
便サンプル中のヘモグロビンを安定化する方法であって、
プロトポルフィリン、
多価カチオン、
糖類または多糖類、および任意選択で多価カチオン、
オスモライト、ならびに
HRP安定化成分、および任意選択で多価カチオン
から選択される1つまたは複数のヘモグロビン安定化試薬を含む便再懸濁溶液と前記便サンプルとを混合して、懸濁液を生成するステップ、ならびに
前記懸濁液を一定期間維持するステップ
を含む、方法。
【請求項14】
前記懸濁液を遠隔地に輸送するステップを含む、請求項13の方法。
【請求項15】
前記便再懸濁溶液が、多価カチオンと複合体化したプロトポルフィリンIXを含む、請求項13から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
便サンプルを分析する方法であって、
(a)
(i)便サンプル、ならびに、
(ii)プロトポルフィリン、
多価カチオン、
糖または多糖類、および任意選択で多価カチオン、
オスモライト、および
HRP安定化成分、および任意選択で多価カチオン
から選択される1種以上のヘモグロビン安定化試薬を含む便再懸濁溶液
を含む組成物を遠隔地から受け取るステップであって、前記便サンプルが前記溶液中に懸濁されている、ステップ;ならびに
(b)前記組成物中のヘモグロビンの量を測定するステップ
を含む、方法。
【請求項17】
前記サンプル中の1つまたは複数の大腸癌腫瘍マーカーの量を測定するステップをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記便再懸濁溶液が、多価カチオンと複合体化したプロトポルフィリンIXを含む、請求項16から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
サンプル収集装置であって、
解放端を有するサンプル収集容器と、
プロトポルフィリン、
多価カチオン、
糖または多糖類、および任意選択で、多価カチオン、
オスモライト、ならびに
HRP安定化成分、および任意選択で多価カチオン
から選択される1つまたは複数のヘモグロビン安定化試薬を含む、前記容器内にある便再懸濁溶液と、
便のサンプルをすくい取るおよび/または掻き取るための傾斜遠位端を備える便サンプリングロッドと、を備え、
前記サンプリングロッドの前記遠位端が、前記サンプル収集容器内に挿入されるように寸法設定されて、前記サンプリングロッドの近位端が前記サンプル収集容器の前記開放端と接続するように適合されており、それにより、前記サンプリングロッドの前記遠位端を前記装置内で封止する、サンプル収集装置。
【請求項20】
前記サンプル収集容器とサンプリングロッドとがねじ嵌めを介して接続されている、請求項19に記載のサンプル収集装置。
【請求項21】
前記便再懸濁溶液が、多価カチオンと複合体化したプロトポルフィリンIXを含む、請求項19に記載のサンプル収集装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2018年3月27日に出願された米国仮出願第62/648,874号および2018年6月14日に出願された米国仮出願第62/685,248号の利益を主張し、これらの出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
背景
便検体中のヘモグロビン(Hb)を検出する検査は、大腸がん(colorectal cancer)検診に一般的に使用されている。一般的な手順では、検体採取時から検査室で検出アッセイを行うまでの間、ヘモグロビンを安定化させるための緩衝液を含有する検体採取装置を利用する。ヘモグロビンを適切に安定化させる緩衝液の能力は、正確な検査結果を得るために非常に重要であり、輸送時には様々な環境条件でヘモグロビンを安定化させる必要がある。ヘモグロビンを安定化させる緩衝液の能力を高めることは、例えば、より長い輸送期間を可能にし、サンプル処理のために患者および検査ラボにより柔軟性を提供することになる。
【発明の概要】
【0003】
本明細書では、とりわけ、ヘモグロビン安定化試薬を含む便再懸濁溶液が提供される。いくつかの実施形態では、溶液中のヘモグロビン安定化試薬がオスモライト、多価カチオン、糖または多糖、および任意選択で、多価カチオン、プロトポルフィリン、またはHRP安定化成分、および任意選択で、多価カチオンであってもよい。
【0004】
この溶液は、ヘモグロビンの安定化から利益を得ることができる方法において使用される。いくつかの実施形態では、この方法が便サンプルを便再懸濁液溶液と混合して懸濁液を生成すること、および懸濁液を一定期間維持することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、この方法がその懸濁液を遠隔地に輸送することを含んでもよい。溶液中のヘモグロビン安定化試薬は、ヘモグロビンを安定化させ、それによって、サンプル中のヘモグロビンが数日間の輸送の後により正確に測定されることを可能にする。
【0005】
便再懸濁溶液を使用する組成物、方法および装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0006】
例示的な実施形態の説明
本発明をより詳細に説明する前に、本発明は、記載される特定の実施形態に限定されるものではなく、もちろん、様々であり得ることができることを理解されたい。さらに、本発明の範囲は、添付の特許請求項の範囲のみによって制限されるものであるから、本明細書中で用いられる用語は、特定の実施形態を説明する目的のみを有し、限定を意図するものではないことも理解されたい。
【0007】
値の範囲が与えられた場合、間にある各値が、文脈により明らかにそうではないと指図されるのでない限り、下限の単位の10分の1まで、当該範囲の上限と下限の間、およびその記載された範囲内のその他任意の記載されたまたはその間にある値が、本発明内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、より小さい範囲に独立して含まれてもよく、記載された範囲内の具体的に除外される任意の制限を条件として、本発明内にも包含される。記載された範囲が当該制限の一方または両方を含む場合、それらの含まれる制限のいずれかまたは両方を排除する範囲も本発明に含まれる。
【0008】
異なる定義がなされていない限り、本明細書中で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の業者が通常理解するものと同じ意味を有する。本明細書中に記載するものと同様なまたは等価なあらゆる方法並びに材料は本発明の実施または検証においても使用され得るが、好ましい方法並びに材料が以下に記載される。
【0009】
本明細書において引用したすべての出版物および特許は、それぞれ個々の出版物または特許が具体的且つ個別に参照により組み込まれることが示されているかのように参照により本明細書に組み込まれ、それに関連して当該出版物が引用された方法および/または材料を開示および説明するために参照により組み込まれる。任意の刊行物の引用は、出願日前のその開示のためであり、本発明が、先行発明のためにそのような刊行物よりも前の日付を有することを主張する法的権利がないことの容認として解釈されるべきではない。さらに、提示された公開日は実際の公開日と異なる可能性があり、この場合は個別的に確認が必要となる。
【0010】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上他の意味が明確に指示されない限り複数の引用を含むことに注意しなければならない。さらに、請求項は任意の要素を除外するように起案することができることに注意しなければならない。したがって、この記述は、請求項の構成要素の記載または「消極的」限定の使用に関連して、「単独で」、「のみ」などのような排他的用語を使用するための先行基礎として役立つことを意図している。
【0011】
当業者には本開示を読んで明らかとなるように、本明細書に記載し説明した各実施形態のそれぞれは、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、その他いくつかの実施形態の特徴から容易に分離されることもそれらと組み合わせることもできる個別の構成要素および特徴を有する。記載された方法のいずれも、記載された事象の順序で、または、論理的に可能なその他任意の順序で、実施され得る。
【0012】
1つ以上のヘモグロビン安定化試薬を含む便再懸濁溶液が提供される。いくつかの実施形態では、1つ以上のヘモグロビン安定化試薬が、例えば、オスモライト、多価カチオン、糖または多糖(ポリサッカライド)、および任意選択で、多価カチオン、プロトポルフィリンおよびHRP安定化成分、ならびに任意選択で、多価カチオンから選択されてもよい。溶液中のこのような試薬の例および濃度を、以下に示す表および付録に示す。
【0013】
いくつかの実施形態では、溶液は、オスモライト(osmolyte)(例えば、ベタイン)を含むことができる。これらの実施形態において、オスモライト(例えば、ベタイン)は、2M〜5Mの範囲の濃度であり得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、溶液は、糖(例えば、スクロースまたはトレハロース)を含み得る。これらの実施形態において、糖(例えば、スクロースまたはトレハロース)は、0.1M〜0.5Mの範囲の濃度であり得る。いずれの場合においても、溶液は、多価カチオン、Mg2+またはCa2+を任意選択で含有してもよい。これらの実施形態において、多価カチオン(例えば、カルシウムまたはマグネシウムイオン)は、5mM〜25mMの範囲の濃度であり得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、溶液は、多糖(例えば、α−(1−4)結合D−ガラクツロン酸(α-(1-4)-linked D-galacturonic acid))の置換または非置換ポリガラクツロン酸を含むことができる。これらの実施形態において、多糖(例えば、置換または非置換ポリガラクツロン酸)は、0.005%〜0.5%(例えば、0.01%〜0.125%)の範囲の濃度であり得る。これらの実施形態では、溶液は、任意選択で多価カチオンを含むことができる。溶液が多価カチオンを含有する実施形態において、多価カチオンは、5mM〜25mMの範囲の濃度であり得る。いくつかの実施形態では、溶液は、5mM〜25mMの範囲の濃度で、置換または非置換のポリガラクツロン酸および多価カチオン(例えば、カルシウム塩またはマグネシウム塩)を含み得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、溶液は、プロトポルフィリン(例えば、プロトポルフィリンIX)、またはその類似体(例えば、金属イオンと錯体を形成したオクタエチルポルフィリン(HOEP)もしくはテトラフェニルポルフィリン(HTPP)など)を含むことができる。これらの実施形態では、プロトポルフィリンは、ヘミン(配位塩化物リガンドを有する第二鉄(Fe3+)イオンを含有するプロトポルフィリンIX)またはヘマチンであってもよい。他の実施形態では、プロトポルフィリンは、二価または三価のカチオン(例えば、Zn2+、Cr3+、またはCo3+)と複合体化されたプロトポルフィリンIXであってもよい。これらの実施形態において、プロトポルヒリンは0.1μM〜100μM(例えば、1μM〜10μM)の範囲の濃度で溶液中に存在し得る。いくつかの実施形態では、溶液は、HRPコンジュゲート安定剤(PN 85R−102; Fitzgerald Industries)、HRPコンジュゲート安定剤(PN SZ02; Surmodics)およびHRPコンジュゲート安定剤(PN ab171537; Abcam)から選択されるHRP安定化成分を含み得る。他のHRP安定化成分(例えば、AbGuard(BioRad PN: BUF052; BioRad Laboratories Inc. 2000 Alfred Nobel Dr. Hercules, CA 94547))を潜在的に使用可能である。溶液がHRP安定化成分を含む場合、当該成分は1%〜20%(例えば、5%〜15%または5%〜20%)の範囲の濃度であり得る。
【0017】
任意の実施形態において、溶液は、多価カチオン(例えば、カルシウムイオンまたはマグネシウムイオン)を含み得る。これらの実施形態において、多価カチオンは、5mM〜25mMの範囲の濃度であり得る。
【0018】
任意の実施形態において、溶液は、Tris緩衝液(例えば、10mM〜50mM Tris、pH 7.5)、ウシ血清アルブミン(例えば、5%〜20% BSA)、ポリソルベート20(例えば、0.05%〜0.2% ポリソルベート20)、アジ化ナトリウムなどの防腐剤(例えば、0.05%〜0.2% アジ化ナトリウム)、塩化ナトリウムなどの塩(例えば、50mM〜250mM 塩化ナトリウム)、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤(例えば、5mM〜20mM エチレンジアミン四酢酸)、およびゲンタマイシンなどの抗生物質(例えば、5 μg/mL〜50μg/mL)をさらに含む。
【0019】
(a)便サンプルおよび(b)上記の便再懸濁溶液、を含む組成物も提供される。便サンプルは、溶液中に懸濁され得る。便のいくつかの成分は溶液中に溶解され得、ここで、他の不溶性成分は懸濁され得るが、溶液中に溶解されないでもよい。いくつかの実施形態において、便サンプルは、溶液に溶解され得るヘモグロビンを含み得る。これらの実施形態では、ヘモグロビン安定化試薬の存在は、ストレスにさらされていない他の点では同一の対照サンプル、例えば「T」サンプルと比較して、以下に記載されるように、実際のまたはシミュレートされた輸送ストレスにさらされた後のサンプル中のヘモグロビンの量を増加させることができる。いくつかの実施形態では、ヘモグロビン安定化試薬の使用が、ヘモグロビン安定化試薬を含まない他の点では同一の溶液中に懸濁された対照糞便サンプルと比較して、サンプル中のヘモグロビンの量を少なくとも10%、少なくとも20または少なくとも30%増加させることができる。サンプル中のヘモグロビンの量は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって決定され得るが、いくつかの他の方法が公知である(一般的に、Haugら、Am JGastroenterology 105: 682−690; Ahlquistら、Ann Intern Med 1984;101:297−302; Ahlquistら、JAMA 1993 269:1262−1267; Youngら、Dig Dis Sci. 2015 60: 609−622;およびHarewoodら、Mayo Clin. Proc. 2002 77: 23−28を参照のこと)。
【0020】
便ヘモグロビンを安定化する方法も提供される。いくつかの実施形態では、この方法は、便サンプルを、上記のような便再懸濁溶液、すなわち、オスモライト、多価カチオン、糖または多糖、および任意選択で、多価カチオン、プロトポルフィリン;およびHRP安定化成分、ならびに任意選択で多価カチオンから選択される1つまたは複数のヘモグロビン安定化試薬を含む溶液と混ぜ合わせて、懸濁液を生成すること;ならびに当該懸濁液を一定期間維持することを含み得る。溶液中にあり得る試薬の同一性(identity)の詳細ならびにそれらの濃度は、上記、下記および添付の付録に記載される。いくつかの実施形態では、この方法は、例えば、便サンプリング器具を使用して、こすり落とすか、またはすくうことによって、大量の糞便から便サンプルを得ることを含み得る。
【0021】
いくつかの実施形態では、この方法が検査のために、サンプルを遠隔地、例えば、別の町、市、州または国に輸送することを含んでもよい。これらの実施形態において、サンプルは、輸送されるのを途中で待つか、または遠隔地で数日間(例えば、3、4、5、6、または7日間)試験されるのを待つことになるかもしれず、それによって、そのサンプルを、そのサンプル中のヘモグロビンの量を潜在的に減少させるストレスにさらす。
【0022】
また、(a)便サンプル、ならびに(b)例えば、オスモライト、多価カチオン、糖または多糖、および任意選択で、多価カチオン、プロトポルフィリン、およびHRP安定化成分、ならびに任意選択で多価カチオンから選択される1つまたは複数のヘモグロビン安定化試薬を含む便再懸濁溶液、を含む組成物を受け取ることを含む方法も提供される。溶液中のこのような試薬の例および濃度は、上記、下記および添付の付録に記載される。特定の実施形態において、この方法はサンプルが受け取られた後に、そのサンプルに対してアッセイを実施することをさらに含み得る。例えば、溶液中のヘモグロビンの濃度を測定することができ、これを実施するための方法は上記の通りである。さらに、サンプル中の1つ以上の結腸直腸癌腫瘍マーカーの量は、そのサンプルが受け取られた後に試験され得る(一般的に、Lech et al, World J Gastroenterol. 2016 22: 1745-1755およびScheruders et al, Curr. Treat. Options Gastroenterol. 2016 14: 152-162を参照のこと)。これらの実施形態は、検査結果を、例えば、ファックスまたは電子メールなどによって、またはポータルを介してインターネットにより、遠隔地に転送することをさらに含むことができ、それによって、結果が、医師(例えば、MDまたは看護師など)によって取得され得、その後便サンプルが採取された患者に診断が提供され得る。
【0023】
また、(a)開放端を有するサンプル収集容器;(b)その容器内にある便再懸濁溶液(ここで、当該溶液は、本明細書中に記載されるように、オスモライト、多価カチオン、糖または多糖、および任意選択で、多価カチオン、プロトポルフィリン、およびHRP安定化成分、ならびに任意選択で、多価カチオンから選択される1つ以上のヘモグロビン安定化試薬を含む);ならびに(c)便のサンプルをすくいおよび/または掻き取るための遠位傾斜チップを含む便サンプリングロッドを備える、サンプル収集装置が提供される。この装置では、サンプル収集ロッドの遠位端がサンプル収集容器に挿入されるように寸法決めされ、サンプル収集ロッドの近位端はサンプル収集容器の開放端と接続するように適合され、それによって、装置内でサンプル収集ロッドの遠位端を封止する。いくつかの実施形態では、サンプル収集容器およびサンプリングロッドがねじ嵌めを介して接続されてもよい。ヘモグロビン安定化試薬を除いて、このようなサンプル収集装置の例の詳細、選択肢および設計は、例えば、米国特許第9211112号に見出すことができる。いくつかの実施形態では、装置は、米国特許第9211112号に記載されるように、a)本体の遠位端で、本体の遠位端のくぼんだシール用表面に固定された貫通可能なシールによって境界付けられ、近位端で、開口を備える隔壁によって境界付けられたサンプル収集チャンバを備える本体であって、前記貫通可能なシールが、ピペットチップまたは針によって貫通可能である、本体と、b)近位部分および遠位部分を備える可撓性サンプリングロッドであって、前記遠位部分が前記サンプル収集チャンバ内にあるときに、前記開口を通って嵌合し、シールするように適合された、可撓性サンプリングロッドと、を備え、前記遠位部分は、i)遠位端に非対称傾斜チップであって、前記傾斜チップは可撓性サンプリングロッドの円周に頂点を有し、前記可撓性サンプリングロッドを衝突から離れるように屈曲させ、かつ/または挿入されたピペットチップまたは針との衝突を偏向させるように構成された、非対称傾斜チップと、i)複数の計量リッジを形成するための複数の積み重ねられたコーンの同軸円錐台とを備える、可撓性サンプリングロッドと、c)サンプル収集チャンバ内の上述の便再懸濁溶液とを含む。
実施形態
実施形態1
(a)便サンプル;ならびに(b)プロトポルフィリン;多価カチオン;糖または多糖、および任意選択で多価カチオン;オスモライト;ならびにHRP安定化成分、および任意選択で多価カチオンから選択される1つまたは複数のヘモグロビン安定化試薬を含む便再懸濁溶液を含む組成物。
【0024】
実施形態2
上記便サンプルがヘモグロビンを含む、実施形態1に記載の組成物。
【0025】
実施形態3
上記溶液がベタインを含む、実施形態1に記載の組成物。
【0026】
実施形態4
上記ベタインが2M〜5Mの範囲の濃度である、実施形態2に記載の組成物。
【0027】
実施形態5
上記溶液が、スクロースまたはトレハロース、および任意選択で多価カチオンを含む、実施形態1に記載の組成物。
【0028】
実施形態6
上記スクロースまたはトレハロースが、0.1M〜0.5Mの範囲の濃度であり、上記溶液が任意選択で、多価カチオンを含む、実施形態5に記載の組成物。
【0029】
実施形態7
上記溶液が、置換または非置換ポリガラクツロン酸、および任意選択で多価カチオンを含む、実施形態1に記載の組成物。
【0030】
実施形態8
上記溶液が、α−(1−4)結合D−ガラクツロン酸、および任意選択で多価カチオンを含む、実施形態1または7に記載の組成物。
【0031】
実施形態9
上記置換または非置換ポリガラクツロン酸が、0.005%〜0.5%の範囲の濃度で実施態様7に記載の組成物。
【0032】
実施形態10
上記溶液が、置換または非置換ポリガラクツロン酸および多価カチオン(例えば、カルシウム塩またはマグネシウム塩)を、5mM〜25mMの範囲の濃度で含む、実施形態1に記載の組成物。
【0033】
実施形態11
上記溶液がプロトポルフィリンを含む、実施形態1に記載の組成物。
【0034】
実施形態12
上記プロトポルフィリンが、ヘミンまたはヘマチンである、実施形態11に記載の組成物。
【0035】
実施形態13
上記プロトポルフィリンが、2価または3価のカチオン(例えば、Zn2+、Cr3+またはCo3+)と複合体化されたプロトポルフィリンIXを含む、実施形態11に記載の組成物。
【0036】
実施形態14
上記プロトポルフィリンが、0.1μM〜100μM(例えば、1μM〜10μM)の範囲の濃度である、実施形態11〜13のいずれかに記載の組成物。
【0037】
実施形態15
上記溶液が、HRPコンジュゲート安定剤(PN 85R-102; Fitzgerald Industries)、HRPコンジュゲート安定剤(PN SZ02; Surmodics)およびHRPコンジュゲート安定剤(PN ab171537; Abcam)から選択されるHRP安定化成分を含む、実施形態1に記載の組成物。
【0038】
実施形態16
上記HRP安定化成分が、1%〜20%の範囲の濃度である、実施形態15に記載の組成物。
【0039】
実施形態17
上記溶液が、鉄イオン、コバルトイオン、クロムイオン、亜鉛イオン、カルシウムイオンまたはマグネシウムイオンから選択される1つ以上のカチオンを含む、任意の上記実施形態に記載の組成物。
【0040】
実施形態18
上記カチオンが、5mM〜25mMの範囲の濃度である、実施形態17に記載の組成物。
【0041】
実施形態19
上記便サンプルが上記溶液中に懸濁されている、任意の上記実施形態に記載の組成物。
【0042】
実施形態20
上記溶液が、トリス緩衝液、ウシ血清アルブミン、ポリソルベート20、アジ化ナトリウム、塩化ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸、およびゲンタマイシンをさらに含む、任意の上記実施形態の組成物。
【0043】
実施形態21
便サンプル中のヘモグロビンを安定化する方法であって、便サンプルを、プロトポルフィリン;多価カチオン;糖または多糖、および任意選択で多価カチオン;オスモライト;およびHRP安定化成分、および任意選択で多価カチオンから選択される1つまたは複数のヘモグロビン安定化試薬を含む便再懸濁溶液と混合して、懸濁液を生成するステップ;および、懸濁液を一定期間維持するステップを含む方法。
【0044】
実施形態22
上記方法が、上記懸濁液を遠隔地に輸送するステップを含む、実施形態17に記載の方法。
【0045】
実施形態23
(A)遠隔地から、(i)便サンプルと、(ii)プロトポルフィリン;多価カチオン;糖または多糖、および任意選択で多価カチオン;オスモライト;ならびにHRP安定剤成分、および任意選択で多価カチオンから選択される1つまたは複数のヘモグロビン安定化試薬を含む便再懸濁溶液とを含み、上記便サンプルが上記溶液中に懸濁されている組成物を受け取るステップと、(b)上記組成物中のヘモグロビンの量を測定するステップとを含む、便サンプルを分析する方法。
【0046】
実施形態24
上記サンプル中の1以上の大腸癌腫瘍マーカーの量を測定するステップをさらに含む、実施形態19に記載の方法。
【0047】
実施形態25
開放端を有するサンプル収集容器と、上記容器内にあり、プロトポルフィリン;多価カチオン;糖または多糖類、および任意選択で多価カチオン;オスモライト;ならびにHRP安定剤成分、および任意選択で多価カチオンから選択される1つまたは複数のヘモグロビン安定化試薬を含む便再懸濁溶液と、便のサンプルをすくい取る、かつ/または掻き取るための傾斜遠位端を備える便サンプリングロッドとを備えるサンプル収集装置であって、上記サンプリングロッドの上記遠位端が、上記サンプル収集容器内に挿入されるように寸法設定されて、上記サンプリングロッドの近位端がサンプル収集容器の開放端と接続するように適合されており、それによって、上記サンプリングロッドの上記遠位端を上記装置内で封止する、サンプル収集装置。
【0048】
実施形態26
上記サンプル収集容器とサンプリングロッドとが、ねじ嵌め(screw fit)を介して接続されている、実施形態25に記載のサンプル収集装置。
【0049】
実施形態27
便サンプル中のヘモグロビンを安定化する方法であって、上記便サンプルを、多価カチオンと複合体化されたプロトポルフィリンIXを含む便再懸濁溶液と混合して懸濁液を生成するステップ;および上記懸濁液を一定期間維持するステップを包含する方法。
【0050】
実施形態28
上記方法が、上記懸濁液を遠隔地に輸送することを含む、実施形態27に記載の方法。
【0051】
実施形態29
(a)遠隔地から、(i)便サンプル;および(ii)多価カチオンと複合体化されたプロトポルフィリンIXを含む便再懸濁溶液であって、上記便サンプルが上記溶液中に懸濁されている便再懸濁溶液を含む組成物を受け取るステップ;ならびに(b)上記組成物中のヘモグロビンの量を測定するステップを含む、便サンプルを分析する方法。
【0052】
実施形態30
上記サンプル中の1つ以上の大腸癌腫瘍マーカーの量を測定することをさらに含む、実施形態27〜29のいずれかに記載の方法。
【0053】
実施形態31
上記多価カチオンが、Cr3+またはCo3+である、実施形態27〜30のいずれかに記載の方法。
【0054】
実施形態32
上記溶液が、pH 6.5〜pH7.4の範囲のpHを有する、実施形態27〜31のいずれかに記載の方法。
【0055】
実施形態33
上記多価カチオンが、Cr3+であり、上記溶液のpHがpH 6.9〜pH7.4の範囲である、実施形態27〜32のいずれかに記載の方法。
【0056】
実施形態34
上記多価カチオンがCo3+であり、上記溶液のpHがpH 6.5〜pH7.0の範囲である、実施形態27〜32のいずれかに記載の方法。
【0057】
実施形態35
上記プロトポルフィリンIXが、0.5μM〜10μMの範囲の濃度である、実施形態27〜34のいずれかに記載の方法。
【0058】
実施形態36
開放端を有するサンプル収集容器と、多価カチオンと複合体化されたプロトポルフィリンIXを含む便再懸濁溶液と、便のサンプルをすくい取るおよび/または掻き取るための傾斜遠位端を備える便サンプリングロッドとを含む、サンプル収集装置であって、上記サンプリングロッドの上記遠位端が、上記サンプル収集容器に挿入されるように寸法決めされ、上記サンプリングロッドの近位端が上記サンプル収集容器の上記開放端と接続するように適合され、それによって、上記装置内で上記サンプリングロッドの遠位端を密封する、サンプル収集装置。
【0059】
実施形態37
上記サンプル収集容器および上記サンプリングロッドは、ねじ嵌めを介して接続される、実施形態36に記載のサンプル収集装置。
【0060】
実施形態38
上記多価カチオンが、Cr3+またはCo3+である、実施形態36または37に記載のサンプル収集装置。
【0061】
実施形態39
上記溶液が、pH 6.5〜pH7.4の範囲のpHを有する、実施形態36〜38のいずれかに記載のサンプル収集装置。
【0062】
実施形態40
上記多価カチオンがCr3+であり、上記溶液のpHがpH 6.9〜pH7.4の範囲である、実施形態36〜39のいずれかに記載のサンプル収集装置。
【0063】
実施形態41
上記多価カチオンがCo3+であり、上記溶液のpHがpH 6.5〜pH7.0の範囲である、実施形態36〜39のいずれかに記載のサンプル収集装置。
【0064】
実施形態42
上記プロトポルフィリンIXが、0.5uM〜10uMの範囲の濃度である、実施形態16〜21のいずれかに記載のサンプル収集装置。
【0065】
上述の発明について、理解を明瞭にする目的で、図示および実施例を用いてある程度詳細に説明したが、当業者には本発明の教示に照らして、添付の特許請求項の範囲の精神または範囲を逸脱することなく、いくつかの変更および修正が為され得ることが容易に明らかである。
【実施例】
【0066】
実施例1
シミュレートされた輸送ストレス
便サンプル中のヘモグロビンの安定性を評価するために、サンプルをサーマルサイクラーを使用して輸送ストレス条件のシミュレーションに曝露した。表1は、3日間(72時間)の輸送シミュレーションの時間および温度プロファイルを示す。輸送シミュレーションに曝露する前後のサンプルのヘモグロビン濃度を測定するために、ELISAに基づく検出法を使用した。ヘモグロビンの安定性は、サンプルが輸送シミュレーションに曝露された後のヘモグロビンの回収率として計算される。
【0067】
【表1】
【0068】
3日間の輸送シミュレーションを模した、しかし短縮された時間での、加速輸送シミュレーションのプロファイルを作成した。表2は、加速輸送シミュレーションの時間と温度のプロファイルを示す。加速輸送シミュレーションに曝されたサンプルは、3日間の輸送シミュレーションに曝された場合と同様のレベルのHb安定性を示した。
【0069】
【表2】
【0070】
便サンプル中のヘモグロビンの3日を超えた場合の安定性を評価するために、7日間の輸送シミュレーションを作成した。表3は、7日間の輸送シミュレーションの時間と温度プロファイルを示す。
【0071】
【表3】
【0072】
追加の課題として、「最悪の場合」のシナリオを表現するために、極端な温度を使用した輸送シミュレーションを作成した。表4は、3日間の極端な温度の輸送シミュレーションの時間と温度プロファイルを示す。
【0073】
【表4】
【0074】
アッセイ結果
既存の緩衝液(以下に示す)の性能を試験した。7日間の輸送シミュレーションの3日目、5日目、および7日目について、全サンプルにわたるヘモグロビン回収率%の平均値を決定した。これらの結果を以下に示す。
【0075】
【表5】
【0076】
結果を以下の表に示す。
【0077】
【表6】
【0078】
7日間における所望のHb回復率%は、最低でも70%である。このように、既存の緩衝液は、3日(72時間)を超えて所望のレベルの安定性を達成しない。
【0079】
ヘモグロビン安定性を改善するための努力において、いくつかのクラスの化合物(付録Aを参照のこと)を、上述のベース緩衝液(本明細書では既存の緩衝液とも呼ばれる)への添加剤として評価した。
【0080】
これらの化合物は、様々な濃度および組み合わせで試験された。加速輸送シミュレーションを用いて試験された化合物のリストおよびこれらのアッセイの結果は、付録Bに記載されている。3日間の輸送シミュレーションを使用して試験した化合物のリストとその結果は、付録Cに記載されている。試験した化合物の組み合わせのリストを付録Dに示す。
【0081】
評価された化合物のうち、いくつかの化合物は、既存の緩衝液の添加剤としてヘモグロビンの安定性を高める可能性を示すことが確認された。これらの化合物は、以下の表に記載されている。
【0082】
【表7】
【0083】
加速輸送およびその他のシミュレーションからHb安定性を改善させるために最も可能性を示す化合物を、いくつかの異なる輸送シミュレーションで3つの便サンプルについて試験した。これらの結果を以下に示す。
【0084】
3日間(72時間)の輸送シミュレーションでは、潜在的な添加剤は、既存の製剤(Hb回収緩衝液)よりも安定性が改善されていることを示す。以下の表を参照のこと。
【0085】
【表8】
【0086】
試験し、表に示したHRP(セイヨウワサビペルオキシダーゼ)安定剤は以下の通りである。
【0087】
HRPコンジュゲート安定剤(PN 85R−102)、Fitzgerald Industries International, 30 Sudbury Road, Suite 1A North, Acton, MA, 01720 USA
HRPコンジュゲート安定剤(PN SZ02)、Surmodics社、9924 West 74th Street, Eden Prairie, MN 55344 USA
HRPコンジュゲート安定剤 (PN ab171537), Abcam, 1 Kendall Square, Cambridge, MA 02139 USA
7日間の輸送シミュレーションでは、プロトポルフィリンを添加した既存の製剤は、プロトポルフィリンを添加していない既存の製剤よりも安定性が改善した。これらの結果を下表に示す。
【0088】
【表9】
【0089】
3日間の極端な温度での輸送シミュレーションでは、潜在的な添加剤は既存の製剤(Hb回収緩衝液)よりも安定性が改善されていることを示している。HRP安定化バッファーと塩化カルシウムまたは硫酸マグネシウムとを含む添加剤もまた、ポリメドコ緩衝液と比較して改善されたHb安定性を示している。以下の表を参照のこと。
【0090】
【表10】
【0091】
加速輸送シミュレーションにおいて、添加剤ポリガラクツロン酸(塩化カルシウム入り)は、異なる濃度で既存の製剤(Hb回収用緩衝液)よりも改善されたHb安定性を実証している。以下の表を参照のこと。
【0092】
【表11】
【0093】
プロトポルフィリンと呼ばれる別のクラスの化合物が試験され、既存の緩衝製剤に添加するとヘモグロビンの安定性を高めることができる。試験したプロトポルフィリンを下表に示す。プロトポルフィリンの溶解度がpHに敏感であることが知られているため、いくつかの試験例ではpHが変更されていることに注意のこと。
【0094】
【表12】
【0095】
3日間(72時間)の輸送シミュレーションでは、プロトポルフィリンを添加した既存の製剤は、プロトポルフィリンを添加していない既存の製剤よりも安定性が改善されていた)。これらの結果を下表に示す。
【0096】
【表13】
【0097】
7日間の輸送シミュレーションでは、プロトポルフィリンを添加した既存の製剤は、プロトポルフィリンを添加していない既存の製剤よりも安定性が改善された。これらの結果を下表に示す。
【0098】
【表14】
【0099】
既存の製剤(Hb回収用緩衝液)にプロトポルフィリンを添加することで、3日間の極端な温度での輸送シミュレーションにおいてもHbの安定性が改善される。さらに、プロトポルフィリンコバルト(Co)またはプロトポルフィリンクロム(Cr)を含む添加物は、ポリメドコ(Polymedco)緩衝液と比較して改善されたHb安定性を実証している。下の表を参照のこと。
【0100】
【表15】
【0101】
プロトポルフィリンの更なる試験
プロトポルフィリンIXは、以下に記載されている7日間のモディファイドシッピングシミュレーション条件および他の条件を用いて、様々な濃度およびpHで試験した。
【0102】
【表16】
【0103】
次の表は、調整されたpH範囲6.4−7.0で3−6μMの濃度のコバルト(III) PPIX(プロトポルフィリンIX)を含む緩衝液が、7日間の修正輸送シミュレーションで増加したHbの安定性を提供することを示している。
【0104】
【表17】
【0105】
次の表は、コバルト(III)PPIX(プロトポルフィリンIX)を2.5〜10μMの濃度で、pHを6.8に調整した緩衝液は、3日および7日の輸送シミュレーションでHbの安定性を改善させることを示している。
【0106】
次の表は、調整されたpH7.1で0.5〜10μMの濃度のクロム(III)PPIX(プロトポルフィリンIX)を含む緩衝液は、3日および7日目の輸送シミュレーションでHbの安定性を改善させることを示している。
【0107】
【表18】
【0108】
次の表は、6.2−7.4の調整されたpH範囲で2.5−10μMの濃度でコバルト(III)PPIX(プロトポルフィリンIX)を含む緩衝液が、35℃、16時間チャレンジで増加したHb安定性を提供することを示している。
【0109】
次の表は、6.2−7.4の調整されたpH範囲で1.25−5μMの濃度でクロム(III)PPIX(プロトポルフィリンIX)を含む緩衝液が、35℃、16時間チャレンジにおいて増加したHb安定性を提供することを示している。
【0110】
【表19】
【0111】
【0112】
したがって、上述の記載は、単に本発明の原理を例示しているに過ぎない。当業者であれば、本明細書に明示的に記載または示されていないが、本発明の原理を具現化し、その精神および範囲内に含まれる様々な配置を考案することができることが理解されるであろう。 さらに、本明細書で言及されているすべての例示および条件文言は、主として、読者が本発明の原理および本発明者らが技術の発展に貢献した概念を理解するのを助けることを目的としており、そのような具体的に言及されている例示および条件に限定されないものとして解釈されるべきである。さらに、本明細書に記載された本発明の原理、局面、および実施形態、ならびにその特定の実施例を想起するすべての記述は、その構造的および機能的等価物を包含することを意図している。さらに、そのような等価物は、現在知られている等価物および将来開発される等価物の両方、すなわち、構造に関係なく同じ機能を果たす開発されたあらゆる要素を含むことが意図される。したがって、本発明の範囲は、本明細書に示され、記載されている例示的な実施形態に限定されることを意図していない。むしろ、本発明の範囲および精神は、添付の特許請求の範囲によって具体化される。
【0113】
付録A
【0114】
【表20】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
付録B
【0120】
【表21】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
【0178】
【0179】
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
【0185】
【0186】
【0187】
【0188】
【0189】
【0190】
【0191】
【0192】
【0193】
【0194】
付録C
【0195】
【表22】
【0196】
【0197】
【0198】
【0199】
【0200】
【0201】
【0202】
【0203】
【0204】
【0205】
付録D
【0206】
【表23】
【0207】
【0208】
【国際調査報告】