(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】特表2021-519110(P2021-519110A)
(43)【公表日】2021年8月10日
(54)【発明の名称】細胞培養のマイクロPET又はマイクロSPECTのための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/04 20060101AFI20210712BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20210712BHJP
C12M 1/12 20060101ALI20210712BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20210712BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20210712BHJP
C07K 14/435 20060101ALN20210712BHJP
【FI】
C12Q1/04
C12M1/34 B
C12M1/12
C12M1/34 D
G01N33/48 M
G01N33/483 Z
C07K14/435
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2021-501085(P2021-501085)
(86)(22)【出願日】2019年3月26日
(85)【翻訳文提出日】2020年11月24日
(86)【国際出願番号】EP2019057479
(87)【国際公開番号】WO2019185565
(87)【国際公開日】20191003
(31)【優先権主張番号】18163900.6
(32)【優先日】2018年3月26日
(33)【優先権主張国】EP
(81)【指定国】
AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】520375321
【氏名又は名称】ドク メディクス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ピヒラー、ヴェレナ
【テーマコード(参考)】
2G045
4B029
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
2G045BB20
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2G045FB08
4B029AA07
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4H045EA50
(57)【要約】
本発明は、少なくとも2つの細胞培養物の同時マイクロPET又はマイクロSPECTのための生体適合性カラム1を提供し、カラムは、入口2、軸方向に配向した灌流チャンバ3、及び出口4を含み、灌流チャンバ3は(絹、絹フィブロイン、コラーゲン、ゼラチン、アガロース、アルギン酸、ポリ乳酸、寒天、又はメチルセルロースなどの)生体高分子を含むスポンジ7a、7b、7c、7dを含む多孔質固相、水性液相5、第1の細胞培養物6a、及び第2の細胞培養物6bを含み、第1の細胞培養物6a及び第2の細胞培養物6bは固相と接触しており、第1の細胞培養物6aは、第2の細胞培養物6bとは固相により隔てられている。また、少なくとも2つの細胞培養物の同時マイクロPET又はマイクロSPECTのための方法及びキットも提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性カラム(1)における少なくとも2つの細胞培養物の同時マイクロ陽電子放出断層撮影(マイクロPET)又はマイクロ単一光子放出コンピュータ断層撮影(マイクロSPECT)のための方法であって、
前記カラムは、入口(2)、軸方向に配向した灌流チャンバ(3)、及び出口(4)を含み、ここで、前記入口(2)は前記灌流チャンバ(3)と流体接続しており、前記出口(4)は前記灌流チャンバ(3)と流体接続しており、前記灌流チャンバ(3)は、多孔質固相、水性液相(5)、第1の細胞培養物(6a)、及び第2の細胞培養物(6b)を含み、前記第1の細胞培養物(6a)の少なくとも一部及び前記第2の細胞培養物(6b)の少なくとも一部は前記固相と接触しており、前記第1の細胞培養物(6a)は、前記第2の細胞培養物(6b)とは前記固相の少なくとも一部により隔てられており、
前記方法は以下の工程:
(A)前記カラム(1)をマイクロPET又はマイクロSPECTスキャナーに挿入すること、
(B)前記第1の細胞培養物(6a)の細胞の少なくとも一部及び前記第2の細胞培養物(6b)の細胞の少なくとも一部が放射性トレーサーと接触するように、前記入口(2)を通り前記灌流チャンバ(3)を通り抜け前記出口(4)に向かって前記放射性トレーサーを含む水性標識液体を流通させること、
(C)前記放射性トレーサーの少なくとも一部が前記灌流チャンバ(3)から前記出口(4)を通って除去されるように、前記入口(2)を通り前記灌流チャンバ(3)を通り抜け前記出口(4)に向かって水性洗浄液体を流通させること、及び
(D)前記カラム(1)を前記マイクロPET又はマイクロSPECTスキャナーでスキャンすること、
を含む。
【請求項2】
前記第1の細胞培養物(6a)及び/又は前記第2の細胞培養物(6b)がスフェロイド又はオルガノイドである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の細胞培養物(6a)及び/又は前記第2の細胞培養物(6b)が多細胞腫瘍スフェロイド(MTS)である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(B)及び/又は工程(C)の流通させることが、前記灌流チャンバ(3)を通る乱流液体流を含み、該乱流液体流は、好ましくは0.01mL/分〜10mL/分の流速(好ましくは0.025mL/分〜7.5mL/分の流速、より好ましくは0.05mL/分〜5mL/分の流速、特に0.1mL/分〜2mL/分の流速)である、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記多孔質固相が、少なくとも1つの生体高分子を含む少なくとも1つのスポンジ(7a、7b、7c、7d)を含み、
ここで、好ましくは、前記生体高分子が、絹、絹フィブロイン、コラーゲン、ゼラチン、アガロース、アルギン酸、ポリ乳酸、寒天、メチルセルロース、及びそれらの混合物から選択され、及び/又は前記灌流チャンバ(3)に収まるように前記スポンジ(7a、7b、7c、7d)があらかじめ切断されている、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記多孔質固相が50μm〜1000μm(好ましくは75μm〜750μm、より好ましくは100μm〜600μm、さらにより好ましくは125μm〜500μm、さらに一層より好ましくは150μm〜450μm、特に200μm〜400μm)の平均孔径を有する、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の細胞培養物(6a)と前記第2の細胞培養物(6b)との間の最小距離が600μm以上(好ましくは700μm以上、より好ましくは800μm以上、さらにより好ましくは900μm以上、さらに一層より好ましくは1000μm以上、特に2000μm以上、又はさらに5000μm以上)である、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記多孔質固相が前記スポンジ(7a、7b、7c、7d)のうち少なくとも第1と第2のものを含み、前記第1の培養物(6a)の少なくとも一部が前記第1のスポンジ(7a)と接触しており、前記第2の培養物(6b)の少なくとも一部が前記第2のスポンジ(7b)と接触している、請求項5〜請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のスポンジ(7a)が、前記第1の細胞培養物(6a)の少なくとも一部を含む凹部(8a)を有し、前記第2のスポンジ(7b)が、前記第2の細胞培養物(6b)の少なくとも一部を含む凹部(8b)を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも2つの細胞培養物の同時マイクロPET又はマイクロSPECTのための生体適合性カラム(1)であって、
前記カラムは、入口(2)、軸方向に配向した灌流チャンバ(3)、及び出口(4)を含み、ここで、前記入口(2)は前記灌流チャンバ(3)と流体接続されており、前記出口(4)は前記灌流チャンバ(3)と流体接続されており、前記灌流チャンバ(3)は、少なくとも1つの生体高分子を含む少なくとも1つのスポンジ(7a、7b、7c、7d)を含む多孔質固相、水性液相(5)、第1の細胞培養物(6a)、及び第2の細胞培養物(6b)を含み、前記第1の細胞培養物(6a)の少なくとも一部及び前記第2の細胞培養物(6b)の少なくとも一部は前記固相と接触しており、前記第1の細胞培養物(6a)は、前記第2の細胞培養物(6b)とは前記固相の少なくとも一部により隔てられている、前記カラム。
【請求項11】
前記生体高分子が絹フィブロインである、請求項10に記載のカラム(1)。
【請求項12】
前記入口(2)及び/又は前記出口(4)を介してポンプに流体接続された請求項10〜請求項11のいずれか一項に記載のカラム(1)を含む、少なくとも2つの細胞培養物の同時マイクロPET又はマイクロSPECTのためのシステムであって、
好ましくは前記システムが前記カラム(1)のための温度制御及び/又は前記カラム(1)の前記入口(2)に流体接続されたサンプル注入器をさらに有する、前記システム。
【請求項13】
請求項10〜請求項11のいずれか一項に記載のカラム(1)が挿入されたマイクロPET又はマイクロSPECTスキャナー。
【請求項14】
少なくとも2つの細胞培養物の同時マイクロPET又はマイクロSPECTのためのキットであって、
少なくとも2つの細胞培養物の同時マイクロPET又はマイクロSPECTのための少なくとも1つの生体適合性カラム(1)、ここで、該カラムは、入口(2)、軸方向に配向した灌流チャンバ(3)、及び出口(4)を含み、前記入口(2)が前記灌流チャンバ(3)と流体接続されており、前記出口(4)が前記灌流チャンバ(3)と流体接続されている;並びに
少なくとも1つの生体高分子を含み、前記灌流チャンバ(3)に収まるようにあらかじめ切断されている、少なくとも2つのスポンジ(7a、7b、7c、7d)、ここで、該スポンジは、好ましくは絹、絹フィブロイン、コラーゲン、ゼラチン、アガロース、アルギン酸、ポリ乳酸、寒天、メチルセルロース、及びそれらの混合物から選択される;
を含む、前記キット。
【請求項15】
前記灌流チャンバ(3)に収まるようにあらかじめ切断された少なくとも2つのフィルター(50)をさらに含み、好ましくは前記フィルター(50)が前記少なくとも2つのスポンジ(7a、7b、7c、7d)より高い密度(より好ましくは1.25倍以上、さらにより好ましくは1.5倍以上、特に2倍以上高い密度)を有する、請求項14に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞培養のマイクロ陽電子放出断層撮影(マイクロPET)又はマイクロ単一光子放出コンピュータ断層撮影(マイクロSPECT)のための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
陽電子放出断層撮影(PET)又は単一光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)のための潜在的な診断用化合物の前臨床スクリーニングに向けての現在の戦略は、主に、従前の生物学的知識、生体外でのオートラジオグラフィー及び小動物の生体内PET又はSPECTに基づいている。
【0003】
しかしながら、生体外でのオートラジオグラフィーと関連がある従前の生物学的知識に基づいた生体内での化合物の吸収、分布、代謝、及び排出の予測は今もなお非常に限定されている。有望なリード化合物は、費用のかかる生体内実験の結果に基づいた、標的への選択性の欠如、高代謝及びクリアランス、又は非特異的相互作用が原因でしばしば中止する必要がある。したがって、例えば、特にPET/SPECTに適用されるより良い細胞培養系を有する治療化合物だけでなく、そのような診断用化合物の生体内挙動の改良予測が必要である。
【0004】
Keshari et al.は、超偏極磁気共鳴/PET互換性バイオリアクターにおけるニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ阻害に対する前立腺がんの代謝反応に関している。減少した体積の細胞培養物におけるニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ阻害への反応の翻訳可能なバイオマーカーを開発するための超偏極磁気共鳴及びPETと互換性のある灌流バイオリアクターが開示されている。前立腺がん細胞の単細胞培養物をアルギン酸ハイドロゲルに埋め込み、バイオリアクター内で培養した(1603ページ、左欄、§2)。PET画像化には、小動物用マイクロPET/コンピュータ断層撮影(CT)スキャナー(Inveon、Siemens Medical Solutions)を用いた。5μCi/mLの2−デオキシ−2−[
18F]フルオログルコース([
18F]FDG)を含む培地をバイオリアクターシステムで40分間灌流させ、40分間洗浄した。より高いスループットのため、PET検出器内で4つのバイオリアクターを同時に操作し、アルギン酸を含まない1つを対照として封入した(1604ページ、左欄、§2)。しかしながら、この手法は複雑であり計装負荷が高いため、費用がかかる。
【0005】
Whitehead et al., 2012は、生物学的及び画像化の応用のための人工組織バイオリアクターに関している。開示されたバイオリアクターは、マイクロPETスキャナーと一体化されている。開示されたバイオリアクターの細胞チャンバは、1.4〜1.7mmの直径を有するホウケイ酸ガラスビーズを含むガラス容器である(2420ページ、右欄、§2)。HepG2肝細胞株の単独培養物をシリンジに吸引し、バイオリアクターの細胞チャンバに注入した(2421ページ、左欄、§5)。細胞を約16時間ビーズマトリクスになじませ、ブドウ糖負荷試験、及びその次の放射線トレーサーとして[
11C]パルミチン酸を用いたマイクロPETスキャンを受ける前に5日間増殖させた(2421ページ、右欄、§1−5)。Whitehead et al., 2013は、画像化バイオマーカー及び放射性医薬品の研究、発見、及び検証のための同様のガラスビーズバイオリアクターを開示している。しかしながら、このガラスビーズバイオリアクターのスループットは比較的低い。
【発明の概要】
【0006】
よって、本発明は、細胞培養PETのための改良された方法及び装置を提供すること、特により高い測定スループットを達成することを目的とする。
【0007】
本発明は、生体適合性カラムにおける少なくとも2つの細胞培養物の同時マイクロPET又はマイクロSPECTのための方法を提供する。カラムは入口、軸方向に配向した灌流チャンバ、及び出口を含み、入口及び出口はいずれも灌流チャンバと流体接続している。灌流チャンバは、多孔質固相、水性液相に第1の細胞培養物及び第2の細胞培養物を含む。第1の細胞培養物の少なくとも一部(例えば、細胞培養物(例えばMTS)の表面の1%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらにより好ましくは20%以上、さらに一層より好ましくは30%以上、特に40%以上、又はさらに50%以上)、及び第2の細胞培養物の少なくとも一部(例えば、細胞培養物(例えばMTS)の表面の1%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらにより好ましくは20%以上、さらに一層より好ましくは30%以上、特に40%以上、又はさらに50%以上)は上記固相と接触しており、第1及び第2の細胞培養物のそれぞれの他の部分は、典型的には上記液相と接触している。第1の細胞培養物は、第2の細胞培養物とは上記固相の少なくとも一部により隔てられている。上記方法は以下の工程を含む:
(A)上記カラムをマイクロPET又はマイクロSPECTスキャナーに挿入すること、
(B)第1の細胞培養物の細胞の少なくとも一部及び第2の細胞培養物の細胞の少なくとも一部が放射性トレーサーと接触するように(好ましくは、画分、例えば、放射性トレーサーの0.5重量%以上、5重量%以上、又は10重量%以上が、第1及び/又は第2の細胞培養物と結合したままである;このような結合は、細胞外及び/又は細胞内であってもよい)、上記入口を通り上記灌流チャンバを通り抜け上記出口に向かって上記放射性トレーサーを含む水性標識液体を流通させること、
(C)放射性トレーサーの少なくとも一部が上記灌流チャンバから上記出口を通って除去されるように、上記入口を通り上記灌流チャンバを通り抜け上記出口に向かって水性洗浄液体を流通させること、及び
(D)上記カラムを上記マイクロPET又はマイクロSPECTスキャナーでスキャンすること。
【0008】
この方法には、B−C−A−D又はB−A−C−Dなどの、工程の異なる順番も包含される。しかしながら、順番A−B−C−Dが最も好ましい。
【0009】
本発明はまた、少なくとも2つの細胞培養物の同時マイクロPET又はマイクロSPECTのための生体適合性カラムを提供する。上記カラムは、入口、軸方向に配向した灌流チャンバ、及び出口を含み、上記入口及び上記出口は両方とも上記灌流チャンバと流体接続されている。上記灌流チャンバは、少なくとも1つの生体高分子を含む(特に、少なくとも1つの生体高分子で作られた)、少なくとも1つの(好ましくは少なくとも2つの、より好ましくは少なくとも3つの、さらにより好ましくは少なくとも4つの、さらに一層より好ましくは少なくとも5つの、特に少なくとも6つの)スポンジを含む多孔質固相を含む。上記灌流チャンバは、水性液相、第1の細胞培養物、及び第2の細胞培養物をさらに含む。第1の細胞培養物の少なくとも一部(例えば、細胞培養物(例えばMTS)の表面の1%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらにより好ましくは20%以上、さらに一層より好ましくは30%以上、特に40%以上、又はさらに50%以上)、及び第2の細胞培養物の少なくとも一部(例えば、細胞培養物(例えばMTS)の表面の1%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらにより好ましくは20%以上、さらに一層より好ましくは30%以上、特に40%以上、又はさらに50%以上)は上記固相と接触しており、第1及び第2の細胞培養物のそれぞれの他の部分は、典型的には上記液相と接触している。第1の細胞培養物は、第2の細胞培養物とは、上記固相の少なくとも一部により隔てられている。
【0010】
本発明の他の態様において、少なくとも2つの細胞培養物の同時マイクロPET又はマイクロSPECTのためのシステムが提供される。上記システムは、本発明のカラムを含み、上記カラムは、その入口及び/又はその出口を介してポンプと流体接続されている。上記システムは、上記カラムのための温度制御及び/又は上記カラムの入口に流体接続されたサンプル注入器をさらに有することが好ましい。
【0011】
本発明のさらなる他の態様において、本発明のカラムが挿入されたマイクロPET又はマイクロSPECTスキャナーが提供される。
【0012】
本発明のよりさらなる他の態様において、少なくとも2つの細胞培養物の同時マイクロPET又はマイクロSPECTのためのキットが提供される。上記キットは、少なくとも2つの細胞培養物の同時マイクロPET又はマイクロSPECTのための少なくとも1つの生体適合性カラムを含み、上記カラムは、入口、軸方向に配向した灌流チャンバ、及び出口を含み、上記入口及び上記出口の両方とも上記灌流チャンバと流体接続されている。上記キットは、少なくとも1つの生体高分子を含む(特に、少なくとも1つの生体高分子で作られた)、少なくとも2つの(好ましくは少なくとも3つの、さらにより好ましくは少なくとも5つの、さらに一層より好ましくは少なくとも10の、特に少なくとも20の)スポンジをさらに含み、生体高分子は、絹、絹フィブロイン、コラーゲン、ゼラチン、アガロース、アルギン酸、ポリ乳酸、寒天、メチルセルロース、及びそれらの混合物から選択されることが好ましい。これらのスポンジは、灌流チャンバに収まるようにあらかじめ切断されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、細胞培養物(スフェロイド類及びオルガノイド類などの三次元細胞培養物でさえも)のより高いスループットを有するPET(及びSPECTも)を可能にする。本発明は、加速放射性トレーサーの開発に非常に適している。生物基質における細胞又は多細胞腫瘍スフェロイド(MTS)を用いた放射性トレーサーの代謝研究にだけでなく、特に、蓄積、組織透過性、標的特異性の測定に有用である。さらに、本発明は、複雑な組織サンプル内の血流を刺激するための流速の調整を可能にする。本発明はまた、前臨床薬剤開発で必要とされる動物の数を減らす助けとなり、それにより、そのような開発をより効率的にし、生命倫理の問題を減少させる。
【0014】
PET又はSPECT画像化とは全く無関係であるが、Mizuno et al.は、三次元コラーゲンスポンジ内の軟骨細胞に静水圧を付与するための静水圧システムについて述べている。上記システムは、静水圧を付与可能なカラムを含む。軟骨細胞は、カラムに浮かせたコラーゲンスポンジ内で培養される。とりわけ、画像化アーチファクトはスポンジの付着位置のまわりに蓄積する溶液の洗浄が妨げられることによると考えられるため、開示されたシステムはPET又はSPECT画像化には適しているとは言えない。
【0015】
また、PET又はSPECT画像化とは全く無関係であるが、米国特許出願公開第2017/198246号明細書は、生成物結合培地を含む捕捉カラムに接続された、細胞培養培地を保持するための容器を含む、小さな灌流バイオリアクターを開示している。上記培養培地が容器から流れ出してカラムに流れると、捕捉カラムは発現した生成物を捕捉することを可能とする。培養培地が排出され、よってカラム内に残っていない場合、細胞培養物は単にカラムを通過するだけとなる。
【0016】
マイクロPET及びマイクロSPECT装置はそれぞれ、小型化されたPET及びSPECT装置であり、げっ歯類及びその他の小動物モデルの画像化研究用途のために開発された(これらの技術の概略は、例えば、Chatziioannouに示される)。一般的に、マイクロPET及びマイクロSPECTの空間分解能は、(ヒト患者の画像化のための)ジェネリックのPET及びSPECT装置の空間分解能よりも高い。また、マイクロPET及びマイクロSPECT画像化の機能性を所望によりCTなどの付加的な画像化の機能性と単一の装置内で組み合わせることができる(すなわち、マイクロPET/SPECT/CT)。例えば、Koba et al.を参照のこと。また、少なくともマイクロPETは、磁気共鳴画像法(MRI)と一つの装置内で組み合わせることが可能である(すなわち、マイクロPET/MRI)。
【0017】
また、高い分解能のため、これらの装置は細胞培養物を画像化するために用いることが可能である(既に上で述べたKeshari et al.、Whitehead et al., 2012、及びWhitehead et al., 2013を参照のこと)。
【0018】
好ましくは、本発明の文脈において、「マイクロPETスキャナー」は、50cm未満、好ましくは40cm未満、より好ましくは30cm未満、さらにより好ましくは25cm未満、さらに一層より好ましくは20cm未満、特に15cm未満、又はさらに10cm未満(しかし通常は1cm又は2cmを超える)長軸断視野(FOV)直径、及び/又は4mm未満、好ましくは3mm未満、より好ましくは2mm未満、特に1.5mm未満(一般的に、この分解能は約1mmである)のFOVの中心の再構成分解能を有するPETスキャナーである。よって、「マイクロPET」という用語は単独で、マイクロPETスキャナーにおけるPET測定に関する。本発明の文脈において、マイクロPETスキャナーもまた、MRI、SPECT、及び/又はCTなどの付加的な画像化の機能性を有してもよく、すなわち、例えば、マイクロPET/CT、マイクロPET/SPECT/CT、又はマイクロPET/MRIスキャナーでもよい。
【0019】
好ましくは、本発明の文脈において、「マイクロSPECTスキャナー」は、4mm未満、好ましくは3mm未満、より好ましくは2mm未満、特に1.5mm未満、又はさらに1.0mm未満(一般的に、この分解能は約0.75mmである)の空間分解能を有するSPECTスキャナーである。よって、「マイクロSPECT」という用語は単独で、マイクロSPECTスキャナーにおけるSPECT測定に関する。本発明の文脈において、マイクロSPECTスキャナーもまた、PET及び/又はCTなどの付加的な画像化の機能性を有してもよく、すなわち、例えば、マイクロSPECT/CT又はマイクロPET/SPECT/CTスキャナーでもよい。
【0020】
本発明の文脈において、例えば、(第1及び/又は第2の)細胞培養物は、例えば、哺乳類(好ましくはヒト)患者(例えばがん患者)からの生検由来の初代細胞培養物であってもよい。また、(第1及び/又は第2の)細胞培養物は、例えば、哺乳類又はヒト細胞株などの細胞株の細胞培養物であってもよい。例えば、(第1及び/又は第2の)細胞培養物はまた、異なる細胞型の共培養であってもよい。第1及び第2の細胞培養物は、同じ細胞型(例えば、同じ灌流チャンバ内において生物学的複製を持たせるため)であっても、異なる細胞型(例えば、同じ灌流チャンバ内において異なる細胞型に及ぼす放射性トレーサーの効果を研究するため)であってもよい。
【0021】
第1の細胞培養物及び/又は第2の細胞培養物は、三次元細胞培養、特にスフェロイド又はオルガノイドであることが好ましい。特に、第1の細胞培養物及び/又は第2の細胞培養物はMTSである(例えば、Hirschhaeuser et al.を参照のこと)。本発明は、これらのタイプの細胞培養物に特に適している。
【0022】
本発明の好適な実施形態において、カラムは、少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つ、より好ましくは少なくとも5つの上記細胞培養物を含む。これにより、本発明の測定スループットがさらに高くなる。例えば、カラムは、それぞれが他の細胞培養物と接触している(例えば、各細胞培養物をその凹部に含む)5つのスポンジ、及び細胞培養物と接触していない他のスポンジを含んでいてもよい。
【0023】
本発明の文脈において、放射性トレーサーは、陽電子放出化合物(
18F、
11C、
13N、
15O、
82Rb、又は
68Gaの少なくとも1つを含む化合物など)又はγ線放出化合物(
99mTc、
177Lu、
123I、
131I、又は
111Inの少なくとも1つを含む化合物など)である。例えば、PETに対して一般的に用いられる放射性トレーサーは、2−デオキシ−2−[
18F]フルオログルコース、[
18F]フルオロアルキル−コリン、[
18F]フルオロウラシル、[
68Ga]エドトレオチド、及び[
11C]アセテートである。例えば、SPECTに対して一般的に用いられる放射性トレーサーは、[
99mTc]セスタミビ又は[
123I]−メタ−ヨードベンジルグアニジンである。しかしながら、本発明は一般的に用いられる放射性トレーサーに限定されない。
【0024】
好ましくは、水性標識液体は、特に生理的pHを有する放射性トレーサーの緩衝液、例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)又は増殖培地中の放射性トレーサーである。好ましくは、水性洗浄液体は、特に生理的pHを有する緩衝液、例えば、PBS又は増殖培地である。最も典型的には、洗浄溶液はどのような放射性トレーサーも含まない。
【0025】
本発明のとりわけ好適な実施形態において、カラムの灌流チャンバに存在する多孔質固相は、少なくとも1つの生体高分子を含む(特に、少なくとも1つの生体高分子で作られた)、少なくとも1つの(好ましくは少なくとも2つの、より好ましくは少なくとも3つの、さらにより好ましくは少なくとも4つの、さらに一層より好ましくは少なくとも5つの、特に少なくとも6つの)スポンジを含む。この生体高分子は、絹、絹フィブロイン、コラーゲン、ゼラチン、アガロース、アルギン酸、ポリ乳酸、寒天、メチルセルロース、及びそれらの混合物から選択されることが好ましい。このようなスポンジは、例えば、Rnjak−Kovacina et al.、Widdowson et al.、Rohanizadeh et al.、Shapiro et al.、Carfi−Pavia et al.、及びPoonam et al.に開示されている。本発明の過程で、絹フィブロインスポンジは、PET又はSPECT分析の間、発明のカラム内で細胞培養物(特にMTSなどの三次元細胞培養物)を支持するのに特に適している一方、放射性トレーサーとの低い相互作用のみを示すということが分かった。例えば、絹フィブロインスポンジは、Teuschl et al.に開示されている。スポンジは、灌流チャンバに収まるようにあらかじめ切断されていることが特に好ましい。例えば、灌流チャンバが円形の輪郭を有する場合は、円形ブレードを有する打抜装置でスポンジをあらかじめ切断することができる。
【0026】
本発明の文脈において、スポンジは、0.5mm〜50mm、好ましくは1mm〜40mm、より好ましくは1.5mm〜25mm、特に2mm〜10mmの最大直径を有することが好ましい。
【0027】
本発明のさらに好適な実施形態において、多孔質固相(例えば、少なくとも1つのスポンジ)は、50μm〜1000μm、好ましくは75μm〜750μm、より好ましくは100μm〜600μm、さらにより好ましくは125μm〜500μm、さらに一層より好ましくは150μm〜450μm、特に200μm〜400μmの平均孔径を有する。前述の平均孔径範囲は、細胞を支持するのに適している一方で、灌流チャンバを通る流速をさらに適切なものにするということが分かった。
【0028】
マイクロPET及びマイクロSPECTの空間分解能は限られているため、第1の細胞培養物に結合した放射性トレーサーの信号が第2の細胞培養物に結合した放射性トレーサーによって著しく阻害されないように、灌流チャンバ内の細胞培養物がお互いに充分な距離を有することが有利である。最小距離が600μm〜5000μmであることが特に効果的であることが分かった。したがって、好適な実施形態において、第1の細胞培養物と第2の細胞培養物との間の最小距離は、600μm以上、好ましくは700μm以上、より好ましくは800μm以上、さらにより好ましくは900μm以上、さらに一層より好ましくは1000μm以上、特に2000μm以上、又はさらに5000μm以上である。
【0029】
本発明の特に好ましい実施形態によると、多孔質固相は、上記スポンジのうち少なくとも第1と第2のものを含む。この実施形態において、第1の培養物の少なくとも一部(例えば、細胞培養物(例えばMTS)の表面の1%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらにより好ましくは20%以上、さらに一層より好ましくは30%以上、特に40%以上、又はさらに50%以上)が第1のスポンジと接触しており、第2の培養物の少なくとも一部(例えば、細胞培養物(例えばMTS)の表面の1%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらにより好ましくは20%以上、さらに一層より好ましくは30%以上、特に40%以上、又はさらに50%以上)が第2のスポンジと接触している。第1の培養物の少なくとも一部(例えば、細胞培養物(例えばMTS)の表面の1%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらにより好ましくは20%以上、さらに一層より好ましくは30%以上、特に40%以上、又はさらに50%以上)が第1のスポンジに付着しており、第2の培養物の少なくとも一部(例えば(細胞培養物(例えばMTS)の表面の1%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらにより好ましくは20%以上、さらに一層より好ましくは30%以上、特に40%以上、又はさらに50%以上)が第2のスポンジに付着していることが好ましい。本明細書において、スポンジに「付着した」細胞培養物という表現は、細胞培養物の細胞の少なくとも一部(例えば、細胞培養物(例えばMTS)の表面の1%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、さらにより好ましくは20%以上、さらに一層より好ましくは30%以上、特に40%以上、又はさらに50%以上)が、それらの細胞接着分子(CAM)(セレクチン、インテグリン、又はカドヘリンなど)により、スポンジへの付着を形成していることを意味する。例えば、そのような細胞接着は、増殖培地において37℃で2〜3時間、スポンジと接触した状態で細胞培養物をインキュベートすることにより促進される。
【0030】
他に優先することとして、第1のスポンジは、第1の培養物の少なくとも一部(例えば、細胞培養物(例えばMTS)の体積の5%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは25%以上、さらにより好ましくは50%以上、さらに一層より好ましくは75%以上、特に90%以上、又はさらに95%以上)を含む凹部を有し、第2のスポンジは、第2の細胞培養物の少なくとも一部(例えば、細胞培養物(例えばMTS)の体積の5%以上、好ましくは10%以上、より好ましくは25%以上、さらにより好ましくは50%以上、さらに一層より好ましくは75%以上、特に90%以上、又はさらに95%以上)を含む凹部を有する。この凹部は、その位置における細胞培養物を安定化させるだけでなく、細胞培養物とスポンジの生体高分子との間の相互作用面を増加させることにより、細胞培養物とスポンジの生体高分子との間の好ましい相互作用を強化する働きをする。典型的には、凹部の最大直径は、多孔質固相の(及び/又は凹部を有するスポンジの)平均孔径よりも大きく、好ましくは2倍以上、より好ましくは3倍以上、さらに一層より好ましくは4倍以上、特に5倍以上大きい。例えば、凹部は1mm超の、さらに2mm超の、特に3mm超の最大直径を有してもよい。
【0031】
PET又はSPECTスキャンにおいて個々の細胞培養物を識別するために、好適な実施形態において、カラムは、カラム内の細胞培養物の少なくとも1つの位置を示すための付加的な放射性標識又は放射性不透過性標識を含む。標識が放射性、例えば陽電子放出化合物(
18F、
11C、
13N、
15O、
82Rb、又は
68Gaの少なくとも1つを含む化合物など)又はγ線放出化合物(
99mTc、
123I、
131I、又は
111Inの少なくとも1つを含む化合物など)である場合、標識は溶液中(例えば水溶液中)に存在することが好ましい。カラムは、好ましくは溶液の形で、放射性標識を含む付加的なチャンバを含むことが有利である。標識が放射性不透過性(特に、例えば、PET画像及びCT画像の重ね合わせに対してなどのマイクロPET/CT又はマイクロSPECT/CTで用いるX線に対して)(例えば、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、フェライト、マグネタイト、カリウム塩、又は重金属粒子などの金属酸化物)である場合、標識は固体として(例えば小さなプレート又はディスクの形で)存在することが好ましい。カラムは、好ましくは小さなプレート又はディスクの形で、放射性標識を含む付加的なチャンバを含むことが有利である。
【0032】
例として、カラムは、灌流チャンバの軸に沿って、複数の空の(小さい)チャンバを含んでいてもよい。灌流チャンバはスポンジで満たされており、それぞれのスポンジは細胞培養物を含んでいる。それぞれの細胞培養物について、その細胞培養物に最も近いチャンバのみが放射性標識を有する溶液又は放射性不透過性プレート若しくはディスクで満たされている。PET又はSPECTスキャンにおいて(又は重ね合わせCTスキャンにおいて)、これらのチャンバは検出され、それぞれの細胞培養物の位置を示す付加的な対照(additional control)としての機能を果たすこととなる。言うまでもなく、チャンバの特徴は、溶液又はプレート若しくはディスクで満たされているかどうかによって異なる。
【0033】
他の好ましい実施形態において、灌流チャンバは、カラム内の細胞培養物の少なくとも1つの位置を示す少なくとも1つの固形マーカーをさらに含む。この固形マーカーは、多孔質固相(例えば、スポンジ)より高い密度を有し、好ましくは1.25倍以上、より好ましくは1.5倍以上、特に2倍以上高い密度を有する。これにより、画像化方法において細胞培養物の識別をより容易にすることが可能である。言うまでもなく、固形マーカーは灌流チャンバ内の流れを完全には阻害しない。したがって、固形マーカーは多孔質であることが好ましい。例えば、固形マーカーはフィルターであってもよい(例えば、
図7参照)。固形マーカーは、2つのスポンジの間に位置していてもよい(同様に、
図7参照)。それぞれの密度を計算する場合、多孔質固相の孔の含有量及び多孔質固形マーカー(あるとすれば)の孔の含有量をそれぞれ考慮し、すなわち、孔が水で満たされている場合には、物質の全質量対その体積を考慮する。
【0034】
さらに好適な実施形態によると、好ましくは灌流チャンバの中身の少なくとも一部が外から見えるように、カラムの少なくとも一部は透明である。これは、例えば、カラムをPET又はSPECTスキャナーに挿入する前に、灌流チャンバの状態を確認するのに有用である。
【0035】
さらに好適な実施形態によると、第1の細胞培養物の放射性トレーサーに対する結合親和性は、第2の細胞培養物よりも高い。
【0036】
発明の方法の文脈において、工程(B)及び/又は工程(C)の実施は、好ましくは0.01mL/分〜10mL/分の流速の、好ましくは0.025mL/分〜7.5mL/分の流速の、より好ましくは0.05mL/分〜5mL/分の流速の、特に0.1mL/分〜2mL/分の流速の灌流チャンバを通る乱流液体流(層流とは対照的)を含むことが好ましい。乱流は、細胞培養物に対して生理的状況に近い状況を引き起こすことになる(すなわち、組織を通る液体流は一般的に乱れる)。これは、ほとんどの場合に層流液体流を有するマイクロ流体システムに対する本発明の決定的な利点である。
【0037】
本発明のキットの態様に戻ると、特に、キットは使用指示書(例えば、キットのカラムのPET又はSPECTスキャナーでの使用指示書、特に発明の方法によるキットの使用指示書)をさらに含んでいてもよい。発明のキットは、キットのカラムの灌流チャンバに収まるようにあらかじめ切断された少なくともフィルターを2つさらに含むことが好ましい。さらに好みに合わせて、キットは、少なくとも1つの無菌フィルター、すなわち、1μm未満、好ましくは0.5μm未満、特に0.25μm未満の平均孔径を有するフィルター、をさらに含む。例えば、この無菌フィルターは、カラムの入口及び/又は出口に取り付けてもよい。また、発明のキットは管類(tubing)を含んでもよい。
【0038】
また、本発明のキットは、例えば小さなプレート又はディスクの形で、上述の放射性不透過性標識の少なくとも1つを含んでもよい。特にこの場合、カラムは、所望による放射性不透過性標識の充填のための付加的なチャンバを有してもよい。
【0039】
本発明の文脈において、カラムは、0.5mm〜20mm、好ましくは1mm〜10mm、特に2mm〜8mmの直径を有することが好ましい。
【0040】
さらに、本発明の文脈において、多孔質固相がハイドロゲルを含まないことが非常に好ましい。あるいは、又はそれに加えて、多孔質固相は不規則な孔を有することが好ましい。
【0041】
本明細書において、好ましくは、「生体適合性カラム」という表現は、使用中に細胞培養物と接触するカラムの表面(例えば、灌流チャンバ内)が細胞増殖を(著しく)阻害しない、すなわち、(著しい)細胞毒性がないことを意味する。
【0042】
本発明は、さらに以下の実施形態に関する。
実施形態1.生体適合性カラムにおける少なくとも2つの細胞培養物の同時マイクロ陽電子放出断層撮影(マイクロPET)又はマイクロ単一光子放出コンピュータ断層撮影(マイクロSPECT)のための方法であって、
上記カラムは、入口、軸方向に配向した灌流チャンバ、及び出口を含み、ここで、上記入口は上記灌流チャンバと流体接続しており、上記出口は上記灌流チャンバと流体接続しており、上記灌流チャンバは、多孔質固相、水性液相、第1の細胞培養物、及び第2の細胞培養物を含み、上記第1の細胞培養物の少なくとも一部及び上記第2の細胞培養物の少なくとも一部は上記固相と接触しており、上記第1の細胞培養物は、上記第2の細胞培養物とは上記固相の少なくとも一部により隔てられており、
上記方法は、以下の工程:
(A)上記カラムをマイクロPET又はマイクロSPECTスキャナーに挿入すること、
(B)上記第1の細胞培養物の細胞の少なくとも一部及び上記第2の細胞培養物の細胞の少なくとも一部が放射性トレーサーと接触するように、上記入口を通り上記灌流チャンバ(3)を通り抜け上記出口に向かって上記放射性トレーサーを含む水性標識液体を流通させること、
(C)上記放射性トレーサーの少なくとも一部が上記灌流チャンバから上記出口を通って除去されるように、上記入口を通り上記灌流チャンバを通り抜け上記出口に向かって水性洗浄液体を流通させること、及び
(D)上記カラムを上記マイクロPET又はマイクロSPECTスキャナーでスキャンすること、
を含む。
【0043】
実施形態2.上記第1の細胞培養物及び/又は上記第2の細胞培養物がスフェロイド又はオルガノイドである、実施形態1に記載の方法。
【0044】
実施形態3.上記第1の細胞培養物及び/又は上記第2の細胞培養物が多細胞腫瘍スフェロイド(MTS)である、実施形態2に記載の方法。
【0045】
実施形態4.工程(B)及び/又は工程(C)の流通させることが、上記灌流チャンバを通る乱流液体流を含み、該乱流液体流は、好ましくは0.01mL/分〜10mL/分の流速(好ましくは0.025mL/分〜7.5mL/分の流速、より好ましくは0.05mL/分〜5mL/分の流速、特に0.1mL/分〜2mL/分の流速)である、実施形態1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【0046】
実施形態5.上記多孔質固相が、少なくとも1つの生体高分子を含む少なくとも1つのスポンジを含み、
ここで、好ましくは、上記生体高分子が、絹、絹フィブロイン、コラーゲン、ゼラチン、アガロース、アルギン酸、ポリ乳酸、寒天、メチルセルロース、及びそれらの混合物から選択され、及び/又は上記灌流チャンバに収まるように上記スポンジがあらかじめ切断されている、実施形態1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【0047】
実施形態6.上記多孔質固相が、50μm〜1000μm(好ましくは75μm〜750μm、より好ましくは100μm〜600μm、さらにより好ましくは125μm〜500μm、さらに一層より好ましくは150μm〜450μm、特に200μm〜400μm)の平均孔径を有する、実施形態1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【0048】
実施形態7.上記第1の細胞培養物と上記第2の細胞培養物との最小距離が600μm以上(好ましくは700μm以上、より好ましくは800μm以上、さらにより好ましくは900μm以上、さらに一層より好ましくは1000μm以上、特に2000μm以上、又はさらに5000μm以上)である、実施形態1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【0049】
実施形態8.上記多孔質固相が上記スポンジのうち少なくとも第1及び第2のものを含み、上記第1の培養物の少なくとも一部が第1のスポンジと接触しており、上記第2の培養物の少なくとも一部が第2のスポンジと接触している、実施形態5〜7のいずれか一つに記載の方法。
【0050】
実施形態9.上記第1の培養物の少なくとも一部が上記第1のスポンジに付着しており、上記第2の培養物の少なくとも一部が上記第2のスポンジに付着している、実施形態8に記載の方法。
【0051】
実施形態10.上記第1のスポンジが、上記第1の細胞培養物の少なくとも一部を含む凹部を有し、上記第2のスポンジが、上記第2の細胞培養物の少なくとも一部を含む凹部を有する、実施形態8又は9に記載の方法。
【0052】
実施形態11.上記カラムが、上記カラム内の上記細胞培養物の少なくとも1つの位置を示す付加的な放射性標識又は放射線不透過性標識を含む、実施形態1〜10のいずれか一つに記載の方法。
【0053】
実施形態12.上記カラムが、上記放射性標識又は上記放射線不透過性標識を含む付加的なチャンバを含む、実施形態11に記載の方法。
【0054】
実施形態13.上記灌流チャンバが、上記カラム内の上記細胞培養物の少なくとも1つの位置を示す少なくとも1つの固形マーカーをさらに含み、上記固形マーカーが、上記多孔質固相より高い密度(好ましくは1.25倍以上、より好ましくは1.5倍以上、特に2倍以上高い密度)を有する、実施形態1〜12のいずれかに記載の方法。
【0055】
実施形態14.上記カラムの少なくとも一部が透明である、実施形態1〜13のいずれか一つに記載の方法。
【0056】
実施形態15.上記第1の細胞培養物の上記放射性トレーサーに対する結合親和性が、上記第2の細胞培養物よりも高い、実施形態1〜14のいずれか一つに記載の方法。
【0057】
実施形態16.少なくとも2つの細胞培養物の同時マイクロPET又はマイクロSPECTのための生体適合性カラムであって、
上記カラムは、入口、軸方向に配向した灌流チャンバ、及び出口を含み、ここで、上記入口は上記灌流チャンバと流体接続されており、上記出口は上記灌流チャンバと流体接続されており、
上記灌流チャンバは、少なくとも1つの生体高分子を含む少なくとも1つのスポンジを含む多孔質固相、水性液相、第1の細胞培養物、及び第2の細胞培養物を含み、上記第1の細胞培養物の少なくとも一部及び上記第2の細胞培養物の少なくとも一部は上記固相と接触しており、上記第1の細胞培養物は、上記第2の細胞培養物とは上記固相の少なくとも一部により隔てられている、上記カラム。
【0058】
実施形態17.上記第1の細胞培養物及び/又は上記第2の細胞培養物がスフェロイド又はオルガノイドである、実施形態16に記載のカラム。
【0059】
実施形態18.上記第1の細胞培養物及び/又は上記第2の細胞培養物がMTSである、実施形態17に記載のカラム。
【0060】
実施形態19.上記生体高分子が、絹、絹フィブロイン、コラーゲン、ゼラチン、アガロース、アルギン酸、ポリ乳酸、寒天、メチルセルロース、及びそれらの混合物から選択される、実施形態16〜18のいずれか一つに記載のカラム。
【0061】
実施形態20.上記生体高分子が絹フィブロインである、実施形態19に記載のカラム。
【0062】
実施形態21.上記灌流チャンバに収まるように、上記スポンジがあらかじめ切断されている、実施形態16〜20のいずれか一つに記載のカラム。
【0063】
実施形態22.上記多孔質固相が、50μm〜1000μm(好ましくは75μm〜750μm、より好ましくは100μm〜600μm、さらにより好ましくは125μm〜500μm、さらに一層より好ましくは150μm〜450μm、特に200μm〜400μm)の平均孔径を有する、実施形態16〜21のいずれか一つに記載のカラム。
【0064】
実施形態23.上記第1の細胞培養物と上記第2の細胞培養物との最小距離が、600μm以上(好ましくは700μm以上、より好ましくは800μm以上、さらにより好ましくは900μm以上、さらに一層より好ましくは1000μm以上、特に2000μm以上、又はさらに5000μm以上)である、実施形態16〜22のいずれか一つに記載のカラム。
【0065】
実施形態24.上記多孔質固相が、第1及び第2の上記スポンジを少なくとも含み、上記第1の培養物の少なくとも一部が上記第1のスポンジと接触しており、上記第2の培養物の少なくとも一部が上記第2のスポンジと接触している、実施形態16〜23のいずれか一つに記載のカラム。
【0066】
実施形態25.上記第1の培養物の少なくとも一部が上記第1のスポンジに付着しており、上記第2の培養物の少なくとも一部が上記第2のスポンジに付着している、実施形態24に記載のカラム。
【0067】
実施形態26.上記第1のスポンジは、上記第1の細胞培養物の少なくとも一部を含む凹部を有し、上記第2のスポンジは、上記第2の細胞培養物の少なくとも一部を含む凹部を有する、実施形態24又は25に記載のカラム。
【0068】
実施形態27.上記カラムが、上記カラム内の上記細胞培養物の少なくとも1つの位置を示す付加的な放射性標識又は放射線不透過性標識を含む、実施形態16〜26のいずれか一つに記載のカラム。
【0069】
実施形態28.上記カラムが、上記放射性標識又は上記放射線不透過性標識を含む付加的なチャンバを含む、実施形態27に記載のカラム。
【0070】
実施形態29.上記灌流チャンバが、上記カラム内の上記細胞培養物の少なくとも1つの位置を示す少なくとも1つの固形マーカーをさらに含み、上記固形マーカーが上記多孔質固相より高い密度(好ましくは1.25倍以上、より好ましくは1.5倍以上、特に2倍以上高い密度)を有する、実施形態16〜28のいずれか一つに記載のカラム。
【0071】
実施形態30.上記カラムの少なくとも一部が透明である、実施形態16〜29のいずれかに記載のカラム。
【0072】
実施形態31.上記第1の細胞培養物の放射性トレーサーへの結合親和性が上記第2の細胞培養物よりも高い、実施形態16〜30のいずれか一つに記載のカラム。
【0073】
実施形態32.上記入口及び/又は上記出口を介してポンプと流体接続された実施形態16〜30のいずれか一つに記載のカラムを含む、少なくとも2つの細胞培養物の同時マイクロPET又はマイクロSPECTのためのシステムであって、
好ましくは、上記システムが上記カラムのための温度制御及び/又は上記カラムの上記入口と流体接続されたサンプル注入器をさらに有する、上記システム。
【0074】
実施形態33.実施形態16〜30のいずれか一つに記載のカラムが挿入されたマイクロPET又はマイクロSPECTスキャナー。
【0075】
実施形態34.少なくとも2つの細胞培養物の同時マイクロPET又はマイクロSPECTのためのキットであって、
少なくとも2つの細胞培養物の同時マイクロPET又はマイクロSPECTのための少なくとも1つの生体適合性カラム、ここで、該カラムは、入口、軸方向に配向した灌流チャンバ、及び出口を含み、上記入口が上記灌流チャンバと流体接続されており、上記出口が上記灌流チャンバと流体接続されている;並びに
少なくとも1つの生体高分子を含み、上記灌流チャンバに収まるようにあらかじめ切断されている、少なくとも2つのスポンジ、ここで、該スポンジは、好ましくは絹、絹フィブロイン、コラーゲン、ゼラチン、アガロース、アルギン酸、ポリ乳酸、寒天、メチルセルロース、及びそれらの混合物から選択される;
を含む上記キット。
【0076】
実施形態35.上記灌流チャンバに収まるようにあらかじめ切断されている少なくとも2つのフィルターをさらに含み、好ましくは上記フィルターが上記少なくとも2つのスポンジより高い密度(より好ましくは1.25倍以上、さらにより好ましくは1.5倍以上、特に2倍以上高い密度)を有する、実施形態34に記載のキット。
【0077】
実施形態36.少なくとも1つの無菌フィルターをさらに含む、実施形態34又は35に記載のキット。
【0078】
本発明は、限定されるものではないが、以下の図面及び実施例によりさらに例示される。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【
図1】
図1は、本発明の生体適合性カラムの一実施形態を示す。
【
図2】
図2は、発明の生体適合性カラムのプロトタイプのスキーム及び写真を示す。カラムは、プラスチックハウジング及びフリットを有し、プラスチックハウジングは、複数の絹フィブロインスポンジからなる固体多孔質相及び細胞増殖培地からなる液相を有する灌流チャンバを形成する。写真の下側カラムの2つの点は、スポンジの凹部内の2つの細胞培養物の存在を示す(それぞれ約1mmの直径を有するMTSである)。
【
図3】
図3は、液相の輸送のためのポンプシステム、放射性トレーサーの注入のための注入バルブ、細胞培養物を有する生体適合性カラム、検出システムとしてのマイクロPET(μPET)、及び廃棄用ボトルを含む、少なくとも2つの細胞培養物の同時マイクロPETのための完全自動化システムの概念設計を示す。いくつかの部品がプロセス制御、データ収集及び再構成のためのコンピュータに接続されている。
【
図4】
図4は、生体適合性カラムの準備の一例を示す。1)細胞培養懸濁液をスポンジに付与し、2)細胞を6時間以上なじませ、3)スポンジをカラムに挿入して培養培地で湿らせ、4)放射性トレーサーをストップフロー機構に加え、5)残存する放射性トレーサーを除去し、6)放射性トレーサーの蓄積を検出する。
【
図5】
図5は、5つのMTSを含んだ本発明のカラムのPETスキャンを示す。水溶液の[
18F]FDGを、手動で5つのMTS(それぞれ直径が〜700μm)を有する多孔質固相を通して移動させた。60分のインキュベーション時間の後、非結合の[
18F]FDGを洗浄し、その後、カラムをマイクロPETスキャナーに挿入しスキャンした。互いに極めて接近したMTS2及び3は区別することができなかった一方で、MTS1、4、及び5は普通とは異なる信号対雑音比によって充分に分離することができた。
【
図6】
図6は、2つの細胞培養物(2つの異なる絹スポンジに播種したHT29ヒト結腸直腸腺がん細胞株の細胞)を含んだ本発明のカラムのPETスキャンを示す。[
18F]FDG水溶液を、手動で5つのMTS(それぞれ直径が〜700μm)を有する多孔質固相を通して移動させた。60分のインキュベーション時間の後、非結合の[
18F]FDGを洗浄し、続いて、カラムをマイクロPETスキャナーに挿入しスキャンした。スキャンにおいて、2つのHT29細胞培養物はお互いに明確に区別できる。
【
図7】
図7は、本発明のカラムのその他のプロトタイプの写真を示す。カラムは、プラスチックハウジング及びフリットを有し、プラスチックハウジングは、4つの絹フィブロインスポンジ(カラムに記された標識により示される)及びフィルター(灌流チャンバ内の白色物質)からなる固体多孔質相、並びに細胞増殖培地からなる液相を有する灌流チャンバを形成する。絹フィブロインスポンジはそれぞれ、その凹部に約0.5mmの直径を有するMTSを含む。スポンジはそれぞれ、隣接する2つのフィルターを有する。フィルターがスポンジよりも高い密度を有することで、測定における各MTSの識別を容易にすることができる。言い換えると、各フィルターはカラム内の細胞培養(MTS)の少なくとも1つの位置を示す固形マーカーである。
【実施例】
【0080】
実施例1:生体適合性カラム
図1は、第1の細胞培養物6a及び第2の細胞培養物6bの同時マイクロPET又はマイクロSPECTのための生体適合性カラム1を示し、ここで、第1の細胞培養物6a及び第2の細胞培養物6bはいずれもMTSである。カラムは、入口2、軸方向に配向した灌流チャンバ3、及び出口4を含む。入口2及び出口4はいずれも灌流チャンバ3に流体接続されている。灌流チャンバ3は4つのスポンジ7c、7d、7a、7bにより形成された多孔質固相を含み、ここで、これらのスポンジは生体高分子で作られ、灌流チャンバ3に収まるようにあらかじめ切断されていた。増殖培地からなる液相5は、入口2からスポンジ7c、7d、7a、7bを通って出口4へ延びている。スポンジ7a、7bはそれぞれ凹部8a、8bを有する。第1の細胞培養物6aは、スポンジ7aと接触した状態で凹部8a内に位置し、第2の細胞培養物6bは、スポンジ7bと接触した状態で凹部8b内に位置する。スポンジ7c、7dは、凹部と細胞培養のどちらも有しない。第1の細胞培養物6a及び第2の細胞培養物6bは、スポンジ7aにより互いに隔てられている。カラム1は、入口2に隣接する1つのフィルター50、及び出口4に隣接する無菌フィルター51に隣接する別のフィルター50をさらに有する。
【0081】
実施例2:少なくとも2つの細胞培養物の同時マイクロPET又はマイクロSPECTのためのシステム
このシステムの主な目的は、間質性ストップフロー条件の三次元バイオスキャホールド内の薬剤の分布、蓄積、代謝、及び排出の評価に適用できる方法を提供することにより、生体外での薬剤、特にPET又はSPECTトレーサーの開発を促進することである。このシステムは、生体高分子スポンジに埋め込まれた細胞、MTS、又はオルガノイドからなる生物学的固定相を通る一定流量の薬剤/トレーサー又は改良剤、並びに栄養素、O
2及びCO
2を輸送する移動相からなる。生物学的固定相を有するカラムのプロトタイプを
図2に示す。
【0082】
さらに、このシステムは、制御可能なポンプシステム、カラムを固定し温度を制御するための装置、及び検出ユニットとしてのマイクロPETスキャナーを含む(
図3参照)。
【0083】
生体適合性カラムの準備のための一例を
図4に示す。
【0084】
実施例3:実験結果
下記の4つの異なるカラムをマイクロPETスキャナーに導入しスキャンした。
a)細胞培養物なしで絹スポンジを用いて準備したカラム(バックグラウンド測定)
b)[
18F]FDGでプレインキュベートしたスフェロイドを用いて準備したカラム(信号対雑音比測定)
c)異なる距離に配置されたスフェロイドを用いて準備し、[
18F]FDGをストップフロー機構に導入したカラム(
図5参照)
d)無細胞のスポンジを間に有する絹スポンジ上で増殖した細胞を用いて準備したカラム(
図6参照)
【0085】
カラムa)のスキャンにより、一般に、絹スポンジへの[
18F]FDG結合性は低く、絹への極性化合物の非特異的結合性は低いが示された。
【0086】
カラムb)のスキャンにより、カラム内にスフェロイドがうまく検出されたことが明確に示された。
【0087】
カラムc)のスキャンにより、絹スキャホールドへの[
18F]FDGの特異的結合性は低いことが確認され、スフェロイド2、3を除く全てのスフェロイドについては別々に画像化できたことから、スフェロイド間の驚くほど高い分解能が表出された。スフェロイドの大きさは約700μmであり、使用したマイクロPET装置の分解能を下回るため、この結果は特に重要である。
【0088】
カラムd)のスキャンにより、HT29細胞を有する領域が明確に強調され(
図6参照)、本発明の高い可能性がさらに示された。
【0089】
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【国際調査報告】