特表2021-518903(P2021-518903A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-518903(P2021-518903A)
(43)【公表日】2021年8月5日
(54)【発明の名称】患者の評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20210709BHJP
   G01N 33/72 20060101ALI20210709BHJP
   G01N 33/84 20060101ALI20210709BHJP
   C12Q 1/37 20060101ALI20210709BHJP
   G16H 10/40 20180101ALI20210709BHJP
【FI】
   G01N33/68
   G01N33/72 A
   G01N33/84 Z
   G01N33/72 B
   C12Q1/37
   G16H10/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2020-544629(P2020-544629)
(86)(22)【出願日】2019年2月20日
(85)【翻訳文提出日】2020年9月30日
(86)【国際出願番号】EP2019054232
(87)【国際公開番号】WO2019162334
(87)【国際公開日】20190829
(31)【優先権主張番号】1802795.3
(32)【優先日】2018年2月21日
(33)【優先権主張国】GB
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】520315176
【氏名又は名称】ヴィロゲーツ エー/エス
【氏名又は名称原語表記】VIROGATES A/S
(71)【出願人】
【識別番号】520315187
【氏名又は名称】ヴィズオウア ホスピタル
【氏名又は名称原語表記】HVIDOVRE HOSPITAL
(71)【出願人】
【識別番号】513232222
【氏名又は名称】ユニヴァーシティ・オブ・コペンハーゲン
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】オイゲン−オルセン イェスパー
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン オーヴェ
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
5L099
【Fターム(参考)】
2G045AA13
2G045AA16
2G045AA25
2G045BA13
2G045BB10
2G045CA11
2G045CA25
2G045CA26
2G045CB03
2G045CB07
2G045CB08
2G045CB14
2G045CB21
2G045DA36
2G045DA38
2G045DA42
2G045DA51
2G045DA53
2G045DB09
2G045DB10
2G045FA34
2G045FB01
2G045FB02
2G045FB03
2G045FB06
2G045FB08
2G045FB12
2G045FB17
2G045GA03
2G045GA06
2G045GC10
2G045GC12
2G045GC15
2G045JA01
2G045JA04
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ36
5L099AA03
(57)【要約】
対象を入院させるか、対象を患者として留置するか、または患者を退院させるかどうかを決定する一助となるように、病院の救急科でのリスク層別化手順の一環として、対象の可溶性ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(suPAR)のレベルがチェックされる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
病院の救急科(ED)に入院した、または訪れたヒト対象にリスク層別化を適用する方法であって、前記対象から得られたサンプル中の可溶性ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(suPAR)レベルを測定することと、それを基準suPAR値と比較することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記対象の罹病率を決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象の院内死亡、または28日、90日、6ヶ月、10ヶ月、もしくは2ヶ月以内の死亡のリスクを決定することを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記病院に前記対象を入院させる必要性を決定することを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記対象を、前記病院を退院させる能力、または前記病院に前記対象を入院させない能力を決定することを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記サンプルが、血液、血清、血漿、脳脊髄液、または尿である、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記リスク層別化が、前記対象の性別、年齢、病歴、ヘモグロビンレベル、C反応性タンパク質レベル、クレアチニンレベル、白血球数、ナトリウムレベル、カリウムレベル、アドレノメデュリンレベル、アルブミンレベル、D−ダイマーレベル、トロポニンレベル(HEARTスコア);生理学的パラメータ、例えば、脈拍、認知、血圧、体温、および呼吸数などの臨床症状および兆候の記録;早期警告スコアおよびその類似の局所的に適合された変数などのリスクアルゴリズムの出力(例えば、決定木早期警告スコア(DTEWS)または全国早期警告スコア(NEWS)、急性生理学および慢性健康評価(Acute Physiology and Chronic Health Evaluation)(APACHE)、グラスゴー昏睡尺度、心電図、年齢、リスク因子、迅速な敗血症関連臓器不全評価(qSOFA)、またはビリルビン、INR(国際標準比)、およびクレアチニンに基づく末期肝疾患モデル(MELD));アメリカ麻酔学会(American Society of Anesthesiologists)(ASA)分類;死亡率および罹患率の数え上げのための生理学的および手術的重症度スコア(Physiologic and Operative Severity Score for the enUmeration of Mortality and Morbidity)(POSSUM)のスコア;または、GRACE ACSリスクおよび死亡率計算機、心筋梗塞の血栓溶解リスクスコア(TIMI RS)、不安定狭心症の血小板糖タンパク質IIb/IIIa:Integrilin療法を使用した受容体抑制(Platelet glycoprotein IIb/IIIa in Unstable angina:Receptor Suppression Using Integrilin Therapy)リスクスコア(PURSUIT RS)、ならびに非ST上昇型急性冠症候群(ACS)の広範囲にわたる院内および1年間の死亡率の急性心事象のグローバルレジストリ(Global Registry of Acute Cardiac Events)リスクスコア(GRACE RS)などの急性入院患者の転帰予測のためのその他のリスクスコア、のうちの1つ以上を測定することおよび/もしくは処理することをさらに含む、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記基準suPAR値が、0〜16ng/mlの血漿レベルである、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記リスク層別化手順の他の構成要素が、前記対象が入院する必要がないか、または退院することができることを示す因子であっても、前記対象における4ng/mlより高い血漿suPARレベルは、対象が患者として入院するべきであるか、または患者として留置されるべきであることを示す因子である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記リスク層別化手順の他の構成要素が、前記対象が入院する必要がないか、または退院することができることを示す因子であっても、前記対象における6ng/mlより高い、特に9ng/mlより高い血漿suPARレベルは、対象が患者として入院するべきであるか、または患者として留置されるべきであることを示す強い因子である、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
4ng/ml未満、特に3ng/ml未満の血漿suPARレベルは、対象が患者として入院する必要がないか、または前記病院を退院することができることを示す因子である、請求項8〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記対象のsuPARレベルが、前記対象が前記病院の救急科に到着してから6時間以内に測定される、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
病院の救急科(ED)に入院した、または訪れたヒト対象にリスク層別化を適用するための装置であって、
前記対象から得たサンプルを収容する手段と、
前記サンプル中の可溶性ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(suPAR)のレベルを測定するように構成された検出器と、
前記suPARレベルを基準suPAR値と比較するための処理モジュールと、
リスク層別化を出力する手段と、を備える、装置。
【請求項14】
前記リスク層別化を出力するための前記手段が、視覚的表示またはプリントアウトである、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記リスク層別化を出力するために、前記装置が、前記対象の性別、年齢、病歴、ヘモグロビンレベル、C反応性タンパク質レベル、クレアチニンレベル、白血球数、ナトリウムレベル、カリウムレベル、アドレノメデュリンレベル、アルブミンレベル、D−ダイマーレベル、トロポニンレベル(HEARTスコア);生理学的パラメータ、例えば、脈拍、認知、血圧、体温、および呼吸数などの臨床症状および兆候の記録;早期警告スコアおよびその類似の局所的に適合された変数などのリスクアルゴリズムの出力(例えば、決定木早期警告スコア(DTEWS)または全国早期警告スコア(NEWS)、急性生理学および慢性健康評価(APACHE)、グラスゴー昏睡尺度、心電図、年齢、リスク因子、迅速な敗血症関連臓器不全評価(qSOFA)、またはビリルビン、INR(国際標準比)、およびクレアチニンに基づく末期肝疾患モデル(MELD));アメリカ麻酔学会(ASA)分類;死亡率および罹患率の数え上げのための生理学的および手術的重症度スコア(POSSUM)スコア;または、GRACE ACSリスクおよび死亡率計算機、心筋梗塞の血栓溶解リスクスコア(TIMI RS)、不安定狭心症の血小板糖タンパク質IIb/IIIa:Integrilin療法を使用した受容体抑制リスクスコア(PURSUIT RS)、ならびに非ST上昇型急性冠症候群(ACS)の広範囲にわたる院内および1年間の死亡率の急性心事象のグローバルレジストリリスクスコア(GRACE RS)などの急性入院患者の転帰予測のためのその他のリスクスコア、のうちの1つ以上を測定することおよび/または処理することのうちの1つ以上をさらに処理する、請求項13または14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院の救急科(以下、「ED」、急性治療科、または事故および救急科とも呼ばれる)に入院した、または訪れた対象の検査に関する。
【0002】
迅速かつ安全なリスク層別化は、救急医療において必要かつ重要なタスクである。この文脈での「リスク層別化」とは、病院内治療が必要であると認識されるリスクに従って、患者をバンドまたはグループに分類することを意味する。入院後すぐに高リスクおよび低リスクの対象を同定することにより、治療、観察、およびリソースの割り当てを必要とする患者と、入院を必要としない患者とに臨床的意思決定を導くことができる。いくつかの研究は、リスク層別化を強化するための補足としてバイオマーカーを示唆しているが、それらは遡及的にしか研究されていないため、緊急医療における予後バイオマーカーの実施の影響を定量化するために、介入研究は当然でもあり、必要でもあった。本発明は、本発明者らの知る限りでは、その類では初めての研究に由来する。この研究は、予後バイオマーカーの利用可能性が、EDに入院した対象の治療戦略および全体的な予後に影響を与えるかどうかに焦点を当てた。
【0003】
緊急性または併存症(2つ以上の共存疾患)の負担レベルを反映するバイオマーカーは潜在的に非常に有用であるが、強い陰性適中率を有するバイオマーカーの値を過小評価するべきではない。健康状態または不急を反映するバイオマーカーの利用可能性は、混雑が深刻な問題である救急科の環境において特に関心がある。高病床利用率は、死亡率(すなわち、死亡)の増加、緊急を要する治療および診断の開始の遅延、コストの増加、ならびに全体的な治療の質の低さ、および患者の安全性への懸念と関連している。さらに、入院は、転倒、投薬過誤、院内感染、およびせん妄などのいくつかの有害転帰と関連している。早期退院は、死亡率の減少および患者の転帰の増加と関連しており、それぞれ、すべての入院の26%または20%が潜在的に回避可能であることが分かったアメリカの研究およびイギリスの研究により示されている。入院する必要のない対象をより効率的に同定することが望ましい。
【背景技術】
【0004】
国際公開第2008/077958号(Hvidovre Hospital)は、軽度の炎症(LGI)、LGIに関連する疾患、およびメタボリックシンドロームのバイオマーカーとしての可溶性ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化受容体(suPAR)の使用を開示する。また、疾患(心血管疾患など)を発症するリスク、および10年以内の全体的な死亡リスクを評価する手段として、主にそれらのリスクを低減するために生活習慣を変えることができるように、見かけ上は健康な対象のsuPARレベルの測定についても開示する。見かけ上は健康な対象において、疾患を発症するリスク(疾患を有することとは対照的に)、および10年以内の死亡リスクを決定することは、EDで必要とされる種類の評価とは関係がない。
【0005】
Rasmussen et al(2016)Emerg.Med.J.0,1−7は、EDに入院した患者の予後マーカーとしてのsuPARレベルの使用を開示している。これは遡及的研究であり、結果は多義的であった。例えば、著者らは、「入院時の高いsuPARと再入院との間に見出された関連は、それ自体は臨床的に適用することができない可能性があるが、suPARが疾患の重症度または追加の基礎疾患の代用マーカーであり、入院時点からすでに急性疾患以外の罹患率の認識を高めることができることを補助する」と結論づけた。
【0006】
同様の多義的な開示は、Ostervig et al(2015)Sc.J.Trauma,Resusc.and Emerg.Med.23(Suppl 1)A31、Haupt et al(2012)Critical Care 16,R130、Nayak et al(2015)Dan.Med.J.62,A5146、およびClinicalTrials.gov website ref NCT02643459に見出される。
【0007】
したがって、suPARレベルの測定がEDに対象を入院させるか、留置するか、または退院させるかどうかを決定するのに有用であるかどうかを決定するために、臨床試験が考案された。試験の設計は、Sando et al(2016)Sc.J.Trauma,Resusc.およびEmerg.Med.24,100−106に掲載されているが、結果はまだ公表されていない。したがって、先行技術によると、suPAR測定値がこの状況において有用であるかどうかは現在分からない。本発明は、suPAR測定値がこの状況において有用であることを示す(未発表の)結果に基づく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2008/077958号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Rasmussen et al、Emerg.Med.J.1−7、2016年
【非特許文献2】Ostervig et al、Sc.J.Trauma,Resusc.and Emerg.Med.23(Suppl 1)A31、2015年
【非特許文献3】Haupt et al、Critical Care 16,R130、2012年
【非特許文献4】Nayak et al、Dan.Med.J.62,A5146、2015年
【非特許文献5】ClinicalTrials.gov website ref NCT02643459
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、医療関係者が(他の臨床観察および病歴などと併せて)対象の状態、特に対象の死亡リスクを短期間内で評価することができる新規手段を提供することを目的とする。これにより、対象を入院させるか、または退院させるべきかどうかについての、より正確な評価を行うことができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、病院の救急科(ED)に入院した、または訪れたヒト対象にリスク層別化を適用する方法を提供し、本方法は、対象のsuPARレベルを測定することと、それを基準値と比較することと、を含む。
【0012】
リスク層別化には、対象のトリアージ、対象のEDに関連する健康状態の決定、急性医療患者の疾患リスクの同定の改善、重篤な疾患がEDを訪れた時に存在するか、もしくは存在しないかどうかの同定、および/または急性医療患者の退院または入院の臨床決定の補助の提供が含まれ得る。
【0013】
トリアージ方法は、対象の罹患率(院内死亡のリスクを含む)、または対象の28日、30日、90日、または6、10、もしくは12ヶ月以内の死亡リスク、または対象を入院させる必要性、または患者を退院させる能力を決定することを含み得る。「罹患率」は、罹患している状態または程度である。
【0014】
suPARレベルの測定は、典型的には、対象から採取されたサンプルで、インビトロで行われる。サンプルは典型的には、血液、血清、血漿、脳脊髄液、または尿である。サンプルは、測定が行われる前に処理を受ける場合がある。例えば、それは、遠心分離、凍結および解凍、希釈、濃縮、安定化、ろ過、ろ紙上での乾燥、または保存料での処理であり得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】HIVに感染した24人の患者のサブサンプルにおける、尿クレアチニンに対して補正された空腹時血漿suPARと夜間空腹時尿suPARとの間の線形相関を示し、両方のスケールは対数変換されている。相関の強さは、Rとして示される。
図2】本発明の方法を使用する際に医療スタッフが使用するポケット評価カードを示す。これは、suPARレベルの解釈およびsuPAR間隔によって層別化された死亡リスクを図示する。ED−救急科、suPAR=可溶性ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子受容体、COPD=慢性閉塞性肺疾患。
図3】含まれる患者のフロー図を示す。
図4】suPAR測定群および対照群において24時間以内に退院した患者の数を示す。
図5】包含時に測定されたsuPARを有する患者およびsuPARなしの患者(対照)の入院期間を示す。
図6】単一マーカーのROC曲線分析および30日死亡率を予測するそれらの能力である。
図7】TRIAGE III研究のsuPAR患者フローガイドラインである。
図8】suPAR測定値の追加および基準値との比較により、30日死亡率評価の特異性および感度がどのように増加するかを示す。
図9】suPAR測定値の追加および基準値との比較により、90日死亡率評価の特異性および感度がどのように増加するかを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化受容体(uPAR、CD87)は、ウロキナーゼ(uPA)の細胞受容体であり、単球、マクロファージ、好中球、および血小板を含む、大半の白血球によって発現される。uPARは、単球およびT細胞における活性化抗原である。uPARは細胞表面から脱落し、GPIアンカーを欠く受容体の可溶性形態(suPAR)を生成する。脱落メカニズムはよく理解されていないが、GPI特異的ホスホリパーゼDによって触媒されるGPIアンカーの切断によって生じる可能性がある。uPARの可溶性形態(suPAR)は、細胞培養上清ならびに腫瘍腹水、嚢胞液、血清、脳脊髄液、血漿、および尿などの多様な体液において同定されている。循環suPARの細胞起源は不明である。すべてではないが、uPARを発現する多くの細胞も、インビトロで培養した場合に受容体の可溶性形態を脱落する。
【0017】
タンパク質suPAR(NCBI受入番号AAK31795および受容体のアイソフォーム、NP_002650、003405、NP_002650、NP_OO1005376)は、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化受容体(uPAR)の可溶性部分であり、膜結合uPARのGPIアンカーの切断により放出される。suPARは、完全長suPAR(277アミノ酸(1〜277))、およびsuPAR断片D1(1〜83)からなるグリコシル化タンパク質のファミリーであり、D2D3(84〜277)は、ウロキナーゼ切断またはヒト気道トリプシン様プロテアーゼによって生成され、D1(1〜87)およびD2D3(88〜277)はMMP切断によって生成され、D1(1〜89)およびD2D3(90〜277)もウロキナーゼ切断またはヒト気道トリプシン様プロテアーゼによって生成され、D1(1〜91)およびD2D3(92〜277)はプラスミンによる切断によって生成される。タンパク質suPARおよびその切断産物に存在する連続および不連続エピトープを使用して、モノまたはポリクローナル抗体での免疫検出により、体液中のそれらの存在および存在量を監視することができる。suPARおよびその切断産物(例えば、D2D3)に共通のアクセス可能なエピトープに対する抗体を使用して、体液中のsuPARおよびその切断産物の両方を検出することができる。suPARとその切断産物の間には1対1の関係があるため、完全長suPAR、および例えばD2D3切断産物の両方に共通するエピトープに対する抗体は、直接的および間接的に同時にsuPARレベルを測定する。つまり、検出されたタンパク質の一部がD2D3切断産物であったとしても、アッセイで測定された例えば3ng/mlの値は、suPARレベルが3ng/mlであると見なされる。したがって、アッセイの文脈では、「suPAR」は、完全長のsuPARおよびその切断産物D2D3を指す。用語D2D3は、suPARの84〜277領域に対応し、suPARの84〜92アミノ酸領域にあるN末端と、suPAR(アミノ酸277)、例えば、84〜277、88〜277、90〜277、および92〜277のC末端に対応するC末端と、を有する任意のsuPAR由来断片を示すために使用される。
【0018】
suPARは、幅広い急性および慢性疾患に使用できる可能性のある、広く適用可能な予後バイオマーカーであり、一般集団における長期的な疾患発症の予測因子でもある。suPARは様々な疾患の予後値を伴う非特異的バイオマーカーであることが知られていたが、スタッフが、介入、リソース、および最も有益である臨床的焦点を標的とすることができるため、これは、EDのリスク層別化に有用なバイオマーカーであり、この知識および介入を通じて死亡率を低減することを初めてここに示す。
【0019】
対象が急性医療の病状を伴って救急科(ED)を訪れる場合、バイタルサイン、スコアリングシステム、および一連のバイオマーカーがトリアージプロセスで使用され、対象のニーズの緊急性を決定し、対象を診断し予想する。可溶性ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子受容体(suPAR)を含む一連のバイオマーカーは、遡及的研究で予後値を示した。suPARバイオマーカーは、対象の重症度および予後を反映するが、本発明まで、この知識が、医師がすでに利用できる知識に加えて、対象の転帰を変えることができるかどうかは不明であった。転帰は、低いsuPAR値(陰性適中率)の使用に関して、高レベルのsuPARを有するもの、または24時間以内に退院した患者数もしくは平均入院期間に関して特定の期間内、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12ヶ月以内の罹患率、入院、再入院、または死亡率(退院後または院内死亡率)として定義することができる。
【0020】
転帰は、suPARの陰性適中率、例えば、速やかな退院、入院期間の短縮につながる低suPARとも関し得る。言い換えれば、本発明の方法は、疾患のリスクが低いものを同定する際に使用することができ、それにより病院における患者フローを改善し、不要な入院の数を低減し、それにより入院期間の短縮にもつながる。
【0021】
これは、全体的な死亡率に影響がない場合でも、入院患者数の低減および入院期間の短縮に関して、TRIAGE III試験においてsuPARを測定することの重要な影響に照らして見ることもできる。
【0022】
本発明のリスク層別化方法は、対象の性別、年齢、病歴、ヘモグロビンレベル、C反応性タンパク質レベル、クレアチニンレベル、白血球数、ナトリウムレベル、カリウムレベル、アドレノメデュリンレベル、アルブミンレベル、D−ダイマーレベル、トロポニンレベル(HEARTスコア);生理学的パラメータ、例えば、脈拍、認知、血圧、体温、および呼吸数などの臨床症状および兆候の記録;早期警告スコアならびにその類似の局所的に適合された変数などのリスクアルゴリズムの出力(例えば、決定木早期警告スコア(DTEWS)または全国早期警告スコア(NEWS)、急性生理学および慢性健康評価(Acute Physiology and Chronic Health Evaluation)(APACHE)、グラスゴー昏睡尺度、心電図、年齢、リスク因子、迅速な敗血症関連臓器不全評価(qSOFA)、またはビリルビン、INR(国際標準比)、およびクレアチニンに基づく末期肝疾患モデル(MELD))のうちの1つ以上をさらに測定および/または処理することができる。例えば、早期警告スコアの記述は、Alam et al(2014)Resuscitation 85,587−594に見出すことができる。さらなる例としては、アメリカ麻酔学会(American Society of Anesthesiologists)(ASA)分類(手術患者の全体的な全身状態を評価するために使用される、手術前設定において使用される単純な6段階評価である);死亡率および罹患率の数え上げのための生理学的および手術的重症度スコア(Physiologic and Operative Severity Score for the enUmeration of Mortality and Morbidity)(POSSUM);および急性入院患者の転帰予測のためのその他のリスクスコア、例えば、GRACE ACSリスクおよび死亡率計算機(急性冠症候群を有する患者の入院6ヶ月の死亡率を推定する)、心筋梗塞の血栓溶解リスクスコア(TIMI RS)、不安定狭心症の血小板糖タンパク質IIb/IIIa:Integrilin療法を使用した受容体抑制(Platelet glycoprotein IIb/IIIa in Unstable angina: Receptor Suppression Using Integrilin Therapy)リスクスコア(PURSUIT RS)、ならびに非ST上昇型急性冠症候群(ACS)の広範囲にわたる院内および1年間の死亡率の急性心事象のグローバルレジストリ(Global Registry of Acute Cardiac Events)リスクスコア(GRACE RS)が挙げられる。
【0023】
本発明のさらなる態様は、病院の救急科(ED)に入院した、または訪れたヒト対象にリスク層別化を適用するための装置を提供し、本装置は、
対象から得たサンプルを収容する手段と、
サンプル中の可溶性ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(suPAR)のレベルを測定するように構成された検出器と、
suPARレベルを基準suPAR値と比較するための処理モジュールと、
リスク層別化を出力する手段と、を備える。
【0024】
リスク層別化を出力するための手段は、視覚的表示またはプリントアウトであり得る。
【0025】
リスク層別化を出力するために、本装置は、対象の性別、年齢、病歴、ヘモグロビンレベル、C反応性タンパク質レベル、クレアチニンレベル、白血球数、ナトリウムレベル、カリウムレベル、アドレノメデュリンレベル、アルブミンレベル、D−ダイマーレベル、トロポニンレベル(HEARTスコア);生理学的パラメータ、例えば、脈拍、認知、血圧、体温、および呼吸数などの臨床症状および兆候の記録;早期警告スコアならびにその類似の局所的に適合された変数などのリスクアルゴリズムの出力(例えば、決定木早期警告スコア(DTEWS)または全国早期警告スコア(NEWS)、急性生理学および慢性健康評価(APACHE)、グラスゴー昏睡尺度、心電図、年齢、リスク因子、迅速な敗血症関連臓器不全評価(qSOFA)、またはビリルビン、INR(国際標準比)、およびクレアチニンに基づく末期肝疾患モデル(MELD))のうちの1つ以上をさらに測定および/または処理することができる。例えば、早期警告スコアの記述は、Alam et al(2014)Resuscitation85,587−594に見出すことができる。さらなる例としては、アメリカ麻酔学会(ASA)分類(手術患者の全体的な全身状態を評価するために使用される、手術前設定において使用される単純な6段階評価である);死亡率および罹患率の数え上げのための生理学的および手術的重症度スコア(POSSUM);および急性入院患者の転帰予測のためのその他のリスクスコア、例えば、GRACE ACSリスクおよび死亡率計算機(急性冠症候群を有する患者の入院6ヶ月の死亡率を推定する)、心筋梗塞の血栓溶解リスクスコア(TIMI RS)、不安定狭心症の血小板糖タンパク質IIb/IIIa:Integrilin療法を使用した受容体抑制リスクスコア(PURSUIT RS)、ならびに非ST上昇型急性冠症候群(ACS)の広範囲にわたる院内および1年間の死亡率の急性心事象のグローバルレジストリリスクスコア(GRACE RS)が挙げられる。
【0026】
マーカーとしてのsuPARの検出に適した生体サンプル
本明細書の例に示されるように、ヒト対象由来の体液中のsuPARのレベルを測定することにより、suPARおよびその切断産物(例えば、D2D3)を本発明の目的のためのマーカーとして使用することができる。suPARおよびその切断産物は、脳脊髄液、血漿、血清、血液、尿、精液、唾液、および痰を含む、ヒト対象由来のすべての体液に存在する。
【0027】
好ましくは、サンプルは血漿または血清である。
【0028】
生体サンプルが尿である場合、測定値は、この値が同じ対象由来の血漿サンプル中のsuPARの濃度と高い相関があることが知られているため、対象からの尿のsuPAR/クレアチニン値に基づく場合がある。したがって、尿サンプルはまた、測定された尿中のレベルが、タンパク質含有量に対して正規化される(例えば、クレアチニンを使用して)場合、suPARの測定に用いられてもよい。これらの正規化された値は、本発明の目的のためのマーカーとして用いることができる。
【0029】
suPARおよびその切断産物の検出および定量化
対象由来の体液中のsuPARのレベルを測定するための正確な方法には、免疫検出法、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)が含まれ、そのような方法は臨床環境で実施するのに比較的安価で簡単なため特に適している。ELISAは、少数のサンプルおよび多数のサンプルの両方を分析するように適合させることができ、suPAR特異的抗体でコーティングされた、またはELISAアッセイの構成要素を組み込んだラテラルフローフォーマットに適合させたウェルを備えたELISAプレートフォーマットの両方を含む。さらに、suPARレベルは、ウエスタンブロット、Luminex、MALDI−TOF、HPLCなどのプロテオミクスアプローチ、ならびにBayer Centaur、Abbott Architect、Abbott AxSym、Roche COBAS、およびAxis Shield Afinionなどの自動免疫分析計プラットフォームにより測定され得る。適切なELISAまたはラテラルフローデバイス、suPARnostic(登録商標)クイックテストまたは比濁アッセイsuPARnostic(登録商標)Turbは、商品名suPARnostic(登録商標)により、Virogates A/S,Birkerod,Denmarkから市販されている。
【0030】
本発明の方法で使用される該受容体または受容体ペプチドに対するモノクローナル抗体は、培養中の連続細胞株による抗体分子の産生を提供する任意の技術を使用して調製され得る。これらは、限定されないが、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、およびEBV−ハイブリドーマ技術を含む。例えば、Kohler,et al,1975,Nature 256:495−497、Kozbor et al,1985,J.lmmunol.Methods 81:31−42、Cote et al,1983,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:2026−2030、Cole et al,1984,Mol.Cell Biol.62:109−120を参照されたい。具体的には、この方法は次のステップを含む:(a)免疫原性受容体ペプチドで動物を免疫化する、(b)動物から抗体産生細胞を単離する、(c)抗体産生細胞を培養中の不死化細胞と融合させて、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマ細胞を形成する、(d)ハイブリドーマ細胞を培養する、および(e)該ポリペプチドに結合するモノクローナル抗体を培養物から単離する。
【0031】
すべて1つ以上の可変ドメインを含む、抗体断片の細菌発現を伴う実験から既知であるように、抗原特異性は可変ドメインによって付与され、定常ドメインとは無関係である。これらの分子は、Fab様分子(Better et al(1988)Science 240,1041)、Fv分子(Skerra et al(1988)Science 240,1038)、VおよびVパートナードメインが柔軟なオリゴペプチドを介して連結される一本鎖Fv(scFv)分子(Bird et al(1988)Science 242,423、Huston et al(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85,5879)、および単離されたVドメインを含む単一ドメイン抗体(dAb)(Ward et al(1989)Nature 341,544)を含む。それらの特異的結合部位を保持する抗体断片の合成に含まれる技法の一般的な説明は、Winter & Milstein(1991)Nature 349,293−299に見出される。「ScFv分子」とは、VおよびVパートナードメインが柔軟なオリゴペプチドを介して連結される分子を意味する。これらの分子は、本発明において使用され得る。
【0032】
様々なイムノアッセイをスクリーニングに使用して、所望の特異性を有する抗体を同定することができる。確立された特異性を有するポリクローナルまたはモノクローナル抗体のいずれかを使用する競合結合または免疫放射線測定アッセイのための多数のプロトコルが、当技術分野で周知である。そのようなイムノアッセイは、典型的には、本発明のポリペプチド(複数可)とその特異的抗体との間の複合体形成の測定を伴う。
【0033】
対象のsuPARレベルが比較される基準値は、血漿レベルに関して、典型的には、0〜16ng/mlである。テストは全血に適用することができ、その場合、テストが血漿中のレベルを効果的に測定するように、赤血球を抑制するバリアがある。
【0034】
現在、suPARの知識により、再入院および死亡のリスクを増加させることなく退院することができる入院患者が多数いる。患者として入院する必要がなく、退院することができるのは、4ng/ml未満、特に3ng/ml未満のsuPARレベルの患者である。
【0035】
suPARが3ng/mlを超えている、特に4ng/mlを超えているが、6ng/ml未満の患者において、suPARレベルは疾患の存在の指標であり、患者が罹患していることを医師が認識するのを補助する。
【0036】
リスク層別化手順の他の構成要素が、対象が入院する必要がないか、または退院することができることを示す因子であっても、6ng/mlより高いsuPARレベルは、対象が患者として入院するべきであるか、または患者として留置されるべきであることを示す強い因子である。つまり、これを行うべきであることを示す他の因子がない場合でも、対象を患者として入院させるか、または対象を患者として留置するかの決定が行われる可能性がある。
【0037】
9ng/mlを超えるsuPARレベルは、患者が死亡のリスクを負う強い因子であり、他のパラメータが患者を退院させることができることを示唆していても、入院させて高レベルの臨床的注意を払う必要がある。
【0038】
好ましくは、対象のsuPARレベルは、対象が病院の救急科に到着してから1、2、3、4、5、または6時間以内に、または病院に到着する前の救急車でも測定される。
【0039】
実施例1−suPARレベルの測定
suPARレベルは、その目的のために本明細書に組み込まれる国際公開第2008/077958号に教示されている方法により、体液において測定され得る。
【0040】
より具体的には、suPARレベルは、ELISAアッセイによって次のように決定され得る:Nunc Maxisorp ELISAプレート(Nunc,Roskilde,Denmark)を、4℃で一晩、モノクローナルラット抗suPAR抗体(VG−1、ViroGates A/S、Copenhagen,Denmark、3μg/ml、100μl/ウェル)でコーティングする。プレートを、室温で1時間、PBS緩衝液+1%BSAおよび0.1%Tween20で遮断し、0.1%Tween20を含有するPBS緩衝液で3回洗浄する。1.5μg/mlのHRP標識されたマウス抗suPAR抗体(VG−2−HRP、ViroGates)および15μlの血漿(または血清もしくは尿)サンプルを含有する、85μlの希釈緩衝液(100mmリン酸、97.5mm NaCl、10gのL−1ウシ血清アルブミン(BSA、画分V、Roche Diagnostics GmbH Penzberg,Germany)、50UmL−1のヘパリンナトリウム塩(Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO)、0.1%(v/v)Tween20、pH 7.4)を、ELISAプレートに2つ組で添加する。37℃で1時間インキュベートした後、プレートを、PBS緩衝液+0.1%Tween20で10回洗浄し、100μl/ウェルのHRP基質を添加する(Substrate Reagent Pack、R&D Systems Minneapolis,Minnesota)。呈色反応を、ウェルあたり50μlの1M HSOを使用して30分後に停止し、450nmで測定する。
【0041】
さらに、製造者の指示に従って、suPARnostic製品ラインなどの市販のCE/IVD承認アッセイを使用して、体液中のsuPARを測定することができる。TRIAGE III試験では、suPARnostic Quick Triageラテラルフローアッセイを使用して、suPARが定量化された。
【0042】
実施例2−suPARの血漿および尿レベルの相関
国際公開第2008/077958号は、以前にHIV陰性の個体で示されたように、安定したHAARTを受けているHIV感染患者のsuPARの血漿レベルが尿suPARと相関し、尿suPARの日変化が小さいことを示している(Sier et al.,1999,Lab Invest 79:717−722)。36人の患者のうち24人のサブサンプルは、夜間空腹時の尿を提供した。以前に記載されているように(Sier et al,1999,Lab Invest.79:717−722)、suPARレベルに対する尿の希釈の差の影響は、クレアチニンの量と相関した。尿クレアチニンは記載されているように測定された(Mustjoki et al,2000,Cancer Res.60:7126−7132)。
【0043】
図1は、安定したHAARTを受けているHIV感染患者において、空腹時血漿suPARおよび尿suPARが非常に相関していることを示す。尿suPARは、血漿suPARの確固たる推定値であることが示されているため、suPARのレベルは、そのような個体からの尿および血漿サンプルで実施することができる。同様の相関および同等の補正係数をすべての対象において使用することができないと仮定する理由はない。
【0044】
実施例3−臨床試験の構造
デンマークの首都圏にある2つの大病院で無作為化介入研究が行われた(ClinicalTrials.gov番号、NCT02643459)。この研究の仮説は、suPARレベルの導入、迅速な測定、およびEDの担当医または他の病院の専門家への即時報告(知識)が、入院の少なくとも10ヶ月後の全死亡率の低減に関連するというものであった。
【0045】
研究の主な目的は、全死亡率を低減するために、対象のsuPARレベルの決定が、選別されていない急性入院対象のリスク層別化の一部として使用することができるかどうかを評価することであった。
【0046】
含まれる副次的な目的:
●初回入院(index admission)後、30日後の全死亡率。
●救急室から24時間以内に退院した数。
●入院期間。[時間枠:院内滞在]。
●再入院回数[時間枠:30および90日]。同じ患者の91日以内の新規入院はすべて再入院と定義される。
●経済的費用[時間枠:院内滞在、包含期間終了後30日および10ヶ月]。
【0047】
主な仮説は、急性入院患者のsuPARバイオマーカーを測定した場合、入院10ヶ月後の全死亡率が低いかどうかを評価することであった。5%レベルの有意性および80%の検出力を使用して、1.5%の入院の少なくとも10ヶ月後の死亡率の絶対リスク低減を検出するために、各無作為化群において7340人の対象のサンプルが必要であった。
【表1】
【0048】
各サイクルは、EDでのsuPAR測定値(+suPAR)あり、またはなし(対照)の3週間で構成された。
【0049】
suPARの定量化
血漿suPARを測定するための血液サンプル(6mL EDTA血漿チューブ)は、通常の血液検査とともに採取された。suPARの定量化のために、採血管を6000RPMで60秒間回転させた。10μLの血漿を、100μLの泳動用緩衝液を含む既製チューブに添加した。60μLピペットを使用して、溶液を上下に5回ピペッティングして血漿と緩衝液とを混合した。この混合物から、60μLを、ラテラルフローデバイス、suPARnostic(登録商標)クイックトリアージスティック(suPARnostic(登録商標)クイックテストとも呼ばれる)に添加した。20分後、ラテラルフローデバイスのテストおよびコントロールラインを視覚的に検査し、suPARテストラインを、suPARnosticクイックテストデバイスリーダー(Qiagen,Germany)を使用して定量化した[20]。テスト製造者(ViroGates A/S,Birkeroed,Denmark)によると、suPARnosticクイックテストの検出限界(LOD)は0.3ng/mlであった。定量化の限界(LOQ)は、CV%が25%を超えない最低濃度で定義された2ng/mLであった。同日に、または5日間隔で測定された5つのサンプルx4濃度(2.0;4.0;8.4;13.7ng/mL)でのシリアル内およびシリアル間の測定されたCV%は、25%未満であった。suPARnostic ELISAと比較したsuPARnosticクイックテストのrは、0.875である。suPARレベルの分析は、適格な対象を絶えず含めるために現場で常時対応できる、製造者の指示に従って訓練を受けた医学生によって処理された。すべてのsuPARレベルは、可能な限り迅速かつ常に採血後2時間以内に分析され、すぐに報告された。
【0050】
医師への通知
suPARレベルは、電子システムLABKA、OPUS、およびCetreaを通じて担当医に提示された。LABKA II(v.2.5.0.H2,Computer Sciences Corporation(CSC))は、血液検査を要求し、検査分析の結果を表示するために使用される臨床検査情報システムである。OPUS(OPUS Arbejdsplads,v.2.5.0.0,Computer Sciences Corporation(CSC))は、医療記録の電子データベースである。EDの緊急病棟は、ED内のいくつかの大画面モニターによって表示され、医師および看護師が使用する、病棟の大まかな概要(患者のデータおよび状態、考えられる診断、入院経路)を表示するCetreaシステムによって監視される。研究の前に、救急科で働くすべての医師は、選別されていない対象におけるsuPARの予後能力について、および公開文献の再考察の形式での特定の診断、ならびに同様のEDからの10,000人の対象からの未調整の死亡率を提供するポケットカードに関して書面で通知された。
【0051】
参加している医師および看護師は、suPARレベルの増加に関連する高リスクを考慮する必要があることを通知され、原因不明の高suPARを有する対象に遭遇した場合は、臨床的再検討が推奨され、この場合、特定の臨床問題についての症状および客観的所見に基づいて個別の介入、例えば、専門医への紹介、一般開業医とのフォローアップ相談、ポジトロン断層撮影スキャン、または他の診断手順もしくはスキャン方法をスケジュールする必要がある。一方、低suPARは、より早い退院を促進するはずである。医師は、suPARおよび年齢ならびにそれらの値に関連する死亡リスクに関して、特定のカットオフ値を通知された(図2)。これらの情報チャートのデータは、North Zeeland and Copenhagen University Hospital Hvidovre,Denmarkから得た遡及的患者データに基づいた。
【0052】
分かりやすくするために、図2に示されるカードの情報は次のとおりである(2行のアスタリスクの間)。
***********
可溶性ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子受容体レベルは、0.1〜16.0の範囲で、ng/mlの単位で示される。分析時間は20分である。結果は2時間以内に検査室システムで入手可能である。
解釈
値の上昇は病的状態において観察され、患者の死亡リスクと相関する。
●複数の慢性疾患および/または重度の敗血症または重度の臓器機能障害などの重篤で生命にかかわる状態の患者では、非常に高い値(>9)が観察される。死亡リスクは非常に増加する。
●適度に高い値(約4〜9)は、次の状態:感染症、がん、COPD、心血管疾患、認知症、糖尿病、肝および腎疾患において観察される。死亡リスクおよび再入院リスクが増加する。
●低い値(<3)は予後が良好であることを示す。
コメント
●suPARレベルは、病歴、臨床所見、および他の臨床関連領域の所見と併せて検討する必要がある。
●明確な理由がなくsuPARレベルが上昇している場合は、認められていない疾患のさらなる調査が検討される場合がある。
●低いsuPARレベルは、死亡リスクが低く、重大な病気のリスクが低いことを示し、対象を退院させる決定を補助し得る。
suPARレベルおよび死亡リスク
【表2】
【表3】
***********
【0053】
データの質、および医師が対象の初期評価のsuPARレベルを受け取り、検討したかどうかを評価するために、参加病院の無作為に選択された200人の医師にアンケートを送り、以下を尋ねた。
対象のsuPARレベルを見ましたか?
suPARの予後能力について通知されたと感じましたか?
対象の総合評価にどのくらいの頻度でsuPARを含めましたか?
suPARレベルはどのくらいの頻度で臨床決定に影響を及ぼしましたか?
高いsuPARレベルにどのくらいの頻度で驚きましたか?
低いsuPARレベルにどれくらいの頻度で驚きましたか?
【0054】
データ収集
suPARレベルを含む血液サンプル分析の結果は、LABKA IIデータベースから得た。デンマークの中央住民登録番号(CPR番号)を使用して、デンマークのすべての住民が登録されている中央市民登録簿から人口統計データおよび死亡率を得た。入院、退院、および診断に関するデータは、国立患者レジストリ(National Patient Registry)(NPR)から得た。NPRには、退院の一次診断(A診断)および併存症(B診断)に関する国際疾病分類(International Statistical Classification of Disease)、第10版(ICD−10)に従ってコード化された情報が含まれている。検査値は、LABKA(デンマーク北部および中央部の臨床検査情報システム研究データベース;Grann et al(2011)Clin.Epidemiol.3,133−138)を通じて得た。データ分析では、初回入院のsuPARレベルを上記のデータと関連付けて、一次および二次転帰を調べた。
【0055】
統計分析
各介入または制御サイクルにおいて入院した患者は単一のコホートとして追跡され、データは無作為化として分析された。2つの群が次の変数の比較可能性について評価された:年齢、性別、およびチャールソンスコア。5歳を超える平均年齢の差および/または2以上の絶対チャールソン併存症指数スコアは、最終分析で調整された。患者のデータは、治療意図原理(intention−to−treat principle)に対応する無作為化スキーム(表1)に従って、患者が初回入院中に入院した試験群に従って分析された。重み付けされたCoxモデルを使用して、最後の対象を含めてから10ヶ月後の死亡率を比較した。最初の再入院が初回入院と反対の群であった場合には、対象は打ち切られた。この打ち切りは従属打ち切りである可能性が高いため(再入院が陽性予後シグナルであることは稀である)、自身の治療群に再入院した対象が相殺のために重み付けされた、打ち切りの逆確率重み付け(Inverse Probability of Censoring Weighting)(IPCW)を用いた。再度重み付けされたサンプルがフォローアップを通して同じ暗黙のサンプルサイズになるように、安定化された重みを用いた。設計上、重みに含める必要がある唯一の共変量は、初回入院からの時間であった。再重み付けは、フォローアップの2週間ごとに行われた。重みが非常に不安定になり、初期のsuPAR測定値の有無がこの段階で臨床的決定に重要である可能性は低いため、2回目以降の再入院では打ち切りも再重み付けも行わなかった。さらに、伝統的な治療意図分析が実施された。2つの分析戦略の結果間の顕著な差は大いに考慮された。カプラン・マイヤープロットを使用して、生存を図示した。滞在期間の比較には、対応のないT検定が使用された。P<0.05は有意であると見なされた。次の群のサブグループ分析が実施された:65歳以上の対象、ならびに外科的状態、がん、感染症、および心血管疾患の診断で退院した患者。
【0056】
フォローアップ時(最後の患者を含めてから10ヶ月後)に、デンマーク中央患者レジストリ(central Danish Patient Registry)から次のデータを収集した:
●医療システムとの接触(過去のすべての接触を含む)
●入院に関する情報(入院および退院の日時および場所)
●診断(過去、および初回入院に関連して)。
●死亡または移住の日
【0057】
国立患者レジストリから得た診断は、ICD−10システムでコード化された。原章は、診断に従って患者を分類するために使用された。一次診断を構成サブグループで使用し、一次および二次診断の両方を使用して、チャールソンスコアを計算する。以下はサブグループを定義する:がん:第II章:新生物(C00−D48)。心血管疾患:第IX章(I00−I99)。感染症:第I章:A00−B99+J00−J22++N10−N11+N30−N31。神経疾患:第VI章(G00−G99)。外科的状態:異なる専門分野(一般、整形外科、その他)に分けられた外科処置コードの存在。
【0058】
実施例4
suPARの陰性適中率は退院の決定に役立つ
背景:TRIAGE III試験は、病院を無作為化の単位とし、患者を分析の単位とした、交差、クラスター無作為化、並行群、前向き、介入試験である。試験設計は以前に公開されている(Sando A,Schultz M,Eugen−Olsen J,et al(2016)“Introduction of a prognostic biomarker to strengthen risk stratification of acutely admitted patients: rationale and design of the TRIAGE III cluster randomized interventional trial”Scand J Trauma Resusc Emerg Med.24(1):100.doi:10.1186/s13049−016−0290−8)。両方ともデンマークの首都圏にあり、それぞれ、年間入院数70,000および85,000の2つの大病院:Bispebjerg University HospitalおよびHerlev University HospitalのEDでTRIAGE III試験を実施した。クラスター設計を使用し、病院を無作為化の単位として指定することにより、異なる慢性および急性疾患を有する選別されていない患者が、両方の群、ならびに連続および完全包含率に含まれることを確実にした。この試験は、2016年1月11日から5ヶ月間を含み、予定どおり2016年6月6日に終了し、その後の10ヶ月のフォローアップを2017年4月6日に終えた。含まれる患者を図3に示す。
【0059】
研究の目的:EDの医師および看護師に患者のsuPAR値を提供することが「入院または退院」の決定に影響を与えるかどうか、およびsuPARを提供することにより入院期間の短縮につながるかどうかを決定するため。
【0060】
方法:
suPARレベルは、CE/IVD承認のsuPARnosticクイックトリアージテストおよびリーダー(ViroGates A/S,Denmark)を使用して測定された。データは、フォローアップの最後(最後の患者を含めてから10ヶ月後)にデンマーク国立患者レジストリ(NPR)および市民登録システム(Civil Registration System)(CRS)から得た。すべての患者の連絡先はNPRに登録され、生命状態はCRSに登録される。血漿suPARレベルを含む血液検査に関するデータは、電子病院データベース「LABKA」から抽出された。試験に含まれるために、患者は、包含期間内に、LABKAで登録された血液検査から6時間以内にNPRに連絡し、≧16歳であることが求められた。小児科、産科、および婦人科での入院は含まれなかった。初回入院は、試験包含期間の最初の入院として定義された。
【0061】
分析には、TRIAGE III試験に参加したすべての患者が含まれ、suPAR測定値を有する患者(N=7,905)と、測定値を有さない患者(N=8,896)とを比較した。差は、スチューデントのT検定およびウィルコクソン検定を使用して比較された。P<0.05は統計的に有意であると見なされた。統計は、Rバージョン1.0.136(The R Foundation for Statistical Computing)を使用して行われた。
【0062】
転帰
suPARの陰性適中率のエンドポイントは以下のとおりであった。
(I)EDへの短期入院(<24時間)。suPARを測定しなかった患者と比較して、suPARを測定したそれらの患者を比較したとき、退院した患者数(初回から24時間未満滞在)に差はありますか?
(II)滞在期間。suPARを測定しなかった患者と比較して、suPARを測定したそれらの患者を比較したとき、患者の入院期間に差はありますか?
【0063】
結果:研究中、16801人の患者が含まれた。平均年齢は60歳(SD20)であり、47.8%が男性であった。7905人の患者が入院時にsuPAR測定値を有し、8896人の患者がsuPARの測定値を有さなかった(対照)(図3)。
【0064】
エンドポイントIに関して、suPAR測定値を有する患者は、suPAR測定値がない患者と比較して、24時間以内に有意に退院する頻度が有意に高かった(50.2%(3,966人の患者)対48.6%(4,317人の患者)、絶対差:1.6%(95%CI0.08〜3.12);P=0.039)(図4)。
【0065】
エンドポイントIIに関して、suPAR測定値を有する患者は、suPAR測定値がない患者と比較して、入院期間が6.5時間短かった(4.31日(7.35)対4.58日(9.37)、差:0.27日(95%CI0.01〜0.53)、P=0.043)(図5)。
【0066】
24時間以内に退院した患者の死亡率
早期退院患者の30日以内の全死亡率は、suPAR群の52人の患者(1.3%)および対照群の77人の患者(1.8%)で生じた。未調整のCoxモデルでは、対照と比較してsuPAR群の死亡率が低くなる傾向が見られた:ハザード比(HR)、0.73;95%信頼区間(CI)0.52〜1.04;P=0.084。
【0067】
12ヶ月のフォローアップの中央値の間に、225人(5.7%)の患者が死亡し、これは、フォローアップ中に256人(6.7%)が死亡した対照群の早期退院患者よりも少なかった(P=0.05)。24時間以内に退院した患者では、30日死亡率を予測するためのAUCは、0.92(95%CI:0.90−0.95)であった。
【0068】
24時間以内に退院した患者の再入院
30日の再入院に関しては、suPAR群の336人(8.5%)の患者が再入院した一方で、対照群の331人(7.7%)の患者が再入院した、P=0.18。90日の再入院では、490人の患者(12.4%)対552人の患者(12.8%)が、それぞれ、suPAR群および対照群で再入院した(P=0.57)。
【0069】
考察:この研究は、救急科での患者のsuPARレベルに関する知識が、早期退院患者および全体的な滞在期間の短縮につながることを示した。対照群と比較して、suPAR群では退院した患者は多いが、再入院または死亡率に関して差はなかった。したがって、suPARに基づく早期退院は安全かつ実現可能である。患者フローの改善、および入院の必要がない可能性がある患者の早期退院は、入院治療を必要とする患者と、院内感染、筋肉量の減少、および患者が働いている場合の個人所得の損失などの入院のリスクに曝されずに退院することができる低リスク患者の両方に有益である。病院に関して、入院時にsuPARを測定した患者で認められたより短期の入院(suPAR群で6時間短い)は、経済的な節約につながる。
【0070】
早期退院患者の中でsuPARのAUCが非常に高くなったという事実は、医師がsuPARの陽性適中率を使用し、suPARが上昇した場合に患者を24時間より長く留置させておくことを示す。したがって、0.92という高いAUCは、早期退院患者が低リスク患者であり、帰宅させられた(例えば、ホスピスまたは老人ホーム)患者は死亡したことを反映している。
【0071】
実施例5
suPARの陽性反応適中率
背景:suPARは、遡及的研究において、転帰の強い予測因子であることが以前に示されている。しかしながら、医師にsuPARレベルの情報を与えることが転帰を変更する/予後を変えることができるかどうかは不明であった。TRIAGE III介入研究では、7,905人の患者において、suPARnosticクイックテストを使用して入院時にsuPARを測定した。対照群の8896人の患者と比較する(suPAR測定なし)(図3)。
【0072】
方法:suPARレベルは、CE/IVD承認のsuPARnosticクイックトリアージテストおよびリーダー(ViroGates A/S,Denmark)を使用して測定された。1および10ヶ月での死亡率に関するsuPARの識別能力は、受信者操作特性(ROC)の曲線下面積(AUC)を使用して評価された。
【0073】
P<0.05は統計的に有意であると見なされた。統計はRバージョン1.0.136(The R Foundation for Statistical Computing)で実施され、図は、Graphpad Prism、バージョン7.02で作成された。
【0074】
結果:
suPARおよび死亡率。生存した患者のsuPARレベルの中央値は、30日(4.0ng/ml(IQR2.9−5.7)対8.3ng/ml(IQR 5.9〜11.7)、p<0.001)および10ヶ月(3.8ng/ml(IQR 2.8−5.3)対6.9ng/ml(IQR 5.1−10.1)、p<0.001)の両方で、フォローアップ中に死亡した患者のsuPARレベルよりも有意に低かった。SuPARは、30日および10ヶ月の死亡率を予測するための予後能力が高かった(AUC:30日:0.83(95%CI:0.81〜0.84);10ヶ月:0.80(95%CI:0.79〜0.82))。年齢および通常のバイオマーカーと比較して、suPARはすべてのフォローアップ期間での死亡率に関して予後能力が優れていた(表2:suPARならびに他の通常のバイオマーカーおよび年齢のAUC)(図6、単一マーカーのROC曲線分析および30日の死亡率を予測するそれらの能力;図の左側の破線はsuPARのレベルである)。
【表4】
【0075】
アルゴリズムにsuPARを追加すると、転帰予測が大幅に改善される
suPARがすべての予測通常マーカーの組み合わせモデルに追加の独立した値を提供するかどうかを決定するために、2つのモデルを作成した:1つはsuPARなしであるが、表2において有意であると分かった変数すべてを含み、別のモデルはこれらの変数およびsuPARを含む。
【0076】
30日の死亡率の予測に関して、最初のモデル(suPARなし)は、0.860のAUC(95%CI0.84〜0.86)をもたらす。suPARの追加により、このモデルは大幅に改善され、AUCは0.896(95%CI0.88−0.90)、p=0.007である。感度および特異性の増加を図8に示す。
【0077】
同様に、90日の死亡率の決定に関して、suPARなしのモデルは、0.854のAUC(95%CI:0.84〜0.85)をもたらした。suPARを含めると、モデルは、0.878のAUC(95%CI:0.86〜0.88)、p=0.001に大幅に改善した(図9)。
【0078】
入院時のsuPARの測定およびsuPAR測定値の有無による患者間の死亡率の差
suPAR介入群対対照群の死亡率に関して、対照群の14.3%と比較して、介入群の死亡率は13.9%であったことが観察され、これは、介入群において36少ない死亡に相当する。suPAR介入群と対照群との間の死亡率の差は、Bispebjerg Hospital,Copenhagen,Denmarkで強く観察された。Bispebjerg Hospitalでは、3451人の患者がsuPAR介入群に含まれ、3569人が対照群に含まれた。フォローアップ中、427人の患者がsuPAR介入群で死亡し(12,4%)、これは対照群で観察された死亡率よりも有意に低い死亡率であった(515人が死亡(14,4%)、p<0.05。
【0079】
考察:この研究では、短期死亡率の予測において、一般的に使用された通常の血液検査の組み合わせモデルを含む他の調査されたバイオマーカーと比較して、suPARが転帰予測に関して他のバイオマーカーよりも優れていることを示す。他のバイオマーカーとは対照的に、suPARは転帰予測において年齢よりも強いことが興味深い。また、すべての通常のバイオマーカーのアルゴリズムにsuPARを追加することにより、30日および90日の両方の死亡率の予測が大幅に改善された。死亡率の予防に関しては、対照群と比較して、介入群では死亡が少ないことが観察された。医師にsuPARレベルを通知することの影響は、臨床兆候が良好に機能している患者、例えば、低リスクのカテゴリーにトリアージされた患者、または存在する場合、重度の疾患がsuPAR測定値なしでは認識されない低早期警告スコア(EWSまたはNEWS)を有する患者で最も価値があった。
【0080】
suPARの予後能力は以前に遡及的に研究されており、バイオマーカーは死亡および有害事象のリスクと関連していることが示されている。しかしながら、以前の研究では、患者がEDにいる間に、医師にsuPARレベルに関する「リアルタイム」の情報を提供したときの患者への介入の臨床的影響は調査されていない。したがって、患者がいる間にsuPARの知識が患者の転帰を変えることができるかどうかは、今まで不明であった。
【0081】
この研究は、suPARの知識が、対照群と比較して介入群でのより早期の退院につながったことを初めて示す。早期退院患者の死亡率に関して、対照群と比較して介入群で死亡した患者は少なく、医師および看護師に「リアルタイム」のsuPARレベルを提供することの陰性および陽性適中率の両方が、救急科において入院および退院のより良い決定に役立つことを示す。
図1
図2
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図8
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【国際調査報告】